JP2007042371A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 加圧や加熱を必要とせずに、混合ガス中の特定成分を分離することのできる機能を有する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 燃料電池システム1は、炭化水素系化合物から水素を含む改質ガスを生成する改質器4と、一酸化炭素に対する親和性が高い分離担体を有し、改質ガス中の一酸化炭素と他の成分との移動速度の差を利用して、改質ガスから一酸化炭素を分離する分離装置5と、分離装置5で一酸化炭素が分離されたガスと、酸素とを供給されて起電力を生じる燃料電池2とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関し、特に、混合ガスから特定の成分を分離する機能を備えた燃料電池システムに関する。
燃料電池は、アノードとカソードが、電解質膜を挟んでそれぞれ配置された構造を有している。そして、アノードに水素(燃料ガス)が接触し、カソードに酸素(酸化ガス)が接触することによって、両電極間で電気化学反応が起こり起電力を生じる。
アノードに供給する水素源として、炭化水素系化合物の改質反応によって生成する改質ガスを利用することがある。この場合、炭化水素系化合物としては、メタンを主成分とする天然ガス、メタノールなどのアルコールまたはガソリンなどが用いられる。そして、使用する炭化水素系化合物の種類に応じて、改質反応に適した触媒や温度が選択される。これにより、水素、二酸化炭素および水を含む水素リッチな改質ガスが生成される。
しかし、上記の改質反応では、反応後の改質ガス中に中間生成物である一酸化炭素が含まれる。一酸化炭素は、燃料電池内の触媒の性能を低下させるので、改質ガス中から一酸化炭素を分離除去する処理が必要となる。このように、燃料電池においては、アノードへ供給するガス中から所定の成分を分離除去する処理が必要となる場合がある。
一方、カソードに供給する酸素は、コンプレッサを用いて外気から取り込んだ空気によって調達される。ここで、燃料電池では、アノード側からのH(プロトン)の移動を容易にするために、電解質膜に適当量の水分の供給が必要とされる。このため、水分を含んだカソードオフガスを燃料電池内で循環させることによって、カソードに供給する空気を加湿することが行われている(例えば、特許文献1および2参照。)。また、冷却したカソードオフガスを循環させることによって、スタックを冷却することも行われている(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、カソードオフガスを循環させると、次第に窒素濃度が高くなっていくのに伴って酸素濃度は低下するようになる。酸素濃度が低下すると、燃料電池の発電効率が低下することから、カソードへ供給する空気中の酸素濃度を高める処理が必要となる。
混合ガスから特定のガスを分離する技術としては、従来より、圧力変動式ガス吸着法(PSA法)によるものが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この方法では、担体に気体成分を吸着(脱着)させる際に加圧(減圧)する操作が必要となる。
また、分離膜を利用することによって、混合ガス中の特定成分を分離する方法も考えられる。しかし、この方法においても、分離膜に特定の気体のみを透過させるためには加圧が必要となる。
これに対して、隔壁によって多数個の吸着室に仕切られた横断面を有し、各吸着室の端部が両端で開口するとともに、各吸着室に炭酸ガスを吸着する吸着剤を設けた処理ドラムを軸心周りに回転させることによって、炭酸ガスを分離する方法が開示されている(特許文献5参照。)。この方法によれば、処理ドラムの一方の端面から炭酸ガスを含む混合ガスを供給して吸着剤に炭酸ガスを吸着させた後、処理ドラムの他方の面から高温の原料ガスを供給することによって炭酸ガスを脱着するので、圧力を変化させることなしに炭酸ガスの吸着および脱着が可能であるとされる。
また、ゼオライトやシリカゲルを吸着剤として用いた円筒型吸着素子に改質ガスを通すことによって、改質ガス中の一酸化炭素を連続的に除去し、酸素富化空気を燃料電池に供給する方法も開示されている(特許文献6参照。)。この方法によれば、従来必要としていた吸着剤の高温での加熱を不要とすることができるとされる。
特表平8−500931号公報 特開平9−266002号公報 特開平9−312164号公報 特開昭63−051919号公報 特開平4−310210号公報 特開2001−707362号公報
しかし、特許文献5に記載の方法では、炭酸ガスの脱着は、炭酸ガスが高温(100℃以上)の原料ガスに触れることによって行われる。このため、パージガスの加熱が必要になるという問題があった。
また、特許文献6に記載の方法でも、一酸化炭素の脱着には、パージガスを250℃程度に加熱することが必要であった。
したがって、上記の何れの従来法においても、分離の際に圧力や温度を変化させる操作を要することから、装置の複雑化を招き、また、大きな駆動動力(エネルギー)を必要とするという問題があった。
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、加圧や加熱を必要とせずに、混合ガス中の特定成分を分離することのできる機能を有する燃料電池システムを提供することにある。
本発明の他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の第1の燃料電池システムは、水素と酸素の電極反応によって起電力を生じる燃料電池と、電極反応に関与しない所定のガスに対して高い親和性を有する分離担体を備え、水素と所定のガスを含む混合ガスから、所定のガスと他の成分との移動速度の差を利用して所定のガスを分離する分離装置とを有することを特徴とするものである。
本発明の第2の燃料電池システムは、炭化水素系化合物から水素を含む改質ガスを生成する改質器と、一酸化炭素に対する親和性が高い分離担体を有し、改質ガス中の一酸化炭素と他の成分との移動速度の差を利用して、改質ガスから一酸化炭素を分離する分離装置と、分離装置で一酸化炭素が分離されたガスと、酸素とを供給されて起電力を生じる燃料電池とを有することを特徴とするものである。
本発明の第2の燃料電池システムにおいて、分離装置は、分離担体が設けられた分離部と、この分離部を通過するガスを、改質ガスと、分離部から一酸化炭素を掃気する掃気ガスとの何れか一方に切り替えるガス切替部と、一酸化炭素が分離部に滞留する時間内に、分離部を通過するガスが改質ガスから掃気ガスへ切り替わるようにガス切替部を制御する制御部とを有するものとすることができる。この場合、改質ガスの流れる方向と、掃気ガスの流れる方向とが互いに逆向きとなるようにすることが好ましい。
また、本発明の第2の燃料電池システムにおいて、分離装置は、分離担体が設けられた分離部と、この分離部を貫通し、改質ガスと、分離部から一酸化炭素を掃気する掃気ガスとの何れか一方が分離担体を通過するように設けられた第1の流路と、この第1の流路に並行して分離部を貫通し、改質ガスおよび掃気ガスの何れか一方であって、第1の流路を通過するガスとは異なるガスが分離担体を通過するように設けられた第2の流路と、分離部を回転させる駆動部と、一酸化炭素が分離部に滞留する時間内に、第1の流路を通過するガスと、第2の流路を通過するガスとが入れ替わるように駆動部を制御する制御部とを有するものとすることもできる。この場合、改質ガスの流れる方向と、掃気ガスの流れる方向とが互いに逆向きとなるようにすることが好ましい。
本発明の第3の燃料電池システムは、水素と酸素を供給されて起電力を生じる燃料電池と、この燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスをカソードに循環させる循環装置と、酸素に対する親和性が高い分離担体を有し、空気中の酸素と他の成分との移動速度の差を利用して空気から酸素を分離するとともに、この酸素をカソードオフガスに供給する酸素分離供給装置と、この酸素分離装置に空気を供給する空気供給装置とを有することを特徴とするものである。
本発明の第3の燃料電池システムにおいて、酸素分離供給装置は、分離担体が設けられた分離部と、この分離部を通過するガスを、空気およびカソードオフガスの何れか一方に切り替えるガス切替部と、酸素が分離部に滞留する時間内に、分離部を通過するガスが空気からカソードオフガスへ切り替わるようガス切替部を制御する制御部とを有するものとすることができる。この場合、空気の流れる方向と、カソードオフガスの流れる方向とが互いに逆向きとなるようにすることが好ましい。
また、本発明の第3の燃料電池システムにおいて、分離装置は、分離担体が設けられた分離部と、この分離部を貫通し、空気およびカソードオフガスの何れか一方が分離担体を通過するように設けられた第1の流路と、この第1の流路に並行して分離部を貫通し、空気およびカソードオフガスの何れか一方であって、第1の流路を通過するガスとは異なるガスが分離担体を通過するように設けられた第2の流路と、分離部を回転させる駆動部と、酸素が分離部に滞留する時間内に、第1の流路を通過するガスと、第2の流路を通過するガスとが入れ替わるように駆動部を制御する制御部とを有するものとすることもできる。この場合、空気の流れる方向と、カソードオフガスの流れる方向とが互いに逆向きとなるようにすることが好ましい。
本発明の第1の燃料電池システムによれば、加圧や加熱をせずに、電極反応に関与しない所定のガスを除くことができるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
本発明の第2の燃料電池システムによれば、加圧や加熱をせずに、改質ガスから一酸化炭素を分離除去することができるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
本発明の第3の燃料電池システムによれば、加圧や加熱をせずに、空気中の酸素を分離してカソードオフガスに供給することが可能であるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における燃料電池システムの構成図の一例である。尚、この燃料電池システムは本発明の第1の燃料電池システムに対応し、車載用および据え置き型などの種々の用途に適用可能である。
図1に示すように、燃料電池システム1は、水素と酸素を供給されて起電力を生じる燃料電池2と、炭化水素系化合物を貯蔵する炭化水素系化合物貯蔵タンク3と、炭化水素系化合物を水素に改質する改質器4と、改質器4で生成した改質ガスから一酸化炭素を分離する分離装置5と、分離装置5で分離された一酸化炭素を分離装置5から掃気するガスを貯蔵する掃気ガス貯蔵タンク6と、燃料電池2のアノードに送るガスの圧力を調整する第1の調圧弁17と、燃料電池2に圧縮空気を供給するコンプレッサ7と、燃料電池2から排出されたカソードオフガスに含まれる水分を回収して、燃料電池2に供給する空気を加湿する加湿器16と、コンプレッサ7から送られる空気の圧力を調整する第2の調圧弁8とを有する。
燃料電池2は、水素と酸素の電気化学反応によって発電するセル(図示せず)が積層された構造を有している。ここで、各セルは、電解質膜を挟んでアノードとカソードが配置された構造となっている。
改質器4で改質される炭化水素系化合物としては、メタンを主成分とする天然ガス、メタノールなどのアルコールまたはガソリンなどが挙げられる。使用する炭化水素系化合物の種類に応じて、改質反応に適した触媒や温度を選択することによって、水素、二酸化炭素および水を含む水素リッチな改質ガスを生成することができる。
本実施の形態においては、改質器4で生成した改質ガスを分離装置5に通した後に燃料電池2のアノードに供給することを特徴としている。以下、分離装置によって改質ガス中の一酸化炭素を分離除去する方法について説明する。
分離装置は、一酸化炭素に対する親和性の高い分離担体を有し、改質ガス中の一酸化炭素と他の成分との移動速度の差を利用して、改質ガスから一酸化炭素を分離する装置である。図2に、分離装置の構成図を示す。図の分離装置5は、分離担体が設けられた分離部51と、分離部51に接続する流路52,53と、流路52,53に設けられたバルブ54,55と、所定のタイミングでバルブ54,55の開閉を制御するバルブ開閉制御部56とを有する。
バルブ54,55は、分離部51を通過するガスを、改質ガスと、後述する掃気ガスとの何れか一方に切り替えるガス切替部である。一方、バルブ開閉制御部56は、一酸化炭素が分離部51に滞留する時間内に、分離部51を通過するガスが、改質ガスから掃気ガスへ切り替わるようにガス切替部を制御する。
分離担体は、一酸化炭素に対して強い物理的または化学的親和性を有する基が表面に配された構造を有する。分離部51には、例えば、分離担体としてのポルフィリン系化合物(例えば、ヘモグロビンおよびヘモシアニンなどの高分子化合物)を担持した粒子を、セラミックまたは金属メッシュなどの表面に設けたフィルタなどを用いることができる。
流路9から分離装置5に改質ガスを通すと、一酸化炭素に対する分離担体の強い親和性によって、一酸化炭素と他の成分との間で分離装置5内を移動する速度に差が生じる。すなわち、一酸化炭素は分離装置5内をゆっくりと移動するのに対して、他の成分はすばやく移動するので、改質ガスの流入開始から所定時間までは、一酸化炭素以外の成分を含むガスが分離装置5から排出されることになる。これにより、圧力や温度を変えることなしに、改質ガス中の一酸化炭素を分離することが可能となる。
改質ガスを導入する時間は、一酸化炭素が分離部51に滞留する時間を超えないようにする。すなわち、改質ガスの導入時間が一酸化炭素の滞留時間を超えると、一酸化炭素が分離装置5から排出されてしてしまうので、この値を超えないように改質ガスの流量および流速を設定する。
次いで、分離装置5から一酸化炭素が排出される前に、分離装置5内に滞留する一酸化炭素を掃気する処理を行う。具体的には、図2のバルブ開閉制御部56によってバルブ54,55の開閉を操作し、分離装置5を透過するガスを改質ガスから掃気ガスに切り替える。ここで、掃気ガスは、分離装置内の一酸化炭素を掃気するガスであって、一酸化炭素を含まないガスである。例えば、窒素ガスなどが掃気ガスとして用いられる。尚、掃気ガスの流量および流速は、分離装置5から一酸化炭素を十分に掃気できる値に設定する。
本実施の形態においては、図2に示すように、バルブ54,55を操作することによって、分離部51を通るガスの流れが逆転するようにすることが好ましい。これにより、一酸化炭素が流路10に流出するおそれを小さくして、より効果的に一酸化炭素を掃気することができる。具体的には、流路11より分離装置5に流入した掃気ガスは、流路53を経て分離部51に進入する。そして、分離部51内に滞留する一酸化炭素とともに、流路52から流路12を経て排出される。
分離装置5から一酸化炭素を掃気した後は、再びバルブ開閉制御部56を操作することによって、分離装置5を通るガスを掃気ガスから改質ガスに切り替える。尚、バルブ開閉制御部56を操作するタイミングは、改質ガスの流量および流速、分離担体の種類、並びに、掃気ガスの流量および流速などに応じて適宜設定することが好ましい。より詳しくは、分離担体に一酸化炭素が吸着固定される前にバルブ開閉制御部56を操作し、掃気ガスを分離装置5内に通じることによって一酸化炭素を掃気する。このようにすることによって、高温の掃気ガスを用いなくとも分離装置5から一酸化炭素を排出することが可能となる。
分離装置5から排出された水素リッチなガスは、燃料電池2のアノードに送られる。ここで、燃料電池2に供給するガスの圧力は、第1の調圧弁17によって調整される。そして、アノードでの電気化学反応によって所定量の水素が消費された後、残りのガス(アノードオフガス)は、排出バルブ13を開くことにより、流路14から希釈器15を経由して排出される。
一方、燃料電池2のカソードには、コンプレッサ7で加圧された空気が供給される。そして、燃料電池2内での電気化学反応によって、空気中から所定量の酸素が消費された後、残りのガスがカソードオフガスとして排出される。
加湿器16は、燃料電池2から排出されたカソードオフガス中の水分を回収するとともに、燃料電池2に供給される空気を加湿する役割を果たしている。これにより、燃料電池2内の電解質膜の含水状態を適切に管理して、電解質膜を正常に機能させることが可能となる。但し、本発明においては、加湿器以外の手段によってカソードに送る空気を加湿してもよい。例えば、改質器4で生成した水を利用することによって、カソードに供給する空気を加湿することもできる。
加湿器16から排出されたカソードオフガスは、第2の調圧弁8より排出される。
本実施の形態によれば、改質ガスを分離装置に通すことによって、燃料電池のアノードに供給するガス中の一酸化炭素濃度を最小限に低くすることが可能となる。したがって、燃料電池内の触媒の性能が一酸化炭素によって低下するのを防ぐことができる。また、本実施の形態の分離装置によれば、加圧や加熱をせずに一酸化炭素の分離除去が可能であるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
実施の形態2.
本実施の形態は、改質器で生成した改質ガスを分離装置に通した後に燃料電池のアノードに供給する点で実施の形態1と共通する。しかし、本実施の形態は、実施の形態1とは異なる分離装置を用いる点に特徴がある。
図3は、本実施の形態における分離装置の構成図である。尚、本実施の形態における燃料電池システムの構成図は、図1の分離装置5を図3の分離装置25に置き換えたものに対応する。
図3に示すように、分離装置25は、分離担体が設けられて回転可能な分離部251と、分離部251に接続する流路252,253,254,255と、分離部251を回転させるとともに、その回転を制御する分離部回転制御部256とを有する。
流路252,253は、分離部251を貫通し、改質ガスと、後述する掃気ガスとの何れか一方が分離担体を通過するように設けられた第1の流路とすることができる。一方、流路254,255は、第1の流路に並行して分離部251を貫通し、改質ガスおよび掃気ガスの何れか一方であって、第1の流路を通過するガスとは異なるガスが分離担体を通過するように設けられた第2の流路とすることができる。
また、分離部回転制御部256は、分離部251を回転させる駆動部(図示せず)と、一酸化炭素が分離部251に滞留する時間内に、流路252,253を通過するガスと、流路254,255を通過するガスとが入れ替わるように駆動部を制御する制御部(図示せず)とを有する。
図3の矢印Aを改質ガスが流れる方向とすると、流路252は図1の流路9に、流路253は図1の流路10にそれぞれ接続することができる。一方、矢印Bを掃気ガスが流れる方向とすると、流路254は図1の流路11に、流路255は図1の流路12にそれぞれ接続することができる。尚、掃気ガスは、分離装置25内に滞留する一酸化炭素を掃気するガスであって、一酸化炭素を含まないガスである。例えば、窒素ガスなどが掃気ガスとして用いられる。
分離担体は、一酸化炭素に対して強い物理的または化学的親和性を有する基が表面に配された構造を有する。分離部251には、例えば、分離担体としてのポルフィリン系化合物(例えば、ヘモグロビンおよびヘモシアニンなどの高分子化合物)を担持した粒子を、セラミックまたは金属メッシュなどの表面に設けたフィルタなどを用いることができる。
流路252から分離装置25に改質ガスを通すと、一酸化炭素に対する分離担体の強い親和性によって、一酸化炭素と他の成分との間で分離装置5内を移動する速度に差が生じる。すなわち、一酸化炭素は分離装置25内をゆっくりと移動するのに対して、他の成分はすばやく移動するので、改質ガスの流入開始から所定時間までは、一酸化炭素以外の成分を含むガスが分離装置25から排出されることになる。これにより、圧力や温度を変えることなしに、改質ガス中の一酸化炭素を分離することが可能となる。
改質ガスを導入する時間は、一酸化炭素が分離部251に滞留する時間を超えないようにする。すなわち、改質ガスの導入時間が一酸化炭素の滞留時間を超えると、一酸化炭素が分離装置25から排出されてしてしまうので、この値を超えないように改質ガスの流量および流速を設定する。
次いで、分離装置25から一酸化炭素が排出される前に、分離装置25内に滞留する一酸化炭素を掃気する処理を行う。ここで、本実施の形態では、分離部回転制御部256によって、分離部251が所定の速度で矢印Cの方向に回転している。このため、所定時間を経過した後は、図3の流路252,253と流路254,255の上下の位置が逆転して、流路253から掃気ガスが分離部251に進入するようになる。進入した掃気ガスは、分離部251内に滞留した一酸化炭素とともに、流路253から排出される。さらに所定時間が経過すると、再び流路252,253と流路254,255の上下の位置が逆転して、流路252から改質ガスが分離部251に進入する。
一方、流路252,253に改質ガスが流れている間、流路254,255には掃気ガスが流れている。そして、分離部251が回転して、流路252,253に掃気ガスが流れるようになると、流路254,255には改質ガスが流れるようになる。このように、本実施の形態の分離装置によれば、改質ガスから一酸化炭素を分離する工程と、分離装置内に滞留した一酸化炭素を排出する工程とを並行して行うことができる。また、図3に示すように、改質ガスが流れる方向と掃気ガスが流れる方向とを逆にすることによって、燃料電池のアノードに向かって一酸化炭素が流出するおそれを小さくして、分離装置25から効果的に一酸化炭素を除去することができる。
掃気ガスの流量および流速は、分離部251から一酸化炭素を十分に掃気できる値に設定する。また、図3で、分離部251は、矢印Cとは反対方向に回転してもよい。さらに、分離部251の回転速度は、改質ガスの流量および流速、分離担体の種類、並びに、掃気ガスの流量および流速などを総合的に考慮して適宜設定することが好ましい。より詳しくは、分離担体に一酸化炭素が吸着固定される前に、分離装置25内に掃気ガスが通じるように回転速度を調整する。このようにすることによって、高温の掃気ガスを用いなくとも分離装置25から一酸化炭素を排出することが可能となる。
分離装置25から排出された水素リッチなガスは、燃料電池のアノードに送られる。そして、アノードでの電気化学反応によって所定量の水素が消費された後、残りのガスはアノードオフガスとして排出される。
一方、燃料電池のカソードには、コンプレッサで加圧された空気が供給される。そして、燃料電池内での電気化学反応によって、空気中から所定量の酸素が消費された後、残りのガスはカソードオフガスとして排出される。
本実施の形態によれば、改質ガスを分離装置に通すことによって、燃料電池のアノードに供給するガス中の一酸化炭素濃度を最小限に低くすることが可能となる。したがって、燃料電池内の触媒の性能が一酸化炭素によって低下するのを防ぐことができる。
また、本実施の形態の分離装置によれば、加圧や加熱をせずに一酸化炭素の分離除去が可能であるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
また、本実施の形態の分離装置によれば、改質ガスから一酸化炭素を分離する工程と、分離装置内に滞留した一酸化炭素を排出する工程とを並行して行うことができる。すなわち、分離装置から一酸化炭素を排出する間、アノードへのガス供給を停止する必要がないので、実施の形態1に比較して効率よく燃料電池を運転することが可能となる。
さらに、本実施の形態の分離装置では、分離部を回転させることによって、改質ガス中の一酸化炭素の分離と、分離装置内に滞留した一酸化炭素の排出とを行う。すなわち、実施の形態1よりさらに簡単な機構で一酸化炭素の分離除去を行うことができる。
尚、図3の例では、改質ガスが流出入する経路と、掃気ガスが流出入する経路とはそれぞれ1つずつ設けられている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、各経路がそれぞれ2つ以上設けられていてもよい。例えば、分離装置内での一酸化炭素の滞留時間が短い場合には、経路の数を多く設けることによって、一酸化炭素の分離と掃気を頻繁に繰り返すことが好ましい。
実施の形態3.
図4は、本実施の形態における燃料電池システムの構成図の一例である。尚、この燃料電池システムは本発明の第2の燃料電池システムに対応し、車載用および据え置き型などの種々の用途に適用可能である。
図4に示すように、燃料電池システム31は、水素と酸素を供給されて起電力を生じる燃料電池32と、燃料電池32に圧縮空気を供給する空気供給装置としての第1のコンプレッサ33と、空気中の酸素を分離して燃料電池32から排出されたカソードオフガスに酸素を供給する酸素分離供給装置34と、カソードオフガスを酸素分離供給装置34を経てカソードに循環させる循環装置としての第2のコンプレッサ35と、燃料電池32に供給する水素を高圧状態で貯蔵する水素貯蔵タンク36と、水素貯蔵タンク36から燃料電池32に供給される水素の圧力を調整する調圧弁37とを有する。
燃料電池32は、水素と酸素の電気化学反応によって発電するセル(図示せず)が積層された構造を有している。ここで、各セルは、電解質膜を挟んでアノードとカソードが配置された構造となっている。
燃料電池システム31では、第1のコンプレッサ33でカソードオフガスを循環することによって、燃料電池32のカソードに酸素を供給する。また、カソードオフガスには、燃料電池32での電気化学反応によって生成した水が含まれるので、燃料電池2内の電解質膜に水分を供給することもできる。尚、図4に示すように、第1のコンプレッサ33の上流側に気液分離器42を設けて、カソードオフガスに含まれる余剰の水分を除去してもよい。
単にカソードオフガスを循環させただけでは、カソードオフガス中の窒素濃度が増大することによって次第に酸素濃度は低下する。酸素濃度の低下は、燃料電池の発電効率の低下を招く。そこで、本実施の形態においては、カソードオフガスを酸素分離供給装置34に通すことによって、カソードオフガス中の酸素濃度の低下を防いでいる。以下、分離装置によってカソードオフガスに酸素を供給する方法について説明する。
酸素分離供給装置は、酸素に対する親和性の高い分離担体を有し、空気中の酸素と他の成分との移動速度の差を利用して空気から酸素を分離するとともに、この酸素をカソードオフガスに供給する装置である。図5に、酸素分離供給装置の構成図を示す。図の酸素分離供給装置34は、分離担体を保持する分離部341と、分離部341に接続する流路342,343と、流路342,343に設けられたバルブ344,345と、所定のタイミングでバルブ344,345の開閉を制御するバルブ開閉制御部346とを有する。
バルブ344,345は、分離部341を通過するガスを、空気およびカソードオフガスの何れか一方に切り替えるガス切替部である。一方、バルブ開閉制御部346は、酸素が分離部341に滞留する時間内に、分離部341を通過するガスが、空気からカソードオフガスへ切り替わるようにガス切替部を制御する。
分離担体は、酸素に対して強い物理的または化学的親和性を有する基が表面に配された構造を有する。分離部341には、例えば、分離担体としてのポルフィリン系化合物(例えば、ヘムなどの高分子化合物)を担持した粒子を、セラミックまたは金属メッシュなどの表面に設けたフィルタなどを用いることができる。
流路40から酸素分離供給装置34に空気を送ると、酸素に対する分離担体の強い親和性によって、酸素と他の成分との間で酸素分離供給装置34内を移動する速度に差が生じる。すなわち、酸素は酸素分離供給装置34内をゆっくりと移動するのに対して、他の成分はすばやく移動するので、改質ガスの流入開始から所定時間までは、酸素以外の成分を含むガスが分離装置5から排出されることになる。これにより、圧力や温度を変えることなしに、空気中の酸素を分離することが可能となる。
空気を導入する時間は、酸素が分離部341に滞留する時間を超えないようにする。すなわち、空気の導入時間が酸素の滞留時間を超えると、酸素が酸素分離供給装置34から排出されてしてしまうので、この値を超えないように空気の流量および流速を設定する。
次いで、酸素分離供給装置34から酸素が排出される前に、酸素分離供給装置34内に滞留する酸素をカソードオフガスに供給する。ここで、カソードオフガスは、酸素分離供給装置34内から酸素を掃気するガスと見ることもできる。
具体的には、バルブ開閉制御部346によってバルブ344,345の開閉を操作し、酸素分離供給装置34を通過するガスを空気からカソードオフガスに切り替える。カソードオフガスの流量および流速は、酸素分離供給装置34内から酸素を十分に掃気できる値に設定することが好ましい。このようにすることによって、温度や圧力を変えることなしに酸素分離供給装置34から酸素を排出して、カソードオフガスに酸素を供給することができる。
図5では、バルブ344,345を操作することによって、酸素分離供給装置34内を通るガスの流れが逆転するようにしている。より詳しくは、流路38より酸素分離供給装置34に流入した掃気ガスは、流路342を経て分離部341に進入する。そして、分離部341内に滞留する酸素とともに、流路343から流路39を経て燃料電池32に供給される。このように、空気の流れる方向と、カソードオフガスの流れる方向とが互いに逆向きとなるようにすることによって、分離部341に滞留する酸素をカソードオフガスと一緒に効率よく排出することができる。
酸素分離供給装置34から酸素を掃気した後は、再びバルブ開閉制御部346を操作することによって、酸素分離供給装置34を通るガスをカソードオフガスから空気に切り替える。尚、バルブ開閉制御部346を操作するタイミングは、空気の流量および流速、分離担体の種類、並びに、カソードオフガスの流量および流速などに応じて適宜設定することが好ましい。より詳しくは、分離担体に酸素が吸着固定される前にバルブ開閉制御部346を操作し、カソードオフガスを酸素分離供給装置34内に通じて酸素を掃気する。このようにすることによって、圧力や温度を変えることなしにカソードオフガスに酸素を供給することが可能となる。
一方、燃料電池2のアノードには、水素貯蔵タンク36に貯蔵された水素が、調圧弁37によって調圧された後に供給される。そして、アノードでの電気化学反応によって所定量の水素が消費された後、残りのガス(アノードオフガス)は、排出バルブ43を開くことにより、流路44から希釈器45を経由して排出される。
本実施の形態によれば、カソードオフガスを酸素分離供給装置に通すことによって、燃料電池のカソードに供給するガス中の酸素濃度の低下を防ぐことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、カソードオフガスを循環することによって、加湿器なしに燃料電池内の電解質膜に水分を供給することができる。
さらに、本実施の形態の酸素分離供給装置によれば、加圧や加熱をせずに、空気中の酸素を分離してカソードオフガスに供給することが可能であるので、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
実施の形態4.
本実施の形態は、カソードオフガスを酸素分離供給装置に通した後に燃料電池のカソードに供給する点で実施の形態3と共通する。しかし、本実施の形態は、実施の形態3とは異なる酸素分離供給装置を用いる点に特徴がある。
図6は、本実施の形態における酸素分離供給装置の構成図である。尚、本実施の形態における燃料電池システムの構成図は、図4の酸素分離供給装置34を図6の酸素分離供給装置54に置き換えたものに対応する。
図6に示すように、酸素分離供給装置54は、分離担体を保持し回転可能な分離部541と、分離部541に接続する流路542,543,544,545と、分離部541を回転させるとともに、その回転を制御する分離部回転制御部546とを有する。
流路542,543は、分離部541を貫通し、空気およびカソードオフガスの何れか一方が分離担体を通過するように設けられた第1の流路とすることができる。一方、流路544,545は、第1の流路に並行して分離部541を貫通し、空気およびカソードオフガスの何れか一方であって、第1の流路を通過するガスとは異なるガスが分離担体を通過するように設けられた第2の流路とすることができる。
また、分離部回転制御部546は、分離部541を回転させる駆動部(図示せず)と、酸素が分離部541に滞留する時間内に、流路542,543を通過するガスと、流路544,545を通過するガスとが入れ替わるように駆動部を制御する制御部(図示せず)とを有する。
図3の矢印Dをカソードオフガスが流れる方向とすると、流路542は図4の流路38に、流路543は図4の流路39にそれぞれ接続することができる。一方、矢印Eを空気が流れる方向とすると、流路544は図4の流路40に、流路545は図4の流路41にそれぞれ接続することができる。
分離担体は、酸素に対して強い物理的または化学的親和性を有する基が表面に配された構造を有する。分離部541には、例えば、分離担体としてのポルフィリン系化合物(例えば、ヘムなどの高分子化合物)を担持した粒子を、セラミックまたは金属メッシュなどの表面に設けたフィルタなどを用いることができる。
流路544から酸素分離供給装置54に空気を通すと、酸素に対する分離担体の強い親和性によって、酸素と他の成分との間で酸素分離供給装置54内を移動する速度に差が生じる。すなわち、酸素は酸素分離供給装置54内をゆっくりと移動するのに対して、他の成分はすばやく移動するので、空気の流入開始から所定時間までは、酸素以外の成分を含むガスが酸素分離供給装置54から排出されることになる。これにより、圧力や温度を変えることなしに、空気中の酸素を分離することが可能となる。
空気を導入する時間は、酸素が酸素分離供給装置54内に滞留する時間を超えないようにする。すなわち、空気の導入時間が酸素の滞留時間を超えると、酸素が酸素分離供給装置54から排出されてしてしまうので、この値を超えないように空気の流量および流速を設定する。
次いで、酸素分離供給装置54から酸素が排出される前に、酸素分離供給装置54内に滞留する酸素をカソードオフガスに供給する。ここで、カソードオフガスは、酸素分離供給装置54内から酸素を掃気するガスと見ることもできる。
本実施の形態では、分離部回転制御部546によって、分離部541が所定の速度で矢印Fの方向に回転している。このため、所定時間を経過した後は、図6の流路542,543と流路544,545の左右の位置が逆転して、流路545からカソードオフガスが分離部541に進入するようになる。進入したカソードオフガスは、分離部541内に滞留する酸素とともに、流路544から排出される。さらに所定時間が経過すると、再び流路542,543と流路544,545の左右の位置が逆転して、流路544から空気が分離部541に進入する。
一方、流路544,545に空気が流れている間、流路542,543にはカソードオフガスが流れている。そして、分離部541が回転して、流路544,545にカソードオフガスが流れるようになると、流路542,543には空気が流れるようになる。このように、本実施の形態の酸素分離供給装置によれば、空気中の酸素を分離する工程と、酸素分離供給装置内に滞留する酸素をカソードオフガスに供給する工程とを並行して行うことができる。
図6では、空気が流れる方向とカソードオフガスが流れる方向とを逆にしている。このようにすることによって、分離部541に滞留する酸素をカソードオフガスと一緒に効率よく排出することができる。
本実施の形態において、カソードオフガスの流量および流速は、酸素分離供給装置54内に滞留する酸素を十分に掃気できる値に設定する。また、図6で、分離部541は、矢印Fとは反対方向に回転してもよい。さらに、分離部541の回転速度は、空気の流量および流速、分離担体の種類、並びに、カソードオフガスの流量および流速などを総合的に考慮して適宜設定することが好ましい。より詳しくは、分離担体に酸素が吸着固定される前に、酸素分離供給装置54内にカソードオフガスが通じるように回転速度を調整する。このようにすることによって、圧力や温度を変えることなしに、酸素分離供給装置54内に滞留する酸素をカソードオフガスに供給することが可能となる。
酸素分離供給装置54内で酸素を供給されたカソードオフガスは、燃料電池のカソードに送られる。そして、カソードでの電気化学反応によって所定量の酸素が消費された後、残りのガスは、再び酸素分離供給装置54に送られて酸素の供給を受ける。以上の工程は、コンプレッサによってカソードオフガスが燃料電池システム内を循環するようにすることによって繰り返して行うことができる。これにより、燃料電池のカソードに、常に所定量の酸素を供給することが可能となる。
一方、燃料電池のアノードには水素が供給される。そして、アノードでの電気化学反応によって所定量の水素が消費された後、残りのガスは、アノードオフガスとして排出される。
本実施の形態によれば、カソードオフガスを酸素分離供給装置に通すことによって、燃料電池のカソードに供給するガス中の酸素濃度の低下を防ぐことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、カソードオフガスを循環することによって、加湿器なしに燃料電池内の電解質膜に水分を供給することができる。
また、本実施の形態の酸素分離供給装置によれば、加圧や加熱をせずに、空気中からの酸素の分離と、分離した酸素のカソードオフガスへの供給とを行うことができる。したがって、燃料電池システムに大きな駆動動力を設ける必要がなく、比較的簡単な構成の燃料電池システムとすることができる。
また、本実施の形態の酸素分離供給装置によれば、空気中の酸素を分離する工程と、分離装置内に滞留する酸素をカソードオフガスに供給する工程とを並行して行うことができる。すなわち、空気中の酸素を分離する間、カソードへのガス供給を停止する必要がないので、実施の形態3に比較して効率よく燃料電池を運転することが可能となる。
さらに、本実施の形態の酸素分離供給装置では、分離部を回転させることによって、空気中の酸素の分離と、分離装置内に滞留する酸素のカソードオフガスへの供給とを行う。すなわち、実施の形態3よりさらに簡単な機構で酸素の分離と供給を行うことができる。
尚、図6の例では、空気が流出入する経路と、カソードオフガスが流出入する経路とはそれぞれ1つずつ設けられている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、各経路がそれぞれ2つ以上設けられていてもよい。例えば、酸素分離供給装置内での酸素の滞留時間が短い場合には、経路の数を多く設けることによって、酸素の分離と掃気を頻繁に繰り返すことが好ましい。
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
例えば、実施の形態1および2においては、改質ガス中の一酸化炭素を分離除去する例について述べた。しかし、混合ガス中の特定成分に対して、他の成分よりも強い物理的または化学的親和性を有する基を表面に配した分離担体を用いることによって、一酸化炭素以外の他のガス成分を分離除去することが可能となる。例えば、分離担体としてゼオライトを用いた場合には、混合ガス中の水分を分離除去することができる。また、分離担体として、フェライト架橋粘土化合物、多孔性無機有機複合体または部分炭化炭素材料などを用いた場合には、混合ガス中の酸素を分離除去することができる。尚、これらの場合において、混合ガスは改質ガス以外のガスであってもよい。
また、実施の形態3および4においては、空気中の酸素を分離する例について述べた。しかし、上記と同様に、混合ガス中の特定成分に対して、他の成分よりも強い物理的または化学的親和性を有する基を表面に配した分離担体を用いることによって、酸素以外の他のガス成分を分離することが可能である。また、混合ガスは空気以外のガスとしてもよい。
さらに、実施の形態1〜4で述べた分離装置または酸素分離供給装置は、他の用途に適用することも可能である。すなわち、混合ガス中の特定成分を分離除去する場合や、混合ガス中の酸素を分離して他のガスに供給する場合であれば、燃料電池システム内での他の用途や、燃料電池システム以外の他の用途にも適用することができる。さらに、酸素以外の他の成分を分離して他のガスに供給する分離供給装置を、燃料電池システム内での他の用途や、燃料電池システム以外の他の用途に適用することもできる。
上記の何れの場合においても、分離担体との親和性の違いに基づく移動速度の差を利用して特定成分を分離し、また、特定成分が分離装置から排出される前に掃気するので、圧力や温度を変更することなしに、特定成分の分離および排出(または、他のガスへの供給)が可能となる。
実施の形態1における燃料電池システムの構成図の一例である。 図1における分離装置の構成図である。 実施の形態2における分離装置の構成図である。 実施の形態3における燃料電池システムの構成図の一例である。 図4における分離装置の構成図である。 実施の形態4における分離装置の構成図である。
符号の説明
1,31 燃料電池システム
2,32 燃料電池
3 炭化水素系化合物貯蔵タンク
4 改質器
5,25 分離装置
6 掃気ガス貯蔵タンク
7 コンプレッサ
8 第2の調圧弁
16 加湿器
17 第1の調圧弁
34,54 酸素分離供給装置
51,251,341,541 分離部
54,55,344,345 バルブ
56,346 バルブ開閉制御手段
256,546 分離部回転制御部
33 第1のコンプレッサ
35 第2のコンプレッサ
36 水素貯蔵タンク
37 調圧弁



Claims (9)

  1. 水素と酸素の電極反応によって起電力を生じる燃料電池と、
    前記電極反応に関与しない所定のガスに対して高い親和性を有する分離担体を備え、水素と前記所定のガスを含む混合ガスから、前記所定のガスと他の成分との移動速度の差を利用して前記所定のガスを分離する分離装置とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 炭化水素系化合物から水素を含む改質ガスを生成する改質器と、
    一酸化炭素に対する親和性が高い分離担体を有し、前記改質ガス中の一酸化炭素と他の成分との移動速度の差を利用して、前記改質ガスから一酸化炭素を分離する分離装置と、
    前記分離装置で一酸化炭素が分離されたガスと、酸素とを供給されて起電力を生じる燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 前記分離装置は、前記分離担体が設けられた分離部と、
    前記分離部を通過するガスを、前記改質ガスと、前記分離部から一酸化炭素を掃気する掃気ガスとの何れか一方に切り替えるガス切替部と、
    一酸化炭素が前記分離部に滞留する時間内に、前記分離部を通過するガスが前記改質ガスから前記掃気ガスへ切り替わるように前記ガス切替部を制御する制御部とを有する請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記分離装置は、前記分離担体が設けられた分離部と、
    前記分離部を貫通し、前記改質ガスと、前記分離部から一酸化炭素を掃気する掃気ガスとの何れか一方が前記分離担体を通過するように設けられた第1の流路と、
    前記第1の流路に並行して前記分離部を貫通し、前記改質ガスおよび前記掃気ガスの何れか一方であって、前記第1の流路を通過するガスとは異なるガスが前記分離担体を通過するように設けられた第2の流路と、
    前記分離部を回転させる駆動部と、
    一酸化炭素が前記分離部に滞留する時間内に、前記第1の流路を通過するガスと、前記第2の流路を通過するガスとが入れ替わるように前記駆動部を制御する制御部とを有する請求項2に記載の燃料電池システム。
  5. 前記改質ガスの流れる方向と、前記掃気ガスの流れる方向とが互いに逆向きである請求項3または4に記載の燃料電池システム。
  6. 水素と酸素を供給されて起電力を生じる燃料電池と、
    前記燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを該カソードに循環させる循環装置と、
    酸素に対する親和性が高い分離担体を有し、空気中の酸素と他の成分との移動速度の差を利用して空気から酸素を分離するとともに、該酸素を前記カソードオフガスに供給する酸素分離供給装置と、
    前記酸素分離装置に空気を供給する空気供給装置とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  7. 前記酸素分離供給装置は、前記分離担体が設けられた分離部と、
    前記分離部を通過するガスを、空気および前記カソードオフガスの何れか一方に切り替えるガス切替部と、
    酸素が前記分離部に滞留する時間内に、前記分離部を通過するガスが空気から前記カソードオフガスへ切り替わるよう前記ガス切替部を制御する制御部とを有する請求項6に記載の燃料電池システム。
  8. 前記分離装置は、前記分離担体が設けられた分離部と、
    前記分離部を貫通し、空気および前記カソードオフガスの何れか一方が前記分離担体を通過するように設けられた第1の流路と、
    前記第1の流路に並行して前記分離部を貫通し、空気および前記カソードオフガスの何れか一方であって、前記第1の流路を通過するガスとは異なるガスが前記分離担体を通過するように設けられた第2の流路と、
    前記分離部を回転させる駆動部と、
    酸素が前記分離部に滞留する時間内に、前記第1の流路を通過するガスと、前記第2の流路を通過するガスとが入れ替わるように前記駆動部を制御する制御部とを有する請求項6に記載の燃料電池システム。
  9. 空気の流れる方向と、前記カソードオフガスの流れる方向とが互いに逆向きである請求項7または8に記載の燃料電池システム。
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