JP2007142052A - 露光装置、レーザ光源、露光方法、及びデバイス製造方法 - Google Patents

露光装置、レーザ光源、露光方法、及びデバイス製造方法 Download PDF

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【課題】レーザ光のスペクトル特性として、スペクトル幅の上限値以外の特性を用いて、露光されるパターンの線幅等の特性を制御する。
【解決手段】レーザビームLBでレチクルR及び投影光学系PLを介してウエハWを露光する露光装置において、レーザビームLBのスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅(95%エネルギ純度幅E95%)と、レーザビームLBのスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅(半値全幅FWHM)との比の値を用いて、ウエハW上への露光パターンの特性を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ技術及び露光技術に関し、更に詳しくは、レーザ光源を露光光源としてマスクパターンを基板上に転写する露光装置、及び該露光装置で行われる露光方法に関する。
半導体素子等を製造するためのリソグラフィ工程で、レチクルのパターンをレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に転写するために、ステッパーやスキャニング・ステッパーなどの露光装置が使用されている。近年、これらの露光装置においては、露光光源として例えば放電励起型でスペクトル狭帯域化パルス発振型のエキシマレーザ等のレーザ光源が用いられている。
そのレーザ光源から射出される露光ビームとしてのレーザ光のスペクトル幅については、特に投影光学系の色収差許容量から狭帯域化が要求される。この狭帯域化品位について、従来は、転写対象の所定パターンの像の線幅(いわゆるCD;Critical Dimension)を最小にする観点から、スペクトル幅に特定の上限値を設けることが一般的に行われている。最近は、半導体素子などの更なる微細化に伴い、投影光学系の開口数の増大化(高NA化)が進み、その結果レーザスペクトルの狭帯域化も極限まで進行している。
また、近年、露光パターンの線幅のピッチ依存性である光近接効果(OPE;Optical Proximity Effect)を事前に予測し、予めレチクルのパターン幅を補正しておくことで、ウエハ上で所望の線幅のパターンを得る光近接効果補正(OPC;Optical Proximity Correction)と呼ばれるマスク補正技術が使用されている。このOPC後の線幅誤差を補正するために、投影光学系の開口数及び照明光学系の照明条件(コヒーレンスファクタ等)を微調整する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)
米国特許出願公開第2001/0026448A1号
上記の如く、OPC補正されたレチクルを用いて露光を行う際に、レーザ光のスペクトル特性が変動して、転写されたパターンの線幅の誤差が許容値を超えて、かつその誤差が上記の照明条件等の微調整では補正しきれない場合には、OPC補正量を変更して、レチクルの再設計を行う必要があるが、そのためのコストは大きいものとなる。
また、現在は、露光装置によってレーザ光のスペクトル特性が或る程度異なっているため、例えば或る露光装置用にOPCを最適化して作成したレチクルは、他の露光装置には必ずしも最適でない。そのため、露光装置毎にOPC補正量を最適化したレチクルを作成するものとすると、レチクルの製造及び管理に要するコストが膨大なものとなる。同様に、1台の露光装置において、レーザ光源を別のメーカの装置に交換したり、複数のレーザ光源を切り替えて使用する場合にも、それぞれOPC補正量を最適化したレチクルを使用するのではコストが増大し、管理も煩雑になる。また、光近接効果以外に、投影像のコントラストや焦点深度等の特性も、レーザ光のスペクトル特性に対する依存性があるため、露光装置毎にそれらの特性にばらつきがあるという問題があった。そのため、従来のように単にレーザ光のスペクトル幅の上限値を定めるのみでは、その問題に対処できなくなりつつある。
本発明は斯かる点に鑑み、レーザ光のスペクトル特性を管理する際にスペクトル幅の上限値以外の特性を用いることができるレーザ技術及び露光技術を提供することを第1の目的とする。
本発明はさらに、レーザ光のスペクトル特性として、スペクトル幅の上限値以外の特性を用いて、露光されるパターンの線幅等の特性を制御できるレーザ技術及び露光技術を提供することを第2の目的とする。
本発明による第1の露光装置は、レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅との比の値を用いて、前記パターンの前記物体上への露光パターンの特性を制御するものである。本発明によれば、例えばその第1及び第2のスペクトル幅の比の値を所定値に維持しながら、その第1のスペクトル幅を制御することによって、その露光パターンの線幅等の特性を容易に高精度に制御できる。
また、本発明による第2の露光装置は、レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅の情報を記憶する記憶装置(51)を備えたものである。本発明によれば、その第1のスペクトル幅の情報をスペクトル幅の上限値以外の特性として用いることができる。
また、本発明による第3の露光装置は、レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、他の露光装置の光近接効果を補正するためにパターン幅が補正されたマスクを用いて露光を行う際に、自己の光近接効果を補正するために、前記レーザ光のスペクトル幅を制御する制御装置(50)を備えたものである。本発明によれば、そのレーザ光のスペクトル幅を制御して、自己の光近接効果を補正することによって、他の露光装置用に光近接効果が補正されたマスクを用いて高精度に露光を行うことができる。
次に、本発明による第1のレーザ光源は、レーザ光を発生するレーザ光源において、前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅とを独立に制御する発光制御装置(16e)を備えたものである。
また、本発明による第2のレーザ光源は、レーザ光を発生するレーザ光源において、前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅との比の値を制御する発光制御装置(16e)を備えたものである。
これらの第1又は第2のレーザ光源を露光装置に用いて、その2つのスペクトル幅を制御するか、又はそのスペクトル幅の比の値が所定値になるように制御することによって、転写されるパターンの特性を容易に高精度に制御できる。
また、本発明による露光方法は、本発明の露光装置を用いてデバイスパターン等を感光体等の物体上に転写するものである。
本発明によれば、スペクトル幅の上限値以外のスペクトル特性を用いることができる。また、本発明において、第1及び第2のスペクトル幅を制御するか、又はそれらのスペクトル幅の比の値に基づいてスペクトル特性を制御する場合には、スペクトル幅の上限値以外の特性を用いて、露光パターンの線幅等の特性を制御できる。
以下、本発明の第1の実施形態につき図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本例の露光装置10の構成を概略的に示し、この露光装置10は、露光光源にレーザ光源を用いたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置である。図1において、露光装置10は、レーザ光源としてのレーザ装置16及び照明光学系12を含む照明系、この照明系により照明されるマスクとしてのレチクルRを保持して所定の走査方向に移動するレチクルステージRST、レチクルRのパターンの像を物体(感光体)としてのウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して平面内を移動するXYステージ14、及びこれらの制御系等を備えている。以下、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に垂直な方向にX軸を、図1の紙面に平行な方向にY軸を取って説明する。
レーザ装置16としては、一例として、KrFエキシマレーザ(発振波長248.385nm)が用いられているものとする。なお、レーザ装置16として、KrFエキシマレーザに代えて、ArFエキシマレーザ(発振波長193nm)やF2 レーザ(発振波長157nm)は勿論、金属蒸気レーザやYAGレーザ、あるいは半導体レーザの高調波発生装置等を使用することも可能である。
レーザ装置16は、図1に示すように、レーザ共振器16a、該レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBの光路上に配置された透過率が97%程度のビームスプリッタ16b、該ビームスプリッタ16bの反射光路上に順次配置されたハーフミラー(又はビームスプリッタ)16g及びビームモニタ機構16c、基準光源16h、前記ビームモニタ機構16cからの出力信号が入力されるレーザ制御装置16e(発光制御装置)、及び該レーザ制御装置16eによって電源電圧などが制御されるレーザ電源部16d等を備えている。レーザ装置16の前記構成各部(16a〜16e、16g、16hなど)は、ハウジング17内に収納されている。レーザ共振器16aから射出され、ビームスプリッタ16bを透過したレーザビームLB(レーザ光)がハウジング17の光透過部及び不図示の送光光学系を介して照明光学系12に入射する。
レーザ共振器16aは、放電電極を含むエキシマレーザチューブ(レーザチャンバ)64、該エキシマレーザチューブ64の後側(図1における紙面内左側)に配置された全反射ミラー(リアミラー)66、エキシマレーザチューブ64の前側(図1における紙面内右側)に配置された低反射率ミラー(フロントミラー)68、及びエキシマレーザチューブ64とフロントミラー68との間に配置された狭帯域化モジュール70等を含む。この場合、リアミラー66とフロントミラー68とによって、共振器が構成され、コヒーレンシィを少し高めるようにされている。
狭帯域化モジュール70は、一例としてエキシマレーザチューブ64とフロントミラー68との間のレーザビームLBの光路上に順次配置される固定のファブリ・ぺロー・エタロン(Fabry-Perot etalon)(以下、「エタロン」と略称する)と可変傾角のエタロンとを含んで構成される。エタロンは、2枚の石英板を所定の空隙(エアーギャップ)を空けて平行に対向させたもので、一種のバンドパスフィルタとして働く。固定のエタロンは粗調用で、可変傾角のエタロンは微調用である。これらのエタロンは、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBのスペクトル幅を、ここでは自然発振スペクトル幅の約1/100〜1/300程度に狭めて出力する。また、可変傾角のエタロンの傾角を調整することにより、レーザ共振器16aから射出されるレーザビームLBの波長(中心波長)を所定範囲でシフトできる。
この他、例えば上記の粗調用のエタロンを取り去り、リアミラー66の代りに波長選択素子としての反射型の回折格子(グレーティング)を傾斜可能に設けることにより、レーザ共振器を構成しても良い。この場合、グレーティングとフロントミラー68とによって共振器が構成される。また、グレーティングと微調用のエタロンとによって前述と同様の機能の狭帯域化モジュールが構成される。この場合、グレーティングは波長設定時の粗調に用いられ、エタロンは微調に用いられる。レーザ装置16には、その可変傾角のエタロン(又はグレーティング及び可変傾角のエタロン、あるいはグレーティングやプリズム)等の分光素子を駆動するための駆動機構19が設けられている。駆動機構19によって、エタロン及びグレーティングのうちいずれかの傾斜角を変更すれば、レーザ共振器から射出されるレーザビームLBの波長(発振波長)を所定範囲で変化させることができる。なお、狭帯域化モジュールを、例えばプリズムと回折格子(グレーティング)とを組み合わせたものによって構成することも可能である。
エキシマレーザチューブ64内には、所定の混合比のレーザガス(これは媒体ガスであるクリプトンKr、フッ素F2 及びバッファガスであるヘリウムHeから成る)が充填されている。このエキシマレーザチューブ64には、不図示の排気バルブを介して例えばフレキシブルな排気管が接続されている。この排気管には、フッ素を卜ラップする除去用フィルタや排気用ポンプなどが設けられている。これは、フッ素の毒性を考慮し、除去用フィルタにより排気ガスを無害化した後に排気用ポンプにより装置の外部ヘ排出することにしたものである。
また、エキシマレーザチューブ64には、不図示の給気バルブを介してフレキシブルなガス供給管の一端が接続され、このガス供給管の他端はAr、F2、Heなどのガスボンベ(図示省略)に接続されている。上記各バルブは、主制御装置50によって開閉制御される。主制御装置50は、例えばガス交換の際等に、エキシマレーザチューブ64内のレーザガスが所定の混合比及び圧力になるように調整する。また、エキシマレーザチューブ64内部では、レーザの発振時には、不図示のファンによって常時レーザガスが循環されている。前記ハーフミラー16gは、基準光源16hからの光の光路上に位置している。さらに、ビームスプリッタ16bとハーフミラー16gとの間の光路上には、図1における紙面内左右方向(Y方向)に移動して該光路を開閉する第1シャッタ21が設けられ、また、基準光源16hとハーフミラー16gとの間の光路上には、図1における紙面直交方向(X方向)に移動して該光路を開閉する第2シャッタ23が設けられている。
従って、ビームモニタ機構16cには、ビームスプリッタ16bで反射されたレーザビームLB及び基準光源16hからの光が入射可能な構成となっている。この場合、第1シャッタ21及び第2シャッタ23の開閉が主制御装置50からの指令によって、レーザ制御装置16eによって不図示のシャッタ駆動機構を介して制御され、レーザビームLB及び基準光源16hからの光がハーフミラー16gを介して択一的にビームモニタ機構16cに入射する。通常は、図1に示すように第1シャッタ21は開状態にされ、第2シャッタ23は閉状態にされる。
前記ビームモニタ機構16cは、その内部にエネルギモニタとビームモニタ(スペクトルモニタ)とを含む。エネルギモニタは、例えばハーフミラー16gの透過光路上に配置された不図示のハーフミラーの反射光路上に配置されている。このエネルギモニタとしては、高い応答周波数を有するPIN型フォトダイオードなどの受光素子が用いられる。このエネルギモニタからの光電変換信号(光量信号)はレーザ制御装置16eに出力される。
ビームモニタとしては、例えばハーフミラー16gの透過光路上に順次配置された集光レンズ、コリメータレンズ、エタロン、テレメータレンズ及びラインセンサ等を含むファブリペロー干渉計が用いられている。そのエタロンにレーザビームLBが入射すると、部分反射面での回折光(ホイヘンスの原理による二次波)はエアーギャップ間で反射と透過を繰り返す。この時、次式(1)を満たす入射角θの方向の光のみがエタロンを透過して強め合い、これにより、テレメータレンズの焦点面に干渉縞(フリンジパターン)が形成され、該フリンジパターンがテレメータレンズの焦点面に配置されたラインセンサによって検出される。
2・n・d・cosθ=mλ …(1)
ここで、dはエアーギャップであり、nはエアーギャップの屈折率、mは次数を示す整数である。式(1)より、n、d、mが一定とすれば、波長λの違いによって焦点面に形成されるフリンジパターンが異なることがわかる。テレメータレンズの焦点面に配置されたラインセンサで検出される光強度の分布は、焦点面におけるラインセンサ長手方向に関して所定間隔で干渉縞に対応する山型のレーザビームLBのスペクトルが現れる。
図2(A)及び(B)(横軸は波長λ、縦軸は光の強度I)はそれぞれそのスペクトルの一例を示し、本例では後述の方法で、図2(B)に示すように、そのスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅として、そのスペクトルをピーク値IPよりも低い所定レベルILPでスライスしたときの2つの波長λ3及びλ4の幅内の強度分布の積分値がそのスペクトルの強度分布の全積分値に対して95%になるときの幅である95%エネルギ純度幅(以下、スペクトル幅E95%という。)を検出する。さらに、本例では、図2(A)に示すように、そのスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅として、そのスペクトルのピーク値IPに対して強度が1/2に低下するときのスペクトルの波長λ1及びλ2の幅である半値全幅(FWHM;Full Width Half Maximum)(以下、スペクトル幅FWHMという。)を検出する。本例では、次式で規定されるその2つのスペクトル幅の比の値(以下、スペクトル比という)を用いて、ウエハ上に露光されるパターンの特性を制御する。なお、スペクトル比として(2)式の逆数を用いてもよい。
スペクトル比=E95%/FWHM …(2)
また、各光強度分布の山のピークに対応するラインセンサ長手方向の位置は、中心波長に応じて定まる。すなわち、前述のフリンジパターンは、入射光の中心波長λc、スペク卜ル幅FWHM,E95%に対応したものとなっており、ビームモニタ機構16c内部のビームモニタからこのフリンジパターンの撮像信号がレーザ制御装置16eに出力される。その中心波長としては、スペクトルのピーク波長λp又は強度分布の重心位置の波長(重心波長)λgを用いることができる。
図1に戻り、レーザ装置16のハウジング17内におけるビームスプリッタ16bの照明光学系側には、主制御装置50からの制御情報に応じてレーザビームLBを遮光するためのシャッタ16fも配置されている。また、レーザ電源部16dは、高圧電源と、この高圧電源を用いてエキシマレーザチューブ64内部の不図示の放電電極を所定のタイミングで放電させるパルス圧縮回路(スイッチング回路)等とを含んで構成されている。レーザ制御装置16eは、前述のフリンジパターンの撮像信号及びエネルギモニタの出力信号に所定の信号処理を施す画像処理回路及び所定の演算を行うコンピュータなどを含む。
また、レーザ制御装置16eでは、通常の露光時には、前記エネルギモニタの出力に基づいて検出したエネルギパワーに基づいて、レーザ共振器16aから出力されるレーザビームLBの1パルスあたりのエネルギが、主制御装置50からの制御情報により与えられる1パルスあたりのエネルギの目標値に対応した値となるように、レーザ電源部16d内部の高圧電源での電源電圧をフィードバック制御する。さらに、レーザ制御装置16eは、主制御装置50からの制御情報に基づきレーザ電源部16d内部のパルス圧縮回路に対するトリガ信号の印加タイミングあるいは印加間隔を制御することにより、ウエハW上のショット領域に対する露光中のパルス数あるいはパルス発振周波数をも制御する。
次に、基準光源16hは、ビームモニタ機構16c内部のビームモニタの絶対波長キャリブレーションを行う際の基準光源であって、固体狭帯化レーザが用いられる。本実施形態では、基準光源16hとして、Ar倍波レーザ光源(アルゴンイオン2倍高調波レーザ光源)が用いられている。このAr倍波レーザ光源の中心波長は248.253nmと、KrFエキシマレーザ装置の中心波長λ0=248.385nmに非常に近くそのリファレンスとして好適である。
ここで、レーザ制御装置16eによって行われるビームモニタ機構16c内部のビームモニタの絶対波長キャリブレーションについて簡単に説明する。この際に、レーザ制御装置16eでは第1シャッタ21を開き、第2シャッタ23を閉じた状態で、ビームモニタからのその時のレーザビームLBに対応するフリンジパターンの情報を得、その情報を内部の画像メモリに記憶する。
次に、レーザ制御装置16eは、第1シャッタ21を閉じて第2シャッタ23を開いて基準光源16hからの光をビームモニタ機構16cに入射させる。そして、このときビームモニタから得られるフリンジパターンと画像メモリ内のフリンジパターン(その直前まで入射していたレーザビームLBのフリンジパターン)とを比較することにより、レーザビームLBの波長の基準波長からのずれを求め、この求めたずれを補正するように、狭帯域化モジュール70を調整することによって、レーザビームLBの絶対波長キャリブレーションを行う。
ところで、上記のフリンジパターンの比較に際して、デコンボリューション処理を行う必要があるが、このデコンボリューションの対象となるコンボリューション関数(実測スペクトルのフリンジパターンの実スペクトルに対応するフリンジパターンに対する変化量)は各露光装置に固有のものであり、装置関数と呼ばれる量である。本実施形態では、基準光源としてAr倍波レーザを用いており、このAr倍波レーザのスペクトル幅(FWHM)は非常に狭く、0.01pm以下であることから、帯域幅が無限に細い光とみなして、Ar倍波レーザの実測波形を装置関数としてデコンボリューション処理を行うことができる。
次に、デコンボリューション処理(取得した装置関数によるスペクトル計算処理)について説明する。以下では、装置関数をmi(λ)と記述する。このmi(λ)を定期的に取得し直すことがビームモニタの較正になる。実測スペクトルをs(λ)とすると、s(λ)は実スペクトルf(λ)と装置関数mi(λ)とのコンボリューション(記号*で表す)と考えられるので、次式(3)が成立する。
s(λ)=f(λ)*mi(λ) …(3)
ここで、標準的なデコンボリューションは、「測定データのフーリエ変換S(ω)」(ωは角周波数)を「装置関数のフーリエ変換M(ω)」で割って、その結果F(ω)をさらに逆フーリエ変換するという手順の計算を意味する。従って、次式(4a)の計算を行った後に、その計算結果を次式(4b)で示されるように逆フーリエ変換(F-1)すれば、実スペクトル信号f(λ)を取得することができる。
F(ω)=S(ω)/M(ω) …(4a)
-1〔F(ω)〕=f(λ) …(4b)
このようにして、本実施形態では、レーザ制御装置16eが、実スペクトル信号を得るためのデコンボリューションを行うことができ、実スペクトル信号に基づいて、正確なスペクトル特性に関する情報、即ち中心波長λc(λp又はλg)並びにスペクトル幅(E95%及びFWHM)の情報を得ることができる。なお、スペクトル特性に関する情報を求める機能の全部又は一部を主制御装置50に設けることも可能である。
レーザ制御装置16eは、スペクトルの中心波長λc及び上記の2つのスペクトル幅(E95%及びFWHM)の情報を主制御装置50に送信し、主制御装置50はそれらの情報をメモリ51(記憶装置)に記憶する。そして、必要に応じて、主制御装置50は、レーザビームLBの設定波長λ0 、スペクトル比(=E95%/FWHM)(又はこの逆数でもよい)の目標値EF、及びスペクトル幅E95%(又はFWHM)の目標値の情報をレーザ制御装置16eに送信する。
レーザ制御装置16eは、主制御装置50によって設定される設定波長λ0 に対する中心波長λcのずれ量(波長ずれ量)Δλが小さくなるように、かつスペクトル比がその目標値EFになり、スペクトル幅E95%(又はFWHM)がその目標値になるように、駆動機構19を介して狭帯域化モジュール70を制御する。なお、レーザ制御装置16eは、必要に応じて、スペクトル幅E95%とスペクトル幅FWHMとを互いに独立に変化させることもできる。例えばスペクトル幅FWHMを固定して、スペクトル幅E95%を変化させるためには、図2(A)のスペクトルにおいて、一例として、スペクトル幅FWHMを固定した状態で、強度がIP/2よりも低い部分のスペクトルの幅を増減すればよい。
次に、照明光学系12は、ビーム整形光学系18、エネルギ粗調器20、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ(この他に内面反射型インテグレータ又は回折光学素子なども使用できる)22、照明系開口絞り板24、ビームスプリッタ26、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、固定レチクルブラインド30A、可動レチクルブラインド30B、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ32等を備えている。
エネルギ粗調器20は、レーザ装置16からのレーザビームLBを整形するビーム整形光学系18の後方に配置されている。エネルギ粗調器20に続くレーザビームLBの光路上にフライアイレンズ22を介して照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、等角度間隔で、例えば通常照明用の円形開口を有する可変の開口絞り、小さな円形開口を備えコヒーレンスファクタ(σ値)が小さい小σ照明用の可変の開口絞り、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。照明系開口絞り板24は、フライアイレンズ22の射出面近傍、すなわち本実施形態では照明光学系12の瞳面とほぼ一致する面に配置されている。
照明系開口絞り板24は、主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、いずれかの開口絞りをレーザビームLBの光路上に選択的に設定することで、照明条件が設定される。さらに、本例では、例えば輪帯照明用の開口絞りは、開口の外径及び内径が微調整可能に構成され、その開口形状の微調整によって照明条件を微調整できる。同様に、小σ照明及び通常照明を行う場合においても、開口絞りの開口の大きさを微調整することで、照明条件を微調整できるように構成されている。なお、照明系開口絞り板24の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えばズーム光学系、可動のアキシコン(円錐プリズム)、及び交換可能な回折光学素子を含み、ビーム成型光学系18とオプティカルインテグレータ22との間に配置される成形光学系を用いてもよい。
照明系開口絞り板24から射出されるレーザビームLB、すなわち露光ビームとしての照明光ILの光路上に、透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、この後方の光路上に、固定レチクルブラインド30A及び可動レチクルブラインド30Bを介在させてリレーレンズ28A及び28Bを含むリレー光学系が配置されている。
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上の照明領域42Rを規定する矩形開口が形成されている。また、走査露光の開始時及び終了時にその可動レチクルブラインド30Bを介して照明領域42Rを更に制限することによって、不要な露光が防止される。リレーレンズ28Bを経た照明光ILは、光路折り曲げミラーM及びコンデンサレンズ32を介してレチクルRを照明する。一方、ビームスプリッタ26で反射された照明光ILは、集光レンズ44を介して光電検出器よりなるインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、主制御装置50に供給される。その光電変換信号を用いることによって、ウエハWに対する露光量制御が行われる。
また、レチクルステージRST上にレチクルRが吸着保持されている。レチクルステージRSTは、XY平面内で微小移動可能であるとともに、レチクルステージ駆動系48によって走査方向(Y方向)に所定ストローク範囲で走査される。レチクルステージRSTの位置は、レチクルステージRST上に固定された移動鏡52Rに測長ビームを照射するレーザ干渉計54Rによって計測され、このレーザ干渉計54Rの計測値が主制御装置50に供給される。
投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系(投影倍率は例えば1/4、1/5等)である屈折系が用いられているが、反射屈折系等も使用できる。前記の如く照明光ILによりレチクルR上の照明領域42Rが照明されると、その照明領域42R内のパターンを投影光学系PLによって縮小した像が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域42Wに投影される。
また、XYステージ14は、ウエハステージ駆動系56によってXY面内で走査方向であるY方向及びこれに直交するX方向に2次元的に移動される。このXYステージ14上に、Zチルトステージ58が搭載され、このZチルトステージ58上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが吸着保持されている。Zチルトステージ58は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)を調整すると共に、XY平面に対するウエハWの傾斜角を調整する機能を有する。また、XYステージ14の位置は、Zチルトステージ58上に固定された移動鏡52Wに測長ビームを照射するレーザ干渉計54Wにより計測され、このレーザ干渉計54Wの計測値が主制御装置50に供給される。さらに、図示省略されているが、レチクルRの上方には、アライメント用の光学系(例えば顕微鏡など)が配置され、投影光学系PLの側面にウエハアライメント用のセンサが配置されている。
また、制御系は、図1中、コンピュータよりなる主制御装置50を含み、主制御装置50は、走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度VRで走査されるのに同期して、XYステージ14を介してウエハWが露光領域42Wに対して−Y方向(又は+Y方向)に速度δ・VR(δはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レーザ干渉計54R,54Wの計測値に基づいてレチクルステージ駆動系48、ウエハステージ駆動系56をそれぞれ介してレチクルステージRST、XYステージ14の位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ウエハWのステッピングの際には、主制御装置50ではレーザ干渉計54Wの計測値に基づいてウエハステージ駆動系56を介してXYステージ14の位置を制御する。
また、主制御装置50は、前述の如く、レーザ装置16の発光タイミング、及び発光パワー等を制御するとともに、エネルギ粗調器20、照明系開口絞り板24をモータ38、駆動装置40をそれぞれ介して制御し、露光量制御及び照明条件の切り替えを行う。主制御装置50には、記憶装置としてのメモリ51及び入出力装置62が接続されている。メモリ51内には、上記のレーザ装置16から射出されるレーザビームLBのスペクトル幅(E95%及びFWHM)並びにレーザビームLBの中心波長λcの情報や、後述のスペクトル特性とウエハ上に露光されるパターンの特性としての種々の結像特性との関係を示す情報等が格納されている。
次に、本例の露光装置において、レーザ装置16から射出されるレーザビームLBのスペクトル特性を制御して、ウエハW上に露光されるパターンの特性を制御する方法につき説明する。最初に、(1)パターン像の線幅のピッチ依存性である光近接効果(OPE)の補正量、(2)投影像のコントラスト、(3)投影像の焦点深度(DOF;Depth of Focus)を個別に制御する方法につき説明する。これらの制御をそれぞれOPE優先モード、コントラスト優先モード、及びDOF優先モードによる制御とも呼ぶことができる。
先ず、図3は、線幅が例えば解像限界に近い所定値で、ピッチが次第に大きくなる多数の周期的パターンを、所定の基準となる照明条件(例えば通常照明)のもとで図1の投影光学系PLを介してウエハW上に転写した後、所定のプロセスによってウエハW上のレジストを現像して得られるレジストパターンの線幅であるCD(Critical Dimension)のピッチ依存性(光近接効果)を示す。図3の横軸はピッチ(nm)、縦軸はCD(nm)を示し、図3に示すように、光近接効果によってピッチが小さくなるほど線幅CDは太くなる傾向にある。その線幅CDのうち、最大値をLmax、最小値をLminとすると、(Lmax−Lmin)がピーク・バイアスPB(Peak BIAS)である。このピーク・バイアスPB(線幅CDのばらつき)は、光近接効果の量を示すとともに、露光に用いられるレーザビームのスペクトル幅によって変化する。これはスペクトル幅によってレーザビームの光近接効果が変化することによる。
そこで、本例では図1のレーザビームLBのスペクトル幅FWHM及びE95%を所定量ずつ次第に変化させながら、それぞれ光近接効果によるピーク・バイアスPBを求める。なお、図3の結果からピーク・バイアスPBを求める方法には、実際に多数の周期的パターンを転写して得られるレジストパターンの線幅を走査型電子顕微鏡等で計測するテストプリント法(露光モード)と、例えば図1の主制御装置50等のコンピュータによるシミュレーションによる方法とがある。コンピュータのシミュレーションによる方法は、露光工程が不要であるため、評価時間を短縮できるが、露光モードに比べて誤差が生じる恐れがある。そこで、例えば上記の基準となる照明条件において、スペクトル幅FWHM及びE95%を複数組の値に設定して、それぞれ露光モードで得られるピーク・バイアスPB1と、シミュレーションによって得られるピーク・バイアスPB2との誤差ΔPB(=PB2−PB1)を求めてメモリ51に記憶しておき、スペクトル幅FWHM及びE95%を異なる値に設定したときには、シミュレーションによって得られるピーク・バイアスPB2を、その記憶してある誤差ΔPBを補間した値で補正してもよい。これによって、シミュレーション精度を高めることができる。同様に、後述のコントラスト特性及び焦点深度特性のスペクトル幅との関係を求める場合にも、露光モード又はコンピュータによるシミュレーションのいずれの方法も使用できるが、シミュレーションによれば評価時間を短縮できる。
図4は、そのようにして求めたスペクトル幅とピーク・バイアスPBとの関係(光近接効果)を示し、図4において、横軸はスペクトル幅FWHM、縦軸はスペクトル幅E95%であり、実線のほぼ等間隔の斜めの直線2A,2B,2C,2D,2E,2F上でそれぞれピーク・バイアスPBは一定であり、かつ直線2Aから直線2Fに向かって所定量ずつ次第にピーク・バイアスPBが大きくなっている。従って、ピーク・バイアスPBは、左下の領域LBAで小さく、右上の領域HBAで大きい(光近接効果の影響が大きい)。また、直線2Cと2Dとの間の領域Aは、スペクトル幅(E95%及びFWHM)が実用的な範囲にあるとともに、ピーク・バイアスPBが光近接効果補正を行うのに適している領域である。
また、点線のほぼ等間隔の斜めの直線3A〜3Fは、照明条件を上記の基準となる照明条件から変えた場合(例えば小σ照明)に、それぞれピーク・バイアスPBが一定となるとともに、次第にピーク・バイアスPBが大きくなる直線を示している。このように、照明条件やプロセスが変化すると、直線2A〜2Fの傾斜角が変化する。直線2A〜2Fより分かるように、傾き(=E95%/FWHM)が所定値(a1とする)である直線2に沿ってピーク・バイアスPB(光近接効果)が次第に大きくなっている。そこで、本例では、(2)式のスペクトル比(=E95%/FWHM)をa1に維持した状態で、スペクトル幅E95%(又はFWHM)を制御することによって、光近接効果を容易に、かつ高精度に制御することができる。具体的に、図1のレチクルRの光近接効果補正(OPC)を行う場合には、ピーク・バイアスPBが領域Aの平均値であるとしてレチクルRの各パターンの線幅の補正量を設定し、露光時には、そのスペクトル幅E95%の値を直線2に沿って領域Aの中心付近に設定することによって、光近接効果を良好に補正でき、ひいてはウエハ上に投影されるパターンの線幅(CD)の誤差が低減される。
一方、図1のレチクルRが他の露光装置用に光近接効果の補正量が最適化されており、図1の露光装置用には補正量が足りない(ピーク・バイアスPBが+側に残存している)ような場合の露光時には、光近接効果によって発生するピーク・バイアスPBを少なくするように、そのスペクトル幅E95%の値を例えば直線2に沿って直線2Cに近い位置に設定すればよい。このようにレーザビームLBのスペクトル比を一定値にして、スペクトル幅を制御することによって、他の露光装置用に光近接効果の補正量が最適化されたレチクルを用いる場合にも、ウエハ上に露光される各パターンの線幅誤差を許容範囲内にすることができる。
次に、図5(A)は、上記の基準となる照明条件において、スペクトル幅FWHM及びE95%を変えながら求めた、スペクトル幅と投影像のコントラストとの関係を示し、図5(A)において、ほぼ等間隔のの斜めの直線4A〜4F上でそれぞれコントラストは一定であり、かつ直線4Aから直線4Fに向かって所定量ずつ次第にコントラストが小さくなっている。従って、コントラストは、左下の領域HCAで大きく、右上の領域LCAで小さい。また、直線4Cと4Dとの間の領域Bは、スペクトル幅(E95%及びFWHM)が実用的な範囲にあるとともに、コントラストが設計上で要求される範囲にある領域である。
なお、この場合にも、照明条件やプロセスが変化すると、直線4A〜4Fの傾斜角は変化する。直線4A〜4Fより分かるように、傾き(=E95%/FWHM)が所定値(a2とする)である直線4に沿ってコントラストが次第に小さくなっている。そこで、本例では、(2)式のスペクトル比(=E95%/FWHM)をa2に設定した状態で、スペクトル幅E95%(又はFWHM)を制御することによって、投影像のコントラストを容易に、かつ高精度に制御することができる。
また、図5(B)は、上記の基準となる照明条件において、スペクトル幅FWHM及びE95%を変えながら求めた、スペクトル幅と投影像の焦点深度(DOF)との関係を示し、図5(B)において、ほぼ等間隔の斜めの直線5A〜5F上でそれぞれ焦点深度は一定であり、かつ直線5Aから直線5Fに向かって所定量ずつ次第に焦点深度が小さくなっている。従って、焦点深度は、左下の領域HDAで大きく、右上の領域LDAで小さい。また、直線5Cと5Dとの間の領域Cは、スペクトル幅(E95%及びFWHM)が実用的な範囲にあるとともに、焦点深度が設計上で要求される範囲にある領域である。
この場合にも、照明条件やプロセスが変化すると、直線5A〜5Fの傾斜角は変化する。直線5A〜5Fより分かるように、傾き(=E95%/FWHM)が所定値(a3とする)となる直線5に沿って焦点深度が次第に小さくなっている。そこで、本例では、スペクトル比(=E95%/FWHM)をa3に設定した状態で、スペクトル幅E95%(又はFWHM)を制御することによって、投影像の焦点深度を容易に、かつ高精度に制御することができる。
上述のように、本例によれば、レーザビームLBのスペクトル幅の上限値以外の特性であるスペクトル幅(E95%及びFWHM)及びスペクトル比(=E95%/FWHM)を用いることによって、光近接効果による投影像の線幅CD、投影像のコントラスト、及び焦点深度の特性を容易に、かつ高精度に補正できる。
なお、例えば図4の基準の照明条件での光近接効果の影響を示す直線2A〜2Fより分かるように、光近接効果の影響はほぼスペクトル幅E95%によるともみなすことができる。また、通常、スペクトル幅FWHMはほぼスペクトル幅E95%に連動している。従って、図1のメモリ51には、スペクトル幅E95%の情報のみを記憶しておき、その情報から光近接効果の影響を推測するようにしてもよい。
なお、以上の実施形態とは異なり、光近接効果(線幅CDのばらつき)の補正量、投影像のコントラスト、及び焦点深度に重み付けをして全体として良好な特性が得られるようにスペクトル幅を制御してもよい。このような制御は全最適化モードとも呼ぶことができる。そのためには、一例として、光近接効果の補正量、投影像のコントラスト、及び焦点深度を最適化するためのスペクトル幅E95%及びFWHMをそれぞれE1,E2,E3及びF1,F2,F3として、光近接効果、投影像のコントラスト、及び焦点深度に対する重みをw1、w2、及びw3とすると、全体として良好な特性が得られるスペクトル幅E95%及びFWHMを次式の加重平均ET及びFTとすればよい。この場合には、スペクトル幅E95%及びFWHMを独立に設定できることが望ましい。
ET=(w1・E1+w2・E2+w3・E3)/(w1+w2+w3)…(5a)
FT=(w1・F1+w2・F2+w3・F3)/(w1+w2+w3)…(5b)
上記のようにスペクトル比(=E95%/FWHM)と露光されるパターンの特性との関係、例えば図4の直線2の傾きは、照明条件やプロセスによって変化する。そこで、例えば照明条件が変化した場合にも最適なスペクトル幅を容易に設定できるように、スペクトル幅E95%及びFWHMを、それぞれ基準となる照明条件での幅(E95%)Nominal 及び(FWHM)Nominal と、照明条件が変化したときの変化量である安定度(E95%)Stability 及び(FWHM)Stability とに分けておき、照明条件の変更時には、次式の値の範囲が例えば図4の領域A内に入るように、基準となる照明条件でのスペクトル幅を求めてもよい。
E95%=(E95%)Nominal±(E95%)Stability …(6a)
FWHM=(FWHM)Nominal±(FWHM)Stability …(6b)
(6a)式、(6b)式を用いることによって、本例の露光装置の全稼動時間において、レーザ装置16内部における条件変化に関わらず、全ての照明条件下においてレーザビームLBのスペクトル幅を高精度に制御できる。この場合にも、(2)式のスペクトル比(=E95%/FWHM)は一定値であることが多いため、一方のスペクトル幅(例えばE95%)を規定することで、そのスペクトル比から他方のスペクトル幅(FWHM)が規定される。従って、光近接効果の補正量等に応じて必要とされるスペクトル幅の制御範囲を容易に求めることができる。
次に、本発明の第2の実施形態につき図6及び図7を参照して説明する。本例でも図1と同じ露光装置を用いるが、本例では図1のレーザ装置16の代わりに別のレーザ装置16Aが使用されることがある点が異なっている。これは、図1の露光装置と同じ機種(世代)の露光装置において、露光光源として異なるメーカのレーザ装置16及び16Aを併用するような場合、又はレーザ装置16をレーザ装置16Aに交換するような場合に生ずる。なお、レーザ光源16Aの構造はレーザ光源16と同様であるとする。
このように異なるレーザ光源16,16Aを用いる場合にもウエハ上に露光されるパターンの特性を最適化するためには、それぞれレーザビームのスペクトル幅(E95%及びFWHM)を制御する必要がある。しかしながら、レーザ光源16,16Aによって適正なスペクトル比(=E95%/FWHM)が異なるとともに、(6a)式、(6b)式における基準となる照明条件でのスペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal と、照明条件が変化したときのスペクトル幅の安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability とが異なる場合には、レーザ光源毎にスペクトル幅を異なる最適値に設定する必要がある。
図6は、レーザ光源16(光源Aとも呼ぶ)及びレーザ光源16A(光源Bとも呼ぶ)のスペクトル幅の基準となる照明条件での値、及び照明条件が変化したときの安定度の一例を示し、この図6において、安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability の値が小さい領域は、スペクトル幅の変動が少なく、使用するのに好ましい領域である。
図7は、レーザ光源16,16Aのスペクトル比(=E95%/FWHM)の一例を示し、この図7の横軸はスペクトル幅FWHM、縦軸はスペクトル幅E95%であり、直線2A〜2Fは図4と同様に、スペクトル幅(E95%及びFWHM)に対して光近接効果によるピーク・バイアスPBが同じ値になる直線を示すとともに、直線2Cと2Dとの間の領域Aの中央でのピーク・バイアスPBによって、光近接効果補正を行ってレチクルを作成する際の線幅の補正量が設定されるものとする。また、図7において、直線6は、レーザ光源16のスペクトル比(=E95%/FWHM=aとする)を傾きとする直線であり、直線7は、レーザ光源16Aのスペクトル比(=E95%/FWHM=a’とする)を傾きとする直線であるとする。
この場合、直線6及び7に沿った離散的な点6A,6B,6C,…、及び7A,7B,7C,7D,…におけるスペクトル幅が、それぞれ図6に一部を示す基準となる照明条件でのスペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal であり、例えば点6B及び7Gに示す矢印の幅の1/2が、その点における照明条件を変えたときのスペクトル幅の安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability である。本例では、レチクルパターンの光近接効果の補正量は図7の領域Aの中心を目標として行われているため、そのレチクルを使用してウエハ上のパターンの線幅誤差を許容範囲内にするためには、レーザ光源16及び16Aのスペクトル幅(E95%及びFWHM)をそれぞれ直線6及び7に沿う領域A1及びA2内に収める必要がある。
そのためには、一例として、レーザ装置16(レーザ光源16Aも同様)について、図6(又はこれを拡張した図、以下同様)から領域A1(又はA2)内に収まるスペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal の候補値を検索し、これに対応する安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability を加算した値が領域A1(又はA2)から外れないように、最終的にスペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal を決定すればよい。スペクトル幅の制御精度を向上するためには、スペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal をできるだけ細かい間隔で設定しておくことが望ましい。この際に、スペクトル幅の安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability としては、レーザ光源16及び16Aにおいて制御可能なスペクトル幅の安定性も考慮しておくことが望ましい。そのためには、予めレーザ光源16及び16Aにおいて制御可能なスペクトル幅の安定性の情報を図1の主制御装置50に送信しておけばよい。
このようにしてレーザ光源16,16A毎にスペクトル幅を設定することによって、レーザ光源を切り替えた場合にも、光近接効果補正が行われたレチクルを共通に使用して高精度に露光を行うことができる。
次に、本例において、より高精度にスペクトル幅の制御を行う方法につき説明する。そのため、図7の領域Aを規定する2つの直線2C及び2Dをそれぞれ次式で表す。なお、直線2C及び2Dの傾きをc,c’、切片をd,d’として、スペクトル幅E95%をy(E95%)とする。
y(E95%)=c×(FWHM)+d …(7a)
y(E95%)=c’×(FWHM)+d’ …(7a)
次に、レーザ光源16及び16Aについて、それぞれスペクトル幅が図7の領域Aに入るとき、即ちスペクトル幅(E95%及びFWHM)が次式を満たすときの基準となる照明条件でのスペクトル幅(FWHM)Nominal を図6から複数個選択する。
c×(FWHM)+d≦y(E95%)≦c’×(FWHM)+d’ …(8)
次に、選択されたスペクトル幅(FWHM)Nominal を(7a)式、(7b)式に代入してスペクトル幅(E95%)Nominalを求めた後、これに図6から選択された対応する安定度(E95%)Stability,(FWHM)Stability を加算したスペクトル幅が、図7の領域A内に収まるようにスペクトル幅(E95%)Nominal,(FWHM)Nominal を決定し、これを図1のレーザ装置16又は16Aのレーザ制御装置16eに供給すればよい。
投影像のコントラスト若しくは焦点深度についても、同様にレーザ装置16又は16A毎にスペクトル幅を最適化することで、レーザ光源を切り替えた場合にも最適な特性を得ることができる。また、第1の実施形態と同様に、個々の特性毎に最適化されたスペクトル幅の加重平均を行うことにより、光近接効果の補正、投影像のコントラスト、及び焦点深度について総合的に特性を最適化できる。
次に、上記の実施形態では、スペクトル幅(E95%及びFWHM)のみを制御していたが、その他に例えば残存している線幅誤差を補正するために、図1の照明光学系12の照明条件の微調整やZチルトステージ58によるウエハWのX軸又はY軸の周りの傾斜角であるチルト角θX又はθYを制御してもよい。すなわち、照明条件の調整とチルト角の制御との少なくとも一方を、スペクトル幅の制御と併用しても良い。
先ず、例えば図1の照明系開口絞り板24において通常照明用の開口絞りを設定している際に、照明条件を微調整するには、その開口絞りの開口径を微調整すればよい。同様に、輪帯照明を行っている際には、その開口の内径及び外径を微調整すればよい。この調整量は、例えばテストプリントを行って、転写されるパターンの線幅が所望の値になるように設定すればよい。なお、図1の照明系開口絞り板24の代わりに前述の成形光学系が設けられている場合、例えば通常照明時にその微調整を行うためには、ズーム光学系により照明光学系の瞳面上での照明光の大きさを変化させればよいし、輪帯照明時にその微調整を行うためには、可動のアキシコンによりその輪帯比を変化させればよい。
次に、図8(A)の分布E1は、図1の投影光学系PLによる投影像の光量EPの分布の一例を示し、横軸は位置X(又はY)であり、光量EPがレジストの感光レベルEPthを横切るときの幅d1がレジストパターンの幅となる。また、図8(B)はその際に使用されているレーザビームのスペクトルの一例を、図8(C)は、図1のZチルトステージ58によるチルト角θX(又はθY)による投影像の線幅の変化の一例を示す。図8(C)において、X方向(又はY方向)の線幅d1の投影像は、チルト角θXが大きくなると次第に線幅が狭くなる。そこで、図8(A)において、Zチルトステージ58のチルト角θXを制御することによって、投影像の光量は分布E2に変化してレジストパターンの線幅はd2に減少する。そこで、最終的な線幅d2が所望の値になるようにチルト角θX(又はθY)を決定すればよい。
なお、上記各実施形態では、マスクとしてレチクルを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を含む可変成形マスク(電子マスク)を用いてもよい。また、露光対象となる物体はウエハに限られるものでなく、例えばガラスプレートなどでもよい。
また、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(いわゆるステッパ)にも好適に適用できる。また、本発明は、例えば国際公開第2004/053955号パンフレットなどに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも適用できる。
また、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、撮像素子(CCD等)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。このように、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
本発明は、半導体素子等の各種デバイスを製造する際に使用できる。また、本発明において、所定のスペクトル幅を制御することにより、例えば光近接効果補正を適用して作成された1枚のマスクを複数の露光装置で共通に使用することが可能となる。
第1の実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。 スペクトル幅FWHM及びE95%の説明図である。 光近接効果による投影像の線幅の変化を示す図である。 スペクトル幅と光近接効果によるピーク・バイアスとの関係を示す図である。 (A)はスペクトル幅とコントラストとの関係を示す図、(B)はスペクトル幅と焦点深度との関係を示す図である。 2つのレーザ光源のスペクトル特性の一例の一部を示す図である。 2つのレーザ光源のスペクトル比の一例を示す図である。 チルト角を制御して投影像の線幅を制御する動作の説明図である。
符号の説明
10…露光装置、12…照明光学系、16…レーザ装置、16e…レーザ制御装置、50…主制御装置、51…メモリ、PL…投影光学系

Claims (19)

  1. レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、
    前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅との比の値を用いて、前記パターンの前記物体上への露光パターンの特性を制御することを特徴とする露光装置。
  2. 前記レーザ光を発生するレーザ光源と、前記露光パターンの特性を制御する制御装置とを備え、
    前記レーザ光源側から前記制御装置に、前記第1及び第2のスペクトル幅の情報を供給することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
  3. レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、
    前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅の情報を記憶する記憶装置を備えたことを特徴とする露光装置。
  4. 前記記憶装置は、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅の情報をさらに記憶することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
  5. 前記第1のスペクトル幅と前記第2のスペクトル幅との比の値を用いて、前記パターンの前記物体上への露光パターンの特性を制御する制御装置をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
  6. 前記制御装置は、前記比の値を用いて、前記露光パターンの線幅、コントラスト、又は焦点深度のいずれかの特性を優先的に制御することを特徴とする請求項2又は5に記載の露光装置。
  7. 前記制御装置は、前記露光パターンの線幅、コントラスト、及び焦点深度の特性をそれぞれ制御するための前記比の値を重み付け平均して得られる目標値を用いて前記比の値を制御することを特徴とする請求項2又は5に記載の露光装置。
  8. 前記露光パターンの線幅の残差を補正するために、前記物体の傾斜角を制御するステージをさらに備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の露光装置。
  9. 前記露光パターンの線幅の残差を補正するために、前記レーザ光の照明条件を制御する照明光学系をさらに備えたことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の露光装置。
  10. レーザ光をパターンに照射し、前記レーザ光で前記パターンを介して物体を露光する露光装置において、
    他の露光装置の光近接効果を補正するためにパターン幅が補正されたマスクを用いて露光を行う際に、自己の光近接効果を補正するために、前記レーザ光のスペクトル幅を制御する制御装置を備えたことを特徴とする露光装置。
  11. 前記スペクトル幅は、前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅を含むことを特徴とする請求項10に記載の露光装置。
  12. 前記自己の光近接効果を補正するために、前記第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅との比が制御されることを特徴とする請求項11に記載の露光装置。
  13. レーザ光を発生するレーザ光源において、
    前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅とを独立に制御する発光制御装置を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  14. レーザ光を発生するレーザ光源において、
    前記レーザ光のスペクトルの強度分布の積分値に基づいて定まる第1のスペクトル幅と、前記レーザ光のスペクトルのピーク値に対して強度が所定割合まで低下するときの幅である第2のスペクトル幅との比の値を制御する発光制御装置を備えたことを特徴とするレーザ光源。
  15. 前記発光制御装置は、前記レーザ光のスペクトル幅に応じて、前記レーザ光の中心波長を制御することを特徴とする請求項13又は14に記載のレーザ光源。
  16. 前記レーザ光の中心波長は、前記レーザ光のスペクトルのピーク波長又は前記スペクトルの重心位置の波長であることを特徴とする請求項15に記載のレーザ光源。
  17. 請求項1から12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光することを特徴とする露光方法。
  18. 請求項13から16のいずれか一項に記載のレーザ光源から発生されるレーザ光をパターンに照射し、前記パターンを介して前記レーザ光で物体を露光するために、前記第1のスペクトル幅と前記第2のスペクトル幅との比を用いて、前記物体上での露光パターンの特性を制御することを特徴とする露光方法。
  19. 請求項17又は18に記載の露光方法を用いて物体上にデバイスパターンを転写する工程を含むデバイス製造方法。
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