JP2007032558A - 内燃機関用チタン部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の燃焼ガスに曝されるチタン部品の疲労強度および衝撃強度を向上する。
【解決手段】本発明による内燃機関用チタン部品は、表面に形成されたセラミックス層7を有している。セラミックス層7は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、シリコンまたはアルミニウムを含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、チタンやチタン合金から形成されたチタン部品に関し、特に、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品に関する。
近年、エンジンの高出力化や軽量化を目的として、チタンやチタン合金(「チタン材料」と総称する。)がエンジン用部品の材料に用いられるようになってきた。
チタン材料は、軽量で高い強度を有しているものの、耐磨耗性に乏しい。そのため、高い耐磨耗性が要求されるチタン部品には、酸化処理が施されることがある。酸化処理を施すと、チタン部品の表面に硬いチタン酸化物の膜が形成されるので、耐摩耗性が向上する。しかしながら、チタン酸化物は脆いので、チタン酸化物膜が形成されたチタン部品は、疲労強度や衝撃強度が低下してしまう。部品を肉厚に形成することにより、疲労強度や衝撃強度をある程度向上することはできるが、その場合、重量が増加し、チタン材料を用いる意義が薄れてしまう。
また、高い耐磨耗性を要求されないチタン部品には、わざわざ酸化処理を行う必要はないが、このようなチタン部品であっても、高温下で使用される場合には、使用中に表面が酸化されてしまい、やはり疲労強度や衝撃強度が低下してしまう。
上述した問題を解決する手法として、特許文献1には、チタンバルブやチタンコンロッドの表面にアルミニウム粉末を焼成によって付着させる方法が開示されている。また、特許文献2には、チタン部品に窒化チャンバを用いて予め窒化処理を施す方法が開示されている。これらの方法によれば、チタン部品の表面に形成されたアルミニウムの膜やチタン窒化物の膜が、母材であるチタン材料への酸素の到達を阻害する酸素バリア層として機能する。そのため、チタン材料の酸化が抑制され、疲労強度や衝撃強度が向上する。また、チタン部品の所定の部分に上述した酸素バリア層を形成した後にチタン部品の全体に酸化処理を施すことにより、酸素バリア層が形成された部分の疲労強度を確保しつつ、他の部分(酸化処理によってチタン酸化物が形成される部分)の耐摩耗性を向上することができる。
特許第3151713号 特開2004−115907号公報
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されている方法では、以下の理由から、十分な酸化防止効果を得ることができない。
アルミニウム膜を酸素バリア層として用いる場合には、酸化処理時や高温下での使用時に、アルミニウム膜とその内側に位置するチタン材料層との間に脆い金属間化合物(アルミニウムとチタンとの金属間化合物)の層が形成される。そのため、この金属間化合物層の内部にエンジン運転時の応力によりクラックが生じ、それによって酸素バリア層としてのアルミニウム膜が脱落することがある。従って、安定した酸化防止効果が得られないことがある。しかも、粉末を焼成することによって形成された膜は、ポーラスな層となるので、ガスバリア層として好適には機能し得ない。
また、チタン窒化物は非常に硬くて脆いので、チタン窒化物の膜には応力により微少なクラックが生じることがある。そのため、チタン窒化物膜を酸素バリア層として用いる場合にも、安定した酸化防止効果が得られないことがある。
さらに、上述したようにして形成されたアルミニウム膜やチタン窒化物膜は、膜自体がそもそも緻密でないので、酸素バリア性がそれほど高くない。従って、エンジンの燃焼ガスなどの酸化性の強いガスにさらされると、ガスがこれらの膜を通過してチタン材料に達し、チタン材料が酸化されてしまう。そのため、形成されたチタン酸化物層にその後の使用によってクラックが生じ、部品内部に亀裂が進行することも多い。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の燃焼ガスに曝されるチタン部品の疲労強度および衝撃強度を向上することにある。
本発明の第1の局面による内燃機関用チタン部品は、チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、表面に形成されたセラミックス層を有し、前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、シリコンまたはアルミニウムを含む。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層の厚さは、20nm以上500nm以下である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層の厚さは、50nm以上250nm以下である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層のチタン含有率は0.5wt%以下である。
本発明の第2の局面による内燃機関用チタン部品は、チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、表面に形成されたセラミックス層を有し、前記セラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含み、かつ、チタン含有率が0.5wt%以下である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物は、80個/mm2以下である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、シリコンの酸化物、窒化物または窒化酸化物を含む。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、アルミニウムの酸化物、窒化物または窒化酸化物を含む。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、前記セラミックス層よりも内部にチタン層またはチタン合金層を有し、前記セラミックス層と前記チタン層またはチタン合金層との間に、1μm以下の厚さを有するチタン酸化物層を含む。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、表面の一部に選択的に形成されている。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、表面の他の一部に、10μm以上の厚さを有するチタン酸化物層を含む。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、内燃機関の燃焼室を構成するバルブである。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、排気ポートの開閉を行う排気バルブである。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、バルブであって、ステム部およびフェース部と、前記ステム部と前記フェース部とを接続するネック部とを備え、前記ネック部の表面に前記セラミックス層が形成されている。
ある好適な実施形態において、前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、前記コッタ部の表面にも前記セラミックス層が形成されている。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品は、バルブであって、バルブコッタに係合するコッタ部を有するステム部を備え、前記コッタ部の表面に前記セラミックス層が形成されている。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、蒸着法により形成された蒸着膜である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、スパッタ法により形成された蒸着膜である。
本発明の第3の局面による内燃機関用チタン部品は、チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、表面に形成されたセラミックス層を有し、前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、チタン含有率が0.5wt%以下である。
本発明の第4の局面による内燃機関用チタン部品は、チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、表面に形成されたセラミックス層を有し、前記セラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含み、前記セラミックス層の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物が、80個/mm2以下である。
本発明による内燃機関は、上記構成を有する内燃機関用チタン部品を備えている。
本発明による輸送機器は、上記構成を有する内燃機関を備えている。
本発明による内燃機関用チタンバルブは、チタンまたはチタン合金から形成された内燃機関用チタンバルブであって、表面の一部に選択的に形成されたセラミックス層を有し、前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、シリコンまたはアルミニウムを含む。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタンバルブは、バルブガイド内を摺動するステム部と、バルブシートに接触するフェース部と、前記ステム部と前記フェース部とを接続するネック部とを備え、前記ネック部の表面に前記セラミックス層が形成されている。
ある好適な実施形態において、前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、前記コッタ部の表面にも前記セラミックス層が形成されている。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタンバルブは、バルブガイド内を摺動するステム部を備え、前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、前記コッタ部の表面に前記セラミックス層が形成されている。
本発明による内燃機関用チタン部品の製造方法は、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品の製造方法であって、チタンまたはチタン合金から形成されたチタン部品を用意する工程と、前記チタン部品の表面に、10nmを超え750nm以下の厚さを有するセラミックス層を蒸着法により堆積する工程と、を包含する。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含む。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層は、チタン含有率が0.5wt%以下である。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層を堆積する工程は、スパッタ法により実行される。
ある好適な実施形態において、前記セラミックス層を堆積する工程において、前記セラミックス層は、前記チタン部品の表面の一部に選択的に堆積される。
ある好適な実施形態において、本発明による内燃機関用チタン部品の製造方法は、前記セラミックス層を堆積する工程の後に、前記チタン部品の表面の他の一部に厚さ10μm以上のチタン酸化物層を形成する工程をさらに包含する。
本発明の第1の局面によるチタン部品は、表面に形成されたセラミックス層を有している。このセラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含んでいるので、緻密に形成することが可能であり、高い酸素バリア性を有する。また、このセラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有しているので、薄すぎることによって酸素バリア性が不足したり、厚すぎることによってクラックが発生したりすることもほとんどない。従って、高温下での長時間の使用に際しても高い酸化防止効果を得ることができ、高い疲労強度および衝撃強度が実現される。
本発明の第2の局面によるチタン部品の表面に形成されたセラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含んでいるので、緻密に形成することが可能であり、高い酸素バリア性を有する。また、このセラミックス層は、チタン含有率が0.5wt%以下であり、チタンを実質的に含んでいないので、セラミックス層中のチタンを媒介として母材のチタンが酸化されることが防止される。従って、高温下での長時間の使用に際しても高い酸化防止効果を得ることができ、高い疲労強度および衝撃強度が実現される。
本発明の第3の局面によるチタン部品の表面に形成されたセラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有しているので、薄すぎることによって酸素バリア性が不足したり、厚すぎることによってクラックが発生したりすることもほとんどない。また、このセラミックス層は、チタン含有率が0.5wt%以下であり、チタンを実質的に含んでいないので、セラミックス層中のチタンを媒介として母材のチタンが酸化されることが防止される。従って、高温下での長時間の使用に際しても高い酸化防止効果を得ることができ、高い疲労強度および衝撃強度が実現される。
本発明の第4の局面によるチタン部品の表面に形成されたセラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含んでいるので、緻密に形成することが可能であり、高い酸素バリア性を有する。また、このセラミックス層の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物は、80個/mm2以下である。つまり、セラミックス層の表面には、粗大な粒状堆積物はほとんど存在しない。そのため、膜の緻密性が高く、数十nm〜数百nmの膜厚でも十分な酸化防止効果が得られる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本願明細書では、チタンまたはチタン合金から形成された部品を総称して「チタン部品」と呼ぶ。本発明によるチタン部品は、疲労強度および衝撃強度に優れているので、燃焼ガスに曝される内燃機関用の部品として好適に用いられる。以下では、チタン部品の例としてチタンバルブを挙げて本発明を説明する。
図1に、本実施形態におけるチタンバルブ10を示す。チタンバルブ10は、チタン材料、すなわち、チタンまたはチタン合金から形成されている。なお、本願明細書において、チタン合金とは、チタンを主成分として含み、Al、V、Fe、Mo、Cr、Zr、SnおよびCの少なくとも1つを(好ましくは少なくともAlを)0.5wt%以上10.0wt%以下添加された合金をいう。
チタンバルブ10は、棒状のステム部1と、傘状の傘部2とを備えている。傘部2は、バルブシートに接触する円錐台状のフェース部3と、ステム部1とフェース部3とを接続するネック部4とを備えている。
ステム部1の傘部2とは反対側の端5は、ステムエンドと呼ばれる。ステム部1のステムエンド5近傍には、バルブコッタに係合する凹部(コッタ部と呼ばれる。)6が設けられている。
図2に、チタンバルブ10をエンジンの排気ポート31に取り付けた状態を示す。図2に示すように、シリンダヘッド30の下部から側部に向かって延びるように排気ポート31が形成されている。
シリンダヘッド30に形成された孔にバルブガイド32が設けられており、このバルブガイド32にチタンバルブ10のステム部1が挿入されている。チタンバルブ10は、バルブスプリング33によって上方向に持ち上げられるように付勢されている。
バルブスプリング33は、スプリングシート34とリテーナ35とによって保持されている。リテーナ35は、チタンバルブ10のコッタ部6に係合するバルブコッタ36によってチタンバルブ10のステム部1に係止されている。
チタンバルブ10の上方には、カム37が回転可能なように設けられている。カム37が回転することによって、カムの凸部(径の大きな部分)がバルブリフタ43を押し下げ、また、バルブスプリング33がチタンバルブ10を押し上げる。これによって、チタンバルブ10が上下に移動し、排気ポート31が開閉される。
チタンバルブ10が上下に移動する際、ステム部1はバルブガイド32内を摺動する。また、チタンバルブ10が最も上側に復帰するとき、フェース部3がバルブシート38に当接(衝突)し、そのことによって排気ポート31が閉じられる。このとき、チタンバルブ10の片当り等があると、ネック部4により強い衝撃力が加わるとともに曲げ応力も発生する。この繰り返しにより、曲げ疲労破壊に至ることもある。また、チタンバルブ10が上下に移動する際、カム37側に位置するステムエンド5に荷重がかかる。チタンバルブ10に加わる力は、エンジンの回転速度が上昇するとより大きくなるので、自動二輪車等に用いられる高回転型エンジンでは、チタンバルブ10への衝撃力が強くなる。
このように、排気ポート31の開閉に際し、チタンバルブ10のステム部1、フェース部3およびステムエンド5は、他の部材との接触を伴うので、優れた耐摩耗性を要求される。そのため、これらの部位には、酸化処理を施すことによってその表面にチタン酸化物層を形成することが好ましい。十分に高い耐摩耗性を得るためには、チタン酸化物層の厚さは、10μm以上であることが好ましい。
一方、チタンバルブ10のネック部4およびコッタ部6には、チタンバルブ10の着座などによる応力が発生するので、高い疲労強度および衝撃強度が要求される。本実施形態におけるチタンバルブ10のネック部4およびコッタ部6の表面には、後述するようなセラミックス層が酸素バリア層として形成されており、そのことによって、これらの部位の疲労強度、衝撃強度を十分に高くすることが可能になる。以下、本実施形態におけるセラミックス層をより具体的に説明する。
本実施形態におけるチタンバルブ10では、図3に示すように、ネック部4、コッタ部6およびコッタ部6の近傍の表面(図3中のハッチングを付している部分)に、セラミックス層7が形成されている。
セラミックス層7は、具体的には、シリコンまたはアルミニウムを含むセラミックス膜である。セラミックス層7は、例えば、シリコンの酸化物、窒化物または窒化酸化物や、アルミニウムの酸化物、窒化物または窒化酸化物から形成されている。
特許文献2に開示されている手法によって形成されるチタン窒化物膜のようなチタン系のセラミックス膜は、化学量論的な組成になりにくく、膜自体が疎であるため、酸素バリア性に劣っている。また、化学量論的な組成になりにくく、さらに、金属結合している部分が生じるため、膜自体の酸化が進行したり、内部への酸素の受け渡しが行われたりしてしまう。
これに対し、シリコン系のセラミックス膜は、非金属元素の化合物で共有結合しており、膜自体を緻密に形成することが可能である。また、アルミニウムは金属元素と非金属元素との境に位置する元素であるので、アルミニウム系のセラミックス膜もシリコン系のセラミックス膜と同様に、膜自体を緻密に形成することが可能である。そのため、本実施形態におけるセラミックス層7は、酸素バリア性に優れる。従って、ステム部1、フェース部3およびステムエンド5の表面にチタン酸化物層を形成するためにチタンバルブ10の全体に酸化処理を施しても、ネック部4およびコッタ部6の酸化を十分に抑制することができる。また、エンジン運転時の燃焼ガスに曝された際のネック部4およびコッタ部6の酸化も十分に抑制することができる。そのため、本実施形態におけるチタンバルブ10は、疲労強度および衝撃強度に優れている。また、十分な疲労強度、衝撃強度が得られるため、肉厚の増加という軽量化に不利な設計変更を行う必要もない。
なお、一般的には、酸化物よりも窒化物の方がより緻密で、ガスバリア性に優れている。そのため、酸化防止効果の点からは、セラミックス層7は、酸化シリコン膜よりも窒化酸化シリコン膜であることが好ましく、窒化シリコン膜であることがさらに好ましい。また、同様に、セラミックス層7は、酸化アルミニウム膜よりも窒化酸化アルミニウム膜であることが好ましく、窒化アルミニウム膜であることがさらに好ましい。
また、膜の緻密さの点からは、シリコン系のセラミックス膜を用いることが好ましく、ターゲットとして安価なものを用いることができる点からは、アルミニウム系のセラミックス膜を用いることが好ましい。アルミニウムは、導電性が高いので、シリコンよりもスパッタ法に用いやすく、また、蒸発温度も低いので、蒸着法に向いている。また、窒化アルミニウムは、酸化アルミニウムの約10倍も熱伝導性が高く、熱衝撃に強いので、高負荷で運転されるエンジンには、窒化アルミニウム膜を用いることが好ましい。
セラミックス層7が薄すぎると、ガスバリア性が不足することがある。また、セラミックス層7が厚すぎると、高温下での熱膨張により、クラックが発生することがある。後述するように本願発明者が検討を行ったところ、十分なガスバリア性を確保しつつ、クラックの発生をより確実に防止するためには、セラミックス層7の厚さは、10nmを超え750nm以下であることが好ましく、20nm以上500μm以下であることがより好ましく、50nm以上250nm以下であることがさらに好ましいことがわかった。
なお、表面にセラミックス層7が形成された部位であっても、厳密には、チタン材料の酸化を完全に防止できるわけではない。しかしながら、本実施形態のようなセラミックス層7を設けることによって、セラミックス層7とチタン材料層(チタン層またはチタン合金層)との間に形成されるチタン酸化物層の厚さを1μm以下とすることができ、厚いチタン酸化物層に起因した疲労強度および衝撃強度の低下を十分に抑制することができる。
また、セラミックス層7には、チタンがあまり含まれていないことが好ましい。具体的には、セラミックス層7のチタン含有率は0.5wt%以下であることが好ましい。セラミックス層7にチタンが含まれていると、セラミックス層7中のチタンが酸素と結合して酸化され、さらに、酸素を同種元素である母材側のチタンに渡して酸化させてしまうことがある。セラミックス層7のチタン含有率を0.5wt%以下とする(つまりセラミックス層7にチタンが実質的に含まれていないようにする)ことによって、このような酸化を十分に抑制することができる。なお、チタン系のセラミックス膜は、既に述べたように、化学量論的な組成になりにくいので、未反応のチタンを多く含んでいる。そのため、上述したような母材の酸化を引き起こしやすい。
なお、本実施形態では、セラミックス層7をネック部4およびコッタ部6の両方に形成するが、必要に応じて、ネック部4およびコッタ部6の一方のみに形成してもよい。また、傘部2の燃焼室側の表面にセラミックス層7を形成することも好ましい。図4に示すように、チタンバルブ10がバルブシート38に着座する際の衝撃によって、傘部2の燃焼室側の表面8からクラック9が発生することがある。燃焼室側の表面8にもセラミックス層7を形成することによって、燃焼室側の表面8の衝撃強度を向上することができ、クラック9の発生を抑制することができる。
次に、チタンバルブ10の製造方法を説明する。
まず、セラミックス層7が形成されていないチタンバルブ10を用意する。チタンバルブ10の材料としては、純チタンやチタン合金を用いることができる。セラミックス層7が形成される前のチタンバルブ10は、公知の種々の方法によって形成され得る。
次に、チタンバルブ10の表面に、所定の厚さを有するセラミックス層7を堆積する。このとき、セラミックス層7は、チタンバルブ10の表面の一部、より具体的には、ネック部4、コッタ部6およびコッタ部6近傍の表面に選択的に堆積される。セラミックス層7の厚さは、既に述べたように、ガスバリア性の観点からは、10nmを超えることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。また、セラミックス層7の厚さは、熱膨張によるクラックの発生を抑制する観点からは、750nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
既に述べたように、セラミックス層7にはチタンがあまり含まれていないことが好ましいので、セラミックス層7は、チタンバルブ10本体中のチタンがセラミックス層7中に拡散して層中に含有されない方法により、形成することが好ましい。具体的には、セラミックス層7は、蒸着法により形成することが好ましい。つまり、セラミックス層7は、蒸着法により形成された蒸着膜であることが好ましい。本願明細書において、「蒸着法」とは、堆積すべき物質を気体状態で(好ましくは真空下で)堆積させるCVD(化学気相堆積)法および物理的蒸着法をいう。蒸着法としては、スパッタ法やイオンプレーティング法などの物理的蒸着法を用いることがより好ましい。特に、スパッタ法により形成される膜は緻密性が高いので、セラミックス層7は、スパッタ法により形成されていることがより好ましい。
スパッタ法を用いる場合には、DCスパッタ装置、RFスパッタ装置、マグネトロンスパッタ装置、イオンビームスパッタ装置などを用いることができる。また、これらの方法を用いる場合、セラミックス層7を堆積するチタンバルブ10の表面にプラズマ粒子を衝突させ、チタンバルブ10の表面をエッチングする(つまり逆スパッタする)ことができる。これを利用して、チタンバルブ10の表面に形成されている自然酸化膜を除去し、セラミックス層7とチタンバルブ10本体との密着性を向上させることができる。
プラズマを用いない堆積方法を用いてセラミックス層7を形成する場合であっても、チタンバルブ10の表面に形成されている自然酸化膜を、物理的あるいは化学的方法により、セラミックス層7を形成する前に除去しておくことが好ましい。
また、スパッタ法を用いる場合には、例えば治具や遮蔽物によるマスキングを行うことにより、チタンバルブ10の表面の一部に選択的にセラミックス層7を堆積することができる。
その後、チタンバルブ10の表面の他の一部、具体的には、ステム部1、フェース部3およびステムエンド5に所定の厚さを有するチタン酸化物層を形成する。十分な耐摩耗性を実現する観点からは、チタン酸化物層の厚さは、10μm以上であることが好ましい。この酸化処理工程は、例えばチタンバルブ10を大気中で高温(例えば650℃〜850℃程度)に保持することによって行われる。このとき、表面にセラミックス層7が形成されている部分では、セラミックス層7が酸素バリア層として機能することによって、チタン酸化物層の形成が抑制される。
以下、本実施形態におけるチタンバルブ10を実際に試作して各種の検証を行った結果を説明する。
まず、Ti―6Al―4Vの組成を有するチタン合金から形成されたチタンバルブ10をスパッタ蒸着装置のチャンバ内に配置し、真空度が3×10-4Paに達するまで排気を行った。
次に、チャンバ内にアルゴンを25sccmの流量で導入して0.4Paの圧力を保ちながら、500V×4A(2.0kW)のパワーを投入して1.5分間逆スパッタを行い、チタンバルブ10の表面の自然酸化膜を除去した。
続いて、ターゲットとしてシリコンを用い、アルゴンおよび酸素(あるいはアルゴンおよび窒素)雰囲気下で圧力を0.2Paに保ちながら、700V×7A(4.9kW)のパワーを投入して1分間スパッタを行い、チタンバルブ10の表面に厚さ25nmの酸化シリコン膜(あるいは窒化シリコン膜)を堆積してセラミックス層7を形成した。
上述のようにしてセラミックス層7が形成されたチタンバルブ10を大気中700℃で24時間加熱保持したところ、チタンバルブ10本体(つまりチタン材料の層)の表面とセラミックス層7との間に形成されたチタン酸化物膜の厚さは、0.5μm以下(すなわちほとんど形成されていない)であり、チタン酸化物膜の形成が抑制されていることが確認された。
次に、スパッタ時間を変化させてセラミックス層(ここでは窒化シリコン膜)の厚さが異なる複数のチタンバルブを試作し、それらの酸化防止効果を評価した。下記表1にその結果を示す。表1において、「◎」は酸化防止効果が非常に高いことを示し、「○」は酸化防止効果が高いことを示す。また、「△」は酸化防止効果が実用上十分であることを示し、「×」は酸化防止効果が不十分であることを示す。
表1に示したように、セラミックス層7の厚さが10nmの場合には、酸化防止効果が不十分であった。これは、膜自体の厚さが小さいため、ガスバリア性が十分ではないからである。従って、ガスバリア性の観点からは、セラミックス層7の厚さは、10nmを超えることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。
また、表1に示したように、セラミックス層7の厚さが2μmや1μmの場合には、酸化防止効果が不十分であった。これは、高温下での熱膨張により、膜にクラックが発生したからである。これに対し、セラミックス層7の厚さが750nm以下の場合には、熱応力によるクラックの発生はなく、十分な酸化防止効果が得られた。ただし、セラミックス層7の厚さが750nmの場合には、使用環境によっては、外部応力や衝撃荷重によるクラックが発生することがある。セラミックス層7の厚さが500nm以下であると、そのようなクラックの発生を抑制でき、250nm以下であるとさらに確実に抑制できる。従って、熱膨張によるクラックの発生を回避する観点からは、セラミックス層7の厚さは、750nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
続いて、表面の一部に選択的にセラミックス層7が形成されたチタンバルブ10に酸化処理を施し、セラミックス層7が形成されている部分とセラミックス層7が形成されていない部分の両方について、光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて断面観察を行った。
図5(a)および(b)に、セラミックス層7が形成されている部分の断面を示す。図5(a)および(b)は、それぞれ図5(c)中の5−5’線に沿った断面の光学顕微鏡写真および走査電子顕微鏡写真である。
図5(a)からは、チタンバルブ10の最表面に1μm以下の非常に薄いチタン酸化物層が形成されている様子がわかる。また、図5(b)からは、チタンバルブ10の最表面に0.5μm程度の非常に薄いチタン酸化物層が形成されている様子がわかる。
図6(a)および(b)に、セラミックス層7が形成されていない部分の断面を示す。図6(a)および(b)は、それぞれ図6(c)中の6−6’線に沿った断面の光学顕微鏡写真および走査電子顕微鏡写真である。
図6(a)からは、チタンバルブ10の最表面に6μm程度の厚いチタン酸化物が形成されている様子がわかる。また、図6(b)からは、チタンバルブ10の最表面に5.6μm程度の厚いチタン酸化物が形成されている様子がわかる。
このように、表面にセラミックス層7が形成されている部分と形成されていない部分とで、酸化処理によって形成されるチタン酸化物層の厚さに顕著な差が見られ、本実施形態におけるセラミックス層7の優れた酸化防止効果が確認された。
続いて、本願発明者は、チタン酸化物層の厚さが疲労強度に与える影響を定量的に見積もるため、以下の検証を行った。
チタン部品の表面に形成されるチタン酸化物層は、非常に脆いため、チタン部品の表面に生じたクラックであるとみなすことができる。従って、チタン酸化物層の厚さをクラックの深さと仮定して、クラックの底における応力拡大係数KIが疲労強度を決定している因子であると考えることができる。応力拡大係数KIは、クラックの底における応力場の強さを示すパラメータである。応力拡大係数KIは、例えば下式によって表される。
KI=1.12×σ×√(π・a)
上式において、σは作用する応力であり、aはクラックの深さである。上式から、応力拡大係数KIが、クラックの深さaの平方根に比例することがわかる。このことから、応力拡大係数KIがチタン酸化物層の厚さの平方根に比例するという推論が導かれる。そこで、酸化処理条件を変化させてチタン酸化物層の厚さを変化させ、実際の疲労強度を測定した。チタン酸化物層の厚さと疲労強度との関係を下記表2に示す。また、図7に、チタン酸化物層の厚さの平方根と疲労強度との関係をグラフとして示す。
表2および図7から、チタン酸化物層の厚さの平方根と疲労強度とに良好な比例関係が見出される。この結果から、チタン酸化物層の厚さがチタン部品の疲労強度を決定付けていることがわかる。
図7に示した比例関係から、耐摩耗性を向上するために厚さ10μm以上のチタン酸化物層を形成した場合、疲労強度は470MPa以下と見積もれる。これに対し、セラミックス層7を形成することによってチタン酸化物層の厚さを1μm以下とした場合、疲労強度は600MPa以上と見積もれる。このように、セラミックス層7を形成することによって疲労強度を22%以上向上できることがわかる。
例えば、図6(b)に示したようにチタン酸化物層の厚さが約5.6μmである場合には疲労強度が約518MPaであるのに対し、図5(b)に示したようにチタン酸化物層の厚さが約0.5μmである場合には疲労強度は約637MPaであり、約23%向上する。
続いて、スパッタ法により形成した窒化酸化シリコン(SiON)膜およびイオンプレーティング法により形成した炭化窒化チタン(TiCN)膜について、酸化防止効果を比較検討した結果を説明する。表3に、表面にセラミックス層7として窒化酸化シリコン膜が形成されたチタンバルブ10について、700℃で1時間加熱試験を行った後のクラックの発生の有無と、酸化による重量の増加量とを示す。また、表4には、表面に炭化窒化チタン膜が形成されたチタンバルブについて同様のデータを示す。
表3と表4との比較からわかるように、窒化酸化シリコン膜を形成した場合には、炭化窒化チタン膜を形成した場合に比べ、酸化による重量の増加量が著しく少ない。このように、窒化酸化シリコン膜は、炭化窒化チタン膜に比べて酸化防止効果が著しく高い。また、表3から、クラックの発生を抑制する観点からは膜厚は750nm以下であることが好ましく、成膜時間の長さも考慮すると500nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましいことがわかる。また、酸素バリア性の観点からは、膜厚は10nmを超えることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましいことがわかる。
上述したように炭化窒化チタン膜は、シリコン系やアルミニウム系のセラミックス膜ではなく、また、チタンを含んでいることから酸化防止効果が低いが、表3と表4とに示されている結果の差異は、膜の形成方法にも起因している。本願発明者がセラミックス膜の形成方法について詳細な検討を行ったところ、イオンプレーティング法を用いるよりもスパッタ法を用いる方が、緻密なセラミックス膜を形成しやすいことがわかった。
図8(a)、(b)および(c)に、スパッタ法により形成された窒化酸化シリコン(SiON)膜と、イオンプレーティング法により形成された炭化窒化チタン(TiCN)膜および窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜の表面の顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図8(b)および(c)に示すように、イオンプレーティング法により形成された炭化窒化チタン膜および窒化チタンアルミニウム膜の表面には、粗大な粒状堆積物が多く観察される。このように堆積される粒子が粗いと、膜の緻密性が低くなってしまう。たとえ膜厚を1μm以上としても、膜厚よりも大きな粒状堆積物が存在するために、膜がポーラスになりやすい。そのため、十分な酸素バリア性を実現しにくい。
これに対し、スパッタ法により形成された窒化酸化シリコン膜の表面には、図8(a)に示すように粗大な粒状堆積物は観察されない。このように堆積される粒子が非常に細かいため(例えば粒径は1nm未満)、膜の緻密性が高く、十分な酸素バリア性を実現しやすい。そのため、数十nm〜数百nmの膜厚でも十分な酸化防止効果が得られる。
また、膜の緻密性を評価するパラメータとして、セラミックス層7の表面における粗大な粒状堆積物の数を用いることができる。十分な酸素バリア性を実現するためには、セラミックス層7の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物の量は、80個/mm2以下であることが好ましい。図9に、スパッタ法により形成された窒化酸化シリコン膜と、イオンプレーティング法により形成された炭化窒化チタン膜および窒化チタンアルミニウム膜とについて、表面に存在する粒状堆積物の積算粒径分布を示す。なお、粒状堆積物の粒径および個数は、例えば、図8(a)、(b)および(c)に示した顕微鏡写真を図10(a)、(b)および(c)に示すように画像処理(具体的には2値化)した後、所定のソフトウェア(例えばオリンパス株式会社製アナリシスファイブ)を用いて解析することによって行うことができる。
図9に示したように、イオンプレーティング法により形成した膜の表面では粒径1μm以上の粒状堆積物の量が200個/mm2を超えているのに対し、スパッタリング法により形成した窒化酸化シリコン膜の表面では、粒径1μm以上の粒状堆積物はほとんど存在せず、その量は50個/mm2以下である。なお、ここでは窒化酸化シリコン膜について述べたが、スパッタリング法により形成した窒化酸化アルミニウム(AlON)膜についても同様の結果が得られた。
本実施形態におけるチタンバルブ10は、自動車両用や機械用の各種のエンジンに広く用いられる。上述したように、本実施形態におけるチタンバルブ10は、疲労強度および衝撃強度に優れているので、高回転で運転されるエンジンに特に好適に用いられる。図11に、チタンバルブ10を備えたエンジン100の一例を示す。
エンジン100は、図11に示すようにシリンダ20を備えている。シリンダ20内にはピストン21が上下に往復動可能なように設けられている。シリンダ20上にはシリンダヘッド30が設けられている。
シリンダヘッド30の一方の側部から中央下部に延びるように排気ポート31が形成されている。また、シリンダヘッド30の他方の側部から中央下部に向かって延びるように吸気ポート39が形成されている。
排気ポート31の下端開口および吸気ポート39の下端開口には、それぞれ排気バルブ41および吸気バルブ42が設けられている。排気バルブ41および吸気バルブ42は、バルブスプリング33により斜め上方向に持ち上がるように付勢されている。排気バルブ41および吸気バルブ42の上方にはカム37が回転可能なように設けられている。カム37が回転することにより、排気バルブ41および吸気バルブ42が上下に移動し、それによって排気ポート31および吸気ポート39がそれぞれ所定のタイミングで開閉される。
排気バルブ41、吸気バルブ42、シリンダ20およびシリンダヘッド30によって燃焼室22が構成されている。エンジン100は、排気バルブ41および吸気バルブ42として、本実施形態におけるチタンバルブ10を備えている。そのため、エンジン100は耐久性に優れている。なお、必ずしも排気バルブ41および吸気バルブ42の両方に本実施形態におけるチタンバルブ10を用いる必要はないが、排気ポート31の開閉を行う排気バルブ41は、常に高温の燃焼ガスに曝されるので、少なくとも排気バルブ41として本実施形態におけるチタンバルブ10を用いることが好ましい。
図12に、図11に示したエンジン100を備えた自動二輪車200を示す。自動二輪車200は、本実施形態におけるチタンバルブ10が用いられたエンジン100を備えているので、好適な性能を有する。
なお、本実施形態では、エンジンバルブ10を例として本発明を説明したが、本発明はこれに限定されず、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用のチタン部品に広く用いられる。例えば、本発明はチタンコンロッドにも用いられるし、また、燃焼室の外側で排気ガスの流量を制御するバタフライバルブ等にも用いられる。
また、本実施形態では、セラミックス層をチタン部品の表面の一部に選択的に形成する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。高い耐磨耗性を要求されないチタン部品については、セラミックス層を表面全体に形成してもよい。
本発明によると、内燃機関の燃焼ガスに曝されるチタン部品の疲労強度および衝撃強度を向上することができる。本発明によるチタン部品は、各種の内燃機関用の部品として好適に用いられ、本発明によるチタン部品を備えた内燃機関は、各種輸送機器に好適に用いられる。
本発明の好適な実施形態におけるチタンバルブを模式的に示す正面図である。 本発明の好適な実施形態におけるチタンバルブをエンジンの排気ポートに取り付けた状態を示す図である。 本発明の好適な実施形態におけるチタンバルブを模式的に示す正面図である。 チタンバルブがバルブシートに着座する際にクラックが発生する様子を模式的に示す図である。 (a)〜(c)は、実際に試作したチタンバルブの観察結果を示す図であり、(a)および(b)はそれぞれ(c)中の5−5’線に沿った断面(セラミックス層が形成されている部分の断面)の光学顕微鏡写真および走査電子顕微鏡写真である。 (a)〜(c)は、実際に試作したチタンバルブの観察結果を示す図であり、(a)および(b)はそれぞれ(c)中の6−6’線に沿った断面(セラミックス層が形成されていない部分の断面)の光学顕微鏡写真および走査電子顕微鏡写真である。 チタン酸化物層の厚さ(μm)の平方根と疲労強度(MPa)との関係を示すグラフである。 (a)は、スパッタ法により形成された窒化酸化シリコン(SiON)膜の表面の顕微鏡写真であり、(b)および(c)は、イオンプレーティング法により形成された炭化窒化チタン(TiCN)膜および窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜の表面の顕微鏡写真である。 スパッタ法により形成された窒化酸化シリコン膜と、イオンプレーティング法により形成された炭化窒化チタン膜および窒化チタンアルミニウム膜とについて、表面に存在する粒状堆積物の積算粒径分布を示すグラフである。 (a)、(b)および(c)は、図8(a)、(b)および(c)に示した顕微鏡写真を解析用に処理した画像である。 本発明の好適な実施形態におけるチタンバルブを備えたエンジンの一例を模式的に示す断面図である。 図11に示すエンジンを備えた自動二輪車を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 ステム部
2 傘部
3 フェース部
4 ネック部
5 ステムエンド
6 コッタ部
7 セラミックス層
8 傘部の燃焼室側の表面
10 チタンバルブ
20 シリンダ
21 ピストン
22 燃焼室
30 シリンダヘッド
31 排気ポート
32 バルブガイド
33 バルブスプリング
34 スプリングシート
35 リテーナ
36 バルブコッタ
37 カム
38 バルブシート
39 吸気ポート
41 排気バルブ
42 吸気バルブ
43 バルブリフタ
100 エンジン
200 自動二輪車

Claims (26)

  1. チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、
    表面に形成されたセラミックス層を有し、
    前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、シリコンまたはアルミニウムを含む内燃機関用チタン部品。
  2. 前記セラミックス層の厚さは、20nm以上500nm以下である請求項1に記載の内燃機関用チタン部品。
  3. 前記セラミックス層の厚さは、50nm以上250nm以下である請求項1に記載の内燃機関用チタン部品。
  4. 前記セラミックス層のチタン含有率が0.5wt%以下である請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  5. チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、
    表面に形成されたセラミックス層を有し、
    前記セラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含み、かつ、チタン含有率が0.5wt%以下である内燃機関用チタン部品。
  6. 前記セラミックス層の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物が、80個/mm2以下である請求項1から5のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  7. 前記セラミックス層は、シリコンの酸化物、窒化物または窒化酸化物を含む請求項1から6のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  8. 前記セラミックス層は、アルミニウムの酸化物、窒化物または窒化酸化物を含む請求項1から6のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  9. 前記セラミックス層よりも内部にチタン層またはチタン合金層を有し、
    前記セラミックス層と前記チタン層またはチタン合金層との間に、1μm以下の厚さを有するチタン酸化物層を含む請求項1から8のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  10. 前記セラミックス層は、表面の一部に選択的に形成されている請求項1から9のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  11. 表面の他の一部に、10μm以上の厚さを有するチタン酸化物層を含む請求項10に記載の内燃機関用チタン部品。
  12. 内燃機関の燃焼室を構成するバルブである請求項1から11のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  13. 排気ポートの開閉を行う排気バルブである請求項12に記載の内燃機関用チタン部品。
  14. バルブである請求項12または13に記載の内燃機関用チタン部品であって、
    ステム部およびフェース部と、前記ステム部と前記フェース部とを接続するネック部と、を備え、
    前記ネック部の表面に前記セラミックス層が形成されている請求項12または13に記載の内燃機関用チタン部品。
  15. 前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、
    前記コッタ部の表面にも前記セラミックス層が形成されている請求項14に記載の内燃機関用チタン部品。
  16. バルブである請求項12または13に記載の内燃機関用チタン部品であって、
    バルブコッタに係合するコッタ部を有するステム部を備え、
    前記コッタ部の表面に前記セラミックス層が形成されている請求項12または13に記載の内燃機関用チタン部品。
  17. 前記セラミックス層は、蒸着法により形成された蒸着膜である請求項1から16のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品。
  18. 前記セラミックス層は、スパッタ法により形成された蒸着膜である請求項17に記載の内燃機関用チタン部品。
  19. チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、
    表面に形成されたセラミックス層を有し、
    前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、チタン含有率が0.5wt%以下である内燃機関用チタン部品。
  20. チタンまたはチタン合金から形成され、内燃機関の燃焼ガスに曝される内燃機関用チタン部品であって、
    表面に形成されたセラミックス層を有し、
    前記セラミックス層は、シリコンまたはアルミニウムを含み、
    前記セラミックス層の表面に存在する粒径1μm以上の粒状堆積物が、80個/mm2以下である内燃機関用チタン部品。
  21. 請求項1から20のいずれかに記載の内燃機関用チタン部品を備えた内燃機関。
  22. 請求項21に記載の内燃機関を備えた輸送機器。
  23. チタンまたはチタン合金から形成された内燃機関用チタンバルブであって、
    表面の一部に選択的に形成されたセラミックス層を有し、
    前記セラミックス層は、10nmを超え750nm以下の厚さを有し、かつ、シリコンまたはアルミニウムを含む内燃機関用チタンバルブ。
  24. バルブガイド内を摺動するステム部と、バルブシートに接触するフェース部と、前記ステム部と前記フェース部とを接続するネック部と、を備え、
    前記ネック部の表面に前記セラミックス層が形成されている請求項23に記載の内燃機関用チタンバルブ。
  25. 前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、
    前記コッタ部の表面にも前記セラミックス層が形成されている請求項24に記載の内燃機関用チタンバルブ。
  26. バルブガイド内を摺動するステム部を備え、
    前記ステム部は、バルブコッタに係合するコッタ部を有し、
    前記コッタ部の表面に前記セラミックス層が形成されている請求項23に記載の内燃機関用チタンバルブ。
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