JP2006524811A - 励起錯体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、励起錯体の形成、形成可能性、蛍光および/または検出を向上させるための、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒の使用に関する。本発明は、特に、標的配列とハイブリッド形成する2つのポリヌクレオチドプローブを用いる核酸ハイブリッド形成アッセイに適用される。それぞれのプローブは、標的核酸とハイブリッド形成した場合に、光照射にて励起錯体が形成されるように、励起錯体を形成できる2種のパートナーの1つで標識化されている。

Description

発明の詳細な説明
励起錯体
本発明は励起錯体に関し、並びにより具体的にはその形成(または形成可能性)および/または特に(必ずしも排除的ではない)核酸ハイブリッド形成アッセイなどの解析手法における検出を向上させる目的でその検出能を促進することに関する。
励起錯体は、種々の蛍光ドナーおよびアクセプター種(例えば、ピレンおよびジメチルアニリン)が互いに正しい位置関係(通常、互いに4nm以内)をとり、そして各蛍光パートナーの1つが吸収する波長で光照射(例えば、レーザーにより)された場合に形成される、励起状態の蛍光複合体である。より具体的には、励起錯体は、電気的に励起されたドナーとアクセプターとの間で、以下の式:
Figure 2006524811
[式中、Mは電気的に励起された単量体(ドナー)を表し、Qは事実上Mのクエンチャー(アクセプター)を表す]
により表すことができる過程で形成される。
励起錯体複合体は、各励起錯体を形成する(形成性)パートナーのいずれからの発光かを識別して検出できる蛍光発光を伴って解離する。励起錯体は、それを形成する各パートナーのいずれの最大励起波長と比べても、赤方遷移した最大励起波長を有している(同様に、その他の蛍光特性も異なっている)ため、個々のパートナーから識別して検出される。これらはその他の特性についても異なっている(例えば、A. GilbertおよびJ. Baggott、「Essentials of Molecular Photochemistry」、出版Blackwell、Oxford (1991)、並びにOrganic Molecular Photophysics、J.B. Birks著、Wiley、London、Vol 1 (1973)、Vol 2 (1975)を参照のこと)。
励起錯体は、2つの同一の複合体形成性蛍光パートナー(例えば、ピレン)が正しい位置関係(さらに、互いにおよそ4nm以内)をとり、各パートナーが吸収する波長で光照射された場合に形成される、励起状態複合体であるエキシマーから区別され得る。エキシマー形成は以下の式:
Figure 2006524811
により表すことができる。
さらに、エキシマーは、それを形成する個々のパートナーの最大発光波長と比べて赤方遷移した最大発光波長を有する。エキシマー発光と対照的に、励起錯体発光は、それが形成される溶媒の極性に非常に敏感である。加えて、励起錯体の最大発光波長と強度はその成分である酸化還元特性に敏感である。このように、励起錯体には酸化還元特性の違いのためアクセプターとドナー種の間にある程度の電化移動がある点で、エキシマーと励起錯体との間には違いが存在する。
エキシマーおよび励起錯体は種々の分析方法における使用が記載されている。
従って、例えば、エキシマーおよび励起錯体を、生体試料に標的核酸が存在するか(存在しないか)および/またはその量を決定する方法において使用することが記載されている。この方法は、標的(NA)分子と、その5´端および3´端にそれぞれエキシマーまたは励起錯体パートナー部分(例えば、発色団標識基(chromophoric labelling groups))を有し且つその標的NAの隣接塩基対合部位と相補的な2つ(またはそれ以上)のオリゴヌクレオチド、ON1およびON2、とのハイブリッド形成に基づいている。従って、ハイブリッド形成する条件下で、第一プローブの5´端ヌクレオチドと第二プローブの3´端ヌクレオチドとが標的配列の隣接塩基に対してハイブリッド形成するような標的配列(存在する場合に)と2つのオリゴヌクレオチドとがハイブリッド形成できる。
2つのパートナー部分が励起複合またはエキシマーを形成する関係にあり、5´または3´の各エキシマーまたは励起錯体のパートナー部分R1またはR2はそれぞれ、その他の部分と一緒になって、光照射にて励起錯体またはエキシマーのいずれか(パートナー部分の性質に依存する)を形成できるが、これは両方のオリゴヌクレオチドプローブが標的配列とハイブリッド形成した場合にのみ生じる。従って、エキシマー/励起錯体の最大発光波長で蛍光をモニターすることにより、特定のポリヌクレオチド標的が存在するか否かを決定することができる(最大発光波長での複合体蛍光は、2つのプローブが標的と正しくハイブリッド形成した場合にのみ観察されるためである)。
プローブは標的核酸と結合するが、突然変異の有無によってエキシマーまたは励起錯体の信号強度のレベルに差異が生じなかったり生じたりするような(検定の設定の仕方に依存する)プローブとすることができるため、標的核酸が点突然変異または挿入、ギャップなどを有するか否かを決定する方法にも使用できる。さらに、この技術は、それぞれが適切な標的配列とハイブリッド形成することで種々の蛍光発光を有する複合体を形成し、次いでそれら種々の波長を検出することで、この解析手法により複数の異なる標的配列を検出できるように複数の上記プローブ対を用いることができる。
そのような技術の一例がEP-A-0 810 291(Ebata)に開示されており、そこでは複合体はエキシマーであり、本発明はエキシマーにより具現化される。(また、EP-A-0 810 291において複合体が励起錯体である可能性に触れているが、そのような複合体に関する詳細は記載されていない)。EP-A-0 810 291と同様の題材が、Ebataら. Photochem. Photobiol. (1995) v 62、pp836-839およびEbataら. Nucl Acids Symp (1995) Series No 34、pp187-188)、並びにP.L.Parisら. Nucl. Acids Res.1 (1998)、v26、pp 3789-373に開示されている。
エキシマーおよび励起錯体を分析技術に使用する場合、その間に実用的な差異が数多く存在する。それらの差異としては、以下:
・それらの溶媒感受性(エキシマーは溶媒に対して比較的鈍感であるが、励起錯体はアセトニトリルよりも極性の大きい溶媒中では発光しないことが多数報告されているが、下記参照のこと)、
・励起錯体の発光振動数とパートナーAおよびBの酸化還元電位差との間にある直線関係:従って、励起錯体については発光蛍光波長を化学的に調整できるが、エキシマーはできない(Rehm、D; Weller、A Zeit Phys. Chem 1970、695、183-200を参照のこと)。
・AおよびBの取り得る構造の範囲(原理的に励起錯体は非常に幅広いが、エキシマーは、AとBとが同一であり、そして通常はピレン、また極稀にペリレンであるなど非常に限定されている)
がある。
上記様式のハイブリッド形成アッセイの水性条件において、励起錯体を使用する場合には問題がある。より具体的には、エキシマー発光は励起波長および量子効率を含む幾つかの媒介変数に関して溶媒から比較的独立しているが、励起錯体発光は溶媒の性質に著しく依存することにより特徴付けられる。溶媒の極性は、励起錯体の性質に非常に重要であり、分子間励起錯体は、通常、アセトニトリル程度の弱い極性の溶媒でさえ発光しなくなる。分子間状態にある励起錯体の発光は低極性溶媒で優先的に生じる(J.Birks、Photophysics of Aromatic Molecules、publ. Wileyおよびその他多くの文献)。相互作用の強い励起錯体パートナー、例えばジアルキルアニリンを有する芳香族炭化水素(最も幅広く研究されたファミリー)の場合、励起錯体は部分的な電荷移行状態により生じ、非極性溶媒中で蛍光を発するのに十分安定である。溶媒極性の増大により優先的に溶解し、電荷分離を安定化し、並びに誘電定数約14でピレン:ジメチルアニリン対は、ピレン:PhNEt のイオン対と同じ励起錯体吸収スペクトルを有する。この反応の変化は、非極性溶媒中での密集性が極性溶媒中でゆるむという励起錯体の構造変化により生じ(Verhoevenら.、Chem. Phys. Lett. (1987) 140、587; Pur Appl、Chem. (1990) 62、1585; (1993)、65、1717)、ここで、極性溶媒はアセトニトリルの有する範囲(order)の極性を意味する。
特殊な条件下だけでなくDMSO、20%水溶性アセトニトリルと同じ極性の溶媒(例えば、Lewis & Cohen、J. Phys. Chem. (1994) 98、10591)、または水(Pal & Ghosh、J. Photochem. Photobiol. A. Chem. (1994) 78、31)中でさえ、発光することが知られている励起錯体系が幾つかある。
WO−A−0146121(マンチェスターのビクトリア大学)には水および極性溶媒中で分子間励起錯体を形成することができる化合物が開示されている。特定の化合物については、pH依存的である。
エキシマーと比較して励起錯体を用いることは、寄与するパートナーの電気親和力およびイオン化電位を変えることによって、蛍光発光特性、例えば複合体の波長などを「調整」できるために有利である。例えば、クリセンを用いてN,N−ジエチルアミンから形成される励起錯体はca 420nmで発光するが、ペリレンを用いてN,N−ジエチルアミンから形成される励起錯体は推定520nmで発光する。
さらに具体的には、発光特性は、例えば、発光頻度がパートナーの電子供与体/電子受容体の強さの差に直線的な関係があるなど、細かい化学構造により予測判断して調整することができる。(例えば、D.Rehm、S. Naturforsch (1970) Vol 25a 1442-1447; J.B. Birks 「Photophysics of Aromatic Molecules」Wiley Interscience、Londonにより発刊)。
WO−A−0040751(マンチェスターのビクトリア大学)において、上記形式の核酸ハイブリッド形成アッセイに励起錯体を使用できる種々の溶液が記載されている。WO−A−0040751において記載された溶液の例としては、以下:
(i) 分析される試料のバルク相よりも疎水性の高い局所的な領域で励起錯体の形成を確実に行わせる;
(ii) 試料中に励起錯体の蛍光信号を増大させ得る添加物を含む;
(iii) 励起錯体発光を高める磁性の使用;および
(iv) (a)ハイブリッド形成アッセイに影響を及ぼす相対的に極性の媒質(水)を少なくとも部分的に取り除くこと、および(b)より極性の低い媒質を添加することのいずれかの工程を少なくとも1回
が含まれる。
(iv)に関して、WO−A−0040751では、「極性の低い媒質」の例として、アセトニトリルおよびメチルシクロヘキサン(およびその溶媒の混合物)が開示されている。しかしながら、メチルシクロヘキサンは水と混合することができないし、僅かなアセトニトリル量であれば、励起錯体発光させるのに必要な、DNAの特徴である2重構造を破壊することなく添加できる。
さらに、検出を目的としたエキシマーまたは励起錯体形成に拠る分析技術の例として、核酸配列決定法がWO−A−0037674 (マンチェスターのビクトリア大学)に開示されている。
本発明の目的は、上記の不都合点を事前に取り除き、または緩和することである。
第一の態様では、本発明は、励起錯体の形成、形成可能性、蛍光および/または検出を促進するために2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒の使用を提供する。
理論的に結合することが期待されることを除いて、溶媒は励起錯体の形成(または形成可能性)を促進することができ、または信号(信号が無い若しくは弱い励起錯体からの)を良くすることができるか、またはその他、励起錯体の検出を容易にすることができる。
「励起錯体の形成可能性」の用語により、我々は、本発明が、特定の条件になった場合にのみ励起錯体が形成され、その条件でなければ励起錯体は形成されないが、それ自体が有用な情報、例えば標的分子が存在するか否かに関する情報を提供するような技術に応用できることを意図している。従って、励起錯体が実際に形成されるかどうかは、本発明の前提条件ではない。
第2の態様に関して、励起錯体形成性パートナーを含有する媒質を適当な波長で光照射する工程および光照射を特徴とする励起錯体の形成を検出する工程を包含する、上記媒質中の励起錯体の検出に関する分析方法であって、上記媒質は2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒を含む。
さらに、理論的に結合することが期待されることを除いて、本発明の第2の態様の方法においては、溶媒が存在することによって、励起錯体の形成(または形成可能性)を促進することができ、あるいは信号(信号が無い若しくは弱い励起錯体からの)を良くすることができるか、またはその他励起錯体の検出を容易にできる。
また、本発明が励起錯体を消失させる条件を検出できる可能性にまで及ぶことは理解されるべきである。従って、例えば、本発明は、励起錯体を当初(光照射にて)形成することができたが、特定の条件が優勢になりもはや励起錯体が形成できなくなる検定に応用できる。この場合、この検定の「陽性」結果は励起錯体信号の喪失によって決定される。
以下の実施例1において提供されるデータで実証されるように、本発明は、試験した幅広い溶媒の中で、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールおよびエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒だけが、励起錯体の発光を促進することができる特異な特性を有しているのに対し、エキシマーの発光は多くの媒質によって促進されるという知見に基づいている。
上記溶媒は、2,2,2−トリフルオロエタノールであることが特に好ましい。
励起錯体を形成もしくは形成可能性が、励起錯体促進性溶媒(例えば、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒)を包含する液体媒質において光照射に影響を受けることが好ましい。また、液体媒質が、励起錯体促進性溶媒の体積当たり、好ましくは50%以上、より好ましくは少なくとも60%、およびさらにより好ましくは少なくとも70%を包含することが好ましい。液体溶媒が励起錯体促進性溶媒の体積当たり60%〜80%を包含することが特に好ましいが、例えば90%もしくは95%以上の量を用いることもできる。液体溶媒が、水または緩衝液と励起錯体促進溶媒の混合液を包含することが最も好ましく、後者は上記量で存在することが好ましい。
本発明の上記態様のいずれかで使用するための励起錯体は、例えば「The Exciplex」(A. Weller; M. GordonおよびW.R. Ware著、Academic Press N.Y. 1975)およびZ. Phys. Chem (1970) 69 1983 (D.RehmおよびA Welter))に開示されるものであって良い。文献には非常に多くのより特異な態様が記載されてあり、それらにはピレンおよびN,N−ジアルキルアミン、ペリレンおよびN,N−ジアルキルアミン、金属ポルフィリンおよび芳香族ニトロ化合物(J. Amer. Chem. Soc. (1971)、93、7093; (1974)、96、(6349)を参照のこと)、並びにフタロシアニンおよび芳香族ニトロ(Inorg. Chem.、(1983)、22、1672を参照のこと)が含まれる。
励起錯体を形成するパートナーに関して、パートナーは以下:
(i) ドナーおよびアクセプターパートナーは疎水性であり、核酸にそれほど影響を与えることなく互いに引き付けあうため分岐している;および
(ii) ドナーおよびアクセプターは適当な酸化還元電位を有する
であることが好ましい。
文献、例えばP.Loach in Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、第3版、Volume I、p1222以下参照.、CRC Press (1976) Boca Raton、G.d. Fasman著には利用可能な酸化還元電位について数多く掲載されており、
励起錯体形成性パートナーの1つが、ペリレンまたはピレンであることが特に好ましい。ピレンをアクセプターとして用いる場合には、条件の(i)が一般的には適用され、縮合芳香族環系を有するドナーが、単一の芳香族環を有するものと比べて促進された励起錯体発光を発する。このように、アクセプターとしてピレンを用いた場合には、ドナーパートナーとして2−(N´−メチル−N´−ナフタレン−1´´イルアミノ)エチルアミノ(DMN)基を用いると、上記縮合環系のために4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル(DMA)基と比べて促進された励起錯体発光を発するであろう。条件(ii)に関しては、2−(N´−メチル−N´−ナフタレン−1´´イルアミノ)エチルアミノ(DMN)基は、2−(N´−ナフタレン−1´´イルアミノ)エチルアミノ(MMN)基と比べて促進された励起錯体発光を発する。
励起錯体の検出は、波長検出により行い得る。また、励起錯体は、エキシマー系に対して記載したような影響を及ぼす円偏光二色性スペクトルを含む、その他の分光法によっても検出することができる(例えば、H. Mihara、Y. Tanaka、T Fujimoto、およびN. Nishino J. Chem. Soc. Perkin Trans 2 (1995) p1133-1140を参照のこと)。分極法または異方性を含むその他の方法の幾つかを、励起錯体を検出するのに用いることができる。励起錯体形成は寿命を測定することによって確認することもできる。
種々の励起錯体型を研究段階で系の特定の様式を同定して分離検出できるため、分析は1種類以上の励起錯体が形成されても可能である。従って、例えば本方法には、それぞれが存在していても検出可能な2種またはそれ以上の励起錯体を形成させることも含まれる。
2種またはそれ以上の励起錯体が形成される場合、1種の励起錯体から照射される電磁エネルギーが別の種類の励起錯体またはその他の蛍光消光物質の形成および/または検出に影響を及ぼす共鳴エネルギー移動によって照射されることがある。逆に言えば、発色団パートナーからの共鳴エネルギー移動は励起錯体信号を引き起こす。
本発明は、標的ポリヌクレオチド配列が試料中に存在するか否かを検出するために、試料を分析する方法に適用することが最も好ましく(これは本発明の第3の態様を表す)、上記方法には以下の工程:
a)ハイブリッド形成条件下で以下のプローブ:
i) 光照射にて、第二の励起錯体パートナー部分と共に励起錯体を形成できる第一の励起錯体パートナー部分で(例えば、その5´端に若しくはそれに隣接して)標識化された、第一のポリヌクレオチドプローブ、および
ii) 第二の励起錯体パートナー部分で(その3´端に若しくはそれに隣接して)標識化された第二のポリヌクレオチドプローブであって、上記第一および第二のプローブは、第一および第二の部分がそれらの部分から識別して検出できる励起錯体を形成できるよう、標的配列の相互排他的領域と結合するように適合されている、
を用いて、試料を処理する工程、
b)励起錯体形成を引き起こす光照射を行う工程、および
c)上記励起錯体形成を検出する工程、
が含まれ、上記試料が照射される際に2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒を含むことを特徴とする。
本発明の第3の態様(およびその他の態様)に使用する励起錯体パートナー部分は発色団部分であっても良い。
我々は、水性媒質中のB−DNA二本鎖は一般に共溶媒(co-solvent)の添加によって不安定化することが知られていたが(Ivanovら、J.Mol. Biol (1974) 87: 817-833; Malenkovら、FEBS Letters (1975) 51: 38-42)、以上の段落で規定する方法において励起錯体促進性溶媒(例えば、2,2,2,−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテル)を使用しても、ハイブリッド形成の結果形成される核酸の二本鎖が大きく不安定化されることなく、励起錯体形成を強く促進するという、驚くべきことを見出した。我々は、励起錯体促進性溶媒が、プローブまたは標的核酸のいずれかの塩基および/または溝もしくは表面とそれぞれの励起錯体パートナー部分との疎水的相互作用であって、照射の際に複合体形成を生じさせるのに必要とされる励起錯体パートナー部分間の相互作用を「邪魔」すると考えられる(促進媒質の非存在下の)疎水的相互作用、を予防、軽減もしくは修飾している、と考えている。
励起錯体促進性溶媒の最適な割合は、プローブと標的ストランドの性質に依存するであろう。以下により詳細に記載するように、標的ストランドは、例えばDNAまたはRNAであって良く、またプローブはDNA、RNA、または核酸の類似物もしくは誘導体(例えばLNAまたはPNA)であっても良い。従って、例えば、DNAプローブとDNA標的、LNAプローブとDNA標的、およびDNAプローブとRNA標的などの組み合わせによって、励起錯体促進性溶媒の最適な割合は異なってくる。しかしながら、当業者であればその最適量を容易に決定することができる。しかし、一般にハイブリッド形成混合溶液中の励起錯体促進性溶媒の濃度は、体積当たり少なくとも30%、および一般的には少なくとも40%であろう。例えば、標的ストランドおよび/またはプローブストランドの少なくとも一方がLNAを含んでいる場合、体積当り40%量が好ましいであろう。しかしながら、標的および/またはプローブがDNAおよび/またはRNAを含む場合、さらに高い溶媒量が要求されるであろう。従って、本発明の特定の態様については、ハイブリッド形成混合物中の励起錯体促進性溶媒の量は、体積当たり少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%であろう。特定の実施形態について、その濃度は典型的には体積当り60〜80%であるが、最大99%までが使用可能である。
励起錯体促進性溶媒(例えば2,2,2−トリフルオロエタノール)は、ハイブリッド形成前、ハイブリッド形成と同時、またはハイブリッド形成後に加えても良い。
本発明の第3の態様の方法は、オリゴヌクレオチドプローブが標的核酸(存在する場合には)とハイブリッド形成し励起錯体の形成を確実にするハイブリッド形成条件下にて実施される。そのようなハイブリッド形成条件は当業者には周知であり、一般にオリゴヌクレオチドプローブの長さおよび/またはそれに含まれる特別な塩基の存在に対して適切な緩衝液条件、濃度条件および温度条件が要求される。
標的およびプローブストランドは溶液中で遊離していても良いが、このことは本質的なことではない。従って、例えば、標的核酸の少なくとも1つ(全部ではない)および/またはプローブの少なくとも1つが固定されており、溶液中に遊離している該部分の少なくとも1個が存在しても良い。さらには、標的核酸が固定されており、そのプローブが溶液中に遊離していても良い。例えば、固定化は液体支持体および固体支持体においてでも良い。固定化は「チップ」(核酸ハイブリッド形成分析に用いられるような)においてでも良いし、マイクロアレイ、ナノ分子またはその他の表面においてでも良い。あるいは、固定化は油滴においてでも良い。
所望により、ハイブリッド形成前に、試料を加熱して又はその他の操作を行って全ての2次構造を破壊しても良い。
本発明の第3の態様は、場合によってはPCR反応で用いられる添加物、例えば、ベタイン、スルホラン、スルホンおよびスルホンオキシド、例として以下:
Figure 2006524811
に示す添加物を(例えば、約1%またはそれ以上のレベルで)用いて実施しても良い。
(Chakrabarti、R..; およびSchutt、C. Gene. 2001. 274: 293-298. Diakou、A.; Dovas、C. I. Analytical Biochemistry. 2001. 288: 195-200. Spiess、A. N.; Ivell、R. Analytical Biochemistry. 2002. 301: 168-174. Bachman、B. Luke、W.; Hunsman、G. Nucleic Acids Research. 1990. 18: 1309.)
我々は、そのような添加物を本明細書中に記載の励起錯体系に用いることができること、および励起錯体発光の促進に役立つことを発見した。
本発明の第3の態様の有利な展開について、我々は、ハイブリッド形成を第一の温度で行わせ、そのハイブリッド形成混合物をより高い第二の温度に加熱し、その後その混合物を冷却し、次いで励起錯体形成および検出のために光照射することで、増大された励起錯体信号が得られることを、確認した。従って、光照射および励起錯体検出のために、例えば、最初のハイブリッド形成後に、その混合物を二本鎖およびプローブオリゴの長さ並びにその化学的な性質に応じた温度まで、通常は90℃を超えない、好ましくは80℃を超えない、70℃より低いことが好ましい、およびさらにより好ましくは60℃より低い、例えば40℃にまで加熱し、その後冷却(例えば、5℃、10℃または周囲温度まで)することができる。
ハイブリッド形成アッセイの1つの実施形態(すなわち、本発明第3の態様の方法)において、第一の励起錯体パートナー部分をリンカーにより第一のオリゴヌクレオチドプローブ(例えば、その5´末端)に結合させることができる。同様に、第二の励起錯体パートナー部分を好適なリンカーにより第二のオリゴヌクレオチドプローブ(例えば、その3´末端)に結合させることができる。
このリンカーは、例えば、EP-A-0 810 291中のリンカーについて記載された式、すなわち以下の式:
Figure 2006524811
[式中、XおよびYはCONH、NHCO、COO、OCO、O、S、NHおよび(PO)Sから成る群から独立して選択され、RおよびRは水素または置換基(例えば、メチルなどのアルキル基、エチル基)から独立して選択され、並びにnおよびmは0〜5の整数を表し、およびkは0または1を表す。RおよびRの少なくとも1つは水素であることが好ましい。]
で示されるものであっても良い。
リンカーは、例えば、−CH−CO−NH−CH−CH−N(Me)−または−CH−CO−NH−(CH−NH−基であっても良い。
リンカーは、オリゴヌクレオチドのリン酸基(例えば、末端リン酸基)と結合させることができる。
ハイブリッド形成アッセイのその他の実施形態において、第一および第二の励起錯体パートナー部分は、例えば、いずれもResearch Corporation、Inc.と発明者としてE.T. Koolにより公開されている開示物、US-A-6 218 018およびWO-A- 0144220に従う核酸塩基類似物であっても良い。より具体的には、発色団部分(例えば、多環式芳香族炭化水素)はそれぞれ、炭素−炭素結合により各々糖部分と結合して、それにより一緒になって(すなわち、結合して)ポリヌクレオチドプローブのバックボーンを形成しても良い。
あるいは、励起錯体パートナー部分は、修飾された糖または分子のその他の部分と結合しても良い(EP-A- 810 291 (Ebata)を参照のこと)。
オリゴヌクレオチドプローブの長さは、そのプローブが、複合体形成中に生じる相互作用の結果、標的ストランドから変性しないよう、並びに、例えばヒト細胞又は複数の細胞由来のゲノムの調製において、両方のプローブが標的に連続してアニールした場合、核酸特有の伸張が隔離されると合理的に予測されるよう、核酸に対する十分な「結合親和力」を有する長さであるべきである。一般に、それぞれのオリゴヌクレオチドプローブ(典型的には2つまたはそれ以上の組み合わせ)は少なくとも6個、および好ましくは9個、あるいはそれ以上の塩基を含むであろう。
本発明第3の態様の方法は、試料中にある特定の核酸の存在を定性的に検出するのに、および/またはその量を定量的に検出するのに用いることができる。前者の場合は検出可能な信号の存在は巨大分子が試料中に存在することを示し、後者の場合は信号のレベルが存在する核酸の量を示す。
本発明第3の態様について特に好ましいのは、オリゴヌクレオチドプローブの隣接する3´および5´端がそれらの間に標的側の塩基の少なくとも1個(および好ましくは3個より多くない)の塩基を含んで、標的核酸と結合していることが特に好ましいが、その理由についてはWO-A-0040751に詳細に記載されている。
我々は、ハイブリッド形成アッセイにて得られる励起錯体発光の特性が、以下の条件:
(i)一方で標的核酸、他方でそれとハイブリッド形成するプローブとの間にある塩基誤対合(存在する場合)の数;
(ii)(i)記載の何らかの塩基誤対合の性質;
(iii)(i)記載の何らかの塩基誤対合が3´−プローブまたは5´−プローブのいずれにあるか;
(iv)標的ストランドとハイブリッド形成した隣接する3´および5´端の間にある標的ストランドの塩基の数;
(v) 励起錯体形成パートナーの性質;および
(vi) 標的および/またはプローブストランド中の何らかの変種ヌクレオチド、例えばRNAまたはLNAの存在
に依存することを実際に確かめた。
上記特長により、励起錯体信号の性質(例えば、強度)が少なくとも表示され、並びにオリゴヌクレオチドプローブによって調査される標的核酸部位の突然変異(例えば、点突然変異)の存在および性質を決定しできる、アッセイの実施を容易にできる。換言すれば、調査中に標的核酸の部位に突然変異が存在しなければ、プローブが標的に対してハイブリッド形成した場合の特定の信号が得られる。しかしながら、調査中に標的の部位に突然変異があると、
異なる信号が得られ、その特徴は突然変異の場所および性質、並びに3´および5´プローブオリゴヌクレオチド対する標的中の何らかのギャップまたは挿入に依存するか、あるいはその逆である。以下の実施例4に記載のデータにより実証するように、前記要素(i)−(iii)に依存するという励起錯体の発光様式は、エキシマーと異なっている。
第3の実施形態の方法は、特に一本鎖型である核酸の検出に適用可能であるが、二本鎖型の核酸の検出、さらに高次構造体、例えば3重合体の検出にも適用可能である。
本方法は、バックボーンにホスホジエステル結合を有する核酸の解析に適用することができる。従って、本発明は、特に調査される核酸としてDNA、RNAまたは混合RNA:DNA紺生物の解析に応用可能である。本方法はDNAオリゴヌクレオチドを用いたRNAの解析、またはその逆の解析に適用できる。本方法は、別の分子、例えばタンパク質と組み合わせた核酸(例えば、DNA/RNA)の解析に適用できるし、染色体、クロマチンおよび高次構造体(細胞質)中の核酸(例えば、DNA)の検出にも適用できる。
本発明は、ホスホジエステル結合が別の種に置換されている、例えば、バックボーンのホスホジエステル結合が以下:
(a) ホウ素構造体(boron structures)(例えば、J S SummersおよびBR Shaw、Curr Med Chem (2001) 8、1147-1155を参照のこと);
(b) PNAを含むポリアミド(タンパク質またはペプチド核酸−例えば、D A Dean Adv Drug Delivery Res (2000) 44、81-95; A Ray & B Norden FASEB J (2000) 14、1041-1060;E Uhlmann、A Peyman、G Breipohl、D W Will Angew. Chem. Int Ed (1998) 37、2796-2823; H Uhlmann Biol. Chem. (1998) 379、1045-1052; P E Nielsen Annu Rev Biophys Biomol Struct (1995) 24、167-183による概説);
(c) その他のもの(例えば、M J J Blommers、U Pieles、A de Mesmaeker Nucl Acids Res (1994) 22、4187-4194; Z A Shomstein、S Hillers Khim. Geterotsikl. Soedin. (1976)、27-42; D Atkins、M Miller、B de Bouvere、A van Aerschot、P Herdewijn Pharmazie (2000) 55、615-617を参照のこと)
によって置換されている、核酸の類似物または誘導体に適用することもできる。
本発明は、糖置換された「ロック核酸(locked nucleic acids)」またはLNSを含む、修飾された糖単位を有する核酸に適用することもできる(例えば、H Orum、M H Jakobsen、T Koch、J Vuust、M B Borre Clin Chem (1999) 45、1898-1905; A A Koshkin、P Nielsen、M Meldgaard、V K Rajwanshi、S K Singh、J Wengel J Amer Chem Soc (1998) 120、13252-13253; L Kvaerno J Wengel Chem Commun (1999) 657- 658を参照のこと)。
我々は、DNAおよび/またはRNAに基づく標的核酸およびプローブと比較して、LNAの使用が特定の特徴を示すことを実際に確かめた。特に、LNAは、蛍光強度をより強くし、概して励起錯体促進性溶媒(例えば、TFE)を種々の量(低量)を用いた場合にそうであった。さらに、LNAは、標的核酸とそのプローブとの間に塩基誤対合がある場合をより識別できるようにする。
核酸の解析に適用する場合、本方法は試料中の特定の核酸の存在および/またはその量を検出するのに用いることができる、あるいは、核酸中の突然変異の存在を試験するのに用いることできる(例えば、プローブは、少なくとも1つのプローブをそのストランドにのみ結合するようにし、突然変異が存在した場合には励起錯体発光が観察されなくなる配列とすることができる)。本発明は、例えば、特定の診断用配列の検出などの生物学的応用を、および十分な高感度検出感度を有する実時間のDNA、RNAまたは染色体における組換え部位形成などの単一細胞の事象を、目的とし得る。
本発明は、特に以上に詳細に記載するように核酸のハイブリッド形成に適用できるが、その他の解析手法、例えば、WO-A-0037674(マンチェスターのビクトリア大学)に開示されたように、核酸配列決定法において励起錯体を非放射標識として用いる方法などに適用できる。また、本発明はUS-A-5 332 659 (Kidwell)開示の核酸アッセイに用いることもできる。
本発明は、以下の実施例および添付の図面を参照して例示される。
図面の図1は、以下の実施例において調査した種々のハイブリッド形成構成の化学構造を示す。図1に示す全ての構成は、実施例1にてSP−1、SP−19およびSP−34と称する標的およびプローブと同じ核酸配列を有している。
以下の実施例において、N%TFE含有緩衝液は、10倍トリス緩衝液A(1M NaC1、100mM Tris、pH 8.4)、所定量の水およびTFEを用いて調製した。実例として、80%TFE含有のTris緩衝液100mlを調製するには、10mlの10倍トリスA緩衝液、10mlのTFEおよび10mlの水を混合した。この結果、0.1M NaCl、10mM Tris(pH 8.4)および80% TFEを含む緩衝液が得られる。同様の手順を、その他の共媒質(例えば、エチレングリコール)を含む緩衝液に用いた。
さらに、オリゴヌクレオチドプローブおよび標的核酸は、水中10−3Mストック溶液として調製した。これらの溶液を適当な緩衝液に添加して、それぞれのプローブおよび標的核酸を終濃度2.5Mにした。
実施例1
エキシマー/励起錯体形成の溶媒効果
以下の3つの系(SP−1、SP−19およびSP−34)を、種々の有機共溶媒(co-solvents)中における励起錯体形成能に関して研究した。
比較)SP−1:(エキシマースプリット−プローブ系)
Figure 2006524811
[式中:Pはピレン−1−イル−メチルアミノ基であり、pはプローブのバックボーンにPを連結するリン酸基である(図1の構造式も参照のこと)。]
SP−19(励起錯体スプリット−プローブ系):
Figure 2006524811
[式中:Aは2−(N´−メチル−N´−ナフト−1´´イルアミノ) エチルアミノ基であり、Pはピレン−1−イル−メチルアミノ基であり、pはプローブのバックボーンにPまたはAを連結するリン酸基である(図1の構造式も参照のこと)。]
SP−34(励起錯体スプリット−プローブ系):
Figure 2006524811
[式中:それぞれAは2−(N´−メチル−N´−ナフト−1´´イルアミノ)エチルアミノ基であり、それぞれが3´リン酸と結合しており、Pはピレン−1−イル-メチルアミノ基であり、pはプローブのバックボーンにPを連結するリン酸基である。]
SP−1、SP−19およびSP−34構築に使用するための標識化プローブの調製を付録1に記載する。
以下の記載における便利のために、5´および3´標識化プローブをそれぞれ5´−P−ON1およびON2−3´−A/Pとも称する。
以下の工程を採用した。
以下の順に成分:
1. 5´標識化オリゴ。所望により、試料を加熱して(〜40℃または所望によりそれ以上)オリゴ成分と相互作用するピレンから生じる背景信号を取り除く);
2. 3´−標識化オリゴ;
3.標的オリゴ;
を加えた。
分離実験において測定されるナフタレン−含有またはビス−ナフタレン−含有オリゴの発光が十分に強い場合(〜426nm)、まずそのスペクトル成分を記録し、次いで完全タンデム方式(full tandem system)のスペクトルから差し引いた。より詳細には、ナフタレン含有オリゴ−プローブは標準的に〜426nmで発光する。励起錯体結合では通常480nm付近で観察される。これを回避するため、ナフタレン−含有単量体の発光スペクトルを完全タンデム方式のスペクトルから差し引いて、励起錯体信号のみを検出する。
励起スペクトルおよび発光スペクトルは、自動調温石英キュベット(thermostatted quartz cuvettes)にて、シマズ(Shimadzu)RF−5301PC蛍光分光光度計を用いて、測定中、キュベット内の試料の光分解を最小にするため「自動シャッター−オン」装置を使用して記録した。測定前に試料を脱気しなかった。スペクトルは、適当量の特定の有機共−溶媒(50%、70%および/または80%)を含む10mMトリス緩衝液、0.1M NaCl、pH8.5中にて10℃で記録した。用いた核酸成分の割合は、1:1:1(16マーの標的:5´−P−ON1:ON2−3´−A/P)で、それぞれの濃度は2.5μMであり、励起波長には340nmおよび350nmの両方、およびスリット幅は3または5nmを、得られる蛍光強度により変更して用いた。
全ての成分を用いて、エキシマー/励起錯体発光が最大になるまで3分間隔でスペクトルを取った。次いで、その系を40℃にまで加熱し、ゆっくり10℃まで冷却させた。さらに、エキシマー/励起錯体発光が最大になるまで3分間隔でスペクトルを取った。全てのスペクトルを基線補正し、エキシマーまたは励起錯体発光の比較を容易にするため380nmで単量体励起−パートナー発光に対して調整した。
「ハイブリッド形成混合物」に用いた有機共−溶媒およびその濃度を、エキシマーまたは励起錯体形成が検出できたか否かについて得られた結果を含めて、下記の表1に示す。
表1:トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl pH 8.5)におけるDNA−スプリット−プローブ系内のDNA上に固定された励起−パートナーのエキシマーおよび励起錯体発光における、種々試験した有機溶媒添加物の影響の要約。25℃での誘電定数(ε)および屈折率(n)、並びに25℃での粘性。
Figure 2006524811
上記の表1から、50%または70%濃度のいずれにおいてもエキシマー形成が得られなかった2種の試験した溶媒(すなわち、N−メチルホルムアミドおよび3−クロロ−1,2−プロパンジオール)を除いて、全てについて、50%および70%の共−溶媒濃度でエキシマー形成が生じたことを確認できる。これに対して、励起錯体形成は溶媒の性質および濃度により依存していた。より具体的には、励起錯体形成は、濃度50%ではいずれの溶媒についても検出されなかったが、SP−19の場合には、3種の溶媒(すなわち、エチレングリコール、トリフルオロエタノールおよびエチレングリコールジメチルエーテル)については濃度70%にて検出され、さらにSP−34の場合にはとりフルオロエタノールおよびエチレングリコールジメチルエーテルについては濃度80%にて検出された。
得られた結果をより詳細に説明するために、添付図面の図2〜7について言及する。
図2:80%TFE添加物と比較した、ヘキサフルオロ−2−プロパノール添加物(50%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−1の発光スペクトルを示す。エキシマー発光における、標的ストランドの添加および加熱−再冷却周期の後の時間の影響を示す。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線補正を行い、単体の発光帯380nmに対して調整した。
図3:80%TFE添加物と比較した、テトラフルオロ−1−プロパノール添加物(50%および70%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−1の発光スペクトルを示す。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線を補正し、単体の発光帯380nmに対して調整した。
比較のために、80%TFE添加物存在下のSP−1スペクトルもまた示す。50%テトラフルオロ−1−プロンパノールは、80%TFE添加物の発光レベルと同じエキシマー発光レベルを発し得ることは興味深い(図3)。しかしながら、ヘキサフルオロ−2−プロパノール添加物では、エキシマー形成を誘導できるTFEまたはテトラフルオロ−1−プロパノールよりも効果が低いことが分かった(図2)。
また、SP−1スプリット−プローブ系におけるエキシマー形成が50%および特に70%エチレングリコールの存在下に見られたが(図4)、最大エキシマー発光は80%TFEについて見られたものより非常に低かった。このエキシマー蛍光帯は溶液の粘性が高いために最大に達するまで時間を要したためと推測される。
図4:エチレングリコール添加物(50%および70%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−19の発光スペクトル。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線補正を行い、単体の発光帯380nmに対して調整した。
図5:エチレングリコール添加物(50%および70%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−19の発光スペクトル。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線補正を行い、単体の発光帯380nmに対して調整した。
図6:80%TFE添加物と比較した、エチレングリコールジメチルエーテル添加物(80%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−34の発光スペクトルを示す。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線補正を行い、単体の発光帯380nmに対して調整した。
図7:エチレングリコールジメチルエーテル添加物(80%)を含むトリス緩衝液(10mM TRIS、pH8.5、0.1M NaCl)中でのSP−34の発光スペクトルを示す。励起波長は350nmであった。スペクトルは基線補正を行い、単体の発光帯380nmに対して調整した。
実施例2
エキシマー形成におけるパートナーの影響
本実施例は、励起錯体パートナー部分で標識化された8マーオリゴヌクレオチド(ON)に対する16マーの核酸標的(ヒト細胞の全長ゲノム内でDNAの一部に特異的に局在化するのに必要とされている最小の大きさである約18マーと近似している)に対するハイブリッド形成に基づいている。16マーの標的および8マーのオリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列を以下の図式1に示すが、AおよびDは励起錯体パートナー部分を表し、pはリン酸基を表し、並びにLおよびLはA/Dがオリゴヌクレオチドに結合することによって得られるリンカー部分である。AおよびDは、エキシマーについては同一であり、励起錯体の場合にはアクセプターおよびドナーをそれぞれ表す。アクセプターおよびドナー部分の2つの可能な構造を2つの図(i)および(ii)に表す。
Figure 2006524811
この特定の場合では、16マーの標的および2種の8マーオリゴヌクレオチドの核酸配列を、ヘアピン(および他の二次構造の成分)の形成を回避、および何らかの不完全な2重構造の形成を最小限にするように選択した。
図1は、本実施例の目的のために実験した、上記図式1に示す形式の数多くの二本鎖現す。便利のために、図1に示す二本鎖は、図1に示す標識化に従って、SP−1、SP−2など、以下のように同定する。
実施例1に記載の工程を用いて、ハイブリッド形成アッセイを行った。
SP−17からSP−20、SP−25およびSP−26の系では、完全水性媒質(すなわち、TFE添加しない)中で全く励起錯体発光を示さなかった(データは示さず)。しかしながら、TFEを体積当り80%含む水性媒質では、励起錯体発光は、SP−17(図8)、SP−18(図9)、SP−19(図10)、SP−4(図13)、SP−20(図14)、SP−25(図20)およびSP−26(図21)の場合、約480nmに観察された。
SP−19の場合、80%TFEにおける励起錯体発光の研究は、この系について15℃、20℃、25℃、40℃で実施し、10℃にまで冷却した。この結果を図11に示すが、40℃で二本鎖構造を維持する水素結合が破壊され、二本鎖が「融解」しているのを見ることができる。これにより、励起錯体パートナーの分離に伴って、二本鎖構造体から8マーのオリゴヌクレオチドが放出される。結果として、温度上昇に伴って、二本鎖ストランドDNAの熱変性に典型的に見られるS字型のシグモイド融解曲線を示して、励起錯体発行は減少する。
SP系の比較
図12(AおよびB)は、同じドナーパートナーを用いた場合に、励起錯体に関するアクセプターパートナーとしてのペリレンおよびピレンの相対的な有効性の比較を提供する。より具体的には、図12AはSP−19の発光スペクトルを示し、図12BはSP−23の発光スペクトルを示し、それらはそれぞれ5´−ピレンおよび5´−ペリレンアクセプター基(双方とも、3´−DMNドナー基を有している(ここで、DMNは2−(N´−メチル−N´−ナフタレン−1´´イルアミノ)エチルアミノ基である))を有している。
スペクトルはトリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.3)、80%v/v TFE中で記録した。
SP−19(ピレン/DMN)については、およそ150nmストークシフトした良く分解された励起錯体バンド(480nmの範囲内)が観察された。SP−23(ペリレン/DMN)の場合には、励起錯体バンドは積分強度が比較的小さく、かつ単量体バンドと部分的に重なっていた。
図12(A&B)の結果は、ピレンが、所定のドナーに対してはストークシフトの面でペリレンよりもアクセプターとして好ましいことを実証している。
しかしながら、図8(上記参照)において示すように、ペリレンは、ピレンパートナーを350nmで励起する場合、ピレンパートナーと励起錯体をうまく形成することができる。図8に示すように、SP−17の場合、350nmでピレン基を励起すると、5´−ピレンおよび3´−ペリレン間で形成される励起錯体から強烈なバンドが検出された。
図13は、ピレンアクセプターの場合に、エキシマー/励起錯体形成におけるドナーの疎水性の影響を示す。より具体的には、図13は、SP−4系およびSP−19系についていの励起錯体およびSP−1系のエキシマーの、相対的な発光強度を示す(80%TFE中の10mMトリス、pH8.3、0.1M NaClにおいて記録した(スペクトルは基準として380nmの単量体の発光帯を用いて調整した)
これらのデータから、所定のアクセプター(ピレン)について、TFE存在下での励起錯体形成能は以下のドナーパートナーの順:
ピレン>DMN>DMA
で減少するのを見てとることができる。
上記順序はドナーの疎水性の相対的な順序もまた表す。これは、恐らくドナーとアクセプターの相互作用する分子軌道の間にあるエネルギー差も反映しているのであろう。従って、所定のアクセプターに関して、ドナーは可能な限り疎水性であり、その他全てを等しくするべきである。
図14は、ドナーパートナーの電子供与体特性の影響を示す。より具体的には、その両方が励起錯体のアクセプターパートナーとしてピレンを有するが、ドナーとしてDMNおよびMMN(すなわち、2−(N´−ナフタレン−1´´lアミノ)エチルアミノ(MMN)基)パートナーをそれぞれ有する、SP−18およびSP−20の発光スペクトルを示す。励起錯体バンドの相対的な積分強度はSP−20よりもSP−18の方がわずかに大きい。
実施例3
この実施例では、励起錯体形成性パートナーを有するDNAに基づく短いプローブオリゴ(エキシ(exci)−パートナー)を用いたスプリット系での励起錯体形成による、RNA標的検出を示す。
以下に示すように、その配列が自己相補的とならないよう、所定の様式で親RNA配列とのみ結合するよう、且つ重ならないように選択した、2つの8マーのプローブは16マーの親RNA配列を相補させるのに用いた。
Figure 2006524811
上記の式中、A=5´PおよびB=3´Np、ここで、Pはオリゴ−プローブ上のリン酸部位にリンカーにより連結されたピレンを表し、Npは4−(N、N−ジメチルアミノ)ナフタレン核を表す(プローブは、実際には、実施例1のSP−19に用いたものと同じものである)。便利のために、左側のDNAプローブは以下に示す5´P−ON1と同じであり、右側のプローブは3´Np−ON2と同じである。さらに、便利のために、16マーの親RNA配列並びにプローブ5´−ON1および3´Np−ON2から成る集合成分は、本明細書中、RNASP−19またはRNA−BASED SP19と称する。
スペクトルは、10℃で72%TFEを含むトリス緩衝液、0.1M NaCl、pH8.5において記録した。用いた成分の割合は、1:1:1(RNA16マーの標的:5´P−ON1:3´Np−ON2)で、それぞれの濃度は2.5μMであり、340nmおよび350nmの両方波長と、3nmまたは5nmのスリット幅を用い、得られた強度により規定した。
この系の成分は、それぞれ原液で、3´−Np−ON2、そして5´P−ON1、そしてRNA標的の順で添加した。全ての成分を含むこの系を10分間平衡化させて、スペクトルを得た。
全てのスペクトルの実施形態において、基線補正は緩衝液およびナフタレンの発光スペクトルを差し引くことで行った。スペクトルは、励起錯体発光の変化を比較できるようにするために、それぞれ一連の実験に関して対応する単量体の発光に対して調整した。
同様の実験を、SP−19系(DNA)を用いて行った。
RNAに基づく励起錯体SP−19系の発光スペクトル
図15は、DNA標的系(SP−19)と同等のRNA標的を含むRNA−BASED SP−19励起錯体系に関する発光スペクトルを示す。80%TFE/トリス(pH8.5)中のRNA標的(RNA−BASED SP−19)を用いた系について、λmax値469nmを有する励起錯体発光が観察された(480nmを有するDNA−DNA系と対比する)。いずれかの標的(DNAまたはRNA)が存在する場合のI/I値は、DNAで0.45およびRNAで0.41と類似した(I/Iは、480nmでの励起錯体発光帯の強度(I)と379nmの単量体のバンドの強度(I)との比である)。
TFE非存在下では、RNA−BASED SP−19系では励起錯体発光は見られず、また、5´−ピレン含有プローブに関する480nm付近の小さな発光が存在する(図15b)。これは、核酸の芳香族環と励起錯体を形成するピレンとから生じる背景発光によるものであった。所望の励起−パートナーから得られる励起錯体発光はTFE濃度が70%未満では見られなかった(図15cを参照のこと)。しかしながら、70%TFE(成分濃度0.625μM)では、比較的大きなλmax480nmを有する励起錯体発光帯が観察された。
RNA−BASED SP−19励起錯体系を30分間40℃に加熱すると、二本鎖が融解するため、励起錯体発光強度の減少が引き起こされた(図15d)。80%TFE/トリス(pH8.5 成分濃度2.5μM)中のこの系を10℃まで冷却すると、励起錯体発光がおよそ30分間ですぐに立ち上がり、再現した。この研究の一部は、スプリット−プローブ励起錯体およびエキシマー検出はDNAと同じようにRNA標的に対しても適用できることを、原理的に証明している。
実施例4
本実施例は、一方が16マーの標的DNA配列と、もう一方がそれとハイブリッド形成する2つの8マーのプローブとの間の位置および/または塩基誤対合対または不対塩基対の数に依存する励起錯体形成の変化を実証する。16マーの親標的配列の一連の変異体を、種々の部位における変化の影響を試験するために用いた。親および変異体を、以下に種々の構築物に用いた用語と共に示す。これらは、それぞれが2つのプローブの間にギャップを形成することで励起−パートナーを分離することとなる、単一のおよび二重の挿入、並びに種々の単一および二重塩基誤対合を含む。8マーの配列は、それらが自己相補的とならず、所定の様式で親とのみ結合し、および重なりがないよう、選択した。
試験した系(すなわち、親およびプローブ)は以下:
Figure 2006524811
Figure 2006524811
であった。
上記式中、励起錯体形成性パートナーは、AおよびB[式中、A=5´P(すなわち、5´リン酸を通じてオリゴと連結されたピレン)およびB=3´Np(すなわち、3´リン酸を通じてオリゴと連結されたDMN)]を表す。
実験方法
励起スペクトルおよび発光スペクトルは、シマズ(Shimadzu)RF−5301PC蛍光分光光度計の自動調温キュベットコンパートメント(thermostatted cuvettes compartment)にて記録した。スペクトルは、測定中、キュベット内の試料の光分解を最小にするため「自動シャッター−オン」モードで記録した。試料は測定前に脱気しなかった。
スペクトルは、10℃で適量の特定の有機共−溶媒を含む10mMトリス緩衝液、0.1M NaCl、pH8.5中で記録した。用いた成分比は、1:1:1(標的:5´A:3´B)でそれぞれの濃度は2.5μMであり、励起波長は340nmおよび350nmの両方およびスリット幅は3nmまたは5nmを、得られる蛍光強度により変更して用いた。
緩衝液の基線スペクトルを得て、次いで系の成分をそれぞれ原液で、5´−A、次いで3´−B、そして標的(SP−19に対する3´−B、5´−A標的)の順に加えた。全ての成分を含ませて、励起錯体発光が最大となるまで3分間隔でスペクトルを取得した。次いで、この系を2分間、40℃にまで加熱して、10℃までゆっくり冷却した。さらに、励起錯体発光が最大となるまで3分間隔でスペクトルを取得した。
相当する緩衝基線スペクトルを成分スペクトルから差し引いた。スペクトルをエキシマーまたは励起錯体発光との比較を容易にするため380nmの単量体のピレン発光に対して調整した。
ナフタレン含有またはビス−ナフタレン/−含有オリゴの発光が十分に強い場合(〜426nm)、このスペクトル成分をまず記録し、次いで励起錯体信号のみを検出するために、完全タンデム方式のスペクトルから差し引いたより詳細には、ナフタレン含有オリゴ−プローブは通常〜426nmで発光する。励起錯体バンドは通常480nm付近で観察される。従って、ナフタレン−パートナーは480nm付近の発光に影響を及ぼす可能性がある。これを避けるため、励起錯体信号のみを検出するためにナフタレン含有単量体の発光スペクトルを完全タンデム系のスペクトルから差し引くことができる。
弱い励起錯体発光しか見られない系の場合では、単量体発光の430nmから励起錯体バンド領域まで発光の裾野が広がっているため、単量体発光の相対的な貢献(背景)は大きい。この理由のため、データは480nm以上の一部の励起錯体発光のみを用いて定量化した。背景は、励起錯体の発光帯は広がっているため、総検出される信号の損失がほとんど無い状態でより厳しい(高い)カットオフ波長を用いることで、実質的により小さくすることができる。従ってデータは、背景に対する信号を改善するために490nmおよび500nmのカットオフも用いて表し、このようにして得られたもの、および総検出される信号の480nmカットオフに伴う損失を、親配列に対して評価したものを示す。
この結果を、図17および18において、加熱−冷却周期の前に、塩基誤対合および挿入標的のそれぞれに対する発光スペクトルを重ね合わせたものを示す。
SP19に関するデータを、480nm、490nmおよび500nmのカットオフを用いた発光ピーク面積に関して分析し、それを表2に示す(加熱−冷却周期の前)。
表2.480−600nm、490−600nm、および500−600nmの検出枠を用いた、親についての、およびスプリット−プローブ励起錯体系I(SP19)についての発光曲線内の面積。得られた変異体/親の比は、480−600nm検出枠を用いた親配列のデータに対して評価したものである。
Figure 2006524811
親配列を考慮してみると、490nmカットオフを用いると感受性が17%低下し、500nmカットオフを用いると32−33%低下することが両方の手順から明らかである。より高い波長のカットオフを用いても、特定の塩基誤対合/挿入に関して検出信号が生じるか否かの定性的な評価に影響しない。スペクトル(図17および18)から、3´二重塩基誤対合、5´塩基誤対合1、5´塩基誤対合2、または5´二重塩基誤対合について著しい励起錯体発光は見られない。これらの4つの系は励起錯体バンド領域に検出可能な信号を発していないという結論は、検出枠とは関係がない。その他の塩基誤対合/挿入系は検出限界に近くない。従って、より高い波長のカットオフを用いても、この特定の場合に系に対する識別性を高めることにはならない。
比較のために、上記の親/挿入/塩基誤対合系のSP−1に基づく励起錯体形成性類似物を作製した。さらに、上記の手順をそれらのエキシマー系についても繰り返し、その結果を以下の表3に示す。
表3.エキシマー発光曲線(480−600nm)内の面積および変異体:親曲線の比と対応する挿入/塩基誤対合系
Figure 2006524811
表2および3に示すデータの図形による比較を、添付図面の図19Aおよび19Bのそれぞれに示す。図19Aおよび19Bは、系を40℃まで加熱し、10℃までゆっくり冷却した後に得られたデータもまた組み合わせて示す。
エキシマー系(表3)と比較して、励起錯体系が5´塩基誤対合1および5´塩基誤対合2の単一塩基誤対合を検出しているのに対して、エキシマー系では5´塩基誤対合1のみを検出している点は驚くべきことである。エキシマーおよび励起錯体系Iの両方で二重塩基誤対合標的(3´および5´)が検出された。いずれの系も、3´−プローブ領域の単一塩基誤対合を検出できなかった。
エキシマーに基づくスプリットプローブ系について公開された情報との比較
エキシマー蛍光に基づくスプリット−プローブ系は、Ebataらによって以下の文献に記載されている。
Ebata、K.; Masuko、M.; Ohtani、H.; Kashiwasake-Jibu、M. Photochem. Photobiol. 1995、62、836-839.
Ebata、K.; Masuko、M.; Ohtani、H.; Kashiwasake-Jibu、M. Nucleic Acid Symp. Ser. 1995、34、187-188.
Masuko、M.; Ohtani、H.; Ebata、K.; Shimadzu、A. Nucleic Acids Res. 1998、26、5409-5416。
Ebataは、一方のオリゴプローブの5´端に、および他方の3´端にピレンを連結した。これらのプローブは標的の隣接する領域に結合し、ピレン分子が非常に接近する。
ハイブリッド形成は、20%v/vDMFを含むリン酸緩衝液中で実施された。標的濃度を増加させると、エキシマー蛍光は増加し、単量体の蛍光は減少した。この反対の効果は、加熱した再にも見られた。ピレン基を欠いたプローブを1つ用いてもエキシマー発光は見られなかった。この証拠から、蛍光スペクトルにおける影響は、2個のピレン基の間のエキシマー形成によるものであり、ピレンと核酸塩基との間の相互作用または塩基スタッキング相互作用によるものではないことが結論付けられた。また、融解曲線実験およびCDスペクトルの証拠によっても、ピレンは二本鎖と相互作用していないという事実が支持された。相互作用は二本鎖を安定化させ、Tを上昇させる。しかしながら、T値は大きな影響を受けず、またCDスペクトルはピレンがキラル環境にないことを示したことから、へリックスとの相互作用がないことを示唆している。2つのプローブを分離させることとなる標的の中央部に1個または2個の余分なヌクレオチドを含む標的については、エキシマー発光が減少したことから、ピレン分子が近くにあることが必要であることが示唆される。実際に、B−DNAへリックスの塩基間距離は〜3.4Åであり、これは結晶におけるピレン二量体の面間距離に相当する。エキシマー発光はDMFの割合によって影響を受け、最大発光は30〜40%v/vDMFにて見られる。このことは、有機溶媒が、ピレン−溶媒の双極子間相互作用のために、またはヘリックスとの相互作用を防ぐために、量子収率を増大させると考えられる。ナトリウムイオン濃度もまた、励起錯体発光に影響を及ぼし、0.1N NaClにて最大となることが分かった。ナトリウムイオンは二本鎖形成に影響を及ぼすことで間接的にこれらの作用を発揮する。リンカーの長さもまた、エキシマー強度に影響を及ぼし、より短いリンカーを用いた場合に大きくなった。
隣接するように結合する2つのプローブオリゴを用いる類似のエキシマースプリットプローブ系は、Parisら(Paris、P. L.; Langenhan、J. M.; Kool、E. T. Nucleic Acids Res. 1998、26、3789-3793)により、本来のDNA塩基に代えて、リボース糖に直接ピレンを結合させることによって実施された。それぞれがピレン基の間に種々の間隔を有する、5つの異なるプローブ対が研究された。これは、下記のように、プローブ配列中にヌクレオチド残基を挿入または除去することによって実施された。試験したプローブ系のいずれにおいても、標的を添加することによって、単量体の発光が消光され、490nm付近のエキシマーバンドが現れた。N−2間隔が最も良いエキシマー:単量体の比(490nmでのエキシマー蛍光強度:398nmでの単量体発光強度)を与えることが見出された。この研究において、エキシマー発光は、有機溶媒不含PIPES緩衝液中で検出された。この系もまた、塩基誤対合標的がエキシマー発光しないため、完全に一致する標的および1個のプローブの結合部位の間に塩基誤対合を有するものを、識別することができる。
Figure 2006524811
実施例5
励起錯体発光においけるいくつかのPCR添加物の影響
励起錯体発光における種々のPCR添加物(スルホラン、メチル、スルホン、ベタインおよびDMSO−以下の式を参照のこと、)の影響を、TFE不含トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中および80%TFE/トリス緩衝液pHp8.5中でのSP−19系(ON1―5´P+ON2―3´p+DNA標的ストランド)を用いて調べた。
Figure 2006524811
TFE/トリス緩衝液中の実験に関して、系は、添加物を含まない80%TFE/トリス緩衝液中で形成させ、次いで、スペクトルを取得した後に原液でPCR添加物を加えて、スペクトルを取得した。系形成の前に添加物を含ませて得られる結果は、系を80%TFE/トリス緩衝液中で形成させてから添加物を加えた場合に得られる結果と同様の結果であったため、それらのデータは示さない。全ての実験は10℃で行った。
トリス緩衝液
用いた添加物および濃度に関係なく、ON1―5´P+ON―2―3N´P(ナフタレン信号を差し引いた)の発光スペクトルは、375nmのλmaxを示した。2個のプローブ成分にDNA標的ストランドを加えると、二本鎖形成が生じたことを示す発光強度は低下して、最大発光は数ナノメーター赤方遷移した。トリス緩衝液中で試験したいずれの添加物を用いても、この系に関してエキシマー発光は見られなかった(図22を参照のこと)。標的を添加することによるλmaxの移動および強度の低下の大きさは、表4に示すように、用いた添加物およびその濃度に依存した。平均して45%の強度低下が見られた。一般に、強度が大きく低下すると、λmax移動も大きくなる。特定の添加物をより濃い濃度で添加すると、低下およびλmax移動は小さくなる。
表4:種々のPCR添加物を含むトリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5、10℃にて)中のON1−5´PおよびON−2−3N´Pに標的ストランドを添加した場合のλmaxの値および強度の低下率。励起波長350nm、スリット幅5nm。
Figure 2006524811
80%TFE/トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中のPCR添加物のスプリット−プローブ蛍光の影響
ベタイン
図23は、10℃での、0.1および1.5Mベタイン含有80%TFE/トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中でのSP−19発光スペクトルを示す。ベタイン不含80%TFE/トリス緩衝液中では、励起錯体信号がスプリット−プローブ系の形成時に観察され、10分かけて最大となり、I/I0.33が得られた。原液でベタインを添加して(SP−19系を含む80%TFE/トリス緩衝液2mlに原液を200μl)、この時点でベタイン濃度は1Mとなり、励起錯体信号はさらに33%(I/I0.44)増加することが分かった。さらに、原液でベタインを添加することで(このキュベットに100μlを添加して、1.5Mベタインを得る)、励起錯体:単量体比がさらに増加し、0.48のI/Iを得た(46%増加)。いずれの場合においても、単量体および励起錯体についてのλmax値はベタインによって影響を受けず、単量体バンドは379nmのλmax値を示し、励起錯体バンドは474nmのλmaxを示した。この系を40℃にまで加熱して、再び10℃にまで冷却しても、I/Iに明らかな変化は見られなかった。
スルホラン
80%TFE/トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中のSP−19系の形成において、励起錯体信号は473nmのλmax値を有し、単量体信号は376nmで最大発光を示し、I/I値は0.34であった。スルホランを加えると(このキュベットに原液で30μl加えて、0.15Mを得る)、励起錯体信号がおよそ20%増加した(I/I0.40)(図24を参照のこと)。さらにスルホランを添加することで(このキュベットに原液でさらに70μl加えて、0.5Mを得る)、励起錯体発光がさらに増大し(図24)、0.46のI/Iを得る(スルホランを含まない場合の信号と比較して約35%増加)。単量体および励起錯体バンドの最大発光は、スルホランの添加または濃度によって影響を受けず、それぞれ379nmおよび473nmのままであった。この系を40℃にまで加熱し10℃にまで冷却しても、I/I値は大きな影響を受けなかった。
メチルスルホン
完全なSP−19系にメチルスルホンを添加すると、I/I値が実際のところ低下した。10℃、80%TFE/トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中で完全に系を形成させると、350nmで発光する、0.34の励起錯体バンド(I/I)が観察された。この発光スペクトル(図25)は、単量体バンドでは379nmおよび励起錯体バンドでは472nmのλmaxを示した。メチルスルホランを添加することで(キュベットに240μlを添加し、0.6Mを得る)、得られるスペクトルは強度および最大発光に変化はなかった。さらに、スルホランを添加して1.1Mとすると(このキュベットに原液で200μlをさらに添加する)、励起錯体発光帯の強度は単量体バンドと比較して低下した(I/I0.28)。単量体バンドのλmaxに変化はなかったが、励起錯体バンドのλmax値に472nmから479nmへの移動が観察された(図25を参照のこと)。
ジメチルスルホンオキシド
SP−19系に、10%のレベルでDMSOを添加しても(1.41M)、励起錯体信号に改善は見られなかった(図26を参照のこと)。10℃の80%TFE/トリス緩衝液(10mMトリス、0.1M NaCl、pH8.5)中で系を初めに形成させると、励起錯体バンドは、λmax480nmおよびI/I0.26と観察された。DNSO(10%)を添加すると、励起錯体バンドは変化して、単量体バンドから分離が難しい肩が現れるが、最大発光は変化せずそのままであった(379nm)。この系を40℃にまで加熱し、次いで10℃にまで冷却しても、励起錯体信号を分解できなかった。
試験した添加物の中で、ベタインおよびスルホランは、実際に80%TFE/トリス緩衝液中で単量体発光に比べて励起錯体発光を増大させることが確認された。メチルスルホランおよびDMSOは望ましい効果は全く得られず、メチルスルホランは発光強度を低下させ、およびDMSOは励起錯体バンドの分解性を低下させた。系を加熱およびリアニールしたいずれの場合も、発光スペクトルに大きな影響を及ぼさなかったことから、これらのデータには加熱前のデータが含まれていないことが示された。
実施例6
本実施例によりSP−3およびSP−38系の実験を提供する。
10℃、トリス緩衝液/80%TFE中のSP−3スプリットプローブ系
トリス緩衝液には0.1 NaCl、0.01Mトリスが含まれ、pH8.4である。励起波長はON2−3´ピレンについては340nmおよびSP−3については350nmであった。スペクトルは基線補正し、単量体信号に対して調整した。オリゴヌクレオチド濃度は2.5μMであった。この結果は図29に示す。
10℃、トリス緩衝液/80%TFE中で記録されたSP−38スプリット−プローブ系およびその成分の励起スペクトル
トリス緩衝液には、0.1M NaCl、0.01Mトリスが含まれ、pH8.4であった。発光波長は、ON1−5´ペリレンでは440nm(スリット1.5)および複合体では464nm(スリット3)であった。スペクトルは基線補正し、単量体信号に対して調整した。オリゴヌクレオチド成分濃度は2.5μMであった。
この結果を図30に示す。
図30は、ON1−5´ペリレン誘導体と標的DNAとのハイブリッド形成により、発色団およびDNA二本鎖の間の相互作用を示す、励起および最大発光の10nmの赤方遷移が生じる。さらに、ペリレン−DNA励起錯体形成により生じる背景信号が観察された(黒曲線)。ビス−ナフタレン誘導体を含む第二のパートナーを加えることで、さらに励起錯体信号を増加させることができる。
実施例7
SP−2系を上記の手法を用いて調査し、その結果をON2−3´ピレンの結果と比較した。スペクトルはトリス緩衝液/80%TFE中、10℃で記録した。発光波長はON2−3´ピレンが340nmであり、SP−2は350nmであり;スリット3を用いた。この緩衝液には、0.1M NaCl、10mMトリスが含まれ、pHは8.4であった。オリゴヌクレオチド成分の濃度は2.5μMであった。スペクトルは基線補正し、さらに単量体信号に対して調整した。
40℃に加熱し10℃に冷却した後のスペクトルもまた記録した。
この結果を図31に示す。さらに、SP−2の励起錯体信号を加熱し、次いで冷却した後に増大したことが観察された。
実施例8
本実施例は、1つのプローブが3LAN残基を含む構築についてのハイブリッド形成を研究する。
研究した構築物は、SP−19系に基づいているが、プローブは以下を用いた。
Figure 2006524811
スペクトルは、トリス緩衝液/80%TFE中、10℃で記録した。このトリス緩衝液には、0.1 NaCl、10mMトリスが含まれ、pHは8.3であった。オリゴヌクレオチド成分の濃度は全てのオリゴヌクレオチドについて2.5μMであった。
この結果を図32に示す。
この図は、上記実施例1記載のDNA研究中のSP−19に用いた標的の完全な相補鎖由来の約490nmにおける強い励起錯体蛍光を示す(ここで、プローブオリゴは、ピレン−含有プローブオリゴにて示すように、Tとして表示する3個のLAN残基を有した)。完全なDNA−基礎プローブオリゴを用いた場合と比較すると、励起錯体蛍光強度はSL19LAN−基礎オリゴプローブに対して大きい。
塩基誤対合をLAN含有オリゴプローブ中に導入することを除いて、上記手順を行った。この研究に用いたプローブを以下に示す:
Figure 2006524811
野生型(完全な相補鎖)間の信号の差異が、全て、DNA−基礎系SP−19よりも大きいことを示している、この研究の結果を図33に示す。
付録1
オリゴヌクレオチドプローブに対する1−ピレンメチルアミンの結合
1−ピレンメチルアミンを、アミド亜リン酸連結を介してON1(5´pTGTTTGGC)の5´端−リン酸に、またはON2(CGATTCTG3´p)の3´端−リン酸に結合させた。これを実施するために、オリゴヌクレオチド(2mgのON1および2.4mgのON2、1μmol)のセチルトリメチルアンモニウム塩は、4%水性臭化セチルトリメチルアンモニウム(100 μl、10 μl×10)を200μlの水中のオリゴヌクレオチドのリチウム塩の溶液(1μmol)に添加し、それぞれ添加して沈殿物がもはや観察されなくなるまで遠心分離することによって、調製した。この上清を取り除き、沈殿物を真空下にて一晩かけて乾燥させた。オリゴヌクレオチドのセチルメチルアンモニウム塩(〜1μmol)をDMF(200μl)中に溶解し、トリフェニルホスフィン(12mg、50μmol)および2´,2´−ジピリジルジスルフィド(11mg、50μmol)を添加し、この反応混合液を37℃で10分間インキュベートした。4N´,N´−ジメチルアミノピリジン(6mg、50μmol)を添加して、この反応混合液をさらに37℃で10分間インキュベートした。オリゴヌクレオチド反応混合液に、1−ピレンメチルアミン塩酸塩(100μlのDMFおよび3μlのトリエチルアミンに4mg溶解させる)を加えて、この反応混合液を37℃で6時間インキュベートした。その時間が経過した後、反応混合液を2本のチューブに分け、オリゴヌクレオチドをアセトン(2ml)中の2%LiClOにより沈殿させた。遠心分離した後、その上清を慎重に取り除き、その沈殿物を水(180μl)に再溶解し、さらにまだ残っている活性化剤を取り除くために遠心分離を行った。その上清を取り除き、アセトン中の2%LiClOにおける修飾オリゴを再沈殿させた。次いで、このオリゴヌクレオチド結合体を、逆相HPLC(0%から40%のアセトニトリル増加勾配を用いた、0.05M LiClO水性溶液によって溶出した)により未反応前駆体から分離した。生成物をUV/可視スペクトルによりまず特徴づけした。収率はほぼ80%付近であった。非修飾ON1およびON1−5´ピレンの吸収スペクトルを図27に示す。345nm付近の吸収はピレンの存在によるものであり、これにより260nmの吸収帯もまた変化する。260および345nmの吸収帯の間の比は、単量体ピレン置換8マーに特有な約3.5であり、(ビス−ピレニル化(bis-pyrenylation)が生じる場合)A260:A345の比は通常2である。適当な画分を集めて凍結乾燥し、そのオリゴをDOのH NMRスペクトルにより特徴づけを行った。
3.3.2 N´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミンのオリゴヌクレオチドプローブに対する結合
N´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミン二塩化水素化合物(100μlのDMFおよび3μlのトリエチルアミン中に溶解した2mg、7.3μmol)を用いることを除いて、N´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミンを、ホスホラミデート連結を介して、ON1(5´pTGTTTGGC)の5´端−リン酸におよびON−2(CGATTCTG3´p)の3´端−リン酸に、上記手順により結合させた。この生成物を逆相HPLC(0から40%の勾配を用いた0.5M LiClOによる溶出)によって精製した。生成物をUV/可視分光法により同定し、適当な画分を凍結乾燥した。通常の収量はほぼ80%である。非修飾ON1およびON1−5´NpのUV/可視吸収分光法を図28に示す。310nmの肩および260nm吸収帯はナフタレンの存在を示す。
N´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミン二塩化水素化合物のオリゴヌクレオチドプローブに対するビス−結合
2当量のN´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミン二塩化水素化合物を、ホスホラミデート連結を介して、ON−1(5´pTGTTTGGC)の5´端−リン酸におよびON−2(CGATTCTG3´p)の3´−リン酸に結合させ、DMF(200μl)中に溶解されたオリゴヌクレオチドのセチルトリメチルアンモニウム塩(〜1μmol)にトリフェニルホスフィン(80mg、300μmol)および2´,2´−ジピリジル ジスルフィド(70mg、329μmol)を添加し、この反応混合液を37℃で10分間インキュベートし、次いで4−N´,N´−ジメチルアミノピリジン(40mg、329μmol)を加えて、その反応混合液を37℃で10分間インキュベートした。N´−メチル−N´−ナフタレン−1−イル−エタン−1,2−ジアミン二塩化水素化合物(100μlのDMFおよび3μlのトリエチルアミン中に溶解された4mg、14.6μmol)を加えた。この反応混合液を50℃で24時間インキュベートし、上記のように沈殿させ、逆相HPLC(0から60%のアセトニトリル勾配をかけた0.05M LiClO水性溶液による溶出)を用いて精製した。生成物をUV/可視分光法により同定し、適当な画分を凍結乾燥した。
(原文に記載なし)

Claims (46)

  1. 励起錯体の形成、形成可能性、蛍光および/または検出を向上させるための、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒の使用。
  2. 該溶媒が2,2,2−トリフルオロエタノールである請求項1記載の使用。
  3. 励起錯体形成性パートナーを含有する媒質中の励起錯体の検出に関与する、該媒質を適当な波長で光照射し、励起錯体の形成を検出することを含む分析方法であって、光照射の際に該媒質が2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒を含有することを特徴とする方法。
  4. 媒質が液体媒質であり、光照射の際に溶媒の30容量%以上、例えば50容量%以上を含有する、請求項3記載の方法。
  5. 液体媒質が溶媒の60容量%から99容量%を含有する請求項4記載の方法。
  6. 該溶媒が2,2,2−トリフルオロエタノールである、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 標的ポリヌクレオチド配列が試料中に存在するか否かを測定する、
    a)ハイブリッド形成条件下で、該試料を、
    i)光照射にて、第二の励起錯体パートナー部分と共に励起錯体を形成することができる第一の励起錯体パートナー部分で標識化された、第一のポリヌクレオチドプローブ、および
    ii)第二の発色団部分で標識化された第二のポリヌクレオチドプローブであって、該第一および第二のプローブが、第一および第二の部分がそれらの部分から識別して検出される励起錯体を形成できるよう、標的配列の相互排他的領域と結合するように適合されているポリヌクレオチドプローブ
    を用いて処理し、
    b)励起錯体形成を惹起するように光照射を行い、および
    c)励起錯体の形成を検出する、
    ことを含む、試料の分析方法であって、
    試料が照射される際に2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコールまたはエチレングリコールジメチルエーテルから選択される有機溶媒を含むことを特徴とする分析方法。
  8. 試料が光照射の際に水または緩衝液と溶媒の混合物を含む、請求項7記載の方法。
  9. 試料が光照射の際に溶媒の30容量%以上を含む、請求項7または8記載の方法。
  10. 試料が光照射の際に溶媒の40容量%以上を含む、請求項9記載の方法。
  11. 試料が光照射の際に溶媒の50容量%以上を含む、請求項10記載の方法。
  12. 試料が光照射の際に該溶媒の少なくとも70容量%を含む、請求項11記載の方法。
  13. 試料が光照射の際に該溶媒の最大80容量%を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 該溶媒が2,2,2−トリフルオロエタノールである、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 工程(a)の前に、試料を加熱し、いずれの二次構造をも破壊する、請求項7〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 工程(a)の後に、試料を加熱し、ついで励起錯体の形成および検出の前に、試料を冷却する、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 工程(a)後の加熱が、プローブが標的ポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成している場合、標的配列から変性される温度までである、請求項16記載の方法。
  18. 工程(a)後の加熱が90℃を超えない、好ましくは80℃を超えない温度までである、請求項16または17記載の方法。
  19. 工程(a)後の加熱が70℃を超えない温度までである請求項18記載の方法。
  20. 工程(a)後の加熱が60℃を超えない温度までである請求項19記載の方法。
  21. 工程(a)後の加熱が50℃を超えない温度までである請求項20記載の方法。
  22. 工程(a)後の加熱が40℃を超えない温度までである請求項21記載の方法。
  23. 第一のポリヌクレオチドプローブが、その5’末端にて第一の励起錯体パートナー部分で標識化されている、請求項7〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 第二のポリヌクレオチドプローブが、その3’末端にて第二の励起錯体パートナー部分で標識化されている、請求項7〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 第一および第二の励起錯体パートナー部分が、それぞれリンカーによって第一および第二のポリヌクレオチドプローブと結合されている、請求項7〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 励起錯体形成性パートナーが、少なくとも1個の芳香族環を含むピレニル基を、第一のパートナーおよび第二のパートナーとして含む、請求項7〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 第二のパートナーが縮合環系である請求項26記載の方法。
  28. 第二のパートナーが少なくとも1つの電子供与基を備えている請求項27記載の方法。
  29. 一方のプローブが励起錯体パートナー部分を提供する1−ピレニル−メチルアミノ基と結合しており、他方のプローブが励起錯体パートナー部分を提供する2−(N´−メチル−N´−ナフタレン−1´イルアミノ)エチルアミノ基または2−(N´−ナフタレン−1´−イルアミノ)エチルアミノ(MMN)基と結合している、請求項24〜28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 一方の励起錯体パートナー部分とその関連したリンカー基との結合が2−(N´−メチル−N´−ナフト−1´´−イルアミノ)エチルアミノ基であり、他方の励起錯体パートナー部分とその関連したリンカー基との結合がピレン−1−イル−メチルアミノ基である、請求項25記載の方法。
  31. オリゴヌクレオチドプローブが、標的核酸と結合した場合に、隣接したプローブの3´および5´端の間に標的核酸の塩基が少なくとも1個あるように標的核酸と結合することができる、請求項7〜29のいずれか一項に記載の方法。
  32. 標的と結合した場合に、隣接したプローブの3´および5´端の間に標的の塩基が1個〜3個ある請求項31記載の方法。
  33. 少なくとも1つのプローブが、標的ポリヌクレオチド配列と比較して少なくとも1個の塩基誤対合を有する、請求項7〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 少なくとも1つのプローブが、標的ポリヌクレオチド配列と比較して1個または2個の塩基誤対合を有する、請求項33記載の方法。
  35. 標的ポリヌクレオチド配列がDNAを含む、請求項7〜34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 標的ポリヌクレオチド配列が天然の核酸および/または天然核酸の類似物もしくは誘導体を含む、請求項7〜34のいずれか一項に記載の方法。
  37. 核酸類似物がPNAまたはLNAである請求項36記載の方法。
  38. 標的ポリヌクレオチド配列がRNAを含む請求項7〜37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 第一および第二のプローブがDNAプローブである請求項38記載の方法。
  40. プローブがDNA、RNAまたは核酸の類似物もしくは誘導体である、請求項7〜38のいずれか一項に記載の方法。
  41. プローブがLNAまたはPNAを含む請求項40記載の方法。
  42. プローブが少なくとも2個のDNA、RNAおよび核酸類似物または誘導体をその配列中に含有する、請求項7〜38のいずれか一項に記載の方法。
  43. 標的ストランドおよびプローブストランドが溶液中で遊離している、請求項7〜42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 標的核酸の少なくとも1つ(全部ではない)および/またはプローブの少なくとも1つが固定されている一方で、該部分の少なくとも1つが溶液中に遊離して存在する、請求項7〜42のいずれかに記載の方法。
  45. 固定化が固体支持体または液体支持体においてである請求項44に記載の方法。
  46. 固定化が「チップ」、マイクロアレイ、ナノ粒子またはその他の表面においてである請求項45記載の方法。
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