JP2007154347A - 伝線防止機能を有する足回り編地製品 - Google Patents

伝線防止機能を有する足回り編地製品 Download PDF

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Abstract

【課題】効率的かつ効果的に伝線を防止できる足回り編地製品を提供すること。
【解決手段】熱融着性弾性繊維が、シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維であり、又、2倍伸長下140℃で45秒間乾熱処理したときの強力保持率が40%以上である繊維を含む足回り編地が、湿熱処理されてなることを特徴とする伝線防止機能を有する足回り編地製品。
【選択図】なし

Description

本発明は、伝線防止機能を有する足回り編地製品に関し、特に湿熱処理により熱融着する弾性繊維を含む編地からなる足回り編地製品に関する。
弾性繊維を含む編地は、伸びが大きく、伸長状態からの回復力やフィット性が良いため足回り編地製品に広く使用されている。
しかし、足回り編地製品は、脱着の際、着用中、あるいは洗濯の際などに編地組織にはしご状の傷などが生じ、使用できなくなる問題がある。例えば、ストッキングは、使用中に編み組織の一部に引掛傷ができると、編組織が解編されたはしご状の線、いわゆる伝線が発生し、使用できなくなる問題が残っていた。
従来、こうした伝線を防止する方法としては、特別な編み方によるものや、伝線防止剤を用いる方法等が主であった。
例えば、特開平8−100305号公報(特許文献1)には、特殊な編み方(ブックル型)により伝線を防止する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の編地は、生地が分厚く、手触りが固く、透明感も低い他、なにより特殊な編機、編み技術が必要であるため、編みコストがかかり、高価なものであった。そのため、衣料分野、特に足回り編地製品分野においては、経済的かつ効果的な伝線防止機能を有する編地製品が求められていた。
特開平8−100305号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、効率的かつ効果的に伝線を防止できる足回り編地製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、熱融着性弾性繊維、特にシングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む編地を湿熱処理することで、効率的かつ効果的に伝線を防止した編地、特に衣料分野、とりわけストッキング等の足回り編地製品分野で有用な編地製品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
さらに本発明では、前記した伝線防止効果を得るだけでなく、寸法安定性の向上、審美性の向上に著しい効果を与えるものである。例えば、ストッキングについては、着脱の容易さ、着用時の審美性なども性能上大変重要な特性であることは周知の通りであるが、本発明の熱融着性弾性繊維を含む編地を用いた場合、熱融着による編目固定により、編目の耐解編性向上による伝線防止効果を得る以外に、編目の大きさが変化し難くなることから、洗濯などによる負荷が生じても編目の変化が少ない、即ち製品の寸法変化が少なく、繰り返し洗濯後の着用でも大きく縮むことがないので、はきやすいメリットがある。
また、着用にあたり、編地を指でつまんだ状態ではくが、指でつまんだ部位の編目の大きさが不均一になることで履き斑(編地の濃淡斑)や、縞模様がところどころ発生し審美性が低下することが知られているが、本発明の熱融着性弾性繊維を含む編地は、編目固定効果により履き斑がなくなり、審美性の向上にも著しい効果を発揮するものである。
即ち、本発明は、下記の足回り編地製品を提供する。
[1]熱融着性弾性繊維を含む足回り編地が、湿熱処理されてなることを特徴とする伝線防止機能を有する足回り編地製品。
[2]熱融着性弾性繊維からなる芯糸と、この芯糸に巻回された非弾性繊維とからなるカバリングヤーンで形成される[1]記載の足回り編地製品。
[3]カバリングヤーンが、シングルカバリングヤーンである[2]記載の足回り編地製品。
[4]熱融着性弾性繊維が、シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維である[1]、[2]又は[3]記載の足回り編地製品。
[5]熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が0.30cN/dtex以上である[4]記載の足回り編地製品。
[6]熱融着性弾性繊維が、シングルカバリングヤーン編地法において、115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維である[1]乃至[5]のいずれかに記載の足回り編地製品。
[7]熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が0.30cN/dtex以上である[6]記載の足回り編地製品。
[8]熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、2倍伸長下、140℃で45秒間乾熱処理したときの強力保持率が40%以上である[4]乃至[7]のいずれかに記載の足回り編地製品。
[9]任意の穴を開けた又は任意の形状にカットできる[1]乃至[8]のいずれかに記載の足回り編地製品。
[10]ストッキング、タイツ及び靴下のいずれかである[1]乃至[9]のいずれかに記載の足回り編地製品。
本発明によれば、湿熱処理工程において熱融着性弾性繊維を熱融着させることにより、熱融着後の伸縮性に優れ、伝線防止機能を有する足回り編地製品を提供することができる。伝線が生じにくくなるのは、湿熱処理により、熱融着性弾性繊維が融解し、熱融着性弾性繊維相互や、熱融着性弾性繊維と非弾性繊維との交差部が熱融着することにより、またシングルカバリングヤーン(以下SCYという)等のカバリングヤーンの場合、カバリングヤーン相互及び/又はカバリングヤーンとその他の繊維とが熱融着することによる。
本発明の足回り編地製品は、熱融着性弾性繊維を含む編地が湿熱処理されてなるものである。
本発明の足回り編地製品の構成例を以下に示す。
本発明の編地に用いられる熱融着性弾性繊維としては、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸等のいずれであってもよく、また、熱融着性弾性繊維を芯糸とし、その周囲を非弾性繊維で被覆したカバリングヤーンや、熱融着性弾性繊維と非弾性繊維とを合撚した合撚糸、コアスパン糸等の複合糸であってもよいが、カバリングヤーンを用いることが、複合糸の中心に熱融着性弾性繊維を配置できるので、製品のちらつき防止などに効果的であり、また熱融着性弾性繊維の被覆度のコントロールが容易で、均一に被覆できる点から好ましい。また、カバリングヤーンとしては、SCY又はダブルカバリングヤーンがあるが、どちらも芯糸の熱融着性弾性繊維の被覆率を制御できるので使用できる。通常、コスト的には安価にできるSCYが好まれる。
本発明で用いられる熱融着性弾性繊維としては、湿熱処理で熱融着する熱融着性弾性繊維であれば特に限定されないが、熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、伸度、耐久性の面から好ましい。
ポリウレタン弾性繊維をSCYに用いる場合、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度は11〜470dtex、好ましくは11〜156dtex、特に好ましくは、11〜78dtex、非弾性繊維の繊度が5.5〜156dtex、特に8〜78dtexとすることが審美性、実用性、コストの点から好ましい。ドラフト率(伸長倍率)は1.1〜5.5倍、特に1.5〜4.0倍、撚り数を300〜2800T/mとするのが好ましい。撚数が300T/mよりも低いと、編機での編成時の加工安定性が低下する場合があり、2800T/mよりも高いと、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維の被覆度が高くなり、熱融着しにくくなる場合がある。
従って、ポリウレタン弾性繊維のドラフト(伸長倍率)や、非弾性繊維の繊度等により、撚り数は適時変更する必要があるが、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維の被覆率を40%以下に調整することが好ましく、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下である。熱融着ポリウレタン弾性繊維の被覆率が40%を超えると、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互の熱融着箇所が少なくなり、切りっ放しの箇所が繰り返し使用中にほつれやすくなったり、ポリウレタン弾性繊維本来の伸びが失われたりするので好ましくない。
伝線、ほつれやカールがし難く、ポリウレタン弾性繊維本来の伸度が発揮できる点で上記の通りの被覆率が好ましい。一方、編機での編成時の加工安定性の点などから、被覆率は2%以上が好ましい。
なお、本発明において、カバリング糸の被覆率は(1)式で計算した値である。
C=(0.012×√D×T/(1000/DR))×100 (1)式
ここで、Cは被覆度(%)を、Dは熱融着性ポリウレタン弾性繊維の周囲に被覆される非弾性繊維の繊度(デシテックス)を、Tは撚糸時の撚り数(T/m)を、DRはカバリングまたは撚糸時のポリウレタン弾性繊維のドラフトを示す。
一方、本発明の編地に用いられる熱融着性弾性繊維以外の繊維(非弾性糸)としては、特に制限は無く、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等からなる糸を使用することができる。
これらの繊維は、特に熱融着性ポリウレタン弾性繊維の周囲に被覆される非弾性繊維として好適に使用でき、この場合、非弾性繊維としては、ナイロンが代表的に使用できる。
ここで、本発明の編地には、熱融着性弾性繊維が1〜60質量%、特に2〜50質量%含まれていることが好ましい。熱融着弾性繊維の割合が、少なすぎると熱融着力が低下し、ほつれの原因となる場合があり、多すぎると編地の風合いがゴム調になる場合がある。
本発明の編地の種類としては、特に制限されず、平編地、ゴム編地、パール編地等の緯編地を好適に用いることができ、その変化組織として、タック編、浮編、パイル編、レース編とすることもできる。特に、カバリングヤーンを使用した編地としては、カバリングヤーンのみで編み上げた編地、カバリングヤーンとナイロン等の他の糸とを組み合わせて編み上げた交編等も好適に使用することができる。
上記編地を作製するための編機は特に制限されず、通常使用されるものを用いることができ、カバリングヤーンを使用して足回り編地を作製する場合も、足回り編地を作製する公知の編機を使用できる。例えば、パンスト編機、靴下編機、ガーメント・レングス編機等が例示できる。
また、編地の作製条件(カウント数、伸び寸等)も、通常公知の条件で作製することができる。
上記で得られた編地は、通常、編目や寸法を安定させるために、プリセットするが、80℃で30分程度の湿熱処理をする。プリセットした後、足回り編地製品が各部位からなる場合は、必要に応じてミシンによりつま先、パンティ部等を縫製し、足回り編地製品の形体とする。更には必要に応じて染色加工等を施す。これらは公知の条件、工程で行うことができる。
プリセットの後、湿熱セットを行うが、湿熱セットの方法は、例えば(株)芦田製作所製のスチームセッターを使用し、蒸気元圧2.5〜3.0kg/cm2にて通蒸バルブを開放し、密閉したセット室内に蒸気を入れ、セット室内を所定の温度にコントロールする。この場合、セット温度は80〜140℃、特に90〜135℃である。次に、編地を型板に取り付け、セット室内に入れ、所定の時間セットする。セット時間は10〜180秒、特に15〜120秒とすることができる。その後、乾熱110℃の乾燥室にいれ、60秒間乾燥する。湿熱セットを行うセット機は、設定温度、設定時間で湿熱セットできるものであれば、特に限定されない。
湿熱セット(処理)温度が低すぎる場合、又は時間が短過ぎる場合は、熱融着力又はセット効果が不足したり、編地の寸法安定性が低下するおそれがあり、高すぎる場合、又は時間が長過ぎる場合は、非弾性繊維の強力低下や熱変色、風合いが硬くなる、収縮特性が劣るなどの弊害が生じてくるおそれがある。
この湿熱処理により熱融着性弾性繊維が融解し、熱融着性弾性繊維相互及び/又は熱融着性弾性繊維と非弾性繊維との交差部が熱融着する。また、カバリングヤーンの場合は、熱融着性弾性繊維と、熱融着性弾性繊維を被覆する非弾性繊維とが熱融着すると共に、編地の交差部では、交差する熱融着性弾性繊維もしくは熱融着性弾性繊維を芯糸として、その周囲を非弾性繊維で被覆した複合糸相互及び/またはこれと非弾性繊維が熱融着する。
ここで、本発明において、熱融着とは、熱融着性弾性繊維が外からの熱又は熱と圧力とにより、熱融着性弾性繊維相互及び/又は熱融着性弾性繊維と他の繊維とが融着し、密着している状態や、繊維の少なくとも一部が融着し、密着している状態、或いは融着まで至らなくても繊維同士が接着している状態をいう。
本発明で用いられる熱融着性ポリウレタン弾性繊維についてより詳しく説明すると、熱融着性ポリウレタン弾性繊維としては、SCY編地法における熱融着力が120℃で20秒間湿熱処理したとき0.15cN/dtex以上が好ましく、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上であることが好ましい。さらに、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上が好ましく、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtexであることが一層好ましい。
熱融着力については、SCY編地法における熱融着力が0.15cN/dtex未満では伝線防止効果が認められない場合があるが、0.15cN/dtex以上0.3cN/dtex未満では、使い捨て製品や伝線防止に一定の効果がある。0.30cN/dtex以上になると伝線防止はさらに効果的であり、編地に傷が入っても伝線防止に効果があり、伝線防止やほつれに対する耐久性は熱融着力に比例して高くなる。しかし、熱融着力を上げる為に湿熱処理を強くすると、共用した繊維が硬くなり風合いなどが低下するおそれがあり、適度な熱融着力と、使用した繊維本来の風合いが発現する条件を適時選択することが望ましい。
従って、性能や風合いにおいて一層バランスのとれた条件として、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上が好ましく、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtexが好ましい。
本願発明のポリウレタン弾性繊維を用いて大きな熱融着効果が得られる理由については、湿熱でもポリウレタン弾性繊維の極表面が軟化しやすく、該弾性繊維相互の接触箇所が融着することに加え、ポリウレタン弾性繊維と共に用いた共用繊維とも融着することが考えられる。
ここで、本発明においてSCY編地法とは、以下の方法をいう。
(1)ポリウレタン弾性繊維11〜156dtexを芯糸とし、被覆糸としてナイロン6フィラメント糸13dtex5フィラメント(東レ製 商品名アミラン)を使用し、ドラフト倍率2.3倍、撚り数600T/mでカバリングしたSCYを作製する。
(2)パンスト編機(ロナティ社製L416/R、釜径:4インチ、針数400本)の給糸口に(1)で作製したSCYを給糸し、カウント2400コース、伸び寸45cmとし、該SCY一口のみでパンスト編地を作製する。
(3)パンスト編地のつま先をミシンで縫製した後、幅11cmのアルミ製型板に入れ、ウェル方向に1.2倍伸長した状態で、湿熱セット機で所定の温度で20秒間熱処理(熱セット)する。
(4)熱融着力を以下の方法で測定する。
引張試験機[島津製作所(製)精密万能試験機]上部チャックに把持した編地の端から解編したSCYを0.1cNの荷重下で下部チャックに把持し、つかみ間隔(チャック間隔)100mm、引張速度100mm/分で引張り、編地からSCYを解編する時の張力を測定する。
次いで、熱融着部位が解離する度に計測される解編張力のピーク点について、
解編応力が安定する伸長量100mmから200mmの間で値が大きい3番目までのピーク点を平均して、ピーク平均解編張力を求める。続いて、ピーク平均解編張力(cN)をポリウレタン弾性繊維の初期繊度(dtex)で除して熱融着力(cN/dtex)とする。
ポリウレタン弾性繊維相互、あるいはポリウレタン弾性繊維と使用したナイロンとの熱融着力が高くなると、SCYの解編張力は高くなる。更に熱融着が進むと、把持したSCY中のポリウレタン弾性糸は伸長により破断し、把持部に残ったナイロンだけが引き出されるようになり、この場合は、「完全融着」と評価して、熱融着力が最大に達したことを表す。
本発明で使用される熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、更に以下の物性を有していることが好ましい。
即ち、2倍伸長下で、150℃で45秒間乾熱処理したときの耐熱強力保持率の値が20%以上、特に30%以上であることが好ましい。耐熱強力保持率が20%未満では、ランやほつれ防止効果があってもポリウレタン弾性繊維の熱セット率が大きくなりすぎ、伸長回復性が低下したり、物性低下が大きくなるので好ましくない。耐熱強力保持率の上限は特に制限されないが、通常110%以下、特に100%以下である。
また、本発明で用いられるポリウレタン弾性繊維は、140℃で45秒間乾熱処理した場合、耐熱強力保持率の値は40%以上、特に50%以上であることが好ましく、150℃で45秒処理したときの強力保持率が20%以上、かつ140℃で45秒処理した場合の強力保持率が40%以上となることが好ましい。
耐熱強力保持率は、以下の測定方法による。
ポリウレタン弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、乾熱処理を行う。熱処理後のポリウレタン弾性繊維の破断時強力を、定伸長の引っ張り試験機を使用し、把握長5cm、伸長速度500m/分で測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。熱処理前の繊維に対する耐熱強力保持率を表示する。
また、本発明で用いるポリウレタン弾性繊維は、140℃で45秒間乾熱処理した場合、熱セット率の値は30%以上、特に40%以上であることが好ましい。150℃で45秒処理した場合の熱セット率が50%以上となることが好ましい。熱セット率が小さすぎると、加工時の寸法が不安定で、編地にしわが残ったりすることがあり、好ましくない。の場合がある。熱セット率の上限値は特に制限されないが、通常100%以下、特に90%以下である。
熱セット率の測定方法は以下の通りである。
ポリウレタン弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、乾熱処理を行う。熱処理終了より30秒間で把握長を4cmまで狭くして、糸を弛ませた状態にする。熱処理終了より5分30秒後、把握長を大きくし、やや伸長した状態にした後、1mmずつ把握長を狭くしていく。全糸に注目し、糸が弛み始めたところの長さを測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。
次の式で熱セット率を求める。
熱セット率(%)=[(16cm−測定値cm)/8cm]×100
また、本発明で使用するポリウレタン弾性繊維は、300%伸長した直後の残留歪みが40%以下、特に35%以下であることが好ましい。残留歪みが40%より大きいポリウレタン弾性繊維を使用した製品は、肘抜け、膝抜け、伸びきり等の問題が発生したり、身体の補正効果が充分に発現されないので好ましくない。
300%伸長直後の残留歪みとは、把握長4cm、300mm/分で16cmまでの伸長した後直ちに伸長時と同じ速度で元の長さまで回復させ、応力がゼロになった時の残留伸びを基とし、下記式により算出した値をいう。
残留歪み=(残留伸びcm/4cm)×100(%)
本発明で使用される熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法は、上記特性を備えた熱融着性ポリウレタン弾性繊維が得られる限り、特に制限されるものではなく、溶融紡糸方法及び乾式紡糸方法のいずれを採用してもよい。
例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させてポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し、糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミン又は低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し、溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し、糸条に成形する方法、前記固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、前記ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、更には、上記のそれぞれの方法で得られたポリマー又はポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し、糸条に成形する方法等がある。
溶融紡糸法にて本発明のポリウレタン弾性繊維を得る方法は、特に制限されるものではないが、例えば以下の3つの方法が知られている。
(1)ポリウレタン弾性体チップを溶融紡糸する方法。
(2)ポリウレタン弾性体チップを溶融した後、ポリイソシアネート化合物を混合して紡糸する方法。
(3)ポリオールとジイソシアネートを反応させたプレポリマーと低分子量ジオールとを反応させた紡糸用ポリマーを合成した後、固化させることなく紡糸する反応紡糸方法。
(3)の方法は、(1)、(2)の方法に比べ、ポリウレタン弾性体チップを取り扱う工程が無いため簡略であり、また、プレポリマーの反応機への注入割合を調節して、紡糸後のポリウレタン弾性繊維中の残留イソシアネート基の量を調整でき、この残留イソシアネート基による鎖延長反応で耐熱性の向上を得ることもできるため、好適な方法である。更に、(3)の方法では、特表平11−39030号公報に開示されているように、低分子量ジオールをプレポリマーの一部と事前に反応させ、水酸基過剰のプレポリマーとして反応機に注入する方法も行うことができる。
より具体的には、(I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマー(以下「両末端イソシアネート基プレポリマー」とする)と、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマー(以下「両末端水酸基プレポリマー」とする)とを反応させて得られるポリマーを固化することなく溶融紡糸する方法を好適に採用することができる。
この場合、紡糸用ポリマーの合成は、(I)数平均分子量800〜3,500の第一ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーの合成、(II)数平均分子量600〜3,000の第二ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーの合成、及び(III)これら二つのプレポリマーを反応機に導き、連続的に反応させる紡糸用ポリマーの合成の3つの反応で構成される。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維を溶融紡糸法で製造する場合、第一ポリオールの数平均分子量は、800〜3,500程度のポリマージオールを用いることが好ましく、第二ポリオールの数平均分子量は、600〜3,000程度のポリマージオールを用いることが好ましい。
第一ポリオールの数平均分子量がこの範囲より小さいと、得られるポリウレタン弾性繊維の破断伸度や弾性回復性が低下する場合があり、大きいと破断強度や耐熱性、耐寒性などが低下したり、紡糸時の押出性、例えば溶融紡糸の場合では紡糸性が低下する場合がある。従って、より好ましくは、第一ポリオールの数平均分子量は、1,000〜3,000程度である。
一方、第二ポリオールの数平均分子量がこの範囲より小さいと、糸が硬くなったり、均質性に欠ける場合があり、大きいと耐熱性や強度の改善効果が期待できないおそれがある。より好ましくは、第二ポリオールの数平均分子量は、800〜2,500程度である。
第一ポリオールの分子量に比べて第二ポリオールはより低分子量とすると、糸の強度が上がるなど物性上好ましい。なお、ポリオールの数平均分子量の測定方法は、JIS K1557に従い、水酸基価より算出できる。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維に使用できるポリオールとしては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール等を用いることができる。
ポリエーテルグリコールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコールの重縮合により得られるポリエーテルグリコール、THF及び3−MeTHFの共重合体である変性PTMG、THF及び2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG等が例示できる。
ポリエステルグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類から選ばれる少なくとも1種と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の二塩基酸類から選ばれる少なくとも1種との重縮合によって得られるポリエステルグリコール;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られるポリエステルグリコール等が例示される。
ポリカーボネートグリコールとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート等から選ばれる少なくとも1種の有機カーボネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジオールとのエステル交換反応によって得られるカーボネートグリコール等が例示される。
上記例示したポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコールは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリエステルジオールが含まれることが好ましい。
次に、本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造に使用できるジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に際して通常使用されている脂肪族系、脂環式系、芳香族系、芳香脂肪族系等の任意のジイソシアネートを使用することができる。
このようなジイソシアネートとしては、例えば4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でも4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
鎖長延長剤としては、低分子量ジオールや低分子量ジアミンを使用することができ、反応速度が適当であり、適度な耐熱性を与えるものが好ましく、分子中にイソシアネートと反応し得る少なくとも2個の活性水素原子を有し、一般に分子量が500以下の低分子量化合物が使用される。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維に使用できる低分子量ジオールとしては、炭素数が2〜6のジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては特に、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとを組み合わせたり、炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとを組み合わせて、少なくとも2種の低分子量ジオールを併用することが優れた熱融着効果を示し、かつ反応性、紡糸の安定性、物性などの点から好ましい。また、上記において炭素数2〜6の低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを使用することが好ましい。
また、低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ブタンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン等を用いることができる。
低分子量ジオールと低分子量ジアミンを併用することもできるが、本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法においては、鎖長延長剤として低分子量ジオールをより好ましく使用することができる。
また、反応調整剤又は重合度調整剤として、ブタノール等の1官能性のモノオールやジエチルアミンやジブチルアミン等の1官能性のモノアミンを混合して用いることもできる。
更に、紡糸性を阻害しない範囲内で、水酸基及び/又はアミノ基などの官能基を有する平均官能基数(分子中の活性水素原子の数)が3〜6、特に3又は4である活性水素化合物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール(4価)、ソルボース(5価)、ソルビトール(6価)、1,3,5−トリアミノベンゼン等などが挙げられる。
この場合、官能基数が6を超えると、最終的に得られるポリウレタンの弾性(柔軟性)を付与することができないため好ましくない。好ましくは3官能性化合物が使用され、特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンが好ましく使用される。
上記活性水素化合物の使用量は、鎖長延長剤と活性水素化合物を合わせた全部に対して、3官能化合物が6当量%以内であることが好ましい。6当量%を超えると、柔軟性を付与できず、紡糸性が安定しないため好ましくなく、特に好ましくは、4当量%以下である。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維には、耐候性、耐熱酸化性、耐黄変性改善のために、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の任意成分を添加することができる。安定剤を使用する場合は、安定剤の種類、配合量により耐熱性、耐黄変性が大きく異なるため、ポリウレタン重合体に対して効果を発揮する安定剤の種類を選択し、それぞれに効果のある安定剤の配合量を組み合わせて使用することが好ましい。適した安定性を使用することにより黄変しにくく、耐熱性の優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
その他必要に応じて、セミカルバジド系化合物等の安定剤、ビスフェノールSなどの有機硫黄系二次酸化防止剤、ホスファイト系二次酸化防止剤、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、酸化チタン、ジルコニウム含有化合物等のような無機微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、オルガノシロキサン等の粘着防止剤、フッ素系又はシロキサン系などの帯電防止剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナなどの無機質コロイドゾル、シランカップリング剤、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ピロリン酸エステルなどの熱融着向上剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルなどの防腐剤、その他着色剤、防カビ剤、消泡剤、可塑剤、ワックス類、軟化剤、離型剤、発泡剤、増量剤、増核剤、抗菌剤、消臭剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
原料の組成比は上記3つの反応を通算して、全ジイソシアネートのモル量と、全ポリオール及び全低分子量ジオールの合計モル量とのモル比が0.95〜1.25が好ましく、更に好ましくは1.005〜1.205である。
また、全ジイソシアネートとポリオール(第一ポリオールと第二ポリオールの合計)のモル比は2.4〜3.8が好ましく、更に好ましくは、2.5〜3.5である。モル比が2.4より低いと得られるポリウレタン弾性繊維の伸度が高くなるが、耐熱性が不足する場合があり、モル比が3.8より高いと耐熱性は良いが、糸が硬く伸度も低くなる場合がある。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、(1)ポリオールの種類とその含有量、並びに(2)低分子量ジオールの種類とその含有量及び紡糸直後のポリウレタン繊維に含まれる窒素含有量をそれぞれ調整し、組み合わせることで、高い熱融着性を達成することができる。具体的に、上記(1)、(2)の各条件は、更に下記の各条件に分けられる。
(1a)全ポリオール(第一及び第二ポリオールの合計)中のポリエステルポリオール成分の割合が55モル%以上95モル%以下のとき。
(1b)全ポリオール中のポリエーテルポリオール成分の割合が60モル%以上100モル%以下のとき。
(2a)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が55モル%以上80モル%未満であり、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.8質量%以上4.2質量%以下のとき。
(2b)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が80モル%以上98モル%未満、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.2質量%以上4.2質量%以下のとき。
(2c)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が98モル%以上100質量%以下、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.2質量%以上2.8質量%未満のとき。
なお、本発明において、主となる低分子量ジオールとは、全低分子量ジオールのうち、モル量が最も多い(55モル%以上)低分子量ジオールをいう。
各条件について説明すると、まず、ポリオールの種類と含有量については、(1a)特に良好な融着性と編地の均整度を得るためには、全ポリオール中のポリエステルポリオール成分を55モル%以上、好ましくは55モル%以上95モル%以下、更に好ましくは60モル%以上90モル%以下である。ポリエステルポリオールの割合が少なすぎると可紡性や糸の均斉度が低下したり、耐塩素性が劣る場合があり、多すぎると耐アルカリ性、耐カビ性に劣る場合がある。なお、第一ポリオールとしてポリエステルポリオール成分を選ぶと、糸の均整度を高くする点で好ましい。
一方、(1b)特に良好な融着性と高い耐熱強力保持率を得るためには、全ポリオール中のポリエーテルポリオール成分が60モル%以上100モル%以下、更に好ましくは70モル%以上100モル%以下であることが望ましい。ポリエーテルポリオールの割合が少なすぎると耐熱強力保持率が低下したり、可紡性や糸の均斉度が低下したりする場合がある。なお、第一ポリオールがポリエーテルポリオール成分からなることが耐アルカリ性の点から好ましい。
次に、低分子量ジオールの種類と含有量については、(2a)主となる炭素数2〜6のジオールの含有率が全低分子量ジオールに対して、55モル%以上80モル%未満とすることが好ましく、より好ましくは60モル%以上80モル%未満である。炭素数2〜6のジオールのうち、主となる低分子量ジオールである炭素数2〜6のジオールは、併用量が55モル%未満であると、繊維の伸長回復率、圧縮永久歪みや耐熱性が悪くなる場合がある。
炭素数2〜6のジオールの含有率が55モル%以上80モル%未満の場合、得られるポリウレタン弾性繊維の窒素含有率は2.8質量%以上4.2質量%以下、特に2.9質量%以上3.4質量%以下が好ましい。窒素含有率が低すぎると耐熱性が低くなる場合があり、高すぎると熱融着力が低くなる場合がある。
一方、(2b)炭素数2〜6のジオールの含有率が80モル%以上98モル%未満の場合は、窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下、特に2.6質量%以上3.4質量%以下が好ましい。窒素含有率が低すぎると、イソシアネートとの反応に関わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が劣るため好ましくなく、窒素含有率が高すぎると、イソシアネート化合物に起因するポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、熱融着力が低くなる場合がある。
ここで、本発明においては、上述したように炭素数2〜6のジオールのうち、少なくとも2種類の低分子量ジオールを併用することが好ましいが、(2a)及び(2b)の場合、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとを組み合わせて用いるときは、耐熱性、伸長回復性などの点から、炭素数2及び又は4のジオールが主となることが好ましく、炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとを組み合わせて用いるときは、耐熱性、伸長回復性、伸縮疲労性、耐薬品性などの点から、炭素数6のジオールが主となることが好ましい。
また、(2c)炭素数2〜6のジオールの含有率が98モル%以上100モル%以下の場合は、窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満、特に2.4質量%以上2.8質量%未満であることが好ましい。窒素含有率が低すぎると、イソシアネートとの反応に関わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が劣るため好ましくなく、窒素含有率が高すぎると、イソシアネート化合物に起因するポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、熱融着力が低くなる場合がある。
(2c)の場合、炭素数2〜6のジオールのうち、少なくとも1種の低分子量ジオールを使用することができ、耐熱性、伸長回復性などの点から、炭素数2、4及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールが主となることが好ましい。
本発明においては、上記(1a)又は(1b)の条件と、(2a)、(2b)又は(2c)の条件とを組み合わせた方法により、いずれも熱融着性に優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができ、それぞれの条件下で、上述したように特有な効果をもたらすことができる。
本発明においては特に、ストッキング等の薄地の足回り製品については、熱融着性に優れ、しかもより均整度の高い編地が得られるという点から、(1a)の条件下で製造される、ポリエステルポリオール成分を多く含むポリウレタン弾性繊維を用いることが好ましい。
熱融着性に優れ、かつ綿の精錬・漂白処理加工などを実施する場合は、(1b)の条件下で製造されるポリエーテルポリオール成分を多く含むポリウレタン弾性繊維を用いることが耐アルカリ性の点などから好ましい。
熱融着力が大きくかつ伸縮性や洗濯耐久性など製品としてバランスのよい物性を与える組成として(2a)が、製品として大きな伸びを得る場合には(2b)が、特に大きな熱融着力を与えるためには(2c)が好条件である。
溶融紡糸方法についてより具体的に説明すると、(I)の両末端イソシアネート基プレポリマーは、例えば温水ジャケット及び撹拌機を具備したタンクに所定量のジイソシアネートを仕込んだ後、撹拌しながら所定量のポリオールを注入し、60〜130℃で30〜100分、更に好ましくは80〜120℃で50〜70分窒素パージ下で撹拌することにより得ることができる。
反応温度が60℃未満では、反応時間が大幅に長くなり、場合によってはプレポリマーが析出してくるおそれがある。また、反応温度が130℃を超えると、イソシアネート基のダイマー及びトリマー化反応等の副反応が顕著になり好ましくない。
この反応で得られた両末端イソシアネート基プレポリマーは、ジャケット付きギアポンプ(例えば、KAP−1 川崎重工業(株)製)を用いてポリウレタン弾性繊維用反応機に注入する。
(II)の両末端水酸基プレポリマーは、温水ジャケット及び撹拌機を具備したタンクに所定量のジイソシアネートを仕込んだ後、撹拌しながら所定量のポリオールを注入し、60〜130℃で30〜100分、好ましくは80〜120℃で50〜70分窒素パージ下で撹拌して前駆体を得、次いで、低分子量ジオールを注入し、撹拌して前駆体と反応させることで得ることができる。反応温度が80℃以下では、反応時間が大幅に長くなり、場合によってはプレポリマーが析出してくる。また、反応温度が130℃以上では、イソシアナート基のダイマー及びトリマー化反応等の副反応が顕著になり好ましくない。
得られた両末端水酸基プレポリマーはジャケット付きギアポンプ(例えば、KAP−1 川崎重工業(株)製)を用いてポリウレタン弾性繊維用反応機に注入する。なお、この(I)、(II)の両プレポリマー合成時あるいは合成後に、耐候性、耐熱酸化性、耐黄変性等を改善するための上記各種薬品類を添加することができる。
(III)の紡糸用ポリマーの合成は、一定比率で送り込まれた(I)、(II)のプレポリマーを、連続反応させて得ることができる。この場合、反応機としては、通常のポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸法に用いられるものでよく、紡糸用ポリマーを加熱、溶融状態で撹拌、反応させ、更に紡糸ヘッドに移送する機構を備えた反応機が好ましい。
反応条件は、160〜220℃で1〜90分、好ましくは180〜210℃で3〜80分である。反応温度が160℃未満では、(I)、(II)のプレポリマーが高粘度状態であるため均一に混合反応できず、また反応温度が220℃以上では、紡糸用ポリマーが熱により黄変したり劣化したりするため好ましくない。
原料を直接反応機に投入して連続的に製造する場合、スクリュウやバレル、ポリマーの流路で局部反応がおこるため、ビス(ヒドロキシフェニル)類を上述プレポリマーに添加することができる。このビス(ヒドロキシフェニル)類は、特開平8−176254号公報の「ポリウレタン組成物」記載の通り、局部反応せず、均一混練下で重合することができるため、スケールが発生し難く、工程安定性の高いポリウレタンを供給することができる。
このビス(ヒドロキシフェニル)類を1種単独で又は2種類以上混合して使用することにより、透明性に優れ、しかも強伸度、耐熱性等の物性も良好な実用性に富んだポリウレタン弾性繊維が得られる。好ましいビス(ヒドロキシフェニル)類は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビスフェノールA、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフォン等が挙げられる。
本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、合成された紡糸用ポリマーを固化させることなく紡糸ヘッドに移送し、ノズルから吐出、紡糸して得ることができるが、紡糸用ポリマーの反応機内での平均滞留時間は反応機の種類によって異なり、下式により計算される。
反応機内での平均滞留時間=(反応機容積/紡糸用ポリマー吐出量)×紡糸用ポリマーの比重
紡糸用ポリマーの反応機内での平均滞留時間は、一般的に円筒形反応機を用いる場合は約20〜180分であり、約30〜120分がより好ましく、2軸押出し機を用いる場合は30秒〜30分であり、1〜20分がより好ましい。紡糸温度は160〜230℃が好ましく、更に好ましくは180〜220℃であり、ノズルより連続的に押出した後、冷却し、紡糸油剤を付着して巻取ることによって得ることができる。
紡糸温度が160℃未満では、紡糸用ポリマーがノズルより吐出不良を起こすため好ましくなく、また230℃以上の高温では、紡糸用ポリマーの分解反応が起こるため好ましくない。
ここで、両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーとの比率は、紡糸した直後の糸中に残留イソシアネート基(残留NCO%)が0.2〜1.0質量%、より好ましくは0.25〜0.90質量%残るように注入ギアポンプの回転比率を適宜調整することが好ましい。残留イソシアネート基が0.2質量%以上過剰に含まれていると、紡糸後の鎖延長反応により強伸度、耐熱性等の物性を向上させることもできる。しかし、残留イソシアネート基が0.2質量%より少ないと、得られるポリウレタン弾性繊維の耐熱性が低下するおそれがあり、また、1.0質量%を超えると紡糸用ポリマーの粘度が低くなり、紡糸が困難になる場合が生じる。また、紡糸した糸の融点が高くなりすぎるなどの欠点が生じるおそれがある。
なお、紡糸した繊維中の残留イソシアネート基の含有率は以下のように測定する。
紡糸した繊維(約1g)をジブチルアミン/ジメチルホルムアミド/トルエン溶液で溶解した後、過剰のジブチルアミンと試料中の残留イソシアネート基を反応させ、残ったジブチルアミンを塩酸で滴定し、残留イソシアネート基の含有量を算出する。
残留イソシアネート基を残したまま、紡糸するためには紡糸時に油剤を付与することが好ましい。油剤を付与しないままで紡糸すると、紡糸後に残留イソシアネート基が反応して糸同士が接着したり、解舒性が悪くなる場合がある。
本発明で使用されるベース油剤の成分としては、鉱物油、シリコーンオイルなどが挙げられる。
油剤は、ポリウレタン弾性繊維中に油剤が1〜10質量%、特に2〜8質量%含まれるように付与することが好ましい。上記値をポリウレタン弾性繊維に付与されている油剤の割合、即ち付与率といい、これは含有率(含有されている割合)と付着率(付着されている割合)の両者を合わせた率である。
油剤がポリウレタン弾性繊維に対して1質量%未満であると、解舒性が悪く、編み針等の金属による摩耗を引き起こしやすいので好ましくなく、また10質量%を超えて付着していると、紙管に巻かれた糸の内層部に油剤が多く付着し内層ポリマーが油剤により劣化したり、ノズルカスを発生させたり、非弾性繊維と編地を作成した際に非弾性繊維のオリゴマーを析出するなどの悪影響を与えるため好ましくない。
付与率の測定は、重量法又は石油エーテル抽出法によって行うことができる。重量法による測定方法は、事前に空紙管の質量、紡糸ノズルからのポリマーの単位時間当たりの吐出量、紙管への糸の巻取時間、巻糸体の質量を計量し、巻糸体の質量からポリマーの総吐出量及び空紙管の質量を差し引いた残りの質量が油剤の付与量であり、計算で求めた油剤の付与量からポリマーの総吐出量を除した割合が油剤の付与率である。
石油エーテル抽出法による測定方法は、
(1)巻取糸サンプル(A)を約2g精秤した後、石油エーテル50mlで1分間洗浄する。
(2)この洗浄を3回繰り返した後、巻糸サンプルをろ紙で挟んで充分乾燥させる。
(3)室温にて風乾後、巻取り糸サンプルの重量(B)を測定する。下記式に従いOPUを算出する。
OPU(油剤付与量)%={(A−B)/(B)}×100
簡易的には重量法で、確認検査として石油エーテル抽出法のいずれの方法でもOPU%を求めることができる。
油剤を付与して巻取られた糸は、固相重合を行い反応を完結させる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、上述したように、紡糸した直後の糸中の残留イソシアネート基が0.2〜1.0質量%であることが好ましいが、残留イソシアネート基が0.2質量%未満では架橋結合の生成量が少ないために耐熱性が低く、糸切れしやすい。また残留イソシアネート基が1.0質量%を超えると架橋結合の生成量が多く、耐熱性が高くなるため溶融するまでに時間がかかり、熱融着性を得られにくいため好ましくない。
上記範囲とすることで、ポリウレタン弾性繊維として必要な耐熱性を保ちつつ、湿熱処理により良好な熱融着性の効果を得ることができる。
上記製法によって得られるポリウレタン弾性繊維は、SCY編地法において120℃で20秒間、特には115℃20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上、好ましくは0.30cN/dtex以上であるため、この熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む編地を湿熱処理することで、伝線、ほつれ等の発生を抑えた足回り成型編地製品を得ることができる。
本発明の足回り編地製品とは、足部分に着用するものであり、例えばトゥクッション、フットカバー、アンクレット、ソックス、クルーソックス、ブーツソックス、スリーコーター、ハイソックス、オーバーザニー、ストッキング、パンティストッキング、タイツ、スパッツ、トレンカー、レッグウォーマー等、特には薄地の足回り編地製品として使用することができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
ポリウレタン弾性繊維の合成
(i)両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)23.5部を窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)48.1部を撹拌しながら注入し、1時間反応させた。次いで、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)18.2部を更に注入し、1時間反応させた。更に1,6−へキサンジオール(HDO)10.2部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
(ii)両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,100のポリエチレンアジペート(PEA)を69.1部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
(iii)ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
得られた両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.308の質量比で、ポリウレタン弾性繊維用円筒形反応機に連続的に供給した。反応機内での平均滞留時間は約1時間、反応温度は約197℃であった。
得られた紡糸用ポリマーを固化することなく、197℃の温度に保った8ノズルの紡糸ヘッド2台に導入した。紡糸用ポリマーをヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルターでろ過後、1ホールのノズルから紡糸筒内に吐出させ、紙管に巻き取り、33dtexのポリウレタン弾性繊維を得た。
なお、全ポリオール中のポリエステルポリオールの成分の割合は69モル%であり、全低分子量ジオール(BDO+HDO)に対するBDOの割合は70モル%であった。また、紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.43%であった。
得られた巻糸体を直ちに温度40℃で相対湿度80%の部屋の中で5日間固相反応させた。
得られたポリウレタン弾性繊維のSCY編地法での熱融着力は、湿熱115℃の場合が、0.65cN/dtex、湿熱120℃の場合が1.12cN/dtexであった。
また、耐熱強力保持率は、140℃の場合57%、150℃の場合40%であった。
また、熱セット率は、140℃の場合が50%、150℃の場合が59%であった。
また、300%伸長時の残留歪は、30%であった。
SCY糸の作製
上記により得られた熱融着性ポリウレタン弾性繊維を2.3倍ドラフトし、被覆糸としてナイロン6、13dtex/5フィラメント(東レ製 商品名アミラン)を1400T/m被覆してSCY糸を得た。
パンティストッキング(以下パンスト)編地の作製
パンスト編機(ロナティ社製L416/R、釜径:4インチ、針数400本)の給糸口に得られたSCYを給糸し、カウント2,400コース、伸び寸45cmとし、SCYのみでパンスト編地を作製した。
次いで、得られた編地を下記工程にて処理した。
1)プリセット
湿熱80℃×15分×2回(編目や寸法を安定させる。)
2)染色
95℃、60分の条件で染色
3)縫製
ペアクローザーまたはミシンによりパンティ、トウ部を縫い合わせる。
4)湿熱セット処理
(株)芦田製作所製のスチームセッターを使用し、縫製後の編地を幅11
cmのアルミ製型板(足型)に入れた状態で、ウェル方向に1.2倍の
伸長し、その状態に保ったまま、該編地を120で20秒間湿熱処理し
た。
ラン評価
SCY編地の片面の任意の5箇所の編目をはさみで切断し、カーブのついたアクリル板(チェトメ社製の靴下・ストッキングのサイズ採寸測定器ミズラトーレに付属したアクリル板を使用した、該アクリル板の概寸は、幅約20cm、長さ約80cm、凹部の深さ最大約4cm)に該編地を挿入する。
この時、編目を切断した面が板の凹側になるよう挿入する。該編面は板面と接触しないで挿入されるので、ラン(伝線)が最も発生し易い状態となり、この時のランの有無でパンストの耐ラン性を評価した。
なお、該アクリル板へ編地を挿入する際は、着用時のパンストへかける力と同等ないし同等以上の力を加えることが好ましい。例えば、手で素早く挿入してもよいし、あるいは編地に定荷重(1kgf)の力を加え挿入してもよい。実施例及び比較例では、当該編地を手で素早く挿入することで評価した。カーブのついたアクリル板への挿入は合計2回繰り返し、その後ランの発生状態を観察した。
○:ランが発生しない
×:ランが発生する
ストッキング編地斑評価
ストッキング編地をアクリル製黒板(幅10cm、長さ88cm)に通し、斑の状態を目視で評価する。
○:編地の均整度が高く、製品として使用できるレベル。
×:編地の均整度が低く、審美性が低いがゆえに製品として使用できないレベル。
熱融着力の測定
湿熱セット後の編地をコース方向にカットし、カット部の端から解編したSCY糸をSCY編地法の(4)に記載の方法で測定した。
仕上がり後のパンティストッキング編地について、ラン評価、編地斑評価、及び熱融着力の測定を実施したところ、ランは発生せず、編地の均整度が高く、審美性の高い製品であった。また、熱融着力は0.55cN/dtexであった。
次いで、着用評価を行ったところ、編目が熱融着により固定されているため、着用時に指でつまんで伸長しても、履き斑は発生せず、着用中審美性に優れていた。また、着用前後の寸法変化が小さく、着用しやすかった。
洗濯を10回繰り返しても、ランは発生せず、着用時に指でつまんで伸長しても、履き斑は発生せず審美性も同等であり、くわえて、足型にセットした形状を保持しているため、着用しやすさにも変化はなく、洗濯後も着用しやすい製品であった。
また、着用前に、直線、曲線に裁断または溶断し、前記した着用と洗濯を繰り返してもラン、ほつれの発生もなかった。さらに、着用前に大きさが約3cmの丸、ダイヤ、ハート、星型等、任意の形の穴を開け、前記した着用と洗濯を繰り返してもラン、ほつれが発生することなく、開けた穴を保持した。
[実施例2]
実施例1と同一の熱融着性ポリウレタン弾性繊維を用いて、2.3倍ドラフトし、被覆糸として(東レ製ウーリーナイロン、78dtex/24フィラメント)を600T/m被覆してSCY糸を得た。
実施例1と同一の方法で編みたて、加工、湿熱セットを行い、タイツを得た。
実施例1と同様の糸を用い、実施例1と同一の方法で編みたて、加工、湿熱セットを行い、タイツを得た。
足首部でコース方向に沿って裁断してもラン、ほつれの発生はなく、着用しやすく、審美性にも優れ、また洗濯による形態変化も少ない切りっぱなしのスパッツを得ることができた。また、熱融着力は0.41cN/dtexであった。
[比較例1]
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を24.0部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)49.3部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)26.6部を更に注入し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10
−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,100のポリエチレンアジペート(PEA)を69.1部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.291の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。なお、全ポリオール中のポリエステルポリオールの成分の割合は71モル%であり、全低分子量ジオール中のBDOの割合は100モル%であった。紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.85%であった。
得られたポリウレタン弾性繊維のSCY編地法での熱融着力は、湿熱115℃の場合が、0.07cN/dtex、湿熱120℃の場合が0.12cN/dtexであった。
また、耐熱強力保持率は、140℃の場合が100%、150℃の場合が93%であった。
また、熱セット率は、140℃の場合が39%、150℃の場合が42%であった。
また、300%伸長時の残留歪は、25%であった。
実施例1と同様にSCY糸、およびパンスト編地を作成し、湿熱処理した。
仕上がり後の編地において、ラン評価、編地斑評価、及び熱融着力の測定を実施した。熱融着性は劣っており、ラン評価において、ラン、ほつれが発生し、耐ラン性に劣る製品であった。熱融着力は0.03cN/dtexであった。
本発明においては、足回り編地製品、特に薄地の足回り編地製品について、従来工程である湿熱処理工程をそのまま利用することにより、効率的かつ効果的な伝線防止機能を付与できる。
また、部分的に穴が発生しても伝線(ラン)が生じないため、それ以上に損傷が広がることがない。本発明の編地は、切断部からほつれ等が広がることがないため、任意の形状にカットして使用することもできる。

Claims (10)

  1. 熱融着性弾性繊維を含む足回り編地が、湿熱処理されてなることを特徴とする伝線防止機能を有する足回り編地製品。
  2. 熱融着性弾性繊維からなる芯糸と、この芯糸に巻回された非弾性繊維とからなるカバリングヤーンで形成される請求項1記載の足回り編地製品。
  3. カバリングヤーンが、シングルカバリングヤーンである請求項2記載の足回り編地製品。
  4. 熱融着性弾性繊維が、シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維である請求項1、2又は3記載の足回り編地製品。
  5. 熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が0.30cN/dtex以上である請求項4記載の足回り編地製品。
  6. 熱融着性弾性繊維が、シングルカバリングヤーン編地法において、115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.15cN/dtex以上の熱融着性ポリウレタン弾性繊維である請求項1乃至5のいずれか1項記載の足回り編地製品。
  7. 熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が0.30cN/dtex以上である請求項6記載の足回り編地製品。
  8. 熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、2倍伸長下、140℃で45秒間乾熱処理したときの強力保持率が40%以上である請求項4乃至7のいずれか1項記載の足回り編地製品。
  9. 任意の穴を開けた又は任意の形状にカットできる請求項1乃至8のいずれか1項記載の足回り編地製品。
  10. ストッキング、タイツ及び靴下のいずれかである請求項1乃至9のいずれか1項記載の足回り編地製品。
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