JP2006528452A - トリミングのない精巧な水晶発振器 - Google Patents
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Abstract
本発明は、予め決定された周波数を有する発振信号を発生する水晶発振器に関し、この場合、周波数の2乗に反比例する負性抵抗を有する周波数依存型負性抵抗回路(FDNR)が、発振器の水晶(Q)に接続される。これによって、水晶(Q)の両端間の電圧は、振幅制御手段(10)によって供給される電流の時間積分に近付き、振幅制御手段(10)の入力電圧は、水晶(Q)を流れる電流の時間積分に近付く。周波数依存型負性抵抗回路(FDNR)の積分動作に起因して、精巧なキャパシタ又は他の精巧なリアクタンス素子を必要としない。したがって、トリミングなしで高精度を達成することができる。一例として、周波数依存型負性抵抗回路は、発振器の水晶(Q)に接続した出力部を有する第1の積分回路と、水晶(Q)に接続した入力部を有する第2の積分回路と、振幅を制御するのに用いられる増幅回路とを具えることができる。
Description
本発明は、予め設定された周波数を有する発振器信号を発生する水晶発振器に関し、特に、直列共振周波数で動作する基本モード水晶発振器に関する。
水晶発振器は、正確な周波数又は時間基準を必要とする電子回路において広く使用されている。これらの例は、検査及び測定装置、電子クロック、及び全ての種類の放送受信機を含む通信装置である。コスト及びサイズの理由から、トリミングを回避すること及び水晶それ自体以外の任意の精巧な素子の使用を回避することがしばしば望ましい。精巧でない素子を一体的に統合することができ、これによって、サイズを減少し、大量生産の場合には回路のコストを低減する。
基本モード水晶発振器は、通常ピアス型又は直列共振型である。ピアス発振器は、例えば、Janusz Groszkowski, “Frequency of self-oscillations”, Panstwowe Wydawnictwo, Warszawa and Pergamon Press, Oxford, London, New York and Paris, 1964に記載されている。この文献において、ピアス発振器は、ga発振器(ga-oscillator)と称されている。さらに、ピアス型及び直列共振型の発振器は、C.A.M. Boon, “Design of high-performance native-feedback oscillators”, Ph. D. thesis, Delft University of Technology, 1989に記載されている。直列共振発振器についての情報を、E. H. Nordholt, et al., “A systematic approach to the design of single-pin integrated crystal oscillators”, 30th Midwest symposium on circuits and systems, 1998で見つけることもできる。
以下、用語「ピアス発振器」を、水晶と、キャパシタと、用いられる能動素子の正確な実現又は個数に関係ないある種の相互コンダクタンス増幅器とを具える任意の水晶発振器を示すのに用いる。
図1は、ピアス発振器としての一般化した線形回路図を示し、このピアス回路は、周波数決定素子としての水晶Qと、発振回路の良好な周波数精度を得るために精巧にし又はトリミング(微調整)する必要がある二つのキャパシタCLA,CLBとを具える。さらに、水晶Qに対する帰還用の発振信号を増幅する相互コンダクタンス増幅器10が設けられる。周知のナイキスト安定化基準を満足しないように相互コンダクタンス値が選択されたときに発振が生じる。線形回路動作の下で電力が最初に供給されるときに発振は零から構成される。しかしながら、相互コンダクタンス増幅器10の増幅器飽和及び他の非線形的な影響又は振幅制御機能を制限すると、ピアス発振器の振幅が無限に構成される。
水晶発振器は、通常、固定周波数発振器であり、この場合、安定性及び精度が主に考慮される。相互コンダクタンス増幅器10は、入力電圧に比例する出力電流を発生し、このことは、電圧差入力を取り出し、帰還回路を通じて水晶Qに供給される電流駆動出力を生成することを意味する。これによって、損失エネルギーを水晶Qに再供給することができ、その間ほとんど負荷がかからない。
図1に示すような従来のピアス発振器において、水晶Qと、二つのキャパシタCLA,CLBの直列接続との組合せは、発振信号の周波数を設定し、この場合、二つの直列キャパシタの値は、負荷キャパシタンスとして知られている。これは、トリミングなしであるとともに非常に精巧なキャパシタなしで高い精度が要求されるときに明らかに不都合である。負荷キャパシタンスに対する周波数の感度を、負荷キャパシタンスを増大することによって減少することができる。しかしながら、これは、多くのチップ領域を必要とするためにICの実現には不都合がある。一例として、典型的な集積キャパシタの10〜20%の公差の影響を周波数誤差の数ppm(百万分率)まで減少する場合に数百pFが要求されることがある。負荷キャパシタンスが大きくなると、要求される非減衰相互コンダクタンスが大きくなり、これは、供給電流を低く保持する必要がある場合には不便である。
二つの負荷キャパシタCLA,CLBのフィルタ処理の効果に起因して、ピアス発振器は、直列発振器を超える水晶Qのオーバートーン(overtone)で発振を行いにくくなる。このフィルタ処理の効果は、非線形相互コンダクタンス増幅器10で発生した高調波に起因する周波数シフトも大幅に減少する。
ピアス発振器に対して、水晶及び所定の型の負性抵抗回路からなる直列共振水晶発振器は、トリミング及び精巧な素子の問題を有しない。しかしながら、負性抵抗及び水晶の受動的な並列キャパシタンスを組み合わせた結果、複素面(complex plane)の右半分に極が生じ、これによって寄生緩和発振(parasitic relaxation oscillation)が生じる傾向がある。さらに、これら発振器は、オーバートーンで不所望な発振の影響を更に受けやすくなる。緩和発振を、負性抵抗回路の帯域幅を減少することによって除去することができるが、これは、周波数の精度に影響を及ぼす。直列水晶発振器の発振周波数は、振幅を制御するためにクリップが用いられるときに発生する高調波の影響に対して更に敏感になる。ハーモニックバランス法(harmonic balance method)を用いることによって、ジャニス・グロスコスキー(Janusz Groszkowski)は、ピアス発振器の周波数誤差が相互コンダクタンス増幅器10からの電流の高調波歪に依存することを示した。従来の直列発振器によって、非線形性に起因する周波数誤差は、振幅がハードクリップ増幅器(hard clipping amplifier)によって決定される場合及び高次の高調波を減衰する帯域幅制限回路が存在しない場合に過度になる。図1のキャパシタCLA,CLBによって達成されるフィルタ処理の影響が存在しないために、3次の高調波は、ピアス発振器の9倍の影響を有し、5次の高調波は、ピアス発振器の25倍の影響を有し、7次の高調波は、ピアス発振器の49倍の影響を有する、等々。
独自の並列共振水晶発振器が、David Ruffieux, “A high-stability, ultra-low-power differential oscillator circuit for demanding radio applications”, ESSCIRC 2002, pp.85-88, 2002で提案されている。この文献は、特に、文献EP01 202 173を言及している。この並列共振水晶発振器は、零負荷キャパシタンスを有する水晶並列共振に非常に近付いて動作する。この回路が低電力アプリケーションに対して非常に期待できると思われるとしても、チップ、パッケージ及びPCB寄生キャパシタンスが精巧であり又は水晶の静電キャパシタンスCOより著しく小さい場合にのみ、この回路は、トリミングなしで非常に高い精度を達成することができる。これによって、PBC設計を解決の困難なもとにしている。さらに、水晶製造者は、水晶の精度に対してほぼ零の負荷キャパシタンスを保証する必要がある。
本発明の目的は、トリミングを必要としない高精度の水晶発振器を提供することである。
この目的は、請求項1で規定した水晶発振器によって達成される。したがって、提案した水晶発振器は、緩和発振の問題なく、かつ、ピアス発振器と同様に高調波及びオーバートーンに対して低い感度を以って直列共振周波数で正確に動作する。それは、任意の精巧若しくは大きなキャパシタ又は水晶以外の精巧な素子を必要とせず、したがって、一体的な統合に非常に適している。回路を、PCB寄生に対して理想的な耐性となるよう設計することができる。
一例として、周波数依存型負性抵抗回路は、水晶に接続した出力部を有する第1の積分回路と、水晶に接続した入力部を有する第2の積分回路と、増幅器とを具えることができる。第1の集積回路の出力部を、低インピーダンス電圧出力部とすることができ、第2の積分回路の入力部を、低インピーダンス電流入力部とすることができ、水晶の低直列共振インピーダンスに対する良好な整合を達成することができる。したがって、周波数依存型負性抵抗回路の積分器は、無限キャパシタンスを有するキャパシタとして動作し、その結果、発振周波数は、直列共振周波数に近付き、水晶の両端間の電圧は、増幅回路によって供給される電流の時間積分に近付き、増幅回路の入力電圧は、水晶を流れる電流の時間積分に近付く。実際には、これは、周波数の2乗で降下する負性抵抗を回路が有することを意味するが、それは、リアクタンス部を有しない。増幅回路がクリップを行うと、抵抗は、任意のリアクタンス部を有することなく零となる。したがって、要求される精巧な素子は、水晶それ自体だけである。
増幅回路を、クリップ増幅回路又は利得制御増幅回路とすることができる。特に、増幅回路を、相互コンダクタンス増幅器とすることができる。
第1及び第2の積分回路にバイアスをかけるために少なくとも一つの直流帰還ループを設けることができる。この直流帰還ループは、第1及び第2の積分器に適切にバイアスをかけ続ける役割を果たす。一例として、直流帰還ループは、水晶に並列接続した抵抗を具えることができ、これによって、簡単な実現を達成する。
増幅回路は、トランジスタ手段の差動対を具えることができ、これによって、簡単な実現を達成する。
第1及び第2の積分回路は、帰還キャパシタを有する単一段積分相互コンダクタンス増幅器を具えることができる。他の例として、帰還キャパシタを有する2段積分相互コンダクタンス増幅器を用いることができる。この場合、2段積分相互コンダクタンス増幅器の出力段の第1トランジスタ素子を、第2トランジスタ素子によってバイアスをかけることができる。さらに、抵抗手段を、更なる位相補償を行うために帰還キャパシタに直列接続することができる。当然、2を超える段の積分器の実現も可能である。
水晶発振器は、シングルピン形態を有することができ、この場合、水晶の一端が基準電位に接続される。他の例として、水晶発振器は、2ピン形態を有することもできる。いずれの場合も、増幅回路の不所望な安定バイアスポイント(stable bias point)を防止するために反ラッチアップ回路を設けることができる。
本発明において、ピアス発振器の利点の一部を有する選択的な直列共振発振器(alternative series resonant oscillator)を設ける。図1のピアス発振器の負荷キャパシタ(load capacitor)CLA及びCLBが著しく大きく、かつ、それに応じて相互コンダクタンス増幅器(transconductance amplifier)10の相互コンダクタンスGが増大すると仮定する。負荷キャパシタンスが増大するに従って、発振周波数は、直列共振周波数に近付き、負荷キャパシタCLA及びCLBに対する感度が減少する。第1の負荷キャパシタCLAを非常に大きく構成したとき、そのリアクタンスは非常に小さく、相互コンダクタンス増幅器10の出力電流のほとんど全てが、第1のキャパシタCLAを流れる。その結果、第1の負荷キャパシタCLAの両端間の電圧は、相互コンダクタンス10から供給される電流の時間積分を第1の負荷キャパシタCLAのキャパシタンスで除算したものにほぼ等しくなる。この近似は、第1の負荷キャパシタCLAのキャパシタンスが増大するに従って更に正確になる。同様に、第2の負荷キャパシタCLBが大きくなるに従って、第2の負荷キャパシタCLBの両端間の電圧が降下し、水晶Qの両端間の電圧が、第1の負荷キャパシタCLAの両端間の電圧に近付く。第2の負荷キャパシタCLBの両端間の電圧は、水晶Qを流れる電流の時間積分を第2の負荷キャパシタCLBのキャパシタンスによって除算したものに常に等しくなる。
したがって、第1及び第2の負荷キャパシタCLA及びCLBのキャパシタンスが無限に増大する場合、すなわち、CLA→∞及びCLB→∞の場合、発振周波数は、直列共振周波数に近付き、水晶Qの両端間の電圧は、非線形相互コンダクタンス増幅器によって出力された電流の時間積分に近付き、相互コンダクタンス増幅器10の入力電圧は、水晶Qを流れる電流の時間積分に近付く。
本発明によれば、そのような動作を、任意の無限キャパシタ又は無限相互コンダクタンスを必要とすることなく図2に示す回路で実現できる。実際には、図2の回路は、周波数の2乗で降下する抵抗を有する周波数依存型負性抵抗回路FDNRを有するが、それはリアクタンス部を有しない。振幅を制御するためにクリッピングを用いる場合、FDNRのインピーダンスは、理想的には任意のリアクタンス部のないクリッピング中に小さくなる、理想的には零となる必要がある。
図1のピアス発振器の水晶Qを、独立した電流源に置き換える場合、第2の負荷キャパシタCLBの両端間電圧vCLBは、電流源からの電流iの時間積分に比例する。相互コンダクタンス増幅器10がクリップを行わない限り、同様なことが出力電流itcにも当てはまる。第1の負荷キャパシタCLAの両端間の電圧vCLAは、相互コンダクタンス増幅器10からの電流の時間積分と独立した電流源の電流の時間積分との和に比例する。これは、以下の式によって表される。
同様なことがラプラス領域で表され、この場合、s=jω=j2πfである。
したがって、分離された水晶Qを有する水晶端子間のインピーダンスは、
発振振幅を行うためにクリッピングを用いる場合、インピーダンスは、相互コンダクタンス増幅器10がクリップを行うときに
ピアス発振器において、周波数は、水晶Q及びキャパシタCLA,CLBの組合せによって設定される。既に説明したように、これは、トリミングを行わないとともに非常に精密なキャパシタを使用することなく高精度が要求されるときに明らかに不利益である。理論的には、CLA及びCLBに対する感度は、CLA及びCLBが無限に近付くに従って零に近付き、発振周波数は、水晶の(ロードされていない)直列共振周波数((unloaded)series resonant frequency)に近付く。
式(7)及び(8)を見ると、式(7)の非減衰項(最終項)を一定に保持するためにCLA及びCLBが更に増大するとともにそれに応じてGが増大することによって、式(7)及び(8)のインピーダンスが以下の値に近付く。
相互コンダクタンス増幅器10がクリップを行わないとき、
相互コンダクタンス増幅器10がクリップを行わないとき、
s=j2πfを式(9)に代入すると、この式が周波数依存型負性抵抗(j^2=−1)を規定し、抵抗が周波数の2条に反比例することを証明する。
したがって、トリミング又は精密なキャパシタを何ら必要とすることなく水晶の直列共振周波数で動作する水晶発振器を、式(9)に従う周波数依存型負性抵抗回路FDNRを水晶Qに接続することによって構成することができる。式(9)の周波数インピーダンスに起因して、負抵抗回路FDNRは、正規形ピアス発振器(normal Pierce oscillator)のような水晶のオーバートーン共振に対して等しく小さい感度を有する。振幅制御の一部の手段を、式(9)の係数Kを制御する低速の振幅制御ループ又は式(9)及び(10)で表される値の間でインピーダンスを切り替える所定のクリッピング機構によって設ける必要がある。
抵抗が周波数の2乗に反比例する周波数依存型負性抵抗回路は、フィルタ回路で頻繁に用いられる。しかしながら、たいていの一般的なフィルタの実現は、これらが制御可能であるときには水晶発振器に適切でなく、適切なクリッピング動作を有しない。発振器に一般的に用いられる負性抵抗回路は、制御可能であり又は適切なクリッピング動作を有するが、その抵抗は、周波数の2乗に反比例しない。
好適な実施の形態を、図3に示すような水晶発振器に基づいて説明し、この場合、周波数依存型負性抵抗回路として二つの積分器I1及びI2並びに増幅器10を具えるフィルタ回路に、水晶Qが含まれる。
図3の回路は、負性抵抗回路FDNRの既に説明した好適な特性を有する。図3において、周波数依存型負性抵抗回路は、二つの積分器I1及びI2を具える。さらに、フィルタを減衰しない増幅器10を設ける。通常、発振振幅は、増幅器10の非線形性によって設定されるが、発振振幅を規定する振幅制御ループを良好に用いることができる。左側の積分器I2は、低インピーダンスの電流入力部を有し、右側の積分器I1は、低インピーダンスの電圧出力部を有する。図3の水晶Qを独立の電流源に置き換えると仮定する。左側の積分器I2の出力信号は、電流源からの電流の時間積分に比例する。増幅器がクリップを行わない限り、同様なことが増幅器10の出力信号に当てはまる。この場合、右側の積分器I1の出力電圧は、電流の2回時間積分に比例する。左側の積分器I2の入力の低インピーダンスのために、電流源の両端間の電圧は、右側の積分器I1の出力電圧にほぼ等しくなり、したがって、電流の2回時間積分に比例する。
インピーダンスの項で説明したように、これは、切り離された水晶を有する水晶Qの端子間のインピーダンスが
であることを意味し、この場合、Kを、積分器I1,I2及び増幅器10の構成に依存する定数とする。これは、式(9)によって要求される正確なインピーダンスである。増幅器10がクリップを行うと、インピーダンスは、右側の積分器I1の出力インピーダンスと左側の積分器I2の入力インピーダンスとの和となる。これは小さく、理想的には零である。振幅を制御するためにクリッピングが用いられる場合、図2の2回積分のために、クリッピング増幅器10に発生する高調波に対する発振周波数の感度は、ピアス発振器における場合のように小さい。
明らかに、端子において同一動作を有する他の任意の回路も、精密な水晶発振器に適切である。
図3に示す第1及び第2の積分器I1及びI2を、例えば、演算増幅器及び帰還キャパシタを有する積分回路として実現することができる。
一般に、図3の第1の積分器I1を、低インピーダンスの電圧出力部を有する積分器とすることができ、図3の第2の積分器I2を、低インピーダンスの電流入力部を有する積分器とすることができる。図3の増幅器10を、クリッピングにより又は個別の振幅制御ループによって制御された利得を有することにより振幅を制御する任意の増幅器とすることができる。第2の積分器I2の出力量、例えば、電圧、電流又は電力、及び、第1の積分器I1の入力量、例えば、電圧、電流又は電力に応じて、制御又はクリッピング増幅器10を、相互コンダクタンス、相互インピーダンス、電圧、電流、電力、電圧−電力、電流−電力、電力−電圧、又は電力−電流増幅器とすることができる。さらに、第1及び第2の積分器I1,I2に対する適切なバイアスを保持するために直流(DC)帰還の一部の形態を設けることができる。これを、例えば、各積分器の周辺の個別のDC帰還ループ又は所定の全体に亘るDC帰還ループによって達成することができる。最も簡単な実現を、水晶Qに並列な(図示しない)大抵抗とすることができる。
図4は、二つの演算増幅器20,22及び各帰還キャパシタCA,CBから構成された二つの積分回路を有する更に特定した又は実用的な一般化した回路を示す。さらに、図1に示すような相互コンダクタンス増幅器10を用いる。図4に示す実現は、電流入力部及び電圧出力部を有する積分器と、クリッピング相互コンダクタンス増幅器10とからなる。クリッピング相互コンダクタンス増幅器10の最も簡単な例は、能動素子、例えば、バイポーラトランジスタの簡単な差動対である。しかしながら、更に精巧なクリッピング回路を用いることもできる。
図5及び6は、図3の積分器I1及びI2の二つの直接的な例を示す。図5は、簡単な単一段の積分相互コンダクタンス増幅器を示し、それは、npnトランジスタNPN1と、帰還キャパシタCAと、バイアス電流I1を発生する電流源とを具える。
さらに、図6は、第1及び第2の積分器I1及びI2の2段の形態を示し、この場合、他の第2及び第3のnpnトランジスタNPN2及びNPN3を設ける。図5に示すように、バイアス電流I1を発生する電流源は、電源電圧VCCに接続され、それに対して、第1のnpnトランジスタNPN1は接地される。第2のnpnトランジスタNPN2は、出力段トランジスタである第3のnpnトランジスタNPN3のバイアス化を処理し、それと同時にある種のマルチパス周波数補償を行う。第1及び第2のnpnトランジスタのベース端子は、両方とも積分器の入力端子に接続される。バイポーラトランジスタを、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、JFET(Junction FETs)や、HEMT(High Electron Mobility Transistors)や、GaAsFETs(Gallium Arsenide FETs)や、熱電子管のような他の能動素子に置き換えることができる。図4及び5の両方の回路において、他の位相補償を行うために小抵抗を帰還キャパシタに直列接続することができる。
既に説明したように、切り離された水晶Qを有する水晶ピン間の小信号インピーダンスを、周波数の2乗で減少する周波数依存型負性抵抗とする。振幅制御ループによって制御され、又は、正確にクリップされるとともに、クリッピングの時に小さい、好適には、抵抗性のインピーダンスが設けられる場合、提案された水晶発振器で使用する際に他の周波数依存型負性抵抗を適切に実現することができる。
さらに、本発明による水晶発振器を、いわゆるシングルピン水晶発振器(single-pin crystal oscillator)形態で実現することもできる。そのようなシングルピン水晶発振器形態において規定することによって、水晶ピンの一方が、接地され、電源電圧に接続され、他の任意の固定基準電位に接続される。適切に設計された積分器I1及びI2によって、図4に示す水晶Qの水晶ピンの一方を、接地し又は電源電圧に接続することができる。本発明の第1〜5の実施の形態を、図7〜15に基づいて更に詳細に説明する。
図7は、第1の実施の形態による水晶発振器の線形回路図を示し、この場合、第1及び第2の積分器I1,I2は、図5に示す単一段積分器に対応する。簡単のためにバイアス回路を図7で省略する。第1の積分器は、帰還キャパシタCAを有する第1のトランジスタQ1を具え、第2の積分器は、対応する帰還キャパシタCBを有する第2のトランジスタQ2を具える。相互コンダクタンス増幅器10は、トランジスタQ3及びQ4の簡単な差動ついによって実現され、したがって、柔軟な制限機能(soft limiting functionality)を有するクリップ増幅器に対応する。
既に説明したように、本発明による水晶発振器を、シングルピン発振器として実現することもできる。そのようなシングルピン発振器において、水晶ピンの一方が接地され又は電源電圧VCCに接続される。図8〜15に示す第2〜5の実施の形態は、そのようなシングルピン発振器の他の例に対応する。簡単のために、相互コンダクタンス又はクリップ増幅器を、簡単な差動対として示し、積分器の能動部を単一のトランジスタとして実現する。しかしながら、更に精巧な実現を用いることもできる。一例として、2段積分器を図11及び12で実現する。
図8は、接地された水晶電極又はノードAを有する第1のシングルピン形態としての第2の好適な実施の形態による水晶発振器を示す。その結果、第1の積分器のトランジスタQ1のコレクタ端子及び第1の積分器の帰還キャパシタCAの一方の端子も、グランドを通じた水晶Qへの対応する接続を提供するよう接地される。第2の積分器は、帰還キャパシタCBを有する第2の積分器Q2を具える。図8において、バイアス回路を省略した。
図9は、バイアス回路を有する第2の実施の形態の更に詳細な回路図を示す。バイアス回路は、電流源Vbias1及びVbias2からなる。水晶Qと第1の電圧源Vbias1との間に接続した抵抗R1は、非常に高い抵抗値を有することができ、これは、条件安定性を予防するのに望ましい。図9及び以下の図面に示す電流源を、定電流供給を行う任意の適切な回路によって実現することができる。
図10は、バイアス回路及び追加の反ラッチアップ回路(anti-latch-up circuitry)を有する第2の好適な実施の形態の更なる特定の回路図を示す。図10の反ラッチアップ回路は、クリップ増幅器の差動トランジスタQ3及びQ4のベース端子間にダイオードD1を接続することによって実現される。通常「ラッチアップ」と称される不所望な安定バイアスポイントは、差動対の第3のトランジスタQ3が飽和したときに生じる。この場合において、第2のバイアス電圧源の電圧を、第4のトランジスタQ4のベース−エミッタ間のしきい値電圧VBEより小さくする必要がある。
図11は、バイアス回路及び他の反ラッチアップ回路を有する第2の好適な実施の形態の他の更なる特定の回路図を示し、この反ラッチアップ回路は、ダイオードD1,D2及び他の電圧源Vbias_antiLUからなる。この反ラッチアップ回路は、第3のトランジスタQ3のベース端子と第2のバイアス電圧源Vbias2の基準端子との間の電圧を制限する。この場合において、第2の電圧源Vbias2の電圧は、第4のトランジスタQ4のベース端子とエミッタ端子との間のしきい値電圧VBEに対応することができる。
図12は、第3の好適な実施の形態の線形回路図を示し、これは、積分回路を除いて図9の第2の好適な実施の形態に対応する。特に、図9の単一段積分回路を、2段積分回路に置き換えた。第1の積分回路は、第1のトランジスタQ1と、図6の回路図と同様な対応する電流源を有する追加の第5及び第6のトランジスタQ5及びQ6とからなる。さらに、第2の積分回路は、第2のトランジスタQ2と、対応する他の電流源を有する追加の第7及び第8のトランジスタQ7及びQ8とからなる。図10及び11の反ラッチアップ回路は、ここでは省略した。
図13は、第4の好適な実施の形態の線形回路図を示し、これは、互いに相違する2段積分配置を有する図9の第2の好適な実施の形態に対応する。ここでは、第1及び第2の積分器にバイアスをかけるための追加のバイアス電源Vbias3、Vbias4及びVbias5を設ける。さらに、バイアス電流源Mbias4を設ける。第7のトランジスタQ7がnpnトランジスタであるので、第3のバイアス電圧源の電圧を十分に小さくする場合には反ラッチアップ回路を実際には必要としなくてもよい。さらに、第1のバイアス電圧源Vbias1の電圧が1.5VBEに等しいとともに信号振幅を十分に小さくする場合、バイアス源Vbias4,Mbias4及びVbias5の電圧値又は電流値を零に設定することができる。
図14は、第5の好適な実施の形態による他のシングルピン形態の水晶発振器の線形回路図を示す。ここでは、他の水晶電極又はノードBが接地されている。したがって、残りの回路を、図14に示すように対応して変形する必要がある。特に、第2の積分器の素子、すなわち、第2のトランジスタQ2及び第2の帰還キャパシタCBが接地される。ここでも、任意のバイアス又は反ラッチアップ回路を省略する。
図15は、バイアス回路が含まれる第5の好適な実施の形態の更なる特定の回路図を示す。変形配置により、三つのバイアス電圧源Vbias1,Vbias2及びVbias3を設ける。抵抗R1の抵抗値が、状況安定性を予防するのに好ましい比較的高い値であるとき、バイアス化は、バイアス電流源のソーシング(sourcing)及びシンキング(sinking)のマッチング(matching)に非常に依存するようになる。
本発明は、第1〜5の実施の形態の上記特定の回路図に制限されるものではなく、図2〜4の基本原理内の任意の観点で変更することができる。したがって、好適な実施の形態は、添付した請求の範囲内で変わる。
Claims (15)
- 予め設定された周波数を有する発振信号を発生する水晶発振器であって、
a)前記予め設定された周波数を決定する水晶と、
b)前記水晶に接続され、周波数の2乗に反比例する負性抵抗を有する周波数依存型負性抵抗回路と、
c)前記周波数依存性負性抵抗回路の内側の機構をクリップすることにより、又は、前記周波数依存型負性抵抗の値を制御する振幅制御ループにより前記発振器信号の振幅を制御する手段とを具えることを特徴とする水晶発振器。 - 前記周波数依存型負性抵抗回路が、前記水晶に接続した出力部を有する第1の積分回路と、前記水晶に接続した入力部を有する第2の積分回路と、前記発振器信号の振幅を制御する増幅回路とを具えることを特徴とする請求項1記載の発振器。
- 前記第1の積分回路の前記出力部を、低インピーダンス電圧出力部とし、前記第2の積分回路の前記入力部を、低インピーダンス電流入力部としたことを特徴とする請求項2記載の発振器。
- 前記増幅回路を、クリップ増幅回路又は利得制御増幅回路としたことを特徴とする請求項2又は3記載の発振器。
- 前記増幅回路が、相互コンダクタンス増幅器を具えることを特徴とする請求項4記載の発振器。
- 前記第1及び第2の積分回路にバイアスをかける少なくとも一つの直流帰還ループを更に具えることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記直流帰還ループが、前記水晶に並列に接続した抵抗を具えることを特徴とする請求項6記載の発振器。
- 前記増幅回路が、トランジスタ手段の差動対を具えることを特徴とする請求項2から7のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記第1及び第2の積分回路が、帰還キャパシタを有する単一段積分相互コンダクタンス増幅器を具えることを特徴とする請求項2から8のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記第1及び第2の積分回路が、帰還キャパシタを有する2段積分相互コンダクタンス増幅器を具えることを特徴とする請求項2から8のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記2段積分相互コンダクタンス増幅器の出力段の第1のトランジスタ素子が、第2のトランジスタ素子によってバイアスをかけられることを特徴とする請求項10記載の発振器。
- 前記帰還キャパシタに直列接続した抵抗手段を更に具えることを特徴とする請求項9から11のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記水晶発振器が、単一ピン形態を有し、前記水晶の一つの端子が基準電位に接続されることを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記水晶発振器が2ピン形態を有することを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の発振器。
- 前記増幅回路の不所望となりうる安定バイアスポイントを予防する反ラッチアップ回路を更に具えることを特徴とする請求項1から14のうちのいずれか1項に記載の発振器。
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