JP2007009276A - ステンレスパイプ及び容器類における水素バリヤ被覆物品及びその製造方法 - Google Patents

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忠彦 水野
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Abstract

【課題】
ステンレス鋼の水素脆化を防止するため、ステンレス鋼と金属間化合物層の複合化やチタン合金層を高温下で窒素ガス処理するなどの表面改質手法が考えられていたが、特殊な環境下で、表面改質処理する必要があり、機械的強度、熱的影響(歪み)、長期の使用に耐えないなど汎用性に乏しいもので実用化出来なかった。
【解決手段】
アルミニウム酸化物、チタニウム酸化物、あるいはケイ素酸化物等の酸化物をステンレス鋼パイプ及び容器類の表面に、物理的蒸着方法により0.1〜10μmを少なくとも1層以上被覆することにより水素バリヤ被覆物品及びその表面処理方法を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水素ガスを貯蔵するためのステンレス製タンク(容器)、およびその配管部材(ステンレスパイプ)等の水素脆化、水素漏洩を防止するための、表面処理方法と水素バリヤ処理された被覆物品に関するものである。
水素エネルギーを媒体とした、高効率でクリーンな水素エネルギーシステムの早期実現に、大きな期待が集まっている。特に水素と酸素を用いた燃料電池発電、あるいは水素吸蔵合金を利用したエネルギー貯蔵・輸送システム、高圧水素タンクを搭載した電気自動車、高圧水素ガスを安定供給するための貯蔵・輸送システムなど、早期実用化が望まれている。しかしながら、このような水素を取り扱う上で一番重要な水素貯蔵・輸送用材料の開発が大きな課題となっている。水素は高温では容易に金属構造材料内に侵入して、水素損傷や水素漏洩が致命的な問題を生じさせる恐れがある。
従って高効率でしかも安全で環境調和性を兼ね備えた材料が望まれている。現在、水素貯蔵・輸送用にはSUS316鋼およびSUS316L鋼が多く利用されているが、過酷な使用環境においては更なる改善が必要である。しかしながら構造材料自体の機械的特性を損なわず加工性、経済性に優れた新たな手法が望まれている。その中で水素に曝される部位のみを、水素侵入・透過を抑制する技術が重要なキーテクノロジーの一つと考えられている。その中でも構造材料自体の持つ機械的特性、加工性を損なわず表面機能を付与できる表面処理技術として「水素バリヤ被覆」が有望視される。しかしながらこの分野の研究開発はまだ始まったばかりで、有効な水素バリヤ被覆に関する表面処理技術は殆ど例を見ない。
例えば特願平06-007625に記載されているようにステンレス鋼と金属間化合物層を複合化して水素を遮断する方法やマテリアルインテグレーションVoL.14 No7(2001)に記載されているチタン合金を900℃の高温下で窒素ガス処理することにより窒化チタンに表面改質する手法が考えられている。しかしながらこれらの手法は特殊な環境下で複合形成したり、表面処理する必要があり、且つ機械的強度、熱的影響があり汎用性に乏しいものである。
特開平06−007625
本発明の主目的は、高圧水素タンクを搭載したクリーンエネルギー型の電気自動車において、その高圧水素ガスを安定供給するための貯蔵・輸送システムにおけるステンレス鋼の表面改質に関する。ステンレス鋼は燃料電池を核とした水素エネルギーシステムにおいても主要な構造材として考えられており、その中でも耐食性に優れたステンレス鋼SUS316およびSUS316Lは水素容器や配管材料として大きく期待されていて、貯蔵容器としては35〜100 MPaの高圧での使用が考えられている。
金属は水素の拡散によって脆化することが知られているが、SUS316およびSUS316Lもこの例外ではない。金属中への水素の溶解は水素圧の1/2乗に比例し、拡散を防ぐ技術開発が急がれている。本発明はステンレス鋼表面にわずか0.1〜10μmの薄膜を形成することにより、水素侵入・透過を抑制する技術である。
ステンレス鋼の持つ構造材料自体の機械的特性、熱的特性、加工性等を損なわず、ステンレスパイプの内外面、ステンレス容器(タンク)の内外面に水素バリヤ(遮断)性の表面機能を付与できる表面処理技術を提供するものである。
本発明は、アルミニウム酸化物、チタン酸化物もしくはケイ素の酸化物等のセラミックス薄膜をステンレス鋼パイプ及び容器類の表面に、物理蒸着法あるいは化学蒸着法により0.1〜10μmを少なくとも1層以上被覆することにより水素ガスの透過率を数十分の一から数万分の一まで抑制し、ステンレス鋼を水素脆化から護るための水素バリヤ被覆物品及びその製造方法を提供する。
ステンレスパイプやステンレス鋼容器では種々のステンレス材料が用いられている。フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などあり、特に耐食性や高強度が要求される用途にはマルテンサイト系ステンレス鋼410C、420、430、440C、440Bなどが使用され、オーステナイト系ステンレス鋼では304、304L、321、347、316Lなどが使用されている。この中でもSUS316Lは耐粒界腐食性に優れ、水素貯蔵タンクや水素ガス配管材料に多く利用されている。
これらのステンレス鋼は水素の拡散によって脆化することが知られているが、使用条件によって脆化度合いは大きく異なる。金属中への水素の溶解は水素圧の1/2乗に比例し、水素ガス圧力が高くなればなるほど、水素への溶解は進行し水素脆化が心配される。
現在使用されている多くの場合の水素ボンベ圧力は、35 MPa程度の圧力が最大であるが、将来的には長距離の自動車走行を可能にするために、水素ボンベ圧力を100 MPaまで高め、安全に利用できるようにする計画がある。このためには水素タンクや水素ガス配管材料からの水素の漏洩、水素脆化問題を解決することが需要課題である。
本発明は水素貯蔵タンクや水素ガス配管材料からの水素の漏洩、水素脆化を防止するために、ステンレス鋼表面に水素バリヤ性のある保護膜を被覆して、水素貯蔵タンクや水素ガス配管を高圧力下でも使用可能な状態にして、安全で快適な地球環境を得ようとするものである。
本発明はステンレス鋼から成る水素貯蔵タンクや水素ガス配管材料の外表面や内面に、アルミニウム酸化物、チタン酸化物もしくはケイ素の酸化物等を被覆したことを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法を提供するもので、セラミックスの溶射方法でなく、より好ましくは上記物質を減圧下に保持した環境下で、ステンレス鋼パイプあるいは容器類の表面に、物理蒸着法あるいは化学蒸着法により0.1〜10μmを少なくとも1層以上被覆した水素バリヤ被覆物品及びその製造方法を提供する。
アルミニウムあるいはアルミニウム合金は、水素を透過しにくい材料であることが知られており、これはアルミニウムの表層酸化膜(アルミナ)が非常に不活性であり、水素分子が原子状水素に変化しにくいためと考えられている。しかしながらアルミナの表層のみでは部分的な剥離層、クラック層、ポーラス層などが存在し充分な水素ガスバリヤ層としては不十分であった。
水素がステンレス鋼内部を拡散して透過するためには、水素分子の形では非常に透過しにくく、水素分子が活性のある金属と接して解離し、原子状水素に変化する必要がある。従ってステンレス鋼から成る水素貯蔵タンクや水素ガス配管材料の外表面や内面に緻密で高密着性に優れた被膜を形成することにより水素バリヤ効果を得ることができる。
本発明は水素貯蔵タンクや水素ガス配管材料の外表面や内面に緻密で高密着性に優れた被膜を形成するため、緻密な金属酸化物をステンレス鋼表面に形成することが水素バリヤ膜として非常に有用であることを見出した。
またアルミニウム単体でなくアルミナの溶射でなく、被覆に高温加熱を必要とする化学蒸着法(CVD法)や熱処理方法では好ましくなく、低温で被覆が可能なプラズマCVD法や物理蒸着法(PVD法)が好ましいことを見出した。これはステンレス鋼と被覆物が合金化することなく緻密な水素バリヤ被膜として働くために必要である。
物理蒸着法にはイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法等があるが、いずれもステンレス鋼の組成変移が起こらない低温処理が好ましい。またステンレス鋼の外表面に被覆することは比較的簡単であるが、パイプ内面及びタンク等の容器類内面に被覆するには成膜プロセス面で工夫が必要である。金属あるいはセラミックの被膜を内面に被覆するには、金属蒸気や金属プラズマをパイプ内面まで導く必要がある。
パイプ内面に金属蒸気あるいは金属プラズマを導くには、被覆する物体に磁場や電界を加えることが有用である。例えばステンレス容器内面にアルミニウムやチタニウム電極を挿入し、アルゴンなどのプラズマガスや酸素の反応ガスを導入し高周波を印加する。これと同時に容器外面には負の高電圧を印加することにより、プラズマ中にイオンは容器壁に衝突し堆積していく。また挿入する電極形状を工夫して電極自身をアークプラズマ生成のターゲットとして蒸発させ、酸素プラズマと反応させることにより酸化アルミあるいは酸化チタンを生成させることが出来る。
またステンレス鋼パイプあるいは容器類の中心に、蒸発させる金属棒を同軸状に設置し、ステンレス鋼パイプあるいは容器類の外周部に電磁石で磁界を形成し、軸方向外部磁界によるマグネトロン効果を利用したプラズマ閉じ込めを行う。この状態でパイプあるいは容器内に酸素ガスを導入しつつ、金属棒に高周波電圧を加え同軸型マグネトロンプラズマを生成させる。このことにより、プラズマ中イオンにより金属棒がスパッタリングされ、パイプあるいは容器内面に酸化物を形成させることが出来る。
アルミニウム酸化物、チタン酸化物もしくはケイ素の酸化物等のセラミックス薄膜は水素ガスと接する面に被覆することが重要である。またこの被覆層は一度に厚い膜厚で形成することは好ましくない。成膜時の条件により結晶化して成長する場合があり、特に厚さ方向に成長していくとピンホールを形成しやすくなる。ピンホールがあると分子状水素も容易に透過して水素バリヤ膜としての機能が損なわれる。このことから上記物質を0.1〜10μmすることが好ましく、使用圧力が低い場合は0.1μm程度の被膜厚さで対応可能であり、高圧になれば10μm程度の被膜厚さが好ましい。特に数ミクロン以下の成膜をする場合には、一方向への結晶成長を防止するために、若干組成の異なるガスプラズマや金属プラズマを間欠的に導入することにより多層化した成膜ができピンホールを防止することが可能である。通常の成膜においては、膜は柱状晶となり、その結晶粒界から水素の拡散、透過が起こる。このことから結晶粒径としては、膜厚の数分の1程度が好ましい。
またアルミニウム酸化物、チタン酸化物等の成膜時の一方向への結晶成長(柱状晶)を抑制するには、成膜時の温度を低く、バイアス電圧を大きくして成膜することが好ましい。さらにバイアス電圧の周波数、若干組成の異なるガス組成比率の周期的変動など間欠的に導入することにより均一なアルミニウム酸化物、チタン酸化物等の微結晶構造の成膜が可能となる。
イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、プラズマベースイオン注入・成膜法等においては、被覆する金属元素から構成される金属棒(電極)を容器あるいはパイプ内部に挿入し、これに大電流を通電したり、高電圧アークあるいは電子ビーム等で蒸発させつつ、外部の容器あるいはパイプに高周波、マイクロ波等を印加してプラズマを発生させ、被覆物品内面に目的とする成膜を行うことが可能である。
ステンレス鋼パイプあるいは容器類の中心に、蒸発させる金属棒例えばチタンを同軸状に設置し、ステンレス鋼パイプあるいは容器類の外周部に電磁石で磁界を形成し、軸方向外部磁界によるマグネトロン効果を利用したプラズマ閉じ込めを行う。この状態でパイプあるいは容器内に窒素ガスを導入しつつ、チタン棒に印加電圧が-0.1kVから20kVの範囲で13.56MHzの高周波電圧を印加して、同軸型マグネトロンプラズマを生成させる。このことにより、窒素プラズマ中でチタン金属イオンをステンレス鋼パイプあるいは容器内壁に衝突させ、その表面上で窒化チタンを形成させることにより、パイプ内面に水素バリヤ膜の形成が可能である。
上記のプロセスでステンレス鋼表面に成膜したアルミニウム酸化物、チタン酸化物もしくはケイ素の酸化物等のセラミックス薄膜等は、被膜厚さによって水素ガスの透過性が異なってくる。被膜厚さが0.1〜1.0μm程度と薄い場合は、水素ガス透過率が未被覆材料の数分の一から十分の一程度であるが、2〜10μmと被覆厚さが厚い場合は、数百分の一から数万分の一まで水素ガス透過率が低減できる。このことは高圧水素タンクや配管材料の保護膜として非常に有用である。
プラズマを効率よく発生させ、ステンレスパイプ内面に被覆する方法として図1のような方法を提案する。ステンレスパイプの場合はパイプ自身を真空容器としてパイプ内面に電極棒を挿入して成膜するのが効率的である。ステンレスパイプ(1)の内部には蒸発させる金属棒(3)を挿入する。またパイプ外周には必要に応じて同軸状にマグネット(2)を配置し、内部で生成したプラズマを外部に逃げないよう磁場をマグネット用電源(7)から加えることが可能である。また必要に応じて加熱できるようにステンレスパイプ外面に加熱ヒーター(8)を設けてパイプ内部の温度を100℃〜500℃まで加熱できるようにしておく。
ステンレスパイプと金属棒とは絶縁リング(8)で同軸状に保持され、金属棒には電圧印加する電極(4)が取り付けられる。ここにリード線(6)を通して高周波電源(5)と結ばれ、プラズマ発生させるための電力を供給する。プラズマ生成用ガスは導入口(10)より一定量流しつつ、プラズマ分解されたものが、金属イオンと反応してステンレスパイプ内面のセラミック成膜(12)として被覆されその後余分なガスは排出口(11)より排出される。
ステンレスパイプには外周部に電磁石で磁界を形成し、軸方向外部磁界によるマグネトロン効果を利用したプラズマ閉じ込めを行うことが、より高密度プラズマの形成に有用で、短時間でセラミック被膜が形成可能となる。金属棒としてチタンを用いた場合には、パイプ内に酸素ガスを導入しつつ、チタン棒に印加電圧が0.1kVから20kVの範囲で13.56MHzの高周波電圧を印加するのが好ましい。これは同軸型マグネトロンプラズマを生成させる条件として最適で、−0.1kV以下の高周波電圧では、プラズマが安定して生成することが難しく、一方、−20kV以上の電圧ではセラミック被膜の緻密性が損なわれ、表面粗さの粗い被膜となる。
金属棒としてアルミニウムを用いた場合には、パイプ内に酸素ガスを導入しつつ酸化アルミニウムを形成させることは難しい。このため加熱ヒーターを用いてパイプ内を400〜500℃に昇温して酸化アルミを形成しやすくすることが必要である。またアルミニウム棒への印加電圧は余り高くなく、-0.1kVから-2kVの範囲で13.56MHzの高周波電圧を印加するのが好ましい。これは、アルミニウムはスパッタされやすく高電圧ではドロプレットと呼ばれる固形粒子が飛散するのを防止するためである。
水素透過試験用実験試料としてステンレス鋼パイプSUS316Lの外径12.5 mm、肉厚1.0 mmの電解研磨したパイプを準備して、次の方法で各種成膜装置を用いてガス透過性評価試験を実施した。セラミック成膜方法と成膜厚さ、その水素透過性評価方法の関係から、本実施例ではステンレスパイプ外面に各種被膜を、厚さを替えて被覆させたものを使用した。被膜の種類および厚さは表1にまとめた。
表1は実施例に用いたステンレス鋼への水素バリヤ被覆物の形成方法である。
水素バリヤ被覆物品の評価方法として水素を用いるのが好ましいが、ステンレス鋼内部や環境中にも存在するため、微小な水素の漏れ量を評価するには誤差が大きく、困難である。このため透過させる水素として重水素ガスを用いることでバックグラウンドの影響を低減させた。実験装置の概要を図2に示す。
各種水素バリヤ性のある被膜を被覆したSUS316Lパイプからなる試料(13)を、真空セル(14)にセットする。パイプ両端は真空セルの外部に引き出し、その端部を真空ポンプ(21)に接続する。真空セルの外側に石英ガラス管(15)を介して電熱線(16)を10cmだけ巻き、真空セル内のSUS316Lパイプに熱電対(17)を取り付ける。電熱線には加熱電源(18)を接続し、SUS316Lパイプ外面を室温から730Kまで加熱できるようにする。真空セルには重水素ボンベ(19)および圧力計(20)をそれぞれリークバルブ(22)を通して接続する。また試料パイプ片端からは重水素の漏れ量を測定するため、バルブを通して四重極質量分析計(23)、ロータリーポンプ(24)、ターボ分子ポンプ(25)を接続する。
このようにセットした水素透過試験装置で、SUS316Lパイプ外面から水素ガスを4〜15気圧で試料外側に導入し、SUS316Lパイプ内側を真空に引き400〜730 Kの範囲でガス透過実験を行った。試料を透過した重水素ガスは四重極質量分析計で連続的に測定した
試料としてSUS316Lステンレス鋼の外径12.5 mm、肉厚1.0 mmのパイプと、その表面に各種の被膜を被覆させたものを使用した。被膜の種類および厚さは表1にまとめた。透過させる水素として重水素ガスを用いることでバックグラウンドの影響を低減させた。本実験装置で重水素ガスを4〜15気圧で試料外側に導入し、内側を真空に引き400〜730 Kの範囲で重水素ガス透過量を四重極質量分析計で連続的に測定して実験を行った。
SUS316Lステンレス鋼の未処理パイプおよび酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素の厚みの異なる被覆パイプについて、温度を一旦高温まで昇温後、徐々に低下させながら重水素ガス透過量を求めSUSの水素透過性評価を行った。
各パイプサンプルの重水素ガス透過量測定結果を表2に示す。
表2は実施例に用いたステンレス鋼SUS316Lへの酸化物系材料の水素バリヤ膜の透過試験結果である。
表2の結果からも判るように未処理のSUS316Lパイプは、高温になると3.2E-11mol s-1 Paと水素ガス透過量は大きく実用上問題があるのに対して、酸化物薄膜を形成したSUS316Lパイプは、いずれも1/10〜1/1000と非常に低くことが判る。また成膜厚さが厚いほど水素透過量は少なくなることがわかる。特に酸化アルミニウムや酸化チタン被膜は低温下における水素ガス透過量1.0E-14mol s-1 Pa以下と非常に低く、今回の測定方法では測定限界を超え水素ガスが殆ど漏洩しないと思われる結果であった。このことはステンレスパイプやタンクが通常使用される100℃以下の雰囲気では全く問題がなく、信頼性が重視される配管材料やタンクに有用であることが判った。このことから電子ビーム蒸着式イオンプレーティング法で被覆したステンレス鋼は水素バリヤ被覆物品として非常に有効であることが明らかになった。
水素エネルギーを媒体とした高効率でクリーンな水素エネルギーシステムの早期実現に向けて、水素と酸素を用いた燃料電池発電、あるいは水素吸蔵合金を利用したエネルギー貯蔵・輸送システム、高圧水素タンクを搭載した電気自動車、高圧水素ガスを安定供給するための貯蔵・輸送システムなど、早期実用化が望まれている。しかしながら、このような水素を取り扱う上で一番重要な水素貯蔵・輸送用材料の開発が大きな課題となっている。水素は高温では容易に金属構造材料内に侵入して、水素損傷や水素漏洩が致命的な問題を生じさせる恐れがある。
本発明によれば、現在水素貯蔵・輸送用に多く用いられているステンレス鋼の表面を過酷な使用環境においては実用出来るような表面処理によって産業へ供するものである。
本発明では構造材料自体の機械的特性を損なわず、加工性、経済性に優れた表面処理技術として水素侵入・透過を抑制する「水素バリヤ被覆」をステンレス鋼表面に施すことにより利用可能としたものである。
本発明のステンレス容器類内面に用いる水素バリヤ膜の形成装置の構成図である。 本発明のステンレスパイプ及び容器類の水素透過性評価に用いる装置の構成図である。
符号の説明
1.ステンレスパイプ
2.同軸状マグネット
3.金属棒
4.電圧印加電極
5.高周波電源
6.リード線
7.マグネット用電源
8.加熱用ヒーター
9.絶縁リング
10.ガス導入口
11.ガス排出口
12.セラミック成膜
13.試料
14.真空セル
15.石英ガラス管
16.電熱線
17.熱電対
18.加熱電源
19.重水素ボンベ
20.圧力計
21.真空ポンプ
22.リークバルブ
23.四重極質量分析計
24.ロータリーポンプ
25.ターボ分子ポンプ

Claims (8)

  1. アルミニウム酸化物、チタン酸化物もしくはケイ素の酸化物等のセラミックス薄膜をステンレス鋼パイプ及び容器類の表面に被覆したことを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  2. 請求項1に記載の物質を減圧下に保持した環境下で、ステンレス鋼パイプあるいは容器類の表面に、物理蒸着法あるいは化学蒸着法により0.1〜10μmを少なくとも1層以上被覆したことを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  3. 被覆手法として、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビーム蒸着法等を用い、好ましくはステンレス鋼パイプあるいは容器類の内面にプラズマを導入し、請求項1に記載の物質を0.1〜10μm成膜可能プロセスで水素バリヤ被覆を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  4. 目的とする被覆する金属元素を高電圧アークあるいは電子ビーム等で蒸発させた後イオン化して、被覆物品周辺を金属プラズマで覆いつつ、酸素ガスを導入して請求項1に記載の物質を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  5. ステンレス鋼パイプあるいは容器類の中心に、蒸発させる金属棒を同軸状に設置し、ステンレス鋼パイプあるいは容器類の外周部に電磁石で磁界を形成し、軸方向外部磁界によるマグネトロン効果を利用したプラズマ閉じ込めを行いつつ、金属棒に印加電圧が−0.1kVから−20kVの範囲で13.56MHzの高周波電圧を印加して、同軸型マグネトロンプラズマを生成して、請求項1に記載の物質を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  6. アルミニウム酸化物としてAl23およびAl2Oxが10nm〜200nmの微結晶として含まれる膜厚0.1〜10μmの薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の物質を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  7. チタニウム酸化物としてTiOおよびTiOxが10nm〜200nmの微結晶として含まれる膜厚0.1〜10μmの薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の物質を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
  8. ケイ素酸化物としてSiOおよびSiOxが10nm〜200nmの微結晶として含まれる膜厚0.1〜10μmの薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の物質を得ることを特徴とする水素バリヤ被覆物品及びその製造方法。
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