JP2007173207A - 固体高分子型燃料電池用電極及びその製造方法、並びにそれを備えた固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用電極及びその製造方法、並びにそれを備えた固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】固体高分子型燃料電池の発電効率を大幅に向上させることが可能な固体高分子型燃料電池用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】芳香環を有する化合物を多孔質支持体上で酸化重合して多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して多孔質支持体上に炭素繊維を生成させ、該炭素繊維に電気メッキで金属を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極の製造方法であって、前記電気メッキにおいて、電流をパルス状に印加し、下記式(I):
デューティ比=t1/(t1+t2)×100 ・・・ (I)
[式中、t1は電流の印加時間(秒)を表し、t2は休止時間(秒)を表す]で表されるデューティ比を2〜20%とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池用電極及びその製造方法、並びに該固体高分子型燃料電池用電極を備えた固体高分子型燃料電池に関し、特に炭素繊維上に担持された金属の表面積を従来よりも非常に大きくすることができ、固体高分子型燃料電池の発電効率を大幅に向上させることが可能な固体高分子型燃料電池用電極の製造方法に関するものである。
昨今、発電効率が高く、環境への負荷が小さい電池として、燃料電池が注目を集めており、広く研究開発が行われている。燃料電池の中でも、出力密度が高く作動温度が低い固体高分子型燃料電池は、小型化や低コスト化が他のタイプの燃料電池よりも容易なことから、電気自動車用電源、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムとして広く普及することが期待されている。
一般に固体高分子型燃料電池においては、固体高分子電解質膜を挟んで一対の電極を配置すると共に、一方の電極の表面に水素等の燃料ガスを接触させ、もう一方の電極の表面に酸素を含有する酸素含有ガスを接触させ、この時起こる電気化学反応を利用して、電極間から電気エネルギーを取り出している(非特許文献1及び2参照)。また、上記電極の高分子電解質膜に接する側には触媒層が配設されており、高分子電解質膜と触媒層とガスとの三相界面で電気化学反応が起こる。そのため、固体高分子型燃料電池の発電効率を向上させるためには、上記電気化学反応の反応場を大きくする必要がある。
上記電気化学反応の反応場を大きくすることが可能な触媒層を形成するために、一般に、白金等の貴金属触媒をカーボンブラック等の粒状カーボン上に担持した触媒粉を含有するペースト又はスラリーを、カーボンペーパー等の導電性の多孔質支持体上に塗布する方法が採られている。しかしながら、この方法で形成された触媒層を備える固体高分子型燃料電池は、発電効率が低かった。
これに対して、本発明者らは、カーボンペーパー等の導電性の多孔質支持体上に特定の方法で炭素繊維を作製し、該炭素繊維上に電気メッキにより貴金属を担持して作製した電極を固体高分子型燃料電池に使用することで、固体高分子型燃料電池の発電効率が向上することを見出している(特許文献1参照)。
国際公開第2004/063438号パンフレット 日本化学会編,「化学総説No.49,新型電池の材料化学」,学会出版センター,2001年,p.180−182 「固体高分子型燃料電池<2001年版>」,技術情報協会,2001年,p.14−15
しかしながら、上記特許文献1に記載の電極をもってしても、発電効率の点で、依然として改善の余地があり、更に固体高分子型燃料電池の発電効率を向上させることが可能な電極が求められている。
そこで、本発明の目的は、固体高分子型燃料電池の発電効率を大幅に向上させることが可能な固体高分子型燃料電池用電極とその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる固体高分子型燃料電池用電極を備え、高い発電効率を有する固体高分子型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して3次元連続状の炭素繊維とし、該3次元連続状の炭素繊維に金属を、電流をパルス状に印加して電気メッキにより担持することで、炭素繊維上に担持された金属の表面積を従来よりも非常に大きくすることができ、高分子電解質膜と触媒層とガスとの三相界面における電気化学反応の反応場を大幅に拡大することが可能な固体高分子型燃料電池用電極が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法は、芳香環を有する化合物を多孔質支持体上で酸化重合して多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して多孔質支持体上に炭素繊維を生成させ、該炭素繊維に電気メッキで金属を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極の製造方法であって、
前記電気メッキにおいて、電流をパルス状に印加し、下記式(I):
デューティ比=t1/(t1+t2)×100 ・・・ (I)
[式中、t1は電流の印加時間(秒)を表し、t2は休止時間(秒)を表す]で表されるデューティ比を2〜20%とすることを特徴とする。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法の好適例においては、前記電気メッキにおける休止時間(t2)が0.05〜0.5秒である。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法において、前記多孔質支持体上に炭素繊維を生成させた後に、該炭素繊維に1800℃以上で高温処理を施すことが好ましい。ここで、該高温処理を非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法において、前記多孔質支持体としては、カーボンペーパーが好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法においては、前記金属が少なくともPtを含むことが好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法の他の好適例においては、前記酸化重合が電解酸化重合である。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法において、前記芳香環を有する化合物としては、ベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物が好ましく、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体が特に好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法の他の好適例においては、前記焼成を非酸化性雰囲気中で行う。
また、本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、上記の方法で製造されたことを特徴とし、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に配置された炭素繊維と、該炭素繊維上に担持された金属とからなる。
更に、本発明の固体高分子型燃料電池は、上記固体高分子型燃料電池用電極を燃料極及び空気極の少なくとも一方として備えることを特徴とする。
本発明によれば、多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して炭素繊維とし、該炭素繊維に金属を、電流をパルス状に印加して電気メッキで担持することにより、固体高分子型燃料電池の発電効率を大幅に向上させることが可能な固体高分子型燃料電池用電極を製造することができる。また、多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して炭素繊維とし、該炭素繊維に高温処理を施した後、高温処理を施した炭素繊維に金属を、電流をパルス状に印加して電気メッキで担持することにより、固体高分子型燃料電池の発電効率をより一層向上させることが可能な固体高分子型燃料電池用電極を製造することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法は、芳香環を有する化合物を多孔質支持体上で酸化重合して該多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して多孔質支持体上に炭素繊維を生成させ、該炭素繊維に電気メッキで金属を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極の製造方法であって、上記電気メッキにおいて、電流をパルス状に印加し、上記式(I)で表されるデューティ比を2〜20%とすることを特徴とする。本発明の製造方法では、炭素繊維上への金属の担持を電流をパルス状に印加した電気メッキ(即ち、パルスメッキ)により行い、電流の印加と停止を交互に行うことで、電流印加時に形成された拡散層が電流休止時に緩和されるため、金属を緻密な微粒子状に析出させることができる。そのため、本発明の方法で製造された固体高分子型燃料電池用電極は、炭素繊維上の金属の表面積が非常に大きく、該電極を使用することで、固体高分子型燃料電池の発電効率を大幅に向上させることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に配置された炭素繊維と、該炭素繊維上に担持された金属とを備え、燃料極としても、空気極(酸素極)としても使用できる。ここで、該固体高分子型燃料電池用電極は、多孔質支持体がガス拡散層として機能し、炭素繊維及び金属が触媒層として機能する。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の多孔質支持体は、炭素繊維及び金属からなる触媒層へ水素ガス等の燃料、或いは、酸素や空気等の酸素含有ガスを供給するガス拡散層としての機能と、発生した電子の授受を行う集電体としての機能を担う。該多孔質支持体に用いる材質としては、多孔質で且つ電子伝導性を有するものであればよく、具体的には、カーボンペーパー、多孔質のカーボン布等が挙げられる。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極の炭素繊維は、芳香環を有する化合物を酸化重合してフィブリル状ポリマーを生成させた後、該フィブリル状ポリマーを焼成することで得られる。上記芳香環を有する化合物としては、ベンゼン環を有する化合物、芳香族複素環を有する化合物を挙げることができる。ここで、ベンゼン環を有する化合物としては、アニリン及びアニリン誘導体が好まく、芳香族複素環を有する化合物としては、ピロール、チオフェン及びこれらの誘導体が好ましい。これら芳香環を有する化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。
上記芳香環を有する化合物を酸化重合して得られるフィブリル状ポリマーは、通常、3次元連続構造を有し、直径が30〜数百nmで、好ましくは40〜500nmであり、長さが0.5〜100000μmで、好ましくは1〜10000μmである。
上記酸化重合法としては、電解酸化重合法が好ましい。また、酸化重合においては、原料の芳香環を有する化合物と共に、酸を混在させることが好ましい。この場合、酸の負イオンがドーパントとして合成されるフィブリル状ポリマー中に取り込まれ、導電性に優れたフィブリル状ポリマーが得られ、このフィブリル状ポリマーを用いることにより最終的に炭素繊維の導電性を更に向上させることができる。
この点について更に詳述すると、例えば、重合原料としてアニリンを用いた場合、アニリンをHBF4を混在させた状態で酸化重合して得られるポリアニリンは、通常下記式(A)〜(D):
Figure 2007173207
に示した4種のポリアニリンが混在した状態、即ち、ベンゾノイド=アミン状態(式A)、ベンゾノイド=アンモニウム状態(式B)、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)及びキノイド=ジイミン状態(式D)の混合状態になる。ここで、上記各状態の混合比率は特に制限されるものではないが、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)を多く含んでいる方がキノイド=ジイミン状態(式D)が大部分であるよりも最終的に得られる炭素繊維の残炭率及び導電率が高くなる。従って、ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)を多く含むポリアニリンを得るためには、重合時に酸を混在させることが好ましい。なお、重合の際に混在させる酸としては、上記HBF4に限定されるものではなく、種々のものを使用することができ、HBF4の他、H2SO4、HCl、HClO4等を例示することができる。ここで、該酸の濃度は、0.1〜3mol/Lが好ましく、0.5〜2.5mol/Lがより好ましい。
上記ドープ=セミキノンラジカル状態(式C)の含有割合(ドーピングレベル)は適宜調節することができ、この含有割合(ドーピングレベル)を調節することにより、得られる炭素繊維の残炭率及び導電率を制御することができ、ドーピングレベルを高くすることにより得られる炭素繊維の残炭率及び導電率が共に高くなる。なお、特に限定されるものではないが、このドープ=セミキノンラジカル状態(式C)の含有割合(ドーピングレベル)は、通常0.01〜50%の範囲とすることが好ましい。
電解酸化重合によりフィブリル状ポリマーを得る場合には、芳香環を有する化合物を含む溶液中に、上記多孔質支持体からなる作用極及び対極を浸漬し、両極間に上記芳香環を有する化合物の酸化電位以上の電圧を印加するか、または該芳香環を有する化合物が重合するのに充分な電圧が確保できるような条件の電流を通電すればよく、これにより多孔質支持体(作用極)上にフィブリル状ポリマーが生成する。ここで、対極としては、ステンレススチール、白金、カーボン等の良導電性物質からなる板や多孔質支持体等を用いることができる。この電解酸化重合法によるフィブリル状ポリマーの合成方法の一例を挙げると、H2SO4、HBF4等の酸及び芳香環を有する化合物を含む電解溶液中に多孔質支持体からなる作用極及び対極を浸漬し、両極間に0.1〜1000mA/cm2、好ましくは0.2〜100mA/cm2の電流を通電して、多孔質支持体からなる作用極側にフィブリル状ポリマーを重合析出させる方法等が例示される。ここで、芳香環を有する化合物の電解溶液中の濃度は、0.05〜3mol/Lが好ましく、0.25〜1.5mol/Lがより好ましい。また、電解溶液には、上記成分に加え、pHを調製するために可溶性塩等を適宜添加してもよい。
上述のように、炭素繊維のドーピングレベルを調節することにより、得られる炭素繊維の導電率及び残炭率を制御することができるが、ドーピングレベルの調節は、得られたフィブリル状ポリマーを何らかの方法で還元すればよく、その手法に特に制限はない。具体例としては、アンモニア水溶液又はヒドラジン水溶液等に浸漬する方法、電気化学的に還元電流を付加する方法等が挙げられる。この還元レベルによりフィブリル状ポリマーに含まれるドーパント量の制御を行うことができ、この場合、還元処理によってフィブリル状ポリマー中のドーパント量は減少する。また、重合時において酸濃度を制御することにより重合過程でドーピングレベルをある程度調節することもできるが、ドーピングレベルが大きく異なる種々のサンプルを得ることは難しく、このため上記還元法が好適に採用される。なお、このように含有割合を調節したドーパントは、後述する焼成処理後も、その焼成条件を制御することによって得られた炭素繊維中に保持され、これにより炭素繊維の導電率及び残炭率が制御される。
上記のようにして多孔質支持体(作用極)上に得られたフィブリル状ポリマーを、水や有機溶剤等の溶媒で洗浄し、乾燥させた後、焼成して炭化、好ましくは、非酸化性雰囲気中で焼成して炭化することで、炭素繊維が得られる。ここで、乾燥方法としては、特に制限されるものではないが、風乾、真空乾燥の他、流動床乾燥装置、気流乾燥機、スプレードライヤー等を使用した方法を例示することができる。また、焼成条件としては、特に限定されるものではなく、最適導電率となるように適宜設定すればよいが、特に高導電率を必要とする場合は、温度500〜3000℃、好ましくは600〜2800℃で、0.5〜6時間焼成することが好ましい。なお、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。
上記炭素繊維は、通常、3次元連続構造を有し、直径が30〜数百nm、好ましくは40〜500nmであり、長さが0.5〜100000μm、好ましくは1〜10000μmであり、表面抵抗が106〜10-2Ω、好ましくは104〜10-2Ωである。また、該炭素繊維は、残炭率が95〜30%、好ましくは90〜40%である。該炭素繊維は、カーボン全体が3次元に連続した構造を有するため、粒状カーボンよりも導電性が高い。
本発明の方法では、上記多孔質支持体上に炭素繊維を生成させた後に、該炭素繊維に1800℃以上で高温処理を施すことが好ましく、2100〜3000℃で高温処理を施すことが更に好ましい。高温処理を施した炭素繊維を、Pt等の金属の担体として使用した電極を備える固体高分子型燃料電池は、高温処理を施していない炭素繊維を用いた電極を備える固体高分子型燃料電池よりも、幅広い電流領域で電池電圧が高く且つ内部抵抗が小さく、良好な発電特性を示す。ここで、上記高温処理は、非酸化性雰囲気中で実施することが好ましく、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。
上記炭素繊維に担持する金属としては、貴金属が好ましく、Ptが特に好ましい。なお、本発明においては、Ptを単独で用いてもよいし、Ru等の他の金属との合金として用いてもよい。貴金属としてPtを用いることで、100℃以下の低温でも水素を高効率で酸化することができる。また、PtとRu等の合金を用いることで、COによるPtの被毒を防止して、触媒の活性低下を防止することができる。なお、炭素繊維上に担持される金属の粒径は、0.5〜20nmの範囲が好ましく、該金属の担持率は、炭素繊維1gに対して0.05〜5gの範囲が好ましい。
本発明の方法では、上記金属の炭素繊維上への担持を、電流をパルス状に印加した電気メッキ法により行う。ここで、電流の印加条件は、下記式(I):
デューティ比=t1/(t1+t2)×100 ・・・ (I)
[式中、t1は電流の印加時間(秒)を表し、t2は休止時間(秒)を表す]で表されるデューティ比を2〜20%とすることを要する。パルス電流におけるデューティ比が2%未満では、所定の通電電荷量を満たすための総時間がかかり実用上好適でなく、また、白金表面積向上効果もみられず、一方、デューティ比が20%を超えると、電流をパルス状に印加する効果が小さく、担持された金属の表面積を十分に向上させることができない。
また、本発明の方法では、前記電気メッキにおける休止時間(t2)を0.05〜0.5秒とすることが好ましい。休止時間(t2)が0.05秒未満では、電流をパルス状に印加する効果が小さく、担持された金属の表面積を十分に向上させることができず、一方、休止時間(t2)が0.5秒を超えると、所定の通電電荷量を満たすための総時間がかかり実用上好適でなく、また、白金表面積向上効果もみられない。
なお、上記電気メッキにおいて、電流密度は10〜500mA/cm2の範囲が好ましく、通電電荷量は0.1〜5Cの範囲が好ましい。また、印加時間(t1)は、デューティ比を2〜20%としつつ、休止時間(t2)が0.05〜0.5秒の範囲になるように選択することが好ましい。更に、パルスメッキにおけるパルス数(サイクル数)は、上記した好適な通電電荷量の範囲になるように適宜選択することが好ましい。
上記炭素繊維及び金属からなる触媒層には、高分子電解質を含浸させてもよく、該高分子電解質としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸等のイオン交換基を有するポリマーを挙げることができ、該ポリマーはフッ素を含んでも、含まなくてもよい。該イオン伝導性のポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー等が挙げられる。該高分子電解質の含浸量は、触媒層100質量部に対して高分子電解質10〜500質量部の範囲が好ましい。なお、触媒層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1〜100μmの範囲が好ましい。また、触媒層の金属担持量は、前記担持率と触媒層の厚さにより定まり、好ましくは0.001〜0.8mg/cm2の範囲である。
次に、本発明の固体高分子型燃料電池用電極を用いた固体高分子型燃料電池を図1を参照しながら説明する。図示例の固体高分子型燃料電池は、膜電極接合体(MEA)1とその両側に位置するセパレータ2とを備える。膜電極接合体(MEA)1は、固体高分子電解質膜3とその両側に位置する燃料極4A及び空気極4Bとからなる。燃料極4Aでは、2H2→4H++4e-で表される反応が起こり、発生したH+は固体高分子電解質膜3を経て空気極4Bに至り、また、発生したe-は外部に取り出されて電流となる。一方、空気極4Bでは、O2+4H++4e-→2H2Oで表される反応が起こり、水が発生する。燃料極4A及び空気極4Bは、触媒層(金属担持炭素繊維)5及び多孔質支持体(ガス拡散層)6からなり、触媒層5が固体高分子電解質膜3に接触するように配置されている。ここで、触媒層5は、炭素繊維に金属を担持してなり、担持された金属の表面積が非常に広いため、固体高分子電解質膜3と触媒層5とガスとの三相界面での電気化学反応の反応場が非常に大きく、その結果、固体高分子型燃料電池の発電効率が大幅に改善される。なお、固体高分子電解質膜3としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、上記触媒層に含浸させることが可能な高分子電解質として例示したものを用いることができる。また、セパレータ2としては、表面に燃料、空気及び生成した水等の流路(図示せず)が形成された通常のセパレータを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
アニリン 0.5mol/Lと硫酸 1.0mol/Lとを含む水溶液中に、作用極としてカーボンペーパー[東レ製, 厚さ150μm]を設置し、対極としてパンチングメタル[SUS316製, 厚さ0.3mm]を設置し、室温にて15mA/cm2の定電流で4分間電解酸化重合を行い(通電量3.6C)、作用極上にポリアニリンを電析させた。得られたポリアニリンを純水で十分に洗浄した後、風乾し、更に100℃のオーブンで水分を乾燥除去した。生成したポリアニリンの質量は、0.82g/cm2であった。次に、得られたポリアニリンをカーボンペーパーごと電気炉に入れ、Ar減圧雰囲気下で900℃まで7℃/分の速度で昇温した後、該温度で1時間保持して焼成処理を行った。その後、電気炉の電源を切り、室温まで自然冷却した。冷却後、得られた焼成物を取り出したところ、カーボンペーパー上に黒色物質(ポリアニリンの炭化物)の存在が確認された。生成した黒色物質の質量は、0.44g/cm2であった。また、SEMで観察したところ、三次元連続状の炭素繊維がカーボンペーパー上に生成していることが確認された。
次に、塩化白金酸 10gを純水 1Lに溶解させた水溶液中に上記炭素繊維を表面に有するカーボンペーパーを作用極として設置し、対極として白金メッキされたチタンを使用し、室温にて下記の条件で電流をパルス状に印加して電気メッキを行い、炭素繊維上に白金を析出させた。
<電気メッキ条件>
・電流密度:50mA/cm2
・印加時間:0.02秒
・休止時間:0.2秒
・サイクル数:2100回
・通電電荷量:2.1C
通電終了後、純水で洗浄し、100℃のオーブンで乾燥した。乾燥後の白金担持炭素繊維付きカーボンペーパーの質量を測定し、白金析出量を計算したところ、0.51mg/cm2であった。
次に、上記のようにして得た白金担持炭素繊維付きカーボンペーパーを50mm角の大きさに打ち抜き、ナフィオン(登録商標)溶液を塗布後、100℃のオーブンで乾燥した。乾燥後の質量測定から、ナフィオン塗布量は0.8mg/cm2であった。得られたナフィオン塗布白金担持炭素繊維/カーボンペーパーと、同様にして別途作製した白金量が0.2mg/cm2のナフィオン塗布白金担持炭素繊維/カーボンペーパーとで、ナフィオン膜[ナフィオン112, 厚さ50μm]を挟み込み、145℃の熱プレスで圧着し、膜電極接合体(MEA)を得た。該膜電極接合体をエレクトロケミカル社製の試験セル(EFC25−01SP)に組み込み、燃料電池を作製し、得られた燃料電池の発電特性を、セル温度80℃、燃料ガス(純水素)流量0.3L/分、燃料ガス加湿温度80℃、酸化ガス(純酸素)流量0.3L/分、酸化ガス加湿温度75℃の条件で測定した。なお、電池の発電特性の測定では、0.1A/秒の速さで0.5Vまで電流を増加させ、0.5Vに達したところで、同じ速さで電流を0Aになるまで低下させるサイクルを複数回繰り返した。その結果、30サイクル目の電流/電位曲線において、0.2A/cm2での電位が0.82Vであり、0.4A/cm2での電位が0.77Vであった。
(比較例1)
電気メッキの条件を下記のように変更する以外は、実施例1と同様にして白金担持炭素繊維/カーボンペーパーを作製し、同様にして、燃料電池を作製し、発電特性を測定した。その結果、30サイクル目の電流/電位曲線において、0.2A/cm2での電位が0.79Vであり、0.4A/cm2での電位が0.73Vであった。
<電気メッキ条件(定電流)>
・電流密度:10mA/cm2
・印加時間:3分30秒
・通電電荷量:2.1C
(実施例2並びに比較例2及び3)
表1に示す条件で電気メッキを行う以外は、実施例1と同様にして白金担持炭素繊維/カーボンペーパーを作製し、同様にして、燃料電池を作製し、発電特性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007173207
表1から明らかなように、本発明に従う実施例の電極を備えた燃料電池は、各電流密度における電位が高く、即ち、内部抵抗が小さく、発電効率に優れていた。
(実施例3)
アニリン 0.5mol/Lと硫酸 1.0mol/Lとを含む水溶液中に、作用極としてカーボンペーパー[東レ製GTP−60]を設置し、対極としてSUS316製のパンチングメタルを設置し、20mA/cm2の定電流で4C/cm2通電して、カーボンペーパー上にポリアニリンを電析させた。カーボンペーパーごとNaOH水溶液(0.5mol/L)で洗浄し、余分な硫酸アニオンを取り除いた後、充分に水洗、乾燥し、カーボンペーパーと一体化したポリアニリンを得た。次に、得られたポリアニリンをカーボンペーパーごとアルゴン雰囲気の電気焼成炉に入れ、1200℃まで2時間かけて昇温し、該温度で1時間保持した後、室温まで自然冷却後、電気焼成炉から取り出して、カーボンペーパーと一体化した三次元連続状の炭素繊維を得た。次に、該炭素繊維をカーボンペーパーごと電気焼成炉に入れ、アルゴン雰囲気下、2300℃まで2時間かけて昇温し、該温度で1時間保持した後、自然冷却により室温付近まで後、電気焼成炉から取り出して、高温処理三次元連続状炭素繊維を得た。
次に、六塩化白金酸 10gを純水 1Lに溶解させた水溶液中に上記高温処理三次元連続状炭素繊維を表面に有するカーボンペーパーを作用極として設置し、対極として不溶性電極を使用し、室温にて下記の条件で電流をパルス状に印加して電気メッキを行い、炭素繊維上に白金を析出させた。
<電気メッキ条件>
・電流密度:100mA/cm2
・印加時間:0.005秒
・休止時間:0.1秒
・通電電荷量:1.2C/cm2
次に、上記のようにして得た白金担持高温処理三次元連続状炭素繊維付きカーボンペーパーの炭素繊維側に10%のナフィオン(登録商標)溶液を塗布した。次に、ナフィオンを塗布された白金担持炭素繊維/カーボンペーパー2枚で、ナフィオン膜[ナフィオン112]を挟み、電熱プレスにて140℃で圧着し、膜電極接合体(MEA)を得た。該膜電極接合体を用い、エレクトロケミカル社製の試験セル(EFC25−01SP)に組み込み、燃料電池を作製し、得られた燃料電池の発電特性を、電極面積25cm2、セル温度80℃、燃料ガス(純水素)流量0.3L/分、燃料ガス加湿温度80℃、酸化ガス(純酸素)流量0.3L/分、酸化ガス加湿温度75℃の条件で測定した。なお、電池の発電特性の測定では、0.1A/秒の速さで0.5Vまで電流を増加させ、0.5Vに達したところで、同じ速さで電流を0Aになるまで低下させるサイクルを複数回繰り返した。その結果、30サイクル目の電流/電位曲線において、0.2A/cm2での電位が0.83Vであり、0.4A/cm2での電位が0.75Vであり、1.0A/cm2での電位が0.72Vであり、1.0A/cm2での抵抗が2.7mΩであった。
(実施例4)
2300℃で高温処理を施さない以外は、実施例3と同様にして、膜電極接合体(MEA)を作製し、燃料電池発電特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2007173207
表2から明らかなように、2300℃で高温処理を施した三次元連続状炭素繊維を白金担持体に用いた燃料電池は、高温処理を施していない三次元連続状炭素繊維を白金担持体に用いた燃料電池よりも、幅広い電流領域で電池電圧が高く、且つ内部抵抗が小さく、良好な発電特性を示すことが分かる。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極を用いた固体高分子型燃料電池の一例の断面図である。
符号の説明
1 膜電極接合体(MEA)
2 セパレータ
3 固体高分子電解質膜
4A 燃料極
4B 空気極
5 触媒層(金属担持炭素繊維)
6 多孔質支持体(ガス拡散層)

Claims (12)

  1. 芳香環を有する化合物を多孔質支持体上で酸化重合して多孔質支持体上にフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成して多孔質支持体上に炭素繊維を生成させ、該炭素繊維に電気メッキで金属を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極の製造方法であって、
    前記電気メッキにおいて、電流をパルス状に印加し、下記式(I):
    デューティ比=t1/(t1+t2)×100 ・・・ (I)
    [式中、t1は電流の印加時間(秒)を表し、t2は休止時間(秒)を表す]で表されるデューティ比を2〜20%とすることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  2. 前記電気メッキにおける休止時間(t2)が0.05〜0.5秒であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  3. 前記多孔質支持体上に炭素繊維を生成させた後に、該炭素繊維に1800℃以上で高温処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  4. 前記多孔質支持体がカーボンペーパーであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  5. 前記金属が少なくともPtを含むことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  6. 前記酸化重合が電解酸化重合であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  7. 前記芳香環を有する化合物がベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  8. 前記芳香環を有する化合物が、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  9. 前記焼成を非酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  10. 前記高温処理を非酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で製造された固体高分子型燃料電池用電極。
  12. 請求項11に記載の固体高分子型燃料電池用電極を備えた固体高分子型燃料電池。
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