JP2007057183A - 双方向風調湿乾燥法およびその乾燥装置 - Google Patents

双方向風調湿乾燥法およびその乾燥装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 一方向式トンネル温風乾燥機で、糖分や糊化澱粉を多く含む果実や蒸し芋等を急速に乾燥すると、表面に硬化膜が生成して乾燥が順調に進まなくなり、かえって時間がかかり、変色や内部の腐敗などの問題が発生する。また、温風の上昇流などにより乾燥庫内の風速や温度分布に大きなバラツキを生じ、製品の水分や品質に大きなバラツキを生じる原因になる。この問題を解決するために、現在では乾燥途中で送風を一時休止し被乾燥物を調湿したり、乾燥棚や台車を入れ替えており、これに多大な労力を費やしている。
【解決手段】 乾燥庫の両端に送風機と風束均一分散装置及び熱源等を設置し、一定時間間隔で温風を左右交互に風向を変えながら送風すると、風速に偏りのない均一な温風による乾燥条件と湿潤条件が得られ、表面硬化膜を生成し易い食品に対しても、皮膜の生成を抑えつつ品質の良い乾燥製品を製造できる双方向風調湿乾燥法及び乾燥装置を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、乾燥品の品質を向上させるための乾燥方法および乾燥装置に属する。
静岡県遠州灘地方では、冬場、海からの西風が一日中吹き続け、好天時には低温の空気が低湿度(約28%)から高湿度(約80%)まで連続的に大きく変化する。甘藷蒸切干しの伝統的な天日乾燥は、この大きな湿度変動を乾燥に活用し、糊化澱粉と糖分を多く含む蒸し甘藷を品質良く乾燥している。湿度の低い日中には初発の乾燥速度が速いため、表面硬化膜が容易に生成して乾燥が緩慢になる。このため、蒸し甘藷の乾燥を夕方から開始し、夜間の比較的高い湿度条件を利用して、表面硬化膜を生成させることなく、甘藷蒸切干しの乾燥を行っている。
近年は暖冬化の影響で、冬場、安定した好天が少なくなり、乾燥に5日程度必要な天日乾燥では、天日のみで乾燥することが難しくなっている。また、昨今の衛生管理面の要求などから人工乾燥による製造が多くなっている。
天日乾燥の問題点を解決するために、トンネル温風乾燥機と呼ばれる横長の箱型温風乾燥機が一般に導入されている。糖分や糊化澱粉などを多く含む果実や蒸し芋などをトンネル温風乾燥機で急速に乾燥すると、表面に硬化膜が生成して乾燥がうまく進まなくなり、かえって時間がかかり、被乾燥物の変色や内部の腐敗などが発生する。
一方向式トンネル温風乾燥機では、送風機の特性や乾燥庫の前方および後方の温度差などとともに、乾燥庫内を流れる温風に上昇流を生じることから、棚温度に大きなバラツキを生じる。この棚温度のバラツキが製品の水分や品質にバラツキを生じさせる大きな原因になっており、この問題を解決するために乾燥途中で2回の棚と台車の入替え作業を行い、また、乾燥庫の送風を一時休止して調湿し、表面の硬化膜を無くす操作を行っている。このようにしても、実際には乾燥製品の水分が均一にならないという問題がある。そのため、一日以上の追加の天日乾燥を行っている。
最近では、輸入品との競合などから、乾燥機を用いる人工乾燥においても一層の製造の効率化と製品の高品質化が求められるようになっている。
特公平8−4451
天日乾燥の問題点を解決するために用いられている一方向式トンネル温風乾燥機(図4)で、糖分や糊化澱粉を多く含む果実や蒸し芋などを急速に乾燥すると、表面に硬化膜が生成して乾燥が順調に進まなくなり、かえって時間がかかって変色や内部の腐敗などの問題が発生する。また、一方向式トンネル温風乾燥機の乾燥庫内では、面風速に大きなバラツキ(図5)が生じ、これにより庫内の温度分布(図6)が不均一になり、製品の水分や品質にバラツキを生じる原因になっている。
このような問題を解決するため、乾燥途中で乾燥棚や台車を入れ替えたり、調湿のために送風を一時休止したりする必要があるが、そのために多大な労力がかかり、それでも均一な製品が出来にくいという問題がある。
本発明者は、長年、果実・野菜の乾燥技術の研究・開発にたずさわり、天日乾燥により品質の良い乾燥食品が生産できる機構を解明し、それによる新しい乾燥技術を開発した。
すなわち、一般的な食材の天日乾燥では、冬場の天気が良く湿度が低い日中に乾燥が進み、温度が下がり湿度が増す夜間に調湿が起こって乾燥が緩慢になり、この繰り返しによって徐々に乾燥が進むと考えられる。一方、蒸し甘藷のように糊化澱粉や糖分などを多く含む食品では、湿度が低い日中では乾燥速度が速いため、表面に硬化膜が容易に生成して乾燥が緩慢になり、夜間は湿度が上がって膜の生成がないため乾燥が進み、乾燥製品が品質良く仕上がるという原理を明らかにした。
この優れた天日乾燥の原理を生かし、乾燥庫内に均質な乾燥風を送るとともに、風向を一定時間ごとに変えることにより、被乾燥物に対して低湿乾燥と調湿乾燥を連続的に繰り返す双方向風調湿乾燥法を発明するに至った。この発明は、糊化澱粉や糖質などを多く含む食品であっても、乾燥中に表面硬化膜を生成することなく、良好な品質の乾燥製品を効率的に生産する乾燥技術および乾燥装置を提供するものである。
除湿冷風、温風あるいは熱風の風向を、双方向風調湿乾燥装置(図1)の乾燥庫内の両端に装着した送風機の回転方向を変えるなどの方法によって一定時間おきに風向を変化させ、被乾燥物に対して低湿乾燥と調湿乾燥を繰り返しながら食品等の表面硬化を抑え、良好な状態で乾燥するものである。製品のより均質な乾燥を実現するために、フィルターの厚みを場所によって変えるなどの方法により、乾燥庫内を流れる温風の風速を均一にする工夫も行う。
「請求項1の説明」
ある程度乾燥が進んだ状態でも、乾燥空気と同時に充分な湿潤空気を得る必要があるので、乾燥庫は一定以上の長さを必要とする。一般に乾燥庫だけで少なくとも4〜7メートルは必要である。最適な乾燥庫の長さは、原料の仕込み量(水分量と表面積)、庫内の内径、原料と最終製品の水分含量、乾燥温度、風速、風向の切替え間隔などの条件を考慮して設定する必要がある。
10〜90℃の乾燥風を5〜50分間隔で風向を変えながら送風することにより、良好な乾燥条件が得られる。風向を変える時間間隔を長くすると、設定温度によっては被乾燥物に腐敗が発生し、長すぎると表面硬化が生成して、この場合にも乾燥が進まず、内部に腐敗が発生する。乾燥するものによって最適な温度と風向を変える時間間隔を設定する必要がある。
「請求項2の説明」
乾燥庫内の平行風の偏りをなくすために装着した風束均一分散装置4は、図3に示すように条件に応じて各部分の風速を測定し、風束の均一性を確保する。先ず乾燥庫の断面の大きさに応じて枠14の縦横を3×3の9区画、3×4の12区画、4×4の16区画、4×5の20区画などに設定し、これを鋼棒15などで区切り、ここに金属製の網11を装着し、その上に1区画の大きさに切った薄いフィルター12を装着して、さらに金属製の網13で抑える。この状態で送風して風速分布を測定し、風が強い区画には薄いフィルターを1枚以上加えて装着し、風速が一定範囲になるように調整する。このような方法で、予め設計した風速分布になるように風束均一分散装置を作成して乾燥装置に用いる。
「請求項3の説明」
乾燥装置の乾燥庫1の両端には、送風機6と風束均一分散装置4および電熱ヒーター5や除湿装置、太陽熱コレクターなどからの温風の供給口8などを設ける。本装置は双方向風を用いるため、両端の一部が温風供給口8、一部が排気口7となり、必要に応じて空気温度調節ダンパー9が開閉し、温風が双方向に送風されるようにする。
表1に、天日乾燥法、一方向式トンネル温風乾燥法、双方向風調湿乾燥法による各製品の品質、生産性、作業性、使用オイル・使用電力などを比較した。双方向風調湿乾燥法による製品は、その他の乾燥法による製品と比較して、品質面では表面色が明るく、褐変の指標となるハンターカラー比率が小さく、原料甘藷本来の鮮やかな黄色を維持していた。これは、β‐カロチン含量が天日乾燥品の4倍、一方向式トンネル温風乾燥による製品の1.5倍であることからも確認できる。また、製品の歯触りを表す切断力では、双方向風調湿乾燥法による製品は、天日乾燥品に比較して約20%低い値であり、ゼリー状の軟らかさを示していた。生産性では、月当りの生産可能日数が、天日乾燥法では最大約半月であるのに対して、機械乾燥法ではほぼ一ヵ月全体が利用可能である。乾燥時間も、天日乾燥法が平均110時間であるのに対し、双方向風調湿乾燥法では約6分の1の17時間で乾燥でき、計画生産が可能となった。また、生産開始時期が天日乾燥法よりも一ヵ月も早めることが可能となった。作業性では、一方向式トンネル温風乾燥法で不可欠とされる製品水分の均一化のための乾燥棚と台車の入替え作業が双方向風調湿乾燥法では不要となった。エネルギー使用量では、製品1kgを製造するのに要するA重油の量がトンネル型温風乾燥法の約3分の1になった。
上記のように、双方向風調湿乾燥法は、製品の品質面で優れ、生産性にも優れていることが示された。また、天候に関係なく常時乾燥できるので、冬場の気象条件にも左右されることなくフルに稼働でき、同時に生産が可能な期間も大幅に延長することができるなどの優れた特徴がある。さらに、作業性の面でも大幅に向上し、一方向式トンネル温風乾燥法に比較して省エネにも優れており、経済的にも大きな改善が見込まれる。
Figure 2007057183
充分に蒸した甘藷は、糊化澱粉とマルトースを初めとする糖類を多く含んでいるため、乾燥時に表面硬化膜を生成しやすく、最も乾燥が難しい食品の1つである。双方向風調湿乾燥法は、蒸し甘藷の高品質乾燥を可能にしたことから、本乾燥法を用いて、糖類を多く含くむバナナ、マンゴー、パパイヤ、デーツなどの熱帯果実類を乾燥したところ、表面硬化膜を生じることなく、原料の表面色を保持したまま、短時間に高品質乾燥することができた。本乾燥法は、これまで高品質な乾燥が困難とされてきた食品等の乾燥に広範に利用することが可能である。
乾燥機の乾燥庫内を温風が平行で均一に流れるようにするため、風束均一分散装置(図3)を用いて面風速を調整した。風束均一分散装置の各窓枠内のフィルター枚数を変えて、乾燥庫内の入風口・排風口の近傍における面風速を3m/sになるように左向き、右向きの送風を繰り返しながら均一化を行った。その結果、図7に示すように、ほぼ目標とする風速に調整することができた。この風束均一分散条件を用いて、50℃における乾燥庫中央部の風速が1.25m/sになるように調整したところ、図8のように乾燥庫長手方向中央部の9ヵ所での風速はほぼ1.25m/sになった。
双方向風調湿乾燥装置は、図1のように組み上げる。原料が蒸し甘藷の場合には、特願2004−241390の蒸し装置などを用いて澱粉の糊化および酵素分解を充分に促進させる。中白(なかじろ)の発生のない蒸し甘藷を剥皮し、厚さ8ミリの板状または12ミリの角棒状に切断し、これを網製のトレイ3に入れる。被乾燥物を入れたトレイを台車2に載せて乾燥庫内に搬入し(図1)、戸を閉めた後、通風を開始する。入風と排風および中間地点における風の温湿度、両端と中央の被乾燥物の中心温度はセンサーによりモニターし、乾燥の進み具合を監視し、乾燥終了のタイミングなどを判定する。風速の調節はインバーターなどにより行い、風向およびヒーターなどの切替えは、時間を設定してリレー制御、ファジー制御などで行う。
蒸して剥皮・スライスした甘藷原料900kgを双方向風調湿乾燥した時の乾燥庫両端における温湿度を図9に示した。被乾燥物の水分が多い乾燥初期においては高めの55℃の温風を用い、乾燥が進んでからは製品の品質が低下しないように、温度を下げた40℃の温風を5〜50分の間隔で送風方向を変えながら乾燥した。その結果、品質の良い乾燥製品を得た。
乾燥温度は、被乾燥物の品質変化の起こりやすさを考慮して設定し、品質変化を起こしやすい食品は乾燥温度を低めに設定する。乾燥中は品温をモニターし、乾燥状態を常に把握する。風向の切替え間隔は、トンネルの長さ、原料の仕込み量(水分量と表面積)、乾燥庫の内径、原料と最終製品の水分含量、乾燥温度、風速などの条件を見極めて設定する。
一方向式トンネル温風乾燥装置(図4)を用いて、蒸して剥皮・スライスした甘藷900kgを乾燥する場合、乾燥庫内の風速の大きなバラツキと温風の偏流が確認された。図5は、一方向式トンネル温風乾燥装置の入風側の入風分散羽から1m離れた位置の天井から25cm離れた乾燥棚付近(○)と床から25cm離れた乾燥棚付近(●)、および排風側の排風調節羽から1m離れた位置の天井から25cm離れた乾燥棚付近(◇)と床から25cm離れた乾燥棚付近(◆)の温度変化を示したものである。図6で判るように、棚段毎の温度のバラツキが大きいため、夜中に2回の棚と台車の入替え作業が必要になり、送風を一旦止めて湿度を上げ、蒸し甘藷の表面に生成した硬化膜をなくすための湿潤化(テンパリング)操作を行う。棚と台車の入替え作業は、夜中に家族総出で行われることが多い。双方向風調湿乾燥装置では、このような煩雑な作業が全て不要になるという大きな利点がある。
本発明に関わる双方向風調湿乾燥装置の構成を示す側面図である。 双方向風調湿乾燥装置の乾燥庫内の両端に装着した送風機、風速均一分散装置、ヒーター、3ヶ所のダンパーで構成される均一温風送風室の側面図である。 双方向風調湿乾燥装置の風束均一分散装置の外観図である。 一方向式トンネル温風乾燥装置の構成を示す外観図である。 一方向式トンネル温風乾燥装置の乾燥庫内における面風速のバラツキを示す図である。 一方向式トンネル温風乾燥装置の乾燥庫内における温度のバラツキを示す図である。 双方向風調湿乾燥庫の両端に設置した風束均一分散装置の各区画における調整前後の風束分布を示す図である。 双方向風調湿乾燥庫の長手方向中央部9ケ所の風速を示す図である。 双方向風調湿乾燥庫内に蒸して剥皮・スライスした甘藷原料を900kg仕込み、乾燥したときの乾燥庫両端付近における温風の経時的な温湿度を示した図である。
符号の説明
1 双方向風調湿乾燥装置の乾燥庫
2 乾燥台車
3 乾燥棚
4 風束均一分散装置
5 電熱ヒーター
6 送風機
7 排風口
8 空気送風口
9 空気温度調節ダンパー
10 均一温風送風室
11 風束均一分散装置の区画窓に装着した金属製の網
12 風束均一分散装置の区画窓に装着した金属製の網とフィルター
13 風束均一分散装置の区画窓に装着した金属製の網とフィルターと網
14 風束均一分散装置の枠
15 風束均一分散装置の区画割り鋼棒
16 一方向式トンネル温風乾燥装置の送風部
17 熱交換部
18 ドア
19 乾燥庫
20 入風分散羽
21 送風室
22 排風調節羽
23 外気取入口
A 乾燥開始
B 棚と台車の入替え後の再送風
C 棚と台車の入替えと湿潤化操作の開始
D 湿潤化操作の終了と再送風
E 乾燥終了

Claims (3)

  1. 10〜90℃の乾燥風を5〜50分間の一定時間おきにその風向を変えることによって被乾燥物に対して低湿乾燥と湿潤乾燥を繰り返し、食品等の表面硬化膜の生成を抑えつつ良好に乾燥する方法および乾燥装置。
  2. 乾燥庫内の温風の偏りを無くし、風束を均一にして被乾燥物を均一に乾燥させるための風束均一分散法およびその装置。
  3. 乾燥庫の両端に送風機と風束均一分散装置および除湿装置、熱源等を置き、一定時間間隔で両端の送風の方向を変えて双方向の平行風を得て、調湿しながら乾燥する方法および乾燥装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012241956A (ja) * 2011-05-18 2012-12-10 Toyo Eng Works Ltd 冷風乾燥装置
KR101325753B1 (ko) * 2011-08-31 2013-11-04 이엔비나노텍(주) 듀얼 로터리 건조장치 및 그의 건조 방법
JP7037202B2 (ja) 2018-06-29 2022-03-16 Gsk株式会社 冷風乾燥機

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