JP2007084459A - 線維化疾患の治療用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 線維化疾患に対して優れた治療効果を示し、しかも副作用もない新しい治療薬を提供する。
【解決手段】 エンドスタチンの薬効量を含有することを特徴とする、線維化疾患の治療用組成物。
【選択図】なし
【解決手段】 エンドスタチンの薬効量を含有することを特徴とする、線維化疾患の治療用組成物。
【選択図】なし
Description
この出願の発明は、エンドスタチンを有効成分として含有し、線維化疾患に対して優れた治療効果を有する治療用組成物に関するものである。
特発性肺線維症(IPF)は、通常50才以上の成人に発症する原因不明の治療抵抗性の疾患である。従来、IPFの病態は炎症が線維化を誘発すると考えられてきた。しかしながら最近、IPFの線維化は、単なる炎症性傷害の修復機転として生じる瘢痕、線維化ではなく、繰り返す肺胞上皮傷害に対する異常な創傷治癒の結果として形成されると考えられている。具体的には、過剰な細胞外基質の沈着と創傷収縮が起きており、このことが肺胞の虚脱とリモデリングを招くと考えられている。つまり、線維芽細胞巣の増殖と進行性の線維化が本質であり、炎症反応は重要ではないという新しい考えである。また治療面においても、これまでの治療戦略を担ってきたステロイドは、20〜30%の患者で部分的あるいは一過性の有効性が示されたものの、病勢の維持、完全緩解に至る例はごくわずかの症例に限られ、しかも同時に非常に高い副作用発生率を示し、真に恩恵を受ける患者はIPFのほんの少数の患者といわざるを得ないと考えられる。このように、IPFの治療においては、ステロイド薬などの従来の抗炎症薬に代わる薬剤の開発が期待されていた。またこのような事情は、他の線維化症(例えば、肝線維症、腎硬化症、膵線維症、多発性硬化症など)についても同様である。
一方、エンドスタチン(endostatin)は血管内皮細胞の増殖阻害活性を指標として、腫瘍細胞が産生する内因性の血管新生阻害因子をスクリーニングする過程で、マウスの血管内皮腫の培養上清から単離された。そのアミノ酸配列から、XVIII型コラーゲンのC 端非コラーゲン領域のフラグメントと同定された。エンドスタチンの分子量は約20,000で、アミノ酸184残基(マウス、ヒト)からなる。エンドスタチンは、血管内皮細胞に作用すると考えられている。In vitroにおいて、エンドスタチンは、血管内皮細胞の増殖抑制、増殖因子に対する遊走阻害活性を示す。エンドスタチンの薬理作用については、腫瘍血管新生阻害作用(抗腫瘍薬としての応用)、炎症性血管新生阻害作用(抗炎症薬としての応用)が検討されている。例えば、大腸菌由来の組み換えエンドスタチンは、マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍血管の新生を阻害する。また、マウス関節炎モデルにおいても、炎症性血管新生を阻害し関節炎を抑制する。例えば、特許文献1は、血管形成関連疾患(血管形成依存性癌、良性腫瘍、慢性関節リウマチ、乾癬、眼の血管形成疾患、オスラー−ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク血管新生、毛細血管拡張症、血友病性関節、血管線維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、アテローム性動脈硬化症、強皮症、肥厚性瘢痕、ネコ引っ掻き病、ヘリコバクターピロリ潰瘍)の治療のためのエンドスタチンの利用を開示している。また、この出願の発明者らも、エンドスタチンのコラーゲン関節炎抑制効果を報告している(非特許文献1)。
しかしながら、エンドスタチンの線維化疾患に対する治療効果は、従来まったく知られていなかった。
特表2002-501362号公報
黒坂大太郎他、免疫臨床、42巻5号、第528-533ページ、2004年
前記のとおり、 従来は、線維化疾患に対する治療薬としての抗炎症薬が用いられていたが、この抗炎症薬の恩恵にあずかる患者の割合は少なく、しかも副作用発生率が高いという問題も存在した。
この出願の発明は、線維化疾患に対して優れた治療効果を示し、しかも副作用もない新しい治療薬を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決するための発明として、エンドスタチンの薬効量を含有することを特徴とする、線維化疾患の治療用組成物を提供する。
具体的には、この発明の治療用組成物は、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肝線維症、腎硬化症、膵線維症または多発性硬化症を治療するための組成物である。
この出願の発明によって、従来は治療が困難であった多くの線維化疾患患者の症状を改善もしくは完全緩解することが可能となる。また従来の治療薬に比べてその副作用もはるかに少ない。
この発明の治療用組成物の有効成分であるエンドスタチンは、例えば特許文献1に開示された方法によって哺乳動物の血管内皮腫の培養上清から得ることもでき、また市販のヒト・組換え体エンドスタチンやマウス・組換え体エンドスタチン(例えばCalbichem社)を利用することもできる。あるいは、エンドスタチンをコードする公知のcDNA(例えばヒト・エンドスタチンcDNA:GenBank/AF184060)を用いた遺伝子工学的方法により取得することもできる。遺伝子工学的方法としては、例えば、cDNAを有するベクターからインビトロ転写によってRNAを調整し、これを鋳型としてインビトロ翻訳を行うことによりインビトロでエンドスタチンを得ることができる。またcDNAを公知の方法により適当な発現ベクターに組換え、この発現ベクターによって形質転換した大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞から組換え体エンドスタチンを大量に得ることができる。
エンドスタチンのN末端および/またはC末端、もしくはタンパク質の内部領域から1以上の複数個のアミノ酸が欠如したものであっても、線維化の抑制活性を保持する限りにおいて、この発明の有効成分として使用することができる。また、エンドスタチンのN末端および/またはC末端、もしくはタンパク質の内部領域に1以上の複数個のアミノ酸が付加したものであっても、線維化の抑制活性を保持する限りにおいて、この発明の有効成分として使用することができる。さらに、エンドスタチンを構成するアミノ酸の1以上の複数個が他のアミノ酸に置換したものであっても、線維化の抑制活性を保持する限りにおいて、この発明の有効成分として使用することができる。
また有効成分としてのエンドスタチンは「塩」であってもよい。この塩は、エンドスタチンのカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両者を意味する。カルボキシル基の塩は、当該技術分野における公知の方法によって形成することができ、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛などの無機塩、およびトリエタノールアミン、アルギニンまたはリジン、ピペリジン、プロカインなどのようなアミンを用いて形成されたような有機塩基との塩が含まれる。酸付加塩としては、たとえば塩酸または硫酸などの鉱酸との塩およびたとえば酢酸またはシュウ酸などの有機酸との塩を含む。もちろん、このようなあらゆる塩は、エンドスタチンと実質的に同様の活性を有することを前提とする。
さらにこのエンドスタチンは「「機能的誘導体」であってもよい。このような機能的誘導体は、エンドスタチンの活性を破壊せず、またこれを含有する組成物に毒性を与えない範囲において、残基の側鎖またはN末端基もしくはC末端基として生じる機能性基として調製することができる。例えば、抗原部位を覆い、体液中でエンドスタチンの残存を延長するポリエチレングリコール側鎖を含む誘導体、あるいはカルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアとまたは第1級もしくは第2級アミンと反応することによるカルボキシル基のアミド、アシル部分(moiety)(たとえば、アルカノイル基またはカルボサイクリックアロイル基)と形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体またはアシル部分と形成される遊離の水酸基(たとえば、セリルまたはスレオニル残基の水酸基)のO−アシル誘導体等である。
この発明の治療組成物は、前記のエンドスタチンと、薬理学的に許容しうる担体とを均一に混合して製剤化することができる。担体は、薬剤の投与形態に応じて広い範囲から適宜に選択することができるが、この発明の治療用組成物は、経口的にまたは注射により投与しうる単位服用形態にあることが望ましい。特に、注射による投与の場合には、局所注入、腹抗内投与、選択的静脈内注入、静脈注射、皮下注射、臓器灌流液注入等を採用することができる。
懸濁剤およびシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、大豆油等の油類、アルキルパラヒドロキシベンゾエート等の防腐剤、ストロベリー・フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造することができる。
散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製剤化することができる。錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であるという点において、この発明の製剤における好ましい単位投与形態である。錠剤やカプセルを製造する際には、固体の製薬担体が用いられる。
また、注射用の溶液は、塩溶液、グルコース溶液、または塩水とグルコース溶液の混合物、各種の緩衝液等からなる担体を用いて製剤化することができる。また粉末状態で製剤化し、使用時に前記液体担体と混合して注射液を調製するようにしてもよい。
この発明の投与量は、患者の年齢や体重、症状、投与経路等によって異なるが、例えば特許文献1に開示された血管形成関連疾患の治療薬と同等の投与量を採用することができる。すなわち、体重1kg当たり約0.5mgから500mg、さらに好ましくは体重1kg当たり1mgから100mg、最も好ましくは体重1kg当たり2mgから50mgである。またエンドスタチンの半減期により、治療用組成物1日当たり数回から1週間に1回の割合で投与することができる。
以上のとおりの治療用組成物は、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肝線維症、腎硬化症、膵線維症、多発性硬化症等の線維化疾患の症状が悪化するのを防ぎ、または症状を改善し、あるいは症状を完全緩解することができる。
なお、この発明の実施形態に関しては、公知の文献等を参照することもできる。例えば、薬剤の調製はRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990等に、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に、あるいはこれらの文献に引用された文献にも詳しく記載されている。
以下、エンドスタチンの抗線維化効果を確認するために行った試験研究のデータを示し、この発明の治療用組成物について詳しく説明する。ただしこの発明は、以下の試験研究で採用した範囲に限定されるものではない。
1.材料と方法
1-1.実験動物
C57BL/6J マウス( 7 週齢雄)を、オリエンタル酵母社より購入した。全てのマウスは、慈恵医大実験動物施設において、specific-pathogen-free環境下において飼育した。
1-2.肺線維症モデルの作製
8週齢雄のC57BL/6Jマウスに対して、ペントバルビタール腹腔内投与及びジエチルエーテル吸入麻酔を施行した。ポピドンヨードにて頚部皮膚を消毒した後、無菌下で頚部を縦切開し、気管を露出させた。その後、29ゲージ針を使用し、ブレオマイシン(Bleomysin)(日本化薬)を25mg/kg気管内投与した。
1-3.エンドスタチンの精製
マウスエンドスタチンを発現するhuman kidney cell(293-EBNA)を培養し、コンフルエントになったところで無血清培養し、condition mediumからマウスエンドスタチンを山口らによって報告されている方法(Yamaguchi, N. et al. The EMBO journal, 18(16):4414-4423, 1999)で精製した。エンドスタチンはBCA法により定量した。そして1000μg/mlになるようにPBSで調整した。
1-4.エンドスタチンの投与法
1000μg/mlに調整したエンドスタチンを、200μl、1日に1回、ブレオマイシン投与日から14日間連日腹腔内投与した。マウスの体重は実験期間中20g前後で推移したので、投与量は約10 mg/kg/1日に相当する。なお実験は、マウスを、生食気管内投与群(n=3)、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群(n=12)、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群(n=11)の3群に分けて行った。
1-5.ハイドロキシプロリン測定
エンドスタチン最終投与(ブレオマイシン投与14日後)にマウスを安楽死させ、両肺を摘出した。摘出肺は、速やかにポリトロンホモジナイザーにてホモジナイズした。ハイドロキシプロリンの測定は、Reddyの方法(Reddy, G.K. and Enwemeka, C.S. Clinical Biochemistry, 29(3):225-229, 1996)に従った。標準ハイドロキシプロリンとホモジナイズした肺サンプルに、2 Nの水酸化ナトリウムを加え50μlとした。その後オートクレーブ下で120℃、20分間加水分解し、クロラミンT溶液を450μl加え、室温下で25分間酸化させた。その後Ehrlich’s aldehyde 試薬をゆっくり加え、65℃、20分間インキュベートした。氷冷後、550nmの吸光度を測定した。
2.結果
2-1.マウスの体重変化の比較
各群マウスの体重変化は図1に示したとおりである。生食気管内投与群においては、体重は軽度の増加傾向を示した。ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群においては、ブレオマイシン投与6日目から8日目にかけて体重減少傾向が認められた。8日目から14日目にかけては低体重のまま体重は推移した。ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群においても、6日目から8日目にかけて体重減少傾向が認められたが、8日目から14日目にかけては体重の増加傾向が認められた。経過観察期間中どの時点においてもブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群に比べて体重変化は軽度であった。
2-2.肺重量の比較
14日目にマウスを安楽死させ、両肺を摘出した。そして、肺の重量を測定し、肺重量/体重を計算し、各群の平均値を比較した。結果は図2に示したとおりである。ブレオマイシン気管内投与群における肺重量/体重値は、生食気管内投与群と比べて大きかった。しかしその値は、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群と比べて小さかった。
2-3.ハイドロキシプロリンの比較
14日目にマウスを安楽死させ、両肺を摘出し、ハイドロキシプロリンを測定した。そして、ハイドロキシプロリン量(μg)/両肺重量(g)を計算し、各群の平均値を比較した。結果は図3に示したとおりである。ブレオマイシン気管内投与群におけるハイドロキシプロリン量/両肺重量値は、生食気管内投与群と比べて大きかった。しかしその数値は、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群と比べて小さかった。両群間の差をStudent-t検定したところ統計的にも有意差が認められた(p=0.0283<0.05)。
3.考察
ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスは、現時点でヒト特発性肺線維症のモデルマウスとして最も用いられている。このマウスには、異常な線維化が起きていることが報告されている。この線維化の程度は、肺重量の増加度、体重の減少度と相関することが知られている。今回の実験においてこれらの指標は、エンドスタチン投与群においては、PBS投与群と比べて軽度であった(図1、2)。また、直接的に肺の線維化の程度を知る方法として、肺のハイドロキシプロリンの定量がある。これもエンドスタチン投与群は、PBS投与群と比べて少なかった(図3)。以上のことより、エンドスタチン投与により、肺の線維化が抑制されることが確認された。
1.材料と方法
1-1.実験動物
C57BL/6J マウス( 7 週齢雄)を、オリエンタル酵母社より購入した。全てのマウスは、慈恵医大実験動物施設において、specific-pathogen-free環境下において飼育した。
1-2.肺線維症モデルの作製
8週齢雄のC57BL/6Jマウスに対して、ペントバルビタール腹腔内投与及びジエチルエーテル吸入麻酔を施行した。ポピドンヨードにて頚部皮膚を消毒した後、無菌下で頚部を縦切開し、気管を露出させた。その後、29ゲージ針を使用し、ブレオマイシン(Bleomysin)(日本化薬)を25mg/kg気管内投与した。
1-3.エンドスタチンの精製
マウスエンドスタチンを発現するhuman kidney cell(293-EBNA)を培養し、コンフルエントになったところで無血清培養し、condition mediumからマウスエンドスタチンを山口らによって報告されている方法(Yamaguchi, N. et al. The EMBO journal, 18(16):4414-4423, 1999)で精製した。エンドスタチンはBCA法により定量した。そして1000μg/mlになるようにPBSで調整した。
1-4.エンドスタチンの投与法
1000μg/mlに調整したエンドスタチンを、200μl、1日に1回、ブレオマイシン投与日から14日間連日腹腔内投与した。マウスの体重は実験期間中20g前後で推移したので、投与量は約10 mg/kg/1日に相当する。なお実験は、マウスを、生食気管内投与群(n=3)、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群(n=12)、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群(n=11)の3群に分けて行った。
1-5.ハイドロキシプロリン測定
エンドスタチン最終投与(ブレオマイシン投与14日後)にマウスを安楽死させ、両肺を摘出した。摘出肺は、速やかにポリトロンホモジナイザーにてホモジナイズした。ハイドロキシプロリンの測定は、Reddyの方法(Reddy, G.K. and Enwemeka, C.S. Clinical Biochemistry, 29(3):225-229, 1996)に従った。標準ハイドロキシプロリンとホモジナイズした肺サンプルに、2 Nの水酸化ナトリウムを加え50μlとした。その後オートクレーブ下で120℃、20分間加水分解し、クロラミンT溶液を450μl加え、室温下で25分間酸化させた。その後Ehrlich’s aldehyde 試薬をゆっくり加え、65℃、20分間インキュベートした。氷冷後、550nmの吸光度を測定した。
2.結果
2-1.マウスの体重変化の比較
各群マウスの体重変化は図1に示したとおりである。生食気管内投与群においては、体重は軽度の増加傾向を示した。ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群においては、ブレオマイシン投与6日目から8日目にかけて体重減少傾向が認められた。8日目から14日目にかけては低体重のまま体重は推移した。ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群においても、6日目から8日目にかけて体重減少傾向が認められたが、8日目から14日目にかけては体重の増加傾向が認められた。経過観察期間中どの時点においてもブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群に比べて体重変化は軽度であった。
2-2.肺重量の比較
14日目にマウスを安楽死させ、両肺を摘出した。そして、肺の重量を測定し、肺重量/体重を計算し、各群の平均値を比較した。結果は図2に示したとおりである。ブレオマイシン気管内投与群における肺重量/体重値は、生食気管内投与群と比べて大きかった。しかしその値は、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群と比べて小さかった。
2-3.ハイドロキシプロリンの比較
14日目にマウスを安楽死させ、両肺を摘出し、ハイドロキシプロリンを測定した。そして、ハイドロキシプロリン量(μg)/両肺重量(g)を計算し、各群の平均値を比較した。結果は図3に示したとおりである。ブレオマイシン気管内投与群におけるハイドロキシプロリン量/両肺重量値は、生食気管内投与群と比べて大きかった。しかしその数値は、ブレオマイシン気管内投与+エンドスタチン腹腔内投与群の方が、ブレオマイシン気管内投与+PBS腹腔内投与群と比べて小さかった。両群間の差をStudent-t検定したところ統計的にも有意差が認められた(p=0.0283<0.05)。
3.考察
ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスは、現時点でヒト特発性肺線維症のモデルマウスとして最も用いられている。このマウスには、異常な線維化が起きていることが報告されている。この線維化の程度は、肺重量の増加度、体重の減少度と相関することが知られている。今回の実験においてこれらの指標は、エンドスタチン投与群においては、PBS投与群と比べて軽度であった(図1、2)。また、直接的に肺の線維化の程度を知る方法として、肺のハイドロキシプロリンの定量がある。これもエンドスタチン投与群は、PBS投与群と比べて少なかった(図3)。以上のことより、エンドスタチン投与により、肺の線維化が抑制されることが確認された。
エンドスタチンの投与量については、今回は10 mg/kg/1日の量を腹腔内投与した。この出願の発明者らは、同量のエンドスタチン投与によって関節炎モデルマウスの関節炎抑制効果が得られることを報告している(非特許文献2)。また、抗腫瘍効果も得られることが報告されている(例えば特許文献1)。
血管内皮細胞が増殖し、新生血管が形成される血管新生は、腫瘍あるいは関節炎における滑膜肉芽組織に認められる。従来報告されているエンドスタチンの作用は、この新生血管形成を阻害する作用である。肺線維症に血管新生が関与しているかどうかは長い間議論されているが、少なくとも肺線維症の病理組織において、形態学上はっきりとした新生血管は認められない。従って、今回示したエンドスタチンの肺線維症に対する薬理作用は、新生血管の形成を阻害したことにより起きていたことではない可能性もある。今回エンドスタチンに見出された抗線維化作用は、肺線維症以外にも線維化を病態の中心とする他疾患にも応用できる。すなわち、急性呼吸窮迫症候群、肝線維症(肝硬変)、腎硬化症、膵線維症(慢性膵炎)、多発性硬化症などの疾患にも応用できる。
Claims (2)
- エンドスタチンの薬効量を含有することを特徴とする、線維化疾患の治療用組成物。
- 線維化疾患が、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肝線維症、腎硬化症、膵線維症または多発性硬化症である請求項1の治療用組成物。
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- 2005-09-20 JP JP2005272748A patent/JP2007084459A/ja active Pending
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