JP2006527229A - 単離された管腔器官及び生体脈管における内皮組織の保存のための方法及び装置 - Google Patents

単離された管腔器官及び生体脈管における内皮組織の保存のための方法及び装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、単離された管腔器官、特に血管やリンパ管などの生体脈管内の内皮を少なくとも0.1重量%の天然アルブミンと好ましくはL−グルタミンである栄養素基質とを含有する内皮保護的灌流液及びインキュベーション液を用いて処理及び保存するための方法及び装置に関する。本発明はさらに、器官又は脈管の疾病を処理するための移植組織としての管腔器官及び生体脈管の調製のための内皮保護的灌流液の使用、単離された管腔器官及び/又は生体脈管内の内皮損傷の修復のための内皮保護的灌流液の使用、及び、器官及び/又は脈管保存のための内皮保護的灌流液の使用に関する。

Description

(発明の背景)
本発明は、単離された管腔器官、特に血管やリンパ管などの生体脈管内の内皮をアルブミン含有の内皮保護的灌流液及びインキュベーション液を用いて処理及び保存するための方法及び装置、器官又は脈管の疾病を処理するための移植組織としての管腔器官及び生体脈管の調製のための内皮保護的灌流液の使用、単離された管腔器官及び/又は生体脈管内の内皮損傷の修復のための内皮保護的灌流液の使用、及び、器官及び/又は脈管の保存のための内皮保護的灌流液の使用に関する。
動脈硬化により引き起こされる血管閉塞は、多くの西欧諸国における器官疾病の主因である。したがって、脈管移植、つまり、病的で狭窄又は閉塞した生体脈管を健全な代替脈管により交換することは、そのような疾患の処理にとって高い臨床的価値がある。ドイツ連邦共和国においては、1以上の冠状動脈の動脈硬化性閉塞による心筋梗塞のために年間およそ20万人が死亡している。
動脈硬化により惹起されるさらに広く分布する疾病の様式は、末梢動脈閉塞症(pAVK)である。成人のおよそ5〜10%が末梢動脈の血行障害に苦しんでおり、ドイツ連邦共和国において年間およそ3.5万人の患者が四肢切断のような劇的な措置を必要としている。そのような場合でも、そのように異常に変異した生体脈管を、適切な代替脈管を用いて適時かつ外科的にバイパスすることにより、患者又はそれらの四肢が措置又は救済され得る。
バイパス手術では、これまでさまざまな脈管代替材料が使用されてきたが、それらは由来に応じて3種類に大別できる。すなわち、1)自己(=自分の体由来の)脈管移植片、2)生体的脈管移植片、及び、3)合成脈管移植片である。前記の2番目までの脈管代替材料は、「生体的脈管代替材」と呼ぶことができる。生体的脈管移植片は、さらに同種脈管移植片(同一生物種由来)と異種脈管移植片(異なる生物種由来)に区分される。合成脈管移植片とは普通は異種(アロ)可塑性(「アロ」はギリシア語で「異なる」「外来の」の意)脈管代替材であり、好適にはポリエステル(Dacron(登録商標))やポリテトラフルオロエチレン(PTFE;テフロン(登録商標))などの不活性の多孔プラスチックが使用される。
脈管手術、特にバイパス手術において最も重要で好ましい出発材料は、自己移植片である。生体脈管としては、大伏在動脈又は内胸動脈が好ましく使用される。両血管は冠状動脈手術において好ましく使用される。自己脈管の使用は、他の脈管移植片に比べて、いわゆる「開放率」の点で最高の成果をもたらす。「開放率」とは、脈管移植から一定時間が経過した後において開放している脈管の個数である。
冠状血管手術において、内胸動脈バイパスの80〜95%が、また使用された静脈バイパスでは65〜80%のみが、5年後において開放している。ここで留意すべきは、移植された生体脈管の20%が、体内移植後の初年以内に危険に狭窄又は完全に閉塞しているという事実である。静脈バイパスの場合の8〜16%が10年以内に、また内胸動脈バイパスではおよそ8%が、再手術を必要としている。
これらの数値から判明するのは、他の脈管移植片に比べて数多の長所を有する自己脈管代替材ですら、相当な機能の欠陥を免れ得ないことである。これらの機能の欠陥は脈管閉塞に基づいている。そのために、自己脈管代替材ですら、移植に対する満足すべき成果を達成できない場合がしばしばである。移植された脈管で観察されるそのような機能の欠陥、及びそれらの合併症のために、日常の外科的実務を改善する必要がある。開放しておりかつ機能的な生体脈管は生物にとって不可欠であり、また患者の生残のために必須である。
本発明の発明者らが観察したのは、生体脈管の急性閉塞(血栓症)及び脈管内壁の肥厚により引き起こされる再狭窄、並びにそれらに伴う機能の欠陥に対する重大な原因が、外科的実務において通例とされる脈管移植に際しての生体脈管の取り扱い方に基づいているということである。
外科的に取得され、体内移植が行われるまで従来の晶質液(生理食塩水、ブレトシュナイダー液など)中で保存された伏在静脈切片を調査するならば、脈管における真に驚愕すべき劣悪な内腔内皮を見つけるであろう。内皮(内皮細胞、内皮組織)は、生体脈管及び器官系全体の内表面を形成している。内皮は内膜の一部である。内膜は単層の内皮、内皮下層(本発明者らが見出した内皮下周皮細胞を含む薄い結合組織)、及び内弾性板からなり、血管機能の維持に不可欠な重要な生体機能を果たしている。原則的に、内皮は人体の事実上の血液容器とみなされるに違いない。
日常的に使用されているバイパス脈管の過半数が、もはや内腔内皮を備えていない。その理由は、自己脈管移植片が、脈管移植の前に脈管を無血状態にしてそれらの密閉性を保証するために、従来のインキュベーション液、例えば塩溶液(「生理食塩水」)又はブレトシュナイダー液による部分的に強い機械的負荷を以て処理されることにある。移植時の器官は、例えばウィスコンシン大学(UW)液、カロリナリンス液、及びHTK溶液により処理されるが、その際に内皮の機能に対する重要性が考慮されていないのである。本発明の発明者らは、そのような慣行的に用いられている手順が内皮機能を著しく損傷しており、その結果として内皮組織の完全な破壊が生じる恐れがあることを見出した。上述のように、内皮組織の損傷又は破壊が、生体脈管又は器官用移植片が移植後に閉塞してしまう理由の1つなのである。
生理食塩水による脈管の処理の結果、生体脈管は強い機械的負荷に晒される。なぜならば、脈管は通常は太いカニューレに接続され、調節不能な高圧の下で注射器を使って塩溶液にて処理されるからである。続いて、脈管はこの時点で液が滲出する脈管側枝を見つけるために少しずつカニューレから押し下げられ、該脈管側枝は適切な外科鉗子により直接的に結紮される。最終的に、移植目的のために調製された脈管切片は、密閉性を検査するためにその全長において再び高い圧力を受けるが、その際に単離された脈管の「膨張」を伴う。その際に脈管が受ける高い圧力により、内腔内皮層の大半、時にはいかなる残部さえもが破壊されて押し流される。
それにより判明するのは、外科的慣行におけるこのような生体脈管の取り扱いによって脈管移植片の内壁、つまり内膜とその内腔内皮組織が極度に損傷されるということである。
本発明の発明者らは、脈管機能の短期的維持(液体の流れが阻害されないための血栓性反応の阻止)、及び脈管内腔が閉塞しないようにする長期的保持(動脈硬化性狭窄、及びそれに続く血栓塞栓症の阻止)の観点から、内腔内皮組織が重要な意義を有することを見出した。
上記のような自己脈管移植片の取り扱いなどによる内皮層の破壊は、しばしば当該脈管の血栓症の原因となる。生物の循環系内の血栓堆積の発生を永続的に阻止できるのは、複雑な「抗凝集性」(血小板阻害性)、「抗凝固作用性」(凝固阻害性)、及び「繊維素溶解促進性」(繊維素融解性)の各活性により閉鎖された、健全で代謝的に活性な内皮被覆のみであることが知られている。
本発明の発明者らは、上記の抗血栓性機能をもはや発現できない内皮損傷部位では、脈管がさらに血栓化に傾くという十分な証拠を提供する。すべての大きな血管の内膜は、極めて高い濃度のいわゆる「組織因子」(TF)を発現しており、かつ内皮膜下に位置する「周皮細胞様」の細胞網がある。組織因子(TF)は膜貫通性の糖タンパク質であり、ヒトではこの種の細胞で構成的に発現している。この膜タンパク質は、血液凝固第VII因子のアクチベーターとして重要な機能を果たしており、最近の発見によれば、ほぼ全ての臨床的に重要な血栓形成過程の発生に関係している。健全で完全に密集した内皮は、とりわけ周皮細胞で発現された組織因子を、生理学的方法によって血管内流動血液から完全に防御する。中間位置の完全な内皮組織により達成される血流からの組織因子の防御は、生体脈管の急性血栓症とそれに続く閉塞を回避する。移植組織を調製する際の生理食塩水の使用時の内皮の破壊原因は、内皮組織においてエネルギー代謝及び維持代謝を全くあるいは僅かしか行うことができないためと思われる。これにより明らかとなるのは、生体脈管の短期的(急性)開放率は脈管内の内皮組織状態に全面的に依存することである。
ここで留意すべきは、完全に密な内皮層の生成が決して一回かぎりの事象でないということである、なぜならば、該層は血流により惹起される高いせん断力に対して常に耐久的に維持されねばならないからである。さらに詳細には、内皮組織の活発な代謝事象が、重要な役割を果たしている。その例として、内膜表面の損傷部位の被覆及び修復に必要な連続的細胞分裂プロセスと同様の持続的な接合プロセス、つまり特定のタンパク質による密な細胞間基底の閉鎖が挙げられる。これらのプロセスでは、とりわけゲル状表面層である糖衣が重要な役割を果たしている。
さらに本発明の発明者らにより認識されたのは、内皮組織の持続的保持及び再生能力が、脈管壁の長期的機能及び生体脈管の機能にとっても不可欠なことである。すなわち、完全かつ密な内皮層は、内皮膜下の細胞群の管理における内膜の特殊環境の創出及び維持に必要である。これらの細胞群は薄い網目として内皮の下側で展開しており、脈管壁損傷時には直ちに止血的に反応できるが、内腔を縮小することはない。但し、内皮が損傷し、あるいはこの組織が病んだ場合には、成長因子が血漿からこれらの内膜層に達して、内皮膜下の細胞群の激しくかつ増加的な増殖が起こる。その結果は、生体脈管壁の長期的に進行する増大的な硬化性変形、内腔の狭窄化、及び最終的には外科学的に懸念される再狭窄となる。この場合の「再狭窄」とは、脈管又は脈管移植片の反復的な狭窄であり、該当組織部位における血流循環の低下をもたらす。
前述の事柄から明らかとなったのは、脈管外科学分野においてこれまで通常用いられてきた前記の単離された管腔器官及び生体脈管の取り扱い方法が、内腔の内皮組織の混乱及び崩壊につながることであり、それにより脈管の急速又は長期的な再狭窄が引き起こされる。その結果として、当該患者における再度の外科的介入が必要となり、当然ながら彼らは疾病に関して明らかに劣化した予後を経ることになる。
本発明の目的は、より信頼性が高く長期的に使用できる器官移植片及び脈管移植片を提供するために、脈管の内皮層の保存、つまり維持及び場合によっては再生をも可能にする、単離された管腔器官及び生体脈管を処理するための穏やかな方法及び灌流液を提供することにある。
この目的は、請求項1から54の主題に基づく発明により達成される。
すなわち、本発明は、内皮保護的灌流液及びインキュベーション液、ここで述べた内皮保護的灌流液の使用、さらに管腔器官及び生体脈管を内皮保護的灌流液と接触させることを含む管腔器官及び/又は生体脈管の内皮保存的な処理のための方法に関する。
(発明のサマリー)
本発明は、単離された管腔器官又は生体脈管、並びに該管腔器官又は生体脈管が本発明の内皮保護的灌流液(インキュベーション液)により処理される脈管系の、内皮保存的な処理及び保存のための方法に関する。
管腔器官の内皮保存的な処理のための方法は、単離された管腔器官を内皮保護的灌流液に接触させることを含み、前記内皮保護的灌流液は少なくとも以下の成分:
(a)生理電解液、
(b)少なくとも0.1重量%の天然アルブミン、
(c)栄養素基質、
を含み、前記処理によって、前記管腔器官の内腔における内皮組織の保存及び/又は修復が行われる。
好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、1〜10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清に代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、2.5体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、5体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、抗凝固処理された同種血漿調製品により代替されており、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている。
別の好ましい実施形態では、前記抗凝固処理された血漿調製品は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、ヒト血清タンパク質、アルブミン及び免疫グロブリンを含む。
別の好ましい実施形態では、前記抗凝固処理された血漿調製品は、以下の組成を有する:約100〜170mM ナトリウムイオン、約1〜15mM カリウムイオン、約1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、及び約50〜200mM 塩化物イオン、並びに、約25〜45g/l アルブミン、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリンを含有するヒト血清タンパク質を含み、pH値が約7.3〜約7.8、オスモル濃度が約200〜350mosmol/kg。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中の栄養素基質は、L−グルタミンである。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中のL−グルタミン濃度は、0.5〜10mMの間、好ましくは2.5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液中のL−グルタミン濃度は、5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記L−グルタミン濃度は、7.5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、以下の成分を含む:100〜150mM NaCl;1〜15mM KCl;0.1〜4mM MgSO4;0.5〜2mM KH2PO4;24〜48mM ヒスチジン−Cl、及び1〜3mM CaCl2
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、エネルギー基質、好ましくは2〜10mMのグルコース及び/又は1〜10mMのピルビン酸塩を含む。
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、0.1〜0.6U/mlのヘパリン、及び/又は、それぞれ50〜100μMの尿酸及び/又はアスコルビン酸塩を含む。
別の好ましい実施形態では、雰囲気下における前記生理電解液のpH値は、7.4±0.04である。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液は、追加的に抗生物質を含む。
別の好ましい実施形態では、前記抗生物質は、50〜400U/mlのペニシリン及び/又は0.1〜0.4mg/mlのストレプトマイシンである。
本発明の他の様相では、前記内皮保護的灌流液は、凝固因子及び同種凝集素を含まない血漿調製品である。
別の好ましい実施形態では、前記血漿調製品は、以下の成分を含む:100〜170mM ナトリウムイオン、1〜15mM カリウムイオン、1〜6mM カルシウムイオン、0.1〜4mM マグネシウムイオン、50〜200mM 塩化物イオン。
別の好ましい実施形態では、前記血漿調製品は、ウィルス不活化のためにβ−プロピオラクトン及びUV照射により処理されている。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液は、内皮促進性の1以上の内皮促進性の成長因子を含む。
別の好ましい実施形態では、前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び幹細胞因子(SCF)からなる群より選択されたものである。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液は、クエルセチンやルトシド(トリヒドロキシエチルルトシド又はその誘導体等)などのフラボノイドを含む。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液はパパベリン、アデノシン又は心停止濃度のKClなどの血管拡張性物質を含む。
別の好ましい実施形態では、前記管腔器官は、心臓、腸、子宮、腎臓、膀胱、肺、肝臓、又は脾臓である。
別の好ましい実施形態では、前記管腔器官は、生体脈管又は脈管系である。
別の好ましい実施形態では、前記生体脈管は、血管又はリンパ管である。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液は、本発明の装置を用いることにより管腔器官内に導入される。
本発明は、さらに、少なくとも以下の成分を含む内皮保護的灌流液に関する:
(a)生理電解液、
(b)少なくとも0.1重量%の天然アルブミン、
(c)0.5〜10mMのL−グルタミン。
好ましい実施形態では、前記天然アルブミンは、1〜10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清に代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記天然アルブミンは、2.5体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記天然アルブミンは、5体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記天然アルブミンは、10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清により代替されている。
別の好ましい実施形態では、前記L−グルタミン濃度は、2.5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記L−グルタミン濃度は、5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記L−グルタミン濃度は、7.5mMである。
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、下記成分を含む:100〜150mM NaCl;1〜15mM KCl;0.1〜4mM MgSO4;0.5〜2mM KH2PO4;24〜48mM ヒスチジン−Cl、及び1〜3mM CaCl2
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、エネルギー基質、好ましくは2〜10mMのグルコース及び/又は1〜10mMのピルビン酸塩を含む。
別の好ましい実施形態では、前記生理電解液は、0.1〜0.6U/mlのヘパリン、及び/又は、それぞれ50〜100μMの尿酸及び/又はアスコルビン酸塩を含む。
別の好ましい実施形態では、雰囲気下における前記生理電解液のpH値は、7.4±0.04である。
別の好ましい実施形態では、前記内皮保護的灌流液は、追加的に抗生物質を含む。
別の好ましい実施形態では、前記抗生物質は、50〜400U/mlのペニシリン及び/又は0.1〜0.4mg/mlのストレプトマイシンである。
本発明の別の様相では、前記内皮保護的灌流液は、抗凝固処理された非凝集性血漿調製品であり、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている。
別の好ましい実施形態では、前記抗凝固処理された調製品は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、ヒト血清タンパク質、アルブミン及び免疫グロブリンを含む。
別の好ましい実施形態では、前記抗凝固処理された血漿調製品は、以下の組成を有する:約100〜170mM ナトリウムイオン、約1〜15mM カリウムイオン、約1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、及び約50〜200mM 塩化物イオン、並びに、約25〜45g/l アルブミン、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリンを含有するヒト血清タンパク質を含み、pH値が約7.3〜約7.8、オスモル濃度が約200〜350mosmol/kg。
別の好ましい実施形態では、前記血漿調製品は、ウィルス不活化のためにβ−プロピオラクトン及びUV照射により処理されている。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液は、内皮促進性の成長因子を含む。
別の好ましい実施形態では、前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び幹細胞因子(SCF)からなる群より選択されたものである。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液は、クエルセチンやルトシド(トリヒドロキシエチルルトシド又はその誘導体等)などのフラボノイドを含む。
別の好ましい実施形態では、前記灌流液は、パパベリン、アデノシン又は心停止濃度のKClなどの血管拡張性物質を含む。
本発明はさらに、室(1)と、軸方向に移動可能なピストン(6)と、カニューレ(5)と、内皮保護的灌流液を含む貯蔵容器(7)と、密封装置(3)とを含み、前記カニューレは軸方向に動くピストン(6)に接続されて該ピストンと共に前記室に進入することができ、前記密封装置(3)は脈管の一方の端を握ることができ、前記カニューレは脈管の他方の端と接続されており、前記内皮保護的灌流液が前記貯蔵容器(7)から、好ましくは圧力勾配を以て、選択的に該生体脈管に導入されることができる、単離された生体脈管の内皮保存的な処理のための装置に関する。
別の好ましい実施形態では、前記密封装置は、きざみ付きつまみねじに積層状に配置された密封円板を含む。
別の好ましい実施形態では、前記密封円板は、1〜10mmの直径及び/又は0.3〜3mmの厚さを有する。
別の好ましい実施形態では、前記装置は、灌流液を加熱するための温度調整装置を追加的に含む。
好ましい実施形態では、前記装置において使用される灌流液は、上述の定義された溶液である。
本発明は、単離された管腔器官又は生体脈管の保存のための上述の内皮保護的灌流液の使用にも関し、前記灌流液は内皮組織を管腔器官又は生体脈管の内腔において維持及び/又は再生するための適切な状態を生み出す。
さらに、本発明は単離された管腔器官又は生体脈管における内皮組織の維持及び/又は修復のための内皮保護的灌流液の使用に関する。
本発明は、単離された管腔器官又は生体脈管における脈管閉塞の治療及び/又は予防のための内皮保護的灌流液の使用にも関する。
本発明は、ここに述べられた本発明の使用される灌流液の組成とそれらの実施形態の組成との組み合わせをさらに含む。当業者は、内皮保護的灌流液の組成が適用分野及び意図する用途によって変化し得ること、また内皮組織の機能を維持するために必要とされる追加的成分を含み得ることを認識するであろう。
(定義)
「内皮」または「内皮組織」とは、生体脈管及び漿液内腔を覆う細胞の単層を意味する。
「内皮細胞」とは、完全に分化して組織に組み込まれた内皮細胞だけでなく、まだ完全には分化していない内皮前駆細胞も意味する。
「内皮保護的灌流液」とは、単離された管腔器官及び生体脈管内の内皮組織の処理に有用で、それにより内皮組織の堅牢性が維持される溶液を意味する。内皮の剥離又は破壊は、内皮保護的灌流液の適用により阻止される。本発明の内皮保護的灌流液により、組織の再生能力だけでなく内皮細胞の分裂能力も維持される。該灌流液は、微細な脈管及び脈管切片にも浸透できるという特性を有する。
「内皮保護的」とは、内皮組織が維持(保存)、再生、及び/又は強化される、すなわち内皮がその組織構成及び構造を維持又は構築する特性を意味する。これには、内皮(内皮組織)に対して促進作用のあるすべての内皮保護的処置も含まれる。また、これには内皮組織の細胞結合の維持、細胞間連絡の維持、及び細胞間接着の維持が含まれる。さらに、この表現には内皮細胞の分裂促進、及び面積あたりの内皮細胞重量の増加も含まれる。
「灌流液」とは、単離された管腔器官及び脈管を保存するための溶液を意味する。灌流液は、「インキュベーション液」と同義に解釈することができる。
「生理電解液」とは、生理的方法で全血状態において見出される電解質の水溶液を意味する。「生理的」という表現は、個々のイオンの使用濃度を限定するものではなく、「非生理的」濃度、つまり生物では正常には生じない濃度も本発明の範囲に含まれると理解されるべきである。したがって、「生理的」という表現には、均一な浸透圧及び一定の分子濃度を与える等張液が含まれる。例えば、心停止液に見出されるカリウムやKClの含量が増せば、溶液の総イオン濃度はそれに応じて適応されなければならない。つまり、溶液が等張状態を維持するためには、溶液内の他イオンの濃度が引き下げられなければならない。好適な灌流液は、およそ290mosm/kgH2Oの血液又は血漿と等張である。
「接触する」とは、脈管内の内皮の維持及び/又は新生のために十分な時間において、灌流液を用いたインキュベーション、浸漬、リンス、又はその他の方法による器官又は脈管の処理を意味する。
「管腔器官」とは、心臓、腸、子宮、腎臓、膀胱、肺、肝臓、脾臓などに存在する一般的な内臓器官及び器官脈管系を意味する。「管腔器官」には血管(動脈及び静脈)やリンパ管のようなよく知られた生体脈管又は脈管系も含まれる。
「生体脈管」又は「脈管」とは、体液を運ぶための内皮で覆われた自己由来の脈管を意味する。とりわけ本発明において、それは動脈や静脈などの血管、及びリンパ管を意味する。
「血漿調製品」とは、(遠心分離による)血球の除去後に残留する非凝固化された血液の液体部分であり、血清とは異なって凝固因子を含んでいない。
「凝集」とは、本発明の意味において、抗体特異的な(凝集素を介した)赤血球の集塊を意味する。
「溶血素を含まない、又は自己由来血清」とは、受血者の赤血球に結合できる抗体(同種凝集素)が存在しない血清である。それにより、補体活性化及び血球溶解(分解)が阻止される。患者由来の血清と同様に、自己由来血清にはそのような潜在リスクは本来的に存在しない。
「栄養素基質」とは、エネルギー代謝におけるエネルギー産生のために細胞に用いられるアミノ酸又はタンパク質を意味する。一般的に、栄養素基質とは、糖、脂質、又はアミノ酸であり、それらは細胞によって同化されてエネルギー産生に用いられる。
「脈管疾患」とは、血管の疾病又は病態であり、例えば血管障害、脈管炎、特に動静脈狭窄症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、急性難聴、動脈瘤、動脈硬化、血栓症、静脈瘤、血栓静脈炎、間欠性跛行、喫煙による脚部血管狭窄、及び壊疽などが挙げられる。
(発明の詳細な記述)
本発明は、生体脈管の内皮層が移植後も脈管の維持にとって重要な因子であるという発見に基づいている。
本発明の方法及び本発明の灌流液を使用することにより、内皮を含有している全ての生体脈管及び管腔器官を、内皮組織の構造的機能及び脈管又は管腔器官の機能が保持されるように特別に処理することができる。
以下に記述されている内皮保護的灌流液及びそれらの変形例によって単離された管腔器官及び生体脈管を処理することにより、器官及び脈管の代替(人工器官又はバイパス)のための(動物又はヒトの)体内への移植前の器官及び脈管の移植片を調製することが可能となり、あるいはそのような管腔器官及び生体脈管における内皮組織の損傷部位を修復するのに適している。そのような管腔器官及び/又は生体脈管の内腔における内皮組織を維持するための単離された管腔器官及び/又は生体脈管の処理を目的としたインキュベーション液の特定の使用は、新しいアプローチである。単離された管腔器官をアルブミン含有液で処理することにより、細胞組織中の内皮細胞が保存、安定化、及び増殖に対して触発されるため、脈管内の内皮を保存でき、修復さえすることもできる。これにより、管腔器官が例えば移植片として患者の手術に使用される際、当該管腔器官の寿命が延びる。
ここで述べた内皮保護的灌流液は、哺乳類の器官及び脈管を灌流液中でインキュベートすることによる当該器官及び脈管の保存のための使用にも適している。器官及び脈管のそのような保存は、例えば、移植手術において特に所望される。器官及び脈管を輸送のために保護し、また機能的に維持するためにも、保存が必要となり得る。本発明の方法及びそのために使用される灌流液の目的は、内腔内皮細胞層を維持し、あるいは再生することにより、器官又は脈管の機能、性能、及び堅牢性を保証することにある。
機能的かつ構造的に完全な内皮組織により脈管移植片の長い寿命が提供される。なぜならば、それにより脈管の閉塞、例えば血栓症又は硬化性再狭窄が防止されるからである。
本発明は、単離された生体脈管を内皮保護的灌流液でリンスするために使用することができる装置にも関する。この装置により、生体脈管についてそれらの密封性を簡便かつ効率的に検査することができる。さらに、生体脈管のすべての側枝を直接的に同定し、鉗子やマイクロクリップなどの適切な結紮手段により結紮することができる。
したがって、ここに記述した内皮保護的灌流液の実施形態は、脈管疾病の処置のための移植片としての生体脈管の調製のための使用に適している。そのような脈管疾病又は病的状態として、例えば血管障害、脈管炎、特に動静脈狭窄症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、急性難聴、動脈瘤、動脈硬化、血栓症、静脈瘤、血栓静脈炎、間欠性跛行、喫煙による脚部血管狭窄、及び壊疽などが挙げられる。
さらに内皮保護的灌流液は、管腔器官及び/又は生体脈管の脈管系の修復、あるいは、手術、移植、保管、又は輸送のための全器官又は脈管並びにそれらの部分の保存のために適している。
本発明の内皮保護的灌流液により処理された管腔器官及び生体脈管は、処理されていない管腔器官若しくは脈管、又は生理食塩水、ブレトシュナイダー液、ウィスコンシン大学液、カロリナリンス液、及びHTK液のような従来の溶液によりリンス若しくはインキュベートされた管腔器官若しくは脈管に比べて、損傷していない内皮及び改善された灌流性能を示す。ここで述べた本発明の灌流液を用いることにより、当該脈管の初期の血栓症(閉塞)が阻止、又は少なくとも時間的に遅延される。
本発明の方法により処理された単離された管腔器官及び生体脈管は、器官及び脈管の移植分野において代表的に使用されてきた管腔器官又は生体脈管よりも、処理された管腔器官又は脈管が完全な状態で保たれ、内皮組織が損傷したとしても(例えば内皮細胞の増殖により)再生すら可能であるという点で、有利な立場にある。
本発明の灌流液によって内皮を処理することにより、内皮組織の再生も起こる。内皮細胞の増殖促進によって、内皮細胞は自身の分裂能力を保持することができ、管腔器官又は生体脈管の内皮損傷部位を修復することもできる。これに対して、処理されていない脈管や、外科的実務において従来から用いられている生理食塩水によって処理された脈管は、処理後の1時間以内に損傷し、あるいは内皮が完全に剥離してしまう。
本発明の方法により、ここで述べた内皮保護的灌流液により処理された脈管は、より長時間、つまり最大で数日間も維持又は保存できる。これにより、脈管の保存時の便利な取り扱い、移植又はバイパス手術の間の並外れた流通供給、及びそのような介入のより優れた計画が可能となる。
本発明の内皮保護的灌流液は、その基本組成において生理電解液、少なくとも0.1重量%の天然アルブミン、及び、例えばL−グルタミン(2.5〜10mM)のような栄養素基質を含む。
本発明の灌流液の基本成分(=基本溶液)をもって、驚くべきことに、単離された生体脈管における内皮保存的作用及び内皮保護的作用が確認できる(実施例1及び2参照)。生理電解液は、電解質として生理的濃度範囲内において、少なくともマグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、及びカルシウムイオン(Ca2+)を含む。好ましくは、生理電解液は1以上の下記イオンを含む:カリウムイオン(K+)、ナトリウムイオン(Na+)、硫酸イオン(SO4 2-)、及びリン酸イオン(PO4 3-)。以下に詳述されるその他の成分を添加することにより、内皮組織に対する有利な作用がさらに高められる。本発明の内皮保護的灌流液の有効性は、アルブミンと、電解液の各種塩、特にカルシウム(Ca2+)の存在と、栄養素基質との組み合わせにより説明できる。カルシウムは内皮組織の機能維持に必要である。なぜならば、その糖衣構造はCa2+の存在により維持されるからである。この構造は内皮表面上の必要な微小環境を創出するが、それは多くの内皮酵素、膜輸送体、イオンチャネル、及び受容体の生理的機能及び作用にとって重要である。
添加されるアミノ酸のグルタミン(L−グルタミン又はD−グルタミン)は、本発明の灌流液の基本組成において栄養素基質として使用される。それは、さらに過酸化水素、酸素ラジカル、及び一酸化窒素などの高活性の代謝物質を常時生産している内皮細胞が、グルタミンの存在時に、まだ解明されていないが明らかに実証可能な機構でこれらの酸化剤から保護されるという目的に寄与している。
アルブミンも本発明の灌流液の不可欠な成分であり、特に溶液の内皮保護的作用のために必要である。つまり、アルブミンは、脈管(血管)のリンス時に内皮表面に作用する「せん断力」と、内皮細胞の拡張ではなくむしろ球状化を進める内皮細胞表面の表面張力を低下させる。これらの両物理力は、内皮細胞が剥離する原因である。したがって、アルブミンは脈管において機械類における「潤滑油」と同様の機能を果たしている。外科医が使用する生理食塩水や心停止性「ブレトシュナイダー液」(高いカリウム含量による)などのいわゆる「晶質」(=タンパク質を含まない)リンス液は、これらの高いせん断力や表面張力を減少させることはできない。
アルブミンを含まない溶液中で内皮がせん断力に曝される時間が長くなると、より高いエネルギー変化及びエネルギー要求が求められることから、内皮を維持するための栄養素基質(グルタミンなど)とアルブミンの組み合わせは最小限必要である。なぜならば、内皮細胞が脈管壁に接着するために追加的なエネルギーを供給する必要があるからである。
本発明の方法によるさらに進んだ研究から判明したのは、例えば凝集素(凝集性抗体、血球凝集素、レクチン、溶血素、フィテムアグリチニン)、補体因子、炎症メディエーター、又は血液型特異抗体などの凝固因子や凝集性因子を含まない血漿派生物が、単離された管腔器官又は生体脈管の処理にとって特に好ましいことである。灌流液中のそのような因子の存在は、脈管の内皮細胞の表面との、及び表面上での望ましくない反応を惹起する恐れがある。想定できるのは内皮細胞表面での抗体の抗原への結合であり、それにより当該細胞の補体媒介溶解が生じ得る。補体活性化の下での免疫複合体の形成は、血栓症の原因となる。そのため、処理された脈管が早期に狭窄又は閉塞することとなり、例えば脈管又は器官の移植片を再度交換せねばならない。したがって、血清調製品又は血清溶液が特に好適なのは、血液凝固カスケードを起動し得る凝固因子がそこにはもはや存在しないからである。
本発明の内皮保護的方法による内皮の保存のための内皮保護的灌流液として、また本発明の使用に対して、血漿調製品も使用可能で特に好適である。つまり、標準血漿の特定のタンパク質の多くは、内皮機能に有益な付加的な特定の機能を示す。トランスフェリンとセルロプラスミンは、例えば鉄及び銅イオンに対する輸送タンパク質として作用し、またホルモン輸送タンパク質は内皮の重要な酵素機能あるいは内皮細胞内のシグナル伝達プロセスに有益である。成長ホルモンも、細胞分裂、修復要求、及び内皮が損傷した脈管壁の被覆にとって有益な重要成分である。
そのような血漿調製品は、前記の基本溶液及びその好ましい実施形態に比べて高い内皮保存的作用を有しており、これは血漿内に存在する追加的因子、例えば成長因子などに基づくと思われるが、それらは脈管内腔の内皮組織の維持に有利に作用する。血漿は、当然ながら約90%の水、アルブミン(約40g/l)、グロブリン(α1−グロブリン、α2−グロブリン、β−グロブリン、γ−グロブリン)などの約8%のタンパク質、ホルモンやビリルビンなどの輸送物質及び凝固因子からなる。
本発明の方法及び本発明の使用において、前記因子、例えば凝集素、補体因子、炎症メディエーター、又は血液型特異的抗体などの凝固因子や凝集性因子がもはや存在せず、かつ毒性の脂質及びウィルス又は細菌などの病原体を含まない血漿調製品が好適である。
灌流液の基本組成において、電解液として好適に使用されるのは健康なヒト血漿の生理的無機塩成分に合致した電解液である。本発明の可能な実施形態において、従来の電解液の重炭酸塩成分は等モルの塩酸ヒスチジンにより置換される。
本発明の電解液は以下の組成を含む:100〜150mM NaCl;1〜15mM KCl;0.1〜4mM MgSO4;0.5〜2mM KH2PO4;24〜48mM ヒスチジン−Cl、及び1〜3mM CaCl2。該電解液の好ましい組成は以下を含む:140mM NaCl;4.5mM KCl;1.2mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2.5mM CaCl2。ヒスチジン−Clは、24mMの重炭酸塩に置換することも可能である。溶液中のカルシウム濃度は、等張的に0.01〜0.1mMの値に低下させることも可能である。
雰囲気下における生理電解液のpH値は7.2〜7.8であり、好適には動脈血の標準値(pH=7.4±0.04)に調整される。pH値の調整は、溶液への最終添加成分としてのCaCl2の添加により行われる。pH値の調整は、例えば、1以上の酸及び/又は塩基を含む緩衝剤により行うことができる。そのような緩衝物質の例は、乳酸塩及び/又は重炭酸塩である。
内皮代謝のエネルギー維持のために、本発明の灌流液中は、好ましくは2〜10mMのグルコース及び/又は1〜10mMのピルビン酸塩のようなエネルギー基質を含む。これらのエネルギー基質のみにより、ほぼ低酸素条件下(pO2≦10mmHg)でも内皮組織の代謝のための充分な供給が可能となる。エネルギー基質の好適な濃度は、8mMのグルコース及び/又は2mMのピルビン酸塩である。生理電解液は、本発明の灌流液の他の実施形態において、抗凝固濃度のヘパリンあるいは他の凝集素、例えばヘパリノイド、クマリン(ビタミンK拮抗物質)などを含む。高分子ヘパリンに対する通常の抗凝固濃度は、人血の場合には0.2〜0.6U/ml、好ましくは0.4U/mlである。本発明の他の実施形態では、例えばファルマシア社から供給されているような100μl/100mlの低分子ヘパリンが使用される。さらに、それぞれ50〜100μMの尿酸及び/又はアスコルビン酸塩が、腐食性酸素化合物に対する抗酸化剤としての外部還元剤として添加される。
0.1重量%程度の天然アルブミンの濃度は、内皮組織の顕著な安定化をもたらす。「天然アルブミン」とは、アルブミンがその自然(天然)形態で存在し、熱を適用せずに、特にクロマトグラフ法により精製されていることを意味する。好ましくはヒトアルブミンである。内皮組織の顕著な安定化に対するアルブミンの効果は、位相差顕微鏡観察や低速度シネマトグラフィーにより実験的に決定できる(実施例2参照)。その際に、天然アルブミンは熱処理されたアルブミンに比べて、有利であることが立証されている。天然アルブミンは、例えば10〜50g/l 、好ましくは30〜45g/l、最も好ましくは約40g/lの濃度範囲で存在することができる。
内皮層の密度は、流体伝導度(Lp [cm/s/cm H2O])の決定により定量的に測定できる。本発明の灌流液で処理された内皮層に比べて、生理食塩水中又はブレトシュナイダー液中で処理された内皮層はその密度を喪失している。なぜならば、個々の細胞が極めて迅速に球状化して表面から離れるからである。
本発明の内皮保護的灌流液の他の実施形態は、アルブミンの代わりに、溶血素を含まない同種血清又は自己血清を含む。この場合には、天然アルブミンが血清中に既に含まれているため、追加的な天然アルブミンを添加する必要はない。
溶血素を含まない同種血清、又は自己血清を電解液に添加すると、内皮細胞の天然密度は数日間にわたって減少しない安定性を達成できる。血清は、好適にはリポタンパク質を含まない。希釈されていない自己血清は少なくとも6重量%のアルブミン濃度を有しており、それは本発明の灌流液に応じてより高い希釈度においても、天然アルブミンの機能を引き継ぐことができる。さらに、ヒト血清は有効濃度の多数の成長因子(例えば、それぞれ0.1ng/mlを超えるbFGF、TGF、VEGF)を含んでいる。内皮保護的灌流液に対して、1〜10体積%濃度の溶血素を含まない同種血清又は自己血清が添加される。好ましくは、血清濃度は5〜10体積%である。溶血素を含まない同種血清又は自己血清の1体積%程度の濃度において、内皮密度の安定化の顕著な改善が確認できる。本発明の特別な実施形態は、2.5体積%、5体積%又は10体積%の血清濃度を有する(体積%=血清タンパク質の割合/溶液1リットル)。
本発明の異なる実施形態において、内皮保護的灌流液に含まれるL−グルタミンは、2.5mM、5mM、又は7.5mMの濃度を持つことができるが、好ましくは2.5mM濃度のL−グルタミンである。
本発明の他の実施形態では、内皮保護的灌流液は殺菌性濃度の抗生物質を追加的に含む。例えば、100〜400U/mlのペニシリン及び/又は0.1〜0.4mg/mlのストレプトマイシンが好ましく、200U/mlのペニシリン及び0.2mg/mlのストレプトマイシンが最も好ましい。
内皮保存及び内皮再生のために使用できる好ましい灌流液は、以下の組成を有する:生理(等張性)電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2 (CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び追加的なそれぞれ50μMの尿酸及びアスコルビン酸塩。
本発明の方法又は本発明の使用のために極めて有効で各実施例において検査された別の溶液は、以下の組成を有する:127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2;血液調製品プールからの、リポタンパク質と溶血素を含まない10体積%の同種血清調製品、2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び追加的なそれぞれ50μMの尿酸及びアスコルビン酸塩。
そのほかに、同時に活性化された顆粒球又は血小板の遊離生成物により引き起こされる微小循環性合併症(内皮損傷など)を阻止するために、本発明の灌流液に1以上のフラボノイド化合物(及びそれらの誘導体)の有効量を添加することができる。本発明の方法の有効濃度において検査された好適なフラボノイドは、ケルセチン(約50〜250μM)及びルトシド化合物、特にトリヒドロキシエチルルトシド(約50〜250μM)である。
微小循環性合併症の場合の内皮の維持及び内皮層の再生のために特に好ましい溶液は、以下の組成を有する:等張性電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2(CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び新たに添加された追加的な100μMケルセチン。ケルセチンの代わりに、100μM トリヒドロキシエチルルトシドも添加することができる。
外科的実務においては、脈管の痙攣発生も阻止する、あるいは少なくとも低減することが望ましい。これは有効量の血管拡張剤、例えばパパベリンやアデノシンの添加により行うことができる。50〜250μMパパベリンが好ましい。100μM濃度のパパベリンが特に好ましい。アデノシンの添加は0.5〜2mMの濃度が好ましいが、1mMが特に好ましい。
本発明の方法及び使用において使用される特に好ましい溶液は、以下の組成を有する:127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2(CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び追加的な100μM パパベリン(又は1mM アデノシン)。
心臓手術の実施、例えば心臓移植の際に特に望ましいのは、心臓の摘出中及び本発明の灌流液中でのインキュベーションの際に、心臓の収縮を止めるなどして心臓を安定化することであろう。これは、灌流液中のカリウム濃度を上げることにより達成できる。そのような溶液は「心停止液」とも呼ばれる。なぜならば、それは心臓の電気的活動を阻害し、その結果、その収縮を阻害するからである。ここで留意すべきは、心停止液をできる限り等張性にすること、すなわち、脈管壁又は器官の機能性の損傷を防止するために心停止液は同一の分子濃度を有するべきである。6mMを超える程度のカリウム濃度でも、心臓収縮の減少が認められる。8mMの濃度で、ほぼ完全に心臓が麻痺する。器官のこのような安定化により、外科医による移植手術中の取り扱いが容易となる。
当該調合液は、温度4℃及び暗所において有効性を失うことなく数ヶ月にわたり保存できる。溶液中での細菌を阻止するための滅菌は、例えば滅菌フィルターにより行うことができる。
他の実施形態では、本発明の単離された管腔器官又は生体脈管を処理するための内皮保護的方法において、血漿調製品を用いることができる。驚くべきことに本発明者らにより見出されたのは、そのような血清様の溶液(血漿調製品)に関係する阻害的かつ調整的特性が、内皮細胞の完全性のために明らかに有効なことである。生理電解液、栄養素基質及びアルブミンを含み、また優れた内皮維持をすでに示している(実施例参照)内皮保護的灌流液の基本組成に比べて、管腔器官における内皮の保存及び維持に対する有効性は、アルブミンの代わりに同種の抗凝固性血漿調製品を使用することによってさらに高めることができる。したがって、内皮保護的灌流液の基本組成においてヒト血漿タンパク質、抗凝集素、及び免疫グロブリンからなる抗凝集性血漿調製品により天然アルブミンが置換されており、また血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去された該灌流液が好ましい。そのような不安定因子の例としては、リポタンパク質及び他の毒性の脂質などが挙げられる。
そこで生理的カルシウム濃度を維持するためには、ヘパリン化された(ヘパリン処理された)血漿を使うことが好ましい。
「血漿調製品」とは、単離された全血から調製されているヒト血清タンパク質の5体積%等張液からなる血漿液を指す。全血として好ましいのは、哺乳類から採取した血液、特に健康な供血者から採取したヒトの全血(健康な供血者1000名分のプールなど)由来のものである。血漿調製品は、水(約90%)のほかに、無機電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオンなど)、アミノ酸、糖、脂肪酸などの栄養素基質、及び天然アルブミンを含むため、本発明の意味において有用である。さらに、血漿は多くの重要な輸送タンパク質(トランスフェリン、セルロプラスミンなど)を含む。そのような血漿調製品としては、非凝固性及び抗凝固性の血漿調製品が好適であり、該血漿調製品においては、好ましくは血液凝固抑制物質の添加により血液凝固が抑制されるか、あるいは凝固因子が皆無又は僅少しか存在しない。そのような抗凝固性物質の例としては、アンチトロンビンIII、ヘパリン、及びヘパリノイド類が挙げられる。また、単離された器官あるいは脈管の内皮維持に用いられるシュウ酸、EDTA又はクエン酸、及びカルシウムイオンを含まない血漿調製品も、本発明の意味において含まれる。
さらに移植を目的として単離された管腔器官及び生体脈管を内皮保護的灌流液により処理する本発明の方法において、毒性の脂質又はリポタンパク質などの不安定成分、並びに免疫反応を誘発する因子(血液型特異的抗体など)及びウィルスや細菌などの病原体が、当該技術分野で公知の適切な措置により除去された血漿調製品も好適である。
本発明で使用される一般的な血漿調製品は、下記イオン成分を含むことが好ましい:約100〜170mM ナトリウムイオン、約1〜15mM カリウムイオン、約1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、約50〜200mM 塩化物イオン。より好ましくは、約150mM ナトリウムイオン、約4mM カリウムイオン、約2mM カルシウムイオン、約1mM マグネシウムイオン、約110mM 塩化物イオン。
さらに、該血漿調製品は、25〜45g/l、好ましくは30〜40g/l、最も好ましくは約32g/lの濃度範囲の天然アルブミンを含む。
なお、該血漿調製品は、通常、免疫グロブリンGの含量が約3〜15g/l、IgAが約1〜10g/l、IgMが約0.2〜3g/lである免疫グロブリンを含むことができる。好ましくは、該血漿調製品は、約7g/l IgG、1.7g/l IgA,及び約0.5g/l IgMを含む。
該血漿調製品のpH値は約7.3〜7.8、好ましくは7.4である。好ましくは血漿調製品のオスモル濃度は200〜350mosmol/kg、より好ましくは約288 mosmol/kgである。
本発明の血漿調製品の特に好ましい実施形態は、以下の組成を含む:150mM ナトリウムイオン、3.65mM カリウムイオン、1.97mM カルシウムイオン、1mM マグネシウムイオン、107mM 塩化物イオン、32g/l アルブミン、7g/l IgG、1.7g/l IgA、及び0.5g/l IgMの各免疫グロブリン、51g/l 総タンパク質、並びに、血漿中に本来的に存在する栄養素及びエネルギー供与体。
該血漿調製品の特に好ましい実施形態は、健康な供血者の血漿から調製されたヒト血清タンパク質の5%等張液である。
該調製品は、完全かつ生物的に無傷な安定型の免疫グロブリン、アルブミン、並びに、輸送タンパク質及び阻害タンパク質を天然濃度比で含む。良好な保存安定性を確保するために、該調製品は、好ましくはリポタンパク質、溶血素及び凝固因子を含まない。そのような調製品の好ましい実施形態は、以下の組成を含む:約3.65g/l ナトリウムイオン、0.16g/l カリウムイオン、0.08g/l カルシウムイオン、0.02g/l マグネシウムイオン、3.65g/l 塩化物イオン、並びに、31g/l アルブミン、及び約7.1g/lのIgGと約1.55g/lのIgAと約0.48g/lのIgMとを含む約10g/lのヒト免疫グロブリンを含む50g/l ヒト血清タンパク質、及び水。該溶液の同種凝集素の力価(抗A及び抗B)は、好ましくは1:64以下である。
本発明の方法及び使用に関し、該血漿調製品は、発熱性物質を含んでおらず且つウィルス及び/又は細菌を不活化する措置(β−プロピオラクトン及びUV照射による処理、37℃への加熱)により処理された灌流液として使用される。
好ましくは、該血漿液はいかなる抗補体活性、凝固活性、凝集活性も有しない。
本発明の灌流液の基本組成においてアルブミンを添加する代わりに抗凝固性血漿調製品を使用すると顕著な内皮保存的有効性を示し、それは基本組成と比べてもさらに向上している。これは、血漿中に存在し、とりわけ物質輸送において重要な役割を果たしている血清タンパク質に起因するものと思われる。
以下に、血漿調製品を基礎とする本発明の内皮保存的灌流液の好ましい調製方法について述べる。
該方法は血漿の用意(ウマ又はウシ、好ましくはヒトなどの哺乳類から)を含む。ヒト血漿は数名の異なる供血者由来のものでよく、混合調製品(血漿プール)として集められる。クリオプレシピテートは、好ましくは約5℃の温度において遠心分離を用いて、液体血漿成分から分離される。ウィルス不活性化の一工程として、残りの血漿をβ−プロピオラクトンで処理する。すなわち、液体形状のβ−プロピオラクトンを血漿プールに添加する。さらなるウィルス不活性化のために、β−プロピオラクトンで処理された血漿をUV露光装置によるUV照射によって処理する。次に、DEAEセファデックスカラムなどを用いた陰イオン交換クロマトグラフィーにより、凝固活性(すなわち凝固性)タンパク質を分離する。さらに、血漿タンパク液を温度22℃において長期間(21日超)保存するために、清澄濾過及び滅菌濾過を行うことができる。その後、アエロジル(Aerosil、登録商標)を用いた処理を行うと、保存安定性を有するタンパク質及び脂質を吸着させることができる。この処理により、存在が想定されるウィルスを除去することもできる。次に、タンパク液を調整するために、透析及び限外濾過を行う。この工程においてpH値の調整と滅菌濾過を行うことにより、中間生成物を37℃の温度で約30日間保存することが可能となる。最終的な血漿調製品に達するために、この工程の中間生成物のいくつかは互いに(「プールされた状態で」)結合することができる。この血漿調製品は発熱性物質及びウィルスを含まないため、本発明の単離された管腔器官又は生体脈管の内皮保存的な処理方法において、あるいは前記使用、すなわち、器官又は脈管の移植片として提供される器官又は脈管の処理もしくは保存、あるいは内皮組織の損傷修復のために、使用することができる。
当業者は、灌流液又はインキュベーション液が前記方法及び使用の改変態様において使用できることを認識するであろう。例えば、該灌流液における塩及びタンパク質の組成を変更することができる。また、該灌流液の効果を高める、あるいは特定するために、内皮保存的効果を有する上記基本成分が該灌流液に含有されている限り、天然由来又は人為的に添加されたアミノ酸、脂質、炭水化物、核酸(RNA、DNA)、ゼラチン調製品などのペプチド、ホルモン、デキストランなどの植物性材料、並びに、親油性活性原料、ホルモン又は栄養素などを運搬するためのリポソームを含む溶液も、本発明の方法において、あるいは前記灌流液の使用に対して適用できる。
本発明の灌流液を改変した溶液は、内皮細胞の分裂あるいは内皮細胞組織構造の維持を促進するために、内皮組織の維持及び/又は増殖に有用な有効濃度の成長因子又は他の増殖促進物質を含んでいてもよい。各実施例に示すように、成長因子又は成長ホルモン(ヒドロコルチゾンもしくは同等の因子など)も細胞分裂時間を短縮するため、内皮層の迅速な修復に有効である。したがって、生体脈管又は管腔器官の損傷した内皮組織(病変部)における内皮再生あるいは内皮細胞の分裂開始は、該内皮保護的溶液中の成長因子又はホルモンを利用できる適用分野の1つである。
そのような成長因子の例としては、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF1、VEGF、VEGF3など)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、及び幹細胞因子(SCF)、又は同等の作用因子が挙げられる。他の使用可能な成長因子には、VEGF121、VEGF165、VEGF189、bFGF、P1GF、PDGF、GM−CSF、及びG−CSFが含まれる。
結果的に成長促進遺伝子又は遺伝子群を発現させるシグナル伝達機序を開始させるために、前記成長因子は内皮組織の特異的表面受容体に結合することによって脈管における内皮組織の固有の維持又は増殖を促進する。他方で、遺伝子産物は複雑な相互作用を必要とする内皮細胞の分裂に影響を及ぼし得る。
成長因子を含む本発明の好ましい溶液は、以下の組成を有する:等張性電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2(CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、0.1〜1ng/ml 上皮成長因子(EGF)、0.2〜2ng/ml 塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)及びヒドロコルチゾン0.2〜3 μg/ml。
当業者は、これら及びその他の改変によって該灌流液の脈管内皮に対する内皮保護的作用を増大させることが可能であることを認識するであろう。例えば、それらの例として挙げられるのは、内皮細胞の糖衣(つまり、細胞膜の外側部分における表面タンパク質及びリン脂質に結合したプロテオグリカン及び糖タンパク質に富むゲル状層)を維持又は改変し、細胞空間にある細胞組織の組織構築又は組織構造を完全な状態に維持、あるいは改善する因子である。また、早期血栓症を予防あるいは防止すべく内皮細胞層を維持又は再生するために、1以上のサイトカイン(TNF、TGF、IFNなど)又はベルベリン(Berberis airistataから単離)などの活性植物原料の灌流液への添加も有用である。
さらに、細胞表面受容体をコードする遺伝子の発現を刺激する内皮細胞特異的因子を添加することができる。そのような受容体の例として、CD34、CD133、KDR(VEGFR−2)、VE−カドヘリン、E−セレクチン、αvβ3、内皮前駆細胞特異的レクチン、あるいは内皮細胞及び/又は内皮前駆細胞に特異的な他の受容体が挙げられる。
さらに当業者は、そのような化合物又は因子を内皮細胞又は内皮前駆細胞の増殖及び分散を促進する内皮保護的灌流液の基本溶液に添加できることも認識するであろう。そのような物質として、例えば、内皮細胞の細胞壁特異的固定を促進するフィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、ゼラチン、若しくはコラーゲン、又は、内皮細胞のエネルギー代謝、核酸代謝及びシグナル伝達を促進するプリン及びピリミジン化合物、例えば、アデノシン、イノシン、ヒポキサンチン若しくはチミジン、ウリジン及びシトシンが挙げられる。
特定の薬剤及び食品添加物により、内皮の機能及び内皮の凝縮も促進できる。各実施例に示すように、ケルセチン、ルトシド化合物又はそれらの配糖体(ケルセチン−グルクロン酸塩など)等の多数のフラボノイド化合物は、内皮細胞の収縮器官を強力に弛緩させることによって内皮細胞間の空間の稠密度を向上させる。尿酸、ビタミンE又はフラボノイドなどの抗酸化物質は、内皮を酸化剤の影響から保護する。アデノシン又はパパベリンなどの血管拡張性活性原料は、平滑骨格筋を弛緩させることにより、条件によっては内皮の極端な屈曲により前記組織を損傷する恐れのある痙攣を阻止できる。その際に、バイパス血管の骨格筋が弛緩して血管の痙攣が回避されるが、そうでない場合には、痙攣は大きな損傷をもたらすおそれのある高い血管内拡張圧力を適用しないかぎり解消できないであろう。
本発明の内皮保護的灌流液の改変形態には、新鮮凍結血漿が含まれる。これは、−18℃以下で数時間以内に凍結されたヒト血漿である。この新鮮凍結血漿は、血漿タンパク質(必須アルブミンなど)、凝固因子、フォン・ヴィルブラント因子及びコロイドを含むが、赤血球、白血球及び血小板は含まない。
脈管の早期血栓症を予防又は阻止するためには、前記新鮮凍結血漿の抗凝固性を(例えば、ヘパリン、クエン酸塩、EDTAなどの抗凝固剤の添加により)防止すべきである。
留意すべきは、供血者と受血者内皮との血液型が異なる場合に血管内皮を損傷させる恐れのある同種凝集素、補体因子及び凝固因子が該灌流液に含まれないことである。内皮細胞は赤血球などと同じ血液型特徴を示し、同種凝集素を持つ異種血漿に対して反応する(血液型に対する抗体)ことを考慮すべきである。
本発明の灌流液の他の改変形態として、例えば、血漿増量液(ゼラチン又はデキストラン含有)、あるいは栄養素基質及びエネルギー基質が添加されて富栄養化された改変ヒトアルブミン調製品が挙げられる。
この点について、明確に強調すべきことは、本発明にはここに記載された溶液成分及び添加物のあらゆる組み合せが含まれることである。本発明は、特定の実施形態に限定されるものではない。当業者は、個々の作用を有する各成分の組み合わせによって、脈管及び器官の内皮の維持及び保護を達成することが可能であることを認識するであろう。当業者は該灌流液の他の成分及びそれらの濃度を管腔器官の用途及び種類に応じて選択するであろう。その際に、ここで記載されたすべての溶液には基本成分、すなわち、生理的又は等張性電解液、栄養素基質、及び、特にアルブミンが含まれている。さらに当業者は、所期の効果を達成するために、前記成分が同等の作用を持つ因子又は物質(例えばEGF又はbFGFと同等作用の成長因子)により置換できることも認識するであろう。
さらに当業者は、ここで述べた溶液の組み合わせは使用される本発明の灌流液の改変形態として含まれることも認識するであろう。
図1に示すように、単離された生体脈管の内皮保存的な処理のための本発明の装置は、室(1)と、軸方向に移動可能なピストン(6)と、カニューレ(5)と、内皮保護的灌流液を含む貯蔵容器(7)と、密封装置(3)とを含み、前記カニューレは軸方向に動くピストン(6)に接続されて該ピストンと共に前記室に進入することができ、前記密封装置(3)は前記生体脈管の一方の端を握ることができ、前記カニューレは該脈管の他方の端と接続されており、前記内皮保護的灌流液が前記貯蔵容器(7)から、好ましくは圧力勾配を以て、選択的に該生体脈管に導入されることができる。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記密封装置はきざみ付きつまみねじに積層状に配置された密封円板を含む。
好ましくは、きざみ付きつまみねじ内に積層された密封円板は圧縮可能であり、鋼製円板などの穿孔中間円板により分離されている。これらの鋼製円板は、好ましくは0.5〜2mmの厚さを有する。積載された密封円板は、鋼製穿孔円板により間隔をおいて配置されることになる。好ましくは、前記中間円板の開口部の直径は、対応する選択された密封円板の直径よりも1〜2mmだけ小さい。
好ましくは、前記密封円板は、密封すべき脈管のサイズに適合した直径を有する。その際に脈管の直径は密封円板の直径よりも大きいため、脈管は密封円板の範囲において固く握られるが、加圧下で充填されて拡張状態にある脈管内腔は閉鎖されない。
密封円板の直径は、変形可能な密封円板を圧縮することによって脈管の外径に適合させることができる。血管の場合には、密封円板の直径は好ましくは1〜10mmであり、及び/又はその厚さは0.3〜3mmである。管腔器官では、脈管は各管腔器官内の器官脈管系の流入動脈又は排出静脈に相当する。密封円板の好ましい材料はシリコン、あるいは密封に対して使用可能かつ変形可能な他の材料である。鋼製穿孔円板は、好ましくはV2A鋼などの鋼からなる。
図1に示される本発明の装置の好ましい実施形態は、室(1)と、きざみ付きつまみねじ内に設けられた中央に穿孔を有するシリコン製密封円板(3)を含む。室は好ましくは円筒形とされる。前記密封円板の穿孔に血管(1)(動脈又は静脈など)の一端を僅かに挿入し、短い断片を鉗子で結紮する。前記血管の他端は、ピストン部のカニューレ(5)に接続される。カニューレは好ましくはフレキシブルチューブに接続されており、該チューブはさらに貯蔵容器(7)に接続されている。貯蔵容器は本発明の内皮保護的灌流液を入れるものであり、例えばボイル・マリオット瓶が用いられる。
本発明の好ましい実施形態では、灌流液は前記貯蔵容器と前記室との間に存在する圧力勾配(Δp)によって所定かつ一定の圧力で貯蔵容器からカニューレを経て血管に導入される。自然な圧力勾配を生ずる最も簡便な方法は静水圧的な高度差であり、例えば貯蔵容器を室のおよそ1.30m上方の高さに配置することにより得られる。次に、軸方向に移動可能なピストン(6)を前出の血管と共に、密封的に室内部まで挿入する。
ここで内皮保護的灌流液を中等圧力で血管に注入すると、灌流液が血管側枝から流出することができる。前記室内の血管側枝からの液の噴出は、そこに生じる背圧のために急速に減少する。密封部のきざみ付きつまみねじをさらに螺挿することにより、血管の吐出部のシリンダー内部を充分に密封できるため、該部分に位置する血管側枝からのさらなる流出を防止することができる。ここで、前記密封円板の穿孔を通じてさらに血管を慎重に前方に移動させると、新生の全血管側枝(8)からの選択的な灌流液噴出が生じるが、これらの側枝は結紮手段(9)により直ちに結紮できる。このようにして、特に動脈バイパスを対象とするような生体脈管の手術に不可欠な密封性試験を、所定かつ一定の圧力において内皮保護的に実施できる。さらに、前記のような生理食塩水の使用時に生じる溢水が起こらないため、作業を適切に実施できる。最後に、血管を容器から完全に引き出して、灌流圧(250mmHgなど)を加えることによってその密封性について全長にわたり再試験を行う。その後は、移植までの間、血管を保護的溶液内で好ましくは37℃で保存することができる。
他の実施形態では、本発明の灌流液は追加的に温度調整装置の貫流螺旋管内に誘導されるため、灌流液は好ましくは37℃の温度まで加熱できる。
該装置は、室に取り付けて室内容物を排気又は除去できる1以上の息抜きネジを追加的に備えることができる。
本発明の装置は、血管つまり動脈及び静脈又はリンパ管などのあらゆる種類の生体脈管に対して適している。特に、脈管移植及びバイパス手術用脈管の提供に関して、血管の内皮保護的処理を目的とした該装置の使用が特に好ましい。
本発明の装置は、脈管壁における一定の圧力勾配を有利に提供でき、脈管萎縮とそれに伴う内皮組織の損傷を阻止できる。
前記のきざみ付きつまみねじ及び密封円板を以て、脈管切片に対する加圧力を変化させることができ、密封性を調整することができる。
前記ピストンは、好ましくは軸方向へ、すなわち室を通って密封装置方向へ移動する。
前記利点に加えて、本発明の装置によれば、本発明の灌流液を用いて正確かつ安定した脈管の処理を行うことができる。したがって、該装置によれば、内皮細胞に対して連続的に灌流液を供給することができる。それにより、内皮細胞の維持及び増殖に不可欠で、生物学的に重要な代謝分子の置換が可能となる。
該装置は、特に生体脈管の密封性試験に好適である。この場合には、脈管切片を密封円板から引き出して、密封性について個別に検査する。このように識別された脈管切片については、鉗子又はマイクロクリップなどの適切な結紮手段を用いて結紮することができる。本発明にしたがって、極めて小さい脈管側枝でも灌流液の「噴出」により簡単に監視できると共に、圧力制御下で効率的に結紮することができる。最終的に、該装置から完全に引き出された脈管については、適正圧力(最小Δp:180mmHg)でその密封性について全体にわたり再試験を行うこともできる。
本発明の灌流液は、管腔器官又は生体脈管の内皮保存的な処理のための方法において使用することができる。その際に、該管腔器官又は該生体脈管は、本発明の灌流液に接触する。この接触には、完全なリンス、インキュベーション、あるいは灌流液による管腔器官又は生体脈管の全体又は部分的な処理が含まれる。
管腔器官の内皮保存的な処理のための方法には、好ましくは、灌流液を管腔器官内に導入するために用いられる本発明の装置の使用が含まれる。
以下、実施例により本発明を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
以下の実施例は、本発明の実証及び説明を意図するものである。これらの実施例は決して限定的に解釈されるべきではない。とりわけ当業者は、該実施例がその記載にしたがって任意に改変及び継続可能であること、また本発明の基本構想を反映することを認識するであろう。
(実施例1)単離された管腔器官及び生体脈管を内皮保存的に処理するための好ましい方法
本発明の方法の一実施形態において、血管の処理に下記組成の灌流液を用いた:127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2からなる生理電解液。CaCl2を添加する前に、雰囲気下で溶液のpH値を7.40に調整した。さらに該灌流液には、(健康な供血者の)血液調製品プールからのリポタンパク質及び溶血素を含まない10体積%の同種血清調製品、2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2 mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、並びに、それぞれ50μMの尿酸及びアスコルビン酸塩を含有させた。
単離された生体脈管の内皮保存的な処理のための方法において、バイパス移植片用に想定された脈管側枝を確実に結紮できる装置を使用した。該装置は、図1に示された仕様と実質的に合致している。それは、室(1)と、V2A鋼製の中間円板を伴ったシリコン製密封円板(3)とからなり、該密封円板は中央穿孔を備えており、きざみ付きつまみねじに軸方向に取り付けられている。ヒト伏在静脈の一端をこの密封装置内に先ず少しだけ通して、鉗子で結紮した。該脈管の他端を、ピストン部のカニューレ(5)に接続した。該カニューレをフレキシブルチューブに接続し、該チューブをさらにボイレ・マリオット型フラスコ(7)に接続した。該ボイレ・マリオット型フラスコに上述の内皮保護的灌流液を入れ、自然の圧力グラジエント(Δp)を得るために室の上方およそ1.30メートルの所に配置した。確定した一定圧力により、灌流液はボイレ・マリオット型フラスコからチューブを通ってカニューレに入り、続いて静脈に入った。次に、軸方向に移動可能なピストン(6)を、前出の血管と共に密封的に室内に押し込んだ。適正圧力下で内皮保護的灌流液を脈管に注入し、灌流液を脈管側枝から流出させることができた。室のシリンダー内部に対して静脈の出口部分を密閉するために、密封部(3)のきざみ付きつまみねじをねじ込み、該部分に存在する側枝からの流出を直ちに止めた。さらに静脈を引き出すことにより、新たに現れる全側枝からの灌流液の選択的な噴出を行ったが、これらの側枝については直ちに結紮した。内膜表面の走査型電子顕微鏡観察により、内皮層の完全な維持(100%)が確認できた。
(実施例2)内皮保存的灌流液の一実施形態に基づく処理による伏在静脈の内皮組織の再生
本発明の内皮保護的灌流液及び本発明の方法の効果を実証するために、本発明の灌流液のさまざまな実施形態によるインキュベーション中のヒト伏在静脈からの単離された内皮細胞を細胞処理後に顕微鏡下で観察し、その効果を連続型又はビデオ低速度マイクロ写真撮影により記録した。
心臓手術上ではもはや必要でないヒト伏在静脈の残余からの内皮細胞をコラゲナーゼ処理により選択的に剥離した後、10体積%のウシ胎児血清を含む最小必須培地(例えば「ダルベッコの最小必須培地」、DMEM)によって、5体積%の二酸化炭素を含み37℃に保たれた水蒸気飽和大気中で(「インキュベーション条件」)でコンフルエントの状態になるまで培養した。続いて、選択したシャーレを、ツァイス・アクシオヴェルト型顕微鏡の載物台に強固に固定されたインキュベーションシステムに適用したところ、該システムは上述の増殖条件の堅牢性を保証することができた。連続写真撮影記録には、ツァイス社により開発されたソフトウェアを装備し、かつ技術的に正に各内皮層の撮影に十分な最小照度の黄色光を採用したコンピュータ制御式ツァイス型アクシオカムカメラを使用した。個々の自動的撮影の間、自動遮光装置により培地を顕微鏡光から保護した。
まず、このように調製された内皮細胞を、これまで日常的に外科分野で使用されてきた生理食塩水中でインキュベートした(図2、溶液1参照)。この生理食塩水の組成は以下のとおりである:2回蒸留水中に154mM(0.9重量%)の塩化ナトリウム。
前記撮影により、生理食塩水によるインキュベート中のさまざまな時点での内皮細胞の状態を記録した。培養開始時(0分後)は完全な内皮細胞層を示した。生理食塩水でのインキュベーションが進むと、わずか数分以内に内皮細胞は球状になって剥離し、死滅した。これにより、組織結合の完全破壊が生じた。インキュベート時間180分後には、観察したほぼすべての内皮細胞が表面から剥離して球状になり、死滅していた。
これに対して、単離された内皮細胞を本発明の天然アルブミン含有の灌流液で処理した場合(図3;溶液2)は、インキュベーションの全時間にわたって内皮細胞が維持されていた。この溶液の使用により、内皮細胞の有糸分裂活動も停止していた。
本実施例における溶液2は以下の組成は以下のとおりである: 生理電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2。CaCl2添加前のpHが7.40。);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン。該灌流液にはさらに、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び、追加的にそれぞれ50μMの尿酸及びアスコルビン酸塩を含有させた。
溶液2中での内皮細胞のインキュベーションにより、内皮組織構造をほぼ完全に維持することができ、高密度の細胞層が生じた。特に、内皮細胞の球状剥離も死滅も観察されなかった。約180分後には、いくつかの内皮細胞で細胞内空間の顕著な拡大が確認された。ただし、内皮組織の機能、特にこの灌流液中の内皮膜下の脈管壁部の保護が維持されていることが判明した。したがって、この本発明の灌流液(血清を含まない)により、内皮細胞の完全な活力維持、並びにそれらの最重要機能の維持が達成される。
さらに実験を行い、血清を含む本発明の灌流液を用いた処理による内皮細胞の再生能力を調査した。単離された培養内皮細胞を灌流液で処理した(図4;溶液5)。
この血清を含む溶液(溶液5)の組成は以下のとおりである: 127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2からなる生理電解液。CaCl2添加前に雰囲気下における該溶液のpH値を7.40に調整。さらに、該灌流液には、血液調製品プールからの、リポタンパク質と溶血素を含まない10体積%の同種血清調製品、2.5mM L−グルタミン、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び追加的なそれぞれ50μMの尿酸及びアスコルビン酸塩を含有させた。
溶液2とは異なり、溶液5はアルブミンの代わりに同種血清を含有した。これは、内皮細胞組織に対する顕著な構造維持効果をもたらすだけでなく、培養内皮細胞の分裂能力も高める。
溶液5中では、インキュベーション時間30分後でも内皮細胞の分裂が観察された。内皮細胞の細胞分裂能力は、全観察時間にわたって維持されていた。したがって、溶液5中の内皮細胞のインキュベーションにより内皮細胞が増殖し、それに伴って内皮細胞層の再生能力も高まった。
これらのデータは、生理食塩水又はブレトシュナイダー溶液のような従来使用されていた溶液と比較した場合の本発明の灌流液の有利性を示すものである。本発明の灌流液により、一方で内皮細胞組織の維持ができ、他方で内皮細胞の分裂を促進する。このことは、特に生体脈管における損傷した内皮層の再生という観点から有利であり、また生体脈管及び脈管移植片を調製又は製作する際に望ましい。本発明の灌流液は、生体脈管がその内皮層の損傷又は侵害を受けることなく灌流液中で数週間にわたって維持され得るという卓越した特性も有している。
(実施例3)ケルセチンを含有する好ましい灌流液又はインキュベーション液
以下の実施例では、天然に存在する抗炎症性作用を有するフラボノイドであるケルセチンの最小静脈(細静脈)の内皮に対する効果を詳細に調査した(図5参照)。そのために、ドナーから単離された種々の心臓をケルセチンの存在下又は非存在下で丁寧にリンスした。この溶液の組成は以下のとおりである:等張性電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2 (CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン。さらに該灌流液には、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び新たに添加された追加的な100μM ケルセチンを含有させた。
心筋の細動脈及び細静脈(特に閉塞による影響を受けているもの)の調査のために、ドナーの心臓からの細動脈及び細静脈をタンパク質分解的に単離し、密度勾配遠心分離によって精製を行った。内皮細胞を培地中で保存した。流体伝導度を測定するために、ポリカーボネートフィルタ上で内皮細胞の培養細胞を確立した。
図5に、ヒト心臓細静脈の培養内皮細胞の8枚の連続写真、及び内皮に対するケルセチンの効果を示す:開始状態(培養開始)においては、ケルセチンを含有しない上記の基本溶液により細胞を処理した。培養開始時では、密な細胞層が見られた。インキュベーションの経過につれて、この細胞層はヒト血液の活性化した血小板及び顆粒球からの収縮性遊離生成物のために著しく収縮して粗状態となり、内皮層内に開いた領域が認められた。ケルセチン添加後は、ケルセチンを含有する灌流液中のインキュベーション経過において、培養開始時と同等の密度の内皮層の再生が観察された。この(ケルセチンを含有する)インキュベーション液により処理された内皮層は、細胞内空間密度が98%を超えており、1[cm×10-6×s-1cm H2O]未満という極めて低い流体伝導度を示した。
このことは、灌流液中のケルセチンの存在が、活性化されて代謝的に協力する顆粒球及び血小板の遊離生成物により引き起こされる内皮損傷部位の再生を促進すること、及び内皮の維持に寄与することを示す。したがって、この溶液は脈管腔内皮を維持するための器官及び脈管の保存に対して有用である。
(実施例4)ルトシドを含有する好ましい灌流液又はインキュベーション液
実施例3に記載の溶液と同様に、ケルセチンの代わりに他のフラボノイドであるトリヒドロキシエチルルトシドを、その他の組成では同一の基本溶液に添加した。この場合も、活性化された顆粒球及び血小板により内皮組織が破壊された。
実施例3の結果と同様に、基本溶液中のフラボノイドの存在によって単離された脈管における内皮層が顕著に再生し、その細胞内空間密度は98%を超え、また流体伝導度は1[cm×10-6×s-1cm H2O]未満という極めて低い値であった。
これらの2つの実施例により、炎症反応における顆粒球及び血小板の遊離生成物による脈管内皮の破壊をフラボノイドが阻止でき、さらには治療できることが示された。
(実施例5)脈管弛緩性パパベリンを含有する好ましい灌流液又はインキュベーション液
バイパス手術の際に、下腿部から摘出したばかりの静脈では痙攣が正に頻発するが、それを解消するために通常は外科医が高圧で注入された等張食塩水により静脈を「膨張させる」。しかし、その際には血管筋系の薄い細胞結合部分だけでなく、該処置のために死滅して洗い流される脈管腔内皮の細胞結合部分も破壊される。効果のある血管拡張剤を本発明の灌流液の基本溶液に添加することにより、静脈調製における痙攣発生は移植完了まで阻止できる。
本実施例に使用された溶液の組成は以下のとおりである:等張電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2(CaCl2添加前のpHが7.40); 0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン。さらに該灌流液には、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、及び新しく添加された100μMパパベリンを含有させた。
図6に、パパベリン含有溶液でインキュベーション前及びインキュベーション3時間後の単離された静脈切片の内皮層を示す。インキュベーション液中にパパベリンのような血管拡張剤が存在する場合は、脈管内皮の密封性は全く損なわれなかった。ここで、図6は内皮層の630倍の拡大写真を示す。図6の上図は、パパベリン添加直前の内皮層を示す。下図は、パパベリン添加から3時間後の内皮の状態を示す。
さらに確認されたのは、あらかじめ等張食塩水に浸漬して調査した18個の静脈切片のうちの7個が強い痙攣を起こしたため、通常の動脈平均圧力値(100mM Hg)ではもはや灌流が不可能となったことである。これに対して、上述の溶液中に浸漬した後の静脈は18個のいずれも痙攣を起こさなかった。すなわち、静脈は自由に浸透できた。
上述の灌流液で処理された内皮は、優れた細胞内空間密度(>98%)及び1[cm×10-6×s-1cm H2O]未満という極めて低い流体伝導度を示した。
このように、血管拡張剤が脈管及び器官の移植手術に際して便利に添加されることができ、さらに内皮維持のほかに痙攣阻止にも貢献する。とりわけ移植すべき器官又は脈管の筋肉組織の弛緩は、外科医による処置にとっても、また器官を体内へ確実に挿入することにとっても望ましい。
(実施例6)アデノシンを含有する好ましい灌流液又はインキュベーション液
痙攣抑制剤としてアデノシンを用いることにより、実施例5と同様の結果が得られた。
アデノシンは、生理的に存在する化合物であり、(実施例5のパパベリンのように)静脈のような脈管を著しく弛緩させる能力を有する。アデノシンの利点は、このヌクレオシドが体内で速やかに分解され、その結果、冠状血管の循環に対する系統だった効果は何も見られないことにある。この実施例で使用された溶液の組成は実施例5に記載のものと同じで、パパベリンの代わりに1mMアデノシンを含有させた。行なった実験とそれに伴う細胞培養及び単離された静脈切片の調査において、内皮層の優れた密度が確認された。これはとりわけ、脈管内皮のATPプールの完全な生理的生産にアデノシンが広範囲に使用され、したがってエネルギー供給体として使用可能であることにより説明できる(本発明の灌流液の他の実施形態におけるピルビン酸塩及びグルコースと同様)。
さらに、上述の基本溶液(アデノシンを含有しない)における内皮細胞のATP濃度は4.25±0.36mM(n=6)であったが、アデノシンを含有する溶液では5.33±0.48mM(n=7)であったことに注目すべきである。これは、内皮における最適の活動的な状態を示唆している。
このように、インキュベーション液にアデノシンを含有させた場合、細胞培養においても単離された静脈切片においても血管拡張剤による脈管内皮の密度の損傷はみられない。このため、この溶液は脈管及び器官内皮の保存、さらに、痙攣の発生抑制に適している。
(実施例7)成長因子(EGF、bFGF)を含有する好ましい灌流液又インキュベーション液
本実施例では、成長因子(bFGF、EGF)及び成長ホルモン(ヒドロコルチゾン)を含有する灌流液を使用した。これらの因子は、さまざまな脈管に由来する内皮細胞の増殖に有益な影響を及ぼす。
本実施例で使用した灌流液の組成は以下のとおりである:等張性電解液(127mM NaCl;4.6mM KCl;1.1mM MgSO4;1.2mM KH2PO4;24mM ヒスチジン−Cl;2mM CaCl2(CaCl2添加前のpHが7.40);0.1% アルブミン及び2.5mM L−グルタミン。該灌流液にはさらに、2mM Na−ピルビン酸、8mM グルコース、200U/ml ペニシリン及び0.2mg/ml ストレプトマイシン、低分子ヘパリン(ファルマシア社製のフラキシパリン:100μl/100ml調合液)、0.1〜1ng/ml 上皮成長因子(EGF)、0.2〜2ng/ml 塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)及びヒドロコルチゾン0.2〜3μg/mlを含有させた。
この研究の結果では、この溶液における内皮細胞層の密度は98%を超えていた。成長因子を含まない場合の細胞の世代時間は62h±4であったが、成長因子を含む場合の世代時間は19h±3であった(それぞれn=8)。したがって、成長因子を含まない対照液に対して、この溶液における内皮細胞は顕著に短縮された世代時間を示した。
(実施例8)心停止作用性KClを含有する好ましい灌流液又はインキュベーション液
本実施例では、ヒト伏在静脈から培養された内皮細胞の心停止性カリウム濃度に対する反応を調査した(図7参照)。
血漿の生理的なカリウム濃度は約4〜5mMである。細胞外空間のカリウム濃度が6mMを超える(心停止液)と、電気的刺激活動の麻痺の増大が観察され、約8mMで完全に麻痺する。その場合には、心臓はもはや鼓動できない。心臓手術においては、手術中(例えば心臓移植の場合)に心臓を弛緩させるためにそのような灌流液が使用される。
本実施例では、ヒトのプール血漿を下記組成液(心臓手術で一般に心停止液として使用される「ブレトシュナイダー液」)に対して2日間にわたり透析した:15mM NaCl、10mM KCl、4mM MgCl2、0.015mM CaCl2、1mM α−ケトグルタル酸、198mM ヒスチジン、2mM L−トリプトファン、30mM マンニトール、HClによりpH=7.4に調整。透析した溶液を濾過滅菌し、前述と同様の処理に供した。
図7に、溶液中の高カリウム濃度に対する培養されたヒト由来内皮細胞の時間経過に伴う反応を示す。すなわち、細胞内領域に裂け目の形成が明確に認められたが、細胞の分離は生じていなかった。下記溶液を用いた灌流後に単離されたウシ心臓に対して、体系的な灌流実験を実施した:
1. 0.1%エヴァンスブルーを添加した(晶質)ブレトシュナイダー液(対照用)、
2. 同様に用いたエヴァンスブルー灌流液。
その結果、上述の灌流液でよくリンスされた心臓の相当重量に関係する色素含量は、対照液(ブレトシュナイダー液)を用いた場合に対して平均16±3.5%(nはそれぞれ6)だけ上回っていた。つまり、約16%の追加の心筋層が本発明のインキュベーション液による処理で生残可能であった。この結果は、心筋層の灌流が血漿タンパク質の添加により同じ数値だけ改善されたことを実証するものである。
これらの結果により、完全な静脈切片及び細胞培養における内皮細胞が、心臓手術上で不可避の高いカリウム濃度ではそれらの細胞内空間を明確に認められる程に開いたが、球形とはならず、数時間にわたってそれぞれの基層に付着していたことが判明した。本発明の灌流液における血漿タンパク質の高い濃度が保証するのは、そのような心停止液が最小毛細血管をも確実に灌流すること、さらにそれにより全心筋層における筋肉活動が一様に停滞することである。それにより、心臓組織の全部位が一様に生残できるであろう。
上述の心停止液の使用により、明確に改善された内皮密度、より良好な内皮維持、さらにより均等で同質の心筋層の灌流及び維持がもたらされた。
(実施例9)内皮保護的灌流液としての血漿調製品を用いる処理による伏在静脈からの内皮組織の再生
以下の実施例では、血漿調製品由来の本発明の灌流液の一実施形態の、単離された伏在静脈切片からの内皮組織に対する効果を調査した(図11)。
使用された血漿調製品はの組成は以下のとおりである:150mM ナトリウムイオン、3.65mM カリウムイオン、1.97mM カルシウムイオン、1mM マグネシウムイオン、107mM 塩化物イオン、32g/l アルブミン、7g/l IgG、1.7g/l IgA、及び0.5g/l IgMの各免疫グロブリン、51g/lの総タンパク質、並びに、血漿中に本来的に存在する栄養素及びエネルギーの供与体。さらに、該血漿調製品はβ−プロピオンラクトン及び紫外線によりウィルス不活化処理された。
他の実施例の場合と同様に、単離された静脈切片に対する共焦点顕微鏡観察を行った。そのために、伏在静脈を血漿調製品により60分間処理した。対照液として、生理食塩水又はブレトシュナイダー液を用いた。これらの対照液を用いた処理では、インキュベーション時間30分後には既に顕著な内皮損傷(培養内皮細胞のLp=1.2±0.3cm×10-6×s-1×cmH2O;n=5)及び脈管壁からの内皮細胞の大きな剥離が生じた。
これに対して、血漿調製品(n=141)による処理では、内皮細胞の剥離は起こらず、密な内皮組織がみられた。伏在静脈切片の内皮は脈管壁に付着したままであった。組織因子TFは、本発明の灌流液により処理された静脈ではインキュベーション(1時間)後はほとんど測定できなかったが(2.6fmol×min-1×cm-2±1.5;n=5)、対照液中では極めて高い値であった(8.2fmol×min-1×cm-2±3.3;n=5)。これは、開いている内皮の裂け目を通じて周皮細胞様の細胞との接触を増大させる凝固因子により説明できる。
これらの結果は、本発明の灌流液がその全ての実施形態において脈管及び器官の内腔内皮を保存ないし再生できること、さらに長期の開放率及びそれによる管腔器官の長期機能性、並びに移植片の長い生存期間を保証できることを示す。
(実施例10)パパベリンを含有する灌流液としての血漿調製品の実施形態
実施例10の記載と同じ結果が、血管拡張剤として10μMパパベリンを追加した灌流液(実施例9の血漿調製品)を用いて得られた。内皮層の維持に加えて、痙攣発生もパパベリンの添加により低減ないし阻止できた。
(実施例11)塩化カリウムを含有する灌流液(心停止灌流液)としての血漿調製品の実施形態
同様に、単離された心臓における電気的活動が心停止灌流液(実施例9の血漿調製品)により阻止できた。使用した溶液は、血漿調製品の基本溶液において挙げられたKCl濃度の代わりに20mM KClを含有したものである。
この溶液は、手術中における内皮の保護に適しており、心停止灌流液中のインキュベーションによる高いカリウム含量によって移植片(脈管、器官など)を弛緩させることができる。
(実施例12)バイパス患者におけるインビボ研究
これまで述べた成果を患者の生体に対しても実践できることを示すために、入院中のバイパス患者に関する研究を行った(図8〜11)。
このインビボ研究は、生体外で新たに培養したバイパス患者からの伏在静脈25個のそれぞれを、下記の4つの溶液のいずれかによってよくリンスした後に、移植するまでのおよそ30〜60分間、同じ溶液中で室温において維持することにより実施した:
1. 対照液としての等張食塩水(生理食塩水)(図8)、
2. 対照液としてのブレトシュナイダー液(心停止用)(図9)、
3. 5%アルブミンを含む実施例2の等張性灌流液(図10)、
4. 血漿調製品(実施例9に準じる;図11)。
上述の溶液(本実施例における溶液1〜4;図8〜11)を用いた生体外培養及び丁寧なリンス直後、また該溶液でのインキュベーション直後ないしは移植直前(つまり生体外培養のおよそ30〜60分後)に、それぞれの静脈切片から約5mmの長さ分を切り取り、ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド溶液中で固定した。静脈切片の一部については対照目的でそれぞれのインキュベーション液中で合計8時間インキュベートしたが、静脈の主要部については移植した。固定された部分切片では細胞内空間への銀含浸が行われたため、脈管内膜の内皮被覆の完全性が各時点で定量的に決定できた。溶液1及び2(生理食塩水及びブレトシュナイダー液)では脈管の内皮膜はもはや確認不可能なことが多く、大半はそこに小さな領域しか残っていないことが示された(図8〜9)。内皮下の壁層は内腔へ直接結びついていた。溶液1及び2中でインキュベートされた培養内皮細胞及び完全な静脈の内皮は、それらの内皮的空間のために、軽度の過圧下で内腔に適用された水性溶液に対する浸透性を有した。経壁的な水輸送が検出できたが、その大きさは流体伝導度として正確に測定できた。
本発明の灌流液3及び4によるインキュベーションの場合には比較的低い、特に灌流液4の場合には極めて低い流体伝導度しか確認できなかったが、それは内皮膜の高い密封性及び連続性の証拠を提供するものであった(図10〜11)。
並行して実験を行い、上記の4つの溶液のそれぞれひとつによる比較的長い静脈切片のインキュベートと、それに続く凝固因子(BBSB)の標準化された混合物によるリンスの後に、上記の4つの溶液に含まれている因子がどのようにして深い壁層内に存在する「組織因子」(TF)により活性化されるかということを確認した。おそらく、後者は臨床的に起こる全ての脈管内の血栓症病態の原因となると思われる。通常は、組織因子は健全な血管内皮により血液から(結果的に血漿内の凝固因子から)保護される。それこそは、静脈があらかじめ本発明の灌流液によりインキュベートされた場合に該当する。対照液1及び2が使用された場合には、内壁は親血栓性となることが判明した。なぜならば、脈管内由来の凝固因子が不完全な内皮を通ってより深い壁層に浸透することができ、そこで組織因子と接触したからである。
同様の結果が内胸動脈バイパスに関して得られた(図示せず)ことから、本発明の方法は決して特定の型の脈管又は器官に限定されない。
要約すると、本発明は、手術、移植、運搬及びインキュベーションに際して、単離された管腔器官及び生体脈管の処理、製作及び保存に対する優れた方法を提供するものである。したがって、ここに述べられた本発明の灌流液の1つにより処理された管腔器官及び生体脈管は、長期の生存期間及び機能性を有する脈管又は器官の移植片に適している。そのような移植片の再狭窄化という今日なお高いリスクが、本発明の灌流液の使用により大幅に軽減され、それにより患者の幸福に寄与することになる。
以下の図面は、本発明を説明することを意図するものである。
図1は、単離された生体脈管の内皮保護的な処理のための本発明の方法に使用するための装置を示す。 図2は、生理食塩水によるインキュベーション中の伏在静脈からの培養内皮層を示す。 図3は、本発明の灌流液の基本組成によるインキュベーション中の伏在静脈からの培養内皮層を示す。 図4は、本発明の灌流液の他の実施形態によるインキュベーション中の伏在静脈からの培養内皮層を示す。 図5は、ケルセチンを含む本発明の灌流液を用いて処理された、血小板及び顆粒球からの遊離生成物の作用下にある培養細静脈内皮細胞を示す。 図6は、パパベリンを含む本発明の灌流液を用いて処理された、血小板及び顆粒球からの遊離生成物の作用下にある培養細静脈内皮細胞を示す。 図7は、ヒト静脈からの増殖培養された細静脈内皮細胞の心停止性カリウム濃度に対する反応を示す。 図8は、等張食塩水による処理時の伏在静脈における内皮被覆に対する本発明の方法の適用及びその効果を示す。 図9は、ブレトシュナイダー液による処理時の伏在静脈における内皮被覆に対する本発明の方法の適用及びその効果を示す。 図10は、灌流液としての5%アルブミン溶液による処理時の伏在静脈における内皮被覆に対する本発明の方法の適用及びその効果を示す。 図11は、灌流液としての血漿調製品による処理時の伏在静脈における内皮被覆に対する本発明の方法の適用及びその効果を示す。

Claims (54)

  1. 管腔器官の内皮保存的な処理のための方法であって、単離された管腔器官を内皮保護的灌流液に接触させることを含み、前記内皮保護的灌流液は少なくとも以下の成分:
    (a)生理電解液、
    (b)少なくとも0.1重量%の天然アルブミン、
    (c)栄養素基質、
    を含み、前記処理によって、前記管腔器官の内腔における内皮組織の保存及び/又は修復が行われる、管腔器官の内皮保存的な処理のための方法。
  2. 前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、1〜10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清に代替されている請求項1の方法。
  3. 前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、抗凝固処理された同種血漿調製品により代替されており、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている請求項1の方法。
  4. 前記抗凝固処理された血漿調製品は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、ヒト血清タンパク質、アルブミン及び免疫グロブリンを含む請求項3の方法。
  5. 前記抗凝固処理された血漿調製品は、以下の組成を含む請求項4の方法:約100〜170mM ナトリウムイオン、約1〜15mM カリウムイオン、約1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、及び約50〜200mM 塩化物イオン、並びに、約25〜45g/l アルブミン、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリンを含有するヒト血清タンパク質を含み、pH値が約7.3〜約7.8、オスモル濃度が約200〜350mosmol/kg。
  6. 前記内皮保護的灌流液中の栄養素基質は、L−グルタミンである請求項1〜5のいずれかの方法。
  7. 前記内皮保護的灌流液中のL−グルタミン濃度は、0.5〜10mMである請求項6の方法。
  8. 前記生理電解液は、2〜10mMのグルコース及び/又は1〜10mMのピルビン酸塩を含む請求項6の方法。
  9. 前記生理電解液は、0.1〜0.6U/mlのヘパリン、及び/又は、それぞれ50〜100μMの尿酸及び/又はアスコルビン酸塩を含む請求項6の方法。
  10. 前記生理電解液は、以下の成分を含む請求項1〜9のいずれかの方法:100〜150mM NaCl;1〜15mM KCl;0.1〜4mM MgSO4;0.5〜2mM KH2PO4;24〜48mM ヒスチジン−Cl、及び1〜3mM CaCl2
  11. 前記内皮保護的灌流液は、抗凝固処理された非凝集性血漿調製品であり、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている請求項1の方法。
  12. 前記血漿調製品は、以下の成分を含む請求項11の方法:100〜170mM ナトリウムイオン、1〜15mM カリウムイオン、1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、50〜200mM 塩化物イオン、約25〜45g/l アルブミン、並びに、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリン。
  13. 前記血漿調製品は、ウィルス不活化のためにβ−プロピオラクトン及びUV照射により処理されている請求項12の方法。
  14. 前記灌流液は、1以上の内皮促進性の成長因子を含む請求項1〜13のいずれかの方法。
  15. 前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び幹細胞因子(SCF)からなる群より選択されたものである請求項14の方法。
  16. 前記灌流液は、フラボノイドを含む請求項1〜15のいずれかの方法。
  17. 前記フラボノイドは、クエルセチン及び/又はトリヒドロキシエチルルトシドである請求項16の方法。
  18. 前記灌流液は、パパベリン及び/又はアデノシンを含む請求項1〜17のいずれかの方法。
  19. 前記灌流液は、6mMを超える心停止濃度のカリウムを含む請求項1〜18のいずれかの方法。
  20. 前記管腔器官は、心臓、腸、子宮、腎臓、膀胱、肺、肝臓、又は脾臓である請求項1〜19のいずれかの方法。
  21. 前記管腔器官は、生体脈管である請求項1〜19のいずれかの方法。
  22. 前記生体脈管は、血管又はリンパ管である請求項21の方法。
  23. 前記内皮保護的灌流液は、請求項47〜51のいずれかの装置を用いることにより管腔器官内に導入される請求項1〜22のいずれかの方法。
  24. (a)生理電解液、
    (b)少なくとも0.1重量%の天然アルブミン、
    (c)0.5〜10mMのL−グルタミン、
    を含む内皮保護的灌流液。
  25. 前記天然アルブミンは、1〜10体積%の、溶血素を含まない同種血清又は自己血清に代替されている請求項24の灌流液。
  26. 前記内皮保護的灌流液中の天然アルブミンは、抗凝固処理された同種血漿調製品により代替されており、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている請求項24の灌流液。
  27. 前記抗凝固処理された血漿調製品は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、ヒト血清タンパク質、アルブミン及び免疫グロブリンを含む請求項26の灌流液。
  28. 前記抗凝固処理された血漿調製品は、以下の組成を含む請求項27の灌流液:約100〜170mM ナトリウムイオン、約1〜15mM カリウムイオン、約1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、及び約50〜200mM 塩化物イオン、並びに、約25〜45g/l アルブミン、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリンを含有するヒト血清タンパク質を含み、pH値が約7.3〜約7.8、オスモル濃度が約200〜350mosmol/kg。
  29. 前記L−グルタミン濃度は、2.5mMである請求項24〜28のいずれかの灌流液。
  30. 前記L−グルタミン濃度は、5mMである請求項24〜28のいずれかの灌流液。
  31. 前記L−グルタミン濃度は、7.5mMである請求項24〜28のいずれかの灌流液。
  32. 前記生理電解液は、下記成分を含む請求項24〜31のいずれかの灌流液:100〜150mM NaCl;1〜15mM KCl;0.1〜4mM MgSO4;0.5〜2mM KH2PO4;24〜48mM ヒスチジン−Cl、及び1〜3mM CaCl2
  33. 前記生理電解液は、2〜10mMのグルコース及び/又は1〜10mMのピルビン酸塩を含む請求項32の灌流液。
  34. 前記生理電解液は、0.1〜0.6U/mlのヘパリン、及び/又は、それぞれ50〜100μMの尿酸及び/又はアスコルビン酸塩を含む請求項23〜33のいずれかの灌流液。
  35. 雰囲気下における前記生理電解液のpH値は、7.4±0.04である請求項23〜34のいずれかの灌流液。
  36. 前記内皮保護的灌流液は、さらに抗生物質を含む請求項24〜35のいずれかの灌流液。
  37. 前記抗生物質は、50〜400U/mlのペニシリン及び/又は0.1〜0.4mg/mlのストレプトマイシンである請求項36の灌流液。
  38. 前記内皮保護的灌流液は、抗凝固処理された非凝集性血漿調製品であり、該調製品はヒト血漿タンパク質、抗凝固性作用因子及び免疫グロブリンを含み、その血漿の親凝固性作用因子、同種凝集素、及び不安定成分が除去されている請求項24の灌流液。
  39. 前記血漿調製品は、以下の成分を含む請求項38の灌流液:100〜170mM ナトリウムイオン、1〜15mM カリウムイオン、1〜6mM カルシウムイオン、約0.1〜4mM マグネシウムイオン、50〜200mM 塩化物イオン、並びに、25〜45g/l アルブミン、3〜15g/l IgG、1〜10g/l IgA、及び0.2〜3g/l IgMの各免疫グロブリンを含有するヒト血清タンパク質。
  40. 前記血漿調製品は、ウィルス不活化のためにβ−プロピオラクトン及びUV照射により処理されている請求項39の灌流液。
  41. 前記灌流液は、1以上の内皮促進性の成長因子を含む請求項24〜40のいずれかの灌流液。
  42. 前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び幹細胞因子(SCF)からなる群より選択されたものである請求項41の灌流液。
  43. 前記灌流液は、フラボノイドを含む請求項25〜42のいずれかの灌流液。
  44. 前記フラボノイドは、クエルセチン及び/又はトリヒドロキシエチルルトシドである請求項43の灌流液。
  45. 前記灌流液は、パパベリン及び/又はアデノシンを含む請求項25〜44のいずれかの灌流液。
  46. 前記灌流液は、6mMを超える心停止濃度のカリウムを含む請求項25〜45のいずれかの灌流液。
  47. 単離された生体脈管の内皮保存的な処理のための装置であって、室(1)と、軸方向に移動可能なピストン(6)と、カニューレ(5)と、内皮保護的灌流液を含む貯蔵容器(7)と、密封装置(3)とを含み、前記カニューレは軸方向に動くピストン(6)に接続されて該ピストンと共に前記室に進入することができ、前記密封装置(3)は前記脈管の一方の端を握ることができ、前記カニューレは該脈管の他方の端と接続されており、前記内皮保護的灌流液が前記貯蔵容器(7)から、好ましくは圧力勾配を以て、選択的に該生体脈管に導入されることができる、単離された生体脈管の内皮保存的な処理のための装置。
  48. 前記密封装置は、きざみ付きつまみねじに積層状に配置された密封円板を含む請求項47の装置。
  49. 前記密封円板は、1〜10mmの直径及び/又は0.3〜3mmの厚さを有する請求項48の装置。
  50. 灌流液を加熱するための温度調整装置をさらに含む請求項47〜49のいずれかの装置。
  51. 前記内皮保護的灌流液は、請求項24〜46のいずれかの内皮保護的灌流液である請求項47〜50のいずれかの装置。
  52. 請求項24〜46のいずれかの内皮保護的灌流液の、単離された管腔器官又は生体脈管の保存のための使用。
  53. 請求項24〜46のいずれかの内皮保護的灌流液の、単離された管腔器官又は生体脈管における内皮組織の維持及び/又は修復のための使用。
  54. 請求項24〜46のいずれかの内皮保護的灌流液の、単離された管腔器官又は生体脈管における脈管閉塞の治療及び/又は予防のための使用。
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