JP2007132725A - コイル用線材及び核磁気共鳴検出コイル - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄スポットの付着を誘発する引っ張り延伸や圧延などの工程がない製造方法で製造され、NMRプローブの検出コイルに用いて好適な、磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有するコイル用線材及びNMR検出コイルを提供する。
【解決手段】常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせるようにした。
【選択図】図2
【解決手段】常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせるようにした。
【選択図】図2
Description
本発明は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance;NMR)装置において、試料に高周波を照射し、試料から出るNMR信号を検出するNMR検出コイルと、それに用いられるコイル用線材に関する。
従来、化学分析の分野において、高分解能のNMR分光法が広範に利用されている。NMRは、試料の分子構造の決定に有力な手段を提供する。
通常、NMRによる分子構造の決定には、プロトン1Hと炭素13Cを用いる。これらの同位体元素は、周囲の原子配置を反映した化学シフトを有し、この化学シフトは、NMR周波数の差として観測することができる。分子構造の決定は、観測した化学シフトに基づいて、原子の空間的な結合を調べることによって行なわれる。それは、1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルを、多重共鳴用NMR装置を用いて同時に測定し、分子構造解析に必要な情報を取得することにより遂行される。
図1は、従来のNMR装置の主要部分を示したものである。多重共鳴用NMR装置200の測定においては、主磁石2の静磁場内に、試料30を収容したガラス製の試料管1をセットし、この試料30に静磁場強度に応じた周波数のRFパルスを照射してNMR現象を起こさせる。試料30は、通常、重水または重水素化有機溶媒に溶解されている。
その場合、RFパルスは、その試料30中の観測したい核種に応じて、発振器14からのパルス信号を複数の周波数バンド(図示例では3バンド;以下、3バンドで説明する)の中から選択し、それぞれ周波数f1に対応する電力増幅器13、周波数f2に対応する電力増幅器15、周波数f3に対応する電力増幅器16で増幅し、入出力を切り替えるデュプレクサ9を介して多重共鳴用NMRプローブ4に入力することにより、多重共鳴用NMRプローブ4からそれぞれ試料管1中の試料30に照射する。
照射後、試料30は、NMR現象により、その核種に固有の共鳴周波数のNMR信号を出力するので、そのNMR信号を多重共鳴用NMRプローブ4で捉える。
3バンドの周波数帯域のうち、観測に用いられるのは、通常、2バンド(例えば、1H核と13C核の共鳴周波数帯域)であり、残りの1バンドは、試料30中の重水または重水素化有機溶媒に含まれている2D核にNMR現象を惹起させて、静磁場強度を一定の値にロックすることに用いられる。
NMR測定時、試料30をある所定の温度で測定する必要がある場合は、多重共鳴用NMRプローブ4内の試料管1周辺の温度を、コンピュータ7で制御される温度可変装置5で可変制御するようになっている。
そして、多重共鳴用NMRプローブ4で捉えられたNMR信号をデュプレクサ9により増幅器10に送って増幅した後、復調検波器11でオーディオ周波数に変換し、更に、A/D変換器(ADC)12でデジタル信号に変換する。
こうして、このデジタル信号をコンピュータ7に取り込み、コンピュータ7が信号を分析することにより、試料30が分析され、その分析結果が表示機8に表示されて、多重共鳴用NMR装置により物質の構造が調べられる。
試料30に含まれる原子核の信号は、多重共鳴用NMR装置200において受信したNMR周波数に基づいて判別することができる。多くの場合、対象とする原子核はプロトン1Hであるが、当該1Hの信号には、周辺の原子配置による化学シフトが存在する。
化学シフトの範囲は、およそ数ppmであり、NMR信号の幅はおよそ10−3ppmである。信号を良好に分離するためには、試験管1内の試料30に印加される静磁界の不均一度が小さいことが必要である。試料30に印加される静磁界の不均一度が大きくなると、NMR信号の幅も広がり、装置分解能が低下する。
このため、NMR装置200においては、均一な磁界を高精度で発生する主磁石2を用いている。また、通常、所望の磁界勾配を発生することができるよう、室温シム3を主磁石2とNMRプローブ4との隙間に設け、磁場補正装置6で室温シム3の電流を制御し、残留する主磁界の不均一成分を相殺する「シミング」が行なわれる。この「シミング」による分解能調整は、極めて複雑であり、NMR装置の操作を難しくしている。
NMRプローブ4は、試料30から発生したNMR信号を検出するため、前述のような「シミング」技術によって形成された均一な磁界に挿入される。しかし、NMRプローブ4が磁気的性質を有すると、周囲の均一な静磁場を乱す。
NMRプローブ4内の図示しない検出コイルは、試料30に最も近接して設置されるので、試料30近傍の静磁場には、検出コイルの磁化率の影響が顕著に表れる。このような近接磁界の影響による磁場歪みは、外側の室温シム3では除去できない場合が多く、検出コイルに不適切な材料を選択すると、装置分解能の補正は著しく困難になる。このため、NMRプローブ4の構成部品には、鉄等の強磁性体を含まない銅、アルミニウム等、磁化率の小さい材料が採用される。
一方、信号検出の高い感度を確保するため、検出コイルのQ値は大きいことが望ましい。このため、検出コイルには、銅などの電気伝導度の高い材料が採用される。
磁気的な影響を低減するため、検出コイルは、薄い素材又は細い素材で作成される。しかし、Q値を確保するためには、高い電気伝導度を確保することが必要となり、素材には厚さまたは太さが必要となる。したがって、磁気的な影響の抑制と電気伝導度の確保は、相反した要請となる。
従来、このような検出コイルに対する要請を満たす、磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有する素材が提案されている。
例えば、互いに相殺する磁化率を有する2種類以上の純金属の組み合わせが提案されている。例えば、アルミニウムのコアを有する銅線、アルミニウム箔を挟んだ銅箔などである。
これらの素材においては、電気伝導度の低下は生じないが、各金属は硬さや加工硬化のレベルが異なり、組み合わせて均一に伸線・圧延することは難く、素材の断面は不整合になり易い。このため、第1の例と同じく磁化率が偏在し、磁界の均一性を損ねる結果となる。
さらに、実験の結果、伸線・圧延工程で混入する工作機械に由来する金属鉄成分の付着を避けることが極めて難しいことが判明している。素材への金属鉄の付着は、電子顕微鏡で確認することができる。
ここで、素材への金属鉄の付着について簡単に説明する。例えば、銅は反磁性体であるが、伸線・圧延工程を経ると、本来の反磁性磁化率が60%以上低下している場合が多い。また、磁化率は測定個所による変動が大きく、しばしば磁化率の符号が逆転して常磁性を示すものすらある。これは、不均一に付着した金属鉄が、同じ重量の銅に対して106倍もの磁界を発生するからである。
このように素材の磁気的性質に著しい影響を及ぼす金属鉄は、素材に対する磁気汚染物質と見なすことができる。しかし、母材との重量比は10ppm以下に過ぎず、化学分析において不純物として特定される量より少ないので、純度の工業規格には全く抵触しない。例えば10ppm重量相当の鉄スポットが線長1cmの部分に付着した場合、前記室温シム3では補正することができないような局所磁界を発生し、NMR装置の分解能に致命的な性能劣化を招来する。
本発明の目的は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、鉄スポットの付着を誘発する引っ張り延伸や圧延などの工程がない製造方法で製造され、NMRプローブの検出コイルに用いて好適な、磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有するコイル用線材及びNMR検出コイルを提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかるコイル用線材は、
常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成ることを特徴としている。
常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成ることを特徴としている。
また、前記撚り合わせの撚り角度は、60°/mmから240°/mmの範囲にあることを特徴としている。
また、前記撚り合わせを行なう際のトルクは、0.1N・mから1N・mの範囲にあることを特徴としている。
また、前記撚り線の長さは、1mを超えない長さであることを特徴としている。
また、前記常磁性の線材は、銅、金、ロジウムの中から選ばれることを特徴としている。
また、前記反磁性の線材は、アルミ、白金、パラジウムの中から選ばれることを特徴としている。
また、本発明にかかるNMR検出コイルは、
常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成るコイル用線材で作られていることを特徴としている。
常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成るコイル用線材で作られていることを特徴としている。
本発明のコイル用線材及びNMR検出コイルによれば、常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせているので、
鉄スポットの付着を誘発する引っ張り延伸や圧延などの工程がない製造方法で製造され、NMRプローブの検出コイルに用いて好適な、磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有するコイル用線材及びNMR検出コイルを提供することが可能になった。
鉄スポットの付着を誘発する引っ張り延伸や圧延などの工程がない製造方法で製造され、NMRプローブの検出コイルに用いて好適な、磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有するコイル用線材及びNMR検出コイルを提供することが可能になった。
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について説明する。図2は、本発明にかかるNMR検出コイルを説明した図である。
本発明では、常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を互いに撚り合わせることで、互いの磁性を打ち消し合い、空気などの環境ガスや真空のように磁化率が小さく、しかも高い電気伝導度を有するNMR検出コイルを提供するという課題を解決する。
まず、材料変形が起きないように、1mmあたりの撚り角度θをおおむね60°/mm(6mmで1回転)から240°/mm(1.5mmで1回転)程度に設定し、0.1N・mから1N・m程度のトルクをかけて撚り線にしたものをNMR検出コイルの基材とする。
以下、基材A、基材Bから成る2部材のケースで示す。NMR検出コイルの作成に必要な線材の長さは、通常、30cm前後であるので、本実施例では、1mを超えない長さの基材を用意した。撚り方には、一端を固定し、他端を回転させながら撚るという方法を用いた。
基材A、Bとも、均一でほぼ真円状の断面を有する線材を用い、具体的には、基材Aに0.23φのアルミ線、基材Bに0.325φの銅線を採用した。アルミ線は常磁性、銅線は反磁性である。体積磁化率は1:0.5であり、質点で考えると、トータルの磁化率はゼロである。
撚り線の送りは60°から180°ぐらいが妥当で、それ以上強い撚りだと、銅の変形が進み、磁気的な目的を達しない。60°は、磁気的には良いが、コイルに成形する際に、一部に線の乱れが生ずるので、おおむね120°前後の送りが巻きやすいと言える。
銅線は、撚る前に300℃前後で焼鈍しておく。硬質だと、アルミが負けてしまい、きれいな撚り線にならない。焼鈍後、銅線の表面を溶剤で洗浄し、清浄にしておく。
また、コイルの成形時まで、撚りがほどけないように、基材の2つの端点を固定しておく。コイル成形後は、不要な部分を切除する。
図3は、NMR検出コイルの一例である。撚り線状基材を用いて、図3のような形状に成形することにより、NMR検出コイル31を得ることができる。撚り線状基材の撚りが弱いと、コイル成形時に変形が出て、歩留まりが悪くなる。また、撚り線状基材の撚りが強いと、コイルの成形には都合が良いが、基材の変形によってNMR特性が悪くなる。
基材が変形せず、かつ、コイル成形にも耐えるためには、上記撚り角度およびトルクのうち、中間程度の値を用いる必要がある。そうすれば、歩留まりも安定する。
成形されたNMR検出コイルを用いた400MHzのNMR測定実験では、線型性能で半値幅約0.3Hz、0.55%幅4Hz、0.11%幅8Hzという結果が得られた。
なお、本発明には、変形例が可能である。例えば、丸線の代わりに、平角線を用いても良い。その場合、幅広であると、撚り線にしたときに質点系としては見なせないので、1mm程度の幅に限定する。厚さも約50ミクロン程度とする。
また、上記実施例では、アルミ線と銅線を採用したが、これは、常磁性金属と反磁性金属の組み合わせであれば、特に限定されない。例えば、アルミ線の代わりに白金線やパラジウム線など、銅線の代わりに金線やロジウム線などの使用が可能である。
また、上記実施例では、複数本の線材を互いに撚り合わせる構造としたが、あるいは一変形例として、1本の線材の周りに他の線材を巻き付ける構造にしても良い。その場合、常磁性と反磁性の打ち消し合いは、単に線材の直径だけでなく、単位長さ当たりの撚り線中に含まれる各金属量を考慮して計算する必要がある。
NMR装置に広く利用できる。
1:試料管、2:マグネット、3:室温シム、4:NMRプローブ、5:温度可変装置、6:磁場補正装置、7:コンピュータ、8:表示機、9:デュプレクサ、10:増幅器、11:復調検波器、12:ADC、13:電力増幅器、14:発振器、15:電力増幅器、16:電力増幅器、30:試料、31:NMR検出コイル、200:多重共鳴NMR装置
Claims (7)
- 常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成るコイル用線材。
- 前記撚り合わせの撚り角度は、60°/mmから240°/mmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載のコイル用線材。
- 前記撚り合わせを行なう際のトルクは、0.1N・mから1N・mの範囲にあることを特徴とする請求項1記載のコイル用線材。
- 前記撚り線の長さは、1mを超えない長さであることを特徴とする請求項1記載のコイル用線材。
- 前記常磁性の線材は、銅、金、ロジウムの中から選ばれることを特徴とする請求項1記載のコイル用線材。
- 前記反磁性の線材は、アルミ、白金、パラジウムの中から選ばれることを特徴とする請求項1記載のコイル用線材。
- 常磁性と反磁性の相反する磁気特性を持つ2つ以上の線材を撚り合わせて成るコイル用線材で作られた核磁気共鳴検出コイル。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005324256A JP2007132725A (ja) | 2005-11-09 | 2005-11-09 | コイル用線材及び核磁気共鳴検出コイル |
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JP2005324256A JP2007132725A (ja) | 2005-11-09 | 2005-11-09 | コイル用線材及び核磁気共鳴検出コイル |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010227244A (ja) * | 2009-03-26 | 2010-10-14 | Takenaka Komuten Co Ltd | 磁気擾乱低減材、磁気擾乱低減材を使用したインプラント材又は建材、及びその製造方法 |
-
2005
- 2005-11-09 JP JP2005324256A patent/JP2007132725A/ja not_active Withdrawn
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JP2010227244A (ja) * | 2009-03-26 | 2010-10-14 | Takenaka Komuten Co Ltd | 磁気擾乱低減材、磁気擾乱低減材を使用したインプラント材又は建材、及びその製造方法 |
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