JP2007113030A - ロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金、高強度アルミニウム合金シート、及び熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Siを0.05〜1.0質量%と、Mnを0.5〜1.5質量%と、Cuを0.2〜0.8質量%と、Mgを0.2〜0.5質量%と、Agを0.15〜0.5質量%と、から構成される微量元素が前記課題の解決手段としてアルミニウムに含有されることを特徴する。
Description
自動車用ラジエータは、ロウ材、芯材、犠牲陽極材の3層からなるブレージングシートを加工して作製された前記主要構成部材を、一般に、ノロコックろう付法により接合して組み立てられる。
一方、Mgに替えて異なる他の金属元素(例えば、Cu,Si)の含有量を増やすことでアルミニウム製芯材の高強度化を図ることも可能であるが、アルミニウム合金の融点も同時に大きく降下するので、ロウ付の際に芯材の一部が融解してエローションが大きくなり、接合部の信頼性の低下が避けられない問題がある。
さらに、前記したMgの減量分をCuの含有量を増やして補うことによりアルミニウム合金の高強度化が実現される。また、このようにアルミニウム合金の強度の向上に寄与するCuは、同時に融点の降下にも寄与するが、前者に対して後者の融点降下への寄与率は小さいものである。
図1は、高強度アルミニウム合金の、合金組成、常温及び高温(250℃)の引張強度、融点、ロウ付性等の物性に関する計測値を示す表である。
そして、図1の試料番号1〜6に示す合金組成は、本発明の実施形態に係る高強度アルミニウム合金を示す実施例であり、同・試料番号7〜9に示す合金組成は、公知の高強度アルミニウム合金について示す比較例である。
ここで、比較例7はJIS呼称A3003相当品であり、比較例8は同 A3004相当品であり、比較例9は同 A2014相当品に該当する。
Si(ケイ素)は、Mgと共存して、高強度アルミニウム合金の強度を向上させるものである。このSiの高強度アルミニウム合金における含有量は、0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましい。
このSiの含有量が0.05質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。そして、Siの含有量が1.0質量%を超えると、高強度アルミニウム合金の耐食性が低下するとともに、融点も低下しロウ付性が低下する。
このMnの含有量が0.5質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。そして、Mnの含有量が1.5質量%を超えると、加工成型性が低下する。
このCuの含有量が0.2質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。そして、Cuの含有量が0.8質量%を超えると、自己耐食性が低下するとともに、融点も低下しロウ付性が低下する。
Mgの含有量が0.2質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。Mgの含有量が0.5質量%を超えると、ロウ付の作業中に表面に拡散しフラックスと反応して、ロウ付性を低下させてしまう。すなわち、フラックスが侵食されることにより溶融したロウ材の濡れ性が低下してしまうからである。
Agの含有量が0.15質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。Agの含有量が0.5質量%を超えると、高強度アルミニウム合金の融点が低下しロウ付性が低下する。
Niの含有量が0.15質量%未満であると、高強度アルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分になる。Niの含有量が0.5質量%を超えると、加工成型性が低下する。
図3において、評価試料1(1a,1b,1c)は、試験片2と相手材3とからなる。この試験片2は、図1の実施例1〜6または比較例7〜9のうちいずれかの合金組成で作製されたものである。そして、相手材2は、後記する図5(a)又は(b)に示すように芯材11としてJIS呼称A3003を使用して片面に同 A4343のロウ材12をクラッドしたものである。
そして、評価試料1のろう付作業は、フラックスを塗布した試験片2を相手材3のロウ材のクラッド面に所定の応力で当接して、600℃の温度雰囲気下で350秒保持したのち、常温で冷却して行った。
実施例1〜6及び比較例7の合金組成で構成された高強度アルミニウム合金からなる試験片1のロウ付性は、図3(a)に示されるようにフィレット4aの形成状態が良好(○)であった。
しかし、比較例7の合金組成においては、250℃引張強さが56MPaと小さいので、特に図示しないが、評価試料1aのろう付作業において、試験片1に座屈変形する場合が認められた。一方、実施例1〜6においては、そのようなロウ付作業における座屈変形は認められず、評価試料1aの全体の形態観察からも良好なロウ付の結果が得られたといえる。
これは、比較例8の合金組成は、融点(628℃)に関してはロウ材よりも十分高いといえ問題がないが、Mgの含有量が1.0%と多いために、ロウ付の作業中にこのMgが芯材の表面に拡散してフラックスと反応してこれを侵食してしまうことに起因するといえる。
これは、比較例9の合金組成は、融点(510℃)とロウ材の融点より低く、設定された熱処理条件で溶融してしまうことによると考えられる。
この図4のグラフは、Cu、Mgの含有量が比較例8相当の(1)の組成(Cu:0.25質量%、Mg:1.05質量%)から出発して、(2)の組成(Cu:0.25質量%、Mg:0.5質量%)、実施例6相当の(3)の組成(Cu:0.6質量%、Mg:0.5質量%)のようにCu、Mgの含有量を変化させたときの、250℃耐力、融点の変化をプロットしたものである。
この結果より、ロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金を得るためには、高強度化に大きく寄与しているがロウ材の濡れ性を悪くするMgの含有量を減らして、替わりに、濡れ性に悪影響を及ぼさずに高強度化に寄与するCuの含有量を増やすとよいことが導かれる。
そして、ロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金を得るため、含有されるべき微量元素の量の最適な範囲を実験的に明らかにしたところ、前記した好ましい含有量の範囲が得られたわけである。
高強度アルミニウムシート10は、実施例1〜6で例示される合金組成の高強度アルミニウム合金をシート状に成型した芯材11を少なくとも含むものである(図示されていないが、芯材11が単層である場合も含む)。そして、図5(a)(b)(e)に示されるように、この芯材11の少なくとも一面にロウ材12を配置する場合もある。さらに、図5(c)(d)(e)(f)に示されるように、この芯材11の少なくとも一面に犠牲材13を配置する場合もある。
このように、芯材11にロウ材12が配置された高強度アルミニウム合金シート10を用いれば、ロウ材12の配置面に被接合部材を当接し、両者を、芯材の融点以下でかつロウ材の融点以上に設定された温度で熱処理すれば、両者はロウ付により接合されることとなる。これにより、このような高強度アルミニウム合金シート10で部品が構成されれば、これら部品をロウ付して組み立てるのが容易になり大量生産に好適である。
また、ロウ材12が配置されていない高強度アルミニウム合金シート10であっても、ロウ材を別個に適用して、接合性に優れるロウ付をすることが可能である。
ここで自動車用ラジエータを例に取り、その作製工程について説明すると、まず、ラジエータの構成部品であるフィン、チューブ、ヘッドプレート・サイドプレートを前記した高強度アルミニウムシート10を加工して製造する。次に、これら構成部品を組み立てて、有機溶剤の蒸気で脱脂洗浄後、フラックスを塗布する。
このように、ロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金を用いれば、アルミニウム合金シートを薄くして用いることが可能になり、これにより構成される熱交換器の軽量化・低価格化を可能にする。
2 試験片
3 相手材
4(4a,4b,4c) フィレット
10(10a,10b,10c,10d,10e,10f) 高強度アルミニウム合金シート
11 芯材
12 ロウ材
13 犠牲材
Claims (7)
- Siを0.05〜1.0質量%と、Mnを0.5〜1.5質量%と、Cuを0.2〜0.8質量%と、Mgを0.2〜0.5質量%と、Agを0.15〜0.5質量%と、不可避不純物と、残部Alと、からなることを特徴とするロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金。
- 更に、Niを0.15〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金。
- 請求項1又は請求項2に記載のロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金をシート状にしたものを芯材とし、この芯材の少なくとも一面にロウ材を配置したことを特徴とする高強度アルミニウム合金シート。
- 請求項1又は請求項2に記載のロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金をシート状にしたものを芯材とし、この芯材の少なくとも一面に犠牲材を配置したことを特徴とする高強度アルミニウム合金シート。
- 請求項1又は請求項2に記載のロウ付性に優れる高強度アルミニウム合金をシート状にしたものを芯材とし、この芯材の一面にロウ材を配置し、残る一面に犠牲材を配置したことを特徴とする高強度アルミニウム合金シート。
- 請求項4に記載の高強度アルミニウム合金シートの少なくとも一面にロウ材を配置したことを特徴とする高強度アルミニウム合金シート。
- 請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の高強度アルミニウム合金シートをロウ付により接合して作製されたことを特徴とする熱交換器。
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