JP2007031389A6 - ヌクレオチド誘導体及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩基特異的なシグナル変化を利用するヌクレオチド配列における塩基種の特定に際して、識別性の高い蛍光発光特性を備えるヌクレオチド誘導体を提供する。
【解決手段】以下の一般式(2)で表されるヌクレオチド誘導体等を用いる。

(Aはアントラセン化合物,R〜RはH又は置換基,R10はH又はOH,Aはエステル,アミド等の連結基,Yはメチレン基,エチレン基等,mは1〜3の整数,nは5以下の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、ヌクレオチド配列中の塩基種を決定するためのヌクレオチド誘導体及びその利用に関する。
近年、薬剤の有効性やガンなどの各種疾患の予防や予後、広くは体質などの各個体における治療上の診断及び方針並びに疾患を予防するための生活習慣方針の指標としてSNP(Single Nucletide Polymorphism:一塩基多型)が用いられるようになってきている。
SNPタイピング法としては、ハイブリダイゼーション効率、酵素認識効率等が知られているが、なかでもDNAマイクロアレイ等を利用したヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーション効率による方法について報告されている(非特許文献1)。例えば、ハイブリダイゼーションを用いたSNPタイピングは、プローブと標識したヌクレオチドとハイブリダイゼーション効率、すなわち、ハイブリダイゼーションにおける融解温度を指標とする方法が一般的であるが、このためには、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを標的とするヌクレオチド配列毎に厳密に設定する必要がある。さらに、こうした緻密な条件設定にもかかわらず、ミスハイブリダイゼーションによる測定誤差が避けられないものとなっている。また、こうした融解温度を指標とするのは、ヌクレオチド配列における塩基を間接的に特定するものに過ぎないにも関わらず、多大な労力を要するものとなっていた。
本発明者らは、既にSNPタイピングを省力化するために、標的ヌクレオチド配列中の特定塩基種と相対する時とそれ以外の塩基種と相対する時とにおいて蛍光シグナルが変化するヌクレオチド誘導体を見出し、この特定塩基との相対時における蛍光シグナルで当該特定塩基を識別できることを見出した。そして、このヌクレオチド誘導体をキャプチャープローブとして用いることにより、塩基種を直接的に特定する手法を開発している(特許文献1)。すなわち、この手法によれば、こうしたヌクレオチド誘導体をキャプチャープローブの特定部位に配置し、標識していない標的ヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションを行って蛍光を検出し、こうした蛍光シグナルが特定塩基と相対したときの蛍光シグナルかどうかを判定することにより、標的ヌクレオチド配列の特定部位の塩基種を特定することができる。すなわち、塩基種をハイブリダイゼーションによる蛍光シグナルの変化から直接的に特定することができる。
国際公開第2004/58793号パンフレット Hacia JG et al., Nat. Genet.14:441−447,1996
しかしながら、こうしたヌクレオチド誘導体を用いた蛍光の最大吸収波長が紫外領域に近いほど、蛍光強度が小さくなる傾向があるなど、シグナルの識別性が低くなる傾向がある。この結果、シグナル検出の精度や再現性が低下する傾向があった。
そこで、本発明は、ハイブリダイゼーションによるヌクレオチド配列の分析に際して、識別性の高い蛍光発光特性を備えるヌクレオチド誘導体及びその利用を提供する。また、本発明は、容易かつ高精度に塩基種を特定できるヌクレオチド誘導体及びその利用を他の一つの目的とする。なお、ヌクレオチド誘導体の利用には、ヌクレオシド誘導体、プローブ、プローブ固定化体、ハイブリダイゼーション方法などが包含される。
本発明者らは、少なくとも上記した一つの課題を解決するために以下の手段を創出した。
本発明の一つの形態によれば、以下の一般式(1)で表されるヌクレオチド誘導体が提供される。
(式中、Aはアントラセン化合物を表すが、上記群から選択されるいずれかの形態で結合され、Aにおいて、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、R10は、水素原子又は水酸基を表し、Bはプリン塩基又はピリミジン塩基を表し、Xは、上記群から選択される連結基を表し、Yは、メチレン基、エチレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、mは1以上3以下の整数を表し、n、n及びnは、同一又は異なっていてもよく、0以上5以下の整数を表す。)
この発明において、ヌクレオチドとは、プリン塩基又はピリミジン塩基がβ−N−グリコシド結合により結合したヌクレオシドのリン酸エステルを意味している。また、ヌクレオチド誘導体とは、ヌクレオチドに、リンカーを介してアントラセン化合物を備えたものを意味している。アントラセン化合物とは、アントラセン骨格を有する化合物である。
このヌクレオチド誘導体によれば、このヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体を少なくとも一つのユニットとして有する一本鎖のヌクレオチド配列がハイブリダイズする相手鎖の相対する塩基の種類によって蛍光発光特性が相違する結果、特定の塩基を識別可能な蛍光発光特性を発揮する。
こうしたヌクレオチド誘導体としては、以下の一般式(2)で表されるヌクレオチド誘導体;
以下の一般式(3)で表されるヌクレオチド誘導体;
以下の一般式(4)で表されるヌクレオチド誘導体;
以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体;
が挙げられる。なお、これらの式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10、B、X、Y、m、n、n及びnについては、一般式(1)で定義したのと同義である。
また、本発明の別の形態によれば、以下の一般式(6)で表されるヌクレオシド誘導体も提供される。
(式中、式中、Aはアントラセン化合物を表すが、上記群から選択されるいずれかの形態で結合され、Aにおいて、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、R10は、水素原子又は水酸基を表し、Bはプリン塩基又はピリミジン塩基を表し、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、Xは、上記群から選択される連結基を表し、Yは、メチレン基、エチレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、n、n及びnは、同一又は異なっていてもよく、0以上5以下の整数を表す。)
さらに、具体的には、以下の一般式(7)で表されるヌクレオシド誘導体;
以下の一般式(8)で表されるヌクレオシド誘導体;
以下の一般式(9)で表されるヌクレオシド誘導体;
以下の一般式(10)で表されるヌクレオチド誘導体;
が挙げられる。なお、これらの式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12、B、X、Y、n、n及びnについては、一般式(5)について定義したのと同義である。
また、本発明の他の形態によれば、上記ヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体の1種又は2種以上をホスホジエステル結合を介して備える、ポリヌクレオチド誘導体が提供される。
本発明の他の形態によれば、上記いずれかのヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体の1種又は2種以上をホスホジエステル結合を介して備える、プローブが提供される。このプローブにおいては、前記ヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体は、標的ポリヌクレオチドの検出しようとするl個又は2個以上の塩基種に対応して備えられている。
また、本発明の他の形態によれば、上記プローブの1種又は2種以上が固相に固定化されたプローブ固定化体が提供される。この固定化体は、前記固相がプレート状であることが好ましい態様であり、さらに、前記プローブの1種又は2種以上は、それぞれ別個の領域を有して配列されていることが好ましい。また、この形態においては、一塩基多型を検出するためのプローブセットが固定化されていることが好ましい態様である。
また、本発明の他の形態によれば、ハイブリダイゼーション方法であって、上記プローブと標的ポリヌクレオチド配列とをハイブリダイゼーションさせる工程と、前記ハイブリダイゼーションのハイブリダイズ産物の蛍光を測定する工程と、ハイブリダイズ産物の蛍光測定結果と使用したプローブが備えるヌクレオチド誘導体の特定塩基を識別可能な蛍光発光特性とに基づいて標的ポリヌクレオチド中の1個又は2個以上の塩基種を同定する評価工程とを、を備えることを特徴としている。このハイブリダイゼーション工程は、上記プローブを固相に固定化したプローブ固定化体を用いることが好ましい態様である。また、前記プローブとして、一塩基多型を検出するためのプローブセットを用いることも好ましい態様である。
本発明のヌクレオチド誘導体は、ピリミジン塩基又はプリン塩基に、リンカーを介してアントラセン化合物を備える、新規なヌクレオチド誘導体である。本発明のヌクレオチド誘導体によれば、標的ポリヌクレオチド等の相手鎖とハイブリダイズしたとき、相手鎖の相対する部位の塩基の種類により、その強度及び/又は最大吸収波長等において異なった蛍光発光を示す。こうした蛍光発光の特性の違いから、特定塩基と相対したときの特徴的な蛍光発光特性を当該ヌクレオチド誘導体に関連付けることができる。これにより、このヌクレオチド誘導体を備えるポリヌクレオチドと相手鎖とのハイブリダイゼーションにおいて両者間の相補性の検出が可能になるとともに、相手鎖の未知の塩基種を特定することができるようになる。したがって、本発明のヌクレオチド誘導体は、塩基識別性を有するヌクレオチド誘導体として用いることができる。
また、本発明のヌクレオチド誘導体においては、アントラセン化合物を備えており、相手鎖とハイブリダイズして特定塩基と相対したときの蛍光波長は、従来よりも長波長側にシフトしているとともに、蛍光強度が増強されている。したがって、識別性に優れた塩基識別性ヌクレオチド誘導体として用いることができる。さらに、より長波長側での蛍光検出が可能であり蛍光強度の高い塩基識別性ヌクレオチド誘導体によれば、容易にかつ高精度に相手鎖との相補性や塩基種を特定できる。なお、本発明のヌクレオチド誘導体におけるアントラセン化合物は、相手鎖とハイブリダイゼーションする際、相対するヌクレオチド間に結合するインターカレーターとして機能しているものと考えられる。
また、本発明のヌクレオチド誘導体によれば、アントラセン化合物を備えることにより、蛍光物質としてピレンを備える場合よりも蛍光波長を長波長側にシフトさせることができ、この結果、識別性の高い蛍光シグナルを得ることができる。また、固相担体からのノイズを抑制できるため、検出感度が良好で、検出精度や再現性が良好な蛍光シグナルを得ることができる。この結果、塩基種の特定を簡易にかつ精度よく実施できる。
本発明の他の形態である、ヌクレオシド誘導体、ポリヌクレオチド誘導体、プローブ、ハイブリダイゼーション方法及びプローブ固定化体は、いずれも、本発明のヌクレオチド誘導体に関しており、これらについて順次説明する。
(ヌクレオチド誘導体)
本発明のヌクレオチド誘導体は、一般式(1)に表されるように、Bのプリン塩基又はピリミジン塩基にリンカーを介してアントラセン化合物を備えることを特徴としている。また、本発明のヌクレオチド誘導体において、リン酸エステル基のmは1以上3以下の整数を表している。したがって、本発明のヌクレオチド誘導体は、モノリン酸、ジリン酸又はトリリン酸がエステル結合した化合物を包含している。また、リボースの2’位のR10は、水素原子又は水酸基であり、R10が水素原子のときには、デオキシヌクレオチド誘導体であり、同位が水酸基であるときには、リボヌクレオチド誘導体である。
一般式(1)におけるAであるアントラセン化合物は、アントラセン骨格を有し、アントラセン骨格に結合する水素原子は置換されていてもよいものである。すなわち、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を表している。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、含酸素基、含窒素基、含硫黄基及びこれらの原子や置換基を有していてもよい炭化水素基若しくは複素環基である。より具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基、アルコキシ基、エステル基、水酸基、アシルオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、アミド基、シアノ基、カルバメート基、ウレイド基、チオール基、チオエーテル基、チオエステル基が挙げられる。また、これらの原子や置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基及びピロールなどの五員複素環基、ピリジンなどの六員複素環基などが挙げられる。なお、これらの置換基におけるアルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4個程度の直鎖又は分枝状のアルキル基である。また、R、R、R、R、R、R、R、R及びRの隣接するもの同士が結合して置換されていてもよいフェニル基などの芳香族等の環を形成してもよい。
アントラセン化合物Aは、本発明のヌクレオチド誘導体を備える1本鎖のポリヌクレオチド誘導体が相手鎖とハイブリダイズしたときに、対合する塩基種を特定できる程度の塩基識別能を有している限り、どの部位でリンカーXに連結されていてもよいが、一般式(1)に表されるように結合することができる。
アントラセン化合物Aとプリン塩基又はピリミジン塩基とはリンカーを介して結合している。リンカーは、アントラセン化合物Aを塩基に結合させるものであれば、特に限定されないが、一般式(1)において塩基Bとアントラセン化合物Aとの間にある構造の全てを含むものとする。リンカーの一部を構成するXの種類は特に限定しないが、例えば、一般式(1)において表される以下の群から選択されるいずれかとすることができる。なかでも、アミド基やカルボニル基を含む基が好ましい。
及びXに備えられるアルキレン基におけるn及びnは、同一又は異なっていてもよいが、0以上5以下の整数を表している。プリン塩基又はピリミジン塩基におけるリンカーの結合部位は、ピリミジン塩基の場合には、第4位又は第5位とすることができ、プリン塩基の場合には、第7位又は第8位とすることができる。
また、Yは、メチレン基、エチレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表している。
一般式(1)において塩基Bがピリミジン塩基のウラシルであるヌクレオチド誘導体は一般式(2)に表され、シトシンであるヌクレオチド誘導体は一般式(3)に表され、塩基Bがプリン塩基のアデニンであるヌクレオチド誘導体は一般式(4)に表され、グアニンであるヌクレオチド誘導体は一般式(5)に表される。ウラシル誘導体及びシトシン誘導体は、ピリミジン塩基の第5位にリンカーを介してアントラセン化合物Aが結合した構造を有している。なお、塩基の構造上、このウラシル誘導体は、デオキシリボヌクレオチド誘導体であるチミン誘導体ということもできる。また、アデニン誘導体は、プリン塩基の第7位にリンカーを介してアントラセン化合物Aが結合した構造を有し、グアニン誘導体は、プリン塩基の第8位にリンカーを介してアントラセン化合物Aが結合した構造を有している。
こうしたヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体は、塩基識別性ヌクレオチド誘導体(以下、本発明のヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体を塩基識別性ヌクレオチド誘導体ともいう。)としてプローブなどに用いることができる。例えば、ウラシル誘導体のリン酸モノエステル体がホスホジエステル結合を介して備えるポリヌクレオチド誘導体が相手鎖とハイブリダイズした際、ウラシル誘導体のウラシル基が対合する塩基がアデニンであるときのハイブリダイズ産物の発光強度は3.8、対合塩基がアデニン以外の塩基、すなわち、チミン、グアニン及びシトシンの場合のハイブリダイズ産物よりも大きい。具体的には、対合塩基がシトシンのときには0.8、グアニンのときには1.7及びチミンのときには1.1の発光強度を得ることができる。したがって、ウラシル誘導体は、アデニン識別可能な蛍光発光特性を有しているといえ、ウラシル誘導体は、対合する塩基種がアデニンであるか否かを判定するための塩基識別性ヌクレオチド誘導体として用いることができる。こうした、塩基識別能力は、同様にインターカレーターであり蛍光色素であるピレンをアントラセン化合物に替えて備えるヌクレオチド誘導体における塩基識別性(国際公開パンフレットWO 2004/058793号)によってもサポートされている。こうしたことから、シトシン誘導体は、対合する塩基種がグアニンであるか否かを判定するための塩基識別ヌクレオチド誘導体として、アデニン誘導体は、対合する塩基種がシトシンであるか否かを判定するための塩基識別性ヌクレオチド誘導体として、グアニン誘導体は、対合する塩基種がチミン又はウラシル若しくはシトシンであるか否かを判定するための塩基識別性ヌクレオチド誘導体として使用することができる。
また、例えば、ウラシル誘導体を用いたハイブリダイズ産物の励起スペクトルによれば、ウラシル誘導体は、対合塩基がアデニンのときに371nm近傍において励起される。励起される程度は、対合塩基がアデニン以外のときよりも強い。そして、ウラシル誘導体と対合塩基がアデニンである相手鎖のハイブリダイズ産物の蛍光波長は450nm近傍であり、従来ピレンにより得られている蛍光波長である400nm近傍よりも長波長側にシフトされている。長波長側へのシフトにより、ハイブリダイズ産物以外からのノイズ、例えば、固相や液相などの媒体に由来するノイズを低減することができる。したがって、ウラシル誘導体は、対合塩基がアデニンの場合の塩基識別能力に優れるとともに、ハイブリダイズ産物が存在する環境下におけるノイズを低減し、これにより対合塩基種の検出感度、検出精度及び再現性を向上させることができる。
本発明のヌクレオチド誘導体は、これの前駆体とするヌクレオシド誘導体から常法により得ることができる。すなわち、ヌクレオシド誘導体にPOCl及びリン酸トリメチルを添加することにより、ヌクレオチド誘導体リン酸モノエステル体(m=1)が得られる。さらに、ピロリン酸トリブチルアンモニウム塩を添加することにより、リン酸トリエステル体が得られる。
(ヌクレオシド誘導体)
本発明のヌクレオシド誘導体は、一般式(6)に表される。一般式(6)におけるA、X及びR10についてはヌクレオチド誘導体についての一般式(1)において説明したのと同様の態様が適用される。また、R11は、水素原子又は置換基とすることができる。R11の置換基としては、例えば、オリゴヌクレオチド合成のためのシアノエチル−N,N’−ジイソプロピルフォスフォロアミダイト基などが挙げられる。また、R12についても水素原子又は置換基とすることができる。置換基としては、オリゴヌクレオチド合成のためのジメトキシトリチル基(DMTr)などが挙げられる。一般式(6)において塩基Bがピリミジン塩基のウラシルであるヌクレオシド誘導体は一般式(7)に表され、シトシンであるヌクレオシド誘導体は一般式(8)に表され、塩基Bがプリン塩基のアデニンであるヌクレオシド誘導体は一般式(9)に表され、グアニンであるヌクレオシド誘導体は一般式(10)に表される。
本発明のヌクレオシド誘導体は、常法により合成することができる。例えば、塩基のリンカー導入部位に脱離基としてのヨウ素原子を導入したものを用意する。一方、アントラセンの第2位にカルボン酸を有するアントラセンカルボン酸のカルボン酸部位に酸アミド結合を介したアセチニル基を導入したものを用意する。これらを常法により反応させることにより、本発明のヌクレオシド誘導体が得られる。
(ポリヌクレオチド誘導体)
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、上記ヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体の1種又は2種以上をホスホジエステル結合を介して備えている。こうしたポリヌクレオチド誘導体は、一般式(11)で表されるユニットの1種又は2種以上を備えることとなる。本発明のポリヌクレオチド誘導体を構成する全てのユニットが上記ユニットを備えていてもよいし、一部が上記ユニットであってもよい。本発明のヌクレオチド誘導体は、DNAであってもよいし、RNAであってもよいし、DNAとRNAとのキメラであってもよい。また、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。また、必要に応じてヌクレアーゼ耐性を付与するような修飾がなされていてもよいし、本発明のヌクレオチド誘導体以外のヌクレオチド誘導体を含んでいてもよい。
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、その重合鎖中のある位置に上記ヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体(塩基識別性ヌクレオチド誘導体)を備えるとき、標的ヌクレオチド中の対合するヌクレオチド(塩基)が当該塩基であるときに、当該塩基を識別できる蛍光発光を発する。例えば、こうした本発明のポリヌクレオチド誘導体は、標的ヌクレオチドのある部位が塩基識別性ヌクレオチドによって識別可能な特定塩基のときには強く発光し、当該特定塩基以外のときには発光しないかあるいは弱く発光する。このために、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、ハイブリダイズする相手鎖の特定位置の塩基種を識別できる。したがって、以下の用途に利用できる。
(1)標的核酸と相補的なポリヌクレオチド誘導体は、プローブとして用いることにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。同様の方法でSNPの検出に利用できる。特に、こうしたポリヌクレオチド誘導体をビーズや基板等の固相に固定化した固定化体とすることにより、特定核酸配列を有するか否かを確認できる。特に、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。
(2)アンチセンスポリヌクレオチドに代えて使用する場合には、通常のポリヌクレオチドとは異なるために、核酸分解酵素(例えば制限酵素)や核酸結合タンパク質(例えば転写因子)等の標的核酸への結合を阻害できる。このことから、これらの作用を利用した実験用試薬として利用できる。
(3)それ自体蛍光を発するため、核酸の蛍光ラベルに使用できる。
(4)DNA複製において、複製されるDNAと相補的なプローブとして使用すること によりDNA複製のリアルタイム検出ができる。同様に、RNAへの転写において 、転写されるRNAと相補的なプローブとして使用することによりRNA転写のリ アルタイム検出ができる。
(5)相補的配列とハイブリダイズすることにより蛍光波長のシフトが起こるようなポリヌクレオチド誘導体である場合は、蛍光波長のシフトにより当該ポリヌクレオチド誘導体の酸化還元電位が変化する。このため、電極上に本発明のポリヌクレオチド誘導体を固定しておき、被験ポリヌクレオチドをこの電極に作用させて酸化還元電位を測定する方法で、核酸配列応答性のバイオセンサーとして利用できる。
(6)本発明のポリヌクレオチドは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に供される蛍光性プローブとして利用できる。
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、例えば核酸自動合成機を用いたホスホロアミダイト法による化学合成方法において、特定ヌクレオシドに代えて本発明のヌクレオシド誘導体を用いることにより合成できる。
(プローブ及びプローブセット)
本発明のプローブは、1種又は2種以上の塩基識別性ヌクレオチド誘導体をホスホジエスエル結合を介して備えるポリヌクレオチド誘導体である。本プローブについては、上記した本発明のポリヌクレオチド誘導体としての各種の態様を適用することができる。また、本プローブにおいて、塩基識別性ヌクレオチド誘導体は、標的ポリヌクレオチドの検出しようとする1個又は2個以上の塩基種に対応して備えられている。これにより、試料中に含まれる標的ポリヌクレオチドの特定位置の塩基種を判定できる。プローブにおけるヌクレオチド数は例えば4〜100個程度、好ましくは10〜30個程度とすることができる。プローブは、DNA、RNA、DNA/RNAキメラのいずれであってもよく、1本鎖又は2本鎖である。さらに、試料が細胞抽出液等のヌクレアーゼを含むものである場合には、ヌクレアーゼにより切断され難いように、ホスホロチオエートDNA又はRNA、H−ホスホネートDNA又はRNA等の修飾核酸であってもよい。
プローブにおける塩基識別性ヌクレオチド誘導体の導入個数や位置などの態様は、決定しようとする塩基種の数や変異のタイプ等によって適宜設定される。プローブの各種形態については、後段にて説明する。
本発明のプローブセットは、例えば、1個又は2個以上の塩基配列の判別等を目的として、2種類以上の本発明のプローブを組み合わせたプローブセットである。本発明のプローブは、標的ポリヌクレオチド中の一つのSNPを特定するためにも、特定部位において2種類以上の塩基識別性ヌクレオチドをそれぞれ備えるプローブを要することが多い。こうしたプローブセットは、例えば、ガン、生活習慣病などの疾患関連遺伝子、体質関連遺伝子、薬剤耐性関連遺伝子等に関するSNPタイピングのためのセットとすることができる。
(ハイブリダイゼーション方法)
本発明のハイブリダイゼーション方法は、本発明のプローブと標的ポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせるハイブリダイゼーション工程と、前記ハイブリダイゼーションのハイブリダイズ産物の蛍光を測定する工程と、ハイブリダイズ産物の蛍光測定結果と使用したプローブが備えるヌクレオチド誘導体の塩基を識別可能な蛍光発光特性とに基づいて標的ポリヌクレオチド中の1個又は2個以上の塩基種を同定する評価工程とを、を備えることを特徴としている。
標的ポリヌクレオチドとは、本発明のプローブで分析しようとする標的ヌクレオチド又は配列を有するものであればよく、DNAであってもRNAであってもよく、また、1本鎖オリゴヌクレオチドであってもよい。また、こうした標的ポリヌクレオチドを含む試料は、通例、細胞抽出液、血液のような体液、PCR産物等を用いることができる。
ハイブリダイゼーション工程は、プローブが固定化されていない液相内において行うこともできるし、プローブを固定化した状態で行うこともできる。ハイブリダイゼーション工程は、従来どおり、通常のDNAアレイ等を用いたハイブリダイゼーションと同様に行うことができるが、本発明のハイブリダイゼーション工程における標的ポリヌクレオチドは、標識されていなくてもよい。本方法によれば、プローブ自体が識別性を有しているため、試料ポリヌクレオチドの標識化が不要となっている。したがって、標識誤差による再現性の低下や精度の低下を排除できる。
本方法では、ハイブリダイゼーション工程後のハイブリダイゼーション後の洗浄工程をすることなく蛍光検出を行うことができる。標的ポリヌクレオチドを標識するものではなく、プローブ自体が相対する塩基を識別可能な蛍光発光特性を有し、相対する塩基が特定塩基以外の場合には、蛍光が発生しないか相対的に低い蛍光しか発生しないからである。したがって、例えば、プローブを基板など固相に固定化して用いる場合など、ハイブリダイズしなかった試料中の核酸がそのまま存在してもよく、こうしたポリヌクレオチドを洗浄により除去する必要もない。したがって、洗浄工程に起因する測定誤差も排除される。したがって、本方法は、プローブが固相に固定化されたプローブ固定化体、特に基板に固定化されたものに好ましく適用される。
さらに、本ハイブリダイゼーション工程によれば、相対する塩基を識別可能な特異的な蛍光発光特性を示し、本来ハイブリダイゼーションすべきでないヌクレオチドとプローブとのハイブリダイズ産物が誤って生成されてもそうした蛍光発光を発しない。すなわち、ミスハイブリダイゼーションによる塩基識別性への影響は排除されている。したがって、本発明方法のハイブリダイゼーション工程によれば、ミスハイブリダイゼーションによるノイズを排除することができる。
蛍光測定工程における蛍光検出は、常法に従い、照射波長250〜600nm程度で測定すればよい。ハイブリダイズ前のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトル測定と、ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトル測定とを行うことが好ましい。こうしたハイブリダイズ前後のスペクトルと比較して、塩基識別性ヌクレオチドを含むプローブの本来の識別能力が発揮されたか否かを確認しておくことにより、ハイブリダイゼーション反応が適性であったかどうかを判定できる。
また、評価工程では、ハイブリダイズ産物の蛍光測定結果と、用いたプローブにおいて予め取得されている蛍光発光特性とに基づいて標的ポリヌクレオチド中の1個又は2個以上の塩基種を同定する。例えば、標的ポリヌクレオチド中の一つの塩基を特定するために、この塩基に対合する部位に、可能性のある4種の塩基にそれぞれ対応する本発明のヌクレオチド誘導体を備える4種のプローブを用いた場合、この4種のプローブのうちどのプローブが塩基特異的な固有の蛍光発光特性を発現しているかを判定する。そうした固有の蛍光発光特性を発現しているプローブの認識する塩基種が、未知の塩基種である。
なお、一つの塩基を2種以上の塩基識別性ヌクレオチド誘導体が識別する場合や、一つの塩基識別性ヌクレオチド誘導体が2種類の塩基を識別する場合がある。このような場合には、こうした塩基識別性ヌクレオチド誘導体による蛍光発光特性を組み合わせて判定する。
本発明のハイブリダイゼーション方法によれば、プローブとして、相手鎖とハイブリダイズしたとき、相対する塩基に特異的な蛍光発光特性を発現する塩基識別性ヌクレオチド誘導体を備えるプローブを用いるため、特定部位の塩基種を直接的に判定できる。したがって、SNP検出のほか、未知の塩基配列も決定できるとともに、既知領域との相同性や変異部位も容易に検出できる。
(SNP検出方法)
本発明のSNP検出方法は、上記したハイブリダイゼーション方法を用いて実施する。すなわち、前記既知配列中の特定塩基種を判定する態様である。SNP検出方法においては、プローブを、標的ヌクレオチド配列中のSNP塩基以外の塩基配列と相補的とするとともに、SNP塩基に対合する部位に塩基識別性ヌクレオチド誘導体を備えるようにする。具体的には、SNP塩基部位の塩基種を判定するために、ウラシル誘導体、シトシン誘導体、アデニン誘導体及びグアニン誘導体の1種又は2種以上を備えるようにする。どのヌクレオチド誘導体を用いるかは、SNPのタイプによるが、G/A多型である場合には、G/Gホモ、G/Aへテロ、A/Aホモを検出するために、少なくともグアニン認識ヌクレオチド誘導体(本発明のA誘導体)とアデニン識別ヌクレオチド誘導体(本発明のU誘導体)とをそれぞれ特定部位に備えるプローブを用いる。
(未知配列の決定方法)
また、本発明のハイブリダイゼーション方法は、未知の塩基配列の決定方法に用いることができる。配列決定のためのプローブは、決定しようとする未知配列領域(n=1〜100個程度)の第1位〜第n位についてそれぞれ本発明の各延期に対する塩基識別ヌクレオチド誘導体を有する、4個のプローブのセットとすることが好ましい。また、既知配列との相同性やそのうちの変異部位の検出方法にも用いることができる。このためのプローブは、例えば、相同性を検出しようとする第1位〜第n位までの個々のヌクレオチド位置に各塩基に対する塩基識別性ヌクレオチドを備える、4個のプローブのセットとすることが好ましい。標的ヌクレオチド配列が既知配列と完全に相同である場合には、既知配列の塩基を識別する塩基識別性ヌクレオチド誘導体を備えるプローブの全てがその蛍光発光特性により他のヌクレオチド誘導体を有するプローブから区別されることになる。一方、既知配列中に変異を有する場合には、既知配列の塩基でない塩基を識別するヌクレオチド誘導体を含むプローブによるハイブリダイズ産物の蛍光が他のプローブと区別されることになる。
(プローブ固定化体)
本発明のプローブ固定化体は、本発明のプローブの1種又は2種以上が固相に固定化された固定化体である。こうしたプローブ固定化体は、本発明のハイブリダイゼーション方法等に好ましく用いることができる。
プローブが固定化される固相は、特に限定されない、ビーズなどの粒状体、基板などのプレート状体とすることができる。プローブが塩基識別性ヌクレオチド誘導体を有しており、洗浄工程の省略等が可能であることから、本発明を適用するにあたって固相を基板にすることにメリットがある。また、固相の材料は特に限定されないで、樹脂などの有機材料、ガラスや金属などの無機材料、有機−無機複合材料などとすることができる。固相は多孔質性であっても非多孔質性であってもよい。また、固相の表面には、プローブのハイブリダイゼーション反応の領域を区画する凹凸やプローブの固定を強固するための凹凸等を備えていてもよい。
固相に対するプローブの固定化形態は、固相の種類に応じて適宜設定される。基板にプローブを固定化する場合、本ポリヌクレオチド誘導体の1種又は2種以上は、それぞれ別個の領域を有して配列されていることが好ましい。すなわち、いわゆるDNAチップ又はDNAマイクロアレイのような形態が挙げられる。
プローブの固定化形態には、共有結合、非共有結合による固定化を包含しているが、プローブがハイブリダイズ可能に固定化されている限り固定化の形態や固定化の手法は限定されない。例えば、共有結合による固定化には、プローブを基板上で合成するオンチップ合成法と合成したプローブを固相表面の所定部位に供給して共有結合させる方法がある。また、固相表面へのプローブの供給には、インクジェット方式を採用することが好ましい。インクジェット、特に、ピエゾ素子を利用したインクジェット方式によれば、微量かつ供給量を高精度に制御して供給することができるため、本発明のように、蛍光発光特性の相違に基づいて塩基種を特定する場合には、特に有効である。すなわち、本発明のプローブによる塩基種の判定のためには、プローブの固定領域(スポット)毎におけるプローブ量のバラツキが検出精度に影響するからである。
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:ヌクレオチド誘導体(2AntU)の合成)
図1に参照しながら、示すヌクレオチド誘導体(2AntU)の合成法を説明する。なお、化合物の番号は、図1に示す化合物の番号に対応している。
(1)化合物2の合成
窒素雰囲気下、化合物1である2-アントラセンカルボン酸 (150 mg, 0.675 mmol) を無水N,N'-ジメチルホルムアミド6.0 ml に溶解しベンゾトリアゾール−1−yl−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(421.4mg,0.810mmol)を加えた。室温で1時間撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認後、プロパルギルアミン(44.6mg,0.810mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(104.7mg,0.810mmol)を加え、17時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去した後、水を加えクロロホルムで抽出して目的の化合物(2)を粗精製物として得て(160.6mg,92%)、これを用いて化合物(2)を合成した。なお、NMRによる同定データは以下の通りであった。H NMR(CDCl3,400MHz)δ2.33(dd,1H,J=3.2,3.6Hz),4.35(dd,2H,J=3.2,3.6Hz),7.50−7.55(m,2H),7.80(dd,1H,J=2.4,11.6Hz),8.02−8.08(m,2H),8.46−8.53(m,2H).
(2)化合物4の合成
窒素雰囲気下、化合物3(252.6mg,0.385mmol)を無水N,N’−ジメチルホルムアミド6.0mlに溶解し化合物2(100.0mg,0.385mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(44.5mg,0.0385mmol)、トリエチルアミン(107.3μl,0.770mmol)、ヨウ化銅(I)(14.7mg,0.077mmol)を加えた。室温で17 時間撹拌して薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認後、反応溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出溶媒クロロホルム/メタノール=10/1)により精製して目的の化合物4を無色固体(120.2mg,0.153mmol,収率40%)として得た。なお、NMRによる同定データは、以下の通りであった。
H NMR(CD3OD,400MHz)d2.27−2.30(m,1H),2.54−2.56(m,1H),3.25(m,2H),3.66(s,3H),3.67(s,3H),4.09−4.01(m,1H),4.17(dd,1H,J=5.2,8.4Hz),4.55(m,2H),6.32(t,1H,J=6.8Hz),6.76−7.29(m,13H),7.38(d,1H,J=7.6Hz),7.44−7.50(m,1H),7.64(d,1H,J=9.2Hz),7.89−7.96(m,2H),8.17(s,1H),8.32−8.35(m,2H).
(3)化合物5の製造
窒素雰囲気下、前記で得た化合物4(47.0mg,0.060mmol)を無水ジクロロメタン1.0mlに溶解し、1Hテトラゾール無水アセトニトリル溶液(0.45M,173.0μl,0.078mmol)、2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(24.8μl,0.078mmol)を加えた。この溶液を室温で2時間撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認後、反応溶媒を減圧留去した。残渣を無水アセトニトリル1.0mlに溶解し、コスモナイスフィルターs(溶媒系、ナカライテスク)でろ過した。ろ液を濃縮し、目的の化合物(5)を粗精製物として得た。DNA合成には化合物5の粗精製物をそのまま用いた。
(実施例2:ヌクレオチド誘導体(2AntU)を用いたオリゴデオキシリボヌクレオチドの合成)
実施例1で製造したヌクレオチド誘導体(2AntU、化合物5)を用いて、ヌクレオチド誘導体含有のオリゴデオキシリボヌクレオチドを合成した。オリゴデオキシリボヌクレオチドはアプライドバイオシステムズ社のDNA自動合成機(3400DNA/RNAシンセサイザー)で通常のホスホロアミダイト法に従って合成した。合成した配列は以下の通りであった。なお、5’末端はアミノ修飾されるとともにSpacerC12(12−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル−[(2−シアノエチル)−(N,N’−ジイソプロピル)]ホスホアミダイト)が導入された。
ODN(2AntU)(5’−NH−SpacerC12−tgaagggct2Antucttccagata−3’)(配列番号1)
合成後、固層担体からオリゴヌクレオチドをアンモニア水を用いて切り出し、エッペンドルフチューブに移し替え、55℃で8時間加熱して脱保護を行った。得られたオリゴヌクレオチドの水溶液を高速液体クロマトグラフィー(PU−2808plus,JASCO)で精製した。精製後、凍結乾燥機で溶媒を減圧留去することで目的の配列(ODN(2AntU)を得た。なお、MALDI−TOFによる質量分析データは以下の通りであった。
MALDI−TOF MS([M+H]−:calcd.:6639.66,found:6640.51.)
(実施例3:2AntU 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN(2AntU))の蛍光分析)
実施例2により得られたBDF プローブODN(2ANTU)を2.5μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(PH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて約25℃で測定したところ、図2に示すように、励起波長371nm、蛍光波長450nmであり、450nmにおける蛍光強度は、1.4であった。
2AntU含有オリゴデオキシリボヌクレオチドとの2AntU以外の部分が相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドを別途合成した。
(A’);5'- tatctggaaga agcccttca -3'(配列番号2)
(T’);5'- tatctggaagt agcccttca -3'(配列番号3)
(G’);5'- tatctggaagg agcccttca -3'(配列番号4)
(C’);5'- tatctggaagc agcccttca -3'(配列番号5)
上記溶液に、これらのオリゴデオキシリボヌクレオチドをそれぞれ2.5μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合し、これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、450nmにおける蛍光強度は3.8であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、450nmにおける蛍光強度は1.1であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(G’)を加えた場合には、450nmにおける蛍光強度は1.7であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)を加えた場合には、450nmにおける蛍光強度は0.8 であった。
以上のことから、BDFプローブODN(2ANTU)は、その2AntUにおいて相対する塩基がアデニンであるとき他の塩基の場合に比して高い蛍光を発し、相対する塩基がアデニンであるとき、アデニンを識別可能な蛍光発光特性を有していることがわかった。また、BDFプローブODN(2ANTU)の蛍光波長は450nmであって、従来のピリン化合物をインターカレーターとして備えるBDFプローブODNに比して約50nm長波長側にシフトしていた。
(実施例6:2AntU含有オリゴデオキシリボヌクレオチドをプローブとして固定したDNAマイクロアレイの作製)
本実施例では、2AntU含有オリゴデオキシリボヌクレオチド(配列番号1)及び従来のPyU含有オリゴデオキシリボヌクレオチド(配列番号6)をプローブとして固定したDNAマイクロアレイを作製して、蛍光強度の測定を行った。
(プローブ及びサンプルのオリゴヌクレオチドの調製)
これらのプローブとハイブリダイゼーションさせるサンプルは、2AntU含有オリゴデオキシリボヌクレオチドプローブには、配列番号2〜5のオリゴヌクレオチドを用い、PyU含有オリゴデオキシリボヌクレオチドプローブには、配列番号7〜10の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。表1にプローブ及びサンプルの塩基配列を示す。
これらのプローブ及びサンプルのオリゴヌクレオチドは、アプライドバイオシステム社の392DNA/RNA合成装置を用い、通常のホスホロアミダイド法に従って合成した。なお、配列番号1及び6の5’末端はアミノ基修飾するとともに、SpacerC12を導入した。固相担体からの切り出しおよび脱保護は25%アンモニア中でインキュベーションすることによって行い、その後、高速液体クロマトグラフィーによって精製した。
(固定用基板の調製)
10%NaOH−60%エタノール水溶液に2 時間浸漬し、純水で10回洗浄した76×26×1mmサイズのガラス製スライド(松波硝子工業社製)を10%ポリ−L−リジン水溶液に1時間浸漬した。純水で10回の洗浄後、800rpm、5分間の遠心を行い、水分を除去して室温で乾燥して、固定用基板を調製した。
(DNAマイクロアレイの調製)
調製した配列番号1および6の各プローブを、最終濃度が50pmol/μlとなるように調整し、調製した基板に200plをそれぞれスポット(10nmol)した。その後、80℃で1時間乾燥処理し、各スポットに水を添加し、基板上にDNA断片を固定した。この基板を1%BSAブロッキング溶液(50mg/ml)5ml、10%SDS1.25ml)で45分間(42℃)振盪した。その後、95℃純水で1分間、95%エタノールで1分間それぞれ浸漬させ、遠心(800rpm、1分間)し、目的とするDNAマイクロアレイを調製した。
(サンプルDNAの調製)
オリゴデオキシリボヌクレオチドからなるサンプル(5nmol/25μl)をサンプルチューブに加え、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液(25μl)を添加した。95℃ヒートブロックで2分間加熱した後、室温で5分間放置し遠心してサンプル液を調製した(最終濃度:100nM)。
(ハイブリダイゼーション)
調製したDNAマイクロアレイ上にサンプル液を25μlずつ1点にスポットし、カバーガラスで密閉してハイブリダイゼーション反応を行った(42℃、16 時間)。
(測定)
反応終了後、バイオチップリーダー(Applied Precision社製)を使用して、最適測定条件で各DNAスポットの画像ファイルを取込み、蛍光強度を数値化した。結果を表2に示す。
表2に示すように、2AntU含有プローブは、高い蛍光強度を示しており、しかも蛍光波長が長波長側にシフトしていることから優れた塩基識別能を示すことが分かった。
ヌクレオチド誘導体(2AntU)の合成スキームを示す図である。 2ANTU含有オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN(2ANTU))の蛍光分析結果を示す図であり、(a)は励起スペクトルを示し、(b)は蛍光スペクトルを示す図である。

Claims (19)

  1. 以下の一般式(1)で表されるヌクレオチド誘導体。
    (式中、Aはアントラセン化合物を表すが、上記群から選択されるいずれかの形態で結合され、Aにおいて、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、R10は、水素原子又は水酸基を表し、Bはプリン塩基又はピリミジン塩基を表し、Xは、上記群から選択される連結基を表し、Yは、メチレン基、エチレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、mは1以上3以下の整数を表し、n、n及びnは、同一又は異なっていてもよく、0以上5以下の整数を表す。)
  2. 前記ヌクレオチド誘導体は、以下の一般式(2)で表される、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10、B、X、Y、m、n、n及びnについては、請求項1で定義したのと同義である。)
  3. 前記ヌクレオチド誘導体は、以下の一般式(3)で表される、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10、B、X、Y、m、n、n及びnについては、請求項1で定義したのと同義である。)
  4. 前記ヌクレオチド誘導体は、以下の一般式(4)で表される、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10、B、X、Y、m、n、n及びnについては、請求項1で定義したのと同義である。)
  5. 前記ヌクレオチド誘導体は、以下の一般式(5)で表される、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10、B、X、Y、m、n、n及びnについては、請求項1で定義したのと同義である。)
  6. 以下の一般式(6)で表されるヌクレオシド誘導体。
    (式中、式中、Aはアントラセン化合物を表すが、上記群から選択されるいずれかの形態で結合され、Aにおいて、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、R10は、水素原子又は水酸基を表し、Bはプリン塩基又はピリミジン塩基を表し、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表し、Xは、上記群から選択される連結基を表し、Yは、メチレン基、エチレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、n、n及びnは、同一又は異なっていてもよく、0以上5以下の整数を表す。)
  7. 前記ヌクレオシド誘導体は、以下の一般式(7)で表される、請求項6に記載のヌクレオシド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12、B、X、Y、n、n及びnについては、請求項6で定義したのと同義である。)
  8. 前記ヌクレオシド誘導体は、以下の一般式(8)で表される、請求項6に記載のヌクレオシド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12、B、X、Y、n、n及びnについては、請求項6で定義したのと同義である。)
  9. 前記ヌクレオシド誘導体は、以下の一般式(9)で表される、請求項6に記載のヌクレオシド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12、B、X、Y、n、n及びnについては、請求項6で定義したのと同義である。)
  10. 前記ヌクレオシド誘導体は、以下の一般式(10)で表される、請求項6に記載のヌクレオシド誘導体。
    (式中、A、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12、B、X、Y、n、n及びnについては、請求項6で定義したのと同義である。)
  11. 請求項1〜5のいずれかに記載のヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体の1種又は2種以上をホスホジエステル結合を介して備える、ポリヌクレオチド誘導体。
  12. 請求項1〜5のいずれかに記載のヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体の1種又は2種以上をホスホジエステル結合を介して備える、プローブ。
  13. 前記ヌクレオチド誘導体のリン酸モノエステル体を、標的ポリヌクレオチドの検出しようとするl個又は2個以上の塩基種に対応して備える、請求項12に記載のプローブ。
  14. 請求項12又は13に記載のプローブの1種又は2種以上が固相に固定化されたプローブ固定化体。
  15. 前記固相がプレート状である、請求項14に記載のプローブ固定化体。
  16. 一塩基多型を検出するためのプローブセットが固定化されている、請求項14又は15に記載のプローブ固定化体。
  17. ハイブリダイゼーション方法であって、
    請求項12又は13に記載のプローブと標的ポリヌクレオチドとをハイブリダイゼーションさせる工程と、
    前記ハイブリダイゼーションのハイブリダイズ産物の蛍光を測定する工程と、
    ハイブリダイズ産物の蛍光測定結果と使用したプローブが備えるヌクレオチド誘導体の特定塩基を識別可能な蛍光発光特性とに基づいて前記標的ポリヌクレオチド中の1個又は2個以上の塩基種を同定する評価工程とを、
    を備える、方法。
  18. 前記ハイブリダイゼーション工程は、上記プローブを固相に固定化したプローブ固定化固相を用いてハイブリダイゼーションさせる工程である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記プローブとして、一塩基多型を検出するためのプローブセットを用いる、請求項17又は18に記載の方法。
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