JP2007073091A - 磁気ディスク装置 - Google Patents

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信史 北村
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史 吉田
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Abstract

【課題】 記憶容量を低下させないでECCのエラー訂正能力を向上した磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】 (B)に示すようにデータ・トラックは、データ・セクタ22〜25にデータ間ギャップ領域Gを設けないフォーマット構造を採用する。磁気ディスクの回転速度が規定状態から外れてデータ・セクタ23が更新されるときは、(C)または(D)に示すようにデータ・セクタ24の先端領域またはデータ・セクタ22の後端領域がデータ・セクタ23で上書きされる。上書きされたデータ・セクタに発生した再生エラーは、ERPのステップを実行してリード・リトライを行い、オン・ザ・フライECCまたはイレージャ訂正で回復する。イレージャ訂正では、最大上書きバイト数に相当するイレージャ・ポインタを設定する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、記憶容量を低減させないでエラー訂正能力を向上することができる磁気ディスクのフォーマット構造に関し、さらには、そのようなフォーマット構造を採用してエラー訂正能力を向上した磁気ディスク装置に関する。
データ面サーボ方式(セクタ・サーボ方式または埋め込みサーボ方式ともいう。)を採用する磁気ディスク装置では、図7に示すように、磁気ディスクのデータ・トラック7の円周方向においてサーボ・セクタ1a、1bの間にギャップ領域Gを挟んで複数のデータ・セクタ2〜5が設けられている。そして、磁気ディスク装置は記録および再生をデータ・セクタ単位で行うことができる直接アクセス記憶装置として構成されている。各データ・セクタ2〜5は、ユーザ・データとユーザ・データに基づいて生成された誤り訂正符号(ECC)と、その他の付帯データとで構成され、全体の長さを一定とする固定ブロック・アーキテクチャ(FBA:Fixed Block Architecture)を採用している。固定ブロック長のデータ・セクタは全体が一定のバイト数で形成されるため、1つのデータ・セクタは磁気ディスクの回転速度に比例した長さの記録領域をデータ・トラックの円周方向に占有する。
各データ・セクタからアドレス情報を除去したIDレス・フォーマット方式の磁気ディスク装置では、各データ・セクタ2〜5の位置を特定するために、サーボ・セクタ1または他の基準位置から磁気ディスクの回転速度に適合する数だけ所定周波数のパルスをカウントしている。データ・セクタ2〜5にデータが記録されている状態でデータ・セクタ3を更新するときは、データ・セクタ2またはデータ・セクタ4を構成するデータを上書きしないようにする必要がある。磁気ディスクの回転速度は常に一定になるように制御されているが、回転ジッタの発生を完全に抑制することはできない。回転ジッタとは磁気ディスクの回転精度のことであり、磁気ディスクの回転速度には一般に規定回転速度を中心にプラス・マイナス0.2%〜0.5%程度の誤差が発生する。回転ジッタが発生すると隣接するデータ・セクタやサーボ・セクタを上書きする可能性がでてくるので、データ・セクタ間およびデータ・セクタとサーボ・セクタの間にはデータの記録には使用しないギャップ領域Gを設けている。ギャップ領域は磁気ディスクの記録面の1%を超えるので、これを有効に利用できれば有益である。
ところで、近年磁気ディスク装置の記録密度が向上し、再生エラーが発生する割合も増大してきている。エラー・バイト数が所定値以下の再生エラーはECCを使用してオン・ザ・フライECC(On The Fly ECC)というハードウエア処理により訂正されるので、処理の遅延時間は短くほとんど磁気ディスク装置の再生動作を遅延させることはない。しかし、エラー・バイト数がECCのエラー訂正能力を超えた再生エラーが発生するとエラー回復プロシジャ(ERP)が実行されてさまざまな回復作業によるリード・リトライを経た後に訂正される。ERPの実行によるエラー回復作業は時間を要するため、再生ビットのエラーは極力オン・ザ・フライECCで訂正されることが望ましい。
特許文献1は、データ・セクタがサーボ・ウエッジから離れるにしたがってジッタの影響が強くなることに着目し、サーボ・ウエッジに近いデータ・セクタとの間に設けるギャップ領域を小さくする技術を開示する。特許文献2は、データの書き換え単位をデータ・セクタ単位ではなく、複数のデータ・セクタからなるデータ・フィールド単位またはデータ・トラック単位にすることで、ギャップ領域やプリアンブルを除去して記憶容量を増大する技術を開示する。特許文献3は、その図3にセクタのデータ領域が分割されたフォーマット構造が示されている。このフォーマット構造では、プリアンブルが分割された2つのデータ領域に対して1つだけ設けられており、記録単位は2つのデータ領域を含んだプリアンブルからECCまでの領域全体になる。
特許文献4には、サーボ・クロック同期記録方式を採用してギャップ長を削減しトラックフォーマットの無駄領域を小さくする技術を開示する。サーボ・クロックはディスク上にほぼ等角度間隔に放射状に多数設けられたサーボ領域の中のクロックマークを時刻基準として、その再生信号に専用PLLを同期させて生成している。このサーボク・クロックに同期したRGパルスやWGパルスなどの各種タイミング信号を生成し、かつデータ記録用ビット・クロックも生成する。
特開2001−273722号公報 特開2002−124037号公報 特開2001−143406号公報 特開2004−253042号公報
ECCのエラー訂正能力は、8ビットを1シンボルとするシンボル数に依存している。ECCのシンボル数を増大すればオン・ザ・フライECCによりエラー処理をすることができる確率が向上するので再生エラーの発生を防ぐことができるが、シンボル数を増大した分だけ記憶容量が低下する。背景技術で説明したように従来のフォーマット構造で採用していたギャップ領域は、記憶領域として使用するものではないので、この領域をECCの追加的領域として使用することができれば記憶容量を低下させないでECCの訂正能力を向上することができる。
磁気ディスク装置では一般に、データ・セクタの記録開始位置は、サーボ・セクタの位置情報または磁気ディスクの1回転に1個だけ発生するインデックス・マークの位置情報を基準にクロック数をカウントして決定している。したがって、磁気ディスクの回転速度が変化するとデータ・セクタの記録開始位置も円周方向に変動することになる。データ・セクタの記録終了位置は、所定のバイト数からなるデータ・セクタ全体の書き込みが終了した位置であり、やはり記録時の回転速度が変化すれば1つのデータ・セクタの記録媒体上での記録長は変化する。
記録開始位置を決定するためにカウントするクロックや書き込み電流の周波数を決めるライト・クロックの周波数を磁気ディスクの回転速度に応じて変化させて、データ・セクタの記録位置と記録長を一定にすることも考えられるが回路が複雑になり、コストが増加するので実際的ではない。同様の理由で、磁気ディスクの回転ジッタを完全にゼロにすることも困難である。これまでは、データ・セクタを更新する際に前後のデータ・セクタの一部を上書きしてしまうことを完全に排除するためにギャップ領域は必須のものと考えられていた。しかし、先端領域または後端領域が他のデータ・セクタで上書きされたデータ・セクタの再生を適切に行うことが確保されれば、記憶容量を低下させることなく、ギャップ領域をECCの追加的領域に利用してオン・ザ・フライECCによる訂正能力を向上させることができる。そこで本発明の目的は、記憶容量を低下させないでECCのエラー訂正能力を向上した磁気ディスク装置を提供することにある。
本発明にかかる磁気ディスクは、データ間ギャップ領域を除去し、あるいは従来のギャップ領域より縮小したフォーマット構造を採用する。したがって、データ・セクタ同士が重なり、後から記録されたデータ・セクタが先に記録されたデータ・セクタを部分的に上書きする場合が発生する。記録位置規定状態で基準記録位置に書き込んだときの基本フォーマットでは、第1のデータ・セクタの後端と第2のデータ・セクタの前端とを隣接させてもよいし、両者の間に最大シフト・バイト数の2倍未満のギャップ領域を形成してもよい。記録位置許容限界状態で第1のデータ・セクタを第2のデータ・セクタに近づく方向に記録し、その後記録位置許容限界状態で第2のデータ・セクタを第1のデータ・セクタに近づく方向に記録すると、基本フォーマットとして最大シフト・バイト数の2倍未満のギャップ領域を形成しても、第2のデータ・セクタの前端領域が第1のデータ・セクタの後端領域を必ず上書きする。記録手段が、第1のデータ・セクタを基準記録位置と最大シフト記録位置の間に記録し、その後第2のデータ・セクタを基準記録位置と前記最大シフト記録位置の間に記録したときは、第2のデータ・セクタの前端領域が第1のデータ・セクタの後端領域を上書きする場合と上書きしない場合が発生する。
記録位置規定状態は、回転する磁気ディスクに対するデータ・セクタの記録開始位置を決定するさまざまな要因が基準状態にあることを意味する。記録位置許容限界状態は、変動した各要因が合成されたときのデータ・セクタの記録開始位置が、記録位置規定状態における記録開始位置である基準記録位置から最も大きくシフトするときの各決定要因の状態を意味する。最大シフト・バイト数は、基準記録位置と記録位置許容限界状態における記録開始位置(最大シフト記録位置)との差に相当するバイト数をいう。最大上書きバイト数は、2つのデータ・セクタがともに最大許容位置限界状態で接近するように個別に記録されたときに上書きされる最大のバイト数をいう。
基本フォーマットにおいて、各データ・セクタを隣接させて基準記録位置に記録する場合には、一つのデータ・セクタが記録位置規定状態から外れた状態で更新されると更新にかかるデータ・セクタの一部が、必ず他の基準記録位置に記録されたデータ・セクタの一部を上書きする。基本フォーマットにおいて、各データ・セクタ間に最大シフト・バイト数の2倍未満のギャップ領域を形成した基準記録位置に記録するときは、記録位置許容限界状態で2つのデータ・セクタが接近するように個別に更新されると両者は必ず部分的に重なるが、記録位置許容限界状態と記録位置規定状態との間の中間状態で2つのデータ・セクタが接近するように記録されるときは重なる場合と重ならない場合がある。
データ・セクタの一部が重なると、先に記録されたデータ・セクタは後に記録されたデータ・セクタで先端領域または後端領域が上書きされ、再生時にビット・エラーが発生する。データ・セクタが上書きされてオン・ザ・フライECCでエラー訂正できないために再生エラーが発生したときは、回復手段がエラー回復プロシジャのプログラムを実行する。除去あるいは縮小したデータ間ギャップ領域をECCの追加的な領域に割り当てることで、記憶容量を低下させることなくECCの訂正能力を向上させることができる。ECCの訂正能力が向上すると、ビット・エラーが発生してもオン・ザ・フライECCでエラー回復する能力が向上する。
データ・セクタの先端領域はプリアンブルで構成することができ、後端領域はポストアンブルで構成することができる。この場合、データ・セクタの先端はプリアンブルの最初のビットとなり、後端はポストアンブルの最後のビットとなる。回復手段は、一部が上書きされたデータ・セクタの再生エラーをエラー回復プロシジャの各ステップを実行してリード・リトライとオン・ザ・フライECCで回復する。回復手段はさらに最大シフト・バイト数と基本フォーマットで形成されるデータ間ギャップ領域のバイト数に基づいて計算した最大上書きバイト数を再生エラーが発生したデータ・セクタの後端からイレージャ・ポインタとして設定したイレージャ訂正で回復する。
ホスト装置は磁気ディスク装置に対して1つのライト・コマンドで複数のデータ・セクタに連続して記録することが多い。順番に並んだデータ・セクタに連続的に記録してゆく場合は、記録位置規定状態から外れた状態においても、最初のデータ・セクタの記録開始位置がシフトするだけで後続のデータ・セクタの記録開始位置はシフトしないのでデータ・セクタ同士が重なることはない。またこの場合は、磁気ディスクの回転ジッタが発生してもデータ・セクタ同士が隣接するように記録することができる。データ・セクタが個別に書き込まれたり更新されたりする場合でも、多くは記録位置規定状態の近辺の状態で行われるため、現実に上書きされるバイト数の多くは最大シフト・バイト数に比べて十分に小さく、イレージャ訂正を行ってパフォーマンスが低下する頻度は少ない。よって、本発明により記憶容量を低下させないで創出したECCの追加的な領域が有効に機能してエラー訂正能力を向上することができる。
本発明により、記憶容量を低下させないでECCのエラー訂正能力を向上した磁気ディスク装置を提供することができた。
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気ディスク装置において採用した磁気ディスクのフォーマット構成を示す図である。図1(A)に示すように磁気ディスク10には、放射状に半径方向に延びた複数のサーボ・セクタ11が書き込まれている。各サーボ・セクタ11の間にはデータ領域13が配置されており、各データ領域13には複数のデータ・セクタが記録される。円周方向において単位長さ当たりの記録ビット数を外周側と内周側でできるだけ均一にして記憶容量を増大するために磁気ディスク10は半径方向において4つのゾーン14〜17に分割されている。各ゾーン内ではデータ領域13に同一数のデータ・セクタが書き込まれるが、外周側のゾーンほどデータ領域13に含まれるデータ・セクタの数を多くして記録電流またはライト・クロックの周波数を高くしている。磁気ディスク10は、サーボ・セクタに書き込まれたサーボ・データにより同心円状に複数のデータ・トラックが定義される。
図1(B)は、典型的なデータ・トラック20のフォーマット構造を示す。データ・トラック20には、2つのサーボ・セクタ11a、11bの間にデータ・セクタ22〜25が隣接して配置されている。サーボ・セクタ11a、11bとデータ・セクタ22〜25は同一のデータ・トラック20上に配置されているが、本実施の形態で採用する記録ヘッドと再生ヘッドが分離された構造の磁気ヘッドでは、両者間にデュアル・ヘッド・オフセット(DHO)またはリード・ライト・オフセットが存在するため通常は直接的な対応関係がない。すなわち、通常はデータ・トラック20に示されたサーボ・セクタ11aは他のデータ・トラックに記録されたデータ・セクタの位置情報として利用される。
データ・セクタ25は、サーボ・セクタ11bで2つに分割され、いわゆる記録効率を高めたスプリット・セクタになっている。サーボ・セクタ11a、11bは、AGC/PLLパターン31、サーボ・アドレス・マーク(SAM )33、アドレス情報35、バースト・パターン37からなっている。
AGC/PLLパターン31は、リード/ライト・チャネルを構成する自動利得制御器(AGC)の利得を調整したり、これに続くサーボ・データの読み取りに利用するサーボ・クロックを同期させたりするために使用される。サーボ・アドレス・マーク(SAM)33は、サーボ・データの開始位置を検出しサーボ・データの再生信号を処理するタイミングやリード・ゲート信号(RG信号)またはライト・ゲート信号(WG信号)を生成するために使用される。アドレス情報35は、サーボ・セクタの円周方向の位置を示すサーボ・セクタ番号と、グレイ・コードで書き込まれた半径方向の位置を示すシリンダ番号で構成され、データ・セクタ22〜25の位置を特定するために使用される。バースト・パターンは、トラックのフォローイング動作の間に磁気ヘッドの半径方向における目標位置に対するずれを修正するために使用される。
データ・セクタ22は、プリアンブル39、同期コード(SYNC)41、データ・ブロック43、エラー訂正コード(ECC)45、およびポストアンブル47で構成されており他のデータ・セクタも同様である。プリアンブル39は20バイトで構成され、ユーザ・データの読み出し前にリード・クロックの位相および周波数をビット単位で同期させるために使用される。SYNC41は、RLL方式のパターンにはない特殊なパターンでユーザ・データの開始位置を獲得するために使用される。データ・ブロック43は、RLL方式で変調されたユーザ・データを記録する512バイトの領域である。
ECC45は、データ書き込み時にユーザ・データに基づいて生成されたリード・ソロモン符号のエラー訂正符号であり、本実施の形態では従来の54シンボルより8シンボル多くした62シンボルとなっている。1シンボルは8ビットで構成されシンボル数が多いほどエラー訂正能力が向上する。ポストアンブル47は5バイトで構成され、パーシャル・レスポンス(Partial Response)方式と最尤検出(Maximum Likelihood)方式とを組み合わせたPRMLと呼ばれる情報再生方式において最尤検出を終了させるために使用される。各データ・セクタはデータ・ブロックとその他の付加部分を含めて全体のバイト数が一定のFBAを採用している。
図2(A)は、従来のデータ・トラックのフォーマット構造で、図2(B)は本実施の形態にかかるデータ・トラックの基本的なフォーマット構造である。図1(B)で示した要素と同一の要素には同一参照番号を付与している。図2(A)の従来のフォーマット構造では、54バイトのECC45と8バイトのギャップ領域49がフォーマットされている。これに対し、図2(B)の本実施の形態にかかるフォーマット構造では、ギャップ領域49が除去されて、その8バイトの領域を追加ECC46に割り当て、ECC45は全体で62バイトになっている。そしてポストアンブル47が、隣接するデータ・セクタのプリアンブル39にギャップを介在しないで隣接して配置されている。図2(B)に示したフォーマット構造は、後に説明する記録位置規定状態で各データ・セクタが記録されたときのフォーマット構造であり、記録位置規定状態から外れた状態で記録される場合は、データ・セクタ間にギャップ領域が形成されたり、データ・セクタが部分的に重なり合ったりして異なるフォーマットなるが、それらについては後に詳しく説明する。
図3は、本発明の実施の形態にかかる磁気ディスク装置100の構成を示す概略ブロック図である。磁気ディスク装置100は、データ・セクタ単位で記録および再生が可能な直接アクセス記憶装置として構成されている。ヘッド・アンプ101は、ヘッド/スライダに形成された磁気ヘッドに接続されており、ライト・クロックに対応した記録電流を増幅してデータを記録するためのライト・ドライバ、再生信号を検出して増幅するリード・アンプ、ヘッド選択回路などが内蔵されている。ハード・ディスク・コントローラ(HDC)133がWG信号をアサートしたときは、ヘッド・アンプ101で選択された記録ヘッドに駆動電流が供給されてデータの記録が行われ、RG信号をアサートしたときまたはWG信号をネゲートしたときは選択されている再生ヘッドの下を通過する磁気記録情報が再生される。リード/ライト・チャネル103は、磁気ディスク10に記録するデータを変調してヘッド・アンプ101に出力したり、磁気ディスクから再生した信号を復調してHDC133に出力したりする。
リード/ライト・チャネル103は、ライト系回路105とリード系回路107で構成されている。ライト系回路105は、直並列変換回路115、変調回路113、および記録補償回路111を含んでいる。直並列変換回路115は、HDC133から送られたバイト単位の並列データをビット単位の直列データに変換する。変調回路113は、HDC133から送られた記録データのビット列をRLL方式の記録コードに変換する。記録補償回路111は、媒体上に記録されたデータの減磁界により後に記録するデータの磁化転移点が変化することを補正するために記録電流を流すタイミングを調整する。
リード系回路107は、アナログ信号処理回路117、アナログ/ディジタル変換回路119、ビタビ復号回路121、復調回路123、および直並列変換回路123などを含んでいる。アナログ信号処理回路117は、ヘッド・アンプ101から受け取った再生信号を処理する回路で、自動利得制御回路(AGC)や波形等価回路(イコライザ)などで構成される。アナログ/ディジタル変換回路119は、アナログ信号処理回路117から受け取ったアナログ再生信号をリード・クロックでサンプリングしてディジタル・データに変換する。リード・クロックは、再生PLL回路131から供給される。リード系回路107は、パーシャル・レスポンス(Partial Response)方式と最尤検出(Maximum Likelihood)方式とを組み合わせたPRMLと呼ばれる情報再生方式を採用している。ビタビ復号回路121は、アナログ/ディジタル変換回路119から受け取ったディジタルの再生信号から、ビタビ復号方法によってRLLコードの最尤復号系列の復号データを生成する。
復調回路123は、ビタビ復号器から受け取ったRLLコードをユーザ・データに変換する。直並列変換回路123は、ビット単位の直列データをバイト単位の並列データに変換してHDC133に出力する。再生PLL回路131は、アナログ/ディジタル変換器119から、データ・セクタのプリアンブル39を再生したクロックを受け取り、クロック・シンセサイザ127から受け取ったチャネル・クロックをこれに同期させてリード系回路107に送る。リード系回路107は、データ・セクタごとにプリアンブルの再生クロックに同期したリード・クロックで動作する。再生PLL回路131は、プリアンブルの再生クロックに同期していないときは、クロック・シンセサイザ127から受け取ったチャネル・クロックをライト系回路105に送る。ライト系回路105は、データの記録時に再生PLL回路131から送られたチャネル・クロックをライト・クロックとして利用して記録動作を行う。
HDC133は、ホスト装置、MPU137、およびリード/ライト・チャネルとの間でコマンドやデータの転送を行ったりするインターフェース145、ECC処理回路141、バッファ制御回路147、フォーマット生成回路143、およびパルス・カウンタ149を含んでいる。ECC処理回路141は、ホスト装置から転送されたデータからECCを生成したり、再生データからビット・エラーを検出してエラー訂正を行ったりする。HDC133のECC処理回路141が、再生データとECCからビット・エラーの発生位置と訂正内容を計算してエラー訂正することをオン・ザ・フライECCという。オン・ザ・フライECCでは、ECC処理回路141が、誤りが発生したビット位置と訂正値を計算しており、リード・ソロモン訂正符号では2nシンボルのECCでnバイトのエラーを訂正することができる。
したがって、オン・ザ・フライECCでは、従来のフォーマット構造(図2(A))では54バイトのECCに対して訂正能力は27バイトであり、本実施の形態にかかるフォーマット構造(図2(B))では62バイトのECCに対して訂正能力は31バイトになる。オン・ザ・フライECCの訂正能力はECCを計算する基礎になったデータとECCを含めたデータ全体について、エラーの発生個所が不明でも訂正能力以内のバイト数であれば訂正できることを意味している。オン・ザ・フライECCは、ECC処理回路141がハードウエア的に処理するので、処理時間が早く再生時間の遅延はほとんどない。オン・ザ・フライECCではエラーの回復ができない場合は再生エラーとなり、後に説明するERPでソフトウエア的に処理する。
バッファ制御回路147は、バッファ135を制御する。フォーマット生成回路143は、データ・セクタの付加部分を生成してデータの記録時にホスト装置から送られたデータとECC処理回路141が生成したECCを結合して図1(B)に示したデータ・セクタのフォーマットを形成する。パルス・カウンタ149は、サーボ・コントローラ129からサーボ・パルス(SP)を受け取ると、RG信号またはWG信号を生成するためのクロック数をカウントし、リード/ライト・チャネル103にRG信号またはRG信号を出力する。パルス・カウンタ149は、さらにリード/ライト・チャネル103にサーボ・セクタの位置でリード系回路107を動作させるサーボ・ゲート信号(SG信号)を出力する。
バッファ135は、ホスト装置と磁気ディスク装置との間でデータ転送をするときに一時的にデータを記憶する。MPU137は、HDC133からコマンドを受け取って磁気ディスク装置全体の動作を制御する。MPU137はサーボ・コントローラ129からサーボ割り込み信号を受け取るとサーボ処理を開始し、ドライバ回路139に磁気ヘッドの位置を制御するための信号を出力する。MPU137は周知の方法で検知した磁気ディスクの回転速度を規定の回転速度に維持するための信号をドライバ回路139に出力する。ドライバ回路139は、磁気ヘッドを移動させるボイス・コイル・モータや磁気ディスクを回転させるスピンドル・モータを駆動するドライバを含んでいる。基準クロック125は、水晶発振器で構成されて磁気ディスク装置内部で使用する基準クロックを生成し、クロック・シンセサイザ127は、基準クロックに基づいて磁気ディスク装置内で使用する様々な周波数のクロックを生成する。
サーボ・コントローラ129はリード系回路107から受け取ったサーボ・データに基づいてMPU137にサーボ割り込み信号や磁気ヘッドの位置情報を送る。サーボ・コントローラ129はまたSAM33を検出したタイミングでサーボ・パルス(SP)をHDC133に送る。
[記録動作]
つぎに、本実施の形態にかかる磁気ディスク装置100においてデータの記録および再生を行う方法について説明する。磁気ディスク装置100が動作を開始して、HDC133はホスト装置から記録データとライト・コマンドを受け取る。ライト・コマンドには、記録データを記録するデータ・セクタのアドレス情報が含まれている。記録データは一旦バッファ・メモリ135に記憶される。ECC処理回路141が、記録データからECCを生成し、フォーマット生成回路143が図2(B)に示したフォーマットを形成してデータ・セクタ全体のデータをリード/ライト・チャネル103に送る。ライト・コマンドはアドレス情報と共にMPU137に送られ、MPU137は、磁気ディスク装置が記録動作を開始するように制御する。HDC133は、パルス・カウンタ149を作動させて、サーボ・コントローラ129から受け取った先行する直近のサーボ・セクタに含まれるSAM33の検出信号を基準にしてクロックをカウントし、後続のサーボ・セクタのサーボ・データ開始位置でアサートしサーボ・データ終了位置でネゲートするSG信号をリード/ライト・チャネル103に送る。
SG信号を受け取ったリード/ライト・チャネル103は、リード系回路107とヘッド・アンプ101を再生モードで動作させる。サーボ・コントローラ129は、サーボ・セクタのAGC/PLL31を再生したAGC再生信号をアナログ信号処理回路117から受け取って、アナログ信号処理回路117のAGC利得を調整する。サーボ・コントローラ129は、さらに、サーボ・コントローラ内のPLL回路をAGC再生信号に同期させてサーボ・クロックを生成し、生成したサーボ・クロックでアナログ・ディジタル変換器119にサンプリング動作をさせてサーボ・セクタのSAM33およびアドレス情報35を検出する。サーボ・コントローラ129はSAM33を検出すると、サーボ割り込み信号をMPU137に送り、MPU137にサーボ処理を開始させる。サーボ・コントローラ129は、再生したサーボ・セクタのアドレス情報35をMPU137に送る。MPU137は、アドレス情報35から磁気ヘッドの現在位置を認識して、ホスト装置から受け取ったターゲット・シリンダの位置との差を計算し、ドライバ回路139にボイス・コイル・モータを制御するための信号を送る。
サーボ・コントローラ129は、SAM33を検出したタイミングでHDC133にサーボ・セクタの開始位置を示すサーボ・パルス(SP)を送る。HDC133はサーボ・パルス(SP)を受け取ると、パルス・カウンタ149が記録対象となるデータ・セクタの位置の先端が記録ヘッドに到達するまでの時間に対応したクロック数をカウントして、WG信号をリード/ライト・チャネル103のライト系回路105に送る。カウントするクロックは、クロック・シンセサイザ127より供給される。WG信号を受け取ったリート/ライト・チャネル103は、HDC133から送られた所定のフォーマットのデータ・セクタをヘッド/アンプ101を通じて磁気ディスクに記録する。
[データ・セクタの記録位置]
図4を参照してデータ・セクタの記録位置を決定する方法を説明する。本実施の形態では、図2(B)に示したようにデータ・セクタ間のギャップ領域を除去してECCのシンボル数を増大したフォーマット構造を採用する。図4(A)は、従来の磁気ディスク装置で採用する基本フォーマット構造を示す図である。2つのサーボ・セクタ1a、1bの間にデータ・セクタ2〜5がギャップ領域Gを挟んで記録されており、それらは磁気ディスクの回転により矢印A方向に移動しているものとする。データ・セクタ3を個別に記録するときは、SAMの検出に応答してサーボ・コントローラ129で生成されたサーボ・パルス(SP)の立ち上がりエッジからの経過時間Tを基準にしてHDC133がWG信号をアサートする位置が記録開始位置になる。そして、データ・セクタ全体の記録が終了してWG信号をネゲートする位置が記録停止位置になる。
データ・セクタの記録開始位置および記録停止位置を決定する要因は、経過時間Tを決めるクロックの周波数、磁気ディスクの回転速度、およびWG信号のアサートのタイミングなどを含んでいるが、磁気ディスクの回転速度が支配的である。ここでこれらの個々の決定要因がすべて規定状態にあるとき記録位置規定状態ということにする。磁気ディスクの回転速度が規定速度より速くなったり遅くなったりした状態でデータ・セクタを記録するときの記録開始位置は、規定速度における記録開始位置に対して円周方向にずれた位置になる。たとえば、磁気ディスクの回転速度が規定速度より速くなれば、データ・セクタ3はデータ・セクタ4側にシフトした位置に記録され、規定速度より遅くなればデータ・セクタ2側にシフトした位置に記録される。
記録位置規定状態におけるデータ・セクタの記録開始位置を基準記録位置ということにする。回転する磁気ディスクに対するデータ・セクタの記録開始位置を決定する要因は磁気ディスクの回転ジッタなどで基準記録位置を中心にして変動するが、変動範囲はそれぞれ所定の範囲に収まるように構成されている。変動した各要因が合成されたときのデータ・セクタの記録開始位置が、基準記録位置から最も大きくシフトするときの各決定要因の状態を記録位置許容限界状態ということにする。記録位置許容限界状態は、当該磁気ディスク装置の正常な動作範囲で許容するデータ・セクタの記録開始位置の基準記録位置に対するシフト・バイト数を与える。そして記録位置許容限界状態における記録開始位置を最大シフト記録位置といい、基準記録位置と最大シフト記録位置との差に相当するバイト数を最大シフト・バイト数ということにする。
図4(A)に示した従来のフォーマット構造では、各データ・セクタ間にギャップ領域G1、G2が、データ・セクタ2、5とサーボ・セクタ1a、1bとの間にはデータ・サーボ間ギャップ領域G1、G2が設けられている。図5(A)に示すように、図4(A)の基本フォーマットでは、最大シフト・バイト数を4バイトに設定し、データ・セクタ2およびデータ・セクタ3がともに基準記録位置に記録されたときにデータ間ギャップ領域Gが8バイトに設定されているものとする。
図4(A)に示したフォーマット構造には、最大シフト・バイト数の2倍に相当する8バイトのデータ間ギャップ領域Gが存在する。したがって、データ・セクタ2とデータ・セクタ3がともに接近するように最大シフト位置に記録されても、データ・セクタ2の後端領域とデータ・セクタ3の先端領域が重なって、後から記録したデータ・セクタが先に記録したデータ・セクタの一部を上書きすることはないようになっている。図5(A)でデータ・セクタ3が最大シフト・バイト数である4バイトだけ左方向にシフトした位置に記録され、データ・セクタ2が最大シフト・バイト数である4バイトだけ右方向にシフトした位置に記録されるとき、2つのデータ・セクタは最も近づくが、最大シフト・バイト数の2倍以上に相当する8バイト以上のデータ間ギャップ領域を設けることで、データ・セクタの部分的な上書きを回避している。
図4(B)〜(D)は、本実施の形態にかかる方法でデータ・セクタの記録位置を決定するときのフォーマットを説明する図である。図4(B)の個々のデータ・セクタは図2(B)に示したフォーマット構造と同一であるが、サーボ・セクタ11aとデータ・セクタ21の間にデータ・サーボ間ギャップ領域G1が形成され、データ・セクタ25とサーボ・セクタ11bとの間にはデータ・サーボ間ギャップ領域G2が形成されることでデータ間ギャップ領域が除去されている。図4(B)は、本実施の形態にかかる基本フォーマットの一例である。基本フォーマットとは、各データ・セクタが基準記録位置に記録されるときのフォーマットをいう。データ・サーボ間ギャップ領域G1はデータ・サーボ間ギャップ領域G2に比べて回転ジッタの影響が小さいので、バイト数を小さくすることができる。
また、図4(B)のデータ・セクタは、図2(B)に示したようにデータ間ギャップ領域に相当する分だけECC領域を追加しておりデータ・セクタ全体のバイト数は、図4(A)のデータ・セクタに比べてギャップ領域の8バイト分だけ大きくなっている。ただし、媒体に対する記録効率は図4(A)の場合と同じである。
図4(B)の基本フォーマットでは、記録位置規定状態において図4(A)と同じようにサーボ・パルス(SP)からの経過時間Tを計測してWG信号をアサートしデータ・セクタ22〜25を個別に基準記録位置に記録したときの様子を示す。各データ・セクタの後端とそれらに続くデータ・セクタの先端がギャップ領域を介在することなく相互に隣接して基準記録位置に配置されている。本明細書においては、隣接するとは、2つのデータ・セクタが重ならないでほぼライト・クロックの単位で連続している状態をいう。本実施の形態では各データ・セクタのポストアンブル47とプリアンブル39が隣接した状態で記録される。磁気ディスク装置は記録位置規定状態を維持するように制御されるので、磁気ディスクには基準記録位置を中心にした記録開始位置に各データ・セクタが記録されることになる。
隣接して記録されているデータ・セクタ22〜25の中で、データ・セクタ23を個別に更新するときに磁気ディスクに回転ジッタが発生して規定速度より速くなったときは、図4(C)に示すように、経過時間TでWG信号をアサートしても、データ・セクタ23の記録位置はデータ・セクタ24寄りになり、データ・セクタ23の後端領域がデータ・セクタ24の先端領域を上書きする。データ・セクタ23を更新するときに磁気ディスクに回転ジッタが発生して規定速度より遅くなったときは、図4(D)に示すように、経過時間TでWG信号をアサートしても、データ・セクタ23の記録位置はデータ・セクタ22寄りになり、データ・セクタ23の先端領域がデータ・セクタ22の後端領域を上書きする。
図4(B)の基本フォーマットでは、記録位置規定状態から外れた状態でデータ・セクタ23を更新すると、基準記録位置に記録されたデータ・セクタの一部を必ず上書きする。ともに記録位置許容限界状態でデータ・セクタ22とデータ・セクタ23が接近するように個別に記録されたときは、共に最大シフト・バイト数だけシフトした位置が記録開始位置になるため、図5(B)に示すように8バイトの上書き領域が発生する。2つのデータ・セクタが共に最大許容位置限界状態で接近するように個別に記録されたときに上書きされる最大のバイト数を最大上書きバイト数ということにする。
最大上書きバイト数は、基本フォーマットにおいてデータ・セクタ間にデータ間ギャップ領域を設けると異なった値となる。この場合のデータ間ギャップ領域は、本発明においては最大シフト・バイト数の2倍より小さいバイト数に設定することになる。図5(C)に示すように、基本フォーマットでデータ間ギャップ領域が2バイトになるように設定すると、データ・セクタ22とデータ・セクタ23がともに記録位置許容限界状態で接近するように個別に記録されるときには、最大上書きバイト数が6バイトになる。最大シフト・バイト数の2倍未満のデータ間ギャップ領域を含んだり、データ間ギャップ領域を設けないフォーマット構造を採用したりすると、従来のデータ間ギャップ領域との差に相当する領域に追加ECCを記録することができるので、記録容量を低下させないでECCの訂正能力を向上することができる。
データ・セクタ22〜25を連続的に記録または更新するときは、フォーマット生成回路143で形成されたフォーマットが連続してライト系回路105に送られる。そして先頭のデータ・セクタ22の位置でWG信号をアサートしデータ・セクタ25を記録してからWG信号をネゲートするため、記録位置規定状態から外れた状態であっても、最初のデータ・セクタ22の記録開始位置がシフトするだけであり、隣接したデータ・セクタあるいは最大シフト・バイト数の2倍以下のバイト数に相当する一定のデータ間ギャップ領域を挟んだデータ・セクタが記録される。隣接して記録されたデータ・セクタの一部をデータ・セクタ単位で更新するときは、更新にかかるデータ・セクタの記録開始位置は、図4(B)の基準記録位置を中心にして図4(C)および図4(D)に示す方向に正規分布するものと推定できる。
[再生動作]
つぎに、図4(C)および図4(D)に示した上書き状態のデータ・セクタを再生する方法について説明する。図4(C)のデータ・セクタ24のように先端領域のプリアンブル39が上書きされた場合は、プリアンブル39はRG信号のタイミング誤差に対する冗長部分を含んでいるので、一部のプリアンブルが再生できなくても通常はリード・リトライをすることでリード・クロックの同期をとることは可能である。ビット・エラーが発生したときは、追加ECCを含む62バイトのECCを利用してオン・ザ・フライECCでエラー・ビットが訂正される確率も高まり実用上は問題がない。従来の基本フォーマットでデータ間ギャップ領域を設けた意義は、むしろ図4(D)のようにデータ・セクタの後端領域が上書きされることを防ぐことにあった。
データ・セクタ22の後端領域が上書きされる場合は、オン・ザ・フライECCではビット・エラーを訂正できない場合があり、その場合には再生エラーが発生する。磁気ディスク装置では一般に再生エラーが発生すると、ERPプログラムを実行してその回復を図っている。ERPプログラムは磁気ディスク10の専用領域に格納され、MPU137により実行される。ERPは複数のエラー回復ステップで構成されている。ERPの各ステップは、回復の可能性が高く、かつパフォーマンスの低下を招かないような順番で構成されている。再生エラーが発生するとERPの各ステップが順次実行され、1つのステップが終了するごとにリード・リトライすなわち再読み取りが行われてエラー回復の成否が確認される。すべてのステップを実行しても再生エラーを回復できないときはハード・エラーになり当該データ・セクタのデータは再生できないことになる。
ERPのステップには、たとえば、磁気ヘッドの中心とトラック中心とのずれ量であるオフ・トラック量を変更するステップ、磁気ヘッドにMR素子を備えている場合にMR素子に与えるバイアス電流値を変更するステップがある。また、サーボ計算を省略してサーボ計算時のノイズの混入を防止するステップ、PLL回路のゲインや周波数などのパラメータを調整するステップなどがある。さらにまた、同期のために第2の同期信号を使用するセカンドSYNCステップ、サーボ・データからセクタ・パルスを検出できない場合にダミーのパルスを発生するステップ、スピンドル・モータの回転数を落としてヘッドのフライング・ハイトを下げて磁気ディスク上の異物を取り除くロー・スピン・バーニッシュといわれるステップなどがある。これらの各ステップを実行するごとにオン・ザ・フライECCでエラーの検出および訂正を行い回復の成否が確認される。また、ERPの最後の方のステップには、MPU137がソフトウエアを実行して再生エラーを訂正するイレージャ訂正がある。ERPはこれらの他にも多くのエラー回復ステップで構成されている。
図4(D)のデータ・セクタ22のように最後尾側にあるポストアンブル47の一部またはポストアンブル47の全体とECC45の一部が後続のデータ・セクタ23により上書きされた場合は、上書きされたバイト数により回復の態様は異なる。図6(A)は、8バイトのデータ間ギャップ領域と54バイトのECC45を含む従来のフォーマット構造であり、データ・セクタの最後尾側が後続のデータ・セクタにより上書きされることはない。図6(B)は、8バイトのデータ間ギャップ領域を除去して62バイトのECC45を含む本実施の形態にかかる基本フォーマットにおいて、データ・セクタ22の最後尾側にあるポストアンブル47が最大シフト・バイト数である4バイト以内の範囲でデータ・セクタ23のプリアンブル39により上書きされた様子を示している。
データ・セクタ22のECC45は、データ・セクタ22が全く上書きされていないときにオン・ザ・フライECCで31バイトのエラー訂正能力があるため、上書きにより4バイトのエラーが発生しても残り27バイトのエラー訂正能力が残ることになる。すなわちこのことは、本実施の形態にかかるフォーマット構造では上書きされる範囲が4バイト以内であれば、データ間ギャップ領域を除去しても従来のフォーマット構造で採用していた54バイトのECC以上のエラー訂正能力を発揮することができることを意味している。さらに、ポストアンブルは最尤検出方式でサンプリングされたビット・シーケンスから正しいビット値を画定するために使用するので、ポストアンブルにエラーが発生してもただちにデータのエラーに直結するものではないため、エラー訂正能力は従来のフォーマット構造に比べてさらに向上しているということができる。
図6(C)は、図6(B)に比べて上書きされる範囲が増大し、ポストアンブルが4バイト以上8バイト以下の範囲で上書きされた様子を示している。8バイトのデータ間ギャップ領域を除去したフォーマット構造では、データ・セクタ22とデータ・セクタ23がともに記録位置許容限界状態で記録または更新されたときに、最大上書きバイト数が8バイトになる。8バイトの上書きが発生すると62バイトのECC45のエラー訂正能力は、31−8=23バイトまで低下するので、27バイトの訂正能力がある従来のフォーマット構造に比べて再生エラーが発生する確率が上昇し、ERPでリード・リトライをしてもオン・ザ・フライECCでは回復できないこともあり得る。
これに対して本実施の形態では、データ・セクタ22の後端から計算した、データ間ギャップ領域Gに相当する8バイトに対してイレージャ・ポインタを設定しERPで採用している周知のイレージャ訂正で訂正する。イレージャ・ポインタは、ECCを含む再生データに対して正しい値は不明であるが誤りが発生しているバイトに関する位置情報である。ここでは、データ・セクタの後端から実際に上書きされたバイト数あるいは上書きによりエラーに至ったバイト数を無視して、最大シフト・バイト数から計算した8バイトの最大上書きバイト数をイレージャ・ポインタとして設定する。最大シフト・バイト数の2倍以下のデータ間ギャップ領域を含むフォーマット構造を採用した場合には、最大シフト・バイト数と基本フォーマットにおけるデータ間ギャップ領域のバイト数から最大上書きバイト数を計算してイレージャ・ポインタを設定する。
イレージャ訂正では、特開平2003−109382号公報に記載されているように、2nバイトのECCを付加したデータに発生した2nバイトのエラーを訂正することができる。イレージャ訂正はERPの一部としてMPU137がソフトウエアを実行して行うのでオン・ザ・フライECCに比べて時間を費やすが、エラー訂正能力がオン・ザ・フライECCの2倍になるので、後端領域が4バイトを超えて上書きされて再生エラーが発生しても従来のフォーマットより訂正能力を低下させないで回復することができる。データ・セクタの最後尾をポストアンブルではなくECCが占める場合も、同様にイレージャ・ポインタを設定してイレージャ訂正で回復することができる。イレージャ訂正は従来の磁気ディスク装置でもサーマル・アスペリティ(TA)の発生位置をイレージャ・ポインタに設定したり、データ・セクタの先頭から所定のバイト数ずつイレージャ・ポインタを設定したりするなどの方式で採用されていたが、本実施の形態ではこれらに加えて、データ・セクタの後端から最大上書きバイト数をイレージャ・ポインタに設定したイレージャ訂正をERPに追加する。データ・セクタ間に図5(C)に示したような最大シフト・バイト数の2倍以下のデータ間ギャップ領域を設けた場合は、最大上書きバイト数は8バイトより小さくなる。最大上書きバイト数が6バイトの場合は、同様に6バイトのイレージャ・ポインタを設定する。
本実施の形態にかかるフォーマットでは、データ間ギャップ領域を除去したことでデータ・セクタの後端領域が4バイトを超えて上書きされたときは、従来に比べてオン・ザ・フライECCの訂正能力が低下し、イレージャ訂正が行われる頻度が上昇してその分パフォーマンスが低下する。しかし、回転ジッタは規定速度を中心に発生しており、データ・セクタの後端領域が4バイト以上に渡って上書きされる確率は低い。またホスト装置は通常、複数のデータ・セクタを連続的にアドレス指定して磁気ディスク装置に記録するため、多くのデータ・セクタは連続的に記録または更新される。したがって、データ間ギャップ領域を除去したり、縮小したりしてもデータ・セクタの先端領域または後端領域が上書きされることは少ない。反対に、多くのデータ・セクタは隣接して記録されたり、4バイト以内の範囲で上書きされるように記録されたりするので、オン・ザ・フライECCによるエラー訂正能力が向上する。しかも、ECCを増加した領域は従来のフォーマット構造で採用していたデータ間ギャップ領域であるため、従来に比べて記憶容量が低下することもない。
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
本発明の実施の形態にかかる磁気ディスクのフォーマット構成を示す図である。 データ・トラックの従来のフォーマット構造と本実施の形態にかかるフォーマット構造を示す図である。 本発明の実施の形態にかかる磁気ディスク装置の構成を示す概略ブロック図である。 データ・セクタの記録位置を決定する方法を説明する図である。 最大上書きバイト数を説明する図である。 上書きされたデータ・セクタの再生方法を説明する図である。 従来のトラックのフォーマット構造を説明する図である。
符号の説明
10 磁気ディスク
20 データ・トラック
39 プリアンブル
45 ECC
46 追加ECC
105 ライト系回路
107 リード系回路

Claims (20)

  1. データ・トラック上に第1のサーボ・セクタと該第1のサーボ・セクタに続いて磁気ヘッドに到達する第2のサーボ・セクタが所定の間隔で書き込まれ前記第1のサーボ・セクタと前記第2のサーボ・セクタの間にそれぞれがエラー訂正符号を備える第1のデータ・セクタと第2のデータ・セクタを記録する磁気ディスクを備える磁気ディスク装置であって、
    前記第2のデータ・セクタの前端領域が前記第1のデータ・セクタの後端領域を上書きするように前記第1のデータ・セクタを記録しその後前記第2のデータ・セクタを記録する記録手段と、
    前記上書きされた第1のデータ・セクタに発生した再生エラーを回復するエラー回復プロシジャを実行する回復手段と
    を有する磁気ディスク装置。
  2. 前記第1のデータ・セクタの上書きされる後端領域がポストアンブルの一部または全体を含む請求項1記載の磁気ディスク装置。
  3. 前記第1のデータ・セクタの上書きされる後端領域が前記エラー訂正符号の一部を含む請求項1記載の磁気ディスク装置。
  4. 前記回復手段は、前記上書きされた第1のデータ・セクタに発生した再生エラーをイレージャ訂正により回復する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  5. 前記回復手段は、前記イレージャ訂正において最大上書きバイト数を前記第1のデータ・セクタの後端からイレージャ・ポインタとして設定する請求項4記載の磁気ディスク装置。
  6. 前記記録手段は、前記第1のデータ・セクタの後端領域が前記第2のデータ・セクタの先端領域を上書きするように前記データ領域に前記第2のデータ・セクタを記録しその後前記第1のデータ・セクタを記録する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  7. 前記第2のデータ・セクタの先端領域がプリアンブルであり、前記回復手段は上書きされた前記第2のデータ・セクタに発生した再生エラーを前記エラー回復プロシジャのリード・リトライとオン・ザ・フライECCにより回復する請求項6記載の磁気ディスク装置。
  8. 前記記録手段が、記録位置許容限界状態で前記第1のデータ・セクタを前記第2のデータ・セクタに近づく方向に記録し、その後記録位置許容限界状態で前記第2のデータ・セクタを前記第1のデータ・セクタに近づく方向に記録するとき前記第2のデータ・セクタの前端領域が前記第1のデータ・セクタの後端領域を必ず上書きする請求項1記載の磁気ディスク装置。
  9. 前記記録手段が前記第1のデータ・セクタを基準記録位置と最大シフト記録位置の間に記録し、その後前記第2のデータ・セクタを基準記録位置と最大シフト記録位置の間に記録するとき前記第2のデータ・セクタの前端領域が前記第1のデータ・セクタの後端領域を上書きする場合と上書きしない場合が発生する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  10. 前記記録手段が前記第1のデータ・セクタを基準記録位置に記録し、その後前記第2のデータ・セクタを基準記録位置に記録したとき、前記第2のデータ・セクタの前端と前記第1のデータ・セクタの後端が隣接する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  11. 前記記録手段は、記録位置規定状態において前記第1のデータ・セクタの後端と前記第2のデータ・セクタの前端との間に最大シフト・バイト数の2倍未満のギャップ領域を形成する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  12. 前記記録手段は、記録位置規定状態から外れた状態で前記第1のデータ・セクタと前記第2のデータ・セクタをホスト装置から送られた1つのライト・コマンドに応じて記録するとき、前記第1のデータ・セクタの後端と前記第2のデータ・セクタの前端が隣接するように記録する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  13. 前記記録手段は、前記第1のサーボ・セクタの後端と前記第1のサーボ・セクタに最も近いデータ・セクタの先端との間および前記第2のサーボ・セクタの先端と前記第2のサーボ・セクタに最も近いデータ・セクタの後端との間にギャップ領域を形成する請求項1記載の磁気ディスク装置。
  14. データ・トラック上に第1のサーボ・セクタと該第1のサーボ・セクタに続いて磁気ヘッドに到達する第2のサーボ・セクタが所定の間隔で書き込まれ前記第1のサーボ・セクタと前記第2のサーボ・セクタの間に複数のデータ・セクタを記録するデータ領域が定義された磁気ディスクを備える磁気ディスク装置であって、
    前記磁気ディスクにデータ・セクタを記録し、記録されたデータ・セクタを再生する磁気ヘッドと、
    ライト・ゲート信号に応答して前記磁気ヘッドに記録電流を供給するリード/ライト・チャネルと、
    一定周期のクロックを生成するクロック生成回路と、
    前記磁気ディスクの所定位置が前記磁気ヘッドに到達した後に、前記クロック生成回路から受け取ったクロックのカウントを開始するパルス・カウンタと、
    前記パルス・カウンタが所定のクロック数をカウントしたことに応答してプリアンブルとデータ・ブロックとエラー訂正コードとポストアンブルを含むデータ・セクタの記録を開始するように前記リード/ライト・チャネルに対してライト・ゲート信号をアサートするコントローラと、
    前記データ・セクタに発生した再生エラーを回復するためのエラー回復プロシジャを実行するプロセッサとを有し、
    前記磁気ディスク装置が記録位置規定状態から外れた状態で前記コントローラが前記ライト・ゲート信号をアサートした時に、記録するデータ・セクタの一部が記録されているデータ・セクタの一部を上書きする磁気ディスク装置。
  15. 前記上書きされるデータ・セクタの一部が前記プリアンブルの一部であり、前記プロセッサは前記プリアンブルの一部が上書きされたデータ・セクタに発生した再生エラーを前記エラー回復プロシジャのリード・リトライとオン・ザ・フライECCで回復する請求項14記載の磁気ディスク装置。
  16. 前記上書きされるデータ・セクタの一部が前記ポストアンブルの一部または全体であり、前記プロセッサは前記プリアンブルの一部または全体が上書きされたデータ・セクタに発生した再生エラーを前記エラー回復プロシジャのイレージャ訂正で回復する請求項15記載の磁気ディスク装置。
  17. 前記プロセッサは、前記イレージャ訂正において最大シフト・バイト数と基本フォーマットにおいて形成されるデータ間ギャップ領域のバイト数に基づいて計算した最大上書きバイト数をイレージャ・ポインタとして設定する請求項16記載の磁気ディスク装置。
  18. データ面サーボ方式の磁気ディスク装置であって、
    データ・セクタが相互に最大シフト・バイト数の2倍以下のデータ間ギャップ領域を介在して書き込まれる状態を基本フォーマットとする磁気ディスクと、
    前記磁気ディスクのデータ・セクタを基本フォーマットで記録するために記録位置規定状態を維持するように制御する記録位置制御手段と、
    前記記録位置制御手段が前記記録位置規定状態を維持できなくて、データ・セクタの一部が他のデータ・セクタの一部を上書きしたことにより発生する再生エラーを回復するエラー回復手段と
    を有する磁気ディスク装置。
  19. 前記基本フォーマットは、データ・セクタが相互に隣接する状態で書き込まれるフォーマットである請求項18記載の磁気ディスク装置。
  20. 前記基本フォーマットは、データ・セクタとサーボ・セクタの間にギャップ領域を形成するフォーマットである請求項18記載の磁気ディスク装置。





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