JP2007039769A - 表面処理鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層にリン酸系皮膜、第2層に熱硬化性樹脂による皮膜を有する表面処理鋼板を製造する際に、第2層の皮膜を焼付けた後水冷しても、外観が良好で耐食性に優れる表面処理鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層としてリン酸系皮膜を有し、その上に第2層として熱硬化性樹脂による皮膜を有する表面処理鋼板の製造方法において、第1層を鋼板温度が130〜200℃となるように加熱し焼付け、かつ第2層を鋼板温度が150〜250℃となるように加熱し焼付けたのち水冷する。
【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層にリン酸系皮膜、第2層に熱硬化性樹脂による皮膜を有する、外観が良好で耐食性と生産性に優れる表面処理鋼板の製造方法に関する。
亜鉛系めっき鋼板のクロメート処理は、亜鉛の白錆を抑制する安価な防錆処理方法として幅広く使用されているが、近年、環境対策面から、6価クロムを使用しないクロメートフリー表面処理鋼板として、亜鉛系めっき鋼板の表面に、リン酸系皮膜を形成させた表面処理鋼板が開発されている。
例えば、耐食性に優れる表面処理鋼板として、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層にMnを添加したリン酸系皮膜を150〜350mg/m形成させ、第2層にエポキシ系熱硬化樹脂による皮膜を0.3〜1.0g/m形成させた表面処理鋼板が開発されている。通常、第1層のリン酸系皮膜は130℃で焼付けられ、第2層の熱硬化性樹脂は140℃で焼付けられている。従来、皮膜焼付け後水冷とすると、リン酸系皮膜が溶出して耐食性が低下する恐れがあることから、皮膜焼付け後の冷却は空冷が行われてきた。皮膜焼付け後水冷できれば、皮膜形成工程の処理時間を短縮できる。しかしながら、本発明者らが第2層皮膜の焼付け後に水冷したところ、耐食性が低下するだけでなく、白い斑点が発生し、外観不良となることがわかった。
亜鉛系めっき鋼板の表面に、リン酸系皮膜を形成したクロメートフリー表面処理鋼板の製造方法として次の先行技術がある。
特許文献1には、亜鉛系メッキ鋼板上に、第1層として、多価金属の第一リン酸塩とシリカゾルとホスホン酸化合物の混合水溶液を塗布乾燥してなる皮膜層を有し、第2層としてシリケート皮膜およびまたはシリコン樹脂皮膜を有する亜鉛系メッキ鋼板を製造する際に、第1層を120〜200℃で乾燥することが記載されている。第2層乾燥後に水冷することは記載されていない。
特許文献2には、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板上に、水性樹脂と、チオカルボニル基含有化合物、バナジウム酸化合物及びりん酸化合物のうちの少なくとも1種とを含む1層構造の塗膜を形成した亜鉛系めっき鋼板を製造する際に、該塗膜を到達板温50〜250℃で乾燥及び焼付けることが記載され、実施例には該皮膜形成後に水冷したことが記載されている。後記するように、1層構造の塗膜では水冷しても外観不良は発生しないと考えられる。
特許文献3には、亜鉛系メッキ皮膜、Mgを含有するリン酸亜鉛皮膜、有機被膜が順次形成された有機複合亜鉛系めっき鋼板の製造方法として、実施例に有機被膜を150℃で焼付けた後水冷することが記載されているが、水冷した場合における耐食性低下と外観不良を防止することは考慮されていない。また、特許文献3のリン酸亜鉛皮膜は、メッキ皮膜の亜鉛とリン酸亜鉛処理液中のリン酸イオンが反応した反応型の結晶質皮膜であることから、水冷による溶出という問題は生じない。
特開2002−348675号公報 特開2000−248380号公報 特開2001−131763号公報
本発明の課題は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層にリン酸系皮膜、第2層に熱硬化性樹脂による皮膜を有する表面処理鋼板を製造する際に、第2層の皮膜を焼付けた後水冷しても、外観が良好で耐食性に優れる表面処理鋼板の製造方法を提供することである。
上記課題を解決する本発明の手段は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層としてリン酸系皮膜を有し、その上に第2層として熱硬化性樹脂による皮膜を有する表面処理鋼板の製造方法において、第1層を鋼板温度が130〜200℃となるように加熱し焼付け、かつ第2層を鋼板温度が150〜250℃となるように加熱し焼付けたのち水冷することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法である。
本発明によれば、第2層の皮膜を焼付けた後水冷しても、耐食性の低下および外観不良の発生を防止でき、外観が良好で耐食性に優れる表面処理鋼板を製造することができる。
第2層の皮膜を焼付けた後に水冷可能になることで、冷却能力ネックであった表面処理鋼板の生産性を向上でき、あるいは表面処理鋼板の製造設備に関し、冷却設備長を短くしてコンパクトな設備にできる。
第2層の皮膜を焼付けた後水冷すると、鋼板表面の外観が不良となる理由及び耐食性が低下する理由について調査した結果、これらは、水冷時に第1層のリン酸系皮膜中の可溶性成分が溶出するためと考えられた。図1は、第2層皮膜焼付け後の水冷による第1層のリン酸系皮膜の溶出を説明する模式図である。図1において、1は亜鉛めっき層、2は第1層(リン酸系皮膜)、3は第2層(熱硬化性樹脂皮膜)、4は水滴である。図1(a)に示すように、水冷により第2層3上に水滴(水分)4が付着する。第2層3上の水分は第2層3を透過して第1層の皮膜面に不均一に供給される。水分と接触することで局所的に第1層皮膜2中の可溶性のリン酸塩成分が溶出し、図1(b)に示すように、めっき表面にリン酸塩成分が溶出した部分5が不均一に生成し、これによって外観不良(白い斑点模様)となると考えられる。また、リン酸塩成分が溶出することで、耐食性が低下する。なお、リン酸系皮膜だけの1層構造の皮膜では、水分と接触しても斑点状模様は発生しない。これはリン酸塩成分が溶出しても上層皮膜が存在する場合にみられる不均一な溶出が起こらないためと考えられる。
そこで、第1層のリン酸塩成分の溶出を抑制する方法について種々検討した。その結果、第1層皮膜を形成する際にリン酸塩化合物の脱水反応を向上させ、かつ第2層皮膜を形成する際に熱硬化性樹脂の架橋反応を向上させることで、第2層皮膜を焼付けた後水冷しても、外観不良が発生せず、また耐食性の低下を防止できることを見出し、本発明に至った。
以下、本発明の限定理由について説明する。
第1層のリン酸系皮膜は鋼板温度が130〜200℃となるように加熱し焼付ける。この第1層皮膜は、リン酸塩を含有する溶液を塗布し上記の様に焼付けて形成した、塗布型の非晶質の皮膜であり、特許文献3に開示される反応型の結晶質のリン酸亜鉛皮膜とは異なる。
図2は、1例としてリン酸マンガンの熱重量・示差熱分析(TG−TDA)の結果を示す特性図である。図2から、焼付温度130℃付近で結晶水の脱水反応がおきることがわかる。第1層の焼付温度が130℃未満では該皮膜中の結晶水の脱水反応が不十分となり、可溶性成分が存在し、第2層皮膜を焼付けた後水冷すると、可溶性のリン酸塩成分が溶出し、外観不良や耐食性低下の問題が発生する。そのため、第1層は130℃以上で焼付ける。第1層の焼付温度が200℃を超えると、第2層の密着性が低下するので、焼付温度は200℃以下とする。
図3は、第1層にMnを含有したリン酸系皮膜、第2層にエポキシ系熱硬化性樹脂の皮膜を形成した表面処理鋼板において、第2層の焼付温度を150℃以上とし、第2層焼付後水冷したときの第1層の焼付温度とアルカリ脱脂後耐食性の関係を示す。アルカリ脱脂後耐食性は後述する条件で評価した白錆発生時間を示す。実用上、要求されるアルカリ脱脂後耐食性のレベルは、塩水噴霧試験で72hr以上である。図3から、第1層を130℃以上で焼付けることで良好なアルカリ脱脂後耐食性が得られることがわかる。
本発明の表面処理鋼板が使用される場合、通常アルカリ脱脂後塗装が施される。したがって塗装がまわり込まない部分ではアルカリ脱脂後そのまま製品となることになる。このように無塗装で使用される場合を考慮すると、アルカリ脱脂後の耐食性に優れることが必要である。そのため、本明細書では、耐食性はアルカリ脱脂後の耐食性を評価した。
熱硬化性樹脂による第2層皮膜は鋼板温度が150〜250℃となるように加熱し焼付ける。図4は、第1層の焼付温度を130℃以上とし、第2層焼付後水冷したときの第2層皮膜のエポキシ系樹脂の焼付温度とアルカリ脱脂後耐食性の関係を示す図である。図4に示すように、焼付温度が150℃以上で安定して良好なアルカリ脱脂後耐食性が得られるのに対して、150℃未満ではアルカリ脱脂後耐食性が劣る。焼付温度が150℃未満では、エポキシ樹脂の架橋不足により、水分が透過して第1層の可溶性のリン酸塩成分が溶出し、外観不良と耐食性低下の問題が起こりやすくなると考えられる。そのため、焼付温度は150℃以上とする。一方、焼付温度が250℃を超えると樹脂が硬化しすぎ皮膜密着性が低下するので、焼付温度の上限は250℃とする。
第1層のリン酸系皮膜の付着量は片面当たりのP付着量として160〜310mg/m、第2層の熱硬化性樹脂の付着量は片面当たり0.3〜1.0g/mとすることが好ましい。第1層が310mg/mを超えると、第2層との密着性が劣ることがある。第2層が1.0g/mを超えると、密着性が劣ることがある。第1層が160mg/m未満、もしくは第2層が0.3g/m未満であると、十分な皮膜が形成されず、耐食性不良となることがある。
前記のようにして第1層皮膜、第2層皮膜を順次形成した表面処理鋼板は、外観が良好で耐食性に優れる。また、第2層皮膜を焼付けた後水冷しても外観不良の問題が発生しない。
厚さ0.8mmの鋼板に電気めっきラインによりZnめっきを行い、片面当たりの付着量20g/mのZnめっき鋼板を製造した。電気めっきラインに付設された塗装設備によりZnめっき鋼板の表面に、リン酸マンガンを主成分として含む水溶液(リン酸マンガン濃度5質量%)を塗布し、片面当たりのP付着量にして150〜310mg/mに制御した第1層皮膜を鋼板温度が130〜180℃となるように加熱し焼付け、引き続き、エポキシ系熱硬化性樹脂含有溶液(濃度8質量%)を片面当たりの付着量にして0.3〜1.0g/mに制御した第2層皮膜を鋼板温度が140〜200℃となるように加熱し焼付け、その後蒸留水を用いた水冷スプレーで冷却した。
前記で作製した表面処理鋼板の外観と耐食性を評価した。
外観:外観不良(白い斑点模様)の有無を目視確認で評価した。
耐食性:作製した表面処理鋼板を、100mm×200mmの大きさに剪断後アルカリ脱脂(日本パーカライジング(株)製CLN−364S(濃度20g/l)を雰囲気温度53℃にて2分間スプレー噴射)した後、端面部をシールし、中性塩水噴霧試験(JIS Z2371−2000)に準拠した塩水噴霧試験を行い、白さび発生時間が72hr以上を○(良好)、72hr未満を×(不良)と評価した。
第1層皮膜、第2層皮膜の焼付け条件、外観及び耐食性の各評価結果を表1に記載する。
Figure 2007039769
第1層焼付温度、第2層焼付温度が本発明範囲内の供試材No.2〜5は、第2層を焼付けた後に水冷しても耐食性と外観が良好である。一方、第2層焼付温度が本発明範囲を下回る供試材No.1は白斑点が確認され外観不良であり、また耐食性が劣る。
第2層皮膜焼付け後の水冷による第1層のリン酸系皮膜の溶出を説明する模式図である。 リン酸塩の熱重量・示差熱分析(TG−TDA)の結果を示す特性図である。 第1層の焼付温度とアルカリ脱脂後耐食性の関係を示す図である。 第2層の焼付温度とアルカリ脱脂後耐食性の関係を示す図である。
符号の説明
1 亜鉛めっき層
2 第1層(リン酸系皮膜)
3 第2層(熱硬化性樹脂皮膜)
4 水滴
5 リン酸塩成分が溶出した部分

Claims (1)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層としてリン酸系皮膜を有し、その上に第2層として熱硬化性樹脂による皮膜を有する表面処理鋼板の製造方法において、第1層を鋼板温度が130〜200℃となるように加熱し焼付け、かつ第2層を鋼板温度が150〜250℃となるように加熱し焼付けたのち水冷することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2000198963A (ja) * 1998-12-28 2000-07-18 Nippon Steel Corp 低毒性かつ耐食性に優れるプレコ―ト金属板用塗料
JP2005042190A (ja) * 2003-07-25 2005-02-17 Jfe Steel Kk 耐白錆性に優れた表面処理鋼板

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