JP2007153117A - 車両用スタビライザシステム - Google Patents

車両用スタビライザシステム Download PDF

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Abstract

【課題】車両用アクティブスタビライザシステムの実用性を向上させる。
【解決手段】段差に起因する車体の傾斜および車体下部への段差の干渉を抑制すべく、1輪のみが段差上部に位置した状態では(S1)、段差上部輪をバウンドさせるとともに段差上部輪の対角輪をバウンドさせる(S2)。前後とも左右において同じ側の車輪が段差上部に位置した状態では(S3)、前後ともに段差上部輪をバウンドさせる(S4)。前後とも左右の車輪の間に段差が存在しない状態では(S5)、前後ともスタビライザ力を発揮させないようにする(S6,S9)。1輪のみが段差下部に位置した状態では(S7)、段差下部輪をリバウンドさせ、段差下部輪が存在しない側においてスタビライザ力を発揮させないようにする(S8)。また、段差走行の途中で車両の作動を停止させた際に作動状態を記憶し、作動開始時にその作動状態を再現する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、車両用スタビライザシステムに関し、詳しくは、アクチュエータを有してスタビライザバーの発揮するロール抑制力を変更可能なスタビライザ装置を備えたスタビライザシステムに関する。
今日では、いわゆるアクティブスタビライザシステムが実用化され始めている。アクティブスタビライザシステムは、下記特許文献に記載されたようなシステムであり、スタビライザバーとそのスタビライザバーの発揮するロール抑制力を変更するアクチュエータとを備えたスタビライザ装置を備え、車両の旋回状態に応じたロール抑制力をスタビライザバーに発揮させるべく、アクチュエータをアクティブに制御可能とされている。
特表2002−518245号公報
実際の車両の走行においては、車両は、平坦路のみを走行するわけではない。例えば、段差の存在する路面を車両が通過せざるを得ないような場合もある。このような段差の存在は、車体姿勢を大きく変化させる一因であり、また、車体下部と段差とが干渉する事態をも招く。したがって、上記スタビライザ装置によってそのような段差に対応することができれば、そのスタビライザ装置の実用性を向上させることが可能となる。本発明は、そのような観点に基づいてなされたものであり、実用性の高い車両用スタビライザシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明の車両用スタビライザシステムは、いわゆるアクティブスタビライザシステムにおいて、車両の旋回状態に応じたアクチュエータの作動制御を実行可能なことに加え、段差が存在する場合においてその段差に対応すべく、左右の車輪の各々と段差との関係に基づくアクチュエータの作動制御を実行可能に構成されたことを特徴とする。
本発明の車両用スタビライザシステムでは、段差に対応する制御が実行可能であることから、段差の存在に起因する車体姿勢の大きな変動を抑制することが可能であり、また、段差と車体の下部との干渉を効果的に回避することが可能となる。そのような利点を有することによって、本発明の車両用スタビライザシステムは、実用性が向上させられたシステムとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、下記の項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(5)項ないし(9)項を合わせたものが請求項3に、(10)項と(11)項とを合わせたものが請求項4に、それぞれ相当する。
(1)(a)両端部の各々が左右の車輪の各々を保持する車輪保持部材に連結され、一方の車輪の車体に対する離間距離を拡大するとともに他方の車輪と車体との離間距離を縮小する力であるスタビライザ力を発揮するスタビライザバーと、(b)スタビライザ力を自身の作動状態に応じて変更するアクチュエータとを有するスタビライザ装置と、
そのスタビライザ装置を制御する制御装置であって、スタビライザ力を車両の旋回状態に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する旋回状態依拠制御部と、路面の段差に対応すべく左右の車輪の各々と段差との関係に基づいてアクチュエータの作動を制御する段差対応制御部とを有する制御装置と
を備えた車両用スタビライザシステム。
本項に記載の車両用スタビライザシステムは、いわゆるアクティブスタビライザシステムと呼ぶことのできるシステムであり、そのシステムにおいて一般的な車両旋回時における車体のロールについてのアクティブな制御に加え、段差に対応するための制御を実行可能に構成されている。詳しく言えば、例えば、段差に乗り上げるあるいは段差を下りる際における車体姿勢の大きな変動を抑制するような制御や、車体の下部が段差に干渉することを回避するような制御が実行可能となる。本項の態様のスタビライザシステムによれば、段差に対して効果的に対応できることになり、アクティブスタビライザシステムの実用性が向上することになる。
なお、現状において、油圧式の懸架シリンダを備えた車高調整システム、あるいは、いわゆるエアスプリングの空気圧を変更することによる車高調整システム等が装備されている車両も存在する。そのような車両の場合には、上記車高調整システムを利用して、車高を上昇させることにより、車体の下部と段差との干渉を抑制あるいは回避することが可能である。しかし、一般的に、上記車高調整システムによる車高調整は、車高全体を一律に調整可能であっても、車体の姿勢を調整することが困難であり、また、車高調整を完了するまでに比較的長い時間を要することから、迅速性という面では難点がある。したがって、このような実情に鑑みれば、本項の態様のスタビライザシステムは、有用性の高いシステムであるといえる。
本項に記載の車両用スタビライザシステムは、そのハード構成が特に限定されるものではなく、既に公知のハード構成を有するアクティブスタビライザシステムが広く対象となる。例えば、後に説明するように、スタビライザバーを、中央部で2つに分離して1対のスタビライザバー部材によって構成し、それら1対のスタビライザバー部材の間にアクチュエータを配設して、そのアクチュエータがそれら1対のスタビライザバー部材を相対回転させるようなあるいは相対回転させる力を発生するような構成であってもよく、また、スタビライザバーの一方の端部と車輪保持部材との間にアクチュエータを配設して、そのアクチュエータがその一方の端部と車輪保持部材との間隔を変更するようなあるいは変更する力を発生させるような構成であってもよい。さらに、アクチュエータは、どのような力に基づいて動作するものであってもよい。例えば、油圧等によって作動する流体式のアクチュエータであってもよく、また、後に説明するように、電動モータ等を駆動源として備えた電磁式のアクチュエータであってもよい。
本項の態様における制御装置は、例えば、コンピュータを主体として構成することができ、そのような構成の制御装置において、「旋回状態依拠制御部」は、車両の旋回に対応するためのアクティブ制御を実行する機能部となる。旋回状態依拠制御部が実行するアクティブ制御は、例えば車体が受けるロールモーメントに応じてアクチュエータを制御することで、車体のロール量を効果的に抑制するような制御を広く意味する。具体的には、車体に発生する横加速度,ヨーレート,車速と操舵量との関係等、車体の旋回の激しさの程度を示す何らかの指標量に基づいて、アクチュエータの作動状態が制御される。この制御される「アクチュエータの作動状態」は、アクチュエータの発揮する力、つまり、アクチュエータ力の発揮状態であってもよく、アクチュエータの動作量であってもよい。具体的に言えば、例えば、アクチュエータ力に応じたスタビライザ力が発揮される構造のスタビライザ装置では、そのスタビライザ装置が分担すべきロール抑制力を目標となるスタビライザ力として、それを車両の旋回状態に基づいて決定し、その目標スタビライザ力が発揮されるようにアクチュエータ力が制御されてもよく、また、アクチュエータの動作量に応じたスタビライザバーの剛性(見かけ上の剛性である)が得られるようなスタビライザ装置では、車両の旋回状態に応じた剛性を得るべくその旋回状態に基づいて目標となるアクチュエータ動作量を決定し、アクチュエータの動作量がその目標動作量となるような制御が実行されてもよい。
本項の態様において制御装置の有する「段差対応制御部」は、このアクチュエータの作動を制御することによって、段差に対応するための制御を実行する機能部である。つまり、段差に対応するためのもう1つのアクティブ制御を実行する機能部といえる。本段差対応制御部による制御において対象となる「段差」は、その形態が特に限定されるものではないが、例えば、車道と歩道との関係のように、段差を挟んで高い部分と低い部分が存在し、その高い部分である段差上部と低い部分である段差下部との各々がある範囲で連続しているような段差を対象とすることができる。そのような段差を車両が通過する場合あるいはそのような段差を有する路面に車両が進入する場合、特に、左右の車輪が段差上部と段差下部とに位置する状態においては、車体が左右に比較的大きく傾斜する。また、そのような場合には、車体の下部と段差とが干渉することも考えられる。段差対応制御部による制御では、左右の車輪と段差との関係に基づいてスタビライザ装置を制御することにより、そのような事態を抑制あるいは解消することが可能となるのである。
なお、上記旋回状態依拠制御部による制御と段差対応制御部との制御との切換えは、何らかの段差検出手段を設けて、その検出手段の検出結果に基づいて自動的に行われてもよく、また、運転者の操作スイッチ等の操作に基づいて、つまり、運転者の任意の選択によって行われてもよい。
(2)前記段差対応制御部が、段差を挟んで左右の車輪の一方が段差上部に他方が段差下部に位置する場合において、段差上部に位置する側の車輪と車体との離間距離に対して段差下部に位置する車輪と車体との離間距離が大きくなる状態である左右離間距離差確保状態を実現するように、前記アクチュエータの作動を制御するものである(1)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、段差対応制御部による制御の態様を具体的に限定した態様である。段差を挟んで左右の車輪が段差上部と段差下部に存在する場合には、車体は左右に傾く。この段差に起因する車体の左右の傾斜を抑制するためには、車輪と車体との離間距離(以下、「車輪車体間距離」という場合がある)を左右の車輪について異ならせることが望ましい。また、段差下部に存在する車輪付近において、車体の下部が段差に干渉する可能性があり、その場合にも、車輪車体間距離を左右の車輪について異ならせることが望ましい。具体的には、段差上部に存在する車輪についての車輪車体間距離を小さくし(以下、「車輪をバウンド方向に変位させる」という場合がある)、段差下部に存在する車輪についての車輪車体間距離を大きくする(以下、「車輪をリバウンド方向に変位させる」という場合がある)ことが望まれるのである。このような状態が、本項にいう「左右離間距離差確保状態」であり、アクチュエータの作動を制御してこのような状態を実現することで、段差に起因する車体姿勢の変動や、車体下部の車体との干渉を抑制あるいは回避することが可能となるのである。なお、左右離間距離差確保状態を実現するタイミングは、特に限定されるものではないが、左右の車輪のそれぞれが段差上部と段差下部とに位置した直後あるいはそれ以前であることが望ましく、さらには、左右の車輪が段差上部と段差下部とに位置し始めるあるいは位置しようとする最中であることが望ましい。
(3)前記段差対応制御部が、
前記左右離間距離差確保状態として、左側輪と車体との離間距離と右側輪と車体との離間距離との差が車輪の車体への接近限度距離と離隔限度距離との差の25%以上75%以下となる状態を実現するように、前記アクチュエータの作動を制御するものである(2)項に記載の車両用スタビライザシステム。
(4)前記段差対応制御部が、
前記左右離間距離差確保状態として、左側輪と車体との離間距離と右側輪と車体との離間距離との差が車輪の車体への接近限度距離と離隔限度距離との差の40%以上60%以下となる状態を実現するように、前記アクチュエータの作動を制御するものである(3)項に記載の車両用スタビライザシステム。
上記2つの項に記載の態様は、上記左右離間距離差確保状態の具体的な態様を限定した態様である。一般的に車両が通過あるいは進入可能な段差あるいは段差路は、段差の大きさの程度がある程度の範囲に制限される。そのような段差を対象とした左右離間距離差確保状態においては、左右の車輪の各々についての車輪車体間距離を大きく異ならせた場合には、かえって車体の姿勢を乱すことが考えられ、したがって、左右離間距離差確保状態における左右の車輪についての車輪車体間距離の差(以下、「左右離間距離差」という場合ある)は、好適な範囲が存在する。2つの項に記載の態様は、この適正な範囲を規定した態様である。なお、左右離間距離差を制御する場合、左右の車輪の各々についての車輪車体間距離を、例えば、車輪車体間距離を直接検出するためのセンサ、いわゆるストロークセンサを設けて、その検出値に基づいて取得することも可能であり、また、アクチュエータの動作量(例えば、アクチュエータ力が発揮されない状態におけるアクチュエータの動作量)が、左右離間距離差に関連する場合には、その動作量に基づいて左右離間距離差を取得すること可能である。
(5)当該スタビライザシステムが、一方が前輪側に設けられ、他方が後輪側に設けられた2つの前記スタビライザ装置を有し、かつ、前記制御装置がそれら2つのスタビライザ装置を制御するものとされた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
一般的に、アクティブスタビライザシステムでは、前後の車輪について、それぞれ、スタビライザ装置が設けられ、それらが、独立して、あるいは、連携して制御される。本項に記載の態様は、そのような一般的なアクティブスタビライザシステムを対象とする態様である。
(6)前記段差対応制御部が、
前後左右の車輪のうちの1つの車輪が段差上部に他の3つの車輪が段差下部に位置し、その段差上部に位置する車輪を段差上部輪と定義した場合において、その段差上部輪を含む左右の車輪について前記左右離間距離差確保状態を実現するとともに、段差上部輪と前後において異なる側の2つの車輪のうちの、前記段差上部輪と左右において異なる側の車輪と車体との離間距離に対して前記段差上部輪と左右において同じ側の車輪と車体との離間距離が大きくなるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する段差上部1輪存在時制御部を有する(5)項に記載の車両用スタビライザシステム。
段差を通過、あるいは、段差路に進入する際において、4つの車輪と段差との関係は、種々に変化する。本項以下の一連の項に記載の態様は、4つの車輪と段差との関係を複数に類型化した場合において、それら複数の類型の各々において好適なスタビライザ装置の制御態様を限定した態様である。具体的に言えば、例えば、車両が前進して斜めに段差に乗り上げる場合には、まず、前輪側の左右の一方の車輪が段差上部に乗り上がった状態となる。次に、前輪側の他方の車輪が段差に乗り上げて前輪側の左右の車輪が段差上部に乗り上がった状態、あるいは、後輪側の左右において前輪側と同じ側の一方の車輪が段差に乗り上げて左右の一方の前輪および後輪が段差上部に乗り上がった状態となる。次いで、後輪側の一方の車輪が乗り上げるあるいは前輪側の他方の車輪が段差に乗り上げて後輪側の他方の車輪のみが段差下部に位置する状態となり、その後に、4輪のすべてが段差上部に乗り上がった状態となる。また、車両が後進して段差に斜めに乗り上げる場合、車両が前進あるいは後進して段差を斜めに下りる場合にも、同様に種々の過渡的な状態となる。以下の一連の項に記載の態様は、上述したところの、4輪ともに段差上部にあるいは段差下部に位置する状態に至るまでの過渡的な車輪と段差との関係を類型化し、そのそれぞれの類型に好適なスタビライザ装置の制御状態を限定した態様である。
上記態様は、その1類型に関する態様であり、1つの車輪が段差上部に位置する場合における態様である。この場合において、段差下部に位置する前輪側あるいは後輪側の2つに車輪については、左右の車輪の一方が段差上部に位置する前輪側あるいは後輪側の2つの左右離間距離差確保状態とは左右が逆となる左右離間距離差確保状態を実現させている。それにより、その状態に引き続いて実現される状態、特に、既に段差上部に位置する車輪に加えてその車輪と左右あるいは前後において隣り合う車輪も段差上部に位置する状態に移行する際等において、車体の下部と段差との干渉を効果的に抑制あるいは回避可能となる。
(7)前記段差対応制御部が、
前輪側および後輪側の左右における同じ側の2つの車輪が段差上部に他の2つの車輪が段差下部に位置する場合において、前輪側と後輪側との各々について前記左右離間距離差確保状態を実現するように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する前後両側段差存在時制御部を有する(5)項または(6)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、左右一方の2つの車輪のみが段差上部に位置する類型において好適な制御態様である。この場合には、車体全体が左右方向に比較的大きく傾く状態となり、その場合に、段差下部に位置する側の2つの車輪をリバウンド方向に変位させることによって、その車体の傾斜を効果的に抑制することが可能となり、続いて、前輪側あるいは後輪側の段差下部に位置する側の車輪が段差上部に乗り上がる状態に移行する際等において、その車輪の付近における車体の下部と段差との干渉を効果的に抑制あるいは回避可能となる。
(8)前記段差対応制御部が、
前輪側および後輪側ともに左右の車輪が段差を挟んで位置しない場合に、前輪側と後輪側との各々について、スタビライザ力を発揮させない状態と一方の車輪と車体との離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態との一方を実現させるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する前後両側段差非存在時制御部を有する(5)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、前輪側および後輪側とも左右に傾斜しない状態、具体的には、例えば、前輪側の2つの車輪が段差上部と段差下部との一方にかつ後輪側の2つの車輪が段差上部と段差下部との他方に位置する状態、4つの車輪のいずれの間にも段差が存在しない状態つまり段差を車両が跨いでいない状態等を想定した態様である。そのような状態では、車体は左右にあまり傾斜しないため、本項の態様における制御では、前輪側および後輪側ともに上述の左右離間距離差確保状態とはされない。なお、本項における「スタビライザ力を発揮させない状態」とは、例えば、スタビライザバーの自由な動作が許容される状態等、スタビライザバーが本来の機能を発揮し得ない状態を意味し、また、「一方の車輪と車体との離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態」とは、例えば、左右に傾斜していない車体姿勢を実現するようにスタビライザバーを機能させる状態等を意味する。それらの2つの状態のうちのいずれを採用するかについては、例えば、車両の設計仕様,諸元、当該スタビライザ装置を除くサスペンション装置の構成,特性等に応じて任意に決定することが可能である。なお、本項の態様は、前後両側段差非存在時制御部が、前輪側の2つの車輪が段差上部と段差下部との一方にかつ後輪側の2つの車輪が段差上部と段差下部との他方に位置する状態のみを対象とした制御を実行するものであってもよく、また、その状態に加え、4つの車輪のいずれの間にも段差が存在しない状態をも対象とした制御を実行するものであってもよい。
(9)前記段差対応制御部が、
前後左右の車輪のうちの1つの車輪が段差下部に他の3つの車輪が段差上部に位置し、その段差下部に位置する車輪を段差下部輪と定義した場合において、その段差下部輪を含む左右の車輪について前記左右離間距離差確保状態を実現するとともに、段差下部輪と前後方向において異なる側の2つの車輪について、スタビライザ力を発揮させない状態と一方の車輪と車体との離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態との一方を実現させるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する段差下部1輪存在時制御部を有する(5)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様は、1輪のみが段差下部に位置する類型において好適な制御形態を示した態様である。本項の態様においては、段差下部に位置する車輪がリバウンド方向に変位させられることによって、車体の左右の傾斜、その車輪付近における車体の下部と段差との干渉が効果的に抑制あるいは回避することが可能である。なお、「スタビライザ力を発揮させない状態」、および、「一方の車輪と車体との離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態」は、先の態様の場合と同様である。
(10)前記制御装置が、
前記段差対応制御部による制御の実行中に車両の作動が停止した場合に、その停止時における前記アクチュエータの作動状態を記憶するアクチュエータ作動状態記憶部を有する(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
(11)前記制御装置が、
車両の作動が開始される場合において、前記アクチュエータ作動状態記憶部が記憶する前記アクチュエータの作動状態を再現するアクチュエータ作動状態再現部を有する(10)項に記載の車両用スタビライザシステム。
上記2つの項に記載の態様は、例えば、段差を前後,左右,あるいは斜めに跨いだ状態において車両が停止した場合等に有効な態様となる。例えば、段差を通過する前に車両を停止してイグニッションスイッチがOFFとされた場合には、アクチュエータの作動が停止させられ、スタビライザ装置はスタビライザ力を全く発揮しない状態となる。その後、イグニッションスイッチがONとされた場合には、車両が段差を跨いだ状態にあるにも拘わらず、4つの車輪についての車輪車体間距離が、車両が停止する前の状態とは異なる状態となる。そのような状態から車両が走行を開始して段差を乗り上げたりあるいは段差を下りたりするときには、車体の傾斜,車体下部の段差との干渉を効果的に抑制あるいは回避することが困難となる。上記2つの項のうちの先の態様によれば、段差を跨いだ状態におけるアクチュエータの作動状態を記憶することができ、また、後の態様によれば、その記憶した状態を復元することが可能となり、段差を跨いだ状態から車両が再発進するようなときであっても、効果的に、車体の傾斜,車体下部の段差との干渉を抑制あるいは回避することが可能となる。
(12)前記スタビライザバーが、
それぞれが、車幅方向に延びる1つの軸線上に配設されるトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において前記車輪保持部材に連結されるアーム部とを有する1対のスタビライザバー部材を含んで構成され、
前記アクチュエータが、前記1対のスタビライザバー部材のトーションバー部を前記軸線のまわりに相対回転させるものである(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、スタビライザ装置の具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、スタビライザ力を効率的に変更可能であり、上記旋回状態依拠制御部による制御と上記段差対応制御部による制御とのいずれをも容易に実行することが可能である。
(13)前記アクチュエータが、ハウジングと、それぞれがそのハウジングに支持されて配設された電動モータおよびその電動モータの回転を減速させる減速機とを含んで構成され、前記1対のスタビライザバー部材の一方のトーションバー部が前記ハウジングに相対回転不能に接続され、他方のトーションバー部が前記減速機の出力部に相対回転不能に接続された(12)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、上記構造のアクティブスタビライザシステムにおいて、アクチュエータを電動のものとした態様、つまり、電動のアクティブスタビライザシステムにおいて具体的な構造を限定した態様である。本項の態様においては、電動モータへ供給される電力を制御することにより、容易にスタビライザ力を変更することができることから、本項の態様によれば、制御性の良好なアクティブスタビライザシステムが実現する。
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪スタビライザシステムの構成≫
図1に、請求可能発明の一実施例である車両用スタビライザシステム10を概念的に示す。本スタビライザシステム10は、車両の前輪側、後輪側の各々に配設された2つのスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部材に連結されたスタビライザバー20を備えている(図2参照)。そのスタビライザバー20は、中央部で分割されており、一対のスタビライザバー部材、すなわち右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを含む構成のものとされている。それら一対のスタビライザバー部材22,24がアクチュエータ30を介して相対回転可能に接続されており、大まかに言えば、スタビライザ装置14は、アクチュエータ30が、左右のスタビライザバー部材22,24を相対回転させることによって(図の矢印,点線矢印を参照のこと)、スタビライザバー20全体の見かけ上の剛性を変化させて車体のロール抑制を行う。
図2には、一方のスタビライザ装置14の車幅方向の中央から一方側の車輪16にかけての部分が概略的に示されている。本スタビライザシステム10が装備される車両は、それぞれが4つの車輪16の各々に対して設けられた4つの独立懸架式のサスペンション装置38を含んで構成されている。このサスペンション装置38は、一般によく知られたダブルウィシュボーン式のものであり、一端部が車体に回動可能に連結されるとともに他端部が車輪16に連結された車輪保持部材としてのアッパアーム42およびロアアーム44を備えている。それらアッパアーム42およびロアアーム44は、車輪16と車体との接近離間(相対的な上下動の意味)に伴い、上記一端部(車体側)を中心に回動させられ、上記他端部(車輪側)が車体に対して上下させられる。また、サスペンション装置38は、ショックアブソーバ46と、サスペンションスプリング48(本装置では「エアばね」である)とを備えている。それらショックアブソーバ46およびスプリング48は、それぞれ、それらの一端部が車体側のマウント部に、他端部がロアアーム44に連結されている。このような構造から、サスペンション装置38は、車輪16と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させる機能を果たすものとなっている。
スタビライザ装置14は、先に説明した一対のスタビライザバーである右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを備える(図2には、右スタビライザバー部材22および左スタビライザバー部材24の一方が示されている)。各スタビライザバー部材22,24は、それぞれ、略車幅方向に延びるトーションバー部60と、トーションバー部60と一体化されてそれと交差して概ね車両前方あるいは後方に延びるアーム部62とに区分することができる。各スタビライザバー部材22,24のトーションバー部60は、アーム部62に近い箇所において、車体の一部であるスタビライザ装置配設部64に固定的に設けられた支持部材66によって回転可能に支持され、互いに同軸に配置されている。それらトーションバー部60の端部(車幅方向における中央側の端部)の間には、上述のアクチュエータ30が配設されており、後に詳しく説明するが、各トーションバー部60の端部は、それぞれ、そのアクチュエータ30に接続されている。一方、アーム部62の端部(トーションバー部60側とは反対側の端部)は、上述のロアアーム44に設けられたスタビライザバー連結部68に連結されている。
アクチュエータ30は、図3に模式的に示すように、電動モータ70と、電動モータ70の回転を減速する減速機72とを含んで構成されている。これら電動モータ70および減速機72は、アクチュエータ30の外殻部材であるハウジング74内に設けられている。ハウジング74は、ハウジング保持部材76によって、回転可能かつ軸方向(略車幅方向)に移動不能に、車体に設けられたスタビライザ装置配設部64に保持されている。図2から解るように、ハウジング74の両端部の各々には、2つの出力軸80,82の各々が延び出すように配設されている。それら出力軸80,82のハウジング74から延び出した側の端部が、それぞれ、各スタビライザバー部材22,24の端部と、セレーション嵌合によって相対回転不能に接続されている。また、図3から解るように、一方の出力軸80は、ハウジング74の端部に固定して接続されており、また、他方の出力軸82は、ハウジング74内に延び入る状態で配設されるとともに、ハウジング74に対して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。その出力軸82のハウジング74内に存在する一方の端部が、後に詳しく説明するように、減速機72に接続され、その出力軸82は、減速機72の出力軸を兼ねるものとなっている。
電動モータ70は、ハウジング74の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のステータコイル84と、ハウジング74に回転可能に保持された中空状のモータ軸86と、モータ軸86の外周においてステータコイル84と向きあうようにして一円周上に固定して配設された永久磁石88とを含んで構成されている。電動モータ70は、ステータコイル84がステータとして機能し、永久磁石88がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。
減速機72は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)90,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)92およびリングギヤ(サーキュラスプライン)94を備え、ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構等とも呼ばれる)として構成されている。波動発生器90は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボール・ベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸86の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ92は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯が形成されている。このフレキシブルギヤ92は、先に説明した出力軸82に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、出力軸82は、モータ軸86を貫通しており、それから延び出す端部にフレキシブルギヤ92の底部が固着されることで、フレキシブルギヤ92と出力軸82とが接続されているのである。リングギヤ94は、概してリング状をなして内周に複数(フレキシブルギヤの歯数よりやや多い数、例えば2つ多い数)の歯が形成されたものであり、ハウジング74に固定されている。フレキシブルギヤ92は、その周壁部が波動発生器90に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ94と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。波動発生器90が1回転(360度)すると、つまり、電動モータ70のモータ軸86が1回転すると、フレキシブルギヤ92とリングギヤ94とが、それらの歯数の差分だけ相対回転させられる。ハーモニックギヤ機構はその構成が公知のものであることから、本減速機72の詳細な図示は省略し、説明はこの程度の簡単なものに留める。
以上の構成から、車両の旋回等によって、車体に左右の車輪16の一方と車体との距離と左右の車輪16の他方と車体との距離とを相対変化させる力、すなわちロールモーメントが作用する場合、右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを相対回転させる力、つまり、アクチュエータ30に対する外部入力が作用する。その場合、電動モータ70が発生する力であるモータ力(電動モータ70が回転モータであることから、回転トルクと考えることができるため、回転トルクと呼ぶ場合がある)によって、アクチュエータ30がその外部入力に釣り合う力をアクチュエータ力として発揮しているときには、それら2つのスタビライザバー部材22,24によって構成された1つのスタビライザバー20が捩じられることになる。この捩りにより生じる弾性力は、スタビライザ力、すなわち、ロールモーメントに対抗する力であるロール抑制力となる。そして、モータ力によってアクチュエータ30の出力軸80,82の相対回転位置、つまり、アクチュエータ30の回転位置(動作位置のことである)を変化させることで、右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24との相対回転位置を変化させれば、車体が同じロールモーメントを受けている場合、言い換えれば、同じスタビライザ力を発生させている場合であっても、車体のロール量を変化させることが可能となる。本スタビライザ装置14は、そのようにして、スタビライザバーの見かけ上の剛性、すなわち、スタビライザ剛性を変化させることが可能な装置とされているのである。
なお、アクチュエータ30には、ハウジング74内に、モータ軸86の回転角度、すなわち、電動モータ70の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ100が設けられている。モータ回転角センサ100は、本アクチュエータ30ではエンコーダを主体とするものであり、左右のスタビライザバー部材22,24の相対回転角度(相対回転位置)、言い換えれば、アクチュエータ30の動作位置すなわち回転位置を指標するものとして、アクチュエータ30の制御、つまり、スタビライザ装置14の制御に利用される。
アクチュエータ30が備える電動モータ70には、図1に示すように、電源としてのバッテリ102から電力が供給される。本スタビライザシステム10では、そのバッテリ102と、2つのスタビライザ装置14の各々との間に、それぞれ、インバータ104が設けられている。それらインバータ104は駆動回路として機能するものであり、2つのスタビライザ装置14の各々が有する電動モータ70には、2つのインバータ104の各々を介して電力が供給される。なお、電動モータ70は定電圧駆動されることから、供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更され、電動モータ70は、その供給電流量に応じた力を発揮することとなる。ちなみに、供給電流量は、インバータ104がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
本スタビライザシステム10は、図1に示すように、スタビライザ装置14、詳しくは、アクチュエータ30の作動を制御する制御装置であるスタビライザ電子制御ユニット(ECU)110(以下、単に「ECU110」という場合がある)を備えている。そのECU110は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されており、ECU110には、上記モータ回転角センサ100とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ120,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ122,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ124,車輪ごとに設けられて各車輪と車体との離間距離である車輪車体間距離を検出するストロークセンサ126,後述するスタビライザ装置の2つの制御モードのいずれかを選択するために運転者によって操作されるモード切換スイッチ128が接続されている。(図1では、それぞれ「θ」,「δ」,「v」,「Gy」,「L」,「Sw」と表されている)。また、ECU110は、インバータ104にも接続され、ECU110は、インバータ104を制御することで、アクチュエータ30の回転位置を制御するものとされている。ECU110のコンピュータが備えるROMには、後に説明するアクティブ制御プログラムおよび段差対応制御プログラム等、各種のプログラムと、スタビライザ装置14の制御に関する各種のデータ等が記憶されている。
≪スタビライザ装置の2つの制御モード≫
本スタビライザシステム10では、平坦な路面を走行する場合に、車両の旋回状態に基づいてスタビライザ装置14を制御する通常の制御モード(以下、「通常モード」という場合がある)と、路面の段差に対応するために左右の車輪の各々と段差との関係に基づいてスタビライザ装置14を制御する制御モード(以下、「段差対応モード」という場合がある)とに切り換え可能とされている。それら通常モードと段差対応モードとは、運転者が上述のモード切換スイッチ128を操作することにより、いずれかが選択されて実行される。
(A)通常モード
通常モードでは、電動モータ70のトルク発生方向および電動モータ70への供給電流量が制御可能な状態で、ロールモーメントに応じたスタビライザ力を発生させるとともに、スタビライザ剛性を変化させることによって、車両の旋回状態に応じて、車体のロール抑制効果をアクティブに制御することが可能とされている(以下、この制御を「アクティブ制御」と呼ぶ場合がある)。なお、本スタビライザシステム10は、前輪側,後輪側の2つのスタビライザ装置14を備えており、アクティブ制御では、それら2つのスタビライザ装置14は、設定されたロール剛性配分に従ってそれぞれが個別に制御され、その個々の制御下において、それぞれが所定のスタビライザ力を発生させることになるが、本通常モードの説明においては、特に断わりのない限り、説明の単純化に配慮して、2つのスタビライザ装置14を同一構成のものとして扱い、また、それらを一元化して扱うこととする。
アクティブ制御では、車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標量に基づいて、アクチュエータ30の目標回転位置が決定され、アクチュエータ30の回転位置がその目標回転位置となるように制御される。つまり、ロールモーメント指標量に基づき、電動モータ70のトルク発生方向および電動モータ70への供給電流量が決定される。そして、決定されたトルク発生方向および供給電流量に従って電動モータ70を作動させることで、アクチュエータ力の方向および大きさを制御し、ロールモーメントに応じたスタビライザ力を発生させて、アクティブなスタビライザ装置14の制御が実行されるのである。なお、ここでいうアクチュエータ30の回転位置とは、車体にロールモーメントが全く作用しない状態を基準状態としてその基準状態でのアクチュエータ30の回転位置を中立位置とした場合において、その中立位置からの回転量を意味する。つまり、アクチュエータ30の動作位置の中立位置に対する変位量である対中立位置変位量を意味する。また、アクチュエータ30の回転位置と電動モータ70の回転角であるモータ回転角とは対応関係にあるため、実際の制御では、アクチュエータ30の回転位置に代えてモータ回転角が使用される。
アクティブ制御をより具体的に説明すれば、本スタビライザシステム10においては、上記ロールモーメント指標量としての横加速度に基づいて、適正なスタビライザ剛性を得るべく、アクチュエータ30の目標回転位置、つまり、目標モータ回転角θ*が決定される。詳しく言えば、ステアリングホイールの操舵角と車両走行速度に基づいて推定された推定横加速度Gycと、実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr
ここで、K1,K2はゲインであり、そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、目標モータ回転角θ*が決定される。そして、実際のモータ回転角である実モータ回転角θがフィードバックされることで、その実モータ回転角θの目標モータ回転角θ*に対する偏差に基づくフィードバック制御の手法に従って、電動モータ70への目標供給電流i*が決定される。
目標供給電流i*は、例えば、それの符号によって電力供給方向が異なるものとなることから、電動モータ70のトルク発生方向をも表すものと考えることができる。したがって、目標供給電流i*が決定されることによって、結果的に、電動モータ70のトルク発生方向が決定されることとなる。また、決定された目標供給電流i*に基づいて、電動モータ70への通電のデューティ比が決定される。それら決定されたトルク発生方向およびデューティ比は、インバータ104に送信され、インバータ104がそれらに従って電動モータ70を作動することで、アクティブ制御が実行される。なお、本スタビライザシステム10におけるアクティブ制御は、アクチュエータ30の回転位置を直接的な制御対象とする位置制御(回転角制御)の態様で実行されているが、アクチュエータ出力の方向および大きさを直接的な制御対象とする出力制御(トルク制御)の態様で実行されるものであってもよい。
(B)段差対応モード
段差対応モードでは、4つの車輪と段差との関係が複数に類型化され、それら複数の類型の各々において好適な作動形態があらかじめ定められている。具体的には、前後の2つのスタビライザ装置14の各々において、一方の車輪の車輪車体間距離が他方の車輪の車輪車体間距離よりも大きくされた状態で維持される「左右離間距離差確保制御」と、スタビライザ力が発揮されないようにする「フリー制御」とのいずれかが選択的に実行される。
左右離間距離差確保制御は、左側輪と車体との離間距離と右側輪と車体との離間距離との離間距離差を一定の大きさに保持するようにアクチュエータ30の作動を制御するものである。前輪側を例にとって説明すれば、例えば、左前輪16frと右前輪16flの間に段差140が存在して、右前輪16frが段差上部142に存在し、左前輪16flが段差下部144に位置する場合には、車体は、図4(a)に示すように傾斜する。詳しく言えば、左右の前輪16fr,16flの間に段差140が存在する場合、車体が段差下部144側が低くなるように傾く。この状態で走行すれば左前輪16fl近傍の車体下部が段差140と干渉するおそれがある。このような状態を抑制あるいは回避すべく、左右離間差確保制御では、図4(b)に示すように、段差上部輪である右前輪16frを、バウンド方向に変位させて、段差下部輪である左前輪16flを、リバウンド方向に変位させるような制御が実行される。この左右離間距離差確保制御を実行すれば、車体の傾きを小さくし、車体下部と段差140とが干渉することを抑制あるいは回避回避することができるのである。
車両が通過あるいは進入可能な段差あるいは段差路は、段差の大きさの程度がある程度の範囲のものと考えることができるため、左右離間差確保制御では、段差の高さにかかわらず、左右の離間距離差が一定の大きさとなるようにされる。本スタビライザシステム10においては、その左右離間距離差が、車輪の車体への接近限度距離と離隔限度距離との差(以下、「フルストローク」という場合がある)の50%となる状態を実現するように、アクチュエータ30の作動を制御する。具体的に言えば、左右離間距離差がフルストロークの50%となる場合のスタビライザ力は予め既知であり、そのスタビライザ力を発揮するためのモータ回転角も既知であるため、そのモータ回転角を固定的な目標モータ回転角θ*として、実際のモータ回転角θがその目標モータ回転角θ*となるような電動モータ70の作動の制御が、上記アクティブ制御と同様の手法に従って実行される。
フリー制御では、インバータ104によって、電動モータ70の各相への通電が遮断され、また、電動モータ70の各相の端子間がオープンな状態とされる。このようにアクチュエータ30の作動が制御されることによって、電動モータ70には起電力に依拠した電流が発生せず、電動モータ70による制動効果が殆ど得られないことになる。したがって、フリー制御では、スタビライザバー20が剛性を殆ど発揮し得ない状態が実現され、車両はスタビライザ装置を備えていないに近い状態が実現される。なお、段差対応モードにおいて、フリー制御を実行すべき場合に、フリー制御を実行する代わりに左右離間距離差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる左右離間距離差解消制御を実行するようにしてもよい。その場合には、車体の傾斜が強制的に抑制される状態が実現される。
≪段差対応モードにおけるサブモード≫
段差対応モードにおいては、4つの車輪16と段差140との関係状態(以下、「車輪段差関係状態」という場合がある)が、複数に類型化されている。具体的には、(i)1輪が段差上部142に存在して3輪が段差下部144に存在する「段差上部1輪存在状態」と、(ii)前輪側および後輪側の左右における同じ側の2つの車輪が段差上部142に他の2つの車輪が段差下部144に位置する「前後両側段差存在状態」と、(iii)前輪側および後輪側の間に段差140が存在して、前輪側および後輪側ともに左右の車輪が段差140を挟んで位置しない「前後両側段差非存在状態」と、(iv)1輪が段差下部144に存在して3輪が段差上部142に存在する「段差下部1輪存在状態」と、(v)4つの車輪16の間に段差140が存在しない「4輪段差非存在状態」とに類型化されている。ちなみに、本スタビライザシステム10では、4輪段差非存在状態と前後両側段差存在状態とを区別することで、車輪段差関係状態が5つに類型化されている。それら5つの車輪段差関係状態に対応して、5つのサブモードが設定されており、それら5つのサブモードの各々に対して、前後の2つのスタビライザ装置14の各々において上述の左右離間距離差確保制御とフリー制御とのいずれが実行されるかが定められている。以下に、5つのサブモードの各々を、順に説明する。
(i)段差上部1輪存在状態対応モード
4つの車輪16のうちの1つが段差上部142に存在する場合には、その段差上部輪を含む側のスタビライザ装置14について、段差上部輪をバウンド方向に変位させるとともに段差下部輪をリバウンド方向に変位させるように左右離間距離差確保制御が実行される。一方、左右の2輪がともに段差下部144に位置する側のスタビライザ装置14について、上記段差上部輪と左右における同じ側の車輪をリバウンド方向に変位させて、左右における反対側の車輪をバウンド方向に変位させる左右離間距離差確保制御が実行される。段差上部1輪存在状態対応モードでは、上述のように、左右の車輪の間に段差140が存在する前輪側と後輪側との一方において、段差下部輪側の車体を段差上部輪側の車体に対して持ち上げるような左右離間距離差確保制御が実行されることで、車体の傾斜が抑制され、また、段差下部輪側の車体下部と段差140との距離が拡大することで段差140が車体下部に干渉することを効果的に抑制あるいは回避することが可能となる。また、左右の車輪の両者が段差下部に位置する前輪側と後輪側との他方においては、上記前輪側と後輪側との一方とは反対方向の左右離間距離差確保制御がなされる。そのため、この段差上部1輪存在状態に続いて、上記前輪側と後輪側との他方における上記段差上部輪と左右において同じ車輪が段差上部142に存在する状態に移行する場合に、その車輪と車体との離間距離が拡大されていることから、車体のその車輪に近い部分への段差140の干渉を効果的に抑制あるいは回避することが可能となる。具体的に言えば、図示は省略するが、例えば、右前輪16frのみが段差上部142に位置する状態では、段差140を挟んで右後輪16rrが段差下部144に位置しているが、本段差上部1輪存在状態対応モードでは、右後輪16rrがリバウンド方向に変位させられることにより、右後輪16rrが続いて段差上部142に位置する状態に移行する場合に、右後輪16rr近傍の車体下部と段差140との干渉を抑制あるいは回避することができるのである。
(ii)前後両側段差存在状態対応モード
前輪側および後輪側の両方において、左右いずれか一方の2つの車輪16が段差上部142に、他方の2つの車輪16が段差下部144に位置する場合には、車体が左右のいずれかに傾くこととなる。本前後両側段差存在状態対応モードでは、その傾きを抑制すべく、前輪側と後輪側との両者の段差上部輪をバウンド方向に変位させるとともに段差下部輪をリバウンド方向に変位させるように、前輪側,後輪側の両方のスタビライザ装置14に対して左右離間距離差確保制御が実行される。また、本前後両側段差存在状態対応モードでは、前輪側と後輪側との両方の段差下部輪付近の車体が持ち上げられることになり、その付近の車体下部と段差140とが干渉することが回避あるいは抑制されることとなる。
(iii)前後両側段差非存在状態対応モード
前輪側および後輪側ともに左右の車輪16が段差140を挟んで位置しない場合であって、それら前輪側と後輪側との間に段差140が存在する場合には、車両のロール方向の傾きがほとんど発生しないと考えられる。そのことに考慮して、本前後両側段差非存在状態対応モードでは、前輪側と後輪側との両方のスタビライザ装置14についてフリー制御が実行される。
(iv)段差下部1輪存在状態対応モード
1輪のみが段差下部144に位置する場合には、車体の左右の傾斜を抑制し、その段差下部144に位置する車輪付近における車体下部と段差140との干渉を回避あるいは抑制することが望ましい。そのことに考慮し、本段差下部1輪存在状態対応モードでは、段差下部輪を含む前輪側と後輪側との一方において、段差下部輪をリバウンド方向に変位させるとともに段差下部輪と左右における反対側の車輪をバウンド方向に変位させるように、上記前輪側と後輪側との一方におけるスタビライザ装置14に対して左右離間距離差確保制御が実行される。一方、左右の車輪16がともに段差上部142に位置する前輪側と後輪側との他方においては、その他方のスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。なお、本段差下部1輪存在状態対応モードにおいては、段差140を挟んで左右の車輪が存在する前輪側と後輪側との一方において、車体の傾斜が抑制されるとともに、段差下部付近における車体下部に対する段差140の干渉が効果的に抑制あるいは回避される。
(v)4輪段差非存在状態対応モード
段差対応モードが選択されている状態であって、4つの車輪16の間に段差が存在しない場合、すなわち4つの車輪16がほぼ水平な路面上に存在する場合には、前輪側と後輪側との両者において車輪車体間距離差を発生させる必要がないので、前輪側と後輪側との両方のスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。
(vi)サブモードの切換え
段差対応モードでは、上記5つのサブモードが、上記5つに類型化された4つの車輪と段差との関係に対応して切換えられる。このサブモードの切換えは、上述したところの車輪ごとに設けられたストロークセンサ126によって車輪車体間距離の変化に基づいて行われる。詳しく言えば、各車輪ごと車輪車体間距離によって、現在どの車輪段差関係状態にあるかを認定することが可能であり、その認定された車輪段差関係状態において、いずれか1つの車輪についての車輪車体間距離が変化し始めた場合に、次にどの車輪段差関係状態に移行するかを特定することが可能である。本段差対応モードでは、この車輪段差関係状態の移行をトリガとして、言い換えれば、いずれか1つの車輪についての車輪車体間距離が設定値以上に変化したことをトリガとして、サブモードを切換えるようにされているのである。なお、上記設定値は、車輪段差関係状態の移行を検出可能な範囲において可及的に小さな値とされており、本スタビライザシステム10では、その移行の初期の段階において、切換えられたサブモードにおける制御が実行されるようになっている。
≪段差対応モードにおけるアクチュエータの作動状態の記憶と再現≫
本スタビライザシステム10では、スタビライザ装置14が段差対応モードによって制御されている状態で車両の作動が停止させられた場合には、停止させられる直前のスタビライザ装置14の制御状態、つまり、2つのスタビライザ装置14が有するアクチュエータ30の作動状態が記憶されるとともに、次に車両の作動が開始された時点においてその作動状態が再現されるようにされている。具体的には、イグニッションスイッチ150がOFFとされた場合に、通常モードと段差対応モードとのいずれが選択されているかを判断して、段差対応モードが選択されている場合には、イグニッションスイッチ150がOFFとされる直前のアクチュエータ30の作動状態を記憶する処理が行われる。具体的に言えば、前輪側,後輪側の各々のスタビライザ装置14においてフリー制御と左右離間距離差確保制御とのいずれがなされているか、および、左右離間距離差確保制御がなされている場合には、左右いずれの方向の左右離間距離差確保制御がなされているか(左右のいずれの車輪がバウンド方向に変位させられる制御であるか)を記憶する「作動状態記憶処理」が実行される。そして、その後、イグニッションスイッチ150がONとされた場合には、直前にイグニッションスイッチ150がOFFとされた時点において記憶されている2つのスタビライザ装置14の各々のアクチュエータ30の作動状態を再現する「作動状態再現処理」が実行される。
≪段差対応制御プログラム≫
本スタビライザシステム10の制御は、イグニッションスイッチ150がON状態である間は、モード切換スイッチ128の操作状態に従って、フローチャートを省略するアクティブ制御プログラムと、段差対応制御プログラムとのいずれかが、短い時間間隔(例えば数msec)をおいてECU110により繰り返し実行されることによって行われる。詳しく言えば、モード切換スイッチ128の操作状態が通常モードが選択されている状態にある場合には、上述したアクティブ制御を実行するアクティブ制御プログラムが実行され、段差対応時モードが選択されている状態にある場合には、段差対応制御プログラムが実行されるのである。以下に、この段差対応制御プログラムに従うスタビライザ装置14の制御、つまり、段差対応制御のフローを、図5に示すそのプログラムのフローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。
段差対応制御プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、1輪のみが段差上部142に位置する段差上部1輪存在状態であるか否かが判断される。ストロークセンサ126の検出値に基づいて、1輪のみが段差上部142に乗り上げた状態であると判断されれば、S2において、段差上部1輪存在状態対応モードでのスタビライザ装置14の制御、つまり、スタビライザ装置が有するアクチュエータ30の作動制御が実行される。具体的には、段差上部輪を含む側のスタビライザ装置14に対しては、段差上部輪をバウンド方向に変位させるとともに段差上部輪の左右における反対側の車輪(すなわち、段差下部輪)をリバウンド方向に変位させるような左右離間距離差確保制御が実行され、一方、左右の2輪がともに段差下部144に位置する側のスタビライザ装置14に対して、上記段差上部輪と左右において同じ側の車輪をリバウンド方向に変位させるとともに段差上部輪と左右における反対側の車輪、すなわち、段差上部輪の対角輪をバウンド方向に変位させるような左右離間距離差確保制御が実行される。
S1において段差上部1輪存在状態でないと判断された場合には、S3において、前側輪と後側輪との両方において左右の車輪の間に段差が存在している前後両側段差存在状態であるか否かが判断される。S3の判定がYESである場合は、S4において、前後両側段差存在状態対応モードでのスタビライザ装置14の制御が実行される。具体的には、前後のスタビライザ装置14の両方に対して、段差上部輪をバウンド方向に変位させるとともに段差下部輪をリバウンド方向に変位させる右離間距離差確保制御が実行される。
S3において前後両側段差存在状態でないと判断された場合には、S5において、前側輪と後側輪との両方について、左右の車輪16の間に段差が存在しない前後両側段差非存在状態であるか否かが判断される。前後両側段差非存在状態である場合、すなわち前側輪と後側輪との間に段差140が存在しかつそれぞれの側において左右の車輪16が段差を挟んで存在しない場合には、S6において、前後両側段差非存在状態対応モードでのスタビライザ装置14の制御が実行される。具体的には、前後のスタビライザ装置14について、いずれもフリー制御が実行される。
S5において前後両側段差非存在状態でないと判断された場合には、S7において、1輪のみが段差下部144に位置する段差下部1輪存在状態であるか否かが判断される。段差下部1輪存在状態である場合には、S8において、段差下部1輪存在状態対応モードでのスタビライザ装置14の制御が実行される。具体的には、段差下部輪を含む前輪側と後輪側との一方のスタビライザ装置14に対して、段差下部輪をリバウンド方向に変位させるとともに段差下部輪の左右における反対側の車輪16をバウンド方向に変位させる左右離間距離差確保制御が実行される。一方、左右の車輪がいずれも段差上部142に位置する前輪側と後輪側との他方のスタビライザ装置14に対して、フリー制御が実行される。
S7において段差下部1輪存在状態でないと判断された場合、すなわち、S1,S3,S5およびS7の判定が全てNOである場合には、4つの車輪16の間に段差が存在しない状態つまり4輪段差非存在状態と認定され、S9において、4輪段差非存在状態対応モードでのスタビライザ装置14の制御が実行される。すなわち、前輪側,後輪側の両方ののスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。
≪作動状態記憶処理プログラム≫
作動状態記憶処理は、イグニッションスイッチがON状態である間、図6にフローチャートを示す作動状態記憶処理プログラムが短い時間間隔をおいて、ECU110によって繰り返し実行されることにより行われる。この作動状態記憶処理プログラムに従う処理では、まず、S21において、イグニッションスイッチ150がON状態からOFF状態に切り換えられたか否かが判断される。イグニッションスイッチ150がONである間は、S21の判定がNOとなり、他に何らの処理も実行されない。イグニッションスイッチ150がOFFに切り換えられた場合には、S22において、モード切換スイッチ128が段差対応モードを選択している操作状態にあるか否かが判断される。通常モードが選択されている場合には、S22の判定がNOとなり、本プログラムの1回の実行が終了する。一方、段差対応モードが選択されている操作状態にある場合には、S23において、イグニッションスイッチ150がON状態からOFF状態に切り換えられる直前の前後のスタビライザ装置14の制御状態すなわちそれぞれのスタビライザ装置14が有するアクチュエータ30の作動状態に関する情報(以下、「作動状態情報」という場合がある)が、ECU110が有する作動状態情報記憶メモリ152(図10参照)に記憶される。
≪作動状態再現処理プログラム≫
作動状態再現処理は、イグニッションスイッチ150がONとされた際に、図7にフローチャートで示す作動状態再現処理プログラムがECU110によって実行されることにより行われる。本プログラムは、イグニッションスイッチ150がOFF状態からON状態に切り換えられる際に1回実行されるようにされている。具体的には、S31において、モード切換スイッチ128が段差対応モードを選択している操作状態にあるか否かが判断される。モード切換スイッチ128が通常モードを選択している状態である場合には、S31の判定がNOとなり、何らの処理も行われない。それに対して、段差対応モードが選択されている操作状態にある場合には、S32において、作動状態情報記憶部152に記憶されている各スタビライザ装置14のアクチュエータ30の作動状態情報が読み出される。次にS33において、その読み出された作動状態情報に基づいて前後のスタビライザ装置14が制御され、前回イグニッションスイッチ150がOFFとされる直前のアクチュエータ30の作動状態が再現される。
≪段差対応制御によるスタビライザ装置の制御の具体例≫
実際に車両が段差140を通過して走行する場合において段差対応制御に従えばどのようにスタビライザ装置14が制御されるかを、具体例を挙げて説明する。まず、平坦路を走行していてこれから段差に乗り上がろうとする場合には、運転者によってモード切換スイッチ128が通常モードから段差対応モードに切り換えられる。このとき、車両がまだ段差140に乗り上げていないため、4輪段差非存在状態であり、4輪段差非存在状態対応モードでの制御、つまり、前輪側,後輪側の両方のスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。この状態から、例えば、右前輪16frから順に段差140に乗り上げる場合、図8(a)に示すように、右前輪16frが段差上部(図において斜線で示されている)142に乗り上がり始め、ストロークセンサ126の検出値から右前輪16frが段差上部142に位置する状態となることが予測されて、右前輪16frを段差上部輪とする段差上部1輪存在状態対応モードでの制御が実行される。具体的には、右前輪16frおよび左後輪16rlがバウンド方向に変位するとともに左前輪16flおよび右後輪16rrがリバウンド方向に変位するような左右離間距離差確保制御が、前輪側,後輪側のスタビライザ装置14の両方に対して実行される。
右前輪16frが段差上部142に位置する状態でさらに前進すれば、次に左前輪16flまたは右後輪16rrのいずれかが段差140に乗り上げることが想定される。その想定に基づいてストロークセンサ126の検出値の変化が監視される。そのような監視が行われている状態で、例えば、図8(b)に示すように、左前輪16flが段差140に乗り上げ始めたことが検知されれば、前後両側段差非存在状態となることが予測され、前後両側段差非存在状態対応モードでの制御に切り換えられる。具体的には、前輪側,後輪側のスタビライザ装置14の両方に対して、フリー制御が実行される。この状態からさらに車両が直進すれば、次に右後輪16rrが段差140に乗り上げ始める。図8(c)に示すように、右後輪16rrが段差140に乗り上げ始めたことが検知されれば、段差下部1輪存在状態となることが予測され、左後輪16rlを段差下部輪とする段差下部1輪存在状態対応モードでの制御が実行される。具体的には、前輪側のスタビライザ装置14に対するフリー制御は維持され、右後輪16rrがバウンド方向に左後輪16rlがリバウンド方向に変位するような左右離間距離差確保制御が、後輪側のスタビライザ装置14に対して実行される。次に、図8(d)に示すように、左後輪16rlが段差140に乗り上げ始めて全ての車輪16の間に段差140が存在しない4輪段差非存在状態となることが予測されれば、4輪段差非存在状態対応モードでの制御、つまり、前輪側,後輪側の両方のスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。
次に、別の態様にて車両が段差140に乗り上げる場合について、図9に基づいて説明する。この態様では、図9(a)に示すように、車両が前進して右前輪16frから段差140に乗り上げ、続いて、図9(b)に示すように、右後輪16rrが段差140に乗り上げる。最初に4輪段差非存在状態対応モードでの制御が行われ、続いて右前輪16frを段差上部輪とする段差上部1輪存在状態対応モードでの制御が実行されるところまでは、図8の場合と同様である。段差上部1輪存在状態から、次に、図9(b)に示すように、右後輪16rrが段差上部142に乗り上げ始めたことが検知されれば、右側が段差上部142に位置する前後両側段差存在状態となることが予測され、右前輪16frおよび右後輪16rrを段差上部輪とする前後両側段差存在状態対応モードでの制御が実行される。具体的には、先に行われている前輪側のスタビライザ装置14に対する左右離間距離差確保制御が継続され、後輪側のスタビライザ装置14に対しては、先に行われているのとは逆の方向の左右離間距離差確保制御、すなわち、右後輪16rrをバウンド方向に左後輪16rlをリバウンド方向に変位させる制御が実行される。次に、図9(c)に示すように、左前輪16flが段差140に乗り上げ始めたことが検知されれば、左後輪16rlを段差下部輪とする段差下部1輪存在状態となることが予測されて、段差下部1輪存在状態対応モードでの制御が実行される。具体的には、後輪側のスタビライザ装置14に対して行われている左右離間距離差確保制御は維持され、前輪側のスタビライザ装置14に対してフリー制御が実行される。続いて、図9(d)に示すように、左後輪16rlが段差140に乗り上げ始めたことが検知されれば、全ての車輪16の間に段差140が存在しない4輪段差非存在状態となることが予測され、図8に示す例と同様に、4輪段差非存在状態対応モードでの制御が実行される。
≪制御装置の機能構成≫
以上のような種々のプログラムが実行されてスタビライザ装置14の制御を司るECU110は、それの機能を図10に示すように表すことができる。つまり、ECU110は、アクティブ制御プログラムに従う処理を実行する機能部として、旋回状態依拠制御部160を、段差対応制御プログラムの処理を実行する機能部として、段差対応制御部162を備え、その段差対応制御部162は、S1およびS2の処理を実行する機能部として、段差上部1輪存在時制御部164を、S3およびS4の処理を実行する機能部として、前後両側段差存在時制御166を、S5およびS6ないしS9の処理を実行する機能部として、前後両側段差非存在時制御部168を、S7およびS8の処理を実行する機能部として、段差下部1輪存在時制御部170を、それぞれ有している。そしてさらに、ECU110は、作動状態情報記憶メモリ152を有して作動状態記憶処理プログラムに従う処理を実行する機能部として、アクチュエータ作動状態記憶部172を、作動状態再現処理プログラムに従う処理を実行する機能部として、アクチュエータ作動状態再現部174を、それぞれ備えているのである。
実施例のスタビライザシステムの全体構成を示す模式図である。 図1のスタビライザシステムが備えるスタビライザ装置を示す概略図である。 図1のスタビライザ装置を構成するアクチュエータを示す概略断面図である。 図1のスタビライザ装置を備える車両が段差に乗り上げた状態を概念的に示す図である。 図1のスタビライザシステムにおいて実行される段差対応制御プログラムを示すフローチャートである。 図1のスタビライザシステムにおいて実行される作動状態記憶処理プログラムを示すフローチャートである。 図1のスタビライザシステムにおいて実行される作動状態再現処理プログラムを示すフローチャートである。 車両が段差を通過する際における4つの車輪と段差との関係の変化を概念的に示す図である。 車両が段差を通過する際における4つの車輪と段差との関係の変化であって、図8における場合と異なる変化を概念的に示す図である。 制御装置としてのスタビライザ電子制御ユニットの機能を示すブロック図である。
符号の説明
10:車両用スタビライザシステム 14:スタビライザ装置 20:スタビライザバー 22:右スタビライザバー部材 24:左スタビライザバー部材 30:アクチュエータ 60:トーションバー部 62:アーム部 70:電動モータ 72:減速機 74:ハウジング 104:インバータ(駆動回路) 110:スタビライザ電子制御ユニット(ECU)(制御装置) 160:旋回状態依拠制御部 162:段差対応制御部 164:段差上部1輪存在時制御部 166:前後両側段差存在時制御部 168:前後両側段差非存在時制御部 170:段差下部1輪存在時制御部 172:アクチュエータ作動状態記憶部 174:アクチュエータ作動状態再現部

Claims (4)

  1. (a)両端部の各々が左右の車輪の各々を保持する車輪保持部材に連結され、一方の車輪の車体に対する離間距離を拡大するとともに他方の車輪と車体との離間距離を縮小する力であるスタビライザ力を発揮するスタビライザバーと、(b)スタビライザ力を自身の作動状態に応じて変更するアクチュエータとを有するスタビライザ装置と、
    そのスタビライザ装置を制御する制御装置であって、スタビライザ力を車両の旋回状態に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する旋回状態依拠制御部と、路面の段差に対応すべく左右の車輪の各々と段差との関係に基づいてアクチュエータの作動を制御する段差対応制御部とを有する制御装置と
    を備えた車両用スタビライザシステム。
  2. 前記段差対応制御部が、段差を挟んで左右の車輪の一方が段差上部に他方が段差下部に位置する場合において、段差上部に位置する側の車輪と車体との離間距離に対して段差下部に位置する車輪と車体との離間距離が大きくなる状態である左右離間距離差確保状態を実現するように、前記アクチュエータの作動を制御するものである請求項1に記載の車両用スタビライザシステム。
  3. 当該スタビライザシステムが、一方が前輪側に設けられ、他方が後輪側に設けられた2つの前記スタビライザ装置を有し、かつ、前記制御装置がそれら2つのスタビライザ装置を制御するものとされ、
    前記段差対応制御部が、
    前後左右の車輪のうちの1つの車輪が段差上部に他の3つの車輪が段差下部に位置し、その段差上部に位置する車輪を段差上部輪と定義した場合において、その段差上部輪を含む左右の車輪について前記左右離間距離差確保状態を実現するとともに、段差上部輪と前後において異なる側の2つの車輪のうちの、前記段差上部輪と左右において異なる側の車輪と車体との離間距離に対して前記段差上部輪と左右において同じ側の車輪と車体との離間距離が大きくなるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する段差上部1輪存在時制御部と、
    前輪側および後輪側の左右における同じ側の2つの車輪が段差上部に他の2つの車輪が段差下部に位置する場合において、前輪側と後輪側との各々について前記左右離間距離差確保状態を実現するように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する前後両側段差存在時制御部と、
    前輪側および後輪側ともに左右の車輪が段差を挟んで位置しない場合に、前輪側と後輪側との各々について、スタビライザ力を発揮させない状態と一方の車輪と車体との離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態との一方を実現させるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する前後両側段差非存在時制御部と、
    前後左右の車輪のうちの1つの車輪が段差下部に他の3つの車輪が段差上部に位置し、その段差下部に位置する車輪を段差下部輪と定義した場合において、その段差下部輪を含む左右の車輪について前記左右離間距離差確保状態を実現するとともに、段差下部輪と前後方向において異なる側の2つの車輪について、スタビライザ力を発揮させない状態と一方の車輪と車体のとの離間距離と他方の車輪と車体との離間距離との差をなくす方向のスタビライザ力を発揮させる状態との一方を実現させるように、前記2つのスタビライザ装置の各々の前記アクチュエータの作動を制御する段差下部1輪存在時制御部と
    を有する請求項1または請求項2に記載の車両用スタビライザシステム。
  4. 前記制御装置が、
    前記段差対応制御部による制御の実行中に車両の作動が停止した場合に、その停止時における前記アクチュエータの作動状態を記憶するアクチュエータ作動状態記憶部と、
    車両の作動が開始される場合において、前記アクチュエータ作動状態記憶部が記憶する前記アクチュエータの作動状態を再現するアクチュエータ作動状態再現部と
    を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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