JP2007169739A - 深絞り用高強度冷延鋼板、深絞り用高強度溶融めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷延鋼板を、質量%で、C:0.0005〜0.040%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.005〜0.05%、Ti:0.01〜0.060%、Nb:0.01〜0.05%、Al:0.10〜0.90%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0010〜0.0070%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成とし、更に、引張り強さTS(MPa)の絶対値が、P含有量(%)の絶対値の1×104倍以上になるようにする。
【選択図】なし
Description
Cは、本発明において極めて重要な元素である。具体的には、Cは、Nb及びTiと結合して炭化物を形成し、高強度化を達成するために極めて有効な元素である。しかしながら、C含有量が0.0040%を超えると、加工性が低下すると共に、溶接継手効率が低下する。一方、本発明の冷延鋼板においては、C含有量が低くても、他の強化方法で補うことができるため、C含有量の下限値は特に規定する必要はないが、C含有量を0.0005%未満に低減すると、製鋼時の脱炭コストが上昇する。よって、C含有量は0.0005〜0.0040%とする。また、極めて高い加工性が要求される場合には、C含有量を0.0030%以下とすることが好ましい。
Siは、固溶強化元素として一般に知られている元素である。しかしながら、Si含有量が多くなると、具体的には、Si含有量が0.30%を超えると、溶融めっき性が損なわれる。一方、Siの含有量が少なくなると、具体的には、Si含有量が0.05%未満になると、鋼板の強度が低下する。よって、Si含有量は0.05〜0.30%とする。また、良好な溶融めっき性を得るためには、Si含有量を0.05〜0.20%とすることが好ましい。
Mnは、Siと同様に固溶強化により素材強度を上昇させる元素であり、本発明の冷延鋼板を高強度化するために重要な元素の1つである。Mnには、組織を微細化して高強度化する機構と、固溶強化による高強度化機構とがあるが、Mn含有量が1.2%未満の場合、その添加効果が得られない。一方、Mnの含有量が3.0%を超えると、深絞り性の指標であるr値の面内異方性が大きくなり、プレス成形性が損なわれる。よって、Mn含有量は1.2〜3.0%とする。なお、Mn含有量の好ましい範囲は1.4〜2.0%であり、これにより、鋼板の強度及び成形性をより高めることができる。
Pは、添加しても加工性の劣化が少なく、固溶強化で高強度化に有効な元素である。しかしながら、Pは、粒界に偏析して耐二次加工脆性を劣化させると共に、溶接部に凝固偏析を生じ、溶接継手効率を低下させる元素でもある。具体的には、P含有量が0.05%を超えると、粒界への偏析が生じる。一方、P含有量の下限値は特に規定する必要はないが、P含有量を0.005%未満にすると、精錬コストが高くなる。よって、P含有量は0.005〜0.05%とする。なお、より優れた耐二次加工性及びシーム溶接性を得るためには、P含有量を0.03%以下にすることが好ましい。
Tiは、N及びCとの親和力が強く、凝固時に炭窒化物を形成し、鋼中に固溶しているN及びCを低減して、加工性を高める効果がある。しかしながら、Ti含有量が0.01%未満では、この効果が得られない。一方、Tiの含有量が多くなると、具体的には、Ti含有量が0.060%を超えると、溶接継手の溶接部の強度及び靭性、即ち、溶接継手効率が劣化する。よって、Ti含有量は0.01〜0.060%とする。
Nbは、Tiと同様に炭窒化物を形成し、鋼中に固溶しているN及びCを低減して、加工性を高める効果がある。しかしながら、Nb含有量が0.01%未満の場合、この効果が得られない。一方、Nb含有量が多くなると、具体的には、Nb含有量が0.050%を超えると、再結晶温度が高くなり、高温焼鈍が必要になるため、r値の面内異方性が大きくなると共に、溶接後のピール強度が低下する。よって、Nb含有量は0.01〜0.050%とする。また、Nb含有量の好ましい範囲は、0.015〜0.0030%であり、この範囲にすることにより、優れた加工性及び溶接性が得られる。
Alは、鋼を溶製する際に、脱酸材として使用される元素である。本願発明者は、このAlの含有量を、通常の脱酸に必要な量以上の0.10%以上にすることにより、シーム溶接における溶接継手効率が良好となり、特に、低温における継手強度が向上することを知見した。以下、この事実を知見した実験内容について説明する。
Bは、粒界に偏析することにより、粒界強度を高め、耐二次加工脆性を良好にする元素である。しかしながら、B含有量が0.0005%未満の場合、その効果が得られない。一方、B含有量が多くなると、具体的には、B含有量が0.0050%を超えると、その添加効果が飽和するだけでなく、再結晶温度が高くなり、高温での焼鈍が必要となるため、製造コストの上昇を招くと共に、加工性が劣化する。よって、B含有量は0.0005〜0.0050%とする。なお、B含有量の好ましい範囲は、0.0010〜0.0035%である。
Nは鋼の精錬時に不可避的に混入する元素である。また、Nは、Ti、Al及びNbの窒化物を形成し、加工性には悪影響を及ぼさないが、溶接性を劣化させる元素である。このため、N含有量は0.0080%以下に規制する必要がある。一方、N含有量を0.0010%未満に低減するには、製造コストが高くなる。よって、N含有量は0.0010〜0.0080%とする。
前述したように、Pは添加による加工性の劣化が少なく、固溶強化による高強度化に有効な元素である。このため、従来は高強度を得るために、Pを多量に添加する傾向があったが、本願発明者は、強度に対して特定量以上にPを添加すると、具体的には、引張り強さTS(MPa)の絶対値|TS|が、P含有量(%)の絶対値|P|の1×104倍未満になると、耐二次加工脆性及び溶接継手効率が急激に劣化することを知見した。そこで、本発明においては、引張り強さTS(MPa)の絶対値|TS|が、P含有量(%)の絶対値|P|の1×104倍以上になるようにする。一般に、鋼材の引張り強さは、主に鋼成分に依存し、製造条件は副次的に影響する。そこで、鋼成分設計に際しては、P含有量を極力少なくすると共に、溶接性、加工性、耐二次加工脆性、めっき性に悪影響を及ぼさない範囲でSi及びMnの含有量を多くする必要がある。また、製造する際は、強度の低下を防止するため、熱間圧延時の巻取り温度を高温にしないようにすると共に、850℃を超える高温での焼鈍を行わないようにすることが好ましい。
本願発明者は、上記数式(2)により規定されるT*の値が大きくなると、溶接継手効率が劣化することを見出した。このT*の値が0.04%以上の場合、特に、低温における継手効率の劣化が顕著となり、脆性破壊破面が生じる温度が高温になって、溶接部の靭性が劣化する。以上の理由から、本発明においては、T*の値を0.04%未満とする。
Niは、Mnと同様に高強度化に有効な元素である。しかしながら、Ni含有量が0.01%未満の場合、その効果が得られない。一方、Ni含有量が1.0%を超えると、製造コストの上昇を招く。このため、強度調整のためにNiを添加する場合は、その含有量が0.01〜1.0%になるようにする。
Crは、加工性を劣化させることなく、高強度化を実現するために有効な元素である。しかしながら、Cr含有量が0.01%未満では、その効果が得られない。一方、Crの含有量が1.0%を超えると、製造コストの上昇を招くと共に、めっき性が阻害される。よって、強度調整のためにCrを添加する場合は、その含有量が0.01〜1.0%になるようにする。
Moは、固溶体強化で鋼板の強度を高める元素である。しかしながら、Mo含有量が0.01%未満の場合、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、製造コストの上昇を招く。よって、強度調整のためにMoを添加する場合は、その含有量が0.01〜1.0%になるようにする。
2 溶接部
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.0005〜0.0040%、
Si:0.05〜0.30%、
Mn:1.2〜3.0%、
P:0.005〜0.05%、
Ti:0.01〜0.060%、
Nb:0.01〜0.050%、
Al:0.10〜0.90%、
B:0.0005〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0070%を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、P含有量(%)の絶対値の1×104倍以上であり、
且つTi含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満であることを特徴とする深絞り用高強度冷延鋼板。
- 質量%で、
C:0.0005〜0.0040%、
Si:0.05〜0.30%、
Mn:1.2〜3.0%、
P:0.005〜0.05%、
Ti:0.01〜0.060%、
Nb:0.01〜0.050%、
Al:0.10〜0.90%、
B:0.0005〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0070%を含有すると共に、
Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、P含有量(%)の絶対値の1×104倍以上であり、
且つTi含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満であることを特徴とする深絞り用高強度冷延鋼板。
- 冷延鋼板と、
前記冷延鋼板の表面に形成された溶融めっき層とを有し、
前記冷延鋼板は、質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.005〜0.05%、Ti:0.01〜0.060%、Nb:0.01〜0.050%、Al:0.10〜0.90%、B:0.0005〜0.0050%及びN:0.0010〜0.0070%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成を有し、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値の1×104倍以上であることを特徴とする深絞り用高強度溶融めっき鋼板。
- 冷延鋼板と、
前記冷延鋼板の表面に形成された溶融めっき層とを有し、
前記冷延鋼板は、質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.005〜0.05%、Ti:0.01〜0.060%、Nb:0.01〜0.050%、Al:0.10〜0.90%、B:0.0005〜0.0050%及びN:0.0010〜0.0070%を含有すると共に、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成を有し、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、前記冷延鋼板のP含有量(%)の絶対値の1×104倍以上であることを特徴とする深絞り用高強度溶融めっき鋼板。
- 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.005〜0.05%、Ti:0.01〜0.060%、Nb:0.01〜0.050%、Al:0.10〜0.90%、B:0.0005〜0.0050%及びN:0.0010〜0.0070%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを、仕上げ温度がAr3温度以上、巻取り温度が750℃以下の条件で、熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の冷延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延コイルとする工程と、
前記冷延コイルを再結晶温度以上の温度で焼鈍すると共に、その冷延過程において前記冷延コイルの表面に溶融めっきを施す工程とを有し、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、P含有量(%)の絶対値の1×104倍以上である溶融めっき鋼板を製造することを特徴とする深絞り用高強度溶融めっき鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.005〜0.05%、Ti:0.01〜0.060%、Nb:0.01〜0.050%、Al:0.10〜0.90%、B:0.0005〜0.0050%及びN:0.0010〜0.0070%を含有すると共に、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%及びMo:0.01〜1.0%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti含有量(%)を[Ti]、N含有量(%)を[N]、P含有量(%)を[P]としたとき、下記数式(A)により表されるT*が0.04%未満である組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを、仕上げ温度がAr3温度以上、巻取り温度が750℃以下の条件で、熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを50%以上の冷延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延コイルとする工程と、
前記冷延コイルを再結晶温度以上の温度で焼鈍すると共に、その冷延過程において前記冷延コイルの表面に溶融めっきを施す工程とを有し、
引張り強さTS(MPa)の絶対値が、P含有量(%)の絶対値の1×104倍以上である溶融めっき鋼板を製造することを特徴とする深絞り用高強度溶融めっき鋼板の製造方法。
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