JP2007126577A - 表面導電性材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、微細な回路パターンを有するプリント配線板の製造に好適な表面導電性材料の製造方法、及び、平滑な絶縁基板との密着性に優れ、均一な表面導電性を有する導電性発現層を、製造性よく得られる表面導電性材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物を結合させる工程と、前記基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線露光して、前記光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物からラジカルを発生させ、それを開始種として当該基板表面に結合してなるグラフトポリマーを生成させる工程と、該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程と、を有する表面導電性材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器のプリント配線板、特に、微細配線形成が可能なプリント配線板、多層プリント配線板若しくはビルドアップ型多層プリント配線板を形成する際に好適に用いられる表面導電性材料の製造方法に関するものである。
絶縁性基板の表面に回路を形成したプリント配線板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。中でも、絶縁性基板としてエポキシ樹脂を用いたものが、熱的特性、機械的特性、電気特性に優れ、且つ、コストも安価であるため好ましく用いられる。
一方、近年の電子機器の小型化、高機能化の要求に伴い、該プリント配線板に対しては、回路の高密度化、薄型化が要望されている。特に、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細回路を形成する方法の確立は、プリント配線板分野の重要な課題である。
このような微細回路を実現する高精細プリント配線板の製造方法としては、サブトラクティブ法やセミアディティブ法と呼ばれる方法が提案されている。このセミアディティブ法は、絶縁基板の表面が銅メッキ皮膜により覆われた表面導電性材料を使用し、感光性のレジスト膜の解像度、即ち、現像精度に応じた回路ピッチで回路パターンの形成がなされるため、厚い金属箔をエッチングして回路パターンを形成するサブトラクティブ法と比較して、微細な回路パターンを精度良く形成することが可能である。
しかしながら、サブトラクティブ法やセミアディティブ法においては、回路パターンを構成する銅薄層と絶縁基板との間に本質的には接着性がないため、絶縁基板の表面を凹凸化処理することにより、密着性を付与することが必要である。このように基板表面に凹凸を設けることにより、回路パターンと絶縁基板との間の接着性は、絶縁基板のアンカー効果により良好に保たれるものの、絶縁基板表面の凹凸により微細なパターンの形成が妨げられ、特に、直線状の奇麗なパターンが形成できなくなる。また、絶縁基板として表面が平滑なものを用いた場合、微細パターンの形成性は十分であるが、絶縁基板との間の接着性が不十分であり、形成された回路の基板に対する接着強度が十分ではないと言う問題がある。
回路の接着強度を向上させる目的で、絶縁基板の表面を粗面化することが行われ、通常は、その表面にJIS B 0601に準じて測定した表面の十点平均粗さ(Rz値)換算で3〜5μm程度の凹凸が付与される。このような絶縁基板表面の凹凸は、形成される回路パターンのライン/スペースの値が30/30μm以上である場合には比較的問題となりにくいが、これより精細なパターン、例えば、25/25μm以下の線幅の回路パターン形成においては、高密度の極細線回路線が、絶縁基板表面の凹凸の影響をうけるため、大きな懸念となる。
このため、ライン/スペースの値が25/25μm以下であるような高精細の回路パターンの形成には、表面平滑性の高い絶縁基板、例えば、Rz値換算で3μm以下、更に望ましくは1μm以下の平滑性を有する絶縁基板であっても、高強度の接着性を有する銅薄層(銅メッキ皮膜)を形成しうる技術が切望されている。
一方、樹脂基板を用いた表面導電性材料を得る方法としては、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂基板表面に接触させたラジカル重合性化合物を活性光線の照射によりグラフト重合させて、そこに無電解メッキを行ってメッキ薄膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この方法では、グラフト重合に用いられるラジカル重合性化合物がアクリル酸やメタクリル酸などの単量体であるため、この単量体を基板に接触させる際、単量体を溶解した溶液を基板上に塗布し、その塗布液をポリエチレンテレフタレートフィルムなどの保護層で覆ったり、単量体を溶解した溶液中に基板を浸漬させる方法を用いる。これは、単量体を溶解した溶液は、粘性が低く、樹脂基板表面に均一な塗膜を形成し難く、生成されるグラフトポリマーの膜厚にもバラツキができてしまうためである。グラフトポリマーの膜厚にバラツキが生じると、結果的に、メッキ状態にも影響を及ぼし、均一な表面導電性が得られない。
このようなことから、特許文献1の方法では、均一な膜厚のグラフトポリマーを生成させるために、保護層で覆う工程や基板自体を移動させる工程が増えて作業が煩雑となり、製造性に劣るという問題を有していた。
この問題に対し、非特許文献1には、低分子のモノマーをバインダーと共に塗布することで、均一な膜厚の塗膜を形成する方法について開示されている。しかし、この方法を使用してグラフトポリマーを生成させる場合には、モノマーとバインダーとの間に所望されない反応が生じてしまう問題や、生成されたグラフトポリマーからバインダーを除去することが極めて困難であるという問題を有していた。
特開昭58−196238号公報 山岡ら著、"Journal of Imaging Science"第34巻、p230,(1990年)
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の目的は、平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な回路パターンを有するプリント配線板を製造する際に好適な表面導電性材料の製造方法を提供することである。
本発明のより具体的な目的は、平滑な絶縁基板との密着性に優れ、且つ、均一な表面導電性を有する導電性発現層を、製造性よく得られる表面導電性材料の製造方法を提供することである。
本発明者は鋭意検討の結果、絶縁基板として好適なエポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、光開裂によりラジカルを発生しうる化合物を結合させたものを用い、その表面にグラフトポリマーを設け、そのグラフトポリマーに対し導電性素材を付与させることで上記目的を達成しうることを見出して本発明を完成した。
即ち、本発明の表面導電性材料の製造方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物を結合させる工程と、前記基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線露光して、前記光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物からラジカルを発生させ、それを開始種として当該基板表面に結合してなるグラフトポリマーを生成させる工程と、該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程と、を有することを特徴とする。
ここで用いる分子内に重合性基を有する化合物としては、マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーが好ましい。
また、このような重合性基を有する化合物を組成物として基板表面に接触させる場合、該組成物中には、分子内に重合性基を有する化合物及び分散媒又は溶媒以外に、重合反応に関与する化合物を含まないことが好ましく、特に、重合開始能を有する化合物を含有しないことが好ましい。
本発明において、グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程は、該グラフトポリマーの側鎖官能基に無電解メッキ触媒若しくはその前駆体を吸着させ、その後、無電解メッキを行う工程であることが好ましい態様である。
また、エポキシ樹脂を主成分とする基板として、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が3μm以下であるものを用いることも好ましい。このような平均粗さを達成するために、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面には、電子線照射、プラズマ照射、グロー処理などの高エネルギー付与による表面活性化処理や、機械的粗面化処理等の前処理(表面処理)を施さないことが好ましい。
本発明によれば、平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な回路パターンを有するプリント配線板を製造する際に好適な表面導電性材料の製造方法を提供することができる。
また、より具体的には、平滑な絶縁基板との密着性に優れ、且つ、均一な表面導電性を有する導電性発現層を、製造性よく得られる表面導電性材料の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の表面導電性材料の製造方法について説明する。
本発明の表面導電性材料の製造方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物を結合させる(以下、「光開裂化合物結合工程」)と、
前記基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線露光して、前記光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物からラジカルを発生させ、それを開始種として当該基板表面に結合してなるグラフトポリマーを生成させる工程(以下、「グラフトポリマー生成工程」と称する。)と、
該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程(以下、「導電性素材付与工程」と称する。)と、
を有することを特徴とする。
以下、各工程を順次説明する。
≪光開裂化合物結合工程、及びグラフトポリマー生成工程≫
〔エポキシ樹脂を主成分とする基板表面〕
まず、本工程において用いられるエポキシ樹脂を主成分とする基板について説明する。
本発明においてエポキシ樹脂を主成分とする基板とは、エポキシ樹脂を30質量%以上含む基板をいう。以下、エポキシ樹脂を主成分とする基板を、単に、「エポキシ樹脂基板」や「基板」と称する場合がある。
本発明におけるエポキシ樹脂基板を構成するエポキシ樹脂は、(A)エポキシ基を1分子中に2個以上を有するエポキシ化合物と(B)エポキシ基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物との反応物からなる。(B)における官能基としてはカルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基から選ばれる。
(A)エポキシ基を1分子中に2個以上を有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)としては、エポキシ基を1分子中に2〜50個有するエポキシ化合物であることが好ましく、エポキシ基を1分子中に2〜20個有するエポキシ化合物であることがより好ましい。ここで、エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。このような多価エポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
本発明におけるエポキシ樹脂基板としては、エポキシ樹脂の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、エポキシ樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。これらの材料を添加する場合は、いずれも、エポキシ樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、エポキシ樹脂特有の強度などの特性が低下し、更には、グラフト重合反応も進行しなくなる。
本発明に適用される特に好ましいエポキシ樹脂基板の一つとして、プリント電気配線分野で使用されるエポキシ樹脂基板が挙げられる。具体的には、例えば、特開2001−181375号公報記載の(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、(C)ビスフェノールS骨格を有し、重量平均分子量が5,000乃至100,000であるフェノキシ樹脂、及び(D)硬化促進剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物や、特開2002−179887号公報記載の、(A)フェノキシホスファゼン化合物又は縮合型リン酸エステル化合物、(B)リン含有ポリエポキシド化合物、(C)窒素含有エポキシ樹脂用硬化剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とすることを特徴とするハロゲンフリーの難燃性エポキシ樹脂組成物などを挙げることができる。
その他、特開平8−212832号、特開平10−1596号の各公報に記載の感光性を付与されたエポキシ基板、特開2002−171074号、特開2002−179887号、特開2001−49125号、及び、特開2000−198907号などの各公報に記載の難燃性エポキシ基板も本発明に適用することができる。
本発明におけるエポキシ樹脂基板の形状としては、目的、用途により異なり、例えば、本発明により得られる表面導電性材料をプリント配線板を作製する際に用いる場合には、板状に成型されることが好ましい。その場合、基板の厚みは、一般に、1μm〜10mmの範囲であり、10μm〜5mmの範囲であることが好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂基板は、構成する樹脂の特性により、一般的な樹脂基板を用いる場合しばしば行われる電子線照射、プラズマ照射、グロー処理などの高エネルギー付与による表面活性化処理を行うことなく、重合性化合物を接触させ、紫外線照射するのみで簡易にグラフトポリマーが生成されるという長所を有する。
また、本発明により得られる表面導電性材料をプリント配線板を作製する際に用いる場合には、微細な回路パターンの形成の観点から、エポキシ樹脂基板表面は平滑であることが好ましく、本発明では、平滑であっても、上述の如く、グラフトポリマーを簡易に生成させることができる。また、このグラフトポリマーの効果により、基板表面が平滑であっても、後述する導電性発現層と絶縁基板との間に高い密着性を発現させることができる。
これらのことから、本発明におけるエポキシ樹脂基板は、粗面化を目的とした、表面処理、前処理を行うことなく使用されることが好ましい。
本発明においては、エポキシ樹脂基板として、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が3μm以下であるものを用いることも好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。基板の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、実質的に凹凸がない状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
続いて、本発明における光開裂化合物結合工程からグラフトポリマー生成工程までの概略について説明する。
エポキシ樹脂基板表面には当初より官能基(Z)を存在させておく。ここに、基板結合部位(Q)と、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)を付与し、エポキシ樹脂基板表面に接触させる。これにより、エポキシ樹脂基板表面に存在する官能基(Z)と、基板結合部位(Q)と、が結合して、エポキシ樹脂基板表面に化合物(Q−Y)が導入される〔光開裂化合物結合工程〕。
その後、エポキシ基板表面に、モノマー等の公知のグラフトポリマー原料(分子内に重合性基を有する化合物)を接触させた状態で、紫外線の前面露光を行う。これにより、エポキシ樹脂基板表面の全域にわたり、化合物(Q−Y)の重合開始部位(Y)を起点としてグラフトポリマーが生成される〔グラフトポリマー生成工程〕。
以下、このような各工程について具体的に説明する。
基板表面に存在する官能基(Z)は、エポキシ樹脂基板表面に存在する官能基であり、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。これらの官能基は、エポキシ基板表面にもともと存在しているものでもよく、基板表面にコロナ処理などの表面処理を施すことにより表面に存在させたものであってもよい。
次に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に、重合開始部位と称する。)と基板結合部位とを有する化合物の構造について具体的に説明する。この化合物について、基板結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)のモデルを用いて詳細に説明すれば、一般に、重合開始部位(Y)は、光、特に紫外線により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断されることになる。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、且つ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に重合可能な化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、所望のグラフトポリマーを生成することができる。
また、基板結合部位(Q)としては、エポキシ樹脂基板表面に存在する官能基Zと反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
Figure 2007126577
重合開始部位(Y)と、基板結合部位(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
基板結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物1〜例示化合物18〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではなく、例えば、公知のシランカップリング剤であって、分子内に前記した光により開裂しうる単結合を含むものなども好適に使用しうる。
Figure 2007126577
Figure 2007126577
Figure 2007126577
Figure 2007126577
本発明における光開裂化合物結合工程は、このような化合物(Q−Y)をエポキシ樹脂基板表面に結合させる工程である。
例示された如き化合物(Q−Y)をエポキシ樹脂基板表面に存在する官能基Zに結合させる方法としては、化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液をエポキシ樹脂基板表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中にエポキシ樹脂基板を浸漬する方法などを適用すればよい。このとき、溶液中又は分散液の化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
そして、このように、エポキシ樹脂基板表面に化合物(Q−Y)が結合された後、グラフトポリマー生成工程が行なわれる。
このグラフトポリマー生成工程では、前述した光開裂化合物結合工程を経たエポキシ樹脂基板表面に、所望とするグラフトポリマーの材料となる、分子内に重合性基を有する化合物(以下、適宜、重合性化合物と称する。)を接触させた後、紫外線露光して、露光領域の重合開始部位(Y)を活性化させてラジカルを発生させ、そのラジカルを起点として、重合性化合物のグラフト化反応を生起、進行させる。その結果、紫外線の全面露光を行うことで、エポキシ樹脂基板表面の全領域にわたり均一なグラフトポリマーが生成する。
本発明においては、重合性化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態でエポキシ樹脂基板表面に接触させる。このように、重合性化合物をエポキシ樹脂基板表面に接触させる際には、所望されないホモポリマーの副生を抑制する観点から、重合開始能を有する化合物の非存在下で行われることが好ましい。即ち、接触が重合性化合物単体で行われる場合には、当然他の化合物が共存しないことになるが、重合性化合物を溶剤に溶解するか、分散媒中に分散させて接触させる場合、その重合性化合物含有の液状組成物中には、重合開始剤などの重合反応に関与しうる他の化合物を含まないことを要する。従って、グラフトポリマー生成工程において用いられる重合性化合物含有の液状組成物は、重合性化合物と溶媒又は分散媒との2つの主成分のみからなる組成物であることが好ましく、例え、他の化合物を含む場合であっても、所望により塗布性や面状性などの液体組成物の物性の向上を目的とした界面活性剤などに限ることが好ましい。
重合性化合物をエポキシ樹脂基板表面に接触させる方法としては、エポキシ樹脂基板を、重合性化合物含有の液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、該重合性化合物をそのまま接触させるか、或いは、重合性化合物含有の液状組成物を塗布・乾燥して、エポキシ樹脂基板表面に重合性化合物を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
重合性化合物含有の液状組成物に使用する溶剤は、主成分である、重合性化合物を溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
エポキシ樹脂基板表面に組成物を液状のまま接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、その接触方法は任意であるが、塗布法により基板表面に組成物を適用する場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
グラフトポリマーは、エポキシ樹脂基板の片面のみに形成されても、両面に形成されてもよい。本発明においては、エポキシ樹脂基板表面に特段の前処理を施すことなく、グラフトポリマーが生成しうるため、両面へのグラフトポリマーの生成も容易に実施できる。両面にグラフトポリマーを生成しようとする場合、基板の両面に対して、同時に、紫外線照射を行いグラフトポリマーを生成させてもよいし、先ず、一方の面に対して、紫外線照射を行い、グラフトポリマーを生成させた後に、他方の面に対してグラフトポリマーを生成させてもよい。
(重合性化合物)
次に、本発明において用いられる重合性化合物について説明する。
本発明において用いられる重合性化合物としては、モノマー、マクロモノマー、或いは重合性基を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの重合性化合物は公知のものを任意に使用することができる。
これらのうち、本発明において特に有用な重合性化合物としては、後述する導電性素材付着工程における態様により、適宜、選択される。つまり、生成したグラフトポリマーに対し導電性素材を効率よく、容易に、高密度で、保持させるために、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、又は、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、及び、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基を、総じて相互作用性基として説明する。
この相互作用性基としては、例えば、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、親水性基が好ましく、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスソン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
以下、グラフトポリマー生成工程において好適に用いられる相互作用性基を有する重合性化合物について具体的に説明する。
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
本発明においては、相互作用性基を有する重合性化合物として、導電性素材の付着密度向上の観点から、マクロモノマーや重合性基を有する高分子化合物が好ましく用いられる。
本発明に用いうる重合性化合物としての、相互作用性基を有するマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
本発明に用いうる重合性化合物としての重合性基を有する高分子化合物とは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
この重合性基を有する高分子化合物は、前記したように親水性基等の相互作用性基を有することが好ましい。
このような重合性基を有する高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
重合性基と相互作用性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
上記i)及びii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
Figure 2007126577
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
Figure 2007126577
更に、上記iii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
上記ii)の合成方法における、相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
グラフトポリマーを生成する際、重合性化合物として、末端のみならず、側鎖に複数の重合性基(エチレン付加重合性不飽和基)を有するマクロモノマー、ポリマーを用いることで、生成したグラフトポリマーの生成密度やその枝分かれ量が増加する。それに伴って、相互作用性基の量も増加し、その結果、導電性素材の吸着(結合)密度が向上し、優れた導電性を得ることができる。
また、マクロモノマーやポリマーを重合性化合物として用いる場合には、塗布法に好適な粘度を有する重合性化合物含有の液状組成物を調製することが容易であり、また、この液状組成物をエポキシ樹脂基板に塗布・乾燥させることで基板上にグラフトポリマー前駆体層を形成することができる。そのため、上述したような、重合性化合物としてモノマーを用いた場合に行われる、液状組成物からなる塗膜を保護層で被覆する工程や基板を液状組成物中に浸漬させる工程を必要としない。
これらのことから、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを使用すると、上記のような基板への接触方法を用いることができるため、均一な膜厚のグラフトポリマーを、容易に、生成させることができる。その結果、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを用いた態様では、導電性に優れ、且つ、その均一性にも優れた導電性発現層を、簡易な方法で作製することができる、つまり、製造性に優れるという効果を有する。
以上のことから、本発明においては、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを用い、これらの溶液を、エポキシ樹脂基板表面に塗布・乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成し、その上から、紫外線照射することで、グラフトポリマーを生成させる方法を用いることが最も好ましい。
〔紫外線照射〕
本発明においては、紫外線照射することで、エポキシ樹脂基板表面に結合している光開裂化合物(Q−Y)における重合開始部位(Y)において開裂を生じさせる。
この紫外線照射には、例えば、UVランプ、ブラックライトなどを用いることが可能である。
また、光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用することができる。
また、紫外線照射時間としては、重合開始部位(Y)の種類、目的とするグラフトポリマーの生成量、及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の範囲であり、好ましくは、30秒〜10分の範囲である。
紫外線照射後、エポキシ樹脂基板は、溶剤浸漬などの処理を行って、残存するホモポリマーを除去し、精製する。具体的な精製方法としては、水やアセトンによる洗浄、乾燥、などが挙げられる。ホモポリマーの除去性の観点からは、洗浄にあたって超音波などの手段を採ってもよい。
精製後のエポキシ樹脂基板は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、エポキシ樹脂基板の全面にわたり、エポキシ樹脂基板と強固に結合したグラフトポリマーのみが存在することになる。
このようにして形成されたグラフトポリマーからなる層は、膜厚が0.1〜2.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0g/mが更に好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/mの範囲である。
≪導電性素材付与工程≫
本工程では、得られたグラフトポリマーに導電性素材を付与することで、導電性発現層を形成することができる。具体的な方法としては、以下の4つの態様がある。
第1の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基(イオン性基)に対し導電性粒子を吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。
第2の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキ膜を形成する方法である。
第3の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。
第4の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し導電性モノマーを吸着させた後、重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。
以下、上記第1〜第4の態様について説明する。
(第1の態様:導電性粒子吸着層の形成)
導電性素材付与工程の第1の態様は、以下に説明する導電性粒子を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。この方法により、導電性粒子吸着層からなる導電性発現層が形成される。
ここで吸着させた導電性粒子はグラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成して単分子膜状態や多層状態で固定されることで導電性粒子吸着層を形成するため、基板と導電性粒子吸着層との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
この第1の態様に適用し得る導電性粒子としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、公知の導電性材料からなる微粒子を任意に選択して用いることができる。例えば、Au、Ag、Pt、Cu、Rh、Pd、Al、Crなどの金属微粒子、In、SnO、ZnO、Cdo、TiO、CdIn、CdSnO、ZnSnO、In−ZnOなどの酸化物半導体微粒子、及びこれらに適合する不純物をドーパントさせた材料を用いた微粒子、MgInO、CaGaOなどのスピネル形化合物微粒子、TiN、ZrN、HfNなどの導電性窒化物微粒子、LaBなどの導電性ホウ化物微粒子、また、有機材料としては導電性高分子微粒子などが好適なものとして挙げられる。
これらの導電性粒子は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
−グラフトポリマーのイオン性基(相互作用性基)の極性と導電性粒子との関係−
本発明において得られるグラフトポリマーが、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性を有する相互作用性基を有する場合は、グラフトポリマーの相互作用性基は選択的に負の電荷を有するようになり、ここに正の電荷を有する(カチオン性の)導電性粒子を吸着させることができる。
このようなカチオン性の導電性粒子としては、正電荷を有する金属(酸化物)微粒子などが挙げられる。表面に高密度で正荷電を有する微粒子は、例えば、米澤徹らの方法、即ち、T.Yonezawa,Chemistry Letters.,1999 page1061,T.Yonezawa,Langumuir 2000,vol16,5218及び米澤徹,Polymer preprints,Japan vol.49.2911(2000)に記載された方法にて作製することができる。米澤らは、金属−硫黄結合を利用し、正荷電を有する官能基で高密度に化学修飾された金属粒子表面が形成できることを示している。
一方、得られるグラフトポリマーが特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基の相互作用性基を有する場合は、グラフトポリマーの相互作用性基は選択的に正の電荷を有するようになり、ここに負の電荷を有する導電性粒子を吸着させることができる。
負に帯電した導電性粒子としては、クエン酸還元で得られた金若しくは銀粒子を挙げることができる。
本発明に用いられる導電性粒子の粒径は、相互作用性基に対する吸着性と、導電性発現の観点から、0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることが更に好ましい。
導電性粒子をグラフトポリマーの相互作用性基に吸着させる方法としては、表面上に荷電を有する導電性粒子を溶解又は分散させた液を、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中に、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を浸漬する方法などが挙げられる。
塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の導電性粒子を供給し、相互作用性基(イオン性基)との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、溶液又は分散液とグラフトポリマー生成面との接触時間は、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
また、これらの導電性粒子は、耐久性の点や導電性確保の観点から、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着し得る最大量結合されることが好ましく、その場合、分散液の分散濃度は、0.001〜20質量%程度が好ましい。
また、導電性素材付与工程の第1の態様では、このように、グラフトポリマーに導電性粒子が吸着した後、その基板ごと加熱することが好ましい。この加熱を行うことで、付着した導電性粒子間にて融着が起こり、導電性粒子間の密着性を向上させると共に、導電性をも上昇させることができる。
ここで、加熱工程における温度としては、50℃〜500℃が好ましく、更に好ましくは100℃〜300℃、特に好ましくは、150℃〜300℃である。
(第2の態様:メッキ膜の形成)
導電性素材付与工程の第2の態様は、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基に対し、無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキ膜を形成する方法である。この方法により、メッキ膜からなる導電性発現層が形成される。
このように、メッキ膜は、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着している触媒や前駆体に対し無電解メッキされて形成されることから、メッキ膜とグラフトポリマーとが強固に結合しており、その結果、基板とメッキ膜との密着性に優れると共に、メッキ条件により導電性を調整することができるという利点を有する。
まず、この第2の態様における無電解メッキ触媒又はその前駆体の付与方法について説明する。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に付与する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ググラフトポリマーが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解メッキ触媒)を付着させることができる。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンはグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO)n、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトポリマーに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを付着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような付着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
次に、この第2の態様における無電解メッキ方法について説明する。
無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与された基板に対して、無電解メッキを行うことで、無電解メッキ膜が形成される。
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される無電解メッキ膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られる無電解メッキ膜は、SEMによる断面観察により、グラフトポリマー膜中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板表面の平均粗さ(Rz)が3μm以下であっても、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との密着性が良好であった。
また、導電性素材付与工程の第2の態様では、無電解メッキ終了後、電気メッキを行うこともできる。即ち、電気メッキは、前述の無電解メッキにより得られた無電解メッキ膜を電極として行う。これにより基板との密着性に優れた無電解メッキ膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつメッキ膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、導電性膜を目的に応じた厚みに形成することができる。
本態様における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキにより得られるメッキ膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、本発明により得られる表面導電性材料をプリント配線板を作製する際に用いる場合には、メッキ膜の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
(第3の態様:金属微粒子分散膜の形成)
導電性素材付与工程の第3の態様は、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体を析出させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。なお、金属単体の析出態様によって、金属微粒子分散膜は金属薄膜になる場合もある。この方法により、金属微粒子分散膜からなる導電性発現層が形成される。
ここで、金属微粒子分散膜を形成する、析出された金属微粒子は、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成し、吸着しているため、基板と金属微粒子分散膜との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
(金属イオン及び金属塩)
まず、本態様において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマーに付与するために、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、中でも、Ag、Cuが好ましい。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(1)グラフトポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(2)グラフトポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を浸漬すればよい。
グラフトポリマーが相互作用性基として親水性基を有する場合には、グラフトポリマー膜は高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマー膜中に含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(3)グラフトポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にグラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、グラフトポリマー膜が有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマー膜中に含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度、或いは、溶液の金属イオン濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、グラフトポリマーの有する相互作用性基の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
(還元剤)
続いて、グラフトポリマー(膜)に吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元しるために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、金属単体を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウムが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。
上記還元剤の添加方法としては、例えば、グラフトポリマーに金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、基板をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、グラフトポリマー生成面に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
ここで、第3の態様におけるグラフトポリマーの相互作用性基と金属イオン又は金属塩との関係、及び還元方法について説明する。
グラフトポリマーの相互作用性基が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、グラフトポリマーの相互作用性基が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、相互作用性基のイオン性基に起因する親水性を利用して、グラフトポリマー膜に、金属塩が分散した分散液、又は、金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
以上のように、金属単体が析出することで、金属微粒子分散膜が形成される。
金属微粒子分散膜中の析出された金属単体(金属微粒子)の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属微粒子分散膜の膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
このように、金属単体が析出した状態を上記の顕微鏡で観察すると、グラフトポリマー膜中にぎっしりと金属微粒子が分散していること確認される。この時、析出された金属微粒子の大きさとしては、粒径1μm〜1nm程度である。
金属微粒子分散膜において、金属微粒子が密に分散していて外見上金属薄膜を形成しているような場合には、そのまま用いてもよいが、効率のよい導電性の確保という観点からは、金属微粒子分散膜を更に加熱処理することが好ましい。
加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には150℃以上が好ましく、特に好ましくは200℃程度である。加熱温度は、処理効率や基板の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜60分間程度が好ましい。
加熱処理による作用機構は明確ではないが、一部の近接する金属微粒子同士が互いに融着することで導電性が向上するものと考えている。
(第4の態様:導電性ポリマー層の形成)
導電性素材付与工程の第4の態様は、以下に説明する導電性モノマーを、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、イオン的に吸着させた後、そのまま重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。この方法により、導電性ポリマー層からなる導電性発現層が形成される。
ここで、導電性ポリマー層は、グラフトポリマーの相互作用性基とイオン的に吸着した導電性モノマーを重合させてなるため、基板との密着性や耐久性に優れると共に、モノマーの供給速度などの重合反応条件を調整することで、膜厚や導電性の制御を行うことができるという利点を有する。
このような導電性ポリマー層を形成する方法には特に制限はないが、均一な薄膜を形成し得るという観点からは、以下に述べるような方法を用いることが好ましい。
まず、グラフトポリマーが生成したエポキシ樹脂基板を、過硫酸カリウムや、硫酸鉄(III)などの重合触媒や重合開始能を有する化合物を含有する溶液に浸漬し、この液を撹拌しながら導電性ポリマーを形成し得るモノマー、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどを徐々に滴下する。このようにすると、該重合触媒や重合開始能を付与されたグラフトポリマーが有する相互作用性基(イオン性基)と導電性ポリマーを形成し得るモノマーとが相互作用により強固に吸着すると共に、モノマー同士の重合反応が進行し、基板上のグラフトポリマーの生成領域に導電性ポリマーの極めて薄い膜が形成される。これにより、均一で、且つ、薄い導電性ポリマー層が得られる。
この方法に適用し得る導電性ポリマーとしては、10−6s・cm−1以上、好ましくは、10−1s・cm−1以上の導電性を有する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができるが、具体的には、例えば、置換及び非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもできるし、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーなども用いることができる。
本発明においては、導電性モノマー自体がグラフトポリマーの相互作用性基と静電気的に、或いは、極性的に相互作用を形成することで強固に吸着するため、それらが重合して形成された導電性ポリマー層は、グラフトポリマーとの間に強固な相互作用を形成しているため、薄膜であっても、擦りや引っ掻きに対しても充分な強度を有するものとなる。
更に、導電性ポリマーとグラフトポリマーの相互作用性基とが、陽イオンと陰イオンの関係で吸着するような素材を選択することで、相互作用性基が導電性ポリマーのカウンターアニオンとして吸着することになり、一種のドープ剤として機能するため、導電性ポリマー層(導電性発現層)の導電性を一層向上させることができるという効果を得ることもできる。具体的には、例えば、相互作用性基を有する重合性化合物としてスチレンスルホン酸を、導電性ポリマーの素材としてチオフェンを、それぞれ選択すると、両者の相互作用により、グラフトポリマーの生成領域と導電性ポリマー層との界面にはカウンターアニオンとしてスルホン酸基(スルホ基)を有するポリチオフェンが存在し、これが導電性ポリマーのドープ剤として機能することになる。
上記のようにして形成される導電性ポリマー層の膜厚には特に制限はないが、0.01μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。導電性ポリマー層の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを得ることができる。0.01μm以下であると導電性が不充分となる懸念があるため好ましくない。
以上の工程を経ることで、表面導電性材料を得ることができる。得られた表面導電性材料には、エポキシ樹脂基板表面に、擦りなどの機械的な操作によっても剥がれることがない強固で均質な導電性発現層が形成されている。この表面導電性材料は、プリント配線板を作製する際に好適に用いられるが、その他、例えば、電磁波シールドや導電性プラスチックなどに適用することができ、その応用範囲は広く、目的に応じた種々の設定が可能である。
以下に、本発明により得られた表面導電性材料を用いたプリント配線基板の作製工程について説明する。プリント配線基板を製造する際には、表面導電性材料に形成された導電性発現層(導電性粒子吸着層、メッキ膜)をパターン状にエッチングする方法が用いられる。このエッチングの方法としては、「サブトラクティブ法」及び「セミアディティブ法」が用いられる。
「サブトラクティブ法」
サブトラクティブ法とは、本発明により得られた表面導電性材料の導電性発現層上に、(1)感光性レジスト膜を形成 → (2)パターン露光及び現像を行い、残すべき導電性発現層のレジストパターン形成 → (3)エッチングすることで不要な導電性発現層を除去する → (4)感光性レジスト層を剥離させて、導電性発現層がパターン状に残存してなる導電性パターンを形成する方法である。
サブトラクティブ法に使用される導電性発現層の膜厚としては5μm以上であることが好ましく、5〜30μmの範囲であることがより好ましい。
(1)感光性レジスト膜形成工程
本工程において用いられる感光性レジストとしては、光硬化型のネガレジスト、又は、露光により溶解する光溶解型のポジレジストが使用できる。感光性レジストの種類としては、1.感光性ドライフィルムレジスト(DFR)、2.液状レジスト、3.ED(電着)レジストが挙げられる。これらはそれぞれ特徴があり、1.感光性ドライフィルムレジスト(DFR)は乾式で用いることができるので取り扱いが簡便、2.液状レジストは薄い膜厚の感光性レジスト膜とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができる。3.ED(電着)レジストは薄い膜厚の感光性レジスト膜とすることができるので解像度の良いパターンを作ることができること、また、塗布面の凹凸への追従性が良く、密着性が優れている。使用する感光性レジストは、これらの特徴を加味して適宜選択すればよい。
以下、感光性レジスト膜形成方法について説明する。
1.感光性ドライフィルムは、一般的に、ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムにはさまれたサンドイッチ構造をしているため、表面導電性材料の導電性発現層上に、ラミネータでポリエチレンフィルムを剥がしながら熱ロールで圧着する方法を用いる。
2.液状レジストは表面導電性材料の導電性発現層上に塗布、乾燥する方法を用いる。塗布方法としては、スプレーコート、ロールコート、カーテンコート、ディップコートが用いられる。また、表面導電性材料の両面同時に塗布するには、このうちロールコート、ディップコートを用いることが好ましい。
3.ED(電着)レジストは、感光性レジストを微細な電荷を帯びた粒子にして水に懸濁させコロイドとしたものである。そのため、表面導電性材料の導電性発現層上に、ED(電着)レジストを塗布し、導電性発現層に電圧を与えて粒子を電気泳動させ、導電性発現層上に感光性レジストを析出させて、それらを相互に結合させて膜状にする方法を用いる。
(2)パターン露光及び現像工程
本工程におけるパターン露光は、感光性レジスト膜上にマスクフィルム又は乾板を密着させて、使用している感光性レジストの感光領域の光で露光する。マスクフィルムを用いる場合には、真空の焼き枠で感光性レジスト膜とマスクフィルムとを密着させて露光する。
露光源に関しては、パターン幅が100μm程度では点光源を用いることができる。また、パターン幅が100μm以下のものを形成する場合は平行光源を用いることが好ましい。
本発明工程における現像には、光硬化型のネガレジストならば未露光部を、又は、露光により溶解する光溶解型のポジレジストならば露光部を溶かすものならば何を使用しても良いが、主には、有機溶剤、アルカリ性水溶液が使用され、近年は環境負荷低減からアルカリ性水溶液が使用されている。
(3)エッチング工程
本工程では、感光性レジスト膜のない露出した導電性発現層を化学的に溶解することで、導電性パターンを形成する。エッチング工程は、主に、水平コンベア装置で、エッチング液を上下よりスプレーして行う。
エッチング液は、酸化性の水溶液で導電性発現層を構成する金属を酸化、溶解する。エッチング液として用いられるものは、塩化第二鉄液、塩化第二銅液、アルカリエッチャントがある。残存した感光性レジスト膜がアルカリにより剥離してしまう可能性があることから、主には、塩化第二鉄液、塩化第二銅液が使用される。
本発明により得られた表面導電性材料は、基板界面が粗面化されていないため基板界面付近の導電性発現層の除去性が良いことに加え、導電性発現層を固定化しているグラフトポリマーは非常に運動性の高い構造を有しているため、このエッチング工程において、エッチング液がグラフトポリマーからなる層中に容易に拡散でき、基板と導電性発現層との界面部における導電性発現層の除去性に優れるため、鮮鋭度に優れたパターン形成が可能となる。
(4)感光性レジスト膜剥離工程
本工程では、エッチング工程が終了し、導電性パターンが完成した後、残存する感光性レジスト膜を剥離する。感光性レジスト膜の剥離は、剥離液をスプレーして行うことができる。剥離液はレジストの種類により異なるが、一般的には、感光性レジスト膜を膨潤させる溶剤が用いられる。
「セミアディティブ法」
セミアディティブ法とは、本発明により得られた表面導電性材料の導電性発現層上に、(a)感光性レジスト膜を形成 → (b)パターン露光及び現像を行い、除去すべき導電性発現層のレジストパターン形成 → (c)メッキを行い露出した導電性発現層上に金属膜を形成する → (d)感光性レジスト層を剥離させ → (e)エッチングすることで不要な導電性発現層を除去して、導電性発現層及び金属膜の2層からなる導電性パターンを形成する方法である。(a)、(b)、(d)及び(e)の工程は「サブトラクティブ法」と同様な手法を用いることができる。メッキの方法としては、既述の導電性素材付与工程の第2の態様にて説明した、無電解メッキ及び電気メッキの手法を使用することができる。
また、セミアディティブ法に使用される導電性発現層の膜厚としては、エッチング工程を短時間で済ませるため、1〜3μmほどが好ましい。
なお、形成された導電性パターンに対して、更に、電解メッキ、無電解メッキを行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の権利範囲は特に以下の実施例の記載のみに限定されるものではない。
〔エポキシ樹脂基板Aの作製〕
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、MEK5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させてワニス状のエポキシ樹脂組成物を作製した。上記エポキシ樹脂組成物を厚さ128μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H)上に乾燥後の厚みが10μmとなるようにコーティングバーを用いて塗布し、170℃で、30分乾燥させ、エポキシ樹脂基板Aを得た。
このエポキシ樹脂基板Aの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.5μmであった。
〔エポキシ樹脂基板Bの作製〕
重量平均分子量50,000のビスフェノールA型高分子エポキシ樹脂〔エピコート1256(油化シェル社製商品名、エポキシ当量7900、樹脂固形分40質量%)〕75部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エピコート1001(油化シェル社製商品名、エポキシ当量475)〕28部、ノボラック型フェノール樹脂〔BRG−558(昭和高分子社製商品名、水酸基当量106)〕6.3部に、メチルセロソルブを加えて樹脂固形分50質量%のエポキシ樹脂ワニスを調製した。このワニスを厚さ100μmのSUS基板の片面に連続的に塗布し,150℃の温度で5分間乾燥することにより厚さ50μmのエポキシ樹脂基板Bを得た。
このエポキシ樹脂基板Bの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.5μmであった。
〔エポキシ樹脂基板Cの作製〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828)20質量部(以下、配合量は全て質量部で表す)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−673)45部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、大日本インキ化学工業(株)製フェノライト)30部をエチルジグリコールアセテート20部、ソルベントナフサ20部に攪拌しながら加熱溶解させ室温まで冷却した後、そこへエピコート828とビスフェノールSからなるフェノキシ樹脂のシクロヘキサノンワニス(油化シェルエポキシ(株)製YL6747H30、不揮発分30質量%、重量平均分子量47,000)30部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品0.8部、更に微粉砕シリカ2部、シリコン系消泡剤(M501、東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.5部を添加しエポキシ樹脂ワニスを作製した。このワニスを厚さ100μmのSUS基板の片面に連続的に塗布し、150℃の温度で5分間乾燥することにより厚さ50μmのエポキシ樹脂基板Cを得た。
このエポキシ樹脂基板Cの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.3μmであった。
〔合成例1:化合物Aの合成〕
DMAc50gとTHF50gの混合溶媒に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 24.5g(0.12mol)を溶かし、氷浴下でNaH(60% in oil) 7.2g(0.18mol)を徐々に加えた。そこに、11−ブロモ−1−ウンデセン(95%)44.2g(0.18mol)を滴下し、室温で反応を行った。1時間で反応が終了した。反応溶液を氷水中に投入し、酢酸エチルで抽出し、黄色油状物を得た。この油状物37gをアセトニトリル370mlに溶かし、水7.4gを加えた。p−トルエンスルホン酸一水和物1.85gを加え、室温で20分間撹拌した。酢酸エチルで有機相を抽出し、溶媒を留去して得た残渣をカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/80)で、化合物aを単離した。
得られた化合物aの1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(mb,24H),2.0(q,2H),3.2(t,J=6.6,2H),4.9−5.0(m,2H)5.8(ddt,J=24.4,J=10.5,J=6.6,1H.),7.4(t,J=7.4,2H),7.5(t,J=7.4,1H),8.3(d,1H)
上記のようにして得られた化合物a5.0g(0.014mol)にSpeir catalyst(HPtCl・6HO/2−PrOH、0.1mol/l)を2滴加え、氷浴下でトリクロロシラン2.8g(0.021mol)を滴下して撹拌した。更に1時間後にトリクロロシラン1.6g(0.012mol)を滴下してから室温に戻した。3時間後に反応が終了した。反応終了後、未反応のトリクロロシランを減圧留去し、化合物Aを得た。
得られた化合物Aの1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(m,30H),3.2(t,J=6.3,2H),7.3−7.7(m,3H),8.3(d,2H)
〔合成例2:側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)の合成〕
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gを、ジメチルアセトアミド(DMAC)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gと、ジブチルチンジラウレート0.25gと、を添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1mol/l(1N)の水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して、側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)を18.4g得た。
[実施例1]
<光開裂化合物結合工程>
エポキシ樹脂基板Aに、化合物Aの脱水トルエン1質量%溶液を、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、100℃で2分間乾燥した。得られた基板を基板A1とする。
<グラフトポリマー生成工程>
〔重合性化合物含有の液状組成物の塗布〕
基板A1の表面に、表面処理や前処理を行うことなく、重合性化合物として、アクリル基と相互作用性基としてのカルボキシル基とを有するポリマー(側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー:P−1)を含む下記組成の液状組成物1をロッドバー#6で塗布し、100度1分乾燥することで2μm厚のグラフトポリマー前駆体層を設けた。
(重合性化合物含有の液状組成物1)
・側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1) 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
〔紫外線露光によるグラフトポリマーの生成〕
得られたグラフトポリマー前駆体層に、アルゴン雰囲気下で、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、5分間、紫外線照射した。
紫外線照射後、グラフトポリマー前駆体層をイオン交換水でよく洗浄した。
これにより、基板A1上に、上記側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)がグラフト重合してなるグラフトポリマーが生成した。このようにして得られた、表面にグラフトポリマーが生成した基板を基板B1とする。
<導電性素材付与工程>
〔無電解メッキ〕
基板B1を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、無電解メッキ膜を形成した。
(無電解メッキ浴成分)
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
〔電気メッキ〕
次いで、この無電解メッキ膜が形成された基板B1を、更に次の電気メッキ浴に漬け、15分間電気を通ずることにより15ミクロン厚の電気メッキされた銅メッキ膜を得た。このときのメッキ時の電流密度は2A/dmである。
このようにして、実施例1における表面導電性材料を得た。
(電気メッキ浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
[実施例2]
実施例1において、エポキシ樹脂基板Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面導電性材料を作製した。
[実施例3]
実施例1において、エポキシ樹脂基板Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面導電性材料を作製した。
[実施例4]
<グラフトポリマー生成工程>
実施例1で作製した基板A1を、アクリル酸(10質量%)及び過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO、0.01質量%)を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、1.5kWの高圧水銀灯を使用し、紫外線を10分間光照射した。光照射後、イオン交換水でよく洗浄した。
これにより、基板A1の表面全体に、アクリル酸がグラフト重合してなるグラフトポリマーが導入された。このようにして得られた、表面にグラフトポリマーが生成した基板を基板B2とする。
<導電性素材付与工程>
〔導電性粒子吸着層の形成〕
基板B2を、下記手法により作製した導電性素材:正電荷銀粒子を含有する分散液中に浸漬し、その後、流水で表面を十分洗浄して余分なAg分散液を除去し、表面に導電性銀粒子からなる導電性粒子吸着層を形成した。
(導電性素材:正電荷銀粒子の作製方法)
過塩素酸銀のエタノール溶液(5mmol)50mlに、ビス(1,1−トリメチルアンモニウムデカノイルアミノエチル)ジスルフィド3gを加え、激しく攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.4M)30mlをゆっくり滴下してイオンを還元し、4級アンモニウムで被覆された銀粒子の分散液を得た。この銀粒子(Ag粒子)のサイズを電子顕微鏡で測定したところ、平均粒径は5nmであった。
〔加熱処理〕
上記のようにして得られた導電性粒子吸着層を有する基板B2を、300℃、1時間加熱することにより、実施例4における表面導電性材料を得た。
[実施例5]
実施例1と同様にして、基板A1上に、親水性ポリマー(P−1)をグラフト重合してなる基板B1を得た。この基板B1に対し、以下のようにして導電性素材を付与した。
<導電性素材付与工程>
〔金属微粒子分散膜の形成〕
基板B1を、硝酸銀(和光純薬製)15質量%の水溶液に12時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、100mlの蒸留水に当該基板B1を浸漬し、その蒸留水中に、0.2mol/lのテトラヒドロホウ素酸ナトリウムを30ml滴下することにより、吸着している銀イオンを還元して、銀単体を析出させた。これにより、銀粒子による金属微粒子分散膜を得た。形成された金属微粒子分散膜は、厚さ0.1μmであった。
このようにして、実施例5における表面導電性材料を得た。
[実施例6]
実施例1と同様にして、基板A1上に、親水性ポリマー(P−1)をグラフト重合してなる基板B1を得た。この基板B1に対し、以下のようにして導電性素材を付与した。
<導電性素材付与工程>
〔導電性ポリマー層の形成〕
基板B1を、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム・一水和物1.23g、5−スルフォサチリチル酸ナトリウム・水和物7.20g、及び三塩化鉄・6水和物4.38gと、125mlの水と、からなる溶液に浸漬し、撹拌しながらピロール0.75mlと水125mlとの溶液を加えた。一時間後、該基板B1を取り出し、水洗し、次に、アセトンで洗浄することで、表面にポリピロール層(導電性ポリマー層)が形成された、実施例6における表面導電性材料を得た。
<評価>
〔導電性の評価〕
実施例1〜6において形成された各種の導電性発現層(実施例1〜3:メッキ膜、実施例4:導電性粒子吸着層、実施例5:金属微粒子分散膜、実施例6:導電性ポリマー層)の表面導電性を抵抗率計(ロレスタ、三菱化学社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
〔密着性の評価〕
実施例1〜6において形成された各種の導電性発現層(実施例1〜3:メッキ膜、実施例4:導電性粒子吸着層、実施例5:金属微粒子分散膜、実施例6:導電性ポリマー層)と、基板との剥離強度(JIS規格6471)を測定した。結果を表1に示す。
また、耐熱標準加速試験(ビルドアップ配線板技術標準 JPCA規格ver.2、150℃、500時間)後の剥離強度についても測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007126577
表1に明らかなように、本発明の表面導電性材料は、実用上問題のない程度の表面導電性を有することが分かる。また、導電性発現層の剥離強度(つまり、基板に対する導電性発現層の耐剥離性)は、通常測定時と耐熱標準加速試験後とで変化がなく、基板と導電性発現層との密着性に優れることも分かる。
特に、実施例1〜3のメッキ膜、及び実施例5の金属微粒子分散膜は、表面導電性に優れることが分かる。
≪プリント配線基板の作製≫
実施例1において得られた表面導電性材料を用いて、下記のような「サブトラクティブ法」にて、プリント配線基板を作製した。
表面導電性材料の銅メッキ膜上に感光性ドライフィルム(富士写真フイルム製)をラミネートし、その上に密着させた、所望の回路パターン(ライン/スペース=15/15μm)が描画されたマスクフィルム(所望の回路パターンが開口部、感光性ドライフィルムを除去する箇所がマスク部)を通して紫外線露光させて回路パターンを焼き付けた後、現像を行った。そして、塩化第二銅エッチング液を用いて不用な領域の銅メッキ膜をエッチング除去した後、ドライフィルムを剥離して、導電性パターンを得た。
得られた導電性パターンを原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、マスクフィルムの開口部に応じた微細な回路パターンが精度よく作製されていることが判明した。これは、実施例1の表面導電性材料が、Rzが0.5μmという平滑性に優れた表面を有するエポキシ樹脂基板Aを用いていることに起因している。
また、得られた導電性パターンの密着性の評価を、実施例1と同様の方法で行ったところ、剥離強度の数値は、通常の場合1.0kN/m、耐熱標準加速試験後では1.0kN/mであった。この結果から、導電性パターンとエポキシ樹脂基板Aとの密着性は優れていることが分かった。また、この値と、実施例1の値と、との対比により、上記のサブトラクティブ法を経ても、メッキ膜(導電性発現層)と基板との密着性は低下しないことが明らかとなった。
更に、得られた導電性パターンの導電性(表面低効率)を、実施例1と同様の方法で測定したところ、0.1Ω/□であった。この値と実施例1の値との比較により、サブトラクティブ法を用いても、導電性は低下しないことが明らかとなった。

Claims (5)

  1. エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物を結合させる工程と、
    前記基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線露光して、前記光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物からラジカルを発生させ、それを開始種として当該基板表面に結合してなるグラフトポリマーを生成させる工程と、
    該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程と、
    を有することを特徴とする表面導電性材料の製造方法。
  2. 前記分子内に重合性基を有する化合物としては、マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の表面導電性材料の製造方法。
  3. 前記マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーを含む分散液又は溶液に、重合開始能を有する化合物を含有しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面導電性材料の製造方法。
  4. 前記グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程が、該グラフトポリマーの側鎖官能基に無電解メッキ触媒若しくはその前駆体を吸着させ、その後、無電解メッキを行う工程であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の表面導電性材料の製造方法。
  5. 前記エポキシ樹脂を主成分とする基板の、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が、3μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの1項に記載の表面導電性材料の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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