JP2007083177A - 破砕方法および破砕具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】破砕具2は、パイル1のコンクリート部11に一端側が係止されて埋設された棒状部材21と、この棒状部材21のコンクリート部11から露出した他端側に設けられるくさび22とを備える。パイル1を破砕する際は、くさび22に対して棒状部材21を引っ張り、棒状部材21に緊張力を付与する。この棒状部材21に付与された緊張力(引張力に伴う反力F1)がくさび22を打ち込む方向に作用し、ハンマーなどでくさび22を打ち込むことなく、くさび22の尖端部221がパイル1のコンクリート部11の内部に押し込まれる。このため、機械的な破砕方法であるにも関わらず、パイル1を破砕する際に騒音や振動、粉塵などが殆んど生じない。
【選択図】図5
Description
一方、固形物に機械的な衝撃を与えずに破砕する静的な方法として、水和反応により膨張する静的破砕剤を使用して、この静的破砕材の膨張により固形物に亀裂を生じさせて破砕する方法もある(特許文献1)。この静的破砕材は、固形物に削孔した孔に挿入される。なお、コンクリート製の固形物の場合、静的破砕材は、コンクリート打設前に鉄筋などに設置される(特許文献2)。
一方、静的破砕材を用いる方法では、水和反応を経て破砕に至るので、迅速に処理することが困難である。つまり、破砕したいときに直ちに破砕できないという制約がある。
また、コンクリート製の被破砕物の場合、雨などによる静的破砕材の水濡れ防止のため、静的破砕材の設置作業は、コンクリート打設の直前に行わなければならず、施工が繁雑であった。
加えて、静的破砕剤を使用する場合のように破砕に長時間を要さず、被破砕物を迅速に破砕できる。特に、被破砕物がコンクリートなどの引張力に弱い材質である場合は、くさびで押し広げた際に亀裂が生じやすいから、好適である。
さらに、棒状部材を緊張する作業は、作業者の技能に関わらず、ジャッキなどを用いて容易に実施できるため、静的破砕材の設置作業などと比べて破砕作業を容易化できる。
この発明によれば、棒状部材を引っ張ると、くさびの尖端部が棒状部材の周りから被破砕物の孔に案内されるため、くさびを棒状部材が延びる方向に沿って、容易に押し込むことができる。
なお、被破砕物に形成する孔は、被破砕物を直接削孔するほか、予めシース管などの筒部材を被破砕物に埋設することなどで形成することもできる。
また、棒状部材をアンボンド状態で被破砕物に埋設し、被破砕物との付着を除去することによっても、棒状部材を押通して引っ張り、緊張を可能とする孔が被破砕物に形成されたことと同様であるから、ここで述べたものと同様の効果を得ることができる。このような棒状部材のアンボンドは、棒状部材に緊張力を付与(ポストテンション方式による被破砕物に対するプレストレス)して被破砕物の引張応力に対する補強に用いられるほか、被破砕物を破壊するために兼用することができる。
このスリットは、棒状部材の長手方向と略平行な外周面に形成されるものは、例えば、現場で製造されるコンクリートの被破砕物では、掘削穴に配置される型枠であって内側にフィンが形成されたものを使用し、型枠内にコンクリートを打設することによって形成できる。
なお、被破砕物にアンボンド状態でプレートを埋設することによっても、棒状部材を緊張した際にこのプレートの部分で滑りが生じ、被破砕物の亀裂が誘発されるので、スリットを形成した場合と略同様の効果が得られる。
加えて、機械的な破砕方法であるから、破砕が必要となった時点で、迅速に実施できる。
これにより、棒状部材の緊張作業を容易に実施できる。
この発明によれば、くさび内部に棒状部材を通すことで、くさびを容易に設置できるとともに、棒状部材からくさびが外れず、棒状部材に沿ってくさびを確実に押し込むことができる。
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態における被破砕物であるパイル(杭)1が示されている。
なお、パイル1の周りの地盤の図示は省略した。また、図1では、パイル1の軸方向断面を破断線付きで示したが、他の図では、断面の図示を簡略化し、破断線は省略してパイルを図示している。
パイル1は、掘削された穴に図示しない鉄筋を配置し、コンクリートを打設して製造された円柱状のものであり、コンクリート部11に2本のシース管111が埋設されている。
2本のシース管111は、パイル1の径方向に沿った位置にそれぞれ設けられている。
破砕具2は、シース管111に挿入されてパイル1天端から露出する棒状部材21と、この棒状部材21の露出した部分に設けられるくさび22とを備えて構成され、緊張力付与手段としてのジャッキ9による棒状部材21の緊張により、パイル1を破砕するものとなっている。
棒状部材21は、高強度の鋼材(例えばPC鋼棒)であり、パイル1の下端にナットなどの定着具211によって係止されている。
くさび22は、略円錐状の鋼材であって、テーパ加工された尖端部221を有する。また、くさび22には、尖端部221を貫通する孔222が形成されている。孔222には、棒状部材21が挿通され、くさび22の尖端部221は、シース管111の開口端部に配置される。
ジャッキ9を破砕具2に取り付け、このジャッキ9によって棒状部材21を、定着具211で係止されたパイル1下端側から天端側へと、くさび22に対して徐々に引っ張ると、棒状部材21には、反力F1によって緊張力が付与され、板状部材93を介して反力F1がくさび22に印加されることで、くさび22はシース管111に案内され押し下げられる。これに伴い、シース管111の周りのコンクリート部11は、くさび22によって押し広げられ、水平方向に作用する引張力F2を受ける。この引張力F2により、コンクリート部11には、図6に示すように、棒状部材21に沿って亀裂CRが生じる。
パイル1に設けられた2つの棒状部材21にそれぞれくさび22を配置し、ジャッキ9で棒状部材21をそれぞれ緊張することにより、パイル1は破砕される。なお、棒状部材21の緊張は、片方ずつ行ってもよいし、同時に行ってもよい。
棒状部材21に付与した緊張力がくさび22を打ち込む方向に作用し、ハンマーなどでくさび22を打ち込むことなく、くさび22の尖端部221が棒状部材21の長手方向に沿って、パイル1のコンクリート部11の内部に押し込まれる。このため、機械的な破砕方法であるにも関わらず、パイル1を破砕する際に騒音や振動、粉塵などが殆んど生じない。
また、コンクリート部11は、コンクリートの材料特性から引っ張りに弱いため、棒状部材21の周りに生じる引張力F2によって、容易に亀裂CRを生じ、破砕作業を迅速に実施できる。
さらに、ジャッキ9で棒状部材21を緊張する作業は、静的破砕材の設置作業などと比べて容易であるため、作業者の技能に関わらず、パイル1を容易に破砕できる。
本実施形態では、パイル1のコンクリート部11に埋設されたシース管111を利用したが、このようなシース管111が設けられていない場合は、パイル1の軸方向に沿ってコンクリート部11を適宜削孔し、棒状部材21を挿通可能な孔を形成すればよい。
このように、パイル1の廃棄を見込んで、パイル1製造の際にシース管111や、他の破砕具、破砕材などを必ずしも埋設しなくてもよく、既存の各種パイルの破砕が可能となる。
棒状部材21のアンボンドには、シース管111を用いるほか、変質しにくく防錆材ともなる油、グリースなどの塗布、あるいは、アスファルトで被覆後、更に発泡ポリエチレン製などの筒状部材もしくはフィルムで覆うなどの手段を例示できる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同様の構成については、同一符号を付して、説明を省略もしくは簡略化する。
図8は、本実施形態における破砕具2Aを示し、図9は、この破砕具2Aが備えるくさび23の斜視図である。本実施形態の破砕具2Aは、くさび23の形状を除いて、第1実施形態の破砕具2と略同じ構成である。
第1部材231、第2部材232の尖端部231A,232Aと反対側の基端部231B,232Bは、筒部材24の内部に挿入され、この筒部材24の上に、板状部材93が配置される。
筒部材24は、側断面形状が基端部231B,232Bを囲むコ字状であって、棒状部材21が挿通される孔241が形成されている。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10は、本実施形態におけるパイル3を示す。なお、棒状部材21は、第1実施形態と同様、シース管111に挿入されてコンクリート部11とはアンボンドされているが(図2)、図10におけるシース管の図示は省略した(図11でも同じ)。
このようにプレート31,32が配置されたことにより、棒状部材21の緊張時、図10(B)に示すように、プレート31,32とコンクリート部11との間の滑りによってプレート31,32とコンクリート部11との界面に沿って、亀裂CRが誘発される。ここで、亀裂CRは、プレート31の板面311およびプレート32の板面321に沿って進行し、すなわち、亀裂CRの向きが、プレート31とくさび22とを結ぶ方向に、かつ、棒状部材21の長手方向に沿って定まる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図11は、本実施形態におけるパイル4を示す。
本実施形態では、図11(A)に示すように、パイル4の製造時、パイル4の側面外周および上面にそれぞれ、スリット41およびスリット42を形成してある。これらのスリット41,42は互いに連通し、パイル4の側断面方向に沿ってコ字状に形成されている。
すなわち、パイル4の製造時に掘削孔に配置する型枠の内側にフィンを形成し、型枠内にコンクリートを打設することによって各スリット41を形成し、パイル4の天端位置にプレートなどを設けることなどでスリット42を形成する。
各スリット41は、棒状部材21の長手方向と略平行に延びるとともに、パイル4の径方向に沿って窪んだ形状となっている。スリット42は、くさび22の位置を通り、スリット41間を結ぶ方向に延びるとともに、棒状部材21の長手方向に沿って窪んだ形状となっている。
すなわち、スリット41,42の位置や向きに応じて、パイル4を割る方向を制御できる。また、スリット41,42により亀裂CRが誘発されるので、棒状部材21に付与する緊張力を小さくできる。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態は、破砕具のくさびの形状が前記各実施形態とは相違する。
図12は、本実施形態における被破砕物としてのフーチング5およびその破砕具6を示す。
フーチング5は、鉄筋コンクリート製の直方体状の構造体であり、棒状部材21が2本、アンボンド状態で貫通している。これらの棒状部材21は、フーチング5の平面を二分する線上に並んでいる。
くさび62は、断面形状が略三角形であり、ひとつの尖端部(角部)621が、フーチング5のコンクリート部11に向けて配置され、尖端部621からくさび62の上端面に貫通した2箇所の孔にそれぞれ、棒状部材21が挿通されている。
これにより、くさび62の尖端部621がフーチング5に押し込まれ、くさび62の長手方向に沿って亀裂CRが生じる。すなわち、くさび62を配置する向きに応じて、フーチング5を破砕することが可能となる。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図13は、本実施形態における被破砕物としての直方体状のコンクリート構造体7およびその破砕具8を示す。
本実施形態では、第5実施形態のくさびをコンクリート構造体7から張り出すように設け、コンクリート構造体7には棒状部材を挿通しない。
ここで、コンクリート構造体7を破砕するために、コンクリート構造体7の製造時に予めシース管や棒状部材21A,21Bをアンボンド状態で埋設しておく必要はなく、また、コンクリート構造体7の破砕にあたってコンクリート構造体7に削孔する必要もない。このため、コンクリート構造体7に孔を形成することが困難な場合でも、破砕することが可能となるとともに、破砕に係る作業が制約されず、破砕を適時に実施できる。
本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の改良、変形が可能である。
例えば、本発明の破砕具を構成するくさびとして、図14に示すくさび102のように、両側面102Aが孔222の軸方向に略沿って平面状に削り取られた形状のものも採用し得る。このくさび102は、前記各実施形態におけるくさび22,23よりも、テーパ角度が鋭く、より先細りの形状となっている。このため、くさび102を被破砕物に容易に押し込むことができ、また、被破砕物を両側面102Aの両側に押し広げ、側面102Aと交差する方向に沿って、亀裂CRを方向性良く生じさせることができる。
ただし、第6実施形態に示したくさびを用いることで、被破砕物に孔を必ずしも形成しなくてもよく、被破砕物が設けられた場所、被破砕物の状況などに応じて、破砕方法を選択することが可能である。
なお、被破砕物に棒状部材を係止する手段は、ナットなどの定着具に限定されない。
そして、前記各実施形態では、コンクリート製の被破砕物を破砕する例を示したが、岩石などの被破砕物についても勿論、本発明の破砕方法、破砕具を適用し得る。
上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
破砕具 2,2A,6,8
フーチング(被破砕物) 5
コンクリート構造体 7
ジャッキ(緊張力付与手段) 9
シース管(被破砕物の孔) 111
棒状部材 21
くさび 22,23,62,62A,62B
スリット 41,42
尖端部 221,231A,232A,621
孔(くさびの孔) 222
Claims (8)
- 被破砕物に一端側が係止され少なくとも他端側が前記被破砕物から露出する棒状部材を設け、
この棒状部材において少なくとも他端側にくさびを設けて当該くさびの尖端部を前記被破砕物に対向するよう配置し、
前記棒状部材を一端側から他端側へと前記くさびに対して引っ張って前記棒状部材に緊張力を付与する
ことを特徴とする破砕方法。 - 請求項1に記載の破砕方法において、
前記被破砕物に、前記棒状部材が挿通される孔を形成し、
前記孔に、前記くさびの尖端部を配置する
ことを特徴とする破砕方法。 - 請求項1または請求項2に記載の破砕方法において、
前記被破砕物における前記棒状部材の長手方向と略平行な外周面に、前記くさびが設けられた側に向かって窪むとともに前記長手方向に沿って延びるスリットを形成し、
前記被破砕物における前記くさびが設けられる面にも、前記棒状部材の長手方向に沿って窪むとともに前記スリットの位置と前記くさびの位置とを結ぶ方向に延びるスリットを形成する
ことを特徴とする破砕方法。 - 被破砕物に一端側が係止され、少なくとも他端側が前記被破砕物から露出し、一端側から他端側へと引っ張られて緊張力が付与される棒状部材と、
前記棒状部材において少なくとも他端側に設けられ前記被破砕物に尖端部を向けて配置されるくさびとを備える
ことを特徴とする破砕具。 - 請求項4に記載の破砕具において、
前記棒状部材および前記くさびに設けられ、前記棒状部材を前記くさびに対して引っ張る緊張力付与手段を備える
ことを特徴とする破砕具。 - 請求項4または請求項5に記載の破砕具において、
前記くさびには、前記棒状部材が挿通される孔が形成されている
ことを特徴とする破砕具。 - 請求項4から請求項6のいずれかに記載の破砕具において、
前記くさびは、略三角柱状であって、その角部が前記被破砕物に対向するように配置され、
前記棒状部材は、前記くさびの長手方向に沿って複数設けられている
ことを特徴とする破砕具。 - 請求項7に記載の破砕具において、
前記くさびは、前記被破砕物を挟んで両側に設けられ互いに対向し、これらくさびは、前記被破砕物の外側に張り出すように配置されるとともに、一方のくさびは、前記被破砕物に係止され、
前記棒状部材は、その一端側が前記一方のくさびの前記被破砕物から張り出した部分に係止され、当該係止された部分から他方のくさびの前記被破砕物から張り出した部分まで、前記被破砕物の外側を延びている
ことを特徴とする破砕具。
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