JP2007043975A - がんモデル動物の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 がん細胞を着床させたい実験動物の臓器に至る血管内に、内部にがん細胞を封入したマイクロカプセルを注入し、前記マイクロカプセルを前記臓器に到達させた後、前記マイクロカプセルの内部に封入したがん細胞の増殖による時限的な前記マイクロカプセルの破壊により、その内部からがん細胞を外出させ、外出したがん細胞を前記臓器に着床させてがん病巣を形成させることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
J hepatol 11 53−57 1990 J Surg Res 112 31−37 2003 Cancer Res 38 2651−2660
また、請求項2記載の作製方法は、請求項1記載の作製方法において、前記マイクロカプセルの平均粒径が100μm〜800μmであることを特徴とする。
また、請求項3記載の作製方法は、請求項2記載の作製方法において、内部に500個〜4000個のがん細胞を封入したマイクロカプセルを注入することを特徴とする。
また、請求項4記載の作製方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の作製方法において、前記マイクロカプセルの構成材料としてアルギン酸塩と所望によりポリリジンを用いることを特徴とする。
また、請求項5記載の作製方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の作製方法において、前記臓器が肝臓であって、前記血管が門脈であることを特徴とする。
また、請求項6記載の作製方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の作製方法において、前記実験動物がゲッ歯動物であることを特徴とする。
また、請求項7記載の作製方法は、請求項6記載の作製方法において、前記ゲッ歯動物がラットであることを特徴とする。
また、請求項8記載の作製方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の作製方法において、前記マイクロカプセルを100個〜6000個注入することを特徴とする。
また、請求項9記載の作製方法は、請求項1乃至8のいずれかに記載の作製方法において、前記がん細胞が消化器がん細胞をはじめとする各種悪性腫瘍細胞であることを特徴とする。
また、本発明のがんモデル動物は、請求項10記載の通り、請求項1記載の作製方法によって作製されてなることを特徴とする。
また、本発明の抗がん剤のスクリーニング方法は、請求項11記載の通り、請求項1記載の作製方法によって作製されてなるがんモデル動物に抗がん剤候補物質を投与し、その抗がん性を評価することに基づくことを特徴とする。
また、本発明のがんモデル動物作製用マイクロカプセルは、請求項12記載の通り、マイクロカプセル1個当たりがん細胞を30個〜4000個内部に封入してなることを特徴とする。
マイクロカプセル化したヒト膵臓がん細胞株をラットの門脈内に注入し、肝転移を形成させることを目的として、ヒト膵臓がん細胞株ASPC-1,BxPC-3,SUIT-2のそれぞれを、直径300μmのアルギン酸カルシウム-ポリ-L-リジン-アルギン酸カルシウムからなるマイクロカプセルの内部に封入した。なお、ASPC-1とBxPC-3の培養は、RPMI(SIGMA-ALDRICH, St Louis)に10%FBS(Invitrogen Corporation, NY)を加えた培養液を用いて行い、SUIT-2の培養は、DMEM(SIGMA-ALDRICH, St Louis)に5%FBS(同)を加えた培養液を用いて行った。
がん細胞封入マイクロカプセルは二重ノズル法により作製した。まず、ASPC-1とBxPC-3は、matrigel(SIGMA-ALDRICH, St Louis)と2%アルギン酸水溶液を1:3の割合で混合した溶液に濃度が2×107cells/mlアルギン酸となるように混合した。また、SUIT-2は、1.5%アルギン酸水溶液に1×107cells/mlアルギン酸となるように混合した。次いで、得られたがん細胞混合液を二重ノズルの内側ノズル(31G針)から5.0ml/minの速度で1.1%塩化カルシウム水溶液に滴下し、氷冷下において30分間攪拌して反応させることで、内部にがん細胞を封入したカルシウム-アルギン酸ビーズを作製した。なお、がん細胞混合液を1.1%塩化カルシウム水溶液に滴下する際、二重ノズルの外側ノズルからは、得られるカルシウム-アルギン酸ビーズの粒径が300μmとなるように風量を調節した空気を噴出させた。次いで、内部にがん細胞を封入したカルシウム-アルギン酸ビーズを0.05%(wt/vol)ポリ-L-リジンと3分間反応させ、さらに、0.03%(wt/vol)アルギン酸と4分間反応させてビーズの表面をコーティングした後、クエン酸と6分間反応させ、ビーズの内部のアルギン酸を液状化することで、内部にがん細胞を封入したアルギン酸カルシウム-ポリ-L-リジン-アルギン酸カルシウムからなるマイクロカプセルを得た(マイクロカプセル1個当たりの細胞封入個数は計算上ASPC-1とBxPC-3については600個でありSUIT-2については300個である)。なお、操作中の試薬はすべて氷冷したものを用いた。このようにして得られたがん細胞封入マイクロカプセルは、培養液とともに450mlの培養フラスコ内(TPP)に入れ、37℃,5%CO2のインキュベーター内で保存し、がん細胞を培養した。培養液は2日ごとに倍量に交換した。
このようにして作製した、100個のSUIT-2封入マイクロカプセルの直径は平均348μmであり標準偏差33であった(図1参照)。100個のASPC-1封入マイクロカプセルの直径は平均298μmであり標準偏差21.95であった。100個のBxPC-3封入マイクロカプセルの直径は平均362μmであり標準偏差35であった。以上の結果から、いずれのがん細胞を内部に封入した場合でも、安定した大きさのマイクロカプセルが作製されたことがわかった。
フラスコ内のそれぞれのがん細胞封入マイクロカプセルを、作製直後から毎日倒立位相差顕微鏡で観察し、1〜3日毎にマイクロカプセルの写真を撮影した。また、マイクロカプセルの内部に封入した細胞が集塊を形成し、マイクロカプセルの内部で十分に増殖した日をラットの門脈内への最適投与日に設定した。また、それぞれのがん細胞封入マイクロカプセルについて、マイクロカプセル作製日、2日目、5日目、7日目と以後3日毎に、フラスコ内で細胞の増殖によって破裂しているマイクロカプセルを確認できる日まで、その内部の細胞数をカウントした。細胞数のカウントは、まず、培養フラスコからマイクロカプセルを取り出し、総マイクロカプセル数/1000μl PBSに調整し、次に、そこから50〜100μl取り出し、マイクロカプセル浮遊液:4%パパイン:8%リアーゼが2:1:1の容量となるように混合し、ハイブリオーブンで30分間反応させ、ピペティングでカプセルを破壊して細胞を取り出して行った。また、最適投与日に一部のマイクロカプセルを培養フラスコから取り出し、OCT compaundに包埋し、frozen sectionを作製した後にHematoxylin-Eosin染色を行ってカプセルの断面を顕微鏡下に観察した。
SUIT-2封入マイクロカプセルについて、図2-aに作製1日目の写真、図2-bに最適投与日の写真を示す。図2-aと図2-bから明らかなように、マイクロカプセルに封入された細胞は、その内部において次第に集塊を形成しながら増殖し、最終的にはマイクロカプセルの内部を充満した後に時限的に破裂して培養フラスコ内で増殖した(図2-c:マイクロカプセルが破裂して一部の細胞が外出していることが確認できる)。ある直径380μmのSUIT-2を内部に封入したマイクロカプセルについて、その内部の細胞数をカウントしたところ、マイクロカプセル作製時は300個で、5日目には700個であった。この時点で、マイクロカプセルの内部は細胞でほぼ充満され、7日目以降、細胞はマイクロカプセルを破裂させた後も増殖することが確認された。7日目の時点で総マイクロカプセル数の10%が破裂しており、この時点におけるマイクロカプセルの内部のSUIT-2の個数は、1700〜3500個であった。なお、ASPC-1封入マイクロカプセルについては7日目に、BxPC-3封入マイクロカプセルについては13日目に、それぞれマイクロカプセルの破裂が起こることが確認された。3種類のがん細胞をそれぞれ内部に封入したマイクロカプセルの最適投与日は、SUIT-2とASPC-1では5日目、BxPC-3では7日目であった。最適投与日のSUIT-2封入マイクロカプセルの断面をHematoxylin-Eosin染色で観察した結果を図2-dに示す。図2-dから明らかなように、SUIT-2は、マイクロカプセルの内部において3次元的に腺管を形成しており、あたかも膵臓がん切除標本中に認められる静脈内腫瘍栓に類似していた。
ヒト膵臓がん細胞株封入マイクロカプセルをヌードラットMale F344/NJcl-mu rat(日本クレアより購入)5週齢に門注して肝転移を形成させた。ラットは、オートクレーブで滅菌したケージ,餌,水分を使用し、HEPA-filtered下の環境で飼育した。門注方法は、設定した最適投与日にがん細胞封入マイクロカプセルを培養フラスコから回収し、生理食塩水で3000個/mlに調整した。ペントバルビタール40mg/gを腹腔内投与で麻酔した後、正中切開で開腹し、腸管を創外に脱転し、門脈が直線化するように腸間膜を展開した。ヘパリン化した20Gのサーフローを上腸間膜静脈末梢から挿入し、先端をsplenic veinとportal veinの合流部の先に留置した。このような状態でがん細胞封入マイクロカプセルを0.1ml/secで注入し、その後、生食でフラッシュした。刺入部は5-0nylonで結紮して止血した。
ASPC-1,BxPC-3,SUIT-2のそれぞれを内部に封入したマイクロカプセルを門注することで形成される肝転移および他臓器への転移を検討した。ASPC-1,BxPC-3,SUIT-2のそれぞれを内部に封入したマイクロカプセルを3000個ラットに門注した後、BxPC-3投与群とSUIT-2投与群は4週後に、ASPC-1投与群は5週後にペントバルビタールの過量投与でラットを犠死させ肝臓を摘出した。同時に刺入部、腹膜播種および肺転移の有無を肉眼的に観察した。肝転移の評価は、肝全体および腫瘍全体の体積を測定して、肝臓に対する転移巣の占める割合を求めた。体積の測定方法は、肝をホルマリンに固定した後に左葉、中葉、右葉、尾状葉に分割し、それぞれの葉について冠状断で2mmの厚さにスライスし、スライスごとに肝全体の面積および腫瘍部分の面積を汎用画像処理ソフトWinROOF(Mitani corpotarion, FUKUI JAPAN)で求め、2mmの高さを乗じて肝全体および腫瘍全体の体積とした。
その結果、門注を施行した50匹のうち3匹が当日に死亡した(出血2匹、麻酔1匹)が、残りのラットは犠死させるまですべて生存した。ASPC-1,BxPC-3,SUIT-2のそれぞれを内部に封入したマイクロカプセル3000個を門注した場合、SUIT-2では12匹中12匹全てのラットが、ASPC-1では6匹中6匹全てのラットが肝転移を形成し、BxPC-3では6匹中5匹のラットが肝転移を形成した。一方、がん細胞封入マイクロカプセル3000個と同数のsingle cell susupensionを投与した場合では、どのがん細胞を投与した場合でも肝転移は1匹も形成されなかった(表1参照)。また、門注したラットの肝全体の体積、転移巣の体積、肝転移巣体積率(SD)はそれぞれ、SUIT-2封入マイクロカプセルを注入した実験では53.53cm3,7.95 cm3,14.6%(7.0)、ASPC-1封入マイクロカプセルを注入した実験では56.61cm3,5.68 cm3,9.7%(5.8)、BxPC-3封入マイクロカプセルを注入した実験では55.68cm3,9.55cm3,15.0%(12.5)であり、安定して肝転移を形成することができた(図3参照)。
さらに、SUIT-2封入マイクロカプセルの門注個数を段階的に6000個、3000個、1000個、333個と変えた場合、肝転移形成率は門注個数が6000個と3000個では100%であったが(6000個門注群で5匹中5匹,3000個門注群で12匹中12匹)、1000個では85.7%(7匹中6匹)、333個では50%(8匹中4匹)であった。また、肝転移の程度を算出したところ、肝全体の体積、転移巣の体積、肝転移巣体積率(SD)は、6000個門注群では73.1cm3,23.0 cm3,29.5%(13.1)、3000個門注群では53.53cm3,7.95 cm3,14.6%(7.0)、1000個門注群では48.3cm3,0.9 cm3,1.3%(1.8)、333個門注群では44.2cm3,0.1 cm3,0.2%(0.3)であり、マイクロカプセルの門注個数を変えることにより、肝転移の程度を段階的に調節することが可能であった(図4参照)。
なお、他臓器転移の有無についてすべてのラットについて検討したところ、ほぼすべてのラットにおいて、上腸管膜静脈の刺入部への転移、腹膜播種、肺転移など他臓器転移の形成は認めなかった。例外的にSUIT-2封入マイクロカプセル3000個門注群の2匹において、創部の皮膚に転移を認めた(図5と表2参照)。腹膜播腫や肺転移の形成はすべてのラットにおいて認められず、この方法によれば選択的に肝転移を形成させることができた。
本発明の方法によってがん細胞封入マイクロカプセルを用いて作製される肝転移モデルが、抗がん剤などの治療効果判定に有用であるかを検討するため、SUIT-2封入マイクロカプセル3000個を門注して作製したラット肝転移モデルに対し、抗がん剤であるゲムシタビン(Gemcitabine)と塩酸イリノテカン(CPT-11)を投与して治療を行い、効果判定を行った。ゲムシタビンは、SUIT-2封入マイクロカプセルを門注した後7日目から80mg/kgのdoseで週2日(3-4日毎)、合計で6回尾静脈から投与した。同様に、塩酸イリノテカンは、SUIT-2封入マイクロカプセルを門注した後7日目から60mg/kgのdoseで週2日(3-4日毎)、合計で6回尾静脈から投与した。対照として生理食塩水を6回注入して(1回当たり0.5ml)比較した。
その結果、腹腔内および胸腔内を観察したが肝以外の転移は認めず、肝臓に対する転移巣の占める割合は、対照群では43.5%であったのに対し、治療群ではゲムシタビンで1.6%であり塩酸イリノテカンで0.3%であった。よって、本発明の方法によって作製したラット肝転移モデルを用いれば、ゲムシタビンと塩酸イリノテカンによる抗腫瘍効果を確実に数値化して、治療群と対照群での正確な比較ができることがわかった(図6参照)。
Claims (12)
- がんモデル動物の作製方法であって、がん細胞を着床させたい実験動物の臓器に至る血管内に、内部にがん細胞を封入したマイクロカプセルを注入し、前記マイクロカプセルを前記臓器に到達させた後、前記マイクロカプセルの内部に封入したがん細胞の増殖による時限的な前記マイクロカプセルの破壊により、その内部からがん細胞を外出させ、外出したがん細胞を前記臓器に着床させてがん病巣を形成させることを特徴とする作製方法。
- 前記マイクロカプセルの平均粒径が100μm〜800μmであることを特徴とする請求項1記載の作製方法。
- 内部に500個〜4000個のがん細胞を封入したマイクロカプセルを注入することを特徴とする請求項2記載の作製方法。
- 前記マイクロカプセルの構成材料としてアルギン酸塩と所望によりポリリジンを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の作製方法。
- 前記臓器が肝臓であって、前記血管が門脈であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の作製方法。
- 前記実験動物がゲッ歯動物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の作製方法。
- 前記ゲッ歯動物がラットであることを特徴とする請求項6記載の作製方法。
- 前記マイクロカプセルを100個〜6000個注入することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の作製方法。
- 前記がん細胞が消化器がん細胞をはじめとする各種悪性腫瘍細胞であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の作製方法。
- 請求項1記載の作製方法によって作製されてなることを特徴とするがんモデル動物。
- 請求項1記載の作製方法によって作製されてなるがんモデル動物に抗がん剤候補物質を投与し、その抗がん性を評価することに基づくことを特徴とする抗がん剤のスクリーニング方法。
- マイクロカプセル1個当たりがん細胞を30個〜4000個内部に封入してなることを特徴とするがんモデル動物作製用マイクロカプセル。
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