JP2007163361A - 近接場分光解析のための標準試料およびこの標準試料を用いた空間分解能評価方法 - Google Patents

近接場分光解析のための標準試料およびこの標準試料を用いた空間分解能評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】近接場分光解析における空間分解能評価に適した標準試料を得る。
【解決手段】近接場分光解析における空間分解能評価のための標準試料(10)は、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層(11)と、下地金属層(11)上に形成された厚さが10μm以下の樹脂層(12)と、樹脂層(12)との境界(14)が明確になるように樹脂層表面を部分的に被覆する金属層(13)とを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、近接場分光解析における空間分解能評価に適した標準試料およびこの標準試料を用いた空間分解能評価方法に関する。
近接場光(エバネッセント光)を利用した分光解析手法は、試料の、例えば数百ナノメートル程度の極微小領域に対して分光解析(赤外、ラマンおよび蛍光)を行うことができ、表面ナノ化学構造解析に対して有効な手段を提供するものとして、その将来が期待されている。しかしながら現状では、近接場光を実材料解析に適用するために必要な基本特性が把握されていないため、実用化に向けて手探りの状態である。
例えば、近接場分光装置で得られた解析データについて、空間分解能の評価は極めて重要である。ところが、未だ、近接場分光解析における空間分解能評価手法が確立されておらず、各解析者が思い思いの方法で試行錯誤を繰り返している状態である。また、空間分解能の評価のためには標準試料が必要であるが、そのためにはどのような構造を有する標準試料が適切であるかについて確立されたコンセプトが必要である。ところがこのようなコンセプトについても、確立したものがない。
したがって、近接場分光解析における空間分解能評価に適した標準試料の開発、およびその標準試料を用いた空間分解能評価の確立された手法の開発が待たれている。
本件出願の先行技術として、特許文献1は、走査型プローブ顕微鏡などの器具を用いて半導体ウエハの表面粗さ、テクスチャおよびヘイズを決定するための校正基準を作成する方法を開示している。特許文献2は、多探針を有する走査型プローブ顕微鏡において複数の探針間の相対位置の補正に使用する校正テンプレートを開示している。特許文献3は、X線光電子分光分析装置の光軸調整用の標準試料を開示し、この試料は、X線照射によって光電子像とともに蛍光を発することによって、光軸調整用のガイドを提供する。
また、特許文献4は、走査型プローブ顕微鏡によって半導体試料表面の解析を行う方法を開示し、特許文献5は光導波路を用いた顕微鏡によって生体内を高精度で観測する技術を開示している。しかしながら、これら何れの特許文献に開示された技術も、光学顕微鏡測定に試用される標準試料に対して一般的な技術的背景を示すのみで、近接場分光解析にあたって効果的な解決手段を提供するものではない。
特開平9−152324号 特開2004−132745号 特開2000−304713号 特開2001−237290号 特表2003−517638号
したがって、本発明は、近接場分光解析における空間分解能の評価に適した標準試料を提供し、かつその標準試料を用いた空間分解能の評価方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の標準試料は、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成された厚さが10μm以下の樹脂層と、前記樹脂層との境界が明確になるように前記樹脂層表面を部分的に被覆する金属層とを有する。
上記構成の標準試料では、樹脂層の一部が金属層によって被覆されていて樹脂層と金属層との境界が明瞭である。したがって、この標準試料を用いて近接場分光測定を行うと、金属層下の樹脂層の情報は遮断され、一方、露出した樹脂層部分からの情報は顕著に得られる。その結果、近接場分光解析を行った場合、標準試料の樹脂層の露出部分と被覆部分とで得られる情報に大きな変化が生じ、その部分に境界が存在することが認識可能である。したがって、その部分の大きさを求めることによって、近接場分光解析における空間分解能を評価することができる。なお、樹脂層の厚さを10μm以下とすることによって、樹脂層を透過した光が下地金属層表面で反射して樹脂層外に出射し検出されるようになるため、近接場光の検出感度が向上し、より高い空間分解能を得ることができる。
上記第1の標準試料において、前記樹脂層は、C−H、C=O、Si−O、C−F官能基のうち少なくとも1個の官能基を含む。
これらの官能基の近接場分光スペクトルにおけるピーク強度を標準試料の測定領域上にマッピングすることにより、その官能基の試料上での分布可視化画像を得ることができる。この可視化画像上に現れた樹脂層と金属層との境界を横断する方向で強度分布を検出し、強度が大きく変化する部分の試料上での距離を検出することにより、水平方向の空間分解能を評価することができる。
上記第1の標準試料において、前記金属層は厚さが3μm以下である。
この構造によって、近接場光測定に用いるプローブを標準試料表面上で走査させる場合、プローブが金属層と樹脂層間に形成される段差に充分に追従することができるので、精度の高い測定データを得ることができる。
上記標準試料において、前記金属層は、前記樹脂層との境界部分に傾斜を有している。
この構造によって、近接場光測定に用いるプローブが金属層と樹脂層間に形成される段差に充分に追従することができるようになる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の標準試料は、上記第1の標準試料において、前記金属層を格子金属メッシュで構成している。
この構成によって、標準試料上の何れの場所にプローブをアプローチしても、測定に適した位置、即ち金属層と樹脂層との境界を検出する確率が高くなり、測定位置の探索に要する労力が削減される。
上記第2の標準試料において、前記下地金属層はその上面部分に前記格子金属メッシュの格子間隔と同程度の径を有する半球状の複数の孔を有し、前記孔は光透過性の材料で充填されている。
上記構成によって、半球状の孔がレンズ効果を生じ、樹脂層に入射した光を入射方向に反射するため、近接場光の検出光量が増加し、検出感度が向上する。
上記課題を解決するために、本発明の第3の標準試料は、上記第2の標準試料において、前記格子金属メッシュを、樹脂層表面に平行な方向において相対的にスライド可能な第1、第2の格子金属メッシュで構成する。
この構造では、第1、第2の格子金属メッシュを相互にスライドさせることにより、格子間の面積、即ち樹脂層の測定領域を可変とすることができる。したがって、測定領域のサイズを種々に変化させて近接場分光解析を行うことにより、測定領域サイズの識別下限を評価することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第4の標準試料は、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成した厚さが10μm以下の格子金属メッシュと、前記格子金属メッシュの格子で囲まれた部分に充填される樹脂層とを有し、前記格子金属メッシュ表面と前記樹脂層表面とが同一平面を形成するように平坦化されている。また、この標準試料において、前記樹脂層中には金属の微粒子が分散されていてもよい。
上記構造の標準試料では、樹脂層が格子金属メッシュの格子内に充填されているので、樹脂層と金属層との境界が明確であり、さらに格子壁面が存在しないためこれによる乱反射が防止されて検出感度が向上する。たま、標準試料表面に段差が存在せず平坦であるので、プローブによる走査安定度が極めてよい。
上記課題を解決するために、本発明の第5の標準試料は、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層の表面部分に形成された複数の半球状の孔と、前記半球状の孔に分散して収容される複数の微粒子とを有する。また、この標準試料において、前記孔の表面および前記微粒子表面には親水基が付着されていてもよい。
上記構成によれば、標準試料表面に形成された孔に微粒子が捉えられるため、試料表面上に微粒子を最適分散させることができる。また、孔の表面と微粒子表面にそれぞれ親水基を付与することにより、両親水基間で親和力が働くため微粒子をより安定的に固定することができる。この試料を用いて近接場分光解析を行うことによって、どの程度のサイズの微粒子まで識別可能かを知ること、即ち、微粒子サイズの識別下限を評価することが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の第6の標準試料は、上記第1の標準試料において、前記樹脂層を、少なくとも、第1の官能基を含む第1の樹脂層と、前記第1の官能基とは異なる第2の官能基を含む第2の樹脂層とを積層した構造とする。
上記構造の標準試料を用いて近接場分光解析を行う場合、第1の官能基および第2の官能基について分布のマッピングを行い、どの官能基が識別可能かを検出することにより、その官能基を含む樹脂層の深さまで解析が可能であることを知ることができる。即ち、この標準試料によって、試料の垂直方向の空間分解能を評価することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第1の空間分解能の評価方法は、上記第1乃至第4のいずれかの標準試料を用意するステップと、前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行うステップと、前記測定結果を解析してあらかじめ決定した官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、前記求めた強度分布において強度値が大幅に変化する部分を検出し、該検出部分の幅に基づいて近接場分光解析における水平方向の空間分解能を評価するステップと、を備える。
上記強度分布では、標準試料の金属層と樹脂層との境界部分で大きな強度変化が生じる。したがって、その変化部分の幅を検出することにより、境界部分をどの程度の精度で識別可能かを評価することができる。これによって、近接場分光解析における水平方向の空間分解能の評価が可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の空間分解能の評価方法は、上記第3の標準試料を用意するステップと、前記標準試料における第1、第2の格子金属メッシュを相対的にスライドさせて前記格子面積を変化させながら近接場分光測定を行うステップと、前記測定結果を解析してあらかじめ決定した官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、前記求めた強度分布に基づいて前記格子によって画定された樹脂領域の識別可能下限を求めるステップと、を備える。
上記方法では、近接場分光測定を異なる面積の樹脂領域に対して実施することができる。したがって、求めた強度分布からその面積の樹脂領域が識別可能か否かを判定することにより、樹脂領域サイズの識別下限を評価することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第3の方法は、上記第5の標準試料を用意するステップと、前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行うステップと、前記測定結果を解析してあらかじめ決定した官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、前記求めた強度分布に基づいて前記標準試料に含まれる微粒子の識別可能なサイズの下限値を決定するステップとを備える。
上記方法では、異なるサイズの微粒子を含む標準試料に対して行った近接場分光測定結果を解析し、どの程度のサイズの微粒子まで検出可能か否かを判定することによって、近接場分光解析における微粒子サイズの識別下限を評価することが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の第4の方法は、上記第6の標準試料を用意するステップと、前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行うステップと、前記測定結果を解析して前記第1および第2の官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、前記求めた第1および第2の官能基の強度分布に基づいて、前記標準試料における多層膜の識別可能な下限値を決定するステップを備える。
上記方法において、いずれの官能基が識別可能であるかを検出することによって、その官能基を含む樹脂層の識別可能性を評価することができる。即ち、多層に構成された樹脂層のどの層まで識別可能かということ、即ち、樹脂層の深さ方向(垂直方向)の空間分解能の評価が可能となる。
以上のように、本発明の標準試料によって近接場分光解析における空間分解能の評価が可能となり、近接場分光解析を実材料に適用する上で効果が大きい。
図1は、近接場分光解析の適用原理を示す図である。図1の(a)は、試料1の表面から正反射する光を検出して分析する場合を示している。図において、2は先端が数百nm程度に微小なプローブであり、この先端部分に例えば赤外光などの光3を照射することによって近接場光4が発生する。近接場光4の試料表面から反射する光5を検出してスペクトル分析することにより、試料表面の微細部分の化学的な構造解析が可能である。この場合、プローブ2の先端径Dが、測定装置の理論的な空間分解能を決定する。
図(a)の場合は、試料1の表面からの正反射を検出して分光解析するものであるが、この場合の光の強度は弱く、実材料適用が難しい。したがって、図(b)に示すように、試料1の背面に金属層6を設け、試料1の内部に侵入した光を金属層6による反射によって回収することにより、反射光7において実際の解析に耐える光強度を得るようにしている。ところが、この場合の空間分解能D’は理論的な空間分解能Dと一致せず、理論値よりも低下しているものと考えられる。
したがって、実空間分解能の評価の必要性が存在し、そのためには標準試料が必要である。本発明では、以下に示すように、有機物/無機物境界が明瞭に露出する構造の標準試料を提案する。
実施形態1
図2は、本発明の実施形態1にかかる標準試料の構造を示す図である。この標準試料は、単一の樹脂−金属境界を有することを特徴とする。図2(a)は標準試料10の断面図、(b)はその平面図、(c)は標準試料10の変形例10’の断面図、(d)は変形例10’の製造方法を説明するための図である。図2において、11は、Fe、Alなどの反射率の高い金属を材料とする下地金属層である。下地金属層11は、ガラス基板上にAu、Pd、Pt、Al、Ag、Cr、Taなどの金属を蒸着したものでも良い。12は、厚さが10μm以下の薄い樹脂層であり、C−H、C=O、C−O、Si−O、C−Fなどの官能基を含んだ樹脂で構成される。特に、C=O基を含むものは高感度の試料となる。樹脂層12は、下地金属層11上に例えばスピンコートなどによって被覆される。
樹脂層12を10μm以下の厚さとすることによって、樹脂層に入射する近接場光は樹脂層2を透過して下地金属層11に達し、その表面によって反射されて試料より出射する。これによって、樹脂層表面の情報を含んだ近接場光を効率よく回収することができるため、検出感度が向上する。樹脂層12は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリジメチルシロキサン、テフロン(商標)、ポリエチレンを材料として構成される。
13は、樹脂層12を部分的に被覆する金属被覆層である。金属被覆層13は、被覆域の下からの樹脂情報を完全に排除するために設けられる。金属被覆層13の厚さは、0.1から3μmであり、樹脂層12上にAu、Pd、Pt、Al、Agなどの金属を蒸着することによって形成される。図2(b)に示すように、金属被覆層13は、試料10の表面の一部分を被覆することによって、単一の樹脂−金属境界14を明瞭に形成することが好ましい。
図2(c)に示すように、金属被覆層13と樹脂層12の境界部分14で、金属被覆層13に、θ=30〜60度のスロープ15を設けてもよい。これは、表面走査中に、近接場光生成用のプローブが層13の断面に引っかからないようにするためである。スロープ15は、図2(d)に示すように、樹脂層12上に金属被覆層を蒸着するためのマスク16の端部を、ひさし状に突出させることによって形成することができる。
上述したように、金属被覆層13の厚さt1は、0.1〜3μmが好ましい。厚さt1の下限値は、近接場光による樹脂層12の情報を金属被覆層13によって完全に遮断することができる厚さである。即ち、金属被覆層13によって近接場光が完全に遮断されて樹脂層に達しなければ良い。
以下に、種々の金属に対して、近接場光遮断に要する厚さt1を決定する方法について説明する。
図3のグラフは、金属膜で被覆されたポリカーボネートの近接場光によるIRスペクトル強度と金属膜の厚さとの関係を示す。グラフの縦軸は、C−H基による吸収ピーク(3000〜2800cm−1)の強度を任意単位で示し、横軸は、被覆金属膜の厚さをAlの値に正規化して示すものである。近接場IR測定は、下地金属としてAlを用い、プローブサイズは1000nmであった。この図から、金属膜の正規化された厚さがほぼ120nm以上のときC−H基吸収ピークの強度がほぼ0となることが理解される。ピーク強度が0であるということは、金属膜によって被覆されているポリカーボネート樹脂のIR情報が完全に遮断されていることを意味する。即ち、図2の標準試料10において、Alの金属被覆膜13は、その正規化された厚さが120nm以上(実用的には100nm以上)であれば樹脂層12のIR情報を遮断することができる。
正規化された厚さTは、
T=実際の厚さ(t1)×反射率(R) (1)
で示され、一方、反射率(R)は、
R=金属SB(シングルビーム)強度/Al基準SB強度 (2)
として算出することができる。したがって、金属被覆膜13としてAl以外の金属を用いる場合は、上記式(1)および(2)にしたがって実際の金属膜厚t1の最小値を決定することができる。なお、式(1)、(2)に示す関係は、近接場プローブの金属被覆膜厚さの決定に対しても適用することができる。
図4に、ポリカーボネートの樹脂層上に金属を異なる厚さで蒸着した試料の近接場分光測定の結果を示す。図4の(a)では、樹脂層上にPt/Pbを厚さ60nm蒸着している。この近接場分光スペクトル(IR吸収スペクトル)では、金属層の下の樹脂層における各種の官能基ピークが明瞭に現れており、したがって近接場光が金属被覆層をすり抜けて樹脂層に達し、樹脂層の情報をもたらしているものと思われる。そのため、金属層は充分な遮蔽効果を示していないものと考えられる。図4の(b)では、樹脂層上にAuを120nmの厚さに蒸着した場合の近接場分光スペクトルを示している。このスペクトルでは、樹脂層における官能基のピークは現れておらず、したがってAu層は充分に遮蔽効果をあらわしていることがわかる。なお、図4の(a)および(b)において、縦軸は吸光度を任意単位で示し、横軸は波数(cm−1)を示している。
一方、金属被覆膜13の厚さt1における上限値は、標準試料10の表面をプローブによって走査する場合の、プローブの段差追従性によって決定される。近接場光分装置は原子間力顕微鏡の機構を基にしており、標準試料10における境界14の部分の段差が大きくなるとプローブがその段差に追従して正確にデータを検出することが出来なくなる。本実施形態では、プローブが追従できる段差をほぼ3μmとして、金属被覆膜13の厚さt1を規定している。
図5は、プローブの段差追従性を説明するための図であり、原子間力顕微鏡における表面トポグラフ画像を示している。図5の(a)は、1.0μmの段差を有する試料、図(b)は1.6μmの段差を有する試料、図(c)は3.3μmの段差を有する試料の表面トポグラフ画像である。これらの画像では、試料の高低の形状が把握でき、したがってプローブはこれらの段差に充分追従しているものと考えられる(図においてGoodで示す)。
一方、図5の(d)は段差が6.2ミクロンの場合、(e)は段差が10.0μmの場合の試料表面のトポグラフ画像である。これらの画像からは試料の高低の形状が把握できず、したがってプローブはこれらの段差に追従していないものと考えられる(図において、No Goodで示す)。このようなトポグラフ画像の観察から、段差が3.0μm以内であれば、プローブは充分その段差に追従することができるものと理解され、本実施形態では、この段差を厚さt1の上限としている。
次に、樹脂層12の膜厚t2について考察する。
図6は、樹脂層12の厚さと、近接場赤外分光スペクトルの特定の吸光ピークにおけるS/N感度との関係を示す図である。具体的には、樹脂材料としてポリ4フッ化エチレン樹脂(テフロン、商標)を用い、その近接場赤外分光スペクトルにおけるC−F基ピークのS/N感度を樹脂層の厚さに対してプロットしたものである。使用した近接場分光装置のプローブ径は320nm、樹脂層裏面の基板は鏡面処理したAl基板である。
図6に示すように、C−F基ピークは、樹脂層の厚さが10μm以下の場合に高感度に検出できる。したがって、図2の樹脂層12の厚さは10μm以下が望ましいことが理解される。本来、近接場分光は試料厚さに関わりなくバルク材に対しても適用できるが、赤外線が透過可能な試料のほうが、下地層表面での赤外反射効率が高いため高感度の測定が行えるものと考えられる。
図7は、図2に示す標準試料について近接場赤外分光解析を行った結果を示す。標準試料としては、金属被覆層をAlで形成し、樹脂層をポリカーボネートで形成したものを使用した。図7の(a)は、標準試料上でのC−H基分布を可視化するために、近接場赤外分光スペクトルにおけるC−H基ピーク強度を試料上にマッピングしたものである。図に表れる境界Aの左側が樹脂層の部分であり、右側がAl金属部分である。図(a)において、樹脂層部分ではC−H基の分布密度が高く、境界Aを越えてAl金属部分に向かうほどC−H基の分布密度が低下する。
図(a)に示すように、C−H基の分布密度は、明らかに境界A付近で大きく変化し、境界Aの存在を明瞭に表している。図7(b)は、図(a)と同じ試料についての原子間力顕微鏡による表面トポグラフ画像である。この画像からも、樹脂部と金属部との間の境界Aの存在が識別される。
図7(c)は、図7(a)のC−H基分布可視化画像の解析ラインBに沿って、位置とC−H基ピークの吸光度との関係を示している。したがって、図の縦軸はC−H基の吸収ピーク強度(吸光度)を任意単位で示し、横軸に測定位置を示している。吸収ピーク強度が樹脂部分の値からその1/eとなる距離dを空間分解能として評価することができる。この測定例の空間分解能dは4.3μmである。このように、本実施形態の標準試料を用いると、樹脂部(有機材料)と金属部(無機材料)との境界を利用して、近接場分光解析における空間分解能の評価が可能となる。
図8は、図2に示す構造の標準試料を用いた場合の空間分解能の評価方法を説明するための図である。図(a)は標準試料を真上から見た場合の境界部分のC−H基ピーク強度の変化を示し、図(b)は境界の断面におけるC−H基ピーク強度変化を示す。境界から左側は樹脂層12を示し、右側は金属層13を示す。分解能dは、C−H基ピーク強度が樹脂部の値からその1/eとなる間の距離dで示される。図2の(c)に示す形状の標準試料の場合、境界部分の幅dからC−H基ピーク強度が樹脂部の値からその1/eとなる間の距離dを引いたものが、空間分解能となる。即ち、d=d−dである。
実施形態2
図9は本発明の実施形態2にかかる標準試料の構成を示す図である。本実施形態の標準試料は、金属−樹脂境界を試料上に複数個設けたことを特徴としている。図9(a)は試料20の平面図、図(b)は図(a)の線20A−20A上の断面図である。図において、21は下地金属層、22は樹脂層、23は格子金属メッシュを示す。格子金属メッシュ23は、図2に示した実施形態1の金属被覆層13に代わるものであって、したがってその肉厚は金属被覆層13と同様に0.1〜3μmの範囲内である。また、格子金属メッシュ23の格子間隔は、50〜1000nmである。
本実施形態では、図4(a)、(b)に示すように、樹脂層22上に格子金属メッシュ23を設けた構造であり、金属メッシュ23の複数の開口部から樹脂層22を露出させた構造を有する。下地金属層21、樹脂層22および金属被覆層に代わる格子金属メッシュ23の材料、厚さは実施形態1のものと同様である。このような構成により、本実施形態の標準試料では、試料面全体に、有機物と無機物との境界が明瞭に現れる複数の部分が一様に形成される。なお、近接場分光解析における空間分解能の評価方法は、実施形態1の同じであるのでその説明は省略する。
近接場光の観測には、測定ポイント探索のために、数μmサイズの領域にピンポイントでプローブをアプローチさせる必要が有り、この作業にはかなりの労力を伴う。ところが、本実施形態の標準試料20では、試料表面上に複数の測定ポイントが一様に形成されているため、試料表面の何処にアプローチしても測定ポイントにプローブを近づけることが可能であり、測定ポイント探索の労力が大幅に削減される。
図10および図11に、実施形態2の標準試料を用いて行った測定結果および空間分解能の評価結果を示す。図10(a)は、実施形態2の構造を有する標準試料20の光学顕微鏡観察像である。測定に用いた標準試料20の格子金属メッシュはCuで構成され、ポリカーボネート樹脂上に配置されている。図に可視化領域として示された部分について近接場分光スペクトルを得て、C=O基ピーク強度のマッピングを行った。図(b)がマッピング結果、即ちC=O基分布可視化画像を示す図である。さらに、同じ部分について原子間力顕微鏡により標準試料表面のトポグラフ像を撮影した。図(c)に試料表面のトポグラフ画像を示す。なお、図(b)および(c)において、縦軸はY軸方向の距離を、横軸はX方向の距離をそれぞれμmを単位として表している。
図10の(c)に示す表面トポグラフ画像では、樹脂部とCu部(格子金属メッシュの一部)との境界Aが明瞭に現れている。さらに図(b)のC=O分布可視化像においても、図(c)と同様の位置に樹脂部とCu部との境界Aが現れており、近接場分光解析が高感度で行われていることを示している。
図11は、図10に示した測定において、空間分解能の評価のために、図10の解析ラインBに沿ってC=O吸収ピークの強度を示したグラフである。図の縦軸は吸光度を任意単位で示し、横軸は解析ラインB上の位置を示している。なお、横軸の始点0は、分解能の評価のために仮に設定した値である。
図11の測定結果に対して、図8の(a)および(b)に示した空間分解の評価方法を適用することにより、吸光度のピーク強度が樹脂層域の吸光度のピーク強度の1/eとなる間の距離5.4μmが、本測定における空間分解能であると評価することができる。
実施形態3
図12は、本発明の実施形態3にかかる標準試料30の構成を示す図である。本実施形態の標準試料は、実施形態2の標準試料の高感度化を狙ったものである。図の(a)は標準試料30の断面構造を示し、図(b)はその効果を説明するための図である。図(a)および(b)において、31は、表面部分に複数の半球形孔34を有する下地金属層、32は樹脂層、33は格子金属メッシュである。球形孔34は、下地金属となる金属プレートに、フェムト秒レーザー加工などによって50〜1000nmφの孔が複数個設けられている。孔34内には、KBr、KCl、NaCl、CaFなどの光透過結晶材料35が充填されている。図示はしていないが、充填材料35内に金属の微粒子を混入させても良い。格子金属メッシュ33は、下地金属層31の球形孔34とほぼ同じサイズの開口36を有している。
本実施形態において、下地金属層31、樹脂層32および格子金属メッシュ33の材料およびその構造(層厚を含む)は、実施形態1および2に示したものと同じかあるいは類似である。しかしながら、格子金属メッシュの開口部分36を介して樹脂層32に入射しこれを透過した光は、図(b)に示すように、球形孔34によって生じるレンズ効果により入射方向に反射集光される結果、近接場分光装置によって効率よく検出される。そのため、分解能の評価感度が向上する。なお、光透過性の充填材料35内に金属微粒子を混入させることによって、反射効率がさらに向上する。
なお、図12では、実施形態2の標準試料における下地金属層に半球形の孔を設けたものを示しているが、実施形態1の標準試料における下地金属層に設けても良く、あるいは後述する他の実施形態の下地金属層に適用しても良い。
実施形態4
図13は、本発明の実施形態4にかかる標準試料40の構成を示す図である。図(a)は標準試料40の断面図であって、41は下地金属層、42は樹脂層、43は樹脂層42上に設けた第1の格子金属メッシュ、44は第1の格子金属メッシュ43上に設けた第2の格子金属メッシュである。第1、第2の格子金属メッシュ43、44は、それぞれ0.05μm〜1.5μmの厚さを有しているが、両者を合わせた最大の厚さt1が実施形態2の格子金属メッシュ23の厚さ、即ち実施形態1の金属被覆層13の厚さt1以内であれば良い。格子金属メッシュの厚さ以外の構成および材料は、実施形態2の格子金属メッシュと同じであり、かつ、下地金属層41、樹脂層42は実施形態1あるいは実施形態2と同様である。
本実施形態の標準試料では、第1、第2の格子金属メッシュ43および44を図(b)の矢印方向にスライドさせることにより、樹脂層42の露出面積を任意に調整することができる。樹脂層42の開口部を変化させながら種々の開口部を有する標準試料に対して近接場分光解析を行うことによって、樹脂領域サイズの識別下限を評価することができる。
実施形態5
図14の(a)および(b)は、本発明の実施形態5にかかる標準試料の断面図である。本実施形態では、下地金属層51上に格子金属メッシュ52を配置し、メッシュ開口内にポリカーボネートなどの分析用樹脂を埋め込み、樹脂層53を形成したことを特徴としている。図(b)に示す樹脂層53’は、検出感度を向上させるために、樹脂層中に金属微粒子を分散させて光を多重反射させるようにしている。本実施形態における格子金属メッシュ52は、樹脂層53、53’の厚さを10μm以下とするために、その厚さt3を10μm以下とする。また、格子幅は10μm以下、メッシュ穴サイズは10〜50μmが望ましい。メッシュの金属種は、Cu、Al、Fe、Niなどが良い。
格子金属メッシュ52は、プレスまたは接着剤によって下地金属層51上に形成される。図(b)に示すように、樹脂層53’中に金属微粒子を混入させる場合、そのサイズは1μmφ程度とし、金属種としてはFe、Au、Pd、Pt、Al、Agが望ましい。格子金属メッシュ52中に樹脂を充填した後、試料の表面全体を研磨し、格子金属メッシュ52と樹脂層53、53’とが同一平面を形成するようにする。これによって、表面平坦化標準試料が得られ、プローブの走査性が安定する。樹脂層は、実施形態1乃至4の場合と同様の材料が好ましい。
以上のように、本実施形態の標準試料では、実施形態2の場合とは異なって格子金属メッシュ52の壁面が存在しないため、壁面による光の乱反射が防止され、近接場光の検出精度が向上する。また、標準試料表面に段差が存在しないので、プローブの走査安定度が極めて優れている。さらに、樹脂層53’中に金属微粒子を混入したものでは、光の多重反射によって検出感度が一層向上する。
実施形態6
図15の(a)および(b)に、本発明の実施形態6にかかる標準試料を示す。本実施形態の標準試料60は、図(a)の断面図に示すように、下地金属層61の表面上に100〜1000nmφの複数の孔62を設け、この孔62中に100〜1000nmφのポリマー微粒子63を分散させた構造を有する。ポリマー微粒子63の材料はポリスチレンまたはポリメタクリレートなどであるが、あるいはSiOなどの微粒子を用いても良い。また、ポリマー微粒子63が孔62内に安定的に収容されるように、下地金属層61の孔62表面およびポリマー微粒子63の表面に親水基を付与しても良い。
図(b)に示すように、孔62の表面およびポリマー微粒子表面に親水基64、65を付与すると、両者の間の親和力によりポリマー微粒子63が孔62内に安定的に固定される。これによって、標準試料上に微粒子を最適分散させることができる。ポリマー微粒子の標準試料上での分散状況は、原子間力顕微鏡を用いて試料表面のトポグラフ画像を得ることにより観測可能である。
したがって、同じ標準試料に対して近接場分光解析を行い、特定の、例えばC−H基吸収ピークの強度についてマッピングを行ってC−H基分布可視化画像を得ることにより、単一の微粒子として識別可能なもの、可能でないものを判定することができる。これを、例えば、原子間力顕微鏡画像と比較することによって、微粒子サイズの識別下限を評価することが可能となる。
なお、上記の説明ではポリマー微粒子の識別について説明したが、例えば、SiO微粒子のように無機材料の微粒子についても同様の標準試料を作成することが可能である。
図15に示す標準試料60は、次のような工程によって形成することができる。先ず、ガラス基板などにフェムト秒レーザー加工によって、100〜500nmφの孔62を多数形成する。レーザー加工のままでも良いが、あるいはFe、Alなどの金属を加工後のガラス基板に蒸着し、その後表面をわずかに酸化させる。この酸化によって、金属表面に親水基(Al−O−Al、Al−OH)が導入される。
50〜1000nmφのポリマー微粒子を用意する。ポリマー微粒子の材質は、ポリスチレン、ポリメタクリレートなど、あるいはSiOであっても良い。用意したポリマー微粒子に対して界面活性剤を付与する。界面活性剤としては、R−SONaなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、カルボン酸金属塩などを用いる。このようにして、その表面に親水基が形成されたポリマー微粒子を、表面に親水基が導入されたガラス基板上に分散させる。孔からはみ出たポリマー微粒子は、遠心力などを利用してガラス基板上から除去する。これによって、単一微粒子そのものを評価することが可能な標準試料が形成される。
図16に、本実施形態にかかる標準試料を用いた場合の空間分解能の評価方法を示す。図(a)は、サイズがd00〜d20の粒子について近接場分光解析を行った場合のある結合基における吸収ピークの信号強度と、その場合のマッピングイメージを示している。サイズdの粒子については信号強度が小さく、マッピングイメージとして識別が困難である。サイズd10およびd20の粒子については、信号強度が大きくマッピングイメージd10’、d20’として識別可能である。したがって、この場合では粒子サイズd10が近接場分光解析において識別可能な下限値であると評価することができる。
図16(b)は、粒子66をプローブ先端67で走査した場合のイメージと、そのとき検出されるスペクトルの信号強度変化を示している。信号波形68において、縦軸はS/N比あるいは信号強度を示す。信号強度が最大値の1/eとなる間の距離dが2次元の空間分解能を示す。
実施形態7
図17は本発明の実施形態7に示す標準試料の構造を示す断面図である。本実施形態の標準試料は、近接場分光解析における垂直方向の空間分解能評価に適している。図16において、標準試料70は、下地金属層71、樹脂多層膜72および格子金属メッシュ73で構成されている。下地金属層71は、上記実施形態1〜6と同様の金属プレートあるいは表面に金属を蒸着したガラス基板である。
樹脂多層膜72は、例えばC−F基を顕著に含む材料で構成された第1の樹脂層72a、Si−O基を顕著に含む材料で構成された第2の樹脂層72b、C=O基を顕著に含む材料で構成された第3の樹脂層72cおよびC−H基を顕著に含む材料で構成された第4の樹脂層72dを含む。多層膜72の全体の厚さは、実施形態1〜4に示した樹脂層の厚さと同じであるが、各樹脂層の厚さは既知であるものとする。格子金属メッシュ73は、実施形態2〜4に示した格子金属メッシュと同様の材料、構成を有している。
図18は、各層特有の官能基について近接場分光解析を行い、各官能基の分布マッピングを行った図である。図(a)はC−H基について、(b)はC=O基について、(c)はSi−O基について、さらに(d)はC−F基についてのマッピング結果を示している。これらの図から明らかなように、図(a)のC−H基マッピングおよび図(b)のC=O基マッピングでは、樹脂部と金属格子部分との境界が明瞭に現れていて、したがってC−H基を含む樹脂層72dおよびC=O基を含む樹脂層72cについて高い検出感度を有しているものとみなしうる。
一方、図(c)および図(d)では、樹脂部と金属格子部分との境界が明瞭ではないかあるいはほとんど識別できない状態である。したがって、Si−O基を含む樹脂層72bおよびC−F基を含む樹脂層72aに関しては識別不能であるとみなされる。
以上の結果から、樹脂多層膜72において、表面から樹脂層72cの位置までの距離を、近接場分光解析における垂直方向の空間分解能であると評価することができる。なお、各樹脂層72a〜72dの層厚は既知であるため、その距離は算出が可能である。
以上に、本発明の種々の実施形態について説明したが、それぞれの標準試料の適性をまとめると次の通りである。
先ず、実施形態1〜実施形態5に示す標準試料は、有機物、無機物の境界部分を分解能の測定に利用する試料であって、境界部分がどのくらい明瞭に識別可能かを評価する場合に適した試料である。
一方、実施形態6の標準試料は、物体サイズの検出限界を評価するに適した試料である。なお、実施形態4に示す2重格子の試料も、各格子をスライドさせて樹脂領域を変化させその検出限界領域を評価する点においては、実施形態6の標準試料と同様に物体サイズの検出限界を評価するに適した試料であると言える。
実施形態1〜6に示す標準試料が、水平方向の分解能を評価するための試料であるのに対して、実施形態7の標準試料は、垂直分解能を評価するのに適した試料である。
また、上記各実施形態は、その特徴について一構成例のみを示しているものであり、記載した実施形態以外の実施の形態が可能で有ることは明らかである。例えば、実施形態7に示す多層膜は、実施形態1、実施形態3〜実施形態5に示す樹脂層に適用可能である。また、実施形態3に示す下地金属層の構造は、実施形態1、実施形態4および5に示す下地金属層に適用可能である。
近接場分光の適用原理と空間分解能の定義を示す図。 本発明の実施形態1にかかる標準試料を示す図。 金属被覆層の厚さの決定方法の説明に供する図であって、金属被覆されたポリカーボネートのSB強度を示す図。 ポリカーボネート表面に金属を蒸着した材料の近接場分光スペクトルを示す図。 種々の段差を有する試料表面のトポグラフ画像を示す図。 樹脂層の厚さ変化に対する、近接場分光スペクトルにおけるC−F基強度ピークのS/N感度変化を示す図。 (a)は、実施形態1の標準試料を用いた場合のC−H基の分布可視化画像、(b)は同じ試料のトポグラフ画像、(c)は同じ試料における空間分解能の評価結果を示す図。 空間分解能の評価方法を示す図。 本発明の実施形態2にかかる標準試料の構成を示す図。 (a)は実施形態2の標準試料の光学顕微鏡観察画像、(b)は同じ試料におけるC=O基分布可視化画像、(c)は同じ試料における表面トポグラフ画像。 図10の測定で用いた標準試料における空間分解能の評価結果を示す図。 本発明の実施形態3にかかる標準試料の構成を示す図。 本発明の実施形態4にかかる標準試料の構成を示す図。 本発明の実施形態5にかかる標準試料の構成を示す図。 本発明の実施形態6にかかる標準試料の構成を示す図。 微粒子についての空間分解能の評価方法を示す図。 本発明の実施形態7にかかる標準試料の構成を示す図。 図17に示す標準試料の近接場分光解析結果を示す図。
符号の説明
10 標準試料
11 下地金属層
12 樹脂層
13 金属被覆層
14 境界
15 傾斜(スロープ)
20 標準試料
21 下地金属層
22 樹脂層
23 格子金属メッシュ
30 標準試料
31 下地金属層
32 樹脂層
33 格子金属メッシュ
34 孔
35 光透過結晶
36 開口
40 標準試料
43、44 第1、第2の格子金属メッシュ
50 標準試料
52 格子金属メッシュ
53 樹脂層
60 標準試料
62 孔
63 ポリマー微粒子
64、65 親水基
70 標準試料
72 樹脂多層膜

Claims (16)

  1. 近接場分光解析における空間分解能評価のための標準試料であって、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成された厚さが10μm以下の樹脂層と、前記樹脂層との境界が明確になるように前記樹脂層表面を部分的に被覆する金属層とを有することを特徴とする、標準試料。
  2. 請求項1に記載の標準試料において、前記樹脂層は、C−H、C=O、Si−O、C−F官能基のうち少なくとも1個の官能基を含むことを特徴とする、標準試料。
  3. 請求項1に記載の標準試料において、前記金属層は厚さが3μm以下であることを特徴とする、標準試料。
  4. 請求項1に記載の標準試料において、前記金属層は、前記樹脂層との境界部分に傾斜を有していることを特徴とする、標準試料。
  5. 請求項1に記載の標準試料において、前記金属層は格子金属メッシュで構成されていることを特徴とする、標準試料。
  6. 請求項5に記載の標準試料において、前記下地金属層はその上面部分に前記格子金属メッシュの格子間隔と同程度の径を有する半球状の複数の孔を有し、前記孔は光透過性の材料で充填されていることを特徴とする、標準試料。
  7. 請求項5に記載の標準試料において、前記格子金属メッシュは、樹脂層表面に平行方向において相対的にスライド可能な第1、第2の格子金属メッシュで構成されていることを特徴とする、標準試料。
  8. 近接場分光解析における空間分解能評価のための標準試料であって、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成した厚さが10μm以下の格子金属メッシュと、前記格子金属メッシュの格子で囲まれた部分に充填される樹脂層とを有し、前記格子金属メッシュ表面と前記樹脂層表面とが同一平面を形成するように平坦化されていることを特徴とする、標準試料。
  9. 請求項8に記載の標準試料において、前記樹脂層中には金属の微粒子が分散されていることを特徴とする、標準試料。
  10. 近接場分光解析における空間分解能評価のための標準試料であって、表面が反射率の高い金属材料によって構成された下地金属層と、前記下地金属層の表面部分に形成された複数の半球状の孔と、前記半球状の孔に分散収容される微粒子とを有することを特徴とする、標準試料。
  11. 請求項10に記載の標準試料であって、前記孔の表面および前記微粒子表面には親水基が付着されていることを特徴とする、標準試料。
  12. 請求項1に記載の標準試料において、前記樹脂層は、少なくとも、第1の官能基を含む第1の樹脂層と、前記第1の官能基とは異なる第2の官能基を含む第2の樹脂層とを積層した構造を有することを特徴とする、標準試料。
  13. 請求項1乃至8の何れか1項に記載の標準試料を用意するステップと、
    前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行うステップと、
    前記測定結果を解析してあらかじめ決定した官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、
    前記求めた強度分布において強度値が大幅に変化する部分を検出し、該検出部分の幅に基づいて近接場分光解析における水平方向の空間分解能を評価するステップと、を備えることを特徴とする、近接場分光解析における空間分解能の評価方法。
  14. 請求項7に記載の標準試料を用意するステップと、
    前記標準試料における第1、第2の格子金属メッシュを相対的にスライドさせて前記格子面積を変化させながら近接場分光測定を行うステップと、
    前記測定結果を解析してあらかじめ決定した官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、
    前記求めた強度分布に基づいて前記格子によって画定された樹脂領域の識別可能下限を求めるステップと、を備えることを特徴とする、近接場分光解析における空間分解能の評価方法。
  15. 請求項10または11に記載の標準試料を用意するステップと、
    前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行って特定の官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、
    前記求めた強度分布に基づいて前記標準試料に含まれる微粒子の識別可能なサイズの下限値を決定するステップと、を備えることを特徴とする、近接場分光解析における空間分解能の評価方法。
  16. 請求項12に記載の標準試料を用意するステップと、
    前記用意された標準試料を用いて近接場分光測定を行うステップと、
    前記測定結果を解析して前記第1および第2の官能基に基づくスペクトルピークの強度分布を求めるステップと、
    前記求めた第1および第2の官能基の強度分布に基づいて、前記標準試料における多層膜の識別可能な下限値を決定するステップと、を備えることを特徴とする、近接場分光解析における空間分解能の評価方法。
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WO2023021867A1 (ja) * 2021-08-20 2023-02-23 株式会社日立ハイテク 走査プローブ顕微鏡とそれに使用される試料

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