JP2007019368A - アレイ型半導体レーザおよびそれを備えた光学素子、並びに表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 強度分布が均一化された合成NFPを有するレーザ光を出射させることができるアレイ型半導体レーザを提供する。
【解決手段】 アレイ型半導体レーザ10は、第1クラッド層12、活性層13および第2クラッド層14が積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状導波路21が並列的に配列されてなる。複数の導波路21(21A〜21D)は、その幅W1〜W4が10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路幅とは異なっている。各導波路21A〜21Dにおいて、各NFP22A〜22Dのリップル成分は各導波路幅Wiに依存してずれる。NFP22A〜22Dが重ね合わさると合成NFPのリップル成分の凹凸が平坦化される。
【選択図】 図1
【解決手段】 アレイ型半導体レーザ10は、第1クラッド層12、活性層13および第2クラッド層14が積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状導波路21が並列的に配列されてなる。複数の導波路21(21A〜21D)は、その幅W1〜W4が10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路幅とは異なっている。各導波路21A〜21Dにおいて、各NFP22A〜22Dのリップル成分は各導波路幅Wiに依存してずれる。NFP22A〜22Dが重ね合わさると合成NFPのリップル成分の凹凸が平坦化される。
【選択図】 図1
Description
本発明は複数の帯状の導波路を有するアレイ型半導体レーザに係り、特に、導波路幅が10μm以上の所謂ブロードエリア型のアレイ型半導体レーザおよびそれを備えた光学素子、並びに表示装置に関する。
一般に、この種の半導体レーザでは、高次モードが存在することやフィラメント発光を許容するため、その近視野像(NFP ;Near Field Pattern)が均一な強度分布を持たず、振幅の大きいリップル成分(波状成分)を有するものであることが多い。図10はそのようなNFPの一例を表したものである。このようにNFPにリップル成分が存在すると、複数のレーザにより高出力のアレイ型半導体レーザ(以降、アレイレーザという)を実現しようとする場合、個々のNFPが重なり合ってリップル成分が強調されることが多くなる。リップル成分が強調されてしまうと、アレイレーザの全体のNFP(合成NFP)の強度分布を均一となるように制御することは容易ではない。合成NFPの強度分布が不均一であると、例えば、このアレイレーザをディスプレイや印刷機器等の光源として利用した場合、不均一な明暗強度、ちらつきおよびスペックルノイズ(ギラツキ感)等を感じさせ、高画質の映像を実現することが困難になる。
このようなことから、従来、例えば以下のような対策がなされている。図11は、従来のインデックスガイド型アレイレーザ100を表すものであり、基板101の上に、n型クラッド層102,活性層103,p型クラッド層104およびp側コンタクト層105をこの順に積層し、p側コンタクト層105およびp型クラッド層104の一部をパターニングすることにより複数の帯状導波路(エミッタ)106を並列的に配列すると共に、基板101の裏面にn側電極107を設けたものである。各導波路106のNFP108は、互いに結合することなく独立なモードで駆動されるものとなっている。複数の導波路106の幅Wは一定であり、各エミッタ106からほぼ同等の光が出射される。各エミッタ106からのNFPの強度分布は一般的には図10に示したように不均一である。そこで、この種のアレイレーザ100では多層膜の均一性などを向上させたり、p型クラッド層104の厚みを調整する(例えば、特許文献1参照)ことにより、図12に示したインデックスガイド型シングルエミッタ106のNFPの強度分布のように、比較的よく整形された強度分布のNFPが得られるものとする。
ゲインガイド型のアレイレーザについても同様の問題がある。図13に示したアレイレーザ200は、基板201上に、n型クラッド層202,活性層203,p型クラッド層204およびp型コンタクト層205をこの順に積層すると共に、p型コンタクト層205およびp型クラッド層204を含む領域に電流ブロック層206を設けることにより、細い帯状の電流通路204Aを備えた複数の導波路207を並列的に配列したものである。p型コンタクト層205および電流ブロック層206の上には各導波路207に共通のp側電極208、基板201の裏面にはn側電極209がそれぞれ設けられている。このアレイレーザ200の各導波路207のNFP210の強度分布についても、上記インデックスガイド型アレイレーザ100のものと同様に、一般的には不均一(図10)であるが、レーザを構成する多層膜の均一性などを向上させることにより、図14に示したゲインガイド型シングルエミッタのNFPの強度分布のように比較的よく整形されたものが得られる。
特開2004−303901号公報
上述のように、インデックスガイド型およびゲインガイド型のいずれのアレイレーザにおいても、多層膜の均一性を向上させることによりNFPの強度分布を比較的整形できるとされるが、このような方法を用いたとしてもリップル成分は多く残り、均一な強度分布の合成NFPを実現できているとは言えない。このリップル成分を補正し除去するために、ホモジナイザーと呼ばれる光学素子を用いて強度分布を均一にする方法が検討されている。しかしながら、このホモジナイザーを用いると基本的に光のロスが生じることから、光源の光量を有効に利用したい用途には向かない、また光学系全体が大きくなるなどの問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、大型の光学系などを用いることなく、各導波路のNFPからなる合成NFPの強度分布を均一にすることができるアレイ型半導体レーザおよびそれを備えた光学素子を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、不均一な明暗強度、ちらつきやスペックルノイズの発生を抑制することができ、よって、高画質の映像を得ることのできる表示装置を提供することにある。
本発明によるアレイ型半導体レーザは、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層がこの順に積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状導波路が並列的に配列されてなるものであり、複数の導波路の幅をそれぞれ10μm以上とし、かつ少なくとも1つの導波路の幅を他の導波路の幅とは異なるようにしたものである。ここで、導波路それぞれの幅Wi(μm)は、複数の導波路の幅の平均値をW(μm)とすると、W−9<Wi<W+9の関係を満たすことが好ましい。
このアレイ型半導体レーザでは、各導波路のNFPのリップル成分がそれぞれの導波路幅Wiに依存してずれ、かつ各導波路幅Wiが上記関係を満たすことにより、各導波路へ注入される電流の閾値の変化が抑制される。
本発明による光学素子は、上記本発明のアレイ型半導体レーザと、前記導波路のそれぞれに対向してレンズが設けられると共に各導波路からの出射光を平行光線に変換するレンズアレイと、レンズアレイから出力された複数の平行光線を集光すると共に焦点面上でその平行光線を重ね合わせてアレイ型半導体レーザ全体のNFPの強度分布を均一化する対物レンズとを備えたものである。
この光学素子では、上記アレイ型半導体レーザを備えていることにより、各導波路のNFPのリップル成分はそれぞれの導波路幅Wiに依存してずれる。このリップル成分がずれた出射光はレンズアレイによって平行光線に変換されたのち、この平行光線が対物レンズによって集光されると共にその焦点面上でリップル成分の凹凸が有限幅を持って重ね合わせられる。これにより、合成NFPの強度分布が均一化され、いわゆるトップハット形状となる。
また、本発明による表示装置は、本発明のアレイ型半導体レーザを備えたものであり、このアレイ型半導体レーザを備えていることにより、スクリーン上に投影されるレーザ光の強度分布が均一化されたものとなる。
本発明のアレイ型半導体レーザによれば、複数の導波路はその幅が10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路幅とは異なっているので、各導波路のNFPのリップル成分の凹凸をずらすことができ、合成NFPを均一化されたものとすることができる。また、導波路幅Wiを変化させただけであるので、精密で巧妙なプロセス等を必要とせず、コスト的にも有利であり、例えば、ディスプレイ、印刷機器および加工機器等の光源として好適に利用することができる。
本発明の光学素子によれば、上記アレイ型半導体レーザ、各導波路に対応したレンズアレイ、および対物レンズを設けるだけの簡素な構成としたので、従来の光学系をそのまま利用して、各導波路からの出射光のリップル成分の凹凸を焦点面上で重ね合わせることができ、強度分布が均一化された合成NFPを有するレーザ光に変換することができる。
また、本発明の表示装置によれば、上記アレイ型半導体レーザを備えるようにしたので、合成NFPの強度分布が均一化されたレーザ光を用いることができ、不均一な明暗強度、ちらつきおよびスペックルノイズ等を抑制することができる。これにより高画質の映像を実現することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ10の構造の一部を表すものである。このアレイ型半導体レーザ10はインデックスガイド構造のものであり、基板11の上に、n型クラッド層(第1クラッド層)12,活性層13,p型クラッド層(第2クラッド層)14およびp側コンタクト層15をこの順に積層したのち、p側コンタクト層15およびp型クラッド層14の一部をリッジ形状に形成したものであり、並列的に配列された複数の帯状導波路21(21A,21B,21C,21D)を有する。導波路の本数は、例えば25本/cm〜33本/cm程度である。各帯状導波路21(21A〜21D)の直下に位置する活性層13の一端面が発光端面となっている。p側コンタクト層15の上にはp側電極(図示せず)、基板11の裏面にはn側電極16が形成されている。なお、アレイ型半導体レーザ10は、その構成材料については特に限定されるものではないが、本実施の形態では赤系材料(GaInP系材料)を用いた場合について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ10の構造の一部を表すものである。このアレイ型半導体レーザ10はインデックスガイド構造のものであり、基板11の上に、n型クラッド層(第1クラッド層)12,活性層13,p型クラッド層(第2クラッド層)14およびp側コンタクト層15をこの順に積層したのち、p側コンタクト層15およびp型クラッド層14の一部をリッジ形状に形成したものであり、並列的に配列された複数の帯状導波路21(21A,21B,21C,21D)を有する。導波路の本数は、例えば25本/cm〜33本/cm程度である。各帯状導波路21(21A〜21D)の直下に位置する活性層13の一端面が発光端面となっている。p側コンタクト層15の上にはp側電極(図示せず)、基板11の裏面にはn側電極16が形成されている。なお、アレイ型半導体レーザ10は、その構成材料については特に限定されるものではないが、本実施の形態では赤系材料(GaInP系材料)を用いた場合について説明する。
基板11は、例えば、積層方向における厚み(以下、単に厚みという)が100μmであり、ケイ素(Si)あるいはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaAsにより構成されている。n型クラッド層12は、例えば、厚みが2μmであり、ケイ素あるいはセレンなどのn型不純物を添加したn型AlInP混晶により構成されている。活性層13は、例えば、厚みが5nmであり、GaInP混晶により構成されている。活性層13に含まれるインジウム組成は、例えば0.5程度であることが好ましい。基板11を構成するGaAsと格子整合させることができるからである。
p型クラッド層14は、例えば、厚みが1.5μmであり、亜鉛あるいはマグネシウムなどのp型不純物を添加したp型AlInP混晶により構成されている。p側コンタクト層15は、例えば、厚みが0.3μmであり、亜鉛またはマグネシウムなどのp型不純物を添加したp型GaAsにより構成されている。 n側電極16は、例えばAuGe:Niおよび金(Au)を順次積層して熱処理により合金化した構造を有しており、基板11と電気的に接続されている。
また、本実施の形態では、各帯状導波路21A〜21Dは、その幅が10μm以上であり、かつそれぞれの幅(発光端面の幅)Wi(μm)(i=1〜4)は他の導波路幅とは異なっているものである。図1は、導波路幅W1〜W4(μm)がそれぞれ異なる4種類の帯状導波路(21A,21B,21C,21D)を繰り返し配列した場合を示している。なお、導波路幅とNFPの幅とはほぼ同一の幅とみなしている。
図2には各導波路(21A〜21D)のうちの平均導波路幅W(μm)を有する導波路のNFPの強度分布を示した。この強度分布のリップル成分の隣り合うピーク(凸部)間隔Pは高々12μm程度である。この間隔Pを多様に変化させた強度分布をより多く重ね合わせると、互いの凹部および凸部が補完し合って合成NFPの強度分布のリップル成分が均一化(平坦化)される。間隔Pは導波路幅Wiを変化させることにより調整可能である。しかし、導波路幅Wiをずらし過ぎると、閾値が変化して各導波路(21A〜21D)の出力変化が生じる虞や、青色系の導波路幅の狭い(例えば10μm)導波路のようにずらすことができる範囲が制限されること等について考慮する必要がある。よって、導波路21それぞれの幅Wi(μm)は、複数の導波路の幅の平均値をWとすると、式(1)に示した関係を満たすことが好ましい。
W−9<Wi<W+9…(1)
具体的には、例えば、W1=94μm、W2=97μm、W3=100μm、W4=103μmとして重ね合わせる場合、各導波路幅Wiの好ましい範囲は89.5μm<Wi<107.5μm(W=98.5μm)であり、各導波路幅W1〜W4は上記範囲に含まれているので、合成NFPの強度分布は好適に均一化される。
W−9<Wi<W+9…(1)
具体的には、例えば、W1=94μm、W2=97μm、W3=100μm、W4=103μmとして重ね合わせる場合、各導波路幅Wiの好ましい範囲は89.5μm<Wi<107.5μm(W=98.5μm)であり、各導波路幅W1〜W4は上記範囲に含まれているので、合成NFPの強度分布は好適に均一化される。
このアレイ型半導体レーザ10は、次のようにして製造することができる。
まず、図3(A)に示したように、上述した厚みおよび材料よりなる基板11の表面に、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属気相成長)法により、それぞれ上述した厚みおよび材料よりなるn型クラッド層12,活性層13,p型クラッド層14,p側コンタクト層15およびp側電極(図示せず)を順に積層する。
続いて、図3(B)に示したように、フォトリソグラフィ処理およびエッチング処理を用いてp型クラッド層14の一部を選択的に除去(パターニング)することにより、細い帯状の導波路21を形成する。このとき、各導波路幅Wiを10μm以上とすると共に少なくとも1つの導波路幅を他の導波路幅とは異なるようにする。より好ましくは、各導波路幅Wiを上記式(1)に示した関係を満たすように形成する。
最後に、基板11の裏側を研削して基板11の厚みを例えば100μm程度としたのち、基板11の裏側にn側電極16を形成する。また、導波路21の延在方向において対向する一対の共振器端面に図示しない反射鏡膜を成膜することにより発光端面およびリア端面(図示せず)を形成する。これにより、図1に示したアレイ型半導体レーザ10が完成する。
本実施の形態のアレイ型半導体レーザ10では、各導波路(21A〜21D)のp側電極とn側電極16との間に所定の電圧が印加されると、インデックスガイド構造の構造的作用により電流狭窄され、活性層13に電流が注入されて、電子−正孔再結合により発光が起こる。この光は、図示しない一対の反射鏡膜により反射され、その間を往復してレーザ発振を生じ、各発光端面から出射光が外部に放たれる。このとき、各出射光のそれぞれのNFP22(22A,22B,22C,22D)の強度分布は不均一になっている(図12参照)。
しかしながら、本実施の形態では、導波路幅W1〜W4が互いに異なっていることから、各導波路幅Wiに従って各NFP(22A〜22D)の横モードのみが変化し、各NFP(22A〜22D)の強度分布のリップル成分がずれる。よって、各NFP(22A〜22D)の互いのリップル成分の凹凸が少しずつ重なり合い、図4に示したようにアレイ型半導体レーザ10の合成NFPの強度分布のリップル成分が平坦化され、いわゆるトップハット形状となる。
このように本実施の形態のアレイ型半導体レーザ10によれば、各導波路幅Wiが10μm以上であると共に、全ての導波路幅が他の導波路幅とは異なっているので、均一化された合成NFPを構成することのできるNFP22A〜22Dを導波路21A〜21Dから出射させることができる。
特に、各導波路幅Wiが上記式(1)に示した関係を満たすようにすれば、各導波路21A〜21Dへの注入電流値はほぼ等しくなることから各導波路21A〜21Dの動作点(光出力値)もほぼ同レベルとなり、各NFP22A〜22D相互間に大幅な差異が生じるのを抑制することができる。
加えて、導波路幅Wiを変化させただけのものであるので、精密で巧妙なプロセス等を用いることなく、低コストで容易に作製することができる。よって、例えば、ディスプレイ、印刷機器および加工機器等の光源として利用することができる。
以下、本発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態の説明において、第1の実施の形態と同一構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
〔第2の実施の形態〕
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ30の構造の一部を表すものである。アレイ型半導体レーザ30はゲインガイド構造であり、基板11上に、n型クラッド層12,活性層13,p型クラッド層14およびp型コンタクト層15をこの順に積層すると共に、p型クラッド層14を含む領域に電流ブロック層31および細い帯状の電流通路14Aを設けたものであり、並列的に配列された複数の導波路41(41A,41B,41C,41D)を有する。更に、各導波路41A〜41Dに共通して、p型コンタクト層15および電流ブロック層31の上にはp側電極32、基板11の裏面にはn側電極16がそれぞれ設けられている。活性層13の電流通路14Aに対応する部分の一方の端面が発光端面となっている。本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、アレイ型半導体レーザ30を構成する材料については特に限定されるものではないが、ここでは赤外系材料(AlGaAs系材料)を用いた場合について説明する。
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ30の構造の一部を表すものである。アレイ型半導体レーザ30はゲインガイド構造であり、基板11上に、n型クラッド層12,活性層13,p型クラッド層14およびp型コンタクト層15をこの順に積層すると共に、p型クラッド層14を含む領域に電流ブロック層31および細い帯状の電流通路14Aを設けたものであり、並列的に配列された複数の導波路41(41A,41B,41C,41D)を有する。更に、各導波路41A〜41Dに共通して、p型コンタクト層15および電流ブロック層31の上にはp側電極32、基板11の裏面にはn側電極16がそれぞれ設けられている。活性層13の電流通路14Aに対応する部分の一方の端面が発光端面となっている。本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、アレイ型半導体レーザ30を構成する材料については特に限定されるものではないが、ここでは赤外系材料(AlGaAs系材料)を用いた場合について説明する。
基板11およびn側電極16は、第1の実施の形態と同様の材料により構成されている。n型クラッド層12は、例えば、厚みが2μmであり、ケイ素あるいはセレンなどのn型不純物を添加したn型AlGaAs混晶、具体的にはn型Al0.4 Ga0.6 Asより構成されている。活性層13は、例えば、厚みが5nmであり、AlGaAs混晶、具体的にはn型Al0.07Ga0.93Asより構成されている。p型クラッド層14は、例えば、厚みが1.5μmであり、亜鉛あるいはマグネシウムなどのp型不純物を添加したp型AlGaAs混晶、具体的にはp型Al0.4 Ga0.6 Asより構成されている。電流ブロック層31は、例えばSiO2 などにより構成されている。p側電極32は、例えばチタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)が順次積層された構造を有している。
本実施の形態における各導波路41A〜41Dのそれぞれの導波路幅Wi(W1〜W4)についても上記実施の形態で説明したようになっており、更には上記式(1)を満たしていることが好ましい。この導波路幅Wi(W1〜W4)は、隣り合う電流ブロック層31同士を所定の間隔で隔てることにより調整可能である。図5は、導波路幅W1〜W4がそれぞれ異なる4種類の導波路41を繰り返し配列した場合を示している。
このアレイ型半導体レーザ30は、次のようにして製造することができる。
まず、図6(A)に示したように、上述した厚みおよび材料よりなる基板11の表面に、上記実施の形態と同様の方法を用いて、それぞれ上述した厚みおよび材料よりなるn型クラッド層12,活性層13,p型クラッド層14およびp型コンタクト層15を順に積層する。
続いて、図6(B)に示したように、エッチングを行い、p型コンタクト層15およびp型クラッド層14の一部を選択的に除去し、細い帯状の電流通路14Aを形成する。このとき、本実施の形態においても上記実施の形態と同様に導波路幅W1〜W4を全て異なるようにすると共にその順で繰り返して形成する。そののち、図6(C)に示したように、電流通路14Aの両側の凹部に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法を用いて、上述した材料を積層することにより電流ブロック層31を形成する。
続いて、電流通路14Aおよび電流ブロック層31上には例えば真空蒸着法により、上述した材料を積層することによりp側電極32を形成する。また、上記実施の形態と同様にして、基板11の裏側にはn側電極16を形成し、導波路41の延在方向において対向する一対の共振器端面には発光端面およびリア端面(図示せず)を形成する。これにより、図5に示した半導体レーザ30が完成する。
本実施の形態のアレイ型半導体レーザ30では、各導波路(41A〜41D)に共通のn側電極16とp側電極32との間に所定の電圧が印加されると、ゲインガイド構造40の構造的作用(電流通路14Aの作用)により電流狭窄され、上述したように、発光が起こったのち、各発光端面から出射光が外部に放たれる。このとき、各出射光のそれぞれのNFP42は両端に際立った凸部を有する強度分布となっている(図14)。しかしながら、本実施の形態においても上記実施の形態と同様に導波路幅(W1〜W4)が全て異なっていることから、図4に示したように、アレイ型半導体レーザ30の合成NFPの強度分布のリップル成分が平坦化され、いわゆるトップハット形状となる。
このように本実施の形態では、各導波路幅Wi(Wi≧10μm)が異なっていると共に各導波路(41A〜41D)に共通のp側電極32を備えているので、各導波路(41A〜41D)へ注入される電流の閾値の変化を抑制しつつ、均一化された合成NFPを構成することのできるNFP42を導波路41から出射させることができる。更に、各導波路幅Wiが上記式(1)に示した関係を満たすようにすれば、各導波路(41A〜41D)への注入電流値はより等しくなり、各NFP(42A〜42D)相互間の大幅な差異をより小さくすることができる。
〔第3の実施の形態〕
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ50の構造の一部を表すものである。このアレイ型半導体レーザ50は混成導波路51を有するもので、第1の実施の形態(インデックスガイド構造)の導波路51A,51Cと、第2の実施の形態(ゲインガイド構造)の導波路51B,51Dとを交互に繰り返し配列したものである。本実施の形態においても上記第1および第2の実施の形態と同様に、アレイ型半導体レーザ50を構成する材料については特に限定されるものではないが、ここでは第1の実施の形態と同様の赤系材料を用いている。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るアレイ型半導体レーザ50の構造の一部を表すものである。このアレイ型半導体レーザ50は混成導波路51を有するもので、第1の実施の形態(インデックスガイド構造)の導波路51A,51Cと、第2の実施の形態(ゲインガイド構造)の導波路51B,51Dとを交互に繰り返し配列したものである。本実施の形態においても上記第1および第2の実施の形態と同様に、アレイ型半導体レーザ50を構成する材料については特に限定されるものではないが、ここでは第1の実施の形態と同様の赤系材料を用いている。
混成導波路51のそれぞれの導波路幅Wiについても上記第1および第2実施の形態で説明したようになっており、上記式(1)を満たしていることが好ましい。更に、ゲインガイド構造の導波路幅W2,W4を狭くすると共に、インデックスガイド構造の導波路幅W1,W3を広くすることが好ましい。各導波路51A〜51Dの閾値の差が生じるのを抑制することができるからである。
このアレイ型半導体レーザ50では、p側コンタクト層15およびp側電極32と混成導波路51に共通のn側電極16との間に所定の電圧が印加されると、インデックスガイド構造およびゲインガイド構造によりそれぞれ電流狭窄され、上述したように、発光が起こったのち、各発光端面から出射光が外部に放たれる。このとき、各出射光のそれぞれのNFP52は不均一な強度分布となっている(図12,図14)。しかしながら、本実施の形態においても、上記実施の形態と同様に導波路幅(W1〜W4)が互いに異なっていることから、図4に示したようにアレイ型半導体レーザ50の合成NFPの強度分布のリップル成分が平坦化され、トップハット形状となる。
なお、ゲインガイド構造の強度分布の土台部分(リップル成分よりも下の部分)は、インデックスガイド構造のものよりも比較的不安定であり(図12,図14)、経時的な「揺らぎ(フラクチューション)」が生じ易いという特性を有している。一方、インデックスガイド構造の導波路のみで構成されたアレイ型半導体レーザ10をディスプレイ用の光源として用いた場合、「スペックルノイズ(ギラツキ感)」等が感じられる場合がある。
しかしながら、本実施の形態では、上述したようにインデックスガイド構造とゲインガイド構造とを混在させて本来かなり形状の異なるNFP(52A,52C)(図12)およびNFP(52B,52D)(図14)を重ね合わせている。これにより、比較的安定な土台部分を有するインデックスガイド構造のNFP(52A,52C)により合成NFPの強度分布の土台部分が形成される。よって、ゲインガイド構造のみにより構成した場合(アレイ型半導体レーザ30)に生じる揺らぎが緩和される。また、「揺らぎ」のあるゲインガイド構造のNFP(52B,52D)を重畳させることにより、さらに合成NFPが均一化されると共にスペックルノイズが抑制される。以上のように、本実施の形態のアレイ型半導体レーザ50では、両構造の有する欠点同士が互いに補完し合い、いずれか一方の構造のみで構成されるアレイ型半導体レーザ10,30よりも性能が向上する。
このように本実施の形態のアレイ型半導体レーザ50によれば、各導波路幅Wiを10μm以上とすると共に、1つの導波路幅Wiが他の導波路幅とは異なるようにしたので、均一化された合成NFPを構成することのできるNFP52を導波路51から出射させることができる。また、インデックスガイド構造およびゲインガイド構造からなる混成導波路51を備えているので、「揺らぎ」および「スペックルノイズ」を抑制することができる。
更に、インデックスガイド構造の導波路幅W1,W3を広くすると共にゲインガイド構造の導波路幅W2,W4を狭くすることにより、閾値の差が生じるのを抑制することができる。
以下、上記アレイ型半導体レーザを含む光学素子について説明する。
図8に示した光学素子60は、アレイ型半導体レーザ61、複数のレンズアレイ62および対物レンズ63をこの順に互いに隔てて配置したものである。アレイ型半導体レーザ61には光軸Aと平行に複数の導波路61A,61Bが設けられている。この導波路61A,61Bのそれぞれに対応してレンズ62A,62Bが配置されている。本実施の形態では、便宜上、アレイ型半導体レーザ61が2つの導波路61A,61Bにより構成されている場合について説明する。なお、図8では縦方向(紙面に対して垂直方向)の光学成分を省略している。
アレイ型半導体レーザ61は、上記第1ないし第3の実施の形態のアレイ型半導体レーザ10,30,50と同様の構成を有するものである。すなわち、アレイ型半導体レーザ61に設けられた各導波路61A,61Bは、互いに異なる10μm以上の導波路幅Wi(W1,W2)を有している。
レンズアレイ62は、各NFPのリップル成分が互いにずれている出射光h1,h2を、そのずれを保ちつつ平行光線h3,h4に変換するものである。対物レンズ63は、平行光線h3,h4を集光したのち、焦点面(焦点位置)64上で重ね合わせるためのものである。
本実施の形態の光学素子60では、各導波路幅Wi(W1,W2)が異なっていることから、NFPのリップル成分が互いにずれた出射光h1,h2が各導波路61A,61Bから出射される。出射光h1,h2はそれぞれレンズアレイ62A,62Bに到達したのち、互いのリップル成分のずれを保ちつつ平行光線h3,h4に変換される。変換された各平行光線h3,h4は対物レンズ63に集光されたのち、焦点面64上で各リップル成分の凹凸部分が少しずつ重ね合わせられる。これにより、合成NFPのリップル成分が平坦化され、いわゆるトップハット形状となる。合成NFPのリップル成分は、重ね合わせる出射光h1,h2の数が多い程、すなわちアレイ型半導体レーザ61を構成する導波路61の本数が多い程より平坦化される。なお、焦点面64は、幾何光学的に表したものであるため無限小になっているが、実際には有限幅を有している。
このように本実施の形態の光学素子60によれば、アレイ型半導体レーザ61、各導波路61A,61Bに対応した複数のレンズアレイ62A,62Bおよび対物レンズ63をこの順に配置しているだけであるので、従来の簡素な光学系をそのまま利用することができ、各導波路61A,61Bからの出射光h1,h2を焦点面64上でリップル成分の凹凸を重ね合わせることができ、強度分布が均一化された合成NFPを有するレーザ光に変換することができる。更に、アレイ型半導体レーザ61としてアレイ型半導体レーザ50を用いた場合には、合成NFPの「揺らぎ」および「スペックルノイズ」を抑制することができる。よって、ディスプレイ、印刷機器および加工機器等の光源として好適に用いることができる。
図9は、上記アレイ型半導体レーザを用いた表示装置70の概略構成を表すものである。この表示装置70は、GLV(Grating Light Valve) レーザディスプレイと呼ばれ、例えば、光学素子60(アレイ型半導体レーザ10,30,50)を含む光源71と、この光源71とスクリーン72との間に設けられた光学系80とを備えている。光学系80は、光源71からスクリーン72への光路中に配設され、例えば、照明レンズ81、GLV82、投射レンズ83および走査ミラー84を有している。
この表示装置70では、光源71(アレイ型半導体レーザ10)からの光は、照明レンズ81、GLV82、投射レンズ83および走査ミラー84を通ってスクリーン72に焦点を結び、例えば、スクリーン72の視聴者側から見て左上から順に走査することにより画像表示される。
このように本実施の形態の表示装置70では、光源71に光学素子60(アレイ型半導体レーザ10,30,50)が組み込まれているので、合成NFPの強度分布が均一化された出射光を出射させることができ、これにより、不均一な明暗強度、ちらつきおよびスペックルノイズ等を抑制することができる。よって、高画質(200万画素)の映像を実現することが可能になる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、アレイ型半導体レーザ10,30,50の各層の材料としてGaInP系(赤系)材料あるいはAlGaAs系(赤外系)材料等の長波長系材料により構成される場合について説明したが、材料は特に限定されるものではなく、GaN系(青系)材料等の短波長系等により構成されていてもよい。
更に、例えば、上記実施の形態では、アレイ型半導体レーザ10,30,50の構成を具体的に挙げて説明したが、バッファ層など他の層を更に備えていてもよい。また、上記実施の形態において説明した成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
また、第5の実施の形態では、光学素子60(アレイ型半導体レーザ10,30,50)を備えた表示装置70を単独で用いる場合について説明したが、例えば、複数の表示装置70を用いて大型スクリーン用の上映システムを構成するようにしてもよい。これにより、例えば、大型スクリーンの左部分,中央部分または右部分のうちのいずれかを担当する各表示装置70から投影される映像をつなぎ合せて高画質の巨大映像を表示することができる。
また、第5の実施の形態では、アレイ型半導体レーザ10,30,50および光学素子60を表示装置70の光源として用いる場合について説明したが、例えば、印刷機器あるいは加工用レーザ機器などの光源にも適用することができる。
更には、上記実施の形態ではいずれも各帯状導波路の幅が互いに異なるものとしたが、少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路幅と異なるものであればよい。
10,30,50,61…アレイ型半導体レーザ、11…基板、12…n型クラッド層、13…活性層、14…p型クラッド層、14A…電流通路、15…p側コンタクト層、16…n側電極、21,41,61…帯状導波路、31…電流ブロック層、32…p側電極、51…混成導波路、22,42,52…NFP、Wi,W1〜W4…導波路幅、60…光学素子、62…レンズアレイ、63…対物レンズ、64…焦点位置(合成NFP)h1,h2…出射光、h3,h4…平行光線、70…表示装置、71…光源、72…スクリーン、80…光学系、81…証明レンズ、82…GLV、83…投射レンズ、84…走査ミラー
Claims (7)
- 第1クラッド層、活性層および第2クラッド層がこの順に積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状導波路が並列的に配列されてなるアレイ型半導体レーザであって、
前記複数の導波路の幅はそれぞれ10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路の幅とは異なる
ことを特徴とするアレイ型半導体レーザ。 - 前記導波路それぞれの幅Wi(μm)は、複数の導波路の幅の平均値をW(μm)とすると、
W−9<Wi<W+9
の関係を満たす
ことを特徴とする請求項1記載のアレイ型半導体レーザ。 - 前記複数の導波路はインデックスガイド構造を有する
ことを特徴とする請求項1記載のアレイ型半導体レーザ。 - 前記複数の導波路はゲインガイド構造を有する
ことを特徴とする請求項1記載のアレイ型半導体レーザ。 - 前記複数の導波路は、インデックスガイド構造とゲインガイド構造とが交互に配列されてなる混成導波路である
ことを特徴とする請求項1記載のアレイ型半導体レーザ。 - 第1クラッド層、活性層および第2クラッド層がこの順に積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状の導波路が並列的に配列されてなると共に、前記複数の導波路それぞれの幅が10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路の幅とは異なるアレイ型半導体レーザと、
前記導波路のそれぞれに対向してレンズが設けられると共に各導波路からの出射光を平行光線に変換するレンズアレイと、
前記平行光線を集光すると共に焦点面上でその平行光線を重ね合わせて前記アレイ型半導体レーザ全体のNFPの強度分布を均一化する対物レンズと
を備えたことを特徴とする光学素子。 - アレイ型半導体レーザを備えた表示装置であって、
前記アレイ型半導体レーザは、第1クラッド層、活性層および第2クラッド層がこの順に積層された多層膜半導体層を有し、複数の帯状の導波路が並列的に配列されてなると共に、前記複数の導波路それぞれの幅が10μm以上であり、かつ少なくとも1つの導波路の幅が他の導波路の幅とは異なる
ことを特徴とする表示装置。
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