以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、本発明の製造方法により得られる光学フィルムを「本発明の光学フィルム」あるいは「本発明の位相差フィルム」という。
本発明が対象とする光学フィルムは液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ、特に液晶ディスプレイに用いられる機能フィルムのことであり、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等、特に位相差フィルムを含むものである。
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶融流延製膜法である。溶融流延製膜法は、フィルム構成材料を加熱し、その流動性を発現させた後、ドラム上またはエンドレスベルトに該材料を押出し製膜する方法である。
溶融流延法による製膜は、溶液流延法と著しく異なり、流延する材料に揮発成分が存在すると、光学フィルムとしての機能を活用するためのフィルムの平面性及び透明性確保の点から好ましくない。これは製膜されたフィルムに揮発成分が混入すると透明性が低下すること、及びダイ−スリットから押出しされて製膜されたフィルムを得る場合、フィルム表面に筋が入る要因となり平面性劣化を誘発することがあるからである。従って、フィルム構成材料を製膜加工する場合、加熱溶融時に揮発成分の発生を回避する観点から、製膜するための溶融温度よりも低い温度領域で揮発する成分が存在することは好ましくない。
前記揮発成分としては、フィルム構成材料中のいずれかが、例えば吸湿した水分、または材料の購入前または合成時に混入している溶媒が挙げられ、加熱による蒸発、昇華或いは分解による揮発が起こる。ここでいう溶媒とは溶液流延として樹脂を溶液として調製するための溶媒と異なり、フィルム構成材料中に微量に含まれるものである。従ってフィルム構成材料を選択することは、揮発成分の発生を回避する上で重要である。
本発明の光学フィルムを構成する材料は、非晶性熱可塑性樹脂、必要により安定化剤、可塑剤、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、滑り剤としてマット剤、リターデーション制御剤が含まれる。これらの材料は、目的とする光学フィルムの要求特性により適宜選択される。
本発明の光学フィルムを構成する非晶性熱可塑性樹脂は、セルロースエステルの構造を有し、脂肪酸アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの単独または混合酸エステル(以下、単に「セルロース樹脂」という)であり、非晶性のものである。「非晶性」とは、不規則な分子配置で結晶とはならずに固体となっている物質を意味しており、原料時の結晶状態を表したものである。
以下、本発明の使用に有用なセルロース樹脂について例示するがこれらに限定されるものではない。
セルロース樹脂が芳香族アシル基を含む場合、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。
置換基の数は、1個〜5個、好ましくは1個〜4個、より好ましくは1個〜3個、さらにより好ましくは1個または2個である。更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。
上記アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。
上記アルコキシ基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。
上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。
上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。
上記アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。
上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
本発明で使用するセルロース樹脂において、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
光学フィルムとして位相差フィルムを製造する場合は、セルロース樹脂としてセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロース樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
混合脂肪酸エステルであるセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。置換度とは、アシル基に置換された水酸基の数をグルコース単位で示した数値と定義する。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
本発明で用いられるセルロース樹脂の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロース樹脂は適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
本発明で用いられるセルロース樹脂はフィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の光源側の偏光板の透過軸に偏光板保護フィルムの遅相軸が平行に位置するとき他方の偏光板の外側の面に垂直な位置で観察したとき光が漏れてくる原因となる異物を意味する。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロース樹脂に含まれる水酸基のエステル化部分が未反応であることがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロース樹脂を用いることと、加熱溶融したセルロース樹脂を濾過することによって異物を除去し、輝点異物を低減することができる。また、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロース樹脂の含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
輝点の個数としては、面積250mm2当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの輝点が、フィルムを観察時のとして300個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは、5〜50μmの輝点が200個以下である。
輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。位相差フィルムを偏光板保護フィルムとして機能させた場合、この輝点の存在は複屈折の乱れの要因であり、画像に及ぼす悪影響は大きなものとなる。
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、輝点異物の除去工程を含め、連続して溶融流延の製膜工程を実施できる。
熱溶融による輝点異物の濾過工程を含む溶融流延法は、後述の可塑剤とセルロース樹脂を組成物とした場合、可塑剤が添加しない系と比較して、熱溶融温度を低下させる観点から、そして輝点異物の除去効率の向上と熱分解の回避の観点から好ましい方法である。また、後述する他の添加剤として紫外線吸収剤、やマット材も適宜混合したものを同様に濾過することもできる。
濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下のものが用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましい。
別の実施態様では、加熱してフィルム構成材料を溶融する前に、該構成材料の少なくともセルロース樹脂においては、該材料の合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度、溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。このとき、好ましくはセルロース樹脂に安定化剤が存在することが好ましく、また後述する可塑剤、或いはその他の添加剤として紫外線吸収剤、マット剤等と共に溶媒に溶解させた後、溶媒を除去し乾燥することによってセルロース樹脂を主体としたフィルム構成材料の固形分を得るようにしてもよい。
また、上記溶液状態とするために該構成材料の溶媒への溶解の過程で−20℃以下に冷却した工程を介することもできる。セルロース樹脂への安定化剤、可塑剤、その他添加剤のいずれか一種以上の添加を行うときは、本発明に用いるセルロース樹脂の合成(調製)工程過程において、特に限定はないが該樹脂の合成(調製)工程後期までに少なくとも一度溶液状態で輝点異物や不溶物を濾別するために濾過を行い、その後他の添加剤の添加を行い、溶媒の除去または酸析によって固形分を分離して乾燥してもよく、ペレット化するときに粉体混合したフィルム構成材料を得てもよい。
フィルム構成材料のセルロース樹脂以外の構成材料を該樹脂と均一に混合することは、加熱時の溶融性において均一な溶融性を与えることに寄与できる。
セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを、適宜選択してセルロース樹脂と混合してもよい。このような高分子材料やオリゴマーはセルロース樹脂と相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの全可視域(400nm〜800nm)に渡り透過率が80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上が得られるようにする。セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この高分子材料やオリゴマーは、その他添加剤としての概念として捉えてもよい。
フィルム構成材料中に、安定化剤の少なくとも一種を前記セルロース樹脂の加熱溶融前または加熱溶融時に添加するようにする。安定化剤は、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。
安定化剤としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、アミン類などを含む。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。
フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために安定化剤を用いる。すなわち、フィルム構成材料中の安定化剤の添加は、安定化剤以外のフィルム構成材料の変質や分解による揮発成分の発生を抑制または防止する観点で優れている。また、安定化剤自身もフィルム構成材料の溶融温度領域において、揮発成分を発生しないことが求められる。
一方、フィルム構成材料を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や分子量低下に由来した該構成材料の強度劣化を伴うことがある。またフィルム構成材料の分解反応によって、分解反応によって生じる好ましくない揮発成分の発生も併発することもある。
フィルム構成材料は、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、構成する材料が一種または複数種のペレットに分割して保存することができる。ペレット化は、加熱時の溶融物の混合性または相溶性が向上でき、または得られたフィルムの光学的な均一性が確保できることもある。
フィルム構成材料を加熱溶融するとき、安定化剤が存在することは、材料の劣化や分解に基づく強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持できる観点で優れている。
位相差フィルムを製造する場合、安定化剤を含有させることが好ましい。フィルム製造時、位相差フィルムとしてのリターデーションを付与する工程において、該フィルム構成材料の強度の劣化を抑制し、または材料固有の強度を維持できる。フィルム構成材料が著しい劣化によって脆くなると、フィルム成膜時の延伸工程において破断が生じやすくなり、位相差フィルムとしてのリターデーション値が発現できなくなることがあるためである。
また、安定化剤の存在は、加熱溶融時において可視光領域の着色物の生成を抑制すること、または揮発成分がフィルム中に混入することによって生じる透過率やヘイズ値といった位相差フィルムとして好ましくない性能を抑制または消滅できる点で優れている。ヘイズ値は1%未満、より好ましくは0.5%未満である。
フィルム構成材料の保存或いは製膜工程において、空気中の酸素による劣化反応が併発することがある。この場合、安定化剤の安定化作用を利用することと併せ、空気中の酸素濃度を低減させる手段を使用してもよい。このような手段として、公知の技術として不活性ガスとして窒素やアルゴンの使用、減圧〜真空による脱気操作、及び密閉環境下による操作が挙げられる。これら3者の内少なくとも1つの方法を上記安定化剤を存在させる方法と併用するようにしてもよい。フィルム構成材料が空気中の酸素と接触する確率を低減することにより、該材料の劣化が抑制できる。
位相差フィルムを、偏光板保護フィルムとして活用する場合、偏光板及び偏光板を構成する偏光子に対して経時保存性を向上させる観点から、フィルム構成材料中に上述の安定化剤を含有させるようにする。
偏光板を用いた液晶表示装置において、位相差フィルムに上述の安定化剤が存在すると、位相差フィルムの経時保存性が向上し、光学的な補償機能が長期にわたって発現できるものとなる。
フィルム構成材料の熱溶融時の安定化のために有用であるヒンダードフェノール酸化防止剤化合物としては、既知の化合物を使用することができ、例えば、米国特許第4,839,405号明細書第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、以下の一般式式(1)のものが含まれる。
上式中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
フィルム構成材料の熱溶融時の安定化のために有用である酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び一般式(2)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
用いることが可能なさらなる酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
フィルム構成材料の熱溶融時の安定化に有用なヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、既知の化合物が使用可能であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、以下の一般式(3)のものが含まれる。
ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジブチル−アジパミド、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N’−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン光安定剤の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれる。
安定化剤は、少なくとも1種以上選択でき、添加する量は、セルロース樹脂の質量に対して、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上0.8質量%以下である。
安定化剤の添加量が少なすぎると、熱溶融時、安定化作用が低いために安定化剤の効果が得られず、また添加量が多すぎると、樹脂への相溶性の観点からフィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなることもあるために好ましくない。
安定化剤は、樹脂を溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合を樹脂の融点以下、安定化剤の融点以上の温度で混合することにより、安定化剤のみを溶融して樹脂の表面に安定化剤を吸着させるようにしてもよい。
可塑剤を添加することは、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。
また本発明で行う溶融流延法においては、可塑剤の使用は、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、フィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロース樹脂単独よりも、可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度を低下させる目的を含んでいる。
ここで、本発明において、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において、材料が加熱された温度を意味する。
セルロース樹脂単独ではガラス転移温度よりも低いと、フィルム化するための流動性は発現しない。しかしながら該樹脂は、ガラス転移温度以上において、熱量の吸収により弾性率或いは粘度が低下し、流動性が発現される。フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、添加する可塑剤がセルロース樹脂のガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが上記目的を満たすために好ましい。
可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
カルボン酸エステル誘導体としては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等が挙げられ、フタル酸エステル誘導体としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
可塑剤の添加量は、フィルム構成材料を構成する樹脂に対して、好ましくは0.5質量%以上〜20質量%未満、より好ましくは1質量%以上〜11質量%未満である。
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが好ましい。具体的には特表平6−501040号に記載されている不揮発性燐酸エステルが挙げられ、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルや上記例示化合物の中ではトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。揮発成分が可塑剤の熱分解によるとき、可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、フィルム構成材料の溶融温度(Tm)よりも高いことが求められる。可塑剤は、その添加目的のために、セルロース樹脂に対する添加量が他のフィルム構成材料よりも多く、揮発成分の存在は得られるフィルムの品質劣化に大きな影響を与えるためである。なお、熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することができる。
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(いずれもチバ−スペシャルティ−ケミカルズ社製)を用いることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
紫外線吸収剤は、添加する場合、セルロース樹脂の質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%添加する。これらは2種以上を併用してもよい。
光学フィルムには、滑り性、搬送性や巻き取りをし易くするためにマット剤を添加してもよい。
マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。
中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nm、更に好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子の含有量は、セルロース樹脂に対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
マット剤は、フィルム構成材料の溶融前に添加するか、また予めフィルム構成材料中に含有させておくことが好ましい。例えば、予め溶媒に分散した微粒子とセルロース樹脂及び/又は可塑剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を混合分散させた後、溶媒を揮発させるか、または沈殿法によって、マット剤を予めフィルム構成材料中に含有させる。このようなフィルム構成材料を用いることにより、マット剤をセルロース樹脂中に均一に分散させることができる。
マット剤として用いられるフィルム中の微粒子は、別の目的としてフィルムの強度向上のために機能させることもできる。
光学フィルムとして、例えば位相差フィルムを製造する場合に、リターデーションを調節するためにリターデーション制御剤を添加してもよい。リターデーション制御剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することができる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
セルロース樹脂に添加する安定化剤、可塑剤及び上記その他添加剤を添加するときは、それらを含めた総量が、セルロース樹脂の質量に対して1質量%以上30質量%以下、好ましくは5〜20質量%となるようにする。
フィルム構成材料は溶融及び製膜工程において、揮発成分が少ないまたは発生しないことが求められる。これは加熱溶融時に発泡して、フィルム内部の欠陥やフィルム表面の平面性劣化を削減または回避するためである。
フィルム構成材料が溶融されるときの揮発成分の含有量は、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以下であることが望まれる。本発明においては、示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用いて、30℃から250℃までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量としている。
用いるフィルム構成材料は、前記水分や前記溶媒等に代表される揮発成分を、製膜する前に、または加熱時に除去することが好ましい。除去する方法は、所謂公知の乾燥方法が適用でき、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことができ、空気中または不活性ガスとして窒素を選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、フィルム構成材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。
製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することができ、樹脂単独、または樹脂とフィルム構成材料の内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することもできる。乾燥温度は100℃以上が好ましい。乾燥する材料にガラス転移温度を有する物が存在するときには、そのガラス転移温度よりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがあるので、乾燥温度は、ガラス転移温度以下であることが好ましい。複数の物質がガラス転移温度を有する場合は、ガラス転移温度が低い方のガラス転移温度を基準とする。より好ましくは100℃以上、(ガラス転移温度−5)℃以下、さらに好ましくは110℃以上、(ガラス転移温度−20)℃以下である。乾燥時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、さらに好ましくは1.5〜12時間である。乾燥得温度が低くなりすぎると揮発成分の除去率が低くなり、また乾燥するのに時間にかかり過ぎることになる。また、乾燥工程は2段階以上にわけてもよく、例えば、乾燥工程が、材料の保管のための予備乾燥工程と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥工程を含むものであってもよい。
溶融流延成膜法は、加熱溶融する成形法に分類され、溶融押出し成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などを適用できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる光学フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。以下、溶融押出し法を例にとり本発明のフィルムの製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、フィルムが押出し機から押出されて支持体上で冷却固化する工程が、相対湿度10〜50%、好ましくは15%〜40%が、より好ましくは20%〜30%の環境下で行われることを特徴とする。相対湿度とは、水蒸気圧と飽和水蒸気圧の比を百分率で表した数値である。その時の温度は10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃である。
本発明において、「フィルムが押出し機から押出されて支持体上で冷却固化する工程」中、溶融混練されたフィルム構成材料をダイに供給する工程、ダイに供給されたフィルム構成材料を第1冷却ロール上にフィルム状に押し出し冷却する工程、特にダイに供給されたフィルム構成材料を第1冷却ロール上にフィルム状に押し出し冷却する工程を上記環境下で行うようにする。
本発明において、非晶性熱可塑性樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
本発明においては、上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦おこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機内は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
本発明においては、押出し機は、好ましくは、相対湿度10〜50%の環境下に設定するようにする。その相対湿度は、好ましくは15%〜40%が、より好ましくは20%〜30%である。また、その時の温度は10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃である。
押出し機をそのような相対湿度環境に設定するとは、押出し機全体を、そのような相対湿度の環境下に置くということを意味している。
押出し機内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度(Tg’)に対して、Tg’以上、Tg’+100℃以下、好ましくはTg’+10℃以上、Tg’+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。ここで、フィルムのガラス転移温度(Tg’)は、JIS K7121に記載の方法にて測定される値を意味している。
押出し機のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
本発明に使用できる押出し機としては、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
押出し機から押し出されたフィルム構成材料は、ダイに送られ、ダイからフィルム状に押し出される。
押出し機から吐出される溶融物は、ダイに供給される。ダイはシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。ダイの材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。
ダイスリップ部の好ましい材質は、ダイと同様である。また、リップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
ダイから押出された材料は、冷却ロールにて冷却、表面矯正される。ダイから押出された材料が最初に接触する冷却ロールを第1冷却ロールとすると、材料がダイから第1冷却ロールに接触するまでの時間は短い方が好ましく、10秒以内、好ましくは5秒以内、より好ましくは2秒以内である。また、ダイから第1冷却ロールまでの距離は短い方が好ましく、50cm以下、好ましくは20cm以下である。ダイから第1冷却ロールまでの距離または到達時間を短くする目的は、ダイから出たフィルムの温度が、ガラス転移点以下に冷却される前にロールに接触させてフィルム表面の凸凹を矯正させるためである。ダイから出たフィルムがガラス転移点以下で第1ロールと接触すると、ダイで形成されたダイラインや厚みムラなどを矯正しにくくなる。
本発明においては、フィルム構成材料が、押出し機から押し出されてダイに送られ、ダイから第1冷却ロール上にフィルム状に押し出されて、第1冷却ロール上で冷却される工程を、相対湿度10〜50%、好ましくは15%〜40%が、より好ましくは20%〜30%の環境下に設定するようにする。相対湿度とは、水蒸気圧と飽和水蒸気圧の比を百分率で表した数値である。また、その時の温度は10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃である。
ダイからフィルムが流出する際、昇華物等によるダイや冷却ロールの汚染を防ぐため、そのような昇華物等を吸引する吸引装置をダイ付近に装備することが好ましい。吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱するなどの処置を施すことが必要である。また、吸引圧が大きすぎると段ムラなどフィルム品質に影響を及ぼす、小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
フィルムと冷却ロールは密着することが好ましい。フィルムと冷却ロールを密着させる方法としては、フィルムをガラス転移温度以上に保つこと、タッチロールを用いて押し付けることなどがあげられる。また、フィルムを冷却ロールから剥離するときにフィルム膜が延伸しないように張力、冷却ロール温度を制御することが必要である。フィルムが冷却ロールから剥がれるときのフィルム温度はガラス転移温度以下であることが好ましい。冷却ロールは1本以上であれば良いが、フィルムの両面に対して平滑性を高めるために2本以上とし、両面とも冷却ロールに接触させることが好ましい。また、冷却ロールには、クリーニングロール等の清掃設備を付与することも可能である。
前述の第1冷却ドラムから剥離されたフィルムは、1つまたは複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介して長手方向に一段又は多段縦延伸することが好ましい。このとき、本発明のフィルムのガラス転移温度をTg’とすると(Tg’−30)℃以上(Tg’+100)℃以下、好ましくは(Tg’−20)℃以上、(Tg’+80)℃以下の範囲内で加熱して搬送方向に延伸することが好ましい。
次に、搬送方向に延伸されたフィルムを、(Tg’−20)℃以上(Tg’+20)℃以下の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の厚さ及び光学的な分布が低減でき好ましい。
フィルム構成材料によってTg’が異なるが、Tg’はフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならしめることにより制御できる。光学フィルムとして位相差フィルムを作製する場合、Tg’は120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によって該フィルムの温度環境が変化する。このとき該フィルムの使用環境温度よりも該フィルムのTg’が低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリターデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。該フィルムのTg’が高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、またフィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tg’は250℃以下が好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
位相フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相フィルムの機能付与するために、上記延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行われている。
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、さらに偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御をおこなう必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRthを制御することができる。ここで、Roとは面内レタデーションを示し、面内の長手方向(MD)の屈折率と幅方向(TD)の屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rthは厚み方向レタデーションを示し、面内の屈折率(長手方向(MD)と幅方向(TD)の平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。ここで、nxとは長手(MD)方向の屈折率、nyとは幅手(TD)方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制或いは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロース樹脂フィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが必要とされるリターデーション値を得るためにより好ましい。
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。長尺状の偏光板を得るためには、位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロース樹脂を用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、表示品質の向上のためには、位相差フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、目的とするリターデーション値を得るためには、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。
位相差フィルムを偏光板保護フィルムとする場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に、下限は20μm以上、好ましくは35μm以上である。上限は150μm以下、好ましくは120μm以下である。特に好ましい範囲は25以上〜90μmである。位相差フィルムが厚いと、偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的に適さない。一方、位相差フィルムが薄いと、位相差フィルムとしてのリターデーションの発現が困難となり、加えてフィルムの透湿性が高くなり、偏光子を湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
位相差フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内の存在し、製膜方向とのなす角度をθ1とすると、θ1は−1°以上+1°以下、好ましくは−0.5°以上+0.5°以下となるようにする。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて行うことができる。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現に寄与する。
本発明の位相差フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、位相差フィルムの配置は、位相差フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置することで、表示画質の向上に寄与し、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図1に示される構成をとることができる。図中、1a、1bは保護フィルム、2a、2bは位相差フィルム、5a、5bは偏光子、3a、3bはフィルムの遅相軸方向、4a、4bは偏光子の透過軸方向、6a、6bは偏光板、7は液晶セル、9は液晶表示装置を示している。
光学フィルムの面内方向のリターデーション(Ro)分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。また、フィルムの厚み方向のリターデーション(Rth)分布を10%以下に調整することが好ましいが、更に好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
リターデーション分布の数値は、得られたフィルムの幅手方向に1cm間隔でリターデーションを測定し、得られたリターデーションの変動係数(CV)で表したものである。リターデーション、その分布の数値の測定方法については、例えば、面内及び厚み方向のリターデーションをそれぞれ(n−1)法による標準偏差を求め、以下で示される変動係数(CV)を求め、指標とする。測定において、nとしては、130〜140に設定して算出することもできる。
変動係数(CV)=標準偏差/リターデーション平均値
位相差フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
位相差フィルムは、リターデーション値の波長分散性を有していてもよく、液晶表示素子に上記同様に用いる場合、表示品質の向上のために、該波長分散性に関して適宜選択することができる。ここで、位相差フィルムの590nmの測定値Roと同様に、450nmにおける面内リターデーションR450、650nmの面内リターデーションをR650と定義する。
表示装置が後述のMVAを用いる場合、位相差フィルムの面内リターデーションにおける波長分散性は、好ましくは、0.7<(R450/R0)<1.0、1.0<(R650/R0)<1.5、より好ましくは0.7<(R450/R0)<0.95、1.01<(R650/R0)<1.2、さらに好ましくは0.8<(R450/R0)<0.93、1.02<(R650/R0)<1.1の範囲内にあるようにすると、表示の色再現性において有効である。
位相差フィルムを、VAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値を有するように調整し、特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いられようにするには、面内リターデーションであるRoを30nmよりも大きく95nm以下に、かつ厚さ方向のリターデーションであるRthを70nmよりも大きく400nm以下の値に調整することが求められる。
上記面内リターデーションは、2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された、例えば図1の構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にしてクロスニコル状態にあるとき、表示面の法線から斜めに観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれが生じ、これが要因となる光漏れを、主に補償する。厚さ方向のリターデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために寄与する。
液晶表示装置において液晶セルの上下に偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の2a及び2bは、Rthの配分を選択することができ、上記範囲を満たしかつRthの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。
このとき2a及び2bのRo、Rthが両者同じであることが、工業的な偏光板の生産性向上において好ましい。特に好ましくはRoが35nmよりも大きくかつ65nm以下であり、かつRthが90nmよりも大きく180nm以下で、図1の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。
液晶表示装置において、一方の偏光板に例えば市販の偏光板保護フィルムとしてRo=0〜4nm及びRth=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが、例えば図1の2bの位置で使用されている場合、他方の偏光板に配置される偏光フィルム、例えば、図1の2aに配置する位相差フィルムは、Roが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚さ方向のリターデーションであるRthが140nmよりも大きく400nm以下であるものを使用するようにする。表示品質が向上し、かつフィルムの生産面からも好ましい。
〈液晶表示装置〉
本発明の位相差フィルムを含む偏光板(「本発明の偏光板」という)は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることができ、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置への使用に適している。
マルチドメイン化は、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
本発明の偏光板は、垂直配向モードに代表されるMVA(Multi-domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることができる。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、本発明の偏光板によって表示品質効果を発現することができる。本発明の偏光板を用いることによって表示品質効果を発現できれば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することができる。ドメインの分割は、公知の方法を採用することができ、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定できる。
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても応用されつつあり、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
本発明の位相差フィルムを含む偏光板を少なくとも含む液晶表示装置においては、本発明の位相差フィルムを含む偏光板を、液晶セルに対して、一枚配置するか、或いは液晶セルの両側に二枚配置する。このとき偏光板に含まれる本発明の位相差フィルム側が液晶表示装置の液晶セルに面するように用いることで表示品質の向上に寄与できる。図1においては2a及び2bのフィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
このような構成において、本発明の位相差フィルムは、液晶セルを光学的に補償することができる。本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供できる。
本発明の偏光板において、偏光子からみて位相差フィルムとは反対側の面には、セルロース誘導体の偏光板保護フィルムが用いられ、汎用のTACフィルムなどを用いることができる。液晶セルから遠い側に位置する偏光板保護フィルムは、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムや、または本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
一般に位相差フィルムでは、上述のリターデーション値としてRoまたはRthの変動が少ないことが安定した光学特性を得るために求められている。特に複屈折モードの液晶表示装置は、これらの変動が画像のムラを引き起こす原因となることがある。
溶液流延法による方法によって製造された長尺状の位相差フィルムは、該フィルム中のごく微量に残留した有機溶媒量の揮発に依存して何が?リターデーション値が変動することがある。この長尺状の位相差フィルムは長尺の巻物(ロール)の状態で製造、保管、輸送され、偏光板製造業者等によって偏光板に加工される。従ってロールの巻きの中に行くほど、残留溶媒が存在し、揮発性が鈍化することがある。このため巻き外から巻き内、及び幅手方向では両端から中心にかけて微量な残留溶媒の濃度差が発生し、これらが引き金となってリターデーション値の経時的な変化と変動を引き起こすことがあった。
一方、本発明においては、長尺状の位相差フィルムは、溶融流延法によってフィルムを製造するため、溶液流延法と異なり揮発させるための溶媒が存在しない。本発明により、リターデーション値の経時的な変化と変動が少ないロールフィルムが得られる。本発明は、溶融流延によって製造されるフィルムを、連続的に延伸処理することによって長尺状の位相差フィルムを得る点で優れている。
本発明に従い溶融流延法により製造される長尺状位相差フィルムは、セルロース樹脂を主体として構成されるため、セルロース樹脂固有のケン化を活用してアルカリ処理工程を活用することができる。これは、偏光子を構成する樹脂がポリビニルアルコールであるとき、従来の偏光板保護フィルムと同様に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて本発明の位相差フィルムと貼合することができる。このために本発明は、従来の偏光板加工方法が適用できる点で優れており、特に長尺状であるロール偏光板が得られる点で優れている。
本発明により得られる製造的効果は、特に100m以上の長尺の巻物においてより顕著となり、1500m、2500m、5000mとより長尺化する程、偏光板製造の製造的効果を得る。
例えば、位相差フィルム製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、10m以上5000m以下、好ましくは50m以上4500m以下であり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができる。0.5m以上4.0m以下、好ましくは0.6m以上3.0m以下の幅でフィルムを製造してロール状に巻き取り、偏光板加工に供してもよく、また、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールに巻き取った後、断裁して目的の幅のロールを得て、このようなロールを偏光板加工に用いるようにしてもよい。
本発明の位相差フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
上記の各種機能層を設ける場合、好ましくは、相対湿度10〜50%の環境下に設定するようにする。その相対湿度は、好ましくは15%〜40%が、より好ましくは20%〜30%である。また、その時の温度は10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃である。
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロース樹脂を含む組成物を共押出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成の光学フィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていても良く、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tg’と定義して同様に扱うこともできる。又、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
本発明の光学フィルムは、寸度安定性が、23℃55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃90%RHにおける寸法の変動値が±2.0%未満であり、好ましくは1.0%未満であり、更に好ましくは0.5%未満である。
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして偏光板の保護フィルムとして用いる際に、位相差フィルム自身に上記の範囲以上の変動を有すると、偏光板としてのリターデーションの絶対値と配向角が当初の設定とずれるために、表示品質の向上能の減少或いは表示品質の劣化を引き起こすことがある。
本発明の位相差フィルムは偏光板保護フィルム用として用いることができる。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた位相差フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼り合わせる方法があり、少なくとも片面に本発明の偏光板保護フィルムである位相差フィルムが偏光子に直接貼合する。
上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
位相差フィルムの成膜方法は、例えば米国特許第2,492,978号、同第2,739,070号、同第2,739,069号、同第2,492,977号、同第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,607,704号、英国特許第64,071号、同第735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号に記載の方法を参照することも可能で、本発明の概念、趣旨を参照すれば、それらの方法に本発明の加温加圧工程を適用することも当業者であれば可能であり、そのような場合も本発明の範囲に含まれるものである。
[実施例1]
C−1:セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.7、
数平均分子量75,000、140℃5時間乾燥、ガラス転移点:174℃)
P−1:トリメチロールプロパントリベンゾエート 10重量部
A−1:IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 1重量部
上記材料をV型混合機で30分混合した後、Tダイを取り付けた2軸押出し機(PCM30;(株)池貝社製)に供給し直接製膜した。押出し機の設定温度は220℃、Tダイはコートハンガータイプで間隙を300μmに設定した。また押出し機中間部のホッパー開口部から、滑り剤としてシリカ粒子(日本アエロジル社製)およびUV吸収剤(TINUVIN360:チバスペシャルティケミカル社製)をそれぞれ、0.05重量部、0.5重量部となるよう添加した。溶融押出したフィルムは100℃に温度調整したクロムメッキ鏡面ロール(第1冷却ロール)に落として引き取りロール3本に順次通し、エッジをスリットした後、ワインダーに巻き取った。巻き取ったフィルムの厚みが80μmになるように押出し量と引き取りロールの回転速度を調整した。このとき、押出し機およびダイと第1冷却ロールの周囲を密封し、内部を窒素充填させ、温度30℃、相対湿度25%に保った。以上のようにして得られたフィルムを試料101とする。
溶融製膜する時の押出し機内、ダイと第1冷却ロールの周囲の相対湿度を表1のように変更した以外は試料101と同様に試料102〜107のフィルムを作製した。
次いで得られたフィルムの欠陥について目視で観察し、4段階(◎〜×)にランク付けした。結果を表1に示す。
◎:100μm以上の異物が0.1個/m2以下
○:100μm以上の異物が0.1個/m2より多く1個/m2以下
△:100μm以上の異物が1個/m2より多く10個/m2以下
×:100μm以上の異物が10個/m2より多い
表1から、本発明の製造条件にて作製した光学フィルムは欠陥が少なく優れた特性を示していることがわかる。