JP2007093942A - 熱現像感光材料 - Google Patents

熱現像感光材料 Download PDF

Info

Publication number
JP2007093942A
JP2007093942A JP2005282491A JP2005282491A JP2007093942A JP 2007093942 A JP2007093942 A JP 2007093942A JP 2005282491 A JP2005282491 A JP 2005282491A JP 2005282491 A JP2005282491 A JP 2005282491A JP 2007093942 A JP2007093942 A JP 2007093942A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
general formula
atom
formula
photothermographic material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005282491A
Other languages
English (en)
Inventor
Seiichi Yamamoto
誠一 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2005282491A priority Critical patent/JP2007093942A/ja
Priority to US11/519,969 priority patent/US20070072136A1/en
Publication of JP2007093942A publication Critical patent/JP2007093942A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C1/00Photosensitive materials
    • G03C1/494Silver salt compositions other than silver halide emulsions; Photothermographic systems ; Thermographic systems using noble metal compounds
    • G03C1/498Photothermographic systems, e.g. dry silver
    • G03C1/49872Aspects relating to non-photosensitive layers, e.g. intermediate protective layers
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C1/00Photosensitive materials
    • G03C1/494Silver salt compositions other than silver halide emulsions; Photothermographic systems ; Thermographic systems using noble metal compounds
    • G03C1/498Photothermographic systems, e.g. dry silver
    • G03C1/49836Additives
    • G03C1/49845Active additives, e.g. toners, stabilisers, sensitisers
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C1/00Photosensitive materials
    • G03C1/494Silver salt compositions other than silver halide emulsions; Photothermographic systems ; Thermographic systems using noble metal compounds
    • G03C1/498Photothermographic systems, e.g. dry silver
    • G03C1/49836Additives
    • G03C1/49845Active additives, e.g. toners, stabilisers, sensitisers
    • G03C1/49854Dyes or precursors of dyes
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C1/00Photosensitive materials
    • G03C1/494Silver salt compositions other than silver halide emulsions; Photothermographic systems ; Thermographic systems using noble metal compounds
    • G03C1/498Photothermographic systems, e.g. dry silver
    • G03C1/49836Additives
    • G03C1/49863Inert additives, e.g. surfactants, binders
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C1/00Photosensitive materials
    • G03C1/76Photosensitive materials characterised by the base or auxiliary layers
    • G03C1/7614Cover layers; Backing layers; Base or auxiliary layers characterised by means for lubricating, for rendering anti-abrasive or for preventing adhesion
    • G03C2001/7628Back layer
    • GPHYSICS
    • G03PHOTOGRAPHY; CINEMATOGRAPHY; ANALOGOUS TECHNIQUES USING WAVES OTHER THAN OPTICAL WAVES; ELECTROGRAPHY; HOLOGRAPHY
    • G03CPHOTOSENSITIVE MATERIALS FOR PHOTOGRAPHIC PURPOSES; PHOTOGRAPHIC PROCESSES, e.g. CINE, X-RAY, COLOUR, STEREO-PHOTOGRAPHIC PROCESSES; AUXILIARY PROCESSES IN PHOTOGRAPHY
    • G03C2200/00Details
    • G03C2200/47Polymer

Abstract

【課題】 本発明の課題は、面状が改良され、高画質で画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することである。
【解決手段】 支持体上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、および有機銀塩のための還元剤を有する画像形成層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、該非感光性層がアニオン性の水溶性染料、該水溶性染料の固定化剤、および酸発生剤を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は熱現像感光材料に関するものである。特に、面状が改良され、高画質で画像保存性に優れた熱現像感光材料に関するものである。
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、知られている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。この方式は多くの文献に開示され、そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DPLが発売されている。
熱現像処理は、湿式現像処理における処理液が不要であり、簡易かつ迅速に処理できるとの利点がある。しかし、熱現像処理には、湿式現像処理にはない未解決の問題が残っている。その一つが染料の問題である。写真感光材料には、色調調整、フィルター機能、ハレーション防止やイラジエーション防止の目的で、染料を添加することが普通である。
染料は特定の層に固定することが重要で、従来、水不溶性の染料を固体微粒子分散物にして添加することが一般に行われてきた(例えば、特許文献1,2参照。)。また、消色させる場合、消色剤もまた固体微粒子分散物として添加された。しかしながら、一般に、固体微粒子は、吸収スペクトルがブロードであること、粒子による光散乱のために、膜濁りが増大するなどの問題があった。
湿式現像処理のハロゲン化銀感光材料では、従来、吸収スペクトルが好ましい彩度の高い染料が容易に選べる水溶性染料を用いられてきた。湿式処理工程で各種処理液による脱色あるいは処理液への溶出により写真感光材料から染料を容易に除去することができる。しかしながら、熱現像感光材料では、膜中にそのまま染料が残存するので、限られた範囲でしか着色できなかった。さらに水溶性染料は、特定の層に固定されず、隣接する多くの層に拡散するので、ハレーション防止やイラジェーション防止の効果を効率よく発揮されず、また添加量が増大する結果、残色の悪化を引き起こした。特に色調調整のための染料は、その好ましい画像色調を得るのに必要十分の量で用いられる。従って、このような染料による着色が不均一になると色ムラとして敏感に感じられることになり、着色の均一性は重要な課題であった。
しかしながら、熱現像感光材料で得られた画像は、種々の環境下で取り扱われ、保存される。このような環境下で染料による着色が常に均一で、画像色調が安定に保たれるには従来の着色法では十分とは言えず、さらなる改良が求められた。
熱現像感光材料にあって、酸発生剤を用いて、画像形成の促進をはかること、特に超硬調画像形成を促進することが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。あるいは熱現像感光材料にあって、かぶり防止剤として酸発生剤を用いること(例えば、特許文献4参照。)、および硬膜剤としてハロゲン置換トリアジン化合物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
特開平9−146220号公報 特開平11−228698号公報 特開2001−33909号公報 特開2004−163580号公報 特開平7−56254号公報
本発明の目的は、面状が改良され、高画質で画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することにある。
本発明の目的は、以下の熱現像感光材料によって達成された。
<1> 支持体上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、および有機銀塩のための還元剤を有する画像形成層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、該非感光性層がアニオン性の水溶性染料、該水溶性染料の固定化剤、および酸発生剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 前記酸発生剤が加熱により酸を発生し得る化合物であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記アニオン性の水溶性染料が下記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン染料であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、Mは金属原子を表す。R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16はそれぞれ独立して水素原子、置換基であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが電子求引性基である。R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。)。
<4> 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが一般式(II)で表される基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、L1**−SO2***−SO3***−SO2NRN***−SO−***−CO−***−CONRN***−COO−***−COCO−***−COCO2*、または**−COCONRN*を表す。**はこの位置でフタロシアニン骨格と結合し、*はこの位置でR17と結合することを示す。RNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。R17は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。)。
<5> 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15が水素原子であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが一般式(II)で表される基であることを特徴とする<4>に記載の熱現像感光材料。
<6> 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16のうち4つ以上が一般式(II)で表される基であることを特徴とする<4>または<5>に記載の熱現像感光材料。
<7> 前記酸発生剤が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
一般式(1) W1(OP1k
(一般式(1)において、W1はW1(OH)kで表される酸の残基を表し、P1はそれぞれ独立に熱により離脱する置換基を表し、kは1または2の整数を示す。)。
<8> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物並びに上記化合物の重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である、<7>に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、R1はハメットのσp値が0より大きい電子求引性基を表す。R2は1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R3は熱により離脱する基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。);
Figure 2007093942
(式中、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基または1以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、W1は一般式(1)における定義と同義である。);
一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
(式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9、またはCR1011を表す。R9、R10、R11、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは連結基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。)。
<9> 前記酸発生剤が下記一般式(5)または(6)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、R1は塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、−OM基、−NR12基または−NHCOR3基を表わす。R1、R2、およびR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。Mは1価金属原子を表す。R2は塩素原子を除く上記R1と同義の基を表す);
Figure 2007093942
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基または−OM基を表す。Mは1価金属原子を表す。Q及びQ’は、それぞれ独立に−O−、−S−、−NH−から選ばれる連結基を表し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を表す。l及びmは、それぞれ0または1を表す。)。
<10> 前記酸発生剤が下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、R5及びR6は各々、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヒドロキシ基、置換アミノ基、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基から選ばれる基を表し、R5及びR6が互いに結合して環を形成してもよい。Z1は、少なくとも炭素原子2個、窒素原子1個を有する5又は6員の環基を表し、W1は置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表す。)。
<11> 前記固定化剤が下記一般式(FX−1)〜(FX−4)で表される三級アミノ基、あるいは四級アンモニウム基を有するビニルモノマー単位を有するポリマー化合物であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
Figure 2007093942
(式中、R1は水素原子または1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基を表わす。Lは1個〜20個の炭素原子を有する2価の連結基を表わす。Eは炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環基を表わす。nは0または1である。);
Figure 2007093942
(式中、R1、L、nは一般式(FX−1)と同義である。R4、R5は互いに独立に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、もしくは7個〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を表わす。R4、R5は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。);
Figure 2007093942
(式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表す。G+は四級化され、かつ炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表わす。X-は一価の陰イオンを表わす。);
Figure 2007093942
(式中R1、L、nは一般式(FX−1)におけると同じものを表わす。R4、R5は一般式(FX−2)におけると同じものを表す。R6はR4、R5を表わすものと同じものの中から選ばれる。X-は一般式(VI)におけると同じものを表わす。R4、R5、およびR6は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。)。
<12> 前記支持体の一方の面上に前記画像形成層を配し、他方の面上に前記非感光性層を配してなることを特徴とする<1>〜<11>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<13> 前記非感光性層を有する面の膜面pHが熱現像後に熱現像前より0.2以上低いことを特徴とする<12>に記載の熱現像感光材料。
画像の色調は特に医療診断用画像記録材料として重要な特性である。画像による医療診断は画像の濃度および色調の差および変化により診断を行うので、画像の濃度および色調は常に安定して形成され、また、保存中にも変動することなく安定に維持されなければならない。しかしながら、熱現像感光材料中における色調調整に用いられる水溶性染料は拡散性であって、特に水によって容易に拡散する。そのため、画像形成後に、水滴の付着や高湿度にさらされると水分に対応し色ムラを生じる欠点を有する。この現象は、従来の湿式現像処理のハロゲン化銀感光材料では染料が残存したとしても殆ど生じることがなく、熱現像感光材料に特有の問題である。熱現像感光材料は、画像形成に直接的あるいは間接的に必要な多くの素材をすべて膜中に包含しているため、バインダーの保護コロイド作用が十分でないことが基本的な要因であると推定される。
一般染料技術として、水溶性染料を膜中で不動化する手段として媒染剤による固定方法が従来より知られている。熱現像感光材料にこの技術を適用するためには、水溶性染料と媒染剤とを含有する塗布液を均一な塗布膜として支持体の上に塗布しなければならない。
しかしながら、水溶性染料と媒染剤は、本質的に相互作用して強固な結合を形成する組み合わせであって、これらを含有する塗布液は、これらが結合した凝集物の生成を伴うことになる。凝集を形成しにくい組み合わせは、染料の固定力が弱く、染料の固定力が強固な組み合わせは、凝集を精製しやすい傾向にあった。従って、水溶性染料と媒染剤とを含有する塗布層を安定に作製することは困難な課題であった。
本発明者らが鋭意努力の結果、水溶性染料、該染料の固定化剤、および酸発生剤を含有する非感光性層を用いることが本発明の課題解決に有効であることを見出し、<1>の発明に到達した。その結果、前記非感光性層は塗布液の凝集等の弊害を伴わずに安定して塗布膜を形成でき、また、熱現像時の加熱によって酸を生成させ、膜pHを低下させめることによって、水溶性染料と媒染剤の相互作用が強化され、画像保存安定性に優れた色調が得られる。さらに好ましい条件を見出し、<2>〜<12>の発明に到達した。
本発明により、面状が改良され、高画質で画像保存性に優れた熱現像感光材料が提供される。
1.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、および有機銀塩のための還元剤を有する画像形成層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、該非感光性層がアニオン性の水溶性染料、該水溶性染料の固定化剤、および酸発生剤を含有する。好ましくは、前記酸発生剤が加熱により酸を発生し得る化合物である。
好ましくは、前記アニオン性の水溶性染料が下記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン染料である。
Figure 2007093942
式中、Mは金属原子を表す。R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16はそれぞれ独立して水素原子、置換基であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが電子求引性基である。R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。
好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが一般式(II)で表される基である。
Figure 2007093942
式中、L1**−SO2***−SO3***−SO2NRN***−SO−***−CO−***−CONRN***−COO−***−COCO−***−COCO2*、または**−COCONRN*を表す。**はこの位置でフタロシアニン骨格と結合し、*はこの位置でR17と結合することを示す。RNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。R17は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
より好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16のうち4つ以上が一般式(II)で表される基である。
好ましくは、前記酸発生剤が下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1) W1(OP1k
一般式(1)において、W1はW1(OH)kで表される酸の残基を表し、P1はそれぞれ独立に熱により離脱する置換基を表し、kは1または2の整数を示す。
好ましくは、前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物並びに上記化合物の重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
Figure 2007093942
式中、R1はハメットのσp値が0より大きい電子求引性基を表す。R2は1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R3は熱により離脱する基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
Figure 2007093942
式中、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基または1以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、W1は一般式(1)における定義と同義である。
一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9、またはCR1011を表す。R9、R10、R11、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは連結基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
好ましくは、前記酸発生剤が下記一般式(5)または(6)で表される化合物である。
Figure 2007093942
式中、R1は塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、−OM基、−NR12基または−NHCOR3基を表わす。R1、R2、およびR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Mは1価金属原子を表す。R2は塩素原子を除く上記R1と同義の基を表す。
Figure 2007093942
式中、R3及びR4は、それぞれ独立に塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基または−OM基を表す。Mは1価金属原子を表す。Q及びQ’は、それぞれ独立に−O−、−S−、−NH−から選ばれる連結基を表し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を表す。l及びmは、それぞれ0または1を表す。
また、別の好ましい前記酸発生剤は下記一般式(7)で表される化合物である。
Figure 2007093942
式中、R5及びR6は各々、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヒドロキシ基、置換アミノ基、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基、または、アリール基およびヘテロ環基から選ばれる基、を表し、R5及びR6が2以上で隣接する場合、互いに結合して環を形成してもよい。Z1は、少なくとも酸素原子2個、窒素原子1個を有する5又は6員の環基を表し、W1は置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表す。
好ましくは、前記固定化剤が下記一般式(FX−1)〜(FX−4)で表される三級アミノ基、あるいは四級アンモニウム基を有するビニルモノマー単位を有するポリマー化合物である。
Figure 2007093942
式中、R1は水素原子または1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基を表わす。Lは1個〜20個の炭素原子を有する2価の連結基を表わす。Eは炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環基を表わす。nは0または1である。
Figure 2007093942
式中、R1、L、nは一般式(FX−1)と同義である。R4、R5は互いに独立に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、もしくは7個〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を表わす。R4、R5は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。
Figure 2007093942
式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表す。G+は四級化され、かつ炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表わす。X-は一価の陰イオンを表わす。
Figure 2007093942
式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表わす。R4、R5は一般式(FX−2)と同じものを表す。R6はR4、R5を表わすものと同じものの中から選ばれる。X-は一般式(VI)と同じものを表わす。R4、R5、およびR6は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。
好ましくは、前記支持体の一方の面上に前記画像形成層を配し、他方の面上に前記非感光性層を配してなる。より好ましくは、前記非感光性層を有する面の膜面pHが熱現像後に熱現像前より0.3以上低い。
以下に本発明を詳細に説明する。
(非感光性層)
本発明における非感光性層は、水溶性染料、その固定化剤、および酸発生剤を含有する。
本発明における該非感光性層は、支持体の画像形成層を有する面と同一面にあっても、反対面にあってもよい。好ましくは、本発明の熱現像感光材料は、前記支持体の一方の面上に、画像形成層を配し、他方の面上に、該非感光性層を配してなる。
層のバインダーとして好ましくは、ポリマーラテックスおよび親水性バインダーの少なくとも1つを含有する。その他、必要に応じて、後述のマット剤、硬膜剤、および界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
1)アニオン性水溶性染料
本発明に用いることの出来る水溶性染料は、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料(例えばアントラキノン染料、ナフトキノン染料など)、キノリン染料(例えばキノフタロン染料など)、メチン染料(例えば、シアニン、メロシアニン、オキソノール、スチリル、アリーリデン、アミノブタジエン染料などで、ポリメチン染料も含む。)、カルボニウム染料(例えばジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料などのカチオン染料)、アジン染料(例えば、チアジン染料、オキサジン染料、フェナジン染料などのカチオン染料)、アザ[18]π電子系染料(例えばポルフィン染料、テトラアザポルフィン染料、フタロシアニン染料等)、インジゴイド染料(インジゴ、チオインジゴ染料など)、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、ピロメテン染料、ニトロ・ニトロソ染料、ベンゾトリアゾール系染料、トリアジン系染料などである。
好ましくは、アゾメチン染料、メチン染料、ピラゾロン染料、あるいは、電子系染料である。
更に、好ましくは金属フタロシアニン染料であって、特に一般式(PC−1)で表される化合物である。
Figure 2007093942
一般式(PC−1)においてMは金属原子を表す。金属原子を表す場合は安定な錯体を形成するものであれば金属はいかなるものでも良く、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Cd、Hg、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Pd、Cd、Sn、Pt、Pb、Sr、およびMnなどを使用することができる。好ましくはMg、Ca、Co、Zn、Pd、およびCuが用いられ、より好ましくはCo、Pd、Zn、およびCuが用いられ、特に好ましくはCuが用いられる。
一般式(PC−1)において、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16はそれぞれ独立して水素原子、置換基、または電子求引性基であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが電子求引性基である。
ここでいう電子求引性基とは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−C(=O)−R、−C(=O)−C(=O)−R、−S(=O)−R、−S(=O)2−R、−C(=N−R’)−R、−S(=NR’)−R、−S(=NR’)2−R、−P(=O)R2、−O−R”、−S−R”、−N(−R’)−C(=O)−R、−N(−R’)−S(=O)−R、−N(−R’)−S(=O)2−R、−N(−R’)−C(=N−R’)−R、または−N(−R’)−S(=NR’)2−R、−N(−R’)−P(=O)R2で表される基の中から選ばれるものである。ここでRは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、OH基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはSH基を表す。R’は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、スルホニル基、スルフィニル基、またはホスホリル基を表す。R”はペルフルオロアルキル基、シアノ基、アシル基、スルホニル基、またはスルフィニル基を表す。
R、R’、およびR”で表される基は置換基で置換されていてもよく、置換基の具体例としてはハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
一般式(PC−1)における電子求引性基として好ましくは一般式(II)で表される基が用いられる。
Figure 2007093942
1**−SO2***−SO3***−SO2NRN***−SO−***−CO−***−CONRN***−COO−***−COCO2*、または**−COCONRN*を表す。**はこの位置でフタロシアニン骨格と結合し、*はこの位置でR17と結合することを示す。RNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。RNはさらに一般式(I)のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16がとりうる置換基で置換されていても良い。L1は好ましくは**−SO2***−SO2NRN***−CO−***−CONRN*または**−COO−*が用いられ、より好ましくは**−SO2***−SO2NRN*または**−CONRN*、が用いられ、特に好ましくは**−SO2*または**−SO2NRN*が用いられる。
Nは好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基が用いられ、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜20のヘテロ環基が用いられ、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数1〜10のヘテロ環基が用いられ、特に好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が用いられる。
17は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。R17がアルキル基、アリール基またはヘテロ環基の場合は、これらはさらに一般式(I)のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16がとりうる置換基で置換されていても良い。R17として好ましくはアルキル基またはアリール基が用いられ、特に好ましくはアルキル基が用いられる。R17は炭素数1〜30のものが用いられ、好ましくは1〜20ものが用いられ、より好ましくは1〜10ものが用いられる。
17は親水性基で置換されていることが好ましい。ここで親水性基とはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基、窒素の4級塩構造を有する基、リンの4級塩構造を有する基またはポリエチレンオキシ基を指す。親水性基がカルボキシル基、スルホ基、リン酸基の場合は、必要に応じて対カチオンを有していてもよく、対カチオンとしては金属カチオン、アンモニウムイオン、窒素の4級塩構造を有する基、リンの4級塩構造を有する基が用いられる。
Wが窒素の4級塩構造を有する基またはリンの4級塩構造を有する基の場合は必要に応じて対アニオンを有していてもよく、対アニオンとしては例えばハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、シュウ酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルカンカルボン酸イオン、またはアリールカルボン酸イオン等をとることができる。親水性基として好ましくはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基、スルホ基である。この場合、対カチオンとして、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+あるいはNH4 +が好ましく用いられ、より好ましくはLi+、Na+、K+あるいはNH4 +が用いられ、特に好ましくはLi+、Na+が用いられる。
一般式(PC−1)においてR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16が置換基である場合には、一般式(I)におけるR、R’、およびR”がとりうる置換基と同じ群から選ばれる置換基をとることができる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
置換基として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、スルホニルオキシ基、イミド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ニトロ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基が用いられる。より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、イミド基、スルファモイルアミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩が用いられる。
さらに好ましくはアリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基が用いられる。
一般式(I)で表される化合物において好ましくはR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16のうち4つ以上が一般式(II)で表される基であり、より好ましくはR1とR4、R5とR8、R9とR12、R13とR16の組み合わせのうちで少なくとも一方が一般式(II)で表される基である。特に好ましくはR1とR4、R5とR8、R9とR12、R13とR16の組み合わせのうちで、一方が一般式(II)で表される基であり、他方が水素原子である。同一分子内に複数の一般式(II)で表される基を有する場合、それははそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
一般式(PC−1)において、R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基は一般式(I)のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16がとりうる置換基と同じ範囲から選ばれるものである。
好ましくは、R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15が水素原子であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも4つ以上が一般式(II)の化合物である。
1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、スルファモイル基、スルホニル基、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基が用いられる。より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、スルファモイル基、またはスルホニル基であり、特に好ましくは水素原子、スルホ基、またはハロゲン原子である。
一般に複数の置換基を有するフタロシアニン化合物には置換基の結合している位置の異なる位置異性体が存在しうる。
本発明の一般式(PC−1)で表される化合物においても例外ではなく、場合によっては数種類の位置異性体が考えられる。本発明においてはフタロシアニン化合物は単一の化合物として用いても良いが、位置異性体の混合物として用いることもできる。位置異性体の混合物として用いる場合には、混合している位置異性体の数、それぞれの位置異性体における置換基の置換位置、および位置異性体の混合比率はいかなるものでもよい。
以下に本発明で使用される一般式(PC−1)で表される化合物の例を示す。ただし本発明は以下の例に限定されるものではない。
以下に本発明で使用される一般式(PC−1)で表される化合物の例を示す。ただし本発明は以下の例に限定されるものではない。また以下の化合物例では位置異性体混合物を一つの化合物として表記している。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
合成中間体A(1.26g、4mmol)のエチレングリコール溶液(10mL)にCuCl2(134mg、1mmol)を加え、100℃に加熱した。反応混合物にDBU(1.52g、10mmol)を添加し、100℃で10時間撹拌した。反応混合物を塩酸で酸性化し、LiClを添加するとフタロシアニンの粗生成物が析出した。ここで得られた粗生成物をSephadex(登録商標)G−15を担体としたカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物2の混合物を67mg(収率5%)で得た。
<添加方法>
本発明のフタロシアニン化合物は水溶性であることが好ましく、予め水を媒体として調製された水溶液として熱現像感光材料の製造で用いることが好ましい。該水溶液中に、本発明の水溶性フタロシアニン化合物は、0.1質量%〜30質量%で含有され、好ましくは0.5質量%〜20質量%、更に好ましくは1質量%〜8質量%程度含有される。該水溶液はさらに水溶性有機溶媒や補助添加剤を含有していても良い。その含有量は、水溶性有機溶媒0質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜30質量%、補助添加剤0質量%〜5質量%、好ましくは0質量%〜2質量%程度である。
本発明の水溶性フタロシアニン化合物の水溶液を調製するに当たり、使用し得る水溶性有機溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム類、尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンまたは1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロピレングリコール、1,2−または1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2〜C6アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマーまたはポリアルキレングリコールまたはチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1.2.6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルーエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1〜C4アルキルエーテル、γーブチロラクトンまたはジメチルスルホキシド等があげられる。これらの水溶性有機溶媒は2種以上併用しても良い。
上記水溶性有機溶媒のうち、尿素、N−メチルピロリジン−2−オン、炭素数2〜6のアルキレン単位を有するモノ、ジまたはトリアルキレングリコールが好ましく、更にモノ、ジまたはトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド等が好ましく用いられ、特に、N−メチルピロリジン−2−オン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、尿素の使用が好ましく、特に好ましいのは尿素である。なお、本発明の水溶性フタロシアニン化合物は、熱現像感光材料の作製時に該水溶液をさらに種々の薬品と混合して希釈されていくため、該水溶液とは別に、水溶性有機溶媒を該水溶性金属フタロシアニン化合物の含有量1モルに対して、1モル〜500モルの範囲で含ませる方法も好ましく用いられる。
補助添加剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤などがそれぞれ必要により添加される。
防腐防黴剤としては、例えばデヒドロ酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、ベンゾイソチアゾリノンおよびその塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル類等が使用しうる。
pH調整剤としては、調合される水溶液に悪影響を及ぼさずに、pHを4〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニア、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどがあげられる。水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフェノン、スルホン化されたベンゾトリアゾール等があげられる。染料溶解剤としては、例えばεーカプロラクタム、エチレンカーボネート、尿素等があげられる。界面活性剤としては、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤があげられ、たとえば、アセチレングリコール系界面活性剤なども好ましく用いられる。
本発明における別の好ましい水溶性染料は、マゼンタ染料である。この目的の染料として、具体的には、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料(例えばアントラキノン染料、ナフトキノン染料など)、キノリン染料(例えばキノフタロン染料など)、メチン染料(例えば、シアニン、メロシアニン、アリーリデン、スチリル、オキソノール染料など)、カルボニウム染料(例えばジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料などのカチオン染料)、インドアニリン染料、アジン染料(例えば、チアジン染料、オキサジン染料、フェナジン染料などのカチオン染料)、アザ[18]π電子系染料(例えばポルフィン染料、テトラアザポルフィン染料、フタロシアニン染料等)、インジゴイド染料(インジゴ、チオインジゴ染料など)、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、ピロメテン染料(金属錯体を形成していてもよい)、ニトロ・ニトロソ染料、などを挙げることができる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態等いかなる方法でもよい。
これらの染料のうち、好ましい染料としては、アゾ染料、アゾメチン染料、カルボニウム染料、ポリメチン染料などを挙げることができ、さらに好ましくはアゾメチン染料である。
アゾメチン染料は下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物について説明する。
Figure 2007093942
<置換基等の説明>
一般式(I)において、Xはカラー写真カプラーの残基を表し、Aは−NR45又はヒドロキシ基を表し、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。Aは−NR45であることが好ましい。前記R4及びR5は、各々独立に、水素原子又は脂肪族基であることが好ましく、水素原子であること、アルキル基又は置換アルキル基であることがより好ましく、水素原子であること、炭素原子数が1〜18のアルキル基又は炭素原子数が1〜18の置換アルキル基であることがさらに好ましい。さらに詳しく述べると、R4がR5ともにメチル基又はともにエチル基、R4がエチル基でR5が2−ヒドロキシエチル基、R4がエチル基でR5が(2−メタンスルホニルアミノ)エチル基であることが最も好ましい。
前記一般式(I)においてB1は=C(R6)−又は=N−を表わし、B2は−C(R7)=又は−N=を表す。B1、B2が同時に−N=とならない場合が好ましく、B1が=C(R6)−、B2が−C(R7)=となる場合がより好ましい。この場合一般式(I)において、R2、R3、R6及びR7は、各々独立に、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ、−OR51、−SR52、−CO253、−OCOR54、−NR5556、−CONR5758、−SO259、−SO2NR6061、−NR62CONR6364、−NR65CO266、−COR67、−NR68COR69又は−NR70SO271であって、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70及びR71は、各々独立に、水素原子、脂肪族基又は芳香族基である。
前記R2及びR7は、各々独立に、上記のうち水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、−OR51、−NR62CONR6364、−NR65CO266、−NR68COR69又は−NR70SO271であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、置換アルキル基、−NR62CONR6364又は−NR68COR69であることがより好ましく、水素原子であること、塩素原子であること、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数1〜10の置換アルキル基であることが更に好ましく、水素原子であること、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4の置換アルキル基であることが最も好ましい。さらに詳しく述べると、R2は水素原子又はメチル基でありR7が水素原子であることが最も好ましい。
3及びR6は、各々独立に、上記のうち水素原子、ハロゲン原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基又は置換アルキル基であることがより好ましく、水素原子であること、塩素原子であること、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10の置換アルキル基であることが更に好ましく、水素原子であること、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4の置換アルキル基であることが最も好ましい。さらに詳しく述べると、R3とR7はともに水素原子であることが最も好ましい。
前記一般式(I)においてR2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6及びR6とR7は互いに結合して環を形成することができる。環を形成する組み合わせはR3とR4、R4とR5又はR5とR6であることが好ましい。前記R2とR3、又はR6とR7が互いに結合して形成する環は、5員環又は6員環であることが好ましい。環は芳香族環(例、ベンゼン環)又は不飽和複素環(例、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、ピリミジン環、ピロール環、フラン環)であることが好ましい。前記R3とR4、又はR5とR6が互いに結合して形成する環は、5員環又は6員環であることが好ましい。環の例にはテトラヒドロキノリン環及びジヒドロインドール環が含まれる。前記R4とR5が、互いに結合して形成する環は5員環又は6員環であることが好ましい。環の例にはピロリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が含まれる。
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。前記アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましい。前記置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。前記アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましい。前記置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。前記アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることがさらに好ましい。前記置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。
前記アラルキル基及び置換アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。前記置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、複素環基、−OR141、−SR142、−CO2143、−NR144145、−CONR146147、−SO2148、−SO3149、−SO2NR150151が含まれる。R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150及びR151は、各々独立に、水素原子、脂肪族基又は芳香族基である。ただしR143、R149はこれに加えて、Li、Na、K、Mg、Caから選ばれる金属原子であることも含まれる。この場合好ましくはLi、Na、Kであり、より好ましくはNaである。前記置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例は、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
本明細書において、芳香族基はアリール基および置換アリール基を意味する。
アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。前記置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。前記置換アリール基の置換基の例にはハロゲン原子、シアノ、ニトロ、脂肪族基、複素環基、−OR161、−SR162、−CO2163、−NR164165、−CONR166167、−SO2168、−SO3169及び−SO2NR170171が含まれる。R161、R162、R163、R164、R165、R166、R167、R168、R169、R170及びR171は、各々独立に、水素原子、脂肪族基又は芳香族基である。ただしR163、R169はこれに加えて、Li、Na、K、Mg、Caから選ばれる金属原子であることも含まれる。この場合好ましくはLi、Na、Kであり、より好ましくはNaである。
本明細書において、複素環基は、5員もしくは6員の飽和又は不飽和複素環を含むことが好ましい。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環のヘテロ原子の例には、B、N、O、S、Se及びTeが含まれる。ヘテロ原子としてはN、O及びSが好ましい。複素環は、炭素原子が遊離の原子価(一価)を有する(複素環基は炭素原子において結合する)ことが好ましい。飽和複素環の例には、ピロリジン環、モルホリン環、2−ボラ−1,3−ジオキソラン環及び1,3−チアゾリジン環が含まれる。不飽和複素環の例には、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びキノリン環が含まれる。複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR171、−SR172、−CO2173、−NR174175、−CONR176177、−SO2178及び−SO2NR179180が含まれる。R171、R172、R173、R174、R175、R176、R177、R178、R179及びR180は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。
前記一般式(I)において、Xで表されるカプラーは以下のカプラーが好ましい。米国特許4,310,619号、同4,351,897号、欧州特許73,636号、米国特許3,061,432号、同3,725,067号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24220(1984年6月)、同No.24230(1984年6月)、特開昭60−33552号、同60−43659号、同61−72238号、同60−35730号、同55−118034号、同60−185951号、米国特許4,500,630号、同4,540,654号、同4,556,630号、国際公開WO88/04795号、特開平3−39737号(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下))、欧州特許456,257号の〔A−4〕−63(134頁),〔A−4〕−73,−75(139頁)、同486,965号のM−4,−6(26頁),M−7(27頁)、同571,959A号のM−45(19頁)、特開平5−204106号の(M−1)(6頁)、同4−362631号の段落0237のM−22、米国特許3,061,432号、同3,725,067号。
以下に具体的な化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
前記一般式(I)で表される染料は、例えば特開平4−126772号公報、特公平7−94180号公報及び特願平11−365187号公報に記載された方法を参考にして合成することができる。
この他に本発明で使用できるアゾメチン染料としては、特開平4−247449号公報記載の一般式(I)、特開昭63−145281号公報記載の一般式(I)、特開2002−256164号公報記載の一般式(1)、特開平3−244593号公報記載の一般式(I)、特開平3−7386号公報記載の一般式(I)、特開平2−252578号公報記載の一般式(II)、(III)、(IV)、特開平4−359967号公報記載の一般式(I)、(II)、特開平4−359968号公報記載の一般式(I)、(II)等を挙げることができ、具体的化合物もこれら特許に記載されている染料を挙げることができる。
<添加量の範囲>
本発明における水溶性染料の添加量は、染料単独による光学濃度としては、該染料の吸収極大波長での値として、好ましくは0.1〜0.8であり、より好ましくは0.2〜0.6である。このような光学濃度を得るための染料の塗布量は、一般に10mg/m2〜150mg/m2、好ましくは20mg/m2〜80mg/m2程度である。
2)固定化剤
本発明に使用される固定化剤には特別な制限はないが、下記一般式(FX−1)〜(FX−4)で表わされる三級アミノ基又は四級アンモニウム基を有するビニルモノマー単位を含むポリマーが好ましい。
Figure 2007093942
式中、R1は水素原子または1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基を表わす。Lは1個〜20個の炭素原子を有する2価の連結基を表わす。Eは炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表わす。
nは0または1である。
Figure 2007093942
式中、R1、L、nは一般式(FX−1)と同義である。R4、R5は互いに独立に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、もしくは7個〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を表わし、R4、R5は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。
一般式(FX−1)および(FX−2)において、R1は好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などを表わし、より好ましくは水素原子あるいはメチル基である。
Figure 2007093942
式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表す。G+は四級化され、かつ炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表す。X-は一価の陰イオンを表わす。
Figure 2007093942
式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表す。R4、R5は一般式(FX−2)と同じものを表す。R6はR4、R5を表わすものと同じものの中から選ばれる。X-は一般式(VI)と同じものを表わす。R4、R5、およびR6は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。
Lは、好ましくはアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、またはヘキサメチレン基など)、フェニレン基(例えばo−フェニレン基、p−フェニレン基、m−フェニレン基など)、下記一般式で表されるアリ−レンアアルキレン基(式中、R2は炭素数1〜約12のアルキレン基を表わす。)、
Figure 2007093942
−CO2−基、−CO2−R3−基(但しR3はアルキレン基、フェニレン基、アリ−レンアルキレン基を表わす。)、−CONH−R3−基(但しR3は上記と同義である。)、下記一般式で会わされるアシルアミノ基(式中、R1、R3は上記と同義である。)などを表わす。
Figure 2007093942
Lとしてより好ましくは、下記の2価基、
Figure 2007093942
−CO2−CH2CH2−、−CO2−CH2CH2CH2−、−CONHCH2−、−CONHCH2CH2−、および−CONHCH2CH2CH2−である。
一般式(FX−1)において、Eは炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表し、好ましくは、下記に示すイミダゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、およびピリミジン環などを表わし、より好ましくは、イミダゾール環、ピリジン環である。
Figure 2007093942
一般式(FX−1)で表わされる三級アミノ基を有するビニルモノマー単位を含むポリマーの好ましい具体例としては、米国特許第4,282,305号、同4,115,124号、同3,148,061号などに記載されているポリマーを含め、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
一般式(FX−2)において、R4、R5は好ましくは無置換アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミノ基、ヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基など。)、置換アルキル基(メトキシエチル基、3−シアノプロピル基、エトキシカルボニルエチル基、アセトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、2−ブテニル基など。)、無置換アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基など。)、および置換アラルキル基(4−メチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−(4−メトキシフェニル)ベンジル基、3−クロロベンジルなど。)を表わす。
また、R4、R5が相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成する例として、下記の例を挙げることができる。
Figure 2007093942
一般式(FX−2)で表わされる三級アミノ基を有するビニルモノマー単位を含むポリマーの好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2007093942
一般式(FX−3)でG+は四級化され、かつ炭素との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表わし、その例はイミダゾリウム塩
Figure 2007093942
など、トリアゾリウム塩:
Figure 2007093942
など、およびピリジニウム塩:
Figure 2007093942
などであり、このうちイミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩が特に好ましい。ここでR4は一般式(FX−2)と同じものを表わし、メチル基、エチル基、ベンジル基が特に好ましい。
一般式(FX−3)、(FX−4)中、X-は陰イオンを表わし、例えばハロゲンイオン(例えば塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン)、アルキルあるいはアリールスルホン酸イオン(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、酢酸イオン、硫酸イオンなどの例が挙げられ、特に塩素イオン、p−トルエンスルホン酸イオンが好ましい。
一般式(FX−3)で表わされる四級アンモニオ基を有するビニルモノマー単位を含むポリマーの好ましい具体例としては米国特許第2,056,101号、同2、093,041号、同1,594,961号、米国特許第4,124,386号、同4,115,124号、同4,273,853号、同4,450,224号、特開昭48−288225号などに記載されている染料固定化剤を含め、以下のものが挙げられる。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
など。
Figure 2007093942
一般式(FX−4)で、R4、R5が相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成する例として、例えば
Figure 2007093942
などが挙げられ、R4、R5、およびR6により環状構造を形成する例として、例えば
Figure 2007093942
などが挙げられる。
一般式(FX−4)で表わされる、四級アンモニオ基を有するビニルモノマー単位を含むポリマーの好ましい具体例としては、米国特許第3,709,690号、同3,898,088号、同3,958,995号などに記載されている染料固定化剤を含め、以下のものが挙げられる。
Figure 2007093942
その他、使用しうる染料固定化剤としては、米国特許第2,548,564号、同第2,484,430号、同第3,148,061号、同第3,756,814号明細書等に開示されているビニルピリジンポリマー;米国特許第3,625,694号、同第3,859,096号、同第4,128,538号、英国特許第1,277,453号明細書等に開示されているゼラチン等と架橋可能な染料固定化剤;米国特許第3,958,995号、同第2,721,852号、同第2,798,063号、特開昭54−115228号、同54−145529号、同54−126027号明細書等に開示されている水性ゾル型染料固定化剤;米国特許第3,898,088号明細書に開示されている水不溶性染料固定化剤;米国特許第4,168,976号(特開昭54−137333号)明細書等に開示の染料と共有結合を行うことのできる反応性染料固定化剤;更に米国特許第3,709,690号、同第3,788,855号、同第3,642,482号、同第3,488,706号、同第3,557,066号,同第3,271,147号、同第3,271,148号、特開昭50−71332号、同53−30328号、同52−155528号、同53−125号、同53−1024号明細書に開示してある染料固定化剤、米国特許第2,675,316号、同第2,882,156号明細書に記載の染料固定化剤等を挙げることができる。
本発明で用いる染料固定化剤の分子量は、好ましくは1,000〜1,000,000、特に10,000〜200,000である。
かかる染料固定化剤は、水溶性染料を含む中にバインダーとしての親水性コロイドと併用して用いられる。親水性コロイドの代表例としては、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体等のタンパク質、セルロース誘導体、デンプン、アラビアゴム等の多糖類のような天然物質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドのような合成重合体を含む。この中でもゼラチン、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
染料固定化剤と親水性コロイドの混合比および染料固定化剤の塗布量は、固定されるべき水溶性染料の量、染料固定化剤の種類や組成などに応じて、当業者が容易に定めることができるが、染料固定化剤/親水性コロイド比が20/80〜80/20(質量比)、染料固定化剤の塗布量は約0.2g/m2〜約15g/m2が適当であり、なかでも0.5g/m2〜8g/m2で使用するのが好ましい。
本発明に用いられるカチオン性界面活性剤は分子中に少なくとも1つの下記一般式で示される四級アンモニウム基または四級ホスホニウム基の部分構造を有する化合物である。
Figure 2007093942
上式において、R1、R2、およびR3は同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基および複素環残基の中から選ばれた基を表わし、また、これらの基はさらにアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、置換カルバモイル基、スルファモイル基、置換スルファモイル基、アミノ基、置換アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基および複素環残基で置換されていてもよい。また、R1とR2、R1とR3またはR2とR3が連結して複素環を形成してもよい。Xは窒素原子またはリン原子を表わす。Y-はハロゲンイオン、スルホン酸イオン、アルキル硫酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、カルボン酸イオンおよびZuCl3イオンの中から選ばれた陰イオンを表わし、R1、R2、およびR3のいずれかとYが結合していてもよい。
本発明に用いられるカチオン性系界面活性剤は、公知の方法によって合成することができる。例えば、3級アミン類または3級ホスフィン類をアルコール類やアセトニトリル等の極性溶媒あるいはエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の非極性溶媒中で種々のアルキル化剤と共に加熱することにより、目的とするカチオン性化合物が通常収率良く得られる。ここで使用できるアルキル化剤としては、ハロゲン化アルキル(アラルキル)、硫酸やスルホン酸類のアルキル(アラルキル)エステル、ラクトン類、スルトン類等が挙げられる。また陰イオン部については、目的とする陰イオン部を有するアルキル化剤を用いて直接導入することも、別の陰イオンを後で目的とする陰イオンに変換することも可能である。
カチオン性化合物の具体的な合成例はV.Migrdichian著、Organic Synthesis,Vol.1(Rainhold,1957)476〜479ページ等に記載されている。
次に本発明に使用されるカチオン性系界面活性剤の好ましい具体例を示す。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
本発明に用いられるベタイン系界面活性剤は、一分子中にアニオン性基とカチオン性基とを併せ持っていて分子内塩を形成している界面活性剤を言い、次の一般式(C)で表される。
Figure 2007093942
式中、A-はスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などの如きアニオン性基を含有するアニオン残基、C+は有機カチオン残基を表わす。
本発明に用いられるベタイン系界面活性剤としては、1分子中に炭素数が6個以上の飽和又は不飽和炭化水素基またはそのフッ素置換体を少なくとも1つ以上含有することが好ましい。特に好ましくは炭素数が10個〜24個の飽和又は不飽和炭化水素基またはそのフッ素置換体を少なくとも1つ以上含有するものである。
本発明に使用されるベタイン系界面活性剤の具体例を以下に述べる。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
本発明に用いられる多価金属塩としては、水中で溶解し電離する化合物であり、その際、金属陽イオンとして、2価以上となる化合物である。このような金属陽イオンが、水溶性染料と相互作用し、染料の膜内の移動を抑制する。多価金属塩として、金属種としては、周期表のIIa族〜VIII族、Ib〜IIIb族に含まれるアルカリ土類金属、典型金属、遷移金属があてはまる。好ましい金属種は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、亜鉛などが挙げれられる。特に好ましくは、カルシウム、ストロンチウムである。対陰イオンとしては例えばハロゲンイオン、水酸化イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、炭酸イオン、シュウ酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルカンカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン等をとることができる。
好ましくは、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、アルカンカルボン酸イオンであり、より好ましくは、炭酸イオン、硝酸イオン、アルカンカルボン酸イオンである。特に、硝酸カルシウムが水溶性であり使用しやすく、かつ熱現像感光材料中においては、他の素材に不活性なので好ましい。
本発明に使用される多価金属塩の具体例を以下に述べる。
Figure 2007093942
添加される多価金属塩の使用量としては、1.5×10-5モル/m2以上であることが必要であり、2×10-5モル/m2〜1×10-2モル/m2が好ましい。該多価金属塩が硝酸カルシウムの場合には、その使用量としては、1×10-5モル/m2〜1×10-2モル/m2が好ましい。
添加方法としては、金属塩の水溶液を調製して添加してもよいし、金属塩粒子を微細化して、微粒子状態で添加してもよいが、水溶液添加が好ましい。
3)酸発生剤
本発明のおける酸発生剤は、非感光性層の塗布膜形成の後、該膜に対して加熱、光、あるいは圧力等の外力を施すことにより酸を発生し得る化合物である。好ましくは、熱現像時の加熱により酸を発生し得る化合物である。
(一般式(1)で表される化合物)
本発明のおける酸発生剤の好ましい群の一つは、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1) W1(OP1k
一般式(1)において、W1はW1(OH)kで表される酸の残基を表し、P1はそれぞれ独立に熱により離脱する置換基を表し、kは1または2の整数を示す。
より好ましくは、一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物並びに上記化合物の重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
Figure 2007093942
式中、R1はハメットのσp値が0より大きい電子求引性基を表す。R2は1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R3は熱により離脱する基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
Figure 2007093942
式中、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基または1以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、W1は一般式(1)における定義と同義である。
一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9、またはCR1011を表す。R9、R10、R11、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは連結基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
1は、W1(OP1k(kは1または2)で表される酸(例えば、スルホン酸、カルボン酸、1以上の置換基を有していてもよいリン酸、1以上の置換基を有していてもよいホスホン酸、フェノール等)の残基を表す。W1(OH)kはpKaが3より小さい酸であることが好ましく、より具体的にはアリールスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルケニルスルホン酸、電子吸引性基のついたカルボン酸、アリールホスホン酸、アルキルホスホン酸等が好ましく、これらの基は1以上の置換基(例えば、メチル基、フッ素または塩素などのハロゲン原子、ビニル基など)を有していてもよい。W1(OH)kは、より好ましくは、ベンゼン環上に1以上の置換基(例えば、メチル基、フッ素または塩素などのハロゲン原子、ビニル基など)を有していてもよいベンゼンスルホン酸;アルケニルカルボニルオキシ基、アルケニルCONH基、アルケニルオキシ基などの1以上の置換基を有していてもよいアルキルスルホン酸;アルケニルスルホン酸;リン原子および/またはベンゼン環上に置換基(例えば、メチル基、フェニル基、フッ素または塩素などのハロゲン原子、ビニル基など)を有していてもよいベンゼンホスホン酸、ベンゼン環上に1以上の置換基(例えば、塩素などのハロゲン原子、シアノ基、ビニル基など)を有していてもよい安息香酸である。
1は熱によって離脱しうる置換基を表し、P1の離脱に伴いW1(OP1kで表される酸発生剤からW1(OH)kで表される酸が生成する。熱によって離脱しうる置換基としては、β位に水素原子を有するアルキル基(例えばt−ブチル基、シクロヘキシル基、2ーシクロヘキセニル基等)、β位に水素原子を有する酸素原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環基(例えば、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、4,5−ジヒドロ−2−メチルフラン−5−イル基等)、β位に水素原子を有するアルコキシカルボニル基(例えばtーブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2−(2−メチル)ブトキシカルボニル基、2−(2−フェニル)プロピルオキシカルボニル基、2−クロロエトキシカルボニル基等)、1以上の置換基を有していてもよいシリル基(例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、あるいはこれらの基、もしくはアセタール、ケタール、チオケタール、ピナコール、エポキシ環の分解を引き金に離脱する置換基(例えば後述する一般式(2)〜(4)の説明においてW1(OH)kに置換された基)が挙げられる。また、一般式(1)〜(4)においてkは1または2を表すが、kが2である場合、kが個数を示す置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。さらに、一般式(1)で表される化合物中に重合性不飽和結合が存在する場合には、それらが重合して重合体を形成してもよい。重合体についての詳細は後述する。
一般式(1)で表される酸発生剤の例としては、例えばトリフルオロ酢酸(α−フェニルイソプロピル)エステル、トリフルオロ酢酸t−ブチルエステル、トルエンスルホン酸シクロヘキシルエステル、p−ニトロ安息香酸トリエチルシリルエステル、p−ニトロ安息香酸テトラヒドロピラニルエステル、ポリ(4−ビニル−1−t−ブトキシカルボニルオキシ−2−ニトロベンゼン)、ポリ(4−ビニルベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル)等を挙げることができる。
本発明で用いる酸発生剤としては、酸発生能と保存安定性の観点から下記一般式(2)〜(4)で表される化合物が好ましい。
Figure 2007093942
式中、R1はハメットのσp値が0より大きい電子吸引性基を表す。R2は1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R3は熱の作用により離脱する基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
Figure 2007093942
式中、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基または1以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、W1は一般式(1)における定義と同義である。
一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9(ここでR9は水素原子または置換基を表す)、またはCR1011(ここで、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す)を表す。Lは連結基を表す。R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
一般式(2)において、R1はハメットのσp値が0より大きい電子吸引性基を表し、好ましくはアシル基(例えばアセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ピバロイル、ベンゾイル、ナフトイル等)、シアノ基、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンジルスルホニル、t−ブチルスルホニル等)もしくはアリールスルホニル基(ベンゼンスルホニル等)が挙げられる。R1として更に好ましくはアシル基である。R2はアルキル基(メチル、エチル、イソプロピル、オクチル、ドデシル等)を表し、これは1以上の置換基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子等)を有していてもよい。R2として好ましくは炭素数1以上6以下の基である。
3は熱または酸により離脱する基を表し、好ましい基としてはβ位に水素原子を有する2級もしくは3級の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基又はアルケニル基などで、より具体的には、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、シクロヘキシル、2−シクロヘキセニル等)、シリル基(トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等)、もしくはアルコキシメチル基(例えば、メトキシメチル、オクチルオキシメチル等)、酸素原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環基(例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、4,5−ジヒドロ−2−メチルフラン−5−イル等)等が挙げられる。R3として好ましくはβ位に水素原子を有する2級もしくは3級のアルキル基である。これらR1〜R3で表される基は置換基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子等)を有していてもよい。W1は一般式(1)の場合と同義である。
次に一般式(3)で表される化合物について説明する。一般式(3)において、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基(メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、オクチル、またはドデシル等)、または1以上の置換基を有していてもよいアリール基(フェニル、ナフチル等)を表す。R4、R5、およびR6が示すアルキル基またはアリール基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基(例えば、メトキシ基など)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素など)などが挙げられる。R4とR5、R4とR6もしくはR5とR6はそれぞれ結合して環を形成してもよい。W1は一般式(1)の場合と同義である。一般式(2)と(3)で示される化合物は特開平8−248561号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
またこれらとは全く異なる機構で酸を生成する化合物としては、熱の作用により除去される置換基を少なくとも一つ有し、該置換基の除去に引き続く分子内求核置換反応により酸を発生する化合物が挙げられる。その好ましい形態は一般式(4)で表される化合物である。
次に一般式(4)で表される化合物について説明する。
一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9(ここでR9は水素原子または置換基を表す)、またはCR1011(ここで、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す)を表す。Lは連結基を表す。R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。
熱の作用により除去される置換基P2は水酸基、メルカプト基、アミノ基、炭素原子等の求核基に導入され保存時あるいは非画像部における分子内求核置換反応を妨げるが、画像部においては熱の作用により該置換基が分解、離脱するため分子内求核置換反応による酸の発生が可能になる。P2で表される有用な置換基としては、酸素原子に導入される(即ち、XがOである場合)ものではアルコキシカルボニル基(例えばt−ブトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、1−フェニルエトキシカルボニル基、1,1−ジフェニルエトキシカルボニル基、2−シクロヘキセンオキシカルボニル基等)、アルコキシメチル基(例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−オクチルオキシメチル基等)、酸素原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環基(テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、4,5−ジヒドロ−2−メチルフラン−5−イル基等)、1以上の置換基を有していてもよいシリル基(例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、およびβ位に水素原子を有する2級もしくは3級のアルキル基(例えば、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、シクロヘキシル、2−シクロヘキセニル等)等が好ましい例として挙げられる。
硫黄原子に導入されるもの(即ち、XがSである場合)ではアルコキシメチル基(例えばイソブトキシメチル基等)、酸素原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環基(テトラヒドロピラニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基等)、ベンジル基(例えばp−メトキシベンジル基、ビス(4−メトキシフェニル)メチル基、トリフェニルメチル基等)等が好ましい例として挙げられる。窒素原子に導入されるもの(即ち、XがNR9である場合)ではアルコキシカルボニル基(例えばt−ブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2−(2−メチル)ブトキシカルボニル基、2−(2−フェニル)プロピルオキシカルボニル基、2−クロロエトキシカルボニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、1−ナフトイル基等)もしくはホルミル基等が好ましい例として挙げられる。炭素原子に導入されるもの(即ち、XがCR1011である場合)としては3級のアルコキシカルボニル基(t−ブトキシカルボニル基等)が好ましい例として挙げられる。
7、R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、ここで言う置換基の種類は特に限定されないが、メチル基等の低級アルキル基が挙げられる。
Lは、2価の連結基を表す。連結基の種類は特に限定されないが、例えば、アルキレン基、アリーレン基(例えば、フェニレン基等)、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−あるいはそれらの組み合わせの基を挙げることができ、アルキレン基またはアリーレン基上にはアルキル基等の置換基を有していてもよい。これらの置換基の除去に引き続く分子内求核置換反応では5〜10員環を形成する形態が好ましく、特に好ましくは5ないし6員環を形成するものである。連結基Lとしてはこれらの大きさの環を形成するように選択することが好ましい。
本発明で用いる酸発生剤は、置換可能な位置に導入された重合性基が複数連結することによってポリマーを形成してもよい。ポリマーの分子量は1,000〜1,000,000の範囲内が好ましく、より好ましくは2,000〜300,000の範囲内、特に好ましくは2,000〜100,000の範囲内である。ポリマーは、1種類の酸発生剤のホモポリマーでも、2種類以上の酸発生剤を重合させて得られるコポリマーでも、あるいは1種類の酸発生剤と他のモノマーとのコポリマーでもよい。コポリマーとしてはランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー等いずれの形態でもよいが、合成的に容易なランダム共重合体が一般的である。酸発生剤としてポリマーを用いる場合、前述の説明で記した炭素数の規定を超えてもよい。コポリマー形成のために用いられる他のモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。以下に本発明で用いる一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
本発明に用いられる一般式(1)〜(4)で表される化合物は、例えば、特開2001−33909号明細書に記載されている合成方法によって合成することができる。
(一般式(5)または(6)で表される化合物)
本発明のおける酸発生剤の好ましい別の群は、下記一般式(5)または(6)で表される化合物である。
Figure 2007093942
式中、R1は塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、−OM基、−NR12基または−NHCOR3基を表わす。R1、R2、およびR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。Mは1価金属原子を表す。
2は塩素原子を除く上記R1と同義の基を表す。
Figure 2007093942
式中、R3及びR4は、それぞれ独立に塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基または−OM基を表す。Mは1価金属原子を表す。Q及びQ’は、それぞれ独立に−O−、−S−、−NH−から選ばれる連結基を表し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を表す。l及びmは、それぞれ0または1を表す。

一般式(5)または(6)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
(一般式(7)で表される化合物)
本発明のおける酸発生剤の好ましい別の群は、下記一般式(7)で表される化合物である。
Figure 2007093942
式中、R5及びR6は各々、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヒドロキシ基、置換アミノ基、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基から選ばれる基を表し、R5及びR6が互いに結合して環を形成してもよい。Z1は、少なくとも炭素原子2個、窒素原子1個を有する5又は6員の環基を表し、W1は置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表す。
1及びR2で表される、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基としては、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜30のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、トリフロロブチル基、ペンタフロロプロピル基、アセチレニル基、ブテニル基、およびノネニル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−アミノフェニル基、p−グリシジルフェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−シアノフェニル基、ナフチル基、1,5−ジメチルナフチル基、および2,6−ジメチルナフチル基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、およびチアゾリル基等が挙げられる。
アルコキシ基、アリールオキシ基、およびヘテロ環オキシ基(置換オキシ基)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基、ブテノオキシ基、フェノキシ基、p−アミノフェノキシ基、p−グリシジルフェノキシ基、p−ブチルイソシアナートフェノキシ基、p−トリメトキシシラノプロピルオキシフェノキシ基、ピリジンオキシ基、およびチオフェニルオキシ基等が挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、p−チアジアゾールアミノ基、トリオキシシラノプロピルアミノ基、およびp−トリメトキシプロピルオキシフェノキシアミノ基等を挙げることができる。
1で表される、置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基としては、例えば、R1及びR2で表される、アルキル基と同様なものが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−トリフロロメチルフェニル基、p−ブチルフェニル基、p−(フェニルスルホニル)フェニル基、p−(フェニルスルホニルアミノ)フェニル基、p−(フェニルカルボニルアミノ)フェニル基、p−(2,4−ジ−(t)−アミルフェニルスルホニルアミノ)フェニル基、p−メトキシフェニル基、およびナフチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子や臭素原子が好ましく、アルキル基やアルケニル基は、直鎖や分岐、飽和や不飽和を含んでいてもよい。
以下好ましい一般式(7)で表される酸発生剤の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
一般式(7)で表される化合物の合成方法は、特開2002−59651号に記載の方法に従って当業者であれば容易にできる。
本発明における酸発生剤を添加する方法は公知の添加方法に従って添加することができる。メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホオキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。また、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により0.1μm以上10μm以下の固体状微粒子にし添加することもできる。より好ましくは、固体状微粒子で添加される。
本発明で用いられる酸発生剤の添加量は、アニオン性染料1モル当たり10-3〜10モルが好ましく、特に10-2〜1モル用いるのが好ましい。酸発生剤のモル数は、ポリマーに酸発生基が組込まれている場合は酸発生基を基準にする。
上記範囲より少ないと、酸発生効果が小さいため好ましくなく、上記範囲より多いと感光材料の保存時に酸発生したり、膜質を変化させたりする問題のために好ましくない。
4)膜面pH
本発明における熱現像感光材料の非感光性層を有する面の膜面pHは、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、より好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。好ましくは、熱現像処理後の膜面pHは、熱現像前より0.2以上低く、より好ましくは0.4低い。
膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
(非感光性有機銀塩)
1)組成
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。有機銀塩は還元剤により還元されうる銀イオンを供給できる任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀およびこれらの混合物などを含む。本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。更に、エルカ酸銀含有率が2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
また、ステアリン酸銀含有率が1モル%以下であることが好ましい。前記ステアリン酸銀含有率を1モル%以下とすることにより、Dminが低く、高感度で画像保存性に優れた有機酸の銀塩が得られる。前記ステアリン酸銀含有率としては、0.5モル%以下が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
さらに、有機酸の銀塩としてアラキジン酸銀を含む場合は、アラキジン酸銀含有率が6モル%以下であることが、低いDminを得ること及び画像保存性の優れた有機酸の銀塩を得る点で好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
2)形状
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、またはりん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体またはジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5を越える長針状粒子に比べて熱現像時のかぶりが少ないという特徴を有している。特に、長軸と単軸の比が3以下の粒子は塗布膜の機械的安定性が向上し好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は1以上9以下であることが好ましく、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、最も好ましくは1以上3以下である。
前記球相当直径を0.05μm以上1μm以下とすることにより、熱現像感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる。前記球相当直径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい。本発明において、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
前記リン片状粒子において、粒子の球相当直径/aをアスペクト比と定義する。リン片状粒子のアスペクト比としては、熱現像感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる観点から、1.1以上30以下であることが好ましく、1.1以上15以下がより好ましい。
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
3)調製
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同2001−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、かぶりが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1モルに対し1モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して熱現像感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1モル%〜30モル%の範囲が好ましく、更に2モル%〜20モル%、特に3モル%〜15モル%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
4)添加量
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.1g/m2〜3.0g/m2が好ましく、より好ましくは0.5g/m2〜2.0g/m2、さらに好ましくは0.8g/m2〜1.7g/m2である。特に、画像保存性を向上させるためには、全塗布銀量が1.5g/m2以下、より好ましくは1.3g/m2以下であることが好ましい。本発明の好ましい還元剤を使用すれば、このような低銀量においても十分な画像濃度をが可能である。
(有機銀塩のための還元剤)
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤である熱現像剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2007093942
一般式(R)において、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
一般式(R)について詳細に説明する。
1)R11およびR11
11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、およびハロゲン原子等が挙げられる。
2)R12およびR12’、X1およびX1
12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、X1およびX1’も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアシルアミノ基が挙げられる。
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、および3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、およびスルファモイル基などが挙げられる。
4)好ましい置換基
11およびR11’として好ましくは炭素数1〜15の1級、2級または3級のアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、および1−メチルシクロプロピル基などが挙げられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で、その中でもメチル基、t−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、メチル基、t−ブチル基が最も好ましい。
12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、およびメトキシエチル基などが挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはt−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
Lは好ましくは−CHR13−基である。
13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、該アルキル基としては鎖状のアルキル基の他、環状のアルキル基も好ましく用いられる。また、これらのアルキル基の中にC=C結合を有しているものも好ましく用いることができる。アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、または3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、または2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
11、R11’が3級のアルキル基でR12、R12’がメチル基の場合、R13は炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等)が好ましい。
11、R11’が3級のアルキル基でR12、R12’がメチル基以外のアルキル基の場合、R13は水素原子が好ましい。
11、R11’が3級のアルキル基でない場合、R13は水素原子または2級のアルキル基であることが好ましく、2級のアルキル基であることが特に好ましい。R13の2級アルキル基として好ましい基はイソプロピル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
上記還元剤はR11、R11’、R12、R12’およびR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調製することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明の還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
上記以外の本発明の好ましい還元剤の例は特開2001−188314号、同2001−209145号、同2001−350235号、同2002−156727号、EP1278101A2号に記載された化合物である。
本発明において還元剤の添加量は0.1g/m2〜3.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2g/m2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.3g/m2〜1.0g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは8モル%〜30モル%であり、10モル%〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
(感光性ハロゲン化銀)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。その中でも臭化銀、ヨウ臭化銀およびヨウ化銀が好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀、臭化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀やヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
2)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627、特開2000−347335号記載の方法も好ましい。
3)粒子サイズ
感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
4)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
5)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第6族〜第13族の金属又は金属錯体を含有することが出来る。好ましくは、第6族〜第10族の金属または金属錯体である。周期律表の第6族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、鉄、ロジウム、ルテニウム、およびイリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)64-、[Fe(CN)63-、[Ru(CN)64-、[Os(CN)64-、[Co(CN)63-、[Rh(CN)63-、[Ir(CN)63-、[Cr(CN)63-、および[Re(CN)63-などが挙げられる。
本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、またはアミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)64-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
6)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に持することが必要であり、分子量は、10,000〜1,000,000のゼラチンを使用することが好ましい。また、ゼラチンの置換基をフタル化処理することも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
7)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I)で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やかぶりの性能に合わせて所望の量にすることができるが、画像形成層のハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10-4モル〜10-1モルである。
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。
本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
8)化学増感
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記カルコゲン増感と組み合わせて、あるいは単独で金増感法にて化学増感されていることが好ましい。金増感剤としては、金の価数が+1価または+3価が好ましく、金増感剤としては通常用いられる金化合物が好ましい。代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、またはピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特開2002−278016号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられる硫黄、セレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8モル〜10-2モル、好ましくは10-7モル〜10-3モル程度を用いる。
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モルから10-3モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-4モルである。
本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40℃〜95℃程度である。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、還元剤を用いることが好ましい。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素が好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも良い。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
9)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
本発明における熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28頁〜32頁の表E及び表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」又は「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開平2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開平2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開平2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開平2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開平2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開平2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開平2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特開2004−239943号に記載の一般式(1)と同義)、又は化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特開2004−245929号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2007093942
式中RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員若しくは6員の芳香族環(芳香族複素環を含む)のテトラヒドロ体、若しくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2は水素原子又は置換基を表す。同一分子内に複数のR2が存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。L1は脱離基をあらわす。EDは電子供与性基をあらわす。Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。X1は置換基を表し、m1は0〜3の整数を表す。Z2は、−CR1112−、−NR13−、又は−O−を表す。R11、R12はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表す。R13は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。X1はアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。L2はカルボキシ基若しくはその塩又は水素原子を表す。X2はC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。Y2はC=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開平2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特開2004−245929号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2007093942
式中、Xは1電子酸化される還元性基をあらわす。YはXが1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、又はベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。L2はXとYを連結する連結基を表す。R2は水素原子又は置換基を表す。同一分子内に複数のR2が存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。X2はC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。Y2はC=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、又は「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開平2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及びベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及び5−メルカプトテトラゾール基である。
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、および3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
また窒素又はリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基など)又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、フォスフォニオ基(トリアルキルフォスフォニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基、トリアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 -、PF6 -、およびPh4-等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオン又はメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
吸着性基として窒素又はリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
一般式(X) (P−Q1−)i−R(−Q2−S)j
一般式(X)においてP、Rは、各々独立して増感色素の部分構造ではない窒素又はリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2は、各々独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、又はこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sはタイプ(1)又は(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1又は2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は、感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することもできる。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は水、メタノール、またはエタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高く又は低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高く又は低くして溶解し、これを添加しても良い。
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。これらの化合物の添加時期は、増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9モル〜5×10-1モル、更に好ましくは1×10-8モル〜5×10-2モルの割合でハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に含有する。
10)吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
式(I) A−(W)n−B
式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0又は1を表し、Bは還元基を表す。
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、又はハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(又はその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、又はエチニル基等が挙げられる。
吸着基としてメルカプト基(又はその塩)とは、メルカプト基(又はその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(又はその塩)の置換したヘテロ環基又はアリール基又はアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環若しくは縮合環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、およびトリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状若しくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、又はジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、又は配位結合で銀イオンに配位し得る、−S−基又は−Se−基又は−Te−基又は=N−基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、およびベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
吸着基としてスルフィド基又はジスルフィド基とは、−S−、又は−S−S−の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、または2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、またはインダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、及びハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150頁−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明におけるBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0V〜約0.7Vの範囲である。
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
本発明における式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基又はポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
本発明における式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明における式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
以下に本発明における式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
さらに欧州特許1308776A2号明細書p73〜p87に記載の具体的化合物1〜30、1”−1〜1”−77も本発明における吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
これらの化合物は公知の方法にならって容易に合成することができる。本発明における式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
本発明における式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6モル以上1モル以下、好ましくは1×10-5モル以上5×10-1モル以下、さらに好ましくは1×10-4モル以上1×10-1モル以下である。
本発明における式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸又は塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
11)ハロゲン化銀の複数併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
12)塗布量
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03g/m2以上0.6g/m2以下であることが好ましく、0.05g/m2以上0.4g/m2以下であることがさらに好ましく、0.07g/m2以上0.3g/m2以下であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
13)感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
ハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
(好ましい塗布液の溶媒)
本発明において熱現像感光材料の画像形成層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特開2002−278017号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1モル%〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5モル%〜10モル%の範囲で、より好ましくは1モル%〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
1−NHNH−Q2
式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、およびN−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、および4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5員〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5員〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
Figure 2007093942
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、または炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
(水素結合性化合物の説明)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)またはアミノ基(−NHR、Rは水素原子またはアルキル基)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
水酸基またはアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
Figure 2007093942
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、および4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、および2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、および3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、およびベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、およびN−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007093942
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特開2002−318431号に記載のものがあげられる。
本発明の一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明の一般式(D)の化合物は還元剤に対して、1モル%〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20モル%〜100モル%の範囲である。
(バインダー)
本発明における画像形成層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、およびポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
本発明では、有機銀塩を含有する層のバインダーのガラス転移温度は10℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃〜70℃であることがより好ましく、23℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算される。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。
Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
尚、各モノマーの単独重合体ガラスの転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その質量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。
最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの質量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの質量W0を用いて以下のように表すことができる。25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
本発明のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1nm〜50000nm、より好ましくは5nm〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
・P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
・P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
・P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
・P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
・P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
・P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
・P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
・P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
・P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
・P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
・P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
・P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
・P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
・P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
・P−17;−St(61.3)−イソプレン(35.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg17℃)
・P−18;−St(67)−イソプレン(28)−Bu(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg27℃)
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、DVB;ジビニルベンゼン、VC;塩化ビニル、AN;アクリロニトリル、VDC;塩化ビニリデン、Et;エチレン、IA;イタコン酸。
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。 これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のもしくはスチレン−イソプレン共重合体ラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との質量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60質量%〜99質量%であることが好ましい。また、本発明におけるポリマーラッテクスは、アクリル酸又はメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2質量%〜5質量%含有する。本発明におけるポリマーラテックスは、アクリル酸を含有することが好ましい。好ましいモノマー含量の範囲は前記と同様である。また、スチレン−イソプレン共重合体における共重合体比などはスチレン−ブタジエン共重合体の場合と同じである。
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−9,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。また、スチレン−イソプレン共重合体の例としては前記のP−16、17が挙げられる。
本発明の熱現像感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスをバインダーに用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の質量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の質量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2g/m2〜30g/m2、より好ましくは1g/m2〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
本発明において熱現像感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。溶媒の水含有率は50質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が良い。
好ましい溶媒組成の具体例を挙げると、水100の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
(かぶり防止剤)
1)有機ポリハロゲン化合物
以下、本発明で用いることができる好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。本発明の好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、電子求引性基で置換されたアルキル基、電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、およびスルファモイル基等が挙げられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、またはアリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
1およびZ2は好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO2−、−C(=O)N(R)−、−SO2N(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2−、−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO2−、−C(=O)N(R)−である。ここでいうRとは水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基またはヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO2−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることが出来る。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基またはその塩、SO3H基またはその塩、PO3H基またはその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示す。
Figure 2007093942
上記以外の本発明に用いることが出来るポリハロゲン化合物としては、US3874946号、US4756999号、US5340712号、US5369000号、US5464737号、US6506548号、特開昭50−137126号、同50−89020号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられている化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10-4モル〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10-3モル〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10-2モル〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明において、かぶり防止剤を熱現像感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
2)その他のかぶり防止剤
その他のかぶり防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
本発明における熱現像感光材料はかぶり防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては画像形成層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。
また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特開2002−303954号、特開2002−303951等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の画像形成層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
4)染料、顔料
本発明の画像形成性層には、前記フタロシアニン化合物とともに、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
5)造核剤
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に造核剤を添加することが好ましい。造核剤やその添加方法及び添加量については、特開平11−65021号号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特開2000−284399号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、造核促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で造核剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やかぶりなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1mg/m2〜500mg/m2が好ましく、0.5mg/m2〜100mg/m2がより好ましい。
(塗布液の調製および塗布)
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
(その他の構成成分)
本発明の熱現像感光材料における非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として熱現像感光材料に設けられる。
1)表面保護層
本発明に用いることの出来る表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
2)親水性バインダー
本発明における非感光性層、あるいは表面保護層のバインダーとして用いることの出来る親水性バインダーは、ゼラチンなどの動物性たんぱく質由来のポリマーおよびセルロース誘導体などの天然ポリマー、あるいは合成ポリマーなどがある。
好ましくは、ゼラチンおよびその誘導体、あるいはポリビニルアルコールおよびその誘導体である。
ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
3)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m2〜400mg/m2、より好ましくは5mg/m2〜300mg/m2である。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0μm〜8.0μm、さらに好ましくは2.0μm〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
また、画像形成層面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
本発明において、マット剤は熱現像感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
4)疎水性ポリマーラテックス
本発明の熱現像感光材料は、非感光性層の少なくとも1層のバインダーとしてバインダーの50質量%以上に疎水性ポリマーラテックスを用いることが好ましい。このような疎水性ポリマーラテックスを含有する非感光性層として、画像形成層面側の表面保護層が好ましい。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
5)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION」(Macmillan Publishing Co.,Inc.刊、1977年刊)、77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
6)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特開2003−57780号および特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特開2003−57780号および特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
本発明においてフッ素系界面活性剤は画像形成層面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減もしくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は画像形成層面、バック面それぞれに0.1mg/m2〜100mg/m2の範囲で、より好ましくは0.3mg/m2〜30mg/m2の範囲、さらに好ましくは1mg/m2〜10mg/m2の範囲である。特に特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01mg/m2〜10mg/m2の範囲が好ましく、0.1mg/m2〜5mg/m2の範囲がより好ましい。
7)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO2、SnO2が好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が好ましい。
特にSbを添加したSnO2が好ましい。異種原子の添加量は0.01モル%〜30モル%の範囲が好ましく、0.1から10モル%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m2〜1000mg/m2の範囲で、より好ましくは10mg/m2〜500mg/m2の範囲、さらに好ましくは20mg/m2〜200mg/m2の範囲である。
本発明の帯電防止層は画像形成層面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
8)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130℃〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層もしくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
9)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層(画像形成層)あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
10)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F.Kistler、Petert M.Schweizer著「LIQUID FILM COATING」(CHAPMAN&HALL社刊、1997年)、399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S-1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
本発明の塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明の好ましいインライン混合機は特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明の好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
本発明の塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明の好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
11)包装材料
本発明の熱現像感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50mL/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10mL/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0mL/atm・m2・day以下である。水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
12)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
(画像形成方法)
1)露光
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、より好ましくは3秒〜30秒、さらに好ましくは5秒〜25秒である。
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2段〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
熱現像機の小型化および熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特開2002−289804号および同−091114号に記載されている。
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカル・ドライレーザーイメージャーFM−DPL、およびDRYPIX7000を挙げることができる。FM−DPLに関しては、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(PET支持体の作製)
1)製膜
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作製した。
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
2)表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
3)下塗り
<下塗層塗布液の作製>
処方(1)(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5)10質量%溶液 5.4g
綜研化学(株)製MP−1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)0.91g
蒸留水 935mL
処方(2)(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン質量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩(8質量%水溶液)
20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
蒸留水 854mL
処方(3)(バック面側第2層用)
SnO2/SbO(9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物)
84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製MP−1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
NaOH(1質量%) 6mL
プロキセル(ICI社製) 1mL
蒸留水 805mL
<下塗り>
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(画像形成層面)に上記下塗り塗布液処方(1)をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6mL/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方(2)をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7mL/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方(3)をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7mL/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
(バック層)
1)バック層塗布液1〜21の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、一般式(PC−1)で表わされる金属フタロシアニン染料の5質量%水溶液(種類と添加量を表1に示す。)、固定化剤(種類と添加量を表1に示す。)、酸発生剤(種類と添加量を表1に示す。)、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水570mLを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2.3mL、を混合した。塗布直前にエタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比96.4/3.6)ラテックス20質量%液50ccを混合した。
固定化剤および酸発生剤は、下記の溶液または分散物を調製して添加した。
<固定化剤の溶液>
下記のB−1〜B−3のポリマーの25質量%水溶液となるように重合合成を行い、調製した。
Figure 2007093942
<酸発生剤の合成>
一般式(2)及び一般式(3)の化合物(S−20),(A−1),および(S−8)の合成は、特開平2001−33909の実施例の方法により行った。以下にその合成方法を示す。
(合成例1)化合物S−(20)の合成
Figure 2007093942
1,4−ブタンジオ−ル(化合物1−1、5g)をTHF(50mL)に溶解し,カリウム−t−ブトキシド(6.23g)を添加した。さらにこの溶液中に室温下でジ−t−ブチルジカーボネート(化合物1−2、12.1g)を加え2時間撹拌を行った。得られた溶液を水(100mL)に加え、さらに酢酸エチル(200mL)を加えて有機層を抽出した。さらに、有機層を2回水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い化合物1−3を油状化合物として3g得た。
次に化合物1−3(2g)を塩化メチレン(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(1.57mL)、4−ジメチルアミノピリジン(0.28g)およびトルエンスルホニルクロライド(2.16g)を加え室温で2時間撹拌した。反応液を水(10mL)にあけ有機層を抽出した。さらに、有機層を2回水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い例示化合物S−(20)を無色透明の油状化合物として1.5g得た。
(合成例2)化合物A−(1)の合成
特開平8−248561号公報に記載の方法に準じて合成した2−メチル−2−(2−ヒドロキシメチル)アセト酢酸tーブチルエステル(18g)、トリエチルアミン(19.8g)および4−ジメチルアミノピリジン(2g)を塩化メチレン(90mL)に溶解した。さらにこの溶液中にパラビニルベンゼンスルホニルクロライド(18g)(パラビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムに塩化チオニルを作用させることによって合成したもの)を添加し室温で4時間撹拌した。反応液に水(100mL)を加え有機層を抽出し、さらに水(100mL)で2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(2mg)を添加して減圧濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)によって精製することにより無色透明のオイル17.7g(収率54.1%)を得た。
(合成例3)化合物S−(8)の合成
前記合成例2で合成した化合物A−(1)(16.6g)をトルエン20mLに溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(110mg)のトルエン(3mL)溶液を加えて75℃で3時間加熱攪拌し、その後再び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(110mg)のトルエン(3mL)溶液を加えて75℃で3時間加熱攪拌した。反応液を室温に冷やし、メタノール(250mL)にあけて析出した白色ポリマーを単離することにより、分子量59000の化合物S−(8)が15.2g(収率92%)得られた。
<一般式(2)及び(3)酸発生化合物の固体分散物の調製>
上記で合成した酸発生化合物S−20を10gとクラレポバール MP−203(クラレ(株)製)2.5gに水87.5gを添加し、よく混合しスラリーを作製した。このスラリーを分散ビーズ(平均直径0.5mmのジルコニア粒)84gとともにベッセルに入れ、分散機サンドミル(1/16Gサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)で5時間分散し、平均粒子サイズ0.7μmの固形分濃度10質量%の固体分散物を得た。同様に、酸発生化合物S−20の代わりに、酸発生化合物A−1、S−8をそれぞれ同様に平均粒子サイズ0.7μmの固形分濃度10質量%の固体分散物を作製した。
<一般式(5)及び(6)の化合物の水溶液の調製>
一般式(5)の化合物として、化合物(1−1)及び(1−2)の粉末4gを100mLの水に溶解し、4質量%水溶液を調製した。
一般式(6)の化合物として、化合物(1−5)を用いて同様に4質量%水溶液を調製した。
<一般式(7)酸発生化合物の固体分散物の調製>
一般式(7)の化合物として、化合物(F−2)を10gを10gとクラレポバール MP−203(クラレ(株)製)2.5gに水87.5gを添加し、よく混合しスラリーを作製した。このスラリーを分散ビーズ(平均直径0.5mmのジルコニア粒)84gとともにベッセルに入れ、分散機サンドミル(1/16Gサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)で5時間分散し、平均粒子サイズ0.5μmの固形分濃度10質量%の固体分散物を得た。同様に、酸発生化合物(F−2)の代わりに、酸発生化合物(F−11)及び(F−17)を用いてそれぞれ同様に平均粒子サイズ0.5μmの固形分濃度10質量%の固体分散物を作製した。
Figure 2007093942
2)バック面U層(第2の非感光性層)塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水950mLを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液2.3mL、を混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液80mLを混合した。
3)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)20g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、水840mLを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5.8mL、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.5g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液10mL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液20mL、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%溶液を2.4mL、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4mL、エタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比96.4/3.6)ラテックス20質量%液32gを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液25mLを混合しバック面保護層塗布液とした。
4)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、順にバックU層、バック層およびバック面保護層の各塗布液を塗布ゼラチン量が1m2当たりそれぞれ0.5g、1.1g、および1、1gとなるように同時重層塗布し、乾燥した。
得られた塗布面状を下記基準によって官能評価した結果を表1に示した。その結果、
試料No.1は、試料に異物が発生し、塗布面状として実用不可レベルであった。
塗布面状の評価としては、○、△、×で示した。○は、異物の発生はなく、全く問題のないレベル、△は100倍ルーペで観察される程度の小さい異物が発生しているが、実用上問題のないレベル、×は目視で観察される異物が発生し、実用上問題なレベルである。
Figure 2007093942
(画像形成層、中間層、および表面保護層)
1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》
蒸留水1421mLに1質量%臭化カリウム溶液3.1mLを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5mL、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mLに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mLに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10mL添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8mL添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mLに希釈した溶液Cと臭化カリウム44.2gとヨウ化カリウム2.2gを蒸留水にて容量400mLに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。その後、分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10-3モル加え、1分後にN,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.042μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の{100}面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を47℃に変更し、溶液Bは臭化カリウム15.9gを蒸留水にて容量97.4mLに希釈することに変更し、溶液Dは臭化カリウム45.8gを蒸留水にて容量400mLに希釈することに変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり1.1×10-4モル、分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液の添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として7.0×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して3.3×10-3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを銀1モルに対して4.7×10-3モル添加に変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。
ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均球相当径0.080μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
《ハロゲン化銀乳剤3の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を27℃に変更する以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で1:1を固体分散物(ゼラチン水溶液)として添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として6×10-3モル、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり5.2×10-4モルに変え、テルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10-4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10-3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均球相当径0.034μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。
《塗布液用混合乳剤Aの調製》
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水し、塗布液用混合乳剤1kgあたり0.34gとなるように1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。
さらに「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」として、化合物1と20と26をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。
2)脂肪酸銀分散物の調製
<再結晶ベヘン酸の調製>
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
<脂肪酸銀分散物の調製>
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Bの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Bのみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。
また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった(a,b,cは本文の規定)。
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、3回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
3)還元剤分散物の調製
《還元剤−1分散物の調製》
還元剤−1(2,2'−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。
こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
《還元剤−2分散物の調製》
還元剤−2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。
得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
4)水素結合性化合物−1分散物の調製
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物−1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
5)現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
6)現像促進剤−2及び色調調整剤−1の分散物調製
現像促進剤−2及び色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
7)ポリハロゲン化合物の調製
《有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
《有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
8)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
9)メルカプト化合物の調製
《メルカプト化合物−1水溶液の調製》
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
《メルカプト化合物−2水溶液の調製》
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
10)SBRラテックス液の調製
SBRラテックスは以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/L、NaOH14.06mL、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mLに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)であった。
2.塗布液の調製
1)画像形成層塗布液の調製
脂肪酸銀分散物1000gに、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、フタラジン化合物−1溶液、SBRラテックス(Tg:17℃)液、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液、および蒸留水を順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀混合乳剤Aを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液した。
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物163g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5%水溶液27mL、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液4200mLにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27mL、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135mL、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、8.9mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
3)表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水840mLに溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mLを加えて混合し、塗布直前に4質量%のクロムみょうばん40mLをスタチックミキサーで混合したものを塗布液量が26.1mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
4)表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水800mLに溶解し、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして8.0g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40mL、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を5.5mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を5.5mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28mL、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21gを混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3mL/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
3.熱現像感光材料の作製
1)熱現像感光材料1〜21作製
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。バック層1〜21に対応して試料1〜21とした。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は31℃に、表面保護層第1層の塗布液は36℃に、表面保護層第2層の塗布液は37℃に温度調整した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 5.42
ポリハロゲン化合物−1 0.12
ポリハロゲン化合物−2 0.25
フタラジン化合物−1 0.18
SBRラテックス 9.70
還元剤−1 0.40
還元剤−2 0.40
水素結合性化合物−1 0.58
現像促進剤−1 0.019
現像促進剤−2 0.016
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.012
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10mm〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196Pa〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10℃〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23℃〜45℃、湿球温度15℃〜21℃の乾燥風で乾燥させた。乾燥後、25℃で湿度40%RH〜60%RHで調湿した後、膜面を70℃〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
Figure 2007093942
4.写真性能の評価
1)準備
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
<包装材料>
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン2質量%を含むポリエチレン50μmを積層したラミネートフィルム:
酸素透過率:0.02mL/atm・m2・25℃・day;
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
2)熱現像感光材料の露光・現像
各試料は富士メディカル(株)ドライレーザーイメージャーDRYPIX7000(最大50mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて露光、および熱現像(107℃−121℃−121℃に設定した3枚のパネルヒータで合計14秒)され、得られた画像の評価を濃度計により行った。
3)評価項目
<膜面pHの測定>
熱現像処理する前と別現像処理後の試料について、バック面の膜面pHを測定した。
測定方法は、バック面が塗布乾燥を経て形成された後、その試料の2cm2に3mLの蒸留水を滴下し、暗室で25℃90%RHの雰囲気中に30分放置した後、pH計を膜の表面にあて、2分後に示すpH値を測定した。東亜電波工業(株)製のガラス電極式水素イオン濃度計を用い、ガラス電極はGST−5213Fを使用した。
<ハイライト部色調>
得られた画像のハイライト部について、5名の被験者に官能評価を実施した。相対的に好ましいものを10点として、試料の評価点を平均し、平均点色調評価を5段階で、表1に示した。5が最も好ましく、1が最も劣り、3は5より劣るが実用上問題のないレベルである。
<色転写試験>
これは、画像形成後、綿手袋を着用して試料を長時間取り扱う場合に手袋への色の転写の発生を強制的に試験する方法である。
熱現像後の感光材料を25℃80%RH環境下で3時間調湿し、バック層側の表面を白地の面手袋で長さ20cmを1000往復擦った。そのとき面手袋の着色の程度を5点感応評価した。5が最も好ましく、1が最も劣り、3は5より劣るが実用上問題のないレベルである。
<画像保存性>
保存後のハイライト部色調の変化を評価した。
ハイライト部の試料を、半分に裁断し、一方は、冷蔵保存した。もう一方は、蛍光灯により500Luxの照度の下で、25℃70%RHに保たれた室内に重ならないようにしてデスク上に4週間静置した。
その後、冷蔵庫に保存した試料を暗所で室温に戻し、両者を標準ライトボックス上に並べ、目視でハイライト色調の変化度合いを官能評価し、5段階で示した。
5が全く問題なく、1が実用上問題がある。3はギリギリ実用上問題のないレベルである。
4)結果
得られた結果を表2に示した。
試料No.1は塗布面状に問題があり、試料No.2は、色転写に問題があった。
一方、試料No.3〜21は、膜面pHが、熱現像処理後に、0.2以上低下し、色転写性および画像保存性に優れている結果であった。
Figure 2007093942
実施例2
1.試料の作製
実施例1において、画像形成層のSBRラテックスの代わりに、下記のイソプレンラテックスを用いて、さらに水素結合性化合物−1を除いて、その他は同様にして試料101〜121を作製した。
(イソプレンラテックス液の調製)
イソプレンラテックス(TP−2)は以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に蒸留水1500g添加し、90℃で3時間加熱し、重合釜のステンレス表面やステンレス製撹拌装置の部材に不動態皮膜を形成させる。この処理を行った重合釜に、窒素ガスを1時間バブリングした蒸留水582.28g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製))9.49g、1mol/LのNaOHを19.56g、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.20g、スチレン314.99g、イソプレン190.87g、アクリル酸10.43g、tert−ドデシルメルカプタン2.09gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度225rpmで撹拌し、内温65℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム2.61gを水40mLに溶解した液を添加し、そのまま6時間撹拌した。この時点でのは重合転化率は固形分測定から90%であった。ここで、アクリル酸5.22gを水46.98gに溶解した液を添加し、続いて水10gを添加し、過硫酸アンモニウム1.30gを水50.7mLに溶解した液をさらに添加した。添加後、90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後、内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.3に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、イソプレンラテックス(TP−2)を1248g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、142ppmであった。
上記ラテックスは平均粒径113nm、Tg=15℃、固形分濃度41.3質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.4質量%、イオン伝導度5.23mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し25℃にて測定)であった。
2.性能評価
実施例1と同様に評価した結果、本発明の試料は実施例1と同様に良好な結果を示した。

Claims (13)

  1. 支持体上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、および有機銀塩のための還元剤を有する画像形成層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、該非感光性層がアニオン性の水溶性染料、該水溶性染料の固定化剤、および酸発生剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
  2. 前記酸発生剤が加熱により酸を発生し得る化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 前記アニオン性の水溶性染料が下記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン染料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、Mは金属原子を表す。R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16はそれぞれ独立して水素原子、置換基であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが電子求引性基である。R2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。)。
  4. 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが一般式(II)で表される基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、L1**−SO2***−SO3***−SO2NRN***−SO−***−CO−***−CONRN***−COO−***−COCO−***−COCO2*、または**−COCONRN*を表す。**はこの位置でフタロシアニン骨格と結合し、*はこの位置でR17と結合することを示す。RNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基を表す。R17は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)。
  5. 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、およびR15が水素原子であり、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16の少なくとも一つが一般式(II)で表される基であることを特徴とする請求項4に記載の熱現像感光材料。
  6. 前記一般式(PC−1)で表される金属フタロシアニン化合物のR1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、およびR16のうち4つ以上が一般式(II)で表される基であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の熱現像感光材料。
  7. 前記酸発生剤が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
    一般式(1) W1(OP1k
    (一般式(1)において、W1はW1(OH)kで表される酸の残基を表し、P1はそれぞれ独立に熱により離脱する置換基を表し、kは1または2の整数を示す。)。
  8. 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物並びに上記化合物の重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、R1はハメットのσp値が0より大きい電子求引性基を表す。R2は1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R3は熱により離脱する基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。);
    Figure 2007093942
    (式中、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立に水素原子、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基または1以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、W1は一般式(1)における定義と同義である。);
    一般式(4) P2−X−L−C(R7)(R8)−OW1
    (式中、P2は熱の作用により離脱する置換基を表す。XはO、S、NR9、またはCR1011を表す。R9、R10、R11、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは連結基を表す。W1は一般式(1)における定義と同義である。)。
  9. 前記酸発生剤が下記一般式(5)または(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、R1は塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、−OM基、−NR12基または−NHCOR3基を表わす。R1、R2、およびR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。Mは1価金属原子を表す。R2は塩素原子を除く上記R1と同義の基を表す);
    Figure 2007093942
    (式中、R3及びR4は、それぞれ独立に塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基または−OM基を表す。Mは1価金属原子を表す。Q及びQ’は、それぞれ独立に−O−、−S−、−NH−から選ばれる連結基を表し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を表す。l及びmは、それぞれ0または1を表す。)。
  10. 前記酸発生剤が下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、R5及びR6は各々、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、ヒドロキシ基、置換アミノ基、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基から選ばれる基を表し、R5及びR6が互いに結合して環を形成してもよい。Z1は、少なくとも炭素原子2個、窒素原子1個を有する5又は6員の環基を表し、W1は置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表す。)。
  11. 前記固定化剤が下記一般式(FX−1)〜(FX−4)で表される三級アミノ基、あるいは四級アンモニウム基を有するビニルモノマー単位を有するポリマー化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
    Figure 2007093942
    (式中、R1は水素原子または1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基を表わす。Lは1個〜20個の炭素原子を有する2価の連結基を表わす。Eは炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環基を表わす。nは0または1である。);
    Figure 2007093942
    (式中、R1、L、nは一般式(FX−1)と同義である。R4、R5は互いに独立に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、もしくは7個〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を表わす。R4、R5は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。);
    Figure 2007093942
    (式中R1、L、nは一般式(FX−1)と同じものを表す。G+は四級化され、かつ炭素原子との二重結合を有する窒素原子を構成成分として含むヘテロ環を表わす。X-は一価の陰イオンを表わす。);
    Figure 2007093942
    (式中R1、L、nは一般式(FX−1)におけると同じものを表わす。R4、R5は一般式(FX−2)におけると同じものを表す。R6はR4、R5を表わすものと同じものの中から選ばれる。X-は一般式(VI)におけると同じものを表わす。R4、R5、およびR6は相互に連結して窒素原子とともに環状構造を形成してもよい。)。
  12. 前記支持体の一方の面上に前記画像形成層を配し、他方の面上に前記非感光性層を配してなることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  13. 前記非感光性層を有する面の膜面pHが熱現像後に熱現像前より0.2以上低いことを特徴とする請求項12に記載の熱現像感光材料。
JP2005282491A 2005-09-28 2005-09-28 熱現像感光材料 Pending JP2007093942A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005282491A JP2007093942A (ja) 2005-09-28 2005-09-28 熱現像感光材料
US11/519,969 US20070072136A1 (en) 2005-09-28 2006-09-13 Photothermographic material

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005282491A JP2007093942A (ja) 2005-09-28 2005-09-28 熱現像感光材料

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007093942A true JP2007093942A (ja) 2007-04-12

Family

ID=37894489

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005282491A Pending JP2007093942A (ja) 2005-09-28 2005-09-28 熱現像感光材料

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20070072136A1 (ja)
JP (1) JP2007093942A (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5293470A (en) * 1976-02-02 1977-08-05 Fuji Photo Film Co Ltd Gelatin curing agent
US5135835A (en) * 1986-04-18 1992-08-04 Fuji Photo Film Co., Ltd. Heat development using dye fixing materials with oil droplets and/or polymeric latexes
JPH01196038A (ja) * 1988-01-30 1989-08-07 Konica Corp ハロゲン化銀写真感光材料
US20060057512A1 (en) * 2004-09-14 2006-03-16 Fuji Photo Film Co., Ltd. Photothermographic material
JP2006189508A (ja) * 2004-12-28 2006-07-20 Fuji Photo Film Co Ltd 熱現像感光材料およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20070072136A1 (en) 2007-03-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4369876B2 (ja) ハロゲン化銀感光材料および熱現像感光材料
JP2007233097A (ja) 熱現像感光材料
JP2007065355A (ja) 熱現像感光材料
JP4459138B2 (ja) 熱現像感光材料を用いた画像形成方法
JP2006189508A (ja) 熱現像感光材料およびその製造方法
JP4391482B2 (ja) 熱現像感光材料
JP2007003834A (ja) 熱現像感光材料およびその製造方法
JP4420774B2 (ja) 熱現像感光材料
JP4727637B2 (ja) 熱現像感光材料
JP4424933B2 (ja) 熱現像感光材料、及びその画像形成方法
JP2006154714A (ja) 熱現像感光材料および画像形成方法
JP2007187885A (ja) 熱現像感光材料
JP2007093942A (ja) 熱現像感光材料
JP2005301148A (ja) 熱現像感光材料
JP2007093943A (ja) 黒白熱現像感光材料
JP2006091358A (ja) 熱現像感光材料
JP2007187883A (ja) 熱現像感光材料
JP2006106697A (ja) 熱現像感光材料
JP2005091602A (ja) 熱現像感光材料
JP2007017918A (ja) 熱現像感光材料
JP2007052293A (ja) 熱現像感光材料
JP2006091181A (ja) 熱現像感光材料を用いた画像形成方法
JP2007065000A (ja) 熱現像感光材料
JP2005128391A (ja) 熱現像感光材料
JP2007264140A (ja) 熱現像感光材料

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20070206