JP2007064742A - 化学チップおよび接続装置 - Google Patents

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一浩 飯田
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Abstract

【課題】 微量の液体試料を分析するための、使い捨てチップを低コスト化し、さらに、液体の漏れ出しによる汚染を回避しつつ、チップと駆動・測定装置との着脱を容易に行える、チップと接続装置の構造、ならびに、それらの製造方法の提供。
【解決手段】 化学チップの基板の一辺に沿って、略平行に設けられた複数の平面型液溜めを設ける。平面型液溜めは、チップの蓋に穴をあけることなく実現できるため、チップの製造コストが低減できる。さらに、平面型液溜めが並ぶチップの一辺を差し込むことで、各々の平面型液溜めに対して、電極が挿入され、あるいは導波路の一端が挿入され、あるいは液体の導入・吸引が可能な導管が連通するような、接続装置を提供することで、液体の漏れ出しによる汚染を回避しつつ、使い捨てチップと駆動・測定装置の着脱が容易に実現できる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、生化学的検査に利用される、化学チップと、該チップと駆動・測定用装置との接続装置、およびそれらの作製方法に関する。特に、穴のない蓋部を有する化学チップと、該化学チップと駆動・測定用装置との接続装置に関する。
生化学的検査として、例えば、採取された微量の液体試料中に含まれる溶質分子の分析を行う際、僅かな液量のサンプルの取り扱いに適する、微小容量の検査用容器の使用が必須の要件となる。この目的から、微小容量の検査用容器として、微細サイズの液溜めならびに流路で構成される「化学チップ」の利用が進められている。化学チップは、基板表面に、液溜めならびに流路となる所定パターンの凹部を形成し、その基板表面を覆う蓋部を設けることで、基板表面の凹部が、流路の下面と両側壁面を、その開口部を覆う蓋部の下面が、流路の上面をそれぞれ構成することで、例えば、上下、両側の4面で囲まれた矩形状の断面形状を有する「流路空間」が形成される。流路空間は微小であるため、正確な反応と正確な測定を実現するためには、流路空間の体積と寸法を精度良く作成する必要がある。そのため、化学チップの基板、および蓋部には、ガラス、石英、シリコン、アクリル樹脂など、変形が少ない硬質材料が好まれる。
このような硬質材料でできた化学チップ内部の流路空間に液体を導入するには、従来、蓋部に流路空間と連通する「縦穴」が設けられ、この縦穴を介して液体が導入されてきた。例えば、特開2003−114215号公報の図1、図4に例示するように、エッチングにより縦穴を設けたガラス板を、凹部が形成された基板の上に、蓋部として貼り付けることで、電気泳動チップが作製されている(特許文献1を参照)。この蓋部のガラス板に開けられた縦穴が、試料や電気泳動用緩衝液を導入する口として使われている。この蓋部に開けられた縦穴に、試料、あるいは電気泳動用緩衝液を滴下して、流路を満たした後、その縦穴に電極を挿入し、電圧を印加することにより、電気泳動を実現している。
さらに、例えば、特開2002−102681号公報の図3、図4に開示される化学チップでは、蓋部にあけた穴にステンレスパイプを装着し、チップの上面に突き出た形の、試料導入口が形成されている。この試料導入口に、核酸を含む試料と核酸増幅用の試薬液を、約5kPa程度の圧力をかけて圧入し、核酸増幅を実現している(特許文献2を参照)。
例えば、特開平8−233778号公報の図1、図3に示されるように、化学チップを利用する際、流路空間への液体試料の導入、ならびに、流路空間に導入された液体試料への電圧印加を行う部位として、従来、蓋に開けた縦穴が利用されている(特許文献3を参照)。この蓋に開けた縦穴自体が、試料や薬液などの液体の導入口、さらに電極等を装着する部位としての役割を担ってきた。
特開2003−114215号公報 特開2002−102681号公報 特開平8−233778号公報
一方、生化学検査用の化学チップは、その製造コストを可能な限り下げる必要がある。すなわち、近年、先進諸国では医療費の削減が急務となっており、生化学検査費用も例外ではない。生化学検査用のチップは、衛生上の問題から1回の測定ごとに廃棄されるため、医療費の低減のためには、チップ単体の価格を低く抑える必要がある。
しかしながら、従来の化学チップのように、液体導入口に利用する縦穴を蓋部に設ける構造を採用すると、高い加工精度が必要となる。このような高い加工精度を必要とする工程は、製造コストを高くする要因となるという問題があった。すなわち、ガラス、石英、シリコンなどの硬質材料からなる蓋部に縦穴を開鑿するためには、通常、フッ酸やTMAHなどの薬液によるエッチング工程、あるいは、ドリル、マイクロ加工用フライス盤、サンドブラスター等による機械加工工程が必要である。蓋部の材料に硬質の樹脂材料を用いる場合も、縦穴部分を設けた金型加工、あるいは、機械加工工程が必要である。これらの工程は、チップの製造コストを押し上げる大きな要因となっている。特開2002−102681号公報に示すチップ構造のように、ステンレスパイプ等を、縦穴に装着する場合、その装着工程に利用する加工装置のコストがさらに付加される。
さらに、生化学検査用の化学チップは、駆動・測定装置に、1回の測定ごとに着脱されるので、その着脱操作が容易であることが望ましい。蓋部に設けた縦穴を利用する従来の化学チップの場合、駆動・測定用装置への着脱に手間がかかるという問題があった。例えば、特開2003−114215号公報、特開2002−102681号公報に開示される化学チップの構造においては、チップと駆動装置、測定装置との接続手順では、一つ一つの縦穴に、ピペットで液体を導入し、さらに、その縦穴に電極を装着する操作が必要となる。例えば、一つ一つの縦穴に、ピペットで液体を導入する操作は、手間がかかるだけでなく、液滴の落下、飛散を起こし易く、化学チップ用の接続機構に対して、生体試料や薬液による汚染が生じ易かった。
上記特開平8−233778号公報に記載するチップ構成では、この電極接続操作を比較的簡単にする工夫が取り入れられている。その電気泳動用の化学チップでは、チップ内に内蔵される薄膜電極が予め設けられている。この内蔵型薄膜電極は、一端は、液体を導入する縦穴の内孔面に接する位置に配置し、他端は、チップの側面に露出するように形成されている。化学チップ自体は、フレームに嵌め込む形態とされている。このフレームには、チップの側面に露出する薄膜電極端に対して、押し付け接触可能な内部接触電極部を設け、この内部接触電極部とフレーム外周部に設けるコネクタ端子間をリード線で連結している。その結果、液体を導入する縦穴とフレーム外周部に設けるコネクタ端子間は、チップ内に内蔵される薄膜電極−内部接触電極部−リード線の経路を介して、電気的に接続されている。従って、液体導入口用の縦穴に電極を手操作で装着する工程に代えて、フレームに、チップを嵌め込む操作と、フレーム外周部に設けるコネクタ端子に、対応するコネクタを連結する操作によって、電圧の印加が可能となる。すなわち、液体導入口用の縦穴に電極を手操作で装着する場合と比較して、接続の手間が大幅に省かれている。しかしながら、上記特開平8−233778号公報に記載するチップ構成においても、液体導入口には、蓋部に設けた縦穴が利用されており、液体導入操作時の手間と汚染の問題は解消されていない。
以上に説明した理由で、従来の化学チップと比較して、製造コストを低減する上では、化学チップを構成する蓋部として、縦穴を設ける工程が不要な蓋部を利用する構造のチップと、この従来と異なる蓋部の構造を採用した際、この化学チップの液体導入口への電圧印加用電極の装着など、化学チップと駆動・測定用装置との着脱操作がより容易に実施できる接続機構を提供することが、化学チップを利用する生化学検査の普及を促進する上では、極めて重要である。
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、化学チップを構成する蓋部として、縦穴を設ける工程が不要な蓋部を利用する、新たな構造のチップの提供と、かかる新たな蓋部の構造を採用する化学チップに対して、該化学チップと駆動・測定用装置との着脱操作を簡便に行うことが可能な接続装置、ならびに、それらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決する手段として、化学チップに形成する流路空間へ液体を導入する際、液体導入口として、蓋部に設ける縦穴を介して、蓋部下に形成されている流路空間へ液体を導入する方式に代えて、蓋部で被覆されていない領域に、蓋部下に形成されている流路空間と連通している凹部を設け、この凹部に液体を注入し、蓋部下に形成されている流路空間と連通する接続流路を介して、液体を導入する方式が利用可能であることを見出した。その際、液体の導入を進める際、一旦、注入される液体を溜める機能を有する平面型液溜め部を設け、この平面型液溜め部は、その上面を蓋部で被覆する形態とすることで、液体導入口から液体が周囲へ漏れ出し、汚染を引き起こす現象を効果的に防止できることが確認された。また、この平面型液溜めの一部である開口部は、液体導入口として利用するのみでなく、この開口部に留まる液体に対して、電極の先端を接触させると、連通されている流路空間内に満たされている液体との電気的接続を行う接続部位としても、利用できることも判明した。あるいは、電極に代えて、光導波路の先端にプリズム部を連結し、このプリズム部を開口部に留まる液体と接触させると、連通されている流路空間内に満たされている液体との光学的接続を行うことも可能であることも判明した。
加えて、前記平面型液溜めの一部である開口部は、蓋部下に形成されている流路空間の両端、蓋部で被覆されていない領域に形成するため、例えば、流路空間に利用される凹部を形成する基板の外形を、平面形状を矩形状とする際、その一辺に近接する領域に配置することが可能である。この配置を選択する場合、この矩形状の基板の一辺を利用して、平面型液溜めの一部である開口部に、電極の先端を接触させる、あるいは、プリズム部を先端に有する光導波路を接触されることが可能な接続装置を取り付けることができることを見出した。
さらに、上記の蓋部下に形成されている流路空間の両端に、前記平面型液溜めの一部である開口部を設ける方式は、基板の両面に流路空間を作製する際にも、利用できることが確認された。本発明者らは、これら一連の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる化学チップは、
表面に流路を有する化学チップであって、
前記流路は、平面形状が矩形状の基板表面に形成される所定の平面形状を有する凹部に対して、その上面を平面形状が矩形状の蓋部で被覆してなる流路空間で構成され、
該流路の両端には、前記流路空間内への液体導入に利用する液体導入部が設けられ、
該液体導入部は、前記基板表面に形成される凹部を利用して形成される平面型液溜めと、該平面型液溜めと前記流路空間とを連通する内側連絡流路とを有し、
前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めの上面の一部は、前記蓋部で覆われており、
前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、該液体導入口として利用され、
前記開口部から導入される液体は、上面を前記蓋部で覆われている平面型液溜めの領域に一旦溜められ、その後、前記内側連絡流路を介して、前記流路空間へと導入される液体導入機構を具えている
ことを特徴とする化学チップである。その際、
前記流路の両端には設けられる液体導入部として利用される、前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状とすることが好ましい。
また、本発明の第一の形態にかかる化学チップでは、
前記流路を構成する、基板上に形成される前記凹部の底面部と、該凹部の上面を覆っている蓋部の裏面部とは、ともに、該流路の導入される液体を構成する溶媒に対して、親溶媒性の表面とされていることが望ましい。
一方、平面型液溜めと、その一部である開口部の具体的な構造は、
例えば、前記平面型液溜めの平面形状は、矩形形状であり、
前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの矩形形状の幅より、狭く選択されており、
前記内側連絡流路と、前記平面型液溜めとの連通部位は、前記矩形形状の頂点に位置している構成とすることができる。また、
前記平面型液溜めは、所定の幅を有する一定幅の領域を有しており、
前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、
前記内側連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記内側連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設けている構成とすることもできる。あるいは、
前記平面型液溜めは、所定の幅を有する一定幅の領域を有しており、
前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、
前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、
前記平面型液溜めの一定幅の領域と連通されている外部連絡流路と、該外部連絡流路の末端に連結される拡大部とで構成され、
前記外部連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、また、前記拡大部は、前記外部連絡流路の流路幅よりも拡大された幅を有する矩形状の領域であり、
前記内側連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記内側連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設け、
前記外部連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記外部連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設け、
前記平面型液溜めの、所定の幅を有する一定幅の領域と前記二つの幅が減少する過渡的領域の上面は、前記蓋部で覆われている構成を利用することも可能である。
さらに、本発明の第二の形態にかかる化学チップは、
表面ならびに裏面に流路を有する化学チップであって、
前記流路は、平面形状が矩形状の基板表面ならびに基板裏面に形成される所定の平面形状を有する凹部に対して、その上面を平面形状が矩形状の蓋部で被覆してなる流路空間で構成され、
該流路の両端には、前記流路空間内への液体導入に利用する液体導入部が設けられ、
該液体導入部は、前記基板表面に形成される凹部を利用して形成される平面型液溜めと、該平面型液溜めと前記流路空間とを連通する内側連絡流路とを有し、
前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めの上面の一部は、前記蓋部で覆われており、
前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、該液体導入口として利用され、
前記開口部から導入される液体は、上面を前記蓋部で覆われている平面型液溜めの領域に一旦溜められ、その後、前記内側連絡流路を介して、前記流路空間へと導入される液体導入機構を具えている
ことを特徴とする化学チップである。その際、
前記流路の両端には設けられる液体導入部として利用される、前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状とすることが好ましい。
また、本発明の第二の形態にかかる化学チップでも、
前記流路を構成する、基板上に形成される前記凹部の底面部と、該凹部の上面を覆っている蓋部の裏面部とは、ともに、該流路の導入される液体を構成する溶媒に対して、親溶媒性の表面とされていることが望ましい。
加えて、本発明は、上記構成を有する本発明の第一の形態にかかる化学チップに専ら利用される接続装置の発明を併せて提供しており、すなわち、
本発明の第一の形態にかかる接続装置の一つは、
表面に流路を有する化学チップにおいて、前記流路に満たされている液体に対して、電気的接続を達成する機能を有する接続装置であって、
該接続装置により電気的接続がなされる前記化学チップは、上記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状の本発明の第一の形態にかかる化学チップであり、
前記電気的接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、
該接続装置は、
前記矩形形状の基板の一辺において、
該基板の裏面と接する底板と、
該基板の一辺の端と接する固定部と、
前記電気的接続部材として機能する電極と、
該電極を保持し、該電極の先端を基板の表面に接する配置とする機能を有するひさし部とを具えている
ことを特徴とする接続装置である。
本発明の第一の形態にかかる接続装置の一つは、
表面に流路を有する化学チップにおいて、前記流路に満たされている液体に対して、光学的接続を達成する機能を有する接続装置であって、
該接続装置により光学的接続がなされる前記化学チップは、上記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状の本発明の第一の形態にかかる化学チップであり、
前記光学的接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
該接続装置は、
前記矩形形状の基板の一辺において、
該基板の裏面と接する底板と、
該基板の一辺の端と接する固定部と、
前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路と、
該導波路を保持し、前記導波路先端のプリズム部を基板の表面に接する配置とする機能を有する導波ひさし部とを具えている
ことを特徴とする接続装置である。
本発明の第一の形態にかかる接続装置の一つは、
表面に流路を有する化学チップに対して、前記流路への液体の導入が可能な、液体導入用接続を達成する機能を有する接続装置であって、
該接続装置により液体導入用接続がなされる前記化学チップは、上記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状の本発明の第一の形態にかかる化学チップであり、
前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
該接続装置は、
前記矩形形状の基板の一辺において、
該基板の裏面と接する底板と、
該基板の一辺の端と接する固定部と、
前記液体導入用接続部材として機能する、接続流路とその先端に設ける接続流路開口部と、
該接続流路を保持し、前記接続流路先端の接続流路開口部を前記基板の表面に設ける開口部上に配置とする機能を有する液体導入用ひさし部とを具えている
ことを特徴とする接続装置。
本発明の第一の形態にかかる接続装置の一つは、
表面に流路を有する化学チップに対して、前記流路への液体導入が可能な液体導入用接続を達成する機能と、前記流路に満たされる液体に対して、光学的接続ならびに電気的接続を達成する機能とを有する接続装置であって、
該接続装置により液体導入用接続がなされる前記化学チップは、上記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状の本発明の第一の形態にかかる化学チップであり、
前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
前記電気的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、かつ、
前記光学的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
該接続装置は、
前記矩形形状の基板の一辺において、
該基板の裏面と接する底板と、
該基板の一辺の端と接する固定部と、
前記液体導入用接続部材として機能する、導管とその先端に設ける導管開口部と、
前記電気的接続部材として機能する電極と、
前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路と、
該導管ならびに、先端にプリズム部を連結されている導波路と電極を一体として保持し、前記導管先端の導管開口部を前記基板の表面に設ける開口部上に配置とする機能、ならびに、該電極の先端と前記導波路先端のプリズム部とを基板の表面に接する配置とする機能を有する複合型ひさし部とを具えている
ことを特徴とする接続装置である。
加えて、本発明は、上記構成を有する本発明の第二の形態にかかる化学チップに専ら利用される接続装置の発明を併せて提供しており、すなわち、
本発明の第二の形態にかかる接続装置は、
表面ならびに裏面に流路を有する化学チップに対して、前記表面ならびに裏面の流路へ同時に液体の導入が可能な液体導入用接続を達成する機能、前記流路に満たされる液体に対して、光学的接続を達成する機能、あるいは、電気的接続を達成する機能のいずれかを有する接続装置であって、
該接続装置により、液体導入用接続、光学的接続、あるいは電気的接続がなされる前記化学チップは、上記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている形状の本発明の第二の形態にかかる化学チップであり、
前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
前記電気的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、かつ、
前記光学的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
該接続装置は、
前記矩形形状の基板の一辺において、
該基板の一辺の先端と接する底板と、
該基板の表面と裏面を覆っている二つの蓋部とそれぞれ接する一対のガイド部と、
前記液体導入用接続部材として機能する、導管とその先端に設ける導管開口部、前記電気的接続部材として機能する電極、あるいは、前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路の少なくとも一つと、
該導管ならびに、先端にプリズム部を連結されている導波路と電極を一体として保持可能であり、前記導管先端の導管開口部を前記基板の表面または裏面に設ける開口部上に配置とする機能、あるいは、該電極の先端または前記導波路先端のプリズム部を基板の表面または裏面に接する配置とする機能を有する、一対の回転ひさし部とを具えている
ことを特徴とする接続装置である。
本発明にかかる化学チップでは、チップ内に形成される液体流路は、基板の表面に形成される凹部に対して、その凹部を覆うように基板表面に配置される蓋部で構成されており、この流路内への液体導入は、流路の底部、側壁部となる前記凹部の表面、流路の上面となる蓋部裏面に対して、液体が所定の濡れ性を有することを利用して、毛細管現象に類する輸送機構を利用して行われる。その際、該流路の両端に設ける液体導入部として、基板の表面に形成される所定の平面形状を有する凹部の平面型液溜めと、チップ内に形成される液体流路と平面型液溜めとを連通させる内側連絡流路を設け、この内側連絡流路と、平面型液溜めの上面の一部も、前記蓋部で覆われた形態としている。残る蓋部で覆われていない平面型液溜め部分である、開口部を、この平面型液溜めへの液体導入口をして利用することで、チップ内に形成される液体流路への液体導入を可能としている。従って、化学チップを構成する蓋部は、液体導入用の液溜め等に従来利用されていた縦穴を設けていない構造とでき、蓋部の微細加工を必要としない化学チップの作製工程となり、製造コストの低減化に大きな寄与を有する。また、前記蓋部で覆われていない開口部は、チップの基板上、その一辺に近接する位置に配置でき、特には、チップ上に複数個の流路を作製する際、流路の両端に設ける液体導入部、すなわち、平面型液溜めとその開口部複数個が、基板の一辺の概ね平行して、一列に整列ように配置することが可能となる。本発明にかかる接続装置は、基板の一辺の概ね平行な列状の配置する開口部複数個に対して、駆動・測定用装置との間の接続を行う接続装置とするため、該基板の一辺を差し込むことで、開口部複数個に対して一括して接続操作が簡便になされる構成となっている。
以下に、本発明にかかる化学チップ、該化学チップと駆動・測定用装置との着脱操作に利用される接続装置、ならびに、それらの製造方法について、より詳しく説明する。
(第一の形態)
本発明の第一の形態にかかる化学チップの構造について、図を参照して詳細に説明する。
本発明の第一の形態にかかる化学チップは、基板001の表面に所望の流路パターンに従って形成された凹部と、その凹部を覆うように基板001表面に配置される蓋部002で構成されている。この上面を蓋部002の底面により覆われている、基板001表面の凹部が、該化学チップの液体流路として使用される。すなわち、本発明の第一の形態にかかる化学チップは、チップ内に形成されている液体流路は、基板001の表面側のみに配置され、基板001の表面を上向きに配置する状態で使用される。この化学チップの液体流路自体は、基板001表面に形成されている凹部の底面と両側壁面、該凹部の上部開放部を覆う蓋部002の底面によって気密に囲われた空間となっている。この流路領域への液体試料の供給は、液体流路の末端に内側連絡流路032を介して連通されている、平面型液溜め003からなされる。
図1は、本発明の第一の形態にかかる化学チップにおける液体導入部の構成例を模式的に示す図である。本発明の第一の形態にかかる化学チップにおける液体導入部の平面形状について、三種の態様を図1の(A)、(C)、(D)にそれぞれ示す。
図1の(A)は、第一の実施態様で利用される液体導入部の平面形状を示す平面図であり、図1の(B)は、この液体導入部の断面形状を示す断面図である。第一の実施態様において、液体導入部は、基板001の表面に設けられている、平面型液溜め003と内側連絡流路032用の凹部、ならびに、蓋部002とで構成されている。内側連絡流路032の上面および、平面型液溜め003の上面の一部は、蓋部002により覆われており、平面型液溜め003は、その上面のうち、蓋部002で覆われていない開口部031において、外界と連通されている。内側連絡流路032は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間と、平面型液溜め003の一端とを連結している。蓋部002には、縦穴などの付加的な構造は全く設けられておらず、化学チップ内に形成されている液体流路の空間は、その液体流路の末端に内側連絡流路032を介して連通されている、平面型液溜め003を経由し、この平面型液溜め003の他端に存在する開口部031によって、外界と連通されている。
化学チップ内に形成されている液体流路の空間への液体導入は、該開口部031から、試料溶液や薬液などの液体を平面型液溜め003に注入することでなされる。平面型液溜め003に注入される液体は、平面型液溜め003の一端に連結されている内側連絡流路032を経て、液体流路の空間へと浸入していく。その際、内側連絡流路032と液体流路の空間を占めている気体(空気など)は、その液体流路空間の他の端に設けられている別の開口部031から、外界へと排出される。化学チップ内に形成されている液体流路の空間が液体で満たされた時点で、開口部031から平面型液溜め003への液体の注入を停止する。その結果、内側連絡流路032を介した液体流路の空間への更なる液体の浸入は生じず、余剰の液体は、平面型液溜め003に溜まった状態で保持される。
平面型液溜め003は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間へ液体を供給する際、一時的に、開口部031から注入される液体を溜める、リザーバーとしての機能を有する。特に、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域が、主にリザーバーとして機能するため、かかる領域の容量は、前記リザーバーの機能に適する範囲に選択される。図1の(A)に示す態様では、平面型液溜め003全体は、幅W、長さ(L1+L2)の矩形形状の面積S1+2=W×(L1+L2)と、凹部の深さDを有して、その容積V1+2は、V1+2=W×(L1+L2)×Dであるが、その上面が蓋部002により覆われている領域部分(S1=W×L1)の容積V1は、V1=W×L1×Dである。この容積V1を、前記リザーバーの機能に適する範囲に選択する。一方、開口部031は、液体導入口として利用されるため、その幅W、長さL2の矩形形状のサイズは、液体導入の操作に適するサイズに選択する。従来の蓋部に形成される縦穴を液体導入口として利用していた際には、この縦穴の直径dは、液体導入用のマイクロシリンジの針管径に応じて選択されていたが、この矩形形状の開口部031を液体導入口として利用する際には、その幅W、長さL2は、前記縦穴の直径dよりの大きく選択することにより、液体導入操作は、より簡単となる。
この開口部031からは、平面型液溜め003に保持されている液体中に含まれる溶媒の蒸散が進行する。その溶媒の蒸散速度は、該矩形形状の開口部031の面積S2=W×L2に比例する。不必要に速く溶媒の蒸散が進むと、平面型液溜め003に保持されている余剰の液体の組成(溶質濃度)が許容範囲を超えて変化する。この開口部031からの溶媒蒸散に起因する、液体の組成(溶質濃度)変化を許容範囲に留めるためには、矩形形状の開口部031の幅W、長さL2は、液体導入操作の簡便さを損なわない範囲で、可能な限り小さく選択することが望ましい。
さらには、この開口部031は、例えば、化学チップ上に形成されている液体流路に導入された液体試料に対して、電圧を印加する電極の装着部としても利用されるため、その用途に適するサイズ(幅W、長さL2)を選択することが必要となる。開口部031を利用して、駆動・測定用装置との接続を行う際、基板001の端から、開口部031への距離を短くすると、電圧を印加する電極の装着用機構の構成をより簡便に行える。すなわち、基板001の端部(一辺)と、矩形形状の開口部031の端部(一辺)を平行に配置し、その間隔L3は、小さくすることが望ましい。なお、この開口部031と基板001の端部(一辺)との間の領域は、その上面には、蓋部002で覆われてなく、この領域の化学チップ自体の機械的強度は、基板001のみで保持される。従って、基板001の端部(一辺)と、矩形形状の開口部031の端部(一辺)の間隔L3は、この領域の化学チップ自体の機械的強度を所望の範囲に保つ上で必要となる下限以上に選択する必要がある。
内側連絡流路032は、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域に溜まった液体を、化学チップ上に形成されている液体流路の空間へと導く連絡路として機能する。この液体が浸入する過程において、この内側連絡流路032を液体が進行する機構として、毛細管現象に類する液体の輸送過程が好適に利用される。従って、内側連絡流路032の断面形状は、基板001の表面に形成された、幅W1、深さDの凹部に対して、その上面を平坦な蓋部002で気密に覆い、小さな矩形断面の細い管状とする。その際、幅W1、深さDの凹部の底面、両側壁面、ならびに、上面となる蓋部002の底面は、輸送される液体を構成する溶媒に対して、良好な濡れ特性を示すことが望ましい。この内側連絡流路032の底面、両側壁面に利用される、基板001の表面に形成された深さDの凹部は、平面型液溜め003に利用する凹部と一体に形成されている。その際、内側連絡流路032部分の幅W1を基準として、平面型液溜め003部分の幅Wは、少なくとも、幅W1の数倍以上に選択され、好ましくは、幅W1の10倍〜20倍程度(20≧(W/W1)≧10)の範囲に選択することが望ましい。また、内側連絡流路032部分の凹部の深さDは、化学チップ内に形成されている液体流路の空間を構成する凹部の深さD0と、原則的に等しく設定する。この基板001の上面に形成される凹部の断面形状は、基板001のエッチング加工、微細な型成形により形成されるため、凹部の幅に対する、その深さの比率(アスペクト比)は、例えば、内側連絡流路032部分の凹部にたいしても、比率D/W1は、1を超えない範囲に選択することが望ましい。好ましくは、比率D/W1は、1≧(D/W1)≧1/10の範囲、より好ましくは、1/3≧(D/W1)≧1/7の範囲に選択する。
内側連絡流路032部分の凹部の深さDは、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を液体が浸入する際、凹部の底面、両側壁面、ならびに、上面となる蓋部002の底面のいずれとも密に接する状態を達成するように設定する。従って、化学チップ内に形成されている液体流路の空間に導入される液体の粘性度(流動度)、表面張力、さらには、凹部の底面、両側壁面、ならびに、上面となる蓋部002の底面に対する、当該液体の濡れ性に応じて、この凹部の深さDを適宜選択することが好ましい。
図1の(A)、(B)に示す形状の第一の実施態様において、該化学チップを構成する基板001、蓋部002の材料としては、ガラス、石英、シリコンなどの無機硬質材料、あるいはアクリル樹脂、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、硬質塩化ビニル、ポリエチレンンテレフタレート、ポリカーボネートなどの硬質樹脂材料が好適に用いられる。一方、化学チップ内に形成されている液体流路の空間に導入される液体は、生化学的な検査の対象となる試料溶液、薬剤溶液は、水溶液の形態とされ、その液粘度、表面張力は、利用されている緩衝溶液の粘度、表面張力と同程度、また、上記材料に対する濡れ性も、利用されている緩衝溶液の示す濡れ性と同程度である。
例えば、生化学的な検査において利用される、水溶媒を用いた緩衝溶液、試料溶液などが、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を進行する際、この内側連絡流路032部分の凹部の深さD、ならびに、化学チップ内に形成されている液体流路の空間を構成する凹部の深さD0は、10〜100μmの範囲に選択することが好ましい。この凹部の深さDの範囲(100μm≧D≧10μm)に対して、内側連絡流路032部分の凹部の幅W1は、50〜500μmの範囲(500μm≧W1≧50μm)に選択することが望ましい。
さらに、内側連絡流路032部分の凹部の幅W1(500μm≧W1≧50μm)を基準として、平面型液溜め003部分の凹部の幅Wは、0.5mm〜10mm程度(10mm≧W≧0.5mm)に設定することが好ましい。さらに、凹部の幅W(10mm≧W≧0.5mm)を基準として、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域の長さL1は、1〜10mm程度(10mm≧L1≧1.0mm)に選択することが好ましい。その結果、内側連絡流路032部分の凹部の断面積に対応するように、この平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域の容積V1=W×L1×Dは、5nL〜10μLの範囲に選択することが可能である。
また、基板の端からの開口部031までの距離L3は、平面型液溜め003部分の凹部の幅W(10mm≧W≧0.5mm)を基準として、かかる部分の機械的強度を保持するように選択され、前記凹部の幅W(10mm≧W≧0.5mm)に対して、L3は、およそ0.1〜5mm(5mm≧L3≧0.1mm)の範囲に選択することが望ましい。一方、この開口部031の長さL2は、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域の長さL1、その凹部の幅Wをも考慮に入れ、液体の導入操作、あるいは、駆動・測定用装置との接続を行う際、電圧を印加する電極の装着操作を容易に行う上で、適するサイズ(幅W、長さL2)を選択することが必要となる。具体的には、前記凹部の幅W(10mm≧W≧0.5mm)に対して、開口部031の長さL2は、0.5〜10mm程度(10mm≧L2≧0.5mm)に選択することが望ましい。
図1の(A)に開示している第一の実施態様では、矩形形状の平面型液溜め003部分に対して、その矩形の頂角部分に、内側連絡流路032が連結されている。液体導入口として利用する、開口部031から液体を導入した場合、その開口部031における液体の導入位置から、液体は濡れ拡がりつつ、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域へと浸入する。その浸入した液体の液面形状は、平面型液溜め003部分の凹部の底面、側壁面に対する濡れ性、蓋部002の底面に対する濡れ性、ならびに、該液体の表面張力に依存する。この平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域に浸入した液体の液面形状によっては、内側連絡流路032が連結されている頂角部分に、液面の先端が達した時点で、残る一つの頂角部に、液体による浸入がなされず、気泡が閉じ込められた領域が生じる場合がある。この閉じ込められた気泡は、温度が上昇すると、体積膨張を起こし、その結果、平面型液溜め003に溜まっている液体の一部が、開口部031から外部へ押し出される場合がある。
開口部031における液体の注入速度の適正化を行うことで、この頂角部分に閉じ込められる気泡の体積を実質的にゼロとすることができ、気泡の閉じ込めに起因して、液体の一部が、開口部031から外部へ押し出されるという不具合は、通常、回避することが可能である。
図1の(C)に示す、第二の実施態様では、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域の形状を、内側連絡流路032と連結される位置を、この平面型液溜め003の凹部の幅Wに対して、その中央に相当する配置に選択し、また、その連結部位に対して、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を設けている。この徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を設けることで、内側連絡流路032が連結されている頂角部分に、液面の先端が達した時点で、残る二つの頂角部に、液体による浸入がなされず、気泡が閉じ込められた領域が生じる可能性を大幅に低減している。すなわち、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域へと浸入した際、平面型液溜め003を構成する凹部の側壁面に接する液体の液面形状は、この凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存し、その接触角θ0と等しい角で側壁面と接する。徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分が開始する位置に形成される、二つの頂角部の角度θが、前記の接触角θ0よりも大きい(θ>θ0)場合には、この二つの頂角部に液面の先端が達した時点では、内側連絡流路032が連結されている頂角部分には、液面の先端は達していない。その後、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を液面が進んで、最終的に、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域全体を液体が満たした状態のなった時点で、内側連絡流路032が連結されている頂角部分に、液面の先端が達する。従って、図1の(C)に示す第二の実施態様では、凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存してきまる、その接触角θ0を基準として、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分が開始する位置に形成される、二つの頂角部の角度θを、前記の接触角θ0よりも大きい(θ>θ0)範囲に設定する。
この徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分の長さLdは、前記の接触角θ0が90°を超えている場合、Ld>(1/2)×W×tan(θ0−90°)となるように選択する。凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存してきまる、前記接触角θ0が、90°を大きく超え、θ0>165°となる場合、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を液体が浸入することは極く稀にしか起こらない。すなわち、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を液体が浸入することが可能である場合、接触角θ0が90°を超えていても、165°>θ0>90°の範囲となっている。従って、この接触角θ0(165°>θ0>90°)に対応させて、過渡的部分の長さLdを、幅Wの1/3倍〜2倍程度((1/2)×4≧(Ld/W)≧(1/2)×(2/3))の範囲に選択することが好ましい。
図1の(D)に示す、第三の実施態様では、液体導入部について、平面型液溜め003と、その外に設ける外側連絡流路034と拡大部33とに分割し、この平面型液溜め003は、その上面全てを蓋部002により覆われている領域とし、開口部31の機能は、その外に設ける外側連絡流路034と拡大部33によって達成している。この外側連絡流路034と拡大部33は、基板001の表面に形成された深さDの凹部で構成されており、拡大部33に、液体の導入がなされ、外側連絡流路034を介して、平面型液溜め003へと輸送される。次いで、平面型液溜め003の全領域が液体で満たされた時点で、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分の先端に連結されている内側連絡流路032に、液面の先端が到達する構造となっている。
なお、化学チップ上に形成されている液体流路の空間の他の端にも、同様の形状の液体導入部が形成されており、液体流路の空間を満たした後、内側連絡流路032を介して、平面型液溜め003へと液体は浸入する。その後、平面型液溜め003の全領域が液体で満たされた時点で、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分の先端に連結されている外側連絡流路034に、液面の先端が到達する構造となっている。最終的に、この他端に設けられている外側連絡流路034を介して、拡大部33へ液体が達する。液体の導入操作は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間を満たした後、他端に設ける液体導入部の、外側連絡流路034と拡大部33に液体が達した時点で終了する。
この図1の(D)に示す第三の実施態様では、平面型液溜め003に対して、内側連絡流路032と外側連絡流路034とが連結される部分は、ともに、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分とすることによって、その上面全体が蓋部002により覆われている平面型液溜め003に、気泡が閉じ込められることを防止している。
基板001の表面に形成された深さDの凹部で構成される外側連絡流路034の幅W2は、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この外側連絡流路034を通過し、液体が平面型液溜め003へと浸入することが可能であるように設定する。通常、この外側連絡流路034の幅W2は、内側連絡流路032部分の凹部の幅W1と等しい構造を選択する。一方、拡大部33は、その幅W4、長さL4の矩形形状に形成する。拡大部33の幅W4は、外側連絡流路034の幅W2より有意に広く選択し、但し、平面型液溜め003の幅Wよりは狭い範囲に選択する。すなわち、平面型液溜め003の幅W(20≧(W/W1)≧10)を基準として、拡大部33の幅W4は、その4/5倍〜1/2倍程度(4/5≧(W4/W)≧1/2)の範囲に選択する。一方、この拡大部33の長さL4は、平面型液溜め003の蓋部002により覆われている領域の体積Vをも考慮に入れ、液体の導入操作、あるいは、駆動・測定用装置との接続を行う際、電圧を印加する電極の装着操作を容易に行う上で、適するサイズ(幅W4、長さL4)を選択することが必要となる。具体的には、前記平面型液溜め003の凹部の幅W(10mm≧W≧0.5mm)に対して、拡大部33の幅W4は、8〜0.4mm程度(8mm≧W4≧0.4mm)、長さL4は、8〜0.4mm程度(8mm≧L4≧0.4mm)に選択することが望ましい。
図1の(D)に示す第三の実施態様では、蓋部002は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間の上面、内側連絡流路032と平面型液溜め003の上面、ならびに、外側連絡流路034の上面の相当部分を覆う形態とされている。一方、外側連絡流路034の上面の残る部分と、拡大部33は、蓋部002で覆われてなく、外界と連通している。そのため、この外側連絡流路034の一部と、拡大部33に残留している液体からは、その溶媒の蒸散が起こり、この領域では、余剰の液体の組成(溶質濃度)が変化する。すなわち、溶媒の蒸散に付随して、この領域では、余剰の液体中に含まれる溶質濃度が上昇するが、平面型液溜め003と拡大部33との間は、幅W2の狭い外側連絡流路034で連通されているので、この溶質濃度勾配に起因する、平面型液溜め003内への溶質の拡散量は僅かに抑えられる。すなわち、図1の(A)に示す第一の実施態様、あるいは、図1の(C)に示す第二の実施態様では、開口部031からの溶媒蒸散に起因する、液体の組成(溶質濃度)変化が生じると、その溶質濃度勾配に起因して、上面を蓋部002で覆われている領域に保持されている液体の組成(溶質濃度)変化と比較して、図1の(D)に示す第三の実施態様では、平面型液溜め003中に保持されている液体の組成(溶質濃度)変化は、大幅に抑制される。また、平面型液溜め003から、外側連絡流路034を介して、溶媒の蒸散により、液面は低下した拡大部33へと液体の逆送も、制限されるため、平面型液溜め003中に保持されている液体の減少も大幅に抑制される。
本発明の第一の形態にかかる化学チップにおいて、チップ内に形成されている液体流路の構成例について、その平面形状を図2の(A)、(B)、(C)に模式的に示す。
図2の(A)に示す実施態様の化学チップでは、基板001は略長方形であり、その一辺に略平行な方向に、複数本の流路006が形成されている。各流路006の途中には、必要に応じて、単数もしくは複数個の反応槽005が設けられ、流路006の両端には、上記の液体導入部を具えている平面型液溜め003が、それぞれ、基板001の一辺に隣接する位置に整列するように作られる。蓋部002は、穴等の構造をもたない略長方形の平板状部材であり、例えば、図1の(A)に示す構成の液体導入部を採用している場合、開口部031を残して、流路006、反応槽005、ならびに、内側連絡流路032と平面型液溜め003の相当部分を覆うように、基板001に接合される。基板001の一辺に隣接する位置に整列するように配置されている開口部031に対して、その基板001の一辺は、本発明の第一の形態にかかる化学チップへの液体の導入、ならびに、駆動・測定用装置との接続を行う際、電極や導波路の設置等に利用される部分であり、着脱部甲007と呼ぶ。
図2の(A)に示す化学チップの液体流路構成の場合、流路006の流路空間は、基板001の表面に形成された凹部の底面、両側壁面、ならびに、その上面を覆う蓋部002の底面で構成される気密な壁面で取り囲まれ、外界と連通する部位は、その両端に配置される開口部031のみである。すなわち、この流路006の流路空間へ液体を導入する際には、流路006の一方の端にある開口部031から液体を導入し、この流路空間を占めている気体を、他端にある開口部031から外界へ排出する形態となる。仮に、両方の端から液体の導入を図ろうとしても、当初、流路006を満たしていた気体の逃げ道が塞がれているため、流路006の流路空間を液体で満たすことはできない。
本発明にかかる液体導入部の構成では、開口部031から導入される液体は、平面型液溜め003を満たした後、内側連絡流路032を介して、内部の流路006の流路空間へと浸入していくが、その液体の輸送は、毛細管現象に類する液体の輸送過程によっており、一端から導入した液体が、流路006を満たして他端に至るのには、その流路全長に応じて、ある程度の時間を要する。
図2の(B)に示す化学チップの液体流路構成の場合、流路006の流路空間に対して、その途中に、流路006を跨ぐように導気路004が設けられている。この導気路004は、その両端は、基板001の残る二辺に隣接する位置において、蓋部002で覆われていない開放部を有する形状となっている。すなわち、この導気路004の両端部も外界と連通されている。この図2の(B)に示す化学チップの液体流路では、流路006の一方の端にある開口部031から液体を導入すると、導入される液体は、平面型液溜め003を満たした後、内側連絡流路032を介して、内部の流路006の流路空間へと浸入していくが、この導気路004との交差部位までの流路空間を液体で満たす間は、当初、流路006を満たしていた気体は、導気路004を経由し、その両端から外界へと排出される。導気路004と流路006との交差部分は、凹部の底面のうち、流路006として使用する狭い幅の部分は、液体に用いる溶媒に対して、親溶媒性を示す表面領域とし、それ以外の導気路004部分を構成する凹部の底面と側壁面は、疎溶媒性を示す表面領域とされている。従って、導気路004と流路006との交差部分では、浸入してきた液体は、この狭い幅の親溶媒性を示す表面領域を濡らすが、それ以外の疎溶媒性を示す表面領域へと濡れ拡がることはできず、結果として、流路006として使用する狭い幅の部分のみに液体が保持される状態となる。
そのため、流路006の両端に設ける、開口部031から液体を導入し、平面型液溜め003を満たした後、内側連絡流路032を介して、内部の流路006の流路空間へと浸入し、この導気路004と流路006との交差部分に達する間に要する時間が一致するように、該交差部分の位置を設定すると、流路006の両端に設ける、開口部031から同時に液体を導入し、双方から注入された液体が、その交差部分で会合する状態となる。その際、流路006全体を液体で満たすに要する時間は、流路006の両端に設ける、開口部031から液体を同時に導入し、導気路004と流路006との交差部分において、浸入していた双方の液体が会合するまでの時間となり、前記図2の(A)に示す化学チップの液体流路構成における流路を満たすに要する時間を略半減することも可能である。
上記図2の(A)に示す化学チップの液体流路構成の場合、流路006の流路空間は、直線状に配置され、流路006の両端に設ける二つの開口部031は、それぞれ基板001の対向する辺に近接して配置されている。一方、流路006の流路空間を、その途中において、屈曲部を設け、全体として「コの字型」の流路配置を選択することも可能である。この「コの字型」の流路配置の流路006の両端に設ける二つの開口部031は、基板001の同じ一辺に近接して、配置されることになる。
この「コの字型」の流路配置の流路006に対して、上記図2の(B)に示す化学チップの液体流路構成において利用している、流路006を跨ぐように形成される導気路004を付加する際には、図2の(C)に示す化学チップの液体流路構成が利用できる。
図2の(B)に示す化学チップの液体流路構成は、同一のチップ内に形成されている複数の流路006に対して、流路006を跨ぐように配置される、一つの導気路004を共用するため、各流路006について、流路006の両端に設ける、開口部031から液体を同時に導入し、導気路004と流路006との交差部分において、浸入していた双方の液体が会合するまでの時間を揃える必要がある。仮に、複数の流路006のうち、外側に配置される流路006が、その内側に配置される流路006よりも、早く、交差部分において、浸入していた双方の液体が会合すると、この流路を満たした液体が、導気路004を閉塞してしまい、その後は、導気路004を介して、その両端から気体が外界へと排出する経路は閉ざされることになる。そのため、例えば、同一のチップ内に形成されている複数の流路006に対して、その中央に配置されている流路に対して、液体の導入を行い、その後、順次その外に配置されている流路に液体を導入していくといった、一定の順序に従って、各流路への液体の導入を行うことが必要となる。
一方、図2の(C)に示す化学チップの液体流路構成では、対向する辺に配置する、二つの「コの字型」の流路配置の流路006間で、一つの導気路004を共用するが、各「コの字型」の流路配置の流路006は、導気路004の両端に設ける開放部のうち、それぞれに辺に配置される開放部を専用する形態となっている。従って、共用している他の「コの字型」の流路配置の流路006における液体の導入状態によって、影響を受けないものとなっている、換言するならが、全ての流路に対して、その液体の導入時期は、自由に設定できる利点を有するものとなっている。
次に、本発明の第一の形態にかかる化学チップの製造方法について、前記図2の(A)、図2の(B)、図2の(C)に示す流路構成を例に挙げて、詳細に説明する。
図2の(A)に示す流路構成の化学チップでは、各流路0006、反応槽005、ならびに、内側連絡流路032と平面型液溜め003となる、基板001の表面に形成される凹部は、基板001の材料として無機硬質材料であるガラス、石英、シリコン等を利用する場合、一般的な光リソグラフィー技術とエッチング技術により形成することができる。すなわち、基板001として使用する無機硬質材料基板の表面と裏面に、エッチング液に耐性のある光レジスト(例えば、OMRレジスト、東京応化工業)を塗布した後、該凹部の平面形状パターンの光マスクを用いて、基板表面に塗布されている該光レジスト膜の露光を行う。露光後、現像することで、基板表面は、目的とする凹部の平面形状パターンの開口部を有する光レジストで被覆された状態、基板裏面は、全面が光レジストで被覆された状態とする。この光レジストをエッチングマスクとして利用し、基板をエッチング液に所望の時間、浸漬することで、前記平面形状パターンの開口部のみを所望の深さ選択的にエッチングを施す。次いで、基板を光レジスト除去液(例えば、OMRリムーバー、東京応化工業)に浸けて、光レジストを完全に除去することで、表面に目的の平面形状の開口部と深さを有する凹部が形成された基板001を得る。
図2の(B)、図2の(C)に示す流路構成の化学チップでは、各流路0006、反応槽005、内側連絡流路032と平面型液溜め003、ならびに、導気路004となる、基板001の表面に形成される凹部を、上記無機硬質材料基板に対する選択的なエッチング法を利用して、同様の手順で形成する。次いで、流路006と導気路004の交差点部分を除き、導気路004に利用される凹部の底面と側壁面の表面に疎溶媒性処理を施す。例えば、疎水性処理を施す際には、基板001の表面に、光レジスト(例えば、S1818、ロームアンドハース)を塗布し、疎水性処理すべき導気路004の表面部分に相当するパターンを、光マスクを用いて露光する。露光後、現像することで、基板表面に、疎水性処理すべき導気路004の表面部分に相当するパターンの開口部を有するレジスト・マスクを形成する。次に、このレジスト・マスクで被覆した基板を、シラザン蒸気に、少なくとも12時間暴露して、開口部に露出された導気路004の表面部分に疎水性被膜を形成する。その後、レジストをアセトンで除去することにより、流路006との交差部分を除き、導気路004に用いる凹部の底面、側壁面の表面に疎水性処理が施されている基板001を得ることができる。
一方、基板001の材料として硬質樹脂材料を用いる場合、金型を用いる、射出成形技術やホットエンボシング技術、あるいは、マイクロ加工用フライス盤を利用した機械加工技術で、凹部を形成することができる。金型を用いる加工の場合、硬質樹脂材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン、硬質塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性樹脂を選択することができる。金型を用いる加工の場合、金型の凸部の印章が、基板001表面の凹部となる。マイクロ加工用フライス盤を利用する場合、基板001の表面を直接削り取る機械加工であるため、熱可塑性樹脂以外の硬質樹脂材料にも適用することができる。
次に、表面上に凹部を形成した基板001の表面に対して、蓋部002を接合する。基板001表面に形成されている凹部の深さが、50〜100μmの範囲に選択され、比較的に深い場合、基板001の表面に対する蓋部002の接合に、接着剤を利用することができる。接着剤を利用して接合する場合、蓋部002裏面側の接合面に、接着剤(例えば、ゴム系接着剤)を溶剤(例えば、トルエン)で希釈して、粘性を調節した後、スピンコーターを用いて塗布し、約5〜10μm程度の接着剤層を形成する。該接着剤層と、凹部を形成した基板001の表面と面を向き合わせて、押圧する。基板001の表面と、蓋部002裏面との間に、前記接着剤層を介した接合が形成される。その際、略矩形形状の基板001と、略矩形形状の蓋部002とは、基板001の辺に近接する部位に、所定の長さL2の開口部031が形成するように、蓋部002の位置合わせがなされる。
前記の接着剤を利用する接合でが、凹部の上面を覆う蓋部002裏面側に接着剤層が存在し、押圧する際、接合面から押し出される余剰の接着剤とともに、凹部の内部に接着剤が閉じ込められる。従って、接合後、凹部の上面部には、閉じ込められる接着剤の層が、押し込まれた状態となる。この押し込まれた状態の接着剤の層は、10数μmを超えることは稀であるが、基板001上に形成されている凹部の深さが50μm未満の場合、この押し込まれた状態の接着剤の層によって、実効的な流路の高さHは、相当の比率で減少される。場合によっては、実効的な流路の高さHが、数μm程度まで減少する箇所が生じ、押し込まれた状態の接着剤の層によって、流路の閉塞する部位が発生する。一方、凹部の深さが50μm以上であれば、押し込まれた状態の接着剤の層によって、実効的な流路の高さHが減少しても、その減少率は、相対的に小さくなっており、押し込まれた状態の接着剤の層によって、流路の閉塞に至る可能性は皆無である。なお、得られる流路は、底面と側壁面は、基板の表面に形成された凹部の表面で構成されるが、上面は、蓋部002裏面を覆う接着剤の層で構成される状態となる。従って、この接着剤の層に対する、流路に導入される液体の濡れ性は、所望の範囲となるように、利用される接着剤の種類を選択する必要がある。
押し込まれた状態の接着剤の層によって、流路の閉塞に至る可能性が懸念される際には、接着剤による接合に代えて、静電接合、フッ酸接合、表面改質等による接合技術が利用できる。これらの接合方法は、限られた基板材料と蓋部材料の組み合わせにしか適用できないが、基板001の表面に形成される凹部を埋め込むことなく、基板001の表面に対して、蓋部002を接合することができる。例を挙げれば、基板材料と蓋部材料の組み合わせが、シリコンとガラスである場合には、静電接合(すなわち、二つ材料同士を押しつけて加温しながら、直流高電圧を印加することで、接合を行う手法)が選ばれる。基板材料と蓋部材料の組み合わせが、ガラス同士である場合には、フッ酸接合(すなわち、蓋部002の表面に、薄いフッ酸を塗布した後、そのフッ酸塗布面を、凹部を形成した基板001の表面と対向させて、圧力を印加して加熱することで、ガラス材料相互の融合を図る手法)を利用することができる。
基板材料と蓋部材料の組み合わせにおいて、少なくとも一方が樹脂材料である場合、表面改質による接合が適用可能な場合がある。表面改質法は、オゾンやプラズマ処理によって、樹脂表面の極めて薄い層を化学的に活性な状態にすることで、他の物質と接着させる方法である。少なくとも一方が樹脂材料である、基板材料と蓋部材料の組み合わせの全てで、有効であるというわけではないが、本発明者は、ノボラック樹脂と、ガラスまたは石英との組み合わせに適用可能であることを見出した。具体的には、ノボラック樹脂製の基板001の表面を、紫外線オゾンアッシング装置(PL16−110D、低圧水銀ランプ型番UE1101N−4、セン・コーポレーション)を利用して10分間処理し、その直後に、厚さ約0.1mmのガラス、あるいは石英からなる蓋部002を、改質した面に押しつけることで、ノボラック樹脂製基板001の改質された表面と、ガラスまたは石英製の蓋部002とを、極めて強固に接合できることを見いだした。
本発明にかかる化学チップでは、蓋部002に液体導入口等に利用する縦穴などの構造を設けていないため、上述するように、その製造プロセスは単純化でき、また、製造コストも安価なものとできる。特に、縦穴などの構造を設けないため、蓋部002に利用する材料に特段の制約はないため、利用可能な基板材料と蓋部材料の組み合わせの自由度も増す。
(本発明にかかる化学チップの利用形態)
次に、本発明にかかる化学チップの利用形態について、例を挙げて詳細に説明する。
本発明にかかる化学チップは、その流路中に液体を導入する際、利用する液体導入口等となる縦穴などの構造を設けていないという構造上の相違はあるが、その利用範囲自体は、従来の化学チップと全く遜色のないものである。
化学チップは、通常、その内部の前記流路空間に、試料あるいは、薬液を導入して
(1)電圧等の駆動力を付加して、液体に含まれる成分を分離する、あるいは
(2)試料と薬剤を反応させる、
(3)(1)で分離された成分や、(2)の反応生成物の濃度を測定する、
という操作を通じて、試料中に含まれる成分の特定や、成分濃度を測定することに用いられる。
従来の化学チップが利用されてきた各種の用途に関して、本発明にかかる化学チップを利用して、それらの用途に必要な操作を実現する手段を、図3の(A)、図3の(B)に模式的に示す。
図3の(A)は、上記図2の(A)に示す流路構成の本発明にかかる化学チップに対して、駆動・測定用装置を接続し、各種の測定を実施する形態を模式的に示す平面図である。この図3の(A)に示す化学チップでは、流路006を跨ぐように配置される導気路004は設けられてなく、流路006の両端の設ける平面型液溜め003と開口部031は、それぞれ基板001の対向する辺に近接して配置されている。この直線状の流路006に対して、一方の開口部031から液体を導入した後、該流路006に対して、駆動力を付加して、導入された液体中に含まれる成分を分離する利用形態を説明する。例えば、流路006の両端に電圧を印加して、導入された液体中に含まれる成分に対して、等電点電気泳動を行う場合、まず、流路006の一方の端において、開口部031から、分析対象の試料を、等電点電気泳動用バッファー中に溶解した溶液を導入する。この流路中への等電点電気泳動用バッファーを含む溶液の導入後、両端の平面型液溜め003と開口部031に保持されている液に対して、各開口部031に電極910を設置して、液体と接触させる。各開口部031に設置される電極910に対して、一方を正極、他方を陰極に選択した上で、泳動用の電圧を印加する。
化学チップを電気泳動に利用する際には、勿論、液体と接する流路面を構成する、基板001と蓋部002は、ともに、高い絶縁性を示す、硬質材料が使用されている。例えば、基板001自体は、半導体材料であるシリコン基板を利用し、その表面に凹部を形成した後、その表面に熱酸化処理を施し、表面に絶縁破壊を生じない程度の、十分に高い絶縁特性を有する、膜厚が約200nm以上の熱酸化被膜層を形成することもできる。
一方、図3の(A)に示す流路構成の化学チップ内で、反応槽005中において、試料と薬剤との反応を行うこともできる。例えば、その反応操作は、予め、薬剤の乾燥粉末の所定量を反応層005中に挿入した後、基板001と蓋部002とを接合した、化学チップを調製する。この化学チップに対して、流路006に対して、一方の開口部031から、試料を含む液体を導入することにより、反応槽005を満たした液体中に含まれる試料と、この液体に溶解した薬剤との反応を行わせることができる。
さらに、図3の(A)に示す流路構成の化学チップ内に導入されている液体について、例えば、前記の反応により生成する反応生成物を特定したり、あるいは、その濃度を測定したりする際、光学的な測定方法を適用することも可能である。この光学的測定方法を用いる場合、流路006中に存在している液体に対して、流路006の両端の開口部031にそれぞれ導波路920を挿入し、一端の導波路から、光源から発した、検出あるいは濃度測定したい検出対象成分の吸収波長を含む検出光を導入し、他端の導波路から、流路006中に存在している液体を透過してきた光を取り出し、光強度測定用のセンサに導く構成を利用する。すなわち、検出光が、流路006中に存在している液体を通過する間に、流路006、反応槽005内の液体に含まれている検出対象成分、その濃度に応じて、光の吸収、散乱が起こる。その結果、他端の導波路から、取り出される透過光において、検出対象成分の吸収波長に相当する光の吸収が生じている場合、光強度の低下として検出される。測定される、検出対象成分の吸収波長に相当する光の吸収量に基づき、検出対象成分の有無、あるいは、その濃度を決定することが可能である。
特に、図3の(A)に示す流路構成では、直線状の流路006の配置を有しており、また、流路内の液体の屈折率n1と、その流路の壁面を構成する材料の屈折率n2との間に、屈折率差(n1>n2)が存在する構成を選択すると、壁面において、反射を受け、流路内に留まる光量が増し、流路自体も、光の導波効率を高める構成となっている。
図3の(B)は、上記図2の(C)に示す流路構成の本発明にかかる化学チップに対して、駆動・測定用装置を接続し、各種の測定を実施する形態を模式的に示す平面図である。この図3の(B)に示す化学チップでは、「コの字型」の流路006を跨ぐように導気路004が設けられており、流路006の両端の設ける平面型液溜め003と開口部031は、それぞれ基板001の一方の辺に近接して配置されている。流路006と導気路004との交差部分は、流路として利用する狭い幅の親溶媒性の通路と、それ以外の導気路004の底面、側壁面は、疎溶媒性処理が施されている。その結果、流路006の一端の設ける平面型液溜め003と開口部031から、液体を導入した際、他端に設ける平面型液溜め003と開口部031まで、流路内を液体は導通可能であり、「コの字型」の流路006を跨ぐような導気路004が設けられていない場合と同様に、
(1)電圧等の駆動力を付加して、液体に含まれる成分を分離する、あるいは
(2)試料と薬剤を反応させる、
の操作を実施することが可能である。
一方、(3)(1)で分離された成分や、(2)の反応生成物の濃度を測定する、
の操作を実施する際、「コの字型」の流路自体は、屈曲部分を有しているため、その部分において、流路の壁面が光透過性を有する材料で構成されている場合、流路内から、基板中へと光の漏出が生じる。その影響を抑制するためには、屈曲部分における流路の壁面に対して、高い光反射率を示す、反射膜コーティング処理を施すことによって、この「コの字型」の流路を通過して、他端の導波路に達する光量を測定に適する範囲内に維持することが可能である。なお、図3の(B)の構成では、反応槽005に屈曲部分が形成されているため、この反応槽005の側壁面に高い光反射率を示す、反射膜コーティング処理を施すと、反応槽005内における光路長は、反復的な反射の影響を受け、実効的に長いものとなる。屈曲部分における光の漏出、光路長の実効的な延長の影響をも考慮して、流路内に入射する検出光の強度を調整することをも併せて実施すると、他端の導波路に達する光量を、図3の(A)に示す流路構成における透過光の光量と略等しい範囲とすることもできる。
一方、流路006と導気路004との交差部分では、流路に対する側壁は存在していないが、流路内の液体の屈折率n1と、その流路の両側に存在する気体の屈折率n3との間に、屈折率差(n1>n3)が存在する結果、液面での全反射を受け、流路内に留まる光量が増し、流路自体も、光の導波効率を高める構成となっている。
(駆動・測定装置との接続方法と接続装置(インタフェース)の構造)
本発明にかかる化学チップでは、液体導入口として、流路の両端に設ける平面型液溜め003と開口部031のうち、その上面を蓋部002で覆われていない開口部031を利用している。従って、複数の流路を同一の基板001上に設ける際、その流路のサイズを均一に選択すると、基板001の一辺に近接する位置に、開口部031が整然と並んでいる形状とすることができる。加えて、この開口部031を、液体導入口として利用すると同時に、前記の利用形態に必要となる、駆動・測定装置との接続部位としても利用することができる。基板001の一辺に近接する位置に、開口部031が整然と並んでいる形状を利用することで、駆動・測定装置との接続を容易にする接続装置を構成することができる。
図4の(A)〜図4の(D)は、本発明の第一の形態にかかる化学チップに適用可能な接続装置の構成例を模式的に示す図である。
図4の(A)は、化学チップと装置が接続されていない状態を示す平面図、図4の(B)は図4の(A)に示す配置におけるF−F’断面図である。
図4の(A)、図4の(B)中に示す接続装置900と、駆動・測定装置100との間は、専用のケーブル等1000で結ばれている。接続装置900は、化学チップ上において、基板001の一辺に近接する位置に、開口部031が整然と並んでいる部分に相当する、化学チップの着脱部甲007を保持可能な着脱部乙008を具えている。接続装置900に、化学チップを接続する場合、化学チップの着脱部甲007を、接続装置900の着脱部乙008に向けて押し込み、保持された状態とする。図4の(C)、図4の(D)は、化学チップが接続され、接続装置900に保持された状態を示す平面図とF−F’断面図である。
接続装置900の着脱部乙008による、化学チップの着脱部007の保持と、取り外し操作は可逆的に行うことができ、化学チップを利用する測定を終えた後、化学チップを着脱部乙008から抜き去ることができる。
(着脱部乙の構造)
接続装置900の着脱部乙008には、化学チップの着脱部甲007に存在する、開口部031に対して、電極910を装着する、あるいは、導波路920を挿入するという、前記利用形態(1)〜(3)の操作を可能にする部材を具えた仕組みが設けられている。
着脱部乙008は、化学チップの利用形態に応じて、前記電極910や導波路920のように、異なる部材を具えている。
例えば、前記利用形態(1)に相当する、電気泳動を行う場合では、電圧印加が必要となり、前記電極910のような電気的接続部材を具え、
また、前記利用形態(3)に相当する、光学的測定を行う場合では、検出光の導入、透過光の導出が必要となり、前記導波路920のような光学的接続部材を具え、
また、前記利用形態(2)に相当する、反応を行う場合では、流路内に反応に利用する液体の導入が必要となり、開口部031に所定量の液体を供給可能な、液体供給用接続部材を具える構成とする。さらに、例えば、前記利用形態(2)に相当する、反応を行った後、前記利用形態(3)に相当する、光学的測定を行う場合のように、複数の操作を複合的に実施することが必要となる際には、各操作に利用される接続部材を組み合わせた、複合型接続部材を具える構成とする。
(電気的接続部材を具える接続装置の例)
図5の(A)〜(D)は、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、電気的接続部材を具えた着脱機構の例を模式的に示す図である。
図5の(A)は、接続前の状態にある、化学チップの着脱部甲007と、接続装置900の着脱部乙008の配置を示す平面図、図5の(B)は、そのF−F’断面図である。開口部031に対して、電圧印加を行う際に利用可能な、電気的接続部材を具えている着脱部乙008は、ひさし部901(図5の(A)では、点線の枠で示した)、固定部902、底板903、電極910、電極固定部911、電極接触部912とで構成されている。ひさし部901、固定部902、底板903は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、硬質塩化ビニル(PVC)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの、絶縁性の高い樹脂材料、あるいはそれに類する絶縁材料で作製されている。着脱部乙008に形成されている、洞部904は、ひさし部901、固定部902、底板903に囲まれている空所であり、化学チップの着脱部甲007がこの空所に挿入される。電極910は、弾性のある導電材料、例えば、銅、真鍮、タングステン、金、白金、ステンレス、炭素繊維等を用いて作製されている。電極固定部911は、電極910の根元側の部分であって、固定部902とひさし部901の間隙に、動かないように保持・固定されている部分である。電極接触部912は、電極910の先端部であって、固定されず、可動状態にある部分である。電極接触部912の最先端部分は、弾性変形可能な形状とされており、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された際、この最先端部分は、開口部031から、平面型液溜め003の底面付近まで進入可能とされている。図5の(B)に示すように、電極接触部912の最先端部分は、屈曲して形成され、その屈曲部が弾性変形することで、その頂部の高さが一定の範囲で可逆的に変化可能な構造とされている。また、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された際、この電極接触部912の最先端部分は、開口部031のほぼ中央に位置するように配置されている。
接続装置900の着脱部乙008には、化学チップ上に形成されている複数の流路に対応して、該化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の個数に対応する個数の電極910が装備される。この複数個の電極910は、化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の配置と相対する、間隔で配置され、その根元の電極固定部911において、固定部902に固定されている。
各電極910は、接続装置900と駆動・測定装置100とを連結する専用のケーブルを介して、駆動・測定装置100と接続される。各電極910に対する、電圧の印加などの電気的な接続操作は、通常、その電気的な接続配線に挿入されているスイッチ等を介して、導通/切断の選択が可能な形態とされる。
図5の(C)は、接続装置900に化学チップを接続した状態にある、着脱部乙008と着脱部甲007の配置を示す平面図、図5の(D)は、そのF−F’断面図である。接続装置900の着脱部乙008に、化学チップの着脱部甲007を近づけてゆくと、基板001の先端が、電極接触部912に当接するが、着脱部甲007を、さらに近づけてゆく際、この電極接触部912の最先端部分は、弾性変形して、屈曲した頂部の高さが低くなり、基板001が洞部904内に進入できる。その際、弾性変形した屈曲した頂部は、基板001の上面に接した状態となり、着脱部甲007を、洞部904の奥へ向かって、そこからさらに押し込んでゆくと、電極接触部912の最先端部分の屈曲した頂部の位置に、開口部031が到達する。その時点では、屈曲した頂部を弾性変形させている当接圧は開放される結果、電極接触部912の最先端部分の屈曲部は元の形状に戻ろうとする。その際、開口部031から平面型液溜め003の底面へ向かって、元の形状を部分的に回復した、電極接触部912の最先端部分の屈曲部が進入する。すなわち、電極接触部912の最先端部分の屈曲部は、開口部031において、この平面型液溜め003内部に保持されている液体と接触する。この液体と電極接触部912の最先端部分の屈曲部との接点を利用して、電気泳動における電圧印加や、流路内に導入されている液体の抵抗値など、電気的性状の測定が可能になる。
化学チップを接続装置900から取り外す際には、化学チップの着脱部甲007を洞部904から引き出しと、電極接触部912の最先端部分の屈曲部が、開口部031の端、すなわち、平面型液溜め003の外側壁035に押し当てられる。その結果、最先端部分の屈曲部は弾性変形して、屈曲した頂部の高さが低くなる。その際、弾性変形した屈曲した頂部は、基板001の上面に接した状態となり、この基板001をさらに引き出すと、弾性変形した屈曲した頂部の位置に、基板001の先端が達し、最終的に外れる。すなわち、図5の(B)に示す接続前の状態と同様となり、基板001は洞部904から抜き取られた状態となる。
この化学チップの着脱部甲007に配置されている、開口部031のサイズ(幅Wと長さL2)と平面型液溜め003の深さDは、例えば、幅Wは、10mm≧W≧0.5mmの範囲、長さL2は、10mm≧L2≧0.5mmの範囲、深さDは、100μm≧D≧10μmの範囲であるため、電極接触部912の最先端部分の屈曲部のサイズは、幅W5は、この開口部031の幅Wの1/2〜1/4程度(例えば、2.5mm≧W5≧0.25mm)の範囲、屈曲部の頂部の実効的長さL5(屈曲部の頂部の曲率の大きな部分に相当する)は、開口部031の長さL2の1/4〜1/8程度(例えば、2.5mm≧L5≧0.1mm)の範囲、屈曲部の頂部の高さH5は、前記深さの5〜10倍(例えば、500μm≧H5≧100μm)の範囲、また、この屈曲部を形成する導電性材料の厚さT5は、深さDと同程度(例えば、100μm≧T5≧10μm)の範囲に選択することができる。さらに、化学チップの着脱部甲007が挿入された時点で、ひさし部901の先端と、平面型液溜め003のうち、開口部031を除く領域を覆っている蓋部002の先端とが接する配置となっているため、電極接触部912の最先端部分の屈曲部の先と、その頂部との水平距離L8は、少なくとも、長さL2の2/3〜1/3程度(例えば、6.5mm≧L8≧0.2mm)の範囲に選択する。また、この電極接触部912の最先端部分の屈曲部の全体の水平長さL6(凡そL8の2倍)は、少なくとも、長さL2の4/3〜2/3程度(例えば、13mm≧L6≧0.4mm)の範囲に選択する。
さらに、洞部904内挿入される部分の長さ、すなわち、基板001の一辺の端部から、蓋部002の先端までの長さ(L3+L2)は、例えば、20mm≧(L3+L2)≧1.0mmの範囲であり、洞部904部分の奥行きは、この(L3+L2)と一致するように選択される。
図5の(A)に示す着脱部乙008は、次のようにして製造することができる。
第一の製造方法として、底板903、固定部902、ひさし部901を別々の板状部材で構成する方法をあげる。準備として、固定部902の1面で電極910を配する予定部分に、電極910がはまり込むだけの寸法の溝を、機械加工、もしくは、固定部902が熱可塑性樹脂から成る場合は、金型を用いる射出成形によって固定部902の他の部分と一括成型する。電極910には、電極接触部912の最先端部分の屈曲部を、予め、金型プレスなどの加工手段により形成しておく。まず、底板903の上に固定部902をなすべき板状部材を耐水性のあるアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ゴム系などの有機接着剤で、強固に接着し、固定部902の上面に設けておいた溝に、電極910を図5(A)、図5(B)のように、はめこんで固定する。次に、固定部902の上面に前記の接着剤を用いて、ひさし部901を強固に接着することで着脱部乙008を実現する。
第二の製造方法としては、底板903、固定部902、ひさし部901が熱可塑性樹脂からなる場合、金型を用いて、これらを一体として射出成形により形成する方法がある。一体成型した後、ひさし部901の基部から、固定部902を水平に貫通する穴を、ドリル等で形成し、予め、電極接触部912を形成しておいた、電極910を、その穴に挿入した後、穴の両端部分に前記接着剤を導入して固定することでも、着脱部乙008が実現できる。
(光学的接続部材を具える接続装置の例)
次に、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、光学的接続部材を具えた着脱機構の例を説明する。
図6の(A)〜(D)は、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、光学的接続部材を具えた着脱機構の例を模式的に示す図である。
図6の(A)は、接続前の状態にある、化学チップの着脱部甲007と、接続装置900の着脱部乙008の配置を示す平面図、図6の(B)は、そのF−F’断面図である。開口部031に対して、導波路を介して光の導入、導出を行う際に利用可能な、光学的接続部材を具えている着脱部乙008は、導波ひさし部905(図6の(A)では、点線の枠で示した)、固定部902、底板903とで構成されている。底板903、固定部902、ならびに、洞部904の構成は、電気的接続部材を具えた着脱部乙008(図5)と、本質的に同様の構成である。電気的接続部材を具えている着脱部乙008(図5)と、光学的接続部材を具えている着脱部乙008との相違する部位は、導波ひさし部905の構成である。
この導波ひさし部905は、導波路920、導波路固定部921、プリズム部922とで構成されている。導波路920は、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの透明材料、あるいは光ファイバーで形成されている。一方、導波路固定部921は、弾力性のある樹脂材料、例えば、フッ素系樹脂材料、あるいは、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、その他の熱可塑性樹脂材料で作製されている。前記導波路920の先端部に付設される、プリズム部922は、ガラス、石英、もしくはアクリル樹脂などの透明材料で形成されている。導波路920の先端部に付設されるプリズム部922自体の形状は、略半球形、あるいは略四角錐状、あるいはカマボコ状の形状に加工されており、導波路920と光学的に連通して形成される。その先端にプリズム部922を光学的に連通して付設した、導波路920は、導波路固定部921に囲まれて固定されている。着脱部乙008に形成されている、洞部904は、導波ひさし部905、固定部902、底板903に囲まれている空所であり、化学チップの着脱部甲007がこの空所に挿入される。導波路固定部921は、弾力性のある樹脂材料で作製されており、導波路920とともに、一定の範囲で可逆的に変化可能な構造とされている。
図6の(C)は、接続状態にある、化学チップの着脱部甲007と、接続装置900の着脱部乙008の配置を示す平面図、図6の(D)は、そのF−F’断面図である。すなわち、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入される過程では、導波路920先端部のプリズム部922が基板001の先端に当接することより、導波路920を固定している導波路固定部921の先端部分が押し上げられ、導波ひさし部905が撓む。従って、導波路920先端部のプリズム部922の先端が、基板001の上面に接する位置する状態となり、着脱部甲007を、洞部904の奥へ向かって、そこからさらに押し込んでゆくと、プリズム部922が固定されている位置に、開口部031が到達する。その時点では、導波路固定部921を弾性変形させている当接圧が開放される。その結果、導波路固定部921は元の形状に戻ろうとし、開口部031から平面型液溜め003の底面へ向かって、導波路920先端部のプリズム部922が進入する。すなわち、プリズム部922の先端は、開口部031において、この平面型液溜め003内部に保持されている液体と接触する。また、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された際、このプリズム部922の先端部分は、開口部031のうち、平面型液溜め003の上面を覆う蓋部002の端に近接するように配置されている。この液体とプリズム部922の先端の接触面を利用して、流路内に導入されている液体と導波路920との光学的な接続が可能になる。このプリズム部922を介した光学的接続を利用することで、流路内に導入されている液体について、その流路両端間の吸光度、散乱度の測定、その他の光学的測定、あるいは光学的な加温などの操作が可能になる。
化学チップを接続装置900から取り外す際には、化学チップの着脱部甲007を洞部904から引き出しと、プリズム部922の先端が、開口部031の端、すなわち、平面型液溜め003の外側壁035に押し当てられる。その結果、導波路固定部921は弾性変形して、プリズム部922の先端は、基板001の上面と接する位置まで押し上げられる。この基板001をさらに引き出すと、プリズム部922が固定されている位置に、基板001の先端が達し、最終的に外れる。すなわち、図6の(B)に示す接続前の状態と同様となり、基板001は洞部904から抜き取られた状態となる。
接続装置900の着脱部乙008には、化学チップ上に形成されている複数の流路に対応して、該化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の個数に対応する個数の導波路920が装備される。この複数個の導波路920は、化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の配置と相対する、間隔で配置され、それを囲んでしる導波路固定部921を介して、固定部902に固定されている。
各導波路920は、接続装置900と駆動・測定装置100とを連結する専用のケーブルを介して、駆動・測定装置100と接続される。各導波路920に対する、光の入射、光の取り出しなどの光学的な接続操作は、通常、その光伝播経路に挿入されている光スイッチ等を介して、導通/切断の選択が可能な形態とされる。
この化学チップの着脱部甲007に配置されている、開口部031のサイズ(幅Wと長さL2)と平面型液溜め003の深さDは、例えば、幅Wは、10mm≧W≧0.5mmの範囲、長さL2は、10mm≧L2≧0.5mmの範囲、深さDは、100μm≧D≧10μmの範囲であるため、プリズム部922のサイズは、幅W6は、この開口部031の幅Wの1/2〜1/4程度(例えば、2.5mm≧W6≧0.25mm)の範囲、プリズム部922の先端部の実効的長さL10(プリズム部922の曲率の大きな部分に相当する)は、開口部031の長さL2の1/4〜1/8程度(例えば、2.5mm≧L10≧0.1mm)の範囲、プリズム部922の高さH6は、前記深さの1〜5倍(例えば、500μm≧H6≧100μm)の範囲に選択することができる。なお、導波路920の幅W6’は、少なくとも、プリズム部922の幅W6以上、開口部031の幅W以下に選択され、すなわち、開口部031の幅Wの1〜1/4程度(例えば、5mm≧W≧0.25mm)の範囲に選択できる。また、導波路920の厚さT6’は、その幅W6’の1/1〜1/10程度(例えば、1.0mm≧W6’≧0.25mm)に選択できる。さらに、化学チップの着脱部甲007が挿入された時点で、導波ひさし部905の先端と、平面型液溜め003のうち、開口部031を除く領域を覆っている蓋部002の先端とが接する配置となっている。そのため、導波ひさし部905の先端と、プリズム部922の先端部との水平距離L11は、開口部031の長さL2の2/3〜1/3程度(例えば、6.5mm≧L11≧0.2mm)の範囲に選択する。
さらに、洞部904内挿入される部分の長さ、すなわち、基板001の一辺の端部から、蓋部002の先端までの長さ(L3+L2)は、例えば、20mm≧(L3+L2)≧1.0mmの範囲であり、洞部904部分の奥行きは、この(L3+L2)と一致するように選択される。導波ひさし部905全体は、挿入、抜き出しの際、撓み変形する必要があり、その厚さT4は、導波路920の厚さT6’より厚く、また、長さ(L3+L2)の1/2〜1/8程度(例えば、5mm≧T4≧0.50mm)の範囲に選択することが望ましい。
光学的接続部材を具えている着脱部乙008は、次のようにして製造することができる。
図6の(A)に示す光学的接続部材を具えている着脱部乙008は、図5の(A)に示される、電気的接続部材を具えている着脱部乙008とは、導波ひさし部905部分の製造方法が異なるので、まず、この部分の製造方法について説明する。
第一の製造方法として、導波ひさし部905を一体成形する方法がある。この場合、導波路920は、ガラス、石英などの耐熱性材料でできた細線を利用する。まず、導波路920を、治具を用いて所定の間隔に配置した後、金型に取り付け、熱可塑性樹脂を用いて導波路固定部921を射出成形し、その内部に、導波路920を図6の(A)、(B)のように保持する板状部材を製作する。導波路920として利用する、ガラス、石英などの細線の外周には、高い反射率を有する被膜、例えば、金、銀、アルミニウムなどの金属膜を蒸着しておき、導波路内の光の伝搬効率を高く保つ構造とすることもできる。次に、熱可塑性樹脂で作製した板状部材の端を研磨し、導波路固定部921の一部を除去して、導波路920の一部を露出させる。続いて、金型を用いるなどして、略半球形、あるいは略カマボコ状、あるいは略四角錐状に予め形成しておいた、プリズム部922を、透明接着剤を用いて、導波路920の露出面に接着する。その際、プリズム部922の斜面部分が、化学チップの抜き差し方向と略平行になるように接着する。
電気的接続部材を具える着脱部乙008のひさし部901を取り付ける場合と同様にして、固定部902、底板903とを予め組み立てる。その固定部902の上面に、この一体成形を利用して作製された導波ひさし部905を、図6の(B)のように、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ゴム系などの耐水性の高い接着剤で強固に固定することで、着脱部乙008を実現することができる。また、導波路920として、市販の樹脂製光ファイバ−を利用して、導波ひさし部905を実現することもできる。市販の樹脂製光ファイバ−を利用する場合、固定部902の上面と、導波路固定部921の底面に光ファイバーを固定する溝を形成しておき、これらの溝に光ファイバーを嵌め込んで接着することができる。溝のある、固定部902と導波路固定部921は、熱可塑性樹脂を用いて、金型による射出成形によって製造することができる。樹脂製の光ファイバーを用いる場合、光ファイバー自体が熱可塑性であるため、その先端部をガラス転移点以上の温度に加熱して、プリズム部922の反転形状の金型を用いてプレス成形するにより、導波路920とプリズム部922を一体の部材として製造することができる。
(液体導入用接続部材を具える接続装置の例)
次に、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、液体導入用接続部材を具えた着脱機構の例を説明する。
図7の(A)、(B)は、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、液体導入用接続部材を具えた着脱機構の例を模式的に示す図である。
図7の(A)は、接続装置900の着脱部乙008に設ける液体導入用接続部材の構成を示す断面図、図7の(B)は、そのG−G’断面図である。開口部031に対して、液体導入を行うための接続流路960を具えている着脱部乙008は、液体導入用ひさし部906、固定部902、底板903とで構成されている。さらに、加圧具甲964、加圧具乙965(図7の(A)、(B)では、点線で示した)を設け、液体導入用ひさし部906と化学チップの基板001の上面とを密着させる構成とすることが望ましい。底板903、固定部902、ならびに、洞部904の構成は、電気的接続部材を具えた着脱部乙008(図5)や光学的接続部材を具えた着脱部乙008(図6)と、本質的に同様の構成である。液体導入用接続部材を具えている着脱部乙008に特徴的な部位は、液体導入用ひさし部906の構成、ならびに、加圧具甲964、加圧具乙965を付加している点である。
液体導入用ひさし部906は、弾力性のある樹脂材料、例えば、フッ素系樹脂材料、あるいは、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、その他の熱可塑性樹脂材料で作製されている。この液体導入用ひさし部906は、固定部902に接着して用いられるが、この接着がなされる液体導入用ひさし部906の表面には、図7の(A)(B)に示すような溝が形成されている。この溝は、液体導入用ひさし部906を固定部902に接着すると、溝の開口面が固定部902で覆われる結果、接続流路960が形成される。一方、固定部902に接着されない部分に残される、溝の開口面は、前記接続流路960を介して供給される液体を、化学チップの基板001の上面に設ける開口部031に対して導入するための、接続流路開口部961とされる。
着脱部乙008に形成されている、洞部904は、液体導入用ひさし部905、固定部902、底板903に囲まれている空所であり、化学チップの着脱部甲007がこの空所に挿入される。すなわち、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された際、この液体導入用ひさし部905先端は、平面型液溜め003の上面を覆う蓋部002の端に接するように配置され、また、接続流路開口部961の先端は、化学チップの基板001の上面に設ける開口部031の領域中に位置している。一方、接続流路開口部961の根元部分では、その溝を形成する液体導入用ひさし部906の表面は、化学チップの基板001の上面と接する状態とされ、この根元部分においては、溝の開口面は、基板001の上面で覆われた状態となる。結果として、化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された時点では、開口部031の領域中に存在する接続流路開口部961の先端部分から、開口部031へ直接液体の導入が可能な状態となる。
その際、洞部904の高さH3は、溝が形成されている液体導入用ひさし部906の表面と、基板001の上面とは、実質的に互いに接する状態となるように選択されるが、極僅かな隙間が存在すると、この狭く隙間を「毛細管状の流路」として、接続流路開口部961の両側部へと、液体が漏れ出す可能性がある。この接続流路開口部961の両側部へ、液体の漏れ出す現象をより確実に回避するため、液体導入用ひさし部906の表面と、基板001の上面とが密接されるように、加圧具甲964、加圧具乙965を用いて、液体導入用ひさし906と底板903を挟んで、均一に加圧する。加圧具甲964、加圧具乙965は、鋼、ステンレス、真鍮等の靱性のある材料で作製され、その靱性を利用して、液体導入用ひさし906と底板903の裏面側を均一に加圧する形態とすることが好ましい。また、加圧具甲964と、加圧具乙965自体は、靱性に乏しい材料で作製し、両者をネジ棒、バネ等で接合する構成としてもよく、さらには、それぞれ分離した状態で、プレス装置等に取り付けて、独立に加圧を行う構成としてもよい。
なお、洞部904の高さH3が、この空間に挿入される化学チップの基板001の厚さより若干小さく設定されている場合、弾力性のある樹脂材料で形成される、液体導入用ひさし部906が、弾性圧縮された状態となり、その結果、基板001の上面に対して、液体導入用ひさし部906の表面が密接される状態となる。その場合には、加圧具甲964、加圧具乙965を用いて、液体導入用ひさし906と底板903を挟んで、均一に加圧を施さなくとも、接続流路開口部961の両側部へ、液体の漏れ出す現象は防止される。
接続装置900の着脱部乙008に対して、化学チップの着脱部甲007を装着し、加圧具甲964、加圧具乙965を用いて、密着・固定した状態で、駆動・測定装置が有するポンプ等を利用して、接続流路960へと、試料や薬剤などを含む液体を所定量送り出す。接続流路開口部961を介して、開口部031へと供給される液体は、先ず、平面型液溜め003の蓋部002で覆われた領域を満たし、引き続き、内側連絡流路032を介して、化学チップ内部の流路空間へと輸送される。例えば、化学チップ内部の流路空間が、図2の(B)、(C)に示すように、流路006を跨ぐように形成される導気路004を有する際には、開口部031へと供給される液体の供給速度は、この導気路004と交差する流路006を液体が進行する速度に応じて、調整することが必要となる。すなわち、開口部031へと供給される液体の供給速度が、導気路004と交差する流路006を液体が進行する速度を上回ると、導気路004と交差する流路006以外の領域へ液体が流れ出す不具合を誘起する。
また、駆動・測定装置が有するポンプ等を利用して、接続流路960から液体を吸引すると、チップ内部の流路空間に満たされている液体を、内側連絡流路032、平面型液溜め003の蓋部002で覆われた領域を経由して、駆動・測定装置側へと吸引除去することもできる。
接続装置900の着脱部乙008に対して、化学チップの着脱部甲007を装着した後、前述の液体導入操作を行うことにより、化学チップを利用した、試料と薬剤の反応を容易に実現することができる。
一方、接続装置900の着脱部乙008に挿入し、加圧具甲964、加圧具乙965によって、加圧を加えて、固定されている化学チップの着脱部甲007を取り外す際には、まず、加圧具甲964、加圧具乙965によって、印加されている圧力を開放する。その後、化学チップの着脱部甲007を挿入時と逆方向に引っ張ると、化学チップの着脱部甲007を、容易に引き抜くことができる。なお、加圧具甲964、加圧具乙965を用いない場合にも、化学チップの着脱部甲007を挿入時と逆方向に引っ張ると、化学チップの着脱部甲007を、容易に引き抜くことができる。
接続装置900の着脱部乙008には、化学チップ上に形成されている複数の流路に対応して、該化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の個数に対応する個数の接続流路960と接続流路開口部961が装備される。この複数個の接続流路960と接続流路開口部961は、化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の配置と相対する、間隔で配置されている。
各接続流路960は、接続装置900と駆動・測定装置100とを連結する専用の搬送流路(例えば、チューブやパイプ)を介して、駆動・測定装置100と接続される。各接続流路960に対する、液体の供給などの操作は、通常、その液体の搬送流路(、チューブやパイプ)に挿入されているポンプや弁等を利用して、供給/停止の選択が可能な形態とされる。
この化学チップの着脱部甲007に配置されている、開口部031のサイズ(幅Wと長さL2)と平面型液溜め003の深さDは、例えば、幅Wは、10mm≧W≧0.5mmの範囲、長さL2は、10mm≧L2≧0.5mmの範囲、深さDは、100μm≧D≧10μmの範囲であるため、接続流路960と接続流路開口部961の幅W7は、この開口部031の幅Wの1/1〜1/2程度(例えば、5mm≧W≧0.25mm)の範囲、液体導入用ひさし部906の先端部において、溝が形成されていない部分の長さL14は、開口部031の長さL2の1/2〜1/8程度(例えば、5mm≧L14≧0.2mm)の範囲に選択することができる。なお、接続流路960と接続流路開口部961を構成する溝の深さD7は、その幅W7を基準として、アスペクト比幅D7/W7が2〜1/4程度(例えば、5mm≧W≧0.25mm)の範囲に選択できる。
さらに、洞部904内挿入される部分の長さ、すなわち、基板001の一辺の端部から、蓋部002の先端までの長さ(L3+L2)は、例えば、20mm≧(L3+L2)≧1.0mmの範囲であり、洞部904部分の奥行きは、この(L3+L2)と一致するように選択される。
液体導入用接続部材を具えている着脱部乙008は、次のように製造することができる。
図7の(A)、(B)に示す液体導入用接続部材を具えている着脱部乙008は、図5の(A)に示される、電気的接続部材を具えている着脱部乙008とは、液体導入用ひさし部906部分の製造方法が異なるので、まず、この部分の製造方法について説明する。
液体導入用ひさし部906は、ステンレス、真鍮等の靱性と弾性ある金属、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、硬質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、ブタジエン系合成ゴム、シリコーン系合成ゴムなどの弾性材料を用いて製造する。金属材料を使用する場合、接続流路960部分となる溝を切削加工した後、固定部902に耐水性の接着剤で強固に接着することで実現できる。熱可塑性樹脂材料を利用する場合、接続流路960となる溝部分(凹部)を形成可能な金型を用いて、射出形成し、硬化後、固定部902に接着することで実現できる。合成ゴムを用いて作製する場合、接続流路960となる溝部分(凹部)を形成可能な金型を用いて、重合前の原料を金型に導入して、重合・硬化させた後、金型から取り外したものを、ゴム系の接着剤により固定部902に接着することで実現できる。
また、液体導入用ひさし部906を、固定部902へ接着する前に、その接続流路960として用いる溝部分(凹部)の底面、側壁面に対して、親溶媒性処理、例えば、水溶液に対しては、親水性にするなどの目的で、ポリアクリルアミド、MPC等の表面改質物質によって、溝部分(凹部)の底面、側壁面の表面を被覆することもできる。また、複数の接続流路960を設ける場合、流路相互間で、狭い隙間面を液体が毛細管効果で漏れ出し、混ざり合うことを防止するために、液体導入用ひさし部906の、接続流路960として用いる溝部分(凹部)以外の表面を、疎溶媒性処理、例えば、水溶液に対しては、疎水性処理を施してしておくこともできる。この疎水性処理は、シリコーン樹脂の一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)の平板に、液体導入用ひさし部906の接続面(接続流路960が形成された面)を押し当て、PDMSなどの被覆皮膜を形成することでも、実現できる。PDMS表面に直接接した面は、PDMSや、それに含まれるシリコーンオイルによって被覆されて疎水性になる。一方が、接続流路960に用いる溝部分(凹部)の表面は、PDMSに直接接触しないため、親水性に保たれる。
(複合型接続部材を具える接続装置の例)
次に、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、複合型接続部材を具えた着脱機構の例を説明する。
図8の(A)〜(C)は、本発明の第一の形態にかかる化学チップに対して適用可能な、複合型接続部材を具えた着脱機構の例を模式的に示す図である。
この複合型接続部材は、電気的接続、光学的接続、ならびに、液体導入用接続の三種の機能を併せ持つ接続部材とされている。
図8の(A)は、接続装置900の着脱部乙008に設ける複合型接続部材の構成を示す断面図、図8の(B)は、そのD−D’断面図であり、図8の(C)は、図8の(A)の矢印Eの方向から見た側面図である。開口部031に対して、電気的接続、光学的接続、ならびに、液体導入用接続の操作を同時に行うことが可能な、複合型接続部材を具えている着脱部乙008は、複合型ひさし部940(図8の(A)では、点線の枠で示した)、固定部902、底板903とで構成されている。底板903、固定部902、ならびに、洞部904の構成は、電気的接続部材を具えた着脱部乙008(図5)と、本質的に同様の構成である。電気的接続部材を具えている着脱部乙008(図5)と、複合型接続部材を具えている着脱部乙008との相違する部位は、複合型波ひさし部940の構成である。
複合型ひさし部940は、複合固定部941、光学的接続に用いる導波路920、電気的接続に用いる電極910、液体導入用接続に利用される導管930で構成されている。複合固定部941は、導波路920、電極910、導管930を固定し、保持するための部材であり、ステンレス、真鍮等の靱性と弾性を具備する金属、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、硬質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、ブタジエン系合成ゴム、シリコーン系合成ゴムなどの弾性材料を利用して作製される。
導波路920は、前記、光学的接続部材を具える着脱部乙008において利用される、導波路920と同様の構造であり、その先端部には、同じくプリズム部922が連結されている。また、電極部910は、前記、電気的接続部材を具える着脱部乙008における電極910と同様の構造であるが、前記先端にプリズム部922が連結されている導波路920の形状に合わせて成形され、図8の(A)に示すように、導波路920の下面に接着して用いられる。従って、図5の(B)に示す、電極910の最先端部分に設ける電極接触部912のように、それ自体が弾性変形可能な屈曲部に代えて、この電極910では、前記プリズム部922の後方面の形状と一致する曲げ部(電極接触部912)が形成されている。また、複合固定部941が、ステンレス、真鍮等の靱性と弾性を具備する金属により作製される際には、この複合固定部941自体と、電極910とが直接接触し、電気的な導通を生じることのないように、絶縁層を設ける構成とされる。
一方、導管930は、図7の(A)、(B)に例示する液体導入用接続部材を具える着脱部乙008における、接続流路960と同等の機能を実現するための部材であり、ガラス、石英、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーンゴム等、化学的に安定な材料でできたチューブで作製される。このチューブ部材を、電極910の下面に充填材942によって固定されている。その導管930の先端部は、導管開口部931が設けられ、導管930を介して、搬送される液体がこの導管開口部931から、化学チップの基板001上面に設ける開口部031へと供給される。具体的には、導管開口部931から流れ出す液体は、電極910の最先端部の電極接触部912、プリズム部922の表面を伝って、化学チップの基板001上面に設ける開口部031へと導かれる。
なお、導波路920、電極910、導管930は、複合固定部941に設ける溝部に一体化されて、固定されており、その際、利用される充填材942は、ゴム系、シリコーン系の接着剤等からなり、導管開口部931を除く、チューブ状の導管930の部分を溝部に埋設する。
接続装置900の着脱部乙008に設ける複合型接続部材では、プリズム部922、電極接触部912、導管開口部931は、この着脱部乙008に化学チップの着脱部甲007が接続された状態で、化学チップの開口部031の上に位置するような位置関係に形成される。すなわち、接続装置900の着脱部乙008には、化学チップ上に形成されている複数の流路に対応して、該化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の個数に対応する個数の導波路920、電極910、導管930からなる複合型接続部材が装備される。この複数個の複合型接続部材は、化学チップの着脱部甲007に設けられている開口部031の配置と相対する、間隔で配置されている。各々の導波路920、電極910、導管930は、前記、電気的接続部材を具える着脱部乙008、光学的接続部材を具える着脱部乙008、液体導入用接続部材を具える着脱部乙008と同様に、専用のケーブル等によって、駆動・測定装置100に接続される。
化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入される過程では、導波路920先端部のプリズム部922が基板001の先端に当接することより、導波路920を固定している複合型固定部941の先端部分が押し上げられ、複合型ひさし部940が撓む。従って、導波路920先端部のプリズム部922の先端が、基板001の上面に接する位置する状態となり、着脱部甲007を、洞部904の奥へ向かって、そこからさらに押し込んでゆくと、プリズム部922が固定されている位置に、開口部031が到達する。その時点では、複合型固定部941を弾性変形させている当接圧が開放される。その結果、複合型固定部941は元の形状に戻ろうとし、開口部031から平面型液溜め003の底面へ向かって、導波路920先端部のプリズム部922が進入する。すなわち、プリズム部922の先端は、開口部031において、この平面型液溜め003内部に保持されている液体と接触可能な配置となる。その際、導波路920の下面に接着されている電極910の最先端の電極接触部912もまた、開口部031において、この平面型液溜め003内部に保持されている液体と接触可能な配置となる。
化学チップの着脱部甲007が洞部904に挿入された際、複合型固定部941の先端は、平面型液溜め003の上面を覆う蓋部002の端に接するように配置されている。従って、このプリズム部922の先端部分は、開口部031のうち、平面型液溜め003の上面を覆う蓋部002の端に近接するように配置されている。但し、プリズム部922の先端端面は、傾斜しており、この傾斜面は、液体との接触面として利用される。
一方、導管開口部931から流れ出す液体が、複合型固定部941と化学チップの基板001の上面との間の隙間から、漏れ出すことを防止するため、複合型固定部941と化学チップの基板001の上面とは、密着した状態とされる。従って、複合型固定部941の下面から、プリズム部922の頂部までの高さは、開口部031の深さを超えないように、選択される。従って、プリズム部922の頂部全体の高さは、導波路920の下面に接着されている電極910の厚さ、および、導管930のチューブ外径の合計より、この開口部031の深さを超えない範囲で大きく選択される。一方、導管930の先端部の導管開口部931の位置は、この開口部031の中に位置する必要があり、複合型固定部941の先端と、この導管開口部931の位置との水平距離は、開口部031の長さL2を超えない範囲に選択される。
化学チップを接続装置900から取り外す際には、化学チップの着脱部甲007を洞部904から引き出しと、プリズム部922の先端が、開口部031の端、すなわち、平面型液溜め003の外側壁035に押し当てられる。その結果、複合型固定部941は弾性変形して、プリズム部922の先端は、基板001の上面と接する位置まで押し上げられる。この基板001をさらに引き出すと、プリズム部922が固定されている位置に、基板001の先端が達し、最終的に外れる。
なお、この複合型ひさし部940は、光学的接続に用いる導波路920、電気的接続に用いる電極910、液体導入用接続に利用される導管930を具えているので、液体の導入、泳動、測定といった一連の処理が、化学チップを1回接続するだけで実現可能になる。すなわち、化学チップを接続すると、導管開口部931と化学チップの開口部031の中に位置するため、導管930から供給される液体は、電極910の最先端部の電極接触部912、プリズム部922の表面を伝って、化学チップの基板001上面に設ける開口部031へと導かれる。さらに、上面は蓋部002で覆われている平面型液溜め003の領域、内側連絡流路032を介して、チップ内の流路空間へと液体の導入がなされる。その段階で、プリズム部922を介して、導波路920と開口部031に存在する液体との光学的接続、また、電極接触部912を介して、電極910と開口部031に存在する液体との電気的接続がなされる。
なお、隣接する導管開口部931から流れる液体同士が混ざり合わないように、複合型ひさし部940の他の部分を、化学チップの基板001に押し当て、気密状態にすることが可能な構成を選択する。この気密状態で、駆動・測定装置が有するポンプ等を利用して、導管930へと、試料や試薬液などの液体を送り出すと、導管開口部931を介して平面型液溜め003へと液体が速やかに導入される。逆に、駆動・測定装置が有するポンプ等を利用して、導管930から液体を吸引すると、チップ内部の流路空間に満たされている液体を、内側連絡流路032、平面型液溜め003の蓋部002で覆われた領域を経由して、この導管開口部931を通して、駆動・測定装置側へと吸引除去することもできる。
接続装置900の着脱部乙008に対して、化学チップの着脱部甲007を装着した後、前述の液体導入操作を行うことにより、化学チップを利用した、試料と薬剤の反応を容易に実現することができる。さらに、複合型ひさし部940は、電極910を具えていることから、開口部031から導入された試料や反応生成物を、電気泳動することが可能である。さらに、複合型ひさし部940は、導波路920を具えていることから、試料や、電気泳動で分離された反応生成物の吸光度や散乱度を測定するなどして、その成分を特定し、定量することができる。
この化学チップの着脱部甲007に配置されている、開口部031のサイズ(幅Wと長さL2)と平面型液溜め003の深さDは、例えば、幅Wは、10mm≧W≧0.5mmの範囲、長さL2は、10mm≧L2≧0.5mmの範囲、深さDは、100μm≧D≧10μmの範囲であるため、プリズム部922のサイズは、幅W8は、この開口部031の幅Wの1/2〜1/4程度(例えば、2.5mm≧W8≧0.25mm)の範囲に選択することができる。なお、導波路920の幅W8’は、少なくとも、プリズム部922の幅W8以上、開口部031の幅W以下に選択され、すなわち、開口部031の幅Wの1〜1/4程度(例えば、5mm≧W8’≧0.25mm)の範囲に選択できる。また、導波路920の厚さT8’は、その幅W8’の1/1〜1/10程度(例えば、1.0mm≧T8’≧0.25mm)に選択できる。一方、電極910は、導波路920の下面に接着するため、その幅W9は、導波路920の幅W8’と一致させる、あるいは、それより若干小さく選択する。従って、電極910の幅W9は、開口部031の幅Wの1/2〜1/4程度(例えば、2.5mm≧W9≧0.25mm)の範囲に選択できる。なお、電極910の厚さT9は、平面型液溜め003の深さDと同程度(例えば、100μm≧T5≧10μm)の範囲に選択することができる。さらに、導管930は、電極910の下面に固定されるため、そのチューブ外径(直径)Doutは、電極910の幅W9と同程度、すなわち、開口部031の幅Wの1/2〜1/4程度(例えば、2.5mm≧Dout≧0.25mm)の範囲に選択できる。
導波路920、電極910、導管930を固定するため、複合型固定部941に設ける溝部分の深さD10は、導波路920の厚さT8’、電極910の厚さT9、導管930用のチューブ外径(直径)Doutの合計、あるいは、その合計より僅かに大きく選択する。従って、溝部分の深さD10は、開口部031の幅Wの1〜1/2程度(例えば、5mm≧D10≧0.25mm)の範囲に選択できる。また、溝部分の幅W10は、導波路920の幅W8’、電極910の幅W9、導管930用のチューブ外径(直径)Doutのうちの最大のものと一致するように選択する。
さらに、洞部904内挿入される部分の長さ、すなわち、基板001の一辺の端部から、蓋部002の先端までの長さ(L3+L2)は、例えば、20mm≧(L3+L2)≧1.0mmの範囲であり、洞部904部分の奥行きは、この(L3+L2)と一致するように選択される。なお、複合型固定部941全体は、挿入、抜き出しの際、撓み変形する必要があり、その厚さT7は、前記溝部分の深さD10より大きく、長さ(L3+L2)の1/2〜1/4程度(例えば、5mm≧T7≧0.5mm)の範囲に選択することが望ましい。
複合型接続部材を具えている着脱部乙008は、次のように製造することができる。
図8の(A)〜(C)に示す複合型接続部材を具えている着脱部乙008は、図5の(A)に示される、電気的接続部材を具えている着脱部乙008とは、複合型ひさし部940部分の製造方法が異なるので、まず、この部分の製造方法について説明する。なお、底板903、固定部902は、電気的接続部材を具える着脱部乙008と実質的に同様の方法で作製される。
複合固定部941を、金属材料で作製する場合、導波路920、電極910、導管930を嵌め込み固定する溝部を切削加工する。熱可塑性樹脂材料を利用して作製する場合、導波路920、電極910、導管930を嵌め込み固定する溝部分が、凹部となるような金型を用いて、射出形成する。次に、図8の(A)、(B)、(C)に示す配置となるように、前記の溝部分に固定する、導波路920の形状に合わせて成形されている電極910を導波路920の下面に接着し、この電極910の下面の導管930を接するように配置し、充填材942を用いて、導管930の周囲を埋め込む。その充填材942の硬化を待って、この複合固定部941を固定部902に接着することにより、複合型ひさし部940が実現できる。
なお、図8の(A)〜(C)に示す複合型接続部材は、複合型ひさし部940は、導波路920、電極910、導管930の三種の接続部材を一体化しているが、勿論、その内の二種の接続部材のみを使用する複合型接続部材を、上記の製造方法を部分的に変更することで作製することも可能である。
(第二の形態)
本発明の第二の形態にかかる化学チップの構造について、詳細に説明する。
本発明の第一の形態にかかる化学チップでは、該チップ上に形成されている流路は、基板001の上面側にのみ配置されているが、本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、基板の両面に微小な流路を形成している両面型の化学チップとされている。
その際、基板の二つの面に形成される各微小流路は、流路の幅と深さは微細なサイズに選択するが、その構成は、上述する本発明の第一の形態にかかる化学チップにおいて、基板001の上面側に形成される流路と本質的に同じ構成とされている。従って、化学チップの液体流路自体は、基板表面に形成されている凹部の底面と両側壁面、該凹部の上部開放部を覆う蓋部002の底面によって気密に囲われた空間となっている。この流路領域への液体試料の供給は、液体流路の末端に内側連絡流路032を介して連通されている、平面型液溜め003からなされる。
すなわち、本発明の第二の形態にかかる化学チップにおいても、流路の両端に設ける液体導入部は、図1の(A)、(B)、あるいは、図1の(C)に例示する形態が利用されており、基板001の表面に設けられている、平面型液溜め003と内側連絡流路032用の凹部、ならびに、蓋部002とで構成されている。内側連絡流路032の上面および、平面型液溜め003の上面の一部は、蓋部002により覆われており、平面型液溜め003は、その上面のうち、蓋部002で覆われていない開口部031において、外界と連通されている。内側連絡流路032は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間と、平面型液溜め003の一端とを連結している。蓋部002には、縦穴などの付加的な構造は全く設けられておらず、化学チップ内に形成されている液体流路の空間は、その液体流路の末端に内側連絡流路032を介して連通されている、平面型液溜め003を経由し、この平面型液溜め003の他端に存在する開口部031によって、外界と連通されている。
化学チップ内に形成されている液体流路の空間への液体導入は、該開口部031から、試料溶液や薬液などの液体を平面型液溜め003に注入することでなされる。平面型液溜め003に注入される液体は、平面型液溜め003の一端に連結されている内側連絡流路032を経て、液体流路の空間へと浸入していく。その際、内側連絡流路032と液体流路の空間を占めている気体(空気など)は、その液体流路空間の他の端に設けられている別の開口部031から、外界へと排出される。化学チップ内に形成されている液体流路の空間が液体で満たされた時点で、開口部031から平面型液溜め003への液体の注入を停止する。その結果、内側連絡流路032を介した液体流路の空間への更なる液体の浸入は生じず、余剰の液体は、平面型液溜め003に溜まった状態で保持される。
平面型液溜め003は、化学チップ上に形成されている液体流路の空間へ液体を供給する際、一時的に、開口部031から注入される液体を溜める、リザーバーとしての機能を有する。特に、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域が、主にリザーバーとして機能するため、かかる領域の容量は、前記リザーバーの機能に適する範囲に選択される。図1の(A)に示す態様では、平面型液溜め003全体は、幅W、長さ(L1+L2)の矩形形状の面積S1+2=W×(L1+L2)と、凹部の深さDを有して、その容積V1+2は、V1+2=W×(L1+L2)×Dであるが、その上面が蓋部002により覆われている領域部分(S1=W×L1)の容積V1は、V1=W×L1×Dである。この容積V1を、前記リザーバーの機能に適する範囲に選択する。一方、開口部031は、液体導入口として利用されるため、その幅W、長さL2の矩形形状のサイズは、液体導入の操作に適するサイズに選択する。従来の蓋部に形成される縦穴を液体導入口として利用していた際には、この縦穴の直径dは、液体導入用のマイクロシリンジの針管径に応じて選択されていたが、この矩形形状の開口部031を液体導入口として利用する際には、その幅W、長さL2は、前記縦穴の直径dよりの大きく選択することにより、液体導入操作は、より簡単となる。
図1の(C)に示す第二の態様では、平面型液溜め003のうち、その上面が蓋部002により覆われている領域の形状を、内側連絡流路032と連結される位置を、この平面型液溜め003の凹部の幅Wに対して、その中央に相当する配置に選択し、また、その連結部位に対して、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を設けている。この徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を設けることで、内側連絡流路032が連結されている頂角部分に、液面の先端が達した時点で、残る二つの頂角部に、液体による浸入がなされず、気泡が閉じ込められた領域が生じる可能性を大幅に低減している。すなわち、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域へと浸入した際、平面型液溜め003を構成する凹部の側壁面に接する液体の液面形状は、この凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存し、その接触角θ0と等しい角で側壁面と接する。徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分が開始する位置に形成される、二つの頂角部の角度θが、前記の接触角θ0よりも大きい(θ>θ0)場合には、この二つの頂角部に液面の先端が達した時点では、内側連絡流路032が連結されている頂角部分には、液面の先端は達していない。その後、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分を液面が進んで、最終的に、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域全体を液体が満たした状態のなった時点で、内側連絡流路032が連結されている頂角部分に、液面の先端が達する。従って、図1の(C)に示す第二の態様では、凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存してきまる、その接触角θ0を基準として、徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分が開始する位置に形成される、二つの頂角部の角度θを、前記の接触角θ0よりも大きい(θ>θ0)範囲に設定する。
この徐々に凹部の幅が狭まる過渡的部分の長さLdは、前記の接触角θ0が90°を超えている場合、Ld>(1/2)×W×tan(θ0−90°)となるように選択する。凹部の側壁面に対する当該液体の濡れ性に依存してきまる、前記接触角θ0が、90°を大きく超え、θ0>165°となる場合、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を液体が浸入することは極く稀にしか起こらない。すなわち、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、この内側連絡流路032中を液体が浸入することが可能である場合、接触角θ0が90°を超えていても、165°>θ0>90°の範囲となっている。従って、この接触角θ0(165°>θ0>90°)に対応させて、過渡的部分の長さLdを、幅Wの1/3倍〜2倍程度((1/2)×4≧(Ld/W)≧(1/2)×(2/3))の範囲に選択している。
但し、本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、毛細管現象に類する液体の輸送過程によって、流路空間内への液体導入をより速やかに進めることを目的として、液体が満たされるべき流路空間の壁面、すなわち、流路の壁面を構成している、基板001に設ける凹部の底面、側壁面、ならびに、蓋部002の裏面は、親溶媒性の表面とする。すなわち、導入される液体の溶媒による接触角θ0は、90°未満となるように、親溶媒性の表面とする。
本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、基板の二つの面にそれぞれ微細流路を形成しているが、各微細流路の両端には、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域が液溜めとして配置されており、基板面を垂直に保った状態でも、外界との連通はこの両端でのみなされる流路内に導入された液体は、該微細な流路両端に設ける液体導入口から漏出しない状態となっている。すなわち、微細流路内に導入されている液体は、流路壁面に対する液体の濡れ性と、液体が示す表面張力との均衡によって、この微小な流路空間内に保持された状態となっている。また、本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、該微細な流路両端に設ける液体導入口として利用する、平面型液溜め003の上面が蓋部002により覆われている領域とそれに続く開口部032は、基板001の二つの面に形成する各流路ともに、基板の共通する一辺に平行する列状に配置されている。また、基板の表面側と裏面側に設ける微細流路二組に対して、その列状の配置位置は、該基板の一辺から、互いに等しい距離に選択されている。
なお、本発明の第二の形態にかかる化学チップは、上記本発明の第一の形態にかかる化学チップの作製法に準じで、基板001の表面に加えて、裏面にも微小流路空間となる凹部を形成した後、その両面に、それぞれ蓋部002を接合することで作製される。
本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、微細な流路空間が、基板の表面側だけでなく、裏面側にも形成されているので、一つのチップ当たりに形成されている微細な流路の総数は、基板の表面側だけを利用する形態と比較すると、原理的には、倍増させることも可能である。この特徴は、数多くのサンプル数の分析を実施する際、その作業効率を高める上で有効に利用可能である。
(基板の両面に流路が形成されている化学チップ用の縦型の接続装置)
次に、本発明の第二の形態にかかる化学チップに適用可能な、接続装置の着脱機構について、図を参照して詳細に説明する。
上記の本発明の第一の形態にかかる化学チップに適用可能な接続装置の着脱機構では、チップ上に形成されている流路は、基板の表面に配置されているため、この基板表面が上向きに水平に保持される状態で、接続装置に対して着脱されている。それに対して、本発明の第二の形態にかかる化学チップでは、チップ上に形成されている流路は、基板の表面と裏面の双方に配置されているため、この二つの面が等価な状態となる、化学チップの基板を垂直方向に保ったまま着脱を行うことが可能な着脱機構を採用する。
この化学チップの基板を垂直方向に保ったまま着脱を行うことが可能な着脱機構を具える本発明の第二の形態にかかる縦型の接続装置の構成の一例を、図9の(A)、(B)に示す。図9の(A)は、縦型の接続装置に対して化学チップを着脱する際、接続がなされていない状態における接続装置の着脱機構の断面形状を模式的に示す断面図であり、図9の(B)は、接続された状態における着脱機構の断面形状を模式的に示す断面図である。
第二の形態にかかる接続装置は、化学チップを縦向きに保持した状態で着脱するため、底板903、一対のガイド部970、接続室980、一対の回転ひさし部990とで構成されている。底板903上に、軸受け部110が設けられており、回転ひさし部990は、その軸部950を、軸受け部110に差し込まれた状態で取り付けられている。この軸部950を中心として、回転ひさし部990全体は回転でき、一対の回転ひさし部990は、それぞれ相対する配置とされている。一対の回転ひさし部990が、底板903に垂直な配置となるまで回転可能であり、その際、一対の回転ひさし部990は、互いに平行な配置となる。この着脱機構に対して、化学チップの基板001において、着脱部として利用する一辺を差し込むと、基板の一辺の端が底板903に接する位置に達した際、一対の回転ひさし部990が、この一辺に近接する部位に設けられている着脱部を両面から挟み込む状態となる。また、この挿入された状態では、回転ひさし部990の先端は、蓋部002の端と接する状態となる。一対のガイド部970は、平行に配置され、その間隔は、基板001の両面に接合されている蓋部002と接するように選択されている。この一対のガイド部970と接した状態で化学チップを接続室980内へと挿入していくと、基板の一辺の端が一対の回転ひさし部990の間に達するように、一対のガイド部970と一対の回転ひさし部990の配置が調整されている。
回転ひさし部990には、電気的接続部材、光学的接続部材、液体導入用接続部材のうち、一つ以上が具わっており、これら接続部材と駆動・測定装置とを繋ぐため、専用のケーブル等が利用されるが、回転ひさし部990自体は回転可能であるので、屈曲可能な連絡部120が専用のケーブル等として利用される。
底板903、ガイド部970、回転ひさし部990の軸部950は、ガラス、石英等の無機材料、ステンレス、真鍮などの金属材料、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いて作製する。なお、底板903上に固定される、軸受け部110は、底板903と同じ材料を利用して、作製とすることもできる。回転ひさし部990は、軸受け部110に挿し込まれた軸部950を介して、取り付けられている。なお、二つの回転ひさし部990は、バネ等を利用することで、化学チップが接続されていない状態では、上向きに開いた状態とすることもできる。
図10の(C)に示すように、回転ひさし部990は、軸部950の取り付け穴が設けられる基部1100と、接続部材を装着する延長部1200とが、全体の外形形状を構成しており、一対の回転ひさし部990が開いた状態では、その基部1100の他端部は、互いに近接する状態となっている。挿入される基板001の先端が、この基部1100の他端部に当接し、回転ひさし部990を回転させ、図9の(B)に示すように、一対の回転ひさし部990を閉じた状態へと移行させる。その際、延長部1200に装着されている接続部材の先端は、化学チップの基板001の一辺の近傍に配置される平面型液溜め003の開口部031と一致する位置に装着されている。なお、この接続部材の先端部による、開口部031における各種接続の形態は、上記第一の形態における接続形態と本質的に同様である。一方、基板001を引き抜く過程では、基板001の先端が、基部1100の他端部に当接することに由来する押力が開放される結果、二つの回転ひさし部990は、再び開いた状態へと移行する。
従って、図9の(A)、(B)に示す脱着機構を利用すると、基板001の両面に微細流路が形成されている化学チップについて、この基板001を垂直方向に立てた状態のまま、表面と裏面の微細流路に対して、その両端に設ける、平面型液溜め003の開口部031を介して、所望の接続操作が同時に、簡便になされる。
次に、本発明の第二の形態にかかる化学チップに適用可能な、縦型接続装置の製造方法について図を参照して説明する。
この縦型接続装置で採用される脱着機構は、回転ひさし部990と、それを保持する軸部950と軸受け部110を具えている。図10の(C)、(D)は、本発明の第二の実施の形態にかかる回転ひさし部990の構成を模式的に示す図である。図10の(C)は、その立面図、図10の(D)は、E−E’断面図である。この図10に示す、回転ひさし部990は、光学的接続部材を具える接続装置の事例を描いてある。
回転ひさし部990に装着する、基板接続部1300、例えば、光学的接続部材として用いる、導波路920とその先端にプリズム部922は、予め接着されている。複数の基板接続部1300を所定の間隔で配置し上で、これらを封入するように、例えば、前述の熱可塑性樹脂等を用いて、図10の(C)の外形形状に基部1100と延長部1200とを射出成形する。
基板接続部1300を構成する、導波路920とその先端にプリズム部922と、連絡部120とは、その接合面を研磨した後、相互の位置合わせを行い、接着する。この連絡部120の接着を完了した後、回転ひさし部990は、軸部950を用いて、軸受け部110の空所に該軸部950を嵌め込むことで、底板903上に取り付けがなされる。ガイド部970は、別途、射出成形で作製した後、一対のガイド部970を底板903に、図9の(A)に示す配置で接着することで、縦型接続装置に用いる脱着部が得られる。
本発明にかかる化学チップと接続装置は、臨床検査や生化学分析の分野で利用される、使い捨て分析チップを低コストで製造でき、それらのチップと、駆動・測定用装置との着脱を、液体の漏れ出しに因る汚染を防止しつつ、簡便に実現する手段として、広範に利用可能である。
本発明の第一の形態にかかる液体導入部の構成例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップの構成例を模式的に示す平面図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップの駆動方法、および測定方法の例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる接続装置の構成例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップと、電気的接続部材の着脱機構の例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップと、光学的接続部材の着脱機構の例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップと、液体用接続部材の着脱機構の例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる化学チップと、複合型接続部材の着脱機構の例を模式的に示す図である。 本発明の第二の形態にかかる化学チップと、接続装置の着脱機構の例を模式的に示す図である。 本発明の第二の形態にかかる回転ひさし部の構成を、模式的に示す図である。
符号の説明
001 基板
002 蓋部
003 平面型液溜め
031 開口
032 内側連絡流路
033 拡大部
034 外側連絡流路
035 外側壁
004 導気路
005 反応槽
006 流路
007 着脱部甲
100 駆動・測定用装置
110 軸受け部
120 連絡部
800 着脱部乙
900 接続装置
901 ひさし部
902 固定部
903 底板
904 洞部
905 導波ひさし部
906 液体用ひさし部
910 電極
911 電極固定部
912 電極接触部
920 導波路
921 導波路固定部
922 プリズム部
930 導管
931 導管開口部
940 複合型ひさし部
941 複合固定部
942 充填材
950 軸部
960 接続流路
961 接続流路開口部
964 加圧具甲
965 加圧具乙
970 ガイド部
980 接続室
990 回転ひさし部
1000 ケーブル等
1100 基部
1200 延長部
1300 基部接続部

Claims (14)

  1. 表面に流路を有する化学チップであって、
    前記流路は、平面形状が矩形状の基板表面に形成される所定の平面形状を有する凹部に対して、その上面を平面形状が矩形状の蓋部で被覆してなる流路空間で構成され、
    該流路の両端には、前記流路空間内への液体導入に利用する液体導入部が設けられ、
    該液体導入部は、前記基板表面に形成される凹部を利用して形成される平面型液溜めと、該平面型液溜めと前記流路空間とを連通する内側連絡流路とを有し、
    前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めの上面の一部は、前記蓋部で覆われており、
    前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、該液体導入口として利用され、
    前記開口部から導入される液体は、上面を前記蓋部で覆われている平面型液溜めの領域に一旦溜められ、その後、前記内側連絡流路を介して、前記流路空間へと導入される液体導入機構を具えている
    ことを特徴とする化学チップ。
  2. 前記流路の両端には設けられる液体導入部として利用される、前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の化学チップ。
  3. 前記流路を構成する、基板上に形成される前記凹部の底面部と、該凹部の上面を覆っている蓋部の裏面部とは、ともに、該流路の導入される液体を構成する溶媒に対して、親溶媒性の表面とされている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の化学チップ。
  4. 前記平面型液溜めの平面形状は、矩形形状であり、
    前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの矩形形状の幅より、狭く選択されており、
    前記内側連絡流路と、前記平面型液溜めとの連通部位は、前記矩形形状の頂点に位置している
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の化学チップ。
  5. 前記平面型液溜めは、所定の幅を有する一定幅の領域を有しており、
    前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、
    前記内側連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記内側連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設けている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の化学チップ。
  6. 前記平面型液溜めは、所定の幅を有する一定幅の領域を有しており、
    前記内側連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、
    前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、
    前記平面型液溜めの一定幅の領域と連通されている外部連絡流路と、該外部連絡流路の末端に連結される拡大部とで構成され、
    前記外部連絡流路の流路幅は、前記平面型液溜めの一定幅の領域における前記所定の幅より、狭く選択されており、また、前記拡大部は、前記外部連絡流路の流路幅よりも拡大された幅を有する矩形状の領域であり、
    前記内側連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記内側連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設け、
    前記外部連絡流路に対する、前記平面型液溜めの連通部分に、前記所定の幅を有する一定幅の領域から、前記外部連絡流路の流路幅へと幅が減少する過渡的領域を設け、
    前記平面型液溜めの、所定の幅を有する一定幅の領域と前記二つの幅が減少する過渡的領域の上面は、前記蓋部で覆われている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の化学チップ。
  7. 表面ならびに裏面に流路を有する化学チップであって、
    前記流路は、平面形状が矩形状の基板表面ならびに基板裏面に形成される所定の平面形状を有する凹部に対して、その上面を平面形状が矩形状の蓋部で被覆してなる流路空間で構成され、
    該流路の両端には、前記流路空間内への液体導入に利用する液体導入部が設けられ、
    該液体導入部は、前記基板表面に形成される凹部を利用して形成される平面型液溜めと、該平面型液溜めと前記流路空間とを連通する内側連絡流路とを有し、
    前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めの上面の一部は、前記蓋部で覆われており、
    前記平面型液溜めにおいて、上面が前記蓋部で覆われていない開口部は、該液体導入口として利用され、
    前記開口部から導入される液体は、上面を前記蓋部で覆われている平面型液溜めの領域に一旦溜められ、その後、前記内側連絡流路を介して、前記流路空間へと導入される液体導入機構を具えている
    ことを特徴とする化学チップ。
  8. 前記流路の両端には設けられる液体導入部として利用される、前記内側連絡流路と、該内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めは、前記平面形状が矩形状の基板表面において、矩形形状の基板のいずれかの辺に近接する領域に設けられている
    ことを特徴とする請求項9に記載の化学チップ。
  9. 前記流路を構成する、基板上に形成される前記凹部の底面部と、該凹部の上面を覆っている蓋部の裏面部とは、ともに、該流路の導入される液体を構成する溶媒に対して、親溶媒性の表面とされている
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の化学チップ。
  10. 表面に流路を有する化学チップにおいて、前記流路に満たされている液体に対して、電気的接続を達成する機能を有する接続装置であって、
    該接続装置により電気的接続がなされる前記化学チップは、請求項2に記載の化学チップであり、
    前記電気的接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、
    該接続装置は、
    前記矩形形状の基板の一辺において、
    該基板の裏面と接する底板と、
    該基板の一辺の端と接する固定部と、
    前記電気的接続部材として機能する電極と、
    該電極を保持し、該電極の先端を基板の表面に接する配置とする機能を有するひさし部とを具えている
    ことを特徴とする接続装置。
  11. 表面に流路を有する化学チップにおいて、前記流路に満たされている液体に対して、光学的接続を達成する機能を有する接続装置であって、
    該接続装置により光学的接続がなされる前記化学チップは、請求項2に記載の化学チップであり、
    前記光学的接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
    該接続装置は、
    前記矩形形状の基板の一辺において、
    該基板の裏面と接する底板と、
    該基板の一辺の端と接する固定部と、
    前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路と、
    該導波路を保持し、前記導波路先端のプリズム部を基板の表面に接する配置とする機能を有する導波ひさし部とを具えている
    ことを特徴とする接続装置。
  12. 表面に流路を有する化学チップに対して、前記流路への液体の導入が可能な、液体導入用接続を達成する機能を有する接続装置であって、
    該接続装置により液体導入用接続がなされる前記化学チップは、請求項2に記載の化学チップであり、
    前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
    該接続装置は、
    前記矩形形状の基板の一辺において、
    該基板の裏面と接する底板と、
    該基板の一辺の端と接する固定部と、
    前記液体導入用接続部材として機能する、接続流路とその先端に設ける接続流路開口部と、
    該接続流路を保持し、前記接続流路先端の接続流路開口部を前記基板の表面に設ける開口部上に配置とする機能を有する液体導入用ひさし部とを具えている
    ことを特徴とする接続装置。
  13. 表面に流路を有する化学チップに対して、前記流路への液体導入が可能な液体導入用接続を達成する機能と、前記流路に満たされる液体に対して、光学的接続ならびに電気的接続を達成する機能とを有する接続装置であって、
    該接続装置により液体導入用接続がなされる前記化学チップは、請求項2に記載の化学チップであり、
    前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
    前記電気的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、かつ、
    前記光学的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
    該接続装置は、
    前記矩形形状の基板の一辺において、
    該基板の裏面と接する底板と、
    該基板の一辺の端と接する固定部と、
    前記液体導入用接続部材として機能する、導管とその先端に設ける導管開口部と、
    前記電気的接続部材として機能する電極と、
    前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路と、
    該導管ならびに、先端にプリズム部を連結されている導波路と電極を一体として保持し、前記導管先端の導管開口部を前記基板の表面に設ける開口部上に配置とする機能、ならびに、該電極の先端と前記導波路先端のプリズム部とを基板の表面に接する配置とする機能を有する複合型ひさし部とを具えている
    ことを特徴とする接続装置。
  14. 表面ならびに裏面に流路を有する化学チップに対して、前記表面ならびに裏面の流路へ同時に液体の導入が可能な液体導入用接続を達成する機能、前記流路に満たされる液体に対して、光学的接続を達成する機能、あるいは、電気的接続を達成する機能のいずれかを有する接続装置であって、
    該接続装置により、液体導入用接続、光学的接続、あるいは電気的接続がなされる前記化学チップは、請求項8に記載の化学チップであり、
    前記液体導入用接続は、前記矩形形状の基板の一辺に近接する領域に設けられている、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに対して、上面が前記蓋部で覆われていない開口部を介して、該液体を前記平面型液溜めへと注入することにより達成され、
    前記電気的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と電気的接続部材とを接触させることにより達成され、かつ、
    前記光学的接続は、前記内側連絡流路と連通される前記平面型液溜めに溜められている液体と、上面が前記蓋部で覆われていない開口部において、該液体と光学的接続部材とを接触させることにより達成され、
    該接続装置は、
    前記矩形形状の基板の一辺において、
    該基板の一辺の先端と接する底板と、
    該基板の表面と裏面を覆っている二つの蓋部とそれぞれ接する一対のガイド部と、
    前記液体導入用接続部材として機能する、導管とその先端に設ける導管開口部、前記電気的接続部材として機能する電極、あるいは、前記光学的接続部材として機能する先端にプリズム部を連結されている導波路の少なくとも一つと、
    該導管ならびに、先端にプリズム部を連結されている導波路と電極を一体として保持可能であり、前記導管先端の導管開口部を前記基板の表面または裏面に設ける開口部上に配置とする機能、あるいは、該電極の先端または前記導波路先端のプリズム部を基板の表面または裏面に接する配置とする機能を有する、一対の回転ひさし部とを具えている
    ことを特徴とする接続装置。
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