JP2007084917A - 金属結合による被覆を持つトラック型機械の構成部品 - Google Patents

金属結合による被覆を持つトラック型機械の構成部品 Download PDF

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ティモシー ディー. ウォドリッチ,
Todd B Niemann
トッド ビー. ニーマン,
Gopal S Revankar
ゴパル エス. レヴァンカー,
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Abstract

【課題】摩耗と腐食の両方を減らすことができ、低コストで実稼動環境に適用できる、金属結合による被覆を持つトラック型機械の構成部品を提供する。
【解決手段】鉄ベースの合金で形成される車台組立部構成部品の本体300は、表面上にアンダーカットまたは溝314が露出され、鉄ベースの合金と金属結合を形成するように融合される耐磨耗性被覆312を持つ。耐摩耗性被覆は、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む融合金属合金を含む。耐摩耗性被覆を持つ車台組立部構成部品の外側表面部分は、トラック型車両のエンドレストラックの動作中の構成部品の磨耗面に相当する。
【選択図】 図3A

Description

(関連出願データ)
本出願は、2002年3月6日に申請された米国特許出願No.10/090,617の一部継続出願であり、その全体を参照により本願に援用する。
本開示は、一般にトラック型機械の構成部品、例えば、トラック・チェーン・ボトム・ローラ、トラック・チェーン連結金具、トラック・ピン・ブッシュ(軸受筒)、トラック・ピン、トラック・ピン・ブッシュ接続機構などに関するものである。詳細には、車台組立部構成部品や他のトラック型機械の構成部品であって、耐摩耗被覆、例えばボトム・ローラの部分、トラック・チェーン連結金具が係合したり外れたりする面、ドライブ・スプロケットが係合したり外れたりするトラック・ピン・ブッシュの外径面、トラック・ピン・ブッシュの内径面、二つの機械部材がヒンジで動くようにされているヒンジ・ピン・ブッシュ、トラック・ピン・ブッシュとヒンジ・ピン接合部におけるピンの外径面の内の少なくとも一つのような、磨耗にさらされる構成部品の部分に金属結合している耐摩耗被覆を持つ構成部品に関するものである。
下記の技術の状況の議論において、ある種の構造や方法に言及することがある。しかし、下記の言及は、これらの構造や方法が先行技術を構成するという許可であると解釈されてはならない。出願人は、そのような構造や方法が本発明の先行技術としての資格はないと実証する権利を明白に留保する。
エンドレストラックは、連結金具、トラック・ピン・ブッシュ、トラック・ピン、ボトム・ローラ、およびシューで構成されるチェーンである。図1は、トラック型機械、すなわち、クローラ・トラクタ上のトラックの代表的な部分におけるこれらの車台組立部構成部品を示す。トラックの各部分には、片方の端部でトラック・ピン・ブッシュにしっかりと取り付けられている1対の連結金具と、他方の端部にあるトラック・ピンがある。トラック・ピンは、ブッシュの内側に嵌合して、連結金具の次の対を保持する。トラック・ピンもトラック・ピン・ブッシュも両方共、トラックのサービス寿命の間、部分が離れることのないように、通常は連結金具に「圧入」される。各トラック上に1本のトラック・ピン、いわゆるマスター・ピンがスナップ・リングによって保持されており、例えばトラックの修理やメンテナンスを行うとき、トラックの取り外しと分離を可能にしている。目的とする使用環境(例えば、粘土、スリット、ローム、砂利、雪、泥、塗装面)によって決まる望ましいグリップまたはグローサを持つトラック・シューが、各部分にボルトで固定されていて、けん引を行っている。
トラック型機械の車台組立部構成部品、例えば、トラック型機械のエンドレストラックにおけるトラック・チェーン・ボトム・ローラ、トラック・チェーン連結金具、トラック・ピン・ブッシュ、トラック・ピン、トラック・ピン・ブッシュ接続機構などは、非常に厳しい動作環境にさらされている。例えば、クローラ・トラクタのようなトラック型機械のトラックや車台には、動作中にがれき、汚水、岩石などが入りうる。その後これらの物質が、車台組立部構成部品の係合面と運転機械の係合面に蓄積したり、それらの間の部分に詰め込まれたり、あるいは直接的に、車台組立部構成部品の表面をこすり取ったり、摩耗させたり、へこませたり、引っかいたり、裂け目を入れたりする。トラックをきつく調整しすぎると、摩擦が強くなり、トラック・ピンやトラック・ピン・ブッシュなどの車台組立部構成部品の磨耗を促進する原因となる。極端な場合、トラックの調整が非常にきついと、トラックが過熱して溶け出し、トラック・ピンやトラック・ピン・ブッシュなどの車台組立部構成部品の硬度を「低下」させうる。すなわち、構成部品を熱処理して構成部品の硬度を減少させる結果となり、トラック・ピンやトラック・ピン・ブッシュを融合させる原因となることすらある。逆に、トラックがゆるすぎると、特にバックの際、ドライブ・スプロケットの歯が連結金具を飛び越えるのを許してしまい、ドライブ・スプロケットの歯、トラック・ピン、トラック・ピン・ブッシュなどの車台組立部構成部品を磨耗させる原因となる。
車台組立部構成部品は磨耗を免れない。例えば、トラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュには二通りの磨耗、すなわち、外部磨耗と内部磨耗がある。外部磨耗は、ドライブ・スプロケットの歯が接触する範囲で、トラック・ピン・ブッシュの外径上で発生する。この接触範囲は、トラック・ピン・ブッシュの表面の約三分の一以上もあり、トラック・ピン・ブッシュの中央の長さの大半を占める。磨耗は、トラック・ピンの外径上とトラック・ピン・ブッシュの内径上で発生する。さらに、トラック・ピン・ブッシュがトラック連結金具のカウンタボアに嵌合する場合には、トラック・ピン・ブッシュの端部の外径上で内部磨耗が発生する可能性がある。従って、エンドレストラックにおける現在のトラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュは、トラック・ピン・ブッシュのサービス寿命に悪い影響を及ぼしかねない磨耗と圧力を経験する。
現在のトラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュは、通常、磨耗を減らしてサービス寿命を延ばすために硬化された材料で作られている。例えば、現在のトラック・ピンは、合金を浸炭し急冷することによって焼き入れされている。しかし、これらの材料や方法では、やはりサービス寿命は比較的短い。従って、硬さや耐摩耗性を考えた材料の選定に加えて、現在のトラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュは、旋削か交換によってスプロケットに新しい磨耗面を与え、結果的にサービス寿命を延ばしている。例えば、下記を参照されたい。Louis R. Hathaway, Ed. “Tires and Tracks, Fundamentals of Service(タイヤとトラック、サービスの基本),”Moline, IL: Deere and Company, 1986, pp. 47-67。しかし、トラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュは、磨耗の限界を超えて磨耗する前に旋削する必要がある。そうでないとサービス不可能になる。従って、磨耗した構成部品を突き止めて改善するために、トラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュの頻繁な点検と保守が発生し、結果としてそれに関連する機材と人材のダウンタイムが必要になる。
加えて、他のピン/ブッシュ(P/B)接続機構が、トラクタ、建設、林業、鉱業用機械を含めた重機のような各種の機械における二つの機械部材間のヒンジとして広く普及している。P/B接続機構は、ヒンジとして利用される一方で、接続機構に接続された二つの機械部材間の相対運動の間、負荷を持つ軸受として機能することも要求される。そのような接続機構は、機械上の位置によって、また機械の種類によって、粉塵の多い環境にさらされる。この環境からの粉塵は、多くの場合細かい砂の粒子であるが、ピンとブッシュの間のスペースに入り込んでピンとブッシュあわせ面の磨耗を促進する原因となり、接続機構の寿命を短くする。このため、潤滑油を毎日または毎週のように頻繁に交換しても、接続機構を取り替えることが必要になる。砂の粒子によって磨耗が促進されるのは、ピンやブッシュの表面の硬度に比べて、砂の方が硬いためである。
従来のトラック/ピン・ブッシュでは、合わせ面、すなわちピンの外側の面とブッシュの内径面は、浸炭され、部品はその後、急冷され、焼き戻しされて、高い表面硬度を得る。これらの高硬度表面は、浸炭されなかった場合と比べて、(外的環境からピンとブッシュ間のすき間に入る)細かい砂の粒子による磨滅に強い。これはP/B接続機構の寿命を延ばすことにつながる。しかし、浸炭焼入によるこの方法によって得られた表面硬度であっても、およそ60−62 HRCにすぎず、これでは砂の粒子の硬度よりかなり小さいため、この手法は限定的なP/B磨耗保護および寿命延長しかもたらさない。ピンとブッシュ間のすき間に入る砂の粒子は(すき間に注入される)潤滑油と混ざり、潤滑油の効果が次第に減少する。このため、接続機構の密閉効果の程度に応じて、そして機械が動作している環境に応じて、接続機構から砂を出すため、頻繁に、時には毎日、接続機構のすき間のスペースからグリースを強制的に外に出す必要がある。このような頻繁なグリースのパージングは、接続機構の寿命をある程度延ばすのに役立つ。とはいっても、このパージング操作を頻繁に行う必要があるとすれば、時間がかかって無駄である。
その他の現在の車台組立部構成部品は、通常、磨耗を減らしてサービス寿命を延ばすために硬化された材料で作られている。例えば、現在のボトム・ローラは、焼入れによって硬化されている。しかし、これらの材料や方法では、やはりサービス寿命は比較的短い。砂は硬化鋼よりかなり硬いため、磨耗の問題は悪化し、ボトム・ローラの磨耗は単に接触面を硬化させただけでは大幅に減少させることはできない。従って、磨耗した構成部品を突き止めて改善するために、ボトム・ローラの頻繁な点検と保守が発生し、結果としてそれに関連する機材と人材のダウンタイムが必要になる。他の車台組立部構成部品についても、同様の取り組みと同様の限定的な結果が知られている。
また、例えば、車台組立部の一部を形成する車台トラック・チェーン連結金具は、厳しい磨耗と腐食にさらされる。磨耗は、それ自体が硬化されている車台ローラとの接触が原因である。連結金具とローラの接触面との間に閉じ込められた乾いた砂や湿った砂の懸濁液(スラリー)、あるいは岩のような硬い物質の研磨作用によって、磨耗の度合いが高まる。砂は硬化鋼よりかなり硬いため、磨耗の問題はさらに悪化し、連結金具の磨耗は単に接触面を硬化させただけでは大幅に減少させることはできない。従って、磨耗を少なくして連結金具の寿命を大幅に延ばすには熱処理以外の解決策が必要である。
また、クローラや他の建設機械および鉱業機械の機能的本質により、これらの機械の車台部品は湿った砂や泥と連続的に緊密な接触を保つ必要がある。このため、連結金具の表面は腐食し、磨耗との相乗作用が生まれる。鋼を硬化することによってこの腐食を減らすことはできない。それ以外の連結金具の表面処理、例えば浸炭、窒化、または他の従来型の表面処理方法は、連結金具がサービス中に直面する大変な磨耗および腐食環境に対してコスト効率が良くない。もっと高価な材料、例えば高合金鋼や他の先端材料は、そのような入れ替えは相当なコスト増となるため使うことができず、受け入れ可能な解決策とは言えない。
磨耗と腐食の両方を減らすことができ、低コストで実稼動環境に適用できる問題解決策が必要である。
構成部品の現行の製造工程の変更が提案される。現行の方法は、さまざまな量のホウ素、マンガン、クロム等を含み、あわせ面および高周波焼入した選択表面を切削した熱間鍛造中炭素鋼を含んでいる。
金属面を他の金属または合金で被覆加工して、外観を良くしたり、腐食に対して保護したり、耐摩耗性を向上させたりすることを、「hardfacing(硬化肉盛)」または「hard surfacing」と呼ぶことが多い。例えば、Alessi 米国特許No. Re.27,851、Revankar米国特許 No.5,027,878 およびNo.5,443,916、 Brady他米国特許No.4,682,987、そして、Hill、米国特許No.5,456,323を参照されたい。
硬化肉盛は、粉末の超硬金属合金を金属表面上に融着させることによって行われることが多い。エンドレストラックに施す際、磨耗にさらされる金属部品は、焼きを入れて耐摩耗性を向上させることができる。しかし、現行のように浸炭より前に耐摩耗性被覆を塗布すると、耐磨耗被覆がその後の浸炭の間に酸化し、被覆の耐磨耗性に悪影響を与える結果となる。
従って、トラック・ピン・ブッシュのようなトラック型機械で用いられるエンドレストラックの車台組立部構成部品には、サービス寿命を延ばし、エンドレストラックに関連する長期の保守コストを削減するため、磨耗に時間のかかる表面が望ましい。さらに、耐摩耗性合金を使った被覆によって磨耗に時間のかかる表面を生み出す一方で、他の適切な手段、すなわち焼入れによって構成部品の被覆していない部分の望ましい耐磨耗性も得ることができる方法が望まれる。
また、大型建設機械、鉱業機械および林業機械の機能的本質により、これらの機械の車台組立構成部品やヒンジ接続機構構成部品はいずれも、機械操作の間、湿った砂や泥と持続的に緊密な接触を保つ必要がある。このため、ボトム・ローラのような構成部品の表面は腐食し、磨耗との相乗作用が生まれる。鋼を硬化することによってこの腐食を減らすことはできない。それ以外のボトム・ローラの表面処理、例えば浸炭、窒化、または他の従来型の表面処理方法は、ボトム・ローラがサービス中に直面する大変な磨耗しやすいおよび腐食しやすい環境に対してコスト効率が良くないか適切でない。もっと高価な材料、例えば高合金鋼や他の先端材料は、そのような入れ替えは相当なコスト増となり、しかもそれ相当の性能の増加がないため使うことができず、受け入れ可能な解決策とは言えない。
磨耗と腐食の両方を減らすことができ、低コストで実稼動環境に適用できる問題解決策が必要である。
米国特許6,414,258は、硬い材料のビーズを無限軌道車の下部走行体のスプロケットの歯やブッシュに塗布する方法を開示している。この方法では、ビーズを溶接オーバレイによって(明らかに遅い工程である)順次塗布し、正弦型表面を形成する。これは、チェーンの連結金具のような合わせ部品には不利である。沈殿物は本質的に玉であるから、初期の磨耗によって滑らかな面を生成するにはかなりの時間がかかる。この滑らかな磨耗表面が生成される前に、被着した接触面が、接合する連結金具の表面に損傷を与える可能性がある。
本発明の目的は、先行技術の問題を回避する、または多少とも解決することである。
本発明のさらなる目的は、車台トラック・チェーンの少なくともボトム・ローラ上に耐摩耗性被覆を施すことである。
本発明の一つの態様において、エンドレストラックの中のトラック・ピンと協働するトラック・ピン・ブッシュが提供されており、トラック・ピン・ブッシュは、
鉄をベースにした合金で形成されていて第一の端部と第二の端部を持つ管状本体であって、少なくともその一部分が表面焼入れしてある外側表面と内径を持つ内側表面を持っており、内径は第一の端部から第二の端部まで延びる軸状の穴の円周を定め、表面焼入れしてある一部分の少なくとも一部は、鉄ベースの合金の非浸炭層を露出するのに十分な深さまで除去されている管状本体と、
前記非浸炭層に金属結合された耐摩耗性被覆であって、耐摩耗性被覆は、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む融合超硬金属合金を含む耐磨耗性被覆と、
を含む。
第二の実施例において、エンドレストラックの中のトラック・ピンと協働するトラック・ピン・ブッシュが提供されており、トラック・ピン・ブッシュは、
第一の端部と第二の端部と、
内径を持つ内側表面であって、内径が第一の端部から第二の端部まで延びる軸状の穴の円周を定める内側表面と、
第一の端部部分と第二の端部部分に第一の外径を持ち、その間の中間部分に第二の外径を持つ外側表面であって、第二の外径は第一の外径より大きい外側表面と、
前記中間部分の少なくとも一部に位置する環状溝であって、前記中間部分の軸長の半分以上に伸びている環状溝と、
前記環状溝に配置され、トラック・ピン・ブッシュに金属結合された耐摩耗性被覆であって、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む融合超硬金属合金を含む耐摩耗性被覆と、
を含む。
本発明のさらなる態様において、浸炭金属部分の金属表面を耐磨耗被覆で硬化肉盛する方法が提供されており、その方法は、
浸炭金属を、金属表面の少なくとも一部分から金属の非浸炭層を露出するのに十分な深さまで除去し、その部分は被覆すべき範囲を定めるステップと、
鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液でその範囲を被覆するステップと、
その範囲と被覆された懸濁液の間の金属結合を形成して、耐摩耗性被覆を形成するステップと、
を含む。
第二の実施例において、トラック・ピン・ブッシュの金属表面を耐磨耗被覆で硬化肉盛する方法が提供されており、トラック・ピン・ブッシュは外径を持つ外側表面、内径を持つ内側表面、第一の端部と第二の端部とを含んでおり、内径は第一の端部から第二の端部まで延びる軸状の穴の円周を定め、軸状の穴はエンドレストラックにおいてトラック・ピンと協働しており、その方法は、
トラック・ピン・ブッシュの少なくとも一部を浸炭して、浸炭深度を備えた表面を作成するステップと、
非浸炭層を露出するのに十分な深さまで、浸炭金属を除去することによって、被覆すべき範囲の中に、トラック・ピン・ブッシュの浸炭表面の少なくとも一部を準備するステップと、
トラック・ピン・ブッシュのうちの露出された非浸炭層を、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で被覆するステップと、
露出された非浸炭層および懸濁液を金属結合することによって耐摩耗性被覆を形成するステップと、
準備されていない浸炭トラック・ピン・ブッシュの表面を急冷によって表面焼入れするステップと、
を含む。
さらなる実施例において、トラック・ピン・ブッシュの金属表面を耐磨耗被覆で硬化肉盛する方法が提供されており、その方法は、
第一の端部と第二の端部、および、内径を持つ内側表面であって、内径が第一の端部から第二の端部まで延びる軸状の穴の円周を定める内側表面と、第一の端部部分と第二の端部部分に第一の外径を持ち、その間の中間部分に第二の外径を持つ外側表面であって、第二の外径は第一の外径より大きい外側表面を持つトラック・ピン・ブッシュを形成するステップと、
トラック・ピン・ブッシュを浸炭して、それぞれが浸炭深度を持つ、浸炭外側表面、内側表面、第一および第二の端部部分を作成するステップと、
前記中間部分の少なくとも一部から浸炭鋼を除去して、第二の径を少なくとも浸炭深度分だけ減少させるステップと、
鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で、減少させられた径の範囲の中の前記中間部分を被覆するステップと、
懸濁液の膜厚を調整して、軸状の穴と同心の外側表面を持つようにし、同心の外側表面の膜厚が耐摩耗性被覆の最終的な膜厚の1.67乃至2.0倍になるように調整するステップと、
前記中間部分の前記部分と懸濁液を金属結合することによって耐摩耗性被覆を形成するステップと、
少なくとも内径および第一と第二の端部を表面焼入れするステップと、
を含む。
本発明のさらなる態様において、クローラ・トラックのエンドレストラックの中で隣接するトラック連結金具を接続するためにトラック・ピンと組み合わせてトラック・ピン・ブッシュが提供されており、トラック・ピン・ブッシュは軸状の穴を含んでいてトラック・ピンがそれを通る位置にあり、トラック・ピン・ブッシュは、
表面焼入れをされ鉄ベースの合金で形成されていて第一の端部と第二の端部、外側表面、および内径を持つ内側表面を持つ管状本体であって、内径は第一の端部から第二の端部まで延びる軸状の穴の円周を定め、外側表面の一部は、鉄ベース合金の非浸炭層を露出するのに十分な深さまで除去されている管状本体と、
前記部分に金属結合された耐摩耗性被覆であって、耐摩耗性被覆は、少なくとも60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含む耐磨耗性被覆と、
を含む。
本発明の別の態様において、トラック型機械のエンドレストラックのピン・ブッシュ接続機構が提供されており、ピン・ブッシュ接続機構は、
外径を持つ外側表面と、内径を持つ内側表面とを含むブッシュと、
外側表面を含むトラック・ピンとを含み、
トラック・ピンの外側表面の一部はブッシュの内側表面の一部と実質的に一致していて摩擦面を形成しており、摩擦面は金属結合された耐摩耗性被覆を持っており、耐摩耗性被覆は、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む融合超硬金属合金を含む。
本発明のさらに別の態様において、ピン・ブッシュ接続機構を作る方法が提供されており、前記方法は、
外径を持つ外側表面と、内径を持つ内側表面とを含むブッシュを形成するステップと、
ブッシュの内側表面の一部と実質的に一致していて摩擦面を形成している外側表面を含むトラック・ピンを形成するステップと、
摩擦面の部分をブッシュの内側表面から除去して被覆すべきブッシュの範囲を露出し、摩擦面の部分をトラック・ピンの外側表面から除去して被覆すべきトラック・ピンの範囲を露出するステップと、
鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で、ブッシュとトラック・ピンの両方の露出範囲を被覆するステップと、
露出範囲と被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐磨耗性被覆を形成するステップと、
を含む。
本発明のさらなる態様において、車台トラック・チェーン・ボトム・ローラが提供されており、車台トラック・チェーン・ボトム・ローラは、
少なくとも一つの円筒部分と、
前記少なくとも一つの円筒部分より直径が大きい少なくとも一つのフランジとを含み、
前記少なくとも一つの円筒部分と前記少なくとも一つのフランジ部分の少なくとも一部は磨耗にさらされ、
前記磨耗にさらされる部分は金属結合された耐磨耗性の被覆を持っており、
前記耐摩耗性被覆は、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を重量で少なくとも60%含む融合超硬金属合金を含む。
本発明のさらなる態様において、車台トラック・チェーン・ボトム・ローラを作る方法が提供されており、その方法は、
少なくとも一つの円筒部分と少なくとも一つのフランジ部分を持つ円筒状の本体を形成するステップと、
前記円筒部分とフランジ部分のうちの磨耗にさらされる部分の外側表面を除去して、被覆すべきローラ本体の範囲を露出するステップと、
鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で、露出範囲を被覆するステップと、
露出範囲と被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐磨耗性被覆を形成するステップと、
を含む。
本発明の別の態様において、トラック型機械のエンドレストラックのトラック・チェーン連結金具が提供されており、連結金具は、
硬化鋼で形成される本体と、
本体の第1の端上にあって付属装置用の少なくとも一つの開口部を含む取付け面と、本体の第2の端上の接触面と、を含み、
接触面は取付け面の反対側にあり、
接触面は、第2の端に沿って長く伸びていて磨耗面を形成している実質的に平面の領域を含んでおり、
磨耗面は、金属結合された耐磨耗性の被覆を持っており、耐摩耗性被覆は、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む融合超硬金属合金を含んでいる。
本発明のさらに別の態様において、トラック・チェーン連結金具を作る方法が提供されており、その方法は、
トラック・チェーン連結金具は、本体、本体の第一の端上の取付け面、および本体の第二の端上の接触面を含み、取付け面は付属装置用の少なくとも一つの開口部を含み、接触面は第二の端に沿って長く伸びていて磨耗面を形成している実質的に平面の領域を含み、接触面が取付け面の反対側にあるように、トラック・チェーン連結金具を形成するステップと、
磨耗面の部分を除去して、被覆すべきトラック・チェーン連結金具の範囲を露出するステップと、
鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で、トラック・チェーン連結金具の露出範囲を被覆するステップと、
露出範囲と被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐磨耗性被覆を形成するステップと、
を含む。
典型的実施形態において、金属結合による耐磨耗被覆を持つ車台組立部構成部品はトラック・ピン・ブッシュである。トラック・ピン・ブッシュはトラック型機械、例えば、クローラ・トラクタのエンドレストラックにおいて、トラック・ピンと協働する。図2に示す典型的形態において、トラック・ピン・ブッシュ200は、鉄をベースにした合金で形成される円筒状の本体を持っており、少なくともその一部分は表面焼入れをされている、すなわち、外側表面、内側表面、端面、それらの部分または組み合わせは浸炭焼入れされている。トラック・ピン・ブッシュ200は、外径を持つ外側表面202と内径を持つ内側表面204を持つ。内径は、トラック・ピン・ブッシュ200の第一の端208から第二の端210まで延びる軸状の穴206の円周を定める。耐磨耗性被覆212が、トラック・ピン・ブッシュ200の部分214の上に配置され、金属結合されている。これは、表面焼入れしてある部分の少なくとも一部を、鉄ベース合金の非浸炭層を露出するのに十分な深さまで除去することによって、露出されている。
好適な実施形態において、硬化肉盛を施したトラック・ピン・ブッシュが、均一な、すなわち、変化のない、外径を持った外側表面を持つ。少なくとも外側表面の一部は、表面焼入れされている、すなわち、浸炭焼入れされている。図3Aに示すように、トラック・ピン・ブッシュ300は、トラック・ピン・ブッシュ300の第一の端306から第二の端308まで延びている軸状の穴304の円周を定める内径を持つ内側表面302を持つ。外側表面310は、トラック・ピン・ブッシュ300の軸方向の長さLに沿って均一な外径を持つ。耐磨耗被覆312が、浸炭外側表面310の一部分316の除去によって露出された非浸炭層314に金属結合している。
別の典型的実施形態において、硬化肉盛を施したトラック・ピン・ブッシュが、均一でない、すなわち、変化のある、外径を持った外側表面を持つ。外側表面の少なくとも一部が表面焼き入れされている、すなわち、浸炭され急冷されている。図3Bに示すように、トラック・ピン・ブッシュ318は、トラック・ピン・ブッシュ318の第一の端324から第二の端326まで延びる軸状の穴322の円周を定める内径を持つ内側表面320を持つ。外側表面328は、第一の外径を持った少なくとも一つの第一部分330と第二の外径を持った少なくとも一つの第二部分332を持つ。図示した実施形態において、第二部分332は、第一の端324と第二の端326の両方に位置する第一部分330間の中央部分である。第二の外径は第一の外径より大きいため、第二部分332は軸長L’全体についてトラック・ピン・ブッシュ318から突出している。耐磨耗被覆334が、第二部分332の少なくとも一部分338から浸炭材料の除去によって露出された非浸炭層336の中に配置され、非浸炭層336と金属結合している。
均一な外径を持った外側表面と均一でない外径を持った外側表面のどちらにおいても、露出された非浸炭層314および336、そして従ってその間に配置され金属結合された耐摩耗性被覆312および334は、トラック型機械のエンドレストラックにおけるドライブ・スプロケットと係合するように適合された少なくとも接触面に相当する外側表面310と328の一部分の上に延びる。示された典型的実施形態において、露出層314および336は、浸炭材料の除去によって形成されており、環状溝または浸炭材料の除去によって形成された他の坑や空洞のような外観をしている。しかし、非浸炭表面に対して耐摩耗性被覆を金属結合によって融合させられる限り、露出層はいかなる形状であってもよい。
John Deere 850C Series H Crawlerと表示されたクローラ・トラクタのための一つの態様および応用において、耐摩耗性被覆はトラック・ピン・ブッシュの軸長の大半を覆う形で延びている。他の態様においては、耐摩耗性被覆は特定の応用のための接触面に対応する軸長を覆う形で延びる。特定の応用とはすなわち、特定のトラック型機械、そして恐らく、短い長さ、一つの端、もしくは複数の端、一つの溝、もしくは複数の溝等のための応用であり、当業者にはすぐに分かる。
さらなる態様においては、図3Aに示すように、耐摩耗性被覆はトラック・ピン・ブッシュの外側表面と一体的に、外側表面と同一の平面を持っている。他の態様においては、耐摩耗性被覆が持っている外側表面は、外側表面と同一の平面ではなく、外側表面を超えて延びていて一段高い被覆になっているか、外側表面から引っ込む形で埋め込み被覆になる。耐摩耗性被覆の膜厚がトラック・ピン・ブッシュの磨耗寿命を決定付け、耐摩耗性被覆の膜厚は希望するいかなる膜厚であってもよく、より厚い被覆は磨耗寿命の延命を促進する。典型的実施形態では、耐摩耗性被覆の膜厚はおよそ1−2mmである。
さらなる典型的実施形態においては、金属結合による耐摩耗性被覆を持つ車台組立部構成部品は、トラック・ピン/ブッシュ接続機構の別個の構成部品、例えば、トラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュの内径である。図4は、トラック・ピン/ブッシュ接続機構の概略透視図である。図4では、組立られたピン/ブッシュ接続機構400が、トラック・ピン・ブッシュ402を含み、トラック・ピン・ブッシュ402の穴406にはトラック・ピン404が挿入されている。図5は、分解されたピン/ブッシュ接続機構400の概略透視図であり、トラック・ピン・ブッシュ402とトラック・ピン404のうち、硬化肉盛を施した範囲を示している。典型例のピン/ブッシュ接続機構400、例えばトラック型機械のエンドレストラックのピン/ブッシュ接続機構は、外側半径R’を持つ外側表面410を含み、内側半径r’を持つ内側表面412を含むブッシュ402と、外側表面414を含むトラック・ピン404を含む。トラック・ピン404の外側表面414の一部分420は、ブッシュ410の内側表面412の一部分422に実質的に一致しており、金属結合による耐摩耗性被覆を持つ磨耗面を形成している。耐摩耗性被覆は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含む。
図6は、硬化肉盛を施した典型的なトラック・ピン・ブッシュ402の概略断面図である。図6では、外側半径R’を持つ外側表面410と内側半径r’を持つ内側表面412が見えている。また、磨耗面の形成に貢献するブッシュ410の内側表面412の部分422を示す。部分422は、金属結合による耐磨耗性被覆428で満たされ、任意選択で希望する表面位置および粗さ、例えば内側半径rと同じ高さまで切削されたピン・ブッシュ410の本体426の中の溝424として示されている。任意選択で、部分422は、全長を含めて、穴406の長さのいかなる部分であってもよい。金属結合による耐磨耗性被覆428も、溝424を形成するための予備切削のような何らの予備切削も行わず、任意選択で、形成されたままのピン・ブッシュ410の内側表面412に直接塗布されてもよい。さらに、任意選択で、同様の金属結合による耐磨耗被覆を使って、ブッシュの外側表面、例えば図6の中の外側表面410を、範囲全体または範囲の一部に沿って硬化肉盛することもできる。
図7は、典型的な硬化肉盛を施したトラック・ピン404の概略断面図である。また、磨耗面の形成に貢献するトラック・ピン404の外側表面414の部分420も示す。部分420は、金属結合による耐磨耗性被覆434で満たされており、任意選択で希望する表面位置および粗さ、例えば外側表面414と同じ高さまで切削されたピン404の本体432の中の溝430として示されている。任意選択で、部分420は、全長を含めて、ピン404の長さのいかなる部分であってもよい。金属結合による耐磨耗性被覆434も、溝430を形成するための予備切削のような何らの予備切削も行わず、任意選択で、形成されたままのピン404の外側表面414に直接塗布されてもよい。
提案するピン/ブッシュ接続機構の修正製造工程において、鍛造されたピン・ブッシュと鍛造されたトラック・ピンは、ピン/ブッシュ接続機構に接触するピン・ブッシュとトラック・ピンの部分、例えば磨耗面の近くで、少量だけ(必要な磨耗被覆の膜厚に応じて、通常では1−2mm)切り取られる(アンダーカット)。そして、融合されたとき、希望する表面、すなわち、アンダーカットする前に得られた表面と懸濁液の表面が一致するような膜厚まで、切削された表面に懸濁液被覆が塗布される。融合された懸濁液被覆は強い金属結合を形成し、加熱や冷却に対しても、焼き入れ法のときと同様、あるいはサービス中の厳しい衝撃負荷にさらされた時にも、鋼の基材から砕け落ちることがない。
本明細書の中で開示されたピン・ブッシュ接続機構に関する議論や処理と同様、二つの機械部材がヒンジで動くヒンジ・ピン・ブッシュのような他の種類のピン/ブッシュ接続機構も金属結合による耐磨耗性被覆を持つことができる。本明細書の中で開示されたピン・ブッシュ接続機構に関する議論や処理は、一般に、これらの他の種類のピン・ブッシュ接続機構に等しく適用可能であり、理解すべきことだが、この開示はそのような他の種類のピン・ブッシュ接続機構に対して延長される。
別の典型的な実施形態においては、金属結合による耐磨耗性被覆を持つ車台組立部構成部品は、車台トラック・チェーン・ボトム・ローラである。図8は、典型的な車台トラック・チェーン・ボトム・ローラの概略透視図であり、硬化肉盛を施した範囲を示す図である。図8では、外側表面502を示している。外側表面502は、フランジ部分506によって軸方向と外側方向の境界を付けられた実質的に円筒形の領域504を持つ。少なくとも一つのフランジ部分506は、実質的に円筒型の領域504よりも直径が大きい。トラック型機械のトラックに設置するための取り付け用表面508も示している。実質的に円筒型の領域504は、トラック・チェーン連結金具の接触面、例えば図1に示すトラック型機械のトラックの一部に見られるチェーン連結金具の上部レール表面に接触するように適合されている。運転中、実質的に円筒型の領域504の一部あるいは全部およびフランジ部分506は磨耗を受けやすく、従って、実質的に円筒型の領域504の一部あるいは全部およびフランジ部分506は、それに対して硬化肉盛を施される。
図9は、硬化肉盛を施した車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ500の概略断面図であり、実質的に円筒型の領域504、フランジ部分506および取り付け用表面508を示す図である。実質的に円筒型の領域504の部分520およびフランジ部分506は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含む、金属結合による耐摩耗性被覆522を持っている。部分520の二つの変形例(AおよびB)を図9に示す。これらを含めて、示されていない複数の変化形を使ってもよい。さらに、図9は二つの異なる変形例(AおよびB)を組み込んだボトム・ローラ500を示しているが、理解すべきことだが、均一および異なる変形例の両方を使ってもよい。
金属結合による耐摩耗性被覆522を持つ部分520は、実質的に円筒型の領域504の本体532の中の溝530として示されている。一つの典型的な実施形態において、溝530は金属結合による耐磨耗性被覆522で満たされており、任意選択で、希望する表面位置および粗さ、例えば、実質的に円筒型の領域504のような、外側表面502と同じ高さまで切削されている。加えて、金属結合による耐磨耗性被覆522は、例えば溝530のような配置範囲を形成するための予備切削のような何らの予備切削も行わず、任意選択で、形成されたままの車台トラック・チェーン・ボトム・ローラの外側表面502に直接形成されてもよい。
任意選択で、典型的実施形態は、実質的に円筒型の領域504のうち一つ以上の外側表面の全長を含めて、実質的に円筒型の領域504のいかなる部分においても、金属結合による耐摩耗性被覆522を含んでもよい。さらに任意選択で、典型的実施形態は、フランジ部分508の一つ以上の外側表面の全長を含めて、フランジ部分506のいかなる部分においても金属結合による耐摩耗性被覆540を含んでもよい。金属結合による耐摩耗性被覆540がフランジ部分508のいずれかの部分に含まれるとき、金属結合による耐摩耗性被覆540は実質的に円筒型の領域504(バリエーションAに表示)に関連する金属結合による耐摩耗性被覆522とは別の被覆であってもよい。あるいは、フランジ上の金属結合による耐摩耗性被覆は、少なくとも外側表面502においては、実質的に円筒型の領域504に関連する金属結合による耐摩耗性被覆522と連続していてもよい。加えて、金属結合による耐磨耗性被覆540は、例えば溝542のような配置範囲を形成するための予備切削のような何らの予備切削も行わず、任意選択で、形成されたままの車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ500の外側表面502に直接形成されてもよい。
提案するボトム・ローラの修正製造工程において、ボトム・ローラは、トラック・チェーン連結金具に接触するボトム・ローラの部分、例えばフランジ部分の実質的に円筒型の領域や部分のような磨耗面の近くで、少量だけ(必要な磨耗被覆の膜厚に応じて、通常では1−2mm)切り取られる(アンダーカット)。そして、融合されたとき、希望する表面、すなわち、アンダーカットする前に得られた表面と懸濁液の表面が一致するような膜厚まで、切削された表面に懸濁液被覆が塗布される。融合された懸濁液被覆は強い金属結合を形成し、加熱や冷却に対しても、焼き入れ法のときと同様、あるいはサービス中の厳しい衝撃負荷にさらされた時にも、鋼の基材から砕け落ちることがない。
また別の典型的な実施形態においては、金属結合による耐磨耗性被覆を持つ車台組立部構成部品は、トラック・チェーン連結金具である。図10は、典型的なトラック・チェーン連結金具の第一の側の概略透視図であり、硬化肉盛を施した範囲を示す図である。典型的な実施形態においては、トラック・チェーン連結金具600は、硬化鋼で形成される本体602、本体602の第一の端606上の取付け面604、本体602の第二の端610上の接触面608を含む。取付け面604は、取付装置用の少なくとも一つの開口部を含む。付属装置とは、例えば図1に示すように、トラック型機械のトラックのシューにトラック・チェーン連結金具を固定的にまたは取り外し可能なように加えるための付属装置である。接触面608は取付け面の反対側にあり、第二の端610に沿って長く伸びていて磨耗面を形成している実質的に平面の領域614を含む。
磨耗面の少なくとも一部分、例えば実質的に平面の領域614の部分620は、金属結合された耐磨耗性の被覆622を持っており、金属結合された耐磨耗性被覆622は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含んでいる。金属結合による耐磨耗性被覆622を持つ部分620は、トラック・チェーン連結金具600の本体602の中に溝630を持つ。一つの典型的な実施形態において、溝630は、金属結合による耐磨耗性被覆622で満たされており、任意選択で、希望する表面位置および粗さ、例えば、実質的に平面の領域614と同じ高さまで切削されている。加えて、金属結合による耐磨耗性被覆622は、例えば溝630のような配置範囲を形成するための予備切削のような何らの予備切削も行わず、任意選択で、形成されたままのトラック・チェーン連結金具600の外側表面に直接施されてもよい。
提案するトラック・チェーン連結金具の修正製造工程において、ローラ表面と接触する鍛造された連結金具表面は、少量だけ(必要な磨耗被覆の膜厚に応じて、通常では1−2mm)切り取られる(アンダーカット)。そして、融合されたとき、希望する表面、すなわち、アンダーカットする前に得られた表面と懸濁液の表面が一致するような膜厚まで、切削された表面に懸濁液被覆が施される。融合された懸濁液被覆は強い金属結合を形成し、加熱や冷却に対しても、焼き入れ法のときと同様、あるいはサービス中の厳しい衝撃負荷にさらされた時にも、鋼の基材から砕け落ちることがない。
懸濁液で被覆が施された連結金具は、その後任意選択で、連結金具の機械的強度を高めるため、急冷によって無心焼入れを行い、必要な全体硬度まで焼き戻しを行ってもよい。被覆が施された面より下の基材は、任意選択で、高周波焼入れによって再度硬化を施し、基材の硬度を、焼入れ焼き戻しした連結金具の鋼の全体硬度より高いHRC50−55まで高めてもよい。これにより、連結金具の磨耗寿命がさらに延びる。従って、被覆され(無心焼入れと高周波焼入れによって)熱処理された連結金具の磨耗寿命は、懸濁液被覆の磨耗寿命と被覆の下の高周波焼入れを施した鋼の基材の磨耗寿命の和であってよい。他の被覆および熱処理した部品、例えばピン・ブッシュ接続機構のピン・ブッシュやピン、車台トラック・チェーン・ボトム・ローラにも同様の観測を行うことができる。この和は、使用した懸濁液被覆の膜厚により、被覆していない金属部品の磨耗寿命の4倍から6倍だと考えられる。通常、磨耗や腐食の目的を達成するのに1−2mm以上の膜厚の被覆は必要ないと思われる。無心焼入れや高周波焼入れの間に、被覆の中に巨視的な表面クラックが形成される傾向はあるが、被覆が基材から離れることはない。これは、被覆が基材に強力に金属結合しているからである。クラックは、被覆の融合の間に形成された応力を軽減する働きがある。しかし、そのようなクラックは被覆された部分が熱処理されなかったら(焼き入れされなかったら)観察される可能性が低い。
典型的実施形態において、耐磨耗性の被覆は、道具、歯車、エンジン部品、農機具等に通常使用される鋼、例えば1045級の硬化された調整済みの鋼より実質的に硬くてより耐摩耗性のある融合された合金である。さらに、耐摩耗性被覆が均一の密度を持ち、Alessiの米国特許No.Re.27,851のような先行技術で得られるものと比べて、脆弱でなく、より耐久性があるように、耐磨耗性被覆はできれば実質的に包含物を含まないことが好ましい。
共通に所有している米国特許No.5,879,743のすべての内容は参照により本願に援用するが、その中でそのような耐摩耗性合金を開示している。さらに、本発明での使用に適した懸濁液を組み入れた懸濁液および被覆技術を開示している。例えば、典型的実施形態における可融性の超硬合金は、できれば60%が鉄、またはコバルト、またはニッケルのような周期表の第八群の遷移金属であることが好ましい。しかし、超硬金属合金は上述の物理的性質を持ち、金属結合、この場合は鉄の基材との金属結合を形成するものである限り、他の金属に基づくものであってもよい。少量成分(約0.1乃至20重量%)としては、一般には、ボロン、炭素、クロム、鉄(ニッケルおよびコバルトをベースにした合金)、マンガン、ニッケル(鉄およびコバルトをベースにした合金)、シリコン、タングステン、モリブデン、一つ以上の炭化物を形成する要素、それらの組み合わせのうち、少なくとも一つがある。微量要素(約0.1重量%以下)例えばイオウも僅少な汚染物質として存在することがある。典型的実施形態においては、合金はヴィッカース硬度で950乃至1250HVという高い硬度を持つ。超硬金属合金は、被覆される金属の融点、例えば約1110°C以下よりも融解温度が低く、できれば約900°Cと約1200°Cの間であって、できれば約1100°C以下であることが好ましい。
浸炭金属で形成された、または非浸炭金属で形成された部分の金属表面を、耐摩耗性被覆で硬化肉盛する方法を提供する。
好適で典型的な方法において、浸炭金属が、焼入れに先立って、金属の非浸炭層を露出するのに十分な深さまで金属表面部分から除去される。金属は、切削、切断、旋盤、研削、研磨など、いかなる適切な手法によって除去されてもよい。露出部分は被覆すべき範囲を定める。典型的実施形態において、露出部分は、元の金属表面の半径より小さい半径を持つ環状溝、くぼみ、その他の坑や空洞のような外観によって定まる。その後、超硬金属合金の懸濁液でこの範囲が被覆され、非浸炭層と被覆された未融合懸濁液との間に超硬金属合金を融合させることによって金属結合が形成され、それによって耐摩耗性被覆が形成される。
もう一つの典型的な方法では、適切な時間をかけて表面を脱炭して、希望する深さまで金属部品の表面から炭素を減少させ、長期的には炭素を除去することによって、金属部品の表面、例えばトラック・ピン・ブッシュの表面を準備する。一つの態様において、脱炭は、表面層の中で、その後の金属結合が非浸炭金属だけに発生するような深さまで発生する。例えば、浸炭層の脱炭は、0.002乃至0.003インチ(50乃至75ミクロン)の深さまで、0.4乃至0.6重量%の炭素レベルまで発生する。別の態様において、脱炭は、少なくとも浸炭層+0.5mmの深さ、すなわち、2.5mmの深さまで浸炭された典型的なトラック・ピン・ブッシュについては3.0mmまで発生する。別の態様においては、浸炭の深さは最大0.010インチであり、脱炭は最大0.015インチまで発生する。
さらなる典型的な方法において、金属部品の表面、すなわち、トラック・ピン・ブッシュ、ピン・ブッシュ接続機構の部分、トラック・チェーン・ボトム・ローラ、そしてトラック・チェーン連結金具の表面は、超硬金属合金の懸濁液によって表面または表面の一部を被覆されてもよい。被覆すべき表面が事前に浸炭されている場合、熱処理方法によって、例えば脱炭によって、あるいは浸炭材料の除去によって、例えば切削によって、超硬金属合金を塗布する前に炭素を除いてもよい。そうして金属部品の表面の選択された部分と被覆された未融合懸濁液との間に金属結合が形成され、それによって耐摩耗性被覆が形成される。
浸炭基材、例えば、内側層に比べて表面層への炭素の集中度を高めた浸炭鉄基材に懸濁液が塗布された例において、炭素と懸濁液との間の金属結合が観察されている。冶金反応において、基材からの炭素は被覆内に拡散し、界面で炭素含有量を増す。界面で増加した炭素は、界面領域、例えば、懸濁液合金と基材の間の界面層において、懸濁液合金の融点を下げ、その結果、懸濁液合金がはがれ落ちる。この効果を軽減するため、非浸炭材料が露出される上記の手順が使われている。別の手法において、懸濁液が塗布される基材の表面は、融合の間は融合時間の間、例えば融合温度にある数分間の間(温度の立ち上げおよび冷却時間を除く)にはがれ落ちるのを最小化するために実質的に水平、例えば、水平から5度乃至10度の範囲に保たれる。
懸濁液は、水性であり、ポリビニル・アルコール(PVA)と微細に分割された粉末形状の可融性超硬金属合金で形成されてもよい。適切な懸濁液の例は、共通に所有している米国特許No.5,879,743に開示されており、そのすべての内容は参照により本願に援用する。本明細書の中、および743の特許に開示されているように、超硬金属合金は鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはその合金のような周期表の第八群の遷移金属であってもよい。典型的な実施形態において、超硬金属合金は、均質な懸濁液を形成するのに十分小さい粒子サイズを持つ微細に分割された粉末の形状をしている。典型的な粒子サイズは約90メッシュ乃至約400メッシュまでの範囲にあり、400メッシュより微細であってもよい。できれば、平均的な粒子サイズは約115メッシュより微細であり、約200メッシュより微細であることが最も好ましい。粉末は、異なる粒子サイズの粉末の混合物であってもよい。また、一つ以上の懸濁剤、および一つ以上の解膠剤を任意選択で懸濁液に追加してもよい。
さらに、使用する懸濁液は、粉末状の超硬金属合金をポリビニル・アルコール結合剤溶液で十分に混合して、望ましい合金対結合剤溶液の重量比率とすることによって準備される。これについては、共通に所有している米国特許No.5,879,743に開示されており、そのすべての内容は参照により本願に援用する。懸濁液に対するその他の添加剤に、懸濁剤および解膠剤が含まれてもよい。
懸濁液は、適切であればいかなる方法で塗布されてもよい。例えば、吹き付け塗装、回転成形、浸漬、鋳込み、展着、すなわち、ブラシまたはドクター・ブレードによる塗布でもよい。
金属表面を耐摩耗性被覆で硬化肉盛する方法の一つの典型的実施形態において、ポリビニル・アルコールと微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金との実質的に均質の懸濁水溶液が形成され、金属表面に被覆が施される。それから懸濁水溶液は、できれば外部からの加熱によって乾燥され、金属表面上のポリビニル・アルコール基質の中に可融性超硬金属合金の固体の層ができる。金属表面に被覆を施し、懸濁液を乾燥させて固体の層を作るステップは、一度以上繰り返され、より厚い懸濁液の被覆が形成されてもよい。
金属表面を耐摩耗性被覆で硬化肉盛する方法の別の典型的実施形態において、金属表面は、ポリビニル・アルコール水溶液で被覆され、微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金は、ポリビニル・アルコール水溶液が乾燥する前にポリビニル・アルコール水溶液の被覆の上に塗布される。金属表面を被覆し、可融性超硬金属合金を塗布し、ポリビニル・アルコール、結合剤、合金粉末の混合物を乾燥させ、固体の層を形成するステップは、一度以上繰り返され、より厚い懸濁液の被覆が形成されてもよい。
本発明の方法の典型的実施形態において、被覆すべき金属表面に懸濁液を塗布するための好適な手順は、金属表面を持つ金属製品の形状や大きさ、および、超硬金属合金に対するポリビニル・アルコール結合剤溶液の濃度の割合に依存する。通常、保護されるべき金属表面上に未融合懸濁液が鋳込み、ブラシ塗布、吹き付けによって施されるが、保護されるべき金属表面を持つ製品が未融合懸濁液に浸漬されてもよい。
浸漬、鋳込み、ブラシによる塗布は、比較的厚い、例えば1mm以上の被覆を短時間に形成するのに好都合である。より長い時間をかけて厚い層を形成するのに、吹き付けを繰り返すこともできる。これらの手順については、超硬金属合金のポリビニル・アルコール溶液に対する割合はできれば約4:1乃至約8:1までの範囲に入り、ポリビニル・アルコール溶液の濃度は重量でポリビニル・アルコールが約1%乃至15%までであるのが好ましい。例えば、この手順では0500/0250および0600/0250または同様の懸濁液が適切である。xxxx/yyyyという表示は、懸濁液のパラメータを示し、ここでxxxx =粉末合金対ポリビニル・アルコールの重量比率、yyyy=結合剤として水溶液中に存在するポリビニル・アルコールの重量%である。注意が必要だが、表示の中で最初の2桁の数字の後の小数点は省略されている。従って、0500は、5.0を表す。濃い懸濁液の組成の場合、すなわちポリビニル・アルコール水溶液に対して合金の比率が高い場合、絞れるペーストとして塗布できるし、テープ状のロールにして金属表面に結合できる。これらの手順については、超硬金属合金のポリビニル・アルコール溶液に対する割合は約8:1乃至約15:1までの範囲に入り、ポリビニル・アルコール溶液の濃度は重量でポリビニル・アルコールが約2%乃至15%までであるのが好ましい。上記の手順において、特別な添加剤が、分散剤、懸濁化剤、可塑剤としての役割を果たすことができる。
被覆を塗布する上記の方法に加えて、ペーストおよびテープによる方法で被覆を厚くすることもできる。 しかし、これらの手順を高速の製造環境に適合させるのは難しい。従って、厚い被覆が望まれるときに、ペーストおよびテープの代替方法として信頼性と経済性があるのは、広い表面上であっても均一な膜厚の被覆を作成する複数回被覆手順である。途中に乾燥サイクルを挟みながら繰り返し吹き付け塗りを行うことによって、必要な膜厚が作成できる。乾燥は、約80°C乃至約100°Cまでの間で、例えば強制循環空気乾燥器の中で行われてもよい。0500/0250の懸濁液がこの方法に特に適しているが、他の定式を使ってもよい。
被覆を施した未融合懸濁液の膜厚は、金属結合の後で望みの最終膜厚になるように収縮因子によって調整できる。すなわち、最終膜厚は金属部品の表面または直径と同一平面上にあるか、表面直径から突出するか、引込むかのいずれかでよい。例えば、本明細書中で説明された懸濁液は、約0.55±0.05の鋳引け係数を持つことが分かった。従って、融合以前の懸濁液の膜厚を鋳引け係数に従って調整し、耐磨耗性被覆の望ましい最終膜厚、例えば最終膜厚の1.67倍乃至2.0倍の未融合懸濁液層が用いられるようにすることができる。
結合は、乾燥した懸濁液被覆と金属部品との金属結合、すなわち、金属部品の選択部分、および、脱炭された、あるいはできれば非浸炭表面を露出するために浸炭金属部分を除去した金属部品の選択部分、との金属結合を形成するステップである。例えば、ポリビニル・アルコール基質の中の可融性超硬金属合金の層によって被覆を施した、またはポリビニル・アルコール水溶液を使って可融性超硬金属合金の層によって被覆を施した金属表面を、保護的雰囲気の下で超硬金属合金が金属表面上に融合するまで、超硬金属合金の融合温度まで加熱することができる。管理された雰囲気、すなわち、不活性のまたは還元性雰囲気の中で、合金を窒化して合金の融合を阻害するという理由で窒素を除外して、加熱を行う。例えば、真空炉の中のヘリウムまたはアルゴンによる100乃至500μmの分圧、またはベルト炉の中のアルゴン、ヘリウム、水素による大気圧より水が約数インチ上にある軽度の正圧が、融合の間の使用には適している。その後、硬化肉盛を融合された金属表面は環境温度まで冷却される。
結合工程の一つの例において、トラック・ピン・ブッシュが約1065°C乃至1110°Cまで加熱される。加熱は、ベルト型コンベヤー炉の中で、大気圧よりわずかに高い水素圧で行われ、トラック・ピン・ブッシュは約2乃至5分間、望ましい融合温度で保持され、その後冷却される。
さらなる典型的な実施形態において、金属部品を懸濁液を結合して耐磨耗性被覆を形成した後、金属部品のうち残りの浸炭金属を急冷によって望ましい硬度まで硬化することができる。例えば、残りの浸炭金属は、非浸炭金属と比べて硬度を高める熱処理によって硬化することができる。金属部品がトラック・ピン・ブッシュである典型的な実施形態において、残りの浸炭金属は、トラック・ピン・ブッシュの内側表面、トラック・ピン・ブッシュの第一の端部、およびトラック・ピン・ブッシュの第二の端部のうちの少なくとも一つに相当する。
懸濁液結合形成に対する浸炭の効果を研究するため、実験が行われた。肉厚10mmの小型低炭素鋼トラック・ピン・ブッシュが浸炭され、空冷された。浸炭層の膜厚はおよそ2乃至2.5mmであった。これらの試料はその後脱炭環境の中で、すなわち低炭素ポテンシャル環境の中で、それぞれ1、2、3時間の間1600°Fまで再加熱され、それぞれ膜厚が0.0005乃至0.0007、0.001乃至0.0012、0.001乃至0.0015インチの脱炭層を得た。脱炭された試料は、可融性超硬金属合金懸濁液によって被覆され、上記で概説した手順に従って結合された。懸濁液による被覆と結合のさらなる詳細は、米国特許5,879,743に記されており、その内容は参照により本願に援用する。
被覆と結合に続いて、鋼と懸濁液の界面が光学顕微鏡で検査された。脱炭時間が長くなるほど、結合の完全性が向上した。これは、より深いところまで脱炭された鋼合金と炭素の含有量が少ない鋼合金は懸濁液と結合しやすいことを示している。しかしブッシュには、融合の最中に重力によって懸濁液被覆が流れた痕跡が見つかった。ただ、脱炭された層が厚くなるほど、流れる傾向は弱まった。
これらの結果は、結合の結果を改善するため懸濁液被覆の前に脱炭してもよいことを示している。しかし、脱炭工程には不利な点が少なくとも二つある。一部の表面上を脱炭すること(例えば、外径だけを脱炭し、内径や端面は脱炭しないこと)は実際的ではなく、また、十分な脱炭の発生に必要な時間、すなわち、未融合懸濁液の被覆対象の上に適切な非浸炭層が形成されるのに必要な時間は数時間以上、恐らく7乃至10時間もかかり、経済的に成り立たない。
浸炭材料の除去を含む好適な実施方法において、浸炭材料は、例えば切削、切断、旋盤、研削、研磨などによって除去され、非浸炭層を露出させる。この方法に対応する実験において、4つのトラック・ピン・ブッシュをその外側直径を切削によって減少させた。除去された量はそれぞれ、3.00、3.35、3.75、4.00mmであった。その後、上記に概説した手順に従って、試料は露出範囲に硬化金属懸濁液で被覆を施されて結合された。
結合領域の目視検査では、融合の最中に重力による流れは発見されなかった。ブッシュ断面の光学顕微鏡検査では、鋼と懸濁液被覆の界面結合領域にはほとんどまたは全く含有物がなく、すべての試料について良好な金属結合であった。非浸炭層を露出するのに十分な浸炭層の除去、この場合材料の約3mmであるが、その除去は従って良好な結合を形成するという結論が得られた。この結論は、さらに第三の実験によって確認された。実験では、浸炭トラック・ピン・ブッシュに焼きならし熱処理を施した。そして、切削されたブッシュの断面の外径から3mmの深さが切削された。光学顕微鏡検査では、浸炭層はこの切削によって完全に除去されており、露出表面には、前浸炭微細構造に相当する微細構造があった。
浸炭材料の除去に関するさらなる実験において、2mm浸炭されたケースを持つトラック・ピン・ブッシュが、浸炭ケースを除去するため、外側表面の軸長の部分上で深さ2.5mmまで切削され、その範囲が懸濁液で被覆された。被覆は手持ち式の噴霧器と手動の取付具を使って行われ、実質的に均質な被覆膜厚が得られた。手動の取付具は、部品が軸方向に取り付けられた紡錘体と手動操作用の手動クランクに似ていた。ただ、機械運転による回転およびコンピュータ制御装置、すなわち回転装置、噴霧装置、ロボット工学等の自動化技術を利用することは可能であった。未融合懸濁液の表面は、その後、平滑でトラック・ピン・ブッシュの穴と同心になるように旋盤上で切削された。融合前の懸濁液の膜厚は融合された膜厚が1mmまたは1.5mmになるように収縮因子に基づいて調整された。収縮因子とは、すなわち、融合された膜厚が未融合膜厚の約0.55倍になるような、実験から導かれた関係である。融合の後で分かったとおり、この切削も、滑らかな表面および均質な膜厚での被覆作成に役立った。
切削され冷却された表面を持つトラック・ピン・ブッシュは適切な温度−時間(T−t)サイクルを使って融合された。典型的実施例においては、T−tサイクルは真空炉またはベルト炉の中で管理された雰囲気、すなわち、不活性のまたは還元性雰囲気の中で、合金を窒化する窒素を除外して行われる。真空炉の中のヘリウムまたはアルゴンの分圧、またはベルト炉の中のアルゴン、ヘリウム、水素による大気圧より水が約数インチ上にある軽度の正圧が、良い例である。融合された半流動体の懸濁液金属が重力によって下向きに流れるのを防ぐため、トラック・ピン・ブッシュは炉室の中で軸を垂直にして設置され、最高温度および最高温度での時間が慎重に選択され、監視された。
適切なT−tサイクルの一例をあげると以下のようになる。トラック・ピン・ブッシュを毎分10乃至15°Cで1080乃至1110°Cまで徐々に加熱し、その温度を1乃至5分間、できれば1乃至2分間維持し、そして望ましい冷却率で、すなわち再循環送風機を用いて、トラック・ピン・ブッシュを冷却する。適切なT−tサイクルの別の例では、トラック・ピン・ブッシュを毎分8乃至10°Cで1065乃至1110°Cまで加熱する。
浸炭材料の除去を含む好適実施方法によって準備された耐磨耗性被覆を施されたトラック・ピン・ブッシュの代表例の目視観測では、被覆の表面が、融合前の切削された懸濁液表面の表面仕上げに相当する滑らかさであることが明らかになった。さらに、トラック・ピン・ブッシュの被覆は、重力による流れが目に付くこともなく、基材に融合され結合されていた。マイクロメータを用いた測定は、トラック・ピン・ブッシュが目に付くような歪みをまったく経験しなかったことを示した。その後の調査で、耐磨耗性被覆を施されたトラック・ピン・ブッシュは炭化珪素研削砥石を用いて研削され、研削された表面は光学顕微鏡で検査された。耐磨耗性被覆にはまったくと言っていいほど多孔性が見られなかった。同様に、光学顕微鏡で検査された被覆の断面にも、被覆の内側にはまったくと言っていいほど多孔性が見られなかった。
トラック・ピン・ブッシュに用いられる耐磨耗性被覆の耐磨耗性についても評価が行われた。ラバー砥石砂磨耗試験により、融合された懸濁液被覆の磨耗の割合は焼入れされた1080鋼の4分の1乃至6分の1であることが明らかになった。従って、1/3乃至1/2mmの融合された懸濁液は、最初の近似として、硬化された1080鋼の2乃至3mmの厚さの層と同程度の磨耗を示したことになる。
上記の一連の実験の結果として、懸濁液で被覆され最終外側直径がDmmのトラック・ピン・ブッシュについて、下記の一般化された製造手順が決定された。この手順には浸炭材料の選択的除去が含まれている。
1.材料の除去を可能にするため外側直径が望ましい最終外側直径より拡大される場合を除いて、特定の応用や使用環境について、部品図毎にトラック・ピン・ブッシュを切削する。本明細書で説明するトラック・ピン・ブッシュの典型的実施形態において、外側直径はD+3.0mmである。
2.トラック・ピン・ブッシュの少なくとも一部を浸炭する。
3.浸炭表面の少なくとも一部から材料を除去する。この例では浸炭表面とは、外側表面である。従って、外径表面の少なくとも一部が、非浸炭層を少なくとも露出するように除去される。さらに、外側直径は、耐磨耗性被覆の望ましい膜厚に適合するよう、任意選択でさらに縮小されてもよい。好適な典型的実施形態のトラック・ピン・ブッシュにおいて、材料を除去した後の外側直径の少なくとも一部は、D−3.0mmである。従って、このステップは、浸炭外径表面上の範囲から材料を約6mm除去する。
4.トラック・ピン・ブッシュの露出表面を、融合前の望ましい外径が得られるような膜厚(融合前)まで、超硬金属懸濁液で被覆する。例えば、トラック・ピン・ブッシュの露出表面を、2.75mmの膜厚、すなわち、(D−3mm)+2.75×2の直径と等しい膜厚まで被覆する。これはD+2.5mmの外径に相当する。
5.懸濁液を融合させて、露出非浸炭層と懸濁液の間に金属結合を形成する。本明細書で説明されるトラック・ピン・ブッシュの好適な実施形態の場合には、融合された懸濁液の膜厚は2.75×0.55または1.5mm、最終ブッシュ直径はD、すなわち望ましい直径であった。ここで、因子0.55は懸濁液被覆膜厚についての実験的に確立された収縮因子である。
さらに一般化された手順の中で、図11を参照して、トラック・ピン・ブッシュについて下記の関係が決定された。
R1=R−X+Y+0.5 式1
R2=R−X 式2
R3=R+0.82X 式3
ここで、Rはトラック・ピン・ブッシュの最終仕上げ半径、すなわちR=R2+Xであり、R1は浸炭されたトラック・ピン・ブッシュの外側半径であり、R2は非浸炭層を露出するための浸炭層除去後のトラック・ピン・ブッシュの外側半径であり、切削された深度は浸炭深度より0.5mm大きい、すなわち、R2=R1−(Y+0.5)であり、R3は、懸濁液被覆の後で融合の前のトラック・ピン・ブッシュの外側半径であり、Xは、融合工程の間の懸濁液被覆について収縮因子を0.55と仮定した場合の融合の後の懸濁液被覆の膜厚であり、すなわち、X=0.55(R3−R2)であり、Yは、浸炭層の膜厚である。すべて測定単位はミリメートル(mm)である。
上記から、式1から式3までによって、融合された懸濁液層の膜厚Xと浸炭深度Yの値が既知である場合、浸炭トラック・ピン・ブッシュの外側半径、切削後の外側半径、そして懸濁液被覆後だが融合前の外側半径がそれぞれ、最終トラック・ピン・ブッシュ外側表面半径Rに関して与えられる。
別の典型的実施形態において、金属結合による耐磨耗被覆を持つ車台組立部構成部品は、トラック・ピン/ブッシュ接続機構とトラック・ピン/ブッシュ接続機構の別個の構成部品、例えばトラック・ピンとトラック・ピン・ブッシュの内側直径である。図4は、トラック・ピンを穴の中に挿入した状態のトラック・ピン・ブッシュを含む組立られたピン・ブッシュ接続機構の概略透視図である。図5は、分解されたピン/ブッシュ接続機構の概略透視図である。トラック・ピン/ブッシュ接続機構は、ピンの外側表面とブッシュの内側直径表面(または穴の表面)を含む合わせ面を持っている。
本発明において、ブッシュの穴表面とピンの外側表面には下記のステップを用いて砂より硬い被覆が施されている。
1.合わせ面は洗浄されてグリット・ブラストされ、高合金の鉄ベース粉末または同様の機能を持つ粉末を含む懸濁液が塗布される。詳しくは先行特許 (Revankar、5,879,743 1999年3月9日)の中に説明されている。
2.懸濁液被覆はその後、融合の間の被覆の収縮を考慮に入れた、必要な予備融合寸法まで切削され、その後適切な融合環境を用いて適切な炉の中で融合される。アルゴンの分圧を使った真空炉か軽度の正圧で水素を使ったベルト炉のどちらかが推薦される。
3.融合されたピンとブッシュは、基材の鋼に必要な機械的性質を整備するため、必要に応じて熱処理されてもよい。融合された被覆を持つピンとブッシュは(熱処理されてもされなくても)、その後、必要な最終寸法まで切削される。基材鋼は従来型の切削工具や切削方法を用いて切削されてもよい。しかし、被覆表面は、滑らかな軸受部や摺動面を生成するため、少なくとも炭化ケイ素丸砥石機、できれば適切な結合タイプおよびグリット・サイズを備えたダイヤモンド丸砥石機が必要である。
被覆は基材鋼に金属結合されているため、重機にありがちな高接触負荷の影響下にあっても被覆の結合が離れるリスクはない。この利点は、現在利用可能な表面改質技術の多くからは得られない。
この被覆は、他の多くの被覆やめっきと異なり、希望するいかなる膜厚にも塗布できる。接続機構の寿命をそれ相応に延ばすため、被覆をもっと厚くすることも自由である。物理的蒸着(3乃至5ミクロン)や化学的蒸着(10乃至25ミクロン)、クロムの電気メッキ(5乃至50ミクロン)や無電解ニッケルメッキ(2乃至20ミクロン)のような最新の硬化被覆を用いて施した薄膜や実用的な膜厚などには厚さの制限があり、そのため、例えば重機業界で導入される長期耐用P/B接続機構には適していない。
懸濁液被覆は長いブッシュの穴にも容易に施工でき、PVD(物理的気相成長法)や溶射工程に関連する見通しの制限がない。
被覆技術により、 被覆が融合された後で部品を熱処理することが可能となり、しかも被覆や基材と被覆の結合を損なうこともない。他の表面被覆であれば、大半がそのような熱処理の間に破損するであろう。
この被覆工程は、硬質クロムメッキと異なり、環境規制がない。
合金の組成は、融合被覆が砂粒子より非常に硬くなるように選択される。従って本事例では、砂粒子の硬度(平均硬度は約700乃至800HV)より非常に硬い800乃至1100HVの硬度の被覆を施す合金粉末が使われている。従って、P/B接続機構に侵入する砂粒子は、現在使用中のP/B接続機構の浸炭焼入れ表面に対して同じ砂粒子が与えると思われる損害と同程度の磨耗損害は発生させない。微細な砂粒子は、被覆表面を著しく磨耗させるより、磨く可能性の方が高い。砂粒子が浸炭焼入れ表面を損なうのと同じ速さで被覆を損なうことは考えられないため、潤滑油をそれほど頻繁に浄化する必要はないと思われる。被覆表面の磨耗は非常に遅いため、接続機構の寿命は大幅に伸びると考えられる。
(実験研究)
冷延鋼管OD−95.25mm(3.75インチ)およびID−76.20mm(3.00インチ)を切断して4乃至50mmおよび2乃至100mmの長いブッシュを作成した。ブッシュの穴はミルスケール(黒皮)を除去するため軽く切削し、懸濁液、すなわち本明細書で開示された懸濁液で被覆を施した。「できたての」被覆はその後切削し、ブッシュの軸と同心の滑らかな表面を形成した。未融合被覆と融合被覆の膜厚間の事前に設定した関係に基づいて、切削した被覆の膜厚をさまざまに変え、異なる膜厚の融合被覆を作成した。
切削した「できたての」被覆を備えたブッシュは、軸を垂直にしてベルト型の水素炉の中に置き、被覆が無事に融合された。融合された被覆は、重力のため鋼表面(基材)を流れ落ちたりしなかった。また、縮んで鋼から剥がれ落ちることもなかった。融合のままの被覆表面は滑らかであった。融合された被覆の膜厚は、選択された「できたての」膜厚によって、1.30mmから1.875mmまでさまざまであった。
酸化アルミニウムと炭化ケイ素丸砥石機を使ってブッシュの穴の融合被覆を研磨する試みは成功しなかった。材料除去速度が遅すぎて、丸砥石機が切削作業に苦労しているように見え、カタカタ音を立てた。これはグリットの硬度不足でGopaliteの中に効率的に切り込めないことを示していた。次にCBN砥石を使用した。こちらは被覆を研磨するのに適していることが分かった。しかし、「負荷上昇」の傾向があり、時間と共に研磨効率が低下した。最高の成果を挙げたのはダイヤモンド砥石であった。カタカタいう音も立てず、CBNの2倍の速度で被覆を切削した。ダイヤモンド砥石はCBNより15%高価であるが、生産時の機械加工には明らかに好ましい。直径が大きい部品は磨耗粒子のより大きい運動エネルギを有利に利用できるため、外径表面の研磨は炭化ケイ素丸砥石機で実現できるかもしれないが、CBNとダイヤモンドの方がやはり好ましい。
金属表面を耐磨耗性被覆で硬化肉盛する方法の一つの典型的実施形態において、ポリビニル・アルコールと微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金との実質的に均質の懸濁水溶液が形成され、金属表面に被覆が施される。それから懸濁水溶液は、できれば外部からの加熱によって乾燥され、金属表面上のポリビニル・アルコール基質の中に可融性超硬金属合金の固体の層ができる。金属表面に被覆を施し、懸濁液を乾燥させて固体の層を作るステップは、一度以上繰り返され、より厚い懸濁液の被覆が形成されてもよい。
金属表面を耐摩耗性被覆で硬化肉盛する方法の別の典型的実施形態において、金属表面は、ポリビニル・アルコール水溶液で被覆され、微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金は、ポリビニル・アルコール水溶液が乾燥する前にポリビニル・アルコール水溶液の被覆の上に塗布される。金属表面を被覆し、可融性超硬金属合金を塗布し、懸濁液または水溶液被覆を乾燥させ、固体の層を形成するステップは、一度以上繰り返され、より厚い懸濁液材料の被覆が形成されてもよい。
本発明の方法の典型的実施形態において、被覆すべき金属表面に懸濁液を塗布するための好適手順は、金属表面を持つ金属製品の形状や大きさ、および、超硬金属合金に対するポリビニル・アルコール結合剤溶液の濃度の割合に依存する。通常、保護されるべき金属表面上に未融合懸濁液が鋳込み、ブラシ塗布、吹き付けによって施されるが、保護されるべき金属表面を持つ製品が未融合懸濁液に浸漬されてもよい。
例えば、ボトム・ローラ、ピン・ブッシュ、ピン・ブッシュ接続機構のピン、トラック・チェーン連結金具のような金属部品が中炭素鋼で形成されるとき、鋼を硬化させるため、被覆された金属部品が焼入れされてもよい。例えば1045鋼であれば約840°Cまで加熱し、焼入れ温度で、この場合は840°Cで、部品の体積と肉厚に依存する時間だけソークし、適切な焼入れ媒体、できれば液体の中で焼入れされてもよい。焼入れされた鋼部品は、金属部品の機械的強度を高め、金属部品の本体の耐摩耗性を高めるために必要な全体硬度を実現するため、250°Cと500°Cの間の望ましい温度で焼き戻しを行ってもよい。被覆が施された面より下の基材は、任意選択で、高周波焼入れによって再度硬化を施し、必要なら、基材の硬度を、焼入れ焼き戻ししたローラの全体硬度より高いおよそHRC50−55まで高めてもよい。このように被覆された基材の硬度を高めると、ローラ接触面やトラック・チェーン連結金具の接触面のような金属部品や金属部品の磨耗面の磨耗寿命がさらに延びる。従って、被覆され(無心焼入れとその後の高周波焼入れによって)熱処理された連結金具の磨耗寿命は、懸濁液被覆の磨耗寿命と被覆の下の高周波焼入れを施した鋼の基材の磨耗寿命の和である。この和は、磨耗や腐食の目的により、未被覆で焼入れを施した金属部品の磨耗寿命の4倍から6倍またはそれ以上である。無心焼入れや高周波焼入れの間に、被覆の中に巨視的な表面クラックが形成される傾向はあるが、被覆が基材から離れることはない。これは、少なくとも一つには、被覆が基材に強力に金属結合しているからである。クラックは、被覆の融合の間に形成された応力を軽減する働きがある。しかし、そのようなクラックは被覆された部分が熱処理されなかったら(焼き入れされなかったら)通常は観察されない。
本発明について、好適実施形態と関連させて説明してきたが、特に説明されていない追加、削除、修正、入れ替えなどが添付した請求項の中で定義したような本発明の精神と範囲から逸脱することなく実施されうることは当業者には理解されると思われる。
トラック・ピン・ブッシュを含む典型的なエンドレストラックの構成部品を示す図である。 トラック・ピン・ブッシュの概略透視図である。 長手方向に均一な外径を持つ硬化肉盛を施したトラック・ピン・ブッシュの軸方向の概略断面図である。 中心部で半径を大きくした硬化肉盛を施したトラック・ピン・ブッシュの軸方向の概略断面図である。 トラック・ピンを穴の中に挿入したトラック・ピン・ブッシュを含む組立ピン・ブッシュ接続機構の概略透視図である。 ブッシュ接続機構の硬化肉盛を施した範囲を示す図である。 硬化肉盛を施したトラック・ピン・ブッシュの概略断面図である。 硬化肉盛を施したトラック・ピンの概略断面図である。 車台トラック・チェーン・ボトム・ローラの概略透視図であり、硬化肉盛を施した範囲を示す図である。 硬化肉盛を施した車台トラック・チェーン・ボトム・ローラの概略断面図である。 トラック・チェーン連結金具の第一の側の概略透視図であり、硬化肉盛を施した範囲を示す図である。 耐摩耗被覆によってトラック・ピン・ブッシュに硬化肉盛を施す間の半径の変化を示す放射状の概略断面図である。

Claims (39)

  1. トラック型機械のエンドレストラックのピン・ブッシュ接続機構であって、
    外径を持つ外側表面と内径を持つ内側表面とを含むブッシュと、
    外側表面を含むトラック・ピンとを備え、
    前記トラック・ピンの外側表面の一部は前記ブッシュの内側表面の一部と実質的に一致していて摩擦面を形成しており、
    前記摩擦面は金属結合された耐摩耗性被覆を有しており、該耐摩耗性被覆は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含むことを特徴とするピン・ブッシュ接続機構。
  2. 前記ブッシュと前記トラック・ピンが硬化鋼で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  3. 前記硬化鋼が浸炭されていることを特徴とする請求項2に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  4. 前記トラック・ピンの外側表面の一部および前記ブッシュの内側表面の一部が除去され、前記耐磨耗性被覆と交換されていることを特徴とする請求項2に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  5. 前記耐摩耗性被覆の外側表面が前記トラック・ピンの残りの外側表面と同一面上にあることを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  6. 前記耐摩耗性被覆の外側表面が前記ブッシュの残りの内側表面と同一面上にあることを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  7. 前記耐摩耗性被覆が950HVより大きいヴィッカース硬度を持つことを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  8. 前記耐摩耗性被覆が約1.5mmの膜厚を持つことを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  9. 前記ブッシュの外側表面の少なくとも一部は金属結合された耐摩耗性被覆を有しており、該耐摩耗性被覆が、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含むことを特徴とする請求項1に記載のピン・ブッシュ接続機構。
  10. ピン・ブッシュ接続機構を製造する方法であって、
    外径を持つ外側表面と、内径を持つ内側表面とを含むブッシュを形成するステップと、
    前記ブッシュの内側表面の一部に実質的に一致する外側表面を含むトラック・ピンであって、前記ブッシュの内側表面と前記トラック・ピンの外側表面が磨耗面を形成するトラック・ピンを形成するステップと、
    前記ブッシュの内側表面から磨耗面の部分を除去して被覆すべきブッシュの範囲を露出させ、前記トラック・ピンの外側表面から磨耗面の部分を除去して被覆すべきトラック・ピンの範囲を露出させるステップと、
    前記ブッシュおよび前記トラック・ピンの露出範囲を、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で被覆するステップと、
    前記露出範囲と前記被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐摩耗性被覆を形成するステップと、
    を備えることを特徴とする方法。
  11. 前記懸濁液の膜厚を調整して、最終的な前記耐摩耗性被覆が、隣接するブッシュおよびトラック・ピンの未除去範囲と同一面上にあるようにするステップをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 前記金属結合を形成するステップが、前記被覆懸濁液を乾燥させるステップと、被覆を施された本体を、窒素を除いた少なくとも一つの不活性ガスあるいは還元性雰囲気という管理された雰囲気の中で前記可融性超硬金属合金の融合温度まで加熱するステップと、被覆を施された本体を周囲温度まで冷却するステップとを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
  13. 前記ブッシュと前記トラック・ピンが中炭素鋼で形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  14. 前記ブッシュの外側表面の部分を除去して該ブッシュの被覆すべき第2範囲を露出させるステップと、
    露出されたブッシュの前記第2範囲を、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で被覆するステップと、
    露出された前記第2範囲と前記被覆懸濁液の間に金属結合を形成して第2耐摩耗性被覆を形成するステップと、
    をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  15. 少なくとも一つの円筒部分と、
    前記少なくとも一つの円筒部分より直径が大きい少なくとも一つのフランジとを備え、
    前記少なくとも一つの円筒部分と前記少なくとも一つのフランジの一部は磨耗にさらされる部分であり、
    前記磨耗にさらされる部分は金属結合による耐磨耗性被覆を有しており、
    前記耐磨耗性被覆は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含むことを特徴とする車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  16. 前記少なくとも一つの円筒部分とフランジが硬化鋼で形成されていることを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  17. 前記ローラが二つのフランジ部分を有しており、各フランジ部分が少なくとも一つの磨耗にさらされる部分を有し、前記磨耗にさらされるフランジの部分が前記金属結合による耐磨耗性被覆を有することを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  18. 前記ローラが二つの本質的に同一の部分で形成され、それぞれが円筒部分とフランジ部分を持ち、2つの円筒部分が相互に溶着されることによって固定されていることを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  19. 磨耗にさらされる前記円筒部分およびフランジ部分の外側表面が除去され、前記耐摩耗性被覆と交換されていることを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  20. 前記耐摩耗性被覆の外側表面が前記円筒部分およびフランジ部分の残りの外側表面と同一面上にあることを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  21. 前記耐摩耗性被覆が950HVより大きいヴィッカース硬度を持つことを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  22. 前記耐摩耗性被覆が約1.5mmの膜厚を持つことを特徴とする請求項15に記載の車台トラック・チェーン・ボトム・ローラ。
  23. 車台トラック・チェーン・ボトム・ローラを製造する方法であって、
    少なくとも一つの円筒部分と少なくとも一つのフランジ部分とを持つローラ本体を形成するステップと、
    磨耗にさらされる前記円筒部分およびフランジ部分の外側表面を除去して被覆すべき前記ローラ本体の範囲を露出するステップと、
    前記露出範囲を、鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で被覆するステップと、
    前記露出範囲と前記被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐摩耗性被覆を形成するステップと、
    を備えることを特徴とする方法。
  24. 前記懸濁液の膜厚を調整して、最終的な前記耐摩耗性被覆が、隣接する前記円筒部分およびフランジ部分の未除去範囲と同一面上にあるようにするステップをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
  25. 前記金属結合を形成するステップが、前記被覆懸濁液を乾燥させるステップと、被覆を施された本体を、窒素を除いた少なくとも一つの不活性ガスあるいは還元性雰囲気という管理された雰囲気の中で前記可融性超硬金属合金の融合温度まで加熱するステップと、被覆を施された本体を周囲温度まで冷却するステップとを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
  26. 前記ローラ本体が中炭素鋼で形成されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
  27. トラック型機械のエンドレストラックのトラック・チェーン連結金具であって、
    硬化鋼で形成された本体と、
    前記本体の第1端上にあって取付装置用の少なくとも一つの開口部を含む取付け面と、
    前記本体の第2端上にある接触面とを備え、
    前記接触面は前記取付け面の反対側にあり、
    前記接触面は、前記第2の端に沿って長く伸びていて磨耗面を形成している実質的に平面の領域を含んでおり、
    前記磨耗面は金属結合された耐摩耗性被覆を持っており、該耐摩耗性被覆は、少なくとも重量で60%の鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を含む融合超硬金属合金を含むことを特徴とするトラック・チェーン連結金具。
  28. 前記硬化鋼が浸炭されていることを特徴とする請求項27に記載のトラック・チェーン連結金具。
  29. 前記接触面の一部が除去され、前記耐磨耗性被覆と交換されていることを特徴とする請求項27に記載のトラック・チェーン連結金具。
  30. 前記耐摩耗性被覆の外側表面が前記接触面の残りの部分と同一面上にあることを特徴とする請求項29に記載のトラック・チェーン連結金具。
  31. 前記耐摩耗性被覆が950HVより大きいヴィッカース硬度を持つことを特徴とする請求項27に記載のトラック・チェーン連結金具。
  32. 前記耐摩耗性被覆が約1.5mmの膜厚を持つことを特徴とする請求項27に記載のトラック・チェーン連結金具。
  33. トラック・チェーン連結金具を製造する方法であって、
    前記トラック・チェーン連結金具が、本体と、該本体の第1端上の取付け面と、前記本体の第2端上の接触面とを含み、前記取付け面が取付装置用の少なくとも一つの開口部を含み、前記接触面が前記第2端に沿って長く伸びていて磨耗面を形成している実質的に平面の領域を含み、前記接触面が前記取付け面の反対側にあるように、トラック・チェーン連結金具を形成するステップと、
    前記磨耗面の部分を除去して、被覆すべきトラック・チェーン連結金具の範囲を露出するステップと、
    鉄、またはコバルト、またはニッケル、またはそれらの合金を少なくとも重量で60%含む微細に分割された粉末状の可融性超硬金属合金と、ポリビニル・アルコールと、懸濁剤と、解膠剤とを含む懸濁液で、前記トラック・チェーン連結金具の露出範囲を被覆するステップと、
    前記露出範囲と前記被覆懸濁液の間に金属結合を形成して耐磨耗性被覆を形成するステップと、
    を備えることを特徴とする方法。
  34. 前記懸濁液の膜厚を調整して、最終的な前記耐摩耗性被覆が、隣接する前記接触面の未除去範囲と同一面上にあるようにするステップをさらに備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
  35. 前記金属結合を形成するステップが、前記被覆懸濁液を乾燥させるステップと、被覆を施された本体を、窒素を除いた少なくとも一つの不活性ガスあるいは還元性雰囲気という管理された雰囲気の中で前記可融性超硬金属合金の融合温度まで加熱するステップと、被覆を施された本体を周囲温度まで冷却するステップとを含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
  36. 前記本体が硬化鋼で形成されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
  37. 前記本体が中炭素鋼で形成されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
  38. 焼入れ焼き戻しによって、被覆された前記トラック・チェーン連結金具を硬化するステップをさらに備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
  39. 前記耐摩耗性被覆より下の本体の部分を、高周波焼入れにより硬化して、硬化された部分の硬度がHRC50〜55であるようにするステップをさらに備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
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