以下本発明について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
画像形成装置は、図1のように、帯電器2、露光器3、現像器4、転写器5、定着器6、媒体残量センサ7、感光ドラム8、書き出しセンサ9、排出センサ10、媒体カセット11を有している。そして、媒体カセット11内に例えば用紙等の媒体である媒体12が収納されている。
また、画像形成装置は、図2のように、上述の各部材と接続する制御部1を有している。そして、この制御部1には、帯電器電源2a、現像器電源4a、転写器電源5a、通電制御部16、露光器3、媒体残量センサ7、書き出しセンサ9、排出センサ10、温度検出回路19が接続されている。
媒体カセット11は、図1のように、画像を形成する媒体12を堆積させ、少なくとも媒体12が取り出せるように上面に開口を有する箱型部材である。この媒体カセット11には、媒体12の残量を読み取る媒体残量センサ7が備えられている。そして、この媒体カセット11には、媒体カセット11内の媒体12に接触するように、給紙ローラが備えられている。制御部1は、この給紙ローラが作動することで、媒体12を媒体カセット11から搬送路に供給することができる。
媒体残量センサ7は、媒体カセット11内に媒体12があるか否かを検出するセンサである。そして、この媒体残量センサ7は、制御部1と接続され、媒体カセット11内の媒体12の残量を制御部1に送信する。媒体12が媒体カセット11に存在することが検出されることで、媒体12が給紙ローラによって搬送路に供給される。媒体12の残量を受信した制御部1は、媒体の残量に応じて、例えば媒体カセット11の媒体12が無くなっているといった信号を装置の図示されない表示部などに表示させることができる。
書き出しセンサ9は、搬送路の媒体カセット11よりも下流側に備えられ、搬送路に媒体12が搬送されてきたか否かを検出する。この書き出しセンサ9は、制御部1に接続され、検出した信号を制御部1に送信する。そして、書き出しセンサ9が発信した信号に基づいて、制御部1は、媒体12に画像を形成するように、下記で説明する各部材を制御する。
感光ドラム8は、静電潜像担持体で、帯電器2によって、その表面に電荷を蓄えることが可能に構成されている。この感光ドラム8は、例えば、この感光ドラム8を備える図示されないフレームの両端に固定シャフトを中心軸として回転可能に軸固定されている。この表面に蓄えられた電荷は、露光器3での露光によって表面の電荷を除去することが可能に構成されている。この感光ドラム8は、その表面に形成された静電潜像に現像剤であるトナーを吸着させることでトナー像が形成される。
帯電器2は、感光ドラム8に対して所定の正電圧又は負電圧を印加することにより、感光ドラム8の表面に電荷を蓄えさせることができる。この帯電器2は、例えば、一定の圧力で感光ドラム8の表面に接触するように、図示されないフレームに回転可能に軸固定されている半導電性の帯電ローラである。そして、感光ドラム8に対して所定の電圧を印加するために、この帯電器2には、帯電器電源2aが接続され、この帯電器電源2aは、制御部1により制御されている。制御部1は、書き出しセンサ9からの信号に基づいて所定の電圧を感光ドラム8に印加するように、帯電器電源2aを制御する。帯電器2は、例えば−1000Vから−1100Vの電圧の電圧を発生させる。
露光器3は、帯電器2よりも感光ドラム8の回転方向下流側の感光ドラム8上方に設けられている。この露光器3は、例えば、LED(Light Emitting Diode)ヘッドやレーザ等であり、露光によって、帯電器2で感光ドラム8の表面に蓄えられた電荷を除去し、静電潜像を感光ドラム8表面に形成する。これにより、感光ドラム8に例えば−50Vから0Vの電圧からなる静電潜像が形成される。この露光器3は、制御部1に接続されており、画像形成装置に送信されてくる印刷データに基づいて、制御部1を介して露光を行う。
現像器4は、帯電器2で感光ドラム8の表面に帯電させた電荷と同じ電荷を帯電させたトナーを電気的な吸引力により感光ドラム8の表面に供給する。これにより、感光ドラム8の表面の露光によって電荷が除去された部分にトナーが付着し、感光ドラム8の表面にトナー像が形成される。この現像器4は、露光器3よりも感光ドラム8の回転下流側で、例えば、一定の圧力で感光ドラム8の表面に接触するように、図示されないフレームに回転可能に軸固定されている。この現像器4は、現像器電源4aが接続されており、この現像器電源4aによってトナーに所定の電荷を帯電させる。この現像器電源4aは、書き出しセンサ9からの信号に基づいて、制御部1によって制御される。
転写器5は、その表面に現像器4で帯電させたトナーの電荷と逆の電荷が蓄えられるように、接続されている転写器電源5aで所定の正電圧又は負電圧が印加される。これにより、転写器5は、感光ドラム8に形成されたトナー像を電気的な吸引力によって搬送路を通って搬送されてきた媒体12に転写する。この転写器5は、搬送路を挟んで感光ドラム8の反対側に設けられ、例えば、回転可能に軸固定されている。転写器電源5aは、書き出しセンサ9から信号に基づいて、転写器5に所定の電圧を印加するように制御部1に制御される。転写器5に印加される電圧は、例えば、+2000Vから+3000Vである。トナー像を有する媒体12は、搬送路を通って定着器6に搬送される。
定着器6は、図3のように、定着ヒータ6aと、定着ローラ6bと、加圧ローラ6cと、非接触の温度検出部6fにより構成される。定着ヒータ6aは、定着ローラ6b内に収められている。そして、この定着ヒータ6aは、通電制御部16と接続され、通電制御部16から印加される電圧に応じて加熱する。この熱は、定着ヒータ6aから定着ローラ6bに伝達される。この通電制御部16は、定着ローラ6bが所定の温度となるように印加される電圧が制御部1により制御される。定着ヒータ6aの代わりに、セラミックヒータを定着ローラ6b内に収めていてもよい。
定着ローラ6bは、搬送されてくる媒体12と接触するように、媒体12が搬送路上流側から下流側に流れる方向(図3中矢印Aの方向)に回転可能に中心を軸固定した回転体である。この定着ローラ6bは、定着ヒータ6aで発生した熱によって均一に加熱することができる。
通電制御部16は、制御部1からの指令により、定着ヒータ6aの通電状態を切り替える。すなわち、通電制御部16は、温度検出部6fが検出した定着ローラ6bの表面温度が所定の温度範囲内、例えば170℃±10℃の範囲内となるように、定着ヒータ6aへの通電をON/OFFする。例えば、温度検出部6fが検出した定着ローラ6bの表面温度が所定の範囲よりも高い場合、通電制御部16は、制御部1から定着ヒータ6aへの通電をOFFとする指令を受け、定着ヒータ6aへの通電をOFFにする。一方、温度検出部6fが検出した定着ローラ6bの表面温度が所定の範囲よりも低い場合、通電制御部16は、制御部1から定着ヒータ6aへの通電をONとする指令を受け、定着ヒータ6aへの通電をONにする。
加圧ローラ6cは、搬送路を介して定着ローラ6bの反対側に備えられ、搬送されてくる媒体12に対して所定の圧力が加わるように、媒体12が搬送路上流側から下流側に流れる方向(図3中矢印A’の方向)に回転可能に中心を軸固定している。これにより、搬送路を通って搬送される媒体12に所定の圧力を加えることができる。定着ローラ6bによる熱と、定着ローラ6b及び加圧ローラ6cによる圧力によって、搬送されてくる媒体12上のトナーを溶着させるように、トナー像を媒体12に定着させることができる。
温度検出部6fは、図4のように、非接触サーミスタ6faと、補償用サーミスタ6fbとにより構成されている。この非接触サーミスタ6faは、板状の保持部材6fa1を有している。この保持部材6fa1上には、保持部材6fa1よりも小さい感熱フィルム6fa2が保持部材6fa1に保持されている。この感熱フィルム6fa2は、定着ローラ6bから放射される赤外線を吸収することによって加熱するフィルム状の感熱部材である。そのため、この感熱フィルム6fa2の温度は、定着ローラ6bの表面の温度の変化に応じて変化する。そして、感熱フィルム6fa2を保持する保持部材6fa1の温度は、感熱フィルム6fa2の温度の変化に応じて変化する。その保持部材6fa1は、その感熱フィルム6fa2を介して、感熱フィルム6fa2の温度を検出する感熱部材温度検出手段である非接触サーミスタ素子6fa3を保持している。
この非接触サーミスタ素子6fa3には、感熱フィルム6fa2の温度を検出するために後述する温度検出回路19を形成するための配線6fa4が備えられ、この温度検出回路19は、制御部1に接続されている。この非接触サーミスタ6faの寸法としては、特に限定するものではないが、例えば長さ20.3mm、幅11.0mm、厚さ12.5μmである。
補償用サーミスタ6fbは、板状部材の補償用サーミスタフレーム6fb1を有している。そして、この補償用サーミスタフレーム6fb1上には、補償用サーミスタ素子6fb2が保持されている。この補償用サーミスタ6fbは、図5のように、この補償用サーミスタ素子6fb2が非接触サーミスタ6faの保持部材6fa1の温度を検出できるように非接触サーミスタ6faに備えられている。この補償用サーミスタ素子6fb2は、保持部材6fa1の温度を検出する保持部材温度検出手段となる。
そして、この補償用サーミスタ素子6fb2にも、非接触サーミスタ素子6fa3と同様に、保持部材6fa1の温度を検出するために後述する温度検出回路19を形成するための配線6fb3が備えられ、この温度検出回路19は、制御部1に接続されている。
ここで、使用される非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2は、図6のように温度に応じて抵抗値が変化する素子である。種類としては、温度が高くなるとその抵抗値が小さくなるように変化するものと、逆に、温度が低くなるとその抵抗値が小さくなるように変化するものがある。本発明では、温度が高くなると抵抗値が小さくなるように変化するサーミスタ素子を使用するが、温度が低くなると抵抗値が小さくなるように変化するサーミスタ素子を使用してもよい。
制御部1で感熱フィルム6fa2及び保持部材6fa1の温度を検出するために、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2は、図7のような温度検出回路19を形成している。
温度検出回路19は、非接触サーミスタ素子6fa3、補償用サーミスタ素子6fb2と、検出抵抗Rs1、Rs2を有している。電源供給部Vddと非接触サーミスタ素子6fa3、補償用サーミスタ素子6fb2の一端がそれぞれ接続され、非接触サーミスタ素子6fa3の他端が検出抵抗Rs1の一端に接続され、補償用サーミスタ素子6fb2の他端が検出抵抗Rs2の一端に接続される。そして、検出抵抗Rs1、Rs2の他端がそれぞれグランド部(GND)に接続される。この温度検出回路19は、非接触サーミスタ素子6fa3と検出抵抗Rs1との間に、検出電圧点Vout1を有し、補償用サーミスタ素子6fb2と検出抵抗Rs2との間に、検出電圧点Vout2を有している。
上述のように温度検出回路19に備えられた非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2は、図6のように、その温度により抵抗値が変化する。そのため、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2の温度にしたがって、図8のように、電圧検出点Vout1、Vout2で電圧が変化する。すなわち、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2からの出力電圧を電圧検出点Vout1、Vout2で検出できる。したがって、温度検出回路19に接続されている制御部1に制御によって所定の電圧を電源供給部Vddから供給し、電圧検出点Vout1、Vout2で電圧をそれぞれ検出することで、例えば図8のようなグラフを用いて、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2のそれぞれの温度を検出することができる。
これにより、非接触サーミスタ素子6fa3は、制御部1の電圧検出点Vout1で検出された電圧よって、感熱フィルム6fa2の温度を検出することができる。同様に、補償用サーミスタ素子6fb2は、制御部1の電圧検出点Vout2で検出された電圧によって、保持部材6fa1の温度を検出することができる。
この非接触サーミスタ6fa及び補償用サーミスタ6fbを備える温度検出部6fは、定着ローラ6bに離間して備えられている。この温度検出部6fと定着ローラ6bとの距離は、特に限定するものではないが、例えば0.90mmである。感熱フィルム6fa2は、定着ローラ6bの表面の温度の変化に応じて変化し、保持部材6fa1は、感熱フィルム6fa2の温度の変化に応じて変化する。このように、定着ローラ6bの熱は、感熱フィルム6fa2に伝わるが、感熱フィルム6fa2に伝わった熱は、保持部材6fa1にも伝わる。したがって、この感熱フィルム6fa2と保持部材6fa1で検出された温度によって定着ローラ6bの表面の温度を補正することができる。
排出センサ10は、定着器6よりも搬送路の下流側に備えられ、定着器6から搬送された媒体12が排出されるか否か検出する。この排出センサ10は、制御部1に接続され、媒体12が排出されるか否かを信号として制御部1に送信する。
制御部1は、図示されないマイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)入出力ポート、タイマ等によって構成される。パーソナルコンピュータなどの外部の情報処理装置と接続され、本発明の画像形成装置の動作を制御する上位コントローラなどから制御信号、ピットマップデータを一元的に配列したデータ等からなるビデオ信号に応じて印刷動作等の処理を実行する。
この制御部1は、上述で説明した各部材と接続され、画像形成装置に送信されてくる印刷データに基づいて、媒体12に画像を形成する。そして、温度検出回路19で検出された電圧から感熱フィルム6fa2と保持部材6fa1の温度を検出し、この温度から、回転体である定着ローラ6bの表面の温度を算出する温度算出手段となる。
以下、制御部1による、感熱フィルム6fa2と保持部材6fa1の温度からの定着ローラ6bの表面の温度の算出方法について説明する。
まず、実際に本発明の画像形成装置の定着器6と同じ定着器を用いて、定着ローラ6bの表面温度(Tc)と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)と、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)との時間に対する変化を検出すると、図9及び図10のようになる。図10は、図9のA部を拡大して表した図である。そして、図11は、時間に対してTcとTncの差を示した図である。これにより、Tcが略一定の値を示していても、Tambが低下するとともに、Tncが低下していることがわかる。これは、保持部材6fa1の温度の低下により、保持されている感熱フィルム6fa2から保持部材6fa1に流出する熱量(放熱量)が増加するためである。
ここで、Tc及びTambの差と、Tnc及びTambの差との相関関係を示すと、図12のようになる。すなわち、定着ローラ6bの表面温度(Tc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差とに強い相関関係があることがわかる。この関係を近似式で表すと下記の式1となる。
この式1を展開すると、下記式2となる。
これにより、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)は、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)から算出することができる。この式2から、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び保持部材6fa1の温度(Tamb)の関係が導き出せる。制御部1は、この関係を予め求め、この関係に基づいて定着ローラ6bの表面温度を算出することができる。これにより、定着ローラ6b表面の温度を精度良く算出することができる。すなわち、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)を補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)で補正することによって、周囲温度に応じた補正が可能となる。したがって、定着ローラ6b表面に傷をつけることなく、より正確な温度を検出できる。そして、定着ローラ6b表面の温度制御もより正確に行うことができる。
上述の式1及び式2のA、B、Cは、それぞれ定数であり、定着ローラ6bの表面温度を算出するための補正値である。例えば、図12のような近似直線では、式1及び式2中のAは、1.3となり、Cは、1.5となり、式2中のBは、−0.3となる。このように算出される補正値A、B、Cは、上述の近似式を求める実験を行うことで予め算出し、制御部1に保持される。この実験では、通常使用される状態と略同じ状態で、定着ローラ6bの表面温度Tcを直接検出する検出手段を備え、実際に検出される温度と、サーミスタ素子によって検出される温度とから算出できる。制御部1は、検出される非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度から、この補正値A、B、Cを用いて定着ローラ6bの表面温度をより正確に算出することができる。この補正値A、B、Cは、画像形成装置の機種毎に実験により決定される。そのため、機種が異なると、別の値となる。例えば、機種が異なれば補正値Aが1.45、補正値Bが−0.45、補正値Cが0.00のようになる。このように、係数は、装置内のファンと定着器6の位置関係により違いが生じる。
このように、補正値を保持した制御部1は、下記のように定着ローラ6bの表面の温度を適切な温度に制御している。以下、図13を用いて定着ローラ6bの表面温度の制御方法について説明する。
制御部1は、印刷データを受け取ると、下記の処理を行う。なお、この処理は、サーミスタ素子による温度検出毎に行われる。まず、制御部1は、温度検出回路19の電圧検出点Vout1、Vout2で、ステップS1において、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2との出力電圧を検出し、その値を読み取る。そして、制御部1は、ステップS2において、この出力電圧を温度に変換し、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度を検出する。この出力電圧は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2とのそれぞれの温度に応じて検出される電圧が変化するため、検出した出力電圧から、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2それぞれの温度を検出することができる。
非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)である。そして、補償用サーミスタ素子6fb2で検出した温度は、保持部材6fa1の温度(Tamb)である。制御部1は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度で検出した温度と、保持している補正値A、B、Cから、ステップS3において、上述の式2で示した計算式を用いて、定着ローラ6bの表面の温度を算出する。このとき、算出される定着ローラ6bの表面の温度をTc’とする。
算出された定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)を用いて、制御部1は、ステップS4において、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。このとき、制御部1は、定着ローラ6b内の定着ヒータ6aに接続されている通電制御部16に、定着ヒータ6aへの通電のON/OFFの指令を送る。この指令を受けて、通電制御部16は、定着ヒータ6aへのON/OFFを行い、定着ローラ6bの表面の温度を制御し、この処理を終了する。これを繰り返し行うことにより、媒体12上のトナーの定着に適した温度に制御することができる。
このように、制御部1で定着ローラ6bの表面の温度を制御することで、図14のように、実際の定着ローラ6b表面の温度(Tc)と算出される定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)との差がほとんどなくなる。これにより、非接触型の温度検出部6fで定着ローラ6bの表面の温度を検出しても、補償用サーミスタ素子6fb2により検出される温度、すなわち周囲温度に応じて補正されるため、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。すなわち、感熱フィルム6fa2と保持部材6fa1との温度とから、定着ローラ6bの表面の温度の算出に使用される補正値を算出することができ、より正確な温度を検出することができる。
定着ローラ6bの表面の温度を算出する方法として、補正値A、B、Cを保持し、上述式1を使用して算出する方法を挙げたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、式1の代わりに、変換テーブルを用いる方法であってもよい。この場合、サーミスタ素子特性と温度検出回路の定数を決定し、検出電圧値とそのときの温度を所定の電圧毎に1対1のデータとして制御部1に保存する。
また、定着ローラ6bの表面の温度を算出する式を、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差との相関から求めたが、実施の形態1は、これに限定されるものではない。例えば、定着ローラ6bの表面温度(Tc)及び非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)の差と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差との相関関係より、定着ローラ6bの表面の温度を算出する式を求めてもよい。この場合、上述の式1は、下記式3となる。
この式3を展開すると、下記式4となる。
式3及び式4中の定数である補正値A’、B’、C’を制御部1に保持し、上述の式2の代わりに式4を用いて、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)から、定着ローラ6bの表面温度を算出することができる。この式を用いても、定着ローラ6bの表面温度を正確に算出することができる。
上述のように構成される本発明の画像形成装置は、印刷データが送信されてくると以下のように動作する。
まず、制御部1は、印刷データを受け取ると、図13のように、定着ローラ6bがトナーの媒体12への定着に適した温度となるように、定着ヒータ6a等を通電制御部16を介して制御する。そして、定着ローラ6bがトナーの媒体12への定着に適した温度になった後、制御部1は、媒体残量センサ7によって媒体カセット11にセットされている媒体12の有無を検出する。その結果、印刷に使用する媒体12が存在することを検出すると、上述のように、給紙ローラで媒体12を搬送路に送る。
搬送路に送られた媒体12が書き出しセンサ9に到達すると、制御部1にその信号が送られる。この信号を受け取った制御部1は、帯電器電源2aを通じて帯電器2に電圧を印加し、感光ドラム8の表面を帯電させる。そして、制御部1は、供給された印刷データに基づいて、感光ドラム8にトナーを付着させる箇所に露光器3によって露光させ、感光ドラム8に帯電した電荷を消去させる。その後、制御部1は、現像器電源4aを通じて現像器4で所定の電荷を有するようにトナーを帯電させ、感光ドラム8にそのトナーを供給し、電気的な吸引力によって露光器3で露光した箇所に付着させ、感光ドラム8上にトナー像を形成させる。
そして、制御部1は、転写器電源5aを通じて転写器5表面に電荷を印加する。そして、転写器5の電気的な吸引力によって、感光ドラム8表面に形成されたトナー像を、搬送路に送られてくる媒体12に転写する。そして、トナー像を転写した媒体12が感光ドラム8の搬送路下流側にある定着器6に送られる。制御部1は、定着器6に送られてきた媒体12を上述のように制御された定着ローラ6bの温度と、加圧ローラ6cによって、媒体12上のトナーを溶着させるように、媒体12上にトナーを定着させる。トナーが定着した媒体12は、定着器6の搬送路下流側に送られ、排出センサ10を通過して、排出スタッカ等の装置外部に排出される。このように、実施の形態1で説明する画像形成装置は、送信されてくる印刷データに基づいた画像を媒体12に形成することができる。
したがって、実施の形態1で説明した画像形成装置は、定着ローラ6bの表面の温度を検出する非接触型の温度検出部6fを定着ローラ6bに備えることで、定着ローラ6b表面を傷つけることがなく、形成される画像の品位の低下を防止することができる。そして、制御部1は、上述のように、感熱フィルム6fa2の温度と保持部材6fa1の温度から算出される補正値を使用し、感熱フィルム6fa2の温度を保持部材6fa1の温度に基づいて補正して定着ローラ6bの表面の温度を算出することで、より正確な温度を検出することができる。したがって、定着ローラ6b表面に傷をつけることなく、周囲温度の影響を補正したより正確な温度を検出できる。そして、定着ローラ6b表面の温度制御もより正確に行うことができ、確実にトナーを媒体12に定着させることができる。
実施の形態1では、印刷データを受信した場合、すなわち印刷時における定着ローラ6b表面の温度制御について説明したが、本発明はこれに限らず、媒体12が感光ドラム8に搬送されない状態、すなわち、ウォーミングアップ時においても同様の温度制御が可能である。定着器6は、媒体12が通過することで、熱が奪われるため、上述した印刷時の補正値A、B、Cとは異なる補正値A、B、Cを予め求め、制御部1がその補正値A、B、Cを用いて定着ローラ6b表面の正確な温度を算出してもよい。例えば、ウォーミングアップ時の着ローラ6bの温度検出において、制御部1は、補正値Aが1.40、補正値Bが−0.40、補正値Cが0.00というように、上述した補正値A、B、Cとは異なる値を使用して、温度検出をおこなってもよい。これにより、より正確に定着ローラ6bの温度制御が可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態2で説明する画像形成装置は、図15のように、制御部1内に時間計測手段である時間計測部20と、感熱部材温度記憶手段である非接触サーミスタ検出温度記憶部25とをさらに有している。それ以外は、実施の形態1と同じであるため、同じ番号を付して説明を省略する。
定着ローラ6bと温度検出部6fとは、離間して備えられていることで、定着ローラ6bから温度検出部6fへの伝熱に遅れが生じる。この伝熱の遅れにより、温度検出部6fの非接触サーミスタ素子6fb3が検出する温度(Tnc)は、図16のA部のように、急激に温度が変化することがある。この場合、図17のように、実際の定着ローラ6bの温度(Tc)と温度算出手段である制御部1で算出される温度(Tc’)との差(Tc−Tc’)は、大きく異なってしまう。すなわち、実際の定着ローラ6bの表面の温度との検出誤差が生じてしまう。
この実施の形態2で説明する画像形成装置は、制御部1の時間計測部20で単位時間が計測され、その単位時間毎に検出される感熱フィルム6fa2の温度が非接触サーミスタ検出温度記憶部25に記憶される。この単位時間毎の感熱フィルム6fa2の温度から所定時間における温度変化量を算出し、この温度変化量を利用することで、上述の検出誤差を補正することができる。すなわち、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。
時間計測部20は、制御部1内に備えられ、例えば時計等が挙げられる。この時間計測部20は、制御部1が非接触サーミスタ6faでの温度検出を単位時間毎に行わせる際に、その単位時間を計測する。すなわち、制御部1は、時間計測部20で計測する単位時間毎に、非接触サーミスタ6faで感熱フィルム6fa2の温度を検出する。この単位時間は特に限定されないが、例えば1秒でも、1/100秒でもよい。
非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、制御部1の図示されないRAMに確保された一定の記憶領域である。そして、非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、非接触サーミスタ6faの非接触サーミスタ素子6fa3で検出される温度を単位時間毎にその記憶領域に記憶する。このとき、非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、記憶領域を所定の数の要素に区切られる。そして、非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、検出された単位時間毎の温度を区切られた各要素に順次格納するように記憶する。
例えば、100の要素に区切られている場合、非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、非接触サーミスタ素子6fa3ではじめに検出された温度をTnc[0]に格納する。そして、単位時間経過後にTnc[0]に格納された温度をTnc[1]に移し、非接触サーミスタ素子6fa3で次に検出された温度をTnc[0]に格納する。非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、これを繰り返して単位時間毎に検出される温度を記憶する。そして、Tnc[99]まで温度が格納され、次の温度を新たにTnc[0]に格納する場合、非接触サーミスタ検出温度記憶部25は、Tnc[99]に格納されている温度を消去する。そして、Tnc[98]に格納さている温度をTnc[99]に移すように、順次温度を移し、新しく検出された温度をTnc[0]に格納する。
定着ローラ6bの表面温度を検出する際に、温度算出手段となる制御部1は、この単位時間毎に検出された温度を使用して補正値を算出する。以下、単位時間をtとし、非接触サーミスタ検出温度記憶部25を区切る要素の数をnとして、その補正値の算出方法について説明する。
まず、所定時間Tにおける非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)の変化量について説明する。この、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量(dTnc/dT)は、非接触サーミスタ検出温度記憶部25で、各要素として単位時間毎に記憶されている温度から算出できる。所定時間T前から現在までの温度変化量を算出する場合、所定時間T前に検出された温度は、非接触サーミスタ検出温度記憶部25のTnc[n−1]に格納されている。そして、現在検出された温度は、非接触サーミスタ検出温度記憶部25のTnc[0]に格納されている。それぞれの温度をTnc[n−1]、Tnc[0]とすると、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量(dTnc/dT)は、下記の式5によって算出される。なお、所定時間Tは、感熱フィルム6fa2の温度の変化量を算出する際に基準となる時間で、時間計測部で計測される単位時間tと同じ又は単位時間tの自然数倍の時間であり、特に限定されるものではない。また、所定時間Tは、単位時間tと非接触サーミスタ検出温度記憶部25を区切る要素の数nとの積により求められる。
そして、実際に本発明の画像形成装置の定着器6と同じ定着器を用いて、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量(dTnc/dT)に対する実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)と実施の形態1で説明した式2で算出される定着ローラ6bの表面温度(Tc’)との差を調べると、図18のようになる。すなわち、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量(dTnc/dT)と、実際の定着ローラ6bの表面温度と式2で算出される定着ローラ6bの表面温度との差(Tc’−Tc)に強い相関関係があることがわかる。この関係を表した近似式で表すと下記の式6となる。この式2は実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
すなわち、定着ローラ6bと温度検出部6fとが離間して備えられていることに起因する伝熱の遅れによる定着ローラ6bの表面温度の検出誤差は、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量(dTnc/dT)と定数Dとの積で示される。Tc’は、実施の形態1で示した式2によって求めている。したがって、定着ローラ6bの表面温度は、式2の右辺からD×(dTnc/dT)を差し引いた下記の式7により算出される。すなわち、このD×(dTnc/dT)が所定時間Tにおける温度変化量に基づいて算出された補正値となる。
上述の式1及び式2のA、B、Cは、実施の形態1と同様に算出される。そして、式6及び式7のDは、図18に示されるような相関図によって求められる近似式の傾きから求めることができる。この補正値A、B、C、Dの値としては、例えば、補正値Aは1.45、補正値Bは−0.45、補正値Cは0.00、補正値Dは1.20である。このように算出される補正値A、B、C、Dは、予め算出し、制御部1に保持される。制御部1は、検出される非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度、及び、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量から、この補正値A、B、C、Dを用いて定着ローラ6bの表面温度を正確に算出することができる。この補正値A、B、C、Dは、画像形成装置の機種毎に実験により決定される。そのため、機種が異なると、別の値となる。
このように、補正値を保持した制御部1は、下記のように定着ローラ6bの表面の温度を適切な温度に制御している。以下、図19を用いて定着ローラ6bの表面温度の制御方法について説明する。
制御部1は、印刷データを受け取ると、下記の処理を行う。なお、この処理は、サーミスタ素子による温度検出毎に行われる。まず、制御部1は、温度検出回路19の電圧検出点Vout1、Vout2で、ステップS11において、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2との出力電圧を検出し、その値を読み取る。そして、制御部1は、ステップS12において、この出力電圧を温度に変換し、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度を検出する。この出力電圧は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2とのそれぞれの温度に応じて検出される電圧が変化するため、検出した出力電圧から、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2それぞれの温度を検出することができる。
非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)である。そして、補償用サーミスタ素子6fb2で検出した温度は、保持部材6fa1の温度(Tamb)である。制御部1は、ステップS13において、非接触サーミスタ素子6fa3で検出された温度を非接触サーミスタ検出温度記憶部25の所定の数に区切られた要素のTnc[0]に格納させる。所定時間T前に検出された感熱フィルム6fa2の温度は、非接触サーミスタ検出温度記憶部25のn番目の要素Tnc[n−1]に格納される。そして、制御部1は、ステップS14において、Tnc[n−1]に所定時間T前に検出された温度が格納されているか否かを判断する。Tnc[n−1]に温度が格納されていない場合、制御部1は、ステップS18に移行する。
一方、ステップS14において、Tnc[n−1]に温度が格納されている場合、制御部1は、ステップS15において、現在非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度Tnc[0]と、所定時間T前に非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度Tnc[n−1]から、上記式5を用いて所定時間Tにおける非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度の変化量を算出する。すなわち、制御部1は、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量を算出する。
そして、制御部1は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度で検出した温度と所定時間Tにおける非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度の変化量と保持している補正値A、B、C、Dとから、ステップS16において、上述の式7で示した計算式を用いて、定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)を算出する。
算出されたTc’を用いて、制御部1は、ステップS17において、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。このとき、制御部1は、定着ローラ6b内の定着ヒータ6aに接続されている通電制御部16に、定着ヒータ6aへの通電のON/OFFの指令を送る。この指令を受けて、通電制御部16は、定着ヒータ6aへのON/OFFを行い、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。
そして、制御部1は、ステップS18において、非接触サーミスタ検出温度記憶部25の区切られた各要素に格納されている温度を、Tnc[i]をTnc[i+1]となるようにずらす。このとき、iは0からn−1を示す。ステップS18の終了後に、制御部1は、この処理を終了する。制御部1は、この一連の処理をサーミスタ素子によって温度を検出する度に繰り返し行う。これにより、媒体12上のトナーの定着に適した温度に制御することができる。
このように、制御部1で上述のように定着ローラ6bの表面の温度を制御することで、図20のように、実際の定着ローラ6b表面の温度(Tc)と算出される定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)との差がほとんどなくなる。これにより、温度検出部6fが定着ローラ6bから離間して備えられていても、伝熱の遅れにより生じる定着ローラ6bの表面の温度の誤差を精度よく補正することができる。すなわち、感熱フィルム6fa2と保持部材6fa1との温度と所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量とにより、より正確な温度を検出することができる。
実施の形態2で説明した画像形成装置は、上述のように、正確に定着ローラ6bの表面の温度を検出する。そして、実施の形態1で説明したように媒体12に画像を形成することができる。
したがって、実施の形態2で説明した画像形成装置は、定着ローラ6bの表面の温度を検出する非接触型の温度検出部6fを定着ローラ6bに備えることで、定着ローラ6b表面を傷つけることがなく、形成される画像の品位の低下を防止することができる。所定時間における感熱フィルム6fa2の温度変化量に基づいて非接触サーミスタ素子6fa3で検出される温度を補正することで、定着ローラ6b表面の温度が変化する場合に生じる非接触サーミスタ素子6fa3への伝熱の遅れに対応することができる。すなわち、非接触サーミスタ素子6fa3への伝熱の遅れによって生じる誤差を補正することができる。したがって、定着ローラ6bの周囲温度の変化に応じた補正が可能となり、より正確に定着ローラ6b表面の温度を検出することができる。そして、定着ローラ6b表面の温度制御もより正確に行うことができ、確実にトナーを媒体12に定着させることができる。
実施の形態2では、印刷データを受信した場合、すなわち印刷時における定着ローラ6b表面の温度制御について説明したが、本発明はこれに限らず、媒体12が感光ドラム8に搬送されない状態、すなわち、ウォーミングアップ時においても同様の温度制御が可能である。定着器6は、媒体12が通過することで、熱が奪われるため、上述した印刷時の補正値A、B、C、Dとは異なる補正値A、B、C、Dを予め求め、制御部1がその補正値A、B、C、Dを用いて定着ローラ6b表面の正確な温度を算出してもよい。例えば、ウォーミングアップ時の着ローラ6bの温度検出において、制御部1は、補正値Aが1.40、補正値Bが−0.40、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20というように、印刷時とは異なる値を使用して、温度検出をおこなってもよい。これにより、より正確に定着ローラ6bの温度制御が可能となる。
[実施の形態3]
実施の形態3で説明する画像形成装置の構成は、実施の形態2で説明した画像形成装置と同じである。実施の形態3で説明する画像形成装置では、実施の形態2で説明した式7の補正値Aが周囲の温度、すなわち、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材の温度に応じて変化することに着目する。実施の形態3で説明する画像形成装置は、この変化によって生じる誤差を補正することができる。なお、実施の形態3で説明する画像形成装置を構成する部材は、実施の形態1及び2と同じであるため、同じ番号を付して説明を省略する。
実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルムの温度(Tnc)と、周囲の温度である補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材の温度(Tamb)とは、図21のようになる。そして、実際の定着ローラ6bの表面温度及び実施の形態2の式7で算出された定着ローラ6bの表面温度(Tc’)の差(Tc−Tc’)と、感熱フィルムの温度及び実際の定着ローラ6bの表面温度の差(Tnc−Tc)とは、図22のような関係である。これにより、感熱フィルムの温度及び実際の定着ローラ6bの表面温度の差(Tnc−Tc)が大きいとき、実際の定着ローラ6bの表面温度と算出された定着ローラ6bの表面温度の差(Tc−Tc’)が大きくなることがわかる。感熱フィルムの温度及び実際の定着ローラ6bの表面温度の差(Tnc−Tc)が大きい場合、実施の形態1で説明したように、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度が低い、すなわち周囲の温度が低いことを示す。したがって、周囲の温度が低いことで、算出される定着ローラ6bの表面温度に誤差が生じることになる。これは、周囲の温度が大きく異なる場合、定着ローラ6bと温度検出部6fとの間の空間熱抵抗が変化し、それにともなって最適な補正値が異なるためである。
この実施の形態3で説明する画像形成装置は、補償用サーミスタ素子6fb2で検出できる周囲の温度に応じて補正値を変化させ、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。
まず、周囲の温度である補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度に対して、上述の式7に用いられる補正値Aとの関係を調べると図23のようになる。すなわち、周囲温度と補正値Aとに強い相関関係があることがわかる。この関係を近似式で表すと下記の式8となる。
すなわち、上述した式7の補正値Aは、周囲温度Tambと比例関係にあり、周囲温度に応じた値を示すことがわかる。ここで、定数a、bを予め求めておくことで、周囲の温度に応じて補正値Aを補正することができる。この定数a、bは、図23に示されるような相関図によって求められる近似式から求めることができる。この定数a、bは、補正値A、B、C、Dと同様に予め求め、制御部1に保持される。制御部1は、検出される補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度から、定数a、bを用いて、補正値Aを補正した値A[Tamb]を算出する。この補正値A[Tamb]を上述した式7のAに代入すると、下記の式9となる。この定数a、bは、画像形成装置の機種毎に実験により決定される。そのため、機種が異なると、別の値となる。例えば、機種が異なれば定数aが0.33、定数bが1.10のようになる。
制御部1は、検出される非接触サーミスタ素子6fa3で検出される温度、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度、及び、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量から、この補正値A[Tamb]、B、C、Dを用いて定着ローラ6bの表面温度を正確に算出できる。
このように、補正値を保持した制御部1は、下記のように定着ローラ6bの表面の温度を適切な温度に制御している。以下、図24を用いて定着ローラ6bの表面温度の制御方法について説明する。
制御部1は、印刷データを受け取ると、下記の処理を行う。なお、この処理は、サーミスタ素子による温度検出毎に行われる。まず、制御部1は、温度検出回路19の電圧検出点Vout1、Vout2で、ステップS21において、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2との出力電圧を検出し、その値を読み取る。そして、制御部1は、ステップS22において、この出力電圧を温度に変換し、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度を検出する。この出力電圧は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2とのそれぞれの温度に応じて検出される電圧が変化するため、検出した出力電圧から、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2それぞれの温度を検出することができる。
非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)である。そして、補償用サーミスタ素子6fb2で検出した温度は、保持部材6fa1の温度(Tamb)である。制御部1は、ステップS23において、非接触サーミスタ素子6fa3で検出された温度を非接触サーミスタ検出温度記憶部25の所定の数に区切られた要素のTnc[0]に格納させる。所定時間T前に検出された感熱フィルム6fa2の温度は、非接触サーミスタ検出温度記憶部25のn番目の要素Tnc[n−1]に格納される。そして、制御部1は、ステップS24において、Tnc[n−1]に所定時間T前に検出された温度が格納されているか否かを判断する。Tnc[n−1]に温度が格納されていない場合、制御部1は、ステップS29に移行する。
一方、ステップS24において、Tnc[n]に温度が格納されている場合、制御部1は、ステップS25において、現在非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度Tnc[0]と、所定時間T前に非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度Tnc[n−1]から、上記式5を用いて所定時間Tにおける非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度の変化量を算出する。すなわち、制御部1は、所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量を算出する。
所定時間Tにおける感熱フィルム6fa2の温度の変化量を算出した後、制御部1は、ステップS26において、補償用サーミスタ素子6fb2で検出された温度と予め算出してある定数a、bとにより、予め求めていた補正値Aを式8に基づいて補正値A[Tamb]に補正する。
そして、制御部1は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度で検出した温度と所定時間Tにおける非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度の変化量と、保持している補正値B、C、Dと、ステップS26で算出された補正値A[Tamb]から、ステップS27において、上述の式9で示した計算式を用いて、定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)を算出する。
算出されたTc’を用いて、制御部1は、ステップS28において、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。このとき、制御部1は、定着ローラ6b内の定着ヒータ6aに接続されている通電制御部16に、定着ヒータ6aへの通電のON/OFFの指令を送る。この指令を受けて、通電制御部16は、定着ヒータ6aへのON/OFFを行い、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。
そして、制御部1は、ステップS29において、非接触サーミスタ検出温度記憶部25の区切られた各要素に格納されている温度を、Tnc[i]をTnc[i+1]となるようにずらす。このとき、iは0からn−1を示す。ステップS18の終了後に、制御部1は、この処理を終了する。制御部1は、この一連の処理をサーミスタ素子によって温度を検出する度に繰り返し行う。これにより、媒体12上のトナーの定着に適した温度に制御することができる。
このように、実施の形態3で説明した画像形成装置は、制御部1で上述のように補正値Aの値を周囲の温度すなわち、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度に応じて変化させる。これにより、周囲の温度が低い時等といった周囲の温度が大きく変化して定着ローラ6bと温度検出部6fとの空間熱抵抗が変化した場合のように、算出された定着ローラ6bの表面の温度に誤差が生じやすい場合であっても、図25のように、実際の定着ローラ6bの表面の温度(Tc)と算出された定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)との差がほとんどなくなる。このように、周囲の温度に応じて補正値を変化させることで、周囲温度の状況に応じた補正を可能とする。したがって、より正確に定着ローラ6b表面の温度を検出することができる。
実施の形態3で説明した画像形成装置は、上述のように、正確に定着ローラ6bの表面の温度を検出する。そして、実施の形態1で説明したように媒体12に画像を形成することができる。
したがって、実施の形態3で説明した画像形成装置は、定着ローラ6bの表面の温度を検出する非接触型の温度検出部6fを定着ローラ6bから離間して備えることで、定着ローラ6b表面を傷つけることがなく、形成される画像の品位の低下を防止することができる。そして、周囲の温度に応じて補正値を変化させることで、周囲温度の状況に応じた補正を可能とする。したがって、より正確に定着ローラ6b表面の温度を検出することができる。そして、定着ローラ6b表面の温度制御もより正確に行うことができ、確実にトナーを媒体12に定着させることができる。
実施の形態3で説明した画像形成装置は、補正値Aについて説明したが、本発明は、これに限られるものではない。補正値B、C、Dについても同様に周囲の温度、すなわち、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される温度と補正値B、C、Dとの関係から、補正することができる。これにより、より周囲温度の状況に応じた補正が可能なり、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。なお、この補正値Dを周囲の温度によって補正することで、所定時間の感熱フィルム6fa2の温度変化量を周囲の温度によって補正することができる。また、実施の形態3で説明した補正値Aの補正のように、周囲温度と所定時間の感熱フィルム6fa2の温度変化量との関係を求め、同様に、周囲温度と所定時間の感熱フィルム6fa2の温度変化量を補正するようにしてもよい。
実施の形態3では、印刷データを受信した場合、すなわち印刷時における定着ローラ6b表面の温度制御について説明したが、本発明はこれに限らず、媒体12が感光ドラム8に搬送されない状態、すなわち、ウォーミングアップ時においても同様の温度制御が可能である。定着器6は、媒体12が通過することで、熱が奪われるため、上述した印刷時の補正値Aを補正するための定数a、bとは異なる定数a、bを予め求め、制御部1がその定数a、bを補正値A[Tamb]を求め、この補正値A[Tamb]と補正値B、C、Dを用いて定着ローラ6b表面の正確な温度を算出してもよい。例えば、ウォーミングアップ時の定着ローラ6bの温度検出において、制御部1は、定数aが0.00、定数bが1.40というように、印刷時とは異なる値を使用して補正値Aの値を補正値A[Tamb]に補正してもよい。これによって、補正値A[Tamb]が1.40となり、補正値Bを−0.40、補正値Cを0.00、補正値Dを1.20というように、印刷時とは異なる値を使用して、温度検出をおこなってもよい。これにより、より正確に定着ローラ6bの温度制御が可能となる。
[実施の形態4]
実施の形態4で説明する画像形成装置の構成は、実施の形態1で説明した画像形成装置と同じである。実施の形態4で説明する画像形成装置は、定着ローラ6bが回転することで発生する定着器6内の空気の流れによる感熱フィルム6fa2の周囲温度が低下することに着目する。実施の形態4で説明する画像形成装置は、この周囲温度の低下によって生じる誤差を補正することができる。なお、実施の形態4で説明する画像形成装置を構成する部材は、実施の形態1乃至3と同じであるため、同じ番号を付して説明を省略する。
定着ローラ6bの実際の表面温度(Tc)は、定着ローラ6bが回転することで、図26のように、温度が低下してしまう。そして、定着ローラ6bの表面温度(Tc)と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルムの温度(Tnc)との差は、図27のように、定着ローラ6bの回転時と、停止時とで異なる。すなわち、回転時に使用する補正値を、停止時にも使用すると、実際の定着ローラ6bの表面温度に誤差が生じてしまう。これは、定着ローラ6bと温度検出部6fとが離間して備えられているため、定着ローラ6bの回転により定着器6内の空気が流れることで、周囲の温度が低下し、放熱量が多くなるためである。
この実施の形態4で説明する画像形成装置は、定着ローラ6bの動作状況として、回転時に使用される補正値と、停止時に使用される補正値とを予め求め、定着ローラ6bの動作状況に応じて、いずれか一方を使用して、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。
まず、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)と周囲の温度である補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材の温度(Tamb)との差、及び、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルムの温度(Tnc)と保持部材の温度(Tamb)との差との関係は、図28のようになる。このように、実施の形態1と同様に、定着ローラ6bの表面温度(Tc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差と、非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度(Tamb)の差とに強い相関関係があることがわかる。この関係を近似式で表すと上記の式1となり、実施の形態1と同様に、上記式2が導き出せる。これにより、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)及び保持部材6fa1の温度(Tamb)の関係が導き出せる。
上述の式1及び式2のA、B、Cは、定着ローラ6bの回転時と停止時に分けてそれぞれ実施の形態1と同様に算出される。例えば定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、Cの値としては、補正値Aが1.45、補正値Bが−0.45、補正値Cが0.00である。また、定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、Cの値としては、例えば、補正値Aが1.34、補正値Bが−0.34、補正値Cが0.00である。このように算出される補正値A、B、Cは、予め算出し、制御部1に保持される。制御部1は、検出される非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度、及び、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度から、この補正値A、B、Cを用いて定着ローラ6bの表面温度を正確に算出することができる。この補正値A、B、Cは、画像形成装置の機種毎に実験により決定される。そのため、機種が異なると、別の値となる。
このように、補正値を保持した制御部1は、下記のように定着ローラ6bの表面の温度を適切な温度に制御している。以下、図29を用いて定着ローラ6bの表面温度の制御方法について説明する。
制御部1は、印刷データを受け取ると、下記の処理を行う。なお、この処理は、サーミスタ素子による温度検出毎に行われる。まず、制御部1は、温度検出回路19の電圧検出点Vout1、Vout2で、ステップS101において、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2との出力電圧を検出し、その値を読み取る。そして、制御部1は、ステップS102において、この出力電圧を温度に変換し、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度を検出する。この出力電圧は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2とのそれぞれの温度に応じて検出される電圧が変化するため、検出した出力電圧から、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2それぞれの温度を検出することができる。
そして、制御部1は、ステップS103において、定着ローラ6bが回転しているか否かを判断する。定着ローラ6bが回転している場合、制御部1は、ステップS104−1において、予め求めた定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、Cを選択し、ステップS105に移行する。一方、ステップS103において、定着ローラ6bが停止している場合、制御部1は、ステップS104−2において、予め求めた定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、Cを選択し、ステップS105に移行する。
非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)である。そして、補償用サーミスタ素子6fb2で検出した温度は、保持部材6fa1の温度(Tamb)である。制御部1は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度で検出した温度と、ステップS104−1又はステップS104−2で選択された補正値A、B、Cから、ステップS105において、上述の式2で示した計算式を用いて、定着ローラ6bの表面の温度を算出する。このとき、算出される定着ローラ6bの表面の温度をTc’とする。
算出された定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)を用いて、制御部1は、ステップS106において、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。このとき、制御部1は、定着ローラ6b内の定着ヒータ6aに接続されている通電制御部16に、定着ヒータ6aへの通電のON/OFFの指令を送る。この指令を受けて、通電制御部16は、定着ヒータ6aへのON/OFFを行い、定着ローラ6bの表面の温度を制御し、この処理を終了する。これを繰り返し行うことにより、媒体12上のトナーの定着に適した温度に制御することができる。
例えば、定着ローラ6bの回転時に定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、Cを使用して定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出して、制御部1が定着ローラ6bの表面温度の制御を行うと、図30のように、定着ローラ6bを回転させることで、実際の回転ローラ6bの表面温度と差が出てしまう。また、定着ローラ6bの停止時に定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、Cを使用して定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出して、制御部1が定着ローラ6bの表面温度の制御を行うと、図31のように、定着ローラ6bが停止している状態で、実際の回転ローラ6bの表面温度と差が出てしまう。
図29のように、制御部1が定着ローラ6bの表面温度の制御を行うと、定着ローラ6bの回転時に定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、Cを使用し、定着ローラ6bの停止時に定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、Cを使用することで、図32のように、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)と、算出された定着ローラ6bの表面温度(Tc’)とが略同じ値となる。したがって、定着ローラ6bの動作状況に対応する補正値を予め求め、その動作状況に応じて、予め求めた補正値を使用するように制御部1が選択することで、より正確な温度を検出することができる。
実施の形態4の画像形成装置は、定着ローラ6bの表面温度の算出に使用する補正値A、B、Cを、回転時と停止時に分けて定着ローラ6bの表面温度を算出するものである。これは、実施の形態2にも適用することができる。すなわち、定着ローラ6bの表面温度の算出に使用する補正値A、B、C、Dも、定着ローラ6bの回転時と停止時に分けて予め求め、制御部1に保持される。例えば定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、C、Dの値としては、補正値Aが1.45、補正値Bが−0.45、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。また、定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、C、Dの値としては、例えば、補正値Aが1.34、補正値Bが−0.34、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。そして、定着ローラ6bの動作状況に応じて、回転時の補正値A、B、C、D又は停止時の補正値A、B、C、Dのいずれかを選択し、定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出する。これにより、より正確な温度を検出することができる。
同様に、実施の形態3にも適用することができる。すなわち、定着ローラ6bの表面温度の算出に使用する補正値A[Tamb]、B、C、Dも、定着ローラ6bの回転時と停止時に分けて予め求め、制御部1に保持される。補正値A[Tamb]は、実施の形態3と同様に、補正値A、定数a、bによって算出される。例えば定着ローラ6bの回転時の定数a、b及び補正値A、B、C、Dの値としては、定数aが0.33、定数bが1.10、補正値Aが1.45、補正値Bが−0.45、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。また、定着ローラ6bの停止時の定数a、b及び補正値A、B、C、Dの値としては、例えば、定数aが0.17、定数bが1.10、補正値Aが1.34、補正値Bが−0.34、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。これらに基づいて補正値A[Tamb]がそれぞれ算出される。そして、定着ローラ6bの動作状況に応じて、回転時の定数a、b及び補正値A、B、C、D又は停止時の定数a、b及び補正値A、B、C、Dのいずれかを選択し、定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出する。これにより、より正確な温度を検出することができる。
[実施の形態5]
実施の形態5で説明する画像形成装置の構成は、実施の形態4で説明した画像形成装置と同じである。実施の形態5で説明する画像形成装置は、直前の画像形成で通常よりも幅の狭い媒体に画像形成を行った場合、放熱条件が変化することに着目する。実施の形態4で説明する画像形成装置は、この周囲温度の低下によって生じる誤差を補正することができる。なお、実施の形態4で説明する画像形成装置を構成する部材は、実施の形態1乃至4と同じであるため、同じ番号を付して説明を省略する。
直前の画像形成で、定着ローラ6bの媒体12との接触領域よりも狭い領域、すなわち通常の媒体12よりも幅の狭い媒体を使用した場合、定着ローラ6bの端部であり、幅の狭い媒体と接触しない部分の温度が、定着ローラ6bと幅の狭い媒体とが接触した部分よりも温度が上昇する。これにより、非接触サーミスタ6faの周囲温度が上昇することで、放熱条件が変化する。さらに、印刷が終了し、定着ローラ6bが停止してもすぐに温度が通常時に戻らないため、停止時の補正値を使用すると、図33のように、定着ローラ6bの算出される表面温度(Tc’)と、定着ローラ6bの実際の表面温度(Tc)とに差が生じてしまう。したがって、定着ローラが停止してから一定期間(以下、この期間をTwとする)の間は、停止時の補正値とは別の補正値を使用する必要がある。
この実施の形態5で説明する画像形成装置は、定着ローラ6bの所定の動作状況として、幅の狭い媒体を使用した後、期間Tw内で、定着ローラ6bが停止している状態で使用される補正値を予め求め、定着ローラ6bの動作状況によってこの補正値を使用することで、より正確に定着ローラ6bの表面の温度を算出することができる。
実施の形態4と同様に、直前の画像形成で幅の狭い媒体が使用され、画像形成終了後から期間Tw内で、定着ローラ6bの停止時において上述した式1及び式2が導き出せる。そして、上述の式1及び式2の第2の補正値としての幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、Cは、実験により算出される。例えばこのときの補正値A、B、Cの値としては、補正値Aが1.30、補正値Bが−0.30、補正値Cが0.00である。このように幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、Cは、定着ローラ6bの回転時及び停止時の補正値と同様に、予め算出され、制御部1に保持される。制御部1は、検出される非接触サーミスタ素子6fa3で検出される感熱フィルム6fa2の温度、及び、補償用サーミスタ素子6fb2で検出される保持部材6fa1の温度から、この補正値A、B、Cを用いて定着ローラ6bの表面温度を正確に算出することができる。この補正値A、B、Cは、画像形成装置の機種毎に実験により決定される。そのため、機種が異なると、別の値となる。
このように、補正値を保持した制御部1は、下記のように定着ローラ6bの表面の温度を適切な温度に制御している。以下、図34を用いて定着ローラ6bの表面温度の制御方法について説明する。
制御部1は、印刷データを受け取ると、下記の処理を行う。なお、この処理は、サーミスタ素子による温度検出毎に行われる。まず、制御部1は、温度検出回路19の電圧検出点Vout1、Vout2で、ステップS201において、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2との出力電圧を検出し、その値を読み取る。そして、制御部1は、ステップS202において、この出力電圧を温度に変換し、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度を検出する。この出力電圧は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2とのそれぞれの温度に応じて検出される電圧が変化するため、検出した出力電圧から、非接触サーミスタ素子6fa3及び補償用サーミスタ素子6fb2それぞれの温度を検出することができる。
そして、制御部1は、ステップS203において、定着ローラ6bが回転しているか否かを判断する。定着ローラ6bが回転している場合、制御部1は、ステップS206−1において、予め求めた定着ローラ6bの回転時の補正値A、B、Cを選択し、ステップS207に移行する。一方、ステップS203において、定着ローラ6bが停止している場合、制御部1は、ステップS204において、直前の画像形成で幅の狭い媒体が使用されたか否かを判断する。その結果、直前の画像形成において、幅の狭い媒体が使用されている場合、制御部1は、ステップS205において、幅の狭い媒体への画像形成が行われてから、すなわち、制御部1は、定着ローラ6bが停止してから、期間Tw内であるか否かを判断する。
ステップS205において、定着ローラ6bが停止して後、期間Tw内である場合、制御部1は、ステップS206−2において、予め求めた幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、Cを選択し、ステップS207に移行する。ステップS204において、直前の画像形成において、幅の狭い媒体が使用されていない場合、又は、ステップS205において、定着ローラ6bが停止後、期間Twを越えた場合、制御部1は、ステップS206−3において、予め求めた定着ローラ6bの停止時の補正値A、B、Cを選択し、ステップS207に移行する。
非接触サーミスタ素子6fa3で検出した温度は、感熱フィルム6fa2の温度(Tnc)である。そして、補償用サーミスタ素子6fb2で検出した温度は、保持部材6fa1の温度(Tamb)である。制御部1は、非接触サーミスタ素子6fa3と補償用サーミスタ素子6fb2の温度で検出した温度と、ステップS206−1、ステップS206−2、又は、ステップS206−3で選択された補正値A、B、Cから、ステップS207において、上述の式2で示した計算式を用いて、定着ローラ6bの表面の温度を算出する。このとき、算出される定着ローラ6bの表面の温度をTc’とする。
算出された定着ローラ6bの表面の温度(Tc’)を用いて、制御部1は、ステップS208において、定着ローラ6bの表面の温度を制御する。このとき、制御部1は、定着ローラ6b内の定着ヒータ6aに接続されている通電制御部16に、定着ヒータ6aへの通電のON/OFFの指令を送る。この指令を受けて、通電制御部16は、定着ヒータ6aへのON/OFFを行い、定着ローラ6bの表面の温度を制御し、この処理を終了する。これを繰り返し行うことにより、媒体12上のトナーの定着に適した温度に制御することができる。
図34のように、制御部1が定着ローラ6bの表面温度の制御を行うと、定着ローラ6bの動作状況に応じて、幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、Cを使用することで図35のように、実際の定着ローラ6bの表面温度(Tc)と、算出された定着ローラ6bの表面温度(Tc’)とが略同じ値となる。したがって、定着ローラ6bの動作状況に対応する補正値を予め求め、その動作状況に応じて、予め求めた補正値を使用するように制御部1が選択することで、より正確な温度を検出することができる。
実施の形態5の画像形成装置は、定着ローラ6bの回転時と停止時の補正値の他に、直前の画像形成で幅の狭い媒体が使用され、幅の狭い媒体が使用されてから期間Tw内で、定着ローラ6bの停止時に使用される第2の補正値としての幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、Cをさらに予め求める。そして、これらの補正値を定着ローラ6bの動作状況に応じて選択し、定着ローラ6bの表面温度を算出するものである。これは、実施の形態2にも適用することができる。すなわち、定着ローラ6bの表面温度の算出に使用する補正値A、B、C、Dも、幅の狭い媒体が使用されてから期間Tw内で、定着ローラ6bの停止時をさらに予め求め、制御部1に保持される。例えば定着ローラ6bの幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、C、Dの値としては、補正値Aが1.30、補正値Bが−0.30、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。そして、定着ローラ6bの動作状況に応じて、回転時の補正値A、B、C、D、停止時の補正値A、B、C、D、又は、幅狭紙印刷後停止時の補正値A、B、C、Dのいずれかを選択し、定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出する。これにより、より正確な温度を検出することができる。
同様に、実施の形態3にも適用することができる。すなわち、定着ローラ6bの表面温度の算出に使用する補正値A[Tamb]、B、C、Dも、幅の狭い媒体が使用されてから期間Tw内で、定着ローラ6bの停止時をさらに予め求め、制御部1に保持される。補正値A[Tamb]は、実施の形態3と同様に、補正値A、定数a、bによって算出される。例えば定着ローラ6bの定着ローラ6bの幅狭紙印刷後停止時の定数a、b及び補正値A、B、C、Dの値としては、定数aが0.15、定数bが1.20、補正値Aが1.30、補正値Bが−0.30、補正値Cが0.00、補正値Dが1.20である。これらに基づいて補正値A[Tamb]がそれぞれ算出される。そして、定着ローラ6bの動作状況に応じて、回転時の定数a、b及び補正値A、B、C、D、停止時の定数a、b及び補正値A、B、C、D、又は、幅狭紙印刷後停止時の定数a、b及び補正値A、B、C、Dのいずれかを選択し、定着ローラ6bの表面温度(Tc’)を算出する。これにより、より正確な温度を検出することができる。