JP2007159242A - 超磁歪アクチュエータおよび角度機能付きテーブル - Google Patents

超磁歪アクチュエータおよび角度機能付きテーブル Download PDF

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一雄 大矢
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清 赤羽
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Abstract

【課題】超磁歪素子に効果的に磁界をかけ、超磁歪アクチュエータの小型化、省電力化を図る。
【解決手段】超磁歪アクチュエータ1は、略E字状の一対のヨーク10aおよびヨーク10bを備える。ヨーク10aに対してほぼ直交して突出されたアーム14aと、ヨーク10bに対してほぼ直交して突出されたアーム14bとの間には永久磁石22が挿入される。永久磁石22に対して軟磁性体からなる磁束収束部23がギャップを介して対向し、磁束収束部23には超磁歪素子11の一端が支持される。磁気抵抗の小さい磁束収束部23を設けることで、アーム14aと永久磁石22との境界付近で発生する漏れ磁束を効果的に磁束収束部23に収束できる。従って、電磁石21にかける励磁電流を大きくせずに超磁歪素子11に対して効率良く磁界をかけることができる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、超磁歪アクチュエータおよび超磁歪アクチュエータを使用した角度機能付きテーブルに関する。
強磁性材料に磁界をかけると、強磁性材料が伸縮して外形の寸法が変化する磁歪と称される現象が知られている。中でも強磁性材料の寸法変化量に対して、およそ50倍〜100倍程度の寸法変化を示す材料は超磁歪材料と称される。
図7は、従来材の強磁性材料と超磁歪材料との磁歪による外形寸法の変化(変位量)の一例を比較して示したグラフである。図7において、横軸は磁界の強さH(Oe:CGS単位系)を示し、縦軸は磁歪による変位量λ(ppm)を示す。グラフから分かるように、加えられる磁界の強さHに対して超磁歪材料の変位量は強磁性材料の変位量に比べて大きいことがわかる。このように、超磁歪材料は通常の強磁性材料に比べて磁歪による変位量が大きい。
従来から、この超磁歪材料からなる超磁歪素子を使用したアクチュエータ(以下、適宜、超磁歪アクチュエータと称する)が提案されている。超磁歪アクチュエータは、超磁歪素子に対して磁界をかけることで得られる変位を機械的エネルギーとして使用する装置である。
ところで、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するアクチュエータには、超磁歪素子を利用する方法以外に、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などの圧電材料(ピエゾ素子)を利用したピエゾアクチュエータが提案されている。しかしながら、ピエゾアクチュエータは高電圧により駆動されるため安全対策等を施す必要があり、装置の小型化が難しい。また、超磁歪アクチュエータは、ピエゾアクチュエータに比べて応答速度が高い、低電圧駆動が可能、キュリー温度が高く低温域から高温域までの温度特性に優れている、有害物質を含まず環境対策にも有効である等の利点を有する。このような超磁歪アクチュエータが有する利点を利用して、種々の超磁歪アクチュエータが提案されている。
下記の特許文献1および特許文献2には、コイルが巻回された中空部を有するボビンに超磁歪素子が挿入された超磁歪アクチュエータに関する発明が記載されている。
特開2005−192361号公報 特開2002−58269号公報
また、下記特許文献3には、電磁石と永久磁石とを含み、永久磁石を軟磁性体からなる磁性部材に挟み込んだ構成を有するハイブリット型磁石が記載されている。このハイブリット型磁石では例えば[0023]に記載されているように、電磁石の励磁コイルに通電したときに永久磁石の近傍に発生する漏れ磁束を利用して吸引力を得ることが記載されている。
特許第3349966号公報
しかしながら、上述したような従来の技術には、以下のような問題点があった。例えば、特許文献1に記載されている超磁歪アクチュエータでは、超磁歪素子に磁界をかけるための磁束の磁路がオープン磁路となるため、磁界を強くかけるには大電流を流す必要がある。従って、例えば乾電池などの小型の電源によって超磁歪アクチュエータを駆動することが困難であった。また、特許文献1や特許文献2に記載されている超磁歪アクチュエータでは超磁歪素子が挿入されるボビンに一定の強度が必要とされることからボビンの小型化が困難であり、超磁歪アクチュエータ全体の小型化が困難であった。
また、例えば特許文献3に記載されている構成を使用して漏れ磁束を発生させ、発生した漏れ磁束が超磁歪素子を通るようにして磁歪による変位を得ることも考えられるが、一般に超磁歪素子は透磁率が小さいため磁気抵抗が大きくなり、漏れ磁束が超磁歪素子を磁路として通るようにすることが困難であった。さらに、永久磁石の厚みが永久磁石の両端を支持する磁性部材の厚みと等しくされるため磁気抵抗が大きくなり、電磁石に対してより大きな励磁電流が必要になるという問題点があった。
従って、この発明の目的は、低電流で超磁歪素子に磁界をかけることができ、省電力、小型化を図れる超磁歪アクチュエータを提供することである。また、この発明の他の目的は、発生した漏れ磁束を効果的に超磁歪素子に収束することができる超磁歪アクチュエータおよび超磁歪アクチュエータを使用した角度機能付きテーブルを提供することである。
上述した課題を解決するために、この発明は、磁界を発生する電磁石と、
電磁石を含む磁路中に存在する対向端面の間に挿入される永久磁石と、
永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
電磁石の通電時に対向端面の一方に生じる磁極と、対向端面の一方と接する永久磁石の磁極とが同一とされる超磁歪アクチュエータである。
また、この発明は、脚部に対して第1、第2および第3のアームがほぼ直交して突出された略E字状の一対のヨークと、
対向する第1のアームに対して装着された電磁石と、
第2のアームの対向端面の間に挿入された永久磁石と、
永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
対向する第3のアームの対向間隙に超磁歪素子の他端が摺動自在に支持された超磁歪アクチュエータである。
また、この発明は、少なくとも2個の超磁歪アクチュエータによって支持され、超磁歪アクチュエータの超磁歪素子が伸縮することで発生する変位によりチルト角が生じる角度機能付きテーブルであって、
超磁歪アクチュエータは、
磁界を発生する電磁石と、
電磁石を含む磁路中に存在する対向端面の間に挿入される永久磁石と、
永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
電磁石の通電時に対向端面の一方に生じる磁極と、対向端面の一方と接する永久磁石の磁極とが同一とされる角度機能付きテーブルである。
また、この発明は、少なくとも2個の超磁歪アクチュエータによって支持され、超磁歪アクチュエータの超磁歪素子が伸縮することで発生する変位によりチルト角が生じる角度機能付きテーブルであって、
超磁歪アクチュエータは、
脚部に対して第1、第2および第3のアームがほぼ直交して突出された略E字状の一対のヨークと、
対向する第1のアームに対して装着された電磁石と、
第2のアームの対向端面の間に挿入された永久磁石と、
永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
対向する第3のアームの対向間隙に超磁歪素子の他端が摺動自在に支持された角度機能付きテーブルである。
この発明によれば、超磁歪アクチュエータの省電力、小型化を図れる。従って、この発明による超磁歪アクチュエータを使用した光部品のレンズ調整機や半導体の露光機などのアプリケーション機器の省電力、小型化を図れる。
以下、図面を参照しながらこの発明の一実施の形態について説明する。はじめにこの発明の一実施の形態における超磁歪アクチュエータ1の構成を説明する。図1は、超磁歪アクチュエータ1の構成(断面)を示す。超磁歪アクチュエータ1は、略E字状の一対のヨーク10aおよび10bを備える。ヨーク10aは脚部12aを有し、この脚部12aに対してほぼ直交して突出された第1のアームの一例であるネジ13a、第2のアーム14a、第3のアーム15aを備える。この一実施の形態では、ネジ13aは脚部12aの端部付近を貫通している。また、アーム15aは脚部12aとネジ16aによって結合されている。
ヨーク10aと対のヨーク10bも同様に脚部12bを備え、脚部12bに対してほぼ直交して突出された第1のアームの一例であるネジ13b、第2のアーム14b、第3のアーム15bを備える。この一実施の形態では、ネジ13bは脚部12bの端部付近を貫通している。また、アーム15bは脚部12bとネジ16bによって結合されている。ヨーク10a、10bは後述する閉磁路内における磁気抵抗を大きくしないため軟磁性材料により構成される。また、この一実施の形態のように、例えば各部材の結合のためのネジを使用するときは、同様の理由からそれぞれのネジは軟磁性材料により構成される。
参照符号21は、ネジ13aとネジ13bとに装着される電磁石である。電磁石21は例えばコイルが巻回されたボビンに鉄心が挿入された構成とされる。この鉄心の略中央に穴部が設けられ、この穴部にネジ13aとネジ13bとが挿入されることで電磁石21はヨーク10a、10bに対して取り付けられている。電磁石21の断面積は、アーム14aまたは14bの断面積の1.5倍から5倍程度とされ、一例として113mm2とされる。
アーム14aと14bの対向端面の間には、例えばフェライト磁石からなる永久磁石22が挿入される。永久磁石22はアーム14aと14bのそれぞれの端面と接する両端がN極およびS極に着磁されたものである。永久磁石22は後述する閉磁路内の磁気抵抗を大きくしないため、磁極方向と直交する方向の厚みがアーム14aおよび14bの対向端面の厚みより小と設定される。例えば、永久磁石22の厚みと、アーム14aおよび14bの厚みとの比は1:3程度とされ、一例として永久磁石22の厚みは2mmでアーム14a、14bの厚みは6mmとされる。また、永久磁石22の断面積は例えば10.39mm2とされ、アーム14a、14bのそれぞれの端面の断面積は、例えば31.2mm2とされる。このように永久磁石22の形状を小さくすることで永久磁石22の磁気抵抗が小さくなり、乾電池などの電源を使用して低電流による超磁歪アクチュエータ1の駆動が可能となる。
参照符号23は、永久磁石22とギャップgを介して対向し、参照符号11に示す超磁歪素子の一端が支持された磁束収束部である。図2は磁束収束部23の周辺の主要な構成を示す。上述したようにアーム14aと14bの対向端面の間には永久磁石22が挿入されている。この永久磁石22とギャップgを介して磁束収束部23が対向する。ギャップgの大きさは例えば50μm程度とされる。磁束収束部23の永久磁石22と対向する面24の長さは、永久磁石22の磁極方向の長さwとほぼ等しいものとされる。
また、磁束収束部23には超磁歪素子11の一端が支持されている。例えば、磁束収束部23に対して超磁歪素子11の一端が圧入されても良いし、また熱硬化性接着剤等によって固着されても良い。この一実施の形態における超磁歪素子11は、磁気モーメントの大きいランダノイド元素Rと鉄属元素とからなり、例えばTbFe2、SmFe2、Tb0.74Dy0.26Fe2などの超磁歪材料が使用される。また、超磁歪素子11の変位量は長手方向の長さの相対的な比率で決まるので、超磁歪素子11の形状はその変位量に対応して決まる。一例として、変位量が0のときの超磁歪素子11の形状は、断面の直径が6mm程度で長さが50mm程度の円筒状の形状とされる。
磁束収束部23は後述するように主としてアーム14a、14bと永久磁石22との境界付近(図2において参照符号31、32に示す)で発生する漏れ磁束を効果的に集めるために設けられたものである。従って、磁束収束部23は透磁率が100〜1000程度の透磁率の大きい軟磁性体が使用され、透磁率により規定される磁気抵抗が小さくなるようにされる。磁束収束部23の材料には、例えばステンレス磁性鋼(東北特殊鋼株式会社製)が使用される。
再び、図1に戻り超磁歪アクチュエータ1の構成を説明する。超磁歪素子11の一端が支持された磁束収束部23は非磁性体からなるスペーサ25aおよびスペーサ25bに挿入されて、全体としてヨーク10a、10bに支持される。磁束収束部23にその一端が支持された超磁歪素子11の他端は、アーム15aとアーム15bとの対向間隙に摺動自在となるように支持される。アーム15a、15bにより支持される超磁歪素子11の先端には非磁性体からなる連結部27を介して推進部28が設けられる。推進部28は、外側のヨーク30aとヨーク30bとの対向間隙に摺動自在となるように支持される。また、連結部27とヨーク30a、30bのそれぞれとの間にはワッシャー29a、29bが設けられる。
超磁歪素子11に磁界がかかると、超磁歪素子11は磁歪により伸縮し変位が発生する。例えば、超磁歪素子11が磁歪により伸張したとすると、発生した変位は連結部27を介して推進部28に伝達され、推進部28は上方に移動して機械的な変位を得ることができる。一方、超磁歪素子11にかかる磁界を減少させると超磁歪素子11は徐々に収縮する。この一実施の形態における超磁歪アクチュエータ1ではワッシャー29aおよびワッシャー29bが設けられるので、超磁歪素子11の収縮時にはワッシャー29a、29bの反発力が作用して速やかに超磁歪素子11が所定の位置に戻る。
以上、説明した構成を有する超磁歪アクチュエータ1では超磁歪素子11をボビンに挿入したり、超磁歪素子11に対してコイルを巻回する必要がない。従って、強度を確保するために大型のボビンを使用する必要がなく装置の小型化を図れる。また、コイルの中空部に直接超磁歪素子が挿入される超磁歪アクチュエータでは、超磁歪素子の伸縮時に生じる超磁歪素子とコイルとの摩擦によって巻線が破損するおそれがあるが、この一実施の形態による超磁歪アクチュエータ1では超磁歪素子11にはコイルは巻回されないためそのような破損のおそれはない。
次に、上述した構成とされる超磁歪アクチュエータ1における磁束の流れを説明する。超磁歪アクチュエータ1では、電磁石21に巻回されたコイルに通電することで磁界が発生し、発生した磁界によってヨーク10a、10b、永久磁石22、磁束収束部23、超磁歪素子11を磁路とする閉磁路が形成される。
電磁石21の励磁コイルに永久磁石22の磁力線の方向と反対方向に磁束を発生する電流を流すと、磁束は脚部12a、アーム14aを通り、永久磁石22に到達する。ここで、永久磁石22の磁力線の方向と反対方向に磁束を発生する電流を流していることから、アーム14aの端面の極性と、アーム14a側の永久磁石22の端部の極性は例えばN極同士のように同じ極性となり反発力が作用する。さらに、アーム14aと永久磁石22とでは磁界の強さが変化するため、磁界が変化するアーム14aと永久磁石22の境界付近では外部の磁性材料を磁化させるエネルギーが強くなる。すると、アーム14aと永久磁石22の境界付近では、アーム14aを磁路として通る磁束の漏れ磁束が著しく増加する。
この発明は、このようにして生じた漏れ磁束を超磁歪素子11に作用させて生じる磁歪を利用するものである。すなわち、発生した漏れ磁束が超磁歪素子11を磁路として通り、アーム15aから脚部12aへ、またアーム15bから脚部12bへとそれぞれを磁路として通り電磁石21に戻る。この閉磁路において磁束が超磁歪素子11を磁路として通るため、超磁歪素子11は磁歪による変位を発生する。
しかしながら、漏れ磁束を直接、超磁歪素子11に作用させることは困難である。その理由として、超磁歪素子11は一般に透磁率が例えば8程度と小さいため、透磁率の大きさによって規定される磁気抵抗の値が大きくなってしまう。従って、生じた漏れ磁束が超磁歪素子11を磁路として通るようにすることが困難となる。さらに、漏れ磁束はアーム14aと永久磁石22の境界付近で著しく増加するため、境界付近で漏れ磁束を効率的に収束することが必要であるが、超磁歪素子11は精密加工が困難であり、漏れ磁束を効果的に集めるようにする形状にしたり、正確に位置決めをすることが困難である。そこで、この発明では、上述した磁束収束部23を設けた。
磁束収束部23は上述したように軟磁性体によって構成されるため、例えば100〜1000程度と透磁率が大きい。従って、透磁率によって規定される磁気抵抗が小さくなる。従って、アーム14aと永久磁石22の境界付近を中心に発生する漏れ磁束は、ギャップgを介して磁束収束部23に収束される。磁束収束部23に収束された漏れ磁束は、磁束収束部23にその一端が支持されている超磁歪素子11を磁路として通る。このように磁束収束部23を設けることで、漏れ磁束を効果的に集めることができ、漏れ磁束を超磁歪素子11に作用させることができる。
また、軟磁性体からなる磁束収束部23は超磁歪素子11に比べて格段に加工が容易であることから、適切に加工された磁束収束部23を設けることで磁束収束部23に支持される超磁歪素子11の位置決めを正確に行うことができる。
さらに、磁束収束部23の面24の長さを永久磁石22の磁極方向の長さとほぼ等しくすることで、例えばアーム14aと永久磁石22の境界付近において著しく増加する漏れ磁束を分散させることなく効果的に集めることができる。
次に、この一実施の形態における超磁歪アクチュエータ1の動作を説明する。図3は、超磁歪アクチュエータ1を制御する回路の等価回路40を示す。回路40は、電源41、電流制御素子42、コイル43を含む。この一実施の形態における電源41は、超磁歪素子11に一定の磁界をかけるため、また乾電池による駆動を想定して直流電源とされる。回路40においては、例えば可変抵抗からなる電流制限素子42を制御して回路全体に流れる電流を調節する。回路40に流れる電流を調節することでコイル43に発生する磁界の強さを調節でき、超磁歪素子11にかかる磁界の強さを制御できる。
例えば、超磁歪素子11を伸張させるときは、電流制限素子42の抵抗を小さくして回路全体に流れる電流を増加させてコイル43に流れる電流を増やし、コイル43に発生する磁界を強くする。すると超磁歪素子11にかかる磁界が強くなり、超磁歪素子11の磁歪による変位量が増加する。
図4は、励磁電流の変化に対する起電力および磁束密度の変化の一例を示すグラフである。図4において(a)は励磁電流の変化に対するコイル43の両端に発生する電圧e2(mV)の変化を示し、(b)は励磁電流に対する磁束密度Bm(T)の変化を示す。図4からもわかるように、励磁電流に対して電圧および磁束密度は、共にほぼ比例して変化する。従って、励磁電流を大きくすることで超磁歪素子11にかける磁界を強くすることができる。
一方、超磁歪素子11を収縮させるときは、電流制限素子42の抵抗を大きくして回路全体に流れる電流量を減少させてコイル43に流れる電流を減らし、コイル43に発生する磁界を弱める。すると超磁歪素子11にかかる磁界が弱まり、超磁歪素子11は収縮する。
このように回路40に流れる電流を制御することで、超磁歪素子11にかかる磁界の強さを制御できる。ところで、超磁歪素子11の収縮させるときに回路40に流れる電流を減らして磁界を弱めることは上述した通りであるが、このときコイル43に鎖交する磁束が変化することで逆起電力がコイル43に発生する。コイル43に発生する逆起電力によって超磁歪素子11にかかる磁界が変化し超磁歪アクチュエータ1の動作が不安定となるおそれがあるため、この逆起電力をキャンセルする必要がある。
この逆起電力を放出するために回路にダンパーダイオードを設けて放出経路を確保して回路を保護することが考えられるが、電源41が乾電池等の直流電源であると、電流の変化により発生する逆起電力は250mV(ミリボルト)(0.25V)程度である。一般的なダイオードの応答特性は0.6V程度であることから、回路にダンパーダイオードを使用しても動作せず逆起電力をキャンセルをすることができない。さらにダンパーダイオードを回路40に使用すると、応答性が損なわれる問題がある。
しかしながら、この発明ではアーム14aおよび14bの対向端面の間に永久磁石22を挿入しているため、逆起電力を利用して超磁歪素子11にかける磁界を制御できる。すなわち、励磁電流を減少させることで発生する逆起電力により、アーム14a、14bの端面の磁極の極性が反転し、反転した磁極は永久磁石22のそれぞれ磁極の極性と反対になり、アーム14aと永久磁石22との境界付近で発生する漏れ磁束を減少させることができる。漏れ磁束が減少することで超磁歪素子11にかかる磁界が減少し、超磁歪素子11は収縮する。従って、超磁歪アクチュエータ1の動作を安定的なものとし、また応答性を良くすることができる。
図5は、超磁歪アクチュエータ1を利用したアプリケーション機器の一例である角度機能付きのテーブル51を示す。角度機能付きテーブル51は、少なくとも2個の超磁歪アクチュエータによって支持される。この一実施の形態では、角度機能付きテーブル51は2個の超磁歪アクチュエータ1および1’のそれぞれの推進部13、13’と、超磁歪アクチュエータ1および1’の間に位置する固定点である支持体62とによって支持されている。推進部13および13’の端部は球面とされ、また支持体52の端部も球面とされ、角度機能付きテーブル51はそれらの球面を受けている。従って角度機能付きテーブル51は任意の角度で動くことができる。なお、超磁歪アクチュエータ1’の構成は、超磁歪アクチュエータ1と同様の構成である。
超磁歪アクチュエータ1および1’の超磁歪素子に磁界がかけられていない状態では超磁歪アクチュエータ1および1’は変位を発生しないため、角度機能付きテーブル51はほぼ水平の状態となる。
ここで、例えば超磁歪アクチュエータ1’の超磁歪素子に磁界をかけると磁歪による変位が発生し、その変位は推進部13’に伝達されて推進部13’は上方に移動し、角度機能付きテーブル51が持ち上げられる。一方、超磁歪アクチュエータ1の超磁歪材料に対しては磁界をかけなければ変位は発生しない。すると、角度機能付きテーブル51には支持体52による固定点を中心として、角度(チルト)が発生する。このように、複数の超磁歪アクチュエータのそれぞれの超磁歪材料に対してかける磁界を制御することで異なる変位量を発生させて、角度機能付きテーブル51に角度をつけることができる。例えば、超磁歪素子11の磁歪による変位量が0.1mm程度であると、10度前後のチルトが得られる。
なお、角度機能付きテーブル51は上述した例と異なり、水平方向(X−Y方向)に可動とされても良い。また、角度機能付きテーブル51を支持する超磁歪アクチュエータは2個に限らず、例えば3個使用して角度機能付きテーブル51を3点で支持するようにしても良い。また、推進部を設けず、テーブルとそれぞれの超磁歪アクチュエータの超磁歪素子とを直接密着させても良い。
図6は、発生した変位を増幅できる角度機能付きテーブル61の概要を示す。角度機能付きテーブル61は、超磁歪アクチュエータ1と変位増幅手段とが連結されたものである。変位増幅手段は連結部63、支点66、支点66から伸びるアーム64、65を含む構成とされ、アーム64の先端は可動台62と密着され、アーム65の先端は固定台67と密着されている。そして、超磁歪アクチュエータ1は連結部63を介して支点66と連結されている。
変位増幅手段は、超磁歪アクチュエータ1の水平方向の変位を垂直方向に増幅して変換する動作を行う。この動作について説明する。超磁歪アクチュエータ1の超磁歪素子に磁界がかけられないときは、変位は発生せず可動台62は水平の状態とされる。
超磁歪アクチュエータ1の超磁歪素子が磁歪によって伸張すると、伸張による変位は連結部63を介して支点66に伝達される。そして支点66において伸張方向(図6では左方向)に力が働きアーム64および65のなす角が大きくなる。ここでアーム65の先端は固定台67に密着されていることから、変換された垂直方向への変位はアーム64によって可動台62に伝達され、可動台62が上昇する。反対に、超磁歪素子11が収縮すると、上述した動作と反対の動作がなされて可動台62が下降する。
図6を参照して説明した変位を増幅できるようにされた超磁歪アクチュエータを、図5を参照して説明したように2個使用し、さらに固定点を設けた構成とすることで角度を発生させる機能を付加することができる。また、角度機能付きテーブルの角度を連続的に大きく変化させることができる。
図5および図6を参照して説明した角度機能付きテーブルは、光部品のレンズ調整や半導体の露光機等の高精度が要求される製品の検査、製造に使用できる。また、機械加工用のテーブルとしても使用できる。
以上、この発明の一実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述した一実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述した一実施の形態における超磁歪素子11の形状は円筒状の形状として説明したが、例えば角型形状などの他の形状としても良い。
また、上述した一実施形態におけるヨーク10a(ヨーク10bも同様)は、ネジ等による結合ではなく、脚部12aと第1から第3のアームが一体成型された構成であっても良い。また、例えばコ字状の部材とL字状の部材などの複数の部材を組み合わせて略E字形状としても良い。また、第1のアームと第2のアーム間の長さや、第2のアームと第3のアームとの間の長さは超磁歪アクチュエータ1の大きさに応じて適切に設定される。
この発明の一実施の形態における超磁歪アクチュエータの断面図である。 この発明の一実施の形態における磁束収束部の周辺を拡大して示した略線図である。 この発明の一実施の形態における超磁歪アクチュエータの等価回路の略線図である。 励磁電流の変化に対するコイルの両端に生じる電圧の変化と磁束密度の変化を示すグラフである。 この発明の一実施の形態における超磁歪アクチュエータを使用した角度機能付きテーブルの一例を示す略線図である。 の発明の一実施の形態における超磁歪アクチュエータを使用した変位増幅機能を有する角度機能付きテーブルの一例を示す略線図である。 強磁性体材料と超磁歪材料の磁歪による変位量を比較して示したグラフである。
符号の説明
1 超磁歪アクチュエータ
10a、10b ヨーク
11 超磁歪素子
12a、12b 脚部
13a、13b ネジ
14a、14b アーム
15a、15b アーム
21 電磁石
22 永久磁石
23 磁束収束部
51、61 角度機能付きテーブル

Claims (6)

  1. 磁界を発生する電磁石と、
    上記電磁石を含む磁路中に存在する対向端面の間に挿入される永久磁石と、
    上記永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
    上記磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
    上記電磁石の通電時に上記対向端面の一方に生じる磁極と、上記対向端面の一方と接する上記永久磁石の磁極とが同一とされる超磁歪アクチュエータ。
  2. 脚部に対して第1、第2および第3のアームがほぼ直交して突出された略E字状の一対のヨークと、
    対向する上記第1のアームに対して装着された電磁石と、
    上記第2のアームの対向端面の間に挿入された永久磁石と、
    上記永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
    上記磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
    対向する上記第3のアームの対向間隙に上記超磁歪素子の他端が摺動自在に支持された超磁歪アクチュエータ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の超磁歪アクチュエータにおいて、
    上記永久磁石の磁極方向の長さと、上記磁束収束部の上記永久磁石と対向する面の長さとがほぼ等しいものとされた超磁歪アクチュエータ。
  4. 請求項1または請求項2に記載の超磁歪アクチュエータにおいて、
    上記永久磁石の磁極方向と直交する厚みが上記対向端面の厚みに比べて小と設定された超磁歪アクチュエータ。
  5. 少なくとも2個の超磁歪アクチュエータによって支持され、上記超磁歪アクチュエータの超磁歪素子が伸縮することで発生する変位によりチルト角が生じる角度機能付きテーブルであって、
    上記超磁歪アクチュエータは、
    磁界を発生する電磁石と、
    上記電磁石を含む磁路中に存在する対向端面の間に挿入される永久磁石と、
    上記永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
    上記磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
    上記電磁石の通電時に上記対向端面の一方に生じる磁極と、上記対向端面の一方と接する上記永久磁石の磁極とが同一とされる角度機能付きテーブル。
  6. 少なくとも2個の超磁歪アクチュエータによって支持され、上記超磁歪アクチュエータの超磁歪素子が伸縮することで発生する変位によりチルト角が生じる角度機能付きテーブルであって、
    上記超磁歪アクチュエータは、
    脚部に対して第1、第2および第3のアームがほぼ直交して突出された略E字状の一対のヨークと、
    対向する上記第1のアームに対して装着された電磁石と、
    上記第2のアームの対向端面の間に挿入された永久磁石と、
    上記永久磁石と所定のギャップを介して対向する磁束収束部と、
    上記磁束収束部によってその一端が支持される超磁歪素子とを備え、
    対向する上記第3のアームの対向間隙に上記超磁歪素子の他端が摺動自在に支持された角度機能付きテーブル。
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