JP2007096495A - バックロードホーンエンクロージャ - Google Patents

バックロードホーンエンクロージャ Download PDF

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Abstract

【課題】 低音域の出力音圧レベルを高め、質感を高める。
【解決手段】 エンクロージャ本体1内にスピーカ3を嵌めこむ音室4に連通してスピーカ3に発した音を開口部6に導く音道5を有している。音道5は、スロート10を含むコーン部分7とホーン部分8とからなり、仕切り9によってジグザグ状に上下数段に折り返されて開口部6に通じている。スロート10は音室5の直後のくびれの部分であり、コーン部分7は、スロート10の直後から口径が漸増して最終段の折返し部分に形成される内径曲率変化点11で口径が急激に変化する位置までの部分であり、ホーン部分8は、内径曲率変化点11から、コーン部分7の口径の漸増割合に比べて相対的に口径が急激に拡張して開口部6に通じる部分である。
【選択図】図2

Description

本発明は、バックロードホーンエンクロージャに関する。
スピーカの中低音領域を拡大する技術として、従来よりバックロードホーン型のキャビネットが知られている。バックロードホーンの基本原理は、図5に示すように音室31と、スロート32と、開口部33に向けて内径を漸増させた音道(音響管)34とから構成されたものである。
バックロードホーンエンクロージャ設計の基本ポイントは、1.音室(空気室)の内容積の大きさ、2.スロートの断面積の設定、3.音道の広がり率の設定、4.音道の全長の設定が重要な要件であるとされている。ところで、図5に示す基本構造では、実用性がないという理由から、図6に示すように音道32の部分を上下に折り畳んで直方体の箱の中に収めるために、直方体の木製キャビネット35内を2枚以上の平板状の仕切り板36を用い、キャビネット35内を迷路状に仕切ることによって、キャビネット35内に音室31と、音道34とを形成するのが木製キャビネットの一般的な構成であった。
しかし、キャビネット内を平板状の仕切り板で迷路状に仕切って内径が漸増する音道を形成したときには、仕切り板の平板同士あるいは平板とキャビネットの内壁との接合部に角が形成され、この角の部分に渦流が発生し、或いは開口部で反射が生じて、音質に悪影響を与えることを指摘し、特許文献1では、図7に示すような音道34の開口部33を形成する仕切板37に曲面に曲げ次加工した合板を用いて音質を向上させる案が記載されている。
ところで、木製のキャビネットには箱鳴りが生じ、また音道の形成は、直管の組合わせによらざるを得ないため、継ぎ目ごとに反射が出て音が濁ると云われている。さらに、特許文献2においては、低音域での放射能率の向上と共に音圧特性が平坦な音響管を有するスピーカシステムを提供するとして、スピーカユニットの背面に設けられた空室(音室)と、その音室から適当な割合で空間へ広がってゆく音道(音響管)と、スピーカユニット前面の空室に設けた位相反転器によって構成され、音道のスロート面積Stと開口面積SMの比SM/Stを0.6以下、スロート面積Stと振動板有効面積SDの比St/SDを0.6以上1以下に設定したスピーカシステムを提案している。
ところで、バックロードホーンスピーカはもともと、音の抜けがよく、生々しい音質が魅力のシステムであるといわれており、オーディオ愛好家からは、クリアな音質にしたい、自然な音質を再生したい、ホーンの性能をもっと高めたいという要請は強いが、メーカ側では、バックロードホーンスピーカの構造が複雑なため、量産には向かないという理由から積極的に製造されないという事情があると言われている。
一方、一般的に金管楽器においては、マウスピースに接続される円錐状のマウスパイプとベルを結ぶ管の形状には、円筒(ストレート)管と円錐(テーパ)管とがあり、前者は両端の内径は同一であるが、後者は唄口の側から朝顔の側に向かって内径が少しずつ広がっている。理論的には全てを円筒管で構成した楽器や、逆に円錐管で構成した楽器はあり得るが、実際の金管楽器は、マウスピースに近い方が円筒管か円筒管に近い円錐管、ベルに近い方が円錐管というように両者が組み合わされる。
というのも、音高を変更するためのスライドやバルブの部分は途中で太さを変えるわけにいかないという理由から全て円筒管で作られ、ベルの部分は円錐管だからである。管全体に対して円錐管の占める割合が多いほど音は柔らかく太くなり、円筒管の占める割合が多いほど輪郭のはっきりとした音になるといわれている。(例えば、コルネットは円錐管の割合が多く、トランペットは円筒管の割合が多い)。
この理論をバックロードホーンに当てはめると、特許文献2に記載されたスピーカシステムは、音響管のスロート面積Stと開口面積SMの比SM/Stを0.6以下の割合で漸増させることによって、ある程度は、柔らかく太い音が発生するであろうことは容易に推測できる。しかしながら、SM/Stを0.6以下の割合で漸増させるだけの一義的な条件設定では、バックロードホーンの設計条件であるスロートの断面積の設定、音道の広がり率の設定が限定され、音の柔らかさ、音の太さには自ずから限界があるのは避けられない。
公開実用昭52−20828号明細書 特許第2615453号公報 バックロードホーンスピーカーの解説ページhttp://www.e-bhsp.com/backroad.html カネコ木工HP http://www.e-bhsp.com/index.html
解決しようとする問題点は、バックロードホーンスピーカのキャビネットが木製では、箱鳴りが生じるほか、音道が直管の組み合わせによるときには、音が濁るという欠点があり、また、音道を一定の割合で内径を長さ方向に漸増させたのみの単純な円錐形によるときには、中低音域の音の質感の形成には限界があるという点である。
本発明は、中低音域の音の柔らかさ、音の太さを含めて中低音域の出力音圧レベルを高め、質感を高めるため、円形状断面の滑らかな音道を用い、しかも形状が互いに異なる2種類の曲線の組合わせによって音道を構成したことを最も主要な特徴とする。
本発明によるバックロードホーンエンクロージャは、音室から、音道の開口部に至るまでその内壁を滑らかな曲面にて構成するので、音に濁りのない中低域の音を放射することができる。特に内壁の曲面を特定の2種類の曲線の組合せによって形成することによって、中低音域の広い周波数帯にわたり、開口部から放射する音の音圧を高めることができる。
また、バックロードホーンエンクロージャの本体を合成樹脂にて一体成形することによって、音室から開口部までの音道の長さを自由に設定し、かつ設定された音道の全長を折返し形状に構成して一体成形することができ、従来の木製キャビネットのような箱鳴りが少なく、純度の高い良質の中低音を大きく放射でき、特に合成樹脂材にジシクロペンタジエンを主原料としたオレフィン系非発泡材を選定使用することによって、材質の有する高い剛性のため、音の抜けがよく、金管楽器とはまた違った生々しい音質の音響を発生させることができる。
中低音域の音を音の柔らかさ、音の太さを含めて中低音域の出力音圧レベルを高め、質感を高めるという目的を、成形材料に合成樹脂材料、特にジシクロペンタジエンを主原料としたオレフィン系非発泡材をもって、バックロードホーンエンクロージャ本体を一体成形することによって実現した。
図1は、本発明によるバックロードホーンエンクロージャ本体(以下エンクロージャ本体という)1の正面図、図2(a)は、図1のA−A線断面図、(b)は、図1のB−B線断面図である。エンクロージャ本体1は、図2(a)に示す対の半裁のセグメント2,2を向き合わせに組合わせて一体に結合したものである。対のセグメント2の組合わせによって、その内部にスピーカ3を嵌めこむ音室4と、円形断面の音道5とが形成されたものである。すなわち、本発明は、エンクロージャ本体1内に音室4と、音道5とを有するバックロードホーンエンクロージャであって、音室4は、スピーカ3を嵌め込む部分であり、音道5は、スピーカ3の発した音を開口部6に導く部分であり、円形断面で、互いに形状が異なる2種類の曲線によって内壁12が形成され、長さ方向の特定位置に内径曲率変化点11が設定され、音室4から後述する内径曲率変化点11までは口径を緩やかに漸増させ、内径曲率変化点11から開口部6に向けて口径を急激に拡張させたものである。なおこの実施例において、本体は、左右対称形のセグメントを組合わせることによって構成した例を示しているが、左右非対称形のセグメントを組み合わせたものであってもよい。
音道5は、コーン部分7とホーン部分8とからなり、音道5の内壁12から突出する仕切り9によってジグザグ状に上下数段、この例では上下4段に折り返されて開口部6に通じている。コーン部分7は、円形状からなるスロート10の直後から口径が漸増して最終段の折返し部分で口径が急激に変化する位置(内径曲率変化点11(図2(a)参照)までの部分であり、スロート10は音室4の直後に形成されたくびれの部分である。
ホーン部分8は、内径曲率変化点11から、コーン部分7の口径の漸増割合に比べて相対的に口径が急激に拡張して開口部6に通じる部分である。本発明において、エンクロージャ本体1は合成樹脂成形体であり、この実施例においては、ジシクロペンタジエンを主原料としたオレフィン系非発泡成形体である。ジシクロペンタジエンを主原料としたオレフィン系非発泡成形体は、A液とB液の2液、又はA液、B液、C液の3液を金型内に注入し、金型内で反応させて得られる成形品であり、高い剛性、断熱性に優れることから、今まで電子機器のハウジング、住宅基材、家具類に利用されてきた成形材料であるが、音響機器であるバックロードホーンエンクロージャに利用するのはじめての試みである。ジシクロペンタジエン樹脂の成形体によれば、その特性から金管楽器とは違った音響効果が期待される。
図1は、2分割した対のセグメント2,2の組合わせによってエンクロージャ本体1を組み立てているが、2分割に限らず、エンクロージャ本体1を任意に分割した数個のセグメントの組み立てによって構成することもできる。
勿論、エンクロージャ本体1の成形材料は、ジシクロペンタジエン樹脂に限らず、半硬質のポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂。ABS樹脂なども同様に使用できる。図3に本発明によるバックロードホーンエンクロージャにおけるコーン部分7と、ホーン部分8との構成について説明する。図3は、4段のジグザグ状に折り返されたコーン部分7と、ホーン部分8とを直線状に展開した状態でスロート10から開口部6に至るまでの音道5をスロート部中心から開口部に向けて水平にカットしたものとして示している。図3において、X軸はスロート部中心から開口部に向かう横軸方向の軸線、R軸はX軸上の任意の点で音道5をX軸方向に対して垂直にカットした際の断面のうち、X軸からエンクロージャ本体1の内壁12或いは仕切り9までの距離が最長となる縦軸方向の軸線である。
図3において、円形状からなるスロート10の中心の位置を基点0、開口部6の位置をXm、内径曲率変化点をXsとすると、Xs−0=L1がコーン部分7の長さであり、Xm−Xs=L2がホーン部分8の長さ、L1+L2=Lが音道5の長さである。また、基点0におけるコーン部分7の内径をRd、内径曲率変化点11(Xs)のコーン部分7(又はホーン部分8)の内径をRs、開口部6の内径をRmとしたときに、本発明においては、コーン部分7の形状及びホーン部分8の形状を次式に従って設定するものである。
(1)コーン部分の形状
長さL1上の任意の横軸座標をXr1(0<Xr1<Xs)とすると、
1<Rs/Rd≦5の関係において、
Xr1の縦軸座標をRr1とすると、Rr1は、座標(0、Rd)と、(Xs、Rs)を結ぶ直線上の位置にあって、
Rr1=(RS−Rd)/L1+Rd・・・・(1)
で表され、コーン部分の縦軸座標をRx1とすると、Rx1は、Rd<Rx1<Rr1における範囲の点を結ぶ曲線(エキスポネンシャルカーブ)となり、次式で表される。
Rx1=RdEmx、 m=(1/Xs)ln{Rs/Rd}・・・(2)
(2)ホーン部分の形状
長さL2上の任意の横軸座標をXr2(Xs<Xr2<Xm)とすると、
1<Rm/Rs≦30の関係において、
Xr2の縦軸座標をRr2とすると、Rr2は、座標(Xs、Rs)、(Xm、Rm)を結ぶ直線上の位置にあって、
Rr2=(Rm−Rs)/L2・Xr2+(Rs・Xm−Rm・Xs)/L2
・・(3)
で表され、ホーン部の縦軸座標Rx2は、Rs<Rx2<Rr2における範囲の点を結ぶ曲線(エキスポネンシャルカーブ)となり、次式で表される。
Rx2=RdEm(x―xs)、 m=(1/L2)ln{Rm/Rs}・・・(4)
したがって、本発明において、コーン部分7の長さ方向の断面形状は、縦軸座標Rx1=RdEmx、 m=(1/Xs)ln{Rs/Rd}で表される曲線(エキスポネンシャルカーブ)によって形成され、ホーン部分8の長さ方向の断面形状は、縦軸座標Rx2=RdEm(x―xs)、 m=(1/L2)ln{Rm/Rs}で表される曲線(エキスポネンシャルカーブ)によって形成されるものである。なお、エンクロージャ本体内に形成する音道は1つに限らず、それぞれ別個の開口部に通じる2以上の音道を独立して設けることができる。
本発明において、Rs/Rd及びRm/Rsの設定は、実験の結果によるものである。1<Rs/Rd≦5および1<Rm/Rs≦30の範囲に設定して、中低音域に優れた質感が得られたが、具体的な数値の設定はリスナーの好みによって決定されるべき問題である。本発明によるバックロードホーンエンクロージャの性能試験として、インピーダンスマッチングによりRS/Rd=5、Rm/Rs=30に設定し、前記(2)、(4)式を満たす曲線をもってコーン部分7及びホーン部分8を形成したエンクロージャ本体の音室にスピーカを組み付け、スピーカから発する音の周波数―音圧特性を測定した。測定結果を図4に示す。
比較のため、平板状の仕切り板を用い、本発明のエンクロージャ本体の形状に似せてキャビネット内にスピーカを嵌めこむ音室と、実施例1とほぼ同じ長さの音道をジグザグ状に4段に折り返して開口部に通じる角型の音道とを形成した木製のキャビネットを作成し、このキャビネットの音室内に実施例1と同じスピーカを組みつけて周波数―音圧特性を「JIS C 5532」に準じて測定した。結果を比較例1に示す。
実施例1と比較例1とを比較して明らかなとおり、実施例1によれば、殆どの周波数領域で音圧が比較例1を上回り、特に300〜800Hzの周波数領域で80dbを上回る音圧が得られた。
本発明によるバックロードホーンエンクロージャは、金管楽器の特徴を更に進め、特定の合成樹脂材の有する剛性によって、スピーカユニットの実力を最大限に引き出して迫力のある優れた音質を再生するため、コンサートホールに設置するスピーカ用に好適であり、また、従来は、構造が複雑のため、量産に適さないと考えられていたバックロードホーンエンクロージャを合成樹脂の成形加工により量産が可能となり、しかも、ジグザク状に折り曲げられた円形断面の音道の外形を象る成形体によって構成されるため、デザイン性に優れ、オーディオ愛好家の多様な要求に応ずることができる。
本発明のバックロードホーンバックロードホーンエンクロージャの一実施例を示す斜視図である。 (a)は、エンクロージャ本体の半割のセグメントを示す図であって、図1のA−A線断面図である。(b)は、図1のB−B線断面である。 エンクロージャ本体内に形成された音道の展開図である。 実施例による周波数−音圧特性図である。 バックロードホーンエンクロージャの基本原理を示す図である。 従来のバックロードホーンスピーカキャビネットの断面形状の1例を示す図である。 特許文献1に記載されたバックロードホーンスピーカキャビネットの構成を示す図である。
符号の説明
1 エンクロージャ本体
2 セグメント
3 スピーカ
4 音室
5 音道
6 開口
7 コーン部分
8 ホーン部分
9 仕切り
10 スロート
11 内径曲率変化点
12 内壁

Claims (5)

  1. エンクロージャ本体内に音室と、音道とを有するバックロードホーンエンクロージャであって、
    音室は、スピーカを嵌め込む部分であり、
    音道は、スピーカの発した音を開口部に導く部分であり、円形状断面で、互いに形状が異なる2種類の曲線によって内壁が形成され、長さ方向の特定位置に内径曲率変化点が設定され、音室から内径曲率変化点までは口径を緩やかに漸増させ、内径曲率変化点から開口部に向けて口径を急激に拡張させたことを特徴とするバックロードホーンエンクロージャ。
  2. 音道は、スロートを含むコーン部分とホーン部とからなり、仕切りによってジグザグ状に上下数段に折り返されて開口部に通じ、
    スロートは音室の直後のくびれの部分であり、
    コーン部分は、スロートの直後から口径が漸増して最終段の折返し部分に形成される内径曲率変化点で口径が急激に変化する位置までの部分であり、
    ホーン部分は、内径曲率変化点から、コーン部分の口径の漸増割合に比べて相対的に口径が急激に拡張して開口部に通じる部分であることを特徴とする請求項1に記載のバックロードホーンエンクロージャ。
  3. エンクロージャ本体は、合成樹脂成形体であり、2又はそれ以上の部分に分割されたセグメントの組合わせによって組み立てられているものであることを特徴とする請求項1に記載のバックロードホーンエンクロージャ。
  4. 円形状からなるスロートの中心を基点0とし、内径曲率変化点をXs、開口部の位置をXm、基点0におけるコーン部分の内径をRd、内径曲率変化点のコーン部分(又はホーン部分)の内径をRs、開口部の内径をRsとすると、
    コーン部分の長さL1は、L1=Xs−0であり、コーン部分の長さ方向の内壁の断面形状は、任意の座標におけるコーン部分の縦軸座標をRx1とすると、
    Rx1=RdEmx、 m=(1/Xs)ln{Rs/Rd}で表される曲線によって形成され、
    ホーン部分の長さL2は、L2=Xm−Xsであり、ホーン部分の長さ方向の内壁の断面形状は、ホーン部分の縦軸座標をRx2とすると、
    縦軸座標Rx2=RdEm(x―xS)、 m=(1/L2)ln{Rm/Rs}で表される曲線によって形成されるものであることを特徴とする請求項2に記載のバックロードホーンエンクロージャ。
  5. コーン部分の内径Rdと内径曲率変化点のコーン部分(又はホーン部分)の内径Rsとの比Rs/Rdは、1以上5以下であり、
    内径曲率変化点のコーン部分(又はホーン部分)の内径Rsと開口部の内径Rmとの比Rm/Rsは、1以上30以下であることを特徴とする請求項5に記載のバックロードホーンエンクロージャ。
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