JP2007145622A - スピネル−マグネシア質れんが - Google Patents

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圭人 関根
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Yoshiki Tsuchiya
芳樹 土屋
Kozo Tokunaga
浩三 徳永
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Abstract

【課題】従来のマグネシア−スピネル質塩基性れんがと比較して、セメント原料に対する化学的安定性について問題がなく、しかも、硫黄酸化物に対する反応が抑制され、れんがの耐用年数の延長が可能な、耐久性に優れ、セメント焼成回転窯用に好適な塩基性れんがの提供。
【解決手段】スピネルとマグネシアを主たる構成化合物としてなる焼成された塩基性れんがであって、その化学組成において、MgOが34質量%以上59質量%以下、Al23が40質量%以上65質量%以下であり、且つ、MgOとAl23との合量が95質量%以上99質量%以下であることを特徴とするスピネル−マグネシア質れんが。
【選択図】なし

Description

本発明は、スピネル−マグネシア質れんがに関し、特に、セメントを製造する際に使用する回転窯(以下、セメント焼成回転窯という)の1,300℃以下の高温帯(脱着帯と冷却帯)に好適に使用できる塩基性れんがに関する。
従来より、セメントを製造する際に使用するセメント焼成回転窯の内側には、塩基性れんがが張られており、その場合の塩基性れんがとしては、マグネシア−スピネル質れんがが多く使用されている。一般に、マグネシア−スピネル質れんがは、マグネシア(MgO)とマグネシアアルミナスピネル(MgAl24:MgO=29.3質量%、Al23=71.7質量%)の2種類の化合物で構成されており、その他にCaOを含む化合物などが少量含まれている。
上記マグネシア−スピネル質れんがを形成する際の原料としては、マグネシア原料(マグネシアクリンカー)とスピネル系原料(スピネル系クリンカー)が使用されている。ここで、スピネル系原料には、(1)マグネシアアルミナスピネル(以後、単にスピネルという)のほぼ理論組成でなるクリンカー、(2)アルミナとスピネルの組み合わせからなるクリンカー、及び(3)マグネシアとスピネルの組み合わせからなるクリンカーなどがある。上記マグネシア−スピネル質れんが用原料には、現在の国内では、上記(3)のマグネシアとスピネルの組み合わせでなるクリンカーが使用されている。
マグネシア−スピネル質れんがでは、マグネシア原料が主原料として使用され、スピネル系原料が従的に使用されるが、さらにアルミナや酸化鉄が2質量%前後配合されることもある。これらの原料からなるマグネシア−スピネル質れんがは、以下のようにして製造される。先ず、上記したような原料を、製品が所望の組成となるように適正に配合して混合し、この原料混合物にバインダーを添加して混練し、次に、得られた混練物を高圧成形した後、高温焼成することで製品とする。
上記したような原料及び製造方法によって得られるマグネシア−スピネル質れんがとしては、その化学組成が様々な、下記に挙げるような多くの種類の製品が市販されている。先ず、マグネシア−スピネル質れんがの化学組成について説明する。その概略は、主成分がMgOであり、Al23が6〜19質量%程度、MgOが79〜91質量%程度の化学組成からなる。より詳細には、セメント焼成回転窯に使用するマグネシア−スピネル質れんがでは、回転窯の温度帯に応じて異なる化学組成のものが使用されている。即ち、セメント焼成回転窯の最高温帯(セメント原料の温度が1,300℃以上になり、最高1,450℃となる)である焼成帯用には、化学組成が、Al23が6〜14質量%であって、MgOが84〜91質量%の範囲のれんがが使用されている。また、この焼成帯に隣接する脱着帯及び冷却帯用には、化学組成が、Al23が12〜19質量%であり、MgOが79〜86質量%の範囲のれんがが使用されている。
セメント焼成回転窯に使用される塩基性れんがには、上記したマグネシア−スピネル質れんがの他に、マグネシア−クロム質れんががある。マグネシア−クロム質れんがは、マグネシアクリンカーとクロム鉄鉱石を使用して、上記したマグネシア−スピネル質れんがと同様に作られる。しかし、マグネシア−クロム質れんがは、化学成分としてクロムを含んでいるため、その廃棄物処理などの、環境上の課題がある。このため、マグネシア−クロム質れんがの使用を止める努力がなされており、近年、前記したマグネシア−スピネル系の塩基性れんがを使用することが多い。尚、マグネシア−クロム質れんがのMgO含有量は、概略55〜80質量%の範囲である。
ここで、セメントの主成分であるCaOは、硫黄酸化物(ガス)と反応してCaSO4(固体)を生成するため、セメント製造においては、大気中に放出される排ガス中の硫黄酸化物が極めて少なくなる。このため、セメント製造では、排ガス中の硫黄酸化物による環境汚染の発生は抑制されている。上記したような事情から、セメント原料を焼成する際の回転窯の熱源には、硫黄を多く含む石油や石炭などが多く使用されている。そして、近年、セメントの製造過程における硫黄酸化物の増加傾向は、著しいものとなっている。
上記したように、石油や石炭中などの硫黄は、燃焼して硫黄酸化物となり、セメント原料中のCaOと反応する。しかし、反応はこれに留まらず、セメント焼成回転窯の内壁に設置された塩基性れんがに含まれるマグネシアやCaO(原料中に第3成分として1質量%前後が含まれる)を含む化合物とも反応する。そして、本発明者らの検討によれば、この現象が、セメント焼成回転窯に用いられている塩基性れんがの主要な損耗原因の一つになっている。
近年、硫黄酸化物に対して優れた耐用性をもつ耐火れんがとして、先に説明したようなスピネルの理論組成に近い化学成分からなるスピネル質れんがが知られている。そして、ガラス釜の蓄熱室用れんがとして実用されている。かかる技術に関する提案としては、例えば、特許文献1或いは特許文献2がある。
しかしながら、上記したような新しい化学組成の耐火れんがは、セメント焼成回転窯用に開発されたものではなく、勿論、先に述べたようなセメント原料との反応抵抗性が考慮されたものではない。さらに、理論組成に近いスピネルクリンカーは、マグネシアクリンカーに比べておよそ2倍以上も高価な材料であることから、セメント焼成回転窯に用いる塩基性れんがの原料に、高価なスピネルクリンカーだけを使用することは経済性に劣り、実用上の大きな問題となる。これらのことから、セメント焼成回転窯に、スピネルの理論組成に近い化学成分からなるスピネル質れんがを使用することは、適当ではない。
実開昭58−92336号公報 特開平10−226522号公報
現在も行われているが、セメントを製造する際に、安価な硫黄を多く含む燃料を利用することは、生産コスト低減の有効な手段となる。その反面、硫黄酸化物との反応による塩基性れんがの寿命の低下は、塩基性れんがの頻繁な張替えを必要とし、生産コストの上昇要因となる。上記した事情に鑑みれば、硫黄酸化物に対する抵抗性を持つ塩基性れんがを提供することができれば、当該塩基性れんがの寿命を延長することが可能となる。この結果、れんがの寿命が延長することによるれんがの張替え時期の延長を通じて、張替え用の塩基性れんがにかかるコストの削減は勿論のこと、れんがの張替えに必要な労務費用を低減できる。さらに、れんがの張替えの際の設備休止に伴って生じる生産機会損失を減少させることができ、これに加えて、れんがの張替えの際に生じる廃棄物を低減できるなど、生産活動に多大な貢献ができる。上記したことに鑑みれば、セメントを製造する際に使用する回転窯などの内張りに使用される塩基性れんがの耐用年数を延長することに対する実用価値は、非常に高い。
従って、本発明の目的は、従来より使用されているマグネシア−スピネル質れんがと比較して、セメント原料に対する化学的安定性において相等である上に、硫黄酸化物に対する反応が抑制され、従来のものと比べてれんがの耐用年数の延長が可能となる、耐久性に優れた塩基性れんがを得ることにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、スピネルとマグネシアを主たる構成化合物としてなる焼成された塩基性れんがであって、その化学組成において、MgOが34質量%以上59質量%以下、Al23が40質量%以上65質量%以下であり、且つ、MgOとAl23との合量が95質量%以上99質量%以下であることを特徴とするスピネル−マグネシア質れんがである。
本発明によれば、従来のマグネシア−スピネル質れんがと比較して、セメント原料に対する化学的安定性について何らの問題もなく、しかも、マグネシア−スピネル質れんがに比べて硫黄酸化物との反応が半分またはそれ以下であり、その耐用年数の延長を達成でき、原料のコスト的にも、理論組成に近い化学成分からなるスピネル質れんがと比べて有利な、セメント焼成回転窯の内張り用れんがとして好適なスピネル−マグネシア質れんがが提供される。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決するために鋭意検討の結果、従来の技術では、セメント原料に対する化学的安定性のみを重視し、その製造を行う回転窯の内張り用塩基性れんがの品質を決定していたが、先に述べたように、塩基性れんがの耐用年数をも考慮に入れた開発をすることが、その実用価値を高める上では非常に重要である、と認識するに至った。即ち、本発明は、硫黄酸化物の作用によってセメント焼成回転窯に使用されている塩基性れんがの寿命低下が認められることに鑑みて、塩基性れんがの設計は、セメント原料に対する化学的安定性と、硫黄酸化物に対する化学的安定性とを衡平に考えた品質設計が行われるべきであるとする立場で開発を行った。その結果、スピネルを主成分とする実用価値の高い焼成塩基性れんがを見いだしたものである。
本発明者らは、上記した立場にたって、塩基性れんがの形成材料となるマグネシア系原料(マグネシアクリンカー)とスピネル系原料(スピネル系クリンカー)について鋭意検討を行った。そして、先ず、マグネシアは硫黄酸化物と反応しやすく、一方、スピネルは硫黄酸化物と反応しにくい、という特性に着目した。その上で、硫黄酸化物と反応しにくいスピネルを主とし、硫黄酸化物と反応しやすいマグネシアを、従来の主から従とすることで、塩基性れんがの耐久性を高めることについての検討を行った。その結果、セメント原料に対する化学的安定性と、硫黄酸化物に対する化学的安定性を衡平に満足することができる、スピネルを主構成化合物とする、スピネル−マグネシア質れんがの特定の構成を見いだして本発明に至った。
本発明にかかる塩基性れんがの構成は、スピネルを主化合物とするが、検討するに際し、先ず、後述するように、セメント原料との化学的安定性を維持することのできるスピネルの温度条件を見極めることを行った。
一般に、セメント原料に含まれる主成分のCaOに対し、マグネシア(MgO)は極めて化学的に安定である。これに対して、スピネル[マグネシアアルミナスピネル(MgAl24)]は、マグネシアよりも化学的安定性に劣るとされる。また、原料となるスピネル系原料は、マグネシア系原料の多くに比べて高価である。これらの事情から、これまでは、セメント製造設備の高温帯に使用される塩基性れんがの全ては、マグネシアを主たる構成化合物としている。
本発明者らは、先ず、理論組成に近い成分構成のスピネルクリンカー(伊藤忠セラテック社製NSP−70)を試験材料として、該材料とセメント原料の反応試験を、対象とする試験材料で坩堝を形成し、該坩堝内にセメント原料を入れて加熱する坩堝法で行った。その結果、該試験を通じて下記のことが確認できた。この場合は、先ず1,350℃以上で、試験材料に溶融が生じた。これに対し、1,300℃以下では、試験材料は溶融を生じることなく、しかも、セメント原料との反応相の厚さは極めて小さく、上記試験材料は、この状態では化学的に安定であることが確認された。
次いで、試験材料を、Al23を95質量%含有し、アルミナとスピネルの組み合わせからなるクリンカー(伊藤忠セラテック社製NSP−95)として、上記と同様の試験を行った。この結果、1,200℃の試験において、上記クリンカーとセメント原料との反応が生じ、その境界に亀裂剥離が生じた。このため、アルミナとスピネルの組み合わせからなるスピネル系原料は、本発明の検討対象から除外した。
次いで、試験材料を、Al23を45質量%含有し、マグネシアとスピネルの組み合わせからなるクリンカー(宇部マテリアル社製SP−50)として、前記と同様の試験を行った。この結果、1,300℃以下では、試験材料に溶融は見られず、しかもセメント原料との反応に対して安定であった。また、1,350℃以上では、試験材料に溶融が生じたが、その程度は、前記したNSP−70よりも軽微であった。
これに対し、セメント焼成回転窯の現状では、セメント原料を1,300℃以上で最高1,450℃に加熱する焼成帯(即ち、セメント原料中に適切量の融液が生じ、そこに使用される塩基性れんが上にセメント原料が付着するゾーン)と、その前後の高温帯である脱着帯と冷却帯に、塩基性れんがが使用されている。
上記の試験で、NSP−70とSP−50のそれぞれの試験材料が、セメント原料に対して安定性を示した1,300℃以下の温度条件は、セメント焼成回転窯の焼成帯を除く、その前後に位置する脱着帯と冷却帯に対応する。
しかしながら、セメント製造などの工業炉の操業下の温度は、変動するのが通常である。即ち、セメント焼成回転窯において、通常、1,300℃以下の条件で使用されると考えられる塩基性れんがの場合、一時的期間に、それ以上の温度条件におかれることを前提として材料設計がされる必要がある。一方、本発明が目的とするれんが製品は、硫黄酸化物に対する化学的安定性を、従来の製品に比べて大幅に向上させることで、従来よりも大幅に改善された製品の長寿命化を実現するものである。従って、工業炉において生じる温度変動によって、少なくとも、従来のれんが製品に比べて、著しい損傷が生じることはあってはならない。よって、本発明にかかるれんがでは、このような、炉内において生じる一時的な温度上昇下において、従来製品と相等な化学的安定性を持たせることが必要となる。
前記したように、セメント製造においては、その原料温度が最高1,450℃まで加熱されるにもかかわらず、その内張り用として、マグネシア−スピネル系の塩基性れんがが実際に適用されている。このことは、マグネシアとスピネルでなる系においては、その系の構成次第で、れんがを形成しているスピネルに溶融が生じたとしても、1,300℃以上の温度下においても、工業的に意味を持つ期間にわたり、れんがの使用が可能であることを意味している。
そこで、本発明では、セメント焼成回転窯の、脱着帯や冷却帯に安定的に使用できる条件を定めるため、上記反応試験においてスピネル系原料であるNSP−70とSP−50がセメント原料に対して化学的に安定である1,300℃の上限温度に対して100℃高く、且つ、同原料が溶融を生じた1,350℃より50℃高い温度である1,400℃で6時間保持する条件のもとで、基準サンプル及び試作品とセメント原料の坩堝法による反応試験を行って、温度変動に対する安定性を比較評価した。
この反応試験の基準サンプルとして、セメント焼成回転窯に広く使用されている従来製品であるマグネシア−スピネル質れんがMIC−EXK(美濃窯業社製)を用いた。この塩基性れんがの化学組成(一例)は、MgOが80.5質量%、Al23が18.6質量%であり、且つ、これらの組成の合計は、99.1質量%である。
セメント原料と基準サンプルとの反応試験は次のように行った。セメント焼成回転窯用として作製された上記MIC−EXKを、60mm×60mm×60mmのサイズに切り出し、さらにその一面に、ダイヤモンドコアードリルにより直径30mm深さ30mmの穴をあけ、その底面を平坦に研磨したものを坩堝とした。その穴にセメント原料を上面まで充填して、電気炉中で昇温速度5℃/min.で昇温した後、1,400℃で6時間保持した後、炉内放冷して取り出し、切断して溶融深さを測定した。その結果、穴の底面において、れんがに約2mmの溶融が認められた。しかし、セメント原料は、加熱の過程で収縮したために坩堝内で溶融が生じたのは底面だけであり、側面では溶融はなかった。
一方、試作品は、下記のような原料を用いて、下記の方法で作製した。原料のスピネル系原料には、SP−50(宇部マテリアル社製)及びNSP−70(伊藤忠セラテック社製)を使用した。また、マグネシア系原料には、99HD(宇部マテリアル社製、約99質量%MgO)を用いた。これらは、粉砕し、粗粒(粒径3mm〜1mm)、中間粒(粒径1mm〜)及び微粉(粒径200メッシュパス)に分級したものをそれぞれ使用した。
試作品の各塩基性れんがは、下記のようにして作製した。先ず、上記した原料を種々の配合比で混ぜて、これにリグニン20%水溶液をバインダーとして3質量%添加して混錬した。その後、得られた混練物を、塩基性れんがの製造設備である630トン油圧プレスを用いて、1,200kgf/cm2の圧力で200mm×250mm×約100mmの形状に一軸成形し、成形物を得た。さらに、これを乾燥した後、トンネルキルンを用いて1,750℃で焼成を行って種々の塩基性れんがを得た。
試作品のセメント原料との反応試験は、基準サンプルMIC−EXKの場合と同様に行った。その結果、試料が100%NSP−70(MgOが約27質量%、Al23が約72質量%)でなる場合には、坩堝底部の溶融厚さが2mm以上の、約3.5mmとなった。また、NSP−70が95質量%、99HDが5質量%で構成された試作品の塩基性れんがの場合は、坩堝底部の溶融厚さが約2.5mmとなった。これに対して、NSP−70が90質量%、99HDが10質量%で構成された試作品の塩基性れんがの場合は、該試料のセメント原料との反応による溶融厚さは、約2mmであり、基準サンプルMIC−EXKの場合と同等であった。よって、本発明にかかる塩基性れんがの化学組成を、セメント焼成回転窯の脱着帯または冷却帯における一時的な高温に耐える能力として、上記の最後に述べた試作品サンプルに対応する化学成分を基準にして、MgOが34質量%以上であり、Al23が65質量%以下に規定した。
上記のスピネルの量の制限は、セメント原料に対する化学的安定性を保証する重要な意味をもつ。換言すれば、本発明は、前述したスピネルの理論組成に近い化学成分からなるスピネル質れんがで構成したガラス釜の蓄熱質用れんがにかかる技術では達成し得ない、セメント原料との反応抵抗性を実現できる技術として高い価値を有する。
本発明の開発にあたっては、硫黄酸化物との反応性が低いスピネル−マグネシア質れんがを得るために、塩基性れんがと硫黄酸化物との反応試験を、図1に示すような装置を作り、該装置を用いて下記のようにして行った。
[硫黄酸化物との反応試験方法]
図1は、試験に使用した試験装置の概略図である。試験には、図1に示したように、その入口及び出口に冷却装置が設置されている管状炉6を使用した。そして、この管状炉6内にサンプルである塩基性れんが9を入れ、入口側からSO2を含むガスを導入しながら、炉内の温度を上げて硫黄酸化物との反応試験を行った。排出ガスは、水酸化ナトリウム水溶液中に通して中和した。より具体的には、入口側から管状炉6内に導入するガスとして、混合びん5で混合したエアーとSO2ガスとの混合ガスを使用した。より具体的には、混合びん5に、流量計2が接続されたエアーポンプ1を用いて導入した一定流量のエアーと、流量計4が接続されたSO2ガスボンベ3から導入した一定流量のSO2ガスとの混合ガスを、管状炉6内へ送った。図1中の4は、SO2用レギュレーターを示す。また、図1中の7は、保護管を示し、図中の8は、冷却装置を示す。図1に示したように、保護管7は管状炉6内に配置され、該保護管7の両端には冷却装置8が設置されている。この冷却装置8に水を流すことによって保護管7の両端の温度が下がる構造となっている。
上記したような構成の装置を用い、試料台(セッター)10上にサンプルである塩基性れんが9を乗せて、図1に示したように、管状炉6内の中央にサンプルをセットして試験を行った。その際に、管状炉6外へと排出されてくる排ガスの具体的な処理は以下のようにして行った。排ガスの処理は、図1に示したように、中和用の液体の逆流を防ぐためのトラップ11と、処理後の気体をNaOH溶液にバブリングさせ、気体を中和するための2本の排ガス洗浄びん12とによって行った。より具体的には、反応による発熱を少なくするために、最初の排ガス洗浄びん12中には、約2NのNaOH水溶液を入れ、2番目の排ガス洗浄びん12中には、約4NのNaOH水溶液をそれぞれ入れた。さらに、排ガス洗浄びん12中の溶液の酸性・アルカリ性を確認するために、液中には、それぞれフェノールフタレイン溶液を少量添加した。上記のようにして中和させた後の気体は、大気中へと放出できる。
さらに、この反応試験の基準サンプルはセメント原料との反応試験の場合と同じとした。即ち、セメント焼成回転窯に広く使用されている従来製品であるマグネシア−スピネル質れんがのMIC−EXK(美濃窯業社製)を用いた。
ここで、硫黄酸化物とマグネシアれんがの反応に関する論文としては、例えば、山口明良、加藤悦朗の論文〔アルカリ硫酸塩存在下におけるマグネシア耐火物とSO3ガスとの反応;窯業協会誌84[7]307−13(1976)〕がある。かかる論文によれば、マグネシアの硫黄酸化物との反応は、1,000℃付近における反応速度が最も大きいとされている。そこで、本発明では、上記した装置を使用しての硫黄酸化物と塩基性れんがの反応試験を1,000℃×10時間の条件で行うこととした。
上記のようにして硫黄酸化物と焼成塩基性れんがの反応試験を行った結果、基準として用いた上記MIC−EXKでは重量が増加した。本発明者らは、試験後のMIC−EXKについてXRD(X線回折)分析を実施して、重量増加の原因について詳細な検討を行った。その結果、XRD分析で、MgSO4とCaSO4が同定された。このことから、上記した重量増加は、硫黄酸化物との反応化合物の生成に起因するものであることが確認できた。そこで、本発明では、塩基性れんがにおける硫黄酸化物との反応性評価を、前記した試験を行った場合における重量増加率によって行うこととした。
上記で行った試験によって生じたMIC−EXKの硫黄酸化物との反応による重量増加率は、2.83質量%であった。この硫黄酸化物と塩基性れんがとの反応量は、試験に使用する反応炉の形状を変えたりすると値が変化するので設備などの試験条件を固定する必要がある。しかし、条件を固定して試験を行えば、相対的な評価を行うことは可能である。換言すれば、本発明で塩基性れんがの評価に使用した重量増加率は、その数値自体の意味が問題となるものではなく、上記で得た基準値(MIC−EXKの重量増加率=2.83質量%)との比較において相対的に論じられるべきものである。
本発明者らは、原料組成を種々に変えた塩基性れんがを試作品として作成し、得られた塩基性れんがの硫黄酸化物との反応による重量増加率を上記した方法で求めた。これらの試作品は、セメント原料との反応試験に供した試料と同様に作製した。即ち、原料のスピネル系原料には、SP−50(宇部マテリアル社製)及びNSP−70(伊藤忠セラテック社製)を使用した。また、マグネシア系原料には、99HD(宇部マテリアル社製、約99質量%MgO)を用いた。これらは、粉砕し、粗粒(粒径3mm〜1mm)、中間粒(粒径1mm〜)及び微粉(粒径200メッシュパス)に分級したものをそれぞれ使用した。
試作品の各塩基性れんがは、セメント原料との反応試験に供した試料と同様にして作製した。即ち、先ず、上記した原料を種々の配合比で混ぜて、これにリグニン20%水溶液をバインダーとして3質量%添加して混錬した。その後、得られた混練物を、塩基性れんがの製造設備である630トン油圧プレスを用いて、1,200kgf/cm2の圧力で200mm×250mm×約100mmの形状に一軸成形し、成形物を得た。さらに、これを乾燥した後、トンネルキルンを用いて1,750℃で焼成を行って種々の塩基性れんがを得た。
本発明において、塩基性れんがの評価に使用した硫黄酸化物との反応による重量増加率は、先に述べたように、この値が大きければ硫黄酸化物との反応性が大きいことを意味し、塩基性れんがの表面などの劣化は大きくなると考えられる。このため、重量増加率の大きい塩基性れんがは、耐久性に劣り、塩基性れんがの耐用年数は短くなる。しかしながら、この重量増加率の上限を厳密に定める根拠はない。そこで、本発明で目的とする塩基性れんがの硫黄酸化物との反応による重量増加率の上限を、従来品の基準として用いたMIC−EXKにおける重量増加率の1/2以下(即ち、2.83÷2=1.415以下)とすることとした。
ここで、MIC−EXKなどの従来製品のマグネシア−スピネル質れんがを使用した場合における現状は、下記の通りである。従来製品を用いたセメント焼成回転窯では、塩基性れんがを張替えなしで操業できる期間は、例えば、多くの場合6ヶ月間である。例えば、セメント焼成回転窯の脱着帯に使用されるマグネシア−スピネル質れんがの一回の操業期間は一般的に6ヶ月、或いは1年である。本発明の目的は、これら従来の塩基性れんがの一回の操業期間に比べて、少なくとも2倍に耐用年数が延長した塩基性れんがを提供することにある。そこで、本発明にかかる塩基性れんがの硫黄酸化物との反応による重量増加率の上限を、上記したように、従来製品であるMIC−EXKの1/2以下に定めた。
先に述べたようにして製作した種々の化学組成からなる試作品について評価した。この結果、その化学組成で、Al23含有量が40質量%(理論組成スピネル換算55質量%)であるスピネル−マグネシア質れんがの硫黄酸化物との反応による重量増加率は1.40質量%であり、従来製品であるMIC−EXKの1/2以下であった。そこで、この化学組成で、Al23含有量が40質量%という量を、本発明にかかるスピネル−マグネシア質れんがの化学組成におけるAl23含有量の下限とした。また、これよりもAl23量の多い条件の試作品では重量増加率は漸次低下するが、100%NSP−70(スピネルクリンカー)でも0.79質量%の重量増加がみられた。上記スピネル−マグネシア質れんがにおける40質量%Al23に対応するMgO量は、59質量%となる。従って、MgO量が59質量%の値が、本発明にかかるスピネル−マグネシア質れんがの化学組成におけるMgO含有量の上限となる。
上記した試作品の製造に供したマグネシアクリンカーである99HDの純度は99質量%MgOである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、中国産の95質量%MgO或いは97質量%MgOのマグネシアクリンカーや、その他の海外や国産の98質量%MgO純度のマグネシアクリンカーなどを原料として使用することができる。
本発明にかかるスピネル−マグネシア質れんがは、上記のような構成を有してなるが、その化学組成におけるAl23とMgOの合量は、95〜99質量%である。これは、上記で説明したように、セメント原料との反応抵抗性並びに硫黄酸化物との反応抵抗性を最適なものとするために、それぞれの化学組成が特定の範囲内に制限されるのに加えて、用いるスピネル系原料とマグネシア系原料のそれぞれに含まれる少量成分の量が関与してくるため、95〜99質量%の範囲に制限される。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
先述した試験に用いた塩基性れんがの場合と同様にして、表1に使用した各原料組成で本発明の実施例の塩基性れんがを作製した。そして、得られた各塩基性れんがについて、先に述べた方法で重量増加率を求めた。さらに、実施例の塩基性れんがについて、化学組成、かさ比重及び見かけ気孔率をそれぞれ測定した。かさ比重と見かけ気孔率は、塩基性れんがとしての一般的な性質を示すデータである。塩基性れんが内にある気孔は硫黄酸化物の塩基性れんが内への浸入経路となるが、その割合(見かけ気孔率)が小さいほど塩基性れんがと硫黄酸化物との反応が小さくなると考えられる。また、かさ比重は、見かけ気孔率が大きくなるほど小さな値になる関係を持つ。これらの測定の結果を表1にまとめて示した。後述するように、先に説明した、重量増加率を比較する基準に用いた従来製品のMIC−EXKについてのデータは、表2に、比較例10として示した。
本発明では、かさ比重と見かけ気孔率の値が、基準とした従来製品である塩基性れんがMIC−EXKと比較して何ら遜色がなく、塩基性れんがとしての一般的な性質を満足し、且つ上記した重量増加率が低く、且つ、セメント原料に対する化学的安定性においても良好な塩基性れんがを得ることを目的としている。表1に示したように、実施例1〜7の塩基性れんがはいずれも、塩基性れんがとしての一般的な性質を充分に満足しており、化学的安定性に優れるものであることが確認できた。また、実施例1〜7の塩基性れんがはいずれも、従来製品と比べて、その重量増加率は1/2以下であり、しかもセメント原料に対する化学的安定性に優れるものであることが確認された。
Figure 2007145622
(比較例)
先の試験に用いた塩基性れんがの作成方法と同様にして、表2に使用した各原料組成で本発明の比較例塩基性れんがを作製した。そして、得られた焼成体について、実施例の場合と同様にして評価を行った。その結果を表2にまとめて示した。尚、表2に示した通り、比較例10は、先に説明した重量増加率を比較する基準に用いた従来製品のMIC−EXKである。
Figure 2007145622
表2に示した通り、比較例1と2ではマグネシアクリンカーの量が少なすぎることにより、セメント焼成回転窯の一時的な高温条件を想定したセメント原料との1,400℃の反応試験における溶融厚さが大きく、セメント原料に対する反応抵抗性が不十分であり、総合評価は不適合であった。また、比較例3〜9の塩基性れんがは、硫黄酸化物との反応による重量増加率が、基準となるMIC−EXK(比較例10)の値の1/2を上回り、硫黄酸化物に対する耐用性の点で、本発明で目的とする性能を備えておらず、総合評価は不適合であった。
本発明によれば、特に、セメント焼成回転窯に適用し、硫黄を多く含む燃料を使用した場合であっても、従来製品と同様に塩基性れんがとして充分な化学的特性を有し、且つ従来製品と比較して硫黄酸化物との反応性が小さく、耐用年数の長い、セメント原料に対する化学的安定性にも優れる塩基性れんがが提供される。本発明によれば、上記の優れた塩基性れんがを提供することを通じて、該塩基性れんがの使用者のコスト削減に大きく貢献できる。
塩基性れんがと硫黄酸化物との反応試験に使用した試験装置の概略図である。
符号の説明
1:エアーポンプ
2:流量計
3:SO2ガスボンベ
4:SO2用レギュレーター
5:ガス混合びん
6:管状炉
7:保護管
8:冷却装置
9:試料(塩基性れんが)
10:試料台
11:トラップ
12:排ガス洗浄びん

Claims (2)

  1. スピネルとマグネシアを主たる構成化合物としてなる焼成された塩基性れんがであって、その化学組成において、MgOが34質量%以上59質量%以下、Al23が40質量%以上65質量%以下であり、且つ、MgOとAl23との合量が95質量%以上99質量%以下であることを特徴とするスピネル−マグネシア質れんが。
  2. セメント焼成回転窯の脱着帯または冷却帯で使用するための塩基性れんがである請求項1に記載のスピネル−マグネシア質れんが。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106673675A (zh) * 2016-12-12 2017-05-17 丹东播磨耐火材料有限公司 一种高性能尖晶石质透气砖芯及其制备方法
CN116283234A (zh) * 2023-03-29 2023-06-23 安徽精公检测检验中心有限公司 一种水泥窑用环境友好型耐火镁砖及其制备方法

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