JP2007009145A - ポリエステルの製造方法、固相重縮合法および高強力ポリエステル繊維 - Google Patents

ポリエステルの製造方法、固相重縮合法および高強力ポリエステル繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】極めて単純で信頼性の高い方法でエステル化反応を制御することで、高品質のポリエステルおよび高強力ポリエステル繊維を安定的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に定量供給し、複数のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い引き続き重縮合を行いポリエステルを連続的に製造する方法において、該スラリーの温度を設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に供給するポリエステルの製造方法。また、上記ポリエステルを用いて固相重縮合する固相重縮合方法および該固相重縮合法で得られたポリエステルを紡糸してなる高強力繊維。
【選択図】なし

Description

本発明はエステル化反応を制御することにより、工程安定性を向上させ、安定したポリエステルを生産することができるポリエステルの製造方法、該ポリエステルを用いてなる固相重縮合法および該固相重縮合法で得られたポリエステルを用いてなる高強力ポリエステル繊維に関する。
ポリエステルは、その優れた特性からフィルム、繊維、ボトルをはじめ様々な用途に用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレートは機械的強度、耐薬品性、寸法安定性に優れることから、一般的に使用されている。
一般に直接エステル化法によるポリエステルの製造は、エステル化反応と重縮合反応の2段階で行われる。ポリエチレンテレフタレートの製造において、製造工程を安定化させるためには、エステル化反応によって得られる中間体である低重合体のカルボキシル末端基とヒドロキシル末端基の比率(以下「末端基比」と記載)を調整することが重要とされている。
例えば、末端基比が大きく変動すると重縮合工程において重縮合反応の進行速度が変動するために、エチレングリコール除去の負荷変動を生じたり、ポリマーが所定の重合度に到達しない等の問題が発生する。品質においてはポリマーの色相が変化するような現象が生じる。
一般にポリエステル製造方法においては、得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度が高くなるとポリエステルの加水分解性等の安定性が悪化することや該ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、ポリエステルの製造において重縮合反応工程へ供給される最終エステル化反応生成物であるオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の影響を大きく受けることより、該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度を低くした状態で重縮合工程に供給することにより製造されている。例えば、エステル化反応率が90〜98%になるように、エステル化反応時の温度、圧力、滞留時間およびエチレングリコール供給量からなる群より選ばれるすくなくとも1種の反応条件を調節し、重縮合反応後のポリエステルのカルボキシル末端基濃度を20〜50eq/tonの範囲内の一定量となるように制御する方法(特許文献1参照)、エステル化反応率が92〜98%の範囲であり、かつ全末端基中のカルボキシル末端基の割合が35%以下のオリゴマーとし、これを減圧下に重縮合反応させてポリエステル中のカルボキシル末端基濃度を35eq/ton以下にする方法(特許文献2参照)、第1段重縮合反応時の温度、滞留時間及びエチレングリコール供給量からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応条件を調節するか、もしくはエステル化反応物のエステル化反応率と共に第1段重縮合反応条件を調節し、重縮合反応後のポリエステルのカルボキシル末端基量を15〜50eq/tonの範囲内の一定値となるように制御する方法(特許文献3参照)、最終反応容器へ供給されるポリエステル低重合体のカルボキシル末端基濃度を9〜30eq/tonとする方法(特許文献4)が開示されている。
特開平10−176043号公報 特開平10−251391号公報 特開平11−106498号公報 特開2001−329058号公報
しかしながら、ポリエステル製造に用いられる重縮合触媒系の種類やポリエステルを限定された用途に用いる場合に、上記した方法が必ずしも最適でなく、重縮合反応工程に供給される最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を高くした方法が、重縮合活性が高かったり、あるいは高品質のポリエステルが得られるということがある。これらの場合においては、上記方法に比べてオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が後続の重縮合反応の反応進行やポリエステル品質に対して極めて大きく影響するために、該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を抑制する必要がある。
一方、製品ポリマーの色調を測定し、その測定値の目標値に対する偏差に応じてエステル化工程でのエステル化率を調節する方法、製品ポリマーの色調を測定し、その測定値の目標値に対する偏差に応じて第1重縮合反応時の滞留時間を調節する方法および製品ポリマーの色調および極限粘度を測定してその測定値の目標値に対する偏差に応じて第1段重縮合反応缶へのエチレングリコールの供給量を調節することにより、製造されるポリエステルの色調(b値)の標準偏差が平均値の0.05倍以内に保ち、かつ極限粘度の標準偏差が平均値の0.005倍以内に保つ方法が開示されている(特許文献5〜7参照)。
特許3375403号公報 特開2004−75955号公報 特開2004−75957号公報
しかし、上記の方法では、製品ポリマーの色調を測定した時点では、すでに重縮合反応が進行しているので、エステル化率の調節が遅れるために、上記問題が解消されているとはいえない。
上記課題を解決する方法として、エステル化反応生成物の電気伝導度をオンライン測定してその結果によりエステル化反応を制御する方法が開示されている(例えば、特許文献8〜11等参照)。該方法は、エステル化反応生成物の電気伝導度とエステル化反応度が比例することを利用してエステル化反応を制御する方法であり、エステル化反応度を直接測定している点で、前記した方法よりは一歩前進した制御方式である。しかしながら、該方法は、エステル化反応により生ずる水や未反応のエチレングリコールの影響でエステル化反応生成物の電気伝導度に変動を与える等の外乱の影響が大きいという課題を有している。
特公昭51−41679号公報 特開昭48−103537号公報 特開昭52−19634号公報 特公平5−32385号公報
上記課題を解決する方法として、ポリエステルの製造工程中の原料、反応中間生成物または最終生成物のうち1種以上についての近赤外線特性を連続的に測定し、得られた分光スペクトルから測定物中の物性を解析し、解析データに基づいて製造工程中の反応条件を制御する方法が開示されている(特許文献12参照)該特許文献において、ポリエステル連続製造工程の重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口に近赤外線吸収スペクトルの検出端子を設置して、常時抜き出し口を通過するポリエステルのカルボキシル末端基濃度を連続的に測定すると供に、第2エステル化反応槽の出口にも近赤外線吸収スペクトルの検出端子を設置して、該検出端子部を通過するポリエステルオリゴマーのエステル化率を連続測定し、目標エステル化率になるように第2エステル化反応槽温度調節器へフィードバックし、生成ポリエステルのカルボキシル末端基濃度変化を抑制する方法や、赤外線分光吸収を連続測定し反応を制御する方法(特許文献13参照)が開示されている。これらの方法は、ポリエステルのカルボキシル末端基濃度を安定化する制御方法としては有効な方法であるが、長期にわたり連続生産をした場合は、検出器の汚染や検出部の温度や圧力等の環境変化等により測定の変動が発生する等の課題があり長期連続運転における信頼性が劣ることがあるという課題を有する。そのために、より単純化された制御方法で精度よく、かつ長期運転した時の信頼性の高い方法の構築が嘱望されている。
特開平11−315137号公報 特開平5−222178号公報
該単純化された制御方法として、ポリエステルの製造工程へ供給するテレフタル酸とエチレングリコールとからなるスラリーの密度や濃度を連続測定して、該測定値より求められるスラリー中のテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比に基づいてエステル化反応を制御する方法やスラリー濃度の変化に応じてスラリー中のテレフタル酸とエチレングリコールとの比率の変動を制御する方法が開示されている(特許文献14および15参照)。例えば、特許文献14において、5日運転した時の、供給スラリーのエチレングリコール/テレフタル酸のモル比の変動が1.51±0.66%に制御され、結果として第1段エステル化後のエステル化反応率が85.0±1.0%に、第2段エステル化後のエステル化反応率が95.0±0.5%になることが開示されている。
特開平6−247899号公報 特開2004−75956号公報
これらの方法はエステル化反応の変動を抑制する方法として有効な方法であり、エステル化反応率に関しては高い精度で制御が可能であるが、エステル化反応率はポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の両方より求められ、エステル化反応においては、一般には、該カルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の変化は連動しており、エステル化反応率の変動率はカルボキシル末端基濃度単独の変動率よりも小さくなる。従って、ポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の安定化の要求に関しては、該スラリー密度制御のみでは不十分な場合がある。また、該方法は、長時間の連続運転を行う場合には、スラリー濃度検出器部がスラリー中の固形分であるジカルボン酸により閉塞する事態の生ずる場合があり、前記方法の課題が完全に解決するに至っていない。例えば、特許文献14において、スラリー濃度計を並列に2式備え、それらのいずれかを使用するように切り替え可能として、一定時間毎に交互に使用する方法が開示されている。
本発明の目的は、極めて単純で精度および信頼性の高い方法でエステル化反応を制御することで、高品質のポリエステルおよび高強力ポリエステル繊維を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討し、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度変動を抑制するには、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を抑制することが重要であり、該特性の変動を抑制すれば、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度変動が極めて小さくできることを見出した。また、該第1エステル化反応槽出口のカルボキシル末端基濃度の変動は、第1エステル化反応槽へ供給するポリエステル原料スラリーの温度変動が大きく影響していることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に定量供給し、複数のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い引き続き重縮合を行いポリエステルを連続的に製造する方法において、該スラリーの温度を設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に供給することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
この場合において、エステル化反応槽へ供給するスラリー流量を設定値±3%以内に制御することが好ましい。
また、この場合において、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値の±10%以内に制御することが好ましい。
また、この場合において、スラリー調製槽に供給される原料グリコールの温度を制御することによりエステル化反応槽に供給するスラリー温度を制御することが好ましい。
また、この場合において、スラリー調製槽および/またはスラリーの移送ラインの温度制御をすることが好ましい。
また、この場合において、スラリー調製槽に循環ラインを設けて、スラリー調製槽中のスラリーを循環させることが好ましい。
また、この場合において、スラリー調製槽からエステル化反応槽に供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けることが好ましい。
また、本発明は、上記のポリエステル製造方法により得られたポリエステルを固相重縮合することを特徴とするポリエステルの固相重縮合法である。
また、本発明は、上記の固相重縮合法で得られたポリエステルを紡糸されてなることを特徴とする高強力ポリエステル繊維である。
本発明のポリエステル製造方法は、エステル化反応工程に供給する原料スラリーの温度を特定範囲に制御するという極めて単純な方法により、重縮合反応工程に供給するポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制されるので次行程の重縮合反応の変動が抑制される。そのために得られるポリエステルの品質変動が抑制され極めて均質なポリエステルが安定して生産することができる。本発明のポリエステルの製造方法は、エステル化反応が、計測精度が高く、かつ長期運転をしても計測値の信頼性が安定しているスラリー温度で制御されるので長期連続運転しても制御系の信頼性が安定しているという特徴を有する。従って、品質と経済性のバランス、すなわちコストパフォーマンスが極めて高い制御方法であるといえる。また、該ポリエステルをプレポリマーをして用いることにより、固相重縮合反応の安定化ができ、該固相重縮合ポリエステルを用いることにより、高強力繊維の紡糸操業性を向上することができる。
以下、本発明のポリエステルの製造方法の実施形態を説明する。
本発明に言うポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル―4,4―ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン―p,p’―ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはその機能的誘導体、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸およびその機能的誘導体などがあげられる。
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどの脂環族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールなどが挙げられる。
前記ポリエステルの共重合に使用される環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオンラクトン、β−メチル−β−プロピオンラクトン、γ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸などをあげることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、たとえば安息香酸、ナフトエ酸などを共重合させてもよい。
また、本発明のポリエステルには公知のリン化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、たとえば(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、9,10−ジヒドロ−10−オキサ−(2,3−カルボキシプロピル)−10−ホスファフェナンスレン―10―オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性などを向上させることが可能である。
また、本発明のポリエステルには公知のリン化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、たとえば(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、9,10−ジヒドロ−10−オキサ−(2,3−カルボキシプロピル)−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性などを向上させることが可能である。
本発明においては、上記ポリエステルを直接エステル化法で、かつ連続法で実施するのが好ましい。
直接エステル化法はエステル交換法に比べ経済性の点で有利である。また、連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。
本発明においては、エステル化および重縮合工程の反応器の個数やサイズおよび各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。
例えば、テレフタル酸1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.95モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。エステル化反応は、2個以上のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用い反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低次縮合物が得られる。引き続き重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは200〜20Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
本発明においては、上記ポリエステルの製造において、ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に定量供給しポリエステルを連続的に製造する方法において、該スラリーの温度を設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に供給することが重要である。該スラリー温度は設定値の±3℃以内に制御するのがより好ましく、±2℃以内に制御するのがさらに好ましい。±1℃以内に制御するのが特に好ましい。±4℃を超えた場合は、エステル化反応の進行の変動が大きくなりポリエステルオリゴマー(以下単にオリゴマーと称することがある)のカルボキシル末端基の変動が大きくなり、後続の重縮合反応の進行や最終製品であるポリエステルの色調や透明性等の品質変動に繋がるので好ましくない。一方、下限は無変動である±0℃が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.1℃が好ましく、±0.3℃がより好ましい。
上記スラリー温度の制御方法は限定されないが、上記スラリー調製槽の温度又はテレフタル酸温度を検出し、該調製槽に供給されるグリコール温度にフィードバックし制御するのが好ましい。また、スラリー温度制御はスラリー調製槽やスラリーの移送ラインに熱交換器を設置して制御してもよい。また、スラリー調製槽に循環ラインを設けてスラリー調製槽中のスラリーを循環させて温度制御の精度向上を図ってもよい。該方法の場合は、循環ラインにも温度制御機能を付加するのが好ましい。以上の方法を単独でおこなってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。また、スラリー調製槽出口からエステル化反応槽供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けてスラリー温度制御の精度を高めてもよい。該方法の場合に、スラリー貯留槽に温度制御機構を付加してもよい。該スラリー貯留槽を設ける方法はスラリー調製槽におけるスラリー調整はバッチ式で実施してもよい。バッチ式スラリー調製法は、スラリー調製における重要工程管理項目であるスラリーのジカルボン酸とグリコールとの組成比の管理が容易となるので該管理の制御系を簡略化することができるという利点にも繋がる。また、該方法の場合は、スラリー貯留槽において、上記のジカルボン酸とグリコールとの組成比の調整が実施できるので、該組成比の変動抑制に繋げることもできるという利点を有する。該方法においては、スラリー調製を連続法やセミバッチ法で実施してもよい。また、該方法と前者の方法を組み合わせて実施してもよい。
上記のスラリー温度の設定値は限定されないが室温から180℃が好ましい。一般に、ポリエステルの製造工程においては、該製造工程で発生する回収グリコールがスラリー調製のグリコールの一部と使用されることが多い。該回収グリコールはインプラントで回収されることがある。該方法においては、回収グリコールは加温状態にある。従って、該設定温度は加温状態が好ましく70〜150℃がより好ましい。
本発明の方法は上記したスラリー温度という極めて単純で、計測精度が高く、かつ長期運転をしても計測値の信頼性が安定している計測値によりエステル化反応を制御するのでコストパフォーマンスが高く、かつ長期運転においてもその精度が維持される。特に、ポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の影響を大きく受ける重縮合系を用いたポリエステルの製造方法への適用が好ましい。
上記温度制御によりポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制されるのは、上記スラリーがエステル化反応槽に定量供給されることを前提としている。該スラリーの供給量は設定値±3%以内に制御されてなることが好ましい。設定値±2%以内がより好ましく、設定値±1.5%以内がさらに好ましい。設定値±3%を超えた場合は、スラリー温度を上記範囲に制御してもポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を本発明の好ましい範囲に抑制することが困難になる。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.1%が好ましく、±0.3%がより好ましい。
該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽と第1エステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、第1エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。
前記のスラリー温度の安定化は、上記スラリー流量の安定化にも繋がる。
また、該スラリーの中のジカルボン酸とグリコールとのモル比もエステル化反応に影響するので一定範囲に制御することが好ましい。該変動範囲は、前記した公知技術の範囲で十分である。設定値±0.3%以内が好ましい。設定値±0.25%以内がより好ましく、設定値±0.2%以内がさらに好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.01%が好ましく、±0.02%がより好ましい。
上記モル比の調整方法は限定されないが、オンラインで連続計測してスラリー調製槽へのジカルボン酸および/またはグリコール供給量を調整する方法が好ましい。計測方法も限定されない。密度計や近赤外線分光光度計で計測する方法が挙げられる。
また、本発明においては、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値±6%以内にするのが好ましい。±5%以内がより好ましく、±4%以内がさらに好ましく、±3%以内が特に好ましい。該カルボキシル末端基濃度変動が±5%を超えた場合は前記した課題の変動が増大して得られるポリエステルの品質の均一性が低下するので好ましくない。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
カルボキシル末端基濃度の設定値は限定されないが150〜900eq/tonの範囲170〜800eq/tonの範囲がより好ましく、190〜700eq/tonの範囲がさらに好ましい。カルボキシル末端基濃度の設定値が150eq/ton未満になると、重縮合活性の低下や重縮合工程でのジエチレングリコールの生成の増大が起こるので好ましくない。特に、重縮合反応活性に対してポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の影響の大きい重縮合触媒系を用いた場合に重縮合触媒活性が著しく低下するので好ましくない。逆に、カルボキシル末端基濃度の設定値が900eq/tonを超えた場合は、後続の重縮合反応の進行が不安定になり得られるポリエステルの重合度の変動が大きくなるので好ましくない。また、得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度が高くなり、ポリエステルの加水分解安定性等の安定性低下に繋がるので好ましくない。
上記の最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を上記範囲に抑制するには、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動抑制することが好ましい。本発明者らは、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を抑制する方法について鋭意検討し、該最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動は、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度によりほぼ支配され、該第1エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度は、前記したエステル化反応系に供給するスラリーの影響を大きく受け、該スラリー温度を制御することにより、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制でき、結果として後続の重縮合反応やポリエステル品質に対しておおきな影響を及ぼす最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度変動が抑制されることを見出して本発明を完成した。当然のことであるが、第1エステル化反応槽以降のエステル化反応条件により最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度が変化するので、該反応条件は一定範囲に制御する必要があるが、該制御は従来公知の方法を適用し制御するレベルで、本発明方法で得られる高度なカルボキシル末端基濃度の制御が可能となる。
上記第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値±10%以内に抑制するのが好ましい。±8%以内がより好ましく、±6%以内がさらに好ましく、±4%以内がよりさらに好ましい。該範囲にすることにより最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を好ましい範囲に抑制することが可能となる。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.5%が好ましく、±1.0%がより好ましい。
上記第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の設定値は限定されないが、800〜3700eq/tonの範囲にするのが好ましい。1000〜3400eq/tonがより好ましく、1200〜3000eq/tonがさらに好ましい。
第1エステル化反応槽出口および最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマー特性の設定値を上記範囲に設定する方法が限定されない。例えば、エステル化反応装置の構造や基数等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間、エステル化反応槽に供給するエステル化反応調整用のグリコールの供給場所や供給量等のエステル化反応条件等を適宜設定することにより行えばよい。また、エステル化反応工程に水を添加して調整してもよい。
また、上記第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動は第1エステル化槽の温度、圧力および滞留時間(限定されたポリエステル製造ラインにおいては、反応槽の液面レベル)の影響を受けるので、該要因は設定条件範囲に制御する必要がある。例えば、温度は設定値±3%以内が好ましく、±2%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、圧力は設定値±4%以内が好ましく、±3%以内がより好ましい。±2.5%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、液面レベルは設定値±0.2%以内が好ましく、±0.1%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.02%が好ましく、±0.05%がより好ましい。該液面レベルの制御は前記のスラリー流量制御を上記範囲にすることにより制御が可能である。
以上、本発明においては、上記方法によりポリエステルオリゴマーの特性変動を目的とした範囲に抑制することができるが、さらに、上記エステル化反応工程において、ポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度やヒドロキシル末端基濃度をオンラインで計測して、前記したスラリー温度制御系にフィードバックすることにより該制御精度や安定性を向上してもよい。
該オリゴマー特性の計測方法は限定されないが、近赤外線分光光度計を用いて計測するのが好ましい。オリゴマーが流動している部分、例えば反応缶、配管などにおいて、近赤外分光光度計を用いながら連続的に行うのが好ましい。オンラインで連続的に測定可能な近赤外分光光度計であれば、特に限定されない。例えば、NIRSシステムズ社(ニレコ社)、BRAN LUEBBEおよび横河電機社製の近赤外オンライン分析計等の市販品を使用してもよいし、本目的のためにシステム化した装置を製作して対応してもよい。
本発明方法においては、近赤外分光光度計の検出セルは高温域に設置する必要があり、該対応のための設計が必要である。また、エステル化反応缶間に設置する場合は加圧状態に、エステル化反応缶から初期重縮合缶への移送ラインに設置する場合は、加圧と減圧の両方に耐えるような構造にする必要がある。該対応は設置場所等により適宜実施するのが好ましい。
本発明においては、上記近赤外分光光度計の測定セルの設置場所はエステル化反応開始より重縮合反応開始直前までの任意の場所に設定すればよい。エステル化反応缶に設定してもよいし、各反応缶の移送ラインに設置してもよい。それぞれの反応缶や移送ラインに直接設置してもよいし、バイパスラインを設けて該バイパスラインに設置してもよい。該バイパスラインに設置する場合の反応缶の内部を検出する場合は、対象とする反応缶に反応内容物が循環する循環ラインを設けて、該循環ラインに設置するのが好ましい。該設置された測定セルはメンテナンスが必要な場合があるので、バイパスラインに設置するのが好ましい。本発明においては、前述のごとく第1エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度が重要でるので、例えば、第1エステル化反応槽より第2エステル化反応槽への移送ラインにバイパスラインを設置し、該バイパスラインに検出器を設置して計測するのが好ましい。また、最終エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインにももう一基の検出器を設置して両方のオリゴマーの特性値を計測して制御精度を高めてもよい。該、複数個の検出器を用いてエステル化反応を制御する方法においては、第1エステル化反応槽出口の移送ラインに設置した検出器で計測され計測値による制御は第1エステル化反応槽へ供給するスラリー温度にフィードバックして行うのが好ましい。他の検出場所で検出される計測値による制御は他のエステル化反応を変化させる制御系、例えば、第2エステル化反応槽へ供給されるエステル化反応調整用グリコールの供給量にフィードバックしてもよい。最も精度が向上できる制御系を適宜選択して実施すればよい。
上記オリゴマー特性はカルボキシル末端基濃度のみを計測を行ってもよいしカルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の両方を同時に計測してもよいし、複数箇所で計測する場合はそれぞれの場所で計測する内容を変えておこなってもよい。例えば、第1エステル化反応槽出口の移送ラインに設置した検出器による制御系はカルボキシル末端基濃度で制御し、最終エステル化反応槽出口の移送ラインに設置した検出器による制御系はカルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の両方を同時に測定して両方の末端基濃度が所定範囲になるように制御するのが好ましい。近赤外線の測定波長は限定されない。測定個所に対応したモデルオリゴマーを用いて、感度が高く、かつ外乱の少ない波長を調査して適宜設定するのが好ましい。例えば、カルボキシル末端基濃度の場合は、1444nm、ヒドロキシル末端基濃度の場合は2030nmの波長を用いるのが好ましい。また、複数の波長を組み合わせた検量線より算出してもよい。
上記方法で定量される両末端基濃度の検量線は、上記のモデルオリゴマーを用いて作成するのが好ましい。この場合のモデルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度およびヒドロキシル末端基濃度はNMR法により測定した値を用いるのが好ましい。
上記方法で実施する場合は、オリゴマー特性からあらかじめコンピュータに組み込んだプログラムより演算し、スラリー温度やエステル化反応条件に反映して制御するのが好ましい。
本発明において、ポリエステル製造に用いられる重縮合触媒は限定されない。例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン等の金属及びこれら金属を含む金属化合物が挙げられる。なかでも、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、錫およびアルミニウム系の重縮合触媒の使用が好ましい。
本発明においては、得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度の標準偏差(s)が1.2以下であることが好ましい。1.1以下がより好ましく、0.9以下がさらに好ましく、0.7以下がよりさらに好ましい。一方、下限は無変動である0が最も好ましいが、コストパフォーマンスや測定精度の点より、0.05が好ましく、0.1がより好ましい。
本発明においては上記方法により得られたポリエステルを用いて固相重縮合することが好ましい。さらに、該固相重縮合により得られた高重合度ポリエステルを用いて紡糸する事により、例えば、タイヤコード用原糸、魚網用、フィルター用不織布、安全ベルト等に用いられる高強力繊維を得るのが好ましい。
上記の得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度の標準偏差(s)を上記範囲にすることで、該固相重縮合反応の安定化に繋がりに得られる固相重縮合されたポリエステルの品質が均一化される。
本発明方法により得られたポリエステルは、前述のごとくカルボキシル末端基量の変動が抑制されているので、固相重縮合反応速度が安定化し、得られるポリエステルの品質、特に、極限粘度が安定される。例えば、一定条件で固相重縮合を実施した時のポリエステルの極限粘度の標準偏差(s)が0.008以下であることが好ましい。0.007以下がより好ましく、0.005以下がさらに好ましく、0.003以下がよりさらに好ましい。該極限粘度の標準偏差(s)が0.008を超えた場合は、紡糸時の糸切れ回数が増大するので好ましくない。一方、下限は無変動である0が最も好ましいが、測定精度やコストパフォーマンスの点より、0.0005が好ましく、0.001%がより好ましい。
本発明を、以下の実施例を用いて具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を例示するものであり、限定されるものではない。また、下記の実施例中の極限粘度、オリゴマーカルボキシル末端基濃度及びポリマーカルボキシル末端基濃度は下記の方法により測定した。
(1)極限粘度
試料をフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)50mlに溶解する。この溶液を40mlウベローデ粘度管に取り、30℃の恒温槽中で落下秒数を計測して極限粘度(IV)を算出した。
(2)オリゴマーカルボキシル末端基濃度
オリゴマーを乾燥に呈すことなくハンディーミル(粉砕器)にて粉砕した。試料1.00gを精秤し、ピリジン20mlを加えた。沸石を数粒加え、15分間煮沸還流し溶解させた。煮沸還流後直ちに、10mlの純水を添加し、室温まで放冷した。フェノールフタレインを指示薬としてN/10−NaOHで滴定した。試料を入れずにブランクも同じ作業を行う。なお、オリゴマーがピリジンに溶解しない場合は、ベンジルアルコール中で行った。下記式に従って、AVo(eq/ton)を算出する。
AVo=(A−B)×0.1×f×1000/W
(A=滴定数(ml),B=ブランクの滴定数(ml),f=N/10−NaOHのファク
ター,W=試料の重さ(g))
該測定は3回行いその平均値を用いた。
(3)ポリマー酸価
試料15mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/CDCl=1/1混合溶媒0.13mlに溶解し、CDCl 0.52mlで希釈し、さらに0.2Mトリエチルアミン溶液(HFIP/CDCl 1/9)を22μl添加した溶液を用いて、500MHzのH−NMR測定をして定量した。
該測定は3回行いその平均値を用いた。
(実施例1)
エチレングリコール及びテレフタル酸をモル比が1.7となるようにスラリー調製槽に連続的に供給した。該スラリーはスラリー調整槽内スラリー温度が90±3℃になるようにグリコール温度を制御した。スラリー調製槽の温度制御は連続的にスラリー調製槽温度と該調製槽に供給するグリコール温度を監視しながら、フィードバック回路により連続的にグリコール添加温度を熱交換器を用いて変更することで制御をした。そのスラリーと三酸化アンチモンをエステル反応槽へ連続的に供給し、圧力0.2Mpa、255℃で連続的に第1エステル化反応を行った。続いて第2エステル化反応槽にて第2エステル化反応を260℃で行い、さらに、第3エステル化反応槽にて第3エステル化反応を260℃で行いオリゴマーを得た。スラリー流量の変動率は設定値の±1.5%以内に制御した。該スラリー流量はロータリーピストン流量計を用いて送液ポンプの回転数を変えて調整した。また、エチレングリコール及びテレフタル酸をモル比は、±0.25%以内に制御した。該モル比の調整は、近赤外線分光光度計を用いてスラリーのテレフタル酸量を計測して、スラリー調製槽に供給するエチレングリコール量を調整することにより行った。また、第1エステル化反応槽の温度および圧力変動は±1.3%以内に制御した。また、第1エステル化反応槽の液面レベルの変動は±0.2%以内であった。
次いで、重縮合反応槽において減圧下で連続的に重縮合反応を行った。生成したポリマーはストランド状にして抜き出し、水冷後にペレット状態にカットした。以上の方法により連続的にペレットを生産し、時間の異なる代表サンプルを採取した。そのサンプルの極限粘度、オリゴマー酸価、ポリマー酸価を測定した。そのサンプル間の平均値および標準偏差(s)を表1に示す。いずれの測定値も良好で安定に推移し、品質変動の小さいポリエステル樹脂が得られた。
なお、表1に示した値は、12時間毎にサンプリングした50個のサンプル(25日分)の評価結果である。また、標準偏差(s)は下記式で求めた。
標準偏差(s)={(測定値―平均値)の和/サンプル数(50)}1/2
(比較例1)
実施例1において、第1エステル化反応槽に供給するスラリー温度の制御を取りやめる以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。スラリー温度は90±5℃であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の方法において、スラリー調製槽に温度調整機能を付加してスラリー温度調整の精度を上げるように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。スラリー温度は90±2℃であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の方法において、スラリー調製槽にスラリーの循環ラインを設け、該循環ラインを用いて調製槽中のスラリーを循環させと共に、該スラリー調製槽および循環ラインにも温度調整機能を付加し、かつ該スラリー調製槽からエステル化反応槽へのスラリーの移送ラインにも温度調整機能付加することによりスラリーの温度の調整精度を上げるように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。スラリー温度は90±1℃であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例2の方法において、スラリー調製槽からエステル化反応槽への移送ラインの途中に攪拌機および温度調整機能を有したスラリー貯留槽を設けて、該スラリー貯留槽においてもスラリーの温度制御を行いスラリー温度の調整精度を上げるように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。スラリー温度は90±0.5℃であった。結果を表1に示す。
Figure 2007009145
(実施例5〜8)
実施例1で得られたポリエステル樹脂を固相重合反応槽へ供給し、減圧下67Pa、槽内温度を240℃コントロールした状態で6時間、固相重合反応を実施した。同様の方法で5バッチ反応をおこない、反応終了後に各バッチのレジンをサンプリングして極限粘度測定を実施した。また、得られた固相重縮合ポリエステルを用いてタイヤコード用原糸の紡糸を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
それぞれ比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂を使用した以外は、実施例2に準じて固相重合を5バッチ行い、レジンをサンプリングした。また、得られた固相重縮合ポリエステルを用いてタイヤコード用原糸の紡糸を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007009145
本発明のポリエステル製造方法は、エステル化反応工程に供給する原料スラリーの温度を特定範囲に制御するという極めて単純な方法により、重縮合反応工程に供給するポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制されるので次行程の重縮合反応の変動が抑制される。そのために得られるポリエステルの品質変動が抑制され極めて均質なポリエステルが安定して生産することができる。本発明のポリエステルの製造方法は、エステル化反応が、計測精度が高く、かつ長期運転をしても計測値の信頼性が安定しているスラリー温度で制御されるので長期連続運転しても制御系の信頼性が安定しているという特徴を有する。従って、品質と経済性のバランス、すなわちコストパフォーマンスが極めて高い制御方法であるといえる。また、該ポリエステルをプレポリマーをして用いることにより、固相重縮合反応の安定化ができ、該固相重縮合ポリエステルを用いることにより、高強力繊維の紡糸操業性を向上することができる。従って、産業界に寄与することが大である。

Claims (9)

  1. ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に定量供給し、複数のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い引き続き重縮合を行いポリエステルを連続的に製造する方法において、該スラリーの温度を設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に供給することを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. エステル化反応槽へ供給するスラリー流量を設定値±3%以内に制御することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値の±105%以内に制御することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. スラリー調製槽に供給される原料グリコールの温度を制御することによりエステル化反応槽に供給するスラリー温度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  5. スラリー調製槽および/またはスラリーの移送ラインの温度制御をすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  6. スラリー調製槽に循環ラインを設けて、スラリー調製槽中のスラリーを循環させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  7. スラリー調製槽からエステル化反応槽に供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  8. 請求項1〜7に記載のポリエステル製造方法により得られたポリエステルを固相重縮合することを特徴とするポリエステルの固相重縮合法。
  9. 請求項8に記載の固相重縮合法で得られたポリエステルを紡糸されてなることを特徴とする高強力ポリエステル繊維。
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