JP2007057477A - 病原性大腸菌感染症の予防治療薬のスクリーニング法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング法を提供すること。
【解決手段】 病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む試料に被検体を存在させて、当該EspBタンパク質とミオシンタンパク質との複合体の形成を妨害する被検体を選択することを特徴とする、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング法、並びにスクリーニング試薬。
【選択図】 なし
【解決手段】 病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む試料に被検体を存在させて、当該EspBタンパク質とミオシンタンパク質との複合体の形成を妨害する被検体を選択することを特徴とする、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング法、並びにスクリーニング試薬。
【選択図】 なし
Description
本発明は、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬の創製に有用な、病原因子EspBとミオシンタンパク質との複合体の形成阻害物質のスクリーニング法に関する。
病原性大腸菌は、ヒト、犬等の幅広い宿主に激しい腸炎を引き起こす病原菌である。病原性大腸菌には、主に2種類の病原菌が存在する。出血性の激しい腸炎を引き起こす、O157に代表される腸管出血性大腸菌EHEC(Enterohaemorrhagic Escherichia coli)と、サルモネラ様の劇的な腸炎を引き起こす腸管病原性大腸菌EPEC(Enteropathogenic Escherichia coli)である。前者は、ベロ毒素を産生、分泌することにより、溶血性尿毒症(HUS;haemolytic uraemic syndrome)を引き起こし、わが国でもたびたび死者が出ている。
これら2種類の病原菌のゲノム上には、41種類ものORF(open reading frame)を有するLEE(locus of enterocyte effacement)領域が存在する。この領域により病原性を発揮する。口から取り込まれた病原性大腸菌は、小腸に到達し、絨毛表面を覆っている腸管上皮細胞に特殊化した繊毛を介して弱く結合する。その後、シリンジ様のタイプIII 分泌装置によって、LEE領域にコードされているEspB(Enteropathogenic Escherichia coli secreted protein B)、EspF等の種々の病原因子が腸管上皮細胞内に分泌されると、腸管上皮細胞の微絨毛が消失する。微絨毛の消失により、病原性大腸菌が腸管上皮細胞の細胞膜に接近できるようになり、病原性大腸菌の細胞外膜に存在する病原因子intiminと分泌された病原因子Tirとが結合し、感染直下にアクチンフィラメントの集積が誘導され、台座構造と呼ばれる足場が形成される。これにより、病原性大腸菌は腸管に固く結合できるようになる。従って、病原因子intiminと病原因子Tirとの結合を阻害できれば、台座構造形成を阻害することができ、病原性大腸菌の腸管への定着を防止することができる(特許文献1参照)。
上記EspBは、タイプIII 分泌装置の膜孔形成機能を有する病原性発揮に必須の因子であることが知られているが(非特許文献1参照)、近年になって、EspBが細胞質にも移行することが発見され(非特許文献2参照)、膜孔形成以外の機能も有している可能性が示唆されている。また、病原性大腸菌は、病原因子の分泌に依存して腸管免疫系の初期段階で重要な貪食作用を抑制して、腸管免疫系から逃れることもできるが(非特許文献3参照)、詳細なメカニズムは明らかにされていない。
一方、病原性大腸菌感染症の治療薬としては抗生物質が多用されているが、耐性菌の出現が懸念されている。また、O157感染においては、抗生物質がO157からベロ毒素の大量の放出を招き、危険である。このようなことから新しい病原性大腸菌感染症の予防・治療薬が求められている。
特表2001-522605号公報
Infect Immun. 67(11): 6019-6025
Infect Immun. 67(11): 5501-5507
Infect Immun. 67(2): 490-495
しかしながら、特許文献1記載のスクリーニング法は、台座構造形成の阻害物質に関するものであり、病原性大腸菌感染症の発症において重要な微絨毛破壊・台座構造形成及び貪食抑制という2種のステップを阻害する物質をスクリーニングすることは困難である。
従って、本発明の目的は、病原性大腸菌感染症の発症に必須であるEspBタンパク質の宿主細胞内での機能を解明すると共に、当該EspBタンパク質を介した感染症の予防・治療を目的とした、予防・治療薬のスクリーニング法を提供することにある。
従って、本発明の目的は、病原性大腸菌感染症の発症に必須であるEspBタンパク質の宿主細胞内での機能を解明すると共に、当該EspBタンパク質を介した感染症の予防・治療を目的とした、予防・治療薬のスクリーニング法を提供することにある。
本発明者らは、かかる現状に鑑み、病原性大腸菌感染症の予防・治療薬のスクリーニング法について鋭意検討したところ、病原因子EspBタンパク質の標的タンパク質がミオシンタンパク質であることを初めて同定し、EspBが宿主細胞内でミオシンと結合することによりミオシンの機能を阻害することを見出した。また、EspBとミオシンとの反応系に特定の化合物を存在させて、EspBへのミオシンの結合量を測定すれば病原性大腸菌感染症の予防・治療薬となり得る阻害剤を簡便にスクリーニングできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む試料に被検体を存在させて、当該EspBタンパク質とミオシンタンパク質との複合体の形成を妨害する被検体を選択することを特徴とする、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング法を提供する。
また、本発明は、病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング試薬を提供する。
また、本発明は、病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング試薬を提供する。
本発明により、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬を効率的にスクリーニングすることができる。
EspBタンパク質(以下、「EspB」と称する)の病原性大腸菌感染症の発症における役割を明らかにするため、まず、EspBの宿主細胞内の結合タンパク質(EspB結合タンパク質)を同定した。尚、EspBのアミノ酸配列及びEspBをコードする遺伝子の塩基配列は公知である[NCBI受託番号 EPEC:AAK26729(アミノ酸配列)、AF200363(塩基配列);EHEC:NP_312581(アミノ酸配列)、NC_002695(塩基配列);DBS100(Citrobacter rodentium):AAL06383(アミノ酸配列)、AF311901(塩基配列)]。EspB結合タンパク質の同定は、EspBが病原性大腸菌によって感染されたHeLa細胞の細胞質に移行すること(Infect Immun. 67(11): 5501-5507)、EspBによるアクチンストレスファイバーへの影響がHeLa細胞で見られていたことから、本発明者らによって開発されたラテックス粒子を用いて、HeLa細胞の細胞質抽出液からEspB結合タンパク質を精製することにより行った。
EspB結合タンパク質の同定に用いるEspBの製造法は、EspBを簡便に大量に安定して製造する方法であれば特に制限されず、例えば通常の遺伝子工学的手法を挙げることができる。EspBの製造は、より詳細には、当該espB遺伝子が宿主細胞中で発現できる発現ベクターを作製し、これを宿主細胞内に導入して形質転換し、当該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から回収することにより行われる。宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核細胞;COS細胞、チャイニーズ・ハムスターの卵巣細胞、そのジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株、サッカロミセス属酵母細胞等の真核細胞が挙げられるが、発現量の高さ及び可溶性画分として回収可能な点から、大腸菌BL21株が好ましい。EspBは、具体的には、大腸菌BL21株を下記のHisタグタンパク質を発現できるHisタグ融合EspB発現ベクターで形質転換して発現させ、次いでNiレジンにより精製することによって調製することができる。
HeLa細胞の細胞質抽出液は、例えば浮遊状態で飼えるHeLa S3細胞を用い、Dignam等の方法(Nucleic Acids Res. 11: 1475-1489)に準じて調製すればよい。
本発明で用いるラテックス粒子は、粒子表面にトシル基を有し、このトシル基と、Hisタグを末端に結合させたHisタグ融合タンパク質のHisタグ中のイミダゾール基との共有結合によって、Hisタグ融合タンパク質を固定化できるものである(以下、「トシル化ラテックス粒子」と称する)。トシル化ラテックス粒子は、粒子径が200 nmと非常に小さいため、精製のバックグラウンドが低いという利点を有する。トシル化ラテックス粒子及びトシル化ラテックス粒子へのEspBの固定化反応の詳細については、Nature Biotechnology 18:877-881; Biointerfaces 10:41-49; Virology 320:144-155等に記載されている。また、上記トシル化ラテックス粒子以外に、タンパク質の固定に通常用いられるアガロースビーズ、セファロースビーズ、磁性ビーズ、マイクロタイタープレート、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等の固相支持体を用いることができる。
EspB結合タンパク質は、上記His-EspB固定化トシル化ラテックス粒子を上記HeLa細胞の細胞質抽出液と混合した後、当該ラテックス粒子に結合した細胞質抽出液中のタンパク質を溶出することにより精製することができる。
この精製されたEspB結合タンパク質は、後記実施例に示すマスペプチドフットプリンティング法により、細胞内のアクチンフィラメントと相互作用し、かつ腸管上皮の微絨毛の形成及び貪食作用に必須であるミオシンタンパク質であることが判明した。病原性大腸菌の病原因子EspBの宿主細胞内の標的タンパク質の一つがミオシンであることは、本発明において初めて発見されたことである。尚、ミオシンファミリーのうち、ミオシンIC、ミオシンX等についてはそのアミノ酸配列が知られている(NCBI受託番号 ミオシンIC:AAH44891、ミオシンX:NP_036466)。
上記のように、EspB結合タンパク質の一つがミオシンであることが明らかとなったので、次に、EspBのどの部位がミオシンのどの部位に結合するかを後記のタンパク質相互作用解析法を用いて解析した。
具体的には、EspBの特定の位置のポリペプチドを欠損させた各種のEspB部分欠損変異体を大腸菌BL21株で作製し、これとミオシンタンパク質を発現した細胞の細胞質抽出液とを混合して、EspBと結合したミオシンタンパク質を検出した。その結果、EspB中央付近の約50アミノ酸(以下、「ミオシン結合サイト」と称する)を欠損した組み換えタンパク質では、ミオシンタンパク質との共沈殿が認められず、EspBの当該ミオシン結合サイトがミオシンタンパク質との結合ドメインであることが明らかとなった。このEspBの中央付近の約50アミノ酸はEspBタンパク質鎖の157番〜209番のアミノ酸配列から成るポリペプチドに相当する。更に、上記の中央付近のポリペプチドを欠損したEspB部分欠損変異体を発現する変異型Citrobacter rodentiumを用いて、EspBとミオシンタンパク質との複合体の感染症発症における意義を解析した。当該変異型Citrobacter rodentiumは、例えばpCACTUSベクターを用いた遺伝子破壊法によりEspB欠損Citrobacter rodentiumを作製した後、これにタンパク質発現用ベクターを用いて当該EspB部分欠損変異体を導入することによって作製できる。図4に示すように、ミオシン結合サイトを欠いたEspB変異体を発現する変異型Citrobacter rodentiumをマウスに感染させた場合には、マウスが100%生存したことから、EspBとミオシンタンパク質との結合により病原性大腸菌感染症が発症することがin vivoにおいても確認された。
具体的には、EspBの特定の位置のポリペプチドを欠損させた各種のEspB部分欠損変異体を大腸菌BL21株で作製し、これとミオシンタンパク質を発現した細胞の細胞質抽出液とを混合して、EspBと結合したミオシンタンパク質を検出した。その結果、EspB中央付近の約50アミノ酸(以下、「ミオシン結合サイト」と称する)を欠損した組み換えタンパク質では、ミオシンタンパク質との共沈殿が認められず、EspBの当該ミオシン結合サイトがミオシンタンパク質との結合ドメインであることが明らかとなった。このEspBの中央付近の約50アミノ酸はEspBタンパク質鎖の157番〜209番のアミノ酸配列から成るポリペプチドに相当する。更に、上記の中央付近のポリペプチドを欠損したEspB部分欠損変異体を発現する変異型Citrobacter rodentiumを用いて、EspBとミオシンタンパク質との複合体の感染症発症における意義を解析した。当該変異型Citrobacter rodentiumは、例えばpCACTUSベクターを用いた遺伝子破壊法によりEspB欠損Citrobacter rodentiumを作製した後、これにタンパク質発現用ベクターを用いて当該EspB部分欠損変異体を導入することによって作製できる。図4に示すように、ミオシン結合サイトを欠いたEspB変異体を発現する変異型Citrobacter rodentiumをマウスに感染させた場合には、マウスが100%生存したことから、EspBとミオシンタンパク質との結合により病原性大腸菌感染症が発症することがin vivoにおいても確認された。
次に、ミオシンタンパク質の特定の位置のポリペプチドを欠損させた数種類のミオシン部分欠損変異体を大腸菌BL21株で作製し、これとEspBとを混合して、EspBと結合したミオシンタンパク質を検出した。その結果、ミオシンタンパク質のモータードメインと呼ばれるN末端側領域のポリペプチド、特にそのモータードメイン中のC末端側領域のポリペプチド(アクチン結合サイト)がEspBとの結合に関与していることが明らかとなった。このアクチン結合サイトは、ミオシンタンパク質鎖のほぼ中央に位置し、ミオシンファミリーの一つであるミオシンICの場合には、500番〜698番のアミノ酸配列から成る。
EspB結合タンパク質の検出方法としては、当業者に周知の方法を使用することができ、例えばGSTプルダウン法、免疫沈降法等のタンパク質相互作用解析法が挙げられる。また、多数の被検体を同時に解析する場合には、簡便性やコストの点からイースト・トゥー・ハイブリッド(Yeast Two Hybrid)法が好ましい。
従って、EspBとミオシンタンパク質との結合、好ましくはEspBとミオシンタンパク質のアクチン結合サイトとの結合を阻害できれば、その阻害物質が病原性大腸菌感染症の有効な予防及び/又は治療薬になると考えられる。そこで、次に、かかる阻害物質をスクリーニングする本発明の方法について説明する。すなわち、本発明のスクリーニング法は、EspBとミオシンタンパク質との反応系に被検体を存在させて、EspBとミオシタンパク質との複合体の形成が阻害されるかを、被検体存在下でのEspBに対するミオシンの結合量と被検体非存在下でのその量とを比較することによって評価するものである。
本発明のスクリーニング法では、まず、EspB又はミオシンタンパク質のいずれかを前記固体支持体に固定させる。固相支持体としては、前記の固体支持体のいずれも使用できるが、セファロースビーズが好ましい。次いで、当該固定化EspB又は当該固定化ミオシンにそれぞれミオシンタンパク質又はEspBを反応させ、EspBに結合したミオシンタンパク質の量を前記のタンパク質相互作用解析法、例えばGSTプルダウン法により測定すればよい。
本発明で使用するEspBは、例えば、大腸菌BL21株をHisタグ融合EspB発現ベクターで形質転換して発現させ、次いでNiレジンにより精製することによって調製することができる。また、本発明におけるEspBとしては、ミオシンと結合できるEspB部分欠損変異体も使用できる。
また、ミオシンタンパク質としては、ミオシン発現ベクターにより種々の発現系で発現させた組み換えミオシンが使用できるが、ミオシン発現ベクターを大腸菌BL21株又はCOS7細胞で発現させたものが好ましい。ミオシン発現ベクターは、完全長のミオシンタンパク質を発現できるものでもよいが、前述のアクチン結合サイトに対応するポリペプチド、特にミオシンファミリーの一つであるミオシンICと呼ばれるタンパク質の500番〜698番のアミノ酸からなるポリペプチドを発現できるものが好ましい。また、本発明におけるミオシンタンパク質としては、EspBと結合できる部分欠損変異体も使用できる。
Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグ等のタグ付きミオシンを固相支持体に固定させる場合には、例えば、ミオシンと固相支持体とを0〜約10℃で数時間混合した後、無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)を50〜150 mM含むの緩衝液等を用いて、未反応のミオシンを除去すればよい。次いで、当該固定化ミオシンとEspBとの結合反応は、0〜約10℃で約12〜約24時間で行えばよく、ミオシンとEspBとの複合体の溶出は、SDS等のイオン性界面活性剤を含む緩衝液等を用いて約80〜約100℃で数分間加熱すればよい。
本発明のスクリーニング試薬は、前記のEspB及びミオシンタンパク質の他に、プライマー、制限酵素、逆転写酵素等を適宜含んでいてもよい。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
まず、本実施例に使用した材料を示す。
(1) 培地
LB液体培地:Bacto trypton 10 g、Yeast extract 5 g、NaCl 10 gを脱イオン水1 Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。
25×PBS:NaCl 200 g、Na2HPO4・12H2O 90.7 g、KCl 5 g、KH2PO4 6 gを脱イオン水1Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。25倍希釈して(1×PBS)使用した。
20×TBS:Tris-HCl 63.5 g、TrizmaBASE 11.8 g、NaCl 87 gを脱イオン水1Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。20倍希釈して(1×TBS)使用した。
(1) 培地
LB液体培地:Bacto trypton 10 g、Yeast extract 5 g、NaCl 10 gを脱イオン水1 Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。
25×PBS:NaCl 200 g、Na2HPO4・12H2O 90.7 g、KCl 5 g、KH2PO4 6 gを脱イオン水1Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。25倍希釈して(1×PBS)使用した。
20×TBS:Tris-HCl 63.5 g、TrizmaBASE 11.8 g、NaCl 87 gを脱イオン水1Lに溶かして、110℃で20分間オートクレーブして作製した。20倍希釈して(1×TBS)使用した。
(2) プラスミド
(i) pET-EspB、pGEX-EspB、pET-(His−)-EspB-GST
N末Hisタグ融合EspBタンパク質発現ベクターであるpET-EspBは、共同研究先である東京大学医科学研究所笹川研究室の立野博士より頂いた。
pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspBをコードするDNA断片を、プライマーGST-EspB-F:5'-aaaaggatccatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号1)、プライマーGST-EspB-R:5'-aaaactcgagttacccagctaagcgacccg-3'(配列番号2)により増幅させた。そして、5'末端をBamHI、3'末端をXho Iでそれぞれ切断して、GST融合タンパク質発現ベクターpGEX-6P-1に組み込んだ(pGEX-EspB)。
pGEX-6P-1を鋳型としたPCR法により、GSTをコードするDNA断片を、プライマーGST-F:5'-aaaactcgagatgtcccctatactaggttat-3'(配列番号3)、プライマーGST-R:5'-aaaaggatcctcaatccgattttggaggatggtc-3'(配列番号4)により増幅させた。5'末端をXho I、3'末端をBamHIでそれぞれ切断して、pET14bベクターに組み込んだ(pET14b-GST)。更に、pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspBをコードするDNA断片を、プライマーEspB-GST-F:5'-aaaaccatgggcatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号5)、プライマーEspB-GST-R:5'-aaaactcgaggccgcccccagctaagcgacccgat-3'(配列番号6)により増幅させ、5'末端をNco I、3'末端をXho Iでそれぞれ切断して、pET14b-GSTに組み込んだ(pET-(His−)-EspB-GST:C末GST融合EspBタンパク質発現ベクター)。
(ii) pcDNA-Myosin IC、pcDNA-Myosin IC-His-FLAG
Myosin ICをコードするcDNAは、HeLa細胞cDNAライブラリーからPCR法[プライマーMIC-F:5'-aaaaggatccgatggacagtgcgctcaccg-3'(配列番号7)及びプライマーMIC-R:5'-aaagatatctcaccgataattcagccgtgg-3'(配列番号8)]により増幅させた。PCR産物の5'末端をBam HI、3'末端をXba Iで切断し精製後、哺乳類細胞タンパク質発現ベクターpcDNA3.1(+)に挿入した(pcDNA-Myosin IC)。PCR法により増幅させたDNA断片は、ジデオキシシークエンス法により塩基配列を解析して、確かにMyosin IC遺伝子であることを確認した。
pcDNA-Myosin IC-His-FLAGは、pcDNA-Myosin ICを鋳型としたPCR法により作製した。PCR産物の5'末端にBam HIサイト、3'末端にはHis-FLAG-tag発現用の塩基配列とXba Iサイトを持つようにプライマーMIC-C-FH-F:5'-aaaaggatccgccatggagagtgcgctcaccg-3'(配列番号9)
、プライマーMIC-C-FH-R:
5'-aaatctagacttgtcgtcatccttgtagtcatgatgatgatgatgatgggcaccccgagaattcagccgtggg-3'(配列番号10)を設計しており、これらの制限酵素で切断し精製した後、pcDNA3.1(+)に挿入して作製した。
(iii) pET-(His−)-EspB-Δmid-GST
pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspB変異体(EspBの157番〜209番のアミノ酸配列をコードする遺伝子を欠損したEspB遺伝子)をコードするDNA断片を、プライマーC-GST-EspB-F:5'-aaaaccatgggcatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号11)、プライマーC-GST-EspB-R:5'-aaaactcgaggccgcccccagctaagcgacccgat-3'(配列番号12)、プライマーEspB-m5-F:5'-tacggaaagtatcaataagttgttgaattccgt-3'(配列番号13)、プライマーEspB-m5-R:5'-acttattgatactttccgtagccttgacca-3'(配列番号14)により増幅させ、5'末端をNcoI、3'末端をXhoIでそれぞれ切断して、pET14b-GSTに組み込んで作製した。
PCR反応は、全てKOD-plus-(TOYOBO社)を用い、添付の説明書に従った。PCRにより増幅されたDNAはジデオキシシークエンス法により塩基配列を解析した。
(i) pET-EspB、pGEX-EspB、pET-(His−)-EspB-GST
N末Hisタグ融合EspBタンパク質発現ベクターであるpET-EspBは、共同研究先である東京大学医科学研究所笹川研究室の立野博士より頂いた。
pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspBをコードするDNA断片を、プライマーGST-EspB-F:5'-aaaaggatccatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号1)、プライマーGST-EspB-R:5'-aaaactcgagttacccagctaagcgacccg-3'(配列番号2)により増幅させた。そして、5'末端をBamHI、3'末端をXho Iでそれぞれ切断して、GST融合タンパク質発現ベクターpGEX-6P-1に組み込んだ(pGEX-EspB)。
pGEX-6P-1を鋳型としたPCR法により、GSTをコードするDNA断片を、プライマーGST-F:5'-aaaactcgagatgtcccctatactaggttat-3'(配列番号3)、プライマーGST-R:5'-aaaaggatcctcaatccgattttggaggatggtc-3'(配列番号4)により増幅させた。5'末端をXho I、3'末端をBamHIでそれぞれ切断して、pET14bベクターに組み込んだ(pET14b-GST)。更に、pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspBをコードするDNA断片を、プライマーEspB-GST-F:5'-aaaaccatgggcatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号5)、プライマーEspB-GST-R:5'-aaaactcgaggccgcccccagctaagcgacccgat-3'(配列番号6)により増幅させ、5'末端をNco I、3'末端をXho Iでそれぞれ切断して、pET14b-GSTに組み込んだ(pET-(His−)-EspB-GST:C末GST融合EspBタンパク質発現ベクター)。
(ii) pcDNA-Myosin IC、pcDNA-Myosin IC-His-FLAG
Myosin ICをコードするcDNAは、HeLa細胞cDNAライブラリーからPCR法[プライマーMIC-F:5'-aaaaggatccgatggacagtgcgctcaccg-3'(配列番号7)及びプライマーMIC-R:5'-aaagatatctcaccgataattcagccgtgg-3'(配列番号8)]により増幅させた。PCR産物の5'末端をBam HI、3'末端をXba Iで切断し精製後、哺乳類細胞タンパク質発現ベクターpcDNA3.1(+)に挿入した(pcDNA-Myosin IC)。PCR法により増幅させたDNA断片は、ジデオキシシークエンス法により塩基配列を解析して、確かにMyosin IC遺伝子であることを確認した。
pcDNA-Myosin IC-His-FLAGは、pcDNA-Myosin ICを鋳型としたPCR法により作製した。PCR産物の5'末端にBam HIサイト、3'末端にはHis-FLAG-tag発現用の塩基配列とXba Iサイトを持つようにプライマーMIC-C-FH-F:5'-aaaaggatccgccatggagagtgcgctcaccg-3'(配列番号9)
、プライマーMIC-C-FH-R:
5'-aaatctagacttgtcgtcatccttgtagtcatgatgatgatgatgatgggcaccccgagaattcagccgtggg-3'(配列番号10)を設計しており、これらの制限酵素で切断し精製した後、pcDNA3.1(+)に挿入して作製した。
(iii) pET-(His−)-EspB-Δmid-GST
pET-EspBを鋳型としたPCR法により、EspB変異体(EspBの157番〜209番のアミノ酸配列をコードする遺伝子を欠損したEspB遺伝子)をコードするDNA断片を、プライマーC-GST-EspB-F:5'-aaaaccatgggcatgaatactattgataatactcaag-3'(配列番号11)、プライマーC-GST-EspB-R:5'-aaaactcgaggccgcccccagctaagcgacccgat-3'(配列番号12)、プライマーEspB-m5-F:5'-tacggaaagtatcaataagttgttgaattccgt-3'(配列番号13)、プライマーEspB-m5-R:5'-acttattgatactttccgtagccttgacca-3'(配列番号14)により増幅させ、5'末端をNcoI、3'末端をXhoIでそれぞれ切断して、pET14b-GSTに組み込んで作製した。
PCR反応は、全てKOD-plus-(TOYOBO社)を用い、添付の説明書に従った。PCRにより増幅されたDNAはジデオキシシークエンス法により塩基配列を解析した。
(3) 組換えタンパク質
(i) His-EspB
N末His-tag融合EspBタンパク質(His-EspB)は、pET-EspBで大腸菌BL21株を形質転換し発現させた。形質転換後の1コロニーをLB液体培地(100 μg/ml アンピシリン)で37℃で培養し、吸光度が0.4に達したとき、200 mg/ml IPTG溶液(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を最終濃度1 mMになるように加えて、25℃で4時間培養した。培養終了後、培養液から遠心分離により集菌した。ここからの大腸菌破砕と精製の操作は、pET System(Novagen社)に準じた。Niレジン(QIAGEN社)を用いて、His-EspBを精製した。精製したHis-EspBを、固定化緩衝液(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、50 mM KCl、1 mM EDTA)で3時間、3回透析した後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清をHis-EspBとして回収した。
(ii) GST、GST-EspB及びEspB-GST
pGEX-6P-1、pGEX-EspB、pET-(His−)-EspB-GSTそれぞれで、大腸菌BL21株を形質転換した。その後、上記(i)と同様にして集菌した。NETN緩衝液(20 mM Tris-HCl [pH 7.4]、100 mM NaCl、0.5% NP-40、1 mM EDTA、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁して、超音波処理により大腸菌を破砕した。その後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清を大腸菌破砕液として回収した。
(i) His-EspB
N末His-tag融合EspBタンパク質(His-EspB)は、pET-EspBで大腸菌BL21株を形質転換し発現させた。形質転換後の1コロニーをLB液体培地(100 μg/ml アンピシリン)で37℃で培養し、吸光度が0.4に達したとき、200 mg/ml IPTG溶液(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を最終濃度1 mMになるように加えて、25℃で4時間培養した。培養終了後、培養液から遠心分離により集菌した。ここからの大腸菌破砕と精製の操作は、pET System(Novagen社)に準じた。Niレジン(QIAGEN社)を用いて、His-EspBを精製した。精製したHis-EspBを、固定化緩衝液(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、50 mM KCl、1 mM EDTA)で3時間、3回透析した後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清をHis-EspBとして回収した。
(ii) GST、GST-EspB及びEspB-GST
pGEX-6P-1、pGEX-EspB、pET-(His−)-EspB-GSTそれぞれで、大腸菌BL21株を形質転換した。その後、上記(i)と同様にして集菌した。NETN緩衝液(20 mM Tris-HCl [pH 7.4]、100 mM NaCl、0.5% NP-40、1 mM EDTA、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁して、超音波処理により大腸菌を破砕した。その後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清を大腸菌破砕液として回収した。
実施例1<EspB結合タンパク質の同定>
(1) His-EspBのトシル化ラテックス粒子への固定化
本発明者らが開発したトシル化ラテックス粒子2 mgを、固定化緩衝液で2回洗浄した。その後、精製した上記のHis-EspB 40 μgと混合し、4℃で24時間反応させた(固定化緩衝液を適量加えて、反応体積を800 μlに調整)。コントロール粒子として、固定化緩衝液のみと反応させた粒子も作製した。反応後、洗浄緩衝液1(10 mM Hepes-NaOH ([pH 7.9]、10% グリセロール、50 mM KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT)で2回、洗浄緩衝液2(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、1 M KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT)で2回洗浄して、共有結合していないHis-EspBを取り除いた。1 M Tris-HCl (pH7.9) 1 mlにビーズを懸濁して、4℃で一晩反応させて未反応のトシル基をマスクし、4℃で保存した。
(1) His-EspBのトシル化ラテックス粒子への固定化
本発明者らが開発したトシル化ラテックス粒子2 mgを、固定化緩衝液で2回洗浄した。その後、精製した上記のHis-EspB 40 μgと混合し、4℃で24時間反応させた(固定化緩衝液を適量加えて、反応体積を800 μlに調整)。コントロール粒子として、固定化緩衝液のみと反応させた粒子も作製した。反応後、洗浄緩衝液1(10 mM Hepes-NaOH ([pH 7.9]、10% グリセロール、50 mM KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT)で2回、洗浄緩衝液2(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、1 M KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT)で2回洗浄して、共有結合していないHis-EspBを取り除いた。1 M Tris-HCl (pH7.9) 1 mlにビーズを懸濁して、4℃で一晩反応させて未反応のトシル基をマスクし、4℃で保存した。
(2) HeLa細胞の細胞抽出液の調製
HeLa S3細胞(浮遊状態で飼えるHeLa細胞)をMEM-I(最小必須培地-I)+10% FBS(ウシ胎仔血清)で、37℃で2〜6×105 細胞/mlの範囲内で維持し、培養液の体積が40〜50 Lになるまで継代した。細胞抽出液の調製はDignam等の方法(Nucleic Acids Res 11:1475-1489)を用い、操作は全て4℃で行った。まず培養液を2,000 rpm、300 ml/分の速度で連続遠心し(遠心器:RS-201V(TOMY社))、細胞を回収した。この細胞をPBS(+)(1×PBS、1 mM MgCl2、0.5 mM DTT)で洗浄し、35,000rpm、10分間遠心(GS-6KR(BECKMAN社))した。遠心後の細胞の体積を測り、この5倍量の緩衝液A(10 mM Hepes-NaOH[pH 7.9]、10 mM KCl、1.5 mM MgCl2、0.5% DTT)に懸濁した。氷上で10分間静置した後、2,000 rpm、5分間遠心した(GS-6KR、BECKMAN社)。上清を取り除き、PCV、2倍量の緩衝液Aで懸濁した後、40 mlのDounceホモジナイザーで20回ホモジナイズした。ホモジナイズにより、細胞が破砕され、核が流出しているのを顕微鏡で確認した。この細胞破砕液を2063 rpmで10分間遠心した(遠心器:Avanti30 centrifuge、BECKMAN社)。上層を細胞質画分として回収した。
HeLa S3細胞(浮遊状態で飼えるHeLa細胞)をMEM-I(最小必須培地-I)+10% FBS(ウシ胎仔血清)で、37℃で2〜6×105 細胞/mlの範囲内で維持し、培養液の体積が40〜50 Lになるまで継代した。細胞抽出液の調製はDignam等の方法(Nucleic Acids Res 11:1475-1489)を用い、操作は全て4℃で行った。まず培養液を2,000 rpm、300 ml/分の速度で連続遠心し(遠心器:RS-201V(TOMY社))、細胞を回収した。この細胞をPBS(+)(1×PBS、1 mM MgCl2、0.5 mM DTT)で洗浄し、35,000rpm、10分間遠心(GS-6KR(BECKMAN社))した。遠心後の細胞の体積を測り、この5倍量の緩衝液A(10 mM Hepes-NaOH[pH 7.9]、10 mM KCl、1.5 mM MgCl2、0.5% DTT)に懸濁した。氷上で10分間静置した後、2,000 rpm、5分間遠心した(GS-6KR、BECKMAN社)。上清を取り除き、PCV、2倍量の緩衝液Aで懸濁した後、40 mlのDounceホモジナイザーで20回ホモジナイズした。ホモジナイズにより、細胞が破砕され、核が流出しているのを顕微鏡で確認した。この細胞破砕液を2063 rpmで10分間遠心した(遠心器:Avanti30 centrifuge、BECKMAN社)。上層を細胞質画分として回収した。
(3) EspB結合タンパク質の精製
上記で作製したHis-EspB固定化トシル化ラテックス粒子0.4 mgを、ラテックス結合緩衝液 100 mM(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、100 mM KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で2回洗浄した。全タンパク質量約10 mgのHeLa細胞質抽出液を、洗浄したラテックス粒子と混合し、4℃で4時間反応させた。15,000 rpm、4℃で5分間遠心分離し、ラテックス粒子を沈殿させることにより、結合反応を終了させた。ラテックス結合緩衝液 100 mMで3回、ラテックス結合緩衝液 1 M(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グルセロール、1 M KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で1回洗浄後、SDSサンプル緩衝液を添加し、98℃で5分間煮沸し、結合タンパク質を溶出させた。SDSサンプル緩衝液:Sol.C(Trizma-BASE(SIGMA社) 30.25 gをミリQに溶解し、塩酸でpH 6.8に調整後、SDS 2gを加え、ミリQで500 mlとした)20 ml、SDS 3.2 g、グリセロール 20 g、2-メルカプトエタノール 1.6 ml、ブロモフェノールブルー 10 mg。溶出させた結合タンパク質は、SDS-PAGEにより分離して銀染色により検出した。結果を図1に示す。
上記で作製したHis-EspB固定化トシル化ラテックス粒子0.4 mgを、ラテックス結合緩衝液 100 mM(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グリセロール、100 mM KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で2回洗浄した。全タンパク質量約10 mgのHeLa細胞質抽出液を、洗浄したラテックス粒子と混合し、4℃で4時間反応させた。15,000 rpm、4℃で5分間遠心分離し、ラテックス粒子を沈殿させることにより、結合反応を終了させた。ラテックス結合緩衝液 100 mMで3回、ラテックス結合緩衝液 1 M(10 mM Hepes-NaOH [pH 7.9]、10% グルセロール、1 M KCl、1 mM EDTA、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で1回洗浄後、SDSサンプル緩衝液を添加し、98℃で5分間煮沸し、結合タンパク質を溶出させた。SDSサンプル緩衝液:Sol.C(Trizma-BASE(SIGMA社) 30.25 gをミリQに溶解し、塩酸でpH 6.8に調整後、SDS 2gを加え、ミリQで500 mlとした)20 ml、SDS 3.2 g、グリセロール 20 g、2-メルカプトエタノール 1.6 ml、ブロモフェノールブルー 10 mg。溶出させた結合タンパク質は、SDS-PAGEにより分離して銀染色により検出した。結果を図1に示す。
図1より、His-EspB固定化トシル化ラテックス粒子特異的に精製されるタンパク質が検出されたが(レーン2の矢印)、レーン1の非固定化粒子では精製されなかった。このことから、当該タンパク質は、EspB特異的な結合タンパク質であることが判った。
(4) EspB結合タンパク質の同定
上記で検出した結合タンパク質を大量に精製した後、4倍量の−20℃アセトンを加えて混合して4℃で30分間放置した。15,000 rpm、4℃で20分間、遠心分離し上清を捨てた。70%エタノールを静かに加えて、15,000 rpm、4℃で5分間、遠心分離し上清を捨てた。その後、SDSサンプル緩衝液に懸濁して、SDS-PAGEを行った。CBB染色により結合タンパク質を検出して、カッターナイフにより切り出し、脱染液(50 mM NH4HCO3、50% MeOH)に浸し脱染した。100 mM NH4HCO3及び100 mMヨードアセトアミドの溶液でタンパク質を還元アルキル化した。0.5 mg/mlのトリプシン溶液に浸漬し、ゲル中のタンパク質をゲル内消化した。タンパク質がゲル内消化されて生成したペプチド断片を、ギ酸/アセトニトリル溶液に浸漬しゲルから抽出して、ペプチド断片をQ-TOF(Micromass社)で解析した。
上記で検出した結合タンパク質を大量に精製した後、4倍量の−20℃アセトンを加えて混合して4℃で30分間放置した。15,000 rpm、4℃で20分間、遠心分離し上清を捨てた。70%エタノールを静かに加えて、15,000 rpm、4℃で5分間、遠心分離し上清を捨てた。その後、SDSサンプル緩衝液に懸濁して、SDS-PAGEを行った。CBB染色により結合タンパク質を検出して、カッターナイフにより切り出し、脱染液(50 mM NH4HCO3、50% MeOH)に浸し脱染した。100 mM NH4HCO3及び100 mMヨードアセトアミドの溶液でタンパク質を還元アルキル化した。0.5 mg/mlのトリプシン溶液に浸漬し、ゲル中のタンパク質をゲル内消化した。タンパク質がゲル内消化されて生成したペプチド断片を、ギ酸/アセトニトリル溶液に浸漬しゲルから抽出して、ペプチド断片をQ-TOF(Micromass社)で解析した。
LC-MS解析の結果、特徴的なスペクトル 537.77+2、612.78+2、937.56+2、955.94+2 (parent mass)が得られた。MS-Fit search(Masscot:検索サイト)による検索の結果、切り出したバンドにミオシン ICが存在することが示唆された。更に、LC-MS/MS解析の結果、ミオシン IC由来の計4個のペプチド(NCBI受託番号 AAH44891)に登録されている配列の位置229〜238、310〜319、331〜347及び877〜894に相当するペプチド)断片が検出された。従って、EspB結合タンパク質の一つは、細胞内のアクチンフィラメントと結合するミオシン ICであることが判明した。
(5) EspBとMyosin ICとの結合の確認
GSTプルダウン法により、EspBとMyosin ICとの結合を確認した。
(i) Myosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液の調製
DMEM (ダルベッコ変法イーグル培地)+10% FBSで、継代、維持したCOS-7細胞 1×106個を10cmディッシュに播いた翌日に、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いてpcDNA- Myosin IC-His-FLAGをCOS-7細胞に導入した。方法は、添付の説明書に従った。その後、37℃のCO2インキュベーターで48時間培養した。PBS(-)で2回洗浄した後、スクレーパーを用いて、1ディッシュ当たり1 mlのPBS(-)で細胞を回収した。細胞を1,000 rpm、4℃、5分間の遠心分離により集めて、上清を捨てた。回収した細胞を、NP-40 結合緩衝液 50 mM (50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、50 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁し、超音波処理により細胞を破砕した。15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清をMyosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液として回収した。
(ii) GSTプルダウンアッセイ
予めNETN緩衝液で2回洗浄しておいたグルタチオン セファロース(登録商標) 4B(Amersham Biosciences社)と、前記(材料)の項で説明したGST融合タンパク質発現大腸菌抽出液とを混合し、4℃で2時間反応させた。NETN緩衝液で3回、NP-40 結合緩衝液 50 mM で2回洗浄した後、上記のMyosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液と混合して4℃で一晩反応させた。その後、NP-40 結合緩衝液 150 mM(50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で3回洗浄後、SDSサンプル緩衝液で98℃、5分間煮沸することにより結合タンパク質を溶出した。結合タンパク質はそれぞれ、ウェスタンブロッティング法により検出した。結果を図2に示す。
GSTプルダウン法により、EspBとMyosin ICとの結合を確認した。
(i) Myosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液の調製
DMEM (ダルベッコ変法イーグル培地)+10% FBSで、継代、維持したCOS-7細胞 1×106個を10cmディッシュに播いた翌日に、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いてpcDNA- Myosin IC-His-FLAGをCOS-7細胞に導入した。方法は、添付の説明書に従った。その後、37℃のCO2インキュベーターで48時間培養した。PBS(-)で2回洗浄した後、スクレーパーを用いて、1ディッシュ当たり1 mlのPBS(-)で細胞を回収した。細胞を1,000 rpm、4℃、5分間の遠心分離により集めて、上清を捨てた。回収した細胞を、NP-40 結合緩衝液 50 mM (50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、50 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁し、超音波処理により細胞を破砕した。15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清をMyosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液として回収した。
(ii) GSTプルダウンアッセイ
予めNETN緩衝液で2回洗浄しておいたグルタチオン セファロース(登録商標) 4B(Amersham Biosciences社)と、前記(材料)の項で説明したGST融合タンパク質発現大腸菌抽出液とを混合し、4℃で2時間反応させた。NETN緩衝液で3回、NP-40 結合緩衝液 50 mM で2回洗浄した後、上記のMyosin IC-His-FLAG発現細胞抽出液と混合して4℃で一晩反応させた。その後、NP-40 結合緩衝液 150 mM(50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で3回洗浄後、SDSサンプル緩衝液で98℃、5分間煮沸することにより結合タンパク質を溶出した。結合タンパク質はそれぞれ、ウェスタンブロッティング法により検出した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、Myosin IC-His-FLAGは、GSTのみ(レーン4)とは共沈澱してこなかったが、N末にGSTを融合した組換えEspBタンパク質(GST-EspB、レーン5)又はC末にGSTを融合した組換えEspBタンパク質(EspB-GST、レーン6)と共沈澱してきた。これより、確かにin vitroでEspBとミオシンが結合することが判った。また、多くの種類のタンパク質が混在するCOS-7細胞の細胞抽出液からMyosin IC-His-FLAGがEspBと共沈澱したことから、この結合が特異的で強い結合であることが判明した。
実施例2<マウスへの感染>
EspBとミオシンタンパク質との結合によって感染症が発症することをin vivoにおいて確認した。
(1) ΔespB/p99-espB変異株及びΔespB/p99-espB-Δmid変異株の作製
(i) プラスミドpTrc99A-EspB-FL(完全長)、プラスミドpTrc99A-EspB-Δmid(EspBの157番〜209番のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする遺伝子を欠損)の構築
pET-(His−)-EspB-GSTとpET-(His−)-EspB-Δmid-GSTを鋳型としたPCR法[プライマー99A-EspB-F:5'-taatacgactcactataggg-3'(配列番号15)、プライマー99A-EspB-R: 5'-aaaactgcagttacccagctaagcgaccc-3'(配列番号16)]により増幅したPCR産物の5'末端をXba I、3'末端をPst Iで切断し精製し、pTrc99Aに挿入して作製した。
(ii)EspB欠損DBS100(Citrobacter rodentium)の作製
図3に示した方法に従い、EspB欠損DBS100を作製した。DBS100野生株にpCACTUS-ΔEspBをエレクトロポレーションにより遺伝子導入した。pCACTUS-ΔEspBは、EspBコード領域約3,000塩基対からEspB領域約900塩基対を除いたDNA断片をDBS100ゲノムを鋳型としたPCR法により増幅して[プライマーCR-EspB(L)-F:5'-aaaaggatccggtattaatcagcctgaagtg-3’(配列番号17)、プライマーCR-EspB(L)-R:5'-aaaagtcgactaacaggggtgatattaatttac-3’(配列番号18)、プライマーDBS-delB-F:5'-tgctgcattgttataatcgatag-3’(配列番号19)、プライマーDBS-delB-R:5'-atggggcaatcggctcgtt-3’(配列番号20)]、BamHIとSalIで切断し精製し、pCACTUSベクターに挿入して作製した。相同組換えを起こして作製されたEspB欠損DBS100株は、PCR法により確認して選択した。
(iii) DBS100株への遺伝子導入
上記(1)(i)のプラスミドをエレクトロポレーションにより、DBS100△espBに遺伝子導入した。まず、3 mlのLB培地にDBS100△espBを植菌して、30度で一晩培養した。この培養液を、LB培地で20倍希釈して、さらに37℃で2時間培養した。3,500 rpm、4℃、10分間の遠心分離により、菌を回収した。dH2Oで1回、10%グリセロールで1回洗浄した。予め氷中で冷却しておいたキュベットに、上記(1)(i)のプラスミド約1 μg及び洗浄した菌を加えて混ぜて、電気ショックを与えた。その後、5 mlのLB培地にこの菌を加えて、37℃、1時間培養した。アンピシリン耐性プレートに、この菌をまき一晩培養して、形質転換された菌株を得た。
EspBとミオシンタンパク質との結合によって感染症が発症することをin vivoにおいて確認した。
(1) ΔespB/p99-espB変異株及びΔespB/p99-espB-Δmid変異株の作製
(i) プラスミドpTrc99A-EspB-FL(完全長)、プラスミドpTrc99A-EspB-Δmid(EspBの157番〜209番のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする遺伝子を欠損)の構築
pET-(His−)-EspB-GSTとpET-(His−)-EspB-Δmid-GSTを鋳型としたPCR法[プライマー99A-EspB-F:5'-taatacgactcactataggg-3'(配列番号15)、プライマー99A-EspB-R: 5'-aaaactgcagttacccagctaagcgaccc-3'(配列番号16)]により増幅したPCR産物の5'末端をXba I、3'末端をPst Iで切断し精製し、pTrc99Aに挿入して作製した。
(ii)EspB欠損DBS100(Citrobacter rodentium)の作製
図3に示した方法に従い、EspB欠損DBS100を作製した。DBS100野生株にpCACTUS-ΔEspBをエレクトロポレーションにより遺伝子導入した。pCACTUS-ΔEspBは、EspBコード領域約3,000塩基対からEspB領域約900塩基対を除いたDNA断片をDBS100ゲノムを鋳型としたPCR法により増幅して[プライマーCR-EspB(L)-F:5'-aaaaggatccggtattaatcagcctgaagtg-3’(配列番号17)、プライマーCR-EspB(L)-R:5'-aaaagtcgactaacaggggtgatattaatttac-3’(配列番号18)、プライマーDBS-delB-F:5'-tgctgcattgttataatcgatag-3’(配列番号19)、プライマーDBS-delB-R:5'-atggggcaatcggctcgtt-3’(配列番号20)]、BamHIとSalIで切断し精製し、pCACTUSベクターに挿入して作製した。相同組換えを起こして作製されたEspB欠損DBS100株は、PCR法により確認して選択した。
(iii) DBS100株への遺伝子導入
上記(1)(i)のプラスミドをエレクトロポレーションにより、DBS100△espBに遺伝子導入した。まず、3 mlのLB培地にDBS100△espBを植菌して、30度で一晩培養した。この培養液を、LB培地で20倍希釈して、さらに37℃で2時間培養した。3,500 rpm、4℃、10分間の遠心分離により、菌を回収した。dH2Oで1回、10%グリセロールで1回洗浄した。予め氷中で冷却しておいたキュベットに、上記(1)(i)のプラスミド約1 μg及び洗浄した菌を加えて混ぜて、電気ショックを与えた。その後、5 mlのLB培地にこの菌を加えて、37℃、1時間培養した。アンピシリン耐性プレートに、この菌をまき一晩培養して、形質転換された菌株を得た。
(2) マウスへの感染
7週齢の雌性C3H/HeJマウス(体重約20g、日本クレア社より購入)に、4×108匹の野生型DBS100株及びその各種変異株をゾンデで胃の中に注入して感染させた。感染実験は各群についてマウス3匹で行った。感染後20日間、マウスの生死及び体重変化を観察した。結果を図4に示す(マウスの体重変化についてはデータ非表示)。LB:LB液体培地、wild type:野生型(DBS100株)、ΔespB:EspB欠損変異株、ΔespB/p99-espB:EspB欠損DBS100にpTrc99A-EspB-FLを導入、ΔespB/p99-espB-Δmid:EspB欠損DBS100に、プラスミドpTrc99A-EspB-Δmid(EspBの中央付近の157番〜209番の約50アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子を欠損)を導入。
7週齢の雌性C3H/HeJマウス(体重約20g、日本クレア社より購入)に、4×108匹の野生型DBS100株及びその各種変異株をゾンデで胃の中に注入して感染させた。感染実験は各群についてマウス3匹で行った。感染後20日間、マウスの生死及び体重変化を観察した。結果を図4に示す(マウスの体重変化についてはデータ非表示)。LB:LB液体培地、wild type:野生型(DBS100株)、ΔespB:EspB欠損変異株、ΔespB/p99-espB:EspB欠損DBS100にpTrc99A-EspB-FLを導入、ΔespB/p99-espB-Δmid:EspB欠損DBS100に、プラスミドpTrc99A-EspB-Δmid(EspBの中央付近の157番〜209番の約50アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子を欠損)を導入。
図4より、野生型及びΔespB/p99-espB変異株では、マウスがそれぞれ感染10日後、16日後に全滅したが、LB液体培地、ΔespB変異株及びΔespB/p99-espB-Δmid変異株では、感染20日後もマウスが100%生存した。従って、感染症の発症がEspBとミオシンタンパク質との結合によるものであることがin vivoにおいても確認された。
実施例3<被検体のスクリーニング>
(1) 検量線の作成
(i) GST-アクチン結合サイトを発現している大腸菌抽出液の調製
GST-アクチン結合サイト発現用の大腸菌発現用ベクターは、pcDNA-Myosin ICを鋳型としたPCR法によりMyosin ICの1498〜2094番の塩基配列を増幅[プライマーMyosin IC-Actin-F:5'-aaaaggatccaaatctctgggccgagggg-3'(配列番号21)、プライマーMyosin IC-Actin-F:5'-aaaagtcgacccggacctccagggcatc-3'(配列番号22)]し、このPCR産物の5’末端をBamHI、3'末端をSal Iで切断して、pGEX-6P-1に挿入して作製した。
次に、この発現ベクターで大腸菌BL21株を形質転換した。形質転換後の1コロニーをLB液体培地(100 μg/ml アンピシリン)で37℃で培養し、吸光度が0.4に達したとき、200 mg/ml IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)溶液を最終濃度0.1 mMになるように加えて、25℃で4時間培養した。培養終了後、培養液から遠心分離により集菌した。PBS(-)で3回洗浄後、NETN緩衝液(20 mM Tris-HCl [pH 7.4]、100 mM NaCl、0.5% NP-40、1 mM EDTA、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁して、超音波処理により大腸菌を破砕した。その後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清を大腸菌破砕液として回収した。
(ii) Myosin ICのGST-アクチン結合サイトとEspBとの結合解析
Glutathione Sepharose(登録商標)4B(Amersham Biosciences社)をNETN緩衝液で2回洗浄した。洗浄したビーズと、Myosin ICのGST-アクチン結合サイトを発現している大腸菌抽出液とを混合し、4℃で1時間反応させた。NETN緩衝液で3回、NP-40 結合緩衝液 50 mM(50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、50 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で2回洗浄し、Myosin ICのGST-アクチン結合サイト固定化ビーズを作製した。ここにEspB-His-FLAGタンパク質(10 μg)を加え、4℃で一晩反応させた。反応後、NP-40 結合緩衝液150mMで3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液(Sol.C(Trizma-BASE(SIGM社)をミリQに溶解し、塩酸でpH 6.8に調整後、SDS 2gを加え、ミリQで500 mlとした)20 ml、SDS 3.2 g、グリセロール 20 g、2-メルカプトエタノール 1.6 ml、ブロモフェノールブルー 10 mg。)を添加し、98℃で5分間煮沸して結合タンパク質を溶出させた。その後、SDS-PAGE、続いてウェスタンブロッティングを行い、EspB-His-FLAGをマウス抗FLAG抗体(SIGMA社)で検出し、GST-アクチン結合サイトへのEspB-His-FLAGの結合量を検出した。GST-アクチン結合サイトへのEspB-His-FLAGの結合量は、EspBの添加量に従って増加した。
(1) 検量線の作成
(i) GST-アクチン結合サイトを発現している大腸菌抽出液の調製
GST-アクチン結合サイト発現用の大腸菌発現用ベクターは、pcDNA-Myosin ICを鋳型としたPCR法によりMyosin ICの1498〜2094番の塩基配列を増幅[プライマーMyosin IC-Actin-F:5'-aaaaggatccaaatctctgggccgagggg-3'(配列番号21)、プライマーMyosin IC-Actin-F:5'-aaaagtcgacccggacctccagggcatc-3'(配列番号22)]し、このPCR産物の5’末端をBamHI、3'末端をSal Iで切断して、pGEX-6P-1に挿入して作製した。
次に、この発現ベクターで大腸菌BL21株を形質転換した。形質転換後の1コロニーをLB液体培地(100 μg/ml アンピシリン)で37℃で培養し、吸光度が0.4に達したとき、200 mg/ml IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)溶液を最終濃度0.1 mMになるように加えて、25℃で4時間培養した。培養終了後、培養液から遠心分離により集菌した。PBS(-)で3回洗浄後、NETN緩衝液(20 mM Tris-HCl [pH 7.4]、100 mM NaCl、0.5% NP-40、1 mM EDTA、1mM DTT、0.5 mM PMSF)に懸濁して、超音波処理により大腸菌を破砕した。その後、15,000 rpm、4℃、20分間遠心して、上清を大腸菌破砕液として回収した。
(ii) Myosin ICのGST-アクチン結合サイトとEspBとの結合解析
Glutathione Sepharose(登録商標)4B(Amersham Biosciences社)をNETN緩衝液で2回洗浄した。洗浄したビーズと、Myosin ICのGST-アクチン結合サイトを発現している大腸菌抽出液とを混合し、4℃で1時間反応させた。NETN緩衝液で3回、NP-40 結合緩衝液 50 mM(50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、50 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM MgCl2、0.1 mM CaCl2、0.1% NP-40、1mM DTT、0.5 mM PMSF)で2回洗浄し、Myosin ICのGST-アクチン結合サイト固定化ビーズを作製した。ここにEspB-His-FLAGタンパク質(10 μg)を加え、4℃で一晩反応させた。反応後、NP-40 結合緩衝液150mMで3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液(Sol.C(Trizma-BASE(SIGM社)をミリQに溶解し、塩酸でpH 6.8に調整後、SDS 2gを加え、ミリQで500 mlとした)20 ml、SDS 3.2 g、グリセロール 20 g、2-メルカプトエタノール 1.6 ml、ブロモフェノールブルー 10 mg。)を添加し、98℃で5分間煮沸して結合タンパク質を溶出させた。その後、SDS-PAGE、続いてウェスタンブロッティングを行い、EspB-His-FLAGをマウス抗FLAG抗体(SIGMA社)で検出し、GST-アクチン結合サイトへのEspB-His-FLAGの結合量を検出した。GST-アクチン結合サイトへのEspB-His-FLAGの結合量は、EspBの添加量に従って増加した。
(2) 被検体のスクリーニング
上記(1)と同様にしてMyosin ICのGST-アクチン結合サイト固定化ビーズを作製した後、ここにEspB-His-FLAGタンパク質(10 μg)を加えて4℃で一晩反応させた。この際、コントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)を、薬剤としてDMSOに溶解したLY294002(CAYMAN CHEMICAL COMPANY)、シクロスポリンA(SIGMA社)及びPMA(ナカライテスク社)を各々終濃度10 μM、10 μM、10 nMになるように加えて反応した(加えた容量はすべて1 μl)。反応後、NP-40 結合緩衝液150 mMで3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液を添加し、98℃で5分間煮沸して結合タンパク質を溶出させた。その後、SDS-PAGE、続いてウェスタンブロッティングを行い、EspB-His-FLAGをマウス抗FLAG抗体(SIGMA社)で検出した。
上記(1)と同様にしてMyosin ICのGST-アクチン結合サイト固定化ビーズを作製した後、ここにEspB-His-FLAGタンパク質(10 μg)を加えて4℃で一晩反応させた。この際、コントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)を、薬剤としてDMSOに溶解したLY294002(CAYMAN CHEMICAL COMPANY)、シクロスポリンA(SIGMA社)及びPMA(ナカライテスク社)を各々終濃度10 μM、10 μM、10 nMになるように加えて反応した(加えた容量はすべて1 μl)。反応後、NP-40 結合緩衝液150 mMで3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液を添加し、98℃で5分間煮沸して結合タンパク質を溶出させた。その後、SDS-PAGE、続いてウェスタンブロッティングを行い、EspB-His-FLAGをマウス抗FLAG抗体(SIGMA社)で検出した。
上記ウェスタンブロッティングにより得られたバンドの濃さを、NIH Image 1.62(解析ソフト)により定量化し、各薬剤による阻害率を検量線より算出した。図5に示すように、10 μMのシクロスポリンAは阻害率-4.5%とコントロールのDMSO(阻害率-8.8%)とほとんど変化しないのに対して、10 nMのPMAでは阻害率63.8%と結合を阻害することがわかった。
従って、これら3種の薬剤のうちPMAは、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬として有用である可能性が示唆された。
従って、これら3種の薬剤のうちPMAは、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬として有用である可能性が示唆された。
Claims (4)
- 病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む試料に被検体を存在させて、当該EspBタンパク質とミオシンタンパク質との複合体の形成を妨害する被検体を選択することを特徴とする、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング法。
- 前記EspBタンパク質が、大腸菌BL21株又はCOS7細胞をEspB発現ベクターにより形質転換して発現させたタンパク質である、請求項1記載のスクリーニング法。
- 前記ミオシンタンパク質が、大腸菌BL21株又はCOS7細胞をミオシン発現ベクターにより形質転換させて発現させたタンパク質である、請求項1又は2記載のスクリーニング法。
- 病原性大腸菌の病原因子EspBタンパク質及びミオシンタンパク質を含む、病原性大腸菌感染症の予防及び/又は治療薬のスクリーニング試薬。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005246009A JP2007057477A (ja) | 2005-08-26 | 2005-08-26 | 病原性大腸菌感染症の予防治療薬のスクリーニング法 |
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JP2005246009A JP2007057477A (ja) | 2005-08-26 | 2005-08-26 | 病原性大腸菌感染症の予防治療薬のスクリーニング法 |
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JP (1) | JP2007057477A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105503879A (zh) * | 2014-10-20 | 2016-04-20 | 北京大学深圳研究生院 | 一种固定化蛋白的方法 |
-
2005
- 2005-08-26 JP JP2005246009A patent/JP2007057477A/ja active Pending
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CN105503879A (zh) * | 2014-10-20 | 2016-04-20 | 北京大学深圳研究生院 | 一种固定化蛋白的方法 |
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