JP2007061019A - 含水液の劣化度判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 腐敗による劣化が進行する含水液、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などの水系潤滑剤、あるいは水系金属熱処理液などの工業用含水液の劣化度を、簡易にかつ迅速に判定する方法を提供する。
【解決手段】被劣化度測定含水液及び該含水液に使用する原液に対して、特定の希釈操作を行うと共に、被劣化度測定含水液の各希釈液及び各原液希釈液の耐腐敗性能をそれぞれ求め、被劣化度測定含水液とほぼ同じ濃度の原液希釈液の耐腐敗性能を基準にして、前記被劣化度測定含水液の耐腐敗性能を求める。
【選択図】なし

Description

本発明は、含水液の劣化度判定方法に関する。さらに詳しくは、腐敗により劣化が進行する含水液、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などの水系潤滑剤、あるいは水系金属熱処理液などの工業用含水液劣化度を、被劣化度測定含水液に使用する原液の希釈液における耐腐敗性能を基準にして、簡易にかつ迅速に判定する方法に関するものである。
腐敗により劣化が進行する工業用含水液としては様々なものが知られているが、その中で代表的なものとして、水系潤滑剤や水系金属熱処理液がある。
前記水系潤滑剤には、水溶性型又は水性エマルション型があり、例えば金属の温間・熱間塑性加工用水溶性潤滑剤(例えば、特許文献1参照)、マグネシウム合金の塑性加工用水溶性潤滑剤(特許文献2参照)、切削加工用の水溶性金属加工油剤(例えば、特許文献3参照)、あるいは水性エマルション型難燃性作動液などが用いられている。
また、前記水系金属熱処理液には、水溶性型又は水性エマルション型があり、例えば焼入れ処理などの金属熱処理に使用される水系熱処理液(例えば、特許文献4参照)などが用いられている。
ところが、これらの工業用含水液においては、抗菌剤や防腐剤などは添加されているものの、使用中に経時により、細菌、かび、酵母などの微生物の作用によって、劣化が生じ、異臭の発生、スライムの生成、エマルションの破壊、錆の発生などを引き起こし,作業環境に、あるいは含水液自体や工作機械、被工作物などに対して重大な影響を与えるおそれがある。
したがって、使用中の含水液を定期的にサンプリングして分析を行い、その劣化度を測定し、該劣化度がある値以上になれば、バージン含水液と取り換える作業が行なわれていた。
しかしながら、これまでの劣化度の測定方法は、煩雑な操作を必要とし、時間がかかりすぎるという問題があり、簡易で迅速な劣化度の測定方法が求められていた。
特開2001−240891号公報 特開2003−89797号公報 特開平10−251683号公報 特開平4−180515号公報
本発明は、このような状況下で、腐敗により劣化が進行する含水液、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などの水系潤滑剤、あるいは水系金属熱処理液などの工業用含水液の劣化度を、簡易にかつ迅速に判定する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、腐敗により劣化が進行する工業用含水液の劣化度を簡易にかつ迅速に判定する方法について鋭意研究を重ねた結果、被劣化度測定含水液及び該含水液に使用する原液に対して、特定の希釈操作を行うと共に、被劣化度測定含水液の各希釈液及び各原液希釈液の耐腐敗性能をそれぞれ求め、被劣化度測定含水液とほぼ同じ濃度の原液希釈液の耐腐敗性能を基準にして、前記被劣化度測定含水液の耐腐敗性能を求めることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)被劣化度測定含水液に使用する含水液原液にイオン交換水を加えて、前記被劣化度測定含水液とほぼ同程度の濃度を有する原液希釈液a−0を調製したのち,このa−0液に、所定の割合のイオン交換水を加えて、複数の原液希釈液a−1、a−2、・・・a−n液を調製し、各a−0、a−1、a−2、・・・a−n液に、腐敗菌の所定量を同量ずつ投入して、各原液希釈液における設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する操作を行うと共に、
(B)前記(A)操作における原液希釈液a−0の代わりに、被劣化度測定含水液b−0を用い、このb−0液に、前記(A)操作と同じ割合のイオン交換水を加えて、複数の被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−n液を調製し、各b−0、b−1、b−2、・・・b−n液に、前記(A)操作と同じ量の腐敗菌を同量ずつ投入して、被劣化度測定含水液の各希釈液における(A)操作と同じ設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する操作を行い、
(C)前記(A)操作における各原液希釈液の生菌数と、前記(B)操作における被劣化度測定含水液の各希釈液の生菌数を対比し、原液希釈液a−0を基準にして、被劣化度測定含水液b−0の耐腐敗性能を求めることを特徴とする、含水液の劣化度判定方法、
(2)被劣化度測定含水液が、水系潤滑剤又は水系金属熱処理液である上記(1)に記載の含水液の劣化度判定方法、
(3)水系潤滑剤が、水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤又は水系作動液である上記(2)に記載の含水液の劣化度判定方法、
(4)(A)操作及び(B)操作において、菌濃度107固/ml以上の腐敗菌培養液を、各液に対して10容量%の割合で加える上記(1)〜(3)のいずれかに記載の含水液の劣化度判定方法、及び
(5)原液希釈液a−1、a−2、・・・a−nが、それぞれ原液希釈液a−0の4/3倍、2倍及び4倍希釈液であり、かつ被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−nが、それぞれ被劣化度測定含水液b−0の4/3倍、2倍及び4倍希釈液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の含水液の劣化度判定方法、
を提供するものである。
本発明によれば、腐敗により劣化が進行する含水液、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などの水系潤滑剤、あるいは水系金属熱処理液などの工業用含水液の劣化度を、被劣化度測定含水液に使用する原液の希釈液における耐腐敗性能を基準にして、簡易にかつ迅速に判定する方法を提供することができる。
本発明の含水液の劣化度判定方法は、腐敗により劣化が進行する含水液に対して適用される方法であって、被劣化度測定含水液及び該含水液に使用する原液に対して、以下に示すように特定の希釈操作を行うと共に、被劣化度測定含水液の各希釈液及び各原液希釈液の耐腐敗性能(生菌数)をそれぞれ求め、被劣化度測定含水液とほぼ同じ濃度の原液希釈液の耐腐敗性能を基準にして、前記被劣化度測定含水液の耐腐敗性能を求め、当該含水液の劣化度を判定する方法である。
本発明の劣化度判定方法においては、(A)、(B)及び(C)の操作が施される。
[(A)操作]
まず、被劣化度測定含水液に使用する含水液原液にイオン交換水を加えて、前記被劣化度測定含水液とほぼ同程度の濃度を有する原液希釈液a−0を調製する。次いでこのa−0液に、所定の割合のイオン交換水を加えて、複数の原液希釈液a−1、a−2、・・・a−n液を調製し、各a−0、a−1、a−2、・・・a−n液に、腐敗菌の所定量を同量ずつ投入して、各原液希釈液における設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する。
ここで、設定温度とは、通常室温であり、例えば20℃、25℃、又は30℃など任意に選ぶことができる。また、設定時間とは、通常24時間であるが、12時間あるいは48時間など任意に選ぶことができる。但し、(A)操作における設定温度と設定時間は、(B)操作における設定温度と設定時間と同一である。
[(B)操作]
次に、前記(A)操作における原液希釈液a−0の代わりに、被劣化度測定含水液b−0を用い、このb−0液に、前記(A)操作と同じ割合のイオン交換水を加えて、複数の被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−n液を調製し、各b−0、b−1、b−2、・・・b−n液に、前記(A)操作と同じ量の腐敗菌を同量ずつ投入して、被劣化度測定含水液の各希釈液における(A)操作と同じ設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する。
前記(A)操作及び(B)操作において、各液に同量ずつ投入する腐敗菌は、同一の腐敗菌培養液を投入すればよく、その種類については特に制限はない。この腐敗菌培養液としては、通常水に腐敗菌と培養用栄養分を加え、温度およそ15〜35℃、pH5.5〜8.5の条件で培養した菌濃度107個/ml以上の培養液が用いられる。また、各液に対する前記腐敗菌培養液の投入量については特に制限はないが、通常10容量%程度で充分である。
さらに、原液希釈液a−1、a−2、・・・a−nとしては、通常それぞれ原液希釈液a−0の4/3倍、2倍及び4倍希釈液を、また被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−nとしては、通常それぞれ被劣化度測定含水液b−0の4/3倍、2倍及び4倍希釈液を採用することができる。
[(C)操作]
前記(A)操作における各原液希釈液の生菌数と、前記(B)操作における被劣化度測定含水液の各希釈液の生菌数を対比して、被劣化度測定含水液の耐腐敗性能を求めることにより、当該含水液の劣化度を判定する。
なお、前記腐敗菌培養液の中には、一般細菌の他に、通常糸状菌(カビ)、酵母及び硫酸還元菌などの微生物が含まれている。したがって、前記(A)操作及び(B)操作において、各液における設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数の測定と共に、前記各微生物の数を測定することにより、各微生物に基づく被劣化度測定含水液の劣化度を判定することが可能となる。しかし、これらの微生物の数による当該含水液の定量的な劣化度の判定は、前記微生物の繁殖力などの面から、一般細菌に比べて困難である。
また、前記(A)操作及び(B)操作において、各液における設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数の測定と共に、防錆性能を測定することにより、防錆性能に基づく被劣化度測定含水液の劣化度を判定することが可能となる。しかし、この場合においても防錆性能による当該含水液の定量的な劣化度の判定は、一般細菌の生菌数による劣化度の判定に比べて困難である。
このような事情から、本発明においては、被劣化度測定含水液の劣化度判定は、一般細菌の生菌数に基づいて行うことを必須とする。
次に、前記(C)操作により、被劣化度測定含水液の劣化度を判定する具体的な方法について説明する。
(1)a−0液の一般細菌数よりもb−0液の一般細菌数が多い場合(通常例)
原液希釈液の中で、b−0液の一般細菌数と同じレベル又は近似したレベルの一般細菌数を有する原液希釈液a−Xを選び、その希釈倍数がa−0液に対してX倍の場合、b−0液の耐腐敗性能は、前記原液希釈液a−Xとb−0液における一般細菌数の差、糸状菌、酵母及び硫酸還元菌の繁殖程度、防錆性能を考慮して、a−0液の1/X相当、1/Xより少し良い、又は1/X以下程度に低下していると判定する。
(2)a−0液の一般細菌数とb−0液の一般細菌数が同じレベルの場合(特殊例)
被劣化度測定含水液b−0の希釈液の中で、一般細菌数が増加している希釈液b−Y(希釈倍率Y倍)を選ぶと共に、原液希釈液の中で、前記希釈液b−Yの一般細菌数と同レベル、又は近似したレベルの一般細菌数を有する原液希釈液a−Xを選び、その希釈倍数がa−0液に対してX倍の場合、b−0液の耐腐敗性能は、前記原液希釈液a−Xとb−Y液における一般細菌数の差、糸状菌、酵母及び硫酸還元菌の繁殖程度、防錆性能を考慮して、a−0液のY×1/X相当、Y×1/Xより少し良い、Y×1/X以下程度に低下していると判定する。
本発明の含水液の劣化度判定方法は、腐敗により劣化が進行する工業用含水液に対して適用される。当該工業用含水液の種類については、腐敗により劣化が進行するものであればよく、特に制限はないが、例えば水系潤滑剤や水系金属熱処理液などに適用することができる。また、当該工業用含水液は、水溶液型、水性エマルション型のいずれであってもよい。
前記水系潤滑剤としては、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などを挙げることができる。
[水系金属塑性加工用潤滑剤]
従来より、鋼やアルミニウムなどの金属の温間・熱間塑性加工用潤滑剤には、固体潤滑剤として主に黒鉛を水に分散させたものが使用されている。しかし、黒鉛の使用はその飛散による作業環境の悪化の問題があるため、非黒鉛系潤滑剤が種々検討されている。非黒鉛系潤滑剤としては、例えばホウ素化合物、リン化合物、芳香族カルボン酸アルカリ金属塩などを含む水溶性潤滑剤がある。
一方、マグネシウム合金板を被加工材とするプレス加工は、薄肉製品への対応を可能とし、加工後の表面研削も必要ない。しかし、マグネシウム合金は、常温での加工性に乏しいため、プレス加工時の温度は、通常、200〜300℃で行われている。このプレス加工の際に、プレス油の潤滑性能が不足すると、被加工材の破断、金型への凝着などが発生する。このため、専用の潤滑剤が用いられる。
上記のように、マグネシウム合金板の塑性加工に用いる潤滑剤は、温間、一般的には100〜300℃の温度域において、被加工材の破断、金型への凝着を抑制する潤滑性能を有することにより高い加工性能を示すと共に、通常の脱脂工程で除去できる性能を示すことが必用である。
マグネシウム合金板の温間加工においては、これまで固体被膜系潤滑剤が使用されてきたが、この場合加工後に脱膜処理が必要で、簡便な脱脂処理ができないため、生産性に劣るのを免れなかった。
一方、油系潤滑剤では、プレス時に金型が300℃程度になるため、油煙が生じ、環境面で問題があると共に、加工性に劣り、加工キズが発生したり、割れが生じたりするおそれがある。したがって、油系潤滑剤は使用しにくいという問題があった。
そのため、近年、脱脂性に優れ、作業環境の悪化を招くことのないマグネシウム合金用塑性加工用潤滑剤として、水系潤滑剤、例えば脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ土類金属塩、及びアルカリ金属水酸化物を含む水溶液からなる組成物などが開発されている。
本発明は、このような水系金属塑性加工用潤滑剤に適用することができる。
[水系金属切削・研削加工用潤滑剤]
カーメーカー関連の工場では、部品が大型化し、トランスファーマシンで切削、研削などのさまざまな金属加工を流れ作業で行っている。トランスファーマシンは管理コストの低減のために統一された切削・研削油剤を、集中タンクから多くの工程へ供給している。したがって、大量の油剤を必要とし、タンクが大型化するため、火災対策上水溶性切削・研削油が使用されることが多い。そのため、水溶性切削・研削油を交換するのに莫大な費用がかかり、原液と水の補給を繰り返しながら使用できる油剤寿命の長い水溶性切削・研削油が求められていた。一般に、水溶性切削・研削油剤は微生物による腐敗劣化という問題があり、それを防ぐために抗菌剤としてアルキルアミン等が使用されている。しかし、油溶性のアルキルアミンを水中に乳化・分散させるため、多量の脂肪酸のアミン塩を必要としていた。このことは、脂肪酸が加工くず、機械油に含まれる耐摩耗性向上剤と反応して、水溶性切削・研削油の濃度低下、抗菌性の低下を招き、油剤の劣化につながっていた。
したがって、近年油剤寿命の長い切削・研削加工用の潤滑油に好適な水溶性金属加工油剤が開発されている。
本発明は、このような水系金属切削・研削加工用潤滑剤に適用することができる。
[水系作動液]
油圧装置は産業界に広く取り入れられ、生産性の向上に貢献している。これらの油圧装置は油圧作動油により駆動されているが、鉄鋼や自動車産業などでは、高温の金属を扱う装置や加熱炉、電気スパークが生じる機器などの近くで使用する場合が多く、各種の難燃性作動油が用いられている。難燃性作動油のうち含水系作動液は、難燃性にも優れ、かつそのコストが合成油系作動油に比べ安価であることから、広く利用されている。この含水系作動液には水溶液型と水性エマルション型がある。代表的な含水系作動液である水−グリコール系作動液は、水溶液型であり、分離や腐敗の心配がなく、不燃性、高温安定性等の優れた性能を有している。
本発明は、このような水系作動液に適用することができる。
[水系金属熱処理液]
焼入れ処理などの金属熱処理に用いられる熱処理液は、水溶液型や水性エマルション型の水系及び油系に大別される。水系熱処理液は冷却能が大きく、また油を用いないので公害や火災の危険性が少ない等の利点を有している。その反面、水系熱処理液は、焼割れと称する処理体の割れ損傷を発生させやすいという欠点を有している。水は熱容量が大きく、また粘度が低くて対流を起こしやすい。このため、処理体は水系熱処理液によって極めて短時間に熱を奪われ、急激に冷却されるからである。
かかる欠点を解決するために、水系熱処理液に種々の水溶性ポリマーを配合する方法が知られている。水系熱処理液に水溶性ポリマーを配合すると、粘度が高くなって対流が抑制され、その結果焼割れを防止することができる。水溶性ポリマーをしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの質量比が75:25のランダム共重合体等のポリオキシアルキレンや、オレフィンと無水マレイン酸との共重合体の塩などが用いられている。
本発明は、このような水系熱処理液に適用することができる。
前記の各種工業用含水液は、使用中に経時により、細菌、かび、酵母などの微生物の作用によって、劣化が生じ、異臭の発生、スライムの生成、エマルションの破壊、錆の発生などを引き起こし、作業環境に、あるいは含水液自体や、工作機械、被工作物などに対して重大な影響を与えるおそれがある。したがって、当該工業用含水液には、通常抗菌剤や防腐剤などが添加されている。
この抗菌剤や防腐剤としては、従来公知の化合物、例えばo−フェニルフェノール、o−フェニルフェノールNa塩、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、p−クロロ−m−キシレノールなどのフェノール系化合物;2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンなどのホルムアルデヒド供与体化合物;サリチルアニリド系化合物;メチレンビスチオシアナート、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン、4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンなどのその他化合物を挙げることができる。
細菌、かび、酵母などの微生物の作用により、劣化が生じると、前述のように好ましくない事態を招来する。したがって、従来、使用中の含水液を定期的にサンプリングして分析を行い、その劣化度を測定し、該劣化度がある値以上になれば、バージン含水液と取り換える作業が行われている。
しかしながら、これまでの劣化度の測定方法は煩雑な操作を必用とし、時間がかかりすぎるという問題があった。
これに対し、本発明の含水液の劣化度判定方法は、簡易にかつ迅速に行うことができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、被劣化度測定水系金属加工用潤滑剤、その希釈液及び前記潤滑剤に使用する原液の希釈液における諸特性は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)一般細菌の生菌数
細菌数測定簡易培養基「イージーカルトTTC」(商品名、ORION DIAGNOSTICA(株)製)を用いて測定した。
(2)糸状菌(カビ)の繁殖度
細菌数測定簡易培養基「イージーカルトM」(商品名、ORION DIAGNOSTICA(株)製)を用いて測定した。
H:強度
M:中度
S:軽度
(3)酵母の生菌数
細菌数測定簡易培養基「イージーカルトM」(商品名、ORION DIAGNOSTICA(株)製)を用いて測定した。
(4)硫酸還元菌の繁殖度
細菌数測定簡易培養基「イージーカルトS」(商品名、ORION DIAGNOSTICA(株)製)を用いて測定した。
H:強度
M:中度
S:軽度
(5)防錆性能
DIN(51360)Teil2に基づき、0、1、2、3及び4点の5段階で評価した。0点が最も良く、4点が最も悪い。
調製例
下記の方法に従って、菌濃度107個/ml以上の腐敗菌培養液を調製した。
SDC培地「ダイゴ」(Soybean−Casein Digest Broth “DAIGO”:商品名、日本製薬(株)製)30gに水lLを加えた培地液に劣化液100mlを加え、25〜30℃、7日間空気を吹き込んで調整した。
実施例1
水系金属加工用潤滑剤[出光興産(株)製、「商品名ダフニーアルファクールEA
」]の使用液(ダフニーアルファクールEA原液の約30倍希釈液)について、劣化度判定試験を行った。
(1)ダフニーアルファクールEA原液の希釈液の調製
水系金属加工用潤滑剤「ダフニーアルファクールEA」(原液)にイオン交換水を加えて、原液30倍希釈液aI−0を調製し、aI−0液に、所定の割合のイオン交換水を加えて、原液40倍希釈液aI−1(aI−0に対し4/3倍希釈液)、原液60倍希釈液aI−2(aI−0に対し4/2倍希釈液)及び原液120倍希釈液aI−3(aI−0に対し、4/1倍希釈液)を調製した。
(2)ダフニーアルファクールEA使用液の希釈液の調製
ダフニーアルファクールEA使用液(ダフニーアルファクールEA原液の約30倍の希釈液)bI−0に、所定の割合のイオン交換水を加えて、ダフニーアルファクールEA使用液の希釈液bI−1(bI−0に対し、4/3倍希釈液)、bI−2(bI−0に対し4/2倍希釈液)及びbI−3(bI−0に対し、4/1倍希釈液)を調製した。
(3)ダフニーアルファクールEA使用液bI−0の劣化度判定
前記(1)における各ダフニーアルファクールEA原液の希釈液aI−0、aI−1、aI−2及びaI−3、並びに前記(2)におけるダフニーアルファクールEA使用液bI−0、その各希釈液bI−1、bI−2及びbI−3に対し、それぞれ、調製例1で得た菌濃度107個/ml以上の腐敗菌培養液を10容量%の割合で添加した。
室温で24時間放置したのち、各液における一般細菌および酵母の生菌数を測定すると共に、糸状菌及び硫酸還元菌の繁殖度を求めた。
また、腐敗菌倍養液添加初期、及び腐敗菌培養液を添加して室温で24時間放置後の各液のpHを測定し、さらに、各液の防錆性能を求めた。
これらの結果を第1表に示す。
Figure 2007061019
第1表から、使用液bI−0における一般細菌の生菌数は107であり、これは原液120倍希釈液aI−3における一般細菌の生菌数107に対応する。aI−3液はaI−0液の4/1倍希釈液であるから、bI−0液の一般細菌に基づく耐腐敗性能は、aI−0液の1/4に低下していると推定される。
また、aI−0液の糸状菌の繁殖度及び酵母の生菌数はいずれもaI−0液のそれよりも多いことから、bI−0液の劣化度は、aI−0液の1/4以下に低下していると判定することができる。なお、bI−0液とaI−3液の防錆性能は同レベルである。
実施例2
水系金属加工用潤滑剤[出光興産(株)製、商品名「ダフニーアルファクールEW
」]の使用液(A)(ダフニーアルファクールEW原液の約30倍希釈液)について、劣化度判定試験を行った。
(1)ダフニーアルファクールEW原液の希釈液の調製
実施例1(2)において、ダフニーアルファクールEA原液の代わりに、ダフニーアルファクールEW原液を用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、原液30倍希釈液aII−0、40倍希釈液aII−1、60倍希釈液aII−2及び120倍希釈液aII−3を調製した。
(2)ダフニーアルファクールEW使用液(A)の希釈液の調製
実施例1(2)において、ダフニーアルファクールEA使用液bI−0の代わりに、ダフニーアルファクールEW使用液(A)bII−0(ダフニーアルファクールEW原液の約30倍希釈液)を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、ダフニーアルファクールEW使用液(A)の希釈液bII−1、bII−2及びbII−3を調製した。
(3)ダフニーアルファクールEW使用液(A)bII−0の劣化度判定
前記(1)における各ダフニーアルファクールEW原液の希釈液aII−0、aII−1、aII−2及びaII−3、並びに前記(2)におけるダフニーアルファクールEW使用液(A)bII−0、その各希釈液bII−1,bII−2、及びbII−3に対し、実施例1(3)と同様な操作を行った。
これらの結果を第2表に示す。
Figure 2007061019
第2表から、使用液(A)bII−0における一般細菌の生菌数は106であり、一方、原液120倍希釈液aII−3における一般細菌生菌数は105である。したがって、bII−0液の一般細菌に基づく耐腐敗性能は、aII−0液の1/4以下に低下していると推定され、bII−0液の劣化度は、aII−0液の1/4以下に低下していると判定することができる。
実施例3
水系金属加工用潤滑剤[出光興産(株)製、商品名「ダフニーアルファクールEW
」]の使用液(B)(ダフニーアルファクールEW原液の約30倍希釈液)について、劣化度判定試験を行った。
(1)アルファクールEW原液の希釈液の調製
実施例1(1)において、ダフニーアルファクールEA原液の代わりに、アルファクールEW原液を用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、原液30倍希釈液aIII−0、40倍希釈液aIII−1、60倍希釈液aIII−2及び120倍希釈液aIII−3を調製した。
(2)ダフニーアルファクールEW使用液(B)の希釈液の調製
実施例1(2)において、ダフニーアルファクールEA使用液bI−0の代わりに、ダフニーアルファクールEW使用液(B)bIII−0(ダフニーアルファクールEW原液の約30倍希釈液)を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、ダフニーアルファクールEW使用液(B)の希釈液bIII−1、bIII−2及びbIII−3調製した。
(3)ダフニーアルファクールEW使用液(B)bIII−0の劣化度判定
前記(1)における各ダフニーアルファクールEW原液の希釈液aIII−0、aIII−1、aIII−2及びaIII−3、並びに前記(2)におけるダフニーアルファクールEW使用液(B)bIII−0、その各希釈液bIII−1,bIII−2、及びbIII−3に対し、実施例1(3)と同様な操作を行った。
これらの結果を第3表に示す。
Figure 2007061019
第3表から、使用液(B)bIII−0における各微生物の繁殖度は、原液30倍希釈液aIII−0よりも、むしろ少なく、また、使用液(B)の4/2倍希釈液の耐腐敗性能とほぼ同等である。したがって、bIII−0液の劣化度は、aIII−0液に対してほとんど低下していないと判定される。
実施例4
水系金属加工用潤滑剤[出光興産(株)製、商品名「ダフニーアルファクールEW
」]の使用液(C)(アルファクールEW原液の約30倍希釈液)について、劣化度判定試験を行った。
(1)ダフニーアルファクールEW原液の希釈液の調製
実施例1(1)において、ダフニーアルファクールEA原液の代わりに、ダフニーアルファクールEW原液を用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、原液30倍希釈液aIV−0、40倍希釈液aIV−1、60倍希釈液aIV−2及び120倍希釈液aIV−3を調製した。
(2)ダフニーアルファクールEW使用液(C)の希釈液の調製
実施例1(2)において、ダフニーアルファクールEA使用液bI−0の代わりに、アルファクールEW使用液(C)bIV−0(ダフニーアルファクールEW原液の約30倍希釈液)を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、ダフニーアルファクールEW使用液(C)の希釈液aIV−1、aIV−2、及びaIV−3調製した。
(3)ダフニーアルファクールEW使用液(C)bIV−0の劣化度判定
前記(1)における各ダフニーアルファクールEW原液の希釈液aIV−0、aIV−1、aIV−2及びaIV−3、並びに前記(2)におけるダフニーアルファクールEW使用液(C)bIV−0、その各希釈液bIV−1,bIV−2、及びbIV−3に対し、実施例1(3)と同様な操作を行った。
これらの結果を第4表に示す。
Figure 2007061019
第1表から、使用液(C)及びその各希釈液と、各原液希釈液を比較した場合、一般細菌の生菌数及び硫酸還元菌繁殖度から、使用液(C)希釈液bIV−1(bIV−0液の4/3倍希釈液、一般細菌:106、硫酸還元菌:H)の耐腐敗性能は、それに近似する原液希釈液aIV−3(aIV−0液の4/1倍希釈液、一般細菌:105、硫酸還元菌:H)の耐腐敗性能よりも若干劣ることが分かる。
したがって、使用液(C)bIV−0の劣化度は、aIV−0に対して(1/4×4/3=1/3)以下に低下していると判定される。
本発明の含水液の劣化度判定方法は、腐敗により劣化が進行する工業用含水液の劣化度を、簡易にかつ迅速に判定することができる。
本発明の方法は、例えば水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤及び水系作動液などの水系潤滑剤あるいは水系金属処理液などに適用することができる。

Claims (5)

  1. (A)被劣化度測定含水液に使用する含水液原液にイオン交換水を加えて、前記被劣化度測定含水液とほぼ同程度の濃度を有する原液希釈液a−0を調製したのち、このa−0液に、所定の割合のイオン交換水を加えて、複数の原液希釈液a−1、a−2、・・・a−n液を調製し、各a−0、a−1、a−2、・・・a−n液に、腐敗菌の所定量を同量ずつ投入して、各原液希釈液における設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する操作を行うと共に、
    (B)前記(A)操作における原液希釈液a−0代わりに、被劣化度測定含水液b−0を用い、このb−0液に、前記(A)操作と同じ割合のイオン交換水を加えて、複数の被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−n液を調製し、各b−0、b−1、b−2、・・・b−n液に、前記(A)操作と同じ量の腐敗菌を同量ずつ投入して、被劣化度測定含水液の各希釈液における前記(A)操作と同じ設定温度、設定時間後の一般細菌の生菌数を測定する操作を行い、
    (C)前記(A)操作における各原液希釈液の生菌数と、前記(B)操作における被劣化度測定含水液の各希釈液の生菌数を、対比し、原液希釈液a−0を基準にして、被劣化度測定含水液b−0の耐腐敗性能を求めることを特徴とする、含水液の劣化度判定方法。
  2. 被劣化度測定含水液が、水系潤滑剤又は水系金属熱処理液である請求項1に記載の含水液の劣化度判定方法。
  3. 水系潤滑剤が、水系金属塑性加工用潤滑剤、水系金属切削・研削加工用潤滑剤
    又は水系作動液である請求項2に記載の含水液の劣化度判定方法。
  4. (A)操作及び(B)操作において、菌濃度107個/ml以上の腐敗菌培養液を、各液に対して10容量%の割合で加える請求項1〜3のいずれかに記載の含水液の劣化度判定方法。
  5. 原液希釈液a−1、a−2、・・・a−nが、それぞれ原液希釈液a−0の4/3倍、2倍及び4倍希釈液であり、かつ被劣化度測定含水液の希釈液b−1、b−2、・・・b−nがそれぞれ被劣化度測定含水液b−0の4/3倍、2倍、及び4倍希釈液である請求項1〜4のいずれかに記載の含水液の劣化度判定方法。
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