JP2007080891A - はんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】はんだの銅濃度と電子部品のリード部および回路基板の露出電極部の銅の溶解率との関係やドロスの除去時間間隔とドロスの生成量との関係を予め取得し、これらの関係をはんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定計算に持ち込む。
【選択図】 図1
Description
鉛フリーはんだは、従来の鉛錫共晶はんだに比べて融点が高く、銅の溶解を抑制するために少量の銅を添加されている。それにもかかわらず、鉛フリーはんだを用いたフローソルダリング工程においては、回路基板の露出電極部や電子部品のリード部(以下では「回路基板の露出電極部および電子部品のリード部」を総称して「リード部等」と称する)から、その材料である銅がはんだ中へ溶け出し、はんだ槽中はんだの銅濃度を高め、その結果として、融点の高い鉛フリーはんだの融点を更に上昇させる。図6は、このような状態の一例を示す線図であり、横軸ははんだの銅濃度であり、縦軸は液相線温度である。この図の場合は0.9wt%の銅濃度を境にして液相線温度が急上昇している。
しかしながら、この問題点への対応としては、現状では、定量的なデータに基づいた組成管理(はんだ補充材の補充条件の最適化等)は実行されておらず、現場の作業者の経験に頼っているだけである。一方、特許文献1および特許文献2、特許文献3等には、はんだ付け工程によって消費されたはんだを補充する補充材として、はんだの成分比率から銅濃度だけを低くしたものを用いることによって、はんだ槽中はんだの銅濃度の上昇を抑制し、長期間のはんだ付け工程において、はんだ槽中はんだの銅濃度を所定濃度範囲内に維持するという、はんだ槽中はんだの銅濃度制御方法が開示されている。
この発明の課題は、実工程または試作工程によれば多大な費用と長い時間を必要とする槽中銅濃度の経時変化の状況把握に代えて、幾つかの基礎データに基づいて槽中銅濃度の経時変化を計算で推定することができる槽中銅濃度の経時変化の推定方法を提供することである。
請求項1の発明は、回路基板へ電子部品を実装するフローソルダリング工程においてリード部等からはんだ槽中のはんだへ溶け出す銅によって上昇するはんだの銅濃度を、工程において低減したはんだの量と同量の、はんだ槽へ当初に投入した初期投入はんだまたは初期投入はんだの成分比率から銅濃度のみを低くした補充材(以下では「初期投入はんだまたは補充材」を「補充材」と称する)をはんだ槽へ供給することによって低減させて槽中銅濃度を制御する方法における槽中銅濃度の経時変化の推定方法であって、補充材の補充を区切りとして、各区切り間の実装工程およびその直後の補充材の補充までを単位期間とし、単位期間毎に、はんだ槽中はんだへ溶出する銅の量(以下では「溶出銅量」と称する)を、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入数とはんだ付け条件と直前単位期間における槽中銅濃度に対応するリード部等の銅の溶解率とに基づいて算出し、はんだ槽中はんだの低減量(以下では「はんだ低減量」と称する)を、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入数とはんだ付け条件とはんだ表面に生成されるドロスの除去条件とに基づいて算出し、はんだ低減量に対応してはんだ槽から持ち出される銅の量(以下では「持出し銅量」と称する)を、前記のはんだ低減量と直前単位期間における槽中銅濃度とに基づいて算出し、前記はんだ低減量と、前記溶出銅量から前記持出し銅量を差し引いた値、すなわち、はんだ槽中の増加銅量(以下では単に「増加銅量」と称する)と、直前単位期間の最終時点における槽中銅濃度と、を用いて、槽中銅濃度の経時変化を推定する。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記溶出銅量を算出するための直前単位期間における槽中銅濃度および前記持出し銅量を算出するための直前単位期間における槽中銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出された槽中銅濃度を用いる。
この発明においては、直前単位期間における槽中銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出された槽中銅濃度、すなわち、補充材補充直後の槽中銅濃度、を用いるが、この槽中銅濃度は、槽中銅濃度を推定しようとしている単位期間における当初の槽中銅濃度に相当し、且つこの単位期間での最低の槽中銅濃度でもある。その結果、これに対応するリード部等の銅の溶解率は実際よりやや大きい値となるので、推定される槽中銅濃度の経時変化の傾きは実際よりいくらか急になる。しかし、現実の問題として捉えると、単位期間内おける槽中銅濃度の変化はかなり小さいので、この影響はそれほど大きくない。
この発明においては、直前単位期間における槽中銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出された槽中銅濃度および補充材の補充の直前時点の値として算出された槽中銅濃度の平均値を用いるが、槽中銅濃度を推定しようとしている単位期間における補充材の補充直前時点の槽中銅濃度は、直前単位期間における補充材の補充直前時点の槽中銅濃度より大きくなるので、直前単位期間の平均値は、推定対象の単位期間の同様の平均値よりいくらか小さい。このため、直前単位期間の平均値を用いることによって、槽中銅濃度の経時変化をより高い精度であるがなお且つ安全側で推定することができる。
請求項2の発明においては、直前単位期間における槽中銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出された槽中銅濃度、すなわち、補充材補充直後の槽中銅濃度、を用いるが、この槽中銅濃度は、槽中銅濃度を推定しようとしている単位期間における当初の槽中銅濃度に相当し、且つこの単位期間での最低の槽中銅濃度でもある。その結果、これに対応するリード部等の銅の溶解率は実際よりやや大きい値となるので、推定される槽中銅濃度の経時変化の傾きは実際よりいくらか急になる。しかし、現実の問題として捉えると、単位期間内おける槽中銅濃度の変化はかなり小さいので、この影響はそれほど大きくない。したがって、この発明によれば、槽中銅濃度の経時変化をかなり高い精度で且つ安全側で推定することができる。
図1は(n−1)回目の補充材の補充直後の単位期間の槽中銅濃度の経時変化を推定するものであり、槽中銅濃度が上限値に達するまで、これと同様の推定が当初から単位期間毎に繰返され、その結果として、全体としての槽中銅濃度の経時変化が推定される。したがって、推定結果は、細かく見れば、単位期間毎に、槽中銅濃度が連続的に増加していく補充材の補充直前までの部分と補充時の槽中銅濃度の急減部分との繰返しである。
この実施例を特徴づける工程は、前述したように、予め取得しておいたはんだの銅濃度とリード等の銅の溶解率Sの関係を用いて、直前単位期間での補充直後の槽中銅濃度(図1では前補充直後の槽中銅濃度)c2(n-1)に相当する「はんだ付け工程(実装工程)の単位時間当たりの溶出銅量q(sol)」を算出する工程、および、同様に予め取得しておいたドロス除去時間間隔とドロス生成量Dの関係を用いて、設定されたドロス除去時間間隔に相当する「ドロス生成に対応する単位時間当たりのはんだ低減量w(drs)」を算出する工程であり、図1では二重線で囲っている。
以下において、図1に従ってこの実施例を説明する。
まず、はんだ付け工程の単位時間当たりのはんだ低減量w(dec)は、回路基板に電子部品を実装することに伴ってはんだ槽から持ち出されるはんだ量、すなわち、はんだ付け工程の単位時間当たりの持出しはんだ量w(out)と、ドロスの生成に対応して減少するはんだ槽のはんだ量、すなわち、ドロスの生成に対応する単位時間当たりのはんだ低減量w(drs)との和として求められる。したがって、
w(dec)=w(out)+w(drs) (1)
持出しはんだ量w(out)は、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入ペースとはんだ付け条件とによって決まる。ドロスの生成に対応するはんだ低減量w(drs)は、はんだ槽の設定条件とドロスを除去する時間間隔とによって決まり、回路基板の投入ペースには殆ど関係しない。ドロスを除去する時間間隔とドロスの生成量の関係は、図2に示すように、比例関係にはなく、ドロス除去の時間間隔が短くなるほど単位時間あたりのドロスの生成量が多くなる。
q(inc)=q(sol)−q(out) −q(drs) (2)
溶出銅量q(sol)は、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入数とはんだ付け条件とリード等の銅の溶解率とによって決まる。リード等の銅の溶解率Sは、図3に示したように、はんだの銅濃度で決まるので、この実施例においては、直前の単位期間の補充材補充直後の槽中銅濃度c2(n-1)に対応するリード等の銅の溶解率S2(n-1)を図3から読み出し、その値を用いて溶出銅量q(sol)を算出している。はんだ付け工程の持出し銅量q(out)は、持出しはんだ量w(out)とそのはんだの銅濃度で決まるが、この実施例では、はんだの銅濃度として直前の単位期間の補充材補充直後の槽中銅濃度c2(n-1)を用いている。ドロスの生成に対応する持出し銅量q(drs)は、ドロスの生成に対応するはんだ低減量w(drs)とそれに対応した銅濃度で決まる。
c(n) ={W0×c2(n−1)+q(inc)×t}÷{W0−w(dec)×t} (3)
で表され、(1)式および(2)式によって、下記のように表される。
c(n) =[W0×c2(n-1)+{q(sol)−q(out) −q(drs)}×t]
÷[W0−{w(out)+w(drs)}×t] (4)
なお、最初の単位期間に対応するc2(0)は、当然のことながら、その前の単位期間が存在しないので、初期投入はんだの銅濃度である。
(4)式にしたがって算出される槽中銅濃度c(n)は、c2(n-1)からt=Tに相当する補充材の補充直前の槽中銅濃度c1(n)まで増加する。(4)式の分母の第2項でt=Tとおいた値が、単位期間中のはんだの低減量W(dec)であり、(4)式の分子の第2項でt=Tとおいた値が、単位期間中の増加銅量Q(inc)である。
c2(n)=[W0×c2(n-1)+{q(sol)−q(out) −q(drs)}×T
+{w(out)+w(drs)}×T×c(sup)] ÷W0 (5)
ただし、c(sup)は補充材の銅濃度である。
ここで、この実施例の効果を確認するために、q(out)は少ないのでゼロとし、q(drs)として持ち出される銅の濃度は0.5wt%で一定とし、c(sup)はゼロとし、補充材の補充時間間隔を8時間および2時間の2条件として、(4)式および(5)式に従って槽中銅濃度の経時変化を推定計算した。図4はその結果を示した線図である。この結果は、実際の槽中銅濃度の経時変化より急な立ち上がりを示しているが、それほどかけ離れてはいない。一方、比較のために、はんだの銅濃度に対するリード等の銅のはんだへの溶解率が、はんだの銅濃度を0.5%とした場合の値から変わらないとした場合の槽中銅濃度の経時変化を推定計算した。図5はその結果を示した線図である。この結果は直線的な立ち上がりを示しており、実際の槽中銅濃度の経時変化から大きくかけ離れている。以上2つの推定計算結果から明らかなように、はんだの銅濃度に対するリード等の銅のはんだへの溶解率の変化を導入しなければ、槽中銅濃度の経時変化を正確に推定することができないことが分かるであろう。
Claims (3)
- 回路基板へ電子部品を実装するフローソルダリング工程において回路基板の電極部および電子部品のリード部からはんだ槽中のはんだへ溶け出す銅によって上昇するはんだの銅濃度を、工程において低減したはんだの量と同量の、はんだ槽へ当初に投入した初期投入はんだまたは初期投入はんだの成分比率から銅濃度のみを低くした補充材をはんだ槽へ供給することによって低減させて、はんだ槽中はんだの銅濃度を制御する方法におけるはんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定方法であって、
初期投入はんだまたは補充材の補充を区切りとして、各区切り間の実装工程およびその直後の初期投入はんだまたは補充材の補充までを単位期間とし、単位期間毎に、
はんだ槽中はんだへ溶出する銅の量を、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入数とはんだ付け条件と直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度に対応する前記電極部およびリード部の銅の溶解率とに基づいて算出し、
はんだ槽中はんだの低減量を、回路基板のパターンとこれに実装される電子部品の種類およびそれぞれの種類毎の数と回路基板の投入数とはんだ付け条件とはんだ表面に生成されるドロスの除去条件とに基づいて算出し、
はんだ槽中はんだの低減量に対応してはんだ槽から持ち出される銅の量を、前記のはんだ槽中はんだの低減量と直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度とに基づいて算出し、
前記のはんだ槽中はんだの低減量と、前記のはんだ槽中はんだへ溶出する銅の量から前記のはんだ槽から持ち出される銅の量を差し引いた値、すなわち、はんだ槽中の増加銅量と、直前単位期間の最終時点におけるはんだ槽中はんだの銅濃度と、を用いて、はんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化を推定する、
ことを特徴とするはんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定方法。 - 前記の溶出する銅の量を算出するための直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度および前記のはんだ槽から持ち出される銅の量を算出するための直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出されたはんだ槽中はんだの銅濃度を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定方法。 - 前記の溶出する銅の量を算出するための直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度および前記のはんだ槽から持ち出される銅の量を算出するための直前単位期間におけるはんだ槽中はんだの銅濃度として、直前単位期間の最終時点の値として算出されたはんだ槽中はんだの銅濃度および初期投入はんだまたは補充材の補充の直前時点の値として算出されたはんだ槽中はんだの銅濃度の平均値を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ槽中はんだの銅濃度の経時変化の推定方法。
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