JP2007040428A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高速回転下で使用した場合であっても、潤滑性能の向上を図りつつ、低トルク化や発熱量の減少を図ることができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】 内輪1及び外輪2の軌道面1a,2aと、玉3の転動面3aの少なくとも一方に、潤滑剤Jとの接触角θが90°以上となるような撥油処理を施して、撥油性被膜4を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転がり面が潤滑剤で潤滑される転がり軸受に関する。
工作機械の主軸を支持するために用いられる転がり軸受としては、アンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受、或いはこれらを組み合わせたものを用いることが知られている。工作機械の主軸は、加工精度と生産性の向上を図るために回転の高速化が望まれているが、主軸を支持する転がり軸受は高速回転下で使用する程、予荷重が増大してトルクが大きくなるとともに、発熱量が多くなるため、焼付きや軸受損傷が生じ易くなる。また、転がり軸受において発熱量が多くなると、工作機械全体が熱変形して加工精度が低下する場合もある。
例えば、転がり軸受のピッチ円直径dm (mm)と転がり軸受の回転速度(min-1)との積dm ・Nが100万以上の高速回転下で使用した場合に、潤滑性能を向上させるための技術として、特許文献1及び特許文献2に記載の技術が提案されている。
特許文献1では、微量の潤滑油を高速で間欠的に軸受内部に供給することにより、転がり面に潤滑膜を形成することが提案されている。
特許文献2では、所定量のグリースを間欠的に軸受内部に供給することにより、転がり面に潤滑膜を形成することが提案されている。
しかしながら、転がり軸受の高速回転化が進むにつれて、上述した特許文献1や特許文献2に記載の技術のように、転がり面に潤滑膜が十分に形成された状態で使用すると、潤滑性能は向上できるが、低トルク化や発熱量の低減を図ることが難しくなってきている。このため、特に、低トルク化や発熱量の低減が要求される転がり軸受では、その転がり面に潤滑膜が十分に形成され難い状態で使用する場合もある。
特許文献3では、内輪軌道面及び外輪軌道面と転動面とのうち少なくとも一方に、潤滑剤との接触角が2°以上90°未満となるような撥油処理を施すことにより、転がり面に潤滑膜が十分に形成され難い状態で使用した場合であっても、焼付きや軸受損傷を生じ難くすることが提案されている。
特開2001−315041号公報 特開2003−113846号公報 特開平10−176719号公報
近年、工作機械の更なる加工精度及び生産性の向上を図るために、主軸の更なる高速回転化が進むにつれて、この主軸を支持する転がり軸受においては、潤滑性能の向上を図りつつ、更なる低トルク化や発熱量の減少を図ることが要求されている。また、環境問題の観点から、自動車の燃費や風力発電機の発電効率の向上を図るために、これらに用いられる転がり軸受においては、潤滑性能の向上を図りつつ、更なる低トルク化や発熱量の減少を図ることが要求されている。
しかしながら、上述した特許文献3に記載の転がり軸受では、潤滑性能の向上を図るために、転がり面に潤滑膜が十分に形成された状態で使用すると、低トルク化や発熱量の減少を十分に図れない場合がある。
そこで、本発明は、このような従来の問題に着目してなされたものであり、高速回転下で使用した場合であっても、潤滑性能の向上を図りつつ、低トルク化や発熱量の減少を図ることができる転がり軸受を提供することを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、内輪と、外輪と、複数の転動体と、を備え、前記内輪及び前記外輪の各軌道面と前記転動体の転動面との間が潤滑剤により潤滑される転がり軸受において、前記軌道面及び前記転動面の少なくとも一方に、前記潤滑剤との接触角が90°以上となるような撥油処理が施されていることを特徴とする転がり軸受を提供する。
本発明によれば、内輪及び外輪の軌道面と、転動体の転動面とのうち少なくとも一方の転がり面に、潤滑剤との接触角が特定値以上となるような撥油処理を施すことにより、上述した特許文献3に記載の転がり軸受と比べて、転がり面と潤滑剤との間の粘着性が小さくなるため、転がり面で潤滑剤が滑りを生じるようになる。その結果、転がり面と潤滑剤との接触面で速度勾配が小さく(つまり、見かけの動粘度が小さく)なるため、転がり軸受の低トルク化及び発熱量の低減を図ることができる。
また、転がり面で潤滑剤が滑りを生じることによって、転がり面に潤滑剤が間欠的に供給され易くなるため、転がり面に形成される潤滑膜が厚くなり、潤滑性能の向上を図ることができる。
ここで、潤滑剤との接触角θは、180°に近づく程、油をはじく能力(撥油性)が向上するため、出来るだけ大きくすることが好ましい。一方、高速回転下において、潤滑性能の向上を図りつつ、低トルク化及び発熱量の低減を図るために、潤滑剤との接触角θは90°以上とした。また、潤滑剤との接触角θは、90°よりも大きく、160°以下であることが好ましい。
本発明の転がり軸受は、例えば、工作機械、自動車等のトランスミッション、ターボチャージャ、風力発電機の回転部を支持する転がり軸受として好適に用いることができる。 なお、本発明で用いられる潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、潤滑油やグリースが挙げられる。
また、本発明で施される撥油処理としては、特に限定されないが、例えば、撥油剤を希釈した溶液中に撥油処理が施される転動部材(内輪、外輪、転動体)を所定時間浸漬させた後に引きあげて、転動部材に付着した溶液を乾燥させることによる撥油処理や、撥油剤をスプレーを用いて噴射して、転動部材に付着した撥油剤を乾燥させることによる撥油処理や、テフロン(登録商標)等のフッ素系改質膜をスパッタリングすることによる撥油処理が挙げられる。特に、撥油処理により形成される撥油性被膜を薄く均一にするためには、撥油剤を希釈した溶液中に転動部材を所定時間浸漬させた後に引きあげて、転動部材に付着した溶液を乾燥させることによる撥油処理を行うことが好ましい。
撥油剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系ポリマー等のフッ素系処理剤が挙げられる。なお、潤滑剤として、鉱油又は合成油の潤滑油を使用する場合には、撥油剤としてフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。
また、接触角θは、例えば、溶剤中における撥油剤の希釈率や、乾燥前の溶剤の付着量や、溶剤の乾燥条件等によって調整することができる。
本発明の転がり軸受によれば、軌道面及び転動面の少なくとも一方に、潤滑剤との接触角が90°以上となるような撥油処理を施したことにより、高速回転下で使用した場合であっても、潤滑性能の向上を図るとともに、低トルク化や発熱量の低減を図ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第一実施形態>
本実施形態では、転がり軸受の一例として、呼び番号が7305ACTYの単列アンギュラ玉軸受(内径:25mm,外径:62mm,幅:17mm)を以下に示す手順で作製した。
まず、高炭素クロム軸受鋼二種(SUJ2)からなる素材を所定形状に加工した後、熱処理を施すことにより、内輪、外輪及び玉(転動体)を作製した。
次に、得られた転動部材(内輪、外輪、及び玉)の転がり面(軌道面や転動面)に、撥油処理を施した。具体的には、撥油剤として下記(化1)式で示されるフッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキル−エチルアクリレート共重合体,日本メクトロン株式会社製,ノックスガードST−430)が希釈された溶剤を、撥油処理を施す転動部材にスプレーにより付着させた後溶剤を乾燥させることにより、転動部材の転がり面に撥油性被膜を形成した。この時、撥油性被膜が施された転がり面の潤滑剤との接触角θを変化させるために、乾燥前の溶剤の付着量を調整した。
Figure 2007040428
但し、上記(化1)中のl,m,nはそれぞれ1〜30の整数である。
その後、公知の接触角試験機を用いて、各転がり面に潤滑剤を滴下して、潤滑剤との接触角θを以下に示す条件で測定した。この結果は、表1に併せて示した。
<接触角測定条件>
試験温度:室温(約25.0℃)
潤滑剤:ポリーαーオレフィン油(40℃における動粘度:30.3mm2 /s)
潤滑剤滴下量:3μl
接触角の観察条件:潤滑剤を滴下してから6秒後
次に、このようにして得られた転動部材と、ポリアミド製で撥油処理が施されていない保持器と、を用いて表1に示すNo.1〜No.4の玉軸受を組み立てた後、その転がり面に潤滑剤を形成した。
図1は、表1に示すNo.3の玉軸受を示す断面図である。この玉軸受では、図1に示すように、内輪1及び外輪2の軌道面1a,2aと玉3の転動面(表面)3aには撥油性被膜4が形成されており、軌道面1a,2aと転動面3aとからなる転がり面には潤滑剤Jが形成されている。
次に、この玉軸受を、高速回転下で使用することを想定した以下に示す条件で回転させることにより、トルク試験を行った。そして、回転開始から480秒経過するまでのトルクと、回転前後の軸受温度とを測定した。この結果は、表1及び図2に併せて示した。
<トルク試験条件>
試験機:日本精工株式会社製トルク試験機
試験開始温度:室温(約25.0℃)
潤滑剤:ポリーαーオレフィン油(40℃における動粘度:30.3mm2 /s)
潤滑剤充填量:0.3g
ラジアル荷重:30N
アキシャル荷重:400N
回転速度:8700min-1
Figure 2007040428
表1に示すように、軌道面及び転動面の少なくとも一方の転がり面に、潤滑剤との接触角θが本発明範囲内となるような撥油処理が施されたNo.1〜No.3の玉軸受では、撥油処理が施されていないNo.4の玉軸受と比べて、480秒回転後のトルクが小さく、回転前後の発熱量の差が少なかった。
このうち、No.3の玉軸受では、軌道面及び転動面の両方に、潤滑剤との接触角θが本発明範囲内となるような撥油処理が施されているため、転動面のみに、潤滑剤との接触角θが本発明範囲内となるような撥油処理が施されたNo.1の玉軸受や、軌道面のみに、潤滑剤との接触角θが本発明範囲内となるような撥油処理が施されたNo.2の玉軸受と比べて、回転から480秒回転後のトルクがより小さく、回転前後の発熱量の差が少なかった。
また、図2に示すように、No.1の玉軸受では、約60秒回転後のトルクが、No.4の玉軸受の約半分まで低減していることが分かる。
以上の結果より、軌道面及び転動面の少なくとも一方に、潤滑剤との接触角θが本発明範囲内となるような撥油処理を施すことにより、玉軸受のトルクが小さくなるとともに、発熱量が少なくなることを確認できた。
<第二実施形態>
本実施形態では、上述した第一実施形態と同様の単列アンギュラ玉軸受を以下に示す手順で作製した。
まず、上述した第一実施形態と同様の条件で転動部材を作製した後、これらの転がり面に、上述した第一実施形態と同様の条件で撥油処理を施した。
次に、上述した第一実施形態と同様の条件で、転がり面の潤滑剤との接触角θを測定した後、玉軸受を組み立ててトルク試験を行った。そして、各玉軸受で480秒回転後のトルクを測定し、表1に示すNo.4の玉軸受の480秒回転後のトルクに対する減少率を算出した。この結果は、表2に併せて示した。
Figure 2007040428
表2に示すように、軌道面と転動面との少なくとも一方に施した撥油処理の潤滑剤との接触角θが大きくなる程、トルクが小さく、発熱量が少なくなることを確認できた。
なお、本実施形態では、転がり軸受の一例として単列アンギュラ玉軸受について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、保持器がない転がり軸受(総玉軸受や総ころ軸受等)や、複列の軌道面を有する転がり軸受(複列アンギュラ玉軸受等)や、転動体としてころを用いた転がり軸受(円筒ころ軸受や針状ころ軸受等)に適用してもよい。
また、本実施形態では、内輪及び外輪の軌道面と玉の転動面の少なくとも一方の転がり面に撥油処理を施した場合について説明したが、転がり面に加えて、内輪及び外輪の内外径面や、保持器の表面に撥油処理を施してもよい。
本発明の転がり軸受の一例である玉軸受を示す断面図である。 玉軸受の回転時間とトルクとの関係を示す図である。
符号の説明
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 玉
3a 転動面
4 撥油性被膜
J 潤滑剤

Claims (1)

  1. 内輪と、外輪と、複数の転動体と、を備え、前記内輪及び前記外輪の軌道面と前記転動体の転動面との間が潤滑剤により潤滑される転がり軸受において、
    前記軌道面及び前記転動面の少なくとも一方に、前記潤滑剤との接触角が90°以上となるような撥油処理が施されていることを特徴とする転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP3699446A1 (en) * 2019-02-21 2020-08-26 Siemens Gamesa Renewable Energy A/S Rolling bearing and wind turbine comprising a rolling bearing
CN111594549A (zh) * 2019-02-21 2020-08-28 西门子歌美飒可再生能源公司 滚动轴承和包括滚动轴承的风力涡轮机

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