以下、添付の図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態の車両企画支援システムを実現するための構成について説明する。
本実施形態の車両企画支援システムは、図1に示すように、車両モデルを構築するための車両データを格納したデータベース1と、データベース1に格納された車両データを利用して、企画しようとする車両の企画車両モデルを構築する演算装置としてのコンピュータ2とを有する。
コンピュータ2は、ネットワーク3を介して、企画部門、管理部門、デザイン部門、設計部門、実験部門及び解析部門の各端末4と接続されている。コンピュータ2はまた、ネットワーク3を介して、評価用スクリーン5とも接続されている。これにより、評価用スクリーン5で、オペレータを含む多数の者が同時に企画車両を検討することができる。
なお、本発明の企画支援システムの目標値設定部、性能演算部及び達成度演算部は、それぞれコンピュータ2による処理機能に相当し、これらの処理機能は、コンピュータ2においてプログラムを実行することにより実現される。
データベース1に格納されているデータは、実研部門、デザイン部門、設計部門などが、統一した基準でデータを収集し、それを蓄えたものである。かかる統一基準データが蓄えられていることが、本企画支援システムの前提となる。
データベース1には、図2に示すように、既存車両データ11、ユニット/部品データ12、企画車両データ13、演算用データ14、評価用補助データ15、及び補助データ16が含まれる。以下、各データについて説明する。
まず、既存車両データ11について説明する。
データベース1には、過去に存在したほぼ全ての車両に関して、ある統一した基準に基づいてデータ取りされたデータ(既存車両データ)が格納されている。既存車両データには、車体データ、性能データ、及びユニット/部品データが含まれる。
車体データには、諸元値、付随情報、及び性能データが含まれる。諸元値は、図3に示すように、例えば、既存車両の全長、ホイールベース、馬力などを数値で表したものである。また、付随情報は、価格や、各車両の顧客評価指標点、例えば、エンジン性能の満足度を一定の基準の指標点に換算したものである。
なお、既存車データには、例えば、企画しようとする車両の1つ前の型(旧型車)のデータも含まれる。この既存車データから、後述するように、基準車両或いはベンチマーク車両(競合車両)が選択される。また、企画しようとする車両の旧型車もベンチマーク車両として選択可能である。
また、性能データには、車両評価項目別性能、及び、既存車両に使用されているユニット/部品性能が含まれる。
車両評価項目別性能には、複数の既存車両について、所定の評価項目ごとに車両の性能評価をそれぞれ数値化した性能評価値、すなわち、車両の性能に関して定義した項目(車両評価項目)についての評価点が含まれる。
ここで、評価項目とは、車両の性能を項目別に予め定めたものであり、図4に示す例では、ハンドリング性能や燃費性能など、十数項目が挙げられている。また、評価項目の性能評価値は、各既存車両について共通の試験方法及び基準に基づいて得られた客観的データ(評価点)である。例えば、所定の基準が定められた加速度試験やスラローム試験により得られたデータを、一定の基準の評価点に換算したものである。この評価点は、全ての既存車両について、データベースの既存車両データに格納されている。これにより、車両どうしの相対的な比較が可能となる。
また、ユニット/部品性能には、ユニット性能データ及び部品性能データが含まれる。ここで、ユニットとは、サスペンションでは、アーム(部品)やジョイント(部品)等のアセンブリ品を指す。ユニット性能データには、各車両に搭載されているエンジン、ミッション、サスペンションなどの、例えば、馬力、ギア比、レバー比等の性能や、空調性能のデータが含まれる。また、部品性能データには、タイヤ、サスペンションアームやそのジョイント等の、例えば、転がり抵抗値や剛性値等の性能を示すデータが含まれる。
また、ユニット/部品データには、既存車両に搭載されている全てのシステム及び部品に関する、それらの単体としてのコスト、重量及び剛性等のデータが含まれる。また、ユニット/部品データは、例えば、図5に示すように、階層構造を構成している。
次に、データベース1のユニット/部品データ(一般)12について説明する。
ユニット/部品データ(一般)12は、既存の車両には搭載されていないが、例えば、技術開発した新製品や、他社のものも含む四駆システム、オートマティックトランスミッションに関するデータが含まれる。
次に、データベース1の企画車両データ13について説明する。
企画車両データ13には、現在企画している企画車両に関するデータが格納される。企画終了後、既存車両データに格納される。
次に、データベース1の演算用データ14について説明する。
演算用データ14には、性能検証用データ関数、コスト検証用データ関数、剛性検証用データ関数、及び、重量・重量配分検証用データ関数が含まれる。
性能検証用データ関数には、諸元、システム性能等の調整量に対する、車両評価項目の「評価点」への影響量を規定した性能影響関数及び性能影響誤差関数が格納されている。この関数は、絶対的な性能評価値を算出するものではなく、調整量に対する評価点の上昇量或いは下降量を関数により規定したものである。過去の開発や実験で取得したデータや、ある基準に基づいて取得したデータ等を基に関数化したものである。これらのデータは、日々、より精度が得られるように更新されることが望ましい。
コスト検証用データ関数には、例えば、車体に使用する鋼鈑の量に基づいて、車体を小型化した場合に、どの程度のコストが低減されるかを計算する関数や、エンジンを変更した場合に、車体への取付け等でかかるコストを計算する関数が含まれる。なお、システムや部品を変更したこと自体のコスト変動は、既存車両データ内のデータにより容易に算出するのがよい。剛性検証用データ関数には、例えば、アセンブリしたときの車体剛性、サスをクロスメンバに取付けたときの剛性を計算する関数が含まれる。重量・重量配分検証用データ関数には、例えば、主に、車両にシステムや部品をアセンブリしたときの車両としての重量配分を算出する関数が含まれる。
次に、データベース1の評価用補助データ15について説明する。
評価用補助データには、時代進化データ、企画の過去事例データ、及び顧客要求データが含まれる。
時代進化データには、車両評価項目と、時代(年度)との相関性を示すデータ、諸元やシステム性能と時代(年度)との相関性を示すデータなどが格納されている。そして、これらのデータは、販売時期を考慮した目標値を算出するために用いられる。
企画の過去事例データには、過去に企画した車両の各車両評価項目の評価点(例えば、企画開始時、企画途中及び企画終了時の実力値)や、その企画要件(例えば、カテゴリやクラス、開発時期、コスト、設備条件など)が格納されている。そして、企画車両データが、企画途中の所定の段階や企画終了時に、自動的にこの過去事例データに保存されるようになっている。
顧客要求データには、或るカテゴリの或るクラスに関する顧客要求指標の重要度のデータ(例えば、エンジン性能が重要視される、など)、車両評価項目と顧客要求指標との相関性を示すデータ、諸元やシステム性能と顧客要求との相関性を示すデータなどが格納される。そして、これらのデータは、顧客の要求を満足するかを検証するために用いられる。
次に、データベース1の補助データ16について説明する。
補助データには、法規データ、及び生産要件データが含まれる。法規データには、例えば、衝突性能に関するレギュレーションなどのデータが格納されている。生産要件データには、工場のラインに適用可能か、工程数が工場に適用可能か、等を検証可能なデータが格納されている。
また、コンピュータ2は、データベース1に格納された車両データを利用して、企画しようとする車両の企画車両モデルを構築する。本実施形態では、企画車両モデルとして、図6に示すように、レイアウト検証モデルと、性能検証モデルとを構築する。
以下、まず、レイアウト検証モデルについて説明する。
このレイアウト検証モデルは、車両を図6に示すような各モデルの組み合わせにより視覚的に表示して、主に車型や車格、基本諸元/乗員諸元等の変更や、形状及び構造の変更により、企画車両企画の搭載性、スキ/クリアランスといった位置的な整合性を検証可能なモデルである。本実施形態では、後述するように、既存車両の中から基準車両として選択した1つの車両(以下、「D車」とも称する。)の車両データを基礎にしてレイアウト検証モデルを構築する(なお、基準車両は、複数の車両を組み合わせてなる車両であってもよい。)。
レイアウト検証モデルは、図6に示すように、基準モデル80、外観モデル90、内装モデル100及び構造モデルが含まれる。これらのモデルについて、図7〜図10を参照して説明する。
図7は、本実施形態による基準モデルの主要寸法モデル(a)、乗員モデル(b)及びアンダーボディモデル(c)の一例を示す図である。図8(a)は、外観モデルのエクステリアモデルの一例を示す図であり、図8(b)〜(e)は、外観パーツモデルのドアモデル(b〜d)及びガラスモデル(e)の一例を示す図であり、図9は、内装モデルの上部インテリアモデル(a)及び下部インテリアモデル(b)の一例を示す図であり、図9の(c)は、内装パーツモデルのインパネモデル、コンソールモデル及びシートモデルの一例を示す図である。図10は、構造モデルの一例を示す図である。
先ず、図7により、基準モデルを説明する。
図7に示すように、この基準モデル80には、主要寸法モデル82、乗員モデル84及びアンダーボディモデル86が含まれている。図7(a)に示すように、主要寸法モデル82は、車両の外枠82a、グラウンド(地面に相当)82b、車輪82c等に関するモデルであり、車両の外枠の寸法、ホイールベースの長さ、車輪の寸法等の諸元で規定される。
図7(b)に示すように、乗員モデル84は、乗員マネキン84a、ステアリング84b、ペダル84c及び視界条件84d等に関するモデルである。また、後述するように、乗員の頭が動く範囲や手が届く範囲等を示す空間エリア表示(図30乃至図36参照)もこのモデルに含まれる。
乗員マネキン84aは、乗員配置や姿勢を検討するためのものであり、国内外の基準に準じた一定の形状及び寸法を有している。この乗員マネキン84aは、乗員配置及び姿勢を特定するための種々の寸法や角度の諸元で規定される。諸元には、例えば、ヒップポイントの位置、ヒップポイントに対する頭頂やかかとの位置、最前列と2列目の乗員間の距離等が含まれる。なお、「寸法」には、各部間の「相対距離」も含まれる。
ステアリング84b及びペダル84cは、それらの乗員に対する配置を検討するためのものであり、それらの形状及び寸法は一定である。ステアリング84b及びペダル84cは、例えば、それらのヒップポイント又はかかとに対する相対距離や角度の諸元で規定される。視界条件84dは、アイポイントから車両前方に上下方向に広がる角度等の諸元で規定される。
図7(c)に示すように、アンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a、フロアパネル86b及びサイドシル86c等の車体の下部構造に関するモデルである。このアンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a及びフロアパネル86bを構成する数枚のパネルのそれぞれの寸法や角度、サイドシル86cの寸法等の諸元で規定される。
これらの各モデル82、84、86が組み合わされた基準モデル80及びこの基準モデル80を構成する各モデルにより、乗員配置等のパッケージングや車両の基本的な諸元を検討することができる。
次に、図8により、外観モデルを説明する。
図8に示すように、車両モデルには外観モデル90が含まれ、この外観モデル90には、エクステリアモデル92が含まれている。図6に示すように、エクステリアモデル92は、バンパ及びボンネット等を含む車両の外板に関するモデルである。このエクステリアモデル92は、車両の外形に関する種々の寸法や角度の諸元で規定される。諸元には、例えば、ホイールベース、フロントオーバーハング、リアオーバーハング、カウルポイントの位置、ルーフトップ高さ、ピラー部の傾斜角度等が含まれる。
このような外観モデル90により、車両の外観イメージ等を検討することができる。さらに、外観モデル90を基準モデル80と組み合わせることで、車両の居住空間等のパッケージングをより詳細に検討することができる。
次に、図6及び図8により、外観パーツモデルを説明する。
図6に示すように、車両モデルには外観パーツモデル100が含まれ、この外観パーツモデル100には、ドアモデル102及びガラスモデル104が含まれている。
図8(b)乃至(d)に示すように、ドアモデル102は、前後ドアの開口フランジ102a、前後サイドドアの外板及びサッシュ102b、及び、リフトゲートの外板及びサッシュ102cに関するモデルであり、図8(c)乃至(e)に示すように、ガラスモデル104はフロントウインドウ、フロントクォータウインドウ、サイドウインドウ、リアクォータウインドウ及びリアウインドウの各ガラスに関するモデルである。これらのモデルは、それぞれの形状及び配置に関する種々の寸法や角度の諸元で規定される。
これらのモデル102、104により、外観の一部を構成するドアやウインドウガラスの形状や配置を個別に検討することができる。さらに、これらのモデル102、104を外観モデル90と組み合わせることで、車両の外観イメージ等をより詳細に検討することができる。
次に、図6及び図9により、内装モデルを説明する。
図6に示すように、車両モデルには内装モデル110が含まれ、この内装モデル110には、上部インテリアモデル112及び下部インテリアモデル114が含まれている。
図9(a)に示すように、上部インテリアモデル112は、ピラートリム112a及びトップシーリング(ルーフヘッダ、ルーフレール及びルーフのトリム)112bに関するモデルであり、図9(b)に示すように、下部インテリアモデル114は、前後ドア及びリフトゲートのトリム114a、カウルサイドトリム114b、Bピラー下部トリム114c、リアサイドトリム114d及びスカッフプレート114eに関するモデルである。これらのモデルは、各トリムやトップシーリング等の形状及び配置に関する種々の寸法や角度の諸元で規定される。
この内装モデル110を乗員モデル84や外観モデル90と組み合わせることにより、乗員と内装との相対距離や、乗員による室内の圧迫感や車室外の視認性等を検討することができる。
次に、図6及び図9(c)により、内装パーツモデルを説明する。
図6に示すように、車両モデルには内装パーツモデル120が含まれ、この内装パーツモデル120には、インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126が含まれている。
図9(c)に示すように、インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126は、ダッシュボード等を含むインパネ、このインパネと連続しているコンソール及び複数のシートに関するモデルである。これらのモデルは、それらの車室内における配置を検討するためのものであり、一定の形状を有している。
インパネモデル122及びコンソールモデル124は、それらの配置に関する寸法や角度の諸元で規定される。また、シートモデル126は、シートの配置、シートの幅、ヘッドレスト上下位置、シートバック角度等に関する寸法(距離)や角度の諸元で規定される。
なお、インパネモデル122及びコンソールモデル124は、内装モデル110と整合するように、配置に応じて自動的に変形するようにしてもよい。
この内装パーツモデル120を内装モデル110と組み合わせたモデル、さらに、外観モデル90や基準モデル80と組み合わせたモデルにより、インパネ、コンソール及びシートの配置や、車室内の圧迫感を検討することができる。
構造モデルは、車体剛性や重量などの性能に係わる、例えば、図10(a)に示すようなフレームモデルや、図10(b)に示すような、ピラー部の断面形状や長さ等の各寸法を有するモデルである。特に、このような構造モデルにより、形状や構造の変更と、性能の変更とをリンクさせることができるので、より精度の高い性能検証が可能となっている。
構造モデルは、フロントピラー、センタピラー、リアピラー、サイドルーフレール、フロントヘッダ、リアヘッダなどの複数の骨組み構造を持っており、各骨組み部分に対して少なくとも断面積と強度(断面形状)の少なくとも一つが設定変更可能となっていることで、車型(ワゴンやスポーツなどの車両のカテゴリー)が異なれば当然要求される強度や断面積等が異なる。そして、構造モデルの断面積や強度等を個々に変更可能とすることで、企画車両に合わせた最適なパッケージング検証や強度検証が行え、企画精度を極めて高いものにできる。
構造モデルは、車体フレーム及びピラー等の骨組み構造に関する断面積と強度に関する情報を有しているので、パッケージングの成立性評価を迅速に行えるとともに、ピラー等の断面積情報を備えることで車室空間における乗員への圧迫感等を迅速に検証可能となる。さらに、強度情報を持つことで企画車両の強度検証や衝突性能、振動評価等の検証が迅速に行え、企画車両の企画精度を初期企画段階から極めて高いものにできる。また、構造モデルは鋼板の材質、鋼板の板厚、重量に関する情報を備えていることで、企画車両の車両重量、重量配分、重心位置等の検証が可能となる。
以上説明した各モデルの配置は、所定の基準位置に対する相対距離で規定され、各モデルはそのような相対距離を諸元として有している。所定の基準位置には、例えば、前後方向基準点(例えば、カウルポイント)、グラウンド及び車両中間面(即ち、車両前後方向に延びる車幅方向の中間を通る面)等がある。
以下、レイアウト検証モデルによる企画車両の構築例について説明する。
レイアウト検証モデルにおいては、モーフィング画面で、企画している車両モデルの諸元値の変更量やシステムの変更に基づいて、企画車両の種々の性能評価値が演算されるようになっている。
先ず、レイアウト検証モデルにおいては、図11に示すような諸元値入力画面に、データベースの既存車両データに格納された基準車両の各諸元やシステムが読み込まれる。この諸元値入力画面には、諸元値入力テーブルと、各諸元項目の対応部位を示す車両の側面図及び平面図が表示される。入力テーブルは、車両モデルの名称(「基準モデル」等)を示すコラムと、各諸元やシステムに対応するパラメータ名(「WheelBase」や「エンジン」等)を示す諸元項目コラムと、その各諸元項目に対応する諸元値として具体的な数値(「2400」等)や性能を示す諸元値コラムと、キャリーオーバー指定コラム(「ON」等の表示)とで構成されている。
この諸元値入力画面で示された基準車両の諸元やシステムのデータを元に、図12又は図13に示すように、各レイアウト検証モデルが、3次元或いは2次元で、例えば、評価用スクリーン5に表示される。このレイアウト検証モデルは、モーフィング即ちその各部の形状を変形させること及び各部の配置を変更することが可能なものである。
例えば図12に示す3次元モーフィング画面では、レイアウト検証モデルの全体が任意の視点から見た状態で表示される。この3次元モーフィング画面では、図中Aで示すような丸印(一部のみ示す)で表示された、各寸法や角度の起点となる諸元ポイントをマウスによりドラッグすることにより各部の形状及び配置の変更をすることができるようになっている。
次に、2次元モーフィング画面では、車両モデルの側面、平面又は正面(或いは背面)から見た3面図表示、及び、図10に示すように、ピラーやドア等の構成部分の断面を示す断面図表示で表示される。これらの2次元モーフィング画面では、車両モデルは、所定の断面及び主要な形状が直線や曲線で表示され、さらに、モーフィング形状表示される形状に関する諸元値について、諸元項目、諸元値及びそれらを規定する寸法線が表示される。
表示された諸元値(「・・・」)は、画面上で選択することにより数値入力が可能となっている。この諸元値の変更入力により、車両モデルの各部の形状及び配置の変更が行われるようになっている。また、丸印で表示された諸元ポイントをドラッグすることによるモーフィングも可能になっている。なお、車両企画者は、上述した諸元値入力画面において、諸元値やシステムを変更することもできる。
次に、各モーフィング画面では、所定のルールに基づいて車両形状が変形される。即ち、ルールにより、諸元同士が関連付けられて、車両の各部の形状や配置の整合性を保つようになっている。例えば、外形を表すエクステリアモデル92では、ルーフ長さを変更すると、そのルーフとのつながりを保つようにピラー部の角度も連動して変更され、さらに、内装を表す上部インテリアモデル112のトップシーリング(天井内張り)の長さも変更される。また、構造モデルを構成する骨組みの形状は、外観モデルの変形に応じて自動的に変形するようになっており、これにより、構造モデルと外観モデルを重ね合わせた場合にずれることがなく、それらと居住空間モデルとの干渉問題の検証等を精度良く行うことができる。
次に、性能検証モデルについて説明する。
上述したレイアウト検証モデルにより、企画車両の全ての性能検証も可能である。しかし、企画当初は、オペレータが、例えば、エンジン性能、車室内の広さ、及び操安性の優位度等について、必ずしも実際には整合しないイメージをもって企画を開始する場合が多い。そのような場合、通常、始めから車両として一つの表示形態を整えることは困難である。また、例えば、企画車両の運動性能や乗り心地など、企画車両モデルを視覚的に表示しなくても検証できる性能も少なくない。さらに、企画車両において、エンジンなどのユニットを入れ替えた場合に、入れ替え前後で性能がおおよそどの程度向上するかを検証したい場合もある。
そこで、本実施形態では、車両を視覚的に表示させずに性能を検証可能な性能検証モデルによっても車両企画を進めることができるようにしている。つまり、車体の形状を詳細に調整(例えば、車高を高めるのに伴い他のピラー部分などの形状の変更が必要な場合もある)をしなくても、企画車両の性能を検証することができる。そして、この性能検証モデルでは、例えば、諸元を変更して性能を検証することも、ユニット/部品の変更に伴う性能影響を演算して性能を検証することもできる。
このように、レイアウト検証モデルとは別個に、車両の形態を視覚的に表示する必要のない性能検証モデルを構築することにより、車両企画における性能検証作業が非常に効率的になる。すなわち、レイアウト検証モデルで表示形態を整えるのが困難である場合であっても、性能検証モデルによって、形態を整えなくても評価できる性能を評価することができる。
ここで、図14に、本実施形態の性能検証モデルの構成例を示す。本実施形態の性能検証モデルは、複数の領域の部分モデルから構成され、各領域ごとに複数の階層で構成されている。図14に示す階層構造では、例えば、前席上部領域は、先ず、前席上部の全体構造(階層レベル1)として構成され、その全体構造は、ドアと他部分(階層レベル2)で構成され、そして、ドアはドア開口量やモジュール等(階層レベル3)に分けられて構成され、最終的に部品単位にばらされたもの(階層レベル4)に分けられて構成される。
したがって、性能検証モデルにおいて、諸元やシステムを変更する場合には、これらの階層の各構成を任意に選択して変更することができるようになっている。例えば、ドアを交換する場合は、階層レベル2の「ドア」に関するデータを変更する。実際には、階層別に、諸元及びシステムの一覧表が表示され、その表示された諸元を変更し(例えば、ルーフ高さを変更する)、或いは、システムを変更(例えば、エンジンを変える、エンジンの出力を2%UPさせる)などして調整する。
特に、下位の階層であるレベル3や4では重量やコストのデータを有しているので、ドアを交換した際のコスト変動や、重量の増減を算出することができる。即ち、階層レベル2のドアを交換すると、その下位の階層3及び4のデータも自動的に変更され、例えば、重量は、階層レベル4の全ての部品の重量を全て加算して算出される。これにより、企画車両の重量配分も演算することができる。
企画の最終段階或いは詳細な設計に移行した後に、詳細を検討する場合、階層レベル3の構造だけを変更してもよい。例えば、Aピラーの構造を変更する場合は、階層レベル3の「Aピラー」に関するデータを変更してもよい。また、例えば、サスペンションのコイルだけを変更する場合には、階層レベル3のコイル(階層レベル2は緩衝装置)のデータを変更してもいよい。
次に、図15のフローチャートを参照して、本実施形態における車両企画の概略について説明する。
まず、ステップS1において、車両企画支援システムを用いた車両企画においては、まず、企画車両の基本目標値の設定を行う。本実施形態では、上述したデータベースに格納された、各種データの取り方を統一した既存車両に関する車両データを利用して、ベンチマーク車両から目標値を算出する。
車両開発は、通常、ベンチマーク車を基準に行い、他社の車や自社の旧型車に対し、さらに良い車を作り、顧客を満足させるもの、ひいては、市場において売れるもの、即ち、商品性、競争力を考慮する。その場合に、操安性や燃費などの評価項目ごとに、ベンチマーク車両に対する優位性の程度を設定することで、メーカの個性や味付けを車両に与えることができる。
次に、ステップS2において、企画車両の基準車両の設定(レイアウト検証モデル/性能検証モデル)を行う。企画しようとする車両の基準となる車両モデル(基準車両モデル)を既存車両の中から選択する。
レイアウト検証モデルでは、上述したように、車両形状及び構成を構築できる。また、性能検証モデルで基本的な性能検証が可能。これらのモデルの基準車両は、既存車両から選択しているので、客観的な数値に基づいた性能検証ができる。
また、性能検証モデルでは、後述するように、複数のベンチマーク車のそれぞれの良い部分を、企画車両に取り入れることもできる。
次に、ステップS3において、基本目標値の補正による最終目標値の設定を行う。
最終目標値は、販売時期や顧客の要求を確実に満足するように設定される。
次に、ステップS4において、基準車両の実力値と目標値とのギャップ値の算出を行う。
かかるギャップ値は、どの程度の開発(基準車両の進化)を行えば良いかの判断の目安となる。
次に、ステップS5において、モデルによる車両企画の実行/企画車両の実力値の算出をおこなう。
基準車両の実力値(性能)に対し、所定の関数により、その企画途中の時点での実力値(推定性能)を算出する。企画車両の実力値は、既存車両のデータを基準とし、さらに、基準車両の実力値を、既存車両から得た所定の関数により加減算して得るので、基本的な性能検証を行うことができる。
次に、ステップS6において、基準車両の実力値と目標値とのギャップ値の算出を行う。
かかるギャップ値により、目標の達成度合い及び開発必要度合いの判断が可能となる。なお、ギャップによっては、車のバランスを保つために、開発を後退(退化)させる場合もあり得る。
次に、ステップS7において、ギャップ解消検討を行う。
オペレータが抽出した主要課題に対し、車両企画支援システムに、性能、パッケージ、コストなどの要件を満たすと共にギャップを解消可能なシステムや諸元を所定のグラフを表示させることにより、オペレータを補助する。
次に、ステップS8において、企画車両の詳細検討を行う。
デザインの整合性、衝突性能、空力性能、ボディー剛性などの詳細を煮詰める。
次に、ステップS9において、プレゼンテーションを行う。
企画車両の経営上の承認を受ける。
次に、ステップS10において、設計段階に移行する。
企画データをCADデータやシミュレーション用データに変換し、設計部門、実験部門へ引き渡す。
このようにして、企画車両構築が終了する。
以下、上述した車両企画の個々の概略ステップについて、更に説明する。
まず、企画車両の基本目標値の設定ステップ(図15のステップS1)について説明する。
本実施形態では、企画車両の基本目標値の設定ステップは、図16に示すS11〜S14のステップを含む。
企画車両の基本目標値を設定するにあたり、まず、ステップS11において、企画車両のカテゴリを設定する。例えば、ミニバンを企画しようとする場合、オペレータは、「ミニバン」、「クラスIII(大きめ)」を選択して、カテゴリを設定する。
次に、ステップS12において、オペレータは、設定カテゴリに関するベンチマーク車両を設定する。ここで、ベンチマーク車両は、例えば、運動性能高いミニバンを企画する場合には、スポーツカ−のカテゴリから選択してもよい。
次に、ステップS13において、オペレータが、目標達成レンジを設定する。具体的には、例えば、図17(a)に示す目標達成レンジに、それぞれレンジ値(ランク)である「1」〜「3」を入力する。なお、予め目標達成レンジを設定したデータをデータベースに格納し、そのデータをこのステップS13で読み込んでもよい。
次に、ステップS14において、上記のステップS12で設定された各ベンチマーク車両の「各車両評価項目の評価点のデータ」が読込まれ、その読み込まれた評価点と、S3で設定されたレンジ値とにより、基本目標値が算出される。
ここで、「基本目標値」とは、企画車両の企画開始時におけるベンチマーク車両を基準とした目標値である。その車両企画開始時のベンチマーク車両に対して、所定のレンジ値に入るような相関を有する目標値をまず設定する。ある絶対値ではなく、レンジに入ることを目標とするので、大まかに性能が得られれば良く、企画を効果的に進めることができる。
これにより、企画開始時点で、ベンチマーク車両(競合車)に対し、この演算された目標値を達成すべきことが分かる。さらに、このようにして得られた基本目標値は、時と共に変化する絶対値ではなく、その車両開発時に存在するベンチマーク車両の所定の基準に基づいた評価点に対する相対値であるので、企画車両の性能を適切に設定(競争力ある、優位性を持つ)することができる。他社競合車や自社旧型車に対する位置づけが明確になり、商品性、競争力が得られる(メーカの特徴を具現化し、他社に対する差別化を図ることができる)。そして、車両評価項目を定義しているので、企画車両の性能を効果的に設定することができる。
また、車両評価項目の目標達成レンジは、各車両評価項目についてベンチマーク車両に対する相対的な位置づけ(優位性)を予め定めたものである。以下にこのレンジ(ランク)について説明する。
図17(b)は、既存車両から選択した複数の車両のハンドリング性能の評価点の分布を示したものであり、横軸はその評価点、縦軸は、各評価点を有する車両の数を示すものである。このように複数の車両を選択した場合には、一般的に、多くの車が或る評価点付近に集まる。
本実施形態では、図17(b)に示すように、上位30%の車が含まれる領域をレンジ1とし、そのレンジ1より評価点が低く、選択した車両のうちの45%の車が含まれる領域(評価点の幅)をレンジ2とし、レンジ2より評価点が低く、25%の車が含まれる領域をレンジ3として、3段階で規定するようになっている。なお、レンジ2には、最も多くの車が有する評価点(図の線図の最大点)を含むように、各レンジの%を規定するのが望ましい。
ここで、そのレンジ2は、分布が正規分布である場合にはそのピーク(図の線図の最大点)を中心に決定してもよいし、或いは、或る評価点とその評価点を有する車両とを積分したものの値が大きいところを中心に決定してもよいし、或いは、選択した車両の評価点の平均値を中心にして、その前後数十%を含むように決定してもよい。即ち、先ず、レンジ2を設定し、残りの部分をレンジ1及びレンジ3として決定してもよい。
本実施形態では、図17(a)に示すように、オペレータが、企画車両の各車両評価項目に対し、目標達成レンジを設定する。例えば、乗り心地性能はレンジ2、ハンドリング性能はレンジ1などと設定する。即ち、企画車両の特性として、オペレータが、乗り心地性能に関しては、選択した車両に対し平均的な性能を有し、ハンドリング性能に関しては選択した車両に対し優位な性能を有する、というように設定する。なお、予め図17(a)に示すような目標達成レンジを設定したデータをデータベースに格納しておいて、それを読み込むようにしてもよい。
基本目標値は、このように設定したレンジに対して算出される。即ち、図17(a)に示すように、ハンドリング性能についてレンジ1(選択した車両に対し優位な性能を得たい場合)を設定した場合には、図17の(b)に示すように、レンジ1に対応する評価点である6.0点以上の点が基本目標値となる。即ち、企画車両がハンドリング性能について、目標値をクリアする6.0点以上を有するものであれば、現存する車両に対し、ハンドリング性能が優れていることになるのである。
ところで、レンジ1に非常に高い評価点を有する車両が含まれている場合などには、算出する目標値自体が非常に高いものとなる。このような場合、過剰な性能を有する車両が企画され、その結果、車両の性能のバランスが崩れていたり、余計なコストがかかることが考えられる。そこで、本実施形態では、レンジ1に対応する基本目標値としては、レンジ1の下限値である6.0点から、予め設定した所定の点数幅の1.0点を足した7.0点までが基本目標値として算出されるようになっている。即ち、基本目標値は、6.0−6.5−7.0点というように、幅を持ったものとして算出される。
ここで、レンジ設定用にベンチマーク車両として選択する車両について説明する。オペレータは、具体的に企画車両と競合すると考えるベンチマーク車両を選択し、その選択したベンチマーク車両に対するレンジ(優位性)を設定することで、具体的に競合するベンチマーク車両に対する優位性を含んだ目標値を得ることができる。
なお、各レンジに含まれる車両の割合や、レンジの数は、企画車両のカテゴリやクラスなどに応じて変更可能である。即ち、企画車両の車種によって、適切なレンジを設定することができる。
しかし、具体的に競合するベンチマーク車両が数台という場合がある。この場合、データが少なく、その結果、目標達成レベルに応じた評価点が妥当ではない場合があり得る。つまり、世の中全体の同じようなカテゴリの車(ベンチマーク車両以外の車を多く含む)に対し、設定した基本目標値が妥当でない場合がある。すると、レンジ1やレンジ2に応じた目標値が、高くなりすぎたり、低くなりすぎたりする。
例えば、ベンチマーク車両が4台であり、それらが本当の競合車だったとしても、競合車だけを見て目標値を決めて開発した結果、世の中のレベルから見ると、低レベルなものが完成してしまうこともあり得る。
そこで、レンジ設定用のベンチマーク車両の選択にあたっては、少なくとも競合車に対してはそれなりに優位に立つと共に、世の中に対してもそれなりにレベルを保った車を作ることが必要となる。
また、ベンチマーク車両が少ない場合、分布が得られない場合がある。つまり、レンジ設定のために選択する車両が多い程、図17(b)のような線図に近い部分が得らるので、計算上、レンジに対応する基本目標値を算出し易くなる。
そこで、本実施形態では、オペレータの選択により、次のようなこともできるようになっている。即ち、先ず、オペレータは、既存車両の中から選択する車両として、具体的に競合するベンチマーク車両と、レンジ設定用車両とを別々に選択する。レンジ設定用車両には、ベンチマーク車両を含んでいても含まなくてもよい。
そして、ベンチマーク車両及びレンジ設定用車両のそれぞれの分布を計算させ、図18に示すような2つの線図を画面上に表示させる。このように表示させることで、ベンチマーク車両が、市場全体の車両(例えば、同一カテゴリ)に対し、どの程度の性能を有しているかをオペレータが判断することができる。オペレータは、このような分布を見て、ベンチマーク車両について算出された基本目標値を補正することができる。例えば、上述したようにベンチマーク車両の分布から算出された目標値を、図18に示すような2つの分布の差(例えば、0.6点)を考慮して、市場における車両の分布に近づける。なお、評価点のピークが0.6点ずれている場合などに、自動的に、例えば、0.3点を付加するようにしてもよい。
また、各レンジごとに、目標値を算出する分布を使い分けてもよい。例えば、レンジ1では、ベンチマーク車両の分布からレンジ1に対応する目標値を算出させ、レンジ2及びレンジ3では、市場の分布からレンジ2及びレンジ3に対応する目標値を算出させる。このようにすることで、競合車に対して絶対的に優位に立ちたい車両評価項目と、市場に対し平均的であれば良い車両評価項目とを分けて、企画車両の特性を得ることができる。
以上説明したように、ベンチマーク車両と共にレンジ設定用車両を選択することにより、市場も競合車も考慮した基本目標値を得ることができる。
ここで、本実施形態におけるベンチマーク車両やレンジ設定用車両として選択される車両の関係を図19のベン図に概略的に示す。ここで、「既存車両」とは、現時点までに市場に存在していた車、理想的には、ほぼ全てをいう。また、「ベンチマーク車両(競合車)」とは、レンジに応じた目標値を算出するための車両をいう。また、「レンジ設定用車両」とは、ベンチマーク車両に付加し、或いは、ベンチマーク車両に代えて、レンジに応じた目標値を算出するための車両をいい、ベンチマーク車両の数が少ない場合等に、妥当な目標値を算出するために用いられる。
また、「基準車両」とは、車両を企画する際の基準とする車両をいう。後述するように、本実施形態では、レイアウト検証モデル(単一モデル)では、基準車両として、一つの車両を選択し、性能検証モデル(複数部位モデル)では、部位ごとに複数選択する。それぞれ、これらの基準車両は、自社の車とは限らず、特に、性能検証モデルでは、ベンチマーク車両を含む既存車両から選択するとよい。
このように、目標達成レンジを設定することにより、必要な性能に重点投資が可能となり、また、車両の個性や味付けを出すことが可能となる。即ち、操安性や燃費などの各車両評価項目ごとに、ベンチマーク車両に対する優位性の程度を設定することで、メーカの個性や味付けを車両に与えることができる。その結果、企画した車両に、商品性や競争力を与えることができる。
さらに、そのようなメーカの個性として、例えば、各車両評価項目に対する目標達成レンジの配分やバランスを、カテゴリー(ミニバン、コンパクトカー等)が異なっても同一のものとすれば、そのメーカのどの車に乗っても同様の個性を乗員に感じさせることが可能となる。そして、ハンドリング性能の目標達成レンジをベンチマーク車両に対して優位となるように設定すれば、企画したどの車両も、他社や旧型車に比べてハンドリングが優れた車両とすることができる。
次に、企画車両の基準車両の設定(レイアウト検証モデル/性能検証モデル)ステップ(図15ステップS2)について説明する。企画車両の基準車両の設定ステップは、図20に示すS21及びS22のステップを含む。
企画車両の基準車両の設定にあたっては、まず、ステップ21において、オペレータが、レイアウト検証モデル及び性能検証モデルそれぞれの基準車両を設定する。即ち、オペレータが、車両モデル(レイアウト検証モデル、性能検証モデル)にて企画車両を構築するベースとなる車両を、オペレータが既存車両の中からそれぞれ選択し、システム上に設定する。基準車両の選択に当たっては、図示しないが、既存車両の一覧表が表示され、その中からオペレータが選択する。
本実施形態では、レイアウト検証モデルの基準車両として、1つの車両を選択する。図20に示す表示例では、D車が選択されている。また、性能検証モデルの基準車両として、図21に示すように、複数の車両を領域別に選択する。このように、企画車両を一から作り上げるのではなく、諸元や評価点などのデータを有する車両をベースに構築する。
次に、ステップ22において、データベース1から、コンピュータ2に、設定された基準車両に関する、各車両評価項目の評価点、諸元値、システム性能評価値など、それらの基準車両が有するデータが全て読み込まれる。そして、これらの基準車両の車両データをもとに、基準車両モデルを構築する。
ここで、性能検証用モデルの基準車両について説明する。
性能検証モデルの基準車両モデル60は、図21に示すように、フロント領域61、前席下部領域62など、複数の領域61〜69で構成された1つの車両を仮想的に表したモデルであり、それらの各領域に、個別に、異なる基準車両を設定することができる。図21に示す例では、フロント領域61、前席上部領域65及び後席上部領域66にA車が設定され、その他の領域にもそれぞれB車、C車、D車が設定されている。例えば、エンジン領域67に、エンジン性能の高いD車を設定して、優れたエンジンを搭載した場合の車両の性能を検証すること等が可能となる。
これらの領域ごとに基準車両を設定することで、車両の性能イメージ(例えば、フロント周り、居住性、リヤ周り、及びエンジン等)を判断できる。そして、例えば、フロント領域61に対し、サスペンション性能領域68を別途定義することで、例えば、フロント領域61がA車であった場合に、自社や他社のサスペンションを別途装着した車両の性能を検証できるのである。エンジン領域67も同様である。なお、サスペンション領域68は、前輪側と後輪側とで別の領域として設定することも可能である。また、後席やリヤの各領域を有しているので、居住性や積載性などもそれぞれ別途に検証できる。また、燃料タンク領域69により、重量配分や居住性空間の性能を検証できる。
このように、性能検証モデルの基準車両モデルを複数の基準車両の部分から構成することにより、既存車両の良い所取りができる。即ち、各領域ごとに既存車両を別途規定することができ、企画車両として各領域に持たせたい仕様や性能が最も近いものを設定できるので、予測性能誤差を小さくすることができる。
これにより、オペレータの頭の中にある、例えば奇抜な形状の車のイメージを当てはめやすくなる。そして、その奇抜な形状にすると、性能がどのようになるかを簡便に得ることができる。一つの車を修正していくより、各部位にイメージに合う車両を当てはめることで、基準車両に対する変更量が少なくて済み、且つ、いずれも基準車両のデータをもとに性能演算するので、的確な性能評価値を得ることができる。
このように、性能検証モデルを構築すれば、車両を視覚的な表示を必要とせず、主に数値的な諸元値の変更やシステムの変更だけで、性能を検証することができるので、作業効率を向上させることができる。
そして、例えば、フロント周りはA車、車室周りはB車、というように、複数のベンチマーク車両から、車両に含まれるシステムや領域(フロント周りなど)を組み合わせて車両企画を進めることができる。このため、企画車両に取り入れたいもの(フロント周り、車室空間、トランスミッションなど)や、自社のシステムや部品を使用するもの(エンジン、サスペンションなど)がある場合に、それらを組み合わせた企画車両がどのような性能(車両評価項目ごとの評価点)を有しているかを効果的に検証できる。このような作業は、レイアウト検証モデルのように、1つの車両(D車)から変更して行うには非効率である。
したがって、レイアウト検証モデルによる形状の整合性まで考えた詳細な検証の前に、企画車両のおおよその性能を効率的に把握することができる。その結果、ユニット/部品、及び、およその車両構成を決定することができる。そして、そのような決定の後、レイアウト検証モデルでさらに詳細に検証可能となる。
・なお、性能検証モデルの各システムや領域(フロント周り)は、諸元値等のデータを全て有している(データベースに格納された基準車両のデータ)ので、視覚的に表示させることも可能である。ただし、エンジン等のユニットや様々な領域が組み合わされているので、車両形状として矛盾が生じている。しかし、その状態で、エンジン位置を画面上で視覚的に変更して性能の検証も可能である。
ところで、本実施形態の性能検証モデルは、複数の基準車両(図では、A〜D車)を組み合わせた仮想的な車両の性能を検証するものである。このため、組み合わせた各基準車両の各車両評価項目の評価点から、基準車両モデルの実力値(基準評価点)を算出する必要がある。即ち、レイアウト検証モデルのように、或る1つの車両を基準車両とするものではないので、データベースに格納された評価点をそのまま使用することは困難である。
本実施形態では、各領域の車両評価項目に対する寄与率により、性能検証モデルの評価点を算出する。即ち、各領域に設定した基準車両の評価点を読み出し、そして、図21に示す各部位(領域)の各車両評価項目に対する寄与率を考慮して基準評価点を定める。例えば、ハンドリング性能は、フロント領域及びサスペンション領域の寄与率が非常に大きい。フロント領域にA車、サスペンション領域にB車を採用した場合、A車の有するハンドリング性能の評価点に寄与率を乗じ、また、B車の有するハンドリング性能の評価点に寄与率をかけ、それらを足し合わせることにより、複数の基準車両を組み合わせた性能検証モデルのハンドリング性能の評価点を算出する。
ここで、図22に、各領域の各車両評価項目に対する寄与率を規定した演算テーブルを示す。図22に示す例では、乗り心地性能は、サスペンション領域が50%、エンジン領域が30%、残りの20%が前席下部領域などに5%づつ寄与しているものと規定されている。例えば、サスペンション領域がA車、エンジン領域がB車、前席下部領域などがC車であった場合には、データベースに格納されているA車の乗り心地性能の評価点に50%をかけ、同じくB車の評価点に30%をかけ、同じくC車の評価点に20%をかけた値をそれぞれ足し合わせて、性能検証モデルの乗り心地性能の基準評価点として算出する。
さらに、本実施形態では、性能検証モデルの各車両評価項目の実力値を算出するためには、影響指標を、ある特定の値に定めている。ここで、影響指標とは、性能影響関数で性能評価値の加減値を算出するために必要な指標であり、具体的には、諸元やシステム性能などである。性能検証モデルでは、複数の部位(フロント領域など)を組み合わせているので、影響指標としてある特定の値を定めるためのルールを設けている。
そのようなルールとして、本実施形態では、主に、以下のようなルールを規定している。
(1)ルーフ高さ等の寸法に関する諸元については、各領域の境界において、整合していない場合には、各寸法の平均値を算出して、各領域間で整合をとるようにする。例えば、前席上部領域と後席上部領域におけるルーフ高さが異なる場合、それらの平均値をルーフ高さとする。なお、居住性を考慮するなどして、値の大きい方に合わせるようにしてもよい。
(2)車両全体の重心に関しては、各領域の重量及び重心を先ず算出し、それらの値と、各領域の相対距離とで、車両全体の重心を算出する。
(3)エンジン領域やサスペンション領域については、それらの性能をそのまま使用する。
(4)車体剛性(取付部剛性、ねじれ剛性、曲げ剛性)や空力などについては、例えば、図23に示す各領域の寄与率を考慮して算出する。例えば、車体全体の剛性には、前席下部領域及び後席下部領域の剛性の寄与率(剛性の負担分)が非常に大きい(各々35%)ものと規定され、また、フロント領域及びリヤ領域の寄与率(各々10%)及び前席上部領域及び後席上部領域の寄与率(各々5%)が規定されている。例えば、フロント領域にA車が設定されているので、そのA車の有する車体剛性の値(データベースの既存車両データに格納されている)に寄与率(10%)を乗じる。同様に、前席下部領域及び後席下部領域に設定されたB車の有する車体剛性(データベースに格納)に寄与率(35%)を乗じる。残りの領域も同様に寄与率を考慮した値を算出する。そして、各領域ごとに算出された値をすべて足し合わせることにより、性能検証モデルの車体剛性を算出する。
このようにして、例えば、居住性の高い車(車室空間が大きく剛性が低い)を選択したときに、車体剛性がどれ位低下するかを算出する指標を得ることができる。
なお、車体剛性に関しては、レイアウト検証モデルのデータを仮の値として使用してもよい。即ち、例えば、レイアウト検証モデルにD車を設定し、そのD車に対してサスペンション等のシステムを主に変更するが、車体剛性は大きく変えない、との前提で企画を進める場合には、D車の車体剛性をその性能検証モデルの車体剛性として用いてもよい。
また、車体剛性に関しては、例えば、図24のグラフに示すように、複数の既存車両(例えば、A車やX車)の「車室前後長さ」と曲げ剛性値との相関から推定するようにしてもよい。
次に、基本目標値の補正による最終目標値の設定ステップ(図15ステップS3)について説明する。基本目標値の補正による最終目標値の設定ステップは、図25に示すS31のステップを含む。このステップS31では、各車両評価項目ごとに「基本目標値」を補正して「目標値(真の目標値)」をシステム上に設定する。このステップS31では、以下の複数の補正手段から、オペレータが任意に選択することができる。
まず、補正例(1)について説明する。
以下の観点をオペレータが考慮して、オペレータが手動で補正値を入力し、最終目標値をシステム上に設定する。補正の観点としては、時期的補正を考慮する。即ち、企画車両が実車になるのは1年後や2年後であり、本来、市場で競合する車は、現存するベンチマーク車両ではなく、それらのベンチマーク車両の商品性がさらに向上したものである。したがって、実車になった企画車両が、それらの進化したベンチマーク車両に対して、設定した目標達成レンジに対応した優位性を得る。この場合、データベースの「時期的補正用データ」を表示させて、オペレータが参照することができる。
また、補正の観点としては、車両の特色をより確実に得るための補正がある。即ち、或る車両評価項目だけは絶対に優位に立とうとし、或いは、突出した性能を得たい場合に、基本目標値を更に高く設定することが可能である。
次に、補正例(2)について説明する。
時期的観点での補正を、所定の時期的な傾向を示すデータに基づいて、システムが自動的に行う。データベースの「時期的補正用データ」が用いられる。時期的補正用データには、カテゴリ別に、車両評価項目の評価点と時期(年度)との相関関係を示すデータが格納されている。図26に、その一例として、車両評価項目の乗り心地性能と時期との相関を示すグラフを示す。データベースには、全ての車両評価項目について、このような相関関係データが格納されている。
図26に示すように、既存車両の車両評価項目の評価点の時期的な傾向がデータとして格納されており、乗り心地性能であれば、例えば1年後に0.2点上昇すると推定される。オペレータが販売時期を入力することにより、この図に示すようなデータにより、目標値が自動的に補正される。
また、諸元やシステム性能と時期(年度)との相関関係を示すデータが格納されている。図27には、その一例として、諸元であるホイールベースと時期(年度)との相関を示すグラフを示す。データベースには、全ての諸元及びシステム性能について、このような相関関係データが格納されている。
この図27に示すように、諸元(ホイールベース)の時期的な傾向がデータとして格納されており、販売時期におけるホイールベースの長さの市場或いはベンチマーク車両の傾向が推測される。例えば、オペレータが販売時期を入力することにより、システムにより、ホイールベースが100mm延びると推定される。そして、ホイールベースのような諸元は、上述した影響指標に含まれるので、上述した性能影響関数により、システムにより、そのホイールベースの延長に伴う車両評価項目の評価点の上昇度合い、或いは、下降度合いが演算される。
ホイールベースが影響を与える全ての車両評価項目について、その評価点の加減算が行われ、その加減量が、そのまま基本目標値の補正量となる。例えば、ホイールベースの延長量と性能影響関数により、乗り心地の目標値が+0.2点、ハンドリングは、取り回しが悪くなるので−0.1点、などと補正量が算出される。
このように、車両評価項目及び諸元などについて、時期的な観点で補正された結果、例えば、図25に示す例では、乗り心地性能の基本目標値が5.2−5.5−5.7であったものが(図16参照)、最終目標値として6.2−6.5−6.7に補正されている。
本実施形態では、このような補正において、基本目標値を超えない範囲での補正を可能なようにシステムを設定することができる。このような設定により、時代進化を完全に考慮せず、レンジ1に相当する車両の中でコストが大きくかけられ非常に性能が高い車両がある場合、そのような最高の性能を有するものまで超えるような過剰な目標値を設定せず、現実的な車両を企画することができる。
実施例では、コンピュータが、あるレンジの第1目標値が6.0−6.5−7.0であった場合、6.4−6.7−7.0となるように、上限値を抑えるように補正する。また、中間値がレンジを超えない、という条件で設定することもできる。
本実施形態では、この自動的に補正された最終目標値を、オペレータが手動でさらに修正することもできる。このように手動で修正することにより、例えば、市場や自社において、性能向上に大きな影響を与える新技術などが今後見込まれる場合に、それを考慮して、さらに目標値を大きく補正することもできる。
次に、補正例(3)について説明する。
顧客要求を確実に満足するために、所定の顧客要求データに基づいて補正を行う。システムが自動で行う場合と、オペレータが任意に入力する場合とがある。
先ず、システムが自動的に補正を行う場合を説明する。
データベースの評価用補助データには、顧客要求データの一例として、例えば、図に示すような、燃費に関する顧客評価指標と、実用燃費(車両評価項目の燃費性能と対応している)との相関を示すデータが格納されている。
一方、データベースの既存車両データには、既存車両に関する顧客評価指標点に関するデータが格納されている。なお、このような顧客評価指標には、例えば、図28(a)に示すような、ハンドリングやエンジン性能などに関するものがある。したがって、図16のステップS12において選択したベンチマーク車両に関して、図28(b)に示すように、顧客評価指標点の分布(横軸は顧客評価指標点)が、各顧客評価指標(ハンドリングやエンジン性能など)に対してそれぞれ得られる。
そして、このような分布に対し、図16のステップS13において設定した目標達成レンジを考慮して、ステップS14と同様に、ベンチマーク車両に対する優位性を得ることができる顧客評価指標点を算出することができる。例えば、ベンチマーク車両の顧客評価指標点が80点から140点まで分布しているとき、レンジ1に対応する点数として120〜140点と算出される。
ここで、例えば、図16のステップS14において、燃費性能の基本目標値が4.6−4.8−5.0と算出された場合、図28(b)に示すように、その基本目標値に対する顧客評価指標点は、120点より低いものとなる。このような場合に、ベンチマーク車両に対して燃費性能自体は優位性を有することができても、顧客要求を満足できない可能性がある。そこで、図28(b)に示すようなデータを基に、顧客評価指標点120〜140点を満足するよう燃費性能に関する基本目標値が増加補正され、燃費性能に関する最終目標値が5.0−5.3−5.6に設定される。
また、このような目標値の補正は、カテゴリやクラス別にデータベースの評価用補助データに格納された図28(a)に示すような各顧客評価指標の重要度のデータを基に、重要度の高い顧客評価指標(顧客が重視する性能)に対応した車両評価項目のみを補正したり、補正量を増大させるようにすることもできる。
このようにして、最終目標値は、市場に適合しつつ、顧客要求を満足するものとなる。また、図28(b)のような既存車両のデータに基づいて補正することにより、顧客要求を過剰に満たすような目標値が設定されないので、最終的にバランスのとれた、或いは、余計なコストをかけない車を企画することができる。
なお、この自動的に補正された目標値を、車両評価項目ごとに、オペレータが手動でさらに修正することもできる。このような修正により、例えば、メーカの技術レベル設定を優先させたり(目標値をあえて補正前のものに戻すなど)、或いは、そのメーカの設計思想、商品戦略により顧客要求を大きく超える目標値を設定することも可能となる。
次に、オペレータが任意に入力する場合を説明する。
先ず、図16のステップS14において基本目標値が算出されたとき、図28(a)のようなデータに基づいて、その目標値に相当する顧客評価指標が表示される。例えば、「顧客評価指標(基本目標値):100〜120点」と表示される。一方、図16のステップS12において選択したベンチマーク車両に関して、図28(b)に顧客評価指標点の分布が表示される(横軸は顧客評価指標点)。
オペレータは、これらの2つの表示により、基本目標値に対する顧客評価指標点が、ベンチマーク車両に対してどの程度優位性を有するかを判断することができる。そして、燃費性能に関する顧客評価指標点がレンジ2に対応する点数であった場合、ベンチマーク車両に対してレンジ1の優位性を得られるように、基本目標値の増加補正量を入力する。この場合、オペレータは、例えば、図17(b)のデータを参照する。このようにして、技術的な面においても、顧客要求の面においても、ベンチマーク車両に対する優位性を得ることができる。このように、技術的な面と顧客要求の面とで少なからず差がある場合に、補正により、それを埋めることができる。
一方、顧客要求に関しては市場の平均的なレベルであるレンジ2で十分と判断できるようなときには、増加補正量を小さく、或いは、減少補正をし、或いは、補正をしない、という選択も可能である。例えば、基本目標値を算出したとき、顧客がそこまで燃費性能を求めているかを判断し、或いは、自動車業界の技術動向を見たとき、そこまで燃費性能を上げるような優れたエンジンを搭載する可能性がない場合には、顧客要求を平均的なレベルで満たすことができる程度まで、目標値を下げることもある。
また、オペレータは、各車両評価項目に対応した複数の顧客評価指標(ハンドリングやエンジン性能など)に対し、個別に補正をすることができる。この場合、図28(a)に示すような各顧客評価指標の重要度のデータが表示される。この図28(a)のようなデータは、カテゴリやクラス別に複数あり、データベースの評価用補助データに格納されている。即ち、カテゴリやクラスによって、顧客が重要視するものが異なるのである。
オペレータは、企画しようとする車両のカテゴリやクラスに応じた図28(a)のようなデータを参照して、例えば、重要度の大きいものの増加補正量を大きくする、などと、補正量の大小や補正の有無を決定して、上述したように、補正量を入力する。
なお、重要度に応じた補正量を予め定めておき(データベースに格納)、そのデータに応じて、システムが自動的に補正を行うようにしてもよい。
このように、補正手段(3)においては、ベンチマーク車両に対し、技術的な面と、市場の評価に関する面との両方を考慮して、最終目標値を定めることができる。
次に、基準車両の実力値と目標値とのギャップ値の算出ステップ(図15ステップS4)について説明する。基準車両の実力値と目標値とのギャップ値の算出ステップは、図29に示すS41のステップを含む。このステップS41では、各車両評価項目ごとに、図20のステップ22で読み込まれた基準車両の評価点と、図25のステップS31で設定された最終目標値との差(ギャップ値)が算出される。そして、算出されたギャップ値は、最終目標値及び基準車両の実力値(基準値)とともに、車両評価項目ごとに、図29に示すように表示される。オペレータは、各車両評価項目ごとに具体的な差を把握することができ、企画車両として各評価項目の性能をどれだけ向上させれば良いかの目安とすることができる。
また、このステップS41において、図30に示すような棒グラフを表示させることが望ましい。このグラフにおいて、D車のグラフは、レイアウト検証モデルの基準車両であるD車の評価点であり、現行競合車基準値は、S4で読み込まれた各ベンチマーク車両の評価点の平均値であり、販売時期での競合車基準予想値は、その平均値に図26又は図27に示すようなデータから算出された時期的な補正量を足した評価点である。これらの平均値及び補正平均値は、自動的に算出される。
なお、ベンチマーク車両の中から特定の最も重要視するライバル車の評価点を表示させることもできる。これらの値は、オペレータが任意に入力して表示させることもできる。
また、企画車両の推定実力値は、このステップS41の時点では、基準車両の実力値であり、企画車両の目標値は、ステップS31で算出された最終目標値である。この目標値は、目標達成レンジに応じて幅を持った値であるので、このグラフは、その平均値と、その幅を持った値との両方が表示される。このように、幅を持った目標値の範囲内のどの位置に実力値があるか分かるので、他の車両評価項目との関係で修正優先度を決定できる、などの利点を有する。
なお、性能検証モデルにおける企画車両の実力値は、上述したように、複数の基準車両の評価点から算出されたものである。
図30に示すグラフには、企画車両の実力値として、性能検証モデルの実力値が表示されているが、レイアウト検証モデルにおける企画車両の実力値を表示させることも可能である。また、グラフには、D車に対する比、競合車基準値に対する比、及びギャップ値の比率が%で表示されるのが望ましい。
ここで、そのメーカ(自社)で実際に開発をスタートするのは、自社の車(D車)をベースにすることが多い。よって、D車のグラフやD車比を表示させることで、オペレータはどの程度の開発をすれば良いかの目安を得ることができる。また、販売時期での競合車基準予想値は、およそ現行で存在する業界の技術水準とも言えるベンチマーク車両の評価点を基にしたものであるので、その評価点まで比較的上げ易いと考えられ、そのため、車両企画の開発開始時における実質的な基準点であるとの目安とすることができる。
次に、車両モデルによる車両企画の実行及びその実力値の算出ステップ(図15ステップS5)について説明する。車両モデルによる車両企画の実行及びその実力値の算出ステップは、図31に示すS51〜S56のステップを含み、車両モデル(レイアウト検証モデル、性能検証モデル)により車両企画を進める。
車両モデルによる車両企画の実行及びその実力値の算出にあたっては、まず、ステップS51において、性能検証モデルにより、変更する部品/ユニットや、性能の変更を設定する。具体的には、図32(a)に示すような設定/変更画面に、基準車両にD車が選択されていることが表示される。そして、そのD車の仕様として、例えば、エンジン2.3L/ミッション4ATを搭載することなどの情報が、ツリー形式で表示されるようになっている。また、その変更ボタン、設定ボタン、流用ボタンが表示される。
そして、部品等を変更する場合には、上位の階層の例えばパワープラントの変更ボタンを押すと、図32(a)に示すように、下位の階層で、エンジンの仕様の変更、性能向上率の設定、ミッションの変更をオペレータが入力可能になり、その入力により変更後のものが設定される。また、図に示す例では、フロントサスペンションなどのキャリーオーバー設定(D車の流用)がされている。
ここで、エンジンの仕様を変更した場合には、そのエンジンの下位の階層に規定されている部品等(エアクリーナなど)が、データベースのデータをもとに、その変更後のエンジンが有する部品等に自動的に変更される。また、上位の階層で、例えばフロントサスペンションをキャリーオーバー設定した場合には、その下位の階層におけるサスペンション部品(ブッシュなど)も流用設定が自動的になされる。
ここで、キャリーオーバー設定をしたシステムや部品については、その後の企画でオペレータが誤って変更しないように、レイアウト検証モデルや性能検証モデルで変更できないようになっている。また、変更しようとすると警告が発せられ、或いは、レイアウト検証モデルが表示されるモーフィング画面において、他の部分と異なる色で表示される。このようなキャリーオーバー設定は、レイアウト検証モデルにおける諸元値入力画面にも表示され、或いは、その諸元値入力画面での設定も可能である。
次に、ステップ52では、性能検証モデルにおいて、諸元の変更を行う。
性能検証モデルにおいて、諸元を変更する場合には、図32(b)に示すような表示により、オペレータが変更後の数値を入力することにより、変更した諸元値が設定される。車高変更、エンジンやタンク搭載位置等の変更が可能である。
本実施形態では、これらのステップS51及びS52により、先ず性能検証モデルにおいて、企画車両としての個性や作業者の意図を企画車両に入れ込むことができる。
次に、ステップS53では、性能検証モデルによる企画車両の実力値を算出する。ステップS51及びS52の作業により、上述した所定のルールに基づいて定義された影響指標が変更され、上述したように、その変更量と性能影響関数により各車両評価項目の評価点(実力値)が算出される。この実力値を表示させることにより、オペレータは、例えば、エンジンやミッションの変更等で動力性能がどのように変化するかを検証することができる。
次に、ステップS54では、レイアウト検証モデルを構築する。本実施形態では、性能検証モデルによる検討の後にレイアウト検証モデルによる検討を行うようにしている。そこで、このステップS54においては、上述したように、形状の整合性をとりながら、且つ、各車両評価項目の評価点が大きく変わらないようにして、性能検証モデルからレイアウト検証モデルへの変換(コンバート)を行う(なお、デザインを重視する車両においては、レイアウト検証モデルを優先することとしてもよい)。
次に、ステップS55では、ステップS54において構築したレイアウト検証モデルにより、上述したモーフィング画面により、車両の形状やレイアウトを修正或いは変更する。例えば、エンジン位置を規定する諸元を変更したり、車高を変更すること等が可能である。
次に、ステップS56では、レイアウト検証モデルによる企画車両の実力値を算出する。上述したように、影響指標である諸元の変更量と、性能影響関数とにより、各車両評価項目の評価点を算出する。
この実力値を表示させることにより、オペレータは、例えば、エンジン位置や車高の変更で、重心やヨー慣性モーメントが変化することにより、ハンドリング性能の評価点がどの程度変化するかを検証することができる。
ところで、企画車両の性能の実力は、各車両評価項目ごとの評価点として算出される。
各車両評価項目の評価点は、諸元やシステム性能に左右される。そのような車両評価項目に大きく影響を与える諸元やシステム性能を、本実施形態では「影響指標」として規定している。そのような影響指標をまとめたものが図33である。また、図34、図35(a)及び図35(b)は、各車両評価項目と影響指標との関係を規定したテーブルの一例を示す。
例えば、図34には、車両全体の影響指標として、重心やホイールベースなどが縦軸に示されている。本実施形態では、重心は、ハンドリング性能、制動性能及び安全性能を左右するものとして規定されている。このようなテーブルは、車両の全ての諸元及びシステム性能について予め規定されている。例えば、図35(a)及び図35(b)に示すように、サスペンションやエンジンなどのシステムに関しても、影響指標と車両評価項目との相関関係が規定されている。例えば、サスペンションの前後剛性が、車両評価項目である乗り心地性能など、複数の性能に影響を与えるものとして規定されている。
上述したように企画車両は、既存車両の中から選択した或る基準車両をベースに構築される。したがって、基準車両は、客観的に正確な値として、各車両評価項目ごとの評価点を有するものであり、本実施形態では、このような客観的な基準車両の評価点を、データベース1の演算用データに格納された性能影響関数を用いて加減算することにより、企画車両の実力値を算出するようにしている。
ここで、例えば、ハンドリング性能の評価点は、車両の重心を下げると高まる。このような関係を客観的な数値として規定したのが、図36に一例を示す性能影響関数である。図36に示す例では、影響指標である「重心」の変更量に対する車両評価項目であるハンドリング性能の評価点の変動量(性能影響量)が規定されている。このような関係は、従来からの研究開発や実車を用いた試験などにより得られる。
本実施形態では、企画車両の諸元やシステム性能を変更した場合に、その実力値を客観的な数値として算出するために、影響指標(全ての諸元及びシステム性能)及び車両評価項目の全ての組み合わせについて、データを予め作成している。したがって、例えばホイールベースを上げた場合には、乗り心地の評価点が○○点上がり、ハンドリング性能の評価点が○○点下がる、などという客観的な関係が得られる。
なお、図36では、性能影響関数が一次関数で示されているが、2次関数など他の関数でも表される。
さらに、本実施形態では、そのような性能影響量の大きさに対し、図36(b)に一例を示すように、誤差量を性能影響誤差関数として規定している。図26(b)に示す例では、重心を50mm変更した場合に、誤差が±3%であるような関係となっている。このような誤差量は、車両のカテゴリで異なる。例えば、スポーツカーでは、ハンドリング性能を非常に重視するので、あえて誤差量を大きくして、評価点の加減算が、非常に大きくハンドリング性能に影響するかもしれない、ことをオペレータに認識させるようにしている。
そして、企画車両の実力値の算出にあたっては、企画を開始し、基準車両の重心を50mm下げるような変更を行った場合、基準車両のハンドリング性能の評価点に対し、0.2点を足すことで、企画車両の実力値が算出される。一方、サスペンション形式を変更したような場合には、そのサスペンション形式の変更に伴い、図35(a)に示すように、サスペンションの前後剛性など、他の影響指標も変更されるため、ハンドリング性能の評価点がどうなるかは、それらの影響指標のすべての性能影響関数の加減量の総和によって定まる。
このように、諸元やシステム性能を変更した場合の企画車両の実力が客観的な数値として算出されるようになっている。
次に、性能検証モデルのレイアウト検証モデルへのコンバートについて説明する。企画車両としては、最終的に形状の整合性のとれたものにする必要がある。即ち、性能検証モデルで企画を進めた場合には、レイアウト検証モデルにコンバートするために、各システムや領域間の配置や形状連続性の矛盾を修正して、車両形状や構造を全体的に成立させる必要がある。その場合、例えば、以下のようなルールでコンバートされる。
まず、性能検証モデルから、レイアウト検証モデルで制約を与えるべきものを抽出する。例えば、バンパー位置、オーバーハング距離、カウル位置、ボンネット高さなど、衝突要件など性能に拘束されるものは、性能検証モデルでの各諸元のまま維持。レイアウト検証モデルでは、そのようなカウル位置やボンネット高さに対して、干渉しない位置にエンジンが配置される。
また、例えば、ホイールベースなど、様々な車両評価項目に影響を与えるものは、基本的には変更しない。即ち、形状の整合性を得るために調整する諸元には、各領域ごとに固定すべき優先順位が定められ、その優先順位が低いものから調整される。このようにして、性能をなるべく維持しながら、形状の整合性を得ることができる。具体的には、車両評価項目に影響を与える寄与率が大きい諸元やシステムが予め定義されており、その定義に基づき、寄与率が大きい諸元などを固定するなど、調整する優先順位がルールとして定められている。
また、外観形状再現上の寄与率を領域別に定めている。例えば、カウル位置は、視認性に関しては低く、衝突性能に関しては高い方が良い、という場合に、性能検証モデルの性能評価値を維持するために、フロント領域と、前席上部領域或いは前席下部領域とでは、フロント領域の寄与率を大きく(例えば、8割)し、そのフロント領域内のカウル位置が大きく変わらないようにする。一方、視認性も必要なので、前席領域の寄与率もある程度与える(例えば、2割)。また、オペレータが予め優先順位を設定することができる。
ところで、レイアウト検証モデルの構築と性能検証モデルの構築とは、並行して進めてもよい。その場合、例えば、一方のモデルで諸元(ホイールベース)を変更すると、他方のモデルの諸元も変更され、それに伴い、形状或いは性能も変更されるようにするのがよい。即ち、ホイールベースを変更することにより、形状(レイアウト検証モデル)も変わるし、乗り心地などの性能(性能検証モデル)も変わる。
また、エンジンセンターは、操安性などの性能に影響を与えるので、先ず、性能検証モデルでエンジンセンターを定める。一方、レイアウト検証モデルでは、エンジンが、そのエンジンセンターを基準に配置される。そのとき、ダッシュボードとの隙間が少なかったり、熱排出の要件を満たさない、などのレイアウト上の要件を満たさない場合には、警告表示がなされる。その場合には、オペレータが、エンジンセンターを制約条件として、ダッシュボードの隙間などが確保できるように、他の部分を調整する。
このような場合、オペレータは、各モデルが想像上は一つで、こんな形の車(レイアウト検証モデルのD車)がこんな性能(A〜Dの融合性能)を持っていますと捉えて開発を進める。そして、そのように企画を進める上で、最終的に一つの車を作ることが必要なので、オペレータの判断で、互いに近づくように調整する。オペレータによる作業を行い易くするために、レイアウト検証モデルで、A〜D車を組み合わせたモデルを重ね合わせ表示させ、それを参考に、レイアウト検証モデルの基準車両であるD車の形状を変更してもよい。
なお、形状の開発を優先させる場合など、レイアウト検証モデルによる企画を先行して進め、その後、或いは、途中で、性能検証モデルによる企画を進めるようにしてもよい。
ところで、性能検証モデルからレイアウト検証モデルへのコンバートは、常に可能とは限らない。例えば、カウル位置は、視認性に関しては低く、衝突性能に関しては高い方が良い、という場合に、そのようなトレードオフ関係を満たすことができない場合がある。その場合、例えば、部位間の干渉を許容して、形状表示(レイアウト検証モデル)したり、どこかで妥協しないといけないので、報知されたエラーを念頭に、オペレータがレイアウト検証モデルで修正するのがよい。
また、オペレータが、車両モデル同士を調整しても、設計基準(衝突スペース(部品間の距離など)や熱要件)やレギュレーションを満たさず、実現不可能な場合もあり得る。
なお、レイアウト検証モデルとしては、構造モデルを除いたモデルを用いてもよい。この場合は、特に、エクステリアや、居住空間や視認性などを検証可能である。一方、剛性や強度などを含む性能に関しては、性能検証モデルにて検証する。最終的には、その性能検証モデルとレイアウト検証モデルとを組み合わせる。整合性がとれない部分(各領域の境界部分や、他の外観モデルなどと干渉する部分)は、上述したように修正することができる。また、性能検証モデルで組み合わせた複数の基準車両から、レイアウト検証モデルの基準モデルや外観モデルなどを構築してもよい。その場合、整合性がとれない部分を修正する。
次に、企画車両の実力値と目標値とのギャップ値の演算ステップ(図15ステップS6)について説明する。企画車両の実力値と目標値とのギャップ値の演算ステップは、図37に示すS61のステップを含む。
企画車両の実力値と目標値とのギャップ値を演算するステップS61は、上述した図29のステップS41と同様に、各車両評価項目ごとに、図31のステップS51〜S56の検討の結果得られた企画車両の現時点での実力値(車両評価項目の評価点)と、図25のステップS31で設定された最終目標値との差(ギャップ値)が算出される。そして、この時点でのギャップ値表示(図37参照)及びグラフ表示(図30参照)が表示される。図37には、ギャップ値表示を示す。ハンドリング性能の実力値がぎりぎり目標値に入っており、燃費性能は目標値に入っていないことが分かる。
ここで、引き続いて車両企画を行う際に、目標値に全く届いていない燃費性能を向上させるために諸元やシステムの変更を行うと、ハンドリング性能にも影響を与えることが予想される。したがって、ハンドリング性能については、目標値内に入っているものの十分ではないものとして、白三角印のプロットで表示されている。本実施形態では、システム上、目標値の平均値(ハンドリング性能では、6.5点)をクリアした時点で目標を完全に達成したと判定するようにし、企画した車両が現実に市場において競争力のあるものになるようにしている。
このように、S15において、企画車両と最終目標値との差が、基準車両の性能評価値との差に比べ、どれだけ差が縮まったかを把握可能である。そして、このように、企画途中でこのような表示をさせることで、オペレータは、企画作業を効果的且つ効率的に進めることができる。
例えば、動力性能が目標値に届いていない場合には、エンジン出力の向上度合いをS9において2%UPと設定したが、さらに5%UPする必要がある、等と判断することができる。そして、具体的に検討した結果、5%UPは難しいと判断した場合に、再びS9において、ターボをつける、などとの仕様変更をして、目標達成に向けて具体的に検討可能である。
なお、データベースには、システムや部品のコストや重量などのデータも格納されているので、現時点での、車両全体のコストや重量も算出可能である。そのような数値の表示をさせて、コスト増加率や重量増なども考慮した検討が可能になる。
次に、ギャップ解消検討ステップ(図15ステップS7)について説明する。
図31のステップS51〜S56において、企画車両としての思想やコンセプトを入れ込んで車両企画を行うが、図37のステップS61において算出されたギャップ値が大きい場合には、オペレータは、例えば、諸元やシステムの変更など何らかの対策を講ずる必要がある。また、企画車両が、非常にコストがかかるものになってしまうと、現実的に製造販売することができなくなる。そこで、本実施形態では、企画支援システムが、ステップS61で算出されたギャップの解決に、どのような問題があり、どのように解決するか、をデータに基づいて客観的に分かるように表示して、オペレータを支援するようにしている。
まず、企画支援システムが、相反関係マップ、即ち、相反する(トレードオフ関係にある)車両評価項目の関係マップを表示して、ギャップ解消検討を支援する場合について説明する。
先ず、図38に、相反関係マップの一例を示す。図38では、相反関係マップの一例として、企画車両及び所定の既存車両のハンドリング性能と、ロードノイズ性能との相関関係を表示している。
なお、相反する関係とは、通常、ハンドリング性能を高めるためにサスペンションの剛性を高めると、ロードノイズ性能が低下する、などのトレードオフ関係を言う。
先ず、この図において、企画車両が、黒三角印のプロットで示されおり、その他のプロットは、既存車両を示している。また、横軸及び縦軸には、各性能に対応した目標達成レンジが表示される。本実施形態では、プロット表示させる既存車両をベンチマーク車両としている。
なお、図38に示すようなグラフは、相反する車両評価項目のすべて(例えば、燃費性能と動力性能など)について、カテゴリ別及びクラス別にそれぞれ表示させることができる。
オペレータは、このような相反関係マップにより、相反関係にあるハンドリング性能及びロードノイズ性能の両方について目標達成レンジ1を得るには、サスペンションシステムがハンドリング性能及びロードノイズ性能に非常に大きく影響することを考慮し、二重丸印のプロットで示される車両のサスペンションシステムと同等のシステム(同等の技術)を採用すれば良い、というようなことを判断することができる。そして、オペレータは、そのような“二重丸印のプロットの評価点から、ステップS61で算出されたギャップ値を解消し得るか否かも判断することができる。
このように、オペレータは、関係マップを一目見て、トレードオフ関係を把握し、その作業効率を高めることができる。
なお、或る一つの車両評価項目のみ(例えば、ハンドリング性能のみ)について、プロット表示させることも可能である。さらに、相反関係マップとして、さらに、乗り心地性能等の車両評価項目をもう一つ加え、合計3軸で互いの相反関係を表示させてもよい。
また、本実施形態の企画支援システムは、企画車両の実力値(図中、黒三角印のプロット)に対し、ステップS61で算出されたギャップ値以上の評価点を有する車両(ギャップ値を解消し得る車両)を、データベースの既存車両データに格納された各車両評価項目の評価点をもとに算定し、その車両の情報を表示する。この例では、ギャップ解消可能な車両に搭載されたサスペンションシステムを表示している。即ち、この例では、ギャップを解消し得る(1)から(3)までの3つのサスペンションシステム(A〜C)の選択肢が表示される。
ここで、本実施形態では、ギャップ値を過剰に解消、即ち、目標値を大幅に超える車両に関する情報の選択肢をあえて表示しないようにしている。例えば、図中の星印のプロットで示す車両に関する情報は表示しないようにしている。このようにして、企画車両の各車両評価項目のバランスを崩さないようにすると共にメーカの個性を確実に反映した車両を企画することができるようにしている。
また、図38に示すような相反関係マップは、図16のステップS11で選択したセグメント及びクラスに応じて表示されるので、例えば、ステップS11で選択されたミニバンに対しスポーツカーのサスペンションシステムが表示されないようになっている。即ち、企画車両が装着している技術(例えば、ミニバンに応じたサスペンションシステムなど)を基準にして、ギャップ値を確実に解消でき、且つ、現実的な選択が可能となるのである。
ここで、ギャップを解消し得る選択肢(例えば、図38のグラフ中に、二重丸印、黒丸印、及び白四角印のプロットでそれぞれ示される代替技術)がない場合には、その旨が表示される(図示せず)。この場合には、オペレータは、サスペンションシステムの新規開発や、その他の諸元の調整などが必要である、ということを把握することができる。
一方、車両企画段階において、コストや車両重量(車重)を考慮することで、現実的に製造販売可能な車両を企画することができる。そこで、本実施形態では、ギャップを解消し得る選択肢の中から、コストが最小で済むもの、或いは、車重の増加量が最小(或いは車重の減少量が最大)であるものを表示させるようにしている。
具体的には、図38の右下に表示した「コスト」或いは「重量」のボタンをオペレータが押すと、車両企画支援システムが選択肢の中から最適なものをピックアップして表示する。即ち、車両企画支援システムは、データベースの既存車両データに格納されたコスト及び重量のデータを参照して、それぞれ最小のものをピックアップするのである。図38に示す例では、コストに関しては(3)のサスペンションシステム(白四角印のプロット)が最適であり、重量に関しては(2)のサスペンションシステム(黒丸印のプロット)が最適であると表示している。
つまり、二重丸のプロットで示されているのサスペンションシステムは、ハンドリング性能及びロードノイズ性能の点では非常に優れているが、コスト及び重量については、劣っていることが分かる。なお、複数の選択肢を、コスト順、重量順に並べて表示させ、或いは、コスト自体や重量自体の値を表示させることもできる。
オペレータは、このような表示をもとに、コストや重量をも考慮して、3つのサスペンションシステムのいずれの技術を参考にする(開発のもとにする)か、そのサスペンション自体を採用するか、或いは、性能は劣るが他のサスペンションシステム(黒三角印のプロット)を採用するか、或いは、新規技術を開発する必要があるか、などの判断をすることができる。このように、このギャップ解消検討は、コスト面を含めた経営判断の補助にも用いることができる。
次に、企画支援システムが、レーダーチャートを表示して、ギャップ解消検討を支援する場合について説明する。
上述のように、図38に示した相反関係マップにより、相反する車両評価項目を表示して、採用技術などの検討を行うことができるが、車両企画としては、車両評価項目の全てについてバランスのとれた車両(各目標達成レンジを得た車両)を得ることが望ましい。そこで、本実施形態では、車両評価項目のバランスをとりつつ、ギャップを解消するような検討を行う解決レーダーチャートを所定の基準(ルール)に基づいて表示させることにより、オペレータを支援するようにしている。
例えば、図39に示すように、目標達成レンジに応じて設定された最終目標値(S4、S7)に対する、各車両評価項目の実力値が、ロードノイズ性能が他の性能に対して優れ、燃費性能及びエミッション性能が劣っている場合、その目標達成度合いのバランスがとれていない。このままだと、車両としての性能バランスが崩れたものになってしまう。
このようなバランスを、オペレータが比較すると共に調整するために表示したのが、図40である。企画支援システムは、各車両評価項目の実力値のバランスを所定の基準にしたがって点数化し、レーダーチャートとして、図40に示すように表示する。
本実施形態では、レーダーチャートは、3つの階層で表示される。先ず、第1の階層は、図に示すように、各車両評価項目(第1階層の項目)のバランスを表示するものであり、現在のバランスが示されている。第2の階層は、図40に示すように、各車両評価項目のそれぞれに関連する技術項目(第2階層の項目)を表示するものであり、図40の例では、燃費性能に対する技術項目が表示されている。第3の階層は、その第2の階層のそれぞれの技術項目に関連するさらに下位の技術項目(第3階層の項目)を表示するものであり、図40の例では、エンジン燃費率に関する技術項目が表示されている。
これらの各階層では、同列の項目、即ち、車両評価項目(第1階層)、或いは、各車両評価項目に影響を与える性能や諸元(第2階層)、或いは、その性能に影響を与える部品や諸元(第3階層)をそれぞれ表示する。例えば、第3階層として、第2階層のタイヤ転がり抵抗に対しては、トレッドパターンやタイヤの幅など、第2階層の空気抵抗に対しては、車高やCd値など、第2階層のミッション性能に対しては、FGR(ファイナルギアレシオ)やミッション重量などがある。なお、第2階層及び第3階層の各項目は、上述した影響指標となっている。
ところで、図40において、燃費性能を向上させるには、ころがり抵抗(タイヤ)を下げても、重量を下げても、ミッションを変えても、エンジンを改良してもよいが、何をどの程度変更すれば良いかを、オペレータには判断困難である場合がある。
そこで、本実施形態では、先ず、オペレータが、表示された各階層のバランスをドラッグすること等により調整することができるようになっている。そして、上位の階層である車両評価項目のバランスを調整すると、下位の階層である第2及び第3階層のバランスが、所定の条件によって自動的に変更され、オペレータが調整したバランスを解決するために、どの技術項目を調整すれば良いかが分かるようになっている。
一方、下位の階層である第3階層のバランスを調整すると、上述した性能影響関数により自動的に上位の第2階層及び第1階層のバランスが変更され、その下位の階層での調整が、例えば、車両評価項目のバランスにどのように影響を与えるかが分かるようになっている。
また、第2階層のバランスを調整した場合には、下位の第3階層及び上位の第1階層が、それぞれ、これらの場合と同様に変更される。
以下、これらの調整手法及びシステムによるバランスの変更の条件などについて説明する。
先ず、上位の階層のバランスをオペレータが調整した場合の下位の階層の変更の条件を説明する。
本実施形態の車両企画支援システムは、その条件(第1の条件)として、影響指標が車両評価項目に与える影響度を考慮して、下位の階層の変更する項目(影響指標)を決定する。
ここで、車両評価項目に与える影響の大きさは、各影響指標ごとに異なる。例えば、図33に示したハンドリング性能には、その影響指標として、サスペンション性能や重心などがあるが、それらの変更量に対するハンドリング性能の変更量(性能影響関数の傾きなど)は、それぞれ異なり、影響の大きいものから、小さいものまである。
一方、影響指標の中には、複数の車両評価項目に影響を与えるもの(車重やサスペンション性能など)や、より少ない或いは一つの車両評価項目にしか影響を与えないもの(燃料タンク寸法など)がある。
本実施形態では、各影響指標に対して、或る車両評価項目に与える影響の大きさ、及び、影響を与える車両評価項目の数、を予め規定している。例えば、図33のような表において、ホイールベースには、「ホイールベース(45)」と数値(影響度数値)が付加されている。十の位は、或る車両評価項目内における影響度の大きさの順位(この例では、ホイールベースがハンドリング性能に影響を与える大きさが4番目)を表し、一の位は、影響を与える車両評価項目の数(この例では、ホイールベースが5つの車両評価項目に影響を与える)を表す。図示しないが、他の影響指標にも同様の影響度数値が規定されている。
図40に示すように、第1階層の表示画面において、影響度のボタンが押され、そのような影響度を考慮するようになっている。図においては、実線で示された実力値に対し、破線で示すように、オペレータが燃費性能を上げ、ロードノイズ性能を若干下げるようにして、バランスを調整している。
このような場合、システムは、変更されたバランスを得るために、下位の階層において、先ず、燃費性能に影響を与える影響度が一番大きいもの(上述した影響度数値の十の位の数値が「1」のもの)且つ他の車両評価項目への影響が一番小さいもの(上述した影響度数値の一の位の数値が「1」のもの)を変更する。続いて、影響度がその次に大きく且つ他の車両評価項目への影響がその次に小さいもの、について次々に変更する。そして、第2階層及び第3階層で変更される影響指標の数、及び、それらの変更量は、第1階層でオペレータが調整したバランスが得られるように決定される。即ち、上述した、全ての影響指標と車両評価項目の評価点の増減量とを規定する性能影響関数により、影響指標の変更量を決定できるのである。
図41は、第1階層において、サスペンション性能及び乗り心地性能を他の性能に対し相対的に高めた場合を示している。これらの性能には、サスペンションや車体の性能が大きく寄与するため、第2階層では、サスペンション性能及び車体性能が高められたバランスが表示される。
第2階層及び第3階層においては、そのような変更量や具体的な解決技術が表示される。例えば、図に示すように、第2階層として、サスペンションや車体の性能を向上させたバランスが表示され、第3階層では、サスペンション性能に関する同列の解決技術として、ダンパスプリングの減衰値などが示され、車体性能に関する同列の解決技術として、車体剛性に係わるクロスメンバ断面、アンダパネル鋼板の素材などが示される。
また、図41に示すように、第1階層では、これらの技術を採用した場合のハンドリング性能の目標達成度合い(95%と110%のグラフ)を合わせて表示させることもでき、オペレータの判断の助けとなる。
このようなバランス解消のための変更については、第2、第3の候補を決定して、表示させることもできる。したがって、例えば、第1候補では、ハンドリング性能について、単に、ストラットからマルチリンクサスペンションに変更すれば良い、などと決定されても、オペレータ希望するストラットサスペンションを維持したまま、他の諸元やシステムを変更した候補を得ることもできる。
また、例えば、サスペンション自体を既存車両のものに変更するとシステムが選定した場合には、上述した相反関係マップにその結果が反映されるようになっている。即ち、図38に示した相反関係マップにおいて、システムが選定したサスペンションが、黒丸印のプロットのものであるとオペレータに分かるように表示され、オペレータは、今後の車両企画を進める上で、後は、エンジンの改良で済む、等の判断をすることが容易となる。
このようにして、ギャップを解消する技術が選定される。
次に、第2及び第3の条件としてコストや重量を考慮して、変更する第2及び第3階層の項目(影響指標)及びその変更量を決定することができる。これらの場合には、変更する項目の変更の優先順位は、例えば、コストを重視する場合、燃費性能を変更するために、その燃費性能に影響を与える影響指標のうち、データベースに格納された各部品やシステムのコストの小さいものから順番に変更するようになっている。また、同程度のコストの場合には、車両評価項目に影響を与える度合いが大きく且つ他の車両評価項目に与える影響が小さいもの(上述した影響度数値が小さいもの)から優先的に変更する。このようにして、安く且つ調整する項目が少ないようにして、第2階層及び第3階層の項目の変更量が決定される。重量に関しても同様である。これらの場合も、バランスの得られる複数の候補を表示させることができる。
ここで、第1階層でオペレータが調整したバランスを完全に得ることが困難な場合も当然生じる。その場合には、第1階層でオペレータが調整したバランス(図の破線)に最も近いものが決定される。そして、そのような場合には、警告(図示せず)が表示されると共に、その決定されたバランスが重ねて表示される(例えば、燃費性能のバランス値が3となり、一方、ロードノイズ性能のバランス値が3まで下がったり、ハンドリング性能のバランス値が2.5に下がる、など)。また、それに応じた目標達成度合いが表示される(図41のグラフで例えば95%と表示される)。
このような場合、オペレータは、図38に示したような相関関係マップで再度検討を行う必要があることや、新規開発の必要性などを判断することができる。
このようにして、コストや重量をも考慮しつつ、ギャップを解消する技術を選定することができる。
次に、第4の条件として過去事例を考慮して、変更する第2階層及び第3階層の項目及びその変更量を決定する例について説明する。
過去事例とは、過去にこのシステムにより企画した車両に関する事例である。この第4の条件としては、データベースの評価用補助データに格納された、図42に示すような、企画要件(カテゴリやクラス、開発時期、コスト、設備条件など)や、各車両評価項目の評価点(企画開始時、企画途中及び企画終了時の実力値)をもとに、現在の企画車両のギャップ解消を検討するものである。
システムは、このような過去事例のデータにより、例えば、図43に示すような第1階層のバランス(燃費性能が2、ロードノイズが4、その他が3)となっている過去事例を過去車両からピックアップする。具体的には、複数の過去車両の車両評価項目の評価点のデータの中から、企画開始時或いは企画途中に、そのようなバランスとなっているものをピックアップする。そのピックアップした過去車両が、例えば、過去車両1である場合には、図42のように、そのことが分かるように、ハイライト表示される。図42に示す例では、ハンドリング性能が5.6から6.0に上げた事例がピックアップされている。
また、変形例として、企画支援システムが、算出されたギャップ量を解消している過去事例をピックアップするようにしてもよい。その場合、例えば、複数の車両評価項目のうち、ギャップの大きい車両評価項目のギャップを解消している過去事例をまず検索し、その中から次にギャップの大きい車両評価項目のギャップを解消している過去事例を絞り、というように、企画車両の各車両評価項目のギャップを解消し得る過去事例をピックアップするのがよい。システムによりピックアップされた結果は、一覧表で表示される。全ての車両評価項目のギャップを解消できない場合には、ギャップ解消度合いが大きいものから順に並べて表示するとよい。
また、このような表示と合わせて、図43に示すようなレーダーチャート(第1階層〜第3階層)を、過去事例の車両においても表示させることができる。このようなレーダーチャートは、企画車両のものと並べて表示させることもできる。
オペレータは、企画車両及びピックアップされた過去事例の車両について、これらのような一覧表やレーダーチャートを参照して、図46に示すように、現在の企画車両のギャップを解消する技術を採用したり、開発目安を得ることができる。
なお、複数の要件の中から任意の要件(例えば、車両評価項目のハンドリング)を満たすものをピックアップするように予め設定するか、或いは、ハンドリング性能を特に上げたい場合など、カテゴリに限らずスポーツカーも含むような範囲からピックアップさせることもできる。そして、ピックアップされた過去車両が複数の場合には、任意の順(ハンドリング性能を満たすものの中から、次に、乗り心地が良いものの順など)に並べ替えることができる。
このように、比較的近い企画要件及びオペレータが着目する要件での過去データ、特に、バランスを参照して、現在の車両企画に有効に活用することができる。
次に、第5の条件として顧客要求を考慮して、変更する第2階層及び第3階層の項目及びその変更量を決定することができる。
この第5の条件として、システムは、第2階層及び第3階層の項目の変更の際、顧客が重要視する性能の顧客評価が高まるような項目(影響指標)であり、且つ、影響度の大きい(影響度数値が小さいもの)項目(影響指標)から、優先的に変更する。
ここで、上述したように、データベースには、顧客評価の重要度に関するデータ(図44参照)や、顧客評価指標と車両評価項目との関係を示すデータ(図45参照)が格納されている。また、データベースには、全ての影響指標(第2及び第3階層の項目)について、図に示すような各項目(図45では、ホイールベース(影響指標))と顧客評価指標点との関係のデータが、格納されている。
したがって、顧客が重要視する性能は、図28(a)のようなデータから決定され、その顧客評価が高まるような項目(影響指標)は、図33から決定され、各車両評価項目の実力値と顧客評価指標点との関係は、図28(b)から決定される。
このようにして、システムにより、第1階層でオペレータにより調整されたバランスを得ると共に顧客要求を考慮した解決技術が選定される。
また、上述した第1乃至第3の条件によりシステムが技術選定をした場合、図28(a)及び図28(b)のデータを基に、図44に示すように、顧客要求の適合性が表示される。例えば、第2及び第3階層の項目の変更と図により、各影響指標の変更による顧客評価の増減が算出され、また、第1階層の車両評価項目の評価点の変更による顧客評価の増減が算出され、それらの算出結果を所定の基準に当てはめて、顧客要求に適合するか否かを、Aランク、Bランクのように表示する。所定の基準としては、図44に示す例では、車両評価項目の点数分布に応じ、例えば、乗り心地に関しては、6.0点以上がAランク、5.4〜5.9点がBランク、などと、各車両評価項目ごとにデータベース化されている。
図40の表示では、では、燃費性能に関して、顧客要求の適合性がBランクからAランクに上がり、顧客要求を満足し、ロードノイズ性能は、評価点自体が4から3.5に低下したとしても、顧客要求は未だ満足していることが分かる。
このようにして、顧客要求を考慮しつつ、ギャップを解消する技術を選定することができる。
ここで、次に、下位の階層(第2階層或いは第3階層)の項目を変更した場合について説明する。
第3階層の項目を変更した場合には、各車両評価項目の評価点が、上述した性能影響関数により加減算され、第1階層の車両評価項目のバランスの表示が変更される。また、上述したように、目標達成度も表示される。オペレータは、第3階層の各項目を変更したときの車両評価項目の評価点の変動を知ることができるので、作業性が向上し、より早期に目標を達成することができる。また、第2階層を変更した場合も同様である。なお、第2階層を変更した場合には、第3階層として、変更する項目及び変更量が、上述した第1乃至第5の条件により決定される。
次に、他の例として、例えば、動力性能のギャップが大きい場合、どのエンジンを選択するかを、所定の一覧表を見ながら、オペレータが任意に選択する例について説明する。
例えば、一覧表として、図42に示すように、カテゴリ等の企画条件(カテゴリ、クラス、排気量、駆動方式など)に応じて、システム選定リスト(選択肢の一覧表)が表示される。この一覧表の内容は、車両評価項目の評価点の高い順や、コスト順などに応じて任意に並べ替えることができる。
また、この一覧表として、例えば、ある車両評価項目に関して、その目標値を達成可能なシステムや部品を表示させることもできる。即ち、エンジンやミッションの既存の組み合わせの中から、仮にその組み合わせのものに変更した場合に、それらのエンジン等が有する影響指標のデータと、性能影響関数(図36参照)とにより、企画車両の評価点を算出し、目標値をクリアすることができるかを算定することができる。この場合、ギャップ解消量の大きいものの順や、コストや重量の小さい順に並べることも可能である。また、図44に示すようなデータにより、顧客要求を満たすことができる順に並べることも可能である。そして、オペレータがそれらの中からユニットなどを選択すれば、ギャップを解消できることになる。
また、このような一覧表と共に、諸々の情報(重量、コストなど)を表示させることもできる(図示せず)。また、図47では、組み合わせ(選定No.)で表示されているが、エンジンやミッションなどごとに表示させ、任意に選択できる。そして、車両企画のシステムや部品などを変更した場合の車両評価項目の評価点を図46に示すように表示させたり、バランス表示させたりすることも可能である。
以上のギャップ解消検討により、車両企画を有意義に進めることができる。即ち、従来は、企画段階に、設計の技術者も入って技術的或いはコスト的な考慮を行っていた。その場合、図38や図40に示したようなデータを持たずに、各部署のノウハウ等をもとに、各部署が互いに調整していたので、時間がかかっていたり、結果として平均的な車となり易いものであった。これに対して、本企画車両支援システムによれば、このような評価を、客観的なデータを基に行うことができ、車両企画の効率を向上させると共に企画した車両をより現実的なものとすることができる。
このようなステップに続いて、図15のステップS8の詳細検討、ステップS9のプレゼンテーション、及び、ステップS10の設計段階移行により、企画車両構築が終了する。
上述した車両企画支援システムを利用することにより、自動車メーカにとって重要且つ必須である車両企画段階で、車両形状やエンジン等の基本構造(レイアウトやパッケージを含む)まで含めて、車両の構想を練ることで、具現化した車両を企画できる。つまり、企画した段階で、車両の性能(例えば、工場で作れる、法律に対応、強度、空力性能、衝突性能等)を、概略検証することができる。
また、各部門は、その客観的に数値的に確定した企画車両を実現すべく、個々の検討に専念することができる。よって、各部門の都合に影響されず、個性的な車を作ることができる。
さらに、その企画車両について試作車を作れば、原理的に、基本的な性能を満足する車両となる。このため、実験の必要性が減少し、設計期間を短縮することができる。また、設計段階では、騒音対策や部品間の小さな干渉等の作り込みの調整だけをすればよくなる。つまり、従来の設計段階で行っていたCAE検証等を、車両企画と共に効率的に行うことができ、設計段階を短縮することができる。
そして、企画精度を高めると、設計段階が短縮される。企画段階で、車両構造(フレーム形状など)も含めて検討するので、設計段階が短縮される。
なお、溶接、購入先、取付位置等の細かい設計事項は、設計段階で行うことができる。