JP2007043917A - 腫瘍成長因子β受容体III型に結合する核酸リガンド - Google Patents

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Abstract

【課題】 腫瘍成長因子βならびにその受容体の生理機能の解明、およびTGFβ-Smadシグナル伝達系の異常により引き起こされる疾患の発症機構の解析、診断および治療に利用可能な物質を提供する。
【解決手段】 SELEX法によって得られ、腫瘍成長因子β受容体III型に対して結合活性を有するRNA。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、腫瘍成長因子β受容体III型(TbRIII)に結合する核酸リガンドに関する。
腫瘍成長因子β(TGFβ)は、in vitroでラット繊維芽細胞の成長を促進する物質として発見され、多くの細胞種においては逆に成長を阻害するサイトカインである。細胞の成長調節の他にもTGFβは、細胞の分化や細胞外マトリクスの形成、免疫応答といった様々な生命現象の調節因子として機能しており、TGFβシグナル伝達系の調節解除は、癌や繊維症といった疾患の原因となることが知られている。このため、TGFβ/TGFβ受容体(TbR)はそれらの疾患の病因の解明や、治療法の開発において重要な標的となる。
TbRのひとつ、TGFβ受容体III型(TbRIII)はTGFβリガンドのひとつであるTGFβ2と結合し、セリン/トレオニンキナーゼ受容体であるTGFβ受容体II型(TbRII)に受け渡すことで、下流の受容体制御型Smad(R-Smad)を介したシグナル伝達を促進する。TGFβ/TbRは、癌の初期フェーズにおいては癌抑制遺伝子として機能するものの、後期フェーズにおいては、癌細胞のTGFβ-Smadシグナルに対する応答が解除されており、周囲の正常細胞の増殖抑制や血管新生の誘導、免疫応答の抑制を介して、むしろ癌増殖因子として機能する。
ところで、in vitroにおいてある標的物質と特異的に結合するRNAを選択・濃縮する手法として、SELEX法と呼ばれる新たな手法が開発されている(C. Tuerk & L. Gold, Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science 249:505-510, 1990)。SELEX法は、PCRプライマー用の配列(一方にはT7ポリメラーゼの配列を含む)を両端に含む適当な長さのランダム配列を持つRNAを合成し、これを標的タンパク質と会合させ固相化する。結合しなかったRNAを洗浄後、結合したRNAを回収し、RT-PCRで増幅後、次のラウンドで用いるRNAのテンプレートとする。これを10ラウンド前後繰り返すことにより、標的タンパク質と特異的に結合するRNAアプタマーを取得する。この方法では、標的タンパク質と特異的に結合するRNA配列を明らかにできるだけでなく、標的タンパク質の機能を促進や阻害するような生理活性を持つRNAを取得することが可能である。このことは病原タンパク質をターゲットにしてSELEXを行うことにより、得られたアプタマーを医薬品として応用できることを示唆している。従来の創薬に比べこのSELEX法を用いた創薬の優れている点として(1)従来の化学物質のスクリーニングより大規模の母集団よりスクリーニングをシステマティックに行える。(2)試験管内で容易に大量合成することができる。(3)免疫排除がない。(4)容易に合目的に改良を行える。(5)保存性が高く抗体を作ることが困難なタンパク質を標的にできる。などがあげられる。
特開2004-344008号公報
本発明は腫瘍成長因子(TGF)βならびにその受容体(TbR)の生理機能の解明、およびTGFβ-Smadシグナル伝達系の異常により引き起こされる疾患の発症機構の解析、診断および治療に利用可能な物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような物質の候補としてTbRの1つであるTGFβ受容体III型(TbRIII)に対するRNAアプタマーを作製した。すなわち、TbRIIIを標的としてSELEXを行ない、得られたアプタマーの標的との結合活性を調べ、その有用性を示した。本発明は、これらの知見に基づいて、完成されたものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)配列番号1又は配列番号2に記載の塩基配列で表されるRNAであって、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
(2) 下記の(A)の二次構造をとることのできるヌクレオチド配列を含み、腫瘍成長因子β受容体III型に対して結合活性を有するRNAであって、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
(二次構造中N1,N11は3対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N2,N3は少なくとも2対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N6,N10は8対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N7,N8は少なくとも2対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N4、N5、N9は1個の核酸塩基であり、N12は少なくとも4個の核酸塩基であり、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Uはウラシルであり、核酸塩基間をつなぐ実線は核酸塩基間の水素結合を表す。)
(3)(1)又は(2)に記載のRNAの塩基配列に1若しくは数個の塩基が置換、欠失若しくは挿入された塩基配列で表されるRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有し、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
(4)(1)〜(3)に記載のRNAの5'末端又は3'末端に別のRNAが付加されたRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有し、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のRNAのヌクレオチド配列中に少なくとも1個の修飾ヌクレオチドが導入されているRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有するRNA。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のRNAの5'末端又は3'末端にペプチド、ポリエチレングリコール、カラム担体、又は蛍光物質を結合させたRNA誘導体であって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有するRNA誘導体。
(7)RNAが標識化されている(1)〜(6)のいずれかに記載のRNA及びRNA誘導体。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載の少なくとも1つのRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNA。
(9)(8)に記載のDNAが挿入されたベクター。
(10)(1)〜(7)のいずれかに記載のRNA又はRNA誘導体を用いて、腫瘍成長因子β受容体III型を検出および/または定量する方法。
(1)のRNAはTbRIIIに対して結合活性を有する。ここで「結合活性を有する」とは、ランダム配列のRNAプールより高い結合活性を有していることを意味する。
(2)のRNAの長さは、24〜72merであることが好ましく、32〜40merであることが更に好ましい。
(3)のRNAは(1)のRNAに変異を導入してSELEXを再度おこなうことで得ることができる。ここで得られる進化したRNAは(1)のRNAよりも結合活性や生理活性が高い可能性がある。このようにRNAに変異を導入することにより、種々の目的に合ったアプタマーを作製することができる。置換、欠失若しくは挿入される塩基の個数は、数個以内であればよいが、好ましくは5個以下であり、最も好ましくは1個である。
(4)のRNAにおいて、付加されるRNAの長さは特に限定されないが、100mer以下であることが好ましく、30mer以下であることが更に好ましい。このように別のRNAを付加することにより、種々の目的に合ったアプタマーを作製することができる。
(5)のRNAは(1)〜(4)のRNAのリボースの部分または核酸塩基の部分または5'末端または3'末端を修飾したもので、(1)〜(4)のRNAの安定性、結合活性、生理活性を高めることができる。なお、修飾ヌクレオチドにはデオキシリボヌクレオチドや天然型のリボヌクレオチド(2'位が水酸基であるリボヌクレオチド)も含まれる。
(6)のRNA誘導体は(1)〜(5)のRNAの5'末端または3'末端にペプチド、ポリエチレングリコール、カラム担体、又は蛍光物質を共有結合させたもので、(1)〜(5)のRNAの安定性、結合活性、生理活性を高めることができる。ここで、カラム担体とは、例えば、アガロースやセファロースなどをいう。蛍光物質とは、例えば、Cy3やCy5をいう。
(7)の標識化したRNA及びRNA誘導体はTbRIIIの検出と定量に用いることができる。例えば、蛍光物質で標識化したアプタマーを生体内に導入することで、生体内でのTbRIIIの発現が観察できる。また、5'末端をビオチン化し固相化することで、RNAアプタマーを用いたTbRIII分離カラムを作製することができる。
(8)のDNAおよび(9)のベクターはTGFβ-Smadシグナル伝達系の異常に関係して引き起こされる疾患の遺伝子治療に用いることができる。
(1)〜(5)のRNA及びRNA誘導体は血中、もしくは直接患部に投与することによって、TGFβ-Smadシグナル伝達系の異常に関係して引き起こされる疾患の治療及び予防に用いることができる。
本発明により、TbRIIIに対して結合能を有し、その機能を阻害するRNAアプタマーが提供される。本発明のアプタマーは、TGFβ-Smadシグナル伝達系の異常により引き起こされる疾患の治療等に有用である。
本発明において用いたSELEX法の概略を図2に示す。
TbRIIIに対するRNAアプタマーの選択は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)-K1株の表層に組換えヒトTbRIIIを発現させた細胞(TbRIII細胞)をもちいて行った。この細胞は、CHO細胞にヒトTbRIIIを発現するプラスミドを導入して作製した。なお、この細胞は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(受領番号:FERM AP-20604、受領日:2005年7月26日)。SELEX法は、60塩基のランダム配列を持つRNAプールに対して行なった。ここで用いたRNAは、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されている(以下、このようなRNAを「2’PyRNA」という)。11ラウンドまでSELEXのサイクルを回した後、濃縮されてきた2’PyRNAをコードするcDNAをpGEM T-EASY Vectorにクローン化し、ランダムにピックアップした23クローンの塩基配列を決定した。その結果、5つのクローンがひとつの配列(A07)に収束していた。このA07の塩基配列を配列番号1に示し、予測される二次構造を図1に示す。
クローンA07の結合活性をみるため、P32で放射線標識した2’PyRNAを調製し、細胞への結合割合を測定した(図3)。その結果、A07 2’PyRNAはTbRIII細胞へ全量の約20%が結合したのに対し、TbRIIIを発現させていない親株(MOCK細胞)へは約0.5%しか結合しなかった。比較として測定したSELEX前のランダム2’PyRNAプールは、TbRIII細胞・MOCK細胞の双方に約0.5%しか結合しなかった。A07のTbRIII細胞への結合割合は、溶液中にTbRIII精製蛋白質を添加することで約0.5%に低下した。以上の結果より、A07 2’PyRNAは、TbRIII細胞表層に発現させたTbRIII蛋白質に結合していることが示された。
クローンA07の結合定数を決定するため、表面プラズモン共鳴解析(SPR)を行った。ストレプトアビジンセンサーチップ上にビオチン化したpoly dTを結合させ、さらに3'側をpoly A化したA07 2’PyRNAをpoly dTと対合させてチップ上に固相化し、リガンドとした (図4)。アナライトであるTbRIII精製蛋白質を流し二分子間の相互作用をみたところ、結合解離反応がみられた。得られたセンサーグラムから算出した結合定数Kdは、2.47 x 10-9Mであった。A07 2’PyRNAは、TbRIIやTGFβ受容体I型(TbRI)、endoglin(TbRIII細胞外ドメインのホモログ蛋白質)に対して結合活性を示さなかったので、TbRIIIに特異的であることが示された。
A07の結合活性に重要な部位を検索するために、Mfoldプログラムによって予想された二次構造をもとに一連の欠損変異体を作製し、TbRIII細胞への結合割合を測定した(図5)。その結果、95塩基長のA07から31塩基欠失させたA07Jrが、なお結合活性を有していることが示された。A07Jrの塩基配列を配列番号2に示す。
次に、A07Jrが予想された二次構造をとっているか確認するために、A07Jrの配列全体に30%の変異導入をおこない、5’,3’末端に新たなプライマー結合配列を付加したライブラリーを作成した(図6)。この変異導入ライブラリーから、TbRIII細胞をもちいて5サイクルのSELEXをおこない、濃縮されてきた2’PyRNAをコードするcDNAをpGEM T-EASY Vectorにクローン化し、結合活性を有するクローンを30種取得した(図7)。これらのクローンの塩基配列の比較から、結合活性には予想された二次構造が必要であること、また各ステム間を連結する一本鎖領域、すなわちP2-P3間の(A)、P3-P4間の((N)GAANAA)、P4-P5間の(CCA)、P5-P4間の(NCU)、P4-P2間の(GUA)、の一次配列が重要であることが示された(図8)。
次にアプタマーA07が、TbRIIIの生理活性を阻害するか否かを調べるために、TbRIII精製蛋白質とTGFβ2リガンドの試験管内での架橋実験をおこなった(図9)。TGFβ2とTbRIIIは相互作用するため、適当な条件下で架橋剤を添加すると、共有結合で架橋されたTGFβ2-TbRIII複合体を生成する。ここにアプタマーA07を添加すると、複合体の形成がアプタマーの濃度に依存して阻害され、4μMのアプタマー存在下では複合体の形成が約90%阻害された(図9における左から5番目のレーン)。一方で、比較としてSELEX前のランダム2’PyRNAプールを添加した場合では、全く複合体形成は阻害されなかった(図9における左から7番目のレーン)。この結果から、アプタマーA07には、TbRIIIの機能を阻害する活性があることが示された。
以上のように本発明ではTbRIIIに対する2’PyRNAアプタマーを取得した。このアプタマーは4つのステム構造が一本鎖領域によって連結された構造を取り、この構造が結合活性に重要である事が分かった。さらに、TbRIIIを高い特異性で認識する事が分かった。また、このアプタマーによって、TbRIIIとTGFβ2の相互作用が阻害されることが分かった。このアプタマーが生体内におけるTbRIIIの生理機能を阻害していれば、TGFβ-Smadシグナル伝達系の異常により引き起こされる疾患の発症機構の解析、診断および治療にもちいることができ、また細胞分化にはたすTbRIII機能の解明にも利用可能である。
このTbRIIIに対する2’PyRNAアプタマーを利用して以下のことが可能となる。
(1)治療薬としての応用: TGFβ-Smadシグナル伝達系の異常により引き起こされる癌や繊維症といった疾患は、このシグナル伝達を阻害する事により治療可能なものが多い。このシグナル伝達をアプタマーにより培養細胞レベルで阻害できるかを調べる。培養細胞レベルで作用のあった場合、さらに動物実験により治療薬として有効であるかどうかを調べることができる。既知の方法で疾病させた実験動物にアプタマーを血中、もしくは直接患部に投与して病変組織に変化が起これば、そのアプタマーは治療薬として有望である。このとき、アプタマーをより安定化させて効果を上げるために、既知の方法で修飾ヌクレオチドを導入することができる。またアプタマーに他の阻害効果を持つ低分子化合物、ポリエチレングリコール、アプタマーなどを付加させる事により化学的、物理的にTGFβ-Smadシグナル伝達を阻害するアロステリックな効果を持つ阻害剤の開発も可能である。また、アプタマーを直接阻害剤とするのではなく、TbRIIIを高発現している細胞を標的とするためのキャリアとして利用する事も可能である。例えば、アプタマーに毒性化合物や抗ガン剤を結合させることで、TbRIIIを高発現している癌細胞を標的とするミサイル製剤の開発が可能である。
(2)バイオセンシングの素子としての利用: アプタマーは抗体の特徴を有しているが、これはアプタマーを抗体の変わりに「核酸抗体」として用いることができることを意味する。これまで抗体を用いて行われていた免疫染色・ELISAなどでこのアプタマーを用いた新規の検出系が構築できる。すなわち、このアプタマーを用いたTbRIIIの定量的測定が可能である。これにより発症機構の分かっていないTGFβ-Smadシグナル伝達の異常による疾患についてその発症機構を解明する研究に実験ツールとして用いる事ができる。さらに、アプタマーを用いてTbRIIIの発現量の差や変異を認識できる系をELISAやアプタマーのチップ化などで確立し、安価で簡便な疾患の診断が可能となる。
以下、本発明の実験の手法を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1] 培養細胞
本発明で用いたヒトTbRIII発現CHO細胞は、以下のようにして作製した。
既製健常人末梢血単核球由来cDNA ライブラリー から、下記に示す特異的なプライマーを使用しPCR 法でTbRIIIの全長 cDNA を増幅した。
TbRIII (Sense):TTCAAGCTTACCATGACTTCCCATTATGTGATTGCC(配列番号3)
TbRIII (Antisense):GCCTCTAGAGGGCTAGGCCGTGCTGCTGC(配列番号4)
次にTbRIIIの全長 cDNAをコードしているDNA断片を制限酵素Hind III、Xba I処理し、哺乳類細胞用発現ベクターpRc/CMVのHind IIIとXba I部位の間に挿入した後クローニングし、TbRIII発現プラスミドpRc/CMV-TGFb/T3Rを作製した。挿入されたTbRIIIのcDNAの塩基配列をシーケンサーで確認した。
次に、CHO細胞(HS財団細胞バンクより入手)を直径35mmのシャーレを用いて、無血清培地100μlで培養した。この細胞に上述の手順で得たTbRIIIのcDNA断片を含むプラスミド6μgを、TransIT(トランスフェクション試薬)12μgを用いてリポフェクション法で導入した。
導入48時間後、一過性のTbRIIIを発現していることを、一次抗体に抗ヒトTbRIII抗体、二次抗体に抗ヤギIg-FITCを用いてフローサイトメーターで確認し、その後G418(400μg/ml)を含む培地で培養して選択した。さらに、選択された細胞を限界希釈法によって単一細胞からクローニングし、TbRIIIを安定に高発現する細胞株を得た。
培養細胞はすべて、10%量のウシ胎盤血清 (PAA laboratories社, Austria) を添加したHam’s F-10 nutrient mixture (Gibco/Invitrogen社)をもちい、5%二酸化炭素補給下で37℃にて培養した。
[実施例2] 2’PyRNAアプタマーの取得
SELEX法による2’PyRNAアプタマーの取得はEllingtonらの方法(Ellington A.D. and Szostak J.W., In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands, Nature, 346:818-22, 1990)及びTuerkらの方法(Tuerk C. and Gold L., Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science, 249:505-510, 1990)を改良して行った。SELEXに用いたランダム2’PyRNAプールは化学合成した以下のプライマー及びランダム配列テンプレート(北海道システムサイエンス社に合成依頼)より作製した。ランダム配列テンプレートはExTaq DNA polymerase (Takara-Bio社)をもちいたPCRによって増幅させ、このDNA断片を転写のテンプレートとして、プライマーF-1に含まれるT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列より、DuraScribe T7 transcription kit (Epicentre Technologies社)をもちいてin vitroで転写し、フェノール抽出とゲルろ過により精製した。2’PyRNAプールの細胞への結合はバッファーA[20 mM HEPES-NaOH(pH7.6), 150 mM NaCl, 1.5 mM CaCl2, 0.5 mM MgCl2]中で行った。2’PyRNAプールを、TbRIII細胞を培養したディッシュに投入し37℃で保温した後、細胞に結合しなかった2’PyRNAをふくむ溶液を除去し、細胞に結合した2’PyRNAをEDTA溶液(PBS-based cell dissociation buffer, Gibco/Invitrogen社)によって遊離させた。これをRT-PCRで増幅の後、in vitroで転写を行ない、次のラウンドの2’PyRNAプールを得た。毎ラウンド、2’PyRNAプールはTbRIII細胞に結合させる前後に、MOCK細胞を培養したディッシュに投入しこれに結合する2’PyRNAを取り除いた。10ラウンドのSELEXを行った後、PCR産物はpGEM-T Easy vector(Promega社)にクローニングし、大腸菌株DH5α(Novagen社製)に形質転換し、単一クローンを得た。これらは、plasmidを抽出後DNA sequencer(model 3100, ABI社製)で、以下のsequence primerを用いて塩基配列を決定した。
forward primer (F-1), 5’-TAATACGACT CACTATAGGG CCAGGCAGCG AG-3’ (T7プロモーター配列を下線で示した)(配列番号5)
reverse primer (R-1), 5’-TCTCGGACGC GTGTGGTCGG-3’(配列番号6)
ランダム配列テンプレート:5’-TCTCGGACGC GTGTGGTCGG-N60-CTCGCTGCCT GGCCCTATAG TGAGTCGTAT TA-3’(配列番号7)
sequence primer: 5'-GTTTTCCCAGTCACGAC-3'(配列番号8)
得られた塩基配列はMfoldプログラムによりRNAの二次構造予測を行った。
[実施例3] 細胞結合アッセイ
32Pの2’PyRNAへの取込みは、in vitro転写の際、DuraScribe T7 transcription kit反応液中に[α-32P]-GTP(アマシャム社)を添加することによっておこなった。細胞への2’PyRNAの結合はバッファーA中でおこなった。2’PyRNAを、細胞を培養したディッシュに投入し37℃で保温した後、細胞に結合しなかった2’PyRNAをふくむ溶液を除去し、細胞に結合した2’PyRNAをEDTA溶液によって遊離させた。遊離した2’PyRNAを液体シンチレーションカウンターによって定量することによって、2’PyRNAの結合割合を測定した。
[実施例4] 表面プラズモン共鳴(SPR)解析
SPR解析はBIAcore-2000 (BIAcore社)により行なった。ストレプトアビジンセンサーチップ(SA chip, BIAcore)に5’末端をビオチン標識化したpoly(dT)オリゴヌクレオチド(ビオチンdT16)をHBS-EPバッファー[0.01 M HEPE(pH7.4)、0.15 M NaCl、0.005% Surfactant P20、3 mM EDTA]で0.02 μg / μlの濃度に希釈し、フローセルにインジェクトしてセンサーチップ上に固定化した。セル内をバッファーAで置換後、3’側にpoly A16を付加したアプタマーをバッファーAで400 nMの濃度に希釈したものを20 μl/minで1分間インジェクトし、その後2分間バッファーAで洗った。これにバッファーAで希釈したタンパク質をアナライトとして10 μl/min で3分間インジェクトし結合反応速度を測定した。リファレンスとしてRNAアプタマーを固定化していないSAチップを用い、RNAアプタマーの結合反応は全て同じフローセル内で測定した。得られたセンサーグラムをBIAevaluation(BIACORE社)で解析し、解離定数(Kd値)を算出した。アナライトと使用したヒトTbRIII蛋白質はSigma社から、ヒトTbRII、 マウスTbRI-Fcキメラ蛋白質、ならびにヒトendoglinはGT/TECNE社から購入した。
[実施例5] A07欠失変異体の作製
それぞれの変異体のcDNA配列にT7 RNA polymeraseのプロモーター配列を付加したオリゴヌクレオチドを化学合成もしくはPCRによって調製し、それを鋳型としてDuraScribe T7 transcription kitをもちいて、in vitroで転写させ、精製した。
[実施例6] A07Jr変異導入プールの作製
A07Jr変異導入プールの鋳型はExTaq DNA polymeraseをもちいたPCRによって増幅させ、このDNA断片を転写のテンプレートとして、プライマーF-2に含まれるT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列より、DuraScribe T7 transcription kitをもちいてin vitroで転写し、フェノール抽出とゲルろ過により精製した。
forward primer (F-2), 5’-TAATACGACT CACTATAGGA GGACGTGCAG GGCCA -3’ (T7プロモーター配列を下線で示した)(配列番号9)
reverse primer (R-2), 5’- GTGTCTCGGA CGCGTGTGG -3’(配列番号10)
A07Jr変異導入プール鋳型:5’- GGAGGACGTG CAGGGCCAGG CAGCGAAAGC AGAAGAAGTA TGTGACCATG CTTCGGCAAC TTCACATGCG TAGCCAAACC GACCACACGC GTCCGAGACA C -3’(変異を導入した配列を下線で示した)
[実施例7] TGFβ2-TbRIIIクロスリンク実験
TGFβ2-TbRIIIクロスリンク実験は、バッファーB [20 mM MOPS-NaOH(pH7.6), 150 mM NaCl, 1.5 mM CaCl2, 0.5 mM MgCl2]中で行った。50 ng/mL(終濃度、以下同じ)のTGF-β2(シグマ社)と任意濃度の2’PyRNAを混合した溶液を調製し、ここに300 ng/mLのTbRIII蛋白質を添加して室温にて10分間放置したのち、0.1%のグルタルアルデヒドを添加して10分間の架橋反応をおこなった。反応を過剰量のグリシンの添加によって停止させたのち、SDS-PAGEによって反応産物を展開し、抗TGF-β2抗体(Santa Cruz社)を一次抗体、ペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG抗体(アマシャム社)を二次抗体としたウェスタン・ブロッティングをおこなった。TGF-β2のバンドは、LAS-1000plus (Fuji film). をもちいて、ECL western blotting detection system (Amersham Biosciences) によるペルオキシダーゼ活性の検出によっておこなった。
取得されたアプタマーA07の予想される二次構造を示す図。 SELEX法の概略を示す図。T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列とランダム領域を含むDNAを鋳型として、2’PyRNAプールを調製する。MOCK細胞をもちいたネガティブセレクションによる細胞表層の非標的物質へ結合する2’PyRNAの除去と、TbRIII細胞をもちいたポジティブセレクションの後、回収した2’PyRNAからRT-PCRにより次のラウンドへの鋳型を得る。本発明ではこれを10ラウンド繰り返した。最終ラウンドでのRT-PCR産物をクローニング、シークエンスに回す。 細胞結合アッセイの結果を示す図。1,MOCK細胞への初期プールの結合、2,TbRIII細胞への初期プールの結合、3,MOCK細胞へのA07の結合、4,TbRIII細胞へのA07の結合、5,溶液中にTbRIII蛋白質を投入した条件下でのTbRIII細胞へのA07の結合。アプタマーA07は、TbRIII細胞に特異的に結合し、溶液中にTbRIII蛋白質を投入することでこの結合は阻害される。 表面プラズモン共鳴解析方法の概略を示す図。ストレプトアビジンセンサーチップ上にビオチン化オリゴdTを結合させた後、3'末端にpoly A配列を付加したアプタマーをこれに固相化する。チップ上に固相化されたアプタマーとアナライトが結合した際には光学的な変化が起る。これを測定し質量的な変化に換算し、センサーグラムとしてグラフ化し、二分子間の相互作用を解析する。 A07欠失変異体の配列を示す図。右側にTbRIII細胞への結合割合を示した。 A07Jr変異導入プールを示す図。赤色で示したA07Jrの配列全体に30%の変異導入をおこない、また5’,3’両末端にはあらたなプライマー結合配列を付加した。 A07Jr変異導入プールより取得されたアプタマーの配列を示す図。右側にTbRIII細胞への結合割合を示した。 アプタマーのTbRIIIへの結合活性に必要なコンセンサス構造を示す図。 TGFβ2-TbRIIIクロスリンク実験の結果を示す図。

Claims (10)

  1. 配列番号1又は配列番号2に記載の塩基配列で表されるRNAであって、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
  2. 下記の(A)の二次構造をとることのできるヌクレオチド配列を含み、腫瘍成長因子β受容体III型に対して結合活性を有するRNAであって、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
    (二次構造中N1,N11は3対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N2,N3は少なくとも2対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N6,N10は8対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N7,N8は少なくとも2対の相補的塩基対合が可能な核酸塩基であり、N4、N5、N9は1個の核酸塩基であり、N12は少なくとも4個の核酸塩基であり、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Uはウラシルであり、核酸塩基間をつなぐ実線は核酸塩基間の水素結合を表す。)
  3. 請求項1又は2に記載のRNAの塩基配列に1若しくは数個の塩基が置換、欠失若しくは挿入された塩基配列で表されるRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有し、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
  4. 請求項1〜3に記載のRNAの5'末端又は3'末端に別のRNAが付加されたRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有し、ピリミジンヌクレオチドのリボースの2'位がフルオロ化されているRNA。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のRNAのヌクレオチド配列中に少なくとも1個の修飾ヌクレオチドが導入されているRNAであって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有するRNA。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のRNAの5'末端又は3'末端にペプチド、ポリエチレングリコール、カラム担体、又は蛍光物質を結合させたRNA誘導体であって、腫瘍成長因子β受容体III型に対する結合活性を有するRNA誘導体。
  7. RNAが標識化されている請求項1〜6のいずれかに記載のRNA及びRNA誘導体。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の少なくとも1つのRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNA。
  9. 請求項8に記載のDNAが挿入されたベクター。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載のRNA又はRNA誘導体を用いて、腫瘍成長因子β受容体III型を検出および/または定量する方法。
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JP2007043918A (ja) * 2005-08-08 2007-02-22 Medeinetto:Kk 腫瘍成長因子β受容体発現細胞株
WO2011024955A1 (ja) * 2009-08-28 2011-03-03 国立大学法人 東京大学 TGF-βII型受容体に結合する核酸およびその使用
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