JP2007106760A - 造血幹細胞増殖剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 末梢血中の造血幹細胞を誘導・増殖し得る造血幹細胞増殖剤を提供する。
【解決手段】 本発明の造血幹細胞増殖剤は、胎盤構成細胞粉砕物を有効成分とするものである。本発明の造血幹細胞増殖剤は、造血幹細胞を誘導・増殖し、末梢血中の造血幹細胞量を増加させることができる。末梢血中の造血幹細胞が確実に増加するため、造血幹細胞の減少が原因で起こる、或いは起こると考えられる様々な疾患(例えば、白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血、アルツハイマー病、パーキンソン病、拡張型心筋症、心筋梗塞等)の予防及び治療が可能になり、また副作用も極めて低いという特長を有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、造血幹細胞増殖剤に関する。より詳細には、末梢血中の造血幹細胞を誘導し増殖させ得る造血幹細胞増殖剤及び当該製剤に使用される胎盤構成細胞粉砕物の製造方法に関する。
造血幹細胞は骨髄で造られる多分化能を有した未熟な細胞であり、既に周知のように、白血球、赤血球、血小板に分化する細胞である。間葉系幹細胞とともに骨髄幹細胞と呼ばれ、現在では様々な臓器や組織の細胞レベルでの治療材料として注目を集めている。
現在のところ造血幹細胞は「細胞表面マーカー/CD-34陽性細胞」と同義と考えられている。造血幹細胞を同定するうえでは蛍光抗体染色法とフローサイトメトリーを併用して、このCD-34陽性細胞を末梢血中から検索している。このCD-34陽性細胞はGVHD (graft-versus-host disease)を起こすことのない安全な移植材料として良く知られている。造血幹細胞は通常、ヒト骨髄中に全単核球の1〜3%程度しか存在せず、末梢血中ではわずか0.1〜0.5%のレベルでしか存在していない。また臍帯血中であってさえ造血幹細胞の存在比率は成人のそれとあまり変わることなく0.4〜0.5%の範囲である。通常では加齢や慢性退行性、慢性消耗性疾患により末梢血中の造血幹細胞は減少する傾向にある。健常な成人における末梢血中の造血幹細胞比率は全単核球の0.4%±0.05(1SD)であり、揺らぎは非常に少ない。一方、本願発明者の研究では、様々な疾患群の末梢血中の平均造血幹細胞比率は0.2%±0.15 (1SD)で、疾患の種類やその重篤度により多少の揺らぎが観察される。とくに中枢神経疾患や心筋疾患、卵巣機能不全による不妊症では末梢血中の造血幹細胞比率が極端に低く0.1%まで低下していた。
現在、白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍、再生不良性貧血、その他の乳癌などの固形腫瘍、酵素欠損などによる疾患の治療のため、上記の造血幹細胞を点滴し、輸注する造血幹細胞移植が行われている。輸注された造血幹細胞は、やがて骨髄中に入り込んで、種々の血球を産生する。
係る造血幹細胞移植に使用される造血幹細胞は、ドナーの骨髄から採取する方法、ドナーの末梢血幹細胞を採取する方法、保存臍帯血を利用する方法などにより得られている。
しかし、ドナーの骨髄から採取する方法では、ドナーを全身麻酔するなど侵襲が大きく、また骨髄液採取量も多量になるため、ドナーに大きな負担をかけることになる。
また、ドナーの末梢血幹細胞を採取する方法においては、全身麻酔の必要性はなく、また適量の造血幹細胞を採取できるという利点がある。しかし、末梢血中の造血幹細胞を増加させるために、顆粒球刺激因子(Granulocyte Colony Stimulating Factor, G-CSF)を投与する必要があり、当該G-CSFは顆粒球を増加させるため、発熱や全身倦怠感といった短期的な副作用に加え、予測が出来ない長期的な副作用の問題がある。
なお、保存臍帯血は補助的に利用されている程度である。
上記のように、造血幹細胞移植においては、治療に必要な大量の造血幹細胞を入手するために、ドナーに多大な負担をかけると共に多額の費用や多大な手間、時間がかかる。更に、移植による治療効果が一時的であるという問題もある。
最近、臨床的にはES細胞から造られた造血幹細胞を利用することも検討されているが、造血幹細胞を造るためにES細胞を使用することは倫理的に大きな問題を含み、社会的なコンセンサスを得る必要があるが、未だこのコンセンサスは世界的に得られる方向で進んではいない。
上記のように造血幹細胞移植には種々の問題点がある。造血幹細胞の移植を行うことなく、患者末梢血中の造血幹細胞を誘導、増殖させることができれば、上記造血幹細胞移植に伴う様々な問題点は完全に克服される。
更に、最近、造血幹細胞は文字通り血液中の様々な細胞に分化増殖するだけではなく、造血幹細胞は神経細胞や心筋細胞、肝細胞と細胞融合を起こし、これらの細胞の増殖を起こすことが証明された(非特許文献1)。このように末梢血中を流れる造血幹細胞は、通常知られている機能以外に、細胞融合というプロセスを介して様々な組織や臓器を細胞レベルで修復する機能を有していることが理解され始めている。従って、末梢血中の造血幹細胞を増加させることは、結果的に神経細胞や心筋細胞、肝細胞などの増殖を図ることにつながる。勿論、造血幹細胞は全ての血球の幹細胞であるため、免疫システムの要である白血球を初めとして、様々な血球細胞の機能の回復を図ることができる。
本発明者は、係る点を考慮して、副作用を惹起することなく、末梢血中の造血幹細胞を誘導・増殖させることを種々検討したところ、胎盤及び/又は胎盤付属物から単離、精製した胎盤構成細胞粉砕物(即ち、胎盤の細胞膜、細胞内諸器官及び/又は細胞核の粉砕物)の表面抗原及び/又は内部抗原が有するワクチン様作用により患者自身の造血幹細胞を自家誘導、増殖させ得ることを見出した。更に、有効量の胎盤構成細胞粉砕物を投与することにより、造血幹細胞の減少が原因で起こる、或いは起こると考えられる疾患を治療し得ることを見出した。
本発明は係る知見に基づくもので、患者自身の造血幹細胞を自家誘導、増殖させ、末梢血中の造血幹細胞を増加させることのできる造血幹細胞増殖剤及び当該製剤を調製する際に使用される胎盤構成細胞粉砕物の製造方法を提供する。
Nature, Vol.425, 30 Oct. 2003, p 968-972
上記の課題を解決するためになされた本発明は、胎盤構成細胞粉砕物を有効成分として含有する造血幹細胞増殖剤である。当該胎盤構成細胞粉砕物は、胎盤細胞膜の粉砕物であることが好ましく、また粉砕物の粒子径としては1〜200μmが好ましく、更に剤形としては凍結乾燥製剤が好ましい。
また、本発明の製造方法は、上記製剤に使用される胎盤構成細胞粉砕物の製造方法であって、下記の工程からなる。
(1)胎盤及び/又は胎盤付属物を洗浄し、脱血する工程;
(2)水性媒体中で粉砕し、次いで遠心分離して固形成分を採取する工程;及び
(3)固形成分を精製水で洗浄する工程。
後記実施例に示されるように、本発明の造血幹細胞増殖剤は造血幹細胞を誘導・増殖し、末梢血中の造血幹細胞量を増加させることができ、末梢血中の造血幹細胞が確実に増殖するため、造血幹細胞の減少が原因で起こる様々な疾患の治療が可能になる。また、造血幹細胞移植に比べて、本発明の方が効果・適用範囲が広いという特長を有する。更に、様々な外科手術前後に造血幹細胞誘導治療を施して末梢血中の造血幹細胞を誘導する準備をしておくと、外科手術侵襲による組織、臓器障害を極小量にコントロールすることができる。なお、治療経験からすると造血幹細胞だけではなく間葉系幹細胞の増殖を強く誘導していることがはっきりと理解できる。しかし、末梢血中の間葉系幹細胞の同定、及び定量方法については、皆が認める方法論が確立されておらず、現時点でこれを直接的に証明することはできない。しかし、心筋疾患など間葉系幹細胞が関わっていると考えられる疾患が完治することから、ここで説明する造血幹細胞増殖剤は、同時に間葉系幹細胞増殖剤でもあると考えられる。そのため、これらの点を勘案すると、本発明は骨髄幹細胞増殖剤と考えることができる。
また、本発明の造血幹細胞増殖剤を生体に注入(好ましくは皮下注射)するだけで効果が得られ、極めて簡便であり、また副作用も極めて低いという特長を有する。
更に、当然のことながら造血幹細胞は血球細胞の母体である。一方、ガンや肉腫のような悪性疾患では免疫システムの機能低下が起こっていることが頻度高く観察され、とくにリンパ球の機能低下はよく観察される。本発明の造血幹細胞増殖剤投与による造血幹細胞誘導法によりリンパ球機能も回復していることが観察されており、このことから本発明の造血幹細胞増殖剤は末梢血中の造血幹細胞を誘導、増殖させるに止まらず、骨髄機能自体の機能回復を起こすことが出来ると考えられる。
また、本発明の製造方法によれば、上記製剤で使用される胎盤構成細胞粉砕物を簡便に得ることができる。
本発明の造血幹細胞増殖剤は胎盤構成細胞粉砕物を有効成分として含有する。本発明において使用される胎盤には、胎盤本体だけでなく臍帯、羊膜、卵膜など胎盤付属物はすべて包含される(以下、胎盤及びその付属物を合わせて胎盤材料という)。
上記の胎盤材料としては、ヒト胎盤材料を用いるのが好適であるが、他の哺乳動物(例えば、ブタ、ウシ、ウサギ、ヒツジ等)の胎盤材料を使用することもできる。
本発明の造血幹細胞増殖剤に使用される胎盤構成細胞粉砕物は種々の方法により調製することができるが、好ましくは本発明の製造方法が挙げられる。
以下、本発明の胎盤構成細胞粉砕物の製造方法について詳細に説明する。
まず、使用される胎盤材料は正常分娩されたものを使用するのが好ましく、当然ながらHIV/HBV/HCVなどのウイルスを検査し、ウイルス感染しているものは除外する。
上記の胎盤材料は、まず、流水中で洗浄し、脱血した後、用手的に2〜3cm角に細断し水道水を用いて更に洗浄・脱血する。
次いで、細断した胎盤材料は蒸留水などの精製水中で粉砕する。粉砕は慣用の方法にて行うことができ、攪拌機を用いたミキシングなどが挙げられる。ミキシングの回転数は特に限定されないが、8000rpm程度にて行われる。精製水の使用量も適宜設定できるが、通常、細断した胎盤材料1に対して精製水1(重量比)程度とされる。ミキシング終了後、遠心分離(3000rpm、30分間程度)により分離する。分離した胎盤材料は、再度、同様にミキシング・遠心分離し、目視的に脱血が完了し、胎盤材料の粉砕が均一化する程度まで、この操作を繰り返す。
脱血が完了し、均一的に粉砕された胎盤材料は、必要に応じて界面活性剤を加え、水性媒体中でホモジナイザー等を用いた粉砕工程に付す。この界面活性剤を用いた処理することにより、胎盤材料が個々の細胞レベルに分散し、細胞構造自体も破壊されるため細胞膜などの採取が容易になる。当該界面活性剤を用いた粉砕処理は、上記の胎盤材料に、精製水及び適当な界面活性剤(例えば、甘草抽出液、グリチルリチン酸ナトリウム、イオン性又は非イオン性界面活性剤等)を適量加え、ミキシングする(8000rpm、3分間程度)。ミキシングを終了後、遠心分離(3300rpm、30分間程度)し、固形成分を採取する。得られた固形成分を次いで洗浄工程に付す。
なお、胎盤細胞膜粉砕物を主とする胎盤構成細胞粉砕物を得る場合には、以下の遠心分離処理を行う。即ち、上記で分離した固形成分を、比重を1以上とした水性媒体に加え、遠心分離に付し、細胞膜成分を分離する。比重を高めた水性媒体を使用することにより、比重の小さな細胞膜成分は液面表層に浮遊し、比較的比重の大きなその他の胎盤を構成する細胞由来成分と分離することができる。具体的には、遠心分離後、液面表層に浮遊する層の固形成分を採取する。比重を高める試薬としては、この分野で慣用のものを使用することができ、例えばグリセリン、低分子ポリエチレングリコールなどが例示できる。より具体的には、比重を1以上とした水性媒体としては、グリセリンを5〜50%(重量%、以下同様)、好ましくは10〜20%含有する精製水が例示できる。上記のミキシング操作と遠心分離操作は、液面表層に浮遊層が生じなくなるまで繰り返す。この操作により、胎盤細胞膜粉砕物を得ることができる。
かくして、遠心分離処理により採取された固形成分は、精製水を用いたミキシングと遠心分離により洗浄する。次いで、必要に応じて、界面活性剤処理を行う。この界面活性剤による処理を行うことにより、胎盤構成細胞粉砕物の免疫応答性を高め、その効果を高めることができる。係る界面活性剤処理は、製剤化工程でおこなってもよい。
当該界面活性剤処理の操作は、上記で洗浄された固形成分に、精製水及び適当な界面活性剤(例えば、甘草抽出液、グリチルリチン酸ナトリウム等)を適量加え、ミキシングし(8000rpm、3分間程度)、ミキシングを終了後、遠心分離(3300rpm、30分間程度)し、固形成分を採取することにより行われる。
かくして、必要に応じて界面活性剤処理された胎盤構成細胞粉砕物を得ることができる。得られた胎盤構成細胞粉砕物は必要に応じて乾燥することにより、胎盤構成細胞粉砕物乾燥物を得ることができる。上記の乾燥方法としては、変性を防止するために、温和な乾燥方法が好ましく、凍結乾燥法が最適である。
上記の方法で得られた胎盤構成細胞粉砕物の製剤化は常法に準じて行うことができる。より具体的に一例を示すと、得られた胎盤構成細胞粉砕物を適当な粉砕器を用いて微粉末化する。出来上がった微粉末は直径200μm以下の孔を持った篩にかける。この処理により微粉末は均一性が高く、粒径の極めて小さなものができる。これに精製水を加え、均一に混和したものをバイアルに分注した後、このバイアルを凍結乾燥に付し、凍結乾燥終了後、密栓することにより、乳白色粉末の胎盤構成細胞粉砕物を含有する製剤が得られる。なお、1バイアル当りの固形成分含量は特に限定されないが、通常50〜100mg程度に調整される。
なお、前記の界面活性剤処理はバイアル瓶への分注処理直前に行われてもよい。
また、上記の微粉末化は、ボールミルなどの慣用の粉砕手段を使用することができ、粒子径としては、1〜200μm程度、好ましくは5〜50μm程度に調整する。微粉末化することにより効果を高めることができる。
上記で調製された製剤は滅菌するのが好ましく、滅菌は常法に準じて行うことができ、例えば、内容物の変性を防止するために、電子線やガンマー線を用いた非加熱滅菌が好ましい。
本発明の造血幹細胞増殖剤は、製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤などを含んでいてもよい。製剤形態としては、凍結保存、又は凍結乾燥などにより水分を除去して保存することができる。凍結乾燥製剤は、用時に注射用精製水、局所麻酔剤1〜2%のリドカイン溶液などを加え、再分散させる。
本発明の造血幹細胞増殖剤の効果的な投与量及び投与スケジュールは経験的に決定することができ、当該決定は当業者にとって自明である。製剤の投与経路は適宜設定することができ、例えば、皮下脂肪組織内、筋肉内などに投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、0.5mg〜10mg/kg・体重の範囲から選択され、好ましい範囲は1mg〜5mg/kg・体重であり、より好ましくは2mg/kg・体重であり、一ヶ月に1回又は数回(2又は3回)で投与される。投与部位としては、臀部など脂肪組織の豊富な部位が好ましい。
本発明の増殖剤は、当業者にとって周知の慣用の徐放性製剤として投与することもできる。徐放性製剤の例としては、微小球体(例えば、ナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ビーズ、リポソーム、複エマルジョンなど)などを挙げることができる。
本発明の造血幹細胞増殖剤は、造血幹細胞の減少が原因で起こる、或いは起こると考えられる様々な疾患の予防・治療に利用される。例えば、白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍、再生不良性貧血、その他の乳癌などの固形腫瘍、酵素欠損などによる疾患の予防・治療に利用される他、中枢神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病等)、心臓疾患(例えば、拡張型心筋症、心筋梗塞等)の予防・治療に利用される。
興味深いことに、本発明の増殖剤の投与によって起こる末梢血中の造血幹細胞の誘導、増殖の応答反応は、若年の健常人によりも、高齢者や疾病を持った患者の方に顕著に認められる。これは若年健常人では骨髄が正常に機能しているおり、生体に対して造血幹細胞が十分供給されているのに対し、高齢者や疾病を持った患者において、末梢血中の造血幹細胞が何らかの原因で低下している場合には強い応答反応が起こり、末梢血中の造血幹細胞のサージ(surge)が起こるためと推察される。
本発明の増殖剤投与後の一定期間中、造血幹細胞のサージ(surge)が起こった後は徐々に正常値に戻る。効果持続期間としては、個人差はあるが、一回の治療で2週間〜2ヶ月程度の期間効果は持続し得る。高齢者ほど弱い効果が長期間にわたり持続し、若年者では強い効果が短期間に発揮される傾向が強い。これは胎盤構成細胞粉砕物のヒトの免疫システムに対するワクチン様作用を介して造血幹細胞を誘導、増殖させるためだと考えられる。つまり免疫活性の高い若年者では、短時間の強い応答反応が起こり易いものと推察される。
なお、本発明の造血幹細胞増殖剤は、ヒト以外の哺乳動物を対象とする動物薬としても利用できる。この場合、各種哺乳動物の胎盤材料を採取し、前記と同様に処理して胎盤構成細胞粉砕物を取得し、それを製剤化し、哺乳動物に投与すればよい。対象となる哺乳動物としては、家畜類(例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ等)が挙げられ、また疾患としても前記の疾患を挙げることができる。
以下、実施例及び試験例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は係る例に限定されるものではない。
実施例1
ヒト胎盤材料を流水中で洗浄し、脱血した。次いで、通常のナイフで当該胎盤材料を用手的に2〜3cm角に細断し水道水を用いて更に洗浄・脱血した。細断した胎盤材料500g(通常の大きさの胎盤1胎分)に蒸留水500mlの割合で加え3分間ミキシングした。ミキシングの回転数は8000rpm程度とした。ミキシングされた胎盤材料と蒸留水の混合物を遠心分離した(3000rpm、30分間)。このミキシングと遠心分離を5回繰り返した。即ち、目視的に、脱血が完了し、胎盤材料の粉砕が均一化する程度まで行った。
脱血が完了し、均一的に粉砕された胎盤材料に、甘草抽出物を界面活性剤として加え、再度ホモジネートした(8000rpm、3分間)。ホモジネートした胎盤材料を遠心分離した(3300rpm、30分間)。
上記で分離した胎盤材料由来成分に、10〜20%グリセリン溶液を加えた後、ミキシングし、遠心分離した(3300rpm、20分間)。この操作により、比重の小さな細胞膜と、比重の大きなその他の細胞内成分と分離することができる。具体的には、遠心分離後、液面表層に浮遊する層の固形成分をすくいとる。このミキシング操作と遠心分離操作は、液面表層に浮遊層が生じなくなるまで繰り返した。最終的に沈殿した層は廃棄した。この操作により、胎盤細胞膜粉砕物が主体である胎盤構成細胞粉砕物が得られる。
上記で採取された固形成分は、蒸留水を用いたミキシングと遠心分離により洗浄してグリセリンを除去した。次いで、蒸留水と適量の甘草抽出物を界面活性剤として添加し、ミキシングした後、5mlのガラス製バイアルに充填した。1バイアル当り、固形成分含量が100mg程度となるように調整した。
上記のバイアルを凍結乾燥に付し、乳白色の胎盤細胞膜粉砕物粉末を得た。当該バイアルをアルミシールで密封した。密封後、電子線滅菌(照射線量25kG)した。
実施例2
ヒト胎盤材料を流水中で洗浄し、脱血した。次いで、通常のナイフで当該胎盤材料を用手的に2〜3cm角に細断し水道水を用いて更に洗浄・脱血した。細断した胎盤材料500g(通常の大きさの胎盤1胎分)に蒸留水500mlの割合で加え3分間ミキシングした。ミキシングの回転数は8000rpm程度とした。ミキシングされた胎盤材料と蒸留水の混合物を遠心分離した(3000rpm、30分間)。このミキシングと遠心分離を5回繰り返した。即ち、目視的に、脱血が完了し、胎盤材料の粉砕が均一化する程度まで行った。
脱血が完了し、均一的に粉砕された胎盤材料に、甘草抽出物を界面活性剤として加え、再度ホモジネートした(8000rpm、3分間)。ホモジネートした胎盤材料を、遠心分離(3300rpm、30分間)し、固形成分を採取した。
上記で採取された固形成分は、蒸留水を用いたミキシングと遠心分離により洗浄し、次いで、採取された固形成分は凍結乾燥により乾燥した。乾燥した固形成分は、粉砕機で粉砕して、粒子径を200μm以下にした後、蒸留水と適量の甘草抽出物を界面活性剤として添加し、ミキシングした後、5mlのガラス製バイアルに充填した。1バイアル当り、固形成分含量が100mg程度となるように調整した。
上記のバイアルを凍結乾燥に付し、乳白色の胎盤構成細胞粉砕物粉末を得た。当該バイアルをアルミシールで密封した。密封後、電子線滅菌(照射線量25kG)した。
試験例1
患者6名の了解を得て、実施例1で調製した胎盤構成細胞粉砕物製剤を、局所麻酔剤1%のリドカイン溶液で再分散させた後、各患者の臀部に皮下注射した(投与量:100mg/患者)。
投与後、経時的に採血し、末梢血中の単核球細胞において造血幹細胞が占める割合(%)を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示されるように、患者番号1〜4においては、投与14日後には、造血幹細胞の割合は1.2〜1.6%に上昇し、その後徐々に減少し、造血幹細胞が誘導されていることが判明した。
一方、患者番号5及び6においては、急激な造血幹細胞の増加は認められなかったが、経時的に造血幹細胞量が増加していく傾向が認められた。
患者番号1〜4と患者番号5〜6との挙動の相違は、前者においては、病態に応じて、患者の体内が造血幹細胞を要求していた結果、造血幹細胞の誘導と増殖が顕著に発現されたものと推察される。
また、実施例2で調製した製剤を投与しても、同様な結果が認められた。
Figure 2007106760

Claims (5)

  1. 胎盤構成細胞粉砕物を有効成分として含有する造血幹細胞増殖剤。
  2. 胎盤構成細胞粉砕物が、胎盤細胞膜の粉砕物である請求項1記載の造血幹細胞増殖剤。
  3. 粉砕物の粒子径が1〜200μmである請求項1又は2記載の造血幹細胞増殖剤。
  4. 剤形が凍結乾燥製剤である請求項1〜3のいずれかに記載の造血幹細胞増殖剤。
  5. 下記の工程からなる胎盤構成細胞粉砕物の製造方法。
    (1)胎盤及び/又は胎盤付属物を洗浄し、脱血する工程;
    (2)水性媒体中で粉砕し、次いで遠心分離して固形成分を採取する工程;及び
    (3)固形成分を精製水で洗浄する工程。
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