JP2007107152A - 電気植毛繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 昇華転写で捺染された図柄の鮮明性と色の深みに優れた電気植毛繊維製品を提供する。
【解決手段】 繊維が電気植毛された立毛品に昇華転写捺染された電気植毛繊維製品であって、該繊維の少なくとも一部がポリトリメチレンテレフタレート系繊維である電気植毛繊維製品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電気植毛繊維製品に関し、特に鮮明で色の深みを有する昇華転写捺染された電気植毛繊維製品に関する。
従来、電気植毛繊維製品用の繊維としては、レーヨン繊維、ポリアミド系繊維等が多く利用されている。近年、これらの繊維を用いた電気植毛繊維製品ではますます高級化が指向され、各種プリントによる意匠性の向上の要求が高まっている。
昇華転写捺染は乾熱、短時間で繊細なデザインの捺染布が得られることは知られている。ところが、ポリアミド系繊維を用いた昇華転写捺染された電気植毛繊維製品では色の深みや図柄の鮮明性に劣るため、意匠性に富んだ多色性を発揮できないという問題がある。
一方、特許文献1には、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛に昇華転写捺染すると鮮明な図柄を有する捺染布を得られること、及びダブルラッセルやダブルベルベット等の立体編織物、及びこれらをセンターカットした立毛生地、起毛品に適用した場合により効果的であることが開示されている。
しかしながら、これらの立毛生地や起毛品は、立毛した繊維の直線性や平行性、基材との垂直性、及び布帛表面の平滑性が充分ではないため、図柄の鮮明性や色の深みという点では不充分であり、より高級感を有する立毛製品が求められている。
特開2004−176203号公報
本発明の課題はこのような現状に鑑みて行われたもので、図柄の鮮明性と色の深みに優れた、電気植毛繊維製品を提供するものである。
本発明者らは、立毛製品に使用する繊維素材や立毛製品の製造方法、染料を含めた昇華転写捺染条件と鮮明性、色の深みについて鋭意検討した結果、特定の繊維素材を電気植毛した立毛製品に昇華転写捺染することにより課題が解決されることを究明し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、繊維が電気植毛された立毛品に昇華転写捺染された電気植毛繊維製品であって、該繊維の少なくとも一部がポリトリメチレンテレフタレート系繊維であることを特徴とする電気植毛繊維製品である。
本発明によれば、立毛した繊維の直線性や平行性、基材との垂直性、及び布帛表面の平滑性に優れるため、図柄の鮮明性と色の深みに優れた電気植毛繊維製品が得られる。
本発明の電気植毛繊維製品は、電気植毛用の基材表面に繊維がパイルとして電気植毛された製品であり、該繊維の少なくとも一部がポリトリメチレンテレフタレート系繊維であることが必要である。
パイル部におけるポリトリメチレンテレフタレート系繊維の割合は、質量%で、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の混率が30%未満では、本発明の目的達成が不十分となる。
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維以外の繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、カチオン染料可染ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ポリエチレン繊維、及びこれらの繊維のラスター違い(ブライト、セミダル、フルダル)繊維や異型断面繊維、原着繊維、先染め繊維等、本発明の目的を損なわない範囲で所望の各種繊維を用いることができる。
一般に立毛製品では、製品の表面は立毛した繊維の断面が並んだ形になっている。そのため、昇華転写捺染された繊維の断面ばかりが見える場合は、図柄が鮮明性に見え、色の深みも増す。ところが、直線性や平行性、基材との垂直性、及び布帛表面の平滑性が低いと、立毛繊維の断面よりも、立毛繊維の側面表面に吸着された染料の発色と側面の光の反射を視覚に感じることにより、色の深みが不足した布帛となってしまう。
本発明の電気植毛繊維製品は、ダブルラッセルやダブルベルベット等の立体編織物をセンターカットした立毛生地や起毛品に比べると、立毛した繊維の直線性や平行性、基材との垂直性、及び布帛表面の平滑性に優れるため、図柄が極めて鮮明に見え、色の深みも著しく増し、より高級感を有する立毛製品になる。
本発明において、電気植毛繊維製品のパイル部の少なくとも一部を形成するポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしてもよい。
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明で用いられるポリトリメチレンテレフタレート系繊維は次のような方法で得られる。まず、固有粘度0.4〜1.9、好ましくは0.7〜1.2の前記のポリエステルを溶融紡糸して、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延伸する方法や、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等により長繊維を得ることができる。あるいは、2000m/分以上、好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもでき、この場合には自然延伸倍率以下の倍率で延伸して長繊維を得ることができる。得られた長繊維を連続的に束にしてトウを形成するか、あるいは一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して、かせ揚げ機等を用いて束にしてもよい。また、溶融紡糸した未延伸糸を束にしてトウを形成した後に延伸してもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。弾性率は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
パイルに使用するポリトリメチレンテレフタレート系繊維の単糸の太さは、製品用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、椅子張り地椅子カバー、カーシート等、植毛表面が人の肌に直接触れる製品では0.2dtex〜30dtex、好ましくは0.5dtex〜20dtex、より好ましくは1dtex〜10dtexである。またカーペットやバスマット等においては0.5dtex〜100dtex、好ましくは5dtex〜80dtex、より好ましくは10dtex〜60dtex、最も好ましくは20dtex〜40dtexである。
電気植毛用のパイルは、数十万〜数百万dtexの前記のトウや延伸糸の束を、任意の長さに切断して用いる。パイルをカットするカッティングマシンは、押し切り方式(いわゆるギロチンカッター)、回転刃方式(ロータリーカッター)等、いずれであってもよい。また、切断する際に水分を付与するウエットカッティングを採用してもよい。
パイルを形成する繊維を予め着色して使用することも可能であり、その方法は特に限定されるものではなく、原料着色、綛染色、トウ染色、パイルのパッケージ染色等により電気植毛前に染色する方法や、電気植毛後に反染め、捺染等を実施することにより、任意の色や柄を付与する方法等が採用される。原料着色する場合、一般的な堅牢度のよい顔料を選定して、性能のよいパイルを製造することができる。糸又はカットパイルを染色する場合、堅牢度のよい選択された分散染料を使用し、染色温度は通常90〜135℃、好ましくは100〜130℃の範囲で染色する。
電気植毛繊維製品の意匠性を向上させるため、異なる色で染色した任意の数の色相のパイルを任意の比率で混ぜることにより、カラーミックスにしてもよい。あるいは、ポリエチレンテレフタレート繊維やカチオン染料可染ポリエチレンテレフタレート繊維と併用することにより、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維との染色性差を利用した後染めによる異色効果を得ることもできる。また、パイルの長さを変えることにより、シャンブレー調の意匠効果を得ることもできる。さらに、導電性繊維を併用して植毛することにより、制電性のある電気植毛繊維製品とすることもできる。
本発明の電気植毛用の繊維は、集合している短繊維の分離性、飛昇性を良好にするための電着処理を施すことが好ましい。電着処理に使用される薬品としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類、アニオン活性剤、ノニオン活性剤、両性活性剤等の界面活性剤、コロイダルシリカ等の有機ケイ素を、適当に配合して用いればよい。
パイル用繊維を基布に接着するための樹脂は、電気植毛繊維製品の用途によって適宜選定でき、例えば、ポリ酢酸ビニル、合成ゴムラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステルエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル等から任意に選定できる。又これらの樹脂をブレンドして用いることもできる。接着剤の塗布量は、接着剤の濃度、粘度により、必要な電気植毛繊維製品の性能を満足させる程度の範囲で塗布される。例えば、150〜500g/mの範囲で任意に選択でき、好ましくは200〜450g/m、より好ましくは200〜400g/mである。
接着樹脂の基材への塗布方法は特に制限はなく、ドクターナイフ・コーターやロール・コーター、ロール・スクリーン・コーターといった方法を採用すればよい。柄植毛を行う時には、ロール・スクリーン・コーターを用いて、所望の柄形状に接着樹脂を塗布し、電気植毛を行えばよい。
電気植毛用の基材には制限はなく、不織布、織物、編物等の布帛や、樹脂フィルム、樹脂成型品、金属等を使用できる。素材も特に制限無く、布帛ではポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維、アクリル繊維等、いずれであってもよい。カーペット等の敷物用途で使用される場合には、基布の寸法安定化のためガラス繊維スクリムを貼ってもよい。さらに、クッション性を用途、場所に適するよう、発泡素材(塩ビ等)をコーティング、またはラミネートしてもよく、カーペットの施工が便利な、一定寸法にカットしたタイルカーペットとしてもよい。
パイルの長さは、製品用途や使用するパイルの太さに応じて任意の長さを選定でき、通常0.5〜20mm、好ましくは1〜15mm、より好ましくは1〜10mm、さらに好ましくは1〜5mmである。
植毛する密度は、通常50〜1000g/m2、好ましくは60〜600g/m、より好ましくは80〜300g/mである。目付けが50g/m未満になると、電気植毛繊維製品として要求される美観やクッション性が不足する場合がある。目付けが1000g/mを超えると、硬い風合いとなったり、植毛時にパイルが連結して極板に接触し、いわゆるスパークを発生して電気植毛に困難をきたしたりする場合がある。
電気植毛加工は、相対する電極間に高電圧の静電界を発生させ、一方の電極側に接着樹脂を塗布した基剤を配置させ、電着処理されたパイルに電荷を与えて反対側の電極から基剤に向かってパイルを飛翔させて植毛するものである。
パイルを飛ばす方法としては、(イ)ダウンメソッド(パイルを上方より下方へ飛ばして植毛する方法)、(ロ)アップメソッド(パイルを下方より上方へ飛ばして植毛する方法)等があり、ダウンメソッドが多く採用されているが、限定されるものではない。
電極間隔は、パイルの長さによって変更される。パイル長が短い場合は電極間隔を小さく、パイル長が長い場合は電極間隔を大きくする。例えば、パイル長が0.5mmの場合、電極間は50mm以上とし、パイル長が3mmの場合、電極間隔は200mm以上が必要である。パイルの長さに対して電極間が十分大きければパイルの飛ぶ距離が大きくなり、接着剤層へより深く投錨することができ、パイルの接着強度を向上できる。電極にかける電圧は、電極間隔、パイル長、植毛密度、電着処理条件等により、10〜100KV程度の範囲内で任意に設定する。また、パイルがより強力に接着剤層に投錨されるよう、植毛時に基材を上下運動させてもよい。
植毛後は、パイルを完全に接着するため、接着樹脂の乾燥、架橋反応を行うための熱処理を行う。熱処理は、接着剤の種類、及び架橋剤の種類に適した温度や時間で行えばよい。熱処理の後、接着されていない余剰パイルを除去するため、エアーサクションやブラッシング、あるいは染色機等を用いて水洗処理を行うのが好ましい。
本発明の電気植毛繊維製品は、このようなポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むパイルを電気植毛された立毛品に昇華転写捺染した電気植毛繊維製品である。昇華転写捺染条件としては、従来のポリエチレンテレフタレート系繊維の昇華転写捺染条件が利用できるが、常圧よりも減圧雰囲気下での昇華転写捺染の方が本発明の目的達成上好ましい。
昇華転写捺染は、連続式でもバッチ式でもよい。例えば、分散染料としてはアゾ系、アントラキノン系、ニトロジフェニルアミン系等、染色時の圧力(真空度)は、通常266〜4000Pa、温度は、通常150〜220℃、好ましくは150〜200℃、時間は、通常10〜120秒であり、織物密度等の布帛仕様に応じて適宜選定すればよい。昇華転写捺染時に熱収縮が発生して捺染柄のズレが出ないように、電気植毛繊維製品を予め熱セットしておくことが好ましい。熱セツト条件としては、昇華転写捺染条件(温度及び時間)を参考にして適宜選定すればよい。
本発明の電気植毛繊維製品は、カーシート、椅子張り、タイルカーペット、壁装材等に用いられるが、これらに限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
なお、実施例中の電気植毛繊維製品の評価は以下の方法で行った。
(1)図柄の鮮明性
繊維の染色加工技術者10名により、下記基準により視覚判定し、その合計点数で評価した。
3点;転写紙の図柄対比遜色なく、鮮明な図柄である。
2点;転写紙の図柄対比やや鮮明性に欠ける。
1点;転写紙の図柄対比大きく鮮明性に欠ける。
(2)色の深み感
繊維の染色加工技術者10名により、下記基準により視覚判定し、その合計点数で評価した。
3点;転写紙の図柄対比遜色なく、色に深みがある。
2点;転写紙の図柄対比やや色の深みに欠ける。
1点;転写紙の図柄対比大きく色の深みに欠ける。
(3)L値
色の深みを示す尺度として、L値を用いた。この値は布帛表面の色の深み感を分光測色計(Kollmorgen社製形式マクベスMS−2020)を使用して、Lab表色系におけるL値を測定した。L値は低い方が色の深み感が大きいことを示す。
(4)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
(5)10%伸長時の弾性回復率
繊維をチャック間距離10cmで引っ張り試験機に取り付け、伸長率10%まで引っ張り速度20cm/minで伸長し1分間放置した。その後、再び同じ速度で収縮させ、応力−歪み曲線を描く。収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(A)とする。弾性回復率は以下の式に従って求めた。
10%伸長時の弾性回復率=(10−A)/10×100(%)
[参考例1]
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造例
(製造例1)
固有粘度[η]0.9のポリトリメチレンテレフタレートを、紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で紡糸して未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、220dtex/10f(22dtex/f)の延伸糸を得た。
延伸糸の強伸度、弾性率及び10%伸長時の弾性回復率は、各々、3.3cN/dtex、46%、20cN/dtex及び98%であった。
(製造例2)
固有粘度[η]0.9のポリトリメチレンテレフタレートを、紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で紡糸して未延伸糸を製造した。次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、93dtex/72f(1.3dtex/f)の延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率及び10%伸長時の弾性回復率は、各々、3.3cN/dtex、46%、20cN/dtex及び98%であった。
[実施例1]
上記(製造例1)で得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を束ねて100万dtexのトウとし、ギロチンカッターで2.5mmにカットした。次いで、袋にパイルを詰め、パッケージ染色機に装填したのち、通常の方法で精練した。引き続き、グレイの分散染料、分散剤と共に投入し、2℃/分の昇温条件で120℃迄昇温し40分染色後、通常の還元洗浄を施した。脱水乾燥後、パイルを袋から出し、攪拌機つきオープン釜で、ケイ酸ソーダ1.5%、コロイダルシリカ3%、PH4(酢酸にて)40℃の条件で20分間浸漬し、脱水乾燥して電着処理した。得られたパイルの分散性は良好であった。
ガラス繊維スクリムで寸法安定化した、目付け100g/mのポリエステル不織布に、アクリル酸エステルエマルジョン60%及びポリウレタン樹脂40%の混合接着樹脂、エポキシ系ウレタン架橋剤、アクリル用増粘剤からなる粘度18000cpsに調整した接着樹脂を均一に塗布し、電圧25kV、電極間距離10cmの条件で電着処理したパイルをダウン法で飛翔させて電気植毛加工した。150℃で乾燥処理した後、余剰パイルを除去し、発泡塩ビ樹脂をラミネート接着してカーペットを製造した。得られた電気植毛カーペットは、表面平滑性に優れ、高級感のあるものであった。
この電気植毛カーペットに、上質紙を支持体とし昇華性分散染料を着色材とする転写紙を重ね、連続式減圧転写機で、2000〜2666Pa(15〜20Torr)、185℃の条件で50秒間加熱加圧して昇華転写捺染した。
図柄の鮮明性、色の深みを評価した結果、極めて鮮明(28点)、色に深みがある(27点)結果であった。またL値は18であった。
[比較例1]
ポリアミド繊維(ナイロン66)の22dtex/fをパイルとして用い、パイル染色条件を、染料をポリアミド繊維用のグレイの酸性染料に変え、染色温度を100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で電気植毛カーペットを製造し、同様に昇華転写捺染を行った。
このカーペットの図柄の鮮明性を評価した結果は18点、色の深みは色相もややくすみ気味で20点であり、L値は25であった。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート繊維の22dtex/fをパイルとして用い、パイル染色温度を130℃とした以外は、実施例1と同様の方法で電気植毛カーペットを製造した。
このカーペットの図柄の鮮明性を評価した結果は21点、色の深みは色相もややくすみ気味で20点であり、L値は23であった。
[実施例2]
上記(製造例2)で得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を束ねて100万デシテックスのトウとし、ギロチンカッターで0.6mmにカットした。次いで、袋にパイルを詰め、パッケージ染色機に装填したのち、通常の方法で精練した。引き続き、グレイの分散染料、分散剤と共に投入し、2℃/分の昇温条件で120℃迄昇温し40分染色後、通常の還元洗浄を施した。脱水乾燥後、パイルを袋から出し、攪拌機つきオープン釜で、ケイ酸ソーダ1.5%、コロイダルシリカ3%、PH4(酢酸にて)40℃の条件で20分間浸漬し、脱水乾燥して電着処理した。得られたパイル分散性は良好であった。
ポリエチレンテレフタレート短繊維65%、綿35%、繊度200dtexの紡績糸からなる椅子張り地用織物に、アクリル酸エステルエマルジョン60%及びポリウレタン樹脂40%の混合接着樹脂、エポキシ系ウレタン架橋剤、アクリル用増粘剤からなる粘度18000cpsに調整した接着樹脂を均一に塗布し、電着処理したパイルを電圧25kV、電極間距離10cmの条件でダウン法で飛翔させて電気植毛加工し、150℃で乾燥処理した後、ブラッシング法にて余剰パイルを除去して電気植毛椅子張り地を得た。
この電気植毛椅子張り地に、上質紙を支持体とし昇華性分散染料を着色材とする転写紙を重ね、連続式減圧転写機で、2000〜2666Pa(15〜20Torr)、185℃の条件で50秒間加熱加圧して昇華転写捺染した。
得られた電気植毛椅子張り地は、図柄の鮮明性、色の深みを評価した結果、極めて鮮明(28点)、色に深みがあり(28点)、またL値は19であった。更にパイルの直毛性が良好で、しなやかな風合のものであった。
[比較例3]
ポリアミド繊維(ナイロン66)の1.3dtex/fをパイルとして用い、パイル染色条件を、染料をポリアミド繊維用のグレイの酸性染料に変え、染色温度を100℃とした以外は、実施例2と同様の方法で電気植毛椅子張り地を製造し、同様に昇華転写捺染を行った。
この椅子張り地の図柄の鮮明性を評価した結果は19点、色の深みは色相もややくすみ気味で21点であり、L値は25であった。
更に実施例2に比較し、パイル直毛性が低く、タッチも不良であった。
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレート繊維の1.3dtex/fをパイルとして用い、パイル染色温度を130℃とした以外は、実施例2と同様の方法で椅子張り地を製造した。
この椅子張り地の図柄の鮮明性を評価した結果は21点、色の深みは色相もややくすみ気味で21点であり、L値は23であった。
[比較例5]
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間5mmのダブルラッシェル機を用い、中間に位置する二枚の筬(L3、L4)から、連結糸として(製造例2)の93dtex/72fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントを供給した。編機前面に位置する二枚の筬(L1、L2)から表編地用糸として、同じ93dtex/72fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸を供給し、編機背面に位置する二枚の筬(L5、L6)から裏編地用糸として、同じ93dtex/72fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸をいずれもガイドに1イン1アウトの配列で供給した。打ち込み26コース/インチで立体編物を製編し、機上卸し後、センターカットし、続いて70℃で精練後、グレイの分散染料にて120℃で40分染色後、通常の還元洗浄を施し、立毛編地を得た。
この立毛編地に、実施例2と同様に上質紙を支持体とし昇華性分散染料を着色材とする転写紙を重ね、連続式減圧転写機で、2000〜2666Pa(15〜20Torr)、185℃の条件で50秒間加熱加圧して昇華転写捺染した。
得られた立毛編地は、実施例2と比較すると立毛繊維の直線性や編地表面の平滑性に劣り、図柄の鮮明性が23点、色の深みは22点であり、L値は24であった。
本発明の多重電気植毛品は、椅子張り地、椅子カバー、家具、車両内装材(例えばカーシート、ピラー、ダッシュボード、ドアの内張り、天井材等)、カーペット、バスマット、台所用マット、宝石箱、玩具、置物類、履物類、業務用および家庭用暖房機器等の熱源周りや温風吹き出し口部(例えば電車やバス等の車両用暖房機、コタツ、ストーブ、ファンヒーター、パネルヒーター等)等に好適に利用可能である。

Claims (1)

  1. 繊維が電気植毛された立毛品に昇華転写捺染された電気植毛繊維製品であって、該繊維の少なくとも一部がポリトリメチレンテレフタレート系繊維であることを特徴とする電気植毛繊維製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2781647A4 (en) * 2011-11-14 2015-08-26 Junglimtextile METHOD FOR STAINING TEXTILES WITH A METALLIC YARN AND A POLYESTER YARN, AND TEXTILES MANUFACTURED THEREFROM
KR101862052B1 (ko) * 2016-08-17 2018-05-29 (주) 에코피엔텍 폴리에스터가 식모된 후로킹 원단의 승화전사 날염방법
JP2020522423A (ja) * 2017-06-01 2020-07-30 オートニアム マネジメント アクチエンゲゼルシャフトAutoneum Management AG 審美的フロアカバー材機構

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