JP2006522831A - iRNA複合体 - Google Patents

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Abstract

治療用iRNA剤ならびに製造法および使用法が含まれる。

Description

本発明は、RNAiおよび関連する方法、例えば、iRNA剤を作製および使用する方法に関する。本発明は、肝臓で発現される遺伝子をサイレンシングするための方法および組成物、ならびに肝臓に対してiRNA剤を方向付けるための方法および組成物を含む。
[関連出願]
本願は、2003年4月9日に出願された米国仮出願第60/462,097号;2003年4月10日に出願された米国仮出願第60/461,915号;2003年4月17日に出願された米国仮出願第60/463,772号;2003年4月25日に出願された米国仮出願第60/465,802号;2003年8月8日に出願された米国仮出願第60/493,986号;2003年8月11日に出願された米国仮出願第60/494,597号;2003年9月26日に出願された米国仮出願第60/506,341号;2003年11月7日に出願された米国仮出願第60/518,453号;2003年5月9日に出願された米国仮出願第60/469,612号;2003年10月9日に出願された米国仮出願第60/510,246号;2003年10月10日に出願された米国仮出願第60/510,318号;2003年4月25日に出願された米国仮出願第60/465,665号;2003年4月14日に出願された米国仮出願第60/462,894号;2004年3月8日に出願された国際出願番号第PCT/US04/07070号;および2004年4月5日に出願された国際出願番号第[xxxxxx]の利益を主張する。これらの出願の内容はその全体を本願明細書に援用する。
[背景]
RNA干渉または「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が線虫に導入されたときに、該二本鎖RNAが遺伝子発現を阻害することが可能であるという観察を説明するために、ファイア(Fire)および共同研究者らによって最初に作られた用語である(非特許文献1)。短いdsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的に転写後サイレンシングを為し、遺伝子の機能を研究するための新規なツールを提供してきた。RNAiはmRNA分解を伴うことが可能である。
この分野における研究は、生きている哺乳動物へのdsRNAの送達に対する比較的厄介な取り組みによって代表される。例えば、マッカーフリーら(非特許文献2)は、マウスにおけるルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を阻害するためのdsRNAの使用について実証した。dsRNAは、流体力学的な尾静脈注射という方法によって投与された(さらに、阻害は2mg/kgを超えるdsRNAの注射に依存するようであった)。本発明者らは、とりわけ、いくつかの報告された方法に代表される扱いにくい方法が、哺乳動物に有効量のdsRNAを提供するために必要ではないこと、特にヒト対象に治療量のdsRNAを提供するために必要ではないことを発見した。本発明の利点には、実用的で、複雑でない、投与方法および治療的適用の方法(例えば、2mg/kg未満の用量における方法)が含まれる。
ファイアら(Fire et al.)、1998年、Nature 第391巻、p.806〜811 マッカーフリーら(McCaffrey et al.)、2002年、Nature 第418巻、p.38−39
本発明の目的は、肝臓において発現する遺伝子をサイレンシングするための組成物および方法を提供することである。
本発明の態様は、例えば、肝臓の障害または肝臓に関連する障害を治療するために、肝臓において発現する遺伝子をサイレンシングするための組成物および方法に関する。本発明のiRNA剤組成物は、肝臓に優先的となるように分布を変化させるべく修飾されているものであり得る。本発明の組成物は、iRNA剤、例えば、本明細書中に記載されているiRNA剤またはsRNA剤を含む。
1つの態様において、本発明は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)においてapoB−100のレベルを低下させる方法を特徴とする。該方法は、apoB−100を標的とするiRNA剤を対象に投与する工程を含む。このiRNA剤は本明細書に記載されるものでよく、apoB−100遺伝子のある領域と実質的に同一であるdsRNAであり得る。このiRNAは長さが30ヌクレオチド未満、例えば、21〜23ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、このiRNAの長さは21ヌクレオチドである。1つの実施形態において、iRNAの長さは21ヌクレオチドであり、このiRNAの二本鎖領域の長さは19ヌクレオチドである。別の実施形態において、iRNAは30ヌクレオチドよりも長い。
好ましい実施形態において、対象は表9または10に列挙される配列のうちの1つを標的とするiRNA剤で治療される。好ましい実施形態において、iRNA剤は、表9または10に提示されるパリンドローム構造の対をなす配列の両方を標的とする。最も好ましい標的は、表9または10において好ましい順に列挙されており、換言すれば、より好ましい標的は、表9または10において初めの方に列挙されている。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、表9または10に挙げた対に対して相補的である領域または鎖を含む。好ましい実施形態において、iRNA剤は、表9または10のパリンドローム対に対して相補的な領域を二本鎖領域として含む。
好ましい実施形態において、iRNA剤の二本鎖領域は表9または10に列挙された配列を標的とするが、標的配列と完全に相補的ではなく、例えば、少なくとも1塩基対が相補的でない。好ましくは、iRNA剤は、全体で、または鎖当たりで、1個、2個、3個、4個、または5個以内の、標的配列とハイブリダイズしない塩基を有する。
apoB−100を標的とするiRNA剤は、apoB−100 mRNAの発現を減少させるために十分な量で投与されうる。1つの実施形態において、iRNA剤は、apoB−100タンパク質の発現を(例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20%)減少させるために十分な量投与される。好ましくは、iRNA剤は、apoB−48のmRNAまたはタンパク質の発現を減少させない。これは、例えば、apoB−100転写物中でRNA編集を受けるヌクレオチドを特異的に標的とするiRNA剤を選択することによって実施可能である。
apoB−100を標的とするiRNA剤を、apoB−100の発現上昇またはそうでなければ望ましくないapoB−100の発現、コレステロールレベルの上昇またはそうでなければ望ましくないコレステロールレベル、および脂質代謝の調節不全のうち少なくともいずれかによって特徴付けられる障害に罹患している対象に投与することが可能である。iRNA剤は、該障害または該障害の徴候の発症を遅延させるために該障害のリスクを有する個体に投与することも可能である。これらの障害には、HDL/LDLコレステロールの不均衡;異常脂質血症、例えば、家族性複合型高脂血症(FCHL)、後天性
高脂血症;高コレステロール血症;スタチン抵抗性高コレステロール血症;冠状動脈疾患(CAD)冠動脈性心疾患(CHD)アテローム性動脈硬化症が含まれる。1つの実施形態において、apoB−100を標的とするiRNAがスタチン抵抗性高コレステロール血症に罹患している対象に投与される。
該apoB−100 iRNA剤は、対象における血清LDL−CおよびHDL−Cのうち少なくともいずれかならびに総コレステロールのうち少なくともいずれかのレベルを低下させるために十分な量で投与されうる。例えば、該iRNAは、対象における総コレステロールを、少なくとも0.5%、1%、2.5%、5%、10%減少させるために十分な量で投与される。1つの実施形態において、iRNA剤は、対象における心筋梗塞のリスクを減少させるために十分な量で投与される。
好ましい実施形態において、iRNA剤は反復投与される。iRNA剤の投与は、一定の範囲の期間にわたって実施することが可能である。iRNA剤は、毎日、数日毎に1回、毎週、または毎月投与することが可能である。投与のタイミングは、患者の徴候の重症度のような要因に依存して、患者毎に変化し得る。例えば、有効用量のiRNA剤を、無期限で、または患者が治療を必要としなくなるまで、1ヶ月に1回、患者に投与することが可能である。さらに、患者の血液中において比較的一定な用量を維持するためにiRNA剤を含む持続放出組成物を使用することが可能である。
1つの実施形態において、iRNA剤を肝臓へ向かわせる(肝臓指向性とする)ことが可能であり、該apoB iRNA剤の投与後に肝臓においてapoBの発現レベルが低下する。例えば、iRNA剤を、肝臓を標的とする構成部分、例えば、肝臓上の受容体に結合する抗体またはリガンドとともに複合物とすることが可能である。
iRNA剤、特に、apoB、β−カテニン、またはグルコース−6−ホスファターゼのRNAを標的とするiRNA剤を、例えば、親油性部分(例えば、脂質残基、コレステロール残基、オレイル残基、レチニル残基、またはコレステリル残基)にiRNA剤を結合させること(例えば、複合体化すること)によって、肝臓へ向かわせる(肝臓指向性とする)ことが可能である。iRNA剤と結合させる(例えば、複合体化する)ことが可能な他の親油性部分には、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンが含まれる。1つの実施形態において、iRNA剤は、低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、ラクトシル化LDL)にiRNA剤を結合させること(例えば、複合体化すること)によって、肝臓へ向かわせる(肝臓指向性とする)ことが可能である。別の実施形態において、iRNA剤は、糖残基を有するポリマー担体複合体にiRNA剤を結合させること(例えば、複合体化すること)によって、肝臓指向性とすることが可能である。
別の実施形態において、iRNA剤は、糖残基と複合体化されたリポソームにiRNA剤を結合(例えば、複合体化)させることによって肝臓指向性とすることが可能である。糖(例えば、ガラクトースおよびそのアナログのうち少なくともいずれか)を組み込む標的化剤が特に有用である。これらの標的化剤は、特に肝臓の実質細胞を標的とする(表1を参照されたい)。好ましい実施形態において、標的化部分には、複数の、好ましくは2つまたは3つのガラクトース部分が含まれる。好ましくは、標的化部分には、例えば、互いに約15オングストローム間隔の3つのガラクトース部分が含まれる。標的化部分はラクトースでもよい。ラクトースは、ガラクトースに結合したグルコースである。好ましくは、標的化部分は3つのラクトースを含む。標的化部分はまた、N−アセチル−ガラクト
サミン、N−Ac−グルコサミンでもよい。マンノース、またはマンノース−6−リン酸の標的化部分は、マクロファージに対する標的化のために使用することが可能である。
標的化剤は、例えば、共有結合または非共有結合により、iRNA剤または別の送達様式もしくは処方様式(例えば、リポソーム)に直接的に連結させることが可能である。例えば、標的化部分を有するiRNA剤または標的化部分を含まないiRNA剤を、標的化部分を有する送達様式または標的化部分を含まない送達様式(例えば、リポソーム)に組み込むことが可能である。
apoB、β−カテニン、またはグルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNA剤にiRNA標的化剤を複合体化するために、親油性物質に複合体化されたiRNAを使用することが特に好ましい。
1つの実施形態において、iRNA剤は、送達薬剤、例えば、本明細書中に記載されるような送達薬剤(例えば、リポソーム)であって、肝臓に優先的に分布するように分布を変化させる修飾が施されている送達薬剤で修飾されているか、または該送達薬剤と結合されている。1つの実施形態において、この修飾により、血清アルブミン(SA)(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA))またはその断片との結合が仲介される。
iRNA剤、特に、apoB、β−カテニン、またはグルコース−6−ホスファターゼのRNAを標的とするiRNA剤は、例えば、SA分子(例えば、HSA分子)またはその断片にiRNA剤を結合させること(例えば、複合体化させること)によって、肝臓に向かわせることが可能である。1つの実施形態において、iRNA剤またはその組成物は、SA(例えば、HSA)に対する親和性を有し、この親和性は、肝臓中でのそのレベルが、SA(例えば、HSA)の存在下では少なくとも10%、20%、30%、50%、または100%大きいように、または外部からSAを付加することにより肝臓への送達が増加するように、十分に高い。これらの判断基準は、例えば、マウスにおける分布を、外来のマウスSAまたはヒトSAの存在下または非存在下において試験することによって測定することが可能である。
SA(例えば、HSA)標的化剤は、iRNA剤または別の送達様式もしくは処方様式(例えば、リポソーム)に、直接的に(例えば、共有結合または非共有結合により)連結させることが可能である。例えば、標的化部分を備えたiRNA剤または備えていないiRNA剤を、標的化部分を備えた送達様式または備えていない送達様式(例えば、リポソーム)に組み込むことが可能である。
SA(例えば、HSA)分子に複合体化されたiRNAを使用することが特に好ましく、ここでiRNA剤はapoB、β−カテニン、またはグルコース−6−ホスファターゼiRNA標的化剤である。
別の態様において、本発明は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)におけるグルコース−6−ホスファターゼレベルを低下させるための方法を特徴とする。この方法は、グルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNA剤を対象に投与する工程を包含する。このiRNA剤は、グルコース−6−ホスファターゼ遺伝子の配列と実質的に同一である配列を有するdsRNAであり得る。
好ましい実施形態において、対象は、表11に列挙された配列の1つを標的とするiRNA剤で処置される。好ましい実施形態において、該iRNA剤は、表11に提供されるパリンドローム対の両方の配列を標的とする。最も好ましい標的は、表11において好ましい順に列挙されており、換言すれば、より好ましい標的は、表11においてより初めの
方に列挙されている。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、表11の対に相補的である領域または鎖を含む。好ましい実施形態において、iRNA剤は、表11のパリンドローム対に対して相補的な領域を二本鎖として含む。
好ましい実施形態において、iRNA剤の二本鎖領域は表11において列挙される配列を標的とするが、標的配列と完全に相補的ではなく、例えば、少なくとも1塩基対が相補的でない。好ましくは、該二本鎖領域は、全体でまたは鎖当たりで、1個、2個、3個、4個、または5個以下の、標的配列とハイブリダイズしない塩基を有する。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、突出部、例えば、3’または5’突出部、好ましくは1つまたは複数の3’突出部を含む。突出部は、本明細書中の他の箇所で詳細に議論されるが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的であってもよいし、または他の配列であってもよい。好ましい突出部の配列はTTである。iRNA剤の第1および第2の配列を、例えば、ヘアピンを形成するための追加の塩基によって、または他の非塩基リンカーによって、結合することも可能である。
表11は、ヒトのグルコース−6−ホスファターゼ由来の配列に言及している。表12はラットのグルコース−6−ホスファターゼ由来の配列に言及している。表12の配列は、例えば、ラットまたはラット培養細胞を用いる実験において使用することが可能である。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、任意の構成様式、例えば、本明細書中に記載される構成様式を有することが可能である。例えば、本明細書中に記載されるような突出部構造、全体の長さ、ヘアピン構造対2本鎖構造を有するiRNA剤を生じる構成様式が組み込まれてもよい。さらに、天然に存在するリボヌクレオチド以外のモノマーが、選択されたiRNA剤において使用されてもよい。
グルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNAは、グルコース−6−ホスファターゼmRNAの発現を減少させるために十分な量で投与することが可能である。
グルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNAは、糖尿病(例えば、2型糖尿病)などのグルコース代謝関連障害の治療のために、肝臓のグルコース生産を阻害するために対象に投与することが可能である。iRNA剤は、該障害または該障害の徴候の発症を遅延させるために、障害のリスクを有する個体に投与することが可能である。
他の実施形態において、肝臓のグルコース生産を阻害するために、以下の遺伝子に対して配列の類似性を有するiRNA剤を使用することも可能である。これらの他の遺伝子には、「横紋筋肉腫のフォークヘッドホモログ(forkhead homologue in rhabdomyosarcoma; FKHR)」;グルカゴン;グルカゴン受容体;グリコーゲンホスホリラーゼ;PPAR−γコアクチベータ(PGC−1);フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ;グルコース−6−リン酸ロケーター(glucose-6-phosphate locator );グルコキナーゼ阻害性調節タンパク質(glucokinase inhibitory regulatory protein );およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)が含まれる。
1つの実施形態において、iRNA剤に肝臓を標的とさせることが可能であり、標的とされた遺伝子のRNA発現レベルは該iRNA剤の投与後に肝臓において低下する。
iRNA剤は本明細書中に記載されるものでよく、かつ標的遺伝子の配列と実質的に同一の配列を有するdsRNAであり得る。このiRNAは長さが30ヌクレオチド未満、
例えば21〜23ヌクレオチドであり得る。好ましくは、このiRNAは21ヌクレオチド長である。1つの実施形態において、このiRNAは21ヌクレオチド長であり、かつこのiRNAの二本鎖領域は19ヌクレオチドである。別の実施形態において、iRNAは30ヌクレオチド長よりも大きい。
別の態様において、本発明は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)におけるβ−カテニンのレベルを低下させるための方法を特徴とする。この方法は、β−カテニンを標的とするiRNA剤を対象に投与することを包含する。このiRNA剤は本明細書中に記載されるものでよく、かつβ−カテニン遺伝子の配列と実質的に同一の配列を有するdsRNAであり得る。このiRNAは長さが30ヌクレオチド未満、例えば21〜23ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、このiRNAは21ヌクレオチド長である。1つの実施形態において、このiRNAは21ヌクレオチド長であり、かつこのiRNAの二本鎖領域は19ヌクレオチド長である。別の実施形態において、このiRNAは30ヌクレオチド長よりも大きい。
好ましい実施形態において、対象は表13に列挙された配列の1つを標的とするiRNA剤で処置される。好ましい実施形態において、該iRNA剤は、表13に提供されるパリンドローム対の両方の配列を標的とする。最も好ましい標的は、表13において好ましい順に列挙されており、換言すれば、より好ましい標的は、表13においてより初めの方に列挙されている。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、表13における1つの対に相補的な領域または鎖を含む。好ましい実施形態において、iRNA剤は、表13のパリンドローム対に対して相補的な領域を二本鎖領域として含む。
好ましい実施形態において、iRNA剤の二本鎖領域は表13に列挙される配列を標的とするが、標的配列と完全に相補的ではなく、例えば、少なくとも1塩基対が相補性的ない。好ましくは、該二本鎖領域は、全体でまたは鎖当たりで、1個、2個、3個、4個、または5個以下の、標的配列とハイブリダイズしない塩基を有する。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、突出部、例えば、3’または5’突出部、好ましくは1つまたは複数の3’突出部を含む。突出部は、本明細書中の他の箇所で詳細に議論されるが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的であってもよいし、または他の配列であってもよい。好ましい突出部の配列はTTである。iRNA剤の第1および第2の配列を、例えば、ヘアピンを形成するための追加の塩基によって、または他の非塩基リンカーによって、結合することも可能である。
β−カテニンを標的とするiRNA剤は、β−カテニン mRNAの発現を減少させるために十分な量で投与可能である。1つの実施形態において、iRNA剤は、β−カテニンタンパク質の発現を(例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20%)減少させるために十分な量で投与される。
β−カテニンを標的とするiRNA剤を、対象に投与することが可能であり、ここで、この対象は、肝臓または肝臓組織における望ましくない細胞増殖(例えば、肝臓から発生した転移性組織)によって特徴付けられる障害に罹患している。例としては、良性または悪性の障害、例えば、がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、肝転移、または肝芽腫)が含まれる。
iRNA剤は、該障害または該障害の徴候の発症を遅延させるために、障害のリスクを
有する個体に投与することが可能である。
好ましい実施形態において、iRNA剤は反復して投与される。iRNA剤の投与は、一定期間の範囲にわたって実施することが可能である。iRNA剤は、毎日、数日毎に1回、毎週、または毎月投与することが可能である。投与のタイミングは、患者の徴候の重篤度のような要因に依存して、患者によって変化し得る。例えば、iRNA剤の有効用量は、無期限の間、または患者がもはや治療を必要としなくなるまで、1ヶ月に1回、患者に投与することが可能である。さらに、iRNA剤を含む持続放出組成物を用いて、患者の血液中で比較的一定な用量を維持することが可能である。
1つの実施形態において、iRNA剤に肝臓を標的とさせることが可能であり、β−カテニンの発現レベルは、β−カテニンiRNA剤の投与後に肝臓において低減される。例えば、iRNA剤を、肝臓を標的とする構成部分、例えば、肝臓上のレセプターに結合する抗体またはリガンドと複合体化させることが可能である。
別の実施形態において、本発明は、肝臓障害(例えば、肝臓の、望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる障害、血液学的な障害、炎症性障害によって特徴付けられる障害、および代謝性またはウイルス性の疾患または障害)を治療するための方法を提供する。肝臓の増殖性障害は、例えば、良性または悪性の障害、例えば、がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、肝転移、または肝芽腫)であり得る。肝臓の血液学的障害または炎症性の障害は、例えば、凝固因子に関する障害、補体を介した炎症、または線維症であり得る。肝臓の代謝性疾患には、異常脂質血症、およびグルコース調節の異常が挙げられる。肝臓のウイルス性疾患には、C型肝炎およびB型肝炎が挙げられる。1つの実施形態において、肝臓障害は、その肝臓障害に関与する遺伝子中の配列と実質的に同一である配列を有する1つまたは複数のiRNA剤を投与することによって治療される。
1つの実施形態において、肝臓障害を治療するためのiRNA剤は、β−カテニン遺伝子またはc−jun遺伝子の配列と実質的に同一である配列を有する。別の実施形態において、例えば、C型肝炎またはB型肝炎の治療のために、iRNA剤は、それぞれC型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスの遺伝子の配列と実質的に同一である配列を有することが可能である。例えば、iRNA剤は、HCVの5’コア領域を標的とすることが可能である。この領域は、開始メチオニンにまたがるリボソームの足指紋(toe-print )のすぐ下流に存在する。別例として、本発明のiRNA剤は、HCV:NS3、4A、4B、5A、または5Bの非構造タンパク質のいずれか1つを標的とすることが可能である。B型肝炎の治療のために、例えば、iRNA剤はXタンパク質(HBx)遺伝子を標的とすることが可能である。
好ましい実施形態において、対象は表14に列挙される配列の1つを標的とするiRNA剤で治療される。好ましい実施形態において、該iRNA剤は、表14に提供されるパリンドローム対の両方の配列を標的とする。最も好ましい標的は、表14において好ましい順に列挙されており、換言すれば、より好ましい標的は、表14においてより初めの方に列挙されている。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、表14の対に対して相補的な領域または鎖を含む。好ましい実施形態において、iRNA剤は、表14のパリンドローム対に対して相補的な領域を二本鎖領域として含む。
好ましい実施形態において、iRNA剤の二本鎖領域は表14において列挙される配列を標的とするが、標的配列と完全に相補的ではなく、例えば、少なくとも1塩基対が相補的でない。好ましくは、iRNA剤は、全体でまたは鎖当たりで、標的配列とハイブリダイズしない1個、2個、3個、4個、または5個以下の塩基を有する。
好ましい実施形態において、iRNA剤は、突出部、例えば、3’または5’突出部、好ましくは1つまたは複数の3’突出部を含む。突出部は、本明細書中の他の箇所で詳細に議論されるが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的でもよいし、他の配列でもよい。突出部の好ましい配列はTTである。第1および第2のiRNA剤の配列が、例えば、ヘアピンを形成するための追加の塩基によって、または他の非塩基リンカーによって結合されてもよい。
別の態様において、iRNA剤は、血液凝固を調節するために、例えば、血塊を形成する傾向を減少するために投与することが可能である。好ましい実施形態において、iRNA剤は、好ましくは肝臓において、第V因子の発現を標的とする。1つまたは複数のiRNA剤を、野生型対立遺伝子、変異型対立遺伝子(例えば、ライデン第V因子対立遺伝子)、またはその両方を標的とするように使用することが可能である。このような投与は、静脈血栓症(例えば、深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症)、または、例えば肝臓における、第V因子の発現上昇もしくは望ましくない発現によって引き起こされる別の障害を治療または予防するために使用することが可能である。1つの実施形態において、iRNA剤は、対象、例えば、ライデン第V因子を有する、または血塊を形成するという望ましくない傾向と関連する他の遺伝的形質を有するヒトを治療することが可能である。
好ましい実施形態において、第V因子を標的とするiRNA剤の投与は、第2の治療、例えば、血液が凝固する傾向を低減させる治療(例えば、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンの投与)を伴う。
1つの実施形態において、第V因子を標的とするiRNA剤は、患者、例えば、ライデン第V因子を有し、血栓症のリスクに置かれている患者、例えば、外科手術を受ける予定の患者(特に、静脈血栓の形成との関連が知られている高リスクの外科手順を受ける予定の患者)、長時間にわたりあまり動かない状態に置かれる(例えば、自動車、列車または航空機の飛行(例えば、3時間または5時間より長く続く空の旅その他の旅行)によりあまり動かない状態に置かれる)予定である患者における予防処置として使用することが可能である。このような治療は低分子量(LMW)ヘパリンの予防剤の治療的使用に対する補助となり得る。
別の実施形態において、第V因子を標的とするiRNA剤は、深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)を処置するためにライデン第V因子を有する患者に投与することが可能である。このような治療は、ヘパリンまたはクマディン(商品名)の治療的使用に対する補助(またはその代替)となりうる。該治療は、吸入によってまたは一般的には経肺投与によって施すことが可能である。
好ましい実施形態において、肝臓障害を治療するために投与されるiRNA剤は、肝臓に対して標的化される。例えば、iRNA剤を、標的化部分、例えば、肝臓に特異的な受容体を認識する抗体またはリガンドと複合体化させることが可能である。
本発明はまた、本明細書中に議論される遺伝子のいずれか、特に、apoB−100、グルコース−6−ホスファターゼ、β−カテニン、第V因子のいずれか、または本明細書中で議論されるHCV遺伝子のいずれかをサイレンシングするiRNA剤の、実質的に純粋な調製物または薬学的に許容可能な調製物を含む調製物を含む。
本発明の方法および組成物、例えば、本明細書中に記載されている肝臓疾患および肝臓障害を治療するための方法および組成物を、記載されるiRNA剤のいずれかを用いて使用することが可能である。さらに、本発明の方法および組成物は、本明細書中に記載され
る任意の疾患および障害の治療のため、および任意の対象(例えば、任意の動物、任意の哺乳動物(例えば、任意のヒト))の治療のために使用することが可能である。
本発明の方法および組成物、例えば、本明細書中に記載される肝臓系の疾患を治療するための方法およびiRNA組成物は、本明細書中に記載される任意の用量および/または製剤を用いて、ならびに本明細書中に記載される任意の投与経路を用いて使用することが可能である。
「実質的に同一である」配列は、iRNA剤またはその断片が標的遺伝子のダウンレギュレーション(下方制御)を仲介することが可能であるように、標的遺伝子に対して十分な相同性を有する領域を含み、十分なヌクレオチド数の長さを有する。したがって、iRNA剤は、標的のRNA転写物に対して少なくとも部分的に、およびある実施形態においては完全に、相補的な領域であるか、または同領域を含む。iRNA剤と標的との間に完全な相補性が存在することは必ずしも必要ではないが、iRNA剤と標的との間の対応は、iRNA剤またはその切断産物が、例えば、標的RNA(例えば、mRNA)のRNAi切断によって、配列特異的なサイレンシングを導くことが可能であるために、十分でなくてはならない。標的鎖との相補性、または相同性の程度は、アンチセンス鎖において最も重大である。特にアンチセンス鎖では完全に相補的であることが望ましいことが多いが、ある実施形態は、特にアンチセンス鎖において、1つ以上であるが好ましくは6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、またはそれより少ないミスマッチ(標的RNAに関して)を含むことが可能である。ミスマッチは、特にアンチセンス鎖においては、末端領域において最も受け入れられやすく、存在する場合、好ましくは末端領域において、例えば、5’末端および3’末端のうち少なくともいずれかにおいて6ヌクレオチド以内、5ヌクレオチド以内、4ヌクレオチド以内、または3ヌクレオチド以内である。センス鎖は、分子の二本鎖としての性質全体を維持するために十分なだけアンチセンス鎖と相補的であればよい。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の説明において示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、この説明から、および特許請求の範囲から明らかとなろう。本願は、すべての引用した文献、特許、および特許出願の全体を、本願に援用する。
二本鎖(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスを通してmRNAを配列特異的にサイレンシングする。このプロセスは、哺乳動物および他の脊椎動物を含む広範な種々の生物において起こる。
dsRNAの21〜23ヌクレオチドのフラグメントが、例えば、RNA分解を引き起こすことによるRNAサイレンシングの配列特異的メディエータであることが実証されている。理論に束縛されることを望まないが、これらの21〜23ヌクレオチドフラグメント中に存在する、単に特定の長さのフラグメントであるにすぎない分子シグナルが、RNAiを仲介する細胞因子をリクルートするということのようである。これらの21〜23ヌクレオチドフラグメント、および他のiRNA剤を調製および投与するための方法、ならびに遺伝子の機能を特異的に不活性化するためのそれらの使用が本明細書中に記載される。iRNA剤(または同じかもしくは類似の性質の組換え生産もしくは化学合成されたオリゴヌクレオチド)の使用は、哺乳動物細胞におけるサイレンシングのための特異的mRNAの標的化を可能にする。さらに、より長いdsRNA剤フラグメントもまた、例えば、以下に記載されるように使用されることが可能である。
哺乳動物細胞において、長いdsRNAは、有害であることの多いインターフェロン応答を誘導することが可能であるが、sRNAは、少なくとも細胞および宿主に対して有害
である程度まではインターフェロン応答を誘発しない。特に、sRNA剤中のiRNA剤の鎖の長さは、例えば、有害なインターフェロン応答の誘発を回避するために十分に短い、31、30、28、25、または23ヌクレオチド未満であり得る。したがって、sRNA剤の組成物(例えば、本明細書中に記載されるように処方される)の哺乳動物細胞への投与は、インターフェロン応答を回避しながら標的遺伝子の発現を抑制するために使用されることが可能である。さらに、個々のiRNA剤の使用は、例えば、対立遺伝子についてヘテロ接合である対象において、標的遺伝子の1つの対立遺伝子を選択的に標的とするために使用されることが可能である。
さらに、1つの実施形態において、哺乳動物細胞は、インターフェロン応答の構成成分(例えば、二本鎖RNA(dsRNA)活性化プロテインキナーゼPKR)に影響を与えるiRNA剤で処理される。このような細胞は、標的RNAに対して相補的な配列を含み、その他の点ではインターフェロン応答を誘発する可能性のある長さを有する第2のiRNA剤で処理されることが可能である。
代表的な実施形態において、対象は、ウシ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギ、または霊長類などの哺乳動物である。この対象は酪農用動物(例えば、ウシまたはヤギ)または他の農業用動物(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ヒツジ、ブタ、魚類、エビ)であり得る。はるかに好ましい実施形態において、この対象はヒトであり、例えば、正常な個人、あるいは疾患もしくは障害を有するか、これらを有すると診断されているか、またはそれらを有すると予測される個人である。
さらに、iRNA剤により仲介されるサイレンシングはiRNA剤組成物を投与した後で数日間の間持続するので、多くの場合において、1日あたり1回未満、またはある例としては、治療計画全体について1回のみの頻度で、組成物を投与することが可能である。例えば、あるがん細胞の治療は、単回のボーラス投与によって行われることが可能であるのに対して、慢性ウイルス感染は規則的な投与、例えば、週に1回または1カ月に1回を必要とする可能性がある。
対象にiRNA剤を投与するために使用されることが可能である多数の例示的な送達の経路が記載される。さらに、iRNA剤は、本明細書中に記載される例示的な方法に従って製剤化されることが可能である。
肝臓疾患
本発明の方法および組成物によって治療可能な例示的な疾患および障害は、肝臓系の疾患である。
肝臓に関与する障害には以下が含まれるがこれらに限定されない:肝外傷;黄疸および胆汁鬱滞(例えば、ビリルビンおよび胆汁形成);肝不全および肝硬変(例えば、肝硬変、門脈圧亢進症(腹水を含む)、門脈体静脈シャント、および巨脾腫症など);ウイルス性肝炎などの感染性障害(A〜E型肝炎感染および他の肝炎ウイルスによる感染、臨床病理学的症候群(例えば、キャリアの状態)、無症候性感染、急性ウイルス性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、および劇症肝炎を含む);自己免疫性肝炎;薬物および毒素誘導性の肝臓疾患(例えば、アルコール性肝臓疾患);先天性代謝異常および小児肝疾患(例えば、血色素症、ウィルソン病、a1抗トリプシン欠損症、および新生児肝炎);肝内胆管疾患(例えば、二次性胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および胆道系の異常);循環障害(例えば、肝臓に入る血流の障害(肝動脈障害ならびに門脈の閉塞および血栓症を含む)、肝臓を通る血流の障害(受動性鬱血および小葉中心性ネクローシスおよび肝臓紫斑病を含む)、肝静脈流出障害(肝静脈血栓症(バッド・キアリ症候群)および肝静脈閉塞症を含む));妊娠に関連する肝臓疾患(例えば、子癇前症および子癇、
妊娠性急性脂肪肝、および妊娠性肝内胆汁鬱滞);臓器移植または骨髄移植の肝合併症(例えば、骨髄移植後の薬物毒性、対宿主性移植片病および肝臓拒絶、および肝臓同種移植片に対する非免疫学的損傷);腫瘍および腫瘍状態(例えば、結節性過形成、腺腫、および悪性腫瘍(原発性肝がんおよび転移性腫瘍を含む))。
iRNA剤はまた、肝臓における第V因子の発現を阻害するために投与することが可能である。米国の人口の2〜5%が、1961位の単一のアミノ酸変化をコードする第V因子遺伝子の対立遺伝子についてヘテロ接合である。これらのヘテロ接合の個体は、3〜8倍高い静脈血栓症のリスクを有するが、これは、第V因子活性の増加と関連するリスクである。この活性の増加は、プロトロンビナーゼ複合体からのトロンビン生成の増加をもたらす。第V因子に対して向けられたiRNA剤は、静脈血栓症を治療もしくは予防することもできるし、またはライデン第V因子を有するヒトを治療することも可能である。第V因子を標的とするiRNA剤は、高リスクの外科手術を受けるライデン第V因子を有する患者における予防剤としても使用可能であり、この予防剤は、低分子量(LMW)ヘパリン予防剤の治療的使用に対する補助であり得る。
第V因子を標的とするiRNA剤は、深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)を治療するために、ライデン第V因子を有する患者に投与することも可能である。このような治療は、ヘパリンまたはクマディンの治療的使用に対する補助であり得る。第V因子のレベルの上昇または望ましくないレベルの第V因子によって引き起こされる任意の他の障害を、第V因子を標的とするiRNA剤を投与することによって治療することが可能である。
本発明のiRNA剤は、その過剰発現が肝臓疾患と関連している任意の遺伝子を標的とすることが可能である。
肝臓へのiRNA剤の標的化
本発明のiRNA剤は、肝臓指向性とした場合に特に有用である。iRNA剤を、iRNA剤と肝臓標的化剤とを含む組成物によって肝臓指向性とすることが可能である。例えば、肝臓標的化剤は親油性部分であり得る。好ましい親油性部分には、脂質、コレステロール、オレイル、レチニル、またはコレステリル残基が含まれる(表1を参照のこと)。肝臓標的化剤として機能することが可能である他の親油性部分には、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンが含まれる。
iRNA剤はまた、低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、ラクトシル化LDL)との結合によって、肝臓指向性とすることが可能である。糖残基と複合されたポリマー担体もまた、iRNA剤を肝臓指向性とするように作用することが可能である。
糖(例えば、ガラクトースおよび/またはそのアナログ)を組み込む標的化剤が特に有用である。これらの標的化剤は、特に肝臓の実質細胞を標的とする(表1を参照されたい)。例えば、標的化部分は、互いに約15オングストローム間隔の、複数、好ましくは2つまたは3つのガラクトース部分を含むことが可能である。この標的化部分は、別例として、ガラクトースに結合したグルコースである、ラクトース(例えば、3つのラクトース部分)であってもよい。標的化部分はまた、N−アセチル−ガラクトサミン、N−Ac−グルコサミンでもよい。マンノースまたはマンノース−6−リン酸の標的化部分は、マクロファージを標的とするために使用することが可能である。
血清アルブミン(SA)(例えば、ヒト血清アルブミン)とのiRNA剤の複合体化もまた、iRNA剤を肝臓指向性とするために使用することが可能である。
iRNA剤は、肝臓における特定の受容体を認識する特異的な標的化剤を使用することによって、肝臓内の特定の細胞種を標的とすることが可能である。例示的な標的化部分およびそれらに関連する受容体を表1に提示する。
Figure 2006522831
iRNA剤の構造
RNAiを仲介する単離iRNA剤(例えば、RNA分子(二本鎖;一本鎖))が本明細書中に記載される。このiRNA剤は、対象者の内在性遺伝子または病原体の遺伝子に関連してRNAiを好適に仲介する。
「RNA剤」は、本明細書中で使用される場合、非修飾RNA、修飾RNA、またはヌクレオシド代用物であり、これらのすべてが本明細書中で定義される(例えば、以下のRNA剤という表題の節を参照されたい)。多数の修飾RNAおよびヌクレオシド代用物が記載されるが、好ましい例には、非修飾RNAよりもヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の高いものが含まれる。好ましい例には、2’糖修飾、一本鎖突出部(好ましくは3’一本鎖突出部)における修飾、または、特に一本鎖の場合、1つ以上のリン酸基もしくは1つ以上のリン酸基アナログを含む5’修飾を有するものが含まれる。
「iRNA剤」は、本明細書中で使用される場合、標的遺伝子、好ましくは内在性または病原体の標的RNAの発現をダウンレギュレートすることが可能であるRNA剤へと切断されることが可能であるRNA剤である。理論によって束縛されることを望まないが、iRNA剤は、当該分野においてRNAiと呼ばれることもある標的mRNAの転写後切断、または転写前もしくは翻訳前のメカニズムを含む多数のメカニズムの1つ以上によって作用することが可能である。iRNA剤は、一本鎖を含むことも、または一本以上の鎖を含むことも可能であり、例えば、iRNA剤は、二本鎖iRNA剤であり得る。iRNA剤が一本鎖である場合、1つ以上のリン酸基または1つ以上のリン酸基のアナログを含む5’修飾を含むことが特に好ましい。
iRNA剤は、該iRNA剤またはそのフラグメントが標的遺伝子のダウンレギュレーションを仲介することが可能であるように、標的遺伝子に対して十分な相同性の領域を含み、かつヌクレオチドの長さが十分であるべきである。(説明を簡略化するために、本明細書中では、用語ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドは、RNA剤の1つ以上のモノマーサブユニットを指すために使用されることがある。本明細書中において、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」を使用するとき、修飾RNAまたはヌクレオチド代用物の場合においては、修飾ヌクレオチド、または1つ以上の位置での代用物で置換した部分をも意味し得ることが本明細書中で理解されよう。)したがって、iRNA剤は、少なくとも部分的に、およびある実施形態においては完全に、標的RNAに相補的な領域であるか、またはその領域を含む。iRNA剤と標的との間の完全な相補性が存在することは必ずしも必要ではないが、その一致は、iRNA剤またはその切断産物が、例えば、標的RNA(例えば、mRNA)のRNAi切断によって、配列特異的にサイレンシングすることを可能にするために十分でなくてはならない。
標的鎖との相補性、または相同性の程度は、アンチセンス鎖において最も重大である。特に、アンチセンス鎖における完全な相補性が望ましいことが多いが、ある実施形態は、特にアンチセンス鎖において、1つ以上であるが好ましくは6個、5個、4個、3個、2個、またはそれより少ないミスマッチ(標的RNAに関して)を含むことが可能である。特にアンチセンス鎖におけるミスマッチは、末端領域において最も寛容性が高く、存在する場合、好ましくは末端領域において、例えば、5’末端および/または3’末端の6ヌクレオチド以内、5ヌクレオチド以内、4ヌクレオチド以内、または3ヌクレオチド以内である。センス鎖は、該分子の二本鎖全体の性質を維持するために十分なだけのアンチセンス鎖との相補性があればよい。
本明細書中の他の箇所で議論されるように、iRNA剤は、しばしば修飾されるかまたはRRMSに加えてヌクレオシド代用物を含む。iRNA剤の一本鎖領域は、しばしば、修飾されるかまたはヌクレオシド代用物を含み、例えば、ヘアピン構造の対合していない
領域(例えば、2つの相補性領域をつなぐ領域)は、修飾またはヌクレオシド代用物を有し得る。iRNA剤の1つ以上の3’末端もしくは5’末端を、例えば、エキソヌクレアーゼに対して安定化するための修飾、またはアンチセンスsRNA剤をRISCに優先的に入れるための修飾もまた、好ましい。修飾は、C3(またはC6、C7、C12)アミノリンカー、チオールリンカー、カルボキシルリンカー、非ヌクレオチド性スペーサー(C3、C6、C9、C12、無塩基、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール)、特殊なビオチン、あるいは、ホスホルアミダイトとして提供され、かつ別のDMT保護されたヒドロキシル基を有し、RNA合成の際に複数のカップリングを可能にするフルオレセイン試薬を含むことが可能である。
iRNA剤には以下のものが含まれる:インターフェロン応答を誘発するために十分に長い分子(これはダイサー(Dicer、ベルンシュタインら(Bernstein et al.)、2001.Nature、409:363〜366)によって切断され、RISC(RNAi誘導性サイレンシング複合体)に入る);およびインターフェロン応答を誘発しないために十分に短い分子(この分子もまたDicerによって切断されることが可能であり、かつ/またはRISCに入る)、例えば、RISCに入ることを可能にするサイズである分子、例えば、Dicer切断産物に類似する分子。インターフェロン応答を誘発しない十分に短い分子は、本明細書中では、sRNA剤または短いiRNA剤と呼ばれる。「sRNA剤または短いiRNA剤」は、本明細書中で使用される場合、iRNA剤、例えば、ヒト細胞において有害なインターフェロン応答を誘導しない十分に短い二本鎖RNA剤または一本鎖RNA剤をいい、例えば、同RNA剤は、60ヌクレオチド対未満、しかし好ましくは、50、40、または30ヌクレオチド対未満の二本鎖領域を有する。このsRNA剤またはその切断産物は、例えば、標的RNA(好ましくは、内在性または病原性の標的RNA)に関してRNAiを誘導することによって、標的遺伝子をダウンレギュレートすることが可能である。
sRNA剤の各々の鎖は、30、25、24、23、22、21、または20ヌクレオチド長以下であり得る。鎖は、好ましくは、少なくとも19ヌクレオチド長である。例えば、各々の鎖は21から25の間のヌクレオチド長であり得る。好ましいsRNA剤は、17、18、19、29、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対の二本鎖、および1つ以上の突出部、好ましくは2〜3ヌクレオチドの1つまたは2つの3’突出部を有する。
標的RNAに対する相同性および標的遺伝子をダウンレギュレートする能力に加えて、iRNA剤は好ましくは以下の特性の1つ以上を有する:
(1)以下の「RNA剤」の節において示される式1、式2、式3、または式4のものである;
(2)一本鎖である場合、1つ以上のリン酸基または1つ以上のリン酸基アナログを含む5’修飾を有する;
(3)非常に多数またはすべてのヌクレオシドが修飾されているにもかかわらず、正確な塩基対を形成可能であり、例えば標的RNAの切断によって標的のダウンレギュレーションを可能にするために十分な、相同な標的RNAとの二本鎖構造を形成することが可能なように、正しい三次元構造にある塩基(または修飾塩基)を提供することが可能なアンチセンス鎖を有する;
(4)非常に多数またはすべてのヌクレオシドが修飾されているにもかかわらず、なお「RNA様の」特性を有する。すなわち、リボヌクレオチドに基づく含量では独占的でなく、または部分的でさえあるにも関わらす、RNA分子の全体的な構造、化学的特性および物理的特性を有する。例えば、iRNA剤は、例えば、すべてのヌクレオチド糖が2’ヒドロキシルの代わりに例えば2’フルオロを含むセンス鎖および/またはアンチセンス鎖を含むことが可能である。このデオキシリボヌクレオチド含有剤は、なおRNA様の特
性を示すことが予測されうる。理論によって束縛されることを望まないが、電気的に陰性のフッ素は、リボースのC2’位に結合されたときに軸方向に配向する傾向がある。このフッ素の空間的な優先傾向は、ひいては、糖のC’内部にくぼみを形成させる。これは、RNA分子中で観察されるのと同じくぼみ形成様式であり、RNAに特徴的なAファミリー型ヘリックスを生じる。さらに、フッ素は良好な水素結合のアクセプターであるので、RNA構造を安定化させることが知られている水分子と同じ水素結合相互作用に関与することが可能である。一般的には、糖の2’位で修飾された部分は、デオキシリボヌクレオチドのH部分よりも、リボヌクレオチドのOH部分により特徴的であるH結合に入ることができることが好ましい。好ましいiRNA剤は:その糖の全体、またはその糖の少なくとも50、75、80、85、90、または95%において、C’内部にくぼみを示し;iRNA剤の十分量の糖においてC’内部のくぼみを示し、RNAに特徴的なAファミリー型ヘリックスを生じることが可能であり;C’内部のくぼみ構造ではない20個、10個、5個、4個、3個、2個、または1個以下の糖を有する。これらの制限はアンチセンス鎖において特に好ましい;
(5)修飾の性質にかかわらず、およびRNA剤が、特に突出部または他の一本鎖領域内にデオキシヌクレオチドまたは修飾デオキシヌクレオチドを含むことが可能であるとしても、DNA分子、あるいは、分子中のヌクレオチドの50、60、もしくは70%より多く、または二本鎖領域のヌクレオチドの50、60、または70%より多くがデオキシリボヌクレオチド、あるいは2’位がデオキシである修飾デオキシリボヌクレオチドである任意の分子は、RNA剤の定義から除外することが好ましい。
「一本鎖iRNA剤」は、本明細書中で使用される場合、単一の分子から作られているiRNA剤である。これは、鎖内の対合によって形成される二本鎖領域を含んでもよく、例えば、該領域はヘアピン構造またはパン−ハンドル構造であってもよいし、これを含んでもよい。一本鎖iRNA剤は、標的分子に関してアンチセンスであることが好ましい。好ましい実施形態において、一本鎖iRNA剤は5’がリン酸化されるか、または5’プライム末端にホスホリルアナログを含む。5’リン酸修飾は、RISCが仲介する遺伝子サイレンシングと適合性であるものを含む。適切な修飾には以下が含まれる:5’一リン酸((HO)2(O)P−O−5’);5’二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’一チオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P−O−5’);5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’ホスホロチオール酸((HO)2(O)P−S−5’);酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸、および三リン酸の任意のさらなる組合せ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’ホスホルアミデート((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(NH2)(O)P−O−5’)、5’アルキルホスホン酸(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−、(OH)2(O)P−5’−CH2)、5’アルキルエーテルホスホン酸(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2‐)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−)。(これらの修飾はまた、二本鎖iRNAのアンチセンス鎖とともに使用されることも可能である。)
一本鎖iRNA剤は、それがRISCに入ることが可能であり、かつRISCの仲介による標的mRNAの切断に関与することが可能であるように、十分に長くあるべきである。一本鎖iRNA剤は、少なくとも14ヌクレオチド長、およびより好ましくは、少なくとも15、20、25、29、35、40、または50ヌクレオチド長である。一本鎖iRNA剤は好ましくは、200、100、または60ヌクレオチド長未満である。
ヘアピンiRNA剤は、17、18、19、29、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対に等しいか、または少なくとも17、18、19、29、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対の二本鎖領域を有する。この二本鎖領域の長さは、好ましくは、200、100、または50ヌクレオチド対以下である。二本鎖領域の好ましい範囲は、15〜30、17〜23、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対長である。ヘアピンは、好ましくは、一本鎖突出部または末端(好ましくはヘアピンのアンチセンス側の好ましくは3’末端)の非対合領域を有する。好ましい突出部は2〜3ヌクレオチド長である。
「二本鎖(ds)iRNA剤」は、本明細書中で使用される場合、鎖間のハイブリダイゼーションにより二本鎖構造を形成することが可能である、1本より多くの鎖、好ましくは2本の鎖を含むiRNA剤である。
二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖は、14、15、16、17、18、19、25、29、40、または60ヌクレオチド長に等しいか、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、または60ヌクレオチド長であるべきである。これは、200、100、または50ヌクレオチド長以下であるべきである。好ましい範囲は、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチド長である。
二本鎖iRNA剤のセンス鎖は、14、15、16、17、18、19、25、29、40、または60ヌクレオチド長に等しいか、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、または60ヌクレオチド長であるべきである。これは、200、100、または50ヌクレオチド長以下であるべきである。好ましい範囲は、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチド長である。
二本鎖iRNA剤の二本鎖部分は、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、または60ヌクレオチド対長に等しいか、または少なくとも14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、または60ヌクレオチド対長であるべきである。これは、200、100、または50ヌクレオチド対長以下であるべきである。好ましい範囲は、15〜30、17〜23、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対長である。
多くの実施形態において、ds iRNA剤は、内在性分子によって(例えば、Dicerによって)切断されてより小さなds iRNA剤(例えば、sRNA剤)を生じることが可能であるように十分に大きい。
二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖およびセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましい可能性がある。ある場合において、これらの鎖は同じ修飾または同じクラスの修飾を有するが、他の場合において、センス鎖およびアンチセンス鎖は異なる修飾を有し、例えば、ある場合において、センス鎖のみが修飾されることが望ましい。センス鎖のみを、例えばセンス鎖を不活性化するために修飾することが望ましい可能性があり、例えば、センス鎖は、センス鎖を不活性化し、かつ活性なsRNA/タンパク質またはRISCの形成を妨害するために修飾されることが可能である。これは、センス鎖の5’リン酸化を妨害する修飾によって、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドを用いる修飾によって達成されることが可能である(ニーケネンら(Nykaenen et al.)、(2001)「ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway. 」Cell 107、309〜321を参照のこと)。例えば、単に5’OHをO−MeではなくHによって置換する、リン酸化を妨害する他の修飾もまた使用可能である。代替例として、大きなかさ高い基が5’リン酸基に付加され、これがホス
ホジエステル結合に転換されてもよいが、これは、ホスホジエステラーゼがこのような結合を切断し、かつ機能的sRNA5’末端を遊離することが可能であるので、より望ましくない可能性がある。アンチセンス鎖修飾は、5’リン酸化ならびに本明細書中で議論される他の5’修飾のいずれか、特に単鎖iRNA分子に関する節において上記に議論された5’修飾を含む。
ds iRNA剤が分子の一方または両方の末端で一本鎖領域または不対合領域を含むように、センス鎖およびアンチセンス鎖が選択されることが好ましい。したがって、ds
iRNA剤は、好ましくは突出部(例えば、1つまたは2つの5’または3’突出部であるが好ましくは2〜3ヌクレオチドの3’突出)を含むように対合したセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む。多くの実施形態は3’突出部を有する。好ましいsRNA剤は一本鎖突出部、好ましくは、各々の末端に1ヌクレオチド長または好ましくは2もしくは3ヌクレオチド長の3’突出部を有する。この突出部は、ある鎖が他の鎖よりも長い結果であってもよいし、または、ずれを有する同じ長さの2つの鎖の結果であってもよい。5’末端は好ましくはリン酸化される。
二本鎖領域についての好ましい長さは、例えば、上記に議論したsRNA剤の範囲において、15から30の間のヌクレオチド長、最も好ましくは18、19、20、21、22、および23ヌクレオチド長である。sRNA剤は、長さおよび構造が、長いdsRNAからの天然のDicer処理産物に類似する可能性がある。sRNA剤の2つの鎖が結合される(例えば、共有結合される)実施形態もまた含まれる。ヘアピン、または必要とされる二本鎖領域を提供する他の一本鎖構造物、および好ましくは3’突出部もまた、本発明の範囲内にある。
ds iRNA剤およびsRNA剤を含む、本明細書に記載される単離iRNA剤は、標的RNA、例えば、mRNA、例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写物のサイレンシングを仲介することが可能である。便宜上、このようなmRNAは、本明細書中ではサイレンシングされるmRNAとも呼ばれる。このような遺伝子はまた、標的遺伝子ともいわれる。一般的に、サイレンシングされるRNAは内在性遺伝子または病原体遺伝子である。さらに、mRNA以外のRNA、例えば、tRNAおよびウイルスRNAを標的とすることも可能である。
本明細書中で使用される場合、語句「RNAiを仲介する」とは、配列特異的な様式で、標的RNAをサイレンシングする能力をいう。理論によって束縛されることを望まないが、サイレンシングは、RNAiの機構またはプロセスおよびガイドRNA(例えば、21〜23ヌクレオチドのsRNA剤)を使用すると考えられる。
本明細書中で使用される場合、「特異的にハイブリダイズ可能である」および「相補的」は、安定かつ特異的な結合が本発明の化合物と標的RNA分子の間に起こるような、十分な程度の相補性を示すために使用される用語である。特異的結合は、特異的結合が望ましい条件下で、すなわち、インビボアッセイもしくは治療的処置の場合においては生理学的条件下で、またはインビトロアッセイの場合においてはそのアッセイが実行される条件下で、オリゴマー化合物の非標的配列への非特異的結合を回避するために十分な程度の相補性を必要とする。非標的配列は、一般的には、少なくとも5ヌクレオチド異なる。
1つの実施形態において、iRNA剤は、iRNA剤が標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をサイレンシングするように、標的RNA(例えば、標的mRNA)に「十分に相補的」である。別の実施形態において、iRNA剤は、標的RNAに対して「厳密に相補的」であり(RRMS含有サブユニットを除外する)、例えば、標的RNAおよびiRNA剤は、好ましくは、厳密に相補的な領域におけるワトソン−クリック塩
基対から独占的に構成されるハイブリッドを形成するようにアニールする。「十分に相補的な」標的RNAは、標的RNAに厳密に相補的である内部領域(例えば、少なくとも10ヌクレオチドの領域)を含み得る。さらに、ある実施形態において、iRNA剤は、単一ヌクレオチドの違いを特異的に区別する。この場合において、iRNA剤は、厳密な相補性が単一ヌクレオチドの違いの領域(例えば、7ヌクレオチド以内の領域)において見出される場合のみにRNAiを仲介する。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、核酸分子(RNAまたはDNA)、好ましくは、100、200、300、または400未満の長さのヌクレオチドをいう。
本明細書中で議論されるRNA剤は、その他の点では未修飾のRNA、ならびに、例えば、効力を改善するために修飾されたRNA、およびヌクレオシド代用物のポリマーを含む。未修飾のRNAとは、核酸の成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸の部分が、天然に存在する、好ましくは人体において天然に存在するのと同じかまたは実質的に同じである分子をいう。当該分野では、修飾RNAのような、まれなまたは一般的でないが天然に存在するRNAについて言及されており、例えば、リンバックら(Limbach et al.)、(1994)Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196を参照されたい。しばしば修飾RNAと呼ばれる(明らかに一般的には転写後修飾の結果によるからである)、このようなまれなまたは一般的でないRNAは、本明細書中で使用される場合には用語「非修飾RNA」の範囲内にある。修飾RNAは、本明細書中で使用される場合、1つ以上の核酸の成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸の部分が、天然に存在するものと異なる、好ましくは人体において存在するものと異なる分子をいう。これらは修飾「RNA」と呼ばれるが、当然、修飾されているのでRNAではない分子を含むことになる。ヌクレオシド代用物は、リボリン酸バックボーンが、塩基が正しい空間的関連において提示されることを可能にする非リボリン酸構築物で置き換えられている分子であり、その結果、ハイブリダイゼーションは、リボリン酸バックボーンの場合に見られるのと実質的に同様である(例えば、リボリン酸バックボーンの非荷電模倣物)。上記のすべての例が本明細書中で議論される。
以下の議論の多くが一本鎖分子に言及する。本発明の多くの実施形態において、二本鎖iRNA剤(例えば、部分的に二本鎖のiRNA剤)が必要とされるかまたは好ましい。したがって、以下に記載される一本鎖構造から作られる二本鎖構造(例えば、2つの別々の分子が接触して二本鎖領域を形成する場合、または二本鎖領域が分子内対合(例えば、ヘアピン構造)によって形成される場合)は本発明の範囲内に含まれることが理解される。好ましい長さは本明細書中の他の箇所に記載される。
核酸は、サブユニットまたはモノマーのポリマーであるので、以下に記載される修飾の多くが核酸内で反復される位置に存在する(例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合Oの修飾)。ある場合において、修飾は、核酸中の対象の位置のすべてに存在するが、しかし、多くの場合および実際上大部分においてはそうではない。例として、修飾は、3’または5’末端にのみ存在する可能性があり、末端領域(例えば、末端ヌクレオチドの位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド)にのみ存在する可能性がある。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、または両方において存在する可能性がある。修飾は、RNAの二本鎖領域中にのみ存在する可能性もあるし、またはRNAの一本鎖領域にのみ存在する可能性もある。例えば、非結合O位置のホスホロチオエート修飾が、一方の末端にのみもしくは両方の末端に存在してもよいし、末端領域(例えば、末端ヌクレオチド上の位置に、または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド)にのみ存在してもよいし、または二本鎖および一本鎖の領域、特に末端に存
在することも可能である。5’末端(一方または両方)がリン酸化されることも可能である。
ある実施形態において、一本鎖突出部(例えば、5’もしくは3’突出部、もしくはその両方)において、例えば、安定性を増強すること、突出部に特定の塩基を含ませること、または修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含めることが特に好ましい。例えば、突出部にプリンヌクレオチドを含めることが望ましいことがあり得る。ある実施形態において、3’または5’の突出部における塩基のすべてまたはいくつかの塩基が、例えば、本明細書中に記載される修飾を用いて修飾される。修飾は、例えば、リボース糖の2’OH基での修飾の使用、例えば、リボヌクレオチドの代わりとしてのデオキシリボヌクレオチド(例えば、デオキシチミジン)の使用、およびリン酸基中での修飾(例えば、ホスホチオエート修飾)が含まれうる。突出部は、標的配列と相同である必要はない。
修飾およびヌクレオチド代用物は以下に議論される。
Figure 2006522831
式1において上記に提示されるバックボーンはリボ核酸の部分を表す。基本成分はリボース糖、塩基、末端リン酸、およびヌクレオチド間リン酸リンカーである。塩基は天然に存在する塩基(例えば、アデニン、ウラシル、グアニン、またはシトシン)であり、糖は非修飾2’ヒドロキシルリボース糖(示されているとおり)、およびW、X、およびZはすべてOであり、式1は天然に存在する非修飾オリゴリボヌクレオチドを表す。
非修飾オリゴリボヌクレオチドは、ある適用においては最適には満たない可能性があり、例えば、非修飾オリゴリボヌクレオチドは、例えば、細胞ヌクレアーゼによる分解を受ける傾向があり得る。ヌクレアーゼは核酸のホスホジエステル結合を加水分解することが可能である。しかし、上記のRNA成分の1つ以上への化学修飾は改善された特性を付与することが可能であり、例えば、オリゴリボヌクレオチドをヌクレアーゼに対してより安定性にすることが可能である。未修飾のオリゴリボヌクレオチドはまた、iRNA剤にリガンドまたは他の部分を結合するためのつなぎ止め部分を提供するという観点で最適に満
たない可能性がある。
修飾核酸およびヌクレオチド代用物は、以下の1つ以上を含むことが可能である:
(i)変化、例えば、非結合リン酸酸素(XおよびY)の一方もしくは両方の置換、および/または結合リン酸酸素(WおよびZ)の1つ以上の置換(リン酸が末端位置にある場合、位置WまたはZの1つは、天然に存在するリボ核酸中ではさらなるエレメントにリン酸を結合しない。しかし、用語の単純化のために、他に注記される場合以外は、核酸の5’末端のW位置および核酸の3’末端のZ位置は、本明細書中で使用される用語「結合リン酸酸素」の範囲内にある);
(ii)変化、例えば、リボース糖の構成成分(例えば、リボース糖上の2’ヒドロキシル)の置換、またはリボース糖の、リボース以外の構造(例えば、本明細書中に記載されるようなもの)による大規模置換;
(iii)リン酸部分(括弧I)の、「リンを含まない(dephospho)」リンカーによる大規模置換;
(iv)天然に存在する塩基の修飾または置換;
(v)リボース−リン酸バックボーン(括弧II)の置換または修飾;
(vi)RNAの3’末端または5’末端の修飾、例えば、末端リン酸基の除去、修飾、もしくは置換、または構成部分の結合(例えば、RNAの3’末端または5’末端のいずれかへの蛍光標識部分の結合)。
用語「置換」、「修飾」、「変化」などは、この文脈で使用される場合、任意の工程の限定を意味するものではなく、例えば、修飾とは、標準のまたは天然に存在するリボ核酸を用いて開始しかつそれを修飾して修飾リボ核酸を産生しなくてはならないことを意味するものではなく、「修飾された」とは、単に天然に存在する分子との違いを意味する。
当然のことであるが、ある化学的実体の実際の電子的構造を、たった1つの標準的な型(すなわち、ルイス構造)によって十分に表すことは可能ではない。理論によって束縛されることを望まないが、実際の構造は、その代わりに、共鳴型または共鳴構造として集合的に知られる、2つ以上の標準的な型のある混合物または加重平均であり得る。共鳴構造は、個別の化学的実体ではなく、紙の上でのみ存在する。これらは、特定の化学的実体についての結合電子および非結合電子の配置または「局在」においてのみ、互いに異なる。1つの共鳴構造が他よりもより高い程度でハイブリッドに寄与することが可能であり得る。したがって、本発明の実施形態について記載かつ図示される説明は、特定の種類の実体についての主要な共鳴型として当該分野で認識されているものに関してなされる。例えば、任意のホスホロアミデート(非結合酸素の窒素による置換)が、上記の図においてはX=OおよびY=Nによって表される。
特定の修飾は以下により詳細に議論される。
リン酸基
リン酸基は負に荷電した基である。電荷は、2つの非結合酸素原子(すなわち、上記の式1のXおよびY)にわたって均一に分布している。しかし、リン酸基は、1つの酸素を異なる置換基に置換することによって修飾することが可能である。RNAリン酸バックボーンへのこのような修飾の1つの結果は、ヌクレアーゼ分解に対するオリゴリボヌクレオチドの耐性の増加であり得る。したがって、理論によって束縛されることを望まないが、ある態様において、荷電していないリンカー、または非対称型の電荷分布を有する荷電したリンカーのいずれかを生じる変化を導入することが望ましい可能性がある。
修飾リン酸基の例には、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステルが含まれる。ホスホロジチオエー
トは、両方の非結合酸素が硫黄で置換されている。XまたはYの1つのみが変化している状況と異なり、ホスホロジチオエートにおけるリン中心はアキラルであり、アキラルはオリゴリボヌクレオチドのジアステレオマーの形成を妨害する。ジアステレオマー形成により、個々のジアステレオマーがヌクレアーゼに対する種々の耐性を示す調製物を生じることが可能である。さらに、キラルリン酸基を含むRNAのハイブリダイゼーション親和性は、対応する未修飾のRNA種と比較して低い可能性がある。したがって、理論によって束縛されることを望まないが、キラル中心を除去するXおよびYの両方に対する修飾(例えば、ホスホロジチオエート形成)は、該修飾がジアステレオマー混合物を産生することが可能でないという意味で、望ましい可能性がある。したがって、Xは、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rはアルキルまたはアリールである)のいずれか1つであり得る。したがって、Yは、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rはアルキルまたはアリールである)のいずれか1つであり得る。XおよびYのうち少なくともいずれかの硫黄での置換が好ましい。
リン酸リンカーが、結合している酸素(すなわち、式1におけるWまたはZ)の、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、および炭素(架橋メチレンホスホネート)での置換によって修飾されることも可能である。この置換は、末端の酸素(位置W(3’)または位置Z(5’))で起こり得る。Wの炭素による置換またはZの窒素による置換が好ましい。
候補剤は、以下に記載されるような適合性について評価されることが可能である。
糖基
修飾DNAは、リボ核酸の糖基のすべてまたはいくつかの修飾を含むことが可能である。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、多数の異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または置換されることが可能である。理論によって束縛されるものではないが、ヒドロキシルがもはや脱プロトン化されて2’アルコキシドを形成することが可能でないので、安定性の増強が予測される。2’アルコキシドは、リンカーのリン原子上への分子内求核攻撃による分解を触媒することが可能である。再び、理論によって束縛されることを望まないが、2’位におけるアルコキシド形成が可能でない変化を導入することが、ある実施形態に対して望ましい可能性がある。
「オキシ」−2’ヒドロキシル基修飾の例には以下が含まれる:アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、または糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHOR;2’ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋によって同じリボース糖の4’炭素に接続されている「ロックト(固定化された)」核酸(LNA);O−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)およびアミノアルコキシ、O(CHAMINE、(例えば、AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)。メトキシエチル基(MOE)、(OCHCHOCH、PEG誘導体)のみを含むオリゴヌクレオチドが堅固なホスホロチオエート修飾で修飾されたものに匹敵しうるヌクレアーゼ安定性を示すことは注目すべきことである。
「デオキシ」修飾には以下が含まれる:水素(すなわち、デオキシリボース糖、これは、部分的にdsのRNAの突出部に特に関連する);ハロ(例えば、フルオロ);アミノ(例えば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ
酸);NH(CHCHNH)CHCH−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、または糖)、シアノ;メルカプト;アルキル−チオ−アルキル;チオアルコキシ;およびアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニル(これらは場合により、例えば、アミノ官能基で置換されてもよい)。好ましい置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH3、2’−O−アリル、2’−C−アリル、および2’−フルオロである。
糖基は、リボース中の対応する炭素の立体化学的配置とは反対の立体化学的配置を有する1つ以上の炭素を含むことも可能である。したがって、修飾RNAは、例えば、糖としてアラビノースを含むヌクレオチドを含むことが可能である。
修飾RNAは、C−1’に核酸塩基を欠く「無塩基」糖を含むことも可能である。これらの無塩基糖はまた、構成成分である糖の1つ以上の原子においてさらに修飾を含むことが可能である。
ヌクレアーゼ耐性を最大化するために、上記2’修飾が、1つ以上のリン酸リンカー修飾(例えば、ホスホロチオエート)と組み合わせて使用されることが可能である。いわゆる「キメラ」オリゴヌクレオチドは、2つ以上の異なる修飾を含むものである。
修飾はまた、iRNA剤の1つ以上の部位においてリボース構造の別の実体による大規模置換を伴い得る。これらの修飾は、RRMSのためのリボース置換という表題の節において記載されている。
候補修飾は以下に記載されるように評価されることが可能である。
リン酸基の置換
リン酸基は、リン酸以外のものを含む接続部によって置換されることが可能である(上記の式1中の括弧Iを参照のこと)。理論によって束縛されることを望まないが、荷電したホスホジエステル基はヌクレアーゼ分解における反応中心なので、この基を中性の構造模倣物で置換することは、ヌクレアーゼ安定性の増強を付与するはずであると考えられている。この場合も理論によって束縛されることを望まないが、ある態様において、荷電したリン酸基が中性部分によって置換される変化を導入することが望ましい可能性がある。
リン酸基を置換することが可能である部分の例には以下が含まれる:シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ。好ましい置換には、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基が含まれる。
候補修飾は以下のように評価されることが可能である。
リボリン酸バックボーンの置換
リン酸リンカーおよびリボース糖が、ヌクレアーゼ耐性のヌクレオシドまたはヌクレオチドの代用物によって置換されるオリゴヌクレオチド模倣バックボーンを構築することも可能である(上記の式1の括弧IIを参照のこと)。理論によって束縛されることを望まないが、反復して荷電したバックボーンが存在しなければ、ポリアニオンを認識するタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)への結合が減少すると考えられている。再度、理論によって束縛されることを望まないが、ある態様において、塩基が中性の代用バックボーンによって連結される変化を導入することが望ましい可能性がある。
例には、モフィリノ(mophilino )、シクロブチル、ピロリジン、およびペプチド核酸(PNA)などのヌクレオシド代用物が含まれる。好ましい代用物はPNA代用物である。
候補修飾は以下に記載されるように評価されることが可能である。
末端修飾
オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端が修飾されることが可能である。このような修飾は、分子の3’末端、5’末端、または両方の末端においてなされ得る。該修飾は、末端のリン酸全体または末端リン酸基の1つ以上の原子の修飾または置換を含むことが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端が、他の機能的分子実体、例えば標識部分(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素もしくはCy5色素などの蛍光団)または保護基(例えば、硫黄、ケイ素、ホウ素、もしくはエステルを含む基など)に複合体化することが可能である。前記機能的分子実体は、リン酸基および/またはスペーサーを介して糖に結合することが可能である。スペーサーの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC−3’もしくはC−5’のO、N、S、もしくはC基を接続または置換することが可能である。代替的には、スペーサーは、ヌクレオチド代用物(例えば、PNA)の末端原子を接続または置換することが可能である。これらのスペーサーまたはリンカーは、例えば、−(CH−、−(CHN−、−(CHO−、−(CHS−、O(CHCHO)CHCHOH(例えば、n=3または6)、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、またはモルホリノなど、またはビオチン試薬およびフルオレセイン試薬を含み得る。「スペーサー/リン酸‐機能的分子実体−スペーサーリン酸」という配列構造が、iRNA剤の2つの鎖の間に介在するとき、この配列構造は、ヘアピン型RNA剤中のヘアピンRNAループの代わりに機能することが可能である。3’末端は−OH基であり得る。理論に束縛されることを望まないが、特定の部分の複合体化は、輸送、ハイブリダイゼーションおよび特異性についての特性を改善することが可能であると考えられている。再度、理論に束縛されることを望まないが、ヌクレアーゼ耐性を改善する末端の変化を導入することが望ましい可能性がある。末端修飾の他の例には、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)が含まれる。
末端修飾は、本明細書中の他の箇所で議論される理由を含む多くの理由のために、活性を調節するために、または分解に対する耐性を調節するために、加えられることが可能である。活性を調節するために有用である末端修飾には、リン酸またはリン酸アナログによる5’末端の修飾が含まれる。例えば、好ましい態様において、iRNA剤、とりわけアンチセンス鎖は、5’リン酸化されてもよいし、または5’プライム末端にリン酸基アナ
ログを含んでもよい。5’リン酸修飾には、RISC介在性の遺伝子サイレンシングと適合可能であるものが含まれる。適切な修飾には以下が含まれる:5’一リン酸((HO)2(O)P−O−5’);5’二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’一チオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P−O−5’);5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’−ホスホロチオール酸((HO)2(O)P−S−5’);酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸、および三リン酸の任意のさらなる組合せ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホルアミデート((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(NH2)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホン酸(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’、(OH)2(O)P−5’−CH2)、5’−アルキルエーテルホスホン酸(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’)。
末端修飾はまた、分布をモニターするためにも有用でありうるが、このような場合において、付加される好ましい基には、蛍光団(例えば、フルオレセイン)またはAlexa(商標)色素(例えば、Alexa 488)が含まれる。末端修飾はまた、取り込みを増強するために有用でありうるが、このために有用な修飾にはコレステロールが含まれる。末端修飾はまた、RNA剤を別の部分に架橋するために有用でありうるが、このための有用な修飾にはマイトマイシンCが含まれる。
候補修飾は、以下に記載されるように評価されることが可能である。
塩基
アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルはRNAにおいて見出される最も一般的な塩基である。これらの塩基は、改善された特性を有するRNAを提供するために修飾または置換されることが可能である。例えば、ヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドは、これらの塩基を用いて、または合成もしくは天然の核酸塩基(例えば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、またはツベルシジン(tubercidine))および上記の修飾のいずれか1つを用いて調製されることが可能である。代替的には、上記のうち任意の塩基の置換アナログまたは修飾アナログ、例えば、「一般的でない塩基」および「汎用的な塩基」が利用されることも可能である。例としては、非限定的に以下が含まれる:2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、および6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、および他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、およびN−2,N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3−デアザ−5−アザシトシン、2−アミノプリン、5−アルキルウラシル、7−アルキルグアニン、5−アルキルシトシン、7−デアザアデニン、N6,N6−ジメチルアデニン、2,6−ジアミノプリン、5−アミノ−アリル−ウラシル、N3−メチルウラシ
ル、置換1,2,4−トリアゾール、2−ピリジノン、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、5−メトキシウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル、5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−アセチルシトシン、2−チオシトシン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、N−メチルグアニン、またはO−アルキル化塩基。さらなるプリンおよびピリミジンは、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、「Concise Encyclopedia Of Polymer
Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley &
Sons、1990に開示されるもの、およびイングリッシュら(Englisch et al.)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613によって開示されるものが含まれる。
一般的には、塩基の変化は、安定性を促進するためには好ましくないが、他の理由のために有用である可能性がある。例えば、いくつかの2,6−ジアミノプリンおよび2アミノプリンは蛍光性である。修飾塩基により標的特異性が減少する可能がある。このことは、iRNA剤の設計において考慮されるべきである。
候補修飾は以下に記載されるように評価されることが可能である。
候補RNAの評価
候補RNA剤(例えば、修飾RNA)を、そのRNA剤または修飾分子および対照分子を適切な条件に曝露すること、ならびに選択された特性の存在について評価することによって、選択された特性について評価することが可能である。例えば、分解剤に対する耐性は以下のようにして評価されることが可能である。候補修飾RNA(および好ましくは対照分子、通常は非修飾型)は、分解的な条件、例えば、分解剤(例えば、ヌクレアーゼ)を含む環境に曝露されることが可能である。例えば、生物学的試料を使用することが可能であり、該試料は、例えば、治療的使用、例えば、血液または細胞画分(例えば、無細胞ホモジネートまたは破砕された細胞)において遭遇しうる環境と類似の生物学的試料である。次いで、候補および対照を、多数のアプローチのいずれかによって、分解に対する耐性について評価することが可能である。例えば、候補および対照を、例えば、放射性標識もしくは酵素標識または蛍光標識(例えば、Cy3もしくはCy5など)を用いて、好ましくは、曝露の前に標識することが可能である。対照RNAおよび修飾されたRNAを、分解剤、および場合によっては対照(例えば、不活化された(例えば、熱不活化された)分解剤)とともにインキュベートすることが可能である。次いで、物理学的パラメータ(例えば、修飾分子および対照分子のサイズ)を決定する。これらは、物理学的方法によって(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはサイズ分画カラムによって)、その分子がその元々の長さを維持していたかを評価するために決定してもよいし、または機能的に評価することも可能である。代替的には、ノーザンブロット分析を使用して、未標識の修飾分子の長さをアッセイすることが可能である。
機能的アッセイもまた、候補剤を評価するために使用することが可能である。機能的アッセイは、修飾が、遺伝子発現をサイレンシングする分子の能力を変化させるか否かを決定するために、最初に、または初期の非機能的アッセイ(例えば、分解に対する耐性についてのアッセイ)の後で適用することが可能である。例えば、細胞(例えば、マウスまたはヒトの細胞などの哺乳動物細胞)を、蛍光タンパク質(例えば、GFP)を発現するプラスミドおよびその蛍光タンパク質をコードする転写物に相同である候補RNA剤で同時トランスフェクトすることが可能である(例えば、国際公開公報第00/44914号パンフレットを参照されたい)。例えば、GFP mRNAに相同である修飾dsRNAは
、トランスフェクションに候補dsRNAを含めなかった対照細胞(例えば、RNA剤を加えられなかった対照、および/または非修飾RNAを加えられなかった対照)と比較して、細胞の蛍光の減少についてモニターすることによって、GFP発現を阻害する能力についてアッセイすることが可能である。遺伝子発現に対する候補剤の効力は、修飾dsRNA剤および非修飾dsRNA剤の存在下での細胞の蛍光を比較することによって評価可能である。
代替的な機能的アッセイにおいて、内在性マウス遺伝子(好ましくは、c−mosなどの母方で発現される遺伝子)に相同な候補dsRNA剤が、インビボで遺伝子発現を阻害するRNA剤の能力を評価するために、未成熟のマウス卵母細胞に注入されてもよい(例えば、国際公開公報第01/36646号パンフレットを参照されたい)。卵母細胞の表現型(例えば、中期IIにおける停止を維持する能力)を、RNA剤が発現を阻害する指標としてモニター可能である。例えば、dsRNA剤によるc−mos mRNAの切断は、卵母細胞が中期における停止を抜け出て単為生殖的発生を開始することを引き起こす(カレッジら(Colledge et al.)、Nature 370:65〜68、1994;ハシモトら(Hashimoto et al.)、Nature、370:68〜71、1994)。標的RNAレベルに対する修飾RNA剤の効果は、陰性対照と比較して、標的mRNAのレベルの減少についてアッセイするためのノーザンブロットによって、または標的タンパク質のレベルの減少についてアッセイするためのウエスタンブロット分析によって確認可能である。対照は、RNA剤が添加されない細胞、および/または非修飾RNAが添加される細胞を含むことが可能である。
参考文献
一般的参考文献
本発明に従って使用されるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは、固相合成を用いて可能であり、例えば、以下を参照されたい:「Oligonucleotides synthesis,a practical approach」、エム
ジェー ガイト(M.J.Gait)編、IRL Press、1984;「Oligonucleotides and Analogues,A Practical Approach」エフ エックスタイン(F.Eckstein)編、IRL Press、1991(とりわけ、第1章「Modern machine−aided methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis」、第2章「Oligoribonucleotide synthesis」、第3章「2’−O−Methyloligoribonucleotide−s:synthesis and applications」、第4章「Phosphorothioate oligonucleotides」、第5章「Synthesis of oligonucleotide phosphorodithioates」、第6章「Synthesis of oligo−2’−deoxyribonucleoside methylphosphonates」、および第7章「Oligodeoxynucleotides containing modified bases」)。他の特に有用な合成手順、試薬、ブロッキング基、および反応条件は、マーティン ピー(Martin,P.)、Helv.Chim.Acta.1995、78、486〜504;ボカジュ エス エル(Beaucage,S.L.)およびアイヤル アール ピー(Iyer,R.P.)、Tetrahedron、1992、48、2223〜2311ならびにボカジュ エス エル(Beaucage,S.L.)およびアイヤル アール ピー(Iyer,R.P.)、Tetrahedron、1993、49、6123〜6194、またはそこに引用される参考文献に記載されている。
国際公開公報第00/44895号パンフレット、国際公開公報第01/75164号パンフレット、または国際公開公報第02/44321号パンフレットに記載される修飾
は、本明細書中で使用されることが可能である。
本明細書中で列挙されるすべての刊行物、特許、および公開特許出願の開示は、本願明細書に援用される。
リン酸基の参考文献
ホスフィン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,508,270号に記載される。アルキルホスホン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第4,469,863号に記載される。ホスホルアミダイトオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号に記載される。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,023,243号に記載される。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,130,302号および米国特許第5,177,198号に記載される。3’−デオキシ−3’−アミノホスホルアミデートリボオリゴヌクレオチドの調製は、米国特許第5,476,925号に記載されている。3’−デオキシ3’−メチレンホスホネートオリゴリボヌクレオチドは、アン(An),Hら、J.Org.Chem.2001、66、2789〜2801に記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、スプロートら(Sproat et
al.)、Nucleosides Nucleotides 1988、7、651およびクロスティックら(Crosstick et al.)、Tetrahedron Lett.1989、30、4693に記載されている。
糖基の参考文献
2’修飾に対する改変は、フェルマ(Verma),S.ら、Annu.Rev.Biochem.1998、67、99〜134および同文献内のすべての参考文献において見出されることが可能である。リボースに対する特異的修飾は以下の参考文献において見出されることが可能である:2’−フルオロ(カワサキら(Kawasaki et al.)、J.Med.Chem.、1993、36、831〜841)、2’−MOE(マーティン ピー(Martin,P.)Helv.Chim.Acta 1996、79、1930〜1938)、「LNA」(ウェンゲル(Wengel)、J.Acc Chem.Res.1999、32、301〜310)。
リン酸基の置換に関する参考文献
メチレンメチルイミノ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書中では、MMI結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定される)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書中では、MDH結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定される)、およびメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(本明細書中では、アミド−3結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定される)、およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(本明細書中では、アミド−4結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定される)、ならびに混合バックボーン化合物(例えば、交互にMMIおよびPOまたはPS結合を有する)は、米国特許第5,378,825号、同第5,386,023号、同第5,489,677号、ならびに公開されたPCT出願PCT/US92/04294号およびPCT/US92/04305号(それぞれ、国際公開公報第92/20822号および国際公開公報第92/20823号パンフレットとして公開されている)に記載されるように調製されることが可能である。ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号および米国特許第5,264,564号に記載されるように調製されることが可能である。エチレンオキサイド結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号に記載されるように調製されることが可能である。シロキサン置換については、コーミア ジェー エフら(Cormier,J.F.et al)、Nucleic Acids Res.1988、16、4583に記載されている。カーボネート置換は、ティテンサー ジェー アール(Tittensor,J.R.)、J.Chem.Soc.C1971、
1933に記載されている。カルボキシメチル置換は、エッジ エム ディーら(Edge,M.D.)、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1972、1991に記載されている。カルバメート置換は、スターチャク イー ピー(Stirchak,E.P.)、Nucleic Acids Res.1989、17、6129に記載されている。
リン酸−リボースバックボーンの置換に関する参考文献
糖代用品のシクロブチル化合物は、米国特許第5,359,044号に記載されるように調製されることが可能である。ピロリジン糖代用物は、米国特許第5,519,134号に記載されるように調製されることが可能である。モルホリノ糖代用物は、米国特許第5,142,047号および米国特許第5,235,033号、ならびに他の関連する特許の開示に記載されるように調製されることが可能である。ペプチド核酸(PNA)はそれ自体公知であり、「Peptide Nucleic Acids(PNA):Synthesis,Properties and Potential Applications」、Bioorganic & Medicinal Chemistry、1996、4、5〜23において引用される種々の手順のいずれかに従って調製されることが可能である。これらはまた、米国特許第5,539,083号に従って調製されることが可能である。
末端修飾の文献
末端修飾は、マノハラン エムら(Manoharan,M. et al.)、Antisense and Nucleic Acid Drug Development 12、103〜128(2002)および同文献中の引用文献に記載されている。
塩基の参考文献
N−2置換プリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,459,255号に記載されるように調製されることが可能である。3−デアザプリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,457,191号に記載されるように調製されることが可能である。5,6−置換ピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,614,617号に記載されるように調製されることが可能である。5−プロピニルピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,484,908号に記載されるように調製されることが可能である。さらなる参考文献は、塩基修飾についての上記の節に開示されることが可能である。
好ましいiRNA剤
好ましいRNA剤は以下の構造を有する(以下の式2を参照のこと):
Figure 2006522831
上記の式2を参照すると、R、R、およびRは、各々独立して、H(すなわち、脱塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、および6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、および他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2,N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3−デアザ−5−アザシトシン、2−アミノプリン、5−アルキルウラシル、7−アルキルグアニン、5−アルキルシトシン、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、N6,N6−ジメチルアデニン、2,6−ジアミノプリン、5−アミノ−アリル−ウラシル、N3−メチルウラシル、置換1,2,4−トリアゾール、2−ピリジノン、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、5−メトキシウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル、5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−アセチルシトシン、2−チオシトシン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、N−メチルグアニン、またはO−アルキル化塩基である。
、R、およびRは、各々独立して、OR、O(CHCHO)CHCHOR;O(CH;O(CHOR、H;ハロ;NH;NHR;N(R;NH(CHCHNH)CHCHNHR;NHC(O)R;シアノ;メルカプト;SR;アルキル−チオ−アルキル;アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル(これらの各々は、場合により、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アミノアルキル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノ、またはウレイドで置換されてもよい)であるか;または、R、R、およびRは、Rと一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[−O−CH−]共有結合架橋を形成する。
Figure 2006522831
;H;OH;OCH;W;脱塩基ヌクレオチドであるか;または存在せず、
(好ましいA1は、とりわけアンチセンス鎖に関して、以下の:5’一リン酸((HO)(O)P−O−5’);5’二リン酸((HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’三リン酸((HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’一チオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)(S)P−O−5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’−ホスホロチオール酸((HO)(O)P−S−5’);酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸、および三リン酸の任意のさらなる組合せ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホルアミデート
((HO)(O)P−NH−5’、(HO)(NH)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホン酸(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−、(OH)(O)P−5’−CH)、5’−アルキルエーテルホスホン酸(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH−)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−)から選択される。)
Figure 2006522831
であり、A
Figure 2006522831
であり;かつA
Figure 2006522831
;H;Z;逆向きのヌクレオチド;脱塩基ヌクレオチドであるか;または存在しない。
は、OH、(CH10、(CHNHR10、(CHOR10、(CHSR10、O(CH10、O(CHOR10、O(CHNR10、O(CHSR10、O(CHSS(CHOR10、O(CHC(O)OR10、NH(CH10;NH(CHNR10;NH(CHOR10、NH(CHSR10;S(CH10、S(CHNR10、S(CHOR10、S(CHSR10O(CHCHO)CHCHOR10;O(CHCHO)CHCHNHR10;NH(CHCHNH)CHCHNHR10;Q−R10、O−Q−R10、N−Q−R10、S−Q−R10、または−O−である。Wは、O、CH、NH、またはSである。
、X、X、およびXは、各々独立して、OまたはSである。
、Y、Y、およびYは、各々独立して、OH、O、OR、S、Se、BH 、H、NHR、N(R、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらの各々が場合によっては置換されてもよい。
、Z、およびZは、各々独立して、O、CH、NH、またはSである。Zは、OH、(CH10、(CHNHR10、(CHOR10、(CHSR10、O(CH10、O(CHOR10、O(CHNR10、O(CHSR10、O(CHSS(CHOR10、O(CHC(O)OR10、NH(CH10;NH(CHNR10;NH(CHOR10、NH(CHSR10;S(CH10、S(CHNR10、S(CHOR10、S(CHSR10O(CHCHO)CHCHOR10;O(CHCHO)CHCHNHR10;NH(CHCHNH)CHCHNHR10;Q−R10、O−Q−R10、N−Q−R10、S−Q−R10である。
xは、本明細書中に記載されるRNA剤の長さを満足するように選択され、5〜100である。
はHであるか、またはR、R、またはRと一緒に組み合わさって糖の2’炭素と4’炭素の間に[−O−CH−]共有結合架橋を形成する。
は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アミノ酸、または糖であり;Rは、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸であり;およびR10はH;蛍光団(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素もしくはCy5色素);硫黄、ケイ素、ホウ素、もしくはエステルの保護基;インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ;アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール;放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体);またはRNA剤である。mは0〜1,000,000であり、かつnは0〜20である。Qは、脱塩基性の糖(abasic sugar)、アミド、カルボキシ、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミドもしくはモルホリノ、ビオチン、またはフルオレセイン試薬からなる群より選択されるスペーサーである。
リン酸基全体が置換されている好ましいRNA剤は以下の構造を有する(以下の式3を参照のこと):
Figure 2006522831
式3を参照すると、A10−A40はL−G−Lであり;A10およびA40のうち少なくともいずれかは存在しなくてもよい。ここでLはリンカーであり、一方または両方のLは存在していても存在していなくてもよく、かつCH(CH;N(CH;O(CH;S(CHからなる群より選択される。Gは、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノからなる群より選択される官能基である。
10、R20、およびR30は、各々独立して、H(すなわち、脱塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、および6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、および他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシ
ン、7−メチルグアニン、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、およびN−2,N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3−デアザ−5−アザシトシン、2−アミノプリン、5−アルキルウラシル、7−アルキルグアニン、5−アルキルシトシン、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、N6,N6−ジメチルアデニン、2,6−ジアミノプリン、5−アミノ−アリル−ウラシル、N3−メチルウラシル置換1,2,4−トリアゾール、2−ピリジノン、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、5−メトキシウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル、5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−アセチルシトシン、2−チオシトシン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、N−メチルグアニン、またはO−アルキル化塩基である。
40、R50、およびR60は、各々独立して、OR、O(CHCHO)CHCHOR;O(CH;O(CHOR、H;ハロ;NH;NHR;N(R;NH(CHCHNH)CHCH;NHC(O)R;;シアノ;メルカプト;SR;アルキル−チオ−アルキル;アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル(これらの各々は、場合により、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アミノアルキル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノ、またはウレイド基で置換されてもよい)であり;または、R40、R50、およびR60は、R70と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[−O−CH−]共有結合架橋を形成する。
xは、本明細書中に記載されるRNA剤の長さを満足するように選択され、5〜100である。
70はHであるか、またはR40、R50、またはR60と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[−O−CH−]共有結合架橋を形成する。
は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アミノ酸、または糖であり;Rは、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸である、mは0〜1,000,000であり、nは0〜20であり、かつgは0〜2である。
好ましいヌクレオシド代用物は以下の構造を有する(以下の式4を参照のこと):
Figure 2006522831
Sは、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン、およびペプチド核酸からなる群より選択される。Lはリンカーであり、かつCH(CH;N(CH;O(CH;S(CH;−C(O)(CH−からなる群より選択されるか、または存在していなくてもよい。Mは、アミド結合;スルホンアミド;スルフィン酸;リン酸基;本明細書中に記載されるような修飾リン酸基であるか;または存在していなくてもよい。
100、R200、およびR300は、各々独立して、H(すなわち、脱塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシン、および6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、および他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2,N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3−デアザ−5−アザシトシン、2−アミノプリン、5−アルキルウラシル、7−アルキルグアニン、5−アルキルシトシン、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、N6,N6−ジメチルアデニン、2,6−ジアミノプリン、5−アミノ−アリル−ウラシル、N3−メチルウラシル置換1,2,4−トリアゾール、2−ピリジノン、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、5−メトキシウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル、5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−アセチルシトシン、2−チオシトシン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、N−メチルグアニン、またはO−アルキル化塩基である。
xは、本明細書中に記載されるRNA剤の長さを満足するように選択され、5〜100であり;gは0〜2である。
ヌクレアーゼ耐性モノマー
RNA、例えばiRNA剤に、本明細書に記載されるような、さらに同時係属中の共同所有される2003年5月9日に申請された米国仮特許出願第60/469,612号および国際出願番号PCT/US04/07070号(いずれも本願に援用する)に記載されるようなヌクレアーゼ耐性モノマー(NRM)を組み入れることが可能である。
さらに、本発明はNRMおよび本明細書に記載の他の要素を有するiRNA剤を含む。
例えば、本発明は、本明細書に記載のiRNA剤、例えばパリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書に記載の遺伝子、例えば肝臓において活性を示す遺伝子を標的とするiRNA剤、本明細書に記載の構成様式もしくは構造を有するiRNA剤、本明細書に記載の両親媒性送達剤と結合したiRNA剤、本明細書に記載の薬剤送達モジュールと結合したiRNA剤、本明細書に記載のように投与されるiRNA剤、または本明細書に記載のように製剤化されたiRNA剤であって、NRMも取り込むiRNA剤を含む。
iRNA剤は、例えば、対象の体内に見られるヌクレアーゼ(例えばエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ)による分解を阻害するように修飾されたモノマーを含みうる。これらのモノマーをここではNRM、またはヌクレアーゼ耐性促進モノマーもしくはヌクレアーゼ耐性促進修飾体と称する。多くの場合、これらの修飾は、iRNA剤の他の特性、例えばタンパク質(例えば輸送タンパク質(例えば血清アルブミン))もしくはRISC(RNA誘導サイレシング複合体)の構成メンバーと相互作用する能力、または最初の配列と2番目の配列が相互に二本鎖を形成もしくは別の配列、例えば標的分子と二本鎖を形成する能力という特性も同様に調節する。
理論に縛られることは望まないが、iRNA剤の糖、塩基および/またはリン酸バックボーンの修飾体は、エンドヌクレアーゼ耐性およびエキソヌクレアーゼ耐性を増強し、さらに輸送タンパク質およびRISC複合体の1つまたは複数の機能的要素との相互作用を亢進すると考えられる。好ましい修飾体は、エキソヌクレアーゼ耐性およびエンドヌクレアーゼ耐性を高め、したがって、RISC複合体と相互作用する前のiRNA剤の半減期を延長するが、同時に、RISC複合体におけるエンドヌクレアーゼの活性に対してはiRNA剤を耐性にしない修飾体である。繰り返すが、いかなる理論にも縛られることは望まないが、上記修飾をアンチセンス鎖の3’末端および/もしくは5’末端またはこれらの近くに配置することにより、上記に描写される好ましいヌクレアーゼ耐性の基準を満たすiRNA剤が生じると考えられる。やはり繰り返すが、いかなる理論にも縛られることは望まないが、修飾を、例えばセンス鎖の中央に配置することにより、オフターゲットの可能性が比較的低いiRNA剤が作製可能と考えられる。
本明細書に記載の修飾を、例えばiRNA剤などの、本明細書に記載の任意の二本鎖RNAおよびRNA様分子へ組み込むことが可能である。iRNA剤はハイブリッド形成したセンス鎖およびアンチセンス鎖からなる二本鎖を含むことができ、この場合アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、本明細書に記載される1つまたは複数の修飾を含むことが可能である。アンチセンス鎖は、3’末端および/もしくは5’末端、ならびに/または鎖のいずれかの末端から1〜6ヌクレオチド、例えば1〜5、1〜4、1〜3、1〜2ヌクレオチドにある1つもしくは複数の位置に修飾を含むことが可能である。センス鎖は、3’末端および/もしくは5’末端、ならびに/または鎖の両末端の間にある介入位置のいずれか1つに修飾を含むことが可能である。また、iRNA剤は、ハイブリッド形成した2つのアンチセンス鎖からなる二本鎖を含むことが可能である。第1および/または第2のアンチセンス鎖は、本明細書に記載の1つまたは複数の修飾を含むことが可能である。したがって、1つおよび/または両方のアンチセンス鎖は、3’末端および/もしくは5’末端、ならびに/または鎖のいずれかの末端から1〜6ヌクレオチド、例えば1〜5、1〜4、1〜3、1〜2ヌクレオチドにある1つもしくは複数の位置に修飾を含むことが可能である。以降に特定の構造について述べる。
上記により描写される好ましいヌクレアーゼ耐性の基準を満たすiRNA剤を作製するために有用と考えられる修飾は、以下に記すような、糖、塩基および/またはリン酸バックボーンについての1つまたは複数の化学的および/または立体化学的修飾を含むことが可能である:
(i)キラル(S)チオエート。したがって、好ましいNRMは、通常は酸素によって占められる非架橋位置、例えば位置XのSpまたはRpにヘテロ原子を含む特定のキラル型の修飾リン酸基について富化された、または前記修飾リン酸基について純粋なヌクレオチド二量体を含む。また、Xの原子にはS、Se、NrまたはBrが考えられる。XがSならば、富化された、またはキラル型について純粋なSpとの結合が好ましい。富化とは好ましい型が少なくとも70、80、90、95または99%であることを意味する。そのようなNRMについては以下により詳細に記載する;
(ii)糖、塩基および/またはリン酸バックボーン部分もしくは修飾リン酸バックボーン部分のリン原子への1つまたは複数のカチオン基の結合。したがって、好ましいNRMは、末端にカチオン基で誘導体化されたモノマーを含む。アンチセンス配列の5’末端は、末端−OHまたはリン酸基を有する必要があるので、前記のNRMは、アンチセンス配列の5’末端では使用されないことが好ましい。このカチオン基は、水素結合形成およびハイブリッド形成との干渉を最少化する塩基上の位置、例えばもう一方の鎖の相補的塩基と相互作用する面から離れた位置(例えばピリミジンの5’位またはプリンの7位)で結合しなければならない。これらについては以下により詳細に述べる;
(iii)末端での非リン酸結合。したがって、好ましいNRMは、例えば切断に対する耐性がリン酸結合よりも大きくなる4原子の結合などの、非リン酸結合を含む。例として、3’CH2−NCH−O−CH2−5’および3’CH2−NH−(O=)−CH2−5’が挙げられる。
(iv)3’架橋チオリン酸塩および5’架橋チオリン酸塩。したがって、好ましいNRMは前記の構造を含むことが可能である。
(v)L−RNA、2’−5’結合、逆向きの結合、α−ヌクレオシド。したがって、他の好ましいNRMに含まれるものは、LヌクレオシドおよびL−ヌクレオシド由来のヌクレオチド二量体;2’−5’リン酸塩、非リン酸塩および修飾リン酸塩の結合、例えばチオリン酸塩、ホスホルアミデートおよびホウ素化リン酸塩;逆向きの結合、例えば3’−3’または5’−5’結合を有する二量体;糖の1’位にα結合を有するモノマー、例えば本明細書に記載のα結合を有する構造が挙げられる;
(vi)結合基。したがって、好ましいNRMは、例えば標的結合部分、または、例えば糖、塩基もしくはバックボーンを通してモノマーと結合する、本明細書に記載の結合リガンドを含むことが可能である。
(vi)脱塩基結合。したがって、好ましいNRMは、例えば本明細書に記載されるような脱塩基モノマー(例えば核酸塩基のないモノマー)、本明細書に記載されるような芳香族モノマーもしくは複素環式モノマー、または多複素環式芳香族モノマーを含むことが可能である;
(vii)5’−ホスホネートおよび5’−ホスフェート型プロドラッグ。したがって、好ましいNRMは、好ましくは末端部位(例えば5’位)に、リン酸基の1つまたは複数の原子が保護基により誘導体化されているモノマーを含み、この1つまたは複数の保護基は、対象の体内成分、例えばカルボキシエステラーゼまたは対象の体内に存在する酵素の作用により除去される。例えば、カルボキシエステラーゼが保護分子を切断する結果チオエートアニオンが生じ、チオエートアニオンがリン酸塩のOに隣接する炭素を攻撃する結果として保護されていないリン酸塩が生じるリン酸プロドラッグ。
1つまたは複数の異なるNRM修飾をiRNA剤またはiRNA剤の配列中に導入することが可能である。NRM修飾は、配列またはiRNA剤に2回以上使用することが可能である。一部のNRMはハイブリッド形成を妨げるので、取り込む総数は、許容可能なレベルのiRNA剤の二本鎖形成が維持されるものでなければならない。
一部の実施形態において、NRM修飾は、対象の所望の配列または遺伝子を標的としな
い配列(センス鎖またはセンス配列)の末端切断部位または切断領域へ導入される。このことによりオフターゲットによるサイレンシングを低減しうる。
キラルSチオエート
修飾は、1つもしくは両方の非結合(XおよびY)リン酸酸素および/または1つもしくは複数の結合(WおよびZ)リン酸酸素の変更(例えば置換)を含みうる。下記の式Xは2つの糖/糖代用物‐塩基部分(SBおよびSB)が結合しているリン酸塩部分を表す。
Figure 2006522831
特定の実施形態において、リン酸バックボーン部分の非結合リン酸酸素(XおよびY)の1つは次のいずれか1つ:S、Se、BR(Rは水素、アルキル、アリールなど)、C(すなわち、アルキル基、アリール基など)、H、NR(Rは水素、アルキル、アリールなど)、またはOR(Rはアルキルまたはアリール)と置換可能である。非修飾リン酸基のリン原子はアキラルである。しかし、非結合酸素の1つを上記の原子または原子群の1つと置換することにより、リン原子がキラル化される。いいかえれば、このように修飾されたリン酸基内のリン酸原子は立体中心である。立体中心のリン原子は「R」配置(ここではR)または「S」配置(ここではS)を有することが可能である。したがって、立体中心のリン原子の60%がR配置を有するとき、残る40%の立体中心のリン原子はS配置を有することになる。
一部の実施形態において、リン酸非結合酸素が他の原子または原子群で置換されているリン酸基を有するiRNA剤は、立体中心の原子の少なくとも約50%(例えば立体中心の原子の少なくとも約60%、同原子の少なくとも約70%、同原子の少なくとも約80%、同原子の少なくとも約90%、同原子の少なくとも約95%、同原子の少なくとも約98%、同原子の少なくとも約99%)がS配置を有する立体中心リン原子の集団を含むことが可能である。あるいは、リン酸非結合酸素が他の原子または原子群で置換されているリン酸基を有するiRNA剤は、立体中心の原子の少なくとも約50%(例えば立体中心の原子の少なくとも約60%、同原子の少なくとも約70%、同原子の少なくとも約80%、同原子の少なくとも約90%、同原子の少なくとも約95%、同原子の少なくとも約98%、同原子の少なくとも約99%)がR配置を有する立体中心リン原子の集団を含むことが可能である。他の実施形態において、立体中心リン原子の集団がS配置を有し、かつR配置を有する立体中心リン原子を実質的に含まないことが可能である。さらに他の実施形態において、立体中心リン原子の集団がR配置を有し、かつS配置を
有する立体中心リン原子を実質的に含まないことが可能である。本明細書では、「R配置を有する立体中心リン原子を実質的に含まない」という句は、R配置を有する立体中心リン原子を含む部分が当技術分野で公知の従来の方法(キラルHPLC、キラルシフト試薬を使用したH NMR分析など)により検出できないことを意味する。本明細書では、「S配置を有する立体中心リン原子を実質的に含まない」という句は、Sp配置を有する立体中心リン原子を含む部分が当技術分野で公知の従来の方法(キラルHPLC、キラルシフト試薬を使用したH NMR分析など)により検出できないことを意味する。
好ましい実施形態において、修飾iRNA剤はホスホロチオエート基、すなわちリン酸の非結合酸素がイオウ原子と置換されているリン酸基を含む。特に好ましい実施形態において、ホスホロチオエートの立体中心リン原子の集団はS配置を有し、かつR配置を有する立体中心リン原子を実質的に含まないことが可能である。
ホスホロチオエートを、二量体(例えば式X−1および式X−2)
Figure 2006522831
を使用してiRNA剤に組み込むことが可能である。前者は、鎖の3’末端にホスホロチオエートを導入するために使用することができ、後者は鎖の5’末端または例えばいずれかの末端から1、2、3、4、5または6つ目のヌクレオチドの位置に修飾を導入するために使用する。上記の式で、Yは2−シアノエトキシでよく、WおよびZはOでよく、R’は、例えば糖にC−3末端構造を付与しうる置換基、例えばOH、F、OCHでよく、DMTはジメトキシトリチルであり、「塩基」は天然の塩基でも、通常でない塩基でも、または普遍的な塩基でもよい。
X−1およびX−2は、キラル試薬を使用して、または基本的にR配置だけを有する(すなわち、実質的にS配置を含まない)もしくはS配置だけを有する(すなわち、実質的にR配置を含まない)立体中心リン原子の集団を有するホスホロチオエート含有二量体を生じさせることが可能な配位性制御基を使用して調製可能である。あるいは、二量体が、約50%がR配置を有し、原子の約50%がS配置を有する立体中心リン原子の集団を有するように調整することが可能である。R配置の立体中心リン原子を有する二量体を特定し、例えば酵素的分解および/または通常のクロマトグラフィ法を使用してS配置の立体中心リン構造を有する二量体から分離することが可能である。
カチオン基
また、修飾は、糖、塩基および/またはリン酸バックボーン部分もしくは修飾リン酸バックボーン部分のリン原子への1つまたは複数のカチオン基の結合を含むことも可能である。カチオン基は、天然の塩基、通常でない塩基または普遍的な塩基上で置換可能な任意の原子に結合可能である。好ましい位置は、ハイブリッド形成を妨げない、すなわち塩基対形成に必要な水素結合の相互作用を妨げない位置である。カチオン基は、例えば糖のC2’位、または環状もしくは非環状の糖代用物中の類似の位置を介して結合することが可能である。カチオン基は、例えばO−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテルシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)由来のプロトン化アミノ基、例えばO(CHAMINE(例えばAMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテルシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノなど)のアミノアルコキシ、アミノ(例えばNH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテルシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノまたはアミノ酸)、またはNH(CHCHNH)CHCH−AMINE(例えばAMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテルシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ)を含むことが可能である。
非リン酸結合
また、修飾は鎖の5’末端および3’末端のうち少なくともいずれかに非リン酸結合を組み込むことが可能である。リン酸基を置換することが可能な非リン酸結合の例には、メチルホスホン酸、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、炭酸、カルボキシメチル、カルバミン酸、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホン酸、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾおよびメチレンオキシメチルイミノを含む。好ましい置換体は、メチルホスホン酸基およびヒドロキシルアミノ基を含む。
3’架橋チオリン酸および5’架橋チオリン酸塩;ロックトRNA、2’−5’結合、逆向きの結合、α−ヌクレオシド;結合基;脱塩基結合;ならびに5’ホスホン酸および5’リン酸プロドラッグ
上記の式Xについて言及すると、修飾はリン酸バックボーン部分の架橋または結合リン酸酸素(WおよびZ)のうちの1つの置換体を含むことが可能である。XまたはYのうち1つだけを変更する状況とは違い、ホスホロジチオエートのリン原子の中心はアキラルであり立体中心リン原子を含むiRNA剤の形成を妨げる。
また、修飾は、1番目の糖の2’位と2番目の糖の5’位を経るリン酸基または修飾リン酸基を介して2つの糖を結合することを含むことが可能である。同様に考えられるのは
、1番目の糖と2番目の糖がそれぞれの3’位を通してそれぞれ結合する逆向きの結合である。また、修飾RNAは、C−1’で核酸塩基を欠く「脱塩基性の」糖を含むことも可能である。糖基は、リボースにおける対応する炭素とは反対の立体化学的配置を有する炭素を1つまたは複数含むことも可能である。したがって、修飾iRNA剤は、糖として、例えばアラビノースを含むヌクレオチドを含むことが可能である。上記修飾のもう1つのサブセットでは、天然の塩基、通常でない塩基または普遍的な塩基はα−配置を有することが可能である。また、修飾体は、L−RNAを含むことが可能である。
また、修飾は例えばP(O)(O−X−C’−糖(X=CH2、CF2、CHFなど)の5’−ホスホン酸および例えばP(O)[OCH2CH2SC(O)R]CH’−糖などの5’ホスホン酸プロドラッグを含むことが可能である。後者の場合、プロドラッグ基は、最初にカルボキシエステラーゼで始まる作用を介して分解される可能性がある。分子内S2置換を介した残るエチルチオレート基は、エピスルフィドとして分離され、非誘導体化リン酸基を生じることが可能である。
また、修飾は、本明細書の他の場所に記載した結合基を追加することも含むことが可能であり、結合基は結合可能な任意のアミノ基を介してiRNA剤へ結合されることが好ましい。
ヌクレアーゼ耐性の修飾には、末端のみに配置することが可能な修飾といかなる位置でも配置可能な修飾とがある。通常、ハイブリッド形成を抑制することが可能な修飾は、末端領域でのみ使用することが好ましく、対象の配列または遺伝子を標的とする配列の切断部位または切断領域では使用しないことが好ましい。iRNA剤の2つの配列間で十分なハイブリッド形成が維持されるという条件であれば、センス配列のどの位置においても使用することが可能である。一部の実施形態では、オフターゲットのサイレンシングを最小化することが可能なため、対象の配列または遺伝子を標的としない配列の切断位置または切断領域にNRMを配することが望ましい。
さらに、本明細書に記載のiRNA剤は、iRNA剤の他方の配列と二本鎖構造を形成しない突出部を有することが可能である。これは突出部ではあるが、それ自体と、またはiRNA剤のもう一方の配列以外の別の核酸と、ハイブリッド形成する。
ほとんどの場合、ヌクレアーゼ耐性促進修飾は、その配列が対象の配列を標的にするか(多くの場合、アンチセンス配列と呼ばれる)、対象の配列を標的にしないか(多くの場合、センス配列と呼ばれる)により配置が異なる。配列が対象の配列を標的にするならば、エンドヌクレアーゼによる切断を妨害または阻害する修飾は、RISCの仲介による切断を受ける領域、例えば切断部位または切断領域に挿入すべきではない。(エルバッシャーら[Elbashir et al.]、2001年、Genes and Dev.15:188[参照により本願に援用]に記載されるように、標的の切断は、およそ20もしくは21ntのガイドRNAのほぼ中央またはガイド配列に相補的な最初のヌクレオチドの10もしくは11ヌクレオチド上流で起きる。本明細書では、切断部位とは、標的上または標的とハイブリッド形成するiRNA剤の鎖上の、切断部位の両側のヌクレオチドを指す。切断領域は、切断部位のヌクレオチドとその両方向の1、2または3ヌクレオチドを意味する)。
そのような修飾は、対象の配列を標的とする配列または標的としない配列の末端領域、例えば末端、または末端の2、3、4もしくは5位の位置へ導入することが可能である。
iRNA剤は以下から選択した第1鎖および第2鎖を有することが可能である。
配列を標的とせず、かつ3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1
、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とせず、かつ5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とせず、かつ3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有し、さらに5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とせず、切断部位または切断領域にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とせず、切断部位または切断領域にNRM修飾を有し、かつ、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾と、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾と、あるいは3’末端および5’末端の両方から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾とのうち1つまたは複数を有する第1鎖と、
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖、
配列を標的とし、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)、
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有し、さらに5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖、
配列を標的とし、好ましくは切断部位または切断領域にNRM修飾が存在しない第2鎖、
配列を標的とし、切断部位または切断領域のNRM修飾、ならびに、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、あるいは3’末端および5’末端の両方から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾のうち1つまたは複数が存在しない第2鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)。
また、iRNA剤は2つの配列を標的とすることも可能であり、次から選択される第1鎖および第2鎖を有することが可能である。
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とし、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)、
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有し、さらに5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第1鎖、
配列を標的とし、好ましくは切断部位または切断領域にNRM修飾が存在しない第1鎖、
配列を標的とし、切断部位または切断領域のNRM修飾、ならびに、3’末端から1、
2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、あるいは3’末端および5’末端の両方から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾のうち1つまたは複数が存在しない第1鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)と、
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖、
配列を標的とし、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)、
配列を標的とし、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有し、さらに5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置にNRM修飾を有する第2鎖、
配列を標的とし、好ましくは切断部位または切断領域にNRM修飾が存在しない第2鎖、
配列を標的にし、切断部位または切断領域のNRM修飾、ならびに、3’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、5’末端から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾、あるいは3’末端および5’末端の両方から1、2、3、4、5もしくは6位の位置または1、2、3、4、5もしくは6位以内の位置のNRM修飾のうち1つまたは複数が存在しない第2鎖(5’末端の修飾は、末端よりむしろアンチセンス鎖の5’末端から1、2、3、4、5または6位離れた位置が好ましい)。
リボース模倣体
RNA、例えばiRNA剤は、リボース模倣体、例えば本願明細書に記載するリボース模倣体、ならびにいずれも本願明細書に援用する、2003年3月13日に出願された同時係属で共同所有の米国仮出願第60/454,962号、および国際出願No.PCT/US04/07070中に記載されたリボース模倣体などを取り込むことが可能である。
さらに本発明は、リボース模倣体および本願明細書に記載する他の構成要素を有するiRNA剤を含む。例えば本発明は、本願明細書に記載するiRNA剤、例えばパリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本願明細書に記載する遺伝子、例えば肝臓中で活性がある遺伝子を標的とするiRNA剤、本願明細書に記載する構成様式または構造を有するiRNA剤、本願明細書に記載する両親媒性送達物質と結合したiRNA、本願明細書に記載する薬剤送達モジュールと結合したiRNA、本願明細書に記載するように投与されるiRNA剤、または本願明細書に記載するように製剤化されたiRNA剤であって、リボース模倣体も取り込むiRNA剤を含む。
したがって、本発明の1態様は、効率を増大させ、かつ/あるいはiRNA剤にヌクレアーゼ耐性を与えることが可能である、第2ヒドロキシル基を含むiRNA剤を特徴とする。ヌクレアーゼ、例えば細胞ヌクレアーゼは、核酸のホスホジエステル結合を加水分解し、核酸の部分的または完全な分解をもたらすことが可能である。第2ヒドロキシル基は、この修飾を欠くiRNAと比べて、iRNA剤がヌクレアーゼ分解を受ける傾向を低下させることによって、iRNA剤にヌクレアーゼ耐性を与える。理論によって縛られるこ
とは望まないが、iRNA剤上の第2ヒドロキシル基の存在が3’リボースのヒドロキシル基の構造上の模倣体として働くことによって、iRNA剤が分解を受けにくくなると考えられる。
第2ヒドロキシル基は、2つの他の炭素および水素によって置換された炭素原子と結合している「OH」基を指す。上記のようにヌクレアーゼ耐性を与える第2ヒドロキシル基は、任意の非環式炭素含有基の一部であってもよい。ヒドロキシル基は、任意の環式炭素含有基の一部であってもよく、以下の条件、すなわち(1)ヒドロキシル基と末端リン酸基の間にリボース部分が存在しないこと、または(2)該ヒドロキシル基は塩基と結合した糖部分には存在しないこと、のうち1つまたは複数に見合うことが好ましい。ヒドロキシル基は、iRNA剤の末端リン酸基のリンから、少なくとも2結合(化学結合2個)の位置にある(例えば、少なくとも3結合離れて、少なくとも4結合離れて、少なくとも5結合離れて、少なくとも6結合離れて、少なくとも7結合離れて、少なくとも8結合離れて、少なくとも9結合離れて、少なくとも10結合離れている)。好ましい実施形態では、末端リン酸基のリンと第2ヒドロキシル基の間に5つの介在結合が存在する。
末端リン酸基のリンと第2ヒドロキシル基の間に5つの介在結合を有する、好ましいiRNA剤送達モジュールは、以下の構造を有する(以下の式Yを参照):
Figure 2006522831
式Yに言及すると、AはiRNA剤であり、本明細書に記載する任意のiRNA剤を含む。iRNA剤は、リン酸基の「W」と直接的あるいは間接的に(例えばスペーサーまたはリンカーを介して)結合することが可能である。これらのスペーサーまたはリンカーは、例えば−(CH−、−(CHN−、−(CHO−、−(CHS−、O(CHCHO)CHCHOH(例えば、n=3または6)、脱塩基性の糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、もしくはモルホリノ、またはビオチン試薬およびフルオレセイン試薬を含むことが可能である。
iRNA剤は、非修飾状態(例えば、W、X、Y、およびZがOである)の末端リン酸
基または修飾されている末端リン酸基を有し得る。修飾されているリン酸基では、WおよびZは独立にNH、OまたはSであってよく;XおよびYは独立にS、Se、BH 、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、H、O、O、アルコキシまたはアミノ(アルキルアミノ、アリールアミノなどを含む)であってよい。W、XおよびZがOであり、YがSであることが好ましい。
およびRはそれぞれ独立に、水素;またはC〜C100アルキルであり、C〜C100アルキルは任意選択でヒドロキシル、アミノ、ハロ、リン酸または硫酸基で置換されており、かつ/あるいは任意選択でN、O、S、アルケニルまたはアルキニルが挿入されていてもよい。
は水素;またはC〜C100アルキルであり、C〜C100アルキルは任意選択でヒドロキシル、アミノ、ハロ、リン酸または硫酸基で置換されており、かつ/あるいは任意選択でN、O、S、アルケニルまたはアルキニルが挿入されていてもよく;あるいはnが1であるとき、RがRまたはRと合わさって5〜12原子の環を形成してもよい。
は水素;またはC〜C100アルキルであり、C〜C100アルキルは任意選択でヒドロキシル、アミノ、ハロ、リン酸または硫酸基で置換されており、かつ/あるいは任意選択でN、O、S、アルケニルまたはアルキニルが挿入されていてもよく;あるいはnが1であるとき、RがRまたはRと合わさって5〜12原子の環を形成してもよい。
は水素、またはC〜C100アルキルであり、C〜C100アルキルは任意選択でヒドロキシル、アミノ、ハロ、リン酸または硫酸基で置換されており、かつ/あるいは任意選択でN、O、S、アルケニルまたはアルキニルが挿入されていてもよく;あるいはnが1であるとき、RがRと合わさって5〜12原子の環を形成してもよい。
は水素、またはC〜C100アルキルであり、C〜C100アルキルは任意選択でヒドロキシル、アミノ、ハロ、リン酸または硫酸基で置換されており、かつ/あるいは任意選択でN、O、S、アルケニルまたはアルキニルが挿入されていてもよく、あるいはnが1であるとき、RがRと合わさって6〜10原子の環を形成してもよい。
は水素、C〜C100アルキル、またはC(O)(CHC(O)NHRであり;Tは水素または官能基であり;nおよびqはそれぞれ独立に1〜100であり;RはC〜C10アルキルまたはC〜C10アリールであり;かつRは水素、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリールまたは固形支持体物質である。
好ましい実施形態は、以下のiRNA剤送達モジュールのサブセットの1つまたは複数を含むことが可能である。
RNAi剤送達モジュールの1つのサブセットでは、Aは該RNA剤の末端3’または5’リボース糖の炭素を介して、直接的あるいは間接的に結合することが可能である。
RNAi剤送達モジュールの他のサブセットでは、X、WおよびZがOであり、YがSである。
RNAi剤送達モジュールのさらに他のサブセットでは、nは1であり、RとRが合わさって6原子を含む環を形成し、RとRが合わさって6原子を含む環を形成する。環系はトランス−デカリンであることが好ましい。例えば、このサブセットのRNAi剤送達モジュールは、式(Y−1)の化合物を含むことが可能である:
Figure 2006522831
官能基は例えば、標的化(ターゲティング)基(例えばステロイドまたは糖質)、レポーター基(例えばフルオロフォア)、または標識(同位元素で標識された部分)であってよい。標的化基は、タンパク質結合物質、内皮細胞標的化基(例えばRGDペプチドおよび模倣体)、癌細胞標的化基(例えば葉酸ビタミンB12、ビオチン)、骨細胞標的化基(例えばビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸)、多価マンノース(例えばマクロファージ試験用)、ラクトース、ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、モノクローナル抗体、糖タンパク質、レクチン、メラノトロピン、またはチロトロピンをさらに含むことが可能である。
当業者によって理解され得るように、本明細書中の式の化合物を合成する方法は当業者には明らかであろう。合成した化合物を反応混合物から分離し、カラム・クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、または再結晶化などの方法によってさらに精製することが可能である。さらに、様々な合成工程を他の順序または順番で行って、所望の化合物を与えることも可能である。本明細書に記載した化合物を合成する際に有用な、合成化学変換および保護基に関する方法(保護および脱保護)は当分野で知られており、例えばアール ラロック(R.Larock)、「Comprehensive Organic Transformations」、VCH Publishers(1989);ティー ダブリュー グリーン(T.W.Greene)およびピー エム ジー ワッツ(P.G.M.Wuts)、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley and Sons(1991);エル ファイザー(L.Fieser)およびエム ファイザー(M.Fieser)、「Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis」、John Wiley and Sons(1994);およびエル パクエッテ(L.Paquette)、ed.、「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」、John Wiley and Sons(1995)、ならびにその後続版に記載されたものなどを含む。
リボース置換モノマーサブユニット
iRNA剤の1つまたは複数の特性を最適化することが可能ないくつかの方法で、iRNA剤を修飾することが可能である。RNA物質、例えばiRNA剤はリボース置換モノマーサブユニット(RRMS)、例えば本明細書中に記載されたRRMSならびに本願明細書に援用する2003年8月8日に出願された米国仮出願第60/493,986号;本願明細書に援用する2003年8月11日に出願された米国仮出願第60/494,597号;本願明細書に援用する2003年9月26日に出願された米国仮出願第60/506,341号;本願明細書に援用する2003年11月7日に出願された米国仮出願第60/158,453号;および本願明細書に援用する2004年3月8日に出願された
国際出願No.PCT/US04/07070のうち1つまたは複数中に記載されたRRMSなどを含むことが可能である。
さらに本発明は、RRMSおよび本願明細書に記載する他の構成要素を有するiRNA剤を含む。例えば本発明は、本願明細書に記載のiRNA剤、例えばパリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本願明細書に記載の遺伝子、例えば肝臓中で活性がある遺伝子を標的とするiRNA剤、本願明細書に記載の構成様式または構造を有するiRNA剤、本願明細書に記載の両親媒性送達物質と結合したiRNA、本願明細書に記載の薬剤送達モジュールと結合したiRNA、本願明細書に記載のように投与されるiRNA剤、または本願明細書に記載のように製剤化されるiRNA剤であって、RRMSも取り込むiRNA剤、を含む。
iRNA剤の1つまたは複数のリボヌクレオチド・サブユニットのリボース糖は、他の構成部分、例えば非糖質の(好ましくは環式の)担体で置換することが可能である。サブユニットのリボース糖がこのように置換されているリボヌクレオチド・サブユニットを、本願明細書ではリボース置換修飾サブユニット(RRMS)と呼ぶ。環式担体は炭素環系(すなわち、すべての環原子が炭素原子)であってもよいし、あるいはヘテロ環系(すなわち、1つまたは複数の環原子がヘテロ原子、例えば窒素、酸素、イオウ)であってもよい。環式担体は単環系であってよく、あるいは2つ以上の環、例えば縮合環を含むことも可能である。環式担体は完全に飽和な環系であってよく、あるいはそれは1つまたは複数の二重結合を含むことも可能である。
担体はさらに、(i)少なくとも2つの「バックボーン結合点」および(ii)少なくとも1つの「連結部結合点」を含む。本願明細書で使用する「バックボーン結合点」は、官能基、例えばヒドロキシル基、または一般的に、バックボーン(例えばリボ核酸のリン酸バックボーンまたはイオウを含むなどの修飾リン酸バックボーン)への担体の取り込みに利用可能かつ好適な結合を指す。本願明細書で使用する「連結部結合点」は、環式担体の構成環原子、例えば炭素原子またはヘテロ原子(バックボーン結合点を提供する原子とは異なるもの)であって、選択した構成部分と結合する原子を指す。選択した構成部分は、例えばリガンド(例えば標的化部分または送達成分)、またはiRNA剤の物理的性質(例えば親油性)を変える構成部分であってよい。場合によっては、選択した成分は、介在する連結部によって環式担体と結合する。したがって選択した成分は、官能基(例えばアミノ基)を含むか、または一般的に、他の化学的実体(例えば該構成環に対するリガンド)の取り込みまたは連結に適した結合を与えることになる。
本願明細書に記載する1つまたは複数のRRMSを、RNA剤(例えばiRNA剤)中へ取り込むことによって、特に適切な実体と連結された場合、1つまたは複数の新しい性質を該RNA剤に与え、かつ/あるいは該RNA分子の1つまたは複数の既存の性質を変化させ、高め、あるいは調節することが可能である。例えば、親油性またはヌクレアーゼ耐性のうち1つまたは複数を変化させることが可能である。本願明細書に記載する1つまたは複数のRRMSをiRNA剤中へ取り込むことによって、特にRRMSが適切な実体と連結された場合、標的mRNAに対するiRNA剤の結合親和性を調節する(例えば増大させる)ことが可能であり、iRNA剤の二重らせん形の形状を変化させることが可能であり、分布を変化させることや、iRNA剤を身体の特定部分に向けることが可能であり、あるいは(例えばRISC形成時および鎖の分離時の)核酸結合タンパク質との相互作用を改変することが可能である。
したがって、1態様では、本発明は、好ましくは第1鎖および第2鎖を含むiRNA剤であって、式(R−1)を有する少なくとも1つのサブユニットが前記鎖のうち少なくとも1つの中に取り込まれているiRNA剤を特徴とする。
Figure 2006522831
式(R−1)を参照すると、XはN(CO)R、NRまたはCHであり;YはNR、O、S、CR10であるかまたは存在せず、かつZはCR1112であるかまたは存在しない。
、R、R、R、R、およびR10のそれぞれは独立にH、OR、OR、(CHOR、または(CHORである、ただし、R、R、R、R、R、およびR10の少なくとも1つはORまたはORであり、かつR、R、R、R、R、およびR10の少なくとも1つは(CHOR、または(CHORであり(RRMSが末端に存在するとき、R、R、R、R、R、およびR10の1つはRを含み、かつ1つはRを含み;RRMSが内部に存在するとき、R、R、R、R、R、およびR10のうち2つがそれぞれRを含む);さらに、ORは(CHORとともにのみ存在し、(CHORはORとともにのみ存在することが好ましいものとする。
、R、R11、およびR12のそれぞれは独立にH、任意選択で1〜3個のR13で置換されたC〜Cアルキル、またはC(O)NHRであり;あるいは、RおよびR11が一体となって、任意選択でR14により置換されたC〜Cシクロアルキルをなす。
はNRで置換されたC〜C20アルキルであり;RはC〜Cアルキルであり;R13はヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはハロであり;かつR14はNRである。
Figure 2006522831
であり;かつ
Figure 2006522831
である。
AとCのそれぞれは独立にOまたはSである。
BはOH、O、または
Figure 2006522831
である。
はHまたはC〜Cアルキルであり;RはHまたはリガンドであり;nは1〜4である。
好ましい実施形態では、リボースはピロリン骨格で置換され、かつXはN(CO)RまたはNRであり、YはCR10であり、かつZは存在しない。
他の好ましい実施形態では、リボースはピペリジン骨格で置換され、かつXはN(CO)RまたはNRであり、YはCR10であり、かつZはCR1112である。
他の好ましい実施形態では、リボースはピペラジン骨格で置換され、かつXはN(CO)RまたはNRであり、YはNRであり、かつZはCR1112である。
他の好ましい実施形態では、リボースはモルホリノ骨格で置換され、かつXはN(CO)RまたはNRであり、YはOであり、かつZはCR1112である。
他の好ましい実施形態では、リボースはデカリン骨格で置換され、かつXはCHであり;YはCR10であり;かつZはCR1112であり;かつRおよびR11は一体となってCシクロアルキルをなす。
他の好ましい実施形態では、リボースはデカリン/インダン骨格で置換され、かつXはCHであり;YはCR10であり;かつZはCR1112であり;かつRおよびR11は一体となってCシクロアルキルをなす。
他の好ましい実施形態では、リボースはヒドロキシプロリン骨格で置換される。
本願明細書に記載するRRMSは、本願明細書に記載する任意の二本鎖RNA様分子、例えばiRNA剤に取り込ませることが可能である。iRNA剤は、ハイブリダイズしたセンス鎖とアンチセンス鎖とからなる二本鎖を含むことが可能であり、このときアンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、本願明細書に記載する1つまたは複数のRRMSを含むことが可能である。RRMSは、二本鎖iRNA剤の一方または両方の鎖の中の1つまたは複数の個所に導入することが可能である。RRMSは、センス鎖の3’または5’端またはその近く(1、2、または3位以内)に配置されてもよいし、あるいはアンチセンス鎖の3’端またはその近く(2または3位以内)に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、RRMSはアンチセンス鎖の5’端またはその近く(1、2、または3位以内)にはないことが好ましい。RRMSは内部に存在してもよく、アンチセンスが標的と結合するのに重要ではない領域中に位置することが好ましいであろう。
1実施形態では、iRNA剤は、アンチセンス鎖の3’端(または3’端から1、2、もしくは3位以内)にRRMSを有することが可能である。1実施形態では、iRNA剤は、アンチセンス鎖の3’端(または3’端から1、2、もしくは3位以内)およびセンス鎖の3’端(または3’端から1、2、もしくは3位以内)に、RRMSを有することが可能である。1実施形態では、iRNA剤は、アンチセンス鎖の3’端(または3’端から1、2、または3位以内)にRRMSを、およびセンス鎖の5’端にRRMSを有することが可能であり、この場合両方のリガンドがiRNA剤の同じ端に位置する。
いくつかの実施形態では、2つのリガンドが連結され、好ましくは、それぞれの鎖上のリガンドは疎水性の構成部分である。理論によって縛られることは望まないが、疎水性リガンドが対になることにより、分子間のファン−デル−ワールス相互作用によって、iRNA剤を安定化させることが可能であると考えられる。
1実施形態では、iRNA剤は、アンチセンス鎖の3’端(または3’端から1、2、または3位以内)にRRMSを、かつセンス鎖の5’端にRRMSを有することが可能であり、この場合両方のRRMSが、各RRMSとリガンド上の別々の位置との結合によって、同じリガンド(例えばコール酸)を共有することが可能である。2つの隣接するRRMS間で共有されるリガンドを、本願明細書では「ヘアピン・リガンド」と呼ぶ。
他の実施形態では、iRNA剤は、センス鎖の3’端にRRMSを、かつセンス鎖の内部位置にRRMSを有することが可能である。iRNA剤は、センス鎖の内部位置にRRMSを有することが可能であり;あるいはアンチセンス鎖の内部位置にRRMSを有することが可能であり;あるいはセンス鎖の内部位置にRRMSを、かつアンチセンス鎖の内部位置にRRMSを有することも可能である。
好ましい実施形態では、iRNA剤は第1配列および第2配列を含み、該配列は同じ鎖上に位置する2つの配列ではなく2つの別個の分子であり、例えば生理的条件下、例えばヘリカーゼまたは他の巻き戻し酵素と接触しない生理的条件下でハイブリダイズする(およびそれによって二本鎖領域を形成する)ために互いに十分な相補性を有することが好ましい。
ds iRNA剤が分子の一端または両端に一本鎖領域または非対合領域を含むように、第1配列および第2配列を選択することが好ましい。したがって、ds iRNA剤は、好ましくは突出部を含むように対合した第1配列および第2配列を含み、該突出部は例えば1つまたは2つの5’または3’突出部であり、ただし好ましくは2〜3ヌクレオチドの3’突出部である。大部分の実施形態は3’突出部を有する。好ましいsRNA剤は、それぞれの端に1ヌクレオチド長あるいは好ましくは2または3ヌクレオチド長の一本鎖突出部、好ましくは3’突出部を有する。これらの突出部は、1本の鎖が他方より長い結果でもよいし、あるいは同じ長さの2本の鎖がずれた結果でもよい。5’端はリン酸化されていることが好ましい。
好ましい(ただし限定するものではない)RRMSを含むRNA剤、例えばiRNA剤を、式(R−2)として図4に表す。担体は、2つの「バックボーン結合点」(ヒドロキシル基)、1つの「連結部結合点」、および介在する連結部によって担体と間接的に結合した1つのリガンドを含む。RRMSはRNA分子の5’または3’末端サブユニットであってもよく、すなわち、2つの「W」基の1つはヒドロキシル基であってよく、もう1つの「W」基は、2つ以上の非修飾または修飾リボヌクレオチドの鎖であってよい。あるいはRRMSが内部位置を占めてもよく、2つの「W」基がいずれも1つまたは複数の非修飾または修飾リボヌクレオチドであってよい。2つ以上のRRMSがRNA分子、例えばiRNA剤中に存在してよい。
式(R−2)の修飾RNA分子は、当分野で知られているオリゴヌクレオチド合成法を使用して得ることが可能である。好ましい実施形態では、式(II)の修飾RNA分子は、例えばホスホアミダイト法またはH−ホスホネート結合法を使用して、1つまたは複数の対応するRRMSモノマー化合物(RRMSモノマー、例えば図4中のA、B、およびCを参照)を、伸長中のセンス鎖またはアンチセンス鎖に取り込ませることによって調製することが可能である。
RRMSモノマーは一般に、担体分子(例えば図4中のAを参照)と結合した2つの異なる官能化ヒドロキシル基(図4のOFGおよびOFG)、および連結部結合点を含む。本願明細書で使用する、用語「官能化ヒドロキシル基」は、ヒドロキシル基のプロトンが他の置換基に置換されていることを意味する。代表的構造BおよびCに示すように、担体上の1つのヒドロキシル基(OFG)は、保護基(PG)によって官能化されている。もう1つのヒドロキシル基(OFG)は、(1)Bのように、液相または固相の合成支持試薬(中実円)でリンカーLを介して直接的または間接的に、あるいは(2)Cのように、リンを含有する構成部分(例えばホスホアミダイト)によって、官能化することが可能である。伸長中のセンス鎖またはアンチセンス鎖中にモノマーを取り込ませるとき、連結部結合点を、水素原子、連結部、または連結部に連結されたリガンドと結合することが可能である(スキーム1のRを参照)。連結部に連結されたリガンドは、伸長中の鎖にモノマーを取り込ませるときにモノマーと結合させることが可能であるが、必ずしもそうする必要はない。いくつかの実施形態では、連結部、リガンドまたは連結部に連結されたリガンドを、「前駆体」RRMSモノマーを鎖に取り込ませた後に、「前駆体」RRMSと結合させることが可能である。
例えばティー ダブリュー グリーン(T.W.Greene)およびピー エム ジー ワッツ(P.G.M.Wuts)、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley and Sons(1991)から、(OFG)保護基を所望に応じて選択することが可能である。保護基は、アミダイト合成条件、保存条件、およびオリゴヌクレオチド合成条件下で安定であることが好ましい。ヒドロキシル基、−OHは求核基(すなわちルイス塩基)であり、酸素を介して求電子剤(すなわちルイス酸)と反応する。水素が保護基、例えばトリアリールメチル基またはトリアルキルシリル基に置換されているヒドロキシル基は、置換反応では求電子剤としてほとんど反応性がない。したがって、保護ヒドロキシル基は、例えばオリゴヌクレオチド合成中に構造Cによって例示される化合物のホモ結合を防ぐ際に有用である。好ましい保護基は、ジメトキシトリチル基である。
BのOFGが、可溶性または不溶性の支持試薬と結合したリンカー、例えば長鎖の有機リンカーを含む場合は、ひとたびOFGが脱保護され、求電子基(例えばアミダイト基)を含む他のヌクレオシドまたはモノマーと求核剤として自由に反応できるようになると、溶液相または固相合成技法を使用して、天然および/または修飾リボヌクレオチドの鎖を構築することが可能である。あるいは、天然もしくは修飾リボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド鎖を、OFGのアミダイト基またはH−ホスホネート基を介してモノマーCと結合させることが可能である。この操作の後に、OFGを脱ブロック化することが可能であり、回復した求核性ヒドロキシル基は、求電子基を含む他のヌクレオシドまたはモノマーと反応することが可能である(図1を参照)。R’は置換または非置換アルキルまたはアルケニルであってよい。好ましい実施形態では、R’はメチル、アリルまたは2−シアノエチルである。R”はC〜C10アルキル基であってよく、R”は3個以上の炭素を含む分岐基、例えばイソプロピルであることが好ましい。
BのOFGは、リンカーを用いてヒドロキシルを官能化し、該リンカーが次にリンカ
ーのもう一方の末端に液体または固体相合成支持試薬を含むことも可能である。支持試薬は、本願明細書に記載するモノマーを支持することが可能な任意の支持媒体であってよい。リンカーLを介してモノマーを不溶性支持体と結合させることによって、該支持体が置かれている溶媒中でモノマー(および伸長中の鎖)を可溶化することが可能である。可溶化しているが依然固定されているモノマーは、周囲の溶媒中で試薬と反応することが可能であり;未反応試薬および可溶性副産物は、モノマーまたはモノマー由来の生成物が結合している固形支持体から、容易に洗浄除去することが可能である。あるいは、モノマーを可溶性支持体成分、例えばポリエチレングリコール(PEG)と結合させることも可能であり、液相合成技法を使用して鎖を構築することが可能である。リンカーおよび支持媒体の選択は、当分野の技術内にある。一般にリンカーは、−C(O)(CHC(O)−、または−C(O)(CHS−であってよく、オキサリル、スクシニルまたはチオグリコリルであることが好ましい。標準的な細孔性ガラスの固相合成支持体を、フッ化物に対して不安定な5’シリル保護基とともに使用することは可能ではない。何故なら、ガラスがフッ化物によって分解され、完全長の生成物の量が大幅に減少するからである。フッ化物に対して安定なポリスチレン系支持体、またはPEGが好ましい。
好ましい担体は、以下に与える一般式(R−3)を有する。(該構造中、好ましいバックボーン結合点は、RまたはR;RまたはR;あるいはYがCR10である場合はRおよびR10から選択することが可能である(2つの位置を選択して、2つのバックボーン結合点、例えばRおよびR、あるいはRおよびRとする)。好ましい連結部結合点はR;XがCHであるときはRまたはRを含む。これらの担体は、鎖中に取り込ませることが可能な実体として以下に記載される。したがって、当然ながら、これらの構造は、1つ(末端位置の場合)あるいは2つ(内部位置の場合)の結合点、例えばRまたはR;RまたはR;あるいはRおよびR10(YがCR10であるとき)が、リン酸、または修飾リン酸、例えばイオウ含有バックボーンと結合する状態も含む。例えば、前述のR基の1つは−CH2−であってよく、この場合1つの結合は担体と結合しており、1つの結合はバックボーン原子、例えば結合酸素または中心のリン原子と結合している。)
Figure 2006522831
XはN(CO)R、NRまたはCHであり;YはNR、O、S、CR10であり;かつZはCR1112であるか、あるいは存在しない。
、R、R、R、R、およびR10のそれぞれは独立に、H、OR、または(CHORである、ただし、R、R、R、R、R、およびR10のうち少なくとも2つはORおよび/または(CHORである。
、R、R11、およびR12のそれぞれは独立に、リガンド、H、任意選択で1〜3個のR13で置換されたC〜Cアルキル、またはC(O)NHRであり;あるいは、RおよびR11が一体となって、任意選択でR14により置換されたC〜Cシクロアルキルをなす。
はH、リガンド、またはNRで置換されたC〜C20アルキルであり;RはHまたはC〜Cアルキルであり;R13はヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはハロであり;R14はNRであり;R15は任意選択でシアノにより置換されたC〜Cアルキル、またはC〜Cアルケニルであり;R16はC〜C10アルキルであり;かつR17は液相または固相の支持試薬である。
Lは−C(O)(CHC(O)−、または−C(O)(CHS−であり;RはCArであり;RはP(O)(O)H、P(OR15)N(R16またはL−R17であり;RはHまたはC〜Cアルキルであり;かつRはHまたはリガンドである。
それぞれのArは独立に、任意選択でC〜Cアルコキシによって置換されたC〜C10アリールであり;nは1〜4であり;かつqは0〜4である。
代表的な担体には、例えばXがN(CO)RまたはNRであり、YがCR10であり、かつZが存在しない担体;またはXがN(CO)RまたはNRであり、YがCR10であり、かつZがCR1112である担体;またはXがN(CO)RまたはNRであり、YがNRであり、かつZがCR1112である担体;またはXがN(CO)RまたはNRであり、YがOであり、かつZがCR1112である担体;またはXがCHであり、YがCR10であり、ZがCR1112であり、かつRとR11が一体となってCシクロアルキル(式H、z=2)を形成する担体、またはインダン環系、例えばXがCHであり、YがCR10であり、ZがCR1112であり、かつRとR11が一体となってCシクロアルキル(式H、z=1)を形成する担体がある。
いくつかの実施形態では、担体は、ピロリン環系または3−ヒドロキシプロリン環系、例えばXがN(CO)RまたはNRであり、YがCR10であり、かつZが存在しないものに基づいてよい(式D)。
Figure 2006522831
OFGは5員環中の炭素の1つと結合した第1級炭素、例えば環外アルキレン基、例えばメチレン基と結合することが好ましい(式D中の−CHOFG)。OFGは、5員環中の炭素の1つと直接結合することが好ましい(式D中の−OFG)。ピロリン系担体に関しては、−CHOFGはC−2と結合し、かつOFGはC−3と結合することが可能であり;あるいは−CHOFGはC−3と結合し、かつOFGはC−4と結合することが可能である。いくつかの実施形態では、CHOFGおよびOFGは、前述の炭素の1つとジェミナル位で置換されていてよい。3−ヒドロキシプロリン系担体に関しては、−CHOFGはC−2と結合し、かつOFGはC−4と結合することが可能である。したがって、ピロリン系および3−ヒドロキシプロリン系モノマーは、結合(例えば炭素−炭素結合)を含むことが可能であり、このとき結合の回転はその個々の結合について制限される(例えば環の存在が原因の制限)。したがって、CHOFGおよびOFGは、前述のあらゆる対において互いにシスでもトランスでもよい。したがって、すべてのシス/トランス異性体が明白に含まれる。モノマーは1つまたは複数の不斉中心を含むことが可能であり、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在することも可能である。すべてのこのようなモノマー異性体が明白に含まれる。連結部結合点は窒素であることが好ましい。
いくつかの実施形態では、担体はピペリジン環系(式E)、例えばXがN(CO)RまたはNRであり、YがCR10であり、かつZがCR1112であるものに基づいてよい。
Figure 2006522831
OFGは6員環中の炭素の1つと結合した第1級炭素、例えば環外アルキレン基、例えばメチレン基(n=1)またはエチレン基(n=2)と結合することが好ましい[式E中の−(CHOFG]。OFGは、6員環中の炭素の1つと直接結合することが好ましい(式E中の−OFG)。−(CHOFGおよびOFGは環上でジェミナル位に配置していてもよい、すなわち、2つの基が同じ炭素、例えばC−2、C−3、またはC−4に結合することが可能である。あるいは、−(CHOFGおよびOFGは環上でビシナル位に配置していてよい、すなわち、2つの基は環の隣接する炭素原子と結合することが可能であり、例えば、−(CHOFGはC−2と結合し、かつOFGはC−3と結合することが可能であり;−(CHOFGはC−3と結合し、かつOFGはC−2と結合することが可能であり;−(CHOFGはC−3と結合し、かつOFGはC−4と結合することが可能であり;あるいは−(C
OFGはC−4と結合し、かつOFGはC−3と結合することが可能である。ピペリジン系モノマーは、したがって結合(例えば炭素−炭素結合)を含むことが可能であり、このとき結合の回転はその個々の結合について制限される(例えば環の存在が原因の制限)。したがって、−(CHOFGおよびOFGは、前述のあらゆる対において互いにシスでもトランスでもよい。したがって、すべてのシス/トランス異性体が明白に含まれる。モノマーは1つまたは複数の不斉中心を含むことが可能であり、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在することも可能である。すべてのこのようなモノマー異性体が明白に含まれる。連結部結合点は窒素であることが好ましい。
いくつかの実施形態では、担体は、例えばXがN(CO)RまたはNRであり、YがNRであり、かつZがCR1112であるピペラジン環系(式F)、または例えばXがN(CO)RまたはNRであり、YがOであり、かつZがCR1112であるモルホリン環系(式G)に基づいていてもよい。
Figure 2006522831
OFGは6員環中の炭素の1つと結合した第1級炭素、例えば環外アルキレン基、例えばメチレン基と結合することが好ましい(式Fまたは式G中の−CHOFG)。OFGは、6員環中の炭素の1つと直接結合することが好ましい(式Fまたは式G中の−OFG)。FおよびGに関しては、−CHOFGはC−2と結合し、かつOFGはC−3と結合してもよいし;あるいは逆も然りである。いくつかの実施形態では、CHOFGおよびOFGは、前述の炭素の1つとジェミナル位で置換されていてよい。ピペラジン系およびモルホリン系モノマーは、したがって結合(例えば炭素−炭素結合)を含むことが可能であり、このとき結合の回転はその個々の結合について制限される(例えば環の存在が原因の制限)。したがって、CHOFGおよびOFGは、前述のあらゆる対において互いにシスでもトランスでもよい。したがって、すべてのシス/トランス異性体が明白に含まれる。モノマーは1つまたは複数の不斉中心を含むことが可能であり、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在することも可能である。すべてのこのようなモノマー異性体が明白に含まれる。R’’’は例えばC〜Cアルキル、好ましくはCHであってよい。式Fおよび式Gのいずれにおいても、連結部結合点は窒素であることが好ましい。
いくつかの実施形態では、担体は、例えばXがCHであり、YがCR10であり
、ZがCR1112であり、およびRとR11が一体となってCシクロアルキルを形成するデカリン環系(式H、z=2)、または例えばXがCHであり、YがCR10であり、ZがCR1112であり、およびRとR11が一体となってCシクロアルキルを形成するインダン環系(式H、z=1)に基づいていてもよい。
Figure 2006522831
OFGはC−2、C−3、C−4、またはC−5の1つと結合した第1級炭素、例えば、環外メチレン基(n=1)またはエチレン基(n=2)と結合することが好ましい[式H中の−(CHOFG]。OFGは、C−2、C−3、C−4、またはC−5の1つと直接結合することが好ましい(式H中の−OFG)。−(CHOFGおよびOFGは環上でジェミナル位に配置していてよい、すなわち、2つの基が同じ炭素、例えばC−2、C−3、C−4、またはC−5と結合していてもよい。あるいは、−(CHOFGおよびOFGは環上でビシナル位に配置していてよい、すなわち、2つの基は環の隣接する炭素原子と結合することが可能であり、例えば、−(CHOFGはC−2と結合し、かつOFGはC−3と結合することが可能であり;−(CHOFGはC−3と結合し、かつOFGはC−2と結合することが可能であり;−(CHOFGはC−3と結合し、かつOFGはC−4と結合することが可能であり;あるいは−(CHOFGはC−4と結合し、かつOFGはC−3と結合することが可能であり;−(CHOFGはC−4と結合し、かつOFGはC−5と結合することが可能であり;あるいは−(CHOFGはC−5と結合し、かつOFGはC−4と結合することが可能である。デカリン系またはインダン系モノマーは、したがって結合(例えば炭素−炭素結合)を含むことが可能であり、このとき結合の回転はその個々の結合について制限される(例えば環の存在が原因の制限)。したがって、−(CHOFGおよびOFGは、前述のあらゆる対において互いにシスでもトランスでもよい。したがって、すべてのシス/トランス異性体が明白に含まれる。モノマーは1つまたは複数の不斉中心を含むことが可能であり、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在することも可能である。すべてのこのようなモノマー異性体が明白に含まれる。好ましい実施形態では、C−1およびC−6における置換は、互いにトランスである。連結部結合点はC−6またはC−7であることが好ましい。
他の担体は、3−ヒドロキシプロリンに基づく担体を含み得る(式J)。
Figure 2006522831
したがって、−(CHOFGおよびOFGは、互いにシスでもトランスでもありうる。したがって、すべてのシス/トランス異性体が明白に含まれる。モノマーは1つまたは複数の不斉中心を含み、したがってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在することも可能である。すべてのこのようなモノマー異性体が明白に含まれる。連結部結合点は窒素であることが好ましい。
代表的な担体を図5に示す。
いくつかの実施形態では、ある構成部分、例えばリガンドを、介在する連結部の仲介によって、担体に間接的に結合させることが可能である。連結部は担体と連結部結合点(TAP)において結合し、好ましくは少なくとも1つの窒素原子を有する任意のC〜C100炭素含有構成部分(例えばC〜C75、C〜C50、C〜C20、C〜C10、C〜C)を含むことが可能である。好ましい実施形態では、該窒素原子は連結部上の末端アミノ基の一部を形成し、リガンドとの結合点として働くことが可能である。好ましい連結部(下線部)としては、TAP−(CH NH ;TAP−C(O)(CH NH ;またはTAP−NR’’’’(CH NH が挙げられるが、ここでnは1〜6であり、R’’’’はC〜Cアルキルであり、Rは水素またはリガンドである。他の実施形態では、窒素が末端オキシアミノ基、例えば−ONH、またはヒドラジノ基、−NHNHの一部を形成することが可能である。連結部は任意選択で例えばヒドロキシ、アルコキシ、ペルハロアルキルで置換されてもよいし、かつ/あるいは任意選択で1つまたは複数の追加のヘテロ原子、例えばN、O、またはSが挿入されてもよい。好ましい連結部に連結されたリガンドには、例えば
TAP−(CH NH(リガンド)
TAP−C(O)(CH NH(リガンド)、またはTAP−NR’’’’(CH NH(リガンド)
TAP−(CH ONH(リガンド)、TAP−C(O)(CH ONH(リガンド)、または
TAP−NR’’’’(CH ONH(リガンド);TAP−(CH NHNH (リガンド)
TAP−C(O)(CH NHNH (リガンド)、またはTAP−NR’’’’(CH NHNH (リガンド)
が挙げられる。
他の実施形態では、連結部は、好ましくは該連結部の末端位置に、求電子基を含むことが可能である。好ましい求電子基には、例えばアルデヒド、ハロゲン化アルキル、メシレ
ート、トシレート、ノシレート、またはブロシレート、あるいは活性化カルボン酸エステル、例えばNHSエステル、またはペンタフルオロフェニルエステルがある。好ましい連結部(下線部)には、TAP−(CH CHO;TAP−C(O)(CH CHO;またはTAP−NR’’’’(CH CHO(nは1〜6であり、R’’’’はC〜Cアルキルである);
あるいはTAP−(CH C(O)ONHS;TAP−C(O)(CH C(O)ONHS;またはTAP−NR’’’’(CH C(O)ONHS(nは1〜6であり、R’’’’はC〜Cアルキルである);
TAP−(CH C(O)OC ;TAP−C(O)(CH C(O)OC ;またはTAP−NR’’’’(CH C(O)OC (nは1〜6であり、R’’’’はC〜Cアルキルである);
あるいは−(CH CH LG;TAP−C(O)(CH CH LG;またはTAP−NR’’’’(CH CH LG(nは1〜6であり、R’’’’はC〜Cアルキルである)(LGは脱離基、例えばハロゲン化物、メシレート、トシレート、ノシレート、ブロシレートであってよい)が挙げられる。リガンドの求核基、例えばチオールまたはアミノ基と、連結部上の求電子基とのカップリングによって、連結を行うことが可能である。
連結されるもの
広く様々なもの(実体)を、iRNA剤に、例えばRRMSの担体に連結させることが可能である。以下にRRMSと関連付けて実施例を記載するが、該RRMSは単に好ましいものであるにすぎず、実体は他の地点においてiRNA剤に結合させることも可能である。好ましい実体は、肝臓を標的とする実体である。
好ましい構成部分はリガンドであり、リガンドはRRMSの担体と、好ましくは共有結合により、直接的あるいは介在する連結部を介して間接的に結合される。好ましい実施形態では、リガンドは介在する連結部を介して担体に結合される。前に論じたように、リガンドまたは連結部に連結されたリガンドは、RRMSモノマーが伸長する鎖に取り込まれるときにRRMSモノマー上に存在していてもよい。いくつかの実施形態では、「前駆体」RRMSモノマーを伸長する鎖に取り込ませた後に、「前駆体」RRMSにリガンドを取り込ませることが可能である。例を挙げれば、例えばアミノ末端を有する連結部を備えた(すなわちリガンドが結合していない)RRMSモノマー、例えばTAP−(CHNHを、伸長するセンスまたはアンチセンス鎖に取り込ませることが可能である。後の操作において、すなわち前駆体モノマーを鎖に取り込ませた後、続いて、求電子基(例えばペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基)を有するリガンドを、リガンドの求電子基と前駆体RRMSの連結部の末端求核基とのカップリングによって、前駆体RRMSと結合させることが可能である。
好ましい実施形態では、リガンドは、同リガンドが取り込まれたiRNA剤の分布、標的指向性または寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが存在しない分子種と比較して、選択された標的、例えば分子、細胞または細胞種、コンパートメント、例えば細胞または臓器のコンパートメント、組織、臓器または身体の領域に関する高い親和性をもたらす。好ましいリガンドは、二本鎖の核酸における二本鎖の対合には関与しないであろう。
好ましいリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性を向上させることが可能であり、生成する天然または修飾オリゴリボヌクレオチド、または本願明細書に記載するモノマーおよび/または天然もしくは修飾リボヌクレオチドの任意の組合せを含んでなるポリマー分子の、ヌクレアーゼ耐性を向上させることも可能である。
一般的なリガンドとしては、例えば取り込みを増大させるための治療用調節物質;例えば分布を調べるための診断用化合物またはレポーター基;架橋剤;およびヌクレアーゼ耐性を与える構成部分が挙げられる。一般例には、脂質、ステロイド、ビタミン、糖、タンパク質、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣体がある。
リガンドには、天然に存在する物質、例えばタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、またはグロブリン);糖質(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸);または脂質などが挙げられる。リガンドは、合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸などの、組換え分子または合成分子であってもよい。ポリアミノ酸の例には、ポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−アクリル酸エチル)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンがある。ポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、プソイドペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはαらせん状ペプチドがある。
リガンドは、標的化基、例えば細胞または組織を標的とする物質、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば肝細胞などの特定の細胞種と結合する抗体も含み得る。標的化基は、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン、糖質、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、あるいはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であってよい。
リガンドの他の例には、染料、インターカレート剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メンソール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)、およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えばPEG−40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射標識マーカー、酵素、ハプテン(例えばビオチン)、輸送/吸収促進物質(例えばアスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPがある。
リガンドはタンパク質(例えば糖タンパク質)またはペプチド、例えば共通のリガンドに関する特異的親和性を有する分子、または抗体(例えば癌細胞、内皮細胞、または骨細
胞などの特定の細胞種と結合する抗体)であってよい。リガンドは、ホルモンおよびホルモン受容体も含み得る。リガンドは、脂質、レクチン、糖質、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの、非ペプチドの分子種も含み得る。リガンドは、例えばリポ多糖、p38MAPキナーゼの活性化剤、またはNF−κBの活性化剤であってよい。
リガンドは、例えば細胞の細胞骨格を破壊することによって、例えば細胞の微小管、マイクロフィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することによって、細胞内へのiRNA剤の取り込みを増大させることが可能な物質、例えば薬物であってよい。薬物は例えば、タキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノライド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホライドA、インダノシン(indanocine)、またはミオセルビン(myoservin)であってよい。
リガンドは、例えば炎症応答を活性化させることによって、細胞内へのiRNA剤の取り込みを増大させることが可能である。このような効果を有すると思われる例示的なリガンドには、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−1β、またはγインターフェロンがある。
1態様では、リガンドは脂質または脂質系分子である。このような脂質または脂質系分子は、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、身体の標的組織、例えば非肝臓標的組織に、本発明の複合体を分布させることが可能である。好ましくは、標的組織は、肝臓の実質細胞を含めた肝臓である。HSAと結合することが可能である他の分子も、リガンドとして使用することが可能である。例えば、ネプロキシンまたはアスピリンを使用することが可能である。脂質または脂質系リガンドは、(a)複合体の分解に対する耐性を増大させること、(b)標的細胞または細胞膜への標的指向性または輸送を増大させることが可能であり、かつ/あるいは(c)血清タンパク質、例えばHSAとの結合を調節するために使用することが可能である。
脂質系リガンドを使用して、本発明の複合体と標的組織の結合を調節する、例えば制御することが可能である。例えば、HSAとさらに強く結合する脂質または脂質系リガンドは、肝臓に対する標的指向性が低くなると思われ、したがって身体から除去されにくくなると思われる。
好ましい実施形態では、脂質系リガンドはHSAと結合する。リガンドは、本発明の複合体が好ましくは非腎臓組織に分布するような十分な親和性で、HSAと結合することが好ましい。しかしながら、その親和性は、HSAとリガンドとの結合が不可逆的であるほど強くはないことが好ましい。
他の態様では、リガンドは、標的細胞、例えば増殖細胞によって取り込まれる構成部分、例えばビタミンである。これらのリガンドは、望ましくない細胞増殖、例えば悪性または非悪性型の細胞増殖、例えば癌細胞の増殖によって特徴付けられる疾患を治療するのに非常に有用である。例示的なビタミンには、ビタミンA、E、およびKがある。他の例示的なビタミンには、Bビタミン、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、あるいは癌細胞によって取り込まれるその他のビタミンまたは栄養素がある。HSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も含まれる。
他の態様では、リガンドは、細胞透過性物質、好ましくはらせん状の細胞透過性物質で
ある。該物質は両親媒性であることが好ましい。例示的な物質は、tatまたはアンテナペディアなどのペプチドである。該物質がペプチドである場合、ペプチジル模倣体、インバートマー、非ペプチド結合または偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸の使用を含めて、該ペプチドを改変することが可能である。らせん状物質は、親油性および撥油性の相を好ましくは有する、αらせん状物質であることが好ましい。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であってよい。ペプチド模倣体(本願明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ぶ)は、天然のペプチドと類似した一定の3次元構造にフォールディング可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣体と、iRNA剤が結合することによって、細胞の認識および吸収を高めることなどにより、iRNAの薬物動態学的分布に影響を与えることが可能である。ペプチドまたはペプチド模倣体の構成部分は、約5〜50アミノ酸長、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であってよい(例えば表2を参照)。
Figure 2006522831
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ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、TrpまたはPheから構成される)であってよい。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、制約型(constrained)ペプチドまたは架橋ペプチドであってよい。ペプチド部分は、L−ペプチドでもD−ペプチドでもよい。他の代替例では、ペプチド部分は、疎水性の膜移行配列(MTS)を含むことが可能である。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号6715)を有するRFGFである。疎水性MTSを含むRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号6716))も、標的化部分であり得る。ペプチド部分は、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質を含めた大きな極性分子を、細胞膜を横切って運ぶことができる「送達」ペプチドであってよい。例えば、HIV Tatタンパク質由来の配列(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号6717))、およびショウジョウバエのアンテナペディア・タンパク質由来の配列(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号6718))は、送達ペプチドとして機能しうることが見出されている。ペプチドまたはペプチ
ド模倣体は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアル・ライブラリーから同定されたペプチドなど、DNAのランダムな配列によってコードされてもよい(ラムら(Lam et al.)、Nature、354:82〜84、1991)。取り込まれたモノマーユニットを介してiRNA剤と連結したペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、またはRGD模倣体などの、細胞標的化ペプチドであることが好ましい。ペプチド部分の長さは、約5アミノ酸〜約40アミノ酸の範囲であってよい。ペプチド部分は、安定性を増大させるため、あるいは立体構造上の特性を得るためなどの、構造的改変を有し得る。以下に記載する任意の構造的改変を、使用することが可能である。
RGDペプチド部分を使用して、内皮腫瘍細胞または乳癌腫瘍細胞などの、腫瘍細胞を標的とすることが可能である(ジッツマンら(Zitzmann et al.)、Cancer Res.、62:5139〜43、2002)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓を含めた様々な他の組織の腫瘍を標的としたiRNA剤の指向性を促進し得る(アオキら(Aoki et al.)、Cancer Gene Therapy 8:783〜787、2001)。RGDペプチドは直鎖状でも環状でもよく、これらを修飾、例えばグリコシル化またはメチル化して、特定の組織を標的とした指向性を促進することが可能である。例えば、グリコシル化RGDペプチドは、αβを発現する腫瘍細胞にiRNA剤を送達することが可能である(ハウブナーら(Haubner et al.)、Jour.Nucl.Med.、42:326〜336、2001)。
増殖している細胞中に豊富なマーカーを標的とするペプチドを、使用することが可能である。例えば、RGDを含有するペプチドおよびペプチド模倣体は、がん細胞、特にαβインテグリンを提示する細胞を標的とすることが可能である。したがって、RGDペプチド、RGDを含む環状ペプチド、D−アミノ酸を含むRGDペプチド、および合成RGD模倣体を使用することが可能であると思われる。RGD以外に、αβインテグリン・リガンドを標的とする他の構成部分を使用することが可能である。一般に、このようなリガンドを使用して、増殖している細胞および血管新生を制御することが可能である。この型の好ましい複合体には、PECAM−1、VEGF、または他のがん遺伝子、例えば本願明細書で記載するがん遺伝子を標的とするiRNA剤がある。
「細胞透過性ペプチド」は、細胞、例えば細菌または真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳動物細胞を透過することが可能である。微生物細胞透過性ペプチドは、例えばα−らせん状直鎖ペプチド(例えばLL−37またはセロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α−ディフェンシン、β−ディフェンシンまたはバクテネシン)、またはわずか1種または2種のアミノ酸を主に含むペプチド(例えばPR−39またはインドリシディン)であってよい。細胞透過性ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)をも含み得る。例えば、細胞透過性ペプチドは、HIV−1 gp41の融合ペプチドドメインとSV40大型T抗原のNLSとに由来するMPGなどの、2部分の両親媒性ペプチドであってよい(シメオニら(Simeoni et al.)、Nucl.Acids Res.31:2717〜2724、2003)。
1実施形態では、RRMSに連結される標的化ペプチドは、両親媒性のαらせん状ペプチドであってよい。例示的な両親媒性のαらせん状ペプチドには、セクロピン、ライコトキシン、パラダキシン、ブフォリン、CPF、ボンビニン様ペプチド(BLP)、カテリシディン、セラトトキシン、S.clavaペプチド、メクラウナギ腸管の抗菌性ペプチド(HFIAP)、マガイニン、ブレビニン−2、ダーマセプチン、メリチン、プレウロシディン、HAペプチド、アフリカツメガエルのペプチド、エスカレンチン−1、およびカエリンがあるが、これらだけには限られない。らせんの安定性を完全に保つために、いくつかの要因を考慮することが好ましいであろう。例えば、らせん安定化残基を最大数
使用し(例えばleu、ala、またはlys)、らせん不安定化残基を最小数とする(例えばプロリン、または環状モノマーユニット)。キャップ構造の残基も考えられる(例えば、GlyはNキャップ構造残基の例であり、かつ/あるいはC末端アミド化を使用して、らせんを安定化させるための特別なH結合を与えることが可能である)。i±3、あるいはi±4位離れた、正反対の電荷を有する残基間の塩架橋の形成によって、安定性をもたらす可能性がある。例えば、リシン、アルギニン、ホモ−アルギニン、オルニチンまたはヒスチジンなどのカチオン性残基は、アニオン性の残基、グルタミン酸またはアスパラギン酸と、塩架橋を形成することが可能である。
ペプチドおよびペプチド模倣体のリガンドには、天然または修飾ペプチド、例えばDまたはLペプチド;α、β、またはγペプチド;N−メチルペプチド;アザペプチド;1つまたは複数のアミドを有するペプチド、すなわち1つまたは複数の尿素、チオ尿素、カルバメート、またはスルホニル尿素結合で置換されたペプチド結合;または環状ペプチドを有するリガンドがある。
iRNA剤を作製するための方法
iRNA剤は、修飾塩基または非天然塩基、例えば本願明細書に援用する、2003年4月17日に出願された同時係属かつ共同所有の米国仮出願第60/463,772号明細書に、および/または本願明細書に援用する、2003年4月25日に出願された同時係属かつ共同所有の米国仮出願第60/465,802号明細書に記載された塩基を含むことが可能である。このような塩基を含むモノマーおよびiRNA剤は、2003年4月17日に出願された米国仮出願第60/463,772号明細書、および/または2003年4月25日に出願された米国仮出願第60/465,802号明細書に見られる方法によって作製することが可能である。
さらに本発明は、修飾または非天然塩基および本願明細書に記載する他の要素を有するiRNA剤を含む。例えば本発明は、本願明細書に記載するiRNA剤、例えばパリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本願明細書に記載する遺伝子、例えば肝臓中で活性がある遺伝子を標的とするiRNA剤、本願明細書に記載する構成様式または構造を有するiRNA剤、本願明細書に記載する両親媒性送達物質と結合したiRNA、本願明細書に記載する薬剤送達モジュールと結合したiRNA、本願明細書に記載するように投与されるiRNA剤、または本願明細書に記載するように製剤化されるiRNA剤であって、修飾または非天然塩基も取り込むiRNA剤を含む。
オリゴヌクレオチドペプチド複合体の合成および精製は、確立されている方法によって実施することが可能である。例えば、テゥルーフェルトら(Trufert et al.)、Tetrahedron、52:3005、1996;およびManoharan、「Oligonucleotide Conjugates in Antisense Technology」、Antisense Drug Technology、ed中、エス ティー クルーク、マルセル デッカー、インコーポレイテッド社(S.T.Crooke、Marcel Dekker,Inc.)、2001を参照のこと。
本発明の1実施形態では、ペプチド模倣体を修飾して、明確で特異的な好ましい立体構造をとる制約型ペプチドを作製することが可能であり、該立体構造によってペプチドの効力および選択性を増大させることが可能である。例えば、制約型ペプチドはアザペプチドであってよい(Gante、Synthesis、405〜413、1989)。アミノ酸側鎖の構造を変えずに、アミノ酸のα−炭素を窒素原子で置換することによって、アザペプチドが合成される。例えば、ヒドラジンを「カルボニル・ドナー」、例えばクロロギ酸フェニルと反応させることなどによって、伝統的なペプチド合成カップリング法においてヒドラジンを使用することによって、アザペプチドを合成することが可能である。
本発明の1実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣体(例えば、RRMSに連結されるペプチドまたはペプチド模倣体)は、N−メチルペプチドであってよい。N−メチルペプチドはN−メチル・アミノ酸から構成されるが、N−メチル・アミノ酸はペプチドのバックボーン中に追加のメチル基を与えることによってタンパク質分解酵素による切断に対する他の耐性手段を与える可能性がある。N−メチルペプチドは、当分野で知られている方法によって合成することが可能である(例えば、リンドグレンら(Lindgren
et al.)、Trends Pharmacol.Sci.21:99、2000;Cell Penetrating Peptides:Processes and
Applications、Langel、ed.、CRC Press、Boca Raton、FL、2002;フィッシェら(Fische et al.)、Bioconjugate.Chem.12:825、2001;ワンダーら(Wander et al.)、J.Am.Chem.Soc.、124:13382、2002を参照)。例えば、AntペプチドまたはTatペプチドが、N−メチルペプチドであってもよい。
本発明の1実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣体(例えば、RRMSに連結されるペプチドまたはペプチド模倣体)は、β−ペプチドであってよい。β−ペプチドは、溶液中でらせん、プリーツ・シート、ターンおよびヘアピンなどの安定した2次構造を形成する。β−ペプチドの環状誘導体は、固体状態で折りたたまれてナノチューブになりうる。β−ペプチドは、タンパク質分解酵素による分解に対して耐性がある。β−ペプチドは、当分野で知られている方法によって合成することが可能である。例えば、AntペプチドまたはTatペプチドは、β−ペプチドであってもよい。
本発明の1実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣体(例えば、RRMSに連結されるペプチドまたはペプチド模倣体)は、オリゴカルバメートであってよい。オリゴカルバメートペプチドは、カルバメートトランスポーターによって促進される輸送経路により細胞内に内在化する。例えば、AntペプチドまたはTatペプチドが、オリゴカルバメートであってもよい。
本発明の1実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣体(例えば、RRMSに連結されるペプチドまたはペプチド模倣体)は、ペプチド模倣体のアミド結合が尿素部分で置換されているオリゴ尿素複合体(またはオリゴチオ尿素複合体)であってよい。アミド結合の置換によって、タンパク質分解酵素、例えば胃腸間内でのタンパク質分解酵素による分解に対する高い耐性が与えられる。1実施形態では、オリゴ尿素複合体を、経口送達において使用するためにiRNA剤と連結させる。オリゴ尿素ペプチド模倣体のそれぞれの繰り返しユニット中のバックボーンは、天然アミノ酸と比較して1炭素原子だけ広がる可能性がある。1炭素原子の広がりによって、例えばペプチドの安定性および親油性が増大する可能性がある。したがってオリゴ尿素ペプチドは、iRNA剤が細菌細胞壁の通過を目的とするとき、あるいは神経障害の治療などのためにiRNA剤が血液−脳関門を横断しなければならないときに、有利である可能性がある。1実施形態では、受容体との高い親和性を生み出すために、水素結合ユニットをオリゴ尿素ペプチドに結合させる。例えば、AntペプチドまたはTatペプチドが、オリゴ尿素複合体(またはオリゴチオ尿素複合体)であってもよい。
本発明のsiRNAペプチド複合体は、iRNA剤上の様々な位置に存在するRRMSと関連付ける、例えば連結させることが可能である。例えばペプチドを、センス鎖上またはアンチセンス鎖上のいずれかにおいて末端に結合させてもよいし、ペプチドをビス結合(1つのペプチドが各端で連結され、一端がセンス鎖に結合し、一端がアンチセンス鎖に結合する)。他の選択肢では、ペプチドは、短いヘアピン構造のiRNA剤のループ中な
ど、内部に結合し得る。さらに他の選択肢では、ペプチドはペプチド−担体複合体などの複合体と関連付けられてもよい。
ペプチド−担体複合体は、(生体系および/または細胞に送達するためなどの)1つまたは複数のiRNA剤を内包しうる少なくとも1つの担体分子と、担体複合体を特定の組織または細胞種に対して指向させるためなどの、前記担体分子の外側に連結されたペプチド部分とから構成される。担体複合体は、該複合体の外側に追加の標的化分子、または細胞への送達を助ける細胞融合剤を担持することも可能である。担体内に被包される1つまたは複数のiRNA剤を、担体の内部への物質の送達を助けることが可能な親油性分子と結合させてもよい。
担体分子または担体構造物は、例えばミセル、リポソーム(例えばカチオン性リポソーム)、ナノ粒子、ミクロスフェア、または生分解性ポリマーであってよい。ペプチド部分は、ジスルフィド結合、酸不安定結合、ペプチド系結合、オキシアミノ結合またはヒドラジン結合などの様々な結合によって、担体分子と連結することが可能である。例えば、ペプチド系結合はGFLGペプチドであってよい。いくつかの結合は個々の利点を有し、その利点(または欠点)を、標的組織または目的とする用途に応じて考慮することが可能である。例えば、ペプチド系結合は血流中では安定性があるが、リソソーム中では酵素による切断を受けやすい。
標的化
本発明のiRNA剤は、肝臓を標的とする場合に特に有用である。iRNA剤は、肝臓を標的とするリガンドを含むRRMSを組み込むことによって、肝臓指向性とすることが可能である。例えば、肝臓標的化剤は親油性部分である。好ましい親油性部分には、脂質、コレステロール、オレイル、レチニル、またはコレステリル残基が含まれる。肝臓標的化剤として機能することが可能である他の親油性部分には、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンが含まれる。
iRNA剤はまた、低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、ラクトシル化LDL)にiRNA剤を結合させることによって、肝臓指向性とすることが可能である。糖残基と複合させたポリマー担体もまた、iRNA剤が肝臓指向性となるように機能することが可能である。
糖、例えばガラクトースおよび/またはその類似体を取り込む標的化剤は、特に有用である。これらの標的化剤は、特に、肝臓の実質細胞を標的とする。例えば標的化部分は、互いに約15オングストローム隔てられた、2つ以上の、好ましくは2つまたは3つのガラクトース部分を含んでいてもよい。あるいは標的化部分は、ガラクトースと結合したグルコースである、ラクトース(例えば3つのラクトース部分)であってよい。標的化部分は、N−アセチル−ガラクトサミン、N−Ac−グルコサミンであってもよい。マンノースまたはマンノース−6−リン酸の標的化部分は、マクロファージを標的とするために使用することが可能である。
iRNA剤とヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン(SA)との結合を使用して、iRNA剤を、肝臓などの非腎臓組織に向けることも可能である。
本願明細書に記載するRRMS標的化部分によって肝臓を標的とするiRNA剤は、肝臓中で発現される遺伝子を標的とすることが可能である。
本明細書に記載されるRRMS標的化部分によって肝臓を標的とするiRNA剤は、肝臓において発現される遺伝子を標的とすることが可能である。例えば、iRNA剤は、例えば肝臓のがんを治療するために、p21(WAF1/DIP1)、P27(KIP1)、α−フェトプロテイン遺伝子、β−カテニン、またはc−METを標的とすることが可能である。別の実施形態において、iRNA剤は、例えば、HDL/LDLコレステロールの不均衡;異常脂質血症、例えば、家族性複合型高脂血症(FCHL)、もしくは後天性高脂血症;高コレステロール血症;スタチン抵抗性高コレステロール血症;冠状動脈疾患(CAD);冠動脈性心疾患(CHD)またはアテローム性動脈硬化症の治療のために、apoB−100を標的とすることが可能である。別の実施形態において、iRNA剤は、例えば糖尿病の治療のために、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)における肝臓のグルコース生産の阻害を目的として、横紋筋肉腫のフォークヘッドホモログ(FKHR);グルカゴン;グルカゴン受容体;グリコーゲンホスホリラーゼ;PPAR−γコアクチベータ(PGC−1);フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ;グルコース−6−ホスファターゼ;グルコース−6−リン酸トランスロケーター;グルコキナーゼ阻害性調節タンパク質;およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)を標的とすることが可能である。別の実施形態において、肝臓を標的とするiRNA剤は、例えば、血塊を形成する傾向を低減するために、第V因子、例えば、ライデン第V因子対立遺伝子を標的とすることが可能である。肝臓を標的とするiRNA剤は、肝炎ウイルス(例えば、A型、B型、C型、D型、E型、F型、G型、またはH型肝炎ウイルス)を標的とする配列を含むことが可能である。例えば、本発明のiRNA剤は、HCV:NS3、4A、4B、5A、または5Bの非構造タンパク質のうちいずれか1つを標的とすることが可能である。B型肝炎の治療のために、iRNA剤は、例えば、Xタンパク質(HBx)遺伝子を標的とすることが可能である。
RRMS上の好ましいリガンドには、葉酸、グルコース、コレステロール、コール酸、ビタミンE、ビタミンK、またはビタミンAが挙げられる。
定義
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の任意の基を指す。
用語「アルキル」は、示した数の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。例えば、C〜C12アルキルとは、該基が1個〜12個の炭素原子をその中に有することが可能であることを示す。用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数の水素原子がハロによって置換されているアルキルを指し、すべての水素がハロによって置換されているアルキル部分(例えばペルフルオロアルキル)を含む。アルキルおよびハロアルキル基は、任意選択でO、N、またはSが挿入されていてもよい。用語「アラルキル」は、アルキル水素原子がアリール基によって置換されているアルキル部分を指す。アラルキルは、2つ以上の水素原子がアリール基によって置換されている基を含む。「アラルキル」の例には、ベンジル、9−フルオレニル、ベンズヒドリル、およびトリチル基がある。
用語「アルケニル」は、2〜8個の炭素原子を含み1つまたは複数の二重結合を有することを特徴とする、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。典型的なアルケニルの例には、アリル、プロペニル、2−ブテニル、3−ヘキセニルおよび3−オクテニル基があるが、これらだけには限られない。用語「アルキニル」は、2〜8個の炭素原子を含み1つまたは複数の三重結合を有することを特徴とする、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。典型的なアルキニルのいくつかの例は、エチニル、2−プロピニル、および3−メチルブチニル、およびプロパルギルである。spおよびsp炭素が、任意選択で、それぞれアルケニル基およびアルキニル基の結合点として作用してもよい。
用語「アルコキシ」は、−O−アルキル基を指す。用語「アミノアルキル」は、アミノ
で置換されたアルキルを指す。用語「メルカプト」は、−SH基を指す。用語「チオアルコキシ」は、−S−アルキル基を指す。
用語「アルキレン」は、2価アルキル(すなわち−R−)、例えば−CH−、−CHCH−、および−CHCHCH−を指す。用語「アルキレンジオキソ」は、構造−O−R−O−(Rはアルキレンを表す)の2価の分子種を指す。
用語「アリール」は、置換可能な任意の環原子を置換基によって置換することが可能な、芳香族単環、2環、または3環炭化水素環系を指す。アリール部分の例には、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルがあるが、これらだけには限られない。
本願明細書で使用する用語「シクロアルキル」は、置換可能な任意の環原子を置換基によって置換することが可能な、3〜12個の炭素を有する飽和環状、2環、3環、または多環炭化水素基を含む。本願明細書に記載するシクロアルキル基は、縮合環も含み得る。縮合環は、共通の炭素−炭素結合を共有する環である。シクロアルキル部分の例には、シクロヘキシル、アダマンチル、およびノルボルニルがあるが、これらだけには限られない。
用語「ヘテロシクリル」は、非芳香族3〜10員の単環、8〜12員の2環、または11〜14員の3環の環系であって、単環の場合1〜3個のヘテロ原子、2環の場合1〜6個のヘテロ原子、または3環の場合1〜9個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子がO、N、またはSから選択されることを特徴とする環系(例えば炭素原子と、単環、2環、または3環である場合、N、OまたはSのヘテロ原子それぞれ1〜3個、1〜6個、または1〜9個)であり、置換可能な任意の環原子を置換基によって置換することが可能な環系を指す。本願明細書に記載するヘテロシクリル基は、縮合環も含み得る。縮合環は、共通の炭素−炭素結合を共有する環である。ヘテロシクリルの例には、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピロリニルおよびピロリジニルがあるが、これらだけには限られない。
用語「ヘテロアリール」は、芳香族5〜8員の単環、8〜12員の2環、または11〜14員の3環の環系であって、単環の場合1〜3個のヘテロ原子、2環の場合1〜6個のヘテロ原子、または3環の場合1〜9個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子がO、N、またはSから選択されることを特徴とする環系(例えば炭素原子と、単環、2環、または3環である場合、N、OまたはSのヘテロ原子それぞれ1〜3個、1〜6個、または1〜9個)であり、置換可能な任意の環原子を置換基によって置換することが可能な環系を指す。
用語「オキソ」は、炭素と結合している場合はカルボニルを形成し、窒素と結合している場合はN−オキシドを形成し、イオウと結合している場合はスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子を指す。
用語「アシル」は、いずれも置換基によってさらに置換することが可能な、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、またはヘテロアリールカルボニル置換基を指す。
用語「置換基」は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルケニル、アリール、またはヘテロアリール基上で該基の任意の原子について「置換された」基を指す。適切な置換基には、制限を設けるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、SOH、硫酸、リン酸、ペルフルオロアルキル、ペルフル
オロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、カルボキシル、オキソ、チオオキソ、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)アルキル(nは0〜2)、S(O)アリール(nは0〜2)、S(O)ヘテロアリール(nは0〜2)、S(O)ヘテロシクリル(nは0〜2)、アミン(モノ−、ジ−、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、エステル(アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル)、アミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、スルホンアミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換ヘテロシクリル、および非置換シクロアルキルがある。1態様では、基上の置換基は独立に、前述の置換基のいずれか1つ、またはいずれかのサブセットである。
用語「アデニニル、シトシニル、グアニニル、チミニル、およびウラシリル」などは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルの基を指す。
本願明細書で使用する「通常でない」核酸塩基は、以下のいずれか1つを含むことが可能である:
2−メチルアデニニル、
N6−メチルアデニニル、
2−メチルチオ−N6−メチルアデニニル、
N6−イソペンテニルアデニニル、
2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニニル、
N6−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)アデニニル、
2−メチルチオ−N6−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)アデニニル、
N6−グリシニルカルバモイルアデニニル、
N6−トレオニルカルバモイルアデニニル、
2−メチルチオ−N6−トレオニルカルバモイルアデニニル、
N6−メチル−N6−トレオニルカルバモイルアデニニル、
N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデニニル、
2−メチルチオ−N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデニニル、
N6,N6−ジメチルアデニニル、
3−メチルシトシニル、
5−メチルシトシニル、
2−チオシトシニル、
5−ホルミルシトシニル、
Figure 2006522831
N4−メチルシトシニル、
5−ヒドロキシメチルシトシニル、
1−メチルグアニニル、
N2−メチルグアニニル、
7−メチルグアニニル、
N2,N2−ジメチルグアニニル、
Figure 2006522831
N2,7−ジメチルグアニニル、
N2,N2,7−トリメチルグアニニル、
1−メチルグアニニル、
7−シアノ−7−デアザグアニニル、
7−アミノメチル−7−デアザグアニニル、
プソイドウラシリル、
ジヒドロウラシリル、
5−メチルウラシリル、
1−メチルプソイドウラシリル、
2−チオウラシリル、
4−チオウラシリル、
2−チオチミニル
5−メチル−2−チオウラシリル、
3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシリル、
5−ヒドロキシウラシリル、
5−メトキシウラシリル、
ウラシリル5−オキシ酢酸、
ウラシリル5−オキシ酢酸メチルエステル、
5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシリル、
5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシリルメチルエステル、
5−メトキシカルボニルメチルウラシリル、
5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシリル、
5−アミノメチル−2−チオウラシリル、
5−メチルアミノメチルウラシリル、
5−メチルアミノメチル−2−チオウラシリル、
5−メチルアミノメチル−2−セレノウラシリル、
5−カルバモイルメチルウラシリル、
5−カルボキシメチルアミノメチルウラシリル、
5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシリル、
3−メチルウラシリル、
1−メチル−3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)プソイドウラシリル、
5−カルボキシメチルウラシリル、
5−メチルジヒドロウラシリル、または
3−メチルプソイドウラシリル。
パリンドローム
RNA、例えばiRNA剤は、本願明細書に記載するパリンドローム構造、およびいずれも本願明細書に援用する、2003年3月7日に出願された米国仮出願第60/452,682号;2003年4月14日に出願された米国仮出願第60/462,894号;および2004年3月8日に出願された国際出願No.PCT/US04/07070の1つまたは複数中に記載されたものを有することが可能である。本発明のiRNA剤は、2つ以上のRNA領域を標的とすることが可能である。例えばiRNA剤は、互いにハイブリダイズするのに十分相補的な第1配列および第2配列を含むことが可能である。第1配列は第1の標的RNA領域と相補的であってよく、第2配列は第2の標的RNA領域と相補的であってよい。iRNA剤の第1配列および第2配列が異なるRNA鎖上にあり、かつ第1配列と第2配列の間のミスマッチを、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%未満とすることができる。iRNA剤の第1配列および第2配列が同じRNA鎖上にあり、かつ関連実施形態では、該iRNA剤の50%、60%、70%、80%、90%、95%より多く、あるいは1%が、2分子の形態であってもよい。iRNA剤の第1配列と第2配列が、互いに完全に相補的であってもよい。
第1の標的RNA領域が第1の遺伝子によってコードされ、かつ第2の標的RNA領域が第2の遺伝子によってコードされてもよいし、あるいは第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域が、1つの遺伝子由来のRNAの異なる領域であってよい。第1配列と第2配列は、少なくとも1ヌクレオチド異なる可能性がある。
第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、第1配列および第2配列の変異体、例えば1つの遺伝子の第1および第2の対立遺伝子によってコードされる転写物上に存在してもよい。配列の変異は、例えば突然変異、または多型性であってよい。第1の標的RNA領域が、第2の標的RNA領域と比べてヌクレオチドの置換、挿入、または欠失を含むことも可能であり、あるいは第2の標的RNA領域が、第1の標的領域の突然変異体または変異体であることも可能である。
第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、ウイルスまたはヒトのRNA領域を含むことが可能である。第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、がん遺伝子の
変異体転写物上に存在することも可能であるし、あるいは腫瘍抑制遺伝子の転写物の異なる突然変異を含むことも可能である。さらに、第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、遺伝的変異のホット・スポットに相当していてもよい。
本発明の組成物は、iRNA剤分子の混合物を含むことが可能である。例えば、1つのiRNA剤は、互いにハイブリダイズするのに十分相補的な第1配列および第2配列を含むことが可能であり、さらに第1配列は第1の標的RNA領域と相補的であり、第2配列は第2の標的RNA領域と相補的である。この混合物は、互いにハイブリダイズするのに十分相補的な第3配列および第4配列を含む、少なくとも1つの他の種類のiRNA剤を含むことも可能であり、この場合第3配列は第3の標的RNA領域と相補的であり、第4配列は第4の標的RNA領域と相補的である。さらに、第1配列または第2配列は、第3配列または第4配列と、互いにハイブリダイズすることが可能であるほど十分相補的であってもよい。第1配列と第2配列は同じRNA鎖上に存在しても異なるRNA鎖上に存在してもよく、第3配列と第4配列は同じRNA鎖上に存在しても異なるRNA鎖上に存在してもよい。
標的RNA領域は、ウイルスRNAまたはヒトRNAの変異体配列であってもよく、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの標的RNA領域が、がん遺伝子または腫瘍抑制遺伝子の変異体転写物上に存在しうる。標的RNA領域は、遺伝的ホット・スポットに相当してもよい。
iRNA剤組成物を作製する方法は、標的遺伝子(例えばウイルス遺伝子またはヒト遺伝子、あるいはがん遺伝子または腫瘍抑制遺伝子、例えばp53)のRNA領域であって、(例えばヒトにおける)高度の多様性または突然変異頻度を有する領域についての情報を入手することまたは提供することを含み得る。さらに、該領域内の複数のRNA標的についての情報を入手または提供することが可能であり、この場合それぞれのRNA標的が該遺伝子の異なる変異体または突然変異体に対応する(例えば、p53 248Qおよび/またはp53 249Sをコードするコドンを含む領域)。第1配列が複数の変異体RNA標的のうちの第1の標的(例えば249Qをコードする標的)と相補的であり、第2配列が複数の変異体RNA標的のうちの第2の標的(例えば249Sをコードする標的)と相補的であり、かつ第1配列と第2配列がハイブリダイズするのに十分相補的であり得るように、iRNA剤を構築することが可能である。
例えば標的遺伝子中の共通の突然変異を同定するために、配列分析を使用して、高度の多様性または突然変異頻度を有する標的遺伝子の領域を同定することが可能である。高度の多様性または突然変異頻度を有する標的遺伝子の領域は、個体群由来の標的遺伝子についての遺伝子型情報を入手または提供することによって、同定することが可能である。
互いにハイブリダイズするほど十分相補的な第1配列および第2配列を有するiRNA剤を提供することによって、標的遺伝子の発現を調節する、例えばダウンレギュレーションまたはサイレンシングすることが可能である。さらに、第1配列が第1の標的RNA領域と相補的であり、かつ第2配列が第2の標的RNA領域と相補的であってもよい。
iRNA剤は、第1の変異体RNA標的領域と相補的な第1配列、および第2の変異体RNA標的領域と相補的な第2配列を含むことが可能である。この第1および第2の変異体RNA標的領域は、標的遺伝子、例えばウイルス遺伝子、腫瘍抑制遺伝子またはがん遺伝子の第1および第2の変異体または突然変異体に対応するものでもよい。第1および第2の変異体RNA標的領域は、標的遺伝子の対立遺伝子変異、突然変異(例えば点突然変異)、または多型を含んでいてもよい。第1および第2の変異体RNA標的領域は、遺伝的ホット・スポットに対応していてもよい。
複数のiRNA剤(例えばパネルまたはバンク)を提供することも可能である。
標準的なワトソン−クリック以外の二本鎖構造
RNA、例えばiRNA剤は、別のモノマー、例えば別の鎖上のモノマーと標準的なワトソンクリック以外の対合を形成することができるモノマー(例えば、本明細書中に記載するもの、ならびに2003年4月25日付けで出願された米国仮出願第60/465,665号及び2004年3月8日付けで出願された国際出願第PCT/US04/07070号(これらはともに、参照により本明細書に援用される)に記載されるもの)を包含することができる。
二本鎖のモノマー間の「標準的なワトソン−クリック以外の対合」の使用は、二本鎖のすべて又は一部の融解を制御(多くの場合は促進)するのに使用することができる。iRNA剤は、選択された位置又は制約された位置にモノマーを包含することができ、その結果、iRNA剤二本鎖における(例えば、二本鎖iRNA剤の2つの別個の分子間での)第1のレベルの安定性、及びiRNA剤の配列と別の配列分子(例えば、対象者における標的配列又はオフターゲット(標的ではない)配列)との間の二本鎖における第2のレベルの安定性をもたらす。場合によっては、第2の二本鎖は、例えばiRNA剤のアンチセンス配列と標的mRNAとの間の二本鎖において、比較的高いレベルの安定性を有する。この場合、1つ又はそれ以上のモノマー、iRNA剤におけるモノマーの位置、及び標的配列(本明細書中では、選択パラメータ又は制約パラメータと称することもある)の選択は、iRNA剤二本鎖が比較的低い会合の自由エネルギーを有する(メカニズム又は理論により拘束されることを望まないが、このことはRISCに関しては二本鎖iRNA剤の解離を促進することにより有効性に寄与すると考えられる)一方で、標的指向性のアンチセンス配列とその標的配列との間で形成される二本鎖が、比較的高い会合の自由エネルギーを有する(メカニズム又は理論により拘束されることを望まないが、このことはアンチセンス配列と標的RNAとの会合を促進することにより有効性に寄与すると考えられる)ようになされる。
他の場合では、第2の二本鎖は、例えばiRNA剤のセンス配列とオフターゲットmRNAとの間の二本鎖において、比較的低いレベルの安定性を有する。この場合、1つ又はそれ以上のモノマー、iRNA剤におけるモノマーの位置、及びオフターゲット配列の選択は、iRNA剤二本鎖が比較的高い会合の自由エネルギーを有する一方で、標的指向性のセンス配列とそのオフターゲット配列との間で形成される二本鎖が、比較的低い会合の自由エネルギーを有する(メカニズム又は理論により拘束されることを望まないが、センス鎖とオフターゲット配列から形成される二本鎖の解離を促進することにより有効性に寄与し、オフターゲット配列をサイレンシングするレベルを低減すると考えられる)ようになされる。
したがって、iRNA剤内の二本鎖に関する第1の安定性、ならびにiRNA剤由来の配列と別のRNA、例えば標的mRNAとの間で形成される二本鎖に関する第2の安定性を有するという特性は、iRNA剤の構造において固有のものである。上述のように、この特性は、選択された位置又は制約された位置の1つ又はそれ以上のモノマーの慎重な選択、選択された位置又は制約された位置を設定するための二本鎖における位置の選択、及び標的配列の配列(例えば、標的とされるべき標的遺伝子の特定の領域)の選択により達成され得る。これらの要件を満たすiRNA剤配列は、本明細書中では制約配列と称することもある。制約パラメータ又は選択パラメータは、例えば、検査により、あるいはコンピュータ支援方法により達成することができる。パラメータの使用により、例えば二本鎖の安定性又は相対安定性に関して所望の結果が得られるように、標的配列及び特定のモノマーを選択することができる。
したがって、別の態様では、本発明は、第1の標的領域を標的とする第1の配列及び第2の標的領域を標的とする第2の配列を包含するiRNA剤を特徴とする。第1の配列及び第2の配列は、例えば生理学的条件下で(例えば、生理学的条件下であるが、ヘリカーゼ又は他の巻き戻し酵素とは接触しない条件下で)互いにハイブリダイズするのに十分な相補性を有する。iRNA剤の二本鎖領域では、選択された位置又は制約された位置で、第1の標的領域が第1のモノマーを有し、第2の標的領域が第2のモノマーを有する。第1のモノマー及び第2のモノマーは、相補的位置又は対応する位置を占める。一方のモノマー、及び好ましくは両方のモノマーが、第1の配列と第2の配列との間での二本鎖に寄与するモノマーの対合の安定性が、第1の配列又は第2の配列と標的配列との間での対合の安定性と異なるように選択される。
通常、モノマーは、iRNA剤配列と標的RNA二本鎖との間の二本鎖におけるモノマーとその相補的モノマーとの対合により保有されるであろう解離の自由エネルギー及びTmよりも、低い解離の自由エネルギー及び低いTmを有するiRNA剤二本鎖における対合をモノマーが形成するように選択される(標的配列の選択も同様に要求され得る)。
モノマーに与えられる制約は、選択部位に、あるいは2個以上の選択部位に適用され得る。例えば、iRNA剤二本鎖において、2個以上であるが、3個未満、4個未満、5個未満、6個未満又は7個未満の部位に制約が適用され得る。
制約部位又は選択部位は、iRNA剤二本鎖の多数の位置に存在することができる。例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の配列の3’末端又は5’末端の一方から3位、4位、5位又は6位以内の位置に存在することができる。制約部位又は選択部位は、二本鎖領域の中央に存在することもでき、例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の領域の末端から4位以上、5位以上、6位以上又は7位以上の位置であり得る。
幾つかの実施形態では、iRNA剤の二本鎖領域は、選択部位又は制約部位(単数又は複数)のほかに、ミスマッチを有する。好ましくは、iRNA剤の二本鎖領域は、標準的なワトソン−クリック対を形成しないか、又はハイブリダイズしない1個以下、2個以下、3個以下、4個以下又は5個以下の塩基を有する。突出部については、本明細書中の他の箇所で詳述しているが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的であってもよいし、又は他の配列でもよい。TTは、突出部の好ましい配列である。第1のiRNA剤配列及び第2のiRNA剤配列はまた、例えばヘアピンを形成するための追加の塩基により、あるいは他の非塩基リンカーにより連結させることもできる。
モノマーは、第1のモノマー及び第2のモノマーが天然に存在するリボヌクレオチド又は天然に存在する塩基を有する修飾リボヌクレオチドであるように、かつ、相補的部位を占有する場合、対合もせず実質的レベルのH結合も有さないか、又は非標準的ワトソン−クリック対合を形成して非標準的なH結合のパターンを形成する(通常、標準的なワトソン−クリック対合で見られるよりも低い解離の自由エネルギーを有するか、あるいはそうでなければ予め選択した値の会合の自由エネルギー未満であるか、例えば標準的な対合の会合の自由エネルギーよりも低い会合の自由エネルギーとなるように対合する)ように選択することができる。iRNA剤の配列の一方(又は両方)が標的と二本鎖を形成する場合、第1の(又は第2の)モノマーは、標的上の相補的位置にある塩基と標準的なワトソン−クリック対合を形成するか、あるいはiRNA剤における対合で見られるよりも高い解離の自由エネルギー及び高いTmを有する非標準的なワトソン−クリック対を形成する。古典的なワトソン−クリック対は、以下の通りである:A−T、G−C及びA−U。非標準的なワトソン−クリック対合は、当該技術分野で既知であり、U−U、G−G、G−Aトランス、G−Aシス及びGUを挙げることができる。
配列の一方又は両方におけるモノマーの選択は、モノマーが対合をしないか、あるいは他方の配列の対応するモノマーとの対を形成し、その対が安定性を最小限にする(例えば、一方の配列の選択部位のモノマーと他方の配列の対応する部位のモノマーとの間で形成されるH結合は、一方(又は両方)の配列のモノマーと各々の標的配列とにより形成されるH結合よりも安定性が劣る)ようになされる。一方又は両方の鎖におけるモノマーの選択はまた、鎖とその標的配列により作製される二本鎖の一方又は両方における安定性を促進するように為される。例えば、1つ又はそれ以上のモノマー及び標的配列の選択は、選択位置又は制約位置で、iRNA剤二本鎖中でH結合が形成されないか、もしくは非標準的な対合が形成されるか、あるいはそうでなければ予め選択した値の会合の自由エネルギー未満であるか、又は例えば標準的な対合の会合の自由エネルギーよりも低い会合の自由エネルギーを付与するように対合するが、一方(又は両方の)配列が各々の標的と二本鎖を形成する場合は、選択部位又は制約部位での対合は標準的なワトソン−クリック対であるようにすることができる。
このようなモノマーを含むことにより、以下の1つ又はそれ以上の効果、すなわち:iRNA剤二本鎖を不安定化すること、センス配列と意図されない標的配列(オフターゲット配列と称することもある)との間の相互作用を不安定化すること、配列と意図される標的との間の相互作用は不安定化されないこと、を有することになる。
例を挙げる。
第1の配列の選択部位のモノマーは、A(又はTと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、G)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖の標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、U(又はAと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、U又はG)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖の標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、G(又はCと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、G、Aシス、Aトランス、又はU)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖に関する標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、C(又はGと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマーから選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖に関する標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
天然に存在しないモノマー又は修飾モノマー(単数又は複数)の選択は、天然に存在しないモノマー又は修飾モノマーがiRNA剤の選択位置又は制約位置に配置される場合は第1の解離の自由エネルギーを示し、かつそれらの一方(又は両方)が天然に存在するモノマーと対合する場合は、対が第2の解離の自由エネルギーを示す(通常、第2の解離の自由エネルギーは、第1のモノマーと第2のモノマーの対合の解離の自由エネルギーよりも高い)ように実施することができる。例えば、第1のモノマー及び第2のモノマーが相補的位置を占める場合、第1のモノマー及び第2のモノマーは、対合もせず、実質的レベルのH結合も有さないか、又は、該モノマーの一方が天然に存在するモノマーと形成するよりも弱い結合を形成して、その二本鎖の安定性を低減するが、その二本鎖が解離すると、少なくとも一方の鎖は標的と二本鎖を形成し、標的との二本鎖においては、選択モノマーは安定性を促進する(例えばモノマーは、標的配列中の天然に存在するモノマーと、iRNA剤において形成される対合よりも安定な対を形成する)。
このような対の例は、2−アミノA、及びU又はTの2−チオピリミジン類縁体のいずれかである。
iRNA剤の相補的位置に配置される場合、これらのモノマーはほとんど対合せず、安定性は最小限となる。しかしながら、2−アミノAと天然に存在する標的のUとの間で二本鎖が形成されるか、あるいは、2−チオUと天然に存在する標的のAとの間、又は2−チオTと天然に存在する標的のAとの間で二本鎖が形成され、比較的高い解離の自由エネルギーを有し、かつより安定となる。これを、図1に示す。
図1に示す対(2−アミノAならびに2−sU及びT)は例示的なものである。別の実施形態では、センス鎖の選択位置のモノマーは、普遍的に対合する構成部分であり得る。普遍的に対合する物質は、2個以上、好ましくはすべての天然に存在するモノマーとある程度のレベルのH結合を形成する。普遍的に対合する部分の例は、3−ニトロピロールを含むモノマーである。(普遍的な塩基類縁体の他の候補は、例えばロークス(Loakes)、2001年、NAR 29:2437〜2447ページ(参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。例はまた、以下の普遍的塩基に関するセクションに見出すことができる。)これらの場合、アンチセンス鎖の対応する位置のモノマーは、標的と二本鎖を形成するその能力に応じて選ぶことができ、例えばA、U、G又はCを挙げることができる。
本発明のiRNA剤は、以下のものを包含することができる:
好ましくは対象中に存在する配列を標的としないセンス配列、及び対象中の標的遺伝子を標的とするアンチセンス配列。センス配列及びアンチセンス配列は、例えば生理学的条件下で(例えば生理学的条件下であるが、ヘリカーゼ又は他の巻き戻し酵素とは接触しない条件下で)互いにハイブリダイズするのに十分な相補性を有する。iRNA剤の二本鎖領域では、選択位置又は制約位置について、モノマーは以下を満たすように選択される:
センス配列のモノマーは、該モノマーが対合しないか、あるいはアンチセンス鎖の対応するモノマーと安定性を最小限にするような対を形成する(例えば、センス配列における選択部位のモノマーとアンチセンス鎖の対応する部位のモノマーとの間で形成されるH結合は、アンチセンス配列のモノマーとその標準的なワトソン−クリックパートナー(アンチセンス鎖中のモノマーが修飾塩基を含む場合には、該修飾塩基の天然型類縁体とその標準的なワトソン−クリックパートナー)により形成されるH結合よりも安定性が劣る)ように選択されること;
アンチセンス鎖の対応する位置のモノマーは、該モノマーが標的配列とともに形成する二本鎖の安定性を最大限にすること、例えば、該モノマーが標的鎖上の対応する位置のモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するように選択されること;
任意選択で、センス配列のモノマーは、該モノマーが対合しないか、あるいはアンチセンス鎖の対応するモノマーと、オフターゲット配列との安定性を最小限にするような対を
形成すること。
このようなモノマーを含むことにより、以下の1つ又はそれ以上の効果、すなわち、iRNA剤二本鎖を不安定化すること、センス配列と意図されない標的配列(オフターゲット配列と称することもある)との間の相互作用を不安定化すること、アンチセンス配列と意図される標的との間の二本鎖相互作用は不安定化されないこと、を有することになる。
モノマーに与えられる制約は、選択部位に、あるいは2個以上の選択部位に適用され得る。例えば、iRNA剤二本鎖において、2個以上であるが、3個未満、4個未満、5個未満、6個未満又は7個未満の部位に制約が適用され得る。
制約部位又は選択部位は、iRNA剤二本鎖の多数の位置に存在することができる。例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の配列の3’末端又は5’末端の一方から3位、4位、5位又は6位以内の位置に存在することができる。制約部位又は選択部位は、二本鎖領域の中央に存在することも可能であり、例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の領域の末端から4位以上、5位以上、6位以上又は7位以上の位置であり得る。
幾つかの実施形態では、iRNA剤の二本鎖領域は、選択部位又は制約部位(単数又は複数)のほかに、ミスマッチを有する。好ましくは、iRNA剤の二本鎖領域は、標準的なワトソン−クリック対を形成しないか、又はハイブリダイズしない1個以下、2個以下、3個以下、4個以下又は5個以下の塩基を有する。突出部については、本明細書中の他の箇所で詳述しているが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的であってもよいし、又は他の配列でもよい。TTは、突出部の好ましい配列である。第1のiRNA剤配列及び第2のiRNA剤配列はまた、例えばヘアピンを形成するための追加の塩基により、あるいは他の非塩基リンカーにより連結させることができる。
モノマーは、第1のモノマー及び第2のモノマーが天然に存在するリボヌクレオチド又は天然に存在する塩基を有する修飾リボヌクレオチドであるように、かつ、相補的部位を占有する場合、対合もせず実質的レベルのH結合も有さないか、又は非標準的ワトソン−クリック対合を形成して非標準的なH結合のパターンを形成する(通常、標準的なワトソン−クリック対合で見られるよりも低い解離の自由エネルギーを有するか、あるいはそうでなければ予め選択した値の会合の自由エネルギー未満であるか、例えば標準的な対合の会合の自由エネルギーよりも低い会合の自由エネルギーとなるように対合する)ように選択することができる。iRNA剤の配列の一方(又は両方)が標的と二本鎖を形成する場合、第1の(又は第2の)モノマーは、標的上の相補的位置にある塩基と標準的なワトソン−クリック対合を形成するか、あるいはiRNA剤における対合で見られるよりも高い解離の自由エネルギー及び高いTmを有する非標準的なワトソン−クリック対を形成する。古典的なワトソン−クリック対は、以下の通りである:A−T、G−C及びA−U。非標準的なワトソン−クリック対合は、当該技術分野で既知であり、U−U、G−G、G−Aトランス、G−Aシス及びGUを挙げることができる。
配列の一方又は両方におけるモノマーの選択は、モノマーが対合をしないか、あるいは他方の配列の対応するモノマーとの対を形成し、その対が安定性を最小限にする(例えば、一方の配列の選択部位のモノマーと他方の配列の対応する部位のモノマーとの間で形成されるH結合は、一方(又は両方)の配列のモノマーと各々の標的配列とにより形成されるH結合よりも安定性が劣る)ようになされる。一方又は両方の鎖におけるモノマーの選択はまた、鎖とその標的配列により作製される二本鎖の一方又は両方における安定性を促進するように為される。例えば、1つ又はそれ以上のモノマー及び標的配列の選択は、選択位置又は制約位置で、iRNA剤二本鎖中でH結合が形成されないか、もしくは非標準
的な対合が形成されるか、あるいはそうでなければ予め選択した値の会合の自由エネルギー未満であるか、又は例えば標準的な対合の会合の自由エネルギーよりも低い会合の自由エネルギーを付与するように対合するが、一方(又は両方の)配列が各々の標的と二本鎖を形成する場合は、選択部位又は制約部位での対合は標準的なワトソン−クリック対であるようにすることができる。
このようなモノマーを含むことにより、以下の1つ又はそれ以上の効果、すなわち:iRNA剤二本鎖を不安定化すること、センス配列と意図されない標的配列(オフターゲット配列と称することもある)との間の相互作用を不安定化すること、配列と意図される標的との間の相互作用は不安定化されないこと、を有することになる。
例を挙げる。
第1の配列の選択部位のモノマーは、A(又はTと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、G)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖の標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、U(又はAと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、U又はG)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖の標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、G(又はCと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマー(例えば、G、Aシス、Aトランス、又はU)から選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖に関する標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
第1の配列の選択部位のモノマーは、C(又はGと対合する修飾塩基)を含み、第2の配列の選択位置のモノマーは、対合しないか、又は非標準的な対合を形成するモノマーから選ばれる。これらは、第1の配列の標的配列が選択位置にTを有する場合の用途において有用である。標的二本鎖がともに安定化される実施形態では、第2の鎖に関する標的配列が、第2の鎖の選択位置に関して選択されるモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するモノマーを有する場合に有用である。
天然に存在しないモノマー又は修飾モノマー(単数又は複数)の選択は、天然に存在しないモノマー又は修飾モノマーがiRNA剤の選択位置又は制約位置に配置される場合は第1の解離の自由エネルギーを示し、かつそれらの一方(又は両方)が天然に存在するモノマーと対合する場合は、対が第2の解離の自由エネルギーを示す(通常、第2の解離の自由エネルギーは、第1のモノマーと第2のモノマーの対合の解離の自由エネルギーよりも高い)ように実施することができる。例えば、第1のモノマー及び第2のモノマーが相補的位置を占める場合、第1のモノマー及び第2のモノマーは、対合もせず、実質的レベルのH結合も有さないか、又は、該モノマーの一方が天然に存在するモノマーと形成するよりも弱い結合を形成して、その二本鎖の安定性を低減するが、その二本鎖が解離すると
、少なくとも一方の鎖は標的と二本鎖を形成し、標的との二本鎖においては、選択モノマーは安定性を促進する(例えばモノマーは、標的配列中の天然に存在するモノマーと、iRNA剤において形成される対合よりも安定な対を形成する)。
このような対の例は、2−アミノA、及びU又はTの2−チオピリミジン類縁体のいずれかである。
iRNA剤の相補的位置に配置される場合、これらのモノマーはほとんど対合せず、安定性は最小限となる。しかしながら、2−アミノAと天然に存在する標的のUとの間で二本鎖が形成されるか、あるいは、2−チオUと天然に存在する標的のAとの間、又は2−チオTと天然に存在する標的のAとの間で二本鎖が形成され、比較的高い解離の自由エネルギーを有し、かつより安定となる。
センス鎖の選択位置のモノマーは、普遍的に対合する構成部分であり得る。普遍的に対合する物質は、2個以上、好ましくはすべての天然に存在するモノマーとある程度のレベルのH結合を形成する。普遍的に対合する部分の例は、3−ニトロピロールを含むモノマーである。(普遍的な塩基類縁体の他の候補は、例えばロークス(Loakes)、2001年、NAR 29:2437〜2447ページ(参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。例はまた、以下の普遍的塩基に関するセクションに見出すことができる。)これらの場合、アンチセンス鎖の対応する位置のモノマーは、標的と二本鎖を形成するその能力に応じて選ぶことができ、例えばA、U、G又はCを挙げることができる。
本発明のiRNA剤は、以下のものを包含することができる:
好ましくは対象中に存在する配列を標的としないセンス配列、及び対象中の標的遺伝子を標的とするアンチセンス配列。センス配列及びアンチセンス配列は、例えば生理学的条件下で(例えば生理学的条件下であるが、ヘリカーゼ又は他の巻き戻し酵素とは接触しない条件下で)互いにハイブリダイズするのに十分な相補性を有する。iRNA剤の二本鎖領域では、選択位置又は制約位置について、モノマーは以下を満たすように選択される:
センス配列のモノマーは、該モノマーが対合しないか、あるいはアンチセンス鎖の対応するモノマーと安定性を最小限にするような対を形成する(例えば、センス配列における選択部位のモノマーとアンチセンス鎖の対応する部位のモノマーとの間で形成されるH結合は、アンチセンス配列のモノマーとその標準的なワトソン−クリックパートナー(アンチセンス鎖中のモノマーが修飾塩基を含む場合には、該修飾塩基の天然型類縁体とその標準的なワトソン−クリックパートナー)により形成されるH結合よりも安定性が劣る)ように選択されること;
アンチセンス鎖の対応する位置のモノマーは、該モノマーが標的配列とともに形成する二本鎖の安定性を最大限にすること、例えば、該モノマーが標的鎖上の対応する位置のモノマーと標準的なワトソン−クリック対を形成するように選択されること;
任意選択で、センス配列のモノマーは、該モノマーが対合しないか、あるいはアンチセンス鎖の対応するモノマーと、オフターゲット配列との安定性を最小限にするような対を形成すること。
このようなモノマーを含むことにより、以下の1つ又はそれ以上の効果、すなわち、iRNA剤二本鎖を不安定化すること、センス配列と意図されない標的配列(オフターゲット配列と称することもある)との間の相互作用を不安定化すること、アンチセンス配列と意図される標的との間の二本鎖相互作用は不安定化されないこと、を有することになる。
モノマーに与えられる制約は、選択部位に、あるいは2個以上の選択部位に適用され得る。例えば、iRNA剤二本鎖において、2個以上であるが、3個未満、4個未満、5個未満、6個未満又は7個未満の部位に制約が適用され得る。
制約部位又は選択部位は、iRNA剤二本鎖の多数の位置に存在することができる。例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の配列の3’末端又は5’末端の一方から3位、4位、5位又は6位以内の位置に存在することができる。制約部位又は選択部位は、二本鎖領域の中央に存在することも可能であり、例えば、制約部位又は選択部位は、二本鎖の領域の末端から4位以上、5位以上、6位以上又は7位以上の位置であり得る。
iRNA剤は、本明細書中に記載する任意の遺伝子を含む広範囲の遺伝子を標的とするように選択することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、本明細書中に記載する構成様式を有する(構成様式とは、全体の長さ、二本鎖領域の長さ、突出部の存在、数、位置又は長さ、二本鎖の形態に対する単鎖の形態のうち、1つ又はそれ以上を指す)。
例えば、iRNA剤は、30ヌクレオチド長未満、例えば21〜23ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、iRNAは21ヌクレオチド長であり、約19対の二本鎖領域が存在する。一実施形態では、iRNAは、21ヌクレオチド長であり、iRNAの二本鎖領域は19ヌクレオチド長である。別の実施形態では、iRNAは30ヌクレオチド長を上回る。
幾つかの実施形態では、iRNA剤の二本鎖領域は、選択部位又は制約部位(単数又は複数)のほかに、ミスマッチを有する。好ましくは、iRNA剤の二本鎖領域は、標準的なワトソン−クリック対を形成しないか、又はハイブリダイズしない1個以下、2個以下、3個以下、4個以下又は5個以下の塩基を有する。突出部については、本明細書中の他の箇所で詳述しているが、好ましくは約2ヌクレオチド長である。突出部は、標的とされる遺伝子配列に対して相補的であってもよいし、又は他の配列でもよい。TTは、突出部の好ましい配列である。第1のiRNA剤配列及び第2のiRNA剤配列はまた、例えばヘアピンを形成するための追加の塩基により、あるいは他の非塩基リンカーにより連結させることができる。
1つ又はそれ以上の選択パートナー又は制約パートナーは、センス配列及びアンチセンス配列の選択部位のモノマーがいずれも天然に存在するリボヌクレオチド又は天然に存在する塩基を有する修飾リボヌクレオチドであり、かつiRNA剤二本鎖において相補的部位を占める場合、対合もせず、実質的レベルのH結合も有さないか、又は非標準的ワトソン−クリック対を形成して非標準的なパターンのH結合を形成する(この非標準的ワトソン−クリック対は通常、ワトソン−クリック対合で見られるよりも低い解離の自由エネルギーを有するか、あるいはそうでなければ予め選択した値の会合の自由エネルギー未満であるか、又は例えば標準的な対合の会合の自由エネルギーよりも低い会合の自由エネルギーを付与するように対合する)ように使用することができる。iRNA剤の配列のうちの一方、通常アンチセンス配列が、別の配列、通常は対象中に存在する配列、及び一般に標的配列と二本鎖を形成する場合、モノマーは、標的上の相補的位置の塩基と古典的なワトソン−クリック対を形成するか、あるいはiRNA剤における対合で見られるよりも高い解離の自由エネルギー及び高いTmを有する非標準的なワトソン−クリック対を形成する。任意選択で、iRNA剤の他方の配列、通常センス配列が、別の配列、通常は対象中に存在する配列、及び一般にオフターゲット配列と二本鎖を形成する場合、モノマーは、オフターゲット配列上の相補的位置の塩基と標準的なワトソン−クリック対を形成することができず、例えば、モノマーは、より低い解離の自由エネルギー及びより低いTmを有する非標準的なワトソン−クリック対を形成する。
例を挙げる。
アンチセンス鎖における選択部位のモノマーはA(又はTと対合する修飾塩基)を含み
、標的における対応するモノマーはTであり、センス鎖は、対合しないか、又は非標準的な対を形成する塩基から選ばれる(例えば、G);
アンチセンス鎖における選択部位のモノマーはU(又はAと対合する修飾塩基)を含み、標的における対応するモノマーはAであり、センス鎖は、対合しないか、又は非標準的な対を形成する塩基から選ばれる(例えば、U又はG);
アンチセンス鎖における選択部位のモノマーはC(又はGと対合する修飾塩基)を含み、標的における対応するモノマーはGであり、センス鎖は、対合しないか、又は非標準的な対を形成する塩基から選ばれる(例えば、G、Aシス、Aトランス又はU);または、
アンチセンス鎖における選択部位のモノマーはG(又はCと対合する修飾塩基)を含み、標的における対応するモノマーはCであり、センス鎖は、対合しないか、又は非標準的な対を形成する塩基から選ばれる。
別の実施形態では、天然に存在しないモノマー又は修飾モノマー(単数又は複数)は、該モノマーがiRNA剤における相補的な位置を占める場合は第1の解離の自由エネルギーを示し、かつそれらの一方(又は両方)が天然に存在するモノマーと対合する場合は、その対は第2の解離の自由エネルギーを示す(通常、第2の解離の自由エネルギーは、第1のモノマーと第2のモノマーの対合の解離の自由エネルギーよりも高い)ように選ばれる。例えば、第1のモノマー及び第2のモノマーが相補的位置を占める場合、第1のモノマー及び第2のモノマーは、対合もせず、実質的レベルのH結合も有さないか、又は該モノマーの一方が天然に存在するモノマーと形成するよりも弱い結合を形成して、その二本鎖の安定性を低減するが、二本鎖が解離すると、少なくとも1つの鎖は標的と二本鎖を形成し、標的との二本鎖においては選択モノマーが安定性を促進する(例えばモノマーは、標的配列中の天然に存在するモノマーとともに、iRNA剤において形成される対合よりも安定な対を形成する)。
このような対の例は、2−アミノA、及びUもしくはTの2−チオピリミジン類縁体のいずれかである。上述のように、iRNA剤の相補的位置に配置される場合、これらのモノマーは、ほとんど対合せず、安定性は最小限となる。しかしながら、二本鎖は、2−アミノAと天然に存在する標的のUとの間で形成されるか、あるいは二本鎖は、2−チオUと天然に存在する標的のAとの間、又は2−チオTと天然に存在する標的のAとの間で形成され、比較的高い解離の自由エネルギーを有し、かつより安定である。
センス鎖の選択位置のモノマーは、普遍的に対合する構成部分であり得る。普遍的に対合する物質は、2個以上、好ましくはすべての天然に存在するモノマーとある程度のレベルのH結合を形成する。普遍的に対合する部分の例は、3−ニトロピロールを含むモノマーである。普遍的な塩基類縁体の他の候補は、例えばロークス(Loakes)、2001年、NAR 29:2437〜2447ページ(参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。これらの場合、アンチセンス鎖の対応する位置のモノマーは、標的と二本鎖を形成するその能力に応じて選ぶことができ、例えばA、U、G又はCを挙げることができる。
別の態様では、本発明は、以下のものを包含するiRNA剤を特徴とする:
好ましくは対象者中に存在する配列を標的としないセンス配列、及び対象者中の複数の標的遺伝子を標的とするアンチセンス配列(ここで、標的の配列は、1位のみ又は少数、例えば5個以下、4個以下、3個以下又は2個以下の位置で異なっている)。該センス配列及びアンチセンス配列は、例えば生理学的条件下で(例えば生理学的条件下であるが、ヘリカーゼ又は他の巻き戻し酵素とは接触しない条件下で)互いにハイブリダイズするのに十分な相補性を有する。iRNA剤のアンチセンス鎖の配列は、標的配列間で配列が異なる位置に相当する位置のうち1つ、幾つか又はすべてについて、アンチセンス鎖が、少なくとも2つの異なる標的配列とH結合を形成するモノマーを含むように選択される。好
ましい例では、アンチセンス配列は、普遍的モノマー又は無差別に対合するモノマー、例えば5−ニトロピロール、2−アミノA、2−チオU又は2−チオT、あるいは本明細書中で言及する他の普遍的塩基を包含するモノマーを含む。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、単一の遺伝子、複数の遺伝子又はウイルスゲノム(例えば、HCVゲノム)中の反復配列(互いに1部位のみ又は少数の部位が異なる反復配列)を標的とする。
一実施形態を図2及び図3に示す。
別の態様では、本発明は、例えば測定又は計算により、iRNA剤二本鎖における選択位置又は制約位置のモノマーの間の対合の安定性を決定すること、かつ好ましくは、iRNA剤由来の配列と別のRNA(例えば、標的配列)との間の二本鎖における対応する対合の安定性を決定することを特徴とする。決定の結果を、比較することができる。したがって、分析したiRNA剤を、さらに修飾したRNA剤の開発に使用することもできるし、あるいは対象に投与することもできる。このような分析は、最適化されたiRNA剤を洗練又は設計するために引き続いて実施することができる。
別の態様では、本発明は、1つ又はそれ以上の本明細書中以下に記載するiRNAと、該iRNA剤が封入される滅菌容器と、使用に関する説明書とを含むキットを特徴とする。
別の態様では、本明細書中に記載する方法により作製される制約配列を含有するiRNA剤を特徴とする。該iRNA剤は、本明細書中で言及する1つ又はそれ以上の遺伝子を標的とすることができる。
例えば本明細書中に記載するような制約部位又は選択部位を有するiRNA剤は、本明細書中に記載する任意の方法で使用することができる。したがって、例えば本明細書中に記載するような制約部位又は選択部位を有するiRNA剤は、例えば本明細書中に記載する方法のいずれかにおいて標的をサイレンシングするために、また本明細書中に記載する遺伝子のいずれかを標的とするために、あるいは本明細書中に記載する障害のいずれかを治療するために使用することができる。例えば本明細書中に記載するような制約部位又は選択部位を有するiRNA剤は、任意の製剤又は調製物、例えば本明細書中に記載する医薬品又は滅菌調製物に組み込むことができる。例えば本明細書中に記載する制約部位又は選択部位を有するiRNA剤は、本明細書中に記載する投与経路のいずれかにより投与することができる。
「標準的なワトソン−クリック以外の対合」という用語は、本明細書中で使用する場合、二本鎖の第1の配列の第1のモノマーと第2の配列の対応する位置の第2のモノマーとの間での対合であって、下記のうち1つまたはそれ以上が事実であるものを指す:(1)該2つのモノマーの間に本質的に対合が存在しない、例えばモノマー間に有意なレベルのH結合が存在しないか、あるいはモノマー間の結合が二本鎖の安定性に対していかなる有意な寄与もしていない、(2)該モノマーが、天然に存在する塩基を有する非標準的なモノマー対である、すなわち、A−T、A−U又はG−C以外であり、かつ該モノマーは、モノマー間のH結合を形成するが、概して形成されるH結合パターンは、標準的な対合により形成される結合よりも弱い、あるいは(3)該モノマーの少なくとも1つは天然に存在しない塩基を包含し、かつモノマー間で形成されるH結合は、好ましくは、標準的な対合すなわちA−T、A−U、G−Cのうち1つ又はそれ以上により形成される結合よりも弱い。
「オフターゲット」という用語は、本明細書中で使用する場合、サイレンシングされる
べき配列以外の配列を指す。
普遍的塩基:「ワイルドカード」;形状に基づいた相補性
(「ジフルオロトルエンとアデニンとの間の塩基対の、二本鎖の多重部位における複製:「逆」シーケンシングによる確認(Bi-stranded, multisite replication of a base pair between difluorotoluene and adenine: confirmation by 'inverse' sequencing.)」、リウ、ディー;モラン、エス;クール、イー.ティー(Liu,D.;Moran,S;Kool,E.T.)、Chem.Biol.、1997年、第4巻、919〜926ページ)
Figure 2006522831
(「DNAポリメラーゼIのクレノウ断片による3’末端プルーフリーディングにおける末端塩基対水素結合の重要性(Importance of terminal base pair hydrogen-bonding in 3'-end proofreading by the Klenow fragment of DNA polymerase I.)」、モラレス、ジェー.シー;クール、イー.ティー(Morales,J.C;Kool,E.T.)、Biochemistry、2000年、第39巻、2626〜2632ページ)
(「水素結合を伴わない選択的かつ安定なDNA塩基対合(Selective and stable DNA
base pairing without hydrogen bonds. )」、マトレイ、ティー、ジェー;クール、イー、ティー(Matray,T.J;Kool,E.T.)、J.Am.Chem.Soc.,1998年、第120巻、6191〜6192ページ)
Figure 2006522831
(「チミンに関する無極性同配体であるジフルオロトルエンは、DNA複製において特異的かつ効率的にアデニンをコードする(Difluorotoluene, a nonpolar isostere for thymine, codes specifically and efficiently for adenine in DNA replication.)」、モラン、S;レン、アール.エックス.−エフ;ラムネイ アイブイ、エス;クール、イー.ティー(Moran,S.Ren,R.X.−F;Rumney IV,S;Kool,E.T.)、J.Am.Chem.Soc.、1997年、第119巻、2056〜2057ページ)
(「デオキシアデノシンに関する複製可能な無極性同配体の構造及び塩基対特性(Structure and base pairing properties of replicable nonpolar isostere for deoxyadeno
sine. )」、グクキアン、ケー.エム;モラレス、イー.ティー(Guckian,K.M.;Morales,J.C.;Kool,E.T.)、Org.Chem.、1998年、第63巻9653〜9656ページ)
Figure 2006522831
Figure 2006522831
(「ハイブリダイゼーション、複製及び鎖終結用の普遍的塩基(Universal bases for hybridization, replication and chain termination. )」、バーガー、エム;ウー.ワイ.;オガワ、エー.ケー.;マクミン、ディー.エル.;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(Berger,M.;Wu.Y.;Ogawa,A.K.;McMinn,D.L.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、Nucleic Acids Res.、2000年、第28巻、2911〜2914ページ)
Figure 2006522831
(1.「遺伝子アルファベットの拡大に対する取り組み:非天然の疎水性塩基対による情報保存及び複製(Efforts toward expansion of the genetic alphabet: Information storage and replication with unnatural hydrophobic base pairs.)」、オガワ、エー.ケー.;ウー.ワイ.;マクミン、ディー.エル.;リウ、ジェー.;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(Ogawa,A.K.;Wu.Y.;McMinn,D.L.;Liu,J.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、3274〜3287ページ。2.「動力学的選択性の増大による非天然塩基対の合理的設計(Rational design of an unnatural base pair with increased kinetic selectivity. )」、オガワ、エー.ケー.;ウー.ワイ.;バーガー、エム;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(Ogawa,A.K.;Wu.Y.;Berger,M.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、8803〜8804ページ)
Figure 2006522831
(「遺伝子アルファベットの拡大に対する取り組み:3つの塩基対によるDNAの複製(Efforts toward expansion of the genetic alphabet: replication of DNA with three base pairs. )」、タエ、イー.エル.;ウー.ワイ.;キシア、ジー.;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(Tae,E.L.;Wu.Y.;Xia,G.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、J.Am.Chem.Soc.、2001年、第123巻、7439〜7440ページ)
Figure 2006522831
(1.「遺伝子アルファベットの拡大に対する取り組み:塩基間疎水性相互作用の最適化(Efforts toward expansion of the genetic alphabet: Optimization of interbase hydrophobic interactions. )」、ウー.ワイ.;オガワ、エー.ケー.;バーガー、エム;マクミン、ディー.エル.;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(Wu.Y.;Ogawa,A.K.;Berger,M.;McMinn,D.L.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、7621〜7632ページ。2.「遺伝子アルファベットの拡大に対する取り組み:非常に安定な自己対合疎水性塩基のDNAポリメラーゼ認識(Efforts toward expansion of the genetic alphabet: DNA polymerase recognition
of a highly stable, self-pairing hydrophobic base. )」、マクミン、ディー.エル.;オガワ、エー.ケー.;ウー.ワイ.;リウ、ジェー.;シュルツ、ピー.ジー.;ロメスベルグ、エフ.イー.(McMinn,D.L.;Ogawa,A.K.;Wu.Y.;Liu,J.;Schultz,P.G.;Romesberg,F.E.)、J.Am.Chem.Soc.、1999年、第121巻、11585〜11586ページ)
(「非水素結合及び非形状相補的塩基対を含有する安定なDNA二本鎖:安定性決定因子としての鎖間スタッキング(A stable DNA duplex containing a non-hydrogen-bonding and non-shape complementary base couple: Interstrand stacking as the stability
determining factor.)」、ボロッツチー、シー.;ハベルリー、エー.;ロイマン、シー(Brotschi,C.;Harberli,A.;Leumann,C、J.)、Angew.Chem.Int.Ed.、2001年、第40巻、3012〜3014ページ)
(「2,2’−ビピリジンリガンドシド:二本鎖内金属錯体によりDNAを修飾するための新規構成単位(2,2'-Bipyridine Ligandoside: A novel building block for modifying DNA with intra-duplex metal complexes.)」、ワイツマン、エイチ.;トル、ワイ(Weizmann,H.;Tor,Y.)、J.Am.Chem.Soc.、2001年、第123巻、3375〜3376ページ)
Figure 2006522831
(「副溝の水和は、DNA二本鎖の安定性に重要である(Minor groove hydration is critical to the stability of DNA duplexes.)」、ラン、ティー.;マクロウグリン、エル.ダブリュ(Lan,T.;McLaughlin,L.W.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、6512〜6513ページ)
Figure 2006522831
(「隣接天然塩基の選択性に対する普遍的塩基である3−ニトロピロールの影響(Effects of the Universal base 3-nitropyrrole on the selectivity of neighboring natural bases. )」、オリバー、ジェー.エス.;パーカー、ケー.エー.;サッグス、ジェー.ダブリュ.(Oliver,J.S.;Parker,K.A.;Suggs,J.W)、Organic Lett.、2001年、第3巻、1977〜1980ページ。2.「DNA二本鎖及び三本鎖の安定性に対する1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール残基の影響(Effects of the 1-(2'-deoxy- β-D-ribofuranosyl)-3-nitropyrrol residue on the stability of DNA duplexes and triplexes. )」、アモソバ、オー,;ジョージ ジェー.;フレスコ、ジェー.アール.(Amosova,O.;George J.;Fresco,J.R.)、Nucleic Acids Res.、1997年、第25巻、1930〜1934ページ。3.「普遍的ヌクレオシド:1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロールによる合成、構造及びデオキシリボ核酸シーケンシング(Synthesis, structure and deoxyribonucleic acid sequencing with a universal nucleosides: 1-(2'-deoxy-β-D-ribofuranosyl)-3-nitropyrrol.)」、バーグストロム、ディー.イー.;ツァング、ピー.;トマ、ピー.エイチ.;アンドリュース、ピー.シー.;ニコルズ、アール.(Bergstorm,D.E.;Zhang,P.;Toma,P.H.;Andrews,P.C.;Nichols,R.)、J.Am.Chem.Soc.、1995年、第117巻、1201〜1209ページ)
Figure 2006522831
(「一般的な三本鎖DNA認識スキームを対象とするモデル研究:有機溶媒中でCG塩基対を結合する新規DNA塩基(Model studies directed toward a general triplex DNA recognition scheme: a novel DNA base that binds a CG base-pair in an organic solvent. )」、ジマーマン、エス.シー.;シュミット、ピー.(Zimmerman,S.C.;Schmitt,P.)、J.Am.Chem.Soc.、1995年、第117巻、10769〜10770ページ)
Figure 2006522831
(「普遍的光切断DNA塩基:ニトロピペロニル2’−デオキシリボシド(A universal, photocleavable DNA base: nitropiperonyl 2'-deoxyriboside.)」、J.Org.Chem.、2001年、第66巻、2067〜2071ページ)
Figure 2006522831
(「2−アシルアミノ−1,8−ナフチリジンによる単一グアニンバルジの認識(Recognition of a single guanine bulge by 2-acylamino-1,8-naphthyridine. )」、ナカタニ、ケー.;サンド、エス.;サイトー、アイ.(Nakatani,K.;Sando,S.;Saito,I.)、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、2172〜2177ページ。b.「GCダブレットの光酸化により明らかであるような
単一グアニンバルジへの2−アミノ−1,8−ナフチリジンの特異的結合(Specific binding of 2-amino-1,8- naphthyridine into single guanine bulge as evidenced by photooxidation of GC doublet.)」、ナカタニ、ケー.;サンド、エス.;ヨシダ、ケー.;サイトー、アイ.(Nakatani,K.;Sando,S.;Yoshida,K.;Saito,I.)、Bioorg.Med.Chem.Lett.、2001年、第11巻、335〜337ページ)
Figure 2006522831
他の普遍的塩基は、下記式を有することができる:
Figure 2006522831
(式中、
Qは、N又はCR44であり、
Q’は、N又はCR45であり、
Q”は、N又はCR47であり、
Q’’’は、N又はCR49であり、
ivは、N又はCR50であり、
44は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリルであるか、あるいはR45と一体となって−OCHO−を形成し、
45は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリルであるか、あるいはR44又はR46と一体となって−OCHO−を形成し、
46は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリー
ル、C〜Cヘテロシクリルであるか、あるいはR45又はR47と一体となって−OCHO−を形成し、
47は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリルであるか、あるいはR46又はR48と一体となって−OCHO−を形成し、
48は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリルであるか、あるいはR47と一体となって−OCHO−を形成し、
49、R50、R51、R52、R53、R54、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71及びR72はそれぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜Cアルキニル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリル、NC(O)R17、又はNC(O)Rから選択され、
55は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜Cアルキニル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリル、NC(O)R17、又はNC(O)Rであるか、あるいはR56と一体となって縮合芳香環を形成し、該縮合芳香環は任意選択で置換されていてもよく、
56は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜Cアルキニル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリル、NC(O)R17、又はNC(O)Rであるか、あるいはR55と一体となって縮合芳香環を形成し、該縮合芳香環は任意選択で置換されていてもよく、
17は、ハロ、NH、NHR、又はNRであり、
は、C〜Cアルキル又は窒素保護基であり、
は、C〜Cアルキルであり、
は、任意選択でハロ、ヒドロキシ、ニトロ、保護ヒドロキシ、NH、NHR、又はNR、C〜Cアルキル、C〜Cアルキニル、C〜C10アリール、C〜C10ヘテロアリール、C〜Cヘテロシクリル、NC(O)R17、又はNC(O)Rで置換されたアルキルである。)
普遍的塩基の例として以下のものが挙げられる:
Figure 2006522831
非対称的な修飾
RNA、例えばiRNA剤は、本明細書中に記載するように、かつ2004年3月8日付けで出願された国際出願第PCT/US04/07070号(これは、参照により本明細書に援用される)に記載されるように、非対称的に修飾することができる。
さらに、本発明は、非対称的な修飾及び本明細書中に記載する別の構成要素を有するiRNA剤を包含する。例えば、本発明は、本明細書中に記載するiRNA剤、例えば、パリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書中に記載する遺伝子(例えば、肝臓で活性な遺伝子)を標的とするiRNA剤、本明細書中に記載する構成様式又は構造を有するiRNA剤、本明細書中に記載する薬物送達モジュールと結合されたiRNA、本明細書中に記載するように投与されるiRNA剤、又は本明細書中に記載するように製剤化されるiRNA剤であって、非対称的な修飾も取り入れるiRNA剤を包含する。
非対称的に修飾されたiRNA剤とは、鎖が他方の鎖上に存在しない修飾を有するiRNA剤である。非対称的な修飾とは、一方の鎖上に見られるが、他方の鎖上には見られな
い修飾である。任意の修飾、例えば本明細書中に記載する任意の修飾は、非対称的な修飾として存在し得る。非対称的な修飾により、修飾に伴う任意の望ましい特性、例えば本明細書中で論述した特性を付与することができる。例えば、非対称的な修飾は、分解に対する耐性、半減期の変更をもたらすこともできるし、iRNA剤に特定の標的(例えば、特定の組織)を指向させることもできるし、鎖のその相補体又は標的配列に対する親和性を調節(例えば、増大又は低減)することもできるし、あるいは末端部分の修飾(例えば、キナーゼ又はRISC機構の経路に関与する他の酵素による修飾)を妨害又は促進することもできる。ある修飾について1つの特性を有するものとして指定しても、該修飾が他の特性を有していないことを意味するわけではない(例えば、安定化を促進する修飾として言及される修飾が、標的化も増強することもありうる)。
理論又はいかなる特定の機構モデルによっても拘束されることは望まないが、非対称的な修飾は、iRNA剤をセンス鎖及びアンチセンス鎖の異なるすなわち「非対称的」機能という観点で最適化させることが可能であると考えられる。例えば、両方の鎖がヌクレアーゼ耐性を増大するように修飾されてもよいが、変更によってはRISC活性が阻害され得るため、これらの変更をセンス鎖に関して選択してもよい。さらに、一部の修飾、例えば標的化部分は、例えばRISC複合体の切断活性を妨害しうる大きな嵩高い基を付加することができるので、そのような修飾はセンス鎖に配置されることが好ましい。したがって、標的化部分、特に嵩高い標的化部分(例えば、コレステロール)は、センス鎖に優先的に付加される。一実施形態では、バックボーンのリン酸をSで置換する非対称的修飾、例えばホスホロチオエート修飾がアンチセンス鎖に存在し、かつ2’修飾、例えば2’OMeがセンス鎖に存在する。標的化部分は、iRNA剤のセンス鎖の5’又は3’末端のいずれか(又は両方)に存在し得る。好ましい例では、アンチセンス鎖においてはバックボーンのPがSで置き換えられ、2’OMeがセンス鎖に存在し、標的化部分がiRNA剤のセンス鎖の5’又は3’末端のいずれかに付加される。
好ましい実施形態では、非対称的に修飾されたiRNA剤は、アンチセンス鎖上では見られない修飾をセンス鎖上に有し、アンチセンス鎖は、センス鎖上では見られない修飾を有する。
鎖はそれぞれ、1つ又はそれ以上の非対称的修飾を包含し得る。例を挙げると、一方の鎖は、iRNA剤に対して第1の特性を付与する第1の非対称的修飾を包含することができ、他方の鎖は、iRNAに対して第2に特性を付与する第2の非対称的修飾を有することができる。例えば、一方の鎖、例えばセンス鎖は、iRNA剤が組織を標的とするような修飾を有することができ、他方の鎖、例えばアンチセンス鎖は、標的遺伝子配列とのハイブリダイゼーションを促進する修飾を有する。
幾つかの実施形態では、両方の鎖が同じ特性を最適化するように、例えば核酸分解に対する耐性を増大させるように修飾することができるが、例えば修飾がさらに他の特性に影響を及ぼすという理由で、センス鎖及びアンチセンス鎖に関して異なる修飾が選ばれる。例えば、一部の変更は、RISC活性に影響を及ぼし得るため、これらの修飾はセンス鎖について選ばれる。
ある実施形態では、一方の鎖は、非対称的な2’修飾、例えば2’OMe修飾を有し、他方の鎖は、リン酸バックボーンの非対称的修飾、例えばホスホロチオエート修飾を有する。したがって、一実施形態では、アンチセンス鎖が非対称的な2’OMe修飾を有し、センス鎖が非対称的なホスホロチオエート修飾を有する(あるいは、その逆でもよい)。特に好ましい実施形態では、本発明のiRNA剤は、センス鎖上に非対称的な2’−Oアルキル、好ましくは2’−OMe修飾を、アンチセンス鎖には非対称的なバックボーンのP修飾、好ましくはホスホロチオエート修飾を有する。1つ又は多数の2’−OMe修飾
が存在することができ、例えば、センス鎖の少なくとも2個、3個、4個、5個又は6個のサブユニットを2’−OMe修飾することができる。1つ又は多数のホスホロチオエート修飾が存在することができ、例えば、アンチセンス鎖の少なくとも2個、3個、4個、5個又は6個のサブユニットをホスホロチオエート修飾することができる。センス鎖上に多数の2’−OMe修飾及びアンチセンス鎖上に多数のホスホロチオエート修飾が存在するiRNA剤を有することが好ましい。一方又は両方の鎖上のすべてのサブユニットを前記のように修飾することもできる。両方の鎖上の多数の非対称的修飾の特に好ましい実施形態は、長さが約20〜21サブユニット、好ましくは19サブユニットの二本鎖領域、及び長さが約2サブユニットの1個又は2個の3’突出部を有する。
非対称的な修飾は、ヌクレアーゼ、例えばエンドヌクレアーゼによる分解に対する耐性を促進するのに有用である。iRNA剤は、分解に対する耐性を促進する1つ又はそれ以上の非対称的修飾を包含することができる。好ましい実施形態では、アンチセンス鎖上の修飾は、標的のサイレンシングを妨害しない修飾、例えば標的の切断を妨害しない修飾である。鎖上のすべてではないにしても、ほとんどの部位が、エンドヌクレアーゼによる分解に対してある程度弱い。相対的に弱い部位を特定し、分解を阻害する非対称的修飾を挿入することができる。多くの場合、iRNA剤におけるUA部位の非対称的修飾を提供することが望ましく、場合によっては、両方の鎖上のUA配列に非対称的修飾を提供することが望ましい。エンドヌクレアーゼによる分解を阻害する修飾の例は、本明細書中に見出すことができる。特に好適な修飾としては、2’位修飾(例えば特にセンス鎖上のUへの2’OMe部分の付与)、バックボーンの修飾(例えば、特にアンチセンス鎖上のU若しくはA又はその両方についてリン酸バックボーンのOをSで置き換えること(例えば、ホスホロチオエート修飾の提供)による修飾)、UをC5アミノリンカーで置き換えること、AをGで置き換えること(配列の変更は、センス鎖上に位置し、アンチセンス鎖上には位置しないことが好ましい)、及び2’、6’、7’又は8’位の修飾が挙げられる。好ましい実施形態は、1つ又はそれ以上のこれらの修飾がセンス鎖上に存在するが、アンチセンス鎖上には存在しない実施形態、あるいはアンチセンス鎖のほうがこのような修飾の数が少ない実施形態である。
非対称的な修飾は、エキソヌクレアーゼによる分解を阻害するために使用することができる。非対称的な修飾としては、一方の鎖のみが修飾されるもの、ならびに両方が修飾されるものを挙げることができる。好ましい実施形態では、アンチセンス鎖上の修飾は、標的のサイレンシングを妨害しない修飾、例えば標的の切断を妨害しない修飾である。幾つかの実施形態は、センス鎖上、例えば3’突出部の例えば3’末端に、及びアンチセンス鎖上、例えば3’突出部の例えば3’末端に、非対称的修飾を有する。修飾により異なるサイズの構成部分が導入される場合、大きいほうがセンス鎖上に存在することが好ましい。修飾により異なる電荷の構成部分が導入される場合、より大きな電荷を有する部分がセンス鎖上に存在することが好ましい。
エキソヌクレアーゼによる分解を阻害する修飾の例は、本明細書中に見出すことができる。特に好適な修飾としては、2’位修飾(例えば3’突出部の例えば3’末端への2’OMe部分の提供(3’末端とは、文脈により示されるように、分子の3’位の原子、又は最も3’側の構成部分、例えば最も3’側のP又は2’位を意味する))、例えばPをSで置き換えること(例えば、ホスホロチオエート修飾の提供)もしくは3’突出部の例えば3’末端におけるメチル化Pの使用によるバックボーンの修飾、2’位修飾の組合せ(例えば、2’OMe部分の提供と、例えばPをSで置き換えること(例えば、ホスホロチオエート修飾の提供)もしくは3’突出部の例えば3’末端におけるメチル化Pの使用によるバックボーンの修飾との組合せ)、3’アルキルによる修飾、3’突出部の例えば3’末端における脱塩基ピロリジンによる修飾、ナプロキセン、イブプロフェン又はその他の分解を阻害する構成部分による3’末端の修飾が挙げられる。好ましい実施形態は、
1つ又はそれ以上のこれらの修飾がセンス鎖上に存在するが、アンチセンス鎖上には存在しないもの、あるいはアンチセンス鎖のほうがこのような修飾の数が少ない実施形態である。
標的化に影響を及ぼす修飾、例えば本明細書中に記載する修飾を、非対称的修飾として提供することが可能である。例えば標的の切断を阻害することにより、サイレンシングを阻害し得る標的化修飾は、センス鎖の非対称的修飾として提供され得る。体内分布を変化させる構成部分(例えばコレステロール)は、センス鎖における1つ又はそれ以上(例えば、2つ)の非対称的修飾として提供され得る。比較的大きな分子量(例えば400、500又は1,000ダルトンを上回る分子量)を有する構成部分を導入する標的化修飾、あるいは電荷を有する構成部分(例えば、2つ以上の正電荷又は1つの負電荷を有する構成部分)を導入する標的化修飾は、センス鎖上に配置させることができる。
鎖のその相補体又は標的に対する親和性を調節する(例えば、増大又は低下させる)修飾、例えば本明細書中に記載する修飾は、非対称的修飾として提供され得る。これらの修飾としては、5メチルU、5メチルC、プソイドウリジン、ロックト核酸、2チオU及び2−アミノ−Aが挙げられる。幾つかの実施形態では、これらの1つ又はそれ以上がアンチセンス鎖上に提供される。
iRNA剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する規定構造を有し、多くの場合例えば2又は3ヌクレオチドの短い一本鎖の突出部が、一方又は両方の3’末端に存在する。非対称的な修飾を、例えばiRNA内に選択的に位置させることにより、このような構造の活性を最適化するのに使用することができる。例えば、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端により規定されるiRNA剤の末端領域は、機能にとって重要である。この領域は、末端の2個、3個又は4個のヌクレオチド対と任意の3’突出部とを含むことができる。好ましい実施形態では、以下、すなわち:センス鎖のキナーゼ活性化を阻害するセンス鎖5’末端の修飾(例えば、キナーゼ分子を標的とする複合体の結合、又は5’エキソヌクレアーゼによる分解に対して保護的に作用する修飾の使用など)、又はセンス鎖とアンチセンス鎖との間の結合を増強することにより分子のこの末端にある「緊密な」構造を促進する、いずれか一方の鎖、好ましくはセンス鎖の修飾、のうち1つ又はそれ以上をもたらす非対称的修飾が使用される。
センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の5’末端により規定されるiRNA剤の末端領域もまた機能にとって重要である。この領域は、末端の2個、3個又は4個のヌクレオチド対と任意の3’突出部とを含むことができる。好ましい実施形態は、センス鎖とアンチセンス鎖との間の結合を減少させることにより分子のこの末端にある「開放的な」構造を促進する、いずれか一方の鎖、好ましくはセンス鎖の非対称的修飾を包含する。このような修飾としては、分子を標的とする複合体を配置すること、あるいはセンス鎖のこの領域におけるヌクレアーゼ耐性を促進する修飾が挙げられる。キナーゼ活性化を阻害するアンチセンス鎖の修飾は、好ましい実施形態では回避される。
センス鎖に非対称的に配置される例示的な修飾としては、以下のものが挙げられる。
(a)バックボーン修飾(例えば、バックボーンのPの修飾)であって、PをSで置き換えること、又はアルキル若しくはアリル(例えば、Me)で置換されたP、及びジチオエート(S−P=S)を含む;これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するのに使用することができる;
(b)2’−Oアルキル(例えば、2’−OMe)、3’−Oアルキル(例えば、3’−OMe)(末端及び内部位置の少なくともいずれかを修飾);これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するため、又はアンチセンス鎖へのセンス鎖の結合を増強するために使用することができ、3’位修飾は、RISCによるセンス鎖活性化を回避するためにセン
ス鎖の5’末端で使用することができる;
(c)2’〜5’結合(2’−H、2’−OH及び2’−OMeによるもの、及びP=O又はP=Sによるもの);これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するため、又はアンチセンス鎖へのセンス鎖の結合を阻害するために使用することもできるし、あるいはRISCによるセンス鎖活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端で使用することもできる;
(d)L糖(例えば、2’−H、2’−OH及び2’−OMeを有する2’L−リボース、L−アラビノース);これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するため、又はアンチセンス鎖へのセンス鎖の結合を阻害するために使用することもできるし、あるいはRISCによるセンス鎖活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端で使用することもできる;
(e)修飾糖(例えば、ロックト核酸(LNA)、ヘキソース核酸(HNA)及びシクロヘキセン核酸(CeNA));これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するため、又はアンチセンス鎖へのセンス鎖の結合を阻害するために使用することもできるし、あるいはRISCによるセンス鎖活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端で使用することもできる;
(f)核酸塩基修飾(例えば、C−5修飾ピリミジン、N−2修飾プリン、N−7修飾プリン、N−6修飾プリン);これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するために、又はアンチセンス鎖へのセンス鎖の結合を促進するために使用することができる;
(g)カチオン基及び双性イオン基(末端にあることが好ましい);これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するために使用することができる;
(h)複合体基(末端位置にあることが好ましい)、例えば、ナプロキセン、ビオチン、コレステロール、イブプロフェン、葉酸、ペプチド及び糖質;これらの修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するため、又は分子を標的化するために使用することもできるし、あるいはRISCによるセンス鎖活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端で使用することもできる。
アンチセンス鎖に非対称的に配置される例示的な修飾としては、以下のものが挙げられる:
(a)バックボーン修飾(例えば、バックボーンのPの修飾)であって、PをSで置き換えること、又はアルキル若しくはアリル(例えば、Me)で置換されたP、及びジチオエート(S−P=S)を含む;
(b)2’−Oアルキル(例えば、2’−OMe)(末端位置を修飾);
(c)2’〜5’結合(2’−H、2’−OH及び2’−OMeによるもの(例えば、3’末端での末端修飾);P=O又はP=Sによる好ましくは3’末端の修飾);これらの修飾は、キナーゼ活性のようなRISC酵素活性を妨害し得るため、5’末端領域からは排除されることが好ましい;
(d)L糖(例えば、2’−H、2’−OH及び2’−OMeを有するL−リボース、L−アラビノース);例えば、3’末端での末端修飾;例えばP=O又はP=Sによる好ましくは3’末端の修飾;これらの修飾は、キナーゼ活性を妨害し得るため、5’末端領域から排除されることが好ましい;
(e)修飾糖(例えば、LNA、HNA及びCeNA);これらの修飾は、センス鎖とアンチセンス鎖との間の対合の望ましくない増強に寄与し得るが、多くの場合は5’領域において「緩い」構造を有することが好ましいので、さらに該修飾はキナーゼ活性を妨害し得るので、5’末端領域からは排除されることが好ましい;
(f)核酸塩基修飾(例えば、C−5修飾ピリミジン、N−2修飾プリン、N−7修飾プリン、N−6修飾プリン);
(g)カチオン基及び双性イオン基(末端にあることが好ましい);
糖の2’位、糖の3’位にあるカチオン基及び双性イオン基;核酸塩基修飾(例えば、C−5修飾ピリミジン、N−2修飾プリン、N−7修飾プリン、N−6修飾プリン)とし
てのカチオン基及び双性イオン基;
複合体基(末端位置にあることが好ましい)、例えば、ナプロキセン、ビオチン、コレステロール、イブプロフェン、葉酸、ペプチド及び糖質であって、但し、嵩高い基又は概してRISC活性を阻害する基はあまり好ましくないはずである。
アンチセンス鎖の5’−OHは、活性を促進するように遊離型に保たれるべきである。幾つかの好ましい実施形態では、ヌクレアーゼ耐性を促進する修飾は、3’末端、特に3’突出部に包含されるべきである。
別の態様では、本発明は、iRNA剤を最適化する方法、例えば安定化する方法を特徴とする。該方法は、活性を有する配列を選択すること、該配列に1つ又はそれ以上の非対称的な修飾を導入することを包含し、非対称的な修飾の導入によりiRNA剤の特性が最適化されるが、活性の減少はもたらされない。
活性の減少とは、予め選択されたレベルの減少よりも小さい減少とすることができる。好ましい実施形態では、活性の減少とは、修飾が導入されないこと以外は同じiRNAと比較した場合に、5%、10%、20%、40%又は50%未満の減少であることを意味する。活性は、例えば、in vivo又はin vitroで測定することができ、いずれにおける結果も、所要の活性維持を実証するのに十分である。
最適化される特性は、本明細書中に記載する任意の特性、特に本明細書中の非対称的な修飾に関するセクションで論述する特性であり得る。修飾は、任意の非対称的な修飾、例えば、本明細書中の非対称的な修飾に関するセクションで記載する非対称的な修飾であり得る。特に好ましい非対称的な修飾は、特にセンス配列における2’−Oアルキル修飾(例えば2’−OMe修飾)、及びアンチセンス鎖におけるバックボーンのOの修飾、特にホスホロチオエート修飾である。
好ましい実施形態では、センス配列が選択されて非対称的な修飾が付与される一方で、他の実施形態ではアンチセンス配列が選択されて非対称的な修飾が付与される。幾つかの実施形態では、センス配列及びアンチセンス配列がともに選択され、それぞれ1つ又はそれ以上の非対称的な修飾が付与される。
多数の非対称的な修飾が、センス配列及びアンチセンス配列の一方又は両方に導入され得る。配列は、少なくとも2個、4個、6個、8個又はそれ以上の修飾を有することができ、配列のすべてのモノマー又は実質的にすべてのモノマーを修飾することができる。
表3は、選択された修飾を有する鎖I及び選択された修飾を有する鎖IIを有する例を示す。
Figure 2006522831
Z−X−Y構成様式
RNA、例えばiRNA剤は、本明細書中に記載するものならびに2003年10月9日付けで出願された同時係属中の共同所有されている米国仮出願第60/510,246号(これは、参照により本明細書中に援用される)、2003年10月10日付けで出願された同時係属中の共同所有されている米国仮出願第60/510,318号(これは、参照により本明細書中に援用される)及び2004年3月8日付けで出願された同時係属出願中の共同所有されている国際出願第PCT/US04/07070号に記載されているもののようなZ−X−Y構成様式又は構造を有することができる。
さらに、本発明は、Z−X−Y構造及び本明細書中に記載する別の構成要素を有するi
RNA剤を包含する。例えば、本発明は、本明細書中に記載するiRNA剤、例えばパリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書中に記載する遺伝子(例えば、腎臓で活性な遺伝子)を標的とするiRNA剤、本明細書中に記載する両親媒性送達剤と結合されたiRNA、本明細書中に記載する薬物送達モジュールと結合されたiRNA、本明細書中に記載するように投与されるiRNA剤、又は本明細書中に記載するように製剤化されるiRNA剤であって、Z−X−Y構成様式も取り入れるiRNA剤を包含する。
したがって、iRNA剤は、第1のセグメントであるZ領域、第2のセグメントであるX領域、及び任意選択で第3の領域であるY領域:
Z−X−Y
を有することができる。
一方ではZ及び/又はYの一方又は両方、かつ他方ではXにおけるサブユニットを修飾することが望ましい場合がある。場合によっては、サブユニットは、同じ修飾又は同じ種類の修飾を有するが、Z及び/又はYにおいて施される修飾は、Xにおいて施される修飾と異なる場合のほうが多い。
Z領域は通常、iRNA剤の末端を包含する。Z領域の長さは多様であり得るが、通常2〜14個、より好ましくは2〜10個のサブユニットの長さである。通常、Z領域は一本鎖状である(すなわちZ領域は、別の鎖の塩基と塩基対合しない)が、幾つかの実施形態では、自己会合して、例えばループ構造を形成し得る。このような構造は、鎖の末端が折り返して鎖内二本鎖を形成することにより形成され得る。例えば、通常2個又はそれ以上の対合しないサブユニットでできた折り返し領域又は接続領域を有する2個、3個、4個、5個又はそれ以上の鎖内塩基対が生じ得る。これは、鎖の一方の末端で生じてもよいし両末端で生じてもよい。Z領域の典型的な実施形態は、一本鎖突出部、例えば本明細書の他の箇所に記載する長さの突出部である。したがって、Z領域は、3’又は5’末端の一本鎖でもよいし、又は3’又は5’末端の一本鎖を包含していてもよい。Z領域はセンス鎖でもアンチセンス鎖でもよいが、アンチセンスである場合には、領域は3−突出部であることが好ましい。Z領域における典型的なサブユニット間結合としては、P=O、P=S、S−P=S、P−NR及びP−BRが挙げられる。キラルP=X(式中、Xは、S、N又はBである)のサブユニット間結合もまた存在することができる(これらのサブユニット間結合は、本明細書中の他の箇所でより詳細に論述している)。他の好ましいZ領域サブユニット修飾(同様に本明細書中の他の箇所で論述)としては、3’−OR、3’SR、2’−OMe、3’−OMe及び2’OH修飾ならびに構成部分、α立体配置の塩基、ならびに2’アラビノ修飾を挙げることができる。
X領域は多くの場合、一本鎖iRNA剤の場合には一本鎖の対応する領域とともに、あるいは二本鎖のiRNA剤の場合には他方の鎖の対応する領域とともに、二本鎖状をなしている。X領域の長さは多様であり得るが、通常10〜45個、より好ましくは15〜35個のサブユニットである。特に好ましい領域Xは、17個、18個、19個、29個、21個、22個、23個、24個又は25個のヌクレオチド対を包含するが、他の適切な長さは、本明細書中の他の箇所で記載されており、それらを使用することができる。典型的なX領域のサブユニットとしては、2’−OHサブユニットが挙げられる。典型的な実施形態では、サブユニット間リン酸結合が好ましい一方で、ホスホロチオエート又は非リン酸結合は存在しない。X領域において好ましい他の修飾としては、結合を改善するための修飾(例えば、核酸塩基修飾)、カチオン性核酸塩基修飾、及びC−5修飾ピリミジン(例えば、アリルアミン)が挙げられる。幾つかの実施形態は、4個又はそれ以上の連続した2’OHサブユニットを有する。ホスホロチオエートの使用は好ましくないこともあるが、4個未満の連続した2’OHサブユニットを結合する場合に使用することもできる
Y領域は概して、Z領域に関して記載されたパラメータに準ずる。しかしながら、X領域及びZ領域は同じである必要はなく、異なる種類及び異なる数の修飾が存在することができ、実際、一方は通常3’突出部であり、一方は通常5’突出部である。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、2’OHが例えば2’−OMe又は他のアルキルで置換されたリボヌクレオシドをそれぞれが有するY及び/又はZ領域、ならびに2’−OHが非置換のままである少なくとも4個の連続したリボヌクレオシドサブユニットを含むX領域を有する。
iRNA剤のサブユニット結合(サブユニット間の結合)は、例えば分解に対する耐性を促進するために修飾されてもよい。このような修飾の数多くの例が本明細書中に開示されており、その一例がホスホロチオエート結合である。これらの修飾は、領域X、Y及びZのいずれかのサブユニット間に付与することができる。しかしながら、それらの修飾は最小限に抑えられることが好ましく、特に連続した修飾結合は回避されることが好ましい。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、2’OHが例えば2’−OMeで置換されたリボヌクレオシドをそれぞれが有するY及びZ領域、ならびに2’−OHが非置換のままである少なくとも4個の連続したサブユニット(例えば、リボヌクレオシドサブユニット)を含むX領域を有する。
上述のように、iRNA剤のサブユニット結合は、例えば分解に対する耐性を促進するために修飾されてもよい。これらの修飾は、領域Y、X及びZのいずれかのサブユニット間に付与することができる。しかしながら、修飾は最小限に抑えられることが好ましく、特に連続した修飾結合は回避されることが好ましい。
したがって、好ましい実施形態では、iRNA剤のサブユニット結合のすべてが修飾されるわけではなく、より好ましくは、ホスホジエステル結合以外の結合により連結された連続サブユニットの最大数は、2個、3個又は4個である。特に好ましいiRNA剤は、サブユニットがそれぞれ修飾結合(すなわちRNA及びDNAで天然に見られるホスホジエステル結合と比較した場合に分解に対して結合を安定化するように修飾された結合)により結合された4個又はそれ以上の連続したサブユニット、例えば2’−ヒドロキシルリボヌクレオシドサブユニットを持たない。
領域Xにおける上記修飾を最小限に抑えることが特に好ましい。したがって、好ましい実施形態では、Xにおけるヌクレオシドサブユニット結合のそれぞれがホスホジエステル結合であるか、あるいは領域Xのサブユニット結合が修飾される場合、このような修飾は最小限に抑えられる。例えば、Y及び/又はZ領域は、分解に対して安定化されたサブユニット間結合を包含することができるが、このような修飾はX領域では最小限に抑えられ、特に連続した修飾は最小限に抑えられる。したがって、好ましい実施形態ではホスホジエステル結合以外で結合される連続したサブユニットの最大数は、2個、3個又は4個である。特に好ましいX領域は、サブユニットがそれぞれ修飾結合(すなわちRNA及びDNAで天然に見られるホスホジエステル結合と比較した場合に分解に対して結合を安定化するように修飾された結合)により結合された4個又はそれ以上の連続したサブユニット、例えば2’−ヒドロキシルリボヌクレオシドサブユニットを持たない。
好ましい実施形態では、Y及び/又はZは、ホスホロチオエート結合を含まないが、一方又は両方が他の修飾、例えばサブユニット結合の他の修飾を含有してもよい。
好ましい実施形態では、領域X、あるいは場合によっては全iRNA剤が、同一の2’部分を有する3個以下又は4個以下のサブユニットを有する。
好ましい実施形態では、領域X、あるいは場合によっては全iRNA剤が、同一のサブユニット結合を有する3個以下又は4個以下のサブユニットを有する。
好ましい実施形態では、1つ又はそれ以上のホスホロチオエート結合(又はサブユニット結合の他の修飾)がY及び/又はZ中に存在するが、このような修飾結合は、2’位修飾(例えば、2’−O−アルキル部分)を有する隣接した2つのサブユニット(例えばヌクレオシド)を結合しない。例えば、Y及び/又はZにおけるすべての隣接した2’−O−アルキル部分は、ホスホロチオエート結合以外の結合により接続される。
好ましい実施形態では、Y及び/又はZのそれぞれが独立して、2’位修飾を有する隣接したヌクレオシドなどのサブユニット(例えば、2’−O−アルキルヌクレオシド)の間に1つだけホスホロチオエート結合を有する。Y及び/又はZにおいて、2’修飾を有する隣接したヌクレオシドなどのサブユニット(例えば、2’−O−アルキルヌクレオシド)がもう1組存在する場合、この第2の組は、ホスホロチオエート結合以外の結合、例えばホスホロチオエート結合以外の修飾結合により接続される。
好ましい実施形態では、Y及び/又はZのそれぞれが独立して、2’位修飾を有するヌクレオシドなどのサブユニット(例えば、2’−O−アルキルヌクレオシド)の隣接した対を結合する2個以上のホスホロチオエート結合を有するが、2’位修飾を有するヌクレオシドなどのサブユニット(例えば、2’−O−アルキルヌクレオシド)の隣接したサブユニットのうち少なくとも1対は、ホスホロチオエート以外の結合、例えばホスホロチオエート結合以外の修飾結合により結合される。
好ましい実施形態では、Y及び/又はZにおける隣接したサブユニットに関する上述の制限の1つが、Xにおけるサブユニットに関する制限と組み合わされる。例えば、1つ又はそれ以上のホスホロチオエート結合(又はサブユニット結合の他の修飾)がY及び/又はZ中に存在するが、このような修飾結合は、2’修飾(例えば、2’−O−アルキル部分)を有するヌクレオシドなど、2つの隣接したサブユニットを結合しない。例えば、Y及び/又はZのあらゆる隣接した2’−O−アルキル部分は、ホスホロチオエート結合以外の結合により接続される。さらに、X領域は、3個以下又は4個以下の同一のサブユニット(例えば同一の2’部分を有するサブユニット)を有するか、あるいはX領域は、3個以下又は4個以下の同一のサブユニット結合を有するサブユニットを有する。
Y領域及び/又はZ領域は、少なくとも1個、好ましくは2個、3個又は4個の本明細書中に開示する修飾を包含することができる。このような修飾は、独立して、本明細書中に記載する任意の修飾(例えば、ヌクレアーゼ耐性サブユニット、修飾塩基を有するサブユニット、修飾サブユニット間結合を有するサブユニット、修飾糖を有するサブユニット、及び別の構成部分(例えば、標的化部分)に連結されたサブユニット)から選ぶことができる。好ましい実施形態では、2個以上のこのようなサブユニットが存在し得るが、幾つかの実施形態では、1個以下、2個以下、3個以下又は4個以下のこのような修飾が行われるか、又は連続して行われることが好ましい。好ましい実施形態では、修飾の頻度は、Y及び/又はZとXとの間で異なり、例えば、修飾は、Y及び/又はZとXとのうち一方に存在し、他方には存在しない。
X領域は、本明細書中に開示する少なくとも1個、好ましくは2個、3個又は4個の修飾を包含することができる。このような修飾は、独立して、本明細書中に記載する任意の修飾から(例えば、ヌクレアーゼ耐性サブユニット、修飾塩基を有するサブユニット、修飾サブユニット間結合を有するサブユニット、修飾糖を有するサブユニット、及び別の構
成部分(例えば、標的化部分)に連結されたサブユニットから)選ぶことができる。好ましい実施形態では、2個以上のこのようなサブユニットが存在し得るが、幾つかの実施形態では、1個以下、2個以下、3個以下又は4個以下のこのような修飾が行われるか、又は連続して行われることが好ましい。
RRMS(本明細書中の他の箇所に記載する)は、二本鎖のiRNA剤の一方又は両方の鎖の1つ又はそれ以上の部位に導入することができる。RRMSは、Y及び/又はZ領域においては、センス鎖の3’若しくは5’末端又はその付近(末端から1、2又は3位以内)に、あるいはアンチセンス鎖の3’末端又はその付近(末端から2又は3位以内)に配置させることができる。幾つかの実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端又はその付近(5’末端から1、2又は3位以内)にRRMSを有していないことが好ましい。RRMSをX領域に配置することも可能であり、好ましくはセンス鎖に、あるいは標的に対するアンチセンス鎖の結合に重要でないアンチセンス鎖の領域に配置されることになる。
末端における二本鎖の安定性の差次的修飾
一態様では、本発明は、末端における二本鎖の安定性の差次的修飾(DMTDS)を有することができるiRNA剤を特徴とする。
さらに、本発明は、DMTDS及び本明細書中に記載する別の構成要素を有するiRNA剤を包含する。例えば、本発明は、本明細書中に記載するiRNA剤、例えば、パリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書中に記載する遺伝子(例えば、肝臓で活性な遺伝子)を標的とするiRNA剤、本明細書中に記載する構成様式又は構造を有するiRNA剤、本明細書中に記載する両親媒性送達剤と結合されたiRNA、本明細書中に記載する薬物送達モジュールと結合されたiRNA、本明細書中に記載するように投与されるiRNA剤、又は本明細書中に記載するように製剤化されるiRNA剤であって、DMTDSも取り入れるiRNA剤を包含する。
iRNA剤は、アンチセンス鎖二本鎖の5’末端の領域において、該二本鎖が解離又は融解する傾向を増大させること(二本鎖の会合の自由エネルギーを減少させること)により最適化することができる。このことは、例えば、アンチセンス鎖の5’末端の領域に、二本鎖が解離又は融解する傾向を増大させるサブユニットを含めることにより達成することができる。また、5’末端の領域に、二本鎖が解離又は融解する傾向を増大させるリガンドを結合することにより達成することもできる。理論により拘束されることを望まないが、その効果は、ヘリカーゼのような酵素の作用を促進すること、例えばアンチセンス鎖の5’末端に近接した酵素の作用を促進することに起因し得る。
本発明者等はまた、アンチセンス鎖二本鎖の3’末端の領域において、該二本鎖が解離又は融解する傾向を減少させること(二本鎖の会合の自由エネルギーを増大させること)により最適化することができることも発見した。このことは、例えばアンチセンス鎖の3’末端の領域に、二本鎖が解離又は融解する傾向を減少させるサブユニットを含めることにより達成することができる。また、5’末端の領域に、二本鎖が解離又は融解する傾向を減少させるリガンドを結合することにより達成することもできる。
二本鎖の5’末端が解離する傾向を増大させる修飾は、単独で、あるいは本明細書中に記載する他の修飾と、例えば二本鎖の3’末端が解離する傾向を減少させる修飾と併用して使用することができる。同様に、二本鎖の3’末端が解離する傾向を減少させる修飾は、単独で、あるいは本明細書中に記載する他の修飾と、例えば二本鎖の5’末端が解離する傾向を増大させる修飾と併用して使用することができる。
二本鎖のAS 5’末端の安定性の減少
サブユニット対は、解離又は融解を促進するそれらの傾向に基づいて順位付けすることができる(例えば、特定の対の会合又は解離の自由エネルギーに関して、最も簡単なアプローチは、個々の対ごとに対を検査することであるが、次の同類又は同様の分析もまた使用することができる)。解離を促進するという観点では、
A:Uは、G:Cよりも好ましく、
G:Uは、G:Cよりも好ましく、
I:Cは、G:Cよりも好ましく(I=イノシン);
ミスマッチ、例えば非標準的な対合すなわち標準的対合以外の対合(本明細書中の他の箇所に記載するようなもの)は、標準的な(A:T、A:U、G:C)対よりも好ましく;
普遍的塩基を含む対合は、標準的な対合よりも好ましい。
典型的なds iRNA剤は、以下の通りに図示することができる:
Figure 2006522831
Sはセンス鎖を示し、ASはアンチセンス鎖を示し、Rは任意選択の(かつ好ましくない)5’センス鎖突出部を示し、Rは任意選択の(しかし、好ましい)3’センス突出部を示し、Rは任意選択の(しかし、好ましい)3’アンチセンス突出部を示し、Rは任意選択の(かつ好ましくない)5’アンチセンス突出部を示し、Nはサブユニットを示し、[N]は、さらなるサブユニット対が存在し得ることを示し、Pは、センス鎖のNとアンチセンス鎖のNとの対を示す。突出部は、P図では示していない。幾つかの実施形態では、本明細書中の他の箇所に記載するように、3’AS突出部は領域Zに相当し、二本鎖領域は領域Xに相当し、3’S鎖突出部は領域Yに相当する。(図は、最大又は最小の長さを暗に示すことを意味するものではなく、長さに関するガイダンスは、本明細書中の他の箇所に提供される)。
二本鎖を形成する傾向を減少させる対合が、AS鎖の5’末端で二本鎖の1個又はそれ以上の位置において使用されることが好ましい。末端の対(AS鎖に関しては最も5’側の対)は、P−1と称され、それに続く二本鎖内の対合の位置(AS鎖から見ると3’方向に向かっていく)は、P−2、P−3、P−4、P−5等と称される。二本鎖形成を調節する修飾を施すための好ましい領域は、P−5〜P−1、より好ましくはP−4〜P−1、さらに好ましくはP−3〜P−1である。P−1の修飾は特に好ましく、単独でも、あるいは他の位置(複数可)(例えば、上記に同定された位置のいずれか)の修飾(複数可)との併用でもよい。上述の領域の1つに存在する少なくとも1個、より好ましくは2個、3個、4個又は5個の対は、独立に、以下の群:
A:U
G:U
I:C
ミスマッチ対、例えば非標準的な対、すなわち標準的な対以外の対、あるいは普遍的塩基を含む対合
から選ばれることが好ましい。
好ましい実施形態では、解離を促進する対合を達成するのに必要とされるサブユニットの変更はセンス鎖で行われるが、幾つかの実施形態では、該変更がアンチセンス鎖で行われる。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対が、解離を促進する対である。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、A:Uである。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、G:Uである。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、I:Cである。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、ミスマッチ対、例えば、非標準的な対、すなわち標準的な対以外の対である。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、普遍的塩基を含む対である。
二本鎖のAS 3’末端の安定性の増大
サブユニット対は、安定性を促進し、かつ解離又は融解を阻害するそれらの傾向に基づいて順位付けすることができる(例えば、特定の対合の会合又は解離の自由エネルギーに関して、最も簡単な手法は、個々の対ごとに対を検査することであるが、次の同類又は同様の分析もまた使用することができる)。二本鎖の安定性を促進するという観点では、
G:Cは、A:Uよりも好ましく、
ワトソン−クリックの対合(A:T、A:U、G:C)は、非標準的な対合、すなわち標準的な対合以外の対合よりも好ましく、
安定性を増大させる類縁体は、ワトソン−クリックの対合(A:T、A:U、G:C)よりも好ましく、
2−アミノ−A:Uは、A:Uよりも好ましく、
2−チオU又は5Me−チオ−U:Aは、U:Aよりも好ましく、
G−クランプ(4個の水素結合を有するCの類縁体):Gは、C:Gよりも好ましく、
グアナジニウム−G−クランプ:Gは、C:Gよりも好ましく、
プソイドウリジン:Aは、U:Aよりも好ましく、
結合を増強する糖修飾、例えば2’位修飾(例えば、2’F、ENA又はLNA)は、非修飾部分よりも好ましく、二本鎖の安定性を増強するために一方又は両方の鎖上に存在することができる。二本鎖を形成する傾向を増大させる対合が、二本鎖の1つ又はそれ以上の位置でAS鎖の3’末端で使用されることが好ましい。末端の対(AS鎖から見て最も3’側の対)は、Pと称され、これに続く二本鎖の対合の位置(AS鎖から見て5’方向に向かっていく)は、P、P、P、P等と称される。二本鎖形成を調節する修飾を施すための好ましい領域は、P〜P、より好ましくはP〜P、さらに好ましくはP〜Pである。Pでの修飾は特に好ましく、単独でも、あるいは他の位置(複数可)(例えば、上記に同定された位置のいずれか)の修飾(複数可)と併用されてもよい。上述の領域に存在する少なくとも1個、より好ましくは2個、3個、4個又は5個の対は、独立して、以下の群:
G:C
ワトソン−クリックの対合(A:T、A:U、G:C)を上回って安定性を増大させる類縁体を有する対
2−アミノ−A:U
2−チオU又は5Me−チオ−U:A
G−クランプ(4個の水素結合を有するCの類縁体):G
グアナジニウム−G−クランプ:G
プソイドウリジン:A
一方又は両方のサブユニットが、結合を増強する糖修飾、例えば2’位修飾(例えば、2’F、ENA又はLNA)を有する対
から選ばれることが好ましい。
好ましい実施形態では、P−1〜P−4における少なくとも2個又は3個の対は、二本鎖の安定性を促進する対である。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、G:Cである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、ワトソン−クリックの対合を上回って安定性を増大させる類縁体を有する対である。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、2−アミノ−A:Uである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、2−チオU又は5Me−チオ−U:Aである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、G−クランプ:Gである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、グアニジニウム−G−クランプ:Gである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、プソイドウリジン:Aである。
好ましい実施形態では、P〜Pにおける少なくとも2個又は3個の対は、一方又は両方のサブユニットが、結合を増強する糖修飾、例えば2’位修飾(例えば、2’F、ENA又はLNA)を有する対である。
G−クランプ及びグアニジニウムG−クランプについては、以下の参照文献で論述されている。ホルムズ及びガイト(Holmes and Gait)、「2’−O−メチルG−クランプ含有オリゴヌクレオチドの合成及びHIV−1 Tat−TAR相互作用のそれらの阻害(The Synthesis of 2'-O-Methyl G-Clamp Containing Oligonucleotides and Their Inhibition of the HIV-1 Tat-TAR Interaction)」、Nucleotides、Nucleotides&Nucleic Acids、第22巻:1259〜1262ページ、2003年、ホルムズら(Holmes et al.)、「2’−O−メチルG−クランプリボヌクレオシド類縁体を含有するオリゴヌクレオチドによるin vitroでの及び細胞におけるヒト免疫不全ウイルス1型Tat依存性トランス活性化の立体阻害(S teric inhibition of human immunodeficiency virus type-1 Tat-dependent trans-activation in vitro and in cells by oligonucleotides containing 2'-O-methyl G-clamp ribonucleoside analogues)」、Nucleic Acids Researc
h、第31巻:2759〜2768ページ、2003年、ワイルズら(Wilds,et
al.)、「合成三環式シトシン類縁体:グアニジニウムG−クランプによるグアノシンの認識に関する構造基盤 (Structural basis for recognition of guanosine by a synthetic tricyclic cytosine analogue:Guanidinium G-clamp) 」、Helvetica Chimica Acta、第86巻:966〜978ページ、2003年、ラジェエエフら(Rajeev,et al.)、「三環式シトシン類縁体を含有する高親和性ペプ
チド核酸オリゴマー(High-Affinity Peptide Nucleic Acid Oligomers Containing Tricyclic Cytosine Analogues)」、Organic Letters、第4巻:4395〜4398ページ、2002年、アウシンら(Ausin,et al.)、「アミノ−及びグアニジノ−G−クランプPNAモノマーの合成(Synthesis of Amino- and Guanidino-G-Clamp PNA Monomers)」、Organic Letters、第4巻:4073〜4075ページ、2002年、マイヤーら(Maier et al.)、「三環式シトシン類縁体フェノキサジン及び9−(2−アミノエトキシ)フェノキサジン(「G−クランプ」)を含有するオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性及びそれらのヌクレアーゼ耐性特性の由来(Nuclease resistance of oligonucleotides containing the tricyclic cytosine
analogues phenoxazine and 9-(2-aminoethoxy)-phenoxazine ("G-clamp") and origins
of their nuclease resistance properties) 」、Biochemistry、第41巻:1323〜7ページ、2002年、フラナガンら(Flanagan,et al.)、「アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する増強された効力を付与するシトシン類縁体(A cytosine analog that confers enhanced potency to antisense oligonucleotides) 」、Proceedings Of The National Academy Of
Sciences Of The United States Of America、第96巻:3513〜8ページ、1999年。
二本鎖のAS 5’末端の安定性の減少と二本鎖のAS 3’末端の安定性の増大とを同時に行うこと
上述のように、iRNA剤は、二本鎖のAS 5’末端の安定性を減少させ、かつ二本鎖のAS 3’末端の安定性を増大させるように修飾することができる。このことは、二本鎖のAS 5’末端における1つ又はそれ以上の安定性を減少させる修飾を、二本鎖のAS 3’末端における1つ又はそれ以上の安定性を増加させる修飾と組み合わせることにより達成することができる。したがって、好ましい実施形態は、P−5〜P−1、より好ましくはP−4〜P-1、さらに好ましくはP-3〜P-1における修飾を包含する。P-1での修飾は特に好ましく、単独でも、あるいは他の位置(例えば、上記に同定された位置)との併用でもよい。二本鎖領域のAS 5’末端の上述の領域の1つに存在する少なくとも1個、より好ましくは2個、3個、4個又は5個の対は、独立に、以下の群から選ばれることが好ましい:
A:U
G:C
I:U
ミスマッチ対、例えば非標準的な対合、すなわち標準的な対合以外の対合、あるいは普遍的塩基を含む対合、及び
〜P、より好ましくはP〜P、さらに好ましくはP〜Pでの修飾。Pでの修飾は特に好ましく、単独でも、あるいは他の位置(例えば、上記に同定された位置)との併用でもよい。二本鎖領域のAS 3’末端の上述の領域の1つに存在する少なくとも1個、より好ましくは2個、3個、4個又は5個の対は、独立に、以下の群:
G:C
ワトソン−クリックの対合(A:T、A:U、G:C)を上回って安定性を増大させる類縁体を有する対
2−アミノ−A:U
2−チオU又は5Me−チオ−U:A
G−クランプ(4個の水素結合を有するCの類縁体):G
グアナジニウム−G−クランプ:G
プソイドウリジン:A
一方又は両方のサブユニットが、結合を増強する糖修飾、例えば2’位修飾(例えば、2’F、ENA又はLNA)を有する対
から選ばれることが好ましい。
本発明はまた、DMTDSを有するiRNA剤を選択及び作製する方法を包含する。例えば、iRNA剤として使用するための候補配列に関して標的配列をスクリーニングする場合、本明細書中に記載するDMTDS特性を有する配列、及び、所望のレベルのDMTDSを付与するために好ましくはできる限り少ない変更で特にAS鎖に対して修飾を施すことができる配列を選択することができる。
本発明はまた、iRNA剤候補配列を提供すること、ならびにDMTDS iRNA剤を提供するために、P−5〜P−1における少なくとも1個のP及び/又はP〜P1 における少なくとも1個のPを修飾することを包含する。
DMTDS iRNA剤は、本明細書中に記載する任意の方法において、例えば本明細書中に開示する任意の遺伝子をサイレンシングするために、本明細書中に記載する任意の障害を治療するために、本明細書中に記載する任意の製剤中で、ならびに通常は本明細書中の他の箇所に記載する方法及び組成物において、または本明細書中の他の箇所に記載する方法及び組成物とともに使用することができる。DMTDS iRNA剤は、本明細書中に記載する他の修飾、例えば標的化剤を結合すること又は安定性を増強する修飾を含めること、例えばヌクレアーゼ耐性モノマーを含めることもしくは自己会合して鎖内二本鎖構造を形成する一本鎖突出部(例えば、3’AS突出部及び/又は3’S鎖突出部)を含めること、を取り入れることができる。
好ましくは、これらのiRNA剤は、本明細書中に記載する構成様式を有する。
その他の実施形態
RNA、例えばiRNA剤は、例えば細胞へ送達される外来DNAの鋳型から、in vivoで細胞において産生され得る。例えば、該DNA鋳型をベクターに挿入して、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)により、あるいは定位注射(例えば、チェンら(Chen et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
第91巻:3054〜3057ページ、1994年を参照)により対象へ送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むこともできるし、あるいは遺伝子送達ビヒクルが包埋される徐放性マトリックスを含むこともできる。例えば、DNA鋳型は、2つの転写ユニット(iRNA剤の鎖の上部を包含する転写物を産生するもの、及びiRNA剤の下部を包含する転写物を産生するもの)を包含することができる。鋳型が転写されると、iRNA剤が産生され、プロセシングを受けて遺伝子サイレンシングを仲介するsRNA剤断片となる。
in vivo送達
iRNA剤は、対象(例えば、ヒトのような哺乳類)へiRNA剤を効率的に送達するためのポリマーに結合、例えば非共有結合させることができる。iRNA剤は、例えばシクロデキストリンと複合体形成させることができる。シクロデキストリンは、治療用化合物の送達ビヒクルとして使用されている。シクロデキストリンは、シクロデキストリンの疎水性キャビティ内へ収まることが可能な薬物と包接複合体を形成することができる。他の例では、シクロデキストリンは、オリゴヌクレオチド及びそれらの誘導体のような他の生物学的に活性な分子と非共有結合を形成する。シクロデキストリンの使用により、水溶性の薬物送達複合体が創出され、該複合体は標的指向性の基又は他の官能基で修飾することができる。米国特許第5,691,316号(これは、参照により本明細書に援用される)に記載されるオリゴヌクレオチド用のシクロデキストリン細胞送達系は、本発明の方法における使用に適している。この系では、オリゴヌクレオチドはシクロデキストリンと非共有結合的に複合体形成されるか、あるいはオリゴヌクレオチドがアダマンチンに共有結合され、続いてアダマンチンがシクロデキストリンと非共有結合的に結合される。
送達分子には、線状シクロデキストリンコポリマー又は線状酸化シクロデキストリンコポリマーであってシクロデキストリンコポリマーに少なくとも1つのリガンドが結合されたものを挙げることができる。米国特許第6,509,323号(参照により本明細書に援用される)に記載されるような送達系は、本発明における使用に適している。iRNA剤は、線状シクロデキストリンコポリマー及び/又は線状酸化シクロデキストリンコポリマーに結合させることができる。シクロデキストリンコポリマー又は酸化シクロデキストリンコポリマーの一方又は両方を、別のポリマーに架橋させることもでき、かつ/又はリガンドに結合させることもできる。
iRNA送達用組成物は、付加物の特徴的な構造を有する分子化合物である「包接複合体」を使用することができる。この構造では、「ホスト分子」が、送達ビヒクル中の別の化合物の少なくとも1部を空間的に封入する。封入される化合物(「ゲスト分子」)は、ホスト分子のフレームワーク構造に影響を及ぼすことなくホスト分子のキャビティに配置される。「ホスト」は、好ましくはデキストリンであるが、米国特許公報第2003/0008818号(参照により本明細書に援用される)で提唱される任意の分子であり得る。
シクロデキストリンは、各種のイオン及び分子と相互作用することができ、生じた包接化合物は、「ホスト−ゲスト」複合体の種類に属する。ホスト−ゲストの関係内で、ホスト分子及びゲスト分子の結合部位は、立体電子的意味合いで相補的であるべきである。本発明の組成物は、少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの治療薬を、通常はポリマー及び治療薬(例えば、iRNA剤)の粒子状複合物の形態で含有することができる。iRNA剤は、1つ又はそれ以上の複合化剤を含有することができる。粒子状複合物の少なくとも1つのポリマーは、ホスト−ゲスト又はゲスト−ホスト相互作用で複合化剤と相互作用して、ポリマーと複合化剤との間で包接複合体を形成することができる。より具体的には、ポリマー及び複合化剤は、組成物に機能性を導入するのに使用することができる。例えば、粒子状複合物の少なくとも1つのポリマーはホスト機能を有し、ゲスト機能を有する複合化剤と包接複合体を形成する。別例として、粒子状複合物の少なくとも1つのポリマーはゲスト機能を有し、ホスト機能を有する複合化剤と包接複合体を形成する。粒子状複合物のポリマーはまた、ホスト機能及びゲスト機能の両方を含有し、ゲストの複合化剤及びホストの複合化剤と包接複合体を形成することもできる。機能性を有するポリマーは、例えば細胞標的化及び/又は細胞との接触(例えば、肝細胞に対する標的化又は肝細胞との接触)、細胞間輸送、ならびに細胞への流入及び細胞からの放出のうち少なくともいずれか)を促進することができる。
粒子状複合物を形成する際、iRNA剤は、その生物学的又は治療的活性を維持してもよいし、あるいは維持しなくてもよい。治療用組成物から、具体的には粒子状複合物のポリマーから放出されると、iRNA剤の活性は回復する。したがって、粒子状複合物は好適には、例えば分解に起因する活性の損失からiRNA剤を保護し、生物学的利用性を増強する。したがって、組成物は、iRNA剤又は任意の活性な化学物質に安定性、特に貯蔵中又は溶液中の安定性を提供するのに使用することができる。iRNA剤は、粒子状複合物又は治療用組成物を形成する前又は後に、リガンドでさらに修飾されてもよい。リガンドは、さらなる機能性を提供することができる。例えば、リガンドは、標的化部分であり得る。
生理学的影響
本明細書中に記載するiRNA剤は、治療上の毒性の決定が、該iRNA剤と、ヒト配列および非ヒト動物配列の両方との相補性によってより容易になされるように設計することができる。これらの方法では、RNA剤は、ヒト由来の核酸配列及び少なくとも1種類
の非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類(例えば、げっ歯類、反すう類又は霊長類)由来の核酸配列に完全に相補的である配列から構成され得る。例えば、非ヒト哺乳類は、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、サル、ピグミーチンパンジー、ナミチンパンジー、アカゲザル又はカニクイザルであり得る。iRNA剤の配列は、非ヒト哺乳類及びヒトの相同遺伝子、例えば発がん遺伝子又は腫瘍抑制遺伝子内の配列に相補的であり得る。非ヒト哺乳類におけるiRNA剤の毒性を決定することにより、ヒトにおけるiRNA剤の毒性を推定することができる。より厳しい毒性試験のためには、iRNA剤を、ヒト及び2種類以上(例えば2種類又は3種類又はそれ以上)の非ヒト動物に対して相補的とすることができる。
本明細書中に記載する方法は、ヒトに対するiRNA剤の任意の生理学的作用、例えば毒性作用のような任意の望ましくない作用、又は任意の好ましい作用、すなわち所望の作用と相関させるのに使用することができる。
送達モジュール
RNA、例えば本明細書中に記載するiRNA剤は、薬物送達複合体又はモジュール(例えば、本明細書中に記載するもの及び同時係属中の共同所有されている2003年3月12日付けで出願された米国特許仮出願第60/454,265号及び2004年3月8日付けで出願された国際出願第PCT/US04/07070号(これらはともに、参照により本明細書に援用される)に記載されるもの)とともに使用することができる。
さらに、本発明は、このような薬物送達複合体又はモジュールと組み合わされ、結合され、かつ送達される本明細書中に記載するiRNA剤、例えば、パリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書中に記載する遺伝子(例えば、肝臓で活性な遺伝子)を標的とするiRNA剤、本発明に記載する化学修飾(例えば、分解に対する耐性を増強する修飾)を有するiRNA剤、本明細書中に記載する構成様式又は構造を有するiRNA剤、本明細書中に記載するように投与されるiRNA剤、又は本明細書中に記載するように製剤化されるiRNA剤を包含する。
iRNA剤は、モジュラー複合体を特徴とする送達剤に複合体形成させることができる。複合体は、(a)縮合剤(例えば、核酸を例えばイオン相互作用又は静電相互作用により誘引(例えば、結合)することが可能な作用物質)、(b)融合剤(例えば、細胞膜(例えば、エンドソーム膜)と融合すること、及び/又は該膜を通過して輸送されることが可能な作用物質)、及び(c)標的化基、例えば、細胞又は組織を標的とする物質(例えば、肝細胞のような特定の細胞種に結合するレクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質(例えば抗体)、のうち1つ又はそれ以上(好ましくは2つ又はそれ以上、より好ましくは3つすべて)に連結させた担体物質を包含することができる。
iRNA剤、例えば本明細書中に記載するiRNA剤又はsRNA剤は、モジュラー複合体に連結(例えばカップリング又は結合)させることができる。iRNA剤は、複合体の縮合剤と相互作用することができ、複合体は、例えばin vitro又はin vivoで、iRNA剤を細胞へ送達するのに使用することができる。例えば、複合体は、iRNA剤の送達を必要とする対象へiRNA剤を送達するために、例えば障害(例えば、肝臓の疾患又は障害のような本明細書中に記載する障害)を有する対象へiRNA剤を送達するために使用することができる。
融合剤及び縮合剤は、異なる作用物質であってもよいし、又は1つの同じ作用物質であってもよい。例えば、ポリアミノ鎖、例えばポリエチレンイミン(PEI)は、融合剤及び/又は縮合剤であり得る。
送達剤は、モジュラー複合体であり得る。例えば、複合体は、以下の:
(a)縮合剤(例えば、核酸を例えばイオン相互作用により誘引(例えば、結合)することが可能な作用物質)、
(b)融合剤(例えば、細胞膜(例えば、エンドソーム膜)と融合すること及び/又は該膜を通過して輸送されることが可能な作用物質)、及び
(c)標的化基、例えば、細胞又は組織を標的とする物質(例えば、肝細胞のような特定の細胞種に結合するレクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質(例えば抗体)のうち1つ又はそれ以上(好ましくは2つ又はそれ以上の、より好ましくは3つすべて)に連結させた担体物質を包含することができる。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントプロテインA、ムチン糖質、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビオチン、ネプロキシン(Neproxin) 、又はRGDペプチド若しくはRDGペプチド擬似体であり得る。
担体物質
本明細書中に記載するモジュラー複合体の担体物質は、縮合剤、融合剤及び標的化基のうち1つ又はそれ以上を結合するための基剤であり得る。担体物質は内因性の酵素活性を欠いていることが好ましい。担体物質は好ましくは、生体分子、好ましくは高分子である。高分子の生物学的担体が好ましい。担体分子は生分解性であることもまた好ましい。
担体物質は、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)又はグロブリン)、糖質(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又はヒアルロン酸)、又は脂質のような天然に存在する物質であり得る。担体分子はまた、合成ポリマー(例えば、合成ポリアミノ酸)のような組換え分子又は合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル−マレイン酸無水物コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、又はポリホスファジン(polyphosphazine)が挙げられる。他の有用な担体分子は、日常的な方法により同定することができる。
担体物質は、(a)サイズが少なくとも1Daであること、(b)少なくとも5個の荷電基、好ましくは5〜5,000個の荷電基を有すること、(c)少なくとも1:1の担体物質対融合剤の比で複合体中に存在すること、(d)少なくとも1:1の担体物質対縮合剤の比で複合体中に存在すること、(e)少なくとも1:1の担体物質対標的化剤の比で複合体中に存在すること、のうち1つ又はそれ以上を特徴とすることができる。
融合剤
本明細書中に記載するモジュラー複合体の融合剤は、pH環境に応答性である、例えばpH環境に応じて電荷を変化させる作用物質であり得る。エンドソームのpHに遭遇すると、融合剤は、物理的変化、例えばエンドソーム膜を崩壊するか、又はエンドソーム膜の浸透性を増大する浸透圧特性の変化を引き起こすことができる。好ましくは、融合剤は、生理学的範囲未満のpHで、電荷を変化させる(例えば、プロトン化されるようになる)。例えば、融合剤は、pH4.5〜6.5でプロトン化されるようになり得る。融合剤は、複合体が例えばエンドサイトーシスによって細胞に取り込まれた後、細胞の細胞質へiRNA剤を放出するように作用することにより、細胞内のiRNA剤の細胞内濃度を増大
させることができる。
一実施形態では、融合剤は、特定のpH範囲に暴露されると、例えば電荷の変化(例えばプロトン化)を受ける構成部分(例えば、アミノ基)を有することができる。融合剤の電荷の変化は、小胞、例えば細胞内小胞(例えば、エンドソーム)の変化(例えば、浸透圧変化)を誘発することができる。例えば、融合剤は、エンドソームのpH環境に暴露されると、エンドソーム膜の多孔性を増大するのに(好ましくは、破裂させるのに)実質的に十分な溶解性又は浸透圧変化を引き起こす。
融合剤は、ポリマー、好ましくはポリアミノ鎖(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))であり得る。PEIは、直鎖状でも、分岐状でも、合成でも天然でもよい。PEIは、例えばアルキル置換されたPEIでもよいし脂質置換されたPEIでもよい。
他の実施形態では、融合剤は、ポリヒスチジン、ポリイミダゾール、ポリピリジン、ポリプロピレンイミン、メリチン又はポリアセタール物質(例えば、カチオン性ポリアセタール)であり得る。幾つかの実施形態では、融合剤は、αらせん構造を有することができる。融合剤は、膜崩壊剤(例えばメリチン)であり得る。
融合剤は、1つ又はそれ以上の以下の特徴を有することができる:(a)サイズが少なくとも1Daであること、(b)少なくとも10個の荷電基、好ましくは10〜5,000個の荷電基、より好ましくは50〜1,000個の荷電基を有すること、(c)少なくとも1:1の融合剤対担体物質の比で複合体中に存在すること、(d)少なくとも1:1の融合剤対縮合剤の比で複合体中に存在すること、(e)少なくとも1:1の融合剤対標的化剤の比で複合体中に存在すること。
他の適切な融合剤は、専門家により試験及び同定され得る。化合物の、pH環境に応答する(例えば、pH環境に応じて電荷を変化させる)能力は、日常的な方法により、例えば細胞アッセイにおいて試験することができる。例えば、試験化合物を細胞と組み合わせるか、又は細胞と接触させて、例えばエンドサイトーシスにより細胞に試験化合物を取り込ませる。続いて、接触させた細胞からエンドソーム調製物を作製することができ、該エンドソーム調製物を対照細胞由来のエンドソーム調製物と比較することができる。接触処理した細胞由来のエンドソーム画分の対照細胞に対する変化(例えば、減少)は試験化合物が融合剤として機能することができることを示す。あるいは、接触処理した細胞及び対照細胞を、例えば顕微鏡法により(例えば、光学顕微鏡法又は電子顕微鏡法により)評価して、細胞におけるエンドソーム集団の差を決定することができる。試験化合物を標識してもよい。別のタイプのアッセイでは、本明細書中に記載するモジュラー複合体は、1つ又はそれ以上の試験融合剤又は推定融合剤を用いて構築される。モジュラー複合体は、iRNAの替わりに標識された核酸を用いて構築することもできる。融合剤の、pH環境に応答する(例えば、pH環境に応じて電荷を変化させる)能力は、モジュラー複合体がいったん細胞により取り込まれれば、上述のように、例えばエンドソーム調製物の調製により、あるいは顕微鏡技法により評価することができる。2工程アッセイもまた実施することができ、該アッセイでは、第1のアッセイが試験化合物単独のpH環境に応答する(例えば、pH環境に応じて電荷を変化させる)能力を評価し、第2のアッセイが、試験化合物を含むモジュラー複合体のpH環境に応答する(例えば、pH環境に応じて電荷を変化させる)能力を評価する。
縮合剤
本明細書中に記載するモジュラー複合体の縮合剤は、iRNA剤と相互作用(例えば、iRNA剤を誘引、保持又はiRNA剤に結合)することができ、(a)iRNA剤を縮合(例えば、iRNA剤のサイズ又は電荷を低減)させ、かつ/又は(b)iRNA剤を
保護(例えば、分解に対してiRNA剤を保護)するように作用することができる。縮合剤は、例えばイオン性相互作用により、核酸(例えば、iRNA剤)と相互作用することができる構成部分(例えば、荷電基)を包含することができる。縮合剤は好ましくは、荷電ポリマー(例えば、ポリカチオン鎖)である。縮合剤は、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、プソイドペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩又はαらせん状ペプチドであり得る。
縮合剤は、以下の特徴を有することができる:(a)サイズが少なくとも1Daであること、(b)少なくとも2個の荷電基、好ましくは2〜100個の荷電基を有すること、(c)少なくとも1:1の縮合剤対担体物質の比で複合体中に存在すること、(d)少なくとも1:1の縮合剤対融合剤の比で複合体中に存在すること、(e)少なくとも1:1の縮合剤対標的化剤の比で複合体中に存在すること。
その他の適切な縮合剤は、専門家により、例えば、核酸(例えば、iRNA剤)と相互作用する試験剤の能力を評価することにより、試験及び同定され得る。試験剤の、核酸(例えば、iRNA剤)と相互作用する(例えば、iRNA剤を縮合又は保護する)能力は、日常的な技法により評価することができる。1つのアッセイでは、試験剤を核酸と接触させて、接触させた核酸のサイズ及び/又は電荷を、分子の質量及び/又は電荷の変化を検出するのに適した技法により評価する。このような技法としては、非変性ゲル電気泳動、免疫学的方法(例えば、免疫沈降)、ゲル濾過、イオン相互作用クロマトグラフィ等が挙げられる。試験剤は、対照と比較して、接触させた核酸の質量及び/又は電荷(好ましくは、両方)を変化させる場合に、縮合剤として同定される。2工程アッセイもまた実施することができ、該2工程アッセイでは、第1のアッセイが試験化合物単独の核酸と相互作用する(例えば、核酸に結合する(例えば、核酸の電荷及び/又は質量を縮合する))能力を評価し、第2のアッセイが、試験化合物を含むモジュラー複合体の、核酸と相互作用する(例えば、核酸に結合する(例えば、核酸の電荷及び/又は質量を縮合する))能力を評価する。
両親媒性送達剤
RNA、例えば本明細書中に記載するiRNA剤は、本明細書中に記載する、ならびに係属中の共同所有されている2003年3月13日付けで出願された米国仮出願第60/455,050号及び2004年3月8日付けで出願された国際出願第PCT/US04/07070号(本願に援用する)に記載されるような、両親媒性送達複合体又はモジュールとともに使用することができる。
さらに、本発明は、このような両親媒性送達複合体と組み合わされ、結合され、かつこのような両親媒性送達複合体により送達される、本明細書中に記載するiRNA剤、例えば、パリンドローム構造のiRNA剤、非標準的な対合を有するiRNA剤、本明細書中に記載する遺伝子(例えば、肝臓で活性な遺伝子)を標的とするiRNA剤、本明細書中に記載する化学修飾(例えば、分解に対する耐性を増強する修飾)を有するiRNA剤、本明細書中に記載する構成様式又は構造を有するiRNA剤、本明細書中に記載するように投与されるiRNA剤、又は本明細書中に記載するように製剤化されるiRNA剤を包含する。
両親媒性分子は、疎水性領域及び親水性領域を有する分子である。このような分子は、脂質(例えば、細胞の脂質二重層)と相互作用する(例えば、浸透又は破壊する)ことができる。したがって、両親媒性分子は、会合された(例えば、結合された)iRNA(例えば、本明細書中に記載するiRNA又はsRNA)の送達剤として作用することができる。本明細書中に記載する組成物(例えば、本明細書中に記載する両親媒性iRNA構築
物)で使用されるべき好ましい両親媒性分子は、ポリマーである。該ポリマーは、二次構造、例えば反復性の二次構造を有し得る。
両親媒性ポリマーの一例は、両親媒性ポリペプチド、例えばポリペプチドが親水面及び疎水面を有するような二次構造を有するポリペプチドである。両親媒性ペプチド構造(例えば、αらせん状ポリペプチド)の設計は、当業者には日常的である。例えば、以下の参照文献にガイダンスが提供されている:グレルら(Grell et al.)(2001年)「タンパク質設計及びフォールディング:自己集合したらせん状の束の鋳型トラッピング(Protein design and folding: template trapping of self-assembled helical bundles) 」、J Pept Sci 第7(3)巻:146〜51ページ;チェンら(Chen et al.)(2002年)、「両親媒性α−らせんにおけるアミノ酸側鎖の立体化学安定性係数の決定(Determination of stereochemistry stability coefficients
of amino acid side-chains in an amphipathic alpha-helix) 」 J Pept Res 第59(1)巻:18〜33ページ;イワタら(Iwata et al.)(1994年) 「両親媒性3(10)−らせんペプチドの設計及び合成、ならびにそれらのリン脂質二重層との相互作用及びイオンチャネル形成(Design and synthesis of amphipathic 3(10)-helical peptides and their interactions with phospholipid bilayers and ion channel formation)」 J Biol Chem 第269(7)巻:4928〜33ページ;コーナットら(Cornut et al.)(1994年) 「両親媒性α−らせん概念。メリチンの溶血活性よりも高い溶血活性を有する理論上両親媒性のLeu、Lysペプチドの新規の設計への適用(The amphipathic alpha-helix concept. Application to the de novo design of ideally amphipathic Leu, Lys peptides with hemolytic activity higher than that of melittin)」 FEBS Lett 第349(1)巻:29〜33ページ;ネグレートら(Negrete et al.)(1998年)
「タンパク質に関する構造上のコードの解読:ドメインクラスでのヘリックスの傾向及びα−らせんにおける統計学的多重残基情報(Deciphering the structural code for proteins: helical propensities in domain classes and statistical multiresidue information in alpha-helices)」 Protein Sci 第7(6)巻:1368〜79ページ。
両親媒性ポリマーの別の例は、2つ又はそれ以上の両親媒性サブユニット、例えば環状部分(例えば、1つ又はそれ以上の親水性基及び1つ又はそれ以上の疎水性基を有する環状部分)を含有する2つ又はそれ以上のサブユニットから構成されるポリマーである。例えば、サブユニットは、ステロイド(例えばコール酸)又は芳香族部分を含有してもよい。このような構成部分は、それらがポリマー構造中にある場合、対向する親水面及び疎水面を形成することができるように、アトロプ異性を示すことができることが好ましい。
推定上の両親媒性分子の、脂質膜(例えば、細胞膜)と相互作用する能力は、日常的な方法により、例えば無細胞アッセイ又は細胞アッセイにおいて試験することができる。例えば、試験化合物を、合成脂質二重層、細胞膜分画又は細胞と組み合わせるか、あるいは接触させて、試験化合物が、脂質二重層、細胞膜又は細胞と相互作用し、細胞膜又は細胞に浸透し、あるいは細胞膜又は細胞を破壊するその能力に関して評価する。試験化合物を、脂質二重層、細胞膜又は細胞との相互作用を検出するために標識することもできる。別のタイプのアッセイでは、試験化合物をレポーター分子又はiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA又はsRNA)に連結させて、レポーター分子又はiRNA剤が脂質二重層、細胞膜又は細胞に浸透する能力を評価する。2工程アッセイもまた実施することができ、該2工程アッセイでは、第1のアッセイが、試験化合物単独の、脂質二重層、細胞膜又は細胞と相互作用する能力を評価し、第2のアッセイが、試験化合物及びレポーター又はiRNA剤を含む構築物(例えば、本明細書中に記載する構築物)の、脂質二重層、細胞膜又は細胞と相互作用する能力を評価する。
本明細書中に記載する組成物において有用な両親媒性ポリマーは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個、25個、50個、100個、200個、500個、1,000個、2,000個、50,000個又はそれ以上のサブユニット(例えば、アミノ酸又は環状サブユニット)を有する。1つの両親媒性ポリマーを、1つ又はそれ以上、例えば2個、3個、5個、10個又はそれ以上のiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA又はsRNA剤)に連結させることができる。幾つかの実施形態では、両親媒性ポリマーは、アミノ酸及び環状サブユニット(例えば、芳香族サブユニット)の両方を含有することができる。
本発明は、両親媒性分子と関係付けられたiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA又はsRNA)を包含する組成物を特徴とする。このような組成物は、本明細書中では「両親媒性iRNA構築物」とも呼ばれる。このような組成物及び構築物は、iRNA剤の送達又は標的化、例えばiRNA剤を細胞へ送達又は標的化するのに有用である。理論により拘束されることを望まないが、このような組成物及び構築物は、例えばiRNA剤の細胞への進入が可能となるように、脂質(例えば、細胞の脂質二重層)の多孔性を増大させる(例えば、浸透又は崩壊させる)ことができる。
一態様では、本発明は、両親媒性分子に連結されたiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA剤又はsRNA剤)を含む組成物に関する。iRNA剤及び両親媒性分子は、共有結合又は非共有結合のいずれかにより、互いに持続的に接触した状態に保持されていてもよい。
該組成物又は構築物の両親媒性分子は、リン脂質以外、例えばミセル、膜又は膜断片以外であることが好ましい。
組成物又は構築物の両親媒性分子は、好ましくはポリマーである。該ポリマーは、2つ又はそれ以上の両親媒性サブユニットを含んでもよい。1つ又はそれ以上の親水性基及び1つ又はそれ以上の疎水性基がポリマー上に存在してもよい。ポリマーは、反復性の二次構造ならびに第1の面及び第2の面を有してもよい。反復性の二次構造に沿った親水性基及び疎水性基の分布は、ポリマーの一方の面が親水面であり、かつポリマーの他方の面が疎水面であるような分布であり得る。
両親媒性分子は、ポリペプチド、例えばその二次構造としてα−らせん構造を含むポリペプチドであり得る。
一実施形態では、両親媒性ポリマーは、1つ又はそれ以上の環状部分(例えば、1つ又はそれ以上の親水性基及び/又は1つ又はそれ以上の疎水性基を有する環状部分)を含有する1つ又はそれ以上のサブユニットを包含する。一実施形態では、ポリマーは、環状部分が交互に疎水性基及び親水性基を有するように環状部分を有するポリマーである。例えば、サブユニットは、ステロイド(例えば、コール酸)を含有してもよい。別の例では、サブユニットは、芳香族部分を含有してもよい。芳香族部分は、アトロプ異性を示すことができるもの、例えば2,2’−ビス(置換)−1,1’−ビナフチル又は2,2’−ビス(置換)ビフェニルであり得る。サブユニットは、式(M):
Figure 2006522831
を有する芳香族部分を含んでもよい。
本発明は、両親媒性分子と関連付けられたiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA又はsRNA)を包含する組成物を特徴とする。このような組成物は、本明細書中では「両親媒性iRNA構築物」と称し得る。このような組成物及び構築物は、iRNA剤の送達又は標的化、例えば細胞へのiRNA剤の送達又は標的化において有用である。理論により拘束されることを望まないが、このような組成物及び構築物は、例えばiRNA剤の細胞への進入が可能となるように、脂質(例えば、細胞の脂質二重層)の多孔性を増大させる(例えば浸透又は破壊する)ことができる。
一態様では、本発明は、両親媒性分子に連結されたiRNA剤(例えば、本明細書中に記載するiRNA剤又はsRNA剤)を含む組成物に関する。iRNA剤及び両親媒性分子は、共有結合又は非共有結合のいずれかにより、互いに持続的に接触した状態に保持されていてもよい。
組成物又は構築物の両親媒性分子は、リン脂質以外、例えばミセル、膜又は膜断片以外であることが好ましい。
組成物又は構築物の両親媒性分子は、好ましくはポリマーである。ポリマーは、2つ又はそれ以上の両親媒性サブユニットを含んでもよい。1つ又はそれ以上の親水性基及び1つ又はそれ以上の疎水性基がポリマー上に存在してもよい。ポリマーは、反復性の二次構造ならびに第1の面及び第2の面を有してもよい。反復性の二次構造に沿った親水性基及び疎水性基の分布は、ポリマーの一方の面が親水面であり、かつポリマーの他方の面が疎水面であるような分布であり得る。
両親媒性分子は、ポリペプチド、例えばその二次構造としてα−らせん構造を含むポリペプチドであり得る。
一実施形態では、両親媒性ポリマーは、1つ又はそれ以上の環状部分(例えば、1つ又はそれ以上の親水性基及び/又は1つ又はそれ以上の疎水性基を有する環状部分)を含有する1つ又はそれ以上のサブユニットを包含する。一実施形態では、ポリマーは、環状部分が交互に疎水性基及び親水性基を有するように環状部分を有するポリマーである。例え
ば、サブユニットは、ステロイド(例えば、コール酸)を含有してもよい。別の例では、サブユニットは、芳香族部分を含有してもよい。芳香族部分は、アトロプ異性を示すことができるもの、例えば2,2’−ビス(置換)−1,1’−ビナフチル又は2,2’−ビス(置換)ビフェニルであり得る。
サブユニットは、式(M):
Figure 2006522831
を有する芳香族部分を含んでもよい。
式Mに関して、Rは、任意選択でアリール、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はハロで置換されるか、かつ/又は任意選択でO、S、アルケニル又はアルキニルが挿入されるC〜C100アルキル、C〜C100ペルフルオロアルキル、又はORである。
は、ヒドロキシ、ニトロ、サルフェート、リン酸、リン酸エステル、スルホン酸、OR、又は任意選択でヒドロキシ、ハロ、ニトロ、アリールスルフィニル若しくはアルキルスルフィニル、アリールスルホニル若しくはアルキルスルホニル、サルフェート、スルホン酸、リン酸、リン酸エステル、置換若しくは非置換アリール、カルボキシル、カルボン酸、アミノカルボニル又はアルコキシカルボニルで置換されるか、かつ/又は任意選択でO、NH、S、S(O)、SO、アルケニル又はアルキニルが挿入されるC〜C100アルキルである。
は、水素であるか、又はRと一体となって融合フェニル環を形成する。
は、水素であるか、又はRと一体となって融合フェニル環を形成する。
は、任意選択でアリール、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はハロで置換されるか、かつ/又は任意選択でO、S、アルケニル又はアルキニルが挿入されるC〜C100アルキル、あるいはC〜C100ペルフルオロアルキルであり、Rは、任意選択でヒドロキシ、ハロ、ニトロ、アリールスルフィニル若しくはアルキルスルフィニル、アリールスルホニル若しくはアルキルスルホニル、サルフェート、スルホン酸、リン酸、リン酸エステル、置換若しくは非置換アリール、カルボキシル、カルボン酸、アミノカル
ボニル又はアルコキシカルボニルで置換されるか、かつ/又は任意選択でO、NH、S、S(O)、SO、アルケニル又はアルキニルが挿入されるC〜C100アルキルである。
dsRNAの細胞への取り込みの増大
本発明の方法は、iRNA剤、ならびにiRNA剤の細胞への取り込みに影響を及ぼす薬物の投与を包含し得る。該薬物は、iRNA剤が投与される前に、iRNA剤が投与された後に、あるいはiRNA剤が投与されると同時に投与され得る。薬物はiRNA剤と共有結合され得る。薬物は、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼの活性化因子、又はNF−κBの活性化因子であり得る。薬物は、細胞に対する一過性の影響を有し得る。
薬物は、例えば細胞の細胞骨格を崩壊させることにより、例えば細胞の微小管、ミクロフィラメント及び/又は中間フィラメントを崩壊させることにより、iRNA剤の細胞への取り込みを増大させることができる。薬物は、例えば、タキソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノライド(japlakinolide )、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホライド(swinholide)A、インダノシン(indanocine)又はミオセルビン(myoservin )であり得る。
薬物はまた、例えば、炎症性応答を活性化することにより、iRNA剤の細胞内への取り込みを増大させることができる。このような作用を有する例示的な薬物としては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−1β又はγインターフェロンが挙げられる。
iRNA複合体
iRNA剤は、第2の作用物質にカップリング(例えば、共有結合)させることができる。例えば、特定の障害を治療するのに使用されるiRNA剤は、第2の治療薬、例えばiRNA剤以外の作用物質にカップリングさせることができる。第2の治療薬は、同じ障害の治療を対象とするものであり得る。例えば、望ましくない細胞増殖(例えば、がん)を特徴とする障害を治療するのに使用されるiRNAの場合では、iRNA剤は、抗がん作用を有する第2の作用物質にカップリングさせることができる。例えば、iRNA剤は、免疫系を刺激する作用物質(例えば、CpGモチーフ)、あるいはより一般的にはtoll−like受容体を活性化し、かつ/又はγインターフェロンの産生を増大させる作用物質にカップリングさせることができる。
iRNAの生産
iRNAは、例えば大量に、各種方法により生産することができる。例示的な方法としては、有機合成及びRNA切断(例えば、in vitroでの切断)が挙げられる。
有機合成
iRNAは、二本鎖のRNA分子の各々の鎖を別個に合成することにより作製することができる。次に、構成成分の鎖をアニーリングさせることができる。
大きなバイオリアクター(例えば、ファルマシア バイオテックAB(Pharmacia Biotec AB)(スウェーデンウプサラ(Uppsala)所在)のOligoPilot(商標)II)を用いて、所定のiRNA用の特定のRNA鎖を大量に生産することができる。OligoPilotIIリアクターは、1.5M過剰のホスホロアミダイトヌクレオチドのみを使用して、効率的にヌクレオチドをカップリングすることができる。RNA鎖を作製するためには、リボヌクレオチドアミダイトが使用される。標準的なモノマー添加サイクルを使用して、iRNA用の21〜23ヌクレオチド鎖を合成することができる。通常、2つの相補的な鎖を別個に生産した後、例えば固体支持体から
の放出及び脱保護の後にアニーリングさせる。
有機合成を使用して、別個のiRNA種を生産することができる。特定の標的遺伝子に対する該iRNA種の相補性を、正確に指定することができる。例えば、該iRNA種は、多型、例えば一塩基多型を含む領域に相補的であり得る。さらに、多型の位置は、正確に規定され得る。幾つかの実施形態では、多型は、内部領域、例えば末端の一方又は両方から少なくとも4、5、7又は9ヌクレオチドの位置にある。
dsRNA切断
iRNAはまた、より大きなds iRNAを切断することにより作製することができる。切断は、in vitro又はin vivoで実現され得る。例えば、in vitroでの切断によりiRNAを生産するために、以下の方法を使用することができる:
in vitro転写。 dsRNAは、両方向に核酸(DNA)セグメントを転写することにより生産される。例えば、HiScribe(商標)RNAi転写キット(ニュー イングランド バイオラブズ(New England Biolabs))は、ベクターと、両側にT7プロモーターが隣接する位置で該ベクターにクローニングされた核酸セグメントに関してdsRNAを生産する方法とを提供する。別個の鋳型が、dsRNA用の2つの相補鎖のT7転写用に生成される。該鋳型は、T7RNAポリメラーゼの添加によりin vitroで転写され、dsRNAが生産される。PCR及び/又は他のRNAポリメラーゼ(例えば、T3ポリメラーゼ又はSP6ポリメラーゼ)を用いた同様の方法もまた使用することができる。一実施形態では、この方法により生成されるRNAは、組換え酵素の調製物に混入し得るエンドトキシンを除去するように慎重に精製される。
in vitro切断。 dsRNAは、例えばDicer又は匹敵するRNAアーゼIIIベースの活性を用いて、in vitroで切断されてiRNAとなる。例えば、dsRNAは、ショウジョウバエ由来のin vitro抽出物中で、あるいは精製された成分(例えば、精製RNAアーゼ又はRISC複合体(RNA誘導性サイレンシング複合体))を用いてインキュベートすることができる。例えば、ケッテイングら(Ketting et al.) Genes Dev 2001年10月15日、第15(20)巻:2654〜9ページ及びハモンド(Hammond) Science 2001年8月10日;第293(5532)巻:1146〜50ページを参照されたい。
dsRNAの切断により、概して複数のiRNA種が生産され、それぞれがもとのdsRNA分子の特定の21〜23ntフラグメントである。例えば、もとのdsRNA分子のオーバーラッピング領域及び隣接領域に相補的な配列を含むiRNAが存在し得る。
合成方法にかかわらず、iRNA調製物は、製剤化に適した溶液(例えば、水溶液及び/又は有機溶液)中で調製することができる。例えば、iRNA調製物は、純粋な二重に蒸留した蒸留水中で沈殿及び再溶解され、凍結乾燥され得る。続いて、乾燥させたiRNAは、意図される製剤化プロセスに適した溶液中に再懸濁させることができる。
修飾iRNA剤及びヌクレオチド代用物のiRNA剤の合成は後述する。
製剤化
本明細書中に記載するiRNA剤は、対象への投与用に製剤化することができる。
説明を簡略化するために、本項での製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつそのような実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
製剤化されたiRNA組成物は、様々な状態であると仮定することができる。幾つかの例では、組成物は、少なくとも部分的に結晶性、一様に結晶性、かつ/又は無水(例えば、水分が80%未満、50%未満、30%未満、20%未満又は10%未満)である。別の例では、iRNAは、水相中に、例えば水を含む溶液中に存在する。
水相組成物又は結晶性組成物は、例えば送達ビヒクル、例えばリポソーム(特に水相に関して)又は粒子(例えば、結晶性組成物に関して適切であり得るような微粒子)に組み込むことができる。概して、iRNA組成物は、意図される投与方法と適合性の様式で製剤化される(以下を参照)。
特定の実施形態では、組成物は、以下の方法:噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、蒸発、流動床乾燥(fluid bed drying)又はこれらの技法の組合せ、あるいは液体を用いた超音波処理、フリーズドライ、凝縮及び他の自己集合、の少なくとも1つにより調製される。
iRNA調製物は、別の作用物質、例えば別の治療薬又はiRNAを安定化する作用物質(例えば、iRNAと複合体形成してiRNPを形成するためのタンパク質)と組み合わせて製剤化することができる。さらに別の作用物質としては、例えばEDTAなどのキレート化剤(例えば、Mg2+のような二価カチオンを除去するため)、塩、RNAアーゼ阻害剤(例えば、RNAsinのような広域特異性のRNAアーゼ阻害剤)等が挙げられる。
一実施形態では、iRNA調製物は、別のiRNA剤、例えば第2の遺伝子に関して、あるいは同じ遺伝子に関して、RNAiを仲介することができる第2のiRNAを包含する。さらに別の調製物は、少なくとも3個、5個、10個、20個、50個若しくは100個又はそれ以上の異なるiRNA種を包含することができる。このようなiRNAは、同様の数の異なる遺伝子に関してRNAiを仲介することができる。
一実施形態では、iRNA調製物は、少なくとも第2の治療薬(例えば、RNA又はDNA以外の作用物質)を包含する。例えば、ウイルス疾患(例えば、HIV)の治療用のiRNA組成物は、既知の抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤又は逆転写酵素阻害剤)を含んでもよい。別の例では、がんの治療用のiRNA組成物は、化学療法剤をさらに含んでもよい。
例示的な製剤を以下に論述する。
リポソーム
説明を簡略化するために、本項での製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつそのような実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばより大きなiRNA剤であってsRNA剤へプロセシングされ得るもの、あるいはDNAであって例えば二本鎖のiRNA剤などのiRNA剤若しくはsRNA剤、又はそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、膜状分子集合体(例えば、リポソーム又はミセル)中で送達されるように製剤化することができる。本明細書中で使用する場合、「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの二重層、例えば1つの二重層又は複数の二重層に配置構成された両親媒性脂質から構成されるビヒクルを指す。リポソームとしては、親油性物質と水性の内部とから形成される膜を有する単層及び多重層ビヒクルを包含する。水性部分は、iRNA組成物を含有する。親油性物質は、水性の外部から水性の内部を分離し、通常iRNA組成物を含まないが、幾つかの例では、iRNA組成物を含んでもよい。リポソームは、作用部位への有効成分の移動及び送達に
有用である。リポソーム膜は、構造的に生体膜に類似しているため、リポソームが組織に適用されると、リポソーム二重層は、細胞膜の二重層と融合する。リポソーム及び細胞の融合が進行するにつれ、iRNAを含む内部の水性内容物が細胞に送達され、該細胞でiRNAは標的RNAに特異的に結合することができ、RNAiを仲介することができる。場合によっては、リポソームはまた、例えば、本明細書中に記載されるような特定の細胞種へ(例えば、肝臓の細胞へ)iRNAを誘導するように、特異的に標的化される。
iRNAを含有するリポソームは、各種方法により調製することができる。
一例では、リポソームの脂質成分を洗浄剤中に溶解して、脂質成分によりミセルを形成させる。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン脂質又は脂質複合体であり得る。洗浄剤は、高い臨界ミセル濃度を有することができ、非イオン性であり得る。例示的な洗浄剤としては、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩及びラウロイルサルコシンが挙げられる。続いて、iRNA調製物を、脂質成分を含むミセルに添加する。脂質上のカチオン基は、iRNAと相互作用し、iRNAの周囲で凝縮して、リポソームを形成する。凝縮後、洗浄剤を、例えば透析により除去して、iRNAのリポソーム調製物を得る。
必要であれば、凝縮を助長する担体化合物を、例えば制御された添加により、凝縮反応中に添加することができる。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミン又はスペルミジン)であり得る。凝縮を助けるためにpHを調節することもできる。
送達ビヒクルの構造的成分としてポリヌクレオチド/カチオン脂質複合体を取り入れる安定なポリヌクレオチド送達ビヒクルを生産する方法のさらなる説明は、例えば、国際公開公報第96/37194号に記載されている。リポソーム形成はまた、フェルグナー、P.L.ら(Felgner,P.L.et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 第8巻:7413〜7417ページ、1987年;米国特許第4,897,355号;米国特許第5,171,678号、バングハムら(Bangham,et al.) M.Mol.Biol.第23巻:238ページ、1965年;オルソンら(Olson,et al.) Biochim.Biophys.Acta 第557巻:9ページ、1979年;スゾカら(Szoka,et al.) Proc.Natl.Acad.Sci.第75巻:4194ページ、1978年;メイヒューら(Mayhew,et al.) Biochim.Biophys.Acta 775巻:169ページ、1984年;キムら(Kim,et al.) Biochim.Biophys.Acta 第728巻:339ページ、1983年及びフクナガら(Fukunaga,et al.) Endocrinol.第115巻:757ページ、1984年に記載される例示的な方法の1つ又はそれ以上の態様を包含することができる。送達ビヒクルとして使用するための適切なサイズを有する脂質凝集体を調製するための、一般的に使用されている技法としては、超音波処理及び凍結融解と押出しが挙げられる(例えば、マイヤーら(Mayer,et al.) Biochim.Biophys.Acta 第858巻:161ページ、1986年を参照)。微小流体操作は、一貫して小さく(50〜200nm)かつ比較的一様な凝集体が望ましい場合に使用することができる(メイヒューら(Mayhew,et al.) Biochim.Biophys.Acta 第775巻:169ページ、1984年)。これらの方法は、iRNA調製物をリポソームにパッケージングするように容易に適応される。
pH感受性の又は負に帯電したリポソームは、核酸分子と複合体形成するのではなく、核酸分子を捕捉する。核酸分子及び脂質の両方が同様に帯電しているため、複合体形成ではなく反発が起きる。それにもかからず、幾つかの核酸分子は、これらのリポソームの水性内部内に捕捉される。pH感受性のリポソームは、培養において細胞単層にチミジンキ
ナーゼ遺伝子をコードするDNAを送達するのに使用されている。外来遺伝子の発現が標的細胞で検出された(チョウら(Zhou et al.) Journal of Controlled Release、第19巻、(1992年) 269〜274ページ)。
リポソーム組成物の主要なタイプの1つとして、天然に由来するホスファチジルコリン以外のリン脂質が挙げられる。例えば、中性のリポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。アニオン性リポソーム組成物は概して、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるのに対して、アニオン性融合性リポソームは、主としてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えばダイズPCおよび卵PCのようなホスファチジルコリン(PC)から形成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
リポソームをin vitroおよびin vivoで細胞に導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号;米国特許第5,171,678号;国際公開公報第94/00569号;国際公開公報第93/24640号;国際公開公報第91/16024号;フェルグナー(Felgner)、J.Biol.Chem.第269巻:2550ページ、1994年;ナベル(Nabel)、Proc.Natl.Acad.Sci.第90巻:11307ページ、1993年;ナベル(Nabel)、Human Gene Ther.第3巻:649ページ、1992年;ゲルション(Gershon)、Biochem.第32巻:7143ページ、1993年およびストラウス(Strauss)、 EMBO J.第11巻:417ページ、1992年が挙げられる。
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合することが可能であるという利点を有する。非カチオン性リポソームは、原形質膜とは効率的に融合することは可能でないが、in vivoでマクロファージにより取り込まれ、iRNAをマクロファージに送達するのに使用することができる。
リポソームのさらなる利点としては、天然リン脂質から得られるリポソームは、生体適合性かつ生分解性であること、リポソームは、広範囲の水溶性および脂溶性薬物を取り込むことができること、リポソームが、リポソーム内部のコンパートメント中に被包されたiRNAを代謝および分解から保護することが挙げられる(ロゾッフ(Rosoff)、「薬学的投薬形態(Pharmaceutical Dosage Forms) 」より、リーベルマン、リーガーおよびバンカー(Lieberman、RiegerおよびBanker)(編)、1988年、第1巻、p245)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、リポソームの脂質表面電荷、ビヒクルサイズおよび水性容量である。
正に帯電した合成カチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)は、核酸と自発的に相互作用して、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合し、その結果iRNAの送達をもたらすことができる脂質−核酸複合体を形成する小リポソームを形成するのに使用することができる(例えば、DOTMAおよびDNAとのその使用の説明に関して、フェルグナー、ピー.エルら(Felgner,P.L.et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 第8巻:7413〜7417ページ、1987年および米国特許第4,897,355号を参照)。
DOTMA類縁体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)は、リン脂質と組み合わせて使用して、DNAと複合体形
成するビヒクルを形成することができる。Lipofectin(商標)(ベテスダ リサーチ ラボラトリーズ(Bethesda Research Laboratories)、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在)は、負に帯電したポリヌクレオチドと自発的に相互作用して複合体を形成する、正に帯電したDOTMAリポソームを含んでなる、高度にカチオン性の核酸を生体組織培養細胞内に送達するための有効な作用物質である。十分に正に帯電したリポソームが使用されると、得られた複合体上の正味の電荷もまた正である。このようにして調製される正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に結合して、原形質膜と融合し、例えば組織培養細胞へ機能的核酸を効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3,3−(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(ベーリンガー マンハイム(Boeringer Mannheim)、米国インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)所在)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなくエステルにより連結されるという点でDOTMAと異なる。
他の報告されているカチオン性脂質成分としては、例えば2種類の脂質のうちの1つに結合されており、5−カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標)、プロメガ(Promega)、米国ウィスコンシン州マディソン(Madison)所在)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5−カルボキシスペルミルアミド(「DPPES」)のような化合物を包含するカルボキシスペルミンを含む様々な部分に結合されているものが挙げられる(例えば、米国特許第5,171,678号を参照)。
別のカチオン性脂質複合体としては、DOPEと組み合わせてリポソーム内に製剤化されているコレステロールによる脂質の誘導体化(「DC−Chol」)が挙げられる(ガオ、X.およびフアング、エル.(Gao,X.and Huang,L.)、Biochim.Biophys.Res.Commun.第179巻:280ページ、1991年を参照)。DOPEにポリリシンを結合させることにより作製されるリポポリリシンは、血清の存在下でのトランスフェクションに有効であることが報告されている(チョウ、エックスら(Zhou,X.et al.)、Biochim.Biophys.Acta 第1065巻:8ページ、1991年)。ある特定の細胞株に関して、カチオン性脂質が結合されたこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物よりも低毒性を示し、かつより効率的なトランスフェクションを提供すると言われている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE−HP(バイカル(Vical)、米国カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla)所在)およびリポフェクタミン(DOSPA)(ライフ テクノロジー インコーポレイテッド社(Life Technoligy,Inc.)、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に適した他のカチオン性脂質は、国際公開公報第98/39359号および国際公開公報第96/37194号に記載されている。
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームは、他の製剤を上回る幾つかの利点を提示する。かかる利点としては、投与された薬物の高い全身吸収に関連した副作用の低減、投与された薬物の所望の標的における蓄積の増大および皮膚へiRNAを投与する能力が挙げられる。幾つかの実施形態では、リポソームは、上皮細胞へiRNAを送達するのに、また真皮組織への(例えば、皮膚への)iRNAの浸透を増強するのにも使用される。例えば、リポソームは、局所的に塗布することができる。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所送達については、実証されている(例えば、ウェイナーら(Weiner et al.)、Journal of Drug Targeting、1992年、第2巻、405〜410ページおよびドゥ プレシスら(du Plessis et al.)、Antiviral Research、第18巻、1992年、259〜265ページ;マンニノ、アール.ジェイ.およびフォウルド−フォゲ
ライト、S.(Mannino,R.J.and Fould−Forgerite,S.)、Biotechniques 第6巻:682〜690ページ、1988年;イタニ、ティーら(Itani,T.et al.) Gene 第56巻:267〜276ページ、1987年;ニコラウ、シーら(Nicolau,C.et al.) Meth.Enz.第149巻:157〜176ページ、1987年;ストラウビンガー、アール.エム.およびパパハジョポウロス、ディー.(Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.) Meth.Enz.第101巻:512〜527ページ、1983年;ワング、シー.ワイ.およびフアング、エル.(Wang,C.Y.and Huang,L.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第84巻:7851〜7855ページ、1987年を参照)。
非イオン性リポソーム系もまた、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系において、薬物の皮膚への送達における該リポソーム系の有用性を決定するために検査されている。Novasome(登録商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasome(登録商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤は、マウス皮膚の真皮へ薬物を送達するのに使用された。iRNAを含むかかる製剤は、皮膚科の障害を治療するのに有用である。
iRNAを包含するリポソームは、高度に変形可能とすることができる。かかる変形能は、リポソームが、リポソームの平均半径より小さな孔を通って浸透することを可能とすることができる。例えば、トランスフェロゾーム(transferosome 、登録商標)は、変形可能なリポソームの一種である。トランスフェロゾームは、表面縁活性化因子、通常は界面活性剤を標準的なリポソーム組成物に添加することにより作製することができる。iRNAを含むトランスフェロゾームは、例えば皮膚中のケラチノサイトへiRNAを送達するために皮下注射により送達することができる。無傷の哺乳類皮膚を通過するためには、脂質ビヒクルは、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれが直径50nm未満の一連の微細孔を通って通過しなければならない。さらに、脂質の特性に起因して、これらのトランスフェロゾームは、自己最適化性(例えば皮膚の中の孔の形状に適応可能)、自己修復性であり得るとともに、多くの場合断片化することなく標的に到達することができ、自己装填性であり得ることが多い。iRNA剤は、リポソームとの会合を改善する部分に連結されたRRMSを包含することができる。
界面活性剤
説明を簡略化するために、本項での製剤、組成物および方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつかかる実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。界面活性剤は、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)およびリポソーム(上記を参照)のような製剤中で広く適用される。iRNA(または前駆体、例えばプロセシングされてiRNAになり得るより大きなdsRNA、あるいはiRNAまたは前駆体をコードするDNA)の組成物が、界面活性剤を包含することができる。一実施形態では、iRNAは、界面活性剤を含むエマルジョンとして製剤化される。多くの異なるタイプの界面活性剤(天然および合成の両方)の特性を分類およびランク付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基の性質は、製剤に使用される種々の界面活性剤を類別するための最も有用な手段を提供する(リーガー(Rieger)、「薬学的投薬形態(Pharmaceutical Dosage Forms) 」内、マーセル デッカー インコーポレイテッド社(Marcel Dekker,Inc.)、米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York)所在、1988年、p285)。
界面活性剤分子がイオン化されない場合は、非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、薬学的製品において広く適用されており、広範囲のpH値にわたって使用可能である。一般的に、それらのHLB値は、それらの構造に応じて、2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステルおよびエトキシル化エステルのような非イオン性エステルが挙げられる。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル(例えば、脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマー)もまた、この種類に含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤類のうち最も一般的なものである。
界面活性剤分子が負の電荷を保有する場合、水中に溶解または分散されるときはアニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸のようなカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、アルキルサルフェートおよびエトキシル化アルキルサルフェートのような硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホネートのようなスルホン酸塩、アシルイセチオネート(acyl isethionate)、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、ならびにホスフェートが挙げられる。アニオン性界面活性剤類のうち最も重要なものは、アルキルサルフェートおよび石鹸である。
界面活性剤分子が正の電荷を保有する場合、水中に溶解または分散されるときはカチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩は、この種類のうちで最もよく使用されるものである。
界面活性剤分子が正または負の電荷のいずれかを保有する能力を有する場合、該界面活性剤は両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
薬物製品中、製剤中およびエマルジョン中での界面活性剤の使用は概説されている(リーガー(Rieger)、「薬学的投薬形態(Pharmaceutical Dosage Forms) 」、マーセル デッカー インコーポレイテッド社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York)所在、1988年、p285)。
ミセルおよび他の膜状製剤
説明を簡略化するために、本項でのミセルおよび他の製剤、組成物および方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらのミセルおよび他の製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつかかる実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖iRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤、またはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物は、ミセル製剤として提供され得る。「ミセル」は、本明細書中では、両親媒性分子が、同分子の疎水性部分すべてが内側に向き、親水性部分が周囲の水相と接触するように球状構造に配置構成される、特定の種類の分子集合体として定義される。反対の配置構成は、環境が疎水性である場合に存在する。
経皮膜を通っての送達に適した混合ミセル製剤は、iRNA組成物の水溶液と、アルカリ金属C〜C22アルカリサルフェートと、ミセル形成化合物とを混合することにより調製され得る。ミセル形成化合物の例としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸
の薬学的に許容可能な塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩、グリセリン、ポリグリセリン、リシン、ポリリシン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびそれらの類縁体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびそれらの類縁体、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキルサルフェートの添加と同時に、あるいは添加後に添加され得る。混合ミセルは、成分の実質的に任意の種類の混合処理により形成するが、より小さなサイズのミセルを提供するためには強力な混合が好ましい。
1つの方法では、iRNA組成物および少なくともアルカリ金属アルキルサルフェートを含有する第1のミセル組成物が調製される。次に、この第1のミセル組成物を、少なくとも3つのミセル形成化合物と混合して、混合ミセル組成物を形成する。別の方法では、ミセル混合物は、iRNA組成物、アルカリ金属アルキルサルフェートおよび少なくとも1つのミセル形成化合物を混合し、続いて強力に混合しながら、残りのミセル形成化合物を添加することにより調製される。
フェノールおよび/またはm−クレゾールを混合ミセル組成物に添加して、製剤を安定化し、かつ細菌増殖に対して保護してもよい。あるいは、フェノールおよび/またはm−クレゾールをミセル形成成分と混合してもよい。グリセリンのような等張剤もまた、混合ミセル組成物の形成後に添加してもよい。
ミセル製剤をスプレーとして送達するために、製剤をエーロゾルディスペンサーに入れることができ、該ディスペンサーを噴射剤で充満させる。加圧下にある噴射剤は、ディスペンサー中では液体形態である。成分の比は、水相および噴射剤相が1つになるように、すなわち1つの相が存在するように調節される。2つの相が存在する場合、例えば定量弁により内容物の一部を投薬する前に、ディスペンサーを振とうする必要がある。医薬品の投薬用量は、微細スプレーで定量弁から噴射される。
好ましい噴射剤は、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテルおよびジエチルエーテルである。HFA 134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)がより一層好ましい。
必須成分の特定濃度は、比較的直接的な実験により決定することができる。口腔による吸収のためには、投与量を注射による投与または胃腸管を介した投与に関する投与量の少なくとも2倍または3倍に増大させることが望ましい場合が多い。
iRNA剤は、ミセルまたは他の膜状製剤との会合を改善する構成部分に連結されたRRMSを包含することができる。
粒子
説明を簡略化するために、本項での粒子、製剤、組成物および方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの粒子、製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつかかる実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。別の実施形態では、iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、粒子(例えば、微粒子)に組み込まれ得る。微粒子は、噴霧乾燥により生産することができるが、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥またはこれらの技法の組合せを含む他の方法により
生産してもよい。さらなる説明は以下を参照されたい。
持続放出性製剤。本明細書中に記載するiRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、制御された放出(例えば、徐放)用に製剤化することができる。制御放出は、その放出を遅らせる構造または物質内にiRNAを配することにより達成することができる。例えば、iRNAは、多孔質マトリックス内に、あるいは浸食性マトリックス中に配置させることができ、これらのいずれも長期間にわたるiRNAの放出を可能にする。
高分子粒子、例えば高分子微粒子は、生分解により微粒子から放出されたときのみ細胞により取り込まれる、iRNAの持続放出性リザーバとして使用することができる。したがって、この実施形態の高分子粒子は、食作用を防止するのに十分大きく(例えば、10μmより大きい、好ましくは20μmより大きく)あるべきである。かかる粒子は、より小さな粒子を作製するのと同じ方法であるが、第1のエマルジョンおよび第2のエマルジョンの混合はあまり強力でない方法により生産することができる。すなわち、均質化速度、ボルテックス混合速度、または超音波処理設定をより低くして、10μmではなく直径およそ100μmの粒子を得ることができる。混合の時間もまた変更することができる。
より大きな微粒子は、筋肉内、皮下、皮内、静脈内または腹腔内注射により、吸入により(鼻内または肺内)、経口的にあるいは移植により送達されるように、懸濁液、粉末または移植可能な固体として製剤化することができる。これらの粒子は、比較的長期間にわたる徐放が望ましい場合に、任意のiRNAの送達に有用である。分解速度、したがって放出速度は、高分子製剤により多様である。
微粒子は好ましくは、液体懸濁液の媒質が粒子境界を自由に浸透または灌流する孔、空隙、くぼみ、欠損部または他の間質腔を包含する。例えば、有孔の微細構造を用いて、くぼみを有する多孔質噴霧乾燥ミクロスフェアを形成することができる。
iRNA(例えば、sRNA)を含有する高分子粒子は、例えば二重エマルジョン技法を用いて作製することができる。まず、ポリマーを有機溶媒中に溶解させる。好ましいポリマーは、乳酸/グリコール酸の重量比が65:35、50:50または75:25の乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)である。次に、水溶液中に懸濁させた核酸の試料を該ポリマー溶液に添加して2つの溶液を混合し、第1のエマルジョンを形成する。これらの溶液は、ボルテックス混合または振とうにより混合することができ、好ましい方法では、混合物を超音波処理することができる。最も好ましいのは、核酸が受けるニック形成、剪断または分解の形態の損傷が最少量である一方、依然として適切なエマルジョンの形成を可能にする、任意の方法である。例えば、許容可能な結果は、0.3175センチメートル(3.2mm(1/8インチ))マイクロチッププローブを備えたVibra−cell(商標)モデルVC−250ソニケーターにより、設定No.3で得ることができる。
噴霧乾燥。iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、噴霧乾燥により調製することができる。噴霧乾燥したiRNAを、対象に投与しもよいし、あるいはさらなる製剤化に供してもよい。iRNAの医薬組成物は、分散可能な粉末組成物(例えば、医薬組成物)を提供するのに十分な条件下で、iRNAを包含する均質水性混合物を噴霧乾燥することにより調製することができる。噴霧乾燥用の
材料はまた、1つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤あるいは分散性を増強する量の生理学的に許容可能な水溶性タンパク質を包含することができる。噴霧乾燥した製品は、iRNAを包含する分散可能な粉末であり得る。
噴霧乾燥は、液体またはスラリー材料を乾燥した粒子形態に変換する処理工程である。噴霧乾燥は、吸入を含む様々な投与経路用の粉末材料を提供するのに使用することができる。例えば、エム.サッチェッティおよびエム.エム.ファン オルト(M.Sacchetti and M.M.Van Oort)、「吸入エーロゾル:療法に関する物理的および生物学的基盤(Inhalation Aerosols: Physical and Biological Basis for Therapy)」内、エイ.ジェー.ヒッキー(A.J.Hickey)編、マーセル デッカー(Marcel Dekkar)、ニューヨーク、1996年を参照されたい。
噴霧乾燥は、液滴の微細ミストを形成するために溶液、エマルジョンまたは懸濁液を噴霧化すること、および液滴を乾燥させることを包含することができる。該ミストを乾燥用チャンバ(例えば、容器、タンク、チューブまたはコイル)内へ発射し、該チャンバ内でミストを乾燥用ガスに接触させることができる。ミストは、固体または液体の細孔形成剤を包含することができる。媒質および細孔形成剤は、液滴から乾燥用ガスへと蒸発して、液滴を固化させ、同時に該固化物(固体)全体にわたって細孔を形成する。続いて、この固体(通常は粉末状粒子形態)を乾燥用ガスから分離および回収する。
噴霧乾燥は、高度に分散された液体および十分容量の空気(例えば、熱空気)を一緒にして、液体小滴の蒸発および乾燥をもたらすことを包含する。噴霧乾燥されるべき調製物は、任意の溶液、当然、懸濁液、スラリー、コロイド分散液、または選択した噴霧乾燥装置を用いて噴霧化され得るペーストであり得る。通常、該供給物は、媒質を蒸発させて乾燥産物を回収器に運搬するろ過された温気流中に噴霧される。次に、使用済み空気は媒質とともに排出される。幾つかの異なるタイプの装置を用いて、所望の産物を提供してもよい。例えば、ブッチ株式会社(Buchi Ltd.)またはニプロコーポレイション(Nipro Corp.)により製造される市販の噴霧乾燥機は、所望のサイズの粒子を効率的に生産することができる。
噴霧乾燥した粉末粒子は、形状がほぼ球状であり、サイズがほぼ均一であり、多くの場合くぼみがあり得る。組み込まれる薬物および噴霧乾燥条件に応じて、ある程度の不規則性が存在し得る。多くの場合、噴霧乾燥したミクロスフェアの分散安定性は、該ミクロスフェアの生産において膨張剤(または発泡剤)を使用するとより有効であるようである。特に好ましい実施形態は、分散相または連続相(他方の相は、事実上水性である)として膨張剤を有するエマルジョンを含み得る。膨張剤は好ましくは、界面活性剤溶液を用いて、例えば約34〜103Pa(5,000〜15,000psi)の圧力で市販の微小流動化装置を用いて分散させる。この処理工程により、通常水性連続相中に分散させた水不混和性発泡剤のサブミクロンの小滴を含む、好ましくは組み込まれた界面活性剤により安定化されたエマルジョンが形成される。この技法および他の技法を用いたかかる分散液の形成は、一般的であり、当業者に既知である。発泡剤は、噴霧乾燥処理中に気化して、一般的にくぼんだ多孔質の空力的に軽いミクロスフェアが残るフッ素化化合物(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロブチルエタン)であることが好ましい。以下により詳細に論述するように、他の適切な発泡剤としては、クロロホルム、フレオンおよび炭化水素が挙げられる。窒素ガスおよび二酸化炭素もまた、適切な発泡剤として意図される。
有孔の微細構造は、上述のように発泡剤を用いて形成されることが好ましいが、当然のことながら、場合によっては、発泡剤を必要とせず、薬物および界面活性剤(複数可)の水性分散液が直接噴霧乾燥される。かかる場合では、製剤は、くぼみを有する比較的多孔
質の微粒子の形成を概して導くような処理工程条件(例えば、温度の上昇)に修正可能である。さらに、薬物は、かかる技法における使用に特に適切な特殊な物理化学的特性(例えば、高い結晶性、高い融解温度、界面活性等)を保有し得る。
有孔の微細構造は、任意選択で1つまたはそれ以上の界面活性剤を伴っても、あるいは含んでもよい。さらに、混和性界面活性剤を、任意選択で懸濁液の媒質液体相と組み合わせてもよい。界面活性剤の使用は、さらに分散安定性を増大し得るか、製剤化の手順を簡素化し得るか、あるいは投与時の生物学的利用能を増大させ得ることが当業者に理解されよう。当然のことながら、液体相中で1つまたはそれ以上の界面活性剤を使用し、かつ有孔の微細構造に関連させて1つまたはそれ以上の界面活性剤を使用することを含む、界面活性剤の組合せは、本発明の範囲内であると意図される。「を伴って、あるいは含んで」とは、構造マトリックスまたは有孔の微細構造が、界面活性剤を組み込み得るか、界面活性剤を吸着し得るか、界面活性剤を吸収し得るか、界面活性剤でコーティングされ得るか、あるいは界面活性剤により形成され得ることを意味する。
使用に適した界面活性剤としては、構造マトリックスと懸濁媒質との間の界面で層を形成することにより、安定化された呼吸器用分散液の形成および維持を助長する任意の化合物または組成物が挙げられる。界面活性剤は、単一の化合物でもよいし任意の化合物の組合せ(例えばコサーファクタントの場合)を含んでもよい。特に好ましい界面活性剤は、噴射剤中に実質的に不溶であり、フッ素化されておらず、飽和脂質および不飽和脂質、非イオン性洗浄剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、ならびにかかる作用物質の組合せから成る群より選択される。上述の界面活性剤のほかに、適切な(すなわち、生体適合性の)フッ素化界面活性剤は、本明細書中の技法と適合性であり、所望の安定化された調製物を提供するのに使用され得ることは強調されるべきである。
天然および合成の供給源の両方に由来するリン脂質を含む脂質は、様々な濃度で使用されて、構造的マトリックスを形成し得る。概して、適合性の脂質とは、ゲルから液晶への相転移が約40℃より高いものを含む。好ましくは、組み込まれる脂質は、比較的長い鎖(すなわち、C〜C22)の飽和脂質であり、より好ましくはリン脂質を含む。開示する安定化された調製物において有用なリン脂質の例は、卵ホスファチジルコリン、ジラウリルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、短鎖ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、糖脂質、ガングリオシドGM1、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、脂質を含むポリマー鎖(例えば、ポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸またはポリビニルピロリドン)、脂質を含むスルホン化単糖、二糖および多糖、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸)、コレステロール、コレステロールエステルおよびコレステロールヘミスクシネートが挙げられる。それらの優れた生体適合性に起因して、リン脂質、ならびにリン脂質およびポロキサマーの組合せは、本明細書中に開示する安定化された分散物における使用に特に適している。
適合性の非イオン性洗浄剤は、ソルビタントリオレエート(Spans(商標)85)、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートおよびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを含むソルビタンエステル、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、グリセロールエステル、ならびにスクロースエステルを含む。他の適切な非イオン性洗浄剤は、「McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents」(マックパブリッシング社(McPublishing
Co.)、米国ニュージャージー州グレンロック(Glen Rock)所在)を用いて容易に同定することができる。好ましいブロックコポリマーとしては、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマー(ポロキサマー188(Pluronic.RTM.F68)、ポロキサマー407(Pluronic.RTM.F−127)およびポロキサマー338を含む)が挙げられる。スルホコハク酸ナトリウムのようなイオン性界面活性剤および脂肪酸石鹸もまた利用することができる。好ましい実施形態では、微細構造は、オレイン酸またはそのアルカリ塩を含んでもよい。
上述の界面活性剤のほかに、カチオン性界面活性剤または脂質は、iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の送達の場合に特に好ましい。適切なカチオン性脂質の例としては、DOTMA、すなわちN−[−(2,3)−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、DOTAP、すなわち1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、およびDOTB、すなわち1,2−ジオレイル−3−(4’−トリメチルアンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロールが挙げられる。ポリリシンのようなポリカチオン性アミノ酸、およびポリアルギニンもまた意図される。
噴霧処理工程に関して、回転噴霧化、圧力噴霧化および二液噴霧化のような噴霧方法を使用することができる。これらの処理工程で使用される装置の例としては、ヤマトケミカル社(Yamato Chemical Co.)製造の「パルビスミニスプレー GA−32」および「パルビススプレードライヤ DL−41」が挙げられるし、あるいは大川原化工機株式会社製の「スプレードライヤ CL−8」、「スプレードライヤ L−8」、「スプレードライヤ FL−12」、「スプレードライヤ FL−16」または「スプレードライヤ FL−20」を、回転円板噴霧器を用いた噴霧方法に関して使用することができる。
噴霧された材料を乾燥させるのに使用するガスに関して、特に制限は課せられないが、空気、窒素または不活性ガスを使用することが推奨される。噴霧された材料を乾燥させるのに使用するガスの入口温度は、噴霧された材料の熱失活を引き起こさないような温度である。その温度範囲は、約50℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜100℃に及び得る。噴霧された材料を乾燥させるのに使用されるガスの出口の温度は、約0℃〜約150℃、好ましくは0℃〜90℃、さらに好ましくは0℃〜60℃であり得る。
噴霧乾燥は、呼吸に適切な粒子サイズ、低水分含有量およびエーロゾル化の準備が可能である流動特性を有する、均質構成の実質的に非晶質の粉末を生じる条件下でなされる。得られる粉末の粒子サイズは、約98%を上回る質量が約10μm以下の直径を有する粒子であり、質量の約90%が、5μm未満の直径を有する粒子となることが好ましい。別例として、質量の約95%は直径10μm未満の粒子を有し、粒子の質量の約80%は5μm未満の直径を有する。
iRNA調製物を包含する分散性の医薬品ベースの乾燥粉末は、呼吸器投与および肺投与に適切な薬学的担体または賦形剤と任意に組み合わせてもよい。かかる担体は、患者に送達される粉末中のiRNA濃度を低減させることが望ましい場合には単に増量剤としての役割を果たし得るが、iRNAのより効率的かつ再現性のある送達を提供し、かつ製造および粉末充填を容易にするための流動性および粘稠度のようなiRNAの取り扱い上の特性を改善するように、iRNA組成物の安定性を増強し、かつ粉末分散デバイス内の粉末の分散性を改善する役割を果たしてもよい。
かかる担体材料は、噴霧乾燥前に、すなわち精製バルク溶液に担体材料を添加することにより、薬物と組み合わせてもよい。そのようにして、担体粒子が薬物粒子とともに同時に形成されて、均質な粉末を生じる。あるいは、担体を別個に乾燥粉末形態に調製して、ブレンドすることにより乾燥粉末薬物と組み合わせてもよい。粉末担体は、通常結晶であるが(水吸収を回避するため)、場合によっては、非晶質又は結晶と非晶質の混合物であってよい。担体粒子の大きさは、薬物粉末の流動性を改善するように選択してもよく、通常25μm〜100μmの範囲である。好ましい担体材料は、上述の範囲のサイズを有する結晶性ラクトースである。
上述の方法のいずれかにより調製された粉末は、その後の使用のために従来の様式で噴霧乾燥機から回収される。医薬品および他の目的として使用するために、篩い分けまたは他の従来の技法により、形成された全ての凝集物を崩壊させることが望ましいことが多い。医薬品用途に関しては、乾燥粉末製剤は、通常測り取って単回用量とされ、この単回用量がパッケージに密封される。かかるパッケージは、以下に詳述するように、乾燥粉末吸入器中での分散に特に有用である。あるいは、粉末は、多数回用量用の容器中にパッケージングされてもよい。
疎水性およびその他の薬物および成分を噴霧乾燥させる方法は、米国特許第5,000,888号、同第5,026,550号、同第4,670,419号、同第4,540,602号および同第4,486,435号に記載されている。ブロッチおよびスペイソン(Bloch and Speison)(1983年)Pharm.Acta.Helv 第58巻:14〜22ページは、ジオキサン−水および2−エトキシエタノール−水の共沸溶媒中でのヒドロクロロチアジドおよびクロルタリドン(親油性薬物)および親水性補助薬(ペンタエリスリトール)の噴霧乾燥を教示している。JP第806766号、JP第7242568号、JP第7101884号、JP第7101883号、JP第71018982号、JP第7101881号およびJP第4036233号を含む多数の日本国特許出願抄録が、親水性−疎水性産物の組合せの噴霧乾燥に関するものである。親水性−疎水性生成物の組合せを噴霧乾燥させることに関連した他の外国特許出願としては、FR第2594693号、DE第2209477号および国際公開公報第88/07870号が挙げられる。
凍結乾燥
iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、凍結乾燥させることにより作製することができる。凍結乾燥は、組成物を凍結させた後に組成物から水を昇華させるフリーズドライ処理工程である。凍結乾燥処理工程に関連した特定の利点は、水溶液中で比較的不安定な生物製剤および医薬品を、温度上昇を伴わずに乾燥させることができ(それにより、有害な熱的影響を排除する)、続いて安定性の問題があまりみられない乾燥状態で保管することができることである。本発明に関して、かかる技法は、生理活性を弱めることなく核酸を有孔の微細構造に組込むことと特に適合性を有する。凍結乾燥した粒子状物質を提供する方法は当該技術分野で既知であり、本明細書中の教示にしたがって分散適合性の微細構造を提供するのに過度の実験を要さないことは明らかであろう。したがって、所望の多孔性およびサイズを有する微細構造を提供するように凍結乾燥処理工程が使用され得る限りは、凍結乾燥処理工程は本明細書中の教示と適合し、明らかに本発明の範囲内であると意図される。
標的化
説明を簡略化するために、本項での製剤、組成物および方法は、主として非修飾iRN
A剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤で実施することができ、かつかかる実施は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
幾つかの実施形態では、iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、特定の細胞を標的とする。例えば、iRNAを包含するリポソームもしくは粒子または他の構造は、標的細胞上の特定の分子を認識する標的化部分を包含することもできる。標的化部分は、標的細胞に関して特異的な親和性を有する分子であり得る。標的化部分には、標的細胞の表面上に見られるタンパク質に対する抗体、あるいは標的細胞の表面上に見られる分子に関するリガンドまたはリガンドの受容体結合部分を挙げることができる。例えば、標的化部分は、肝臓のがん特異的抗原またはウイルス抗原を認識することができ、したがってがん細胞またはウイルス感染細胞へiRNAを送達する。標的化部分の例としては、抗体(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD等、またはそれらの機能的部分)、細胞表面受容体に関するリガンド(例えば、それらの外部ドメイン)が挙げられる。
α‐フェトプロテインなどの抗原を用いてiRNA剤の標的を肝細胞とすることができる。
一実施形態では、標的化部分はリポソームに結合される。例えば、米国特許第6,245,427号は、タンパク質またはペプチドを用いてリポソームを標的化する方法について記載している。別の例では、リポソームのカチオン性脂質成分が、標的化部分で誘導体化される。例えば、国際公開公報第96/37194号は、N−グルタリルジオレオイルホスファチジルエタノールアミンをN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルに変換することについて記載している。該生成物は続いてRGDペプチドにカップリングされた。
遺伝子および疾患
一態様では、本発明は、望ましくない細胞増殖、例えば悪性または非悪性の細胞増殖の危険性があるか、あるいは悪性または非悪性細胞増殖に罹患した対象を治療する方法を特徴とする。該方法は、以下の:
iRNA剤、例えば本明細書中に記載のsRNAまたはiRNA剤(例えば、本明細書中に記載の構造を有するiRNA)を提供することと、該iRNAは、望ましくない細胞増殖を促進する遺伝子に相同であり、同遺伝子を例えば切断によりサイレンシングすることができることを特徴とすることと、
iRNA剤(例えば、本明細書中に記載するsRNAまたはiRNA剤)を対象、好ましくはヒト対象に投与することと、
それにより対象を治療することと
を包含する。
好ましい実施形態では、遺伝子は、成長因子遺伝子または成長因子受容体遺伝子、キナーゼ(例えば、タンパク質チロシン、セリンまたはスレオニンキナーゼ)遺伝子、アダプタータンパク質遺伝子、Gタンパク質スーパーファミリー分子をコードする遺伝子、または転写因子をコードする遺伝子である。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、PDGFβ遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPDGFβ発現を特徴とする障害(例えば、精巣がんおよび肺がん)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、Erb−B遺伝子をサイレンシングし、し
たがって、望ましくないErb−B発現を特徴とする障害(例えば、乳がん)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、Src遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないSrc発現を特徴とする障害(例えば、大腸がん)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、CRK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないCRK発現を特徴とする障害(例えば、大腸がん及び肺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、GRB2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないGRB2発現を特徴とする障害(例えば、偏平上皮細胞がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、RAS遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないRAS発現を特徴とする障害(例えば、膵臓がん、大腸がん及び肺がん、ならびに慢性白血病)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、MEKK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないMEKK発現を特徴とする障害(例えば、偏平上皮細胞がん、黒色腫又は白血病)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、JNK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないJNK発現を特徴とする障害(例えば、膵臓がん又は乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、RAF遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないRAF発現を特徴とする障害(例えば、肺がん又は白血病)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、Erk1/2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないErk1/2発現を特徴とする障害(例えば、肺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、PCNA(p21)遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPCNA発現を特徴とする障害(例えば、肺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、MYB遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないMYB発現を特徴とする障害(例えば、大腸がん又は慢性ミエロイド性白血病)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、c−MYC遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないc−MYC発現を特徴とする障害(例えば、バーキットリンパ腫又は神経芽細胞腫)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、JUN遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないJUN発現を特徴とする障害(例えば、卵巣がん、前立腺がん又は乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、FOS遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないFOS発現を特徴とする障害(例えば、皮膚がん又は前立腺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、BCL−2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないBCL−2発現を特徴とする障害(例えば、肺がん、前立腺がん又は非ホジキンリンパ腫)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、サイクリンD遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンD発現を特徴とする障害(例えば、食道がん及び大腸がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、VEGF遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないVEGF発現を特徴とする障害(例えば、食道がん及び大腸がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、EGFR遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないEGFR発現を特徴とする障害(例えば、乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、サイクリンA遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンA発現を特徴とする障害(例えば、肺がん及び子宮頸がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、サイクリンE遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンE発現を特徴とする障害(例えば、肺がん及び乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、WNT−1遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないWNT−1発現を特徴とする障害(例えば、基底細胞がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、β−カテニン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないβ−カテニン発現を特徴とする障害(例えば、腺がん又は肝細胞がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、c−MET遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないc−MET発現を特徴とする障害(例えば、肝細胞がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、PKC遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPKC発現を特徴とする障害(例えば、乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、NFKB遺伝子をサイレンシングし、したがっ
て、望ましくないNFKB発現を特徴とする障害(例えば、乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、STAT3遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないSTAT3発現を特徴とする障害(例えば、前立腺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、サバイビン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサバイビン発現を特徴とする障害(例えば、子宮頸がん又は膵臓がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、Her2/Neu遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないHer2/Neu発現を特徴とする障害(例えば、乳がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
別の好ましい実施形態では、iRNA剤は、トポイソメラーゼI遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないトポイソメラーゼI発現を特徴とする障害(例えば、卵巣がん及び大腸がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、トポイソメラーゼIIα遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないトポイソメラーゼIIα発現を特徴とする障害(例えば、乳がん及び大腸がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、p73遺伝子の突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp73発現を特徴とする障害(例えば、結腸直腸腺がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、p21(WAF1/CIP1)遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp21(WAF1/CIP1)発現を特徴とする障害(例えば、肝臓がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、p27(KIP1)遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp27(KIP1)発現を特徴とする障害(例えば、肝臓がん)を有するか、又はその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
好ましい実施形態では、iRNA剤は、腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、化学療法剤と組み合わせて、アポトーシス活性を促進する方法として使用することができる。
別の態様では、本発明は、血管新生阻害が有益でありうる疾患又は障害(例えば、がん)の危険性があるか、該疾患又は障害に罹患した対象(例えば、ヒト)を治療する方法を特徴とする。該方法は、以下の:
iRNA剤、例えば本明細書中に記載の構造を有するiRNA剤を提供することと、該iRNA剤は、血管新生を仲介する遺伝子に相同であり、かつ同遺伝子を例えば切断によりサイレンシングすることができることと、
iRNA剤を対象に投与することと、
それにより対象を治療することと
を包含する。
別の態様では、本発明は、ウイルスに感染した対象、あるいはウイルス感染に関連した障害若しくは疾患の危険性があるか、又は該障害若しくは疾患に罹患した対象を治療する方法を特徴とする。該方法は、以下の:
iRNA剤、例えば本明細書中に記載の構造を有するiRNA剤を提供することと、該iRNA剤は、ウイルス遺伝子またはウイルスの機能(例えば、侵入又は増殖)を媒介する細胞遺伝子に相同であり、かつ同遺伝子を例えば切断によりサイレンシングすることができることと、
iRNA剤を対象(好ましくは、ヒト対象)に投与することと、
それにより対象を治療することと
を包含する。
したがって、本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した患者、あるいはHPVにより媒介される障害(例えば、子宮頸がん)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。HPVは、子宮頸がんの95%に関係し、したがって抗ウイルス療法は、これらのがん及びウイルス感染の他の症状を治療するための魅力的な方法である。
好ましい実施形態では、HPV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、HPV遺伝子は、E2、E6又はE7の群のうちの1つである。
好ましい実施形態では、HPV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者、あるいはHIVにより媒介される障害(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS))の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、HIV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、HIV遺伝子は、CCR5、Gag又はRevである。
好ましい実施形態では、HIV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、遺伝子はCD4又はTsg101である。
本発明はまた、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染した患者、あるいはHBVにより媒介される障害(例えば、肝硬変及び肝細胞がん)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、HBV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、標的とされるHBV遺伝子は、HBVコアタンパク質のテール領域、pre−cregious(pre−c)領域、又はcregious(c)領域の群のうちの1つをコードする。別の好ましい実施形態では、標的とされるHBV−RNA配列は、ポリ(A)テールを含んで構成される。
好ましい実施形態では、HBV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、A型肝炎ウイルス(HAV)に感染した患者、あるいはHAVにより媒介される障害の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、HAV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者、あるいはHCVにより媒介される障害(例えば、肝硬変)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療す
る方法を提供する。
好ましい実施形態では、HCV遺伝子の発現が低減される。
別の好ましい実施形態では、HCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、D型、E型、F型、G型又はH型を含む肝炎ウイルス株の群のいずれかに感染した患者、あるいはこれらの肝炎株のいずれかにより媒介される障害の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、D型、E型、F型、G型又はH型肝炎ウイルス遺伝子の発現が低減される。
別の好ましい実施形態では、D型、E型、F型、G型又はH型肝炎ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染した患者、あるいはRSVにより媒介される障害(例えば、乳児における下気道感染及び小児喘息、例えば高齢者における肺炎及び他の合併症)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、RSV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、標的とされるHBV遺伝子は、遺伝子N、L又はPの群のうちの1つをコードする。
好ましい実施形態では、RSV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した患者、あるいはHSVにより媒介される障害(例えば、陰部ヘルペス及び単純ヘルペスならびに主として免疫不全状態の患者における生命にかかわる疾患又は視覚障害をもたらす疾患)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、HSV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、標的とされるHSV遺伝子は、DNAポリメラーゼ又はDNAヘリカーゼ−プライマーゼをコードする。
好ましい実施形態では、HSV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、ヘルペスサイトメガロウイルス(CMV)に感染した患者、あるいはCMVにより媒介される障害(例えば、先天性ウイルス感染及び免疫不全状態の患者における病的状態)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、CMV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、CMV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ヘルペスエプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染した患者、あるいはEBVにより媒介される障害(例えば、NK/T−細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫及びホジキン病)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、EBV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、EBV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)(ヒトヘルペスウイルス8型とも呼ばれる)に感染した患者、あるいはKSHVにより媒介される障害(例えば、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病及びAIDS関連原発性滲出液リンパ腫)
の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、KSHV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、KSHV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、JCウイルス(JCV)に感染した患者、あるいはこのウイルスに関連した疾患又は障害(例えば、進行性多病巣性白質脳症(PML))を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、JCV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、JCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ミクソウイルスに感染した患者、あるいはミクソウイルスにより媒介される障害(例えば、インフルエンザ)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、ミクソウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ミクソウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ライノウイルスに感染した患者、あるいはライノウイルスにより媒介される障害(例えば、風邪)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、ライノウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ライノウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、コロナウイルスに感染した患者、あるいはコロナウイルスにより媒介される障害(例えば、風邪)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、コロナウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、コロナウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、フラビウイルスである西ナイルウイルスに感染した患者、あるいは西ナイルウイルスにより媒介される障害の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、西ナイルウイルス遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、西ナイルウイルス遺伝子は、E、NS3又はNS5を含む群のうちの1つである。
好ましい実施形態では、西ナイルウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、フラビウイルスであるセントルイス脳炎ウイルスに感染した患者、あるいはこのウイルスに関連した障害若しくは疾患(例えば、ウイルス性出血熱又は神経系疾患)の危険性があるか、又は該障害若しくは疾患に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、セントルイス脳炎ウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、セントルイス脳炎ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ダニ媒介性脳炎フラビウイルスにより感染されたか、あるいはダニ媒介性脳炎ウイルスにより媒介される障害(例えば、ウイルス性出血熱及び神経系疾患)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、ダニ媒介性脳炎ウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ダニ媒介性脳炎ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、通常ウイルス性出血熱及び神経系疾患をもたらすマレー渓谷脳炎フラビウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、マレー渓谷脳炎ウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、マレー渓谷脳炎ウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、デング熱フラビウイルスに感染した患者、あるいはこのウイルスに関連した疾患又は障害(例えば、デング熱出血性熱)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、デング熱ウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、デング熱ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、シミアンウイルス40(SV40)に感染した患者、あるいはSV40により媒介される障害(例えば、腫瘍形成)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、SV40遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、SV40複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)に感染した患者、あるいはこのウイルスに関連した疾患又は障害(例えば、白血病及びミエロパシー)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、HTLV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、HTVL1遺伝子は、Tax転写活性化因子である。
好ましい実施形態では、HTLV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MuLV)に感染した患者、あるいはMo−MuLVにより媒介される障害(例えば、T細胞白血病)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、Mo−MuLV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、Mo−MuLV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、脳心筋炎ウイルス(EMCV)に感染した患者、あるいはEMCVにより媒介される障害(例えば、心筋炎)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。EMCVは、マウスおよびブタにおいて心筋炎を引き起こし、ヒト心筋細胞に感染することができる。したがって、このウイルスは、異種移植を受
けた患者に関する問題事項である。
好ましい実施形態では、EMCV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、EMCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、麻疹ウイルス(MV)に感染した患者、MVにより媒介される障害(例えば、麻疹)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、MV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、MV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)に感染した患者、あるいはVZVにより媒介される障害(例えば、水疱瘡又は帯状ヘルペス(帯状疱疹とも呼ばれる))の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、VZV遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、VZV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、アデノウイルスに感染した患者、あるいはアデノウイルスにより媒介される障害(例えば、気道感染)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、アデノウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、アデノウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、黄熱病ウイルス(YFV)に感染した患者、あるいはYFVにより媒介される障害(例えば、気道感染)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、YFV遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、好ましい遺伝子は、E、NS2A又はNS3遺伝子を包含する群のうちの1つである。
好ましい実施形態では、YFV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ポリオウイルスに感染した患者、あるいはポリオウイルスにより媒介される障害(例えば、ポリオ)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、ポリオウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ポリオウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明の方法はまた、ポックスウイルスに感染した患者、あるいはポックスウイルスにより媒介される障害(例えば、天然痘)の危険性があるか、又は該障害に罹患した患者を治療することを提供する。
好ましい実施形態では、ポックスウイルス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ポックスウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
別の態様では、本発明は、病原体(例えば、細菌、アメーバ、寄生生物又は真菌などの病原体)に感染した対象を治療する方法を特徴とする。上記方法は、以下の:
iRNA剤、例えば本明細書中に記載の構造を有するsiRNA剤を提供することと、
siRNA剤は、病原体遺伝子に相同であり、かつ例えば病原体遺伝子の切断により同遺伝子をサイレンシングすることができることと、
iRNA剤を対象(好ましくは、ヒト対象)に投与することと、
それにより対象を治療することと
を包含する。
標的遺伝子は、増殖、細胞壁合成、タンパク質合成、転写、エネルギー代謝(例えばクレブス回路)又は毒素産生に関与するものであり得る。
したがって、本発明は、マラリアを引き起こすマラリア原虫に感染した患者を治療する方法を提供する。
好ましい実施形態では、マラリア原虫遺伝子の発現が低減される。別の好ましい実施形態では、該遺伝子は、頂端膜抗原1(AMA1)である。
好ましい実施形態では、マラリア原虫の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、ブルーリ潰瘍)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、マイコバクテリウム・ウルセランス遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、マイコバクテリウム・ウルセランスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、結核)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、ヒト結核菌遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、ヒト結核菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、らい菌(Mycobacterium leprae)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、らい病)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、らい菌遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、らい菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、皮膚及び粘膜の感染)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、黄色ブドウ球菌遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、黄色ブドウ球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、細菌の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、肺炎又は小児期下気道感染)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、肺炎連鎖球菌遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、肺炎連鎖球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、細菌の化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、連鎖球菌性咽頭炎又は猩紅熱)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、化膿連鎖球菌遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、化膿連鎖球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、細菌の肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、肺炎又は小児期下気道感染)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、肺炎クラミジア遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、肺炎クラミジアの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
本発明はまた、細菌の肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)に感染した患者、あるいはこの病原体に関連した疾患又は障害(例えば、肺炎又は小児期下気道感染)を治療する方法を包含する。
好ましい実施形態では、肺炎マイコプラズマ遺伝子の発現が低減される。
好ましい実施形態では、肺炎マイコプラズマの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
ヘテロ接合性の喪失(LOH)は、LOH領域において配列、例えば遺伝子にヘミ接合性をもたらし得る。これは正常細胞と疾患状態の細胞(例えばがん細胞)との間に重大な遺伝的差異をもたらす可能性があり、正常細胞と疾患状態の細胞(例えばがん細胞)との間の有用な差異を提供する。この差異は、遺伝子又はその他の配列が正倍数体細胞ではヘテロ接合体であるが、LOHを有する細胞ではヘミ接合体であるために生じ得る。LOHの領域は、多くの場合、喪失すると好ましくない増殖を促進する遺伝子、例えば腫瘍抑制遺伝子、及び例えば別の遺伝子(場合によっては正常に機能(例えば、増殖)するのに必須の遺伝子)を含有する別の配列を含む。本発明の方法は、一部には、必須遺伝子の1つの対立遺伝子を本発明のiRNA剤で特異的に切断又はサイレンシングすることによる。上記iRNA剤は、該iRNA剤が、LOHを有する細胞に見出される必須遺伝子の1つの対立遺伝子を標的にするが、LOHを示さない細胞に存在する別の対立遺伝子はサイレンシングしないように選択される。実質的に、iRNA剤は2つの対立遺伝子を区別し、選択された対立遺伝子を選択的にサイレンシングする。実質的には、多型、例えばLOHにより影響を受ける必須遺伝子のSNPsは、LOHを有する細胞、例えばLOHを有するがん細胞を特徴とする疾患用の標的として使用される。
例えば、当業者は、腫瘍抑制遺伝子に近接し、且つ腫瘍抑制遺伝子を含むLOH領域内にある必須遺伝子を同定することができる。ヒトRNAポリメラーゼ II(POLR2A)の大サブユニットをコードする遺伝子、腫瘍抑制遺伝子p53に近接して位置する遺伝子は、このような遺伝子である。このような遺伝子は、がん細胞ではLOHの領域内に多く存在する。LOH領域内に存在し、且つ多くのがん細胞種では欠けているその他の遺
伝子は、複製タンパク質A 70kDaサブユニット、複製タンパク質A32−kDa、リボヌクレオチドレダクターゼ、チミジル酸合成酵素、TATA関連因子2H、リボソームタンパク質S14、真核生物の開始因子5A、アラニルtRNAシンテターゼ、システイニルtRNAシンテターゼ、NaK ATPアーゼ、α−1サブユニット及びトランスフェリン受容体を含む群を包含する。
したがって、本発明は、LOHを特徴とする障害、例えばがんを治療する方法を特徴とする。該方法は:
任意選択で、LOH領域の遺伝子の対立遺伝子の遺伝子型を決定することと、好ましくは、正常細胞における該遺伝子の両対立遺伝子の遺伝子型を決定することと、
LOH細胞に見出される対立遺伝子を選択的に切断又はサイレンシングするiRNA剤を提供することと、
対象にiRNAを投与すること、
それにより疾患を治療することと
を包含する。
本発明はまた、本明細書中で開示されるiRNA剤、例えば多型遺伝子の1つの対立遺伝子を選択的にサイレンシング(例えば切断)することができるiRNA剤を包含する。
別の態様では、本発明は、2つ以上の遺伝子をiRNA剤で切断又はサイレンシングする方法を提供する。これらの実施形態では、上記iRNA剤は、2つ以上の遺伝子に見出される配列に十分な相同性を有するように選択される。例えば、配列AAGCTGGCCCTGGACATGGAGAT(配列番号6719)は、マウスのラミンB1、ラミンB2、ケラチン複合体2−遺伝子1及びラミンA/C間で保存されている。したがって、この配列を標的とするiRNA剤は、該遺伝子集団全体を効率的にサイレンシングするであろう。
本発明はまた、2つ以上の遺伝子をサイレンシングすることができる、本明細書中で開示されるiRNA剤を包含する。
送達経路
説明を簡略化するために、本項の製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述される。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、別のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、且つかかる実施は本発明の範囲内にあることは理解されるべきである。iRNAを包含する組成物は種々の経路で対象に送達され得る。典型的な経路は、静脈内、局所、経直腸、経肛門、経膣、経鼻、経肺及び経眼経路を包含する。
本発明のiRNA分子は、投与に好適な医薬組成物中に組み込まれることが可能である。かかる組成物は、通常、1種類または複数種類のiRNAと医薬として許容可能な担体とを包含する。本明細書中で使用する場合、「医薬として許容可能な担体」という用語は、医薬品の投与と適合する任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張な吸収遅延剤等を包含することを意図する。医薬としての活性を有する物質に関するこのような媒体および試薬を使用することは、当該技術分野で周知である。いかなる従来の媒体および試薬も該活性化合物と適合しない場合を除き、組成物に従来の媒体および試薬を使用することが想定される。また、補助的な活性化合物が組成物に包含されることも可能である。
本発明の医薬組成物は、局所治療又は全身治療のどちらが所望されるかによって、且つ治療されるべき領域によって、多様な方法で投与され得る。投与は、局所(経眼、経膣、経直腸、経鼻、経皮を含む)、経口又は非経口であってよい。非経口投与は、静脈内点滴投与、皮下投与、腹腔内注射又は筋肉内注射、又は鞘内投与若しくは脳室内投与を包含す
る。
投与の経路及び部位は標的指向性を増大するように選択してもよい。例えば、筋細胞を標的とする場合、目的の筋肉に筋肉内注射することは、論理的な選択であろう。エアロゾル形態のiRNAを投与することにより肺細胞を標的とすることもできよう。バルーン・カテーテルをiRNAでコーティングすることにより、且つ機械的にDNAを導入することにより血管内皮細胞を標的とすることもできる。
局所投与用の製剤には、経皮貼布剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び粉末剤を挙げることができる。従来の医薬担体、水溶性基剤、粉末状基剤又は油状基剤、増粘剤等が、必要又は望ましいものであり得る。コーティングされたコンドーム、グローブ等もまた有用であり得る。
経口投与用の組成物には、粉剤又は顆粒剤、水中懸濁液又は水溶液、シロップ、エリキシル又は非水溶性媒体、錠剤、カプセル、薬用キャンディ、又はトローチが包含される。錠剤の場合、使用可能な担体は、ラクトース、クエン酸ナトリム及びリン酸塩を含む。デンプン等の種々の錠剤分解物質、ならびに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク等の潤滑剤が、一般に錠剤に使用される。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤は、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールである。水溶性の懸濁液が経口使用に必要とされる場合、本発明の核酸組成物は、乳化剤及び懸濁剤と組み合わせることができる。所望により、ある種の甘味剤及び/又は香料剤を添加することができる。
鞘内投与又は脳室内投与のための組成物は、緩衝剤、希釈剤及びその他の好適な添加剤も含有し得る殺菌水溶液を含み得る。
非経口投与のための製剤は、緩衝剤、希釈剤及びその他の好適な添加剤も含有し得る殺菌水溶液を含み得る。脳室内注射は、例えばリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易となり得る。脳室内で使用される場合、溶質の総濃度は、調製物が等張となるように制御されるべきである。
経眼投与に関しては、軟膏又は滴下可能な液剤が、アプリケータ又は目薬用容器等の当業者には既知の眼球送達システムにより送達され得る。このような組成物は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリ(ビニルアルコール)等の粘性剤(mucomimetics)、ソルビン酸、EDTA又は塩化ベンジルクロニウム等の防腐剤、及び通常量の希釈剤及び/又は担体を包含することができる。
局所送達
説明を簡略化するために、本項の製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、別のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、且つかかる実施は本発明の範囲内にあることは理解されるべきである。好ましい実施形態では、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、局所投与を介して対象に送達される。「局所投与」とは、対象の表面に直接製剤を接触させることによって、該対象に送達することを言う。局所送達の最も一般的な形態は皮膚に対してであるが、本明細書中で開示される組成物は、体の別の表面、例えば目、粘膜、体腔の表面又は体内の表面に対して、直接適用することもできる。上記したように、最も一般的な局所送達は皮膚に対してである。この用語は、局所及び経皮を含むいくつかの投与経路を包含するが、これらに制限されない。これらの投与の形態は、通常、皮膚の透過障壁への浸透及び標的組織又は標
的層への効率的な送達を含む。局所投与は、組成物が表皮及び真皮に浸透し、最終的に全身への送達を達成する手段として使用されることができる。また、局所投与は、対象の表皮又は真皮に、又はその特定の層に、又はその下の組織に、オリゴヌクレオチドを選択的に送達する手段として使用されることができる。
本明細書中で用いる場合、「皮膚」という用語は、動物の表皮及び/又は真皮をいう。哺乳類の皮膚は、2つの主要かつ明確な層から構成されている。皮膚の外側の層は、表皮と呼ばれる。表皮は、角質層、顆粒層、有棘層、及び基底層から成り、角質層は皮膚の表面にあり、基底層は表皮の最も深い部分にある。表皮は、体の場所に応じて50μm〜0.2mmの厚さである。
表皮の下に真皮があり、真皮は表皮よりもはるかに厚い。真皮は、主として繊維束状のコラーゲンから構成されている。このコラーゲン束は、とりわけ、血管、毛細リンパ管、腺、神経終末及び免疫学的に活性な細胞に対する支えを提供する。
臓器としての上記皮膚の主要な機能の1つは、体内への物質の侵入を制御することである。皮膚の主たる透過障壁は、種々な分化状態の多くの細胞の層から形成される角質層により提供される。角質層での細胞間の空隙は、皮膚透過障壁をさらに増大するように、密閉を提供する格子様の構造に配置構成された様々な脂質で満たされている。
皮膚により提供される透過障壁は、約750Daより大きい分子量を有する分子に対しては主として非透過性である。大きな分子が皮膚の透過障壁を通過するためには、通常の浸透現象以外の機構が使用されなければならない。
いくつかの要因が、投与される物質に対する皮膚の透過性を決定付けている。これらの要因は、投与を受けた皮膚の特性、送達剤の特性、薬物と送達剤及び薬物と皮膚の両方の間の相互作用、投与された薬物の用量、治療の形態、治療後の措置を包含する。選択的に表皮及び真皮を標的とするために、薬物が予め選択された層へと浸透することを可能とする、1つ又はそれ以上の浸透促進剤を包含する組成物を配合することが可能なこともある。
経皮送達は、脂質可溶性の治療剤の投与に有用な経路である。真皮は、表皮よりも透過性が高いため、擦過した皮膚、熱傷した皮膚又は剥離した皮膚を介すると吸収はより迅速となる。また、皮膚への血流を増加させる炎症及びその他の生理学的な条件も、経皮吸収を増大させる。この経路を介する吸収は、油状ビヒクル(塗擦剤)の使用により、又は1つ以上の浸透促進剤の使用により増大し得る。経皮経路を介して本明細書中に開示される組成物を送達する別の効率的な方法としては、皮膚の水分補給及び制御放出型の局所貼布剤の使用が挙げられる。経皮経路は、全身治療及び/又は局所治療のための、本明細書中に開示される組成物を送達する潜在的に効率的な手段を提供する。
加えて、イオントフォレーシス(電場の影響下で生体膜を介してイオン性溶質を移動すること)(リーら(Lee et al)、「治療剤担体システムにおける評論総説(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)」、163ページ、1991年)、フォノフォレーシス又はソノフォレーシス(生体膜、特に皮膚及び角膜を横切る種々の治療剤の吸収を増大させるための超音波の使用)(リーら(Lee et al)、「治療剤担体システムにおける評論総説」、166ページ、1991年)、並びに、投薬の状態及び投与部位における保持力に応じたビヒクル特性の最適化(リーら(Lee et
al)、「治療剤キャリアシステムにおける評論総説」、168ページ、1991年)は、皮膚及び粘膜部位を横切って局所投与される組成物の移送を増大させる有用な方法であり得る。
提供された上記組成物及び方法は、種々のタンパク質及び遺伝子の機能を、培養又は保存された真皮組織においてin vitroで、かつ動物において試験するために使用することもできる。したがって、本発明は、任意の遺伝子の機能を試験するために適用することができる。また、本発明の方法は、治療的に又は予防的に使用され得る。例えば、乾癬、扁平苔癬、中毒性表皮壊死症、多形性紅斑、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫、パジェット病、カポジ肉腫、肺線維症、ライム病、ならびにウイルス、真菌及びバクテリアの皮膚感染等の疾患に罹患しているとわかっている動物又は該疾患への罹患が疑われる動物の治療のために使用されうる。
肺送達
説明を簡略化するために、本項の製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、別のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、且つこのような実施は本発明の範囲内にあることは理解されるべきである。iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む組成物は、肺送達により対象に投与されうる。肺送達組成物は、患者により分散剤が吸入され、該分散剤内の組成物、好ましくはiRNAが肺に到達して肺胞領域を介して直接血液循環へ容易に吸収され得るように、送達されることができる。肺送達は、肺の疾患を治療するために、全身送達及び局所送達の両方に有効であり得る。
肺送達は、霧状の、エアロゾル化された、ミセル化された、かつ乾燥粉末ベースの製剤の使用など、様々な手法で達成可能である。送達は、液体ネブライザー、エアロゾル吸入器、および乾燥粉末散布デバイスを用いて達成されうる。定量式のデバイスが好ましい。アトマイザー又は吸入器を使用する利点の1つは、上記デバイスが内蔵型であるために雑菌混入の可能性が最小限となることである。乾燥粉末散布デバイスは、例えば、容易に乾燥粉末として製剤化され得る薬物を送達する。iRNA組成物は、凍結乾燥粉末又は噴霧乾燥粉末として、単独又は好適な粉末担体との組み合わせとして安定に貯蔵され得る。吸入用の組成物の送達は、機器に組み込まれた時に、エアロゾル薬の投与期間中の、服用量の追跡、服用順守の監視、及び/又は患者に対する服用の誘発を可能にする、タイマー、投与量計測器、時間測定器、又は時間表示器などの服用時間計測要素を介して実施されてもよい。
「粉末」という用語は、微小な分散固形粒子から成る組成物を意味し、上記粒子は自由に流動し、且つ吸入器内で容易に分散されうるとともに、続いて対象によって吸入されて肺へ到達し肺胞内に浸透可能となることを特徴とする。したがって、上記粉末は、「呼吸用」であると言える。平均粒径は、直径が約10μm未満であることが好ましく、比較的均一に球状の形状に分布していることが好ましい。直径が、約7.5μm未満であることがより好ましく、約5.0μm未満であることが最も好ましい。通常、粒径分布は、直径が約0.1μm〜約5μmであり、特に約0.3μm〜約5μmであることが好ましい。
「乾燥」という用語は、組成物が、約10重量%(%w)未満の水分含有量、通常は、約5%w未満、好ましくは約3%w未満の水分含有量を有することを意味する。乾燥組成物は、上記粒子が吸入器内で容易に分散可能でエアロゾルを形成するようなものでありうる。
「治療上有効な量」という用語は、期待される生理学的応答を得るために治療すべき対象に所望のレベルの薬物を提供するのに必要とされる、組成物中の存在量である。
「生理学的に有効な量」という用語は、所望の症状緩和効果又は治療効果を得るために対象に送達される量である。
「医薬として許容可能な担体」という用語は、肺に対する重大な悪影響である毒性効果を伴わずに、肺に摂取させることができる担体を意味する。
担体として有用である医薬賦形剤の種類としては、ヒト血清アルブミン(HSA)等の安定剤、糖質、アミノ酸及びポリペプチド等の充填剤、pH調整剤又は緩衝剤、塩化ナトリウム等の塩等が挙げられる。これらの担体は、結晶形態でも非晶質の形態でもよく、又は該2つの形態の混合物であってもよい。
特に有用である充填剤としては、適合性の糖質、ポリペプチド、アミノ酸又はそれらの組み合わせが挙げられる。好適な糖質としては、ガラクトース、D−マンノース、ソルボース等の単糖、ラクトース、トレハロース等の二糖、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン、及びラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン等の多糖、マンニトール、キシリトール等のアルジトール等が挙げられる。糖質の好ましい群としては、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン及びマンニトールが挙げられる。好適なポリペプチドとしては、アスパルテームが挙げられる。アミノ酸としては、アラニン及びグリシンが挙げられ、グリシンが好ましい。
本発明の組成物の微量成分である添加剤は、噴霧乾燥中の立体構造の安定性及び粉末の分散性の向上のために包含されてもよい。これらの添加剤は、トリプトファン、チロシン、ロイシン及びフェニルアラニン等の疎水性アミノ酸を含む。
好適なpH調整剤又は緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等の、有機酸及び塩基から調製される有機塩が挙げられるが、クエン酸ナトリウムが好ましい。
ミセル状iRNA製剤の経肺投与は、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロエタン、ジメチルフルオロプロパン、テトラフルオロプロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、およびその他の非CFC噴霧剤及びCFC噴霧剤等の噴霧剤を用いて、定量噴霧器で達成され得る。
経口又は経鼻送達
説明を簡略化するために、本項の製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述する。しかしながら、これらの製剤、組成物及び方法は、別のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、且つかかる実施は本発明の範囲内にあることは理解されるべきである。口腔及び鼻腔の膜はいずれも、別の投与経路と比べて有利な点を与える。例えば、これらの膜を介して投与された薬物は、急速に作用を開始し、薬効レベルの血漿中濃度を提供し、肝代謝の初回通過効果を回避し、不都合な胃腸(GI)環境への薬物の暴露を回避する。更なる利点は、上記膜部位に容易に接近することができるので、薬物を簡単に投与し、局在させ、且つ除去することができることである。
経口送達では、組成物が、口腔の表面に、例えば、舌下粘膜(舌の腹側表面の膜及び口底を含む)又は頬の内面を構成する頬粘膜を標的とするようにすることが可能である。舌下粘膜は比較的透過性が高いため、迅速な吸収と、且つ多くの薬物に対する許容可能な生物学的利用性が得られる。さらに、舌下粘膜は、便利で、許容可能で、且つ容易に接触可能である。
分子が口腔粘膜を介して透過する能力は、分子サイズ、脂質溶解度及びペプチドタンパク質のイオン化に関連すると思われる。1,000ダルトン未満の小さい分子は、迅速に
粘膜を通過すると思われる。分子サイズが増加するのに伴い、透過性は急速に減少する。脂質可溶性の化合物は、脂質可溶性でない分子よりも透過性が高い。分子がイオン化されていない、または電荷において中性である場合に、最大吸収が生じる。したがって、荷電分子は、口腔粘膜を介した吸収にとって最も大きな課題となる。
また、iRNAの医薬組成物は、上述のような混合ミセル医薬製剤及び噴霧剤を、定量噴霧器から、吸入ではなくヒトの口腔内へ噴霧することにより、口腔に投与され得る。一実施形態では、上記噴霧器は、医薬製剤及び噴霧剤を口腔内へ噴霧する前にまず振とうされる。
デバイス
説明を簡略化するために、本項のデバイス、製剤、組成物及び方法は、主として非修飾iRNA剤に関して論述される。しかしながら、これらのデバイス、製剤、組成物及び方法は、別のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、且つかかる実施は本発明の範囲内にあることは理解されるべきである。iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、例えば、対象へ移植するかまたは別の方法で対象に設置されるデバイス等のデバイス上又はデバイス内へ配置されることができる。典型的なデバイスとしては、血管系に導入されるデバイス(例えば血管組織の管腔内に挿入されるデバイス)、又はステント、カテーテル、心臓弁、及び別の血管用デバイスを含有する、デバイス自体が血管の一部を形成するデバイスが挙げられる。これらのデバイス、例えばカテーテル又はステントは、肺、心臓又は足の血管に配置されることができる。
別のデバイスとしては、血管用デバイス以外のデバイス、例えば腹膜、又は臓器又は腺組織に移植されるデバイス、例えば人工臓器が挙げられる。このデバイスは、iRNAに加えて治療物質を放出することが可能であり、例としては、デバイスはインスリンを放出することができる。
その他のデバイスは、股関節等の人工関節、及び別の整形外科移植片を含む。
一実施形態では、iRNAを含む組成物の単位用量又は一定用量は、移植デバイスにより分配される。該デバイスは、対象の体内であるパラメータを監視するセンサーを包含することができる。例えば、該デバイスがポンプを備え、例えば任意選択で電子機器と連携されていてもよい。
組織、例えば肝臓等の細胞又は臓器が、iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を用いてex vivoで処理され、次に対象に投与または移植されることも可能である。
上記組織は、自己、同種、又は異種の組織であり得る。例えば、組織(例えば肝臓)は、移植片対宿主病を減少させるように処理可能である。別の実施形態では、組織は同種組織であり、該組織(肝臓等)における好ましくない遺伝子発現を特徴とする疾患を治療するために処理される。他の例では、造血性細胞を含有する組織、例えば骨髄造血性細胞は、好ましくない細胞増殖を阻害するように処理され得る。
自己組織であれ移植組織であれ、処理された組織の導入は、別の治療と組み合わせることができる。
いくつかの実施では、iRNAで処理された細胞は、例えば該細胞が移植片から離れるのを阻止するが、体内の分子が該細胞に到達するのを可能にし、かつ該細胞により産生された分子が体内に侵入するのを可能にする半透過性多孔質障壁により、別の細胞から隔離される。一実施形態では、該多孔質障壁は、アルギン酸から形成される。
一実施形態では、避妊具(避妊用デバイス)が、iRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)でコーティングされるか、又は該iRNA剤を含有する。典型的なデバイスとしては、コンドーム、避妊ペッサリー、IUD(移植可能な子宮用デバイス)、スポンジ、膣コンドーム、及び産児制限器具が挙げられる。一実施形態では、iRNAは精子又は卵を不活性化するように選択される。他の実施形態では、iRNAは、ウイルス又は病原体RNA、例えばSTDのRNAに相補的であるように選択される。いくつかの例では、iRNA組成物は、殺精子剤を含むことができる。
用量
一態様では、本発明は、対象(例えばヒト対象)に、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤を投与する方法を特徴とする。該方法は、iRNA剤、例えばsRNA剤、例えば二本鎖sRNA剤であって(a)二本鎖部分が19〜25ヌクレオチド(nt)長、好ましくは21〜23ntであり、(b)標的RNA(例えば、内在性標的RNA又は病原体標的RNA)に相補的であり、且つ任意選択で(c)少なくとも1つの3’突出部1〜5ヌクレオチド長を含む二本鎖sRNA剤を単位用量投与することを包含する。一実施形態では、上記単位用量は、体重1kg当たり1.4mg未満、又は体重1kg当たり10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005又は0.00001mg未満、及び体重1kg当たり200nmol未満のRNA剤(例えば約4.4×1016コピー)、又は体重1kg当たり1,500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmol未満のRNA剤である。
規定された量は、疾患又は障害、例えば肝臓に存在するRNA等の標的RNAに関連する疾患又は障害を、治療又は抑制するのに効果的な量であり得る。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内又は筋肉内)、吸入投与、又は局所投与により投与され得る。用量は、体重1kgあたり2、1又は0.1mg未満であることが特に好ましい。
好ましい実施形態では、単位用量は、1日に1回未満の頻度、例えば、2,4,8又は30日毎よりも低い頻度で投与される。他の実施形態では、単位用量は、頻繁に投与されない(例えば、規則正しい頻度では投与されない)。例えば、単位用量が単回で投与されてもよい。
一実施形態では、有効用量がその他の従来の治療様式で投与される。一実施形態では、対象がウイルス感染症であり、上記治療様式は、iRNA剤以外の抗ウイルス剤(例えば、二本鎖iRNA剤又はsRNA剤以外)である。他の実施形態では、対象がアテローム性動脈硬化症であり、有効用量のiRNA剤(例えば二本鎖iRNA剤又はsRNA剤)が、外科的介入と組み合わせて、例えば外科的介入(例えば血管形成術)の後に投与される。
一実施形態では、対象に、初回用量及び1又はそれ以上の維持用量のiRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsR
NA剤などのiRNA剤、またはそれらの前駆体をコードするDNA)が投与される。維持用量は、一般に初回用量より少ない(例えば、初回用量の1/2少ない)。維持投与計画は、対象を、1日に体重1kg当たり0.01μg〜1.4mgの範囲、例えば1日に体重1kg当たり10、1、0.1、0.01、0.001、又は0.00001mgの用量で治療することを包含する。維持用量は、5、10、又は30日毎に1回以下で投与されるのが好ましい。さらに、治療投与計画は、個々の疾患の性質、該疾患の重症度及び患者の全体的な状態により変化し得る期間中は持続され得る。好ましい実施形態では、用量は、1日当たり1回以下、例えば24、36、48時間以上当たり1回以下、例えば5又は8日毎に1回以下で送達され得る。治療に続いて、患者の状態の変動及び疾患状態の症状の緩和について、患者をモニタリングしてもよい。患者が現在の用量レベルでは有意に応答しない場合には、化合物の用量は増加されてもよいし、又は疾患状態の症状の緩和が認められる場合、疾患状態が除去されている場合、又は望ましくない副作用が認められる場合には、用量を減らしてもよい。
有効用量は、個別の状況の下で所望される、又は適切と考えられるように、単回投与で又は2回以上の投与で投与され得る。所望により、反復又は頻繁な注入を容易にするためには、送達デバイス(例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、嚢内又は関節内))又はリザーバを移植することが望ましい。
一実施形態では、iRNA剤医薬組成物は、複数の種類のiRNA剤を包含する。他の実施形態では、複数種類のiRNA剤が、天然に存在する標的配列に関して別の種類のiRNA剤と重複せずかつ隣接しない配列を有する。他の実施形態では、複数の種類のiRNA剤は、天然に存在する異なる標的遺伝子に特異的である。他の実施形態では、iRNA剤は対立遺伝子特異的である。
場合によっては、患者は、iRNA剤を用いて別の治療様式と併せて治療される。例えば、肝臓病を治療中の患者は、疾患の進行を増大することが知られている標的遺伝子に特異的なiRNA剤を、該標的遺伝子の産物の活性を阻害する既知の薬物と併せて投与されてもよい。例えば、肝臓がんを治療中の患者は、腫瘍細胞の増殖に必須な標的に特異的なiRNA剤を、化学療法と併用して投与されてもよい。
治療の成功に続いて、病状の再発を予防するための維持療法を患者に施すことが望ましく、該療法では、本発明の化合物が、体重1kg当たり0.01μg〜100gの維持用量で投与される(米国特許第6,107,094号を参照)。
iRNA剤組成物の濃度は、疾患を治療又は抑制するのに、又はヒトにおける生理学的状態を調節するのに十分効果的な量である。投与されるiRNA剤の濃度又は量は、該iRNA剤及び投与方法(例えば、経鼻、経口、経肺)に対して決定されたパラメータに依存し得る。例えば、経鼻製剤は、鼻腔の刺激又は焼けつきを回避するために、いくつかの成分をかなり低濃度とする必要がある傾向にある。好適な経鼻製剤を提供するために、経口製剤を10〜100倍に希釈するのが望ましいこともある。
疾患又は障害の重症度、事前の治療、対象の通常の健康状態及び/又は年齢、ならびに別の疾患の存在など(これらに限定されない)、ある種の要因が、対象を効果的に治療するのに必要とされる用量に影響を及ぼす可能性がある。さらに、治療上有効な量のiRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を用いた対象の治療は、単一の治療を包含することもできるし、又は、好ましくは一連の治療を包含することもできる。また、治療に使用されるsRNA剤等のiRNA剤の有効用量を、
個々の治療の経過により増やしても減らしてもよいことは当然のことである。用量を変化させることは可能であり、本明細書中で記載されるような診断アッセイの結果から明らかになり得る。例えば、対象は、iRNA剤組成物の投与後にモニタリングされ得る。モニタリングの情報に基づいて、iRNA剤組成物の追加量が投与され得る。
数日間〜数ヶ月間続く治療の経過とともに、又は治療が効果を上げるか若しくは疾患状態の減少が達成されるまで、投薬は治療されるべき病状の重症度及び応答性によって決まる。最適な投与計画は、患者の体内における薬物蓄積量の測定から算出され得る。当業者は、最適の用量、投与の手順及び反復頻度を容易に決定することができる。最適の用量は、個々の化合物の相対的な効能に依存して変化しうるものであり、通常、in vitro及びin vivoの動物モデルで効果的であることが見出されたEC50を基に概算可能である。いくつかの実施形態では、上記動物モデルには、ヒト遺伝子、例えば、標的RNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物が挙げられる。トランスジェニック動物は、対応する内在のRNAを欠いているものであってもよい。他の実施形態では、試験用の組成物は、少なくとも内部領域においては、動物モデルの標的RNAとヒトの標的RNAとの間で保存されている配列と相補的であるiRNA剤を包含する。
本明細書中に記載のiRNA剤が、数多くの方法で、哺乳類、特に大型哺乳類、例えばヒト以外の霊長類又はヒトに投与され得ることを、本発明者等は見出している。
一実施形態では、iRNA剤(例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤)組成物の投与は、非経口、例えば静脈内(例えばボーラスとして又は拡散注入として)、皮内、腹腔内、筋肉内、鞘内、脳室内、頭蓋内、皮下、経粘膜的、口腔内、舌下、経内視鏡的、経直腸、経口、経膣、局所、経肺、鼻腔内、尿道又は経眼で実施される。投与は、対象者により、又は他の人(例えば医療提供者)により行われ得る。該薬剤は、一定用量で、又は一定量を送達する分配容器中に提供され得る。選択された送達様式については、以下により詳細に述べる。
本発明は、本明細書中に記載のiRNA剤を直腸投与又は直腸送達するための方法、組成物及びキットを提供する。
したがって、本明細書中に記載のiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)、例えば本明細書中に記載の治療上有効な量のiRNA剤、例えば40ヌクレオチド未満、好ましくはヌクレオチド30未満の二本鎖領域を有し、1つ又は2つの1〜3ヌクレオチド長の1本鎖3’突出部を有するiRNA剤は、直腸投与され得る(例えば、直腸を介して下方大腸又は上方大腸内へ導入され得る)。この手法は、炎症性疾患、好ましくない細胞増殖を特徴とする障害、例えばポリープ又は大腸がんを治療する場合に、特に有用である。
該薬剤は、分注用デバイス、例えば、大腸の検査又はポリープの除去に使用されるデバイスと類似した、可撓性の、カメラガイド付きデバイスであって、薬剤を送達する手段を備えたものを導入することにより、大腸内の部位に送達され得る。
iRNA剤の直腸投与には、浣腸剤を用いる。浣腸剤のiRNA剤は、生理食塩水又は緩衝溶液に溶解され得る。また、直腸投与には坐剤を用いることも可能であり、坐剤は、別の成分、例えばココアバター又はヒドロプロピルメチルセルロース等の賦形剤を含み得る。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、例えば錠剤、カプセル、ゲルカプセル、薬用キャンディ、トローチ又は液状シロップの形状で経口投与され得る。さらに、該組成物は
、口腔の表面に局所施用され得る。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、口腔投与されることができる。例えば、該薬剤は口腔内に噴霧されてもよいし、又は直接、例えば液状、固形またはゲル状で、口腔内の表面に施用されてもよい。このような投与は、口腔内(例えば、歯茎又は舌)の炎症の治療に特に望ましく、例えば一実施形態では、その口腔投与は、例えば吸入を伴わずに、分配容器、例えば医薬組成物及び噴霧剤を分配する定量噴霧容器から口腔内へ噴霧されることにより実施される。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、眼球組織に投与され得る。例えば、該薬剤は、眼又は隣接する組織(例えば、瞼の内側)に投与され得る。該薬剤は、例えば噴霧することにより、滴剤として、洗眼液として、又は軟膏として局所投与され得る。投与は、対象者により、又は他の人(例えば医療提供者)により実施され得る。該薬剤は、一定用量で、又は一定用量を送達する容器内で提供され得る。また、該薬剤は、眼の内側に投与されることも可能であり、選択された領域又は構造に対して該薬剤を導入することができる針又は別の送達デバイスにより導入され得る。眼球治療は、眼又は隣接する組織の炎症を治療するのに特に望ましい。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、皮膚へ直接投与され得る。例えば、該薬剤は、例えば、皮膚内に侵入するが、好ましくはその下にある筋組織には侵入しない極微針又は一連の極微針を使用することにより、皮膚層に局所投与又は送達され得る。iRNA剤組成物の投与は、局所的であり得る。局所投与は、例えば、対象の真皮又は表皮に上記組成物を送達することができる。局所投与は、経皮貼布剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び粉末剤の形態であり得る。局所投与用の組成物は、リポソーム、ミセル、乳化剤又は別の脂溶性分子集合体として製剤化され得る。経皮投与は、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス又はソノフォレーシス等の少なくとも1つの浸透促進法を用いて投与され得る。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、肺器官系に投与され得る。経肺投与は、吸入により、又は肺器官系内へ送達デバイスを導入することにより、例えば該薬剤を分配することができる送達デバイスを導入することにより達成され得る。肺送達の好ましい方法には、吸入を用いる。該薬剤は、該薬剤(例えば湿った薬剤又は乾燥した薬剤であって、吸入可能なように十分に小さい形状の薬剤)を送達する容器中で提供され得る。該デバイスは、一定用量の薬剤を送達し得る。対象者でも他の人でも該薬剤を投与し得る。
肺送達は、肺組織に直接影響する疾患だけでなく、別の組織に影響する疾患にも効果的である。
iRNA剤は、液体または液体以外のもの(例えば粉末、結晶)、又は肺送達用のエアロゾルとして製剤化され得る。
本明細書中に記載の任意のiRNA剤は、経鼻投与され得る。経鼻投与は、送達デバイスを鼻内に導入することにより、例えば該薬剤を分配することができる送達デバイスを導入することにより達成され得る。経鼻送達の方法は、鼻腔の表面に、噴霧剤、エアロゾル、液剤を、例えば滴下により又は局所投与により投与することを包含する。該薬剤は、該薬剤(例えば湿った薬剤又は乾燥した薬剤であって、吸入可能なように十分に小さい形状の薬剤)を送達する容器中で提供され得る。該デバイスは、一定用量の薬剤を送達し得る。対象者でも他の人でも該薬剤を投与し得る。
経鼻送達は、鼻組織に直接影響する疾患だけでなく、別の組織に影響する疾患にも効果的である。
iRNA剤は、液体または液体以外のもの(例えば粉末、結晶)、又は経鼻送達用として製剤化され得る。
iRNA剤は、天然のウイルスキャプシド内にパッケージングされてもよいし、化学的若しくは酵素的に生産された人工キャプシド又はそれらに由来する構造内にパッケージングされてもよい。
iRNA剤を含む医薬組成物の用量は、疾患状態(例えばがん又は心疾患)の症状を緩和するために投与され得る。対象は、上記の任意の方法により、該医薬組成物を用いて治療され得る。
対象における遺伝子発現は、iRNA剤を含む医薬組成物を投与することにより調節され得る。
対象は、粉末形態、例えば結晶性粒子等の微粒子の集合体である一定量のiRNA剤、例えば二本鎖のiRNA剤またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤)組成物を投与することにより治療され得る。該組成物は、複数のiRNA剤、例えば、1つ又はそれ以上の異なる内在性標的RNAに特異的なiRNA剤を包含し得る。上記方法は、本明細書中に記載の別の特徴を包含し得る。
対象は、噴霧乾燥を含む方法(すなわち溶液、乳化剤、又は懸濁液を噴霧し、直後にその液滴を乾燥ガスに暴露させ、得られた多孔質粉末粒子を回収すること)により調製された一定量のiRNA剤組成物を投与することにより治療され得る。上記組成物は、複数のiRNA剤、例えば、1つ又はそれ以上の異なる内在性標的RNAに特異的なiRNA剤を包含し得る。上記方法は、本明細書中に記載の別の特徴を包含し得る。
iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)は、粉末形態、結晶形態又はその他の微細に分割された形態で、担体、例えば吸入又は別の経肺送達に適したマイクロ粒子又はナノ粒子とともに、あるいは担体を伴わずに、提供され得る。このことは、エアロゾル調製物、例えばエアロゾル化した噴霧乾燥組成物を提供することを包含する。該エアロゾル組成物は、定量送達デバイス中に提供されるか、又は該デバイスにより分配されるかのうち少なくともいずれかでありうる。
対象は、吸入により、例えば噴霧乾燥したiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物を、エアロゾル化し、且つ該エアロゾル化組成物を吸入することにより、治療可能な状態を治療され得る。iRNA剤はsRNAであり得る。上記組成物は、複数のiRNA剤、例えば、1つ又はそれ以上の異なる内在性標的RNAに特異的なiRNA剤を包含し得る。上記方法は、本明細書中に記載の別の特徴を包含し得る。
対象は、有効量/一定量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤、またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む組成物を投与することにより治療されることができ、該組成物は、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、蒸発、流動床乾燥、又はこれらの技法の組合せを含む方法により調製される。
別の態様では、本発明は、対象の細胞における多量の転写産物に関連したパラメータを評価すること、参照値に対して評価されたパラメータを比較すること、及び評価されたパラメータが参照値に対して予め選択された相関を有する(例えば値が大きい)場合にiRNA剤(又は、sRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤等の前駆体、又はiRNA剤又はその前駆体をコードするDNA)を該対象に投与することを包含する方法を特徴とする。一実施形態では、iRNA剤は、評価される転写産物に相補的な配列を含む。例えば、パラメータは、転写レベルの直接的な測定、タンパク質レベルの測定、疾患又は障害の症状又は特徴(例えば細胞増殖速度及び/又は腫瘍質量、ウイルス負荷)の測定であり得る。
別の態様では、本発明は、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む第1の量の組成物であって該iRNA剤が標的核酸と実質的に相補的である鎖を含むことを特徴とする組成物を、対象に投与することと、標的核酸によりコードされたタンパク質と関連する活性を評価し、該評価を第2の量が投与されるべきかどうかを決定するために使用することを含む方法を特徴とする。好ましい実施形態では、上記方法は、第2の量の組成物を投与することを包含し、第2の量についての投与時間又は用量は、前記評価の関数である。上記方法は、本明細書中に記載の別の特徴を包含し得る。
別の態様では、本発明は、二本鎖iRNA剤(ds iRNA剤)の供給源を対象に投与する方法を特徴とする。該方法は、(a)19〜25ヌクレオチド長、好ましくは21〜23ヌクレオチドの二本鎖領域を含み、(b)標的RNA(例えば、内在性RNA又は病原体RNA)に相補的であり、且つ任意選択で(c)少なくとも1つの3’突出部1〜5nt長を含むds iRNA剤、例えばsRNA剤の供給源を投与または移植することを包含する。一実施形態では、上記供給源は、長期にわたりds iRNA剤を放出し、例えば上記供給源は、制御放出又は遅延放出型の供給源であり、例えばds iRNA剤を徐々に放出する微粒子である。他の実施形態では、上記供給源は、ポンプ、例えばセンサーを含むポンプ、又は1つ又はそれ以上の単位用量を放出することができるポンプである。
一態様では、本発明は、標的RNAに相補的なヌクレオチド配列、例えば、実質的及び/又は正確に相補的なヌクレオチド配列を含むiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。標的RNAは、内在性のヒト遺伝子の転写産物であり得る。一実施形態では、iRNA剤は、(a)19〜25ヌクレオチド長、好ましくは21〜23ヌクレオチドであり、(b)内在性標的RNAに相補的であり、且つ任意選択で(c)少なくとも1つの3’突出部1〜5nt長を含む。一実施形態では、医薬組成物は、乳化剤、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリー又はリポソームであり得る。
一例では、医薬組成物は、局所送達剤と混合されたiRNA剤を含む。局所送達剤は、複数の微小ビヒクルであり得る。微小ビヒクルは、リポソームであり得る。好ましい実施形態では、リポソームはカチオン性のリポソームである。
別の態様では、医薬組成物は、局所浸透促進剤と混合されたiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得
るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む。一実施形態では、上記局所浸透促進剤は、脂肪酸である。脂肪酸は、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル 1−モノカプリン酸、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1−10アルキルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド又は医薬として許容可能なその塩であり得る。
別の実施形態では、局所浸透促進剤は、胆汁酸塩である。上記胆汁酸塩は、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル又は医薬として許容可能なその塩であり得る。
別の実施形態では、浸透促進剤は、キレート剤である。該キレート剤は、EDTA、クエン酸、サリチル酸、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、β−ジケトンのN−アミノアシル誘導体又はその混合物であり得る。
別の実施形態では、浸透促進剤は、界面活性剤、例えばイオン性又は非イオン性界面活性剤である。上記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテル、ペルフルオロ化合物の乳化剤又はその混合物であり得る。
別の実施形態では、浸透促進剤は、不飽和環状尿素、1−アルキル−アルコン、1−アルケニルアザシクロ−アラカノン、ステロイド性の抗炎症剤及びそれらの混合物から成る群から選択され得る。さらに別の実施形態では、浸透促進剤は、グリコール、ピロール、アゾン(azone )又はテルペン類であり得る。
一態様では、本発明は、経口送達に好適な形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、経口送達は、胃腸管の細胞又は領域、例えば小腸、大腸(例えば、大腸がんを治療するため)などに対してiRNA剤組成物を送達するのに使用され得る。経口送達の形態は、錠剤、カプセル又はゲルカプセルであり得る。一実施形態では、医薬組成物のiRNA剤は、細胞接着タンパク質の発現を調節し、細胞の増殖速度を調節し、又は真核生物の病原体又はレトロウイルスに対抗する生物活性を有する。別の実施形態では、医薬組成物は、哺乳類の胃内で、錠剤、カプセル又はゲルカプセルが溶解するのを実質的に抑制する腸溶性材料を包含する。好ましい実施形態では、腸溶性材料はコーティング剤である。該コーティング剤は、酢酸フタル酸、プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリメリト酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース又は酢酸フタル酸セルロースであり得る。
別の実施形態では、経口投薬形態の医薬組成物は、浸透促進剤を含む。該浸透促進剤は、胆汁酸塩又は脂肪酸であり得る。胆汁酸塩は、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸及びそれらの塩であり得る。脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸又はそれらの塩であり得る。
別の実施形態では、経口投薬形態の医薬組成物は、賦形剤を含む。一例では、賦形剤はポリエチレングリコールである。他の例では、賦形剤はPrecirol(登録商標)である。
別の実施形態では、経口投薬形態の医薬組成物は、可塑剤を含む。可塑剤は、ジエチルフタル酸、トリアセチンセバシン酸ジブチル、ジブチルフタル酸又はトリエチルクエン酸であり得る。
一態様では、本発明は、iRNA剤及び送達ビヒクルを包含する医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、該iRNA剤は、(a)19〜25ヌクレオチド長、好ましくは21〜23ヌクレオチドであり、(b)内在性標的RNAに相補的であり、且つ任意選択で(c)少なくとも1つの3’突出部1〜5ヌクレオチド長を含む。
一実施形態では、送達ビヒクルは、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を、局所の投与経路により細胞に送達し得る。送達ビヒクルは、微小ビヒクルであり得る。一例では、微小ビヒクルはリポソームである。好ましい実施形態では、リポソームはカチオン性リポソームである。他の例では、微小ビヒクルはミセルである。一態様では、本発明は、注射可能な投薬形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、医薬組成物の注射可能な投薬形態は、殺菌水溶液又は分散液及び殺菌粉末を含む。好ましい実施形態では、上記殺菌溶液は、水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン又はプロピレングリコール等の希釈剤を含み得る。
一態様では、本発明は、経口投薬形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、経口投薬形態は、錠剤、カプセル及びゲルカプセルから成る群から選択される。別の実施形態では、医薬組成物は、哺乳類の胃内で、錠剤、カプセル又はゲルカプセルが溶解するのを実質的に抑制する腸溶性材料を含む。好ましい実施形態では、腸溶性材料はコーティング剤である。コーティング剤は、酢酸フタル酸、プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリメリト酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース又は酢酸フタル酸セルロースであり得る。一実施形態では、経口投薬形態の医薬組成物は、浸透促進剤、例えば、本明細書中に記載の浸透促進剤を含む。
一態様では、本発明は、直腸投薬形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、直腸投薬形態は浣腸剤である。別の実施形態では、直腸投薬形態は坐剤である。
一態様では、本発明は、膣内投薬形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、膣内投薬形態は坐剤である。別の実施形態では、膣内投薬形態は、泡沫剤、クリーム又
はゲルである。
一態様では、本発明は、経肺又は経鼻投薬形態の、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む医薬組成物を特徴とする。一実施形態では、iRNA剤は、粒子、例えばミクロスフェア等のマイクロ粒子内に組み込まれ得る。上記粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥又はこれらの技法の組合せにより産生され得る。ミクロスフェアは、懸濁液、粉末又は移植可能な固形として製剤化され得る。
一態様では、本発明は、対象が吸入するのに好適な、噴霧乾燥されたiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物であって、(a)吸入によって対象の状態を治療するのに好適な治療上有効なiRNA剤の量、(b)糖質及びアミノ酸から成る群から選択される医薬として許容可能な賦形剤、及び(c)任意選択で、分散性を促進する量の生理学的に許容可能かつ水溶性のポリペプチド、を含む組成物を特徴とする。
一実施形態では、賦形剤は糖質である。該糖質は、単糖、二糖、三糖及び多糖から成る群から選択され得る。好ましい実施形態では、糖質は、デキストロース、ガラクトース、マンニトール、D−マンノース、ソルビトール及びソルボースから成る群から選択される単糖である。他の好ましい実施形態では、糖質は、ラクトース、マルトース、スクロース及びトレハロースから成る群から選択される二糖である。
別の実施形態では、賦形剤はアミノ酸である。一実施形態では、該アミノ酸は疎水性アミノ酸である。好ましい実施形態では、疎水性アミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンから成る群から選択される。さらに別の実施形態では、アミノ酸は極性アミノ酸である。好ましい実施形態では、アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、リシン、システイン、グリシン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から成る群から選択される。
一実施形態では、分散性を促進するポリペプチドは、ヒト血清アルブミン、α−ラクトアルブミン、トリプシノーゲン及びポリアラニンから成る群から選択される。
一実施形態では、噴霧乾燥されたiRNA剤組成物は、10μm(ミクロン)未満の質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。別の実施形態では、噴霧乾燥されたiRNA剤組成物は、5μm未満の質量中央径を有する粒子を含む。さらに別の実施形態では、噴霧乾燥されたiRNA剤組成物は、5μm未満の空気力学的質量中央径(MMAD)を有する粒子を含む。
幾つかの他の態様では、本発明は、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)の医薬製剤を収容している好適な容器を含むキットを提供する。ある実施形態では、該医薬製剤の個々の成分は、1つの容器内に提供され得る。別例として、医薬製剤の成分を別個に2つ又はそれ以上の容器、例えばiRNA剤調製物用の1つの容器、担体化合物用の少なくとももう1つの容器を提供するのが望ましい。上記キットは、単一ボックス内に入った1つ又はそれ以上の容器等の、多くの異なる構成で
包装されてもよい。異なる成分が、例えばキットに付属の取り扱い説明書に従って併用されてもよい。上記成分は、例えば医薬組成物を調製して投与するために、本明細書中に記載の方法に従って組み合わせることが可能である。また、上記キットは送達デバイスも含み得る。
別の態様では、本発明は、デバイス、例えば移植可能なデバイスを特徴とし、該デバイスは、iRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤、又はsRNA剤(例えば、前駆体、例えばsRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)、例えば内在性転写産物をサイレンシングするiRNA剤を含む組成物を、分配又は投与することができる。一実施形態では、該デバイスは上記組成物でコーティングされる。別の実施形態では、iRNA剤がデバイス内に配置される。別の実施形態では、デバイスは、単位用量の組成物を分配するための機構を備えている。別の実施形態では、デバイスは、例えば拡散により連続的に組成物を放出する。代表的なデバイスとしては、ステント、カテーテル、ポンプ、人工臓器又は人工臓器部品(例えば、人工心臓、心臓弁等)、及び縫合糸が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、「結晶性の」という用語は、結晶の構造又は特性を有する固体、すなわち、一定の角度で平坦な面が交差し、かつ規則的な内部構造を有する三次元構造の粒子を言う。本発明の組成物は、様々な結晶形状を有しうる。結晶形状は、例えば噴霧乾燥等を包含する種々の方法により調製され得る。
本発明について以下の実施例によりさらに説明するが、該実施例によりさらに制限されると解釈されるべきではない。
[脂質関連疾患の治療標的としてのapoBタンパク質]
アポリポタンパク質B(apoB)は、脂質関連疾患の新規な治療法の開発の標的遺伝子候補である。
apoBレベルの上昇をもたらす脂質代謝障害を治療する治療ツールとしての特定のsiRNAの効力を評価するために、本明細書に記載の方法を用いることができる。標的のapoB mRNAに選択的に結合して不活性化するためのsiRNA二本鎖を使用することが、上記障害を治療するための方法である。
2つの方法:
i)ヒトapoB mRNAに相同なsiRNA二本鎖をヒト肝臓がん細胞株(HepG2)にトランスフェクションし、apoBタンパク質およびRNAをそれぞれウエスタンブロット法およびRT‐PCRを用いてモニターすることによる、ex vivoモデルにおけるapoBの阻害。apoBの発現を効率良く阻害するsiRNA分子を、in
vivoにおいて同様の効果について試験する。
ii)apoBトランスジェニックマウスモデル(apoB100トランスジェニックマウス、C57BL/6NTac‐TgN(APOB100)、注文モデル番号:1004−T(ヘミ接合)、B6(対照))を用いるin vivo試験。siRNA二本鎖を、apoB‐100トランスジェニックマウス、またはコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)およびapoBの両方を発現するCETP/apoB二重トランスジェニックマウスを標的とするように設計する。in vivoにおける遺伝子発現に対するsiRNAの効果は、血清中のHDL/LDLコレステロールレベルをモニターすることにより測定可能である。この実験の結果から、高コレステロール血症、HDL/LDL
コレステロールの不均衡、家族性複合型高脂血症、および後天的な高脂血症を含めた脂質関連疾患を治療するためのsiRNAの治療上の潜在能力が示唆されるであろう。
(背景) トリグリセリドの形態の脂肪は、高度に還元されかつ無水物であるため、エネルギーの貯蔵に理想的である。脂肪細胞(adipocyte )は、核、細胞膜、およびトリグリセリドから構成され、脂肪細胞の機能はトリグリセリドを貯蔵することである。
ヒトの食物の脂質部分は主にトリグリセリドとコレステロール(およびそのエステル)とから構成されている。これらは、吸収されるためには乳化されて消化されなければならない。具体的には、脂肪(トリアシルグリセロール)が摂取されると、肝臓で生産される胆汁(胆汁酸、胆汁酸塩、およびコレステロール)が胆嚢により分泌される。膵臓のリパーゼはトリグリセリドを消化して脂肪酸とし、またジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールも消化する。脂肪酸は腸の上皮細胞により吸収されて細胞内部に入ると再合成されてトリアシルグリセロールとなる。これらのトリグリセリドおよび一部のコレステロールは、アポリポタンパク質と結合してカイロミクロンを生じる。カイロミクロンの約95%はトリグリセリドで構成されている。カイロミクロンは脂肪酸を末梢組織へと輸送する。過剰な脂肪はすべて脂肪組織に貯蔵される。
血中から細胞内、細胞から血中および肝臓への脂質の輸送と除去は、リポタンパク質の輸送タンパク質によって仲介される。この種のタンパク質はおよそ17種であり、3つのグループ、すなわちアポリポタンパク質、リポタンパク質プロセシングタンパク質、およびリポタンパク質受容体に分けることができる。
アポリポタンパク質はリポタンパク質粒子を被覆し、A−I、A−II、A−IV、B、CI、CII、CIII、D、E、Apo(a)タンパク質が挙げられる。リポタンパク質プロセシングタンパク質には、リポタンパク質リパーゼ、肝臓リパーゼ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼおよびコレステロールエステル輸送タンパク質が挙げられる。リポタンパク質受容体には、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、カイロミクロンレムナント受容体(LDL受容体様タンパク質またはLDL受容体関連タンパク質‐LRP)およびスカベンジャー受容体が挙げられる。
(リポタンパク質代謝) 小腸へと吸収されたトリグリセリド、コレステロールエステル、およびコレステロールは水性の溶媒には溶解しないので、巨大な油滴を形成しないように適切なタンパク質(アポリポタンパク質)と結合しなければならない。結合の結果生じるリポタンパク質は、血流およびある特定の臓器(特に肝臓)を通過する際に一種の代謝作用を受ける。
高密度リポタンパク質(HDL)も肝臓で合成され、アポタンパク質A−1、A−2、C−1、およびDを含む。HDLは末梢組織および血管からコレステロールを回収し、肝臓へと戻す。LDLは細胞表面の特異的受容体によってエンドソーム内に取り込まれ、エンドソームはリソソームと融合し、該リソソームにおいてコレステロールエステルが遊離コレステロールへと変換される。アポタンパク質(apoB−100を含む)は消化されてアミノ酸となる。受容体タンパク質は細胞膜へと再生される。
このプロセスにより形成された遊離コレステロールは2種類の運命をたどる。第1には、遊離コレステロールは小胞体(ER)へと移動して、HMG‐CoAレダクターゼ、HMG‐CoAレダクターゼの合成、および細胞表面のLDL受容体の合成を阻害することができる。ERでは、コレステロールによってHMG‐CoAレダクターゼの分解も促進されうる。遊離コレステロールは、アシルCoAおよびアシルトランスフェラーゼ(ACAT)により変換されてコレステロールエステルとなり、油滴を形成することもできる。
ApoBは、超低密度リポタンパク質(VLDL、血漿中トリグリセリドのほとんどを担持する)および低密度リポタンパク質(LDL、血漿中コレステロールのほとんどを担持する)のカイロミクロンの主要なアポリポタンパク質である。ApoBは、2つのアイソフォーム、apoB−48およびapoB−100としてヒト血漿中に存在する。
ApoB−100はLDL受容体の主要な生理学的リガンドである。ApoB前駆体は4563アミノ酸であり、成熟型のapoB−100は4536アミノ酸残基を有する。ApoB−100のLDL結合ドメインはアミノ酸残基3129〜3532位に位置すると提唱されている。ApoB−100は肝臓で合成され、超低密度リポタンパク質VLDLの会合に必須であり、かつトリグリセリド(TG)とコレステロールとを肝臓から他の組織へと輸送するためのapoB−100の生成に必要である。ApoB−100は他のリポタンパク質のようにリポタンパク質粒子間で入れ替わることはなく、IDL粒子およびLDL粒子中に見出される。アポリポタンパク質A、EおよびCが除去された後、apoBは肝細胞によりVLDLへと取り込まれる。ApoB−48はカイロミクロン内に存在し、食事性脂肪の腸吸収において必須の役割を果たしている。ApoB−48は小腸で合成される。ApoB−48はapoB−100のN末端48%からなり、apoB−100 mRNAのコドン2153を変更(C→U)する転写後修飾により生産される。このような変更は、腸内で発現されるapoBEC−1b酵素によるものである。この変更によりグルタミンコドンのかわりに停止コドンが生じることによって、腸内ではapoB−100のかわりにapoB−48が発現される(apoB−100は肝臓で発現される)。
総コレステロールまたはLDLコレステロールのレベルよりも、血漿中のapoBレベルのほうが冠状動脈疾患(CAD)の危険性に関するよりよい指標となりうるという強力な証拠もある。臨床研究により、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、および健常な対象においてapoBを測定した値が示されている。
Figure 2006522831
(ヒトおよび突然変異誘発モデルマウスにおける脂質代謝の分子遺伝学) LDLおよびapoBの血漿中レベルの上昇は、主要な死因であるアテローム性動脈硬化および冠状動脈性心疾患のリスクの上昇と関連がある。ApoBは、LDL粒子の必須の構成成分である。リポタンパク質代謝におけるapoBの役割に加えて、apoBは雄の不妊および胎児の発育にも関与する要因であるとされている。さらに、血漿中apoBレベルを調節する2つの量的形質遺伝子座がトランスジェニックマウスモデルを用いて発見されている。今後の実験により、血漿中apoBレベルの調節因子をコードするヒトのオーソロガス遺伝子の同定が進められるであろう。これらの遺伝子座は血漿中apoBレベルの変化により特徴付けられるヒトの障害に対する治療標的候補である。そのような障害には、非apoB関連型の低βリポタンパク質血症および家族性複合型高脂血症が挙げられる。上記
遺伝子座の同定により、apoBの分泌の調節に関与する潜在的な新規経路が明らかとなり、薬理学的治療のための新たな治療部位が明らかになる可能性がある。
(疾患および臨床薬理学) 家族性複合型高脂血症(FCHL)は米国人10人のうち1人に発症すると見積もられている。FCHLは心疾患の早期発症の原因となりうる。
(家族性高コレステロール血症(高レベルapoB)) 一般的な遺伝的脂質代謝障害である。家族性高コレステロール血症は、黄色板腫、腱黄色腫、結節状黄色腫、急速なアテローム性動脈硬化、および心筋梗塞(MI)による早期死亡に関連する血清中TCの上昇を特徴とする。家族性高コレステロール血症は細胞のLDL受容体の欠如または不全が原因であり、LDLクリアランスの遅延、血漿中LDLレベルの上昇、ならびに、関節および圧点を覆うマクロファージ内と血管内とにおけるLDLコレステロールの蓄積がもたらされる。
(アテローム性動脈硬化(高レベルapoB)) アテローム性動脈硬化は、血中から細胞へ、かつ細胞から血中および肝臓への脂質の輸送およびクリアランスにおける障害を原因とする、コレステロールおよび脂肪の動脈壁への堆積として発症する。
臨床研究から、総コレステロール(TC)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL‐C)およびapoBの上昇がヒトのアテローム性動脈硬化を促進することが示されている。同様に、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL‐C)レベルの低下はアテローム性動脈硬化の発症と関係がある。
ApoBは高コレステロールの遺伝的原因における要因である可能性がある。
(冠状動脈疾患(CAD)の危険性(高レベルapoB)) 心臓血管疾患、例えば冠状動脈性心疾患および脳梗塞などは、死亡および身体障害の原因となる。主な危険因子には、年齢、性別、低密度リポタンパク質コレステロールの血中レベルの上昇、高密度リポタンパク質コレステロールのレベルの低下、喫煙、高血圧、および糖尿病が挙げられる。新たな危険因子には、リポタンパク質(a)、レムナントリポタンパク質、およびC反応性タンパク質の上昇が挙げられる。食事摂取量、運動および遺伝的性質も心臓血管疾患の危険性に影響を与える。高血圧および年齢は脳梗塞の主な危険因子である。
無βリポタンパク質血症は、血漿中にapoB含有リポタンパク質がほぼ完全に存在しないことを特徴とするヒトの遺伝疾患であり、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)の遺伝子の突然変異によって生じる。
(ヒトアテローム性動脈硬化のモデル(リポタンパク質Aトランスジェニックマウス)) 数多くの研究から、リポタンパク質(a)(Lp(a))の血漿中レベルの上昇が冠動脈性心疾患(CHD)の主な独立の危険因子であることが実証されている。しかしながら、現在の治療法は、apo(a)のレベルに対してほとんど作用しないかまたは全く作用せず、apo(a)とプラスミノーゲンとの間の相同性が薬物開発の障壁となっている。Lp(a)粒子はapo(a)タンパク質およびapoB‐100タンパク質から構成され、霊長類およびハリネズミにおいてのみ見出される。LPAトランスジェニックマウスの開発には、LP(a)の会合を達成するためにヒトのapoBおよびapo(a)遺伝子を発現する動物を創出する必要がある。アテローム性動脈硬化のマウスモデルにより、該疾患の進行および進行に影響を与える因子の研究が促進され、さらには治療剤または予防剤の開発も促進されるであろう。遺伝子を対象とする治療については幾つかの戦略がある。例えば、欠失した遺伝子または機能しない遺伝子を置換してもよいし、望ましくない遺伝子活性を阻害してもよい。
(脂質代謝およびアテローム性動脈硬化のモデル) DNXトランスジェニックサイエ
ンシズ社(DNX Transgenic Sciences )により、CETP/ApoBトランスジェニックマウスおよびApoBトランスジェニックマウスのいずれもアテローム斑を生じることが実証されている。
(apoB‐100過剰発現モデル) apoB‐100トランスジェニックマウスは高レベルのヒトapoB‐100を発現する。その結果該マウスではLDLコレステロールの血清中レベルが上昇する。6ヶ月間高脂肪食とした後、このマウスは内皮下および中膜内側における顕著な泡沫細胞の蓄積、ならびにコレステロール結晶および繊維化病変を生じる。
(コレステロールエステル輸送タンパク質過剰発現モデル) apoB‐100トランスジェニックマウスはヒトの酵素であるCETPを発現し、その結果HDLコレステロールの血清中レベルが著しく低下する。
(apoB‐100ならびにCETP過剰発現モデル) apoB‐100トランスジェニックマウスはCETPおよびapoB‐100のいずれも発現し、その結果マウスはヒト様の血清中HDL/LDL分布を示す。6ヶ月間高脂肪食とした後、このマウスは内皮下および中膜内側における顕著な泡沫細胞の蓄積、ならびにコレステロール結晶および繊維化病変を生じる。
(ApoBトランスジェニックマウス(注文モデル番号:1004−T(ヘミ接合)、B6(対照))) このマウスはヒトapoB‐100を高レベルで発現し、その結果このマウスではLDLコレステロールの血清中レベルが上昇する。このマウスは、上昇したLDLコレステロールのレベルとアテローム性動脈硬化のリスクとを低下させる化合物を同定し評価する際に有用である。高脂肪コレステロール食を与えると、このマウスは内皮下および中膜内側において顕著な泡沫細胞の蓄積を生じ、対照の動物よりも著しく複雑なアテローム性動脈硬化病変を有する。
(二重トランスジェニックマウスCETP/ApoB100(注文モデル番号:1007−TT)) このマウスはCETPおよびapoB‐100の両方を発現し、その結果ヒト様の血清中HDL/LDL分布を示す。このマウスは、高コレステロール血症またはHDL/LDLコレステロールの不均衡を治療してアテローム性動脈硬化を発症するリスクを低減するための化合物を評価するのに有用である。高脂肪高コレステロール食を与えると、このマウスは内皮下および中膜内側において顕著な泡沫細胞の蓄積を生じ、対照の動物よりも著しく複雑なアテローム性動脈硬化病変を有する。
(ApoE遺伝子ノックアウトマウス) ホモ接合のapoEノックアウトマウスは強度の高コレステロール血症を示すが、これは主に血漿からのリポタンパク質クリアランス不全によりVLDLおよびIDLのレベルが上昇することが原因である。このマウスはアテローム性動脈硬化病変を生じ、該病変は加齢とともに進行し、かつヒトの病変に類似している(ツァン(Zhang )ら、Science、第258巻、p.46−71、1992年;プランプ(Plump )ら、Cell、第71巻、p.343−353;ナカシマ(Nakashima )ら、Arterioscler Thromp.第14巻、p.133−140、1994年;レディック(Reddick )ら、Arterioscler Thromb.第14巻、p.141−147、1994年)。このマウスは、食事および薬物のアテローム性動脈硬化に対する作用を研究するための有望なモデルである。
低密度リポタンパク質受容体(LDLR)は、リポタンパク質粒子表面のapoBおよびapoEの認識を介した血漿からのリポタンパク質クリアランスを仲介する。LDL受容体が欠如しているかまたは数が少ないヒトは家族性高コレステロール血症であり早期に
CHDを発症する。
(ApoEノックアウトマウス(注文モデル番号:APOE−M)) apoEノックアウトマウスは、胚性幹細胞における遺伝子ターゲティングによりapoE遺伝子を破壊して創出された。糖タンパク質であるApoEは、肝臓で合成される超低密度リポタンパク質(VLDL)および腸で合成されるカイロミクロンの構造成分である。ApoEは、細胞間でコレステロールを輸送する作用に関与する高密度リポタンパク質(HDL)のあるサブクラスの構成物質でもある。apoEの最も重要な役割の1つは、apoEを含有するカイロミクロンおよびVLDL粒子が低密度リポタンパク質(LDL)の受容体に高い親和性で結合するのを仲介することである。このことにより、肝臓による上記粒子の特異的取り込みが可能となるが、この取り込みは血漿中にコレステロール豊富なレムナントが蓄積するのを防止している輸送のために必要である。apoE遺伝子をホモ接合で不活性化すると動物は血清中にapoEを欠くことになる。このマウスは正常に発育するように見えるが、正常な血清の5倍の血漿コレステロールを示し、アテローム性動脈硬化病変を自然発症する。このことは、LDL受容体に結合できないapoE遺伝子変異体を有し、アテローム性動脈硬化の早期発症ならびに血漿中のトリグリセリドレベルおよびコレステロールレベルの上昇のリスクを有する人々の疾患に類似している。apoEが、免疫系の調節、神経の再生および筋肉の分化にも関与するという示唆もある。apoEノックアウトマウスは、脂質代謝、アテローム発生、および神経傷害におけるapoEの役割の研究、またアテローム発生の過程を修正する介入的治療法の探索に使用することができる。
(Apoe4を対象とした置換マウス(注文モデル番号:001549−M)) ApoEはコレステロールの輸送に関与する血漿タンパク質であり、ヒトのアイソフォーム3種(E2、E3およびE4)がアテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病に関連がある。129ES細胞の遺伝子ターゲティングにより、マウスapoEのコード配列を、マウスの制御配列を破壊しないようにヒトAPOE4で置換した。E4アイソフォームはヒト集団のおよそ14%に出現し、血漿中コレステロールレベルの上昇および冠状動脈疾患のリスクの増大に関連がある。このapoE4を対象としたタコニック社(Taconic )の置換モデルは正常な血漿中コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルを有するが、血漿中の種々のリポタンパク質粒子の量が変化している。このモデルでは、コレステロールが豊富なリポタンパク質粒子(VLDL)の血漿クリアランスが遅く、apoE3を対象とした置換モデルのクリアランス速度のわずか半分である。apoE3のモデルと同じように、apoE4マウスでは血漿中のリポタンパク質の値が変化し、アテロームを発生させる食事を与えればアテローム斑を生じる。しかしながら、apoE4モデルではアテローム性動脈硬化がより重篤であり、プラークはapoE3モデルよりも大きく、コレステロールapoEおよびapoB−48のレベルはapoE3モデルの2倍である。このタコニックのapoE4を対象とした置換モデルは、apoE2およびapoE3を対象とした置換マウスとともに、ヒトapoEアイソフォームのin vivo研究のための優れたツールを提供する。
(CETPトランスジェニックマウス(注文モデル番号:1003−T)) この動物はヒトの血漿中の酵素であるCETPを発現し、その結果マウスは血清中のHDLコレステロールが激減している。このマウスは、アテローム性動脈硬化を発症するリスクを低減するためにHDLコレステロールのレベルを増大させる化合物を同定し評価する際に有用となりうる。
(外来遺伝子/プロモーター:ヒトアポリポタンパク質A−I) このマウスは、ヒトアポリポタンパク質A−Iを含有するマウスのHDLコレステロール粒子を産生する。外来遺伝子の発現は雄雌いずれにおいても生涯続く(米国ニューヨーク市所在のロックフェラー大学、遺伝生化学および代謝研究室(Biochemical Genetics and Metabolism Labora
tory))。
(無βリポタンパク質血症のマウスモデル) 無βリポタンパク質血症は、血漿中にapoB含有リポタンパク質がほぼ全く存在しないことを特徴とするヒトの遺伝性疾患であり、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)遺伝子の突然変異によって生じる。遺伝子ターゲティングを用いてマウスのMTP遺伝子(Mttp)をノックアウトした。ヘテロ接合のノックアウトマウス(Mttp+/−)では、MTPのmRNA、タンパク質、および活性のレベルは肝臓および腸のいずれにおいても50%低下した。ヘテロ接合のMTPノックアウトマウスを用いた最近の研究から、肝臓においてMTPレベルが正常の半分であることによりapoBの分泌が低下することが示唆されている。MTPレベルが正常の半分である状況におけるapoB分泌の低下は、小胞体におけるMTP:apoB比が低下し、このことがapoB‐MTP相互作用の数を低下させたことが原因であろうとの仮説がたてられた。この仮説が正しければ、MTPレベルが正常の半分であることは、apoBの合成が正常の半分である状況におけるリポタンパク質の分泌には(apoBに対するMTPの比が異常に低くなることはないので)ほとんど影響を与えないであろうし、apoBの過剰発現の状況におけるリポタンパク質分泌の低下を(apoBに対するMTPの比が一層低くなるので)過大視する原因となるであろう。この仮説を検証するために、正常レベルのapoB合成、正常の半分のレベルのapoB合成(ヘテロ接合のApob欠損)、および高レベルのapoB合成(外来遺伝子ヒトapoBの過剰発現)という状況においてヘテロ接合のMTP欠損がapoBの代謝に与える影響について調査が行われた。予想に反して、正常の半分のレベルのMTPにより、血漿中のapoB−100レベルは各々のapoB合成レベルについて同程度(〜25−35%)減少した。さらに、初代培養肝細胞からのapoB分泌は各々のapoB合成レベルについて同程度に低下した。従って、これらの結果から、MTP:apoB比よりもむしろ小胞体内のMTP濃度がリポタンパク質分泌の重要な決定因子であることが示される。最後に、ヘテロ接合のapoBノックアウト変異ではヘテロ接合のMTPノックアウト対立遺伝子よりも血漿中のapoB−100レベルが低いことが見出された。この結果と一致して、肝臓へのトリグリセリドの蓄積はヘテロ接合のMTPノックアウトマウスよりもヘテロ接合のapoBノックアウトマウスのほうが多かった。組織特異的なCre/loxP組換え技法を用いて肝臓特異的なMttpノックアウトマウスも作製された。肝臓におけるMttp遺伝子の不活性化により、超低密度リポタンパク質(VLDL)トリグリセリドが著しく減少し、VLDL/低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質コレステロールレベルのいずれも大きく減少した。肝臓特異的ノックアウトマウスの組織学的研究から、中程度の肝臓脂肪症が明らかとなった。現在、肝臓におけるトリグリセリドの蓄積により、肝臓が二次的な要因(例えばリポ多糖)による傷害をより受けやすくなるという仮説を検証中である。
(ヒトapoB(アポリポタンパク質B)トランスジェニックマウスは、apoB遺伝子座が雄の不妊の原因となる役割を有することを示している) apoB(アポリポタンパク質B)(+/−)マウスの稔性を、(C57BL/6Jマウスに対する)戻し交配と試験交配の過程で記録した。雌のapoB(+/−)マウスおよび野生型雌マウスにおいては、雌マウスの膣栓の存在によって実証されたように、明らかな稔性上の問題は認められなかった。apoB(+/−)マウスが正常に交配したにもかかわらず、戻し交配第2世代の動物のうちわずか40%にしか4ヶ月の試験期間内に子孫が生まれなかった。子孫が生まれた動物のうち、同腹の子は実証された交配の<50%に由来するものであった。これに対し、試験した野生型マウスは全て(6/6すなわち100%)稔性を有していた。以上のデータは、ヘテロ接合の雄のうち不妊でないのは少数であったことから、不稔性という表現型への遺伝的影響を示唆している。in vivo受精は雄のapoB(+/−)マウスにおいて著しく低下していた。調べた卵の74%が野生型マウスの精子によって受精したのに対し、apoB(+/−)マウスの精子では調べた卵のわずか3%しか受
精しなかった。apoB(+/−)マウスの精子の数は対照と比較して少しではあるが有意に減少していた。しかしながら、運動性の精子の割合(%)はapoB(+/−)マウスでは野生型の対照マウスに比べて顕著に減少していた。apoB(+/−)マウスの精子のうち20%(すなわち最初の20%の運動性精子のうち4.9%)が6時間のインキュベーション後にも運動性を維持していたのに対し、対照においては運動性精子のうち45%(すなわち最初の69.5%のうち33.6%)が同じ時間経た後で運動性を維持していた。in vitro受精では、apoB(+/−)マウスを用いて3回試みたが受精卵は得られなかったのに対し、野生型の対照マウスは53%の受精率を示した。しかしながら、apoB(+/−)マウスの精子は、一旦透明帯を取り除かれた卵の84%を受精させた。数多くのapoB(+/−)マウス由来の精子が無傷の透明帯を有する卵に結合していることが認められた。しかしながら、これらの精子は結合の4〜6時間後に観察すると運動性を失っており、apoB(+/−)マウス由来の精子は透明帯を貫通することができないが、精子と卵との相互作用は直接的ではないと思われることが示された。透明帯のない卵細胞への精子の結合は正常ではなかった。apoB(+/−)マウスでは、前核がはっきりと形成された後でも精子の結合が弱まらず、apoBの欠損により精子と卵との表面相互作用が異常になっていることが示唆された。
マウスapoB遺伝子をノックアウトした結果、ホモ接合体では胚致死となり、ヘテロ接合体では食事による高コレステロール血症からの防護と、マウスの発育異常が認められた。
(インスリン耐性、異常脂質血症およびヒトapoB過剰発現のモデル) apoBマウスの肝臓では大量のVLDL粒子が組み立てられて分泌されることが示された。
[iRNAを用いた2型糖尿病の治療]
(導入) 肝臓におけるグルコース新生の調節は血中のグルコースレベルの調整における重要な過程である。肝臓におけるグルコース生産の病的な変化は2型糖尿病の主要な特徴である。例えば、2型糖尿病患者にみられる空腹時血糖は、この疾患の根本にあるインスリン耐性により、肝臓におけるグルコース新生およびグリコーゲン分解の抑制が失われていることを反映している。極度のインスリン耐性状態は、例えば肝臓特異的なインスリン受容体ノックアウト(「LIRKO」)マウスにおいて観察可能である。このマウスでは、グルコース新生の2つの律速酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)およびグルコース‐6‐ホスファターゼ触媒サブユニット(G6Pase)の発現が上昇する。インスリンは、PEPCKおよびG6Paseのいずれの遺伝子発現も転写レベルで抑制することが知られているが、インスリンによるG6PaseおよびPEPCK遺伝子発現の調節に関与するシグナル伝達はごく一部しか理解されていない。PEPCKは肝臓におけるグルコース新生のごく初期段階(オキサロ酢酸からのホスホエノールピルビン酸の合成)に関与する一方、G6Paseはグルコース新生およびグリコーゲン分解の両方の最終的な段階、グルコース‐6‐リン酸を切断してリン酸と遊離のグルコースとにする反応を触媒する。遊離のグルコースは次いで血流へと送達される。
PEPCKおよびG6Paseの発現調節への薬理学的介入を用いて、糖尿病に関連する代謝異常を治療することができる。2型糖尿病患者において、肝臓におけるグルコース生産を、iRNAを用いたPEPCKおよびG6Pase酵素活性の低減により減少させることができる。
(iRNAの標的)
グルコース‐6‐ホスファターゼ(G6Pase)
G6PaseのmRNAは主に肝臓および腎臓において発現され、小腸では少量発現さ
れている。膜結合型G6Paseは小胞体に会合している。骨格筋および星状細胞においても低い活性が検出されている。
G6Paseはグルコース新生およびグリコーゲン分解の最終的な段階を触媒する。この酵素の活性は糖尿病の動物では数倍高く、おそらくは糖尿病のヒトにおいても同様である。絶食および糖尿病により、肝臓におけるG6Pase活性は2−3倍に上昇し、G6PaseのmRNAは2−4倍に増加する。
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)
マウスにおいてPEPCKを過剰発現させると、2型糖尿病の症候が現れる。PEPCKの過剰発現により、G6PaseのmRNAを増加させ、かつインスリン受容体基質(IRS)−2タンパク質の選択的減少、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ活性の低下、およびグルコース新生に関わる遺伝子発現に対するインスリンの抑制能の低下をもたらす代謝パターンとなる。
Figure 2006522831
材料と方法
動物:レプチン受容体遺伝子に点突然変異を有するBKS.Cg−m+/+Lepr dbマウスを用いて上記に列挙した標的についてのiRNAの効果を調べる。
BKS.Cg−m+/+Lepr dbはジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratory)より入手可能である(ストック番号000642)。この動物は生後3‐4週で肥満となり、10−14日で血漿中インスリンが上昇し、4−8週で血糖が上昇し、無制限に血糖が上昇する。外部からインスリンを与えても血中のグルコースレベルを制御することはできず、グルコース新生作用が高まる。
以下の数の動物(雄、>12週齢)を以下のiRNAを用いて試験すればよい:
PEPCK、2種類の配列、1配列あたり動物5匹
G6Pase、2種類の配列、1配列あたり動物5匹
1種類の非特異的配列、動物5匹
1対照群(注射のみ、siRNAなし)、動物5匹
1対照群(注射なし、siRNAなし)、動物5匹
試薬:必要な試薬としては、理想的には、グルコースの定量にはGlucometer
Elite(登録商標)XL(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ所在のバイエル)、およびインスリンの定量にはインスリンラジオイムノアッセイ(RIA)キット(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のアマシャム)が挙げられる。
アッセイ:
G6P酵素アッセイおよびPEPCK酵素アッセイを用いて酵素の活性を測定する。ノーザンブロット法を用いてG6PおよびPEPCKのmRNAレベルを検出する。抗体を使用する技法(例えば、免疫ブロット法、免疫蛍光法など)を用いてG6PおよびPEPCKのタンパク質レベルを検出する。グリコーゲンの染色を用いて肝臓のグリコーゲンレベルを検出する。組織学的分析を実施して組織を分析する。
遺伝子情報:
G6Pase
GenBank(登録商標)番号:NM_008061、マウス(Mus musculus)グルコース‐6‐ホスファターゼ、触媒性(G6pc)、mRNA 1..2259、ORF 83..1156;
GenBank(登録商標)番号:U00445、マウス(Mus musculus)グルコース‐6‐ホスファターゼmRNA、完全長cds 1..2259、ORF 83..1156
GenBank(登録商標)番号:BC013448
PEPCK
GenBank(登録商標)番号:NM_011044、マウス(Mus musculus)ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1、細胞質(Pck1)、mRNA 1..2618、ORF 141..2009
iRNAの投与:
上述の遺伝子に対応するiRNAは、流体力学的注射(hydrodynamic injection)によりマウスに投与すればよい。対照動物群の1つは、肝臓のグルコースレベル低減の陽性対照としてメトフォルミンで治療すればよい。
(実験プロトコール)
マウスは、午前7時から午後7時までの間照明をつけた設備で飼育すればよい。マウスは、午後7時から午前7時までの間は餌を自由摂取とし、午前7時から午後7時までの間は絶食とすればよい。
第0日:午後7時:約100μlの血液を尾部から抜きとればよい。血清を単離して、グルコース、インスリン、HbA1c(EDTA血)、グルカゴン、FFA、乳酸、コルチコステロン、血清トリグリセリドを測定すればよい。
第1−7日:毎日午前8時と午後6時に血中グルコースを測定すればよい(約3−5μl;血中グルコース測定器(Haemoglucometer )により測定)
第8日:毎日午前8時と午後6時に血中グルコースを測定すればよい。iRNAは午前10時から午後2時の間に注射すればよい。
第9−20日:毎日午前8時と午後6時に血中グルコースを測定すればよい。
第21日:10時間絶食させた後にマウスを屠殺すればよい。血液を単離し、グルコース、インスリン、HbA1c(EDTA血)、グルカゴン、FFA、乳酸、コルチコステロン、血清トリグリセリドを測定すればよい。肝臓組織を単離して、組織学的分析、タンパク質アッセイ、RNAアッセイ、グリコーゲンの定量、および酵素アッセイを実施すればよい。
[in vivoにおけるグルコース‐6‐ホスファターゼiRNAによる阻害]
グルコース‐6‐ホスファターゼ(G6P)遺伝子を標的とするiRNAを用いて、i
n vivoにおけるグルコース代謝に対するG6P発現阻害の効果を調べた。
10週齢の雌のマウス(系統はBKS.Cg−m+/+Lepr db、ジャクソンラボラトリー)を用いて肝臓におけるグルコース生産の酵素のin vivo分析を実施した。マウスを、午前6:30から午後6:30までの間照明をつけた設備で飼育した。マウスは、夜間は餌を与え(自由摂取)、昼間は絶食させた。
第1日に、後眼窩静脈叢に穿刺することにより被験動物から約100μlの血液を採取した。第1−7日には、尾静脈から得た血液(約3−5μl)中のグルコースを、グルコース測定器(Elite(登録商標)XL、バイエル社)を用いて測定した。血中グルコース用には、毎日午前8時および午後6時にサンプリングした。
第7日のおよそ午後2時に、GL3プラスミド(10μg)と、siRNA(100μgのG6Pase特異的siRNA、非特異的ウミシイタケsiRNA、またはsiRNAを含まない対照物)とを、流体力学的注射により同時に動物に送達した。
第8日には、avertin(商標)で麻酔した後にルシフェリン(3mg)を注射することによりGL3の発現を分析し、画像化した。これは、流体力学的送達の成功を示すための対照として実施した。
第8−10日には、尾静脈から得た血液(約3−5μl)中のグルコースを、グルコース測定器(Elite(登録商標)XL、バイエル社)を用いて測定した。
第10日には、10時間絶食させた後にマウスを屠殺した。屠殺した動物から血液および肝臓を単離した。
表6は、GL3プラスミドおよびG6Pase iRNA(G6P4)、またはGL3プラスミドおよび非特異的なウミシイタケiRNA(RL)を注射したマウス、あるいはGL3プラスミドをiRNAは含めずに注射したマウス(no)についての血中グルコースレベル(mg/dl)を列挙している。核酸を注射した日には影をつけてある。
Figure 2006522831
表7は、GL3プラスミドおよびG6Pase iRNA(G6P4)、もしくはGL3プラスミドおよび非特異的なウミシイタケiRNA(RL)を注射したマウス、GL3
プラスミドをiRNAは含めずに注射したマウス(no)、あるいは注射を行わなかったマウスまたは注射に失敗したマウスについての、第1‐6日または第7日における平均血中グルコースレベル(mg/dl)を列挙している。
Figure 2006522831
図6のA、BおよびCは、それぞれ対照またはsiRNAを含めずに注射したマウス、G6Pase RNAを注射したマウス、あるいは注射を行わなかったマウスの、第1‐6日または第7日における血中グルコースレベルを示すグラフである。図7は、G6Pase RNAを注射したマウス(実線)、ならびに非特異的なウミシイタケiRNA(RL)またはiRNAを含めずに(no)注射したマウス(点線)の平均血中グルコースレベルを示すグラフである。
表8は、G6Pase RNAを注射したマウス、または非特異的なウミシイタケiRNA(RL)を注射したマウスおよびiRNAを含めずに注射したマウスについて、平均血中グルコースレベルを列挙している。
Figure 2006522831
[選択されたパリンドローム構造の配列]
以降の表9−14は、次の遺伝子、すなわちヒトApoB、ヒトのグルコース‐6‐ホスファターゼ、ラットグルコース‐6‐ホスファターゼ、βカテニン、およびC型肝炎ウイルス(HCV)由来の、選択されたパリンドローム構造の配列を提示している。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号、#は適合番号、Bは中央部の適合塩基を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
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表中、SEQ ID NO:は配列番号を表す。
[siRNAはin vivoにおいてmRNAレベルを低下させる]
キセノジェン社(Xenogen :米国ニュージャージー州クランベリ所在)から入手した雄のCMV‐Lucマウス(8−10週齢)に、コレステロール複合型siRNA(表17参照)を投与した。
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緩衝液またはsiRNA溶液を含む試験溶液200−250μlを動物(尾静脈)に注射した。第1群には緩衝液、第2群にはコレステロール複合型siRNA(ALN‐3001)を、用量を体重1kgあたり50mgとして投与した。注射の22時間後に動物を屠殺して肝臓を回収した。臓器をドライアイス中で急速に凍結させてから、乳鉢と乳棒で粉砕した。
ルシフェラーゼmRNAの分析(QuantiGene(商品名、米国カリフォルニア州フレモント所在のゲノスペクトラ・インコーポレイテッド(Genospectra, Inc. )を使用)には、約10mgの組織粉末を組織溶解用緩衝液に再懸濁し、製造業者のプロトコールに従って処理した。溶解物試料を、ルシフェラーゼまたはGAPDH特異的なプローブ(ProbeDesignerソフトウェア(商品名、米国カリフォルニア州フレモント所在のゲノスペクトラ・インコーポレイテッド)を用いて設計)を使用して3連でハイブリダイゼーションし、発光分析用に処理した。ルシフェラーゼについての値をGAPDHに対して標準化した。平均値を、エラーバー(ルシフェラーゼ測定値の標準偏差に相当)とともにプロットした。
結果から、コレステロール複合型siRNAを注射した動物におけるルシフェラーゼRNAのレベルは、緩衝液を注射した動物に比べて約70%低下することが示された(図8
Aおよび8B)。
in vitro活性
ルシフェラーゼを発現するHeLa細胞を、表18に列挙した各siRNAでトランスフェクションした。ALN−1000siRNAが最も効率よくルシフェラーゼmRNAレベルを低下させた(〜0.6nMのsiRNAによりmRNAレベルが元の発現レベルの〜65%まで低下し、1.0nMのsiRNAによりmRNAレベルは元の発現レベルの〜20%まで低下した)。ALN−3001siRNAは最も効果が低かった(〜0.6nMのsiRNAはmRNAレベルにほとんど影響が無く、1.0nMのsiRNAによりmRNAレベルは元の発現レベルの〜40%まで低下した)。
薬物動態/生体内分布
マウスおよびラットにおいて薬物動態学的分析を実施した。試験用siRNA分子は、スプリントライゲーション(splint ligation )により33Pでアンチセンス鎖を放射標識した。標識したsiRNA(50mg/kg)を尾静脈注射により投与し、siRNAの血漿中レベルを24時間にわたり定期的にシンチレーション測定によって測定した。コレステロール複合型siRNA(ALN−3001)は、非複合型のsiRNA(ALN−3000)よりも長い時間マウスの血漿中を循環することが見出された(図9)。RNAse保護アッセイから、コレステロール複合型siRNA(ALN−3001)は注射12時間後にマウスの血漿中で検出可能であり、非複合型siRNA(ALN−3000)は注射後2時間以内にマウスの血漿中で検出不可能となることが示された。ラットにおいても同様の結果が認められた。
siRNA注射後、様々な時点(0.08‐24時間)でマウスの肝臓を採取し、肝臓に局在するsiRNAを定量した。調べた期間全体にわたって、肝臓において検出されたコレステロール複合型siRNA(ALN−3001)の量はマウスに投与した総用量の14.3−3.55%の範囲であった。肝臓において検出された非複合型siRNA(ALN−3000)の量はこれよりも低く、投与した総用量の3.91−1.75%の範囲であった(図10)。
様々な組織におけるsiRNAの検出
50mg/kgのALN−3001を注射して22時間後の2匹のCMV−Lucマウスから、種々の組織および臓器(脂肪、心臓、腎臓、肝臓、および脾臓)を採取した。siRNAのアンチセンス鎖を、RNAse保護アッセイによって検出した。肝臓は最も高濃度のsiRNAを含んでおり(組織1gあたり〜8−10μgのsiRNA)、脾臓、心臓および腎臓に含まれる量はそれよりも低く(組織1gあたり〜2−7μgのsiRNA)、脂肪組織では含まれるsiRNAの量が最も少なかった(組織1gあたり<〜1μgのsiRNA)(図11)。
RNAse保護アッセイによるグルコース‐6‐ホスファターゼsiRNAの検出
Balbcマウスに、グルコース‐6‐ホスファターゼ(G6Pase)を標的とするU/U、3’C/U、または3’C/3’C siRNA(4mg/kg)を注射した(表19を参照されたい)。投与は流体力学的尾静脈注射(hd)または非流体力学的な尾静脈注射(iv)により実施し、その後RNAse保護アッセイにより肝臓におけるsiRNAを検出した。
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hdにより送達された非複合体型のsiRNA(U/U)は、注射15分後(15’)(最も早い測定時点)までに検出され、注射18時間後(18h)でも肝臓中に検出可能であった(図12)。
標準的なiv投与による送達では、注射1時間後(1h)の肝臓において3’C/3’C siRNA(ビスコレステロール複合体)の濃度が最大となった(モノコレステロール複合体である3’C/3’U siRNAとの比較)。注射18時間後(18h)でも、3’C/3’C siRNAおよび3’C/U siRNAは肝臓中に検出可能であり、モノ複合体に比べてビス複合体において高レベルであった(図13)。
[siRNAはin vivoにおいてタンパク質の活性レベルを低下させる]
雄のCMV‐Lucマウスは米国マサチューセッツ州ウィルミントン所在のチャールス・リバー・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド(Charles River Laboratories, Inc.)で飼育されたものである。マウス(6−7週齢)にコレステロール複合型siRNAを投与した(表20−22を参照されたい)。
Figure 2006522831
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緩衝液またはsiRNA溶液を含む試験溶液200−250μlを動物(尾静脈)に注射した。第1群には緩衝液、第2群にはコレステロール複合型siRNA(ALN‐3001)を、用量を体重1kgあたり75mgとして投与した。注射の19〜22時間後に動物を屠殺して肝臓を回収した。臓器をドライアイス中で急速に凍結させてから、乳鉢と乳棒で粉砕した。
ルシフェラーゼmRNAを分析するために、約50mgの組織粉末を0.5mlの細胞溶解用緩衝液(プロメガ・インコーポレイテッド(Promega, Inc. ))中に再懸濁した。試料を3分間激しく渦流混合し、液体窒素中で急速に凍結させてから37℃の温水槽で融解させた。この処理工程をさらに2回繰り返した。最後に融解させた後、試料を3分間渦流混合した。微量遠心分離機(4度)にて全速で4分間遠心分離して不溶物を取り除いた。上清を回収した。各試料20〜25μlをピペットにてアッセイ用チューブに3連で注入し、室温になるまで放置した。活性を測定するために、「Bright Glow」アッセイ試薬(プロメガ・インコーポレイテッド)200μlを試験用試料に加え、10秒間にわたって発光を記録するようにルミノメータ(ベルトールド・インコーポレイテッド(Berthold Inc. ))をプログラムした。
総タンパク質を測定するために、上清試料を30倍希釈し、5μl試料を3連でブラッドフォード法によるタンパク質微量アッセイ(バイオラッド(Bio-Rad ))にて測定した。標準曲線を作成するためにウシ血清アルブミンを使用した。
ルシフェラーゼ活性は、ルミノメータによる平均測定値を平均タンパク質含量に対して標準化したものとして決定した。各実験の緩衝液処理群およびsiRNA処理群について標準化された値の平均を算出した。各実験について、siRNA処理群の標準化されたLucレベルを緩衝液対照群(100%とした)に対する割合(%)として表す。エラーバーは標準偏差を示す。
結果から、コレステロール複合型siRNAを注射した動物におけるルシフェラーゼ活性のレベルは、緩衝液を注射した動物に比べて約55%低下することが示された(図14)。
[その他の実施形態]
本発明について、好ましい実施形態に関して具体的に示し説明してきたが、当業者には当然のことながら、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲を逸脱することなく本発明の形態および細部について種々の変更を施すことが可能である。
偽相補性のsiRNAにおける塩基対形成の構造を示す図。 HCVゲノムを標的とするように設計された二重標的化siRNAの模式図。 HCVゲノムを標的とするように設計された、偽相補性かつ二重機能性siRNAの模式図。 オリゴヌクレオチドにRRMSモノマーを組み込むための一般的な合成スキーム。 代表的なRRMS担体の表を示す図。パネル1はピロリン系のRRMSを示し;パネル2は3−ヒドロキシプロリン系のRRMSを示し;パネル3はピペリジン系のRRMSを示し;パネル4はモルホリンおよびピペラジン系のRRMSを示し;パネル5はデカリン系のRRMSを示す。R1はコハク酸またはホスホロアミデートであり、R2はHまたは複合体リガンドである。 マウスの血中グルコースレベルを示すグラフ。 (A)非特異的なウミシイタケ(Renilla )RNAで処置したマウス、またはsiRNAで処置していないマウスの血中グルコースレベルを示すグラフ。非特異的なウミシイタケRNAで処置するマウスには7日目に注射を実施した。 (B)グルコース−6−ホスファターゼを標的とするsiRNAで処置したマウスの血中グルコースレベルを示すグラフ。グルコース−6−ホスファターゼを標的とするsiRNAで処置するマウスには7日目に注射を実施した。 (C)siRNAを注射していないか、または注射したが注射に失敗したマウスの血中グルコースレベルを示すグラフ。注射するマウスには7日目に注射を実施した。 グルコース−6−ホスファターゼを標的とするsiRNAで処置した4匹のマウス、および非特異的なウミシイタケRNAで処置したか、またはsiRNAで処置しなかった4匹のマウス(三角形)における平均血中グルコースレベルを示すグラフ。siRNAまたはウミシイタケRNAは流体力学的尾静脈注射によって7日目に投与された。 緩衝液またはsiRNAを尾静脈へ静脈内注射(iv)した後のCMV−Lucマウス(キセノジェン社)の肝臓中におけるルシフェラーゼmRNAのレベルを示すグラフ。各棒グラフは1匹のマウス由来のデータを表す。RNAレベルはQuantiGene(登録商標)アッセイ(米国カリフォルニア州フレモント所在のジェノスペクトラ・インコーポレイテッド(Genospectra, Inc. )によって定量した。Y軸は1秒間当たりの計数(CPS)で表された化学発光の値を表す。 CMV−Lucマウス(キセノジェン社)の肝臓におけるルシフェラーゼmRNAのレベルを示すグラフ。値は、図8Aに示されたデータを平均したものである。 コレステロール複合型siRNAおよび複合体化していないsiRNAの薬物動態を示すグラフ。ひし形プロットは複合体化されていない33P標識siRNA(ALN−3000)のマウス血漿中の量を経時的に表し;四角形のプロットはコレステロールで複合体化された33P標識siRNA(ALN−3000)のマウス血漿中の量を経時的に表す。「L1163」とはALN3000に相当する用語であり;「L1163Chol」はALN−3001に相当する用語である。 尾静脈注射後の一定時間にわたりマウスの単離された全肝臓組織において検出された、コレステロール複合型siRNAの量(暗色の棒グラフ)および複合体化されていないsiRNAの量(明色の棒グラフ)を示すグラフ。siRNAの量は、総用量またはマウスに送達された33P標識siRNAに対する割合(%)として表されている。「L1163」はALN3000に相当する用語であり(明色の棒グラフ);「L1163Chol」はALN−3001に相当する用語である(暗色の棒グラフ)。 2匹の異なるCMV−マウス(「マウス69」(明色の棒グラフ)および「マウス63」(暗色の棒グラフ))の種々の組織において検出されたコレステロール複合型siRNAの量を示すグラフ。尾静脈注射によってマウスに50mg/kgのAL−3001 siRNAを注射し、22時間後に組織を採取した。siRNAをRNAse保護アッセイによって検出し、phosphorimager(商標)によるスキャニングを使用してsiRNAを定量した。siRNAは肝臓組織1gあたりの量(μg)として表されている。 流体力学的(hd)尾静脈注射後の経過時点におけるBalbcマウスの肝臓中で検出されたU/U siRNA(表19を参照のこと)のゲルを示す図。U/U siRNAは4mg/kgの濃度で注射した。siRNAはRNA保護アッセイによって検出した。「標準品」と記載されたレーンには、サイズおよび品質の標準とするために精製siRNAを載せた。「注射なし」は、U/U siRNAを注射しなかったマウスの肝臓から単離した対照試料を表す。対照試料は、並行するRNAse保護アッセイにおいてさらに使用した。 流体力学的(hd)または非流体力学的な(iv)尾静脈注射後の経過時点におけるBalbcマウスの肝臓中で検出された異なるsiRNA種を比較するゲルを示す図。U/U siRNAはhdおよびiv注射によって注射した。3’C/3’Cおよび3’C/U(表19を参照のこと)は各々iv注射によって4mg/kgの濃度で注射した。siRNAはRNA保護アッセイによって検出した。「標準品」と記載されたレーンには、サイズおよび品質の標準とするために精製siRNAを載せた。「注射なし」はsiRNAを注射しなかったマウスの肝臓から単離した対照試料を表す。対照試料は、並行するRNAse保護アッセイにおいてさらに使用した。 siRNA(ALN−3001)を注射したCMV−Lucマウスの肝臓抽出物におけるルシフェラーゼ活性の割合(%)を示すグラフ。ルシフェラーゼ活性の割合(%)は、PBS(pH4.7)を注射したCMV−Lucマウスにおける活性に対する割合とした。「緩衝液1 siRNA1」、「緩衝液2 siRNA2」、および「緩衝液3 siRNA3」は、3回の別々の実験において観察された平均活性を表す。

Claims (24)

  1. apoB−100を標的とするiRNA剤を対象に投与する工程からなる、対象におけるapoB−100レベルを低下させるための方法。
  2. 前記iRNA剤が表9および表10に列挙される配列番号のうちいずれか1つと同一である配列を標的とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記iRNA剤がコレステロール部分を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記コレステロール部分がセンス鎖に接続されている、請求項3に記載の方法。
  5. 第2のコレステロール部分をさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
  6. 前記第2のコレステロール部分がセンス鎖に接続されている、請求項5に記載の方法。
  7. 前記iRNA剤の長さが少なくとも21ヌクレオチドであり、かつiRNAの二本鎖領域の長さが約19ヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記対象が、apoB−100の発現上昇もしくは望ましくないapoB−100の発現、コレステロールレベルの上昇もしくは望ましくないコレステロールレベル、および脂質代謝の調節不全のうち少なくともいずれかによって特徴付けられる障害に罹患している、請求項1に記載の方法。
  9. 前記障害が、HDL/LDLコレステロールの不均衡;異常脂質血症、例えば、家族性複合型高脂血症(FCHL)、後天性高脂血症;高コレステロール血症;スタチン抵抗性高コレステロール血症;冠状動脈疾患(CAD)冠動脈性心疾患(CHD)アテローム性動脈硬化症からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記iRNA剤をスタチン抵抗性高コレステロール血症に罹患している対象に投与する、請求項9に記載の方法。
  11. グルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNA剤を対象に投与する工程からなる、対象におけるグルコース−6−ホスファターゼのレベルを低下させるための方法。
  12. 前記iRNA剤の長さが少なくとも21ヌクレオチドであり、かつiRNAの二本鎖領域の長さが約19ヌクレオチドである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記iRNA剤を、肝臓のグルコース産生を阻害するために、またはグルコース代謝関連障害の治療のために対象に投与する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記障害が糖尿病である、請求項12に記載の方法。
  15. 前記障害が2型糖尿病である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記障害がグリタキゾン(glitaxzone)耐性糖尿病である、請求項12に記載の方法。
  17. センス配列およびアンチセンス配列を含んでなるiRNA剤であって、センス配列が1つまたは複数のコレステロール部分を含み、かつアンチセンス配列がヒト遺伝子の配列を標的とすることを特徴とするiRNA剤。
  18. 前記ヒト遺伝子ががん遺伝子である、請求項17に記載のiRNA剤。
  19. 前記ヒト遺伝子がapoB 100である、請求項17に記載のiRNA剤。
  20. 前記ヒト遺伝子がグルコース−6−ホスファターゼである、請求項17に記載のiRNA剤。
  21. 前記ヒト遺伝子がβ−カテニンである、請求項17に記載のiRNA剤。
  22. apoB 100を標的とするiRNA剤。
  23. グルコース−6−ホスファターゼを標的とするiRNA剤。
  24. β−カテニンを標的とするiRNA剤。
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