JP2007031333A - 粘着剤及び貼付剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 貼付剤の粘着層に用いられたときに、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着剤を提供する。
【解決手段】 この粘着剤は、分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンと、ポリオルガノシロキサンと相溶する液状の有機化合物と、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基間を擬似架橋する官能基を有する擬似架橋性化合物とを含有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、粘着剤、及び皮膚を介して各種疾患の治療に要する薬物を吸収させる経皮吸収型の貼付剤に関する。
従来、貼付剤の粘着層に用いられる粘着剤として、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等の粘着剤が知られている。これらの中でも、シリコーン系粘着剤は、ガラス転移温度が低いため日常の温度領域における粘着物性の変化が少なく、化学的安定性に優れる等の長所を有する。このため、シリコーン系粘着剤は工業用のラベルやテープ等の用途に好適に利用される。さらに、シリコーン系粘着剤は、通気性や透湿性にも優れる等の長所を有するため、皮膚に対して安全な医療用粘着剤として好適に用いられている。
シリコーン系粘着剤は、一般に直線状のポリジメチルシロキサンとシリケート樹脂とを縮合反応させて得られる。また、所望の粘着物性を得ることを目的として、少量の多官能性化合物の添加や紫外線照射によりシロキサン分子鎖間に架橋構造を形成し、粘着剤の凝集性や粘着物性を調整する等の工夫がなされてきた。
例えば、末端に水酸基を有するオルガノシロキサン系ポリマーを、水酸基と反応しうる架橋剤と反応させることにより、適度な架橋構造を形成し、粘着物性を維持しつつ、保持力を向上させる皮膚貼付用のシリコーン系粘着剤が提案されている(特許文献1)。また、オルガノシロキサン系ポリマーを主成分とするシリコーン系粘着剤に少量のアクリル系ポリマーを添加し、そのアクリル系ポリマーのみを選択的に架橋することにより、シリコーン系粘着剤の凝集力を向上させる皮膚貼付用のシリコーン系粘着剤が提案されている(特許文献2)。
一方、シリコーン系粘着剤からなる粘着層を有する貼付剤において、薬物の経皮吸収性を高める試みとして、ミリスチン酸イソプロピルのような吸収促進剤を粘着層に配合して、エストラジオールプロドラッグの皮膚吸収速度を増大させる技術が開示されている(特許文献3)。
特開2004−275213号公報 特開2004−275329号公報 特開2000−63267号公報
経皮吸収を目的として薬物が配合された経皮吸収型の貼付剤は、薬物の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着層を具備する必要がある。しかしながら、多くの薬物は皮膚吸収性に乏しく、粘着層に経皮吸収促進剤を配合する場合が多い。このような経皮吸収促進剤の多くは脂溶性化合物である。よって、シリコーン系粘着剤に脂溶性の経皮吸収促進剤を配合して粘着層を形成すると、シリコーン系粘着剤及び経皮吸収促進剤は互いに相溶する。その結果、経皮吸収促進剤の配合量に依存して粘着層が柔らかくなるため、適正な粘着物性を得ることが困難であった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、貼付剤の粘着層に用いられたときに、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着層を備えた貼付剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、特定の官能基を有するシリコーン系粘着剤と擬似架橋性化合物とを組み合わせ、液状の有機化合物(例えば、粘着剤を可塑化する作用を有する化合物、又は経皮吸収促進剤)を配合することにより、貼付剤の粘着層に用いられたときに、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着剤が得られることを見出した。そして、この知見を基に更なる検討を行った結果、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の粘着剤は、分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンと、前記ポリオルガノシロキサンと相溶する液状の有機化合物と、前記ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基間を擬似架橋する官能基を有する擬似架橋性化合物とを含有する。
ここで、「擬似架橋する」とは、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と擬似架橋性化合物の官能基とが、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力等により相互作用することによって、ポリオルガノシロキサンの分子鎖間に擬似的な架橋構造を形成することをいう。擬似架橋構造を有する本発明の粘着剤は有機溶媒に溶解するが、化学結合による架橋構造を有する粘着剤では有機溶媒に溶けない不溶性ゲルが生じる。このような有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン等が挙げられる。
本発明の粘着剤によれば、ポリオルガノシロキサン及び液状の有機化合物が互いに相溶しても、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基間が擬似架橋することによって、貼付剤の粘着層に用いられたときに、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性が得られる。
擬似架橋では、例えば、有機過酸化物、有機酸金属塩又はアミノシランのような反応性に富む架橋性化合物を使用しない。このため、本発明の粘着剤では、粘着剤の粘度が急激に増大することがなく、粘着層形成時の塗工工程、乾燥工程等における取り扱い性に優れる。
また、前記擬似架橋性化合物が、分子内に2以上のアミノ基を有する化合物を含むことが好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と、擬似架橋性化合物のアミノ基とが好適に擬似架橋する。
また、前記擬似架橋性化合物が、ポリアミンを含むことが好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と、ポリアミンのアミノ基とが好適に擬似架橋する。
また、前記擬似架橋性化合物が、アミノ基を有するポリアクリレートを含むことが好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と、ポリアクリレートのアミノ基とが好適に擬似架橋する。
また、上記粘着剤は、前記擬似架橋性化合物を、粘着剤の全体量を基準として0.1〜30質量%含有することが好ましい。
擬似架橋性化合物の割合が0.1質量%未満であると、擬似架橋構造の形成が不十分となることにより凝集破壊を引き起こし易くなる傾向にある。一方、この割合が30質量%を超えると、擬似架橋が過度に進行することにより粘着剤の粘着性が低下する傾向にある。
また、前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンを含むことが好ましい。この場合、ポリジメチルシロキサンのシラノール基における水酸基と、擬似架橋性化合物の官能基とが好適に擬似架橋する。
また、上記粘着剤は、前記ポリオルガノシロキサンを、粘着剤の全体量を基準として40〜90質量%含有することが好ましい。
ポリオルガノシロキサンの割合が40質量%未満であると、粘着剤の粘着力が不足する傾向にある。一方、この割合が90質量%を超えると、液状の有機化合物の配合量を十分確保することが困難となる傾向にある。液状の有機化合物の配合量が少ない粘着剤を貼付剤の粘着層に用いると、薬効成分の経皮吸収性が低下する傾向にある。
また、上記粘着剤は、前記液状の有機化合物を、粘着剤の全体量を基準として5〜50質量%含有することが好ましい。
液状の有機化合物の割合が5質量%未満であると、粘着剤の粘着力が過度に大きくなる傾向にある。一方、この割合が50質量%を超えると、粘着剤を含む粘着層が柔らかくなり過ぎる傾向にある。
本発明の貼付剤は、支持体上に設けられ、本発明の粘着剤及び薬効成分を含有する粘着層を備える。本発明の貼付剤は、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着層を備える。
また、前記薬効成分が塩基性薬物を含むことが好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と擬似架橋性化合物の官能基とが相互作用することによりシラノール基の極性が封鎖されるので、塩基性薬物が粘着層から放出され易くなる。これは、シラノール基における水酸基と塩基性薬物の官能基との間に働く相互作用が減少すること、及び粘着剤中の極性が低下し薬効成分を取り囲む環境が疎水側に傾くことに起因する。
本発明によれば、貼付剤の粘着層に用いられたときに、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着剤、及び、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する粘着層を備えた貼付剤が提供される。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
図1は、好適な実施形態に係る貼付剤を示す斜視図である。図1に示す貼付剤1は、剥離ライナー4と、剥離ライナー4の一面側(剥離性の面側)に設けられた粘着層3とからなる積層体が、支持体2の一方面上に粘着層3側が支持体2と隣接するように設けられた構成を有する。貼付剤1は、剥離ライナー4を剥がし、粘着層3が皮膚と接するように皮膚に貼付して用いられる。
粘着層3は、本実施形態の粘着剤及びこれに分散又は溶解した薬効成分を含有する。
本実施形態の粘着剤は、分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンと、ポリオルガノシロキサンと相溶する液状の有機化合物と、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基間を擬似架橋する官能基を有する擬似架橋性化合物とを含有する。この粘着剤によれば、ポリオルガノシロキサン及び液状の有機化合物が互いに相溶しても、ポリオルガノシロキサン分子鎖間に擬似的な架橋構造が形成されることにより、粘着剤中の分子の運動性を低下させ、粘着剤の凝集力を適度に増大する効果が得られる。さらに、この粘着剤は、液状の有機化合物を含有するため、粘着層3に用いられる場合に薬効成分の皮膚吸収性に優れる。
擬似架橋では、例えば、有機過酸化物、有機酸金属塩又はアミノシランのような反応性に富む架橋性化合物を使用しない。このため、本実施形態の粘着剤では、粘着剤の粘度が急激に増大することがなく、粘着層3形成時の塗工工程、乾燥工程等における取り扱い性に優れる。また、本実施形態の粘着剤は反応性に富む架橋性化合物を含まないため、未反応の架橋剤による皮膚刺激を生じるおそれがないという利点を有する。
なお、化学結合による架橋構造を有する高分子は、架橋密度が大きくなると三次元の網目構造を形成する。この場合、溶剤にも溶けない不溶性ゲルが生じる。これに対し、擬似架橋構造を有する本実施形態の粘着剤では、粘着剤が良溶媒中に溶解することにより、殆どゲルが生じない。したがって、架橋構造と擬似架橋構造とは全く性質が異なるものであるといえる。
貼付剤1は、上述の粘着層3を備えるので、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有する。
分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンとしては、オルガノシロキサン(Si−C−O結合)を構成単位とし、末端にシラノール基を有するポリマーを好適に用いることができる。なお、末端にシラノール基を有するポリマーとしては、擬似架橋性化合物と擬似架橋構造を形成可能であれば特に制限されないが、分子中のシラノール基の一部がエンドキャッピング処理されていてもよい。
オルガノシロキサン(構成単位)中のケイ素原子の修飾官能基としては、同一又は異種の置換又は非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えばメチル基又はフェニル基等が挙げられる。さらに、ポリオルガノシロキサンの分子量は2000〜20000であることが好ましい。ここでいう分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定における標準ポリスチレン換算による重量平均分子量である。
ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と、擬似架橋性化合物の官能基とが好適に擬似架橋する。市販のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、BIO−PSA Q7−4501(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、Dow Corning 355(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンは、粘着剤の全体量を基準として、好ましくは40〜90質量%含有され、更に好ましくは45〜65質量%含有される。ポリオルガノシロキサンの割合が40質量%未満であると、粘着剤の粘着力が不足する傾向にある。一方、この割合が90質量%を超えると、液状の有機化合物の配合量を十分確保することが困難となる傾向にある。この場合、粘着剤を貼付剤に用いると、薬効成分の経皮吸収性が低下する傾向にある。
擬似架橋性化合物としては、例えば、分子内に2以上のアミノ基を有する化合物又はポリアミン等が好ましく、アミノ基を有するポリアクリレートが更に好ましい。これらの場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基とアミノ基とが好適に擬似架橋する。具体的には、例えば、有機ジアミン、有機トリアミン及びポリアミン等が好適に用いられる。
また、擬似架橋性化合物として含ホウ素化合物を用いてもよい。非水系の粘着剤においては、含ホウ素化合物の無水物を用いることが好ましい。含ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸及びその誘導体を好適に用いることができる。ホウ酸の誘導体としては、例えば、ホウ酸の塩、ホウ酸のエステル等が挙げられる。ホウ酸の塩としては、例えば、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。ホウ酸のエステルとしては、例えば、ホウ酸メチル、ホウ酸エチル、ホウ酸プロピル、ホウ酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、擬似架橋性化合物としてホウ酸を用いることが特に好ましい。
有機ジアミンとしては、炭素数2〜6のアルキレンジアミン、炭素数4〜8の脂環族ジアミン、又は芳香族ジアミンが挙げられる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等が例示される。
有機トリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン等のアルキレントリアミン等が挙げられる。
ポリアミンとしては、アミノ基を有するポリアクリレートが好ましい。これらはコポリマーであってもよく、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換された第2級アミン又は第3級アミンであってもよい。このようなポリアミンとしては、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEが挙げられる。具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体等を好適に使用することができる。
擬似架橋性化合物は、粘着剤の全体量を基準として、0.1〜30質量%含有されることが好ましい。擬似架橋性化合物の割合は、製剤の物性、皮膚への刺激性を考慮すると1〜20質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
擬似架橋性化合物の割合が0.1質量%未満であると、擬似架橋構造の形成が不十分となることにより凝集破壊を引き起こし易くなる傾向にある。一方、この割合が30質量%を超えると、擬似架橋が過度に進行することにより粘着剤の粘着性が低下する傾向にある。
液状の有機化合物としては、皮膚に対する刺激性を生じないものが好ましい。また、この液状の有機化合物は、経皮吸収促進剤、溶解剤、可塑剤としての作用を有してもよい。液状の有機化合物は、粘着剤の全体量を基準として、5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%含有されることが好ましい。液状の有機化合物の割合が5質量%未満であると、粘着剤の粘着力が過度に大きくなる傾向にある。一方、この割合が50質量%を超えると、粘着剤を含む粘着層が柔らかくなり過ぎる傾向にある。
経皮吸収促進作用を有する液状の有機化合物としては、例えば、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、プロピレングリコールモノラウレート、N−メチル−2−ピロリドン、ピロチオデカン、l−メントール、d−リモネン等が挙げられる。
可塑作用を有する液状の有機化合物としては、例えば、スクワラン、クスワレン、シリコンオイル、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル)、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ひまし油、ツバキ油、トール油、らっかせい油)等が挙げられる。
溶解作用を有する液状の有機化合物としては、ジプロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、経皮吸収促進作用を有する液状の有機化合物が好ましく、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコールモノラウレート及びピロチオデカンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
粘着剤は、必要に応じてシリコーン油を更に含有してもよい。シリコーン油は、例えば低分子量のシロキサン化合物からなり、粘着剤の粘着力を補助的に高める作用を有する。粘着剤は、シリコーン油を、粘着剤の全体量を基準として0.1〜10質量%含有することが好ましい。
粘着層3は、皮膚を介して吸収される薬物である薬効成分を含有している。この薬効成分としては、例えば、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクロジン)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル)、抗パーキンソン剤(ペルゴリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、セレギリン)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプレテノロール、サルブタモール)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン)、麻薬系鎮痛剤(フェンタニル、モルヒネ)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム)、抗痴呆薬(ドネペジル、リスペリドン、リバスチグミン、ガランタミン、イデベノン)、去痰薬(アンブロキソール)、抗不安薬(タンドスピロン)、抗精神病薬(オランザピン)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート)、乳がん予防薬(タモキシフェン)、抗肥満薬(マジンドール、シブトラミン)、不眠症改善薬(メラトニン)等が挙げられる。なお、薬効成分として、これらの薬学的に許容される塩や誘導体を使用してもよい。
これらの中でも、塩基性薬物が好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基と擬似架橋性化合物の官能基とが相互作用することによりシラノール基の極性が封鎖されるので、塩基性薬物が粘着層から放出され易くなる。これは、シラノール基における水酸基と塩基性薬物の官能基との間に働く相互作用が減少すること、及び粘着剤中の極性が低下し薬効成分を取り囲む環境が疎水側に傾くことに起因する。
薬効成分の含有割合は、治療に要する薬物量等を考慮して適宜調整される。具体的には、薬効成分を、粘着層3全体質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%含有させることができる。
また、分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンの分子鎖間において擬似架橋構造が良好に形成されるため、粘着層3は実質的に水を含有しない非水系基剤であることが好ましい。
粘着層3は、以上のような成分の他、必要に応じて、抗酸化剤、紫外線吸収剤、結晶防止剤を含有していてもよい。抗酸化剤としては、トコフェロールおよびこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が好ましい。紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が好ましい。結晶化防止剤としては、ポリビニルピロリドン等が望ましい。これら抗酸化剤、紫外線吸収剤、結晶化防止剤を含有させる場合、これらの合計の含有割合は、粘着層3の全体質量を基準として15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
支持体2としては、高分子フィルム、紙、織布、不織布等の非伸縮性又は伸縮性の材料からなるのものを使用することができる。また、剥離ライナー4と同様の材料を支持体2として用いることもできる。支持体2は、粘着層3に含まれる薬効成分の吸着や浸透の生じない材料からなることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、綿、アルミニウムシート等を支持体2として好適に用いることができる。なお、支持体2は、これらの複数を積層した積層体であってもよい。
剥離ライナー4は、貼付剤1を使用するまでの期間、粘着層3表面を保護できるものであって、粘着層3と接する側の面が使用時に剥離できる程度の剥離性を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、紙等を剥離ライナー4として好適に用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に使用できる。剥離ライナー4は、粘着層3からの剥離を容易にするために、シリコーン樹脂、界面活性剤又はフッ素で表面を離型処理したり、背割れ、ハーフカット、ミシン目等の切れ目を設けたものであってもよい。
貼付剤1は、本実施形態の粘着剤を溶媒に溶解又は均一に分散させた粘着剤溶液に、薬効成分の溶液を加えて均一となるように混合した混合液を、支持体2又は剥離ライナー3上に塗工し、混合液中の溶媒を除去して粘着層3を形成させた後、支持体2又は剥離ライナー4を粘着層3上に積層する方法で、製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、貼付剤は、支持体及び剥離ライナーの何れか一方の片面又は両面に粘着層が積層された構成であってもよいし、剥離ライナーが支持体の機能を兼ねるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[貼付剤の作製]
(実施例1)
予めエタノールに溶解させたアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名:オイドラギッドE100、ローム社製)溶液に、ポリオルガノシロキサン(商品名:BIO−PSA Q7−4501、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)及びシリコーン油(ジメチコン)を表1に示す比率(質量%)で混合した。得られた溶液にミリスチン酸イソプロピル1.8g及びフェンタニル0.12gを添加し、撹拌して粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を、フルオロカーボン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(剥離ライナー)上に塗工した後、70℃で約15分間乾燥して溶媒を除去して、表1に示す比率(質量%)で各成分を含有する厚さ150μmの粘着層を形成させた。そして、粘着層上に支持体である厚さ76.2μmのPETフィルムを貼り合わせた後、所定の形状に裁断して、貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(実施例2)
ポリオルガノシロキサンとミリスチン酸イソプロピルとの質量比を78:10とした他は、実施例1と同様にして、表2に示す比率(質量%)で各成分を含有する粘着層が形成された貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(比較例1)
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いず、ポリオルガノシロキサンとミリスチン酸イソプロピルとの質量比を63:30とした他は、実施例1と同様にして、表3に示す比率(質量%)で各成分を含有する粘着層が形成された貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(比較例2)
エンドキャッピングされ、分子中にシラノール基を有しないポリオルガノシロキサン(商品名:BIO−PSA Q7−4201、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)、ミリスチン酸イソプロピル及びフェンタニルを表4に示す比率(質量%)で混合し、撹拌して粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を、フルオロカーボン処理したPET製フィルム(剥離ライナー)上に塗工した後、70℃で約15分間乾燥して溶媒を除去して、表4に示す比率(質量%)で各成分を含有する厚さ100μmの粘着層を形成させた。そして、粘着層上に支持体である厚さ50.8μmのPETフィルムを貼り合わせた後、所定の形状に裁断して、貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(比較例3)
ポリオルガノシロキサン(商品名:BIO−PSA Q7−4501、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)、ミリスチン酸イソプロピル及びフェンタニルを表5に示す比率(質量%)で混合し、撹拌して粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を、フルオロカーボン処理したPET製フィルム(剥離ライナー)上に塗工した後、110℃で約15分間乾燥して溶媒を除去して、表5に示す比率(質量%)で各成分を含有する厚さ100μmの粘着層を形成させた。そして、粘着層上に支持体である厚さ50.8μmのPETフィルムを貼り合わせた後、所定の形状に裁断して、貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(比較例4)
ポリオルガノシロキサンとミリスチン酸イソプロピルとの質量比を90:8とした他は、比較例3と同様にして、表6に示す比率(質量%)で各成分を含有する粘着層が形成された貼付剤を得た。
Figure 2007031333

(比較例5)
ポリオルガノシロキサンとミリスチン酸イソプロピルとの質量比を88:10とした他は、比較例3と同様にして、表7に示す比率(質量%)で各成分を含有する粘着層が形成された貼付剤を得た。
Figure 2007031333

[貼付剤の評価]
(皮膚透過性の評価)
ヘアレスマウスから剥離した背部皮膚の角質層側に実施例1、2及び比較例1〜5において作製した貼付剤を貼付し、背部皮膚の真皮側をレセプター層側へ向けてフロースルー型拡散セル(有効面積5cm)に装着した。このとき、皮膚表面の温度が32℃となるように、温水をセルの外周部に循環させた。レセプター層には、生理食塩水を使用し、10ml/時間(hr)の速さで1時間毎に12時間後までレセプター溶液をサンプリングした。各時間毎に得られたレセプター溶液について、高速液体クロマトグラフ法により薬物濃度を測定し、この測定結果を基に1時間当たりの皮膚透過速度を決定した。結果を表8にまとめて示す。
(粘着物性の評価)
<粘着性>
各貼付剤を縦横それぞれ1cmの試験片に裁断した後、理学工業製プローブタックテスター(No.1216S)を用いて以下の条件でタック値を測定した。結果を表8にまとめて示す。
・プローブ:ベークライト
・接着時間:1秒
・引き下げ速度:5mm/sec
・圧着加重:20g
<凝集性>
各貼付剤を直径25mmの円形の試験片に裁断した後、剥離ライナーを剥離したときの糸引きの状態を観測した。観測結果に基づいて、以下の基準で凝集性を判定した。
○:膏体残りなし。
△:やや糸引きあり。
×:凝集破壊(投錨破壊)あり。
また、粘着層をベークライト板に圧着した後、ベークライト板を剥離したときの糸引きの状態を観測した。観測結果に基づいて、以下の基準で凝集性を判定した。
○:膏体残りなし。
△:やや糸引きあり。
×:糸引きあり。
なお、上記の基準において、○が粘着層としての凝集性が最も良好であり、以下△、×の順で凝集性が相対的に劣るものとなることを意味する。結果を表8にまとめて示す。
Figure 2007031333

表8に示すように、実施例1及び2と比較例1〜5とを比較すると、擬似架橋性化合物が配合された粘着剤は、擬似架橋性化合物が配合されていない粘着剤に比べて、薬効成分の皮膚吸収性に優れるとともに、適度な粘着性及び凝集性を有していた。なお、ミリスチン酸イソプロピルの比率(質量%)が増大するに連れて皮膚透過速度が増大する傾向にあった。これに対して、ポリオルガノシロキサン中にシラノール基が無い比較例2の貼付剤は、凝集性に劣る傾向にあった。また、比較例3〜5の貼付剤では、皮膚透過速度が不十分となる傾向にあった。
好適な実施形態に係る貼付剤を示す斜視図である。
符号の説明
1…貼付剤、2…支持体、3…粘着層、4…剥離ライナー。

Claims (10)

  1. 分子中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンと、
    前記ポリオルガノシロキサンと相溶する液状の有機化合物と、
    前記ポリオルガノシロキサンのシラノール基における水酸基間を擬似架橋する官能基を有する擬似架橋性化合物と、
    を含有する、粘着剤。
  2. 前記擬似架橋性化合物が、分子内に2以上のアミノ基を有する化合物を含む、請求項1に記載の粘着剤。
  3. 前記擬似架橋性化合物が、ポリアミンを含む、請求項1又は2に記載の粘着剤。
  4. 前記擬似架橋性化合物が、アミノ基を有するポリアクリレートを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤。
  5. 前記擬似架橋性化合物を、粘着剤の全体量を基準として0.1〜30質量%含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤。
  6. 前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤。
  7. 前記ポリオルガノシロキサンを、粘着剤の全体量を基準として40〜90質量%含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤。
  8. 前記液状の有機化合物を、粘着剤の全体量を基準として5〜50質量%含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤。
  9. 支持体上に設けられ、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着剤及び薬効成分を含有する粘着層を備える、貼付剤。
  10. 前記薬効成分が塩基性薬物を含む、請求項9に記載の貼付剤。
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