JP2007078419A - サンプリング計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 「AD変換タイミング」と「噴射割り込み」が重なると、AD変換が実施される時期がズレるため、計測される駆動電流が実際の駆動電流に対してズレてしまう。
【解決手段】 SCVを制御するECUは、PWM周期で変動する駆動電流を、1周期に複数回AD変換し、1周期におけるAD値の平均値から1周期の駆動電流を計測するサンプリング計測手段を備える。この手段は、AD変換タイミングにズレが生じたか否かを判断する判断手段と、AD変換タイミングにズレが生じたと判断された場合に、ズレが生じていないと判断された直過去のAD値を代用する代用手段とを備える。これによって、「AD変換タイミング」と「噴射割り込み」が重なっても、今回のAD値を更新せず、同位相の直過去のAD値を代用するため、計測精度のズレが抑えられ、駆動電流のF/B制御の精度を高めることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、所定周期で変動する計測対象信号を、所定周期に応じたサンプリングタイミング毎に計測し、計測されたサンプリング値に基づいて計測対象信号を計測するサンプリング計測装置に関するものであり、単なる計測技術はもちろん、フィードバック(以下、F/B)制御に用いられて好適な技術に関する。
なお、サンプリングタイミングは、計測対象信号に応じた所定周期を複数に分割したタイミング(例えば、計測対象信号1周期に5回のサンプリング)であっても良いし、所定周期において1度だけのタイミング(例えば、計測対象信号1周期に1回のサンプリング)であっても良いし、複数の所定周期に1度のタイミング(例えば、計測対象信号5周期に1回のサンプリング)であっても良いが、計測精度を高める目的においてはサンプリング間隔は短い方が良い。
(従来の技術)
例えば、蓄圧式燃料噴射システムは、サプライポンプからコモンレールに高圧燃料を供給し、コモンレール内に蓄圧された高圧燃料をインジェクタから噴射する構成となっている。実レール圧は、サプライポンプに搭載された吸入調量弁(以下、SCV)によって調整されるものであり、SCVのソレノイドの駆動電流を、PWM制御のパルス幅をデューティ比制御することによって実レール圧が制御される。
ここで、実際にソレノイドを流れる駆動電流は、温度変化によるソレノイド抵抗の変化や、バッテリ電圧の変動などの影響によって変化する。
そこで、実際にソレノイドを流れる駆動電流を検出し、ソレノイドに流れる駆動電流が目標駆動電流となるようにF/B制御を実施する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ソレノイドに与えられる駆動電流を検出する技術として、PWM周期に応じたサンプリングタイミングにおいて実電駆動電流を計測(以下、AD変換)し、計測によって得られたサンプリング値(以下、AD値)を、複数の周期分を平均化して駆動電流を計測する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
(従来技術の問題点)
特許文献1の技術に特許文献2の技術を用いる場合、F/B制御の応答性を高めるためには、SCVの駆動電流の1周期毎に駆動電流の平均値を検出することが要求されるが、車両に搭載されるECU(エンジン・コントロール・ユニット)のAD変換速度の制約から、1周期にAD変換可能な回数は数回になる。具体例を説明すると、SCVの駆動周期(PWM周期)が200Hzで、1ms毎にAD変換するものであると、1周期にAD変換可能な回数は5回になる。
ここで、AD変換の時間間隔を正確に保つことができれば問題は生じない。
しかし、ECUは、SCVだけでなくインジェクタの噴射制御も行う。そして、ECUは、エンジンの回転数に同期した「噴射割り込み(インジェクタの噴射制御)」を最優先で実施するため、「AD変換タイミング(サンプリングタイミング)」に「噴射割り込み」が重なると、AD変換の実行時期(計測時期)が遅れてしまう。
上記の実例を、図1を参照して説明する。
SCVの駆動電流は、図中、実線Aに示すように、PWM周期に応じた三角波状であり、1周期毎にAD変換を等間隔で5回実施するものとする。即ち、1周期をAD変換タイミングAD1〜AD5に5分割し、各AD変換タイミングAD1〜AD5毎に駆動電流をAD変換する。
図1右側に示すように、「AD変換タイミングAD1〜AD5」と、図中実線Iに示す「噴射割り込み」とが重ならない場合は、ズレのないAD変換タイミングAD1〜AD5において駆動電流をAD変換する。
しかし、図1左側に示すように「AD変換タイミングAD1」と「噴射割り込み」が重なる場合は、「噴射割り込み」が終わってから「AD変換タイミングAD1」のAD変換を行う。即ち、図中、破線Bに示すように、「AD変換タイミングAD1」がズレる。すると、ズレがないタイミングであればAD値a1を読み込まなければならないところを、遅れたタイミングにおけるAD値b1を読み込んでしまう。
そして、AD値b1を用いて「AD変換タイミングAD1〜AD5」で読み込んだAD値を平均化し、その平均値に基づいて駆動電流値をF/B制御すると、SCVの実開度が目標開度に対してズレることになり、実レール圧が目標レール圧に対して異なってしまい、高精度のレール圧制御が妨げられる可能性がある。
特開2004−36563号公報 特開平11−308107号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サンプリングタイミングが他の演算処理による割り込み等を受けてズレたとしても、計測値のズレを抑えることのできる信頼性の高いサンプリング計測装置の提供にある。
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用するサンプリング計測装置は、サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断する判断手段と、サンプリングタイミングにズレが生じたと判断された場合、ズレが生じたと判断されたサンプリング値を用いずに、ズレが生じていないと判断された直近のサンプリング値を代用する代用手段とを備える。
このため、サンプリングタイミングが他の演算処理による割り込み等を受けてズレたとしても、ズレが生じたと判断されたサンプリング値を用いずに、ズレが生じていないと判断された直近のサンプリング値が代用されるため、計測値のズレを抑えることができ、サンプリング計測装置の信頼性を高めることができる。
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用するサンプリング計測装置におけるサンプリングタイミングは、所定周期を等間隔で複数に分割したものであり、判断手段は、サンプリングタイミングの間隔に基づいて、サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断するものであり、代用手段は、サンプリングタイミングにズレが生じたと判断された場合、前回計測した複数のサンプリングタイミングのうち、ズレが生じていないと判断された同位相のサンプリング値を代用するものである。
この結果、サンプリングタイミングが他の演算処理による割り込み等を受けてズレたとしても、1周期毎の計測対象信号に対する計測値のズレを抑えることができる。
また、サンプリングタイミングの間隔に基づいて、サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断するため、「割り込み指示」が与えられなくても、サンプリングタイミングのズレを判断することができる。
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用するサンプリング計測装置における計測対象信号は、PWM制御される電動アクチュエータの駆動電流であり、サンプリング計測装置は、計測されたサンプリング値に基づいて電動アクチュエータに与えられる駆動電流をF/B制御する装置に用いられるものである。
この結果、サンプリングタイミングが他の演算処理による割り込み等を受けてズレたとしても、計測対象信号に対する計測値のズレが抑えられて、高精度の計測値が得られるため、F/B制御の精度を高めることができる。
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用するサンプリング計測装置における電動アクチュエータは、蓄圧式燃料噴射装置のSCVに搭載されて、加圧室に燃料を導く燃料通路の開度を変化させるソレノイドであり、フィードバック制御する装置は、吸入調量弁を駆動制御するECUである。
この結果、サンプリングタイミングが「噴射割り込み」によりズレたとしても、駆動電流(計測対象信号の一例)に対する計測値のズレが抑えられ、SCV駆動電流のF/B制御の精度を高めることができる。
これによって、SCV駆動電流の計測誤差により実レール圧が目標レール圧に対してズレる不具合が防がれるため、高精度のレール圧制御が可能になる。
最良の形態1のサンプリング計測装置は、所定周期で変動する計測対象信号を、所定周期に応じたサンプリングタイミングで計測し、計測されたサンプリング値に基づいて計測対象信号を計測するものであり、サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断する判断手段と、サンプリングタイミングにズレが生じたと判断された場合、ズレが生じたと判断されたサンプリング値を用いずに、ズレが生じていないと判断された直近のサンプリング値を代用する代用手段とを備える。
本発明を蓄圧式燃料噴射装置のサプライポンプに搭載されるSCVの制御に適用した実施例1を、図1〜図4を参照して説明する。
(蓄圧式燃料噴射装置の構成)
まず、蓄圧式燃料噴射装置の構成を図3、図4を参照して説明する。
蓄圧式燃料噴射装置は、例えばディーゼルエンジン(以下、エンジン)1に燃料噴射を行う装置であり、コモンレール2、インジェクタ3、サプライポンプ4、ECU5等から構成されている。
コモンレール2は、インジェクタ3に供給する高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器であり、連続的に燃料噴射圧に相当するレール圧が蓄圧されるように燃料配管(高圧燃料流路)6を介して高圧燃料を吐出するサプライポンプ4の吐出口と接続されている。
なお、インジェクタ3からのリーク燃料は、リーク配管(燃料還流路)7を経て燃料タンク8に戻される。
また、コモンレール2から燃料タンク8へのリリーフ配管(燃料還流路)9には、プレッシャリミッタ11が取り付けられている。このプレッシャリミッタ11は、コモンレール2内のレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール2のレール圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁である。
インジェクタ3は、エンジン1の各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒へ噴射供給するものであり、コモンレール2より分岐する複数の分岐管の下流端に接続されて、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料を各気筒に噴射供給する燃料噴射ノズル、およびこの燃料噴射ノズル内に収容されたニードルのリフト制御を行う電動アクチュエータ(例えば、電磁アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ等)を搭載する。
(サプライポンプ4の説明)
サプライポンプ4を図4を参照して説明する。
このサプライポンプ4は、コモンレール2へ高圧に圧縮した燃料を送るものであり、フィードポンプ12(図中では90°展開した状態で開示される)、レギュレータバルブ13、SCV14、複数(この実施例では2つ)の高圧ポンプ15等から構成される。
フィードポンプ12は、燃料タンク8から燃料を吸引して高圧ポンプ15へ送る低圧供給ポンプであり、カムシャフト16によって回転駆動されるトロコイドポンプによって構成される。このフィードポンプ12が駆動されると燃料入口17から吸引した燃料をSCV14を介して2つの高圧ポンプ15に供給するものである。
なお、カムシャフト16はポンプ駆動軸であり、図3に示されるように、エンジン1のクランク軸18によって回転駆動されるものである。
レギュレータバルブ13は、フィードポンプ12の吐出側と供給側とを連通する燃料流路19に配置されてフィードポンプ12の吐出圧が所定圧に上昇すると開弁して、フィードポンプ12の吐出圧が所定圧を超えないようにするものである。
SCV14は、フィードポンプ12から高圧ポンプ15へ燃料を導く燃料通路21に配置され、高圧ポンプ15の加圧室22(プランジャ室)に吸入される燃料の吸入量を調整して、レール圧をコントロールするものである。
このSCV14は、フィードポンプ12から加圧室22へ燃料を導く燃料通路21の開度を変更するバルブ23と、ECU5から与えられる駆動電流に応じた位置にバルブ23を駆動することで弁開度を調整するためのソレノイド24(電動アクチュエータの一例)とを有するものであり、ソレノイド24の通電が停止されると弁開度が全開状態となるノーマリオープンタイプのものと、弁開度が全閉状態となるノーマリクローズタイプのものとがある。
2つの高圧ポンプ15は、それぞれ180度位相の異なった周期で燃料の吸入と圧縮を繰り返すプランジャポンプであり、SCV14で調量された燃料を高圧に圧縮してコモンレール2へ供給する。それぞれの高圧ポンプ15は、共通のカムシャフト16によって往復駆動されるプランジャ25、このプランジャ25の往復動によって容積が変化する加圧室22に燃料を供給する吸入弁26、加圧室22で圧縮された燃料をコモンレール2へ向けて吐出する吐出弁27を備える。
プランジャ25は、カムシャフト16のエキセンカム28の周囲に装着されたカムリング29にスプリング30によって押し付けられており、カムシャフト16が回転するとカムリング29の偏心動作に伴ってプランジャ25が往復動する。
プランジャ25が下降して加圧室22の圧力が低下すると、吐出弁27が閉弁するとともに、吸入弁26が開弁してSCV14で調量された燃料が加圧室22内に供給される。 逆に、プランジャ25が上昇して加圧室22の圧力が上昇すると吸入弁26が閉弁する。そして、加圧室22で加圧された圧力が所定圧力に達すると吐出弁27が開弁して加圧室22で加圧された高圧燃料がコモンレール2へ向けて吐出される。
(ECU5の説明)
ECU5は、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶手段(ROM、SRAMまたはEEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成される周知構造のコンピュータであり、ECU5に読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジン1の運転状態等に応じた信号)に基づいて各種の演算処理を行うようになっている。
このECU5は、インジェクタ3に駆動信号を与えるインジェクタ駆動回路、サプライポンプ4のSCV14に駆動電流を与えるポンプ駆動回路など、電気機能部品に駆動電流を与えるEDU(エレクトリック・ドライブ・ユニットの略)の機能が内蔵されているが、EDUを別に搭載するものであっても良い。
なお、ECU5に接続されるセンサ類は、図3に示されるように、アクセル開度を検出するアクセルセンサ41、エンジン回転数を検出する回転数センサ42、エンジン1の冷却水温度を検出する水温センサ43、エンジン1に吸入される吸気温度を検出する吸気温度センサ44、コモンレール2内に蓄圧された実際の燃料圧力である実レール圧を検出するレール圧センサ45、インジェクタ3に供給される燃料温度を検出する燃料温度センサ46、およびその他のセンサ類47がある。
(インジェクタ制御系)
ECU5は、インジェクタ3の制御プログラムとして、燃料の噴射毎に、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づいて、噴射形態を決定する「噴射形態決定手段」、各噴射毎の目標噴射量を算出する「目標噴射量算出手段」、各噴射毎の目標噴射時期を算出する「目標噴射時期算出手段」を備える。
「噴射形態決定手段」は、現運転状態に応じたインジェクタ3の噴射形態(単噴射、マルチ噴射など)の決定を行う制御プログラムである。
「目標噴射量算出手段」は、現運転状態に応じた目標噴射量を求め、この目標噴射量を得るための指令インジェクタ駆動時間を求める制御プログラムである。
「目標噴射時期算出手段」は、現運転状態に応じた目標噴射時期を求め、この目標噴射時期に噴射を開始させるための噴射指令タイミングを求める制御プログラムである。
(レール圧制御系)
ECU5は、コモンレール2に蓄圧される実レール圧の制御プログラムとして、目標レール圧を算出する「目標レール圧算出手段」、実レール圧を目標レール圧に収束させる「レール圧F/B制御手段」を備える。
「目標レール圧算出手段」は、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づき、フィードフォワード制御により目標レール圧(要求吐出量、要求駆動電流であっても良い)を求める制御プログラムである。
「レール圧F/B制御手段」は、「目標レール圧算出手段」で求めた目標レール圧と、レール圧センサ45によって検出された実レール圧とを比較し、その差圧(偏差)に基づいて実レール圧を目標レール圧に収束させる制御プログラムである。
レール圧制御系の具体例を説明する。なお、この具体例では、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)に基づいて基本要求吐出量(基本制御値)を求め、その基本要求吐出量を「レール圧F/B制御手段」で補正する例を示す。
ECU5は、上述した「目標レール圧算出手段」および「レール圧F/B制御手段」の他に、「基本値算出手段」、「ポンプ効率補正手段」、「機差学習補正手段」、「吐出量/電流量変換手段」、「電流量/デューティ比変換手段」等を備える。
「基本値算出手段」は、サプライポンプ4の1圧送あたりの基本要求吐出量を求めるものであり、インジェクタ3から噴射される噴射量とリーク量(静リーク量+動リーク量)とを加算し、高圧ポンプ15(プランジャ25)の1圧送あたりにおける噴射回数を乗算(1圧送2噴射であれば2を乗算)して基本要求吐出量を求めるものである。
この具体例における「レール圧F/B制御手段」は、「目標レール圧算出手段」で求めた目標レール圧と、レール圧センサ45で検出した実レール圧との差圧に基づいて、実レール圧を目標レール圧に収束させるためのレール圧F/B量を算出するものであり、「基本値算出手段」で求めた基本要求吐出量にレール圧F/B量を加算することで、基本要求吐出量を補正するものである。
「ポンプ効率補正手段」は、エンジン回転数に応じた吸入効率を算出し、その吸入効率で基本要求吐出量+レール圧F/B量を補正(吸入効率を乗算)するものである。
「機差学習補正手段」は、出荷時や学習時に記憶されたポンプ機差吐出量を、(基本要求吐出量+レール圧F/B量)×吸入効率に加算するものである。
「吐出量/電流量変換手段」は、{(基本要求吐出量+レール圧F/B量)×吸入効率}+ポンプ機差吐出量を目標駆動電流に変換するものである。
「電流量/デューティ比変換手段」は、目標駆動電流を駆動デューティ比に変換するものである。
そして、その駆動デューティ比がEDUのポンプ駆動回路に与えられると、ポンプ駆動回路は与えられたデューティ比に応じた駆動電流をSCV14に出力する。この結果、加圧室22に通じる燃料通路21の開度が制御されて、サプライポンプ4の吐出量がコントロールされることになり、コモンレール2の実レール圧がコントロールされる。
[本発明に係わる実施例1の主要構成]
ECU5のレール圧制御系は、上述した「目標レール圧算出手段」、「レール圧F/B制御手段」、「基本値算出手段」、「ポンプ効率補正手段」、「機差学習補正手段」、「吐出量/電流量変換手段」、「電流量/デューティ比変換手段」の他に、「駆動電流F/B制御手段」を備える。
この「駆動電流F/B制御手段」は、ソレノイド24に実際に流れた駆動電流を計測し、計測した駆動電流と、上記演算により得られた目標駆動電流とを比較し、その電流差(偏差)に基づいて、計測した実駆動電流を目標駆動電流に収束させるプログラムである。
ここで、ポンプ駆動回路は、PWM制御による三角波状の駆動電流(図1の実線A参照)をSCV14に出力するものである。
ECU5は、ソレノイド24に実際に流れる駆動電流を計測する手段として、サンプリング計測手段を採用している。
サンプリング計測手段は、PWM周期(所定周期の一例)で変動する駆動電流(計測対象信号の一例)を、PWM周期に応じた所定のサンプリングタイミングで繰り返しAD変換し、AD変換されたAD値(サンプリング値)に基づいてソレノイド24に実際流れる駆動電流を計測するものである。
具体的に、SCV14のF/B制御の応答性を高めるために、サンプリング計測手段は、駆動電流の1周期毎に1周期の駆動電流の平均値を求めるものであり、ECU5のAD変換速度の制約から、1周期にAD変換可能な回数は数回になる。具体的にこの実施例では、駆動電流のPWM周期は200Hzであって、1ms毎にAD変換するものであり、1周期に5回のAD変換タイミングAD1〜AD5でAD変換を行うものである。
(実施例1の背景)
1周期に5回のAD変換を行う実例を、図1の右側を参照して説明する。
SCV14の駆動電流は、図1の実線Aに示すように、PWM周期に応じた三角波状であり、ECU5はAD変換タイミングAD1〜AD5にSCV14に流れる駆動電流をAD変換し、AD変換タイミングAD1〜AD5で読み込んだAD値a1〜a5を平均化して、周期毎の駆動電流の計測を行うものである。
ここで、AD変換の時間間隔を正確に保つことができれば問題は生じない。
しかし、ECU5は、SCV14だけでなく、上述したようにインジェクタ3の噴射制御も行う。そして、ECU5は、エンジン回転数に同期して、インジェクタ3の噴射制御のための「噴射割り込み」の演算処理を最優先で実施するため、AD変換タイミングに「噴射割り込み」が重なると、AD変換タイミングが遅れてしまう。
このことを、図1左側を参照して説明する。
「AD変換タイミングAD1」と「噴射割り込み」が重なる場合は、「噴射割り込み」が終わってから「AD変換タイミングAD1」のAD変換を行う。即ち、図1の破線Bに示すように「AD変換タイミングAD1」がズレる。すると、ズレがないタイミングであればAD値a1を読み込まなければならないところを、ECU5は「噴射割り込み」が終了した時点のAD値b1を読み込んでしまう。
そして、AD値b1を用いて平均化した1周期の駆動電流は、実際の駆動電流に対してズレてしまう。この結果、「噴射割り込み」によってズレてしまった駆動電流に基づいて目標駆動電流をF/B補正すると、SCV14の実開度が目標開度に対してズレることになる。
(実施例1の特徴)
「噴射割り込み」によって計測される駆動電流がズレてしまう不具合を解決するために、ECU5は、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたか否かを判断する判断手段の機能(プログラム)と、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたと判断された場合、ズレが生じたと判断されたAD値を用いずに、ズレが生じていないと判断されたAD変換タイミングAD(N)における直過去のAD値を代用する代用手段の機能(プログラム)とを備える。
なお、この実施例1における判断手段は、ECU5による「噴射割り込み」の実施の有無、あるいはAD変換タイミングAD(N)のAD間隔T(N)に基づいて、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたか否かを判断するものである。
また、この実施例1における代用手段は、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたと判断された場合、前回計測した複数のAD変換タイミングAD1〜AD5のうち、ズレが生じていないと判断された同位相の直過去のAD値を代用するものである。
判断手段と代用手段の制御例を図2(a)に示すフローチャートを参照して説明する。 AD変換タイミングAD(N)になると、AD変換処理の制御ルーチンに侵入する(スタート)。このAD変換処理では、先ずサイクルカウンタNを更新する(ステップS1)。即ち、前回のサイクルカウンタNに今回の1を加算する(N=N+1)。なお、サイクルカウンタNは1〜5を繰り返してカウントするものであり、5の次は1に戻るものである。
次に、ソレノイド24に実際に流れる駆動電流をAD変換して、AD値を取り出す(ステップS2)。
次に、AD変換の終了時間を取り出し、今回のAD間隔T(N)を保持する(ステップS3)。
次に、AD変換処理のタイミングに「噴射割り込み」の実行中を示す信号(図1中の実線I参照)が無かったか否かの判断を行う(判断手段の一例:ステップS4)。このステップS4の判断結果がNO(割り込みがあった)の場合は、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたと判断され、今回のAD値を更新せず、同位相の直過去のAD値(ズレが生じていないと判断された直過去のAD値)をホールド(代用手段の制御例:ステップS5)し、この制御ルーチンを終了する。即ち、ステップS5において同位相の直過去のAD値を代用する。
一方、ステップS4の判断結果がYESの場合でも、ステップS6、S7において今回のAD間隔T(N)に基づいて、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたか否かの判断を行う(判断手段の一例)。
具体的にステップS6では、今回のAD間隔T(N)が前回のAD間隔に定数αを加えたT(N−1)+αより小さいか否かの判断を行い{T(N)<T(N−1)+α}、この判断結果がNOの場合には、ステップS7において今回のAD間隔T(N)が前々回のAD間隔T(N−2)より小さいか否かの判断を行い{T(N)<T(N−2)}、この判断結果がNOの場合には、AD変換タイミングAD(N)にズレが生じたと判断するものである。
このステップS6、S7における「噴射割り込み」の検出の具体例を、図2(b)を参照して説明する。
各AD変換タイミングAD1〜AD5が正常な場合は、図2(b)の上段に示すタイミングでAD変換が行われる。
しかし、例えば図2(b)の下段に示すように、AD変換タイミングAD3に「噴射割り込み」によるAD変換の遅れがあった場合、AD間隔T3がその前回のAD間隔T2+αより長くなるとともに(ステップS6の判断結果がNO)、AD間隔T3がその前々回のAD間隔T1より長くなり(ステップS7の判断結果がNO)、AD変換タイミングAD3にズレが生じたと判断される。
一方、正常なAD間隔T5は、その前回のAD間隔T4+αより長くなるが(ステップS6の判断結果がNO)、AD間隔T5がその前々回のAD間隔T3より短くなり(ステップS7の判断結果がYES)、AD変換タイミングAD5にズレは生じていないと判断される。
ステップS6、S7がYESの場合は、AD変換タイミングAD(N)にズレは生じていないと判断され、AD変換タイミングAD(N)に今回のAD値をストアし(ステップS8)、この制御ルーチンを終了する。即ち、ステップS8において、AD変換タイミングAD(N)として今回のAD値を更新する。
(実施例1の効果)
「AD変換タイミングAD1」と「噴射割り込み」が重なる場合を例に、この実施例1の効果を説明する。
図1左側に示すように、「AD変換タイミングAD1」と「噴射割り込み」が重なる場合は、上述したステップS4がNOとなるか、上述したステップS6、S7が共にNOとなり、ステップS5において今回のAD値b1を更新せず、同位相の直過去のAD値a1を代用する。この結果、「AD変換タイミングAD1」と「噴射割り込み」が重なっても、「噴射割り込み」が重なっていない直過去のAD値a1を用いて平均化して1周期の駆動電流を求める。これによって、計測される駆動電流は、SCV14を実際に流れる駆動電流に対してズレが抑えられる。
このように、「噴射割り込み」によってAD変換タイミングがズレたとしても、サンプリング計測手段によって計測される駆動電流に基づいて、目標駆動電流をF/B補正することで、駆動電流のF/B制御の精度を高めることができる。即ち、AD変換タイミングが「噴射割り込み」によりズレたとしても、実際の駆動電流に対する計測値のズレが抑えられることになり、SCV14の駆動電流のF/B制御の精度が高められる。
これによって、SCV14の駆動電流の計測誤差により実レール圧が目標レール圧に対してズレる不具合が防がれるため、高精度のレール圧制御が可能になる。
[変形例]
上記の実施例では、蓄圧式燃料噴射装置のSCV14の駆動電流を計測する技術に本発明を適用する例を示したが、計測対象である計測対象信号はSCV14の駆動電流に限定されるものではなく、他の電動アクチュエータの駆動電流はもちろん、所定周期で変動する計測対象信号であれば、本発明を用いて計測することができるものである。
AD変換タイミングと噴射割り込みに係わるタイムチャートである。 AD値の読み込みに係わるフローチャートおよびAD変換のズレの検出に係わるタイムチャートである。 蓄圧式燃料噴射装置の概略図である。 サプライポンプの断面図である。
符号の説明
2 コモンレール
4 サプライポンプ
5 ECU(サンプリング計測手段、判断手段、代用手段の機能を備える)
14 SCV(吸入調量弁)
21 燃料通路
22 加圧室
24 ソレノイド(電動アクチュエータ)

Claims (4)

  1. 所定周期で変動する計測対象信号を、前記所定周期に応じたサンプリングタイミングで計測し、計測されたサンプリング値に基づいて前記計測対象信号を計測するサンプリング計測装置において、
    このサンプリング計測装置は、
    前記サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断する判断手段と、
    前記サンプリングタイミングにズレが生じたと判断された場合、ズレが生じたと判断されたサンプリング値を用いずに、ズレが生じていないと判断された直近のサンプリング値を代用する代用手段と、
    を備えることを特徴とするサンプリング計測装置。
  2. 請求項1に記載のサンプリング計測装置において、
    このサンプリング計測装置における前記サンプリングタイミングは、前記所定周期を等間隔で複数に分割したものであり、
    前記判断手段は、前記サンプリングタイミングの間隔に基づいて、当該サンプリングタイミングにズレが生じたか否かを判断する手段を備え、
    前記代用手段は、前記サンプリングタイミングにズレが生じたと判断された場合、前回計測した複数のサンプリングタイミングのうち、ズレが生じていないと判断された同位相のサンプリング値を代用することを特徴とするサンプリング計測装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のサンプリング計測装置において、
    前記計測対象信号は、PWM制御される電動アクチュエータの駆動電流であり、
    前記サンプリング計測装置は、計測されたサンプリング値に基づいて前記電動アクチュエータに与えられる駆動電流をフィードバック制御する装置に用いられることを特徴とするサンプリング計測装置。
  4. 請求項3に記載のサンプリング計測装置において、
    前記電動アクチュエータは、
    蓄圧式燃料噴射装置のコモンレールに高圧燃料を供給するサプライポンプにおいて燃料を吸引して加圧する加圧室に燃料を導く燃料通路の開度を変化させる吸入調量弁に搭載されたソレノイドであり、
    前記フィードバック制御する装置は、前記吸入調量弁を駆動制御するECUであることを特徴とするサンプリング計測装置。
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