JP2006521086A - 遺伝子疾患の検出方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、遺伝子疾患の検出に有用な方法を提供する。方法は、関心対象座の対立遺伝子の配列を決定する段階、および関心対象座における対立遺伝子比率を定量する段階を含む。この比率は、染色体異常の有無を示す。また、本発明は胎児の染色体異常を検出するための非侵襲的方法を提供する。本発明は、胎児DNAの配列を決定するための非侵襲的方法として特に有用である。本発明は、試料から遊離のDNAを単離する方法をさらに提供する。

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、染色体異常および突然変異を含む遺伝子疾患の検出法に関する。本発明は、胎児のDNA配列決定のための迅速で非侵襲的な方法を提供する。本法は、転座、トランスバージョン、モノソミー、トリソミーおよび他の異数体、欠失、付加、増幅、転座、および再配列を含む胎児における染色体異常の検出に特に有用である。なお、本出願は、2002年3月11日に出願された米国特許出願第10/093,618号明細書、2002年3月1日および2002年3月8日にそれぞれ出願された米国仮特許出願第60/360,232号明細書および米国仮特許出願第60/378,354号明細書、ならびに2003年2月28日に出願されたPCT出願第US03/06198号明細書に対する優先権を主張する。これらの出願内容は参照として本明細書にその全体が組み込まれている。
背景技術
染色体異常は、ヒトにおける出生時遺伝子欠損の原因としてかなりの割合を占めている。ヒトの細胞核は、46個の染色体を含有しているが、これらが遺伝的指令を含み、また細胞の働きを決定している。46個の染色体のうちの半分は一方の親に由来する。正常な男性では互いに全く異なっている性染色体を除いて、母親からの染色体と父親からの染色体とが対応した組を形成する。これらの対は卵子が精子によって受精した時に組合わされたものである。時には、染色体の形成、または組合わせのいずれかにエラーが生じ、が多すぎるか、または少なすぎる染色体を有するか、あるいは何らかの仕方で混合された染色体を有する受精卵子が形成される。各染色体は、多くの遺伝子を含有しているため、染色体異常は、身体系の多くに影響を与え、しばしば発達障害(例えば、精神遅滞)を含む重大な出生時欠損を生じ易い。
細胞は染色体の切断された両端を誤って再結合することがある。これは自発的に生じる場合もあるし、化学化合物、発癌物質に曝された後、および放射線照射後に生じる場合もある。再結合が染色体内部で生じる場合は、2つの切断箇所の間の染色体部分が逆転し、逆位として分類される。逆位では、遺伝子物質の損失はないが、逆位によって、重要な遺伝子の分裂または、疾病に関連した状態を引き起こす融合遺伝子を作り出すことがある。
相互転座においては、2つの非相同染色体が切断して断片を交換する。この状況では、2つの異常染色体が生じる、すなわち、各々が他の染色体に由来する一部からなり、それ自体の一部を欠いている。転座が平衡型である場合、その個体は異常表現型を表すことはない。しかし、転座を有する個体では胚細胞形成時に、卵子または精子の染色体の適切な分布がなされない場合があり、その結果、流産、奇形または子の精神遅滞を生じる。
ロバートソン転座においては、2つの末端流動体の動原体(非中央位置動原体を有する染色体)染色体が融合して1つの大型の中部動原体を生成する。動原体融合を有する個体の核型は、染色体の正常な二倍体数よりも1つ少ない数を有する。
多すぎるまたは少なすぎる染色体を生成するエラーも疾病表現型を導くことがある。例えば、染色体Xを失ったコピー(モノソミーX)はターナー症候群を生じ、一方、染色体21の過剰コピーはダウン症候群を生じる。エドワード症候群およびパトー症候群などの他の疾病は、それぞれ染色体18および染色体13の過剰コピーによって生じる。
最も一般的な染色体異常の1つは、ダウン症候群として知られている。ダウン症候群の推定発生率は、出生1,000人のうちの1人から1,100人のうち1人の間である。米国では毎年、この染色体を有する子供が約3、000人から5,000人生まれている。ダウン症候群の子供の大多数(約95%)は1個余分な染色体21を有している。ほとんどの場合、この余分な染色体は母親由来である。しかし、ダウン症候群を有する人の約3〜4パーセントでは、染色体21と染色体14または22との間の転座が遺伝子異常の原因となっている。ダウン症候群を有する個体の最後の約1パーセントにモザイク現象と呼ばれるもう1つの染色体異常があることがわかっている。この場合幾つかの細胞は、47個の染色体を有し、他の細胞は46個の染色体を有する。モザイク現象は、受胎直後の細胞分裂におけるエラーの結果であると考えられている。
染色体異常は、コンジェンシャルであり、したがって、出生前胎児の健康および病態を判断するために出生前診断を用いることができる。出生前診断による知見が得られないと、胎児または母親または双方にとって不都合な結果となる可能性がある。先天性異常は周産期死亡の20%から25%を占めている。特に出生前診断は、残りの妊娠期の管理、出生過程に伴って生じ得る合併症に対する計画、新生児に生じ得る問題に対する準備、および将来の妊娠に影響し得る病態の発見にとって有益である。
超音波検査、羊水穿刺、絨毛膜絨毛試料採取(CVS)、母体血液内の胎児血液細胞、母体血清のアルファ−フェトプロテイン、母体血清ベータ−HCG,および母体血清エストリオールなどの出生前診断に利用できる種々の非侵襲的および侵襲的方法がある。しかし、非侵襲的な方法は特異性が低く、特異性が高くて感受性の高い方法は、侵襲性が高い。さらに、多くの方法では、最も有用性を高めるために、適用できるのは妊娠中のある特定の期間だけである。
超音波検査
これは、無害な非侵襲的方法である。高周波音波は、羊膜腔内の胎児を含む種々の組織および器官によって生じたエコーのパターンから可視画像を生成させるために用いられる。発達しつつある胎芽は懐胎約6週目に視覚化できる。懐胎約16週目から20週目に主な内部器官および四肢を評価して異常がないかどうかを判断できる。
超音波検査は、胎児の大きさおよび位置、羊水量および胎児の解剖学的構造の外観を判断するためには有用であり得るが、この方法には限界がある。ダウン症候群のように形態学的異常がしばしば目立たず微妙な識別しにくい異常は全く検出されないことがあり得る。
羊水穿刺
これは、針を母体の下腹部から子宮内部の羊膜腔内へ通す侵襲性の高い方法である。この方法は、懐胎約14週目に実施できる。出生前診断のためには、たいていの羊水穿刺は懐胎14週から20週の間に実施される。しかし、羊水穿刺前には超音波検査を実施し、懐胎令、胎児および胎盤の位置、および十分な羊水が存在しているかどうかの判断する。羊水中に存在する胎児細胞(大部分は胎児の皮膚に由来)を染色体の生化学的分析および分子生物学的分析用に培養液中で増殖させることができる。
染色体または染色体断片の過多または欠失などの大きな染色体異常は、細胞の46個の全染色体の同定と分析に関与し、それらの染色体を大きさと構造の微妙な違いに基づいて、対応した組に配列する核型決定によって検出できる。このように系統的に並べると、染色体の数と構造の異常は明白である。この方法では完了までに典型的には、7日〜10日かかる。
羊水穿刺は、直接的な遺伝情報の提供に使用できるが、この操作には、胎児損傷および母体のRh感作などの危険が伴う。羊水穿刺後の胎児死亡の危険性は通常のそれよりも約0.5%上昇する。Rh陰性の母親は、RhoGamによって治療を受けることができる。
絨毛膜絨毛試料採取(CVS)
この方法では、超音波誘導装置を有するカテーテルを、膣を経てその頚部を通り、子宮内へと発達中の胎盤まで通す。カテーテルの導入によって胎盤の絨毛膜絨毛の細胞を得ることができ、染色体分析などの種々の方法で分析して胎児の核型を決定できる。また、これらの細胞は培養して、生化学的分析または分子生物学的分析をすることができる。CVSは、典型的に懐胎9.5週から12.5週の間に実施される。
CVSは、侵襲的方法であるという不利な点を有し、胎児の疾病率は低いとあいえ、深刻である。すなわち、これらの損傷率は、羊水穿刺を受けている女性よりも約0.5%から1%高い。稀にCVSは胎児の四肢欠損を伴うことがある。また、母体のRh感作の可能性も存在する。さらにまた、胎児細胞の替わりに、発達中の胎盤内の母体血液細胞が試料採取される可能性も存在する。
母体血清のアルファ−フェトプロテイン(MSAFP)
発達中の胎児は、主要な2つの血液蛋白質−アルブミンおよびアルファ−フェトプロテイン(AFP)を有する。母体は、通常その血液にアルブミンのみを有するので、胎児のAFP濃度を測定するためにMSAFP試験が利用できる。通常は、羊水に出て胎盤を通り母体の血液に到達できるAFPはほんの少量である。しかし、胎児が神経管欠陥を有すると、羊水中に漏れ出るAFPが増す。神経管欠陥としては、無脳症(神経管の頭端における閉鎖不全)および二分脊椎(神経管の尾端における閉鎖不全)が挙げられる。このような欠陥の発生率は、米国では出生1,000件につき約1件から2件である。また、胎児の腹壁に欠陥があると、母体の血液内の胎児AFPはより多量となる。
MSAFPの量は妊娠令とともに増加する。したがって、MSAFP試験から正確な結果を得るためには、妊娠令を正確に知る必要がある。また、母親の人種および妊娠糖尿病の存在が、正常であると考えられるはずのMSAFPの濃度に影響を及ぼすことがある。MSAFPは、典型的には平均値の倍数(MoM)として報告される。MoMが大きくなるほど、欠陥が存在する可能性も大きくなる。MSAFP試験は、妊娠16週から18週の間に最も高い感受性を有しているが、妊娠15週から22週の間に利用できる。ダウン症候群または他の染色体異常が存在する場合、MSAFPはより低くなる傾向がある。
MSAFP試験は非侵襲性的ではあるが、100%特異的ではない。MSAFPは、胎児の神経管または腹壁の欠陥に関連していない種々の理由で上昇することがある。MSAFP上昇の最も一般的な原因は、胎児の妊娠令に対する誤った判断である。したがって、MSAFP試験の結果は、決定的および結論的に考えられることはない。
母体血清のベータ−HCG
受胎および発達中の胎芽の子宮への着床後、約1週目から栄養膜は、妊娠診断に利用できる検出可能なベータ−HCG(ヒト絨性ゴナドトロピン)を産生し始める。ベータ−HCGは、母体血清においても定量でき、流産の恐れがある場合、または異所性妊娠が疑われる場合、ベータ−HCG量が正常よりも低くなるため、この定量は妊娠初期に有用であり得る。
第2トリメスターの中期から後期に、染色体異常、特にダウン症候群をスクリーンするために、ベータ−HCGはMSAFPと組合わせて利用できる。ベータ−HCGの上昇とMSAFPの低下とが共に存在する場合は、ダウン症候群が示唆される。高濃度のHCGにより栄養膜疾患(奇胎妊娠)が示唆される。超音波検査で胎児が存在せず、それにHCGの上昇を伴うと胞状奇胎が示唆される。
母体血清のエストリオール
母体血清中のエストリオール量は、胎児が生存可能かどうか、胎盤が正しく機能しているか、また母体が健康状態にあるかどうかによって変わってくる。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、胎児の副腎によって作られ、胎盤内でエストリオールへと代謝される。エストリオールは母体の循環に入り、母体の腎臓によって尿中へ、または母体の肝臓によって胆汁中へ排泄される。第3トリメスターに測定された正常濃度のエストリオールは、胎児の一般的健康状態の目安となる。エストリオールの濃度が低下する場合は、胎児は危険な状態にあり、即時分娩が必要であると考えられる。ダウン症候群が存在する場合、また、無脳症を伴う副腎形成不全が存在する場合、エストリオールは低下する傾向がある。
三重スクリーン試験
三重スクリーン試験は、母体血清アルファ−フェトプロテイン(MSAFP)、ヒト絨性ゴナドトロピン(hCG)および未抱合型エストリオール(uE3)の分析を含んでなる。血液試験は通常、最後の月経期の16〜18週後に実施される。この三重スクリーン試験は、非侵襲的ではあるが、試験の異常結果が出生時欠陥を示しているわけではなく、この試験は、危険性が高いことを示し、さらなる試験が必要であることを示唆するだけである。例えば、1,000人の女性のうち100人がこの三重スクリーン試験から異常結果を得る。しかし、出生時欠陥を持つ胎児を有するのは100人の女性のうちわずか2〜3人である。誤陽性の発生率がこのように高いため、妊婦に非常に大きなストレスと不必要な心配を与える。
母体血液から単離された胎児細胞
母体血液内には胎児有核細胞が存在するため、これらの細胞を非侵襲的な出生前診断に利用することができる(ウォークノースカら(Walknowska,et al.)、ランセット(Lancet)1:p.1119−1122、1969年;ローら(Lo et al.)、ランセット(Lancet)2:p.1363−65、1989年;ローら(Lo et al.)、ブラッド(Blood)88:p.4390−95、1996年)。特定のDNA配列を探すために、胎児細胞を種々の方法によって分類し、分析することができる(ビアンチら(Bianchi et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティックス(Am.J.Hum.Genet.)61:p.822−29、(1997);ビアンチら(Bianchi et al.)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(PNAS)93:p.705−08、(1996))。蛍光インシトウハイブリダイゼーション(FISH)は、母体血液から回収された胎児細胞の特定の染色体を同定し、トリソミーXおよびモノソミーXなどの異数体の病態を診断するために適用できる。
FISH法は、顕微鏡下で特定の染色体または遺伝子の検出を可能にする有色蛍光タグで標識化したDNAプローブを用いる。FISHを用いれば、標準的な核型決定によっては検出できない微妙な遺伝子異常が容易に同定できる。この方法は完了するのに典型的には24〜28時間かかる。また、多色DNA FISHプローブのパネルを用いて、異常染色体のコピー数を見ることができる。
胎児細胞の単離および濃縮に関して改善がなされているが、多くの胎児細胞を得ることは依然として困難である。胎児の核型異常の信頼できる判断または他の異常のアッセイには十分とは言えない。さらに、たいていの方法は、時間がかかり、大きな労働量の投入を要し、ハイスループットで実施することは困難である。
母体血液からの胎児DNA
母体の血漿および血清において、胎児DNAが検出され、定量されてきた(ローら(Lo et al.)、ランセット(Lancet)350:p.485−487(1997);ローら(Lo et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティックス(Am.J.hum.Genet.)62:p.768−775(1998))。胎児顆粒球、リンパ球、有核赤血球および栄養芽層細胞などの複数の胎児細胞型が母体循環内に存在する(パートルおよびビアンチ(Pertl,and Bianchi)、産科学および婦人科学(Obstetrics and Gynecology)98:p.483−490(2001))。胎児DNAは、懐胎7週目に血清中で検出でき、妊娠期間の増加とともに上昇する。母体の血清と血漿中に存在する胎児DNAは、胎児細胞単離プロトコルから得られたDNA濃度に相当する。
循環胎児DNAは、胎児の性別を決定するために利用されてきた(ローら(Lo et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティックス(Am.J.hum.Genet.)62:p.768−775(1998))。また、アカゲザル胎児D遺伝子型が胎児DNAを用いて検出されていた。しかしながら、循環胎児DNAの診断的臨床的適用は、母体ではなく胎児に存在する遺伝子に限られている(パートルおよびビアンチ(Pertl,and Bianchi)、産科学および婦人科学(Obstetrics and Gynecology)98:p.483−490(2001))。このように、胎児DNA配列を決定することができ、胎児の染色体異常の決定的診断を提供することのできる非侵襲的方法に対する必要性は依然として存在している。
発明の簡単な概要
本発明は、突然変異および染色体異常などの遺伝子疾患の検出方法に関する。好ましい態様において、本発明は、限定はしないが、転座、トランスバージョン、モノソミー、トリソミーおよび他の異数体、欠失、付加、増幅、断片、転座、および再配列などの変異および染色体異常を検出するために用いられる。多くの異常を同時に検出することができる。また、本発明は妊娠女性の試料から胎児のDNA配列を決定するための非侵襲的方法を提供する。本発明は、限定はしないが、点突然変異、読み枠シフト、トランジョン、トランスバージョン、付加、挿入、欠失、付加−欠失、フレームシフト、ミスセンス、復帰突然変異、および微小付随体変化など、野生型配列に較べた場合の遺伝子配列における何らかの変化を検出するために利用できる。本発明はまた、核酸を含む試料から遊離の核酸を単離するための方法も提供する。
一態様において、本発明は、染色体異常を検出する方法に関しており、前記方法は、(a)鋳型DNA上、関心対象座の対立遺伝子の配列決定、および(b)(a)の関心対象座から同定された関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子比率の定量を含んでなり、前記比率が染色体異常の有無を示す。
他の態様において、本発明は、胎児DNA上、関心対象座の配列決定に関する非侵襲的方法を提供し、前記方法は、(a)妊娠女性からの試料の獲得;(b)(a)の試料に対する細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤の添加;(c)(b)の試料から胎児DNAと母体DNAを含んでなる鋳型DNAの獲得;(d)鋳型DNA上の関心対象座の配列決定を含んでなる。
他の態様において、鋳型DNAは、限定はしないが、細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、膣分泌物、汗、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胚芽組織、胚芽、2細胞胚芽、4細胞胚芽、8細胞胚芽、16細胞胚芽、32細胞胚芽、64細胞胚芽、128細胞胚芽、256細胞胚芽、512細胞胚芽、1024細胞胚芽、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹膜液、腹水、糞便物質または身体滲出液などの試料から得られる。
一実施態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の試料から得られる。好ましい一態様において、鋳型DNAはヒトの妊娠女性から得られる。
他の態様において、鋳型DNAは胎芽から得られる。好ましい一態様において、鋳型DNAは、胎芽の単細胞から得られる。
他の態様において、限定はしないが、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドの誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの誘導体、架橋剤、第一級アミン反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル添加物またはジスルフィド還元物、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、開裂性架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、スルホ−BSOCOES、スルホ−DST、スルホ−EGS、または表XXIIIに記載の化合物などの細胞溶解阻害剤を試料に添加する。好ましい態様では、ホルマリンは試料中に、0.0001〜0.03%、0.03〜0.05%、0.05〜0.08%、0.08〜0.1%、0.1〜0.3%、0.3〜0.5%、0.5〜0.7%、0.7〜0.9%、0.9〜1.2%、1.2〜1.5%、1.5〜2%、2〜3%、3〜5%、および5%超を含むがこれらに限定されないパーセンテージで存在する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパン(hopane)テトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン(zonegran)、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール(tegretol)、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール(mexitil)、ジランチン(dilantin)、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
他の態様において、限定はしないが、デオキシリボヌクレアーゼ阻害剤、塩化亜鉛、エチレンジアミン四酢酸、グアニジン−HCl、イソチオシアン酸グアニジン、N−ラウロイルサルコシンおよびドデシル硫酸ナトリウムなどのDNAの破壊を防ぐ試剤を試料に添加する。
好ましい一態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の血液の血漿から得られる。他の態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の血液の血清から得られる。
他の態様において、鋳型DNAは、胎児DNAおよび母体DNAを含んでなる。
他の態様において、鋳型DNA上の関心対象座は、母体の関心対象のホモ接合座から選択される。他の態様において、鋳型DNA上の関心対象座は、母体の関心対象のヘテロ接合座から選択される。
他の態様において、鋳型DNA上の関心対象座は、父親の関心対象のホモ接合座から選択される。他の態様において、鋳型DNA上の関心対象座は、父親の関心対象のヘテロ接合座から選択される。
一態様において、1つの染色体上の複数の関心対象座の対立遺伝子配列が決定される。好ましい一態様において、複数の染色体上の複数の関心対象座の対立遺伝子配列が決定される。
他の態様において、関心対象座の対立遺伝子配列決定は、限定はしないが、対立遺伝子特異的PCR、ゲル電気泳動、ELISA、質量分析、ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、蛍光分極、蛍光検出、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、塩基配列決定、DNAマイクロアレイ、SNP−IT、GeneChip、HuSNP、ビーズアレイ、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassExtend、MassCleave(商標)(hMC)法、サザンブロット、スロットブロット、ドットブロット、およびMALDI−TOF質量分析などの方法を含んでなる。
好ましい態様において、関心対象座の対立遺伝子配列決定は、(a)第1のプライマーおよび関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成する制限酵素に対する認識部位を含有する第2のプライマーを用いて関心対象座を増幅すること;(b)第2のプライマー上の認識部位を認識する制限酵素によって増幅されたDNAを消化すること;(c)鋳型として関心対象座を含有する5’オーバーハングを用いて(b)の消化されたDNA内へ、ヌクレオチドを組み込むこと;(d)(c)のDNA配列を決定することによって、関心対象座の配列を決定することを含んでなる。
一態様において、前記増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含んでなり得る。さらなる態様において、PCRのサイクル1のアニーリング温度は、第2のプライマーのアニーリング長の略融解温度であり得る。他の実施態様において、PCRのサイクル2のアニーリング温度は、第1のプライマーの鋳型DNAをアニールする3’領域の略融解温度であり得る。他の態様において、残りのサイクルのアニーリング温度は、第2のプライマーの全配列の略融解温度であり得る。
他の態様において、第2のプライマー上の認識部位は、制限酵素の結合部位から離れて切断し、関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成する制限酵素のための認識部位である。好ましい態様において、第2のプライマー上の認識部位は、IIS型の制限酵素のためのものである。IIS型の制限酵素としては、限定はしないが、AlwI、Alw26I、BbsI、BbvI、BceAI、BmrI、BsaI、Bst7lI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspMI、EarI、FauI、FokI、HgaI、PleI、SapI、SSfaNI、およびSthi32I、より好ましくはBceAIおよびBsmFIが挙げられる。
一態様において、第2のプライマーの3’末端は関心対象座に隣接している。
他の態様において、第2のプライマーのアニーリング長は、35〜30、30〜25、25〜20、20〜15、15、14、13、12、11、10、9.8、7、6、5および4未満の塩基からなる群より選択される。
他の態様において、関心対象座の増幅は、第1のプライマー、および制限酵素認識部位の部分を含有する第2のプライマーを用いることを含んでなり、前記認識部位は、少なくとも1個の可変ヌクレオチドを含有し、増幅後に制限酵素認識部位全体が生成し、前記プライマーの3’領域が鋳型DNAとの誤対合を含有し、前記制限酵素による消化により、関心対象の座を含有する5’オーバーハングが生成する。
好ましい態様において、制限酵素に対する認識部位としては、限定はしないが、BsaJI(5’CCNNGG3’)、BssKI(5’CCNGG3’)、DdeI(5’CTNAG3’)、EcoNI(5’CCTNNNNNAGG3’)、Fnu4HI(5’GCNGC3’)、HinfI(5’GANTC3’)、PfLF1(5’GACNNNGTC3’)、Sau96I(5’GGNCC3’)、ScrFI(5’CCNGG3’)、Tthl11I(5’GACNNNGTC3’)が挙げられ、より好ましくは、増幅後にFnu4HIおよびEcoNIが生成する。
他の態様において、第1および/または第2のプライマーの5’領域が制限酵素に対する認識部位を含有する。好ましい態様において、前記制限酵素認識部位は、関心対象の座を含有する5’オーバーハングを生成する制限酵素認識部位とは異なっている。
さらなる態様において、本発明の方法は、第1および/または第2のプライマーの5’領域における認識部位を認識する制限酵素によって、DNAを消化することを、さらに含んでなる。
第1および/または第2のプライマーは、5’末端にタグを含有し得る。好ましくは、第1のプライマーが5’末端にタグを含有する。前記タグは、鋳型DNAから増幅DNAを分離するために使用することができる。前記タグは、標識ヌクレオチドを含有しない増幅DNAから標識ヌクレオチドを含有する増幅DNAを分離するために使用することができる。前記タグは、限定されないが、ラジオアイソトープ、蛍光レポーター分子、化学的ルミネセンスレポーター分子、抗体、抗体断片、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、フォトビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニン、アビジン、酵素、アクリジニウム、糖、酵素、アポ酵素、ホモポリマーのオリゴヌクレオチド、ホルモン、強磁性部分、常磁性部分、反磁性部分、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分、またはそれらの組合わせを含む、いかなる化学的部分でありうる。好ましくは、前記タグは、ビオチンである。ビオチンタグは、ストレプトアビジンマトリックスを用いて、鋳型DNAから増幅DNAを分離するために使用される。ストレプトアビジンマトリックスは、マイクロ滴定プレートのウェルを被覆する。
本発明の方法におけるヌクレオチドの取込みは、限定はしないが、大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T7DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、T5DNAポリメラーゼ、クレノウクラスポリメラーゼ類、Taqポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、ベントポリメラーゼ、バクテリオファージ29、REDTaq(商標)ゲノムDNAポリメラーゼ、またはシーケナーゼなどのDNAポリメラーゼによる。ヌクレオチドの取り込みは、標識ヌクレオチドおよび未標識ヌクレオチドの混合物の使用をさらに含んでなり得る。1個のヌクレオチド、2個のヌクレオチド、3個のヌクレオチド、4個のヌクレオチド、5個のヌクレオチド、または5個を超えるヌクレオチドを取り込むことができる。標識ヌクレオチドおよび未標識ヌクレオチドの組合わせを取り込むことができる。標識ヌクレオチドは、三リン酸ジデオキシヌクレオチド(「ジデオキシ」とも称する)および三リン酸デオキシヌクレオチド(「デオキシ」とも称する)からなる群より選択される。未標識ヌクレオチドは、三リン酸ジデオキシヌクレオチドおよび三リン酸デオキシヌクレオチドからなる群より選択される。標識ヌクレオチドは、限定されないが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分を含む分子によって標識化する。好ましくは、標識ヌクレオチドは、蛍光分子によって標識化する。蛍光標識ヌクレオチドの取込みは、蛍光ヌクレオチドおよび未標識ヌクレオチドの混合物の使用をさらに含んでなる。
一態様において、関心対象の座の配列決定は、取込みヌクレオチドの検出を含んでなる。一態様において、前記検出は、ゲル電気泳動、毛管電気泳動、マイクロチャネル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、蛍光検出、蛍光局在化、DNA塩基配列決定、サンガージデオキシ塩基配列決定、ELISA、質量分析、飛行時間型質量分析、四重極質量分析、扇形磁場質量分析、扇形電場質量分析、蛍光分析、赤外分光、紫外分光、パレンチオスタティック(palentiostatic)アンペロメトリー、DNAハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、GeneChipアレイ、HuSNPアレイ、ビーズアレイ、MassExtend、SNP−IT、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassCleave、サザンブロット、スロットブロットおよびドットブロットからなる群より選択される方法による。
一態様において、鋳型DNAの1つの染色体上の関心対象の座の1個から数十個、数百個、数千個までの対立遺伝子配列が決定される。好ましい一態様において、複数の染色体上の関心対象の座の1個から数十個、数百個、数千個までの対立遺伝子配列が決定される。
好ましい一態様において、関心対象の座は、1個のヌクレオチド多形または突然変異を含有する疑いがある。この方法は、関心対象の複数の座の配列を同時に決定するために利用できる。鋳型DNAは、1つの染色体の複数の座を含んでなり得る。鋳型DNAは種々の染色体の複数の座を含んでなり得る。鋳型DNA上の関心対象の座は1つの反応において増幅できる。あるいは、鋳型DNA上の関心対象の座の各々は別の反応において増幅できる。増幅DNAは増幅DNAの消化前に、一緒にプールできる。関心対象の座を含有する標識DNAの各々は、関心対象の座の配列を決定する前に分離できる。好ましい一態様において、関心対象の座の少なくとも1つは、1個のヌクレオチド多形または突然変異を含有する疑いがある。
他の態様において、一染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を、異なった染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較する。比較できる染色体については限定されない。任意の染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を、他の任意の染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較することができる。好ましい一態様において、一染色体上の関心対象の複数ヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を合計して、異なった染色体上の関心対象の複数ヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較する。
他の態様において、一染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を、2個、3個、4個、または4個を超える染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較する。他の実施態様において、一染色体上の関心対象の複数の座における対立遺伝子の比率を、2個、3個、4個、または4個を超える染色体上の関心対象の複数の座における対立遺伝子の比率と比較する。
他の態様において、一染色体上の関心対象の対立遺伝子の比率を、異なった染色体上の関心対象の対立遺伝子の比率と比較するが、前記比率の違いは、染色体異常の有無を示す。他の態様において、一染色体上の関心対象の複数の対立遺伝子の比率を、異なった染色体上の関心対象の複数の対立遺伝子の比率と比較するが、前記比率の違いは、染色体異常の有無を示す。
他の態様において、妊娠女性の試料から得られた鋳型DNA上の1個から数十個、数百個、数千個までの関心対象の座の配列が決定される。一態様において、関心対象の座は、1個の染色体上にある。他の態様において、関心対象の座は、複数の染色体上にある。
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、核酸を単離する段階を提供する:(a)核酸を含む試料を得る段階;(b)細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を(a)の試料に添加する段階;ならびに(c)核酸を単離する段階。好ましい態様では、この方法は、遊離の核酸を単離する際に用いられる。最も好ましい態様では、この方法は、遊離の胎児核酸を単離する際に用いられる。
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、遊離の胎児核酸を単離する方法を提供する:(a)核酸を含む試料を得る段階;(b)細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を(a)の試料に添加する段階;(c)血液試料から血漿を単離する段階(血漿は血液試料を遠心分離することで単離する);ならびに(d)「バフィーコート」の破壊を最小限に抑える手順で上清(血漿を含む)を除去する段階。
別の態様では、核酸を含む試料を、細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、乳房分泌液、乳汁、膣分泌物、汗、臍帯血、絨毛膜、羊水、胚組織、胚、2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚、16細胞期胚、32細胞期胚、64細胞期胚、128細胞期胚、256細胞期胚、512細胞期胚、1024細胞期胚、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹腔液、腹水、糞便、または身体浸出物を含むがこれらに限定されない、任意の核酸含有供給源から得る。
一つの態様では、核酸を含む試料を妊娠した雌から得る。好ましい態様では、試料を妊娠したヒト女性から得る。好ましい態様では、試料は妊娠女性から得られた血液である。
別の態様では、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、スルホ−BSOCOES、スルホ−DST、スルホ−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を試料に添加する。
アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を試料に添加することができる。
別の態様では、DNase阻害剤、塩化亜鉛、エチレンジアミン四酢酸、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、N−ラウロイルサルコシン、およびNa−ドデシル硫酸を含むがこれらに限定されない、DNAの破壊を防ぐ薬剤を試料に添加する。
好ましい態様では、妊娠女性の血液から得られた血漿から核酸を単離する。別の態様では、母親由来の細胞の溶解量を最小とするように設計された手順で得られた血漿から核酸を単離する。別の態様では、妊娠女性の血液を遠心分離し、ブレーキをかけることなく遠心分離を停止させることで、血漿から核酸を単離する。
好ましい態様では、妊娠女性の血液から得られた血漿から、遊離の核酸を単離する。別の態様では、妊娠女性から得られた血液を遠心分離し、ブレーキをかけることなく遠心分離を停止させる(遠心分離は自然減速で停止する)ことで得られた血漿から、遊離の核酸を単離する。別の態様では、妊娠女性の血液を0〜50rpm、50〜100rpm、100〜200rpm、200〜300rpm、300〜400rpm、400〜500rpm、500〜600rpm、600〜700rpm、700〜800rpm、800〜900rpm、900〜1000rpm、1000〜2000rpm、2000〜3000rpm、3000〜4000rpm、4000〜5000rpm、5000〜6000rpm、6000〜7000rpm、7000〜8000rpm、および8000rpm超を含むがこれらに限定されない速度で遠心分離する。好ましい態様では、妊娠女性の血液を4000rpm未満の速度で遠心分離する。別の態様では、遠心分離時に加速力を加えない。
発明の詳細な説明
本発明は、限定はしないが、挿入、欠失、および染色体異常などの遺伝子疾患の検出方法を提供し、特に、胎児の遺伝子疾患の検出に有用である。本法は、転座、付加、増幅、トランスバージョン、逆位、異数性、倍数性、モノソミー、トリソミー、トリソミー21、トリソミー13、トリソミー14、トリソミー15、トリソミー16、トリソミー18、トリソミー22、三倍体、四倍体、ならびに限定されないが、XO、XXY、XYYおよびXXXなどの性染色体異常の検出に特に有用である。また本法は、胎児DNAの配列および胎児DNAの変異を識別する配列を決定するための非侵襲的方法を提供する。
本発明は、染色体異常を検出する方法に関しており、前記方法は、(a)鋳型DNA上、関心対象座の対立遺伝子の配列決定、および(b)(a)の関心対象座から同定された関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子比率の定量を含んでなり、前記比率が染色体異常の有無を示す。
他の態様において、本発明は、胎児DNA上、関心対象座の配列決定に関して非侵襲的方法を提供し、前記方法は、(a)妊娠女性からの試料の獲得;(b)(a)の試料に対する細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤の添加;(c)(b)の試料から胎児DNAと母体DNAを含んでなる鋳型DNAの獲得;(d)鋳型DNA上の関心対象座の配列決定を含んでなる。
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、DNAを単離する方法に関する:(a)核酸を含む試料を得る段階;(b)細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を(a)の試料に添加する段階;ならびに(c)DNAを単離する段階。
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、遊離のDNAを単離する方法に関する:(a)核酸を含む試料を得る段階;(b)細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を(a)の試料に添加する段階;ならびに(c)DNAを単離する段階。
別の態様では、本発明は、DNAを単離する段階を含む、細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤が添加された核酸含有試料から、遊離のDNAを単離する方法に関する。
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、遊離の胎児DNAを単離する方法に関する:(a)核酸を含む試料を得る段階;(b)細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤を(a)の試料に添加する段階;ならびに(c)DNAを単離する段階。別の態様では、塩化セシウム勾配、勾配、ショ糖勾配、グルコース勾配、遠心分離プロトコル、煮沸、Qiagen社の精製システム、QIA DNA血液精製キット、HiSpeed Plasmid Maxiキット、QIAfilterプラスミドキット、Promega DNA精製システム、MangeSil常磁性粒子をベースとしたシステム、Wizard SVテクノロジー、Wizard Genomic DNA精製キット、Amersham社の精製システム、GFX Genomic Blood DNA精製キット、Invitrogen Life Technologies社の精製システム、CONCERT社の精製システム、Mo Bio Laboratories社の精製システム、UltraClean BloodSpinキット、およびUlraClean Blood DNAキットを含むがこれらに限定されない、当技術分野に適した任意の手法でDNAを単離する。
別の態様では、本発明は、DNAを単離する段階を含む、細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤が添加された核酸を含む試料から、遊離の胎児DNAを単離する方法に関する。好ましい態様では、妊娠女性の血液から得られた血漿または血清から、遊離の胎児DNAを単離する。
別の態様では、試料を遠心分離する段階(遠心分離の制動力はゼロに設定=遠心分離時にブレーキをかけない)、「バフィーコート」の攪乱を最小限またはゼロに抑えながら上清を新しいチューブに移す段階、ならびに上清の一部のみを新しいチューブに移す段階を含むがこれらに限定されない、試料中の母親由来のDNAの量を実質的に減少させる手法および/またはプロトコルでDNAを単離する。好ましい態様では、遠心分離時の加速力と制動力はいずれもゼロに設定する。
別の態様では、試料を遠心分離する段階(遠心分離の加速力はゼロに設定)、「バフィーコート」の攪乱を最小限またはゼロに抑えながら上清を新しいチューブに移す段階、ならびに上清の一部のみを新しいチューブに移す段階を含むがこれらに限定されない、試料中の母親由来のDNAの量を実質的に減少させる手法および/またはプロトコルでDNAを単離する。
別の態様では、シリンジまたはニードルを用いて「バフィーコート」を除く段階を含むがこれらに限定されない、任意の適用可能な方法で、「バフィーコート」をチューブから除去してから上清を除去する。
別の態様では、遠心分離時の制動力を、最大制動力の1〜5%、5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%、95〜99%を含むがこれらに限定されないパーセンテージに設定する。
別の態様では、遠心分離時の加速力を、最大加速力の1〜5%、5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%、95〜99%を含むがこれらに限定されないパーセンテージに設定する。
別の態様では、本発明は、遊離の胎児由来のDNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが少なくとも約15%、遊離の胎児DNAが少なくとも約20%、遊離の胎児DNAが少なくとも約30%、遊離の胎児DNAが少なくとも約40%、遊離の胎児DNAが少なくとも約50%、遊離の胎児DNAが少なくとも約60%、遊離の胎児DNAが少なくとも約70%、遊離の胎児DNAが少なくとも約80%、遊離の胎児DNAが少なくとも約90%、遊離の胎児DNAが少なくとも約91%、遊離の胎児DNAが少なくとも約92%、遊離の胎児DNAが少なくとも約93%、遊離の胎児DNAが少なくとも約94%、遊離の胎児DNAが少なくとも約95%、遊離の胎児DNAが少なくとも約96%、遊離の胎児DNAが少なくとも約97%、遊離の胎児DNAが少なくとも約98%、遊離の胎児DNAが少なくとも約99%、および遊離の胎児DNAが少なくとも約99.5%を含むがこれらに限定されない)。
別の態様では、本発明は、出生前診断を目的とした、遊離の胎児由来のDNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物を使用する方法に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが少なくとも約15%、遊離の胎児DNAが少なくとも約20%、遊離の胎児DNAが少なくとも約30%、遊離の胎児DNAが少なくとも約40%、遊離の胎児DNAが少なくとも約50%、遊離の胎児DNAが少なくとも約60%、遊離の胎児DNAが少なくとも約70%、遊離の胎児DNAが少なくとも約80%、遊離の胎児DNAが少なくとも約90%、遊離の胎児DNAが少なくとも約91%、遊離の胎児DNAが少なくとも約92%、遊離の胎児DNAが少なくとも約93%、遊離の胎児DNAが少なくとも約94%、遊離の胎児DNAが少なくとも約95%、遊離の胎児DNAが少なくとも約96%、遊離の胎児DNAが少なくとも約97%、遊離の胎児DNAが少なくとも約98%、遊離の胎児DNAが少なくとも約99%、および遊離の胎児DNAが少なくとも約99.5%を含むがこれらに限定されない)。
別の態様では、本発明は、遊離の胎児由来のDNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが約13〜15%、遊離の胎児DNAが約15〜16%、遊離の胎児DNAが約16〜17%、遊離の胎児DNAが約17〜18%、遊離の胎児DNAが約18〜19%、遊離の胎児DNAが約19〜20%、遊離の胎児DNAが約20〜21%、遊離の胎児DNAが約21〜22%、遊離の胎児DNAが約22〜23%、遊離の胎児DNAが約23〜24%、遊離の胎児DNAが約24〜25%、遊離の胎児DNAが約25〜35%、遊離の胎児DNAが約35〜45%、遊離の胎児DNAが約45〜55%、遊離の胎児DNAが約55〜65%、遊離の胎児DNAが約65〜75%、遊離の胎児DNAが約75〜85%、遊離の胎児DNAが約85〜90%、遊離の胎児DNAが約90〜91%、遊離の胎児DNAが約91〜92%、遊離の胎児DNAが約92〜93%、遊離の胎児DNAが約93〜94%、遊離の胎児DNAが約94〜95%、遊離の胎児DNAが約95〜96%、遊離の胎児DNAが約96〜97%、遊離の胎児DNAが約97〜98%、遊離の胎児DNAが約98〜99%、および遊離の胎児DNAが約99〜99.7%を含むがこれらに限定されない)。
別の態様では、本発明は、出生前診断を目的とした、遊離の胎児由来のDNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物を使用する方法に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが約13〜15%、遊離の胎児DNAが約15〜16%、遊離の胎児DNAが約16〜17%、遊離の胎児DNAが約17〜18%、遊離の胎児DNAが約18〜19%、遊離の胎児DNAが約19〜20%、遊離の胎児DNAが約20〜21%、遊離の胎児DNAが約21〜22%、遊離の胎児DNAが約22〜23%、遊離の胎児DNAが約23〜24%、遊離の胎児DNAが約24〜25%、遊離の胎児DNAが約25〜35%、遊離の胎児DNAが約35〜45%、遊離の胎児DNAが約45〜55%、遊離の胎児DNAが約55〜65%、遊離の胎児DNAが約65〜75%、遊離の胎児DNAが約75〜85%、遊離の胎児DNAが約85〜90%、遊離の胎児DNAが約90〜91%、遊離の胎児DNAが約91〜92%、遊離の胎児DNAが約92〜93%、遊離の胎児DNAが約93〜94%、遊離の胎児DNAが約94〜95%、遊離の胎児DNAが約95〜96%、遊離の胎児DNAが約96〜97%、遊離の胎児DNAが約97〜98%、遊離の胎児DNAが約98〜99%、または遊離の胎児DNAが約99〜99.7%を含むがこれらに限定されない)。
別の態様では、本発明は、遊離の胎児DNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが最大13〜15%、遊離の胎児DNAが最大15〜18%、遊離の胎児DNAが最大18〜20%、遊離の胎児DNAが最大20〜40%、遊離の胎児DNAが最大40〜50%、遊離の胎児DNAが最大50〜60%、遊離の胎児DNAが最大60〜70%、遊離の胎児DNAが最大70〜80%、遊離の胎児DNAが最大80〜90%、遊離の胎児DNAが最大90〜92%、遊離の胎児DNAが最大92〜94%、遊離の胎児DNAが最大94〜95%、遊離の胎児DNAが最大95〜96%、遊離の胎児DNAが最大96〜97%、遊離の胎児DNAが最大97〜98%、遊離の胎児DNAが最大98〜99%、遊離の胎児DNAが最大99〜99.5%、および遊離の胎児DNAが最大99.5〜99.9%を含むがこれらに限定されない)。
別の態様では、本発明は、出生前診断を目的とした、遊離の胎児由来のDNAおよび遊離の母親由来のDNAを含む組成物を使用する方法に関する(組成物中における遊離の母親由来のDNAに対する遊離の胎児由来のDNAの割合は、遊離の胎児DNAが最大13〜15%、遊離の胎児DNAが最大15〜18%、遊離の胎児DNAが最大18〜20%、遊離の胎児DNAが最大20〜40%、遊離の胎児DNAが最大40〜50%、遊離の胎児DNAが最大50〜60%、遊離の胎児DNAが最大60〜70%、遊離の胎児DNAが最大70〜80%、遊離の胎児DNAが最大80〜90%、遊離の胎児DNAが最大90〜92%、遊離の胎児DNAが最大92〜94%、遊離の胎児DNAが最大94〜95%、遊離の胎児DNAが最大95〜96%、遊離の胎児DNAが最大96〜97%、遊離の胎児DNAが最大97〜98%、遊離の胎児DNAが最大98〜99%、遊離の胎児DNAが最大99〜99.5%、および遊離の胎児DNAが最大99.5〜99.9%を含むがこれらに限定されない)。
鋳型DNA
「関心対象座」とは、核酸の広い領域内に存在する、ある選択された領域を意味する。関心対象座が、限定はしないが、1〜100、1〜50、1〜20個または1〜10個のヌクレオチドであり、好ましくは、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2個または1個のヌクレオチドである。
本明細書で用いられる「対立遺伝子」とは、染色体上の同じ位置を占めている遺伝子またはDNAの非コード領域を代替的に示す用語の一つである。用語、対立遺伝子は、限定はしないが、細菌、ウィルス、真菌、原生動物、糸状菌、酵母、植物、ヒト、非ヒト、動物および古細菌などのいずれかの生物からのDNAを記述するために使用できる。
例えば、細菌は、典型的には大型の一本鎖DNAを有する。細菌DNAに関して、用語、対立遺伝子とは、同じ種の異なった細菌細胞における同一の遺伝子形態と較べた際のある細胞に見られる遺伝子形態を言う。
対立遺伝子は、同一の配列を有することがあるか、または、1個のヌクレオチド、または1個を超えるヌクレオチドが変化していることがある。各染色体が2つのコピーを有する生物に関して、双方の染色体が同一の対立遺伝子を有する場合、この状態はホモ接合と呼ばれる。2本の染色体における対立遺伝子が異なっている場合、この状態は、ヘテロ接合と呼ばれる。例えば、関心対象座が染色体1上のSNPXである場合、母親の染色体がSNPXにアデニンを含有し(対立遺伝子A)、父親の染色体がSNPXにグアニンを含有(対立遺伝子G)していると、個体はSNPXにおいてヘテロ接合である。
本明細書で用いられる配列とは、ポリヌクレオチド内の1個のヌクレオチドまたは1個を超える隣接するヌクレオチドの同一性を意味する。単一のヌクレオチド、例えば1個のSNPの場合、「配列」と「同一性」とは、本明細書で交換可能に用いられる。
用語の「染色体異常」とは、患者染色体と正常な相同染色体との間の偏差を言う。用語の「正常」とは、ある特定の種の健康な個体に見られる優位を占める核型または横縞模様を言う。染色体異常は、数に関することもあり、また構造的なこともあり、限定はしないが、異数性、倍数性、トリソミー、モノソミー、重複、欠失、染色体の一部欠失、付加、染色体の一部付加、挿入、染色体断片、染色体領域、染色体再配列および転座を含む。染色体異常は、病理学的状態の存在に関連して得るか、または病理学的状態へ発展する傾向と関連して得る。本明細書で定義された単一ヌクレオチド多形(「SNP」)は、染色体異常ではない。
本明細書で用いられる、ポリメラーゼによるヌクレオチドの取り込みとは、同義的に、伸長反応またははめ込み(Fill−in)反応を意味する。
個体に関して本明細書で用いられる「突然変異対立遺伝子」とは、疾病状態を伴う変異体対立遺伝子を言う。
用語の「鋳型」とは、本発明の増幅に使用できる任意の核酸分子を言う。本来は二本鎖ではないRNAまたはDNAを二本鎖DNAにして、鋳型DNAとして使用するすることができる。鋳型DNAに含有する関心対象の1個または複数の座を増幅するために、任意の二本鎖DNAまたは複数の種々の二本鎖DNA分子を含有する調製物を鋳型DNAとして用いることができる。
鋳型DNAは、限定はしないが、ヒト、非ヒト、哺乳動物、爬虫類、ウシ、ネコ、イヌ、ヤギ、イノシシ、ブタ、サル、類人猿、ゴリラ、雄牛、牝牛、クマ、ウマ、ヒツジ、家禽類、ネズミ、魚類、イルカ、クジラおよびサメなどの任意の供給源から得ることができる。
鋳型DNAは、限定はしないが、組織、体液(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、腹膜液、腹水、膣分泌液、乳房分泌液、乳汁、リンパ液、脳脊髄液または粘膜分泌物)、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胚芽、2細胞胚芽、4細胞胚芽、8細胞胚芽、16細胞胚芽、32細胞胚芽、64細胞胚芽、128細胞胚芽、256細胞胚芽、512細胞胚芽、1024細胞胚芽、胚芽組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹膜液、腹水、または他の身体滲出液、糞便物質、同じ核酸を含有する供給源の個々の細胞または抽出物およびミトコンドリアなどの非細胞構造物の核酸含有試料などの任意の適切な試料からの当業界で十分に確立されたプロトコルを用いたものであり得る。
一態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の試料から得ることができる。
他の態様において、鋳型DNAは、胎芽から得ることができる。好ましい態様において、鋳型DNAは、胎芽の単一細胞から得ることができる。
一態様において、鋳型DNAは胎児DNAである。胎児DNAは限定はしないが、母体血液、母体血清、母体血漿、胎児細胞、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、尿、唾液、細胞または組織などの供給源から得ることができる。
他の態様において、限定はしないが、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドの誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの誘導体、第一級アミン反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル添加物またはジスルフィド還元物、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、開裂性架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、スルホ−BSOCOES、スルホ−DST、スルホ−EGS、または表XXIIIに記載の化合物などの細胞溶解阻害剤を試料に添加する。好ましい態様では、ホルマリンは試料中に、0.0001〜0.03%、0.03〜0.05%、0.05〜0.08%、0.08〜0.1%、0.1〜0.3%、0.3〜0.5%、0.5〜0.7%、0.7〜0.9%、0.9〜1.2%、1.2〜1.5%、1.5〜2%、2〜3%、3〜5%、および5%超を含むがこれらに限定されないパーセンテージで存在する。別の態様では、架橋剤と細胞膜安定化剤、架橋剤と細胞溶解阻害剤、ならびに細胞膜安定化剤と細胞溶解阻害剤を含むがこれらに限定されない、架橋剤、細胞膜安定化剤、または細胞溶解阻害剤の任意の組合わせを試料に添加することができる。複数種の架橋剤を、複数種の細胞膜安定化剤とともに使用することができる。複数種の架橋剤を、複数種の細胞溶解阻害剤とともに使用することができる。複数種の細胞膜安定化剤を、複数種の細胞溶解阻害剤とともに使用することができる。
別の態様では、溶解を細胞の約10%未満とするように、細胞溶解阻害剤を試料に添加する。好ましい態様では、溶解を細胞の約5%未満とするように、細胞溶解阻害剤を試料に添加する。最も好ましい態様では、溶解を細胞の約1%未満とするように、細胞溶解阻害剤を試料に添加する。
別の態様では、溶解を細胞の約10%未満とするように、細胞膜安定化剤を試料に添加する。好ましい態様では、溶解を細胞の約5%未満とするように、細胞膜安定化剤を試料に添加する。最も好ましい態様では、溶解を細胞の約1%未満とするように、細胞膜安定化剤を試料に添加する。
別の態様では、溶解を細胞の約10%未満とするように、架橋剤を試料に添加する。好ましい態様では、溶解を細胞の約5%未満とするように、架橋剤を試料に添加する。最も好ましい態様では、溶解を細胞の約1%未満とするように、架橋剤を試料に添加する。
別の態様では、細胞溶解阻害剤、架橋剤、または細胞膜安定化剤を、試料の採取後に1〜10秒間、10〜30秒間、30〜60秒間、1〜5分間、5〜10分間、10〜20分間、20〜30分間、30〜40分間、40〜50分間、60〜90分間、90〜180分間、または180分間超を含むがこれらに限定されない適用可能な時間をかけて試料に添加する。別の態様では、細胞溶解阻害剤、架橋剤、または細胞膜安定化剤は、ガラス製チューブ、プラスチック製チューブ、円形容器、エッペンドルフチューブ、IVバッグ、または他の任意の適切な採取用装置を含むがこれらに限定されない、試料採取装置内に存在する。別の態様では、細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤の添加後に、試料を、1〜5分間、5〜10分間、10〜20分間、20〜40分間、40〜60分間、60〜90分間、90〜120分間、120〜150分間、150〜180分間、180〜240分間、240〜300分間、または300分間超を含むがこれらに限定されない、試薬を機能させる期間、ほぼ室温で静置する。
他の態様において、鋳型DNAは、母体DNAおよび胎児DNAの双方を含有する。好ましい態様において鋳型DNAは、妊娠女性の血液から得られる。血液は、限定はしないが、静脈穿刺などの標準的な血液吸引法を用いて採血する。例えば、血液は肘内側の静脈、または手の裏側の静脈から吸引する。血液試料は、妊娠女性から懐胎の間、任意の時に採血できる。例えば、血液試料はヒト女性から、懐胎1〜4、4〜8、8〜12、12〜16、16〜20、20〜24、24〜28、28〜32、32〜36、36〜40、または40〜44週目、好ましくは、懐胎8〜28週目に採血できる。
血液試料は、母体細胞から血漿を分離するため、遠心分離する。血漿フラクションと母体細胞フラクションとを別々の管に移して再度遠心分離する。血漿フラクションは、細胞を含まない胎児DNAおよび母体DNAを含有する。胎児DNAおよび母体DNAを単離するために、限定はしないが、キアゲン(QIAGEN)から供給されるキアアンプDNAブラッド・ミディ・キット(QIAampDNA Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)などの任意の標準的DNA単離法を用いることができる。
好ましい一態様において、限定はしないが、EDTAなどのマグネシウムキレート剤を含有する装置内へ血液を採取でき、4℃で貯蔵する。場合によっては、限定はしないが、EGTAなどのカルシウムキレート剤を添加できる。
他の態様において、限定はしないが、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドの誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの誘導体、タンパク質架橋剤、核酸架橋剤、タンパク質および核酸架橋剤、第一級アミン反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル添加物またはジスルフィド還元物、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、開裂性架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、スルホ−BSOCOES、スルホ−DST、スルホ−EGS、または表XXIIIに記載の化合物などの細胞溶解阻害剤を試料に添加する。
別の態様では、母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
他の態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の血液の血漿または血清から得られる。母体血漿中胎児DNAのパーセンテージは、0.39%から11.9%の間である(パートルおよびビアンチ(Pertl,and Bianchi)、産科学および婦人科学(Obstetrics and Gynecology)98:p.483−490(2001))。血液試料中の大部分のDNAは母体DNAであるため、胎児の遺伝子型決定のためのDNA使用は困難である。しかし、母体血漿中の胎児DNAのパーセンテージを上昇させる方法により、胎児DNAの配列決定が可能となり、突然変異挿入、欠失および染色体異常などの遺伝子疾患の検出が可能になる。母体血液試料への細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋剤の添加により、胎児DNAの相対的比率を上げることができる。母体細胞と胎児細胞の双方の溶解が阻害されるが、大部分の細胞は母体細胞であるため、母体細胞の溶解を阻害することにより、遊離の胎児DNAのパーセンテージが相対的に増加する。実施例4を参照されたい。
他の態様において、大型ボア針、短針、テフロン(登録商標)などの層流を増加させる針被覆、層流を増加させるための針斜角の変更、または血流速度を低下させる技術など細胞溶解量を減少させる血液吸引の技術、方法、プロトコルまたは装置を使用することができる。胎児細胞は、母体の免疫系によって母体血液中で破壊され易い。しかし、血液吸引または血液試料の処理の結果、大部分の母体細胞溶解が生じ易い。したがって、細胞溶解を防止または減少させる方法によって、試料内の母体DNA量が減少し、遊離の胎児DNAの相対的パーセンテージが上昇する。
他の態様において、細胞溶解量を減少させるために、細胞の構造完全性を保存または安定化する試剤を使用することができる。
別の態様では、母親由来の血液中における遊離の母親由来のDNAの量を減らす任意のプロトコルを、試料を得る前に使用することができる。別の態様では、試料を得る前に、妊娠女性を0〜5分間、5〜10分間、10〜15分間、15〜20分間、20〜25分間、25〜30分間、30〜35分間、35〜40分間、40〜45分間、45〜50分間、50〜55分間、55〜60分間、60〜120分間、120〜180分間、180〜240分間、240〜300分間、300〜360分間、360〜420分間、420〜480分間、480〜540分間、540〜600分間、600〜660分間、660〜720分間、720〜780分間、780〜840分間、840〜900分間、900〜1200分間、1200〜1500分間、1500〜1800分間、1800〜2100分間、2100〜2400分間、2400〜2700分間、2700〜3000分間、3000〜3300分間、3300〜3600分間、3600〜3900分間、3900〜4200分間、4200〜4500分間、および4500分間超を含むがこれらに限定されない期間、運動させることなく休息させる。別の態様では、妊娠女性が身体的にリラックスした状態になってから試料を得る。試料を得る前の休息時間を確保することで、試料中の母親由来の核酸の量が減少する場合がある。別の態様では、試料を午前4〜5時、午前5〜6時、午前6〜7時、午前7〜8時、午前8〜9時、午前9〜10時、午前10〜11時、および午前11〜12時を含むがこれらに限定されない、午前中の時間帯に妊娠女性から得る。
別の態様では、妊娠女性に、0〜1時間、1〜2時間、2〜3時間、3〜4時間、4〜5時間、5〜6時間、6〜7時間、7〜8時間、8〜9時間、9〜10時間、10〜11時間、11〜12時間、または12時間超を含むがこれらに限定されない時間、睡眠をとらせた後に、妊娠女性から試料を得る。
別の態様では、試料を得る前に、妊娠女性は、一定の時間、運動をした後に休息させる。別の態様では、運動時間は、0〜15分間、15〜30分間、30〜45分間、45〜60分間、60〜120分間、120〜240分間、または240分間超を含むがこれらに限定されない。
他の態様において、限定はしないが、デオキシリボヌクレアーゼ阻害剤、塩化亜鉛、エチレンジアミン四酢酸、グアニジン−HCl、イソチオシアン酸グアニジン、N−ラウロイルサルコシンおよびドデシル酸ナトリウムなどのDNAの破壊を防ぐ試剤を血液試料に添加できる。
他の態様において、胎児DNAは胎児細胞から得られ、前記胎児細胞は、限定はしないが、母体血液、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胎芽組織および母体の子宮頚部または膣から得られた粘液などの供給源から単離できる。
ある好ましい他の態様において、胎児細胞は母体の末梢血から単離される。母体血清からの胎児細胞を精製するために、胎児細胞に特異的な抗体を使用することができる(ミューラーら(Mueller et al.)、ランセット(Lancet)336:p.197−200(1990);ガンシャート−アーラートら(Ganshirt−Ahlert et al.)、産科学および婦人科学のアメリカ・ジャーナル(Am.J.Obstet.Gynecol.)166:p.1350−1355(1992))。胎児細胞を濃縮するために、フローサイトメトリー法を用いることもできる(ヘルツェンバークら(Herzenberg et al.)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(PNAS)76:p.1453−1455(1979);ビアンチら(Bianchi et al.)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(PNAS)87:p.3279−3283(1990);ブラッチら(Bruch et al.)、プレネイタル・ダイアグノーシス(Prenatal Diagnosis)11:p.787−798(1991))。また、米国特許第5,432,054号明細書は、広い上部と細い毛細管の底部を有するポリエチレン製の管を用いることにより胎児の有核赤血球細胞を分離する方法を記載している。速度可変プログラムを用いた遠心分離により、赤血球はその分子密度に基づいて毛細管内に重なる。胎児赤血球などの低密度赤血球を含有する密度フラクションを回収して、次に母体赤血球を優先的に破壊するように特異的に溶血する。高浸透圧媒体中の密度勾配を用いて、胎児赤血球の濃くなった赤血球を、リンパ球および破裂した母体細胞から分離する。高浸透圧溶液の使用により赤血球は、収縮し、それらの密度が増加し、より密度の高いリンパ球からの精製が促進される。胎児細胞が単離された後、当業界の標準的方法を用いて胎児DNAを精製することができる。
分析された核酸は、独特のDNA配列を含む任意の核酸、例えば、ゲノム、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体、人工すなわち人間の作成したDNAならびにcDNAなど、RNA試料から逆転写されたDNAであり得る。RNAの配列は、鋳型DNAとして用いるために二本鎖DNAの形態にすることができる場合は、本発明により決定することができる。
鋳型にアニールし、その鋳型のコピー合成をプライムするために使用できるオリゴヌクレオチドの考察に用いられる場合の用語の「プライマー」および「オリゴヌクレオチドプライマー」は交換不能である。
「増幅」DNAとは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応によって、一回、または複数回コピーされたDNAである。十分な数の関心対象座のコピーが、アッセイされる試料中に既に存在しているなど、大量のDNAがアッセイに利用できる場合は、関心対象座のDNAを「増幅」して、より大量の複製コピーにする必要はないと思われる。むしろ、制限酵素認識部位を二本鎖にできるヘアピン構造を含有し得る適切なプラーマーのセットを用いて鋳型DNAを一回「コピー」するだけで十分であり得る。
「コピーDNA」の「コピー」とは、一回コピーされたDNAまたは増幅されて一回よりも多くコピーされたDNAを言う。
一態様において、核酸は、核酸源を含有する元の試料内で直接増幅される。核酸が抽出、精製、または単離される必要はなく、必要なのは、ただ増幅できる形態で提供されることだけである。増幅前のプライマーによる鋳型核酸のハイブリダイゼーションは必要ない。例えば、増幅は、当業界で周知の標準的プロトコルを用いて細胞溶解液または試料溶解液内で実施することができる。固体支持体上の生物学的固定調製物内の、あるいは、非DNA物質を含有する組成物中のDNAであって、固体支持体または固定調製物または組成物中の非DNA物質から最初に抽出されることなく増幅できるDNAは、そのDNAが適切なプライマーと共にアニールできる限り、さらに精製することなく直接使用することができ、コピーでき、特に増幅でき、コピー産物または増幅産物は回収して本明細書に記載されたとおり利用できる。
ある好ましい態様において、核酸は、増幅前に当業界で公知の方法を用いて、元の試料に存在する非核酸物質から抽出、精製、単離される。
他の態様において、核酸は、核酸源を含有する元の試料から抽出、精製、または単離し、増幅前に、限定はしないが、酵素消化、マニュアルせん断、または音波処理などの当業界に周知の方法を幾つか用いて核酸を断片化する。例えば、DNAは、関心対象座には存在しない認識部位、特に8塩基対また6塩基対の認識部位を有する1種以上の制限酵素によって消化することができる。典型的には、DNAは50、100、250、500、1,000、5,000、10,000、50,000および100,000塩基対長などの所望の長さに断片化できる。他の態様において、DNAは、約1000から2000塩基対の平均長に断片化される。しかし、必ずしもDNAを断片化する必要はない。
増幅前に、断片化したDNAから関心対象座を含有するDNA断片を精製することができる。関心対象座にアニールする能力に基づいて関心対象座を受けとるホックとして増幅に用いられるプライマー(「プライマー設計」の節を参照)を用いてこのような断片を精製できる。好ましい態様において、例えば、ビオチンプライマーなどのタグ修飾プラーマーが用いられる。
関心対象座を含有するDNA断片を精製することによって、増幅反応の特異性を改善することができる。これにより、鋳型DNAの非特異的領域の増幅が最少化されることになる。また、DNA断片を精製することによって、特異性の改善された複合PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)または関心対象の複数座の増幅が可能になる。
配列決定される関心対象座は、配列のみに基づいて選択できる。ヒトでは、142万を超える単一ヌクレオチド多形(SNP)が記載されている(ネーチャー(Nature)409:p.928−933(2001))。平均して、1.9kbのヒトゲノムにつき1つのSNPがある。しかし、本発明によって配列決定する関心対象座の選択の際、関心対象座の間の距離は考慮する必要はない。ゲノムDNA上の1つより多い関心対象座を分析する場合、選択された関心対象座は同一の染色体上にあることもあり、また異なった染色体上にあることもある。
好ましい態様において、選択された関心対象座は、染色体上の特定の領域に密集して存在し得る。DNAのいずれの開裂または断片化によっても関心対象の複数座が結合したままであるように、関心対象座をあるDNA領域内に密集させることができる。例えば、得られたDNAが自然力によって5kbの断片に切断される場合、関心対象の複数座は5kbの領域内で選択できる。このことにより、断片内の関心対象座によって測定された各断片が実験単位として役立ち、複数の染色体上の関心対象座を比較する実験上のノイズの可能性を減らすことができる。
染色体上の関心対象座は、限定はしないが、10〜50、50〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜500、500〜750、750〜1000、1000〜1500、1500〜2000、2000〜2500、2500〜3000、3000〜3500、3500〜4000、4000〜4500、4500〜5000、5000〜10000塩基対および10000塩基対を超えて互いに隔たっていることがあり得る。
好ましい態様において、関心対象座が大きさによって分離できるように、増幅される配列の長さは、関心対象の各々の座によって異なっていることが好ましい。
実際、遺伝子配列全体をコピーするプライマーを利用する必要がないことは、本発明の利点の一つである。コピーされた関心対象座は、むしろ、遺伝子全体のうちのほんの小部分またはDNAの非コード領域の小部分であることが好ましい。遺伝子全体の塩基配列決定はコストを増加させ、結果を遅らせる可能性があるため不利である。所望の塩基または関心対象座のみの塩基配列決定は、時間的に最も速く、また最少のコストで関心対象座の最大数の配列決定を可能にすることから、本法の全体的効率を最も高くする。
本発明の方法では、多数の配列を一緒に分析できるため、特に関心対象の多数の座の大スケールスクリーニングを受けることができる。
本発明の方法を用いて、任意の数の関心対象座を特に同時に分析し、処理することができる。同時に関心対象の1個の座または関心対象の複数座の配列を決定するために、試料(単数または複数)を分析することができる。関心対象座は1つの染色体上、または複数の染色体上に存在し得る。
あるいは、全体的な遺伝子スクリーニングが所望される場合、2、3、4、5、6、7、8、9、10〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜100、100〜250、500〜1,000、1,000〜2,000、2,000〜3,000、3,000〜5,000、5,000〜10,000、10,000〜50,000または50,000超の関心対象座を同時に分析することができる。遺伝子フィンガープリントを提供して個人の同定、またはSNP遺伝子型を決定するために、本発明の方法を用いる場合に、このような全体的遺伝子スクリーニングが望まれると考えらる。
コピーしようとする関心対象座は、コード配列内にあってもよいし、コード配列外にあってもよい。コピーしようとする関心対象座の1個以上が1つの遺伝子内にあることが好ましい。好ましい態様において、コピーされる鋳型DNAは、ゲノムのコード配列、イントロンまたはエクソン内にある関心対象の単数または複数の座である。非常に好ましい態様において、エクソンDNA配列がコピーされる。関心対象座は、突然変異が疾病の原因となるか、または疾病状態を生じ易くすることが知られている部位であり得る。関心対象座関心対象座は、単一ヌクレオチドの多型部位であり得る。あるいは、コピーしようとする関心対象座は、コード配列の外側、例えば、転写調節領域内、特にプロモーター、エンハンサーまたはリプレッサー配列内にあり得る。
関心対象座の配列決定法
限定はしないが、対立遺伝子特異的PCR、PCR、ゲル電気泳動、ELISA、質量分析、MALDI−TOF質量分析ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、蛍光検出、蛍光共鳴エネルギー移動(FREST)、蛍光局在化、DNA塩基配列決定、サンガージデオキシ塩基配列決定、DNA塩基配列決定ゲル、DNA自動塩基配列決定装置上での毛管電気泳動、マイクロチャネル電気泳動、マイクロアレー、サザンブロット、スロットブロット、ドットブロット、米国特許第6,251,639号明細書に記載されている単一プライマー線形DNA増幅、SNP−IT、GeneChip、HuSNP、ビーズアッセイ、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassExtend、またはMassCleave(商標)(hMC)法などの核酸配列についての情報を提供する任意の方法を用いることができる。
好ましい配列決定法は、本明細書にその全体が組み込まれている、2002年3月11日出願の米国特許出願第10/093,618号明細書に以前記載されている。
I.プライマー設計
鋳型DNAの増幅に用いられるプライマーを設計または選択するために、コンセンサス配列などの公表された配列を用いることができる。関心対象座の側面に位置するプライマー構築用に用いられる配列の選択は、関心対象座の配列の検査により、または直接それに対してなされる。最近公表されたヒトゲノムの配列は、関心対象の所望のヒト遺伝子座の側面に位置するプラーマーを設計するための有用なコンセンサス配列情報源を提供している。
関心対象座の「側面に位置する」とは、一方のプライマーの3’領域の少なくとも一部が鋳型DNAのアンチセンス鎖に相補的であり、関心対象座の部位より上流であり(フォワードプライマー)、他方のプライマーの3’領域の少なくとも一部が鋳型DNAのセンス鎖に相補的であり、関心対象座の下流にある(リバースプライマー)であるようなプライマー配列であることを意味する。「プライマー対」とは、フォワードプライマーとリバースプライマーの対を意味する。プライマー対の双方のプライマーとも、プライマーの伸長を可能にし、その伸長によって関心対象座の領域における鋳型DNAの増幅が生じるような仕方でアニールする。
当業界に周知の方法を用いて、限定はしないが、適切な配列のクローニングおよび直接的化学合成などの種々の方法により、プライマーを調製することができる(ナラングら(Narang et al.)、メソッズ・オブ・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)68:p.90(1979);ブラウンら(Brown et al.)、メソッズ・オブ・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)68:p.109(1979))。また、プライマーは、オペロン・テクノロジーズ(Operon Technologies)、アマーシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)、シグマ(Sigma),およびライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)などの市販供給元から得ることができる。プライマーは、一定の融点を有し得る。プライマーの長さは5’端または3’端において、伸長または短縮させて、所望の融点を有するプライマーを生成することができる。好ましい態様において、プライマー対のうちの一方のプライマーは他のプライマーよりも長い。好ましい態様において、プライマー対のうちで、プライマーの3’アニーリング長が異なる。また、プライマー対の配列と長さが所望の融解温度を生じさせるように、各プライマー対のアニーリング箇所を設計することができる。25塩基対より小さなプライマーの融解温度を決定するための最も簡便な等式は、ワラス則(Td=2(A+T)+4(G+C))である。限定はしないが、アレイ・デザイナー・ソフトウェア(アレイット社(Arrayit Inc.))、ゲノム分析用のオリゴヌクレオチドプローブ・シーケンスデザイン・ソフトウェア(オリンパス・オプティカル社(Olympus Optical Co.))、ネットプライマー(NetPrimer)、およびヒタチ・ソフトウェア・エンジニアリング(Hitachi Software Engineering)からのDNAシス(DNAsis)などのコンピュータプログラムがプライマーの設計に使用できる。各プライマーのTM(融解温度またはアニーリング温度)は、ネット・プライマー(2002年4月17日におけるインターネットアドレス:http://premierbiosoft.com/netprimer/netprlaunch/netprlaunch.htmlのフリーウェブに基づくプログラム)などのソフトウェアプログラムを用いて計算される。
他の態様において、プライマーのアニーリング温度は、限定はしないが、サイクル1、2、3、4、5、サイクル6〜10、サイクル10〜15、サイクル15〜20、サイクル20〜25、サイクル25〜30、サイクル30〜35、または35〜40などの任意の増幅サイクル後に再計算し、増加させることができる。最初の増幅サイクル後、プライマーの5’ハーフが、関心対象の各座からの産物内へ組み込まれ、したがって、TMは各プライマーの5’ハーフの配列および3’ハーフの配列の双方に基づいて再計算できる。
例えば、図1Bにおいて、増幅の第1サイクルは、第2のプライマーの、鋳型DNAにアニールする13塩基の3’領域(領域「c」)の略融解温度で実施される。第1サイクルの後、アニーリング温度は、第1のプライマーの鋳型DNAにアニールする領域「b」として表されている3’領域の略融解温度であるTM2へと上げることができる。第2のプライマーは元の鋳型DNAに結合することはできない。なぜならば、第2のプライマーは、元の鋳型DNAの13塩基にのみアニールするが、TM2は第1のプライマーの3’アニーリング領域である略20塩基の融解温度であるからである(図1C)。しかし、第1のプライマーは、前記反応の第1サイクルにおいてコピーされたDNAに結合することができる。第3のサイクルにおいて、アニーリング温度は、領域「c」および「d」として表されている第2のプライマー全体の配列の略融解温度であるTM3に上げられる。PCRの第2サイクルから生成した鋳型DNAは、領域「c」および「d」の双方を含有し、したがって第2のプライマーはTM3においてアニールし、伸長することができる(図1D)。残りのサイクルはTM3で実施される。第1のプライマー全体の配列(a+b’)は、PCRの第3サイクルから鋳型にアニールし、伸長することができる(図1E)。アニーリング温度を上げることによって、非特異的結合が減り、前記反応の特異性が高まるが、これは、約3×10塩基長であるヒトゲノムDNAからの関心対象座を増幅する場合、特に有用である。
本明細書に用いられている用語のアニーリング温度に関する「約」は、述べられた温度の摂氏10度以内の温度を包含するために用いられる。
一態様において、関心対象の各座に対して1つのプライマー対が用いられる。しかし、関心対象の各座に対して複数のプライマー対を用いることができる。
一態様において、プライマー対の一方または双方のプライマーが1種以上の制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)に対する5’領域内配列を含有するように、プライマーが設計される。
制限酵素がDNAを消化する位置に関して本明細書に用いられている「センス」鎖とは、制限酵素が切断する方向の5’から3’へ読む鎖である。例えば、BsmFIは、次の配列を認識する。
Figure 2006521086
センス鎖は、制限酵素が切断する方向の5’から3’へ読む際に配列「GGGAC」を含有する鎖である。
制限酵素がDNAを消化する位置に関して本明細書に用いられている「アンチセンス」鎖とは、制限酵素が切断する方向の3’から5’へ読む鎖である。
他の態様において、プライマー対の一方のプライマーは、認識部位から「n」個のヌクレオチドを切断する制限酵素に対する制限酵素認識部位を含有し、3’窪み端および関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成するように設計される(本明細書では「第2のプライマー」と称す)。「N」は、認識部位から制限酵素によって切断される部位までの距離である。言い換えれば、プライマー対のうちの第2のプライマーは、DNAを認識部位では切断せず、認識部位からヌクレオチド「n」個離れて切断する制限酵素に対する認識部位を含有する。例えば、認識配列が制限酵素BceAIに対するものである場合、前記酵素はセンス鎖上の認識部位からヌクレオチド10個を切断し、アンチセンス鎖上の認識部位からヌクレオチド12個を切断する。
プライマーの3’領域および好ましくは3’ハーフは、関心対象座の側面に位置する配列にアニールするように設計される(図1A)。このプライマー上の制限酵素認識部位を認識する制限酵素による消化によって関心対象座を含有する5’オーバーハングが精製されるという条件で、第2のプライマーは、関心対象からいずれかの距離でアニールできる。5’オーバーハングは限定はしないが、1、2、3、4、5、6、7、8個の塩基、および8個を超える塩基など、任意の大きさであり得る。
好ましい一態様において、関心対象座の近くにアニールするプライマーの3’端(第2のプライマー)は、関心対象座からまたは関心対象座から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個の塩基、または14個を超える塩基をアニールすることができる。
好ましい一態様において、第2のプライマーは、プライマー対の他方のプライマー(他方のプライマーは本明細書では「第1のプライマー」と称される)よりも関心対象座のより近くにアニールするよう設計される。第2のプライマーは、フォワードプライマーまたはリバースプライマーであり得、第1のプライマーは、それぞれリバースプライマーまたはフォワードプライマーであり得る。第1のプライマーと第2のプライマーのどちらをフォワードプライマーまたはリバースプライマーにすべきかはどちらのデザインが、より良好な結果を提供するかによって決めることができる。
例えば、関心対象座の近くにアニールするプライマーは、センス鎖上の認識部位から10個のヌクレオチドを切断し、アンチセンス鎖上の認識部位から14個のヌクレオチドを切断する制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有できる。この場合、制限酵素認識部位が関心対象座から13塩基、12塩基、10塩基または11塩基であるように、プライマーを設計できる。認識部位が関心対象座から13塩基である場合、BsmFIによる消化で5’オーバーハング(RXXX)が生成され、関心対象座(R)はこのオーバーハングにおける1番目のヌクレオチド(3’から5’へ読んで)、Xは任意のヌクレオチドである。認識部位が関心対象座から12塩基である場合、BsmFIによる消化で5’オーバーハング(XRXX)が生成され、関心対象座(R)はこのオーバーハングにおける2番目のヌクレオチド(3’から5’へ読んで)である。認識部位が関心対象座から11塩基である場合、BsmFIによる消化で5’オーバーハング(XXRX)が生成され、関心対象座(R)はこのオーバーハングにおける3番目のヌクレオチド(3’から5’へ読んで)である。制限酵素による消化が関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成するように制限酵素認識部位から関心対象座の間の距離を設計する。認識部位から関心対象座の間の効果的距離は、制限酵素の選択によって変わる。
他の態様において、他方のプライマーに比して関心対象座のより近くにアニールするプライマーは、関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成する制限酵素が関心対象座部位におけるヌクレオチドとは独立に、切断部位において同一の配列を見るように設計できる。例えば、関心対象座近くにアニールするプライマーを、制限酵素BsmFIに対する認識部位(5’GGGAC3’)が関心対象座から13塩基であるように設計される場合、制限酵素は、アンチセンス鎖を関心対象座から1塩基で切断する。関心対象座におけるヌクレオチドは切断部位に隣接しており、DNA分子によって変わり得る。切断部位に隣接するヌクレオチドが一定であることが望まれる場合、BsmFIに対する制限酵素認識部位が関心対象座部位から12塩基離れているように、プライマーを設計する。BsmFIによる消化によって、関心対象座の部位がオーバーハングの2番目の位置(3’から5’へと読んで)にあり、もはや切断部位には隣接していない5’オーバーハングが生成する。制限酵素認識部位が関心対象座の部位から12塩基にあるようにプライマーを設計することにより、切断部位に隣接するヌクレオチドを、関心対象座におけるヌクレオチドとは独立して同一であるようにできる。また、制限酵素認識部位が関心対象座の部位から11塩基または10塩基にあるように設計されたプライマーにより、切断部位に隣接するヌクレオチドを、関心対象座におけるヌクレオチドとは独立して同一であるようにできる。他の制限酵素に関しても、切断部位に隣接するヌクレオチドを、関心対象座におけるヌクレオチドとは独立して同一であるように、プライマー設計の同様な方法を用いることができる。
第1のプライマー(フォワードあるいはリバースのいずれか)の3’端は、関心対象座から選択された距離でアニールするように設計できる。例えば、この距離は、好ましくは関心対象座から1〜10、10〜25、25〜50、50〜75、75〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、550〜600、600〜650、650〜700、700〜750、750〜800、800〜850、850〜900、900〜950、950〜1000の間および1000塩基を上回る。各々の連続的な上流プライマーが、各々の下流のプライマーからだんだん遠くに離れているいくように、第1のプライマーのアニーリング部位を選択する。
例えば、関心対象座1で第1のプライマーおよび第2のプライマーの3’端がZ塩基離れている場合、関心対象座2で上流および下流プライマーの3’端はZ+K塩基離れ、ここでK=1、2、3、4、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000塩基または1000塩基を上回る(図2)。第1のプライマーを第2のプライマーからだんだん遠くに離す目的は、関心対象座全てのPCR産物の大きさが異なるようにして、例えば塩基配列決定ゲル上で分離できるようにすることである。
一態様において、第1のプライマーまたは第2のプライマーの5’領域は、任意のタイプの制限酵素に対する認識部位を有することができる。好ましい一態様において、第1および/または第2のプライマーの5’領域は、関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成するために用いられる制限酵素認識部位とは異なる制限酵素認識部位を少なくとも1つ有する。
一態様において、第1のプライマーの5’領域は、任意のタイプの制限酵素に対する認識部位を有することができる。好ましい一態様において、第1のプライマーは、第2のプライマーにおける制限酵素認識部位とは異なる制限酵素認識部位を少なくとも1つ有する。他の好ましい態様において、第1のプライマーは、第2のプライマーよりも関心対象座からより遠くにアニールする。
好ましい態様において、第2のプライマーは、限定はしないが、2塩基の5’オーバーハングと4塩基の5’オーバーハングを各々生成するBceAIおよびBsmFIなどのIIS型制限酵素に対する制限酵素認識部位を含有する。IIS型制限酵素は、非対称塩基配列を認識する(オーソドックスなII型酵素のようにパリンドロームではなく)ので好ましい。IIS型制限酵素は、認識部位の外側、典型的には、認識部位の外側、20塩基対までにある特定の箇所のDNAを開裂する。これらの特性により、IIS型制限酵素およびその認識部位は、本発明の方法において特に有用である。本法に用いられるIIS型制限酵素は、5’オーバーハングおよび3’窪みを残す。
多種多様なIIS型制限酵素が知られており、このような酵素は、細菌、ファージ、古細菌および真核藻類ウィルスから単離されており、商品として入手できる(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マジソン所在;ニューイングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州ビバリー所在;ダブリュー・スジバルスキーら(Szybalski W et al.)、ジーン(Gene)100:p.13−26、1991年)。本発明の方法に有用であると考えられるIIS型制限酵素の例としては、限定はしないが、表Iに載せたような酵素が挙げられる。
(表I)
Figure 2006521086
一態様において、プライマー対は各々のプライマーの5’領域に、1つの制限酵素に独特の制限酵素認識部位を提供する配列を有する。
他の態様において、プライマー対は各々のプライマーの5’領域に、1つ以上の制限酵素、特に1つ以上のIIS型制限酵素によって認識される制限部位を提供する配列を有する。例えば、ある一定のコンセンサス配列は1つ以上の酵素によって認識され得る。例えば、BsgI、Eco571およびBpmIは全てコンセンサス(G/C)TGnAGを認識し、アンチセンス鎖上から16byを開裂し、センス鎖から14byを開裂する。このようなコンセンサス配列を提供するプラーマーは、制限酵素BsgI、Eco571およびBpmIのいずれかによって認識され得る部位を有する産物を生じる。
認識部位から離れてDNAを切断し、3’窪み端および5’オーバーハングを生成する他の制限酵素としては、III型制限酵素が挙げられる。
例えば、制限酵素EcoP15Iは、配列、5’CAGCAG3’を認識し、センス鎖下流の25塩基を開裂し、アンチセンス鎖の27塩基を開裂する。さらに、新規の制限酵素が続いて発見されており、本発明に利用するために容易に採用し得ることは、通常の当業者に理解されるであろう。
他の態様において、第2のプライマーは、ある制限酵素に対する認識配列の一部を含有し得るが、ここで制限酵素による消化によって、関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成するように鋳型DNA増幅の際に制限酵素に対する認識部位全体が生成される。例えば、BsmFIに対する認識部位は5’GGGACN10 3’である。鋳型DNAにアニールする第2のプライマーの3’領域は鋳型DNAに相補的である必要はないヌクレオチド「GGG」で終止できる。3’アニーリング領域が、約10〜20塩基である場合、たとえ最後の3個の塩基がアニールしなくてもプライマーは伸長し、BsmFI部位を生成する。
Figure 2006521086
アデノシンとシトシンがプライマーに取り込まれて、BsmFI、5’GGGACN10 3’に対する認識部位を形成するように鋳型DNAの次の2個の塩基がチミジンとグアニンである鋳型DNAにアニールするように第2のプライマーを設計できる。BsmFIによる消化によって、関心対象座を含有する5’オーバーハングが生成するような仕方でアニールするように第2のプライマーを設計できる。
他の態様において、第2のプライマーは、制限酵素に対する認識部位の全体または認識部位の一部を含有できるが、制限酵素による消化によって認識部位が切断され、関心対象座を含有する5’オーバーハングが生成するように、鋳型DNAのプライマー依存複製時に認識部位全体が生成される。例えば、制限酵素BsaJIは、次の認識部位:5’CCNGG3’と結合する。鋳型DNAにアニールする第2のプライマーの3’領域が「CC」で終止するように第2のプライマーを設計することができ、関心対象のSNPは「N」として表され、SNPの下流の鋳型配列は「NGG」である。
Figure 2006521086
BsaJIによる消化後、以下の配列の5’オーバーハングが生成すると考えられる。
5’C 3’
3’GGNCC 5’
関心対象座にヌクレオチドのグアニンが報告されていない場合、3’窪み端は、オーバーハング内の1番目のヌクレオチドに相補的である未標識シトシンによってはめ込むことができる。過剰のシトシンを除去した後、関心対象座を表す次のヌクレオチド、Nをはめ込むために標識ddNTP類を用いることができる。限定はしないが、
Figure 2006521086
などの他の制限酵素を用いることができる。
鋳型DNAにアニールする第2のプライマーの3’領域は、鋳型DNAに対し100%相補的である必要はない。例えば、第2のプライマーの3’端の最後の1、2、または3個のヌクレオチドは鋳型DNAにミスマッチであってもよい。鋳型DNAにアニールするプライマーの領域は、そのプライマーを標的化し、プライマーの伸長を可能にする。たとえ最後の2個のヌクレオチドが鋳型DNAに相補的でなくても、そのプライマーは伸長し、制限酵素認識部位を生成する。例えば、第2のプライマーの最後の2個のヌクレオチドは「CC」である。第2のプライマーは、鋳型DNAにアニールし、たとえ「CC」が鋳型DNA上のヌクレオチドNaおよびNbに相補的でなくても伸長できる。
Figure 2006521086
BsaJIによる消化後、以下の配列の5’オーバーリングが生成すると考えられる。
Figure 2006521086
関心対象座にヌクレオチドのグアニンが報告されていない場合、5’オーバーハングは、未標識シトシンによってはめ込むことができる。過剰のシトシンを濯いで除去し、標識ddNTP類によってはめ込むことができる。取り込まれた1番目のヌクレオチドが関心対象座に相当する。関心対象座にグアニンが報告されている場合、関心対象座を未標識シトシンによってはめ込むことができ、関心対象座の下流のヌクレオチド1個を検出することができる。例えば、Nはアデニンと推定される。関心対象座がグアニンである場合、未標識シトシンをはめ込み反応に用いることができる。シトシンを除去した後、標識チミジンによるはめ込み反応を用いることができる。関心対象座がグアニンである場合だけ、標識チミジンが取り込まれることになる。このように、関心対象座の配列は、関心対象座の下流のヌクレオチドを検出することによって決定することができる。
他の態様において、第1のプライマーおよび第2のプライマーが制限酵素に対する認識部位の一部を含有するが、制限酵素による消化によって、関心対象座のを含有する5’オーバーハングが生成するように、鋳型DNAの増幅時に制限酵素に対する認識部位全体が生成される。限定はしないが、制限酵素
Figure 2006521086
などの任意の制限酵素に対する、1個または1個を超える可変ヌクレオチドを含有する認識部位を生成させることができる。
好ましい一態様において、第1のプライマーおよび第2のプライマーの3’領域は、制限酵素に対する部分的配列を含有するが、ここで部分的配列は鋳型DNAに対して1、2、3、4個または4個を超えるミスマッチを含有し、これらのミスマッチが制限酵素認識部位を作り出す。3’端に忍容され得るミスマッチの数は、プライマーの長さ次第である。例えば、関心対象座がNによって表されるならば、第1のプライマーは下記の領域「a」として表される鋳型DNAに相補的であるように設計することができる。第1のプライマーの3’領域は、鋳型DNAに相補的ではない「CC]で終止する。第2のプライマーは、下記の領域「b’」として表される鋳型DNAに相補的であるように設計される。第2のプライマーの3’領域は、鋳型DNAに相補的ではない「CC」で終止する。
Figure 2006521086
1回の増幅後、以下の産物が生成すると考えられる。
Figure 2006521086
2回めのサイクルで、プライマーは、PCRの第1サイクルから生成した鋳型にアニールできる。
Figure 2006521086
PCRの第2サイクル後、以下の産物が生成されると考えられる。
Figure 2006521086
BsaJIに対する制限酵素認識部位が生成し、BsaJIによる消化後、関心対象座を含有する5’オーバーハングが作り出される。関心対象座は以下に詳述されるとおり検出することができる。
他の態様において、プライマー対は、各々のプライマーの5’領域に、2つ以上の制限部位を提供する配列を有する。
最も好ましい態様において、いずれかの所望の配列の開裂に、異なった制限酵素が必要とされるように、プライマー対は5’領域、特に5’端に異なった制限酵素認識部位を有する。例えば、関心対象座「A]に対する第1のプライマーは、任意の型の制限酵素であり得る制限酵素「X]によって認識される配列を含有し、関心対象座により近くアニールする、関心対象座「A]に関する第2のプライマーは、「n」個のヌクレオチドを切断し、5’オーバーハングおよび3’窪み端を残すIIS型制限酵素である制限酵素「Y]に対する配列を含有する。5’オーバーハングは関心対象座を含有する。増幅したDNAをストレプトアビジン被覆ウェルに結合した後、酵素「Y]によって消化し、濯いでから標識ヌクレオチドによってはめ込み、濯いでから関心対象座を含有するDNA断片を固体マトリックスから遊離させる制限酵素「X]によって消化する。関心対象座は、関心対象座、例えば、SNP部位に「はめ込まれた」標識ヌクレオチドを検出することによって分析することができる。
他の態様において、本発明によって増幅される異なった関心対象座に関する第2のプライマーが同じ制限酵素に対する5’領域に認識配列を含有し、同様に第1のプライマーも全て、第2のプライマーを認識する酵素とは異なった酵素である制限酵素の同じ制限酵素認識部位を含有する。
他の態様において、本発明によって増幅される複数の関心対象座に関する第2のプライマーが5’領域に異なった制限酵素に対する制限酵素認識配列を含有する。
他の態様において、本発明によって増幅される複数の関心対象座に関する第1のプライマーが5’領域に異なった制限酵素に対する制限酵素認識配列を含有する。複数の制限酵素配列によって、プールされた関心対象座が固体マトリックスから遊離する順序に影響を与える機会が提供される。例えば、50の関心対象座が増幅される場合、第1のプライーは、精製を助ける5’最末端におけるタグおよび制限酵素認識部位を有することができ、第2のプライマーはIIS型制限酵素に対する認識部位を含有できる。例えば、第1のプライマーの幾つかがEcoRIに対する制限酵素認識部位を有し、他の第1のプライマーがPstIに対する認識部位を有し、さらに他の第1のプライマーがBamHIに対する認識部位を有することができる。増幅後、第1のプライマー上のタグの助けで、関心対象座を固定支持体に結合できる。一度に1個の制限酵素の制限消化を実施することによって増幅された関心対象座を連続的に遊離することができる。第1の消化をEcoRIによって実施すると、EcoRIに対する認識部位を含有する第1のプライマーと共に増幅された関心対象座が遊離し、回収されるが、他の関心対象座は固体支持体に結合したままである。一度に1個の制限酵素で消化することにより、増幅関心対象座を選択的に固体支持体を遊離させることができる。第1のプライマーにおいて種々の制限酵素認識部位を使用することにより、1本の反応管内でより多数の関心対象座を増幅することができる。
好ましい態様において、各プライマーの制限酵素消化部位の任意の5’領域を、断片の操作、加工、同定および/または精製を提供する官能基によって修飾することができる。このような官能基またはタグの例としては、限定はしないが、ビオチン、ビオチン誘導体、炭水化物、ハプテン類、色素、放射性分子、抗体、および抗体断片、ペプチド類および免疫遺伝分子などが挙げられる。
他の態様において、鋳型DNAは1回の複製を超えて増幅されることなく、1回複製することができる。関心対象座の多数のコピーが既に試料中に存在し、それ以上のコピーが必要とされない場合など、分析に利用できるDNAが多量に存在する場合に、これは有用である。この態様では、配列が折り返されて、相補的様式でそれ自身の内部の配列に配列にアニールするように、プライマーは、5’領域に「ヘアピン」構造を含むように設計されることが好ましい。鋳型DNAが1回だけ複製される場合、認識部位を含んでなるDNA配列は「ヘアピン」構造がなければ一本鎖になるであろう。しかし、ヘアピン構造の存在下で、その領域は効果的に二本鎖となり、制限酵素による活性に対し、二本鎖基質を提供する。
反応条件が適合する限り、DNAの関心対象座分析用プライマー対は全て、本発明の方法に利用するため、共に混合することができる。好ましい一態様において、全プライマー対は、1つの反応器内に鋳型DNAと共に混合する。このような反応容器は、例えば、反応管、またはマイクロ滴定プレートのウェルであり得る。
あるいは、ヌクレオチドに関する競合を避けるために、プライマー二量体およびプライマーのアニーリング濃度に伴う困難を最少化するため、各関心対象座または関心対象座の小群を別々の反応管またはウェル内で増幅でき、所望の場合、その産物を後でプールできる。例えば、別々の反応物を1個の反応容器内へプールしてから、関心対象座またはSNP部位を含有する5’オーバーハングおよび3’窪み端を生成する制限酵素によって消化することができる。各プライマー対のプライマーは、等モル量で提供されることが好ましい。また、種々のプライマー対の各々が、使用される他のプライマー対に対して等モル量で提供されることが特に好ましい。
他の態様において、プライマーの各々の関心対象座を効率的に増幅できるプライマー対の組合わせを用いることができる(例えば、図2を参照)。本発明の方法における使用前に、このような組合せを決定できる。互いに効率的に作用し合うプライマー対を選択するために、複数ウェルプレートおよびPCR装置が使用できる。例えば、各プライマー対の最適アニーリング温度を選択するために、エッペンドルフ・マスターサイクラー(Eppendorf Mastercycler(登録商標))グラジエントPCR機器などのグラジエントPCR機器を使用できる。同様の特性を有するプライマー対を1つの反応管内で一緒に使用できる。
他の態様において、同一のプライマー対を用いて複数の鋳型DNA試料からの単一の関心対象座を、その関心対象座に最適のPCR条件で増幅するために、限定はしないが、96ウェル以上のプレートを含む複数の試料容器を用いることができる。あるいは、各関心対象座の増幅のために、別の複数の試料容器を用い、各鋳型DNA試料の産物を後でプールすることができる。例えば、マイクロ滴定プレート1において、96種の異なったDNA試料からの遺伝子Aを増幅し、マイクロ滴定プレート2において、96種の異なったDNA試料からの遺伝子Bを増幅することができ、次に増幅産物をプールすることができる。
複数の関心対象座増幅結果は、各関心対象座の配列を有する代表的PCR産物を含有する調製物である。例えば、鋳型DNAとして1個体だけのDNAを用い、その鋳型DNAから数百の疾病関連の関心対象座を増幅した場合、増幅DNAは、各関心対象座からの小型のPCR産物の混合物になると考えられる。その場合、このような調製物をさらに分析して、各関心対象座における配列または少数の関心対象座における配列を決定できると考えられる。また、前記調製物を、DNAを保存する様式で貯蔵でき、後の時点で分析することができると考えられる。増幅DNAに含まれた情報は、限定はしないが、蛍光検出、塩基配列決定、ゲル電気泳動および質量分析などの任意の好適な方法により明らかにすることができる(下記の「取り込みヌクレオチドの検出」の節を参照)。
II.関心対象座の増幅
限定はしないが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、3SR(自立配列反応)、LCR(リガーゼ連鎖反応)、PACE−PCR(cDNA端の急速増幅)、PLCR(ポリメラーゼ連鎖反応とリガーゼ連鎖反応との組合わせ)、Q−ベータファージ増幅(シャーら(Shah et al.)、ジャーナル・オブ・メディカル・マイクロジー(J.Medical Micro.)33:p.1435−41(1995))、SDA(鎖置換増幅)、SOE−PCR(スプライス重複伸長PCR)などの当業界に知られた任意の好適な方法を用いて、鋳型DNAを増幅できる。これらの方法は、本出願に明白に記載されている遊離可能なプライマーに媒介されたサイクル増幅反応の変法を設計するために使用できる。最も好ましい態様において、鋳型DNAは、PCR(PCR:実用的アプローチ(A Practical Approach)、インニスら(Innis,et al.)、IRLプレス(IRL Press)(1991);およびPCRテクノロジー:DNA増幅の原理と応用(PCR Technology:Principals and Applications of DNA Amplification)、エイチ・エイ・エーリッヒ(H.A.Erlich)、ストックトン・プレス(Stockton Press)、(1989))を用いて増幅される。PCRはまた、米国特許第4,683,195号明細書;米国特許第4,683,202号明細書;米国特許第4,800,159号明細書;米国特許第4,965,188号明細書;米国特許第4,889,818号明細書;米国特許第5,075,216号明細書;米国特許第5,079,352号明細書;米国特許第5,104,792号明細書;米国特許第5,023,171号明細書;米国特許第5,091,310号明細書;および米国特許第5,066,584号明細書、を含む多数の米国特許に記載されている。
典型的なPCR反応の構成要素としては、限定はしないが、鋳型DNA、プライマー、反応緩衝剤(ポリメラーゼの選択に依る)、dNTP類(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)およびDNAポリメラーゼが挙げられる。好適なPCRプライマーは、上記に検討したとおり設計され、調製できる(上記の「プライマー設計」の節を参照)。簡略に述べると、反応液を95℃に2分間加熱して鋳型DNAの鎖を分離し、この反応液を適切な温度(設計されたプライマーのアニーリング温度を計算することにより決定)まで冷却して、プライマーを鋳型DNAにアニールさせ、72℃に2分間加熱して伸長させる。
好ましい一態様において、増幅の最初の3サイクルの各サイクルにおいてアニーリング温度を増加させて、非特異的な増幅を減らす。下記の実施例1も参照されたい。PCR第1サイクルのTM1は、第2のプライマーの鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である。アニーリング温度は、サイクル2〜10において、好ましくないサイクル2において、第1のプライマーの鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度であるTM2に増加できる。サイクル2でアニーリング温度を増加させる場合、そのアニーリング温度は、次のアニーリング温度増加までは略同じ温度に留まる。最後に、アニーリング温度をTM2に増加させたサイクルに引き続くいずれかのサイクルで、好ましくはサイクル3で、第2のプライマー全体の略融解温度であるTM3へとアニーリング温度を増加させる。第3サイクル後、残りのサイクルのアニーリング温度は略TM3であり得るか、またはさらに増加し得る。この例では、アニーリング温度はサイクル2およびサイクル3において増加させている。しかし、アニーリング温度は、サイクル1における低アニーリング温度からサイクル2の高アニーリング温度へと、さらなる温度の増加なしに増加できるか、またはアニーリング温度は、任意の数の増加ステップで、低アニーリング温度から高アニーリング温度へと次第に変化させることができる。例えば、アニーリング温度は、サイクル2、3、4、5、6などにおいて変化させることができる。
アニーリング後、各サイクルの温度を「伸長」温度まで増加させてプライマーを「伸長」させ、伸長後、各サイクルの温度を変性温度へと増加させる。大きさが500塩基対未満のPCR産物では、各サイクルにおける伸長ステップを除いて、変性ステップとアニーリングステップだけを有してもよい。典型的なPCR反応は上記のように、変性、アニーリング、および伸長の25〜45サイクルからなる。しかし、前述したとおり、本発明の実施には、1サイクルの増幅(1コピー)で十分なこともある。
他の態様において、鋳型DNAを1〜5、5〜10、10〜15、15〜20サイクルまたは20サイクルより多く増幅するために、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含んでなる複数のプライマーセットを用いることができ、次に増幅産物を、1つのプライマーセットまたは複数のプライマーセットのサブセットを用いた反応においてさらに増幅する。好ましい態様において、プライマー二量体の形成を最少化するために低濃度の各プライマーセットを用いる。低濃度の出発DNAは、複数のプライマーセットを用いて増幅できる。限定はしないが、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90.90〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜1000対、および1000対を超える任意の数のプライマーセットを第1の増幅反応に用いることができる。他の態様において、増幅産物は、1対のプライマーセットを用いて、第2の反応において、増幅される。他の態様において、増幅産物は、限定はしないが、2〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90.90〜100、100〜150、150〜200、200〜250対、および250対を超える複数のプライマー対のサブセットを用いてさらに増幅させる。
最少量の鋳型DNAが検出できる座数を制限しないように、複数のプライマーセットが関心対象座を増幅する。例えば、鋳型DNAが1個の細胞から単離されるか、、あたは鋳型DNAが母体の鋳型DNAおよび胎児の鋳型DNAの双方を含んでなる妊娠女性から得られる場合、関心対象座を増幅するための第1の増幅反応において、低濃度の各プライマーセットを用いることができる。低濃度のプライマーによって、プライマー二量体の形成が減少し、プライマーが鋳型DNAにアニールしてポリメラーゼにより伸長させる可能性が増大する。複数のプライマーセットを用いて実施されるサイクルの最適回数は、プライマーの濃度によって決定される。第1の増幅反応後に関心対象座をさらに増幅するために、さらにプライマーを加えることができる。各プライマーセットの追加量を加えることができ、1回の反応でさらに増幅される。あるいは、増幅産物は、各反応において1つのプライマーセット;または複数のプライマーセットのサブセットを用いてさらに増幅できる。例えば、第1の増幅反応において、150個のプライマーセットを用いた場合、この第1の反応からの産物をさらに増幅するために、10個のプライマーセットのサブセットを用いることができる。
限定はしないが、大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T7DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、ベントDNAポリメラーゼ、バクテリオファージ29、REDTaq(商標)ゲノムDNAポリメラーゼ、またはシーケナーゼなどのプライマー伸長を触媒する任意のDNAポリメラーゼを用いることができる。熱安定ポリメラーゼを用いることが好ましい。また、ポリメラーゼ添加前に、反応液を95℃に2分間加熱する「ホットスタート」PCRを実施することができるか、またはサイクル1の加熱ステップまでポリメラーゼを不活性に保つことができる。「ホットスタート」PCRは、非特異的増幅を最少化するために使用できる。DNAを増幅するために、限定はしないが、2、5、10、15、20、25、30、35、40、または45サイクルなど、任意のPCRサイクル数を用いることができる。最も好ましい態様において、実施されるPCRサイクル数は、各関心対象座の等モル量が生成されるような回数である。
III.増幅DNAの精製
本発明の実施にとって、増幅DNAの精製は、必ずしも必要ではない。しかしながら、一態様において、精製が好ましい場合は、プライマー(第1または第2のプライマー)の5’端を、PCR産物の精製を容易にするタグによって修飾できる。好ましい態様においてPCR産物の精製を容易にするタグによって第1のプライマーを修飾する。修飾は、全プライマーに対して同じであることが好ましいが、PCR産物を異なった群に分けることが望まれる場合は、異なった修飾を用いることができる。
前記タグは、限定されないが、ラジオアイソトープ、蛍光レポーター分子、化学的ルミネセンスレポーター分子、抗体、抗体断片、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、フォトビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニン、アビジン、酵素、アクリジニウム、糖、酵素、アポ酵素、ホモポリマーのオリゴヌクレオチド、ホルモン、強磁性部分、常磁性部分、反応性部分、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分、およびそれらの組合わせを含む化学的部分であり得る。
一例として、プライマーの5’端をビオチン化できる(ケンドパルら(Kendpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic acids Res.)18:p.1789−1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)10:30〜34(1991);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic acids Res.)18:p.6163−6164(1990))。ビオチンは、コピーされたDNAを、ゲノムDNAまたは関心対象ではない任意の他のDNA分子から精製するために使用できる親和性タグを提供する。限定はしないが、ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)によるストレプタウェル(Streptawell)プレート、透過プレート、ハイ・バインド(High−Bind)プレート(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズに挙げられているカタログ番号1645692)など、図1Fに示されるようなストレプトアビジン被覆マトリックスを用いてビオチン分子を精製できる。
各関心対象座のPCR産物を、ストレプトアビジン被覆プレートの別々のウェル内に入れる。あるいは、関心対象座のPCR産物をプールして、限定はしないが、ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)によるストレプタウェル(Streptawell)プレート、透過プレート、ハイ・バインド(High−Bind)プレート(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズに挙げられているカタログ番号1645692)など、ストレプトアビジン被覆マトリックス内に入れることができる。
また、増幅DNAは、例えば標準プロトコルを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動によって当業界に公知の非親和的方法を用いて鋳型DNAから分離することもできる。
IV.増幅DNAの消化
当業界に公知の標準的プロトコルを用いて第1のプライマーまたは第2のプライマー上に供給された配列を認識する制限酵素によって、増幅DNAを消化することができる(図6A〜6D)。制限酵素消化は、当業界に周知の標準的プロトコルを用いて実施される。使用される酵素は、第1のプライマーまたは第2のプライマーによって生成される制限認識部位に依って決まる。プライマー上に生成した制限認識部位についての詳細に関しては、上記の「プライマー設計」の節を参照されたい。
IIS型制限酵素は、認識部位の外側の略10〜20塩基対を切断する点で極めて有用である。用いられるIIS型制限酵素は、限定はしないが、BceAIおよびBsmFIなどの5’オーバーハングおよび3’窪み端を生成するものであることが好ましい(例えば、表I参照)。最も好ましい態様において、第2のプライマー(フォワードまたはリバースのいずれか)がBsmFIまたはBceAIに対する制限酵素認識配列を含有する。IIS型制限酵素、BsmFIは核酸配列GGGACを認識し、アンチセンス鎖上の認識部位から14個のヌクレオチドを切断し、センス鎖上の認識部位から10個のヌクレオチドを切断する。BsmFIによる消化によって4塩基の5’オーバーハングが生成される。
例えば、増幅後に制限酵素認識部位が関心対象座から13塩基であるように第2のプライマーが設計されると、消化後、関心対象座は、5’オーバーハングにおける第1の塩基(3’から5’へと読んで)であり、3’窪み端は関心対象座から1塩基である。3’窪み端は、関心対象座に相補的なヌクレオチドによって補充できる。オーバーハングの1個の塩基はジデオキシヌクレオチド類を用いて補充できる。しかし、オーバーハングの1、2、3または4個の塩基は、デオキシヌクレオチド類またはジデオキシヌクレオチド類とデオキシヌクレオチド類との混合物を用いてはめ込むことができる。
制限酵素BsmFIは、センス鎖上の認識部位からDNAの10個のヌクレオチドを切断し、アンチセンス鎖上の認識部位から14個のヌクレオチドを切断する。しかし、配列依存的な仕方で、制限酵素BsmFIは、センス鎖上の認識部位からDNAの11個のヌクレオチドを切断し、アンチセンス鎖上の認識部位から15個のヌクレオチドを切断する。したがって、消化後、DNA分子の2つの集団が存在する。すなわち、10/14で切断されたDNA分子および11/15で切断されたDNA分子である。増幅産物において、BsmFIに対する認識部位が関心対象座から13塩基であるならば、11/15の位置で切断されたDNA分子は、オーバーハングの2位(3’から5’へと読んで)に関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成することになる。DNA分子の3’窪み端は、標識ヌクレオチドによってはめ込まれる。例えば、標識ジデオキシヌクレオチドが用いられた場合、11/15で切断された分子の3’窪み端は、関心対象座より上流の塩基に相当する1個の塩基ではめ込まれるであろうし、10/14で切断された分子の3’窪み端は、関心対象座からの塩基に相当する1個の塩基で補充されるであろう。10/14の位置で切断されたDNA分子および11/15の位置で切断されたDNA分子は大きさによって分けることができ、取り込まれたヌクレオチドを検出できる。このことにより、関心対象座の前の双方のヌクレオチドの検出、関心対象座の検出が可能となり、また関心対象座の後の3塩基を検出できることもある。
あるいは、関心対象座より上流の塩基と関心対象座とが異なるヌクレオチドであるとすると、11/15で切断された分子の3’窪み端は、上流塩基に相補的なデオキシヌクレオチドではめ込みができる。残りのデオキシヌクレオチドを洗い流し、関心対象座部位は、標識デオキシヌクレオチド、未標識デオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、または未標識ジデオキシヌクレオチドによってはめ込みができる。はめ込み反応後、任意の好適な方法によってヌクレオチドを検出できる。したがって、dNTPによる第1のはめ込み反応後、10/14および11/15で切断された分子の3’窪み端は、関心対象座より上流である。ここで、3’窪み端は関心対象座に相当する1個の塩基、2個の塩基、3個の塩基または4個の塩基ではめ込みできる。
制限酵素BceAIは、核酸配列ACGGCを認識し、センス鎖上の認識部位から12個のヌクレオチドを切断し、アンチセンス鎖上の認識部位から14個のヌクレオチドを切断する。第2のプライマー上のBceAIに対する認識部位からの距離を関心対象座から13塩基となるように設計すると(図4A〜4Dを参照)、BceAIによる消化で関心対象座を含有する2塩基の5’オーバーハングおよび関心対象座より上流の3’窪み端を生成する。関心対象座は5’オーバーハング内の第1のヌクレオチド(3’から5’へと読んで)である。
BsmFIで見られるよりは、はるかに低い頻度ではあるが、制限酵素BceAIの別途切断も見られる。制限酵素BceAIは、センス鎖上の認識部位から13個のヌクレオチドを切断し、アンチセンス鎖上の認識部位から15個のヌクレオチドを切断できる。したがって、DNA分子の2つの集団が存在する。すなわち、12/14で切断されたDNA分子および13/15で切断されたDNA分子である。増幅産物において、制限酵素認識部位が関心対象座から13塩基であるならば、13/15の位置で切断されたDNA分子は、オーバーハングの2番目の位置(3’から5’へと読んで)に関心対象座を含有する5’オーバーハングを生成することになる。前記DNA分子の3’窪み端をはめ込むために、標識ジデオキシヌクレオチドが使用できる。13/15で切断されたDNA分子は、はめ込まれた関心対象座より上流の塩基を有することになり、12/14で切断されたDNA分子は、はめ込まれた関心対象座の部位を有することになる。13/15で切断されたDNA分子および12/14で切断されたDNA分子は、大きさによって分けることができ、取り込まれたヌクレオチドを検出できる。このように別途切断を、さらなる配列情報を得るために使用できる。
あるいは、5’オーバーハングの2塩基が異なっているとすれば、13/15で切断されたDNA分子の3’窪み端は、オーバーハング内の1番目の塩基に相補的なデオキシヌクレオチドではめ込みができ、過剰のデオキシヌクレオチドを洗い流す。はめ込み後、12/14で切断されたDNA分子の3’窪み端および13/15で切断されたDNA分子は、関心対象座より上流である。前記3’窪み端は、標識ジデオキシヌクレオチド類、未標識ジデオキシヌクレオチド類、標識デオキシヌクレオチド類、または未標識デオキシヌクレオチド類のいずれかではめ込みができる。
プライマーが、コピーされたある一定の関心対象座に対して、異なった制限部位を提供するならば、コピーDNAを同時に消化するために、必要な制限酵素を全て一緒に加えることができる。あるいは、例えば1回につき1種の制限酵素を用いて、異なった制限消化を連続して行うことができ、その制限酵素に対して特異的な産物だけが消化される。
限定はしないが、酵素濃度、温度、緩衝剤条件、および消化時間などの最適制限酵素消化条件は各制限酵素に対して最適化できる。例えば、IIS型制限酵素BsmFIに見られる別途切断は、所望の場合、限定はしないが、25〜16℃、16〜12℃、12〜8℃、8〜4℃、または4〜0℃などの低温での制限酵素消化の実施により減少させることができる。
V.標識ヌクレオチド類の取り込み
第2のプライマー上の配列を認識する制限酵素による消化によって、3’窪み端および関心対象座を含有する5’オーバーハングが生成する(図1G)。3’窪み端は、5’オーバーハングを鋳型として用い、未標識または標識ヌクレオチド類もしくは未標識および標識ヌクレオチド双方の組合わせの存在下ではめ込みができる。ヌクレオチドは、限定はしないが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、および検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分などの検出を可能にする任意のタイプの化学基または化学部分によって標識できる。ヌクレオチドは、1種または1種より多い化学基または化学部分によって標識できる。各ヌクレオチドを同一の化学基または化学部分によって標識できる。あるいは、各々異なったヌクレオチドを異なった化学基または化学部分によって標識できる。標識ヌクレオチドは、dNTP類、ddNTP類またはdNTP類、ddNTP類双方の混合物で標識できる。
限定はしないが、未標識デオキシヌクレオチド、標識デオキシヌクレオチド、未標識ジデオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、標識および未標識デオキシヌクレオチドとの混合物、標識および未標識ジデオキシヌクレオチドとの混合物、標識デオキシヌクレオチドと標識ジデオキシヌクレオチドとの混合物、標識デオキシヌクレオチドと未標識ジデオキシヌクレオチドとの混合物、未標識デオキシヌクレオチドと未標識ジデオキシヌクレオチドとの混合物、未標識デオキシヌクレオチドと標識ジデオキシヌクレオチドとの混合物、ジデオキシヌクレオチド類似体、デオキシヌクレオチド類似体、ジデオキシヌクレオチド類似体とデオキシヌクレオチド類似体との混合物、リン酸化ヌクレオシド類似体、2’−デオキシヌクレオチド−5’−三リン酸エステルおよび修飾2’−デオキシヌクレオチド−5’−三リン酸エステルなどの任意のヌクレオチドの組合わせをヌクレオチドの取り込みに使用できる。
例えば、図1Hに示されるように、ポリメラーゼの存在下、3’窪み端は、鋳型として5’オーバーハングを用いて蛍光ddNTPではめ込みできる。取り込まれたddNTPは、限定しないが、蛍光検出などの任意の好適な方法を用いて検出できる。
4個のヌクレオチド全てを異なった蛍光基で標識することができ、このことにより、1つの反応を4種の標識ヌクレオチドの存在下で実施することができる。あるいは、各関心対象座に関して、4つの異なった「はめ込み」反応が実施できる。すなわち、4つの反応の各々が異なった標識ヌクレオチドを含有することになる(例えば、ddATP、ddTTP、ddGTP、またはddCTP、ここでは標識ヌクレオチドを示す)。各ヌクレオチドは異なった化学基、または同一の化学基で標識できる。標識ヌクレオチドは、ジデオキシヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドであり得る。
他の態様において、限定しないが、フルオレセイン、ピレン、7−メトキシクマリン、カスケードブルーTM、アレキサフルー(Alexa Flur)350、アレキサフラー430、アレキサフラー488、アレキサフラー532、アレキサフラー546、アレキサフラー568、アレキサフラー594、アレキサフラー633、アレキサフラー647、アレキサフラー660、アレキサフラー680、AMCA−X、ジアルキルアミノクマリン、パシフィックブルー、マリナブルー、BODIPY493/503、BODIPY FI−X、DTAF、オレゴングリーン500、ダンシル−X、6−FAM、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、ローダミングリーン−X、ロドールグリーン、カルセイン、エオシン、臭化エチジウム、NBD、TET、2’、4’、5’、7’テトラブロモスルホンフルオレセイン、BODIPY−R6G、BODIPY−FlBR2、BODIPY564/570、TAMRA、BODIPY576/589、Cy3、ローダミンRed−x、BODIPY581/591、カルボキシXローダミン、テキサスレッドX、BODIPY−TR−X、Cy5、スペクトラムアクア、スペクトラムグリーン#1、スペクトラムグリーン#2、スペクトラムオレンジ、スペクトラムレッドまたはナフトフルオレセインなどの蛍光色素によってヌクレオチドを標識できる。
他の態様において、ヌクレオチドが異なった蛍光基によって標識される「はめ込み」反応が蛍光標識dNTP類と共に実施できる。取り込まれたヌクレオチドは、限定はしないが、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)などの好適な方法によって検出できる。
他の態様において、SNPまたは関心対象座の3’窪み端のはめ込みに標識ddNTP類と未標識ddNTP類双方の混合物が使用できる。5’−オーバーハングは、限定はしないが、2、3、4、5、6塩基または6塩基を超える、2塩基以上からなる。例えば、5’−オーバーハングが配列「XGAA」(ここでXは関心対象座、例えばSNP)からなるならば、標識ddNTP類と未標識ddNTP類との混合物との混合物によるはめ込みによって、幾つかの異なったDNA断片が生じることになる。標識ddNTPが「X」の位置に取り込まれると、反応は終止し、1個の標識塩基が取り込まれることになる。しかし、未標識ddNTPが取り込まれると、ポリメラーゼは標識ddNTPが取り込まれるまで他の塩基を取り込み続ける。取り込まれた最初の2つのヌクレオチドがdNTPであり、3番目がddNTPであれば、3’窪み端は、3塩基だけ伸長することになる。このDNA断片を、1、2または4塩基の大きさだけ伸長した他のDNA断片から分離できる。標識ddNTP類と未標識ddNTP類との混合物によって、オーバーハングの全ての塩基が補充され、関心対象座、例えばSNPについてのさらなる配列情報が提供される(図7Eおよび9Dを参照)。
標識ヌクレオチドの取り込み後、第1のプライマーによって供給された配列を認識する制限酵素によって、増幅DNAを消化することができる。例えば、図11では増幅DNAが、領域「a」に結合する制限酵素によって消化されて、ストレプトアビジンマトリックスから取り込まれたヌクレオチドを含有するDNA断片を遊離する。
あるいは、各関心対象座に関する各プライマー対の一方のプライマーを、限定はしないが、マイクロ滴定プレートのウェルなどの固体支持マトリックスに結合させることができる。例えば、一方のプライマーをビオチン化したプライマー対と共に、ストレプトアビジン被覆マイクロ滴定プレートを増幅反応に用いることができる。先ず、ビオチン化プライマーがストレプトアビジン被覆マイクロ滴定プレートに結合する。次に、関心対象座のPCR増幅のために、これらのプレートを反応容器として利用する。増幅反応が完了したら、余分なプライマー、塩類および鋳型DNAは洗浄により除去できる。増幅DNAは、マイクロ滴定プレートに結合したままである。第2のプライマー上の配列を認識し、関心対象を含有する5’−オーバーハングを生成する制限酵素によって増幅DNAを消化することができる。消化された断片は洗浄によって除去できる。消化後、SNP部位、または関心対象座は5’−オーバーハング内に現れる。3’窪みは、ポリメラーゼの存在下、限定はしないが蛍光ddNTPなどの標識ヌクレオチドによってはめ込まれる。第1の5’領域における配列を認識する制限酵素による消化によって標識DNAは、マイクロ滴定プレート内の上澄み液へ遊離できる。
他の態様において、遺伝子の複数対立遺伝子配列を決定するために、1種のヌクレオチドを使用できる。遺伝子の複数対立遺伝子配列を決定するために、伸長反応を終結させるヌクレオチドが使用できる。1つの対立遺伝子において、終結ヌクレオチドは、前記対立遺伝子の5’−オーバーハング内の関心対象座に相補的である。前記ヌクレオチドは取り込まれ、反応を終結させる。異なった対立遺伝子では前記終結ヌクレオチドは関心対象座に相補的でないため、異なった対立遺伝子の関心対象座に非終結ヌクレオチドが取り込まれる。しかし、終結ヌクレオチドは、前記異なった対立遺伝子の5’−オーバーハング内の関心対象座から下流のヌクレオチドに相補的である。対立遺伝子の配列は、終結ヌクレオチドの取り込みパターンを分析することによって決定できる。終結ヌクレオチドは、標識化されていることもあり、また、未標識のこともある。
他の態様において、終結ヌクレオチドは、限定はしないが、ジデオキシヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド誘導体、ジデオキシヌクレオチド類縁体、ジデオキシヌクレオチド同族体、硫黄化学基を有するジデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド誘導体、デオキシヌクレオチド類縁体、デオキシヌクレオチド同族体、硫黄化学基を有するデオキシヌクレオチド、三リン酸アラビノシド、三リン酸アラビノシド類縁体、三リン酸アラビノシド同族体または三リン酸アラビノシド誘導体などの伸長反応を終結または阻害するヌクレオチドである。
他の態様において、限定はしないが、蛍光色素などの1シグナル生成部分タグで標識した終結ヌクレオチドを、関心対象座の対立遺伝子の配列決定に使用できる。1シグナル生成部分タグで標識した単一ヌクレオチドを使用することにより、異なった蛍光部分を使用する場合に生じ得る困難が除去される。また、関心対象座の対立遺伝子の配列決定に1シグナル生成部分タグで標識した単一ヌクレオチドを使用することにより、反応数が減り、ピペット操作のエラーが除去される。
例えば、第2のプライマーがBsmFIに対する制限酵素認識部位を含有するならば、消化によって4塩基の5’−オーバーハングが生成する。関心対象座がオーバーハングの1番目に位置するように第2のプライマーを設計できる。代表的なオーバーハングを下記に示すが、ここでRは関心対象座を表す。
Figure 2006521086
可変部位が、ホモ接合かヘテロ接合かを決定するために、1シグナル生成部分タグを有する1種のヌクレオチドを用いることができる。例えば、可変部位がアデニン(A)またはグアニン(G)であれば、関心対象座の対立遺伝子の配列を決定するために、オーバーハングの2、3、または4の位置にアデニンまたはグアニンが存在するという条件でアデニンまたはグアニンを使用できる。
例えば、オーバーハングの2位のヌクレオチドが、アデニンに相補的であるチミジンであるならば、関心対象座の対立遺伝子の配列を決定するために、標識ddATP、未標識dCTP、dGTPおよびdTTPを使用できる。ddATPは、限定はしないが、蛍光色素などの任意のシグナル生成部分によって標識できる。鋳型DNAがアデニンに関してホモ接合であるならば、標識ddATPは対立遺伝子において、オーバーハングに相補的な1位に取り込まれ、オーバーハングに相補的な2、3、または4位にヌクレオチドは見られないことになる。
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な1位における標識ddATPの取り込みに相当する1つのシグナルが見られることになるが、これはこの位置におけるアデニンに関し、この固体はホモ接合であることを示す。この標識化法により、異なった量子効率を有する種々の色素を用いることから生じ得る困難が除去される。
ホモ接合グアニン:
鋳型DNAがグアニンに関してホモ接合であるならば、オーバーハングに相補的な1位にddATPが取り込まれることはないが、1番目に利用できる位置、この場合、オーバーリングに相補的な2位に、ddATPが取り込まれることになる。例えば、オーバーハングにおける2番目の位置がチミジンに相当する場合:
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な2位におけるddATPの取り込みに対応する1つのシグナルが見られるが、このことは、グアニンに関してその個体がホモ接合であることを示す。オーバーハングに相補的な2位にはめ込まれた分子は、オーバーハングに相補的な1位にはめ込まれる補充される分子とは異なった分子量を有する。
ヘテロ接合条件:
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、第1のシグナルは、オーバーハングに相補的な1位にはめ込まれたddATPに対応し、第2のシグナルは、オーバーハングに相補的な2位に補充されたddATPに対応する。2つのシグナルは、分子量に基づいて分離できる。すなわち、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、1個の塩基対によって分離でき、このことから、シグナルの容易な検出および定量が可能である。限定はしないが、ゲル電気泳動、毛管ゲル電気泳動、DNA塩基配列決定、および質量分析などの分子量に基づいて識別する任意の方法を用いて、1位にはめ込まれた分子を2位にはめ込まれた分子から識別することができる。ヌクレオチドは化学的部分によって標識される必要はない。すなわち、異なった対立遺伝子に相当するDNA分子は、分子量に基づいて分離できる。
オーバーハングの2位がアデニンに相補的でないならば、3位または4位がアデニンに相補的である可能性がある。例えば、オーバーハングの3位がヌクレオチドアデニンに対して相補的であり得るが、その場合は双方の対の配列を決定するために、標識ddATPが使用できる。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、第1のシグナルは、オーバーハングに相補的な1位にはめ込まれたddATPに対応し、第2のシグナルは、オーバーハングに相補的な3位にはめ込まれたddATPに対応する。2つのシグナルは、分子量に基づいて分離できる。すなわち、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、2個の塩基対によって分離でき、これは、分子量に基づいて識別する任意の方法を用いて検出できる。
あるいは、2位および3位がアデニンに相補的ではない(すなわち、オーバーハングの2位および3位が、グアニン、シトシンまたはアデニンに相当する)が、4の位置がアデニンに相補的であれば、双方の対の配列を決定するために標識ddATPを使用することができる。
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な1位におけるddATPみよってはめ込まれた分子の分子量に対応する1つのシグナルが見られるが、このことは可変部位におけるアデニンに関して、その個体がホモ接合であることを示す。
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な4位においてはめ込まれた分子の分子量に対応する1つのシグナルが見られるが、このことはその個体がグアニンに関してホモ接合であることを示す。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、第1のシグナルは、オーバーハングに相補的な1位にはめ込まれたddATPに対応し、第2のシグナルは、オーバーハングに相補的な4位にはめ込まれたddATPに対応する。2つのシグナルは、分子量に基づいて分離できる。すなわち、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、3個の塩基対によって分離でき、このことから、シグナルの検出および定量が可能である。1位にはめ込まれた分子と4位にはめ込まれた分子とは分子量に基づいて識別することができる。
上記のように、可変領域がアデニンまたはグアニンを含有しているならば、双方の対立遺伝子配列を決定するために標識アデニンまたは標識グアニンを使用することができる。オーバーハングの2、3、または4位がアデニンに相補的ではないが、1つの位置がグアニンに相補的ならば、鋳型DNAがアデニンまたはグアニンに関してホモ接合かヘテロ接合かを決定するために標識ddGTPを使用することができる。例えば、オーバーハングの3位がシトシンに相当するならば、鋳型DNAがグアニンに関してホモ接合、アデニンに関してホモ接合、またはヘテロ結合である場合、以下のシグナルが予想される。
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な1位においてddGTPによってはめ込まれた分子の分子量に対応する1つのシグナルが見られ、このことによって、その個体がグアニンに関してホモ接合であることが示される。
Figure 2006521086
オーバーハングに相補的な3位にはめ込まれた分子の分子量に対応する1つのシグナルが見られ、このことによって、その個体が可変部位のアデニンに関して、ホモ接合であることが示される。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、第1のシグナルは、オーバーハングに相補的な1位にはめ込まれたddGTPに対応し、第2のシグナルは、オーバーハングに相補的な3位にはめ込まれたddGTPに対応する。2つのシグナルは、分子量に基づいて分離できる。すなわち、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、2個の塩基対によって分離され、このことから、シグナルの容易な検出および定量が可能である。
別の態様では、対象対立遺伝子の配列の決定に使用される、1つの化学成分で標識されたヌクレオチドを、蛍光検出、DNA配列決定用ゲル、自動DNA配列決定装置を用いるキャピラリ電気泳動、マイクロチャンネル電気泳動、および他の配列決定法、質量分析、飛行時間型質量分析、四重極質量分析、磁場型質量分析、電場型質量分析、赤外分光法、紫外分光法、パレンチオスタティック(palentiostatic)アンペロメトリーを含むがこれらに限定されない、さまざまな方法で、または、サザンブロット、スロットブロット、ドットブロット、およびDNAマイクロアレイ(DNA断片は「プローブ」および「標的」の両方として有用なもの)を含むDNAハイブリダイゼーション法、ELISA、蛍光定量、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、SNP−IT、GeneChip、HuSNP、ビーズアレイ、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassExtend、またはMassCleave(商標)(hMC)法で分析することができる。
幾つかのIIS型の制限酵素は、上記で検討したように別途の切断も示す。例えば、BsmFIは、認識部位から10/14および11/15で切断する。この切断パターンは互いに排他的ではない。すなわち、ある特定の配列において、11/15の切断パターンが見られるならば、10/14の切断もまた見られる。制限酵素BsmFIが認識部位から10/14で切断するならば、5’オーバーハングはXとなる。BsmFIが認識部位から11/15で切断するならば、5’オーバーハングはXとなる。オーバーハングのXが標識ヌクレオチドに対して相補的であるならば、標識ヌクレオチドはX位に取り込まれ、品質保証のレベルを増加させる。これによりさらなる配列情報が提供される。
例えば、可変部位がアデニンまたはグアニンであり、オーバーハングの3位がアデニンに相補的であるならば、可変部位の遺伝子型の決定に標識ddATPを使用することができる。11/15オーバーハングの0位がアデニンに相補的なヌクレオチドを含有しているならば、ddATPがはめ込まれ、追加のシグナルが見られる。
Figure 2006521086
3つのシグナルが見られる。すなわち、0位に取り込まれたオーバーハングに相補的なddATPに対応するもの、1位に取り込まれたオーバーハングに相補的なddATPに対応するもの、および3位に取り込まれたオーバーハングに相補的なddATPに対応するものである。0位、1位および3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的な分子は分子量が異なり、限定はしないが、ゲル電気泳動および質量分析などの、分子量に基づいて識別する任意の方法を用いて分離することができる。
一方の対立遺伝子対他方の対立遺伝子の比率の定量、または野生型DNA配列の存在下での変異体DNA配列の相対量決定のためには、正確で高感度の検出法を用いなければならない。IIS型制限酵素によって示される別途切断は、一方の対立遺伝子対他方の対立遺伝子の比率決定における困難さを大きくするものと思われる。なぜならば、この制限酵素は、別途切断(11/15)パターンをこの2つの対立遺伝子上で等しく示すとは思われないからである。例えば、対1は、10/14での切断が80%の頻度であって、11/15は20%の頻度であり得る。しかし、2つの対立遺伝子は配列が異なるため、対立遺伝子2は10/14での切断が90%の頻度で、11/15が20%の頻度であり得る。
定量化のための、前記の別途切断問題は、オーバーハングの0位のヌクレオチドが、標識ヌクレオチドに相補的でない場合は除去することができる。例えば、可変部位がアデニンまたはグアニンに相当し、オーバーハングの3位がアデニンに相補的(すなわち、オーバーハングの3位にチミジンが位置している)ならば、可変部位の遺伝子型の決定に、標識ddATPを用いることができる。11/15切断特性によって生成したオーバーハングの0位がアデニンに相補的でない(すなわち、オーバーハングの0位がグアニン、シトシンまたはアデニンに相当する)ならば、認識部位から11/15に切断された断片から追加のシグナルは見られない。オーバーハングに相補的な0位は、未標識ヌクレオチドではめ込みができ、制限酵素の別途切断パターンによって見られる複雑さが除かれる。この方法は、限定はしないが、突然変異または単一ヌクレオチド多形などの可変部位の比率の定量に対して高精度の方法を提供する。
例えば、SNPXがアデニンまたはグアニンであり得れば、制限酵素が別途切断パターンに関し、対立遺伝子間に相違を示すかどうかを決定せずに、アデニンに相当する対立遺伝子およびグアニンに相当する対立遺伝子を定量化することが、この標識法によって可能となる。
Figure 2006521086
BsmFIの別途切断特性によって生成したオーバーハングを以下に表す。
Figure 2006521086
標識ddATPおよび未標識dGTP、dCTP、dTTPによるはめ込み後、以下の分子が生成する。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、1位においてオーバーハングに相補的なddATPではめ込まれた分子に対応するもの、および3位においてオーバーハングに相補的なddATPではめ込まれた分子に対応するものである。11/15オーバーハングの0位は未標識ヌクレオチドによってはめ込まれ、そのことにより、対立遺伝子1上の可変部位におけるヌクレオチドと対立遺伝子2上の可変部位におけるヌクレオチドとの定量化における困難が除去される。
アデニン、アデニン誘導体、アデニン同族体、グアニン、グアニン誘導体、グアニン同族体、シトシン、シトシン誘導体、シトシン同族体、チミジン、チミジン誘導体、チミジン同族体、あるいはアデニン、アデニン誘導体、アデニン同族体、グアニン、グアニン誘導体、グアニン同族体、シトシン、シトシン誘導体、シトシン同族体、チミジン、チミジン誘導体、またはチミジン同族体、あるいはアデニン、アデニン誘導体、アデニン同族体、グアニン、グアニン誘導体、グアニン同族体、シトシン、シトシン誘導体、シトシン同族体、チミジン、チミジン誘導体、チミジン同族体、あるいはアデニン、アデニン誘導体、アデニン同族体、グアニン、グアニン誘導体、グアニン同族体、シトシン、シトシン誘導体、シトシン同族体、チミジン、チミジン誘導体、またはチミジン同族体の任意の組合わせなどの任意のヌクレオチドを用いることができる。
限定はしないが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、および検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分などの任意の化学基または化学部分によってヌクレオチドを標識できる。ヌクレオチドは、1種以上の化学基または化学部分によって標識できる。
他の態様において、標識および未標識ヌクレオチドを使用できる。限定はしないが、標識ジデオキシヌクレオチドと標識デオキシヌクレオチド;標識ジデオキシヌクレオチドと未標識デオキシヌクレオチド;未標識ジデオキシヌクレオチドと未標識デオキシヌクレオチド;および未標識ジデオキシヌクレオチドと標識デオキシヌクレオチドなどのデオキシヌクレオチドとジデオキシヌクレオチドとの任意の組合わせが使用できる。
他の態様において、化学部分で標識されたヌクレオチドをPCR反応に使用できる。次に、制限酵素による消化後に生成した5’オーバーハングにはめ込みを行うために未標識ヌクレオチドが使用される。関心対象座の対立遺伝子配列を決定するために未標識末端ヌクレオチドが、未標識ヌクレオチドの存在下で使用できる。
例えば、PCR反応に標識dTTPが使用された場合、BsmFIによる消化後、以下の5’オーバーハングが生成する。
Figure 2006521086
5’オーバーハングのはめ込みには、未標識ddATP、未標識dCTP、未標識dGTP、および未標識dTTPが使用できる。2つのシグナルが生成する。すなわち、第1のシグナルは、1位においてオーバーハングに相補的な未標識ddATPによってはめ込まれたDNA分子に対応し、第2のシグナルは、3位においてオーバーハングに相補的な未標識ddATPによってはめ込まれた分子に対応する。前記DNAを分子量に基づいて分離でき、PCR反応時に取り込まれたdTTPの蛍光によって検出できる。
標識DNA関心対象座は、限定はしないが、蛍光検出、DNA塩基配列決定ゲル、自動DNA塩基配列決定装置上の毛管電気泳動、マイクロチャネル電気泳動、および他の塩基配列決定法、質量分析、飛行時間型質量分析、四重極質量分析、磁気偏向型質量分析、電気偏向型質量分析、赤外分光、紫外分光、パレンチオスタティック(palentiostatic)アンペロメトリー、またはサザンブロット、スロットブロット、ドットブロットなどのDNAハイブリダイゼーション法、およびDNA断片を「プローブ」と「標的」の双方として使用できるDNAマイクロアレイ、ELISA、蛍光分析、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、SNP−IT、GeneChip、HuSNP、ビーズアッセイ、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassExtend、またはMassCleave(商標)(hMC)法などの種々の方法によって分析できる。
この標識法は極めて感度が良く、限定はしないが、
Figure 2006521086
種々の比率の関心対象座の検出を可能にさせる。
例えば、SNP座における対立遺伝子の配列を決定するため、または通常対立遺伝子の集団の中から突然変異対立遺伝子を検出するため、または抗生物質感受性ウィルスの中から薬剤耐性ウィルスの対立遺伝子を検出するため、または病原性細菌株の対立遺伝子の中から、非病原性細菌株の対立遺伝子を検出するために、1シグナル生成部分によって標識した1種のヌクレオチドを使用することが、この標識法によって可能である。
上記に示したように、ある特定の関心対象座における対立遺伝子配列を決定するために1種のヌクレオチドが使用できる。個体が特定の突然変異に関して、ホモ接合かヘテロ結合かを決定するために、または特定のSNP部位における対立遺伝子配列を決定するために、この方法は特に有用である。この標識によって、種々の色素の量子係数によって生じる誤差が除去される。また、この方法により、限定はしないが、マイクロ滴定プレートのウェルまたは1つのエッペンドルフ管などの1個の反応容器内で反応を進行させることができる。
この標識法は、同一試料内の複数の遺伝子シグナルの検出に特に有用である。例えば、この方法は、母体DNAと胎児DNAの双方を含有する妊娠女性の血液、血清または血漿中の胎児DNAの検出に有用である。血液、血清または血漿中に母体DNAと胎児DNAは、97:3などの比率で存在し得るが、上記の方法を胎児DNAの検出に用いることができる。この方法は、同一集団中、2種、3種、4種、または4種を超える異なった遺伝子シグナルを検出するために使用できる。
この標識化法は、野生型対立遺伝子の大集団の中に存在する突然変異対立遺伝子の検出に特に有用である。さらに、この方法により、野生型細胞の大集団の中に存在する1個の突然変異体細胞の検出ができる。例えば、この標識化法は、正常細胞の大集団の中に存在する1個の癌細胞の検出に用いることができる。癌細胞は通常、DNA配列に突然変異を有する。背景に大量の野生型DNA配列がある場合でも、突然変異DNA配列を同定することができる。この標識化法は、限定はしないが、結腸、腎臓、乳房、膀胱、肝臓、腎臓、脳、肺、前立腺などの任意のタイプの癌および白血病などの血液癌のスクリーニング、検出、または診断に利用できる。
また、この標識化法は、細菌、真菌、ウィルス、原生動物およびマイコバクテリアなどの病原性生物の検出にも利用できる。この方法はまた、限定はしないが、細菌、真菌、ウィルス、原生動物およびマイコバクテリアなどの微生物の病原性株と非病原性株とを識別するためにも利用できる。
例えば、大腸菌(E.coli)には幾つかの株が存在するが、その多くは非病原性である。しかし、E.coli0157などの幾つかの株は病原性である。非病原性E.coliと病原性E.coliとの間には遺伝子の違いがある。上記の標識法は、時には個体の正常な微生物叢に関連している非病原性生物の大集団の中の病原性微生物を検出するために利用できる。
VI.関心対象座の分析
限定はしないが、蛍光検出、DNA塩基配列決定ゲル、自動DNA塩基配列決定装置上の毛管電気泳動、(例えば、ABIプリズム3100ジェネティック・アナライザー(ABI Prism 3100 Genetic Analyzer)または、ABIプリズム3700ジェネティック・アナライザー)、マイクロチャネル電気泳動、および他の塩基配列決定法、サンガー(Sanger)ジデオキシ塩基配列決定法、質量分析、飛行時間型質量分析、四重極質量分析、磁気偏向型質量分析、電気偏向型質量分析、赤外分光、紫外分光、パレンチオスタティック(palentiostatic)アンペロメトリー、またはサザンブロット、スロットブロット、ドットブロットなどのDNAハイブリダイゼーション法、およびDNA断片を「プローブ」と「標的」の双方として使用できるDNAマイクロアレイ、ELISA、蛍光分析、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、SNP−IT、GeneChip、HuSNP、ビーズアッセイ、TaqManアッセイ、Invaderアッセイ、MassExtend、またはMassCleave(商標)(hMC)法などの種々の方法によって関心対象座を分析することができる。
関心対象座は、ゲル電気泳動を用いて分析でき、続いて取り込まれたヌクレオチドを蛍光検出できる。関心対象座を分析または読み取るための他の方法は、96ウェルのストレプトアビジン被覆プレートに対して直接蛍光プレート読み取り機または蛍光分析計を使用することである。各関心対象座を読み取るために、蛍光プレート読み取り機または、ファルマシア9200タイフーン(Pfarmacia 9200 Typhoon)などのスキャナー上にプレートを載せることができる。
あるいは、関心対象座のPCR産物をプールでき、「はめ込み」の後に(図10)その産物をそれらに適切な任意の方法を用いて大きさによって分離でき、次に、限定はしないが、蛍光検出、DNA塩基配列決定ゲル、自動DNA塩基配列決定装置上の毛管電気泳動、マイクロチャネル電気泳動、および他の塩基配列決定法、サンガー(Sanger)ジデオキシ塩基配列決定法、サザンブロット、スロットブロット、ドットブロットなどのDNAハイブリダイゼーション法、およびDNAマイクロアレイなどのDNAハイブリダイゼーション法、質量分析、飛行時間型質量分析、四重極質量分析、磁気偏向型質量分析、電気偏向型質量分析、赤外分光、紫外分光、パレンチオスタティック(palentiostatic)アンペロメトリーなどの種々の方法を用いて分析できる。例えば、DNAを大きさによって分離するためにポリアクリルアミドゲル電気泳動が利用でき、各バンドの蛍光色を測定するために、前記ゲルを走査できる(例えば、ABI377DNA塩基配列決定装置またはファルマシアタイフーン9200を用いて)。
他の態様において、関心対象座の配列は、関心対象座に対して3’であるヌクレオチドの取り込みを検出することによって決定できるが、ここで前記ヌクレオチドは、関心対象座において可能なヌクレオチドとは異なるヌクレオチドである。この態様は、SNPの塩基配列決定および検出にとって特に有用である。DNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む効率と速度は、各ヌクレオチドによって変わる。
ヒトゲノムプロジェクトのデータによると、SNPの99%はバイナリーである。関心対象座SNPに対して3’であるヌクレオチドを決定するためにヒトゲノムの配列を利用することができる。SNP部位に対して3’であるヌクレオチドがSNP部位における可能なヌクレオチドと異なっている場合、SNPに対して1個または1個を超える塩基の3’であるヌクレオチドが、SNP部位の配列を決定するために使用できる。
例えば、染色体13上のSNPXの配列を決定するとしよう。ヒトゲノムの配列により、SNPXは、アデノシンまたはグアニンのいずれかであり得ること、また、関心対象座に対して3’ヌクレオチドはチミジンであることが示されている。SNPXを含有するDNA断片を増幅するために増幅後、関心対象座の13個の塩基であるように設計されている、制限酵素認識を含有するプライマーを利用する。制限酵素BsmFIによる消化によって、アデノシンまたはグアニンのいずれかであり得る関心対象座を含有する5’オーバーハングが生成する。消化産物は、2つの「はめ込み」反応に分けることができ、一方の反応はdTTPを含有し、他方の反応はdCTPを含有する。関心対象座が、グアニンに関してホモ接合であるならば、dCTPと混合したDNA分子だけがはめ込まれる。関心対象座が、アデノシンに関してホモ接合であるならば、dTTPと混合したDNA分子だけがはめ込まれる。関心対象座がヘテロ接合であるならば、dCTPと混合したDNA分子ならびにdTTPと混合したDNA分子がはめ込まれる。余分のdNTPを除去するための洗浄後、関心対象座に対して3’であるヌクレオチド(チミジン)に相補的な標識ddATPによって試料にはめ込みを行う。以前の反応によってはめ込まれたDNA分子は標識ddATPによってはめ込まれることになる。固体がアデノシンに関してホモ接合であるならば、dTTPと混合したDNAは引き続いて標識ddATPではめ込まれることになる。しかし、dCTPと混合したDNA分子は、そのヌクレオチドを取り込まず、したがって、ddATPを取り込むことはできないであろう。dTTPと混合した分子においてのみ、標識ddATPが検出されたことにより、染色体13上のSNPXにおけるヌクレオチドはアデノシンであることが示される。
他の態様において、単一ヌクレオチドの多形または突然変異の有無に関して大規模なスクリーニングを実施することができる。1個の染色体または複数の染色体上の1個から数十、数百、数千の関心対象座を、前述の「プライマー設計」の節のとおり、プライマーと共に増幅することができる。増幅された各関心対象座が異なる大きさであるようにプライマーを設計できる(図2)。複数の関心対象座は、1個の染色体、複数の染色体、複数の遺伝子、1個の遺伝子またはそれら任意の組合わせ上にある複数の関心対象座を示している1個体のDNA試料のものであり得る。
ヒトのデータを解析している場合、知られた配列は1個体(例えば、現在そのDNAを分析中の個人など)から決定されている特定の配列のこともあり、または、ヒトゲノムの一部として公表されたコンセンサス配列などのこともある。
関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率
一態様において、関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を算出することができる。関心対象座におけるヌクレオチドの強度を、限定はしないが、ジーンスキャン(GeenScan)およびイメージクオント(ImageQuant)などの任意の数のコンピュータプログラムを用いて定量化できる。例えば、ヘテロ接合SNPに関しては、2種のヌクレオチドが存在し、各々が1:1の比率で存在し得る。好ましい態様において、複数のヘテロ接合SNPの比率を算出することができる。
一態様において、関心対象のヘテロ接合座で対立遺伝子における可変ヌクレオチドに関する比率を算出できる。関心対象座に存在する各々の可変ヌクレオチドの強度を、限定はしないが、ジーンスキャン(GeenScan)およびイメージクオント(ImageQuant)などの任意の数のコンピュータプログラムを用いて定量化できる。例えば、ヘテロ接合SNPに関しては、2種のヌクレオチドが存在し、各々が1:1の比率で存在し得る。好ましい態様において、複数のヘテロ接合SNPの比率を算出することができる。
他の態様において、一染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を合計し、異なる染色体上の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較する。好ましい態様において、一染色体上の複数の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率を合計し、異なる染色体上の複数の関心対象のヘテロ接合座における対立遺伝子の比率と比較する。染色体1上のSNP1、SNP2、SNP3、SNP4などから得られた比率を合計できる。次にこの比率を、SNPA、SNPB、SNPC、SNPDなどから得られた比率と比較することができる。
例えば、染色体1上の100種のSNPを分析することができる。これら100種のSNPのうち、50種がヘテロ接合であると仮定しよう。染色体1上のヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子の比率を合計できるが、略50:50の比率になるはずである。同様に、染色体21上の分析されたSNP100種のうち、50種がヘテロ接合であると仮定しよう。染色体21上のヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子の比率を合計する。染色体が正常な数であれば、この比率は略50:50のはずであり、したがって、染色体1と染色体21から得られた比率の間には違いがないはずである。しかし、染色体21の追加コピーが存在すれば、追加の対立遺伝子が供給され、前記比率は略66:33になるはずである。このように、ヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチド類の比率を、染色体異常の有無を検出するために利用できる。異数性、倍数性、逆位、トリソミー、モノソミー、重複、欠失、染色体の一部欠失、付加、染色体の一部付加、挿入、染色体の断片、染色体の一領域、染色体再配列および転座などの何らかの染色体異常を検出することができる。本法は、トリソミー13、トリソミー18、トリソミー21、XXYおよびXYYの検出に特に有用である。
本発明は、ヘテロ接合の関心対象座における対立遺伝子の比率を定量化する方法を提供する。関心対象座としては、限定はしないが、単一ヌクレオチド多型、突然変異が挙げられる。遺伝子の全配列を増幅したり、特定の遺伝子産物を定量化する必要はない。本発明は、定量的PCRに依存しない。
胎児染色体異常の検出
上記の標題「鋳型DNA」の節で検討したように、鋳型DNAが母体の鋳型DNAと胎児鋳型DNAとを含んでなる妊娠女性の試料から鋳型DNAを得ることができる。一態様において、鋳型DNAは妊娠女性の血液から得られる。好ましい態様において、鋳型DNAは妊娠女性の血液の血漿または血清から得られる。
一態様において、妊娠女性の試料由来の鋳型DNAは母体の鋳型DNA、および胎児の鋳型DNAの双方を含んでなる。他の態様において、母体鋳型DNAは、限定はしないが、細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、膣分泌物、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹膜液、腹水、糞便物質または身体滲出液などの核酸含有供給源から得て配列決定し、妊娠女性の試料から得られた鋳型DNAについて分析した関心対象座であるホモ接合またはヘテロ接合の関心対象座を同定する。
好ましい態様において、ホモ接合の関心対象座を同定するために母体鋳型DNA上の複数の関心対象座の対立遺伝子配列を決定する。他の態様において、ヘテロ接合の関心対象座を同定するために母体鋳型DNA上の複数の関心対象座の対立遺伝子配列を決定する。母体鋳型DNA上の複数の関心対象座の対立遺伝子配列は1つの反応または複数の反応において決定できる。
例えば、染色体の21上の母体の関心対象座100個および染色体1上の母体の関心対象座100個を分析するとすれば、各染色体の略50個の関心対象座がホモ接合であり、50個がヘテロ接合であると予想されるであろう。妊娠女性の試料由来の鋳型DNAを用いて各染色体上のホモ接合の関心対象座50個またはヘテロ接合の関心対象座50個、またはホモ接合の関心対象座50個とヘテロ接合の関心対象座50個、またはホモ接合の関心対象座とヘテロ接合の関心対象座との任意の組合わせを分析することができる。
妊娠女性の試料由来の鋳型DNA上の関心対象座は、上述の増幅、単離、消化、はめ込み、および検出方法を用いて分析される。妊娠女性の試料由来の鋳型DNAをスクリーンするために、母体鋳型DNA上の関心対象座を分析するために使用した同一のプライマーが用いられる。妊娠女性の試料由来の鋳型DNA上の任意の数の関心対象座を分析することができる。妊娠女性の試料由来の鋳型DNAにおいて、例えば、1、1〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90.90〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜500、500〜1000、1000〜2000、2000〜3000、3000〜4000個、または4000個を超えるホモ接合の母体関心対象座を分析することができる。好ましい態様において、複数の染色体上の複数の関心対象座が分析される。
ホモ接合の母体関心対象座の集団で、妊娠女性の試料由来の鋳型DNAから、ヘテロ接合の関心対象座とホモ接合の関心対象座の双方が存在し、ヘテロ接合の関心対象座をさらに分析することができる。存在する染色体の数を決定するためにヘテロ接合の関心対象座における対立遺伝子の比率が利用できる。
染色体上の染色体異常を通常伴わないヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率を決定することによって、妊娠女性の試料に存在する胎児DNAのパーセンテージを算出することができる。好ましい一態様において、胎児DNAのパーセンテージを決定するために、一染色体上の複数のヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率が利用できる。例えば、胎児DNAのパーセンテージを決定するためにヒトゲノムにおいて最も大きな染色体1を用いることができる。
例えば、母体鋳型DNA(A/A)において、SNPXがホモ接合であると仮定しよう。SNPXにおいて、胎児DNAと母体DNAの双方を含有し得る妊娠女性の試料由来の鋳型DNAはヘテロ接合(A/G)である。SNPXにおいて、母体はホモ接合であるため、ヌクレオチドのグアニンは胎児のDNAを表しており、したがって、グアニンは胎児DNAのものである。SNPXにおけるグアニンを用いて、試料中の胎児DNAパーセンテージを算出できる。
あるいは、胎児DNAパーセンテージを決定するために、2本以上の染色体上の複数の関心対象座を調査できる。胎児DNAパーセンテージを決定するために、例えば、染色体13および18上の複数の関心対象座を調べることができる。というのは、染色体13および18における染色体異常を有する生物は生存できないからである。
あるいは、試料中に存在する胎児DNAの量を決定するために、男性胎児では、Y染色体上のマーカーが使用できる。妊娠女性の試料から単離された鋳型DNAを用いて1区画の連続希釈を行うことができ、定量的PCR分析を実施できる。2つのPCR反応を実施できる。すなわち、一方はY染色体上のマーカー、例えばSRYを増幅するPCR反応、および他方はいずれかの常染色体上の一領域を増幅するPCR反応である。以下の式を用いて、胎児DNAの量が算出できる。
胎児DNAパーセント:(検出Y染色体最終希釈/検出常染色体最終希釈)100。
仮に、SNP Aにおいて、母親がホモ接合のA/Aであって、胎児がヘテロ接合のA/Gであれば、A:Gの比を用いて染色体異常を検出することができる。仮に、胎児由来のDNAが、母親由来の血液中のDNAの50%であれば、母親由来のヌクレオチドがアデニンで、また他のヌクレオチドがグアニンであるSNP Aとなり、グアニン(胎児の鋳型DNAに由来する)に対するアデニン(2つのアデニンが母親の鋳型DNAに由来し、また1つが胎児の鋳型DNAに由来する)の比は、25:75すなわち0.33と予測される。しかし、仮に、胎児が、特定の染色体のトリソミーであり、追加の染色体が母親からの寄与によるものである場合、つまり追加のアデニンヌクレオチドが存在する場合、同比は0.25(50(G)/(母親由来の250のA+胎児由来の250のA))と予測することができる。したがって、2コピーで存在する染色体から得られる比と、トリソミー状態で存在する染色体から得られる比の間には8%の差がある。一方で、仮に、追加の染色体が父親からの寄与によるものである場合、つまり追加のグアニンが存在する場合、同比は0.66となる(胎児由来の250のG対立遺伝子/(母親由来の250のA対立遺伝子+胎児由来の50のA対立遺伝子)。
しかし、仮に、胎児由来のDNAが母親由来の血液中のDNAの40%を占める場合、(トリソミーの場合を除く)予測比率は0.25である(胎児由来の40のG対立遺伝子/(母親由来の260のA対立遺伝子+胎児由来の160のA対立遺伝子))。仮に、胎児がトリソミーの場合、また追加の染色体が母親からもたらされる場合であれば、予測比率は0.20となる(胎児由来の40のG対立遺伝子/(母親由来の260のA対立遺伝子+胎児由来の240のA対立遺伝子)。2コピーで存在する染色体から得られる比、トリソミー状態で存在する染色体から得られる比の差は5%となる。
他の態様において、複数の染色体上の複数の関心対象座を調査できる。一染色体上の各へテロ接合の関心対象座における対立遺伝子の比率を合計でき、別の染色体上の各関心対象座における対立遺伝子の比率と比較できる。比較される染色体はヒト起源のものであり得、限定はしないが、染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびYが挙げられる。複数の染色体から得られた比率を1個の染色体または複数の染色体から得られた比率と比較できる。
一態様において、比較に用いられる染色体の1つは、染色体13、15、16;18、21、22、XまたはYであり得る。好ましい一態様において、染色体13、18および21についての比率が比較される。
例えば、妊娠女性に由来する試料中の胎児DNAが40%であると仮定すると、第1染色体上のヘテロ接合の対象遺伝子座における対立遺伝子の比は0.25となる(胎児由来の40のG対立遺伝子/(母親由来の260のA対立遺伝子+胎児由来の40のA対立遺伝子)。同様に、第21染色体上のヘテロ接合の対象遺伝子座における対立遺伝子の比は0.25となる。しかし、追加の染色体が母親からの寄与によるトリソミー21の胎児では、第21染色体上のヘテロ接合の対象遺伝子座におけるヌクレオチドは0.20の比で存在することになる(胎児由来の40のG対立遺伝子/(母親由来の602のA対立遺伝子+胎児由来の402のA対立遺伝子)。これとは対照的に、第1染色体に関する比は0.25で変わらないので、比に見られる5%の差は、追加の染色体の存在を意味する。1〜10〜100〜1000の対象遺伝子座を分析することができる。
別の態様では、妊娠女性由来の試料に由来する鋳型DNA上の対象遺伝子座の遺伝子型を、母親の対象遺伝子座がホモ接合であることを事前に確認することなく決定することができる。母親と胎児の鋳型DNAの両方を含む鋳型DNAの分析に先だって、母親の鋳型DNAの遺伝子型を決定する必要はない。
染色体異常の有無を決定するために関心対象座における対立遺伝子の比率を利用できる。妊娠女性の試料由来の鋳型DNAは、母体鋳型DNAおよび胎児鋳型DNAの双方を含有している。母体鋳型DNAまたは胎児鋳型DNAのいずれかに関する各SNPにおいて3つの可能性が存在する。すなわち、対立遺伝子1に関してヘテロ接合、ホモ接合または対立遺伝子2に関してホモ接合である。アデニンまたはグアニンのいずれかであるSNPに関するヌクレオチドの可能な比率を表IIに示してある。表IIに示された比率は、妊娠女性の試料中DNAの50%が胎児DNAとして算出してある。
(表II)ヘテロ接合型のSNPに関するヌクレオチドについての比
Figure 2006521086
3つのヌクレオチド比が存在する。すなわち、単一ヌクレオチド100%、50:50または75:25である。これらの比率は、妊娠女性の試料中に存在する胎児DNA量に依って変わる。しかし、胎児DNAのパーセンテージは、分析された染色体に係らず一定になるはずである。したがって、染色体が2つのコピーにおいて存在するならば、上記の算出比が見られるであろう。
一方、これらのパーセンテージは、過剰の染色体が存在すれば変化するであろう。例えば、SNPXがアデニンまたはグアニンであり得るとし、妊娠女性の試料中の胎児DNAのパーセンテージが50%であると仮定しよう。染色体1上の関心対象座の分析により、上記で検討された比率、すなわち100:0、50:50および75:25が与えられるであろう。過剰の染色体を有した場合のA/GであるSNPに関する可能な比率を表IIIに示してある。
(表III)染色体のさらなるコピーが存在するときの、SNPにおけるヌクレオチド比
Figure 2006521086
一染色体の追加のコピーを有するヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子に関する可能な比率は、0:100、40:60、および20:80である。これらの比率のうちの2つ、40:60と20:80は、一染色体の2つのコピーを有して得られたヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子の比率とは異なる。上記で検討したように、ヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチドに関する比率は、試料中に存在する胎児DNA量に依存する。しかし、比率がどうあろうとも、それらは、染色体異常がない限り、染色体全てに亘って一定に保たれるであろう。
ある染色体上のヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率を、別の染色体上のヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率と比較することができる。例えば、染色体1上の複数の関心対象座に関する比率(SNP1、SNP2、SNP3、SNP4などにおける比率)を、染色体21上の複数の関心対象座に関する比率(SNPA、SNPB、SNPC、SNPDなどにおける比率)と比較できる。任意の染色体を他の任意の染色体と比較できる。比較できる染色体の数に制限はない。
再び表IIおよび表IIIのデータを参照すると、2つのコピーで存在した染色体1上のヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチドの比率は25:75および50:50であった。一方、3つのコピーで存在する染色体21上のヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチドの比率は40:60および20:80であった。これら2種の比率の間の違いは、染色体異常を示している。これらの比率は、母体血清中に存在する胎児DNAの変化する度合いの全範囲に対して前計算できる。胎児の染色体異常の存在を検出するために、母体のホモ接合およびヘテロ接合の関心対象座双方が使用できることを表IIおよびIIIは示している。
追加染色体の存在を検出するために、ヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチドの比率をどのように利用するかを、上記の例は示している。染色体再配列、転座、微小染色体、染色体領域の重複、モノソミー、染色体領域の欠失、および染色体の断片を検出するために同じタイプの分析を用いることができる。本法は、母親または父親の遺伝子型決定を必要としないが、血漿試料とともに分析する必要のあるSNPの数を減らしてもよい。
本発明は、胎児の遺伝子産物量を定量しない。また、本発明の利用法は、Y染色体上に見られる遺伝子分析に限定されてはいない。本発明は、単に父親から遺伝された核酸の検出に依存せず、むしろ本発明は、SNPを含む関心対象座における母親の対立遺伝子対胎児の対立遺伝子の比の算出を可能にする方法を提供する。
別の態様では、対象遺伝子座における1つの対立遺伝子を使用して染色体異常の有無を判定し、また胎児の遺伝性疾患を検出することができる。好ましい態様では、対象遺伝子座における母親の対立遺伝子を使用して、胎児における染色体異常の有無を判定する。生物学的な母親の遺伝子型を決定して、対象遺伝子座がホモ接合であることを同定することができる。同様に、生物学的な父親の遺伝子型を決定して、対象遺伝子座がホモ接合であることを同定することができる。1つの対立遺伝子に関して母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また他の対立遺伝子に関して父親の鋳型DNAがホモ接合である対象遺伝子座を、母親と胎児の両方の鋳型DNAを含む、母親の血漿から得られた鋳型DNAを用いて分析する。1、1〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜500、500〜1000、1000〜2000、2000〜3000、3000〜4000、4000〜8000、8000〜16000、16000〜32000、または32000を超える対象遺伝子座を含むがこれらに限定されない、任意の数の対象遺伝子座を分析することができる。
好ましい態様では、母親由来のゲノム、および対象遺伝子座における、母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子に由来するシグナルを定量する。例えば、仮に、IIS型酵素による切断後に生じる5’オーバーハングが、蛍光標識されたAヌクレオチドで埋められると、取り込まれた色素の強度を定量することができる。
母親の鋳型DNA−−アデニンに関してホモ接合
Figure 2006521086
父親の鋳型DNA−−シトシンに関してホモ接合
Figure 2006521086
血漿中の鋳型DNA−−母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方
母親の鋳型DNA−−アデニンに関してホモ接合
Figure 2006521086
胎児の鋳型DNA−−ヘテロ接合
Figure 2006521086
妊娠女性の血漿から得られた鋳型DNAが、標識ddATP、および非標識のddCTP(上記のddC)、ddGTP、およびddTTPで埋められる。血漿DNAは、母親由来の2本のアデニン対立遺伝子、および胎児由来の1本のアデニン対立遺伝子を含む。標識ddATPおよび非標識ddCTPによって埋められることで、母親の対立遺伝子、および母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子のみが検出される。父親の対立遺伝子は、このような場合には検出されない。このはめ込み反応は、実施例に記載された手順で実施することができる。
1つの対象遺伝子座、または複数の対象遺伝子座を分析することができる。複数の対象遺伝子座における、母親由来の対立遺伝子の強度を定量することができる。1つの染色体に関して平均値を算出し、これを、異なる染色体について得られた平均値と比較することができる。例えば、第1染色体に関して、母親由来の対立遺伝子と、母親から受け継いだ胎児由来の対立遺伝子の平均強度を、第13染色体、第18染色体、または第21染色体に関する母親の対立遺伝子と、母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子の平均強度と比較することができる。好ましい態様では、第13染色体、第15染色体、第18染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、およびY染色体(可能な場合)を比較する。
対象遺伝子座に由来するシグナルは、別の対象遺伝子座より強い場合がある。しかし、1本の染色体上の対象遺伝子座に由来するシグナルが、他の染色体上の対象遺伝子座に由来するシグナルより強くなるという理由はない。さまざまな対象遺伝子座に由来するシグナルが多様性を示す可能性がある一方で、このような多様性は、ゲノム全体にわたってみられるはずである。対象遺伝子座の平均シグナルは、どの染色体を比較しても同じはずである。
等量のPCR産物の量が生じるようにPCR反応条件を最適化することができる。例えば、個々の対象遺伝子座に関して、プライマー濃度、ヌクレオチド濃度、およびサイクル数を最適化することができる。また、特定の対立遺伝子の何らかの増加を検出することが可能な条件ではめ込み反応を実施することができる。はめ込み反応の条件を最適化することで、試薬濃度、はめ込み反応時間、および反応温度を含むがこれらに限定されない、対象対立遺伝子の何らかの増加を検出することができる。
通常の遺伝子核型の場合、個々の対象遺伝子座におけるシグナルは、母親由来のゲノムに由来するシグナルと、この母親から受け継いだ胎児由来の対立遺伝子に由来するシグナルを含む。試料中の胎児DNAのパーセントは、分析対象の染色体にかかわらず一定である。例えば、仮に、SNP Xにおいて、母親由来のゲノムがA/Aであり、また父親由来のゲノムがG/Gであれば、胎児のゲノムはA/Gとなり、また胎児のアデニン対立遺伝子は、アデニン対立遺伝子に由来する特定のパーセンテージのシグナルを含むことになる。仮に、母親の血漿中における胎児DNAのパーセンテージが20%であれば、胎児のアデニン対立遺伝子は、アデニン対立遺伝子に関してシグナルの20%に寄与することになる。母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子の寄与は、分析対象のどの対象遺伝子座に関しても一定となる。
染色体異常がある場合は、母親由来のゲノム、および対象遺伝子座において、母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子に由来するシグナルは、他の染色体について観察されるシグナルとは異なることになる。例えば、トリソミーの場合であれば、対象遺伝子座におけるシグナルは、母親由来のゲノム、および母親から受け継いだ、胎児の2本の対立遺伝子を含むことになる。3コピーが存在する染色体に関して、対象遺伝子座に由来するシグナルは、このような対象遺伝子座における対立遺伝子のシグナルを変化させることになる、追加の胎児対立遺伝子の寄与を含むことになる。
別の態様では、1つの対立遺伝子と既知量の標準DNAを用いて比率を計算することができる。好ましい態様では、母親由来のゲノムの対立遺伝子、および母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子、ならびに標準DNAを用いて比を計算する。対象遺伝子座がホモ接合であることを同定するためには、生物学的な母親の遺伝子型を決定するとよい。同様に、生物学的な父親の遺伝子型を決定することで、対象遺伝子座がホモ接合であることを同定することができる。1つの対立遺伝子に関して母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また別の対立遺伝子に関して父親の鋳型DNAがホモ接合である対象遺伝子座を、母親の血漿(母親と胎児の両方の鋳型DNAを含む)から得られる鋳型DNAを用いて分析する。
好ましい態様では、母親由来のゲノム、および対象遺伝子座に関して母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子に由来するシグナルを定量する。例えば、仮に、IIS型酵素による切断で生じる5’オーバーハングが、蛍光標識されたAヌクレオチドで埋められると、取り込まれた色素の強度を定量することができる。
血漿中の鋳型DNA−−母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方
母親の鋳型DNA−−アデニンに関してホモ接合
Figure 2006521086
胎児の鋳型DNA−−ヘテロ接合
Figure 2006521086
妊娠女性の血漿から得られる鋳型DNAは、標識ddATP、および非標識のddCTP(上記のddC)、ddGTP、およびddTTPで埋められる。血漿DNAは、母親由来の2つのアデニン対立遺伝子と、胎児由来の1つのアデニン対立遺伝子を含む。標識ddATPと非標識ddCTPによって埋められることによって、母親の対立遺伝子、および母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子のみが検出される。
1つの対象遺伝子座、または複数の対象遺伝子座を分析することができる。個々の対象遺伝子座に関して、対象遺伝子座とほぼ同じ位置に移動するようにDNA分子を設計する。好ましい態様では、このようなDNA分子の量は既知である。母親由来のゲノムの対立遺伝子、および母親から受け継いだ胎児の対立遺伝子、ならびに対象遺伝子座とほぼ同じ位置に移動するように設計されたDNA分子を用いて比を計算する。例えば、仮に、対象遺伝子座を30塩基対に移動するように設計する場合、DNA分子を、20〜25塩基、25〜30塩基、30〜35塩基、35〜45塩基、および45塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、約30塩基対に移動するように設計することができる。母親由来のゲノムの対立遺伝子、およびその母親に由来する胎児の対立遺伝子、ならびに標準DNA分子を、同じ反応で分析することができるほか、個別の反応で分析することができる。母親由来のゲノムの対立遺伝子、およびその母親に由来する胎児の対立遺伝子、ならびに標準DNA分子を、1枚のゲルの同じレーンで分析することができるほか、1枚のゲルの別のレーンで分析することができる。対象遺伝子座と同じ位置に移動するように設計された既知量の標準DNA分子の使用は、ゲル上の位置に対するバンドの強度を含むがこれらに限定されない、さまざまな因子を矯正することになる。
染色体上の複数の対象遺伝子座の比を定量し、平均値を算出することができる。こうして得られた平均値を、他の染色体について得られた平均値と比較することができる。こうして得られた比を用いることで染色体異常の有無がわかる。母親由来のゲノムの対立遺伝子および胎児の対立遺伝子の分析により、1つの遺伝子が関与する遺伝性疾患、または複数の遺伝子が関与する遺伝性疾患の検出も可能となる。
本発明の方法を用いて、任意の生物の任意の染色体を分析できる。例えば、ヒトでは、本発明の方法を用いて、染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XまたはYを分析できる。任意の染色体上のヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率を、他の任意の染色体上のヘテロ接合関心対象座における対立遺伝子の比率と比較することができる。
このように本発明は、胎児における染色体異常の迅速で精確で決定的な検出のための、胎児細胞の単離に依存しない非侵襲的方法を提供する。また、本発明は、胎児のDNA配列を決定するための非侵襲的方法を提供する。本発明は、限定はしないが、点突然変異、読み枠シフト、トランジョン、トランスバージョン、付加、挿入、欠失、付加−欠失、フレームシフト、ミスセンス、復帰突然変異、および微小付随体変化など、野生型配列に較べた場合の遺伝子配列における何らかの変化を検出するために利用できる。
短縦列反復を用いた胎児染色体異常の検出
短縦列反復(STR)は、前後様式で多数回反復されている長さが、通常2〜5塩基対の短いDNA配列である。縦列反復DNA配列は、ヒトゲノム全体で広く存在しており、集団内の個体間で十分な変異性を示している。微小付随体は9〜80塩基対のコア反復を有する。
他の態様において、胎児の染色体異常を検出するために、短縦列反復を用いることができる。鋳型DNAは、限定はしないが、細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、膣分泌物、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹膜液、腹水、糞便物質または身体滲出液などの核酸含有試料から得ることができる。他の態様において、核酸含有試料に、細胞溶解阻害剤を加える。好ましい態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の血液から得られる。他の態様において、鋳型DNAは、妊娠女性の血液の血漿または血清から得られる。
妊娠女性の血液から得られた鋳型DNAは、胎児DNAと母体DNAの双方を含有する。胎児DNAは母親から、および父親からのSTR類を含んでなる。染色体異常を検出するために母親と父親の間のSTR類における変異を利用することができる。
短縦列反復を増幅するためにプライマーを設計できる。限定はしないが、ポリメラーゼ連鎖反応、自立配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA端の高増幅、ポリメラーゼ連鎖反応とリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージ増幅、鎖置換増幅、およびスプライスオーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応などの任意の増幅法が使用できる。
限定はしないが、1〜5、5〜10、10〜50、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜1000および1000を超える任意の数の短縦列反復を分析できる。短縦列反復は、1つのPCR反応において、または複数のPCR反応において分析できる。好ましい態様において、複数の染色体のSTR類を分析する。
増幅後、限定はしないが、ゲル電気泳動および質量分析などの任意の数の方法によってPCR産物を分析できる。妊娠女性の鋳型DNAは、母親起源のSTR類と父親起源のSTR類を含んでいる。父親起源のSTR類が胎児DNAを表す。父親起源のSTR類と母親起源のSTR類とは、長さが同一であり得るか、あるいは、父親起源のSTR類と母親起源のSTR類とは、長さが異なり得る。
ヘテロ接合STR類は、母親のものと父親のものとで長さが異なるSTR類である。各PCR産物量を、各ヘテロ接合のSTR類に関して定量化できる。染色体の数が正常であれば、PCR産物量は略等しくなるはずである。しかし余分な染色体があれば、STR PCR産物のうちの1つがより多量に存在することになろう。
例えば、妊娠女性の血液から得られた鋳型DNAについて、染色体1以上の複数のSTR類を分析できる。各STRは、母親起源であっても、また父親起源であっても略同僚で存在するはずである。同様に、2つの染色体21でも、各STRは略同僚で存在するはずである。しかし、トリソミー21では、母親のものと父親のものとで長さが異なれば(ヘテロ接合STR)、STR PCR産物のうちの1つがより多量に存在するはずである。1つの染色体上の各へテロ接合STRの比を、別の染色体上の各へテロ接合STRの比と比較することができ、ここでの違いが、染色体異常の有無を示す。
キット
本発明の方法は、本法に用いられる試薬をキットの形態で提供することにより最も利便性よく実施される。キットは1種以上の以下の成分を含有することが好ましい:キットの使用説明書、別々の容器またはパッケージに封鎖した適切な緩衝剤、塩類、DNA抽出清浄剤、プライマー、ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、5’修飾物質および所望の場合、適切な純度の水、キットの使用者が本発明の方法によって適切な核酸試料を抽出し、それを分析することを可能にするような成分。キットで提供されるプライマーは、キットの目的およびそのキットを用いて試験することが望まれているDNAに依って変わる。
キットはまた、所望の、または種々の単一ヌクレオチド多形、特に望ましくない病態または疾病を伴う単一ヌクレオチド多型を検出するために設計できる。例えば、あるキットは、他にも成分はあるが、ハンチントン病に関連した1つ以上の関心対象座を増幅するための1セットの、または複数のセットのプライマーを含んでなり得る。他のキットは、他にも成分はあるが、I型またはII型糖尿病を発症する体質に関連した遺伝子に対する1セットの、または複数の組のプライマーを含んでなり得る。さらに他のキットは、他にも成分はあるが、心疾患を発症する体質に関連した遺伝子に対する1セットの、または複数のセットのプライマーを含んでなり得る。このようなキットの利用法に関する詳細は下記の「利用法」の節に提供している。
利用法
本発明の方法は、個体の遺伝子型を知ることが望まれる場合にはいつでも使用できる。本発明の方法は、遺伝子疾患の検出に特に有用である。本発明の方法は、胎児における遺伝子疾患の検出目的の非侵襲的方法として特に有用である。好ましい態様において、本発明の方法は、単一のヌクレオチド多型の同定法を提供する。
好ましい態様において、限定はしないが、トリソミー、モノソミー、重複、欠失、付加、染色体再配列、転座および他の異数体などの染色体異常を検出するために有用である。本法は、胎児における染色体異常を検出するために特に有用である。
好ましい態様において、本発明の方法は、胎児における疾病の存在、特に、ある遺伝子配列の存在の結果生じる遺伝子疾患、または遺伝子配列を知ることが望まれる個人において、同定が望まれる他の生物学的状態の同定を目的とした方法を提供する。このような遺伝子配列の存在に基づいた胎児におけるこのような配列の同定は、例えば、胎児がキャリアかどうかを決定するために、または胎児がある一定の遺伝子的特徴、病態または疾病を発症させる体質であるかどうかを判断するために使用できる。本発明の方法は、親と子の出生前遺伝子検査において特に有用である。
本発明により診断し得る疾病の例を表に挙げてある。
(表IV)
Figure 2006521086
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本発明の方法は、遺伝子的特徴または遺伝子疾患を伴う数十、数百、数千の複数の関心対象座において、その特徴または疾病状態を伴う関心対象座、特に、そのような特徴または病態を伴うことが最も多い関心対象座の塩基配列決定によって個人をスクリーニングするために有用である。本発明は、限定はしないが、心疾患、癌、内分泌疾患、免疫障害、神経学的障害、筋骨格障害、眼科学的障害、遺伝子異常、トリソミー、モノソミー、トランスバージョン、転座、皮膚障害および家族性疾患などの特定の疾患集団の分析に有用である。
また、本発明の方法は、例えば、母親または父親の検査などに使用するため、公知の供給源または配列のDNAに対する、未知の配列DNAの関係を確証、または同定するために使用できる。
本発明を全般的に説明したところで次に、ある特定の実施例を参照することにより、本発明の理解はさらに深まるであろう。本明細書に含まれている実施例は例示のみを目的としており、他に特記しない限り、限定を意図するものではない。
実施例
以下の実施例は、例示のみであり、請求項で規定された本発明の範囲を限定する意図はない。
実施例1
DNA配列をPCRによって増幅したが、非特異的増幅を減少させるために指定温度において、サイクル1を実施してから、サイクル2で温度を上げ、さらにサイクル3で温度を上げた。第2のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の融解温度を算出することによって、PCRのサイクル1のTM1を決定した。例えば、図1Bにおいて、TM1は領域「c」の略融解温度であり得る。アニーリング温度は、サイクル2において、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度であるTM2へと上昇させた。例えば図1Cにおいて、アニーリング温度(TM2)は、領域「b」の融解温度に相当する。サイクル3において、アニーリング温度は、第2のプライマーの全配列の略融解温度であるTM3へと上昇させた。例えば図1Dにおいて、アニーリング温度(TM3)は、領域「c」+領域「d」の融解温度に相当する。増幅の残りのサイクルはTM3で実施した。
鋳型DNAの調製
鋳型DNAは、インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血した5mlの血液試料から調製した。血液は36人の志願者から採血した。QIAGENより供給されたQIAamp DNAブラッド・ミディ・キット(Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)を用いて、各血液試料から鋳型DNAを単離した。36人の志願者各人の鋳型DNAを、さらなる分析のために単離後プールした。
プライマー設計
以下の4つの単一ヌクレオチド多型を分析した。すなわち、染色体21上に位置する、ヒト染色体21cSNPデータベースに帰属する同定番号SNP HC21S00340(図3、レーン1);染色体1上に位置するSNP TSC0095512(図3、レーン2)、染色体1上に位置するSNP TSC0214366(図3、レーン3)、および染色体1上に位置するSNP TSC0087315(図3、レーン4)である。SNP合弁会社(SNP Consortium Ltd.)のデータベースは、2002年2月14日時点で有効が確認されたウェブサイトアドレス、http://snp.cshl.org./でアクセスできる。
SNP HC21S00340は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0095512は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0214366は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0087315は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
全てのプライマーは、その3’領域が各関心対象座にフランキングする上流または下流の配列に相補的であるように、また、5’領域が制限酵素認識部位を含有するように設計された。第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する認識部位を含有した。
PCR反応
4つの関心対象座全てを、PCRを用いて鋳型ゲノムDNAから増幅した(米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)。PCR反応の構成要素は以下のとおりである:40ngの鋳型DNA、5μMの第1のプライマー、5μMの第2のプライマー、キアゲン(Qiagen)から入手された1×ホットスターTaqマスター・ミックス(HotStar Taq Master Mix)(カタログ番号203443)。ホットスターTaqマスター・ミックスは、DNAポリメラーゼ、PCR緩衝剤、200μMの各dNTP、および1.5mM MgClを含有した。
関心対象座SNPを含有する各鋳型DNAの増幅は、本明細書で厳密な低アニーリング温度、厳密な中アニーリング温度、厳密な高アニーリング温度と称される3つの異なる一連のアニーリング温度を用いて実施した。アニーリング温度プロトコルに係りなく、各PCR反応は、40サイクルの増幅からなっていた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスを用いて実施した。製造元による教示のとおり、PCRの最初のサイクル前に、反応液を95℃で15分間温置した。各伸長ステップ後の変性ステップは、95℃で30分間行った。温度を上げることなく効率的な伸長が可能な温度でアニーリング反応を実施した。
厳密な低アニーリング反応は、最初の3つのサイクルの各々における異なるアニーリング温度を含んでなる。すなわち、第1のサイクルのアニーリング温度は37℃で30秒;第2のサイクルのアニーリングは57℃で30秒;第3のサイクルのアニーリング温度は64℃で30秒であった。引き続くサイクルから完了までのアニーリングは64℃で実施した。
ゲルの写真(図3A)に示されるように、SNP TSC0087315(レーン4)の増幅後に複数のバンドが見られた。SNP HC21S00340(レーン1)、SNP TSC0095512(レーン2)、およびSNP TSC0214366(レーン3)の増幅では、強度の高い1本のバンドおよび、より高分子量のものである微弱な強度のバンド1本が生成した。低アニーリング温度条件が用いられた場合、正確な大きさの産物が生成したが、これは各反応における主産物であった。
厳密な中アニーリング反応は、最初の3つのサイクルの各々における異なるアニーリング温度を含んでなる。すなわち、第1のサイクルのアニーリング温度は40℃で30秒;第2のサイクルのアニーリングは60℃で30秒;第3のサイクルのアニーリング温度は67℃で30秒であった。引き続くサイクルから完了までのアニーリングは67℃で実施した。厳密な低アニーリング条件下で見られたことと同様に、SNP TSC0087315(図3B、レーン4)の厳密な中等度条件下の増幅により、複数のバンドが生成した。他の3種のSNP(レーン1〜3)の増幅では、1本のバンドが生成した。その結果、13塩基のアニーリング長を有するプライマーを用いて、ゲノムDNAから関心対象座を間違いなく増幅するために、アニーリング温度を変化させて使用できることがわかった。
厳密な高アニーリング反応は、最初の3つのサイクルの各々における異なるアニーリング温度を含んでなる。第1のサイクルのアニーリング温度は46℃で30秒;第2のサイクルのアニーリングは65℃で30秒;第3のサイクルのアニーリング温度は72℃で30秒であった。引き続くサイクルから完了までのアニーリングは72℃で実施した。ゲルの写真(図3C)に示されるように、厳密な高アニーリング温度を用いたSNP TSC0087315(レーン4)の増幅により、正確な分子量の単一バンドが生成した。最初の3つのサイクルの各々に関してアニーリング温度を上げることにより、非特異的増幅が排除された。SNP TSC00955112(レーン2)の増幅により1本のバンドが生成した。SNPのHC21S00340(レーン1)とTSC0214366(レーン3)は、厳密な高アニーリング温度において増幅できなかったが、厳密な中アニーリング温度で、これらのSNPは、1本のバンドとして増幅された。その結果、SNP TSC0087315(図3、レーン4)に対して示されているように、非特異的PCR産物を減少させるために、アニーリング温度を変化させて使用できることがわかった。
実施例2
染色体1上のSNP(TSC0095512)、染色体13上のSNP(TSC0264580)および染色体21上のSNP(HC21S00027)を分析した。TSC0095512は2つの異なるプライマーセットを用いて分析し、HC21S00027はヌクレオチドの取り込みに関して、2種の反応を用いて分析した。
鋳型DNAの調製
鋳型DNAは、インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血した5mlの血液試料から調製した。QLAGENより供されたQIAamp DNAブラッド・ミディ・キット(Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)を用いて、鋳型DNAを単離した。鋳型DNAは、前記キットに含まれる使用説明書に従って単離した。単離後、36人のヒト志願者の鋳型DNAを一緒にプールし、制限酵素EcoRIによって切断した。製造元の使用説明書に従って制限酵素消化を実施した。
プライマー設計
SNP HC21S00027は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した(図4A)。
また、SNP HC21S00027は、同一の第1のプライマーおよび以下の配列を有する異なる第2のプライマーを用いてPCRにより増幅した:
第2のプライマー:
Figure 2006521086
この第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する認識部位を含有した(図4B)。
SNP TSC0095512は、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した(図4C)。
またSNP TSC0095512は、同一の第1のプライマーおよび以下の配列を有する第2のプライマーを用いて増幅した:
第2のプライマー:
Figure 2006521086
この第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する認識部位を含有した(図4D)。
染色体13上に位置するSNP TSC0264580は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
PCR反応
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,196号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。本実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、40ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。SNP HC21S00027およびSNP TSC0095512に関するPCR産物は、図5A〜5Dに示してある。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。各PCR産物を、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの4つの別々の反応ウェルに分割した。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素により、精製PCR産物を消化した。SNP HC21S00027(図6Aと6B)およびSNP TSC0095512(図6Cと6D)を、2種の異なる第2プライマーを用いて別々の反応において増幅した。図6A(SNP HC21S00027)および図6C(SNP TSC0095512)は、制限酵素BsmFIによる消化後のPCR産物を表している(ニューイングランド・バイオラブス、カタログ番号R0572S)。図6B(SNP HC21S00027)および図6D(SNP TSC0095512)は、制限酵素BceAIによる消化後のPCR産物を表している。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。SNP TSC0264580は、BsmFIにより消化された。適切な制限酵素による消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
上記の制限酵素による消化によって、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
各SNPに対し、4つの別々のはめ込み反応を行ったが、4つの反応の各々が異なる蛍光標識をしたジデオキシヌクレオチド(ddATP、ddCTP、ddGTPまたはddTTP)を含有した。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddATP、蛍光標識したヌクレオチド以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ヌクレオチドは、ファーメンタス社(Fermentas Inc.)(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。蛍光標識ddNTP類の存在下、3’窪み端は、SNPまたは関心対象座に相当する1塩基だけ伸長した(図7A〜7D)。
SNP HC21S00027に関する「はめ込み」反応には、標識ddNTPと未標識dNTP類との混合物もまた、用いられた。40μMの未標識dNTP類、1μlの蛍光標識ddATP、1μlの蛍光標識ddCTP、1μlの蛍光標識ddGTP、および1μlのddTTPを含有する混合物を用いた以外は、上記のとおりの「はめ込み」条件であった。蛍光ddNTP類はアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565;アマーシャムは蛍光ヌクレオチドの濃度を公表していない)から入手した。SNP HC21S00027は、制限酵素BsmFIによって消化され、4塩基の5’オーバーハングを生成した。図7Eで示されるように、取り込まれた最初のヌクレオチドが標識ジデオキシヌクレオチドならば、3’窪み端は1個の塩基によってはめ込まれ、SNPまたは関心対象座を検出できる。しかし、取り込まれた最初のヌクレオチドがdNTPならば、ポリメラーゼは、ddNTPがはめ込まれるまでヌクレオチドの取り込みを続ける。例えば、最初の2つのヌクレオチドがdNTP類ではめ込みでき、3番目のヌクレオチドがddNTPではめ込みできると、オーバーハング内の3番目のヌクレオチドを検出できる。このように、5’オーバーハング全体の配列を決定することができ、各SNPまたは関心対象座から得られる情報が増加する。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた(図8A〜8D)。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスからの遊離後、10μlの試料から2〜3μlを48ウェル膜トレイ(ザ・ゲル・カンパニー(The Gel Company)、カタログ番号TAM48−01)内に入れた。トレイ内の試料を48フロー・メンブレン・コーム(Flow Membrane Comb)(ザ・ゲル・カンパニー(The Gel Company)、カタログ番号TAM48)に吸収させ、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル内へ挿入した(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)。
前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。膜コームを除去し、ABI377自動塩基配列決定装置上で3時間、ゲルを操作した。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。
図9Aに示されたように、36人の個人の試料から、2つのヌクレオチドのうちの1つ、アデノシンか、またはグアニンのいずれかが、SNP HC21S00027として検出された。SNP HC21S00027に存在すると報告されているのは、この2つのヌクレオチドである(http://snp.cshl.or/snpsearch.shtml)。
SNP TS00095512には、2つのヌクレオチドのうちの1つ、グアニンまたはシトシンが検出された(図9B)。関心対象座がBceAIに対する認識部位を含有する第2のプライマーによって増幅されでもまた、BsmFIに対する認識部位を含有する第2のプライマーによって増幅されても同じ結果が得られた。
図9Cに示すように、SNP TSC0264580には、2つのヌクレオチドのうちの1つ、アデノシンまたはシトシンのいずれかが検出された。このSNP部位に存在すると報告されているのは、この2つのヌクレオチドである(http://snp.cshl.or/snpsearch.shtml)。また、関心対象座から1塩基においてチミジンが検出された。配列依存様式でBsmFIは10/14位で幾つかのDNA分子を切断し、同じ配列を有する他のDNA分子を11/15位で切断する。制限酵素BsmFIがセンス鎖上の11個のヌクレオチドを切り取り、アンチセンス鎖上の15個のヌクレオチドを切り取る場合、3’窪み端はSNP部位の1個の塩基である。SNP TSC0264580の配列は、SNP部位の直前の塩基がチミジンであることを示した。この位置への標識ddNTPの取り込みにより、10/14位で切断された断片より1塩基小さな断片が生成する。したがって、11/15位で切断されたDNA分子は、SNP部位直前の塩基についての配列情報を提供し、10/14位で切断されたDNA分子は、SNP部位についての配列情報を提供した。
SNP HC21S00027を、BsmFIに対する認識部位を含有する第2のプライマーを用いて増幅した。BsmFIによる消化によって生成した5’オーバーハングをはめ込むために標識ddNTP類および未標識dNTP類の混合物を用いた。dNTPが取り込まれたならば、ポリメラーゼはddNTPが取り込まれるまでヌクレオチドの取り込みを続ける。各々が塩基1個だけ異なるDNA断片の集団が生成し、オーバーハング全体の配列が決定された。
図9Dに見られるように、SNPまたは関心対象座の直前のヌクレオチド(チミジン)に相補的なアデニンが検出された。このヌクレオチドは上述のBsmFIの11/15切断特性のため検出された。グアニンおよびアデノシンがSNP部位において検出されたが、これらは、このSNP部位に関して報告されている2つのヌクレオチドである(図9A)。2つのヌクレオチドは、色素の分子量が異なるため、SNP部位において検出され、これによって2つのヌクレオチドが分離できた。次に検出されたヌクレオチドは、SNP部位のすぐ下流のヌクレオチドに相補的であるチミジンであった。その次に検出されたヌクレオチドは、SNP部位から2塩基下流のヌクレオチドに相補的であるグアニンであった。最後に、SNP部位から下流の3番目のヌクレオチドに相補的であるアデノシンが検出された。SNP部位についての情報だけでなく、SNP部位直前のヌクレオチドおよび隣接した3つのヌクレオチドについての情報が得られた。
関心対象座は、突然変異を含有していなかった。しかし、関心対象座のうちの1つが、限定はしないが、点突然変異、挿入、欠失、転座または前記突然変異の任意の組合わせなどの突然変異を有するとしたら、それは、コンセンサス配列または公表配列との比較によって同定できるであろう。各関心対象座に属する配列を、各関心対象における遺伝子本来の、非疾病関連配列と比較することにより、その配列における突然変異の有無が決定される。次に、その配列における突然変異の所見を、その個人における疾病兆候の存在として、またはその疾病を発現する体質として適宜解釈される。被験者が突然変異配列の1つまたは2つの対立遺伝子を有するかどうか、したがって、その被験者がキャリアかどうか、または示された突然変異から生じるのが、優性状態か劣性状態かを決定するために、突然変異配列対正常、すなわち非突然変異配列との相対量を評価することができる。
実施例3
染色体1の4つの関心対象座および染色体21の2つの関心対象座を別々のPCR反応にて増幅し、一緒にプールしてから分析した。増幅された関心対象座の各々の大きさが異なるようにプライマーを設計することにより、関心対象座を検出することができた。
鋳型DNAの調製
鋳型DNAは、インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血した5mlの血液試料から調製した。キアゲン(QIAGEN)より供給されたキアアンプDNAブラッド・ミディ・キット(カタログ番号51183)を用いて、各血液試料から鋳型DNAを単離した。鋳型DNAをキットに含まれる使用説明書のとおり単離した。36人のヒト志願者から鋳型DNAを単離し、さらなる分析のために1つの試料にプールした。
プライマー設計
SNP TSC0087315は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0214366は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0413944は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0095512は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP HC21S00131は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP HC21S00027は、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
各SNPに関して、第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、5’末端にビオチンタグを有した。各SNPの増幅に用いられた第2のプライマーは制限酵素BceAIに対する認識部位を含有した。
PCR反応
PCR反応は、以下のアニーリング温度を用いた以外は実施例2に記載されたとおりに実施した:PCRの1番目のサイクルのアニーリング温度は37℃で30秒、PCRの2番目のサイクルのアニーリング温度は57℃で30秒、およびPCRの3番目のサイクルのアニーリング温度は64℃で30秒であった。引き続く全てのサイクルのアニーリング温度は64℃で30秒であった。PCRは37サイクル実施した。PCR後、反応液から1/4容量を取り、1本の管に合わせた。
関心対象断片の精製
試料をストレプタウェルマイクロ滴定プレートの単一ウェルに結合させたこと以外、PCR産物(合わせて1つの試料となっており、「試料」と称す)は、実施例2に記載されたとおりゲノム鋳型DNAから分離した。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーの認識部位に結合した制限酵素BceAIによって試料を消化した。制限酵素消化は、酵素と共に供給された使用説明書に従って実施した。制限酵素消化後、ウェルを1×PBSによって3回洗浄した。
ヌクレオチドの取り込み
上記の制限酵素による消化によって、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、ヌクレオチドの取り込みを可能にした。
はめ込み反応には、以下の成分を用いた:1μlの蛍光標識ddATP、1μlの蛍光標識ddTTP、1μlの蛍光標識ddGTP、1μlの蛍光標識ddCTP、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は40℃で10分間実施した。標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット(US79565);キットに備えられているddNTP類の濃度は所有権があり、アマーシャムによって公表されていない)から入手した。蛍光標識ddNTP類の存在下、3’窪み端は、SNPまたは関心対象座に相当する1塩基だけはめ込まれた。
ヌクレオチドの取り込み後、ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスからの遊離後、10μlの試料から2〜3μlを48ウェル膜トレイ(ザ・ゲル・カンパニー(The Gel Company)、カタログ番号TAM48−01)内に入れた。トレイ内の試料を48フロー・メンブレン・コーム(Flow Membrane Comb)(ザ・ゲル・カンパニー(The Gel Company)、カタログ番号TAM48)に吸収させ、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル内へ挿入した(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)。
前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。膜コームを除去し、ABI377自動塩基配列決定装置上で3時間、ゲルを操作した。取り込まれたヌクレオチドを蛍光により検出した。
増幅した各関心対象座の大きさが異なるようにプライマーを設計した。図10に示すように増幅した各関心対象座は、約5〜10ヌクレオチド異なっていたので、ゲル電気泳動によって関心対象座を互いに分離することができた。SNP TSC0087315に関してグアニンとシトシンの2つのヌクレオチドが検出された。これらはSNP TSC0087315に存在することが報告されている2つのヌクレオチドであった(http://snp.cshl.org/snpsearch.shtml)。この試料は、36人の鋳型DNAを含んでなり、グアニンを取り込んだDNA分子の分子量はシトシンを取り込んだDNA分子の分子量とは異なっていたため、各ヌクレオチドに関して異なるバンドが見られた。
SNP HC21S00027に、グアニンとアデノシンの2つのヌクレオチドが検出された(図10)。このSNPに関して報告された2つのヌクレオチドは、グアニンとアデノシンである(http://snp.cshl.org/snpsearch.shtml)。上記に考察したように、この試料は、36人の鋳型DNAを含んでおり、この試料中に双方のヌクレオチドが示されることが予想される。グアニンを取り込んだDNA断片の分子量は、アデノシンを取り込んだDNA断片とは異なっていたため、双方のヌクレオチドを検出できた。
SNP TSC0214366にヌクレオチド、グアニンが検出された(図10)。このSNP位置に存在することが報告されている2つのヌクレオチドはチミジンとシトシンである。
SNP TSC0413944にヌクレオチド、グアニンが検出された(図10)。このSNPに関して報告された2つのヌクレオチドはグアニンとシトシンである(http://snp.cshl.org/snpsearch.shtml)。
SNP TS00095512にヌクレオチド、シトシンが検出された(図10)。このSNP部位に関して報告された2つのヌクレオチドはグアニンとシトシンである(http://snp.cshl.org/snpsearch.shtml)。
SNP HC21S00131に検出されたヌクレオチドはグアニンであった。このSNP部位に関して報告された2つのヌクレオチドはグアニンとアデノシンである(http://snp.cshl.org/snpsearch.shtml)。
上記に考察したように、この試料は、36人の鋳型DNAを含んでおり、SNP部位に双方のヌクレオチドが示されることが予想される。SNP TSC0413944、TSC0095512、TDC0214366およびHC21S00131に関しては、2つのヌクレオチドのうちの1つが検出された。これらのSNP部位に関して報告された双方のヌクレオチドが試料中に存在しているようであるが、一方の蛍光色素が他方より圧倒的に多い。1つのヌクレオチドを取り込んだDNA分子の分子量により、他のヌクレオチドを取り込んだDNA分子の効率的な分離ができなかった。しかし、SNP類は互いに容易に分離し、各SNPにとって適切なヌクレオチドが取り込まれた。PCR後、単一試料として処理された複数の染色体の複数の関心対象座の配列を決定した。
蛍光標識ddNTP類を含有する1つの反応を、複数の関心対象座を含む試料で実施した。あるいは、各反応が1つの蛍光認識ヌクレオチド(ddATP、ddTTP、ddGTP、またはddCTP)および未標識ddNTP類を含有する4つの別々のはめ込み反応を実施できた(実施例2、図7A〜7Dおよび図9A〜Cを参照)。4つの別々の「はめ込み」反応により、関心対象座に存在する任意のヌクレオチドが検出できる。例えば、1個人の複数の関心対象座を含有する試料を分析するとして、前記個体が、1つ以上の関心対象座においてヘテロ接合であれば、このヘテロ接合の関心対象座におけるヌクレオチドを決定するために、4つの別々の「はめ込み」反応が利用できる。
また、複数の個人の鋳型を含有する試料を分析する場合、4つの別々の「はめ込み」反応によって関心対象に見られるヌクレオチドの頻度とは独立に、試料中に存在するヌクレオチドが検出できる。例えば、試料が50人の鋳型DNAを含有し、そのうち49人が、関心対象座にチミジンを有し、1人がグアニンを有するとすれば、図9A〜9Cにあるように各「はめ込み」反応をゲルの別々のレーンで操作する4つの別々の「はめ込み」反応の実施によってグアニンを検出できる。複数の鋳型DNAからなる試料を分析する場合、質量の違いにより1個の関心対象座部位における複数のヌクレオチドを識別する必要性が複数の「はめ込み」反応によって緩和される。
本実施例において、複数の単一ヌクレオチド多形を分析した。限定はしないが、複数の関心対象座の突然変異、トランジション、トランスバージョン、転座、挿入、および欠失などの突然変異の有無を決定することも可能である。複数の関心対象座は、1個の染色体のものであり得るか、または複数の染色体のものであり得る。複数の関心対象座は1個の遺伝子のものであり得るか、または複数の遺伝子のものであり得る。
疾病の表現型の原因となるか、またはその素因を与える複数の関心対象座の配列が決定できる。例えば、癌または任意の他の疾病に関する1個から数十、数百、数千個の遺伝子を増幅できる。増幅した各関心対象座の大きさが異なるようにプライマーを設計できる。PCR後、増幅した関心対象座を合わせて1つの試料として処理できる。あるいは複数の関心対象座を1つのPCR反応において増幅できるか、または関心対象座の総数、例えば100個を、PCR反応1つにつき例えば、10個の関心対象座の試料に分割して後でプールすることができる。本明細書で示すように、複数の関心対象座の配列が決定できる。このように、1つの反応において、疾病の表現型の原因となるか、またはその素因を与える1個から10個、数百個、数千個の遺伝子配列を決定することができる。
実施例4
妊娠女性の試料における遊離の胎児DNAを用いて胎児の染色体異常の配列を決定または検出する能力は、胎児DNAのパーセンテージの低さが障害となっていた。遊離胎児DNAのパーセンテージを上昇させることによって、突然変異、挿入、欠失、転座、トランスバージョン、モノソミー、トリソミー、トリソミー21、トリソミー18、トリソミー13、XXY、XXX、他の異数性、欠失、付加、増幅、転座および再配列の検出が増強すると考えられる。妊娠女性から得られた血漿中の胎児パーセントを、細胞溶解阻害剤の存在下、非存在下双方において決定した。Y染色体上の遺伝子マーカーを用いて、胎児DNAのパーセントを算出した。
鋳型DNAの調製
インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血された血液試料5mlから鋳型DNAを調製した。血液は2本の管に分割した(フィッサシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9mlEDTAバキューム管、カタログ番号NC9897284)1本の管にホルムアルデヒド(25μl/ml血液)を加えた。他方の管は、EDTAの存在以外は未処理のままであった。2本の管を1000rpmにて10分間回転させた。各試料の上澄み液(血漿)の2ミリリットルを新たな管に移し、3000rpmにて10分間回転させた。各試料の800μlをDNA精製に用いた。血球のDNA精製用キアゲン・ミディキット(キアンプDNAブラッド・ミディキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)を用いてDNAを単離した。DNAを100μlの希釈水に溶出させた。2種の鋳型DNAが得られた。すなわち、EDTAで処理した血液試料由来のもの、ならびにEDTAおよびホルムアルデヒドで処理した血液試料由来のものである。
プライマー設計
2つの異なったプライマーセットを用いた。すなわち、一方のプラーマーセットは、Y染色体に特異的であり、したがって、胎児DNAに特異的であり、他方のプライマーセットは、母体の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの双方に存在するのう胞性線維症遺伝子を増幅するように設計された。
本実施例において、各プライマーの5’全体および3’の配列が鋳型DNAにアニールするように第1のプライマーおよび第2のプライマーを設計した。本実施例において、胎児はXY遺伝子型を有しているので、胎児DNAの存在マーカーとして、Y染色体を用いた。Y染色体上のSRY遺伝子を増殖するために以下のプライマーを設計した。
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
任意の遺伝子、または遺伝子領域、または任意の染色体の任意の部分を増強するために設計されたプライマーを母体DNAおよび胎児DNAを検出するために用いることができた。本実施例では、のう胞性線維症遺伝子を増幅するために、以下のプライマーを設計した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
PCR反応
SRY遺伝子およびのう胞性線維症遺伝子を、PCRを用いて鋳型ゲノムDNAから増幅した(米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応はキアゲン(Quiagen)より供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。SRY遺伝子増幅のために、キアゲン精製カラムから溶出したDNAを連続的に1:2の希釈した。のう胞性線維症遺伝子の増幅のために、キアゲン精製カラムからのDNAを1:4に希釈し、次に連続的に1:2に希釈した。以下の成分を各PCR反応に用いた:8μlの鋳型DNA(希釈または未希釈)、1μlの各プライマー(5μM)、10μlのホットスターTaq混合物。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分
(2)94℃で1分
(3)54℃で15秒
(4)72℃で30秒
(5)ステップ2〜4を45サイクル反復
(6)72℃で10分。
胎児DNAの定量化
キアゲンカラムから溶出した鋳型DNAを、以下の濃度に連続的に希釈した:1:2、1:4、1:8、1:16、1:32、1:64、1:128、1:256、1:512、1:1024、1:2048、1:4096。SRY遺伝子の増幅は、未希釈の鋳型を用いて実施した、1:2、1:4、1:8、1:16、1:32、1:64、1:128、1:256、1:512。のう胞性線維症遺伝子の増幅は、1:4、1:8、1:16、1:32、1:64、1:128、1:256、1:512、1:1024、1:2048、1:4096に希釈した鋳型DNAを用いて実施した。EDTA単独で処理した血漿試料ならびにEDTAおよびホルムアルデヒドで処理した血漿試料から精製した鋳型DNAを用いて同じ連続希釈を実施した。
EDTAで処理した血漿試料から単離した鋳型DNAを用いたPCR反応の結果を図11Aに示してある。SRY遺伝子は、未希釈鋳型DNAから、および1:2に希釈した試料においても増幅した(図11A)。SRY遺伝子は、次の7つの連続希釈液において増幅されなかった。一方、のう胞性線維症遺伝子は、1:256まで連続希釈されたもので検出された。のう胞性線維症遺伝子は、血漿中に存在する母体DNAのパーセンテージが高いため、より多く存在することが予想された。遺伝子産物の増幅に備えた最終希釈試料は、のう胞性線維症遺伝子か、またはSRY遺伝子の1つのコピーを有すると推測された。
ホルムアルデヒドとEDTAで処理された血漿試料から単離された鋳型DNAを用いたPCR反応の結果は図11Bに示してある。SRY遺伝子は、未希釈鋳型DNA、および1:2に希釈された試料において増幅した(図11B)。SRY遺伝子は、次の6つの連続希釈液において増幅されなかった。しかし、1:256希釈液において、SRY遺伝子は検出された。1:256試料における増幅が真のシグナルを示している可能性は少ない。なぜならば、その前の6つの希釈系がSRY増幅に関して全て陰性であったからである。この試料におけるSRY遺伝子の増幅は、用いられたPCRサイクル数の多さにより生じた実験上の人為結果である可能性が高い。したがって、試料中に存在する胎児DNA量の算出に1:256試料を使用しなかった。
のう胞性線維症遺伝子の増幅は、1:16希釈した試料中に検出された(図11B)。ホルマリンの存在により、母体細胞の溶解が妨げられ、したがって、試料中母体DNAのパーセンテージは低い。これは、EDTAのみで処理され、1:256の希釈液まで増幅が維持された試料とは極めて対照的である。
母体血漿中に存在する胎児DNAのパーセントを以下の式を用いて算出した:
%胎児DNA=(SRY遺伝子量/のう胞性線維症遺伝子量)100。
SRY遺伝子量は、遺伝子が増幅された最高希釈値によって示された。同様に、のう胞性線維症遺伝子量は、それが増幅された最高希釈値によって示された。前記式は、2つの乗法因子を含有しているが、これは、SRY遺伝子(Y染色体上に位置)にはただ1つのコピーが存在し、一方、のう胞性線維症遺伝子には2つのコピーが存在する事実に関して標準化するために用いられる。
上記実施例において、EDTAのみで処理された試料に存在する胎児DNAのパーセンテージは、1.56%(2/256100)であった。血漿中に存在する胎児DNAの報告されているパーセンテージは、0.39%から11.9%の間である(パートルおよびビアンチ(Pertl,and Bianchi)、Obstetrics and Gynecology 98:p.483−490(2001))。ホルマリンとEDTAとで処理された試料中に存在する胎児DNAのパーセンテージは25%であった(2/16100)。この実験は多数回反復され、各回ともホルマリンの存在により胎児DNAの全体パーセンテージが増大した。
ホルマリン有無での18の血液試料からの胎児DNAパーセントを、1:5の連続希釈を実施した以外は上記のとおり算出した。1:5希釈を実施したため、SRY遺伝子またはのう胞性線維症遺伝子のいずれかの検出を可能にした最終連続希釈液は、遺伝子の1つのコピーを有したか、またはその遺伝子の4つのコピーを有したと考えられる。18の試料のホルマリン有無における結果を表Vにまとめてある。低範囲では、最終希釈試料が遺伝子の1つのコピーを有したことが推測され、高範囲では、最終希釈液が遺伝子の4つのコピーを有したことが推測された。
(表V)ホルマリン有無における胎児DNA平均パーセンテージ
Figure 2006521086
母体細胞溶解の減少、したがって、試料中に存在する母体DNA量の減少によって、胎児DNAの全体的増加が達成された。本実施例では、細胞溶解の防止にホルムアルデヒドを使用したが、細胞溶解を防ぎ、細胞の構造的完全性を増加させる任意の試剤が使用できる。2種以上の細胞溶解剤を使用できる。母体血漿における胎児DNAの増加により、胎児DNAの配列決定が可能になり、また限定はしないが、点突然変異、読み枠シフト、トランジョン、トランスバージョン、付加、挿入、欠失、付加−欠失、フレームシフト、ミスセンス、復帰突然変異、および微小付随体変化、トリソミー、モノソミー、他の異数性、増幅、再配列、転座、トランスバージョン、欠失、付加、増幅、断片、転座、および再配列などのDNA配列異常または染色体異常の迅速な検出が提供される。
実施例5
トリソミー21の遺伝子座を有する個人の鋳型DNAを分析した。染色体13上の3つの関心対象座および染色体21上の2つの関心対象座を分析した。
鋳型DNAの調製
インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血された血液試料5mlから鋳型DNAを調製した。前記ヒト志願者は、追加の染色体21(トリソミー21)を有することが前もって遺伝子型決定されていた。キアゲン(QIAGEN)より提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。
プライマー設計
以下の5種の単一ヌクレオチド多形を分析した:染色体21上に位置するSNP TSC0115603;染色体21上に位置するSNP TSC03209610;染色体13上に位置するSNP TSC0198557;および染色体13上に位置するSNP TSC0200347。他の個人の鋳型DNAを内部対照として用いた。グアニンに関してホモ接合であることが前もって同定されたSNP TSC0200347を内部対照として用いた。SNP合弁会社のデータベースは、2002年4月1日現在実効があるhttp://snp.eshl.org/ウェブサイト宛先にてアクセスできる。
SNP TSC0115603を以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端をビオチン化し、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0309610を以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチン基を含有し、制限酵素EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP(ss)813773(NCBI寄託SNP(ss)データベースによる帰属登録番号)を、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチン基を含有し、制限酵素EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0198557を、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチン基を含有し、制限酵素EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0197279を、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチン基を含有し、制限酵素EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0200347を、以下のプライマーを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチン基を含有し、制限酵素EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BceAIに対する制限酵素認識部位を含有した。
PCR反応
PCRを用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅された5つ全ての関心対象座を増幅した(米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応はキアゲン(Quiagen)より供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。各関心対象座に関して、一反応当たりの鋳型DNA量およびプライマー量を最適化できる。本実施例では、40ngのヒトゲノム鋳型DNAおよび5μMの各プライマーを用いた。38サイクルのPCRを実施した。SNP TSC0115603、SNP TSC0309610およびSNP TSC02003437に関して以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)42℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)60℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)69℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを37回反復;
(9)72℃で5分。
SNP ss813773、SNP TSC0198557、およびSNP TSC0197279に関して以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを37回反復;
(9)72℃で5分。
各PCRの第1のサイクルにおいて、アニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度であった。PCRの第2のサイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度であった。PCRの第3のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの全配列の略融解温度であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を次第に上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度は、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象断片の精製
キアゲン・ミン・エリュート(Qiagen MinElute)PCR精製キットを製造元の使用説明書(カタログ番号28006)に従って用い、PCR反応の成分からPCR産物を分離した。前記PCR産物を20μlの希釈水に溶出させた。各増幅SNPに1ミクロリットルのPCR産物、1μlの増幅内部対照DNA(SNP TSC0200347)および8μlの希釈水を混合した。各試料の5ミクロリットルをピアース・ストレプタウェル・マイクロ滴定プレート(カタログ番号15501)の2つの別々の反応ウェル内に入れた。第1のプライマーは5’ピオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を45℃、150rpmにて1時間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合した制限酵素により精製PCR産物を消化した。精製PCR産物を制限酵素BceAI(ニューイングランド・バイオラブス、カタログ番号R0623S)。この消化は、制限酵素と共に供された使用説明書に従ってマイクロ滴定プレートのウェル内で実施した。適切な制限酵素による消化後、前記ウェルをPBSで3回洗浄し、開裂した断片を除去した。
標識ヌクレオチドの取り込み
上記制限酵素消化によって、SNPおよび3’窪み端を含有した、5’オーバーハングを有するDNAが得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
各SNPに対し、2つのはめ込み反応を行ったが、各反応が異なった蛍光標識ジデオキシヌクレオチドを含有した(特定のSNPに存在することが報告されたヌクレオチドに依って、ddATP、ddCTP、ddGTPまたはddTTP)。例えば、SNP TSC0115603にはヌクレオチドのアデニンとチミジンが報告されている。したがって、SNP TSC0115603に関する消化PCR産物は、蛍光標識ddATPか、または蛍光標識ddTTPのいずれかと混合した。各反応とも内部参照として蛍光標識ddGTPを含有した。以下の成分を各はめ込み反応に加えた:2μlのROX−共役ジデオキシヌクレオチド(各SNPに関して報告されたヌクレオチドにより)、2μlのROX−共役ddGTP(内部対照)、2.5μlの10×シーケナーゼ緩衝剤、2μlのシーケナーゼおよび25μl反応液に必要な水。はめ込み反応は、全て45℃で45分間実施した。しかし、より短い時間の取り込みを用いることができる。非蛍光標識ddNTP類は、ファーメンタス社(Fermentas Inc.)(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。ROX−共役ddNTP類は、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)から入手した。蛍光標識ddNTP類の存在下、3’窪み端は、SNPまたは関心対象座に相当する1塩基だけ伸長した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に「はめ込み」DNA断片を、製造元の推奨に従い、制限酵素EcoRIによる消化によって、ストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間行った。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスから遊離後、10μlの試料のうち3μlを48ウェル膜トレイ(ザ・ゲル・カンパニー(The Gel Company)、カタログ番号TAM48−01)に入れた。トレイ中の試料を48フロー膜コーム(ザ・ゲル・カンパニー、カタログ番号TAM48)で吸収させ、36cm5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオホィッテーカー・モレキュラー・アプリケーションズ(BioWhittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)内に挿入した。
試料を3000ボルトで3分間、ゲル中で電気泳動させた。膜コームを取り出し、ゲルをABI377自動塩基配列決定装置上で3時間操作した。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光で検出した。
図12に見られるように、SNP TSC0115603は、標識ddTTPによって「はめ込み」がなされ(レーン1)、別の反応においては、標識ddTTPによってなされた(レーン3)。生データを用いたヌクレオチド間の計算比は、66:34で、これは、トリソミー21を有する個人における染色体21上のSNPに関する理論比66:33と一致する。色素の取り込み効率における可変性を最少化するために、ddTTPとddATPの双方とも同じ蛍光色素で標識した。しかし、種々の蛍光標識、または任意の検討可能な標識を付けたヌクレオチドが使用できる。異なった標識を使用する場合は、取り込み率を計算することが好ましい。
各はめ込み反応を別々のウェルで実施したため、マイクロ滴定プレートのウェル間でDNA結合が変化する可能性が存在し得た。ストレプトアビジン被覆プレートに対するDNA結合の変化の可能性を明らかにするために内部対照を用いた。試料を2つの別々のウェルに分割する前に、グアニンに関してホモ接合の内部対照(SNP TSC0200347)を試料に添加したため、等しい量の内部対照が各ウェルに存在するはずである。2つの反応間の取り込みddGTP量を決定することができる。各ウェルにおけるDNA量が等しいならば、取り込みddGTP量も等しくなるはずである。なぜならば、この反応は飽和条件下で行われており、飽和条件とは、各鋳型分子におけるヌクレオチドの取り込みを維持する条件だからである。内部対照を用いると、ddATP対ddTTPの取り込み率は、63.4:36.6であった。この率は生データによって得られた比率に極めて類似しており、特定のDNPに関して、2つのはめ込み反応における違いが小さいことを示した。
(表VI)トリソミー21を有する個体由来のDNA鋳型における複数のSNPでの対立遺伝子の頻度
Figure 2006521086
SNP TSC0309610は、ddTTP(レーン3)またはddCTP(レーン4)によってはめ込みがなされた(図12)。生データを用いたヌクレオチドの計算比は64:36であった。ddTTPとddCTPの双方とも同じ蛍光色素で標識した。上記で検討したとおり内部対照に対する標準化後、ddTTP対ddCTPの対立遺伝子計算比は、66.8:33.2であった(表VI)。やはり、生データからの計算比と、内部対照を用いた計算比の双方とも、トリソミーを有する個人における染色体21上のSNPに関する理論比、66.6:33.4に極めて類似している。
ヘテロ接合SNP類におけるヌクレオチドの比、66:33が3つのコピーにおいて存在する染色体上の座を表したことを証明するために、染色体13上のSNP類を分析した。血液試料を採取した個人は1つの母親染色体13と1つの父親染色体13を有することの予め遺伝子型決定がなされていた。
寄託されたSNP(ss)813773をddATPによって(レーン5)またはddCTPによって(レーン6)はめ込んだ(図12)。このヘテロ接合SNPにおけるヌクレオチドの計算比は、生データを用いると46:54であった。この比は予測比50:50の10%以内にある。染色体の追加コピーが存在する場合に予測される比の66:33に近似していないことは重要である。
内部対照に対する標準化後、計算比は41:59であった。予測値に反して、内部対照に対する標準化によって計算比と理論比との間の食い違いが増大した。この結果、DNA試料をアリコート化する際に生じた実験的誤差を表していると思われる。
また、「はめ込み」反応の鋳型として用いられたオーバーハング生成に使用された制限酵素が、一方の鋳型DNAを、他方の鋳型DNAより優先的に切断することも可能である。2つの鋳型は、SNP部位におけるヌクレオチドに関して異なっており、これが切断に影響を与え得る。切断部位に隣接するヌクレオチドがSNP部位におけるヌクレオチドとは独立して同一であるように、プライマーを設計することができる(標題「プライマー設計」の節でさらに検討される)。
染色体13上のSNP TSC0198557は、一反応においてはddTTPにより(レーン7)、他の反応においてはddCTPにより(レーン8)はめ込みがなされた(図12)。生データを用いたこのSNPにおけるヌクレオチドの計算比は55:45であった。内部対照に対する標準化後、T:Cの対立遺伝子計算比は49:51であった。標準化した比率は、染色体13の2つのコピーを有する個人に関する理論比50:50により近かった。
染色体13上のSNP TSC0197279は、一反応においてはddTTPにより(レーン9)、他の反応においてはddCTPにより(レーン10)はめ込みがなされた(図12)。生データを用いたこのSNPにおけるヌクレオチドの計算比は53:47であった。内部対照に対する標準化後、T:Cの対立遺伝子計算比は50.7:49.3であった。これは、染色体13の2つのコピーを有する個人に関する理論比50:50と一致している。
染色体13上の分析されたSNP類のうちの2つにおけるヌクレオチドの比は略50:50であった。1つのSNP、ss813773は46:54の比を示し、内部対照に対して標準化すると、この比は41:59であった。これらの比は予測された50:50からはずれているが、同時に、これらの比は66:33の比で示される余分な染色体を示しているわけでもない。この特定SNPからのデータは決定的ではないが、偽陽性を示しているわけではない。このSNPのデータについての結論は引き出せない。しかし、他の2つのSNP類は正常な数の染色体を示した。一染色体上の限定はしないが、1〜5、5〜10、10〜50、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、1000〜2000、2000〜3000、および3000を超える複数のSNPを分析することが好ましい。染色体異常の有無を決定するためには、特定の染色体に対する比の平均を用いることが好ましいであろう。しかし、1つの関心対象座を分析することもやはり可能である。決定的でないデータが得られた場合は、他の関心対象座を分析できる。
鋳型DNAを採取した個人は、トリソミー21を有することの予め遺伝子型決定がなされており、染色体21上のSNPにおける対立遺伝子頻度は追加の染色体21が存在していることを示している。追加の染色体は、各SNPに対して追加のヌクレオチドを与え、したがって、ヘテロ接合SNPにおける伝統的な50:50比を変化させる。これらの結果は、複数のSNPで一貫しており、染色体21上に見られるものに明白である。染色体13上のSNPの対立遺伝子頻度には、略50:50の予測比が得られた。このSNP検出法は、限定はしないが、転座、トランスバージョン、モノソミー、トリソミー21、トリソミー18、トリソミー13および他の異数体、欠失、付加、増幅、転座、および再配列などの染色体異常の検出に使用できることが、これらの結果により証明される。
実施例6
インフォームドコンセントを得た後、4人からゲノムDNAを採取した。鋳型DNAを用いて染色体13上の6種のSNP(TSC0837969、TSC0034767、TSC1130902、TSC0597888、TSC0195492、TSC0607185)を分析した。これらのSNP類に関する情報は、以下のウェブサイトに見ることができる:www.snp.chsl.org/snpsearch.shtml;ウェブサイトは2003年2月11日現在有効である。
6つの選択されたSNP部位における個人の遺伝子型を決定するために、1種の蛍光色素で標識された単一ヌクレオチドを用いた。6種のSNPが1つの反応において分析できるようにプライマーを設計した。
鋳型DNAの調製
インフォームドコンセントを得たヒト志願者から静脈穿刺により採血された血液試料9mlから鋳型DNAを調製した。キアゲン(QIAGEN)より提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit)(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAは、キットに含まれる使用説明書に従って単離した。
プライマー設計
SNP TSC0837969は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から60塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0034767は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から50塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC1130902は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から60塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0597888は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から70塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0195492は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から80塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
SNP TSC0607185は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端にビオチンタグを有し、また、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から90塩基をアニールするように設計された。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,196号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。この実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供給されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たり鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、40ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおける3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度は、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。本実施例において、第1のプライマーが関心対象座から様々な距離でアニールするように設計された。当業技術者は、第1のプライマーのアニーリング位置が関心対象座から5〜10、11〜15、16〜20、21〜25、26〜30、31〜35、36〜40、41〜45、46〜50、51〜55、56〜60、61〜65、66〜70、71〜75、76〜80、81〜85、86〜90、91〜95、96〜100、101〜105、106〜110、111〜115、116〜120、121〜125、126〜130、131〜140、1410〜160、1610〜180、1810〜200、2010〜220、2210〜240、2410〜260、2610〜280、2810〜300、3010〜350、3510〜400、4010〜450、450〜500塩基または500塩基を上回ってよいことを解する。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。PCR反応後、1個体の各PCR反応液の1//4容量をロッシュ・ダイアグノシティックス(Roche Diagnostics)GmbHによるストレプタウェル、透明ハイ・バンドプレート(カタログ番号一645692、ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載)の1つのウェル内に共に混合した。第1のプライマーは5’ピオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
下記にSNP TSC837969に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハング(Rは可変部位を示す)を示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
アンチセンス鎖上のオーバーハング内3番目の位置は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。この可変部位は、アデニンまたはグアニンであり得るので、双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いた。グアニンに関してホモ接合、アデニンに関してホモ接合またはヘテロ接合の個人に対するはめ込み反応を以下に図式化している。
TSC0837969におけるグアニンに関しホモ接合:
Figure 2006521086
標識ddGTPは、オーバーハングの1位に取り込まれる。オーバーハングの1位において標識ddGTPによってはめ込まれた分子に対応するただ1つのシグナルが見られる。
TSC0837969におけるアデニンに関しホモ接合:
Figure 2006521086
未標識dATPは、オーバーハングの1位に取り込まれ、未標識dTTPは、オーバーハングの2位に取り込まれる。標識ddGTPは、オーバーハングの3位に取り込まれた。ただ1つのシグナルが見られることになる。すなわち、ddGTPにより、3位にはめ込まれた分子の分子量は、1位にはめ込まれた分子の分子量とは異なるため、アデニンまたはグアニンに関してホモ接合の個人を容易に同定することができる。
TSC0837969においてヘテロ接合:
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られることになる。すなわち、ddGTPにより、1位にはめ込まれたDNA分子に相当する第1のシグナルおよびオーバーハングの3位にはめ込まれた分子に相当する第2のシグナルである。この2つのシグナルは、限定はしないが、ゲル電気泳動など、分子量に基づいて分離する任意の方法を用いて分離できる。
下記にSNP TSC0034767に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハング(Rは可変部位を示す)を示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは、上の鎖として示されている)上のTSC0034767に関して見られたヌクレオチドはシトシンとグアニンである。オーバーハングの2位はチミジンに相補的なアデニンに相当する。オーバーハングの3位は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いた。
この場合、第2のプライマーは、関心対象座の上流にアニールするので、はめ込み反応はアンチセンス鎖(ここでは、下の鎖として示されている)上で生じる。IIS型の制限酵素認識部位を含有する第2のプライマーが、関心対象座の上流でアニールするのか、下流でアニールするかに依って、センス鎖かまたはアンチセンス鎖のいずれかをはめ込みできる。
下記にSNP TSC1130902に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハング(Rは可変部位を示す)を示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは、上の鎖として示されている)上のTSC1130902に関して見られたヌクレオチドはアデニンとグアニンである。オーバーハングの2位はチミジンに相当し、オーバーハングの3位は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。
双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いる。
下記にSNP TSC0597888に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハング(Rは可変部位を示す)を示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは、上の鎖として示されている)上のTSC0597888に関して見られたヌクレオチドはシトシンとグアニンである。オーバーハングの3位はグアニンに相補的なシトシンに相当する双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いる。
下記にSNP TSC0607185に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハング(Rは可変部位を示す)を示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは、上の鎖として示されている)上のTSC0607185に関して見られたヌクレオチドはシトシンとチミジンである。この場合、第2のプライマーは関心対象座からアニールするので、アンチセンス鎖がはめ込みを受ける。アンチセンス鎖は(ここでは、下の鎖として示されている)はグアニンまたはアデニンではめ込まれることになる。
5’オーバーハングの2位は、アデニンに相補的なチミジンであり、オーバーハングの3位はグアニンに相補的なシトシンに相当する。双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いる。
下記にSNP TSC0195492に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列全体ではなく、オーバーハングを示す部分のみを複写している。
Figure 2006521086
この部位に見られるヌクレオチドはシトシンとグアニンである(ここでは、上の鎖として示されている)。5’オーバーハングの2位は、チミジンに相補的なアデニンであり、オーバーハングの3位はグアニンに相補的なシトシンに相当する。双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いる。
上記で示したように、6種のSNP双方の対立遺伝子配列は、未標識dATP、dTTPおよびdCTPの存在下、ddGTPによる標識によって決定できる。各はめ込みには以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddGTP、グアニン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識dNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼおよび20μlの反応液に要する水。前記はめ込み反応は40℃で10分実施した。非蛍光標識dNTP類はファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の全ての標識試剤は、アマーシャム(サーモ・シーケナーゼ・ダイ・ターミネータ・サイクル・シーケンシング・コアキット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に「はめ込み」DNA断片は、酵素と共に供された製造元の教示に従い、制限酵素EcoRIによる消化によって、ストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間行った。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスからの遊離後、試料を36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の一レーンに乗せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。自動塩基配列決定装置ヘーファー(Hoefer)SQ3シーケンサー上で3時間、ゲルを操作した。ゲルを装置から取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメジャー上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。
図11に示されるように、SNP TSC837969に関するレーン1および2における鋳型DNAはアデニンに関してホモ接合である。個体がアデニンに関してホモ接合ならば、以下のはめ込み反応の発生が予想された。
TSC837969におけるアデニンに関しホモ接合:
Figure 2006521086
未標識dATPがオーバーハングに相補的な1位に取り込まれた。未標識dTTPはオーバーハングに相補的な2位に取り込まれた。標識ddGTPがオーバーハングに相補的な3位に取り込まれた。アクリルアミドゲルの略46位に移動した1本のバンドのみが見られた。これは、1位にはめ込まれたヌクレオチドがアデニンであることを示した。ヌクレオチド、グアニンがはめ込まれたならば、1本のバンドが44位に予想されるであろう。
しかし、SNP TSC0837969に関するレーン3および4の鋳型DNAはヘテロ結合であった。個体がヘテロ接合であるとすれば、以下のはめ込み反応が予想された。
SNP TSC0837969においてヘテロ接合:
Figure 2006521086
2本の明瞭なバンドが見られた。すなわち、第1のバンドはオーバーハングに相補的1位においてddGTPによってはめ込まれた分子(G対立遺伝子)に対応し、第2のバンドは、オーバーハングに相補的3位においてddGTPによってはめ込まれた分子(A対立遺伝子)に対応する。2本のバンドを分子量の違いに基づき、電気泳動を用いて分離した。個体がSNP部位においてヘテロ接合であることを決定するために、1種の蛍光標識ヌクレオチドddGTPを用いた。これは、2つの異なった対立遺伝子の存在を効果的に検出するための初めての単一ヌクレオチド利用法である。
SNP TSC0034767に関しては、2本の明瞭なバンドで実証されるように、レーン1および3の鋳型DNAは、シトシンとグアニンに関してヘテロ接合である。低い方のバンドは、オーバーハンドに相補的な1位にはめ込まれたddGTPに対応した。わずかにより高い分子量の第2のバンドは、3位にはめ込まれたddGTPに対応し、オーバーハングの1位が未標識dCTPによってはめ込まれ、そのため、ポリメラーゼは、オーバーハングに相補的な3位にddGTPを取り込むまでヌクレオチドの取り込みを続けることが可能であった。ddGTPがオーバーハングに相補的な1位にはめ込まれたとした場合よりも高い分子量の単一バンドによって実証されるように、レーン2および4における鋳型DNAはグアニンに関してホモ接合であった。
SNP TSC1130902に関しては、ゲル上で略62位に移動している単一の高分子量バンドによって実証されるように、レーン1、2および4における鋳型DNAは、可変部位におけるアデニンに関してホモ接合である。レーン3における鋳型DNAは、2本の明瞭なバンドによって示されるように、可変部位においてヘテロ接合である。低い方のバンドは、オーバーハングに相補的な1位において、ddGTPによってはめ込まれた分子(グアニン対立遺伝子)に対応する。高い方の分子量バンドはオーバーハングに相補的な3位において、ddGTPによってはめ込まれた分子(アデニン対立遺伝子)に対応する。
SNP TSC0597888に関して、レーン1および4における鋳型DNAは、可変領域におけるシトシンに関してホモ接合であった。すなわち、レーン2における鋳型DNAは可変領域においてヘテロ接合であり、レーン3における鋳型DNAは、グアニンに関してホモ接合であった。予想されるはめ込み反応を以下に図式化してある。
シトシンに関してホモ接合:
Figure 2006521086
グアニンに関してホモ接合:
Figure 2006521086
グアニン/シトシンに関してヘテロ接合:
Figure 2006521086
可変領域におけるグアニンに関してホモ接合である鋳型DNAは、1本のバンドを示したが、これはオーバーハングに相補的な1位において、ddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応する。これらのDNA分子は、オーバーハングの3位にddGTPによってはめ込まれたDNA分子に比して、より低分子量であった(SNP TSC0597888に関するレーン3を参照)。これらのDNA分子は分子量が2塩基だけ異なっていた。
可変領域におけるシトシンに関してホモ接合である鋳型DNAは、1本のバンドを示したが、これはオーバーハングに相補的な3位において、ddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応する。これらのDNA分子は、1位にddGTPによってはめ込まれたDNA分子よりもより高分子量に移動した(SNP TSC0597888に関するレーン1および4を参照)。
可変領域においてヘテロ接合である鋳型DNAは、2本のバンドを示した。すなわち、第1のバンドは、オーバーハングに相補的な1位において、ddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応し、より低分子量であった。また、第2のバンドは、オーバーハングに相補的な3位において、ddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応し、より高分子量であった(SNP TSC0597888に関するレーン3を参照)。
SNP TSC0195492に関して、レーン1および3における鋳型DNAは、可変領域においてヘテロ接合であり、これは2本の明瞭なバンドの存在によって証明された。レーン2における鋳型DNAは、可変領域におけるグアニンに関してホモ接合であった。レーン4における鋳型DNAはシトシンに関してホモ接合であった。このSNPに関しレーン4では、ただ1本のバンドが見られ、これは、オーバーハングに相補的な1位において、ddGTPによってはめ込まれたDNA分子よりも高い分子量を有した(レーン2、3、4を比較)。
SNP TSC0607185に関して見られる対立遺伝子は、シトシンまたはチミジンであると報告されている。一致のため、SNP合弁会社がセンス鎖に現れる際に見られる対立遺伝子を示している(2003年2月11日現在、実効のあるウェブサイト;www.snp.cshl.org/shpsearch.shtml)。このSNPに関し、第2のプライマーは関心対象座の上流にアニールしたので、BsmFIにおける消化後、はめ込み反応をアンチセンス上に生じさせた。
レーン1および3における鋳型DNAは、鋳型DNAはヘテロ接合であり、レーン2における鋳型DNAはチミジンに関してホモ接合であり、レーン4における鋳型DNAはシトシンに関してホモ接合であった。アンチセンス鎖はddGTPによってはめ込みがなされたので、センス鎖上のヌクレオチドはシトシンに相当した。
予想されるバンドの位置を同定するために分子量マーカーが使用できる。あるいは、分析された各SNPに対し、予想された2本のバンドの位置を精確に同定する公知のヘテロ接合試料が使用できる。
図11に示されるように、限定はしないが、SNPおよび単一ヌクレオチド突然変異などの可変領域の同一性決定のために、1種の蛍光色素で標識された1種のヌクレオチドが使用できる。典型的には、ある個体があるSNP部位においてホモ接合かヘテロ接合かを決定するために、1種の蛍光色素で標識した1種のヌクレオチドおよび第2の色素で標識した第2のヌクレオチドを用いて、複数の反応が実施される。しかし、2種の色素は異なる量子係数を有するため、これが結果を比較する場合に問題を生じさせる。1種の蛍光色素で標識した1種のヌクレオチドを使用することによって、異なる色素の量子係数に由来する誤差が排除される。
本実施例では、蛍光標識したddGTPを用いた。しかし、本法は、限定はしないが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、検出可能な電子スピン共鳴、電気キャパシタンス、誘電率または電気伝導度を有する部分など、任意のシグナル生成部分でタグを付けたヌクレオチドに適用できる。さらに、標識したddATP、ddTTPまたはddCTPを使用できる。
上記実施例では、オーバーハングに相補的な3位を、第2の対立遺伝子の指標として用いた。しかし、オーバーハングの2位または4位を同様に用いることができる(ヌクレオチドの取り込みの節を参照)。さらにオーバーハングは、IIS型酵素BsmFIによって生成したが、限定はしないが結合部位からある距離でDNAを切断する表Iに挙げた酵素などの任意の酵素が使用できる。
また、上記実施例では、SNP部位の直前のヌクレオチドは、はめ込まれた鎖上のグアニンではなかった。これにより、IIS型酵素の除去すべき別途切断特性の作用が排除された。例えば、SNP TSC0837969において、センス鎖上のSNP部位のヌクレオチドはアデニンであった。BsmFIが別途切断特性を示したとすれば、アデニン対立遺伝子およびグアニン対立遺伝子に関して、以下のオーバーハングが生成するであろう。
Figure 2006521086
グアニン対立遺伝子では、オーバーハングの1位がdATPによってはめ込まれるため、ポリメラーゼは、オーバーハングに相補的な2位にddGTPを取り込むことができると考えられる。
アデニン対立遺伝子では、オーバーハングに相補的な1位は、dATPによってはめ込まれ、2位はdATPによってはめ込まれ、3位はdTTPによってはめ込まれ、4位はdGTPによってはめ込まれと考えられる。10/14で切断された分子と11/15で切断された分子との間に分子量の違いはないと考えられる。DNA分子が可変部位にアデニンを含有したか、またはグアニンを含有したかに対応する違いだけであろう。
図11に見られるように、第1のプライマーのアニーリング領域の配置によって、ゲルの単一レーンにおける複数のSNPの分析が可能となる。また、同一の色素と共に同一のヌクレオチドを使用することにより、単一のはめ込み反応を実施できる。本実施例においては、1レーンで6つのSNPが分析された。しかし、限定はしないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、30〜40、40〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜100、101〜120、121〜140、141〜160、161〜180、181〜200、および200を超える任意の数のSNPを単一反応において分析できる。
さらに、標識したヌクレオチドがいずれも可変部位(11/15切断の0位におけるヌクレオチドに相補的)の直前に存在しないという条件で、双方の対立遺伝子を検出するために用いられる1つの標識ヌクレオチドを別のSNPセットを検出するために用いられる第2の1つの標識ヌクレオチドと混合することができる。例えば、SNP Xが可変部位におけるグアニンまたはチミジンであり得るとすれば、BsmFIによる消化後に生成した、以下の5’オーバーハングを有する。
Figure 2006521086
標識ddGTP、未標識dATP、dCTPおよびdTTPによるはめ込み反応後、以下の分子が生成すると考えられる。
Figure 2006521086
SNP Yが可変部位におけるアデニンまたはチミジンであり得るとすれば、BsmFIによる消化後に生成した、以下の5’オーバーハングを有する。
Figure 2006521086
標識ddATP、および未標識dCTP、dGTP、およびdTTPによるはめ込み反応後、以下の分子が生成すると考えられる。
Figure 2006521086
本実施例では、SNP X、SNP Y双方の対立遺伝子各々の同一性決定に標識ddGTPおよび標識ddATPを用いる。SNP Xの直前のヌクレオチド(11/15切断由来のオーバーハングの0位に相補的なヌクレオチド)は、はめ込みされている鎖上のグアニンまたはアデニンではない。同様に、SNP Yの直前のヌクレオチドははめ込みされている鎖上のグアニンまたはアデニンではない。このことから、双方のSNPのはめ込み反応が、標識ddGTP、標識ddATP、および未標識dCTP、dTTPによって、1つの反応において生じ得る。これによって実施に要する反応数が減り、1つの反応において分析できるSNPの数が増える。
各SNPに関する第1のプライマーは、関心対象座から異なった距離でアニールし、SNP類をゲル上の異なった位置に移動させるように設計できる。例えば、SNP Xを増幅させるために用いられる第1のプライマーは、関心対象座から30塩基にアニールでき、SNP Yを増幅させるために用いられる第1のプライマーは、関心対象座から35塩基にアニールできる。また、重なりのないスペクトルを放射する蛍光色素でヌクレオチドを標識できる。ゲル操作後、そのゲルを1つの色素に特異的な波長でスキャンできる。その色素で標識した分子だけがシグナルを放射する。次にそのゲルを第2の色素に対する波長でスキャンできる。その色素で標識した分子だけがシグナルを放射する。この方法により、1回の反応において分析できるSNPの数を最大限に少なくすることができる。
本実施例において、はめ込まれる鎖上の可変部位の前にあるヌクレオチドは、アデニンまたはグアニンでなかったので、可変部位の後にあるヌクレオチドは、センス鎖上のアデニンまたはグアニンではあり得ない。本法は、標識ヌクレオチドの任意の組合わせで機能でき、当業技術者は、どの標識反応が混合でき、どれができないかを理解するであろう。例えば、1つのSNPをチミジンで標識し、第2のSNPをシトシンで標識するならば、各可変部位の直前のヌクレオチドがセンス鎖上のチミジンまたはシトシンでなく、可変部位の直後のヌクレオチドがセンス鎖上のチミジンまたはシトシンでない場合、SNPは1回の反応で標識できる。
本法によって、別途切断の程度を決定するか、または色素の量子係数を補正する複雑さを加えることなく、1つの対立遺伝子のシグナルを第2の対立遺伝子のシグナルと比較することが可能となる。本法は、1つの対立遺伝子対他の対立遺伝子の比の定量化を試みる場合に特に有用である。例えば、本法は染色体異常の検出に有用である。ヘテロ接合部位における対立遺伝子の比は、約1:1であることが予想される(1個の対立遺伝子A及び1個の対立遺伝子G)。しかし、余分な染色体が存在する場合、この比は約1:2であると予想される(1個の対立遺伝子Aと2個の対立遺伝子G、または2個の対立遺伝子Aと1個の対立遺伝子G)。本法は、母体DNAの存在下で胎児DNAの検出を試みる場合に特に有用である。
さらに本法は、1つの試料における2つの遺伝子シグナルの検出に有用である。例えば、本法は野生型細胞の存在下で、突然変異細胞を検出できる(実施例5を参照)。突然変異細胞が、特定の遺伝子のDNA配列における突然変異を含有するならば、突然変異体シグナルと野生型シグナルの双方を検出するために、本法を使用できる。本法は野生型DNA配列の存在下、突然変異DNA配列を検出するために使用できる。1シグナル生成部分で標識した単一ヌクレオチドを使用するため、突然変異DNA対野生型DNAの比を定量化できる。
実施例7
種々のタイプの癌に対する非侵襲的方法は、疾病率およびその疾病による死亡率を減少させる可能性を有する。結腸直腸腫瘍の早期検出のために結腸鏡検査、バリウム注腸およびS状結腸鏡検査などの幾つかの方法が開発されているが、これらの方法は侵襲的であり、患者の低コンプライアンス率を生じるために利用法が限られている。非侵襲的な遺伝子試験は、早期段階の結腸直腸腫瘍の同定に有用であり得る。
結腸直腸腫瘍形成における重要な役割を演じる線維様結腸ポリープ症遺伝子(APC)が、1991年に研究者により同定された(キンズラーら(Kinzler et al.)、サイエンス(Science)253:p.661−665、1991年)。APC遺伝子は、染色体5q21−22上に存在し、8529個のヌクレオチドのRNA分子に関し、合計15個のエキソンコードを有し、300Kd APC蛋白質を生産する。この蛋白質は、多数の細胞タイプにおいて発現し、細胞接着にとって必須である。
APC遺伝子における突然変異は、一般に結腸直腸新形成を開始させる(ジェイ・ツァオら(Tsao,J.et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am.J.Pathol.)145:p.531−534、1994年)。APC遺伝子における突然変異の凡そ95%はナンセンス/フレームシフト変異を生じる。最もよく見られる突然変異は、コドン106/および1309で起こり、これらのコドンにおける突然変異は全生殖細胞系突然変異の1/3を占めている。体細胞突然変異に関して、60%はコドン1286〜1513内で生じるが、これはコード配列の約10%である。この領域は、変異密集領域(MCR)と称される。APC遺伝子において、ヌクレオチド置換(表VIIを参照)、スプライシングエラー(表VIIIを参照)、小欠失(表IXを参照)、小挿入(表Xを参照)、小挿入/欠失(表XIを参照)、大欠失(表XIIを参照)、大挿入(表XIIIを参照)および複合再配列(表XIVを参照)などの多くのタイプの突然変異が確認されている。
大便中のAPC遺伝子における突然変異を有する細胞を確認する試みが研究者によってなされてきた(ジー・トラバーソら(Traverso,G.et al.)、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)、346巻:p.311−320、2002年)。APC突然変異は、殆ど全ての腫瘍において見られるが、大便試料中250個の細胞のうち、約1個がAPC遺伝子における突然変異を有しており、たいていの細胞は大便中に流入した正常細胞である。さらにヒトDNAは、大便試料中に見られる全DNAの約10億分の1であり、大多数のDNAは細菌のものである。トラバーソらの採用した方法によって検出されるのは、切断型蛋白質を生じる突然変異のみである。
上記で検討したように、APC遺伝子における多数の突然変異は、結腸直腸腫瘍の形成に関係していた。したがって、結腸直腸腫瘍検出のための高感受性で非侵襲的な方法に対する必要性は依然として存在している。下記にAPC遺伝子における2つの突然変異を検出する方法を記載する。しかし、本明細書に記載された方法を用いて、任意の数の突然変異を分析することができる。
鋳型DNAの調製
鋳型DNAは、限定はしないが、大便試料などの結腸細胞を含有する試料から精製する。鋳型DNAは、アールキストら(Ahlquist et al.)(ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、119:p.1219−1227、2000年)に記載された方法を用いて精製する。大便試料が凍結している場合は、その試料を室温で解凍し、イグザクター・スツール・シェーカー(Exactor stool shaker)(イグザクト・ラボラトリーズ(Exact Laboratories)、マサチューセッツ州メイナード所在)で均一化する。均一化後、各試料の4グラム当量を2536xgで5分間遠心分離する。前記試料を2回目は、16,500xgで10分間遠心分離する。上澄み液を20μlのRナーゼ(1ミリリットル当たり0.5mg)と共に37℃で1時間温置する。1リットル当たり3モルの酢酸ナトリウム1/10容量および等容量のイソプロパノールによってDNAを沈殿させる。前記DNAを5mlのトリス−EDTA(1リットル当たり0.01モルのトリス(pH7.4)および1リットル当たり0.001モルのEDTA)に溶解する。
プライマー設計
突然変異がコドン1370に存在するかどうかを決定するために、以下のプライマーを用いる:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’末端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対するヌクレオチド配列を含有する。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対するヌクレオチド配列を含有する。
コドン1302に小欠失が存在するかどうかを決定するため、以下のプライマーを用いる:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’末端におけるビオチンタグおよびEcoRIに対する制限酵素認識部位を含有する。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有する。
PCR反応
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,196号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。この実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、例えば、キアゲンから供給されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を使用した「ホットスタート」PCRを用いた。一反応当たり鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化されるが、本実施例では、40ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおける3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度は、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化される。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離する。各PCR産物を、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの4つの別々の反応ウェルに分割する。第1のプライマーは5’ピオチンタグを含有するので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しない。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施する。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄する(カンドパルら(Kandpal et al.)、Nucl.Acids Res.18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、Biotechniques、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、Nucl.Acids Res.18:p.6163〜6164(1990))。
あるいは、PCR産物をストレプトアビジンプレートの単一ウェル内に入れて、単一ウェル内においてヌクレオチド取り込み反応を実施する。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFI(ニューイングランド・バイオラブス、カタログ番号R0572S)により、精製PCR産物を消化する。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施する。適切な制限酵素による消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄する。
標識ヌクレオチドの取り込み
上記の制限酵素による消化によって、関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られる。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にする。
各関心対象座に対し、4つの別々のはめ込み反応を行うが、4つの反応の各々が異なる蛍光標識をしたddNTP(ddATP、ddTTP、ddGTPまたはddCTP)を含有する。各はめ込み反応に以下の成分を加える:1μlの蛍光標識ddNTP、蛍光標識したヌクレオチド以外の全てのヌクレオチドを含有する0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は40℃で10分間実施する。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入する。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手する。蛍光標識ddNTP類の存在下、3’窪み端は、関心対象座に相当する1塩基だけ伸長する。
「はめ込み」反応には、標識ddNTPと未標識dNTP類との混合物もまた、用いることができる。40μMの未標識dNTP類、1μlの蛍光標識ddATP、1μlの蛍光標識ddATP、1μlの蛍光標識ddATP、および1μlのddATPを含有する混合物を用いる以外は、上記のとおりの「はめ込み」条件である。蛍光ddNTP類はアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565;アマーシャムは蛍光ヌクレオチドの濃度を公表していない)から入手する。関心対象座は、制限酵素BsmFIによって消化され、4塩基の5’オーバーハングを生成する。取り込まれる最初のヌクレオチドが標識ddNTPならば、3’窪み端は1個の塩基によってはめ込まれ、関心対象座を検出できる。しかし、取り込まれた最初のヌクレオチドがdNTPならば、ポリメラーゼは、ddNTPがはめ込まれるまでヌクレオチドの取り込みを続ける。例えば、最初の2つのヌクレオチドがdNTP類ではめ込みでき、3番目のヌクレオチドがddNTPではめ込みできると、オーバーハング内の3番目のヌクレオチドを検出できる。このように、5’オーバーハング全体の配列を決定することができ、各SNPまたは関心対象座から得られる情報が増加する。このタイプのはめ込み反応は、挿入、欠失、挿入と欠失、再配列および転座の存在を検出する場合に特に有用である。
あるいは、単一の色素で標識された単一ヌクレオチドが、関心対象座の配列決定に用いられる。実施例6を参照されたい。本法により、異なる量子係数を有する種々の色素を使用する場合に生じ得る誤差が排除される。
ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯ぐ。次に酵素と共に供される製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させる。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施する。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスからの遊離後、試料を36cmの5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)に載せる。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させる。自動塩基配列決定装置(ヘーファー(Hoefer)SQ3シーケンサー)上で3時間ゲルを操作した。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出する。
別々のはめ込み反応を実施した場合、細胞がAPC遺伝子のコドン1370に突然変異を含有しているかどうかを決定するため、ddATPおよびddTTPに関するはめ込み反応に対応するゲルのレーンを分析する。正常細胞のみが存在すれば、ddATPによるはめ込み反応に対応するレーンは明瞭なシグナルとなる。ddTTPによる「はめ込み」反応に関しては、シグナルが検出されない。しかし、患者の試料がAPC遺伝子のコドン1370に突然変異を有する細胞を含んでいれば、ddATPによるはめ込み反応に対応するレーンは明瞭なシグナルとなり、かつ、ddTTPによる「はめ込み」反応に対応するレーンからのシグナルが検出される。ddTTPによる「はめ込み」反応に対応するレーンからのシグナル強度は、試料中の突然変異の細胞数を示す。
あるいは、APC遺伝子のコドン1370における対立遺伝子配列を決定するために、1つの標識ヌクレオチドが用いられる。コドン1370において、正常な配列はAAAであり、これはアミノ酸リジンをコードする。しかし、結腸直腸腫瘍に関連しているコドン1370は、ヌクレオチドの置換が確認されている。具体的には、コドン1370、AからTへの変化(AAA−TAA)が典型的に見られるが、これは、停止コドンとなる。単一のはめ込み反応を標識ddATPおよび未標識dTTP、dCTPおよびdGTPを用いて実施する。コドン1370をコードする正常および突然変異双方のDNA配列の存在を決定するために、1種の蛍光色素で標識した単一ヌクレオチドを用いる。コドン1370に相当する配列は、太字にて関連するDNA配列を下記に表す。
Figure 2006521086
BsmFIによる消化後、以下のオーバーハングが生成する。
Figure 2006521086
患者の試料が、コドン1370に突然変異を含む細胞を有さないならば、標識ddATPの取り込みに対応する1つのシグナルが見られる。
Figure 2006521086
しかし、患者の試料が、APC遺伝子のコドン1370に突然変異のある細胞を有していれば、コドン1370における正常な配列に対応する1つのシグナルが見られる、かつコドン1370における突然変異の配列に対応する第2のシグナルが見られる。これらのシグナルは、分子量が異なっていることが明瞭に確認される。
Figure 2006521086
突然変異対立遺伝子が存在する場合、2つのシグナルが見られる。突然変異DNA分子は、野生型DNA分子の1塩基後にはめ込まれる。2つのシグナルは、分子量に基づいて識別する任意の方法を用いて分離される。野生型DNA配列と突然変異DNA配列双方の存在を検出するために、1種の標識ヌクレオチド(ddATP)が用いられる。この標識法によって、実施に要する反応数が減り、患者の試料における突然変異細胞数の正確な定量化が可能になる。患者の予後、疾病の程度と重症度を決定するために、試料中の多数の突然変異細胞が利用される。この標識法によって、異なる量子係数を有する異なる色素を使用することに伴う複雑さが排除される。また、この標識法により、ピペット反応に伴う誤差が排除される。
別々のはめ込み反応を実施した場合、細胞がAPC遺伝子のコドン1302に突然変異を含有しているかどうかを決定するため、ddTTPおよびddCTPに関するはめ込み反応に対応するゲルのレーンを分析する。コドン1302をコードする配列は太字にて正常なDNA配列を下記に表す。
Figure 2006521086
消化後、以下の5’オーバーハングが生成する。
Figure 2006521086
はめ込み反応後、標識ddTTPが取り込まれる。
Figure 2006521086
コドン1302を典型的にコードするAPC配列の1塩基欠失は結腸直腸腫瘍に関連している。関連配列は太字にて正常なDNA配列を下記に表す。
Figure 2006521086
消化後:
Figure 2006521086
はめ込み後:
Figure 2006521086
APC遺伝子に突然変異が存在しないならば、ddCTPによるはめ込み反応に関してシグナルは検出されないが、ddTTPによるはめ込み反応に関して明瞭なシグナルが検出される。しかし、患者の試料中にAPC遺伝子に突然変異を有する細胞が存在するならば、ddCTPおよびddTTPによるはめ込み反応に関してシグナルが見られる。
あるいは、未標識dNTP類、蛍光標識ddATP、蛍光標識ddTTP、蛍光標識CTPおよび蛍光標識ddGTPを含有する混合物を用いて単一のはめ込み反応を実施する。欠失がなければ、標識ddTTPが取り込まれる。
Figure 2006521086
しかし、Tが欠失していれば、標識ddCTPが取り込まれる。
Figure 2006521086
チミジンヌクレオチドの欠失のため、2つのシグナルは分子量によって分離される。突然変異細胞が存在すれば、2つのシグナルが同一レーンにおいて発生するが、一塩基対によって分離される(この原理は図9Dに示している)。欠失によって、DNA断片の分子量に変化が生じ、正常細胞および突然変異細胞の双方の存在の検出に単独のはめ込み反応が使用できる。
上記実施例においては、ヌクレオチド置換および小欠失の検出のための、方法を記載している。しかし、本法は、限定はしないが、ヌクレオチド置換(表VIIを参照)、スプライシングエラー(表VIIIを参照)、小欠失(表IXを参照)、小挿入(表Xを参照)、小挿入/欠失(表XIを参照)、大欠失(表XIIを参照)、大挿入(表XIIIを参照)および複合再配列(表XIVを参照)などの任意のタイプの突然変異の検出に使用できる。
また、上記の方法は、限定はしないが、表IVに挙げられた疾病など、任意のタイプの疾病の検出に用いられる。さらに、本明細書に記載された発明された発明を用いて、限定はしないが、表IVに挙げられた疾病に関連する遺伝子、BRCA1、BRCA2、MSH6、MSH2、MLH1、RET、PTEN、ATM、H−RAS、p53、ELAC2、CDH1、APC、AR、PMS2、MLH3、CYP1A1、GSTP1、GSTM1、AXIN2、CYP19、MET、NAT1、CDKN2A、NQ01、trc8、RAD51、PMS1、TGFBR2、VHL、MC4R、POMC、NROB2、UCP2、PCSK1、PPARG、ADRB2、UCP3、glur1、cart、SORBS1、LEP、LEPR、SIM1、TNF、IL−6、IL−1、IL−2、IL−3、IL1A、TAP2、THPO、THRB、NBS1、RBM15、LIF、MPL、RUNX1、Her−2、グルココルチコイド受容体、エストロゲン受容体、チロイド受容体、p21、p27、K−RAS、N−RAS、網膜芽腫蛋白質、ウィスコット−アルドリッチ(WAS)遺伝子、Vライデン因子、II因子(プロトロンビン)、テトラヒドロ葉酸メチレンレダクターゼ、のう胞性線維症、LDL受容体、HDL受容体、スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、SHOX遺伝子、一酸化窒素調節に関する遺伝子、細胞周期調節に関する遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、腫瘍遺伝子、神経変性に関連する遺伝子、肥満に関連する遺伝子などの任意のタイプの突然変異遺伝子が検出される。略号は、本明細書に参照のため組み込まれているヒト遺伝子突然変異データベースに挙げられている蛋白質に相当する(2003年2月12日現在実効のあるウェブサイトアドレス;www.archive.uwcm.ac.uk./uwcm)。
上記実施例は、大便試料からの突然変異細胞および突然変異対立遺伝子の検出を示している。しかし、本明細書に記載の方法は、限定はしないが、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、脊髄液、リンパ液、精液、膣分泌液、腹水、唾液、粘膜分泌物、腹膜液、糞便試料、身体滲出液、乳房液、肺吸引液、細胞、組織、上記の核酸を含有する供給源の個体の細胞または抽出物およびミトコンドリアまたは葉緑体などの細胞下構造体など、任意の生物学的試料の突然変異細胞検出に用いられる。さらに、本明細書に記載の方法は、限定はしないが、法医学試料、食品試料、考古学試料、農業試料または無機試料などの任意の数の核酸含有試料の突然変異細胞および突然変異DNAの検出に用いられる。
上記実施例は、APC遺伝子の突然変異の検出に関する。しかい、本明細書に記載の発明は、疾病の素因に関連する任意の遺伝子における突然変異の検出に用いられる(表XVを参照)。
例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼP1(GSTP1)プロモーターの過メチル化は、前立腺癌において最もよく見られるDNA変化である。前記プロモーターのメチル化状態は、重硫酸ナトリウムおよび本明細書に記載の方法を用いて決定される。
重硫酸ナトリウムによる処理によって、非メチル化シトシン残基はウラシルに変換され、メチル化シトシンは未変化のままとなる。本明細書に記載の方法を用いて、メチル化されることの多いGSTP1プロモーター領域を増幅するように、第1のプライマーおよび第2のプライマーを設計する。重硫酸ナトリウム処理前のGSTP1プロモーター領域を下記に示す。
重硫酸ナトリウム処理前:
Figure 2006521086
重硫酸ナトリウム処理、PCR増幅、およびIIS型制限酵素BamFIによる消化後のGSTP1プロモーター領域を下記に示す。
Figure 2006521086
5’オーバーハングのはめ込みには、標識ddATP、未標識dCTP、dGTPおよびdTTPを用いる。以下の分子が生成する。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。1つは、オーバーハングに相補的な1位においてddATPによりはめ込まれたDNA分子(非メチル化)に対応し、他方はオーバーハングに相補的な4位においてddATPによりはめ込まれたDNA分子(メチル化)に対応する。2つのシグナルは、分子量に基づいて分離される。あるいは、1つの反応に標識ddGTPを用い、もう1つの反応に標識ddATPを用いて、別々の反応においてはめ込み反応を実施する。
本明細書に記載の方法は、前立腺癌をスクリーンするため、また、この疾患の進行および重症度をモニターするために用いられる。メチル化配列および非メチル化配列双方を検出するために、単一ヌクレオチドを使用することによって正確な定量化が可能となり、またメチル化配列に対する高レベルの感受性が提供されるので、前記疾患の早期検出に有用な手段である。
表VII〜XIVに含まれる情報は、ヒト遺伝子突然変異データベースから得た。本明細書に提供された情報を用いて、当業技術者は、任意の遺伝子の対立遺伝子配列の決定に、これらの方法をいかに適用するかを解されるであろう。多数の遺伝子およびそれに関連する突然変異は、以下のウェブサイト:www.archive.uwcm.ac.uk./uwcmに見ることができる。
(表VII)ヌクレオチド置換
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
(表VIII)ヌクレオチド置換
Figure 2006521086
Figure 2006521086
(表IX)APC小欠失
太字は、コドンを示す。アンダーケース文字は欠失を表す。欠失がコード領域を超えて広がる場合は、他の位置情報が与えられる。例えば、略号5’UTRは、5’未翻訳領域を表し、略号E616は、エキソン6/イントロン6境界を示す。
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
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Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
(表X)小規模な挿入
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
(表XI)小規模な挿入/欠失
Figure 2006521086
(表XII)大規模な欠失
Figure 2006521086
(表XIII)大規模な挿入および重複
Figure 2006521086
(表XIV)大規模な再構成(転位も含む)
Figure 2006521086
(表XV)診断応用
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
実施例8
単一ヌクレオチド多形(SNP)は、配列変化のうちで最もよく見られる形態であり、ヒトゲノムには、5%以上の集団頻度で300万の共有SNPが存在すると予想されてきた。これらの多形を指標として遺伝子マップが開発されている。
対立遺伝子頻度はSNPごとに変化する。すなわち、あるSNPに関する対立遺伝子頻度は50:50であり得るが、他のSNPに関する対立遺伝子頻度は90:10であり得る。対立遺伝子頻度が50:50に近づくほど、特定個体はそのSNPにおいてヘテロ接合である可能性が大きくなる。SNP合弁会社は、幾つかのSNPに関する頻度情報を提供しているが、その他のものに関しては提供していない。www.snp.chsl.org。特定のSNPに関する対立遺伝子頻度は、実施例5に記載の非侵襲的出生前スクリーニングに関するそのSNPの有用性について貴重な情報を提供する。全てのSNPが使用できるが、対立遺伝子頻度が50:50により近いSNPが好ましい。
簡単に言うと、母体血液は胎児DNAを含有する。母親がホモ接合であるSNPを検査することによって、母体DNAを胎児DNAから識別することができる。例えば、SNP Xでは、母体DNAはグアニンに関してホモ接合であり得る。妊娠女性の血漿から採取した鋳型DNAが、アデニン対立遺伝子およびグアニン対立遺伝子に対応するシグナルの検出により証明された場合、ヘテロ接合であれば、胎児DNAの標識としてアデニン対立遺伝子を使用することができる(実施例5を参照)。あるSNPの対立遺伝子頻度が50:50に近づくほど、特定のSNPにおいて母体DNAと胎児DNAとの間に違いがある可能性が大きくなる。
例えば、SNP Xにおいて、認められた対立遺伝子がアデニンおよびグアニンであり、SNPが90(A):10(G)の対立遺伝子頻度を有しているとすれば、その特定のSNPにおいて、母親のDNAと父親のDNAの双方が、アデニンに関してホモ接合である可能性が大きい。したがって、母体DNAと胎児DNAの双方が、アデニンに関してホモ接合となり、胎児DNAに関して異なったシグナルは存在しない。しかし、SNP Xにおける対立遺伝子頻度が50:50であり、母親がアデニンに関してホモ接合であれば、父親DNAは、SNP Xにグアニン対立遺伝子を含有している可能性が大きい。
SNPに関する対立遺伝子頻度を決定する方法を下記に提供する。染色体13上に位置する7つのSNPを分析した。この方法は、限定はしないが、ヒト染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびY上のSNPなどの任意のSNPに適用可能である。
鋳型DNAの調製
特定のSNPの対立遺伝子頻度を決定するために、250人からインフォームドコンセントを得てDNAを採取した。各個人から9mlの血液試料を滅菌管(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9ml EDTA減圧管、カタログ番号NC9897284)に採取した。管を1000rpmで10分間回転させた。各試料の上澄み液(血漿)を取り、一般に「バフィーコート(buffy−coat)」と称されている残りの血液試料の1ミリリットルを新たな管に移した。各試料に1ミリリットルの1×PBSを加えた。
キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAは、キットに含まれている使用説明書に従って単離した。各個体から、0.76μgのDNAを一緒にプールし、プールしたDNAを引き続く全ての反応に用いた。
プライマー設計
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0903430を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から82塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0337961を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から92塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0786441を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から104塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC1168303を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から64塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0056188を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から82塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0466177を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から92塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0197424を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から104塩基にアニールするように設計した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
第1のプライマーは、関心対象座から種々の距離でアニールするように設計した。当業技術者は第1のアニーリング位置が、限定はしないが、関心対象座から5〜10、11〜15、16〜20、21〜25、26〜30、31〜35、36〜40、41〜45、46〜50、51〜55、56〜60、61〜65、66〜70、71〜75、76〜80、81〜85、86〜90、91〜95、96〜100、101〜105、106〜110、111〜115、116〜120、121〜125、126〜130、131〜140、141〜160、161〜180、181〜200、201〜220、221〜240、241〜260、261〜280、281〜300、301〜350、351〜400、451〜500、501〜1000、1001〜2000、2001〜3000または3000を上回る任意の距離であり得ることを解されるであろう。
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,196号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。本実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、40ngの鋳型ヒトゲノムDNA(245人の鋳型DNA混合物)および5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象断片の精製
PCR産物を、未使用PCR剤から単離した。PCR反応後、SNP TSC0903430、SNP TSC0337961およびSNP TSC0786441に関する反応液の1/2容量を1本の反応管に一緒に混合した。SNP TSC1168303、SNP TSC0056188、SNP TSC0466177、およびSNP TSC0197424に関する反応液の1/2容量を1本の反応管に一緒にプールした。未使用のプライマーおよびヌクレオチドを、キアゲン・ミンエリュートPCR精製キット(キアゲン、カタログ番号28004)を用いて反応液から除去した。反応は、カラムと共に供された製造元の使用説明書に従って行った。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素により、精製PCR産物を消化した。消化は制限酵素と共に供された使用説明書に従ってエッペンドルフ管内で実施した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化によって、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で詳細に検討したように、あるSNPの双方の対立遺伝子を、1種の標識ヌクレオチドにより、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddGTP、グアニン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。本実施例において用いられたシーケナーゼはDNAポリメラーゼであった。しかし、限定はしないが、大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T7DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、ベントDNAポリメラーゼ、バクテリオファージ29のポリメラーゼ、REDTaq(商標)ゲノムDNAポリメラーゼなどの任意のDNAポリメラーゼを、はめ込み反応に用いることができる。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
関心対象座の検出
試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。
下記は、SNP TSC0056188に関する5’オーバーハングの図式の複写である(ここでRは可変部位を示す)。配列全体ではなく、オーバーハングの部分のみを示している。
Figure 2006521086
実施例6で詳細に検討したように、関心対象座の対立遺伝子配列を決定するために、1種の化学的部分によって標識した1種のヌクレオチドが使用できる。5’センス鎖(ここでは上の鎖として表される)上のTSC0056188に関して見られるヌクレオチドは、アデニンとグアニンである。アンチセンス鎖上のオーバーハングにおける3位は、グアニンに相補的なシトシンである。可変部位がアデニンまたはグアニンであり得るので、未標識dCTP、dTTP、およびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いて、双方の対立遺伝子の配列を決定した。下記はグアニンに関してホモ接合、アデニンに関してホモ接合、またはヘテロ接合の個体に対するはめ込み反応の図式である。
ホモ結合アデニン:
Figure 2006521086
ホモ結合グアニン:
Figure 2006521086
ヘテロ結合:
Figure 2006521086
図14に見られるように、TSC0056188に関して、2本のバンドが検出された。低い方のバンドは、オーバーハングに相補的な1位においてddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応したが、これはグアニン対立遺伝子を表している。低い方のバンドより1塩基だけ離れている高い方のバンドは、オーバーハングに相補的な3位においてddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応した。このバンドは、アデニン対立遺伝子を表している。各バンドの強度は高く、各対立遺伝子が集団内で十分に表れていることを示していた。TSC0056188は、対立遺伝子頻度の高いSNPであることが示されている。
下記は、SNP TSC337961に関し、BsmFIによる消化後に生成した5’オーバーハングの図式の複写である(ここでRは可変部位を示す)。配列全体ではなく、オーバーハングの部分のみを示している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは上の鎖として表される)上のSNP TSC337961に関して見られるヌクレオチドは、アデニンとグアニンである。アンチセンス鎖上のオーバーハングにおける3位は、グアニンに相補的なシトシンである。可変部位がアデニンまたはグアニンであり得るので、未標識dCTP、dTTP、およびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いて、双方の対立遺伝子の配列を決定した。下記はグアニンに関してホモ接合、アデニンに関してホモ接合、またはヘテロ接合の個体に対するはめ込み反応の図式である。
グアニンに関してホモ結合:
Figure 2006521086
アデニンに関してホモ結合:
Figure 2006521086
図14に見られるように、予想された低分子量バンドの位置に移動している1本のバンドが見られた。このバンドは、オーバーハングに相補的な1位においてddGTPによってはめ込まれたDNA分子のものであるが、これは、グアニン対立遺伝子を表している。オーバーハングに相補的な3位においてddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応するバンドは検出されなかった。SNP TSC337961は、集団内でそれほど可変的ではないSNPであることが示されている。
分析した7種のSNPのうち、4種のSNP(TSC1168303、TSC0056188、TSC0466177、およびTSC0197424)は、対立遺伝子頻度が高い。この4種のSNPの各々に関して、強度の高い2本のバンドが見られたことから、双方の対立遺伝子が集団内に十分表れていることが示される。
しかし、SNPが有用であるためには、必ずしも50:50の対立遺伝子頻度を有する必要がるというわけではない。全てのSNPが、有用な情報を提供する。本明細書に記載した方法は、限定はしないが、点突然変異などのSNPまたは任意の可変部位の対立遺伝子頻度決定のための迅速な技術を提供する。
Figure 2006521086
の対立遺伝子頻度が有用であり得る。
SNP TSC0903430に関して、2本のバンドが見られた。一方の低分子量バンドは、標識ddGTPによってはめ込まれたDNA分子を表した。オーバーハングの相補的な3位において標識ddGTPによってはめ込まれた分子に関するより強度の低いバンドが見られたが、これはシトシン対立遺伝子を表した。SNP TSC0903430は、対立遺伝子変化頻度の低いSNPであることが示されている。集団内では、大多数の個人がグアニン対立遺伝子を担持しているが、シトシン対立遺伝子も存在している。
SNP TSC0337961およびSNP TSC0786441に関して、高強度の1本のバンドが見られた。SNP TSC0337961およびSNP TSC0786441双方に関して検出されたバンドは、オーバーハングに相補的な1位においてddGTPによってはめ込まれたDNA分子に対応した。オーバーハングに相補的な3位にはめ込まれたと考えられるDNA分子で、第2の対立遺伝子を表したと考えられるシグナルは、検出されなかった。SNP TSC0337961およびSNP TSC0786441は、集団内で可変性の少ないSNPであることが示されている。
図14に示されるように、各関心対象座の増幅に用いられる第1のプライマーは、関心対象座から様々な距離でアニールするように設計できる。これにより、同一の反応において複数のSNPを分析することが可能になる。第1のプライマーを、関心対象座から特定の距離にアニールするように設計することにより、限定はしないが、1〜10、11〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100、101〜110、111〜120、121〜130、131〜140、141〜150、151〜160、161〜170、171〜180、181〜190、191〜200、201〜300、301〜400、401〜500、および500を上回る任意の数の関心対象座を1つの反応において分析することができる。
実施例6で検討されたように、幾つかのIIS型制限酵素は、別途の切断パターンを示す。例えば、IIS型制限酵素BsmFIは、その結合部位から10/14を切断するのが典型的だが、この酵素はまた、その結合部位から11/15を切断できる。別途切断の作用を排除するため、はめ込み反応に用いられる標識ヌクレオチドは、11/15切断によって生じるオーバーハングの0位に相補的でないように選択すべきである(実施例6に詳細に検討されている)。例えば、ddGTPによって、標識する場合、はめ込まれる鎖上の可変部位の前のヌクレオチドはグアニンであってはならない。
SNP TSC0056188に関して、BsmFIによって生成した11/15オーバーハングを可変部位は太字にして下記に表している。
TSC0056188に関しての11/15オーバーハング
Figure 2006521086
標識ddGTP、未標識dATP、dTTP、およびdCTPによるはめ込み反応後、以下の分子が生成した。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られた。一方のバンドは、オーバーハングの1位にddGTPによってはめ込まれた分子に対応し、他方のバンドはオーバーハングに相補的な3位にddGTPによってはめ込まれた分子に対応した。これらは、10/14オーバーハングのはめ込み反応後、生成した同一のDNA分子である。したがって、別途切断による不確かさを伴わずに2本のバンドを比較できる、単一ヌクレオチドによるこの標識法により、酵素の別途切断特性から生じる誤差が排除される。
本明細書に記載の方法は、限定はしないが、ヒト染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびY上のSNPなど、任意のSNPに適用可能である。
実施例9
ヘテロ接合SNPは、定義によりヌクレオチド1個だけ異なっている。ヘテロ接合SNPにおいては、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、1:1の比で存在し得る。しかし、DNAポリメラーゼが他のヌクレオチドよりも速く1個のヌクレオチドを取り込んで、そのため、ヘテロ接合SNPの観察された比が理論上予想された1:1の比と異なり得るという可能性がある。
ヘテロ接合SNPにおいて、対立遺伝子1対対立遺伝子2の予想比に関する効率的で正確な定量化を可能にする方法を下記に記載する。
鋳型DNAの調製
24人からインフォームドコンセントを得てDNAを採取した。各個人から9mlの血液試料を滅菌管(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9ml EDTA減圧管、カタログ番号NC9897284)に採取した。管を1000rpmで10分間回転させた。各試料の上澄み液(血漿)を取り、一般に「バフィーコート(buffy−coat)」と称されている残りの血液試料の1ミリリットルを新たな管に移した。各試料に1ミリリットルの1×PBSを加えた。
キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAは、キットに含まれている使用説明書に従って単離した。
プライマー設計
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC0607185を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
以下のプライマーセットを用いてSNP TSC1130902を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’末端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対するヌクレオチド配列を含有した。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対するヌクレオチド配列を含有した。第1のプライマーは、関心対象座から様々な距離でアニールするように設計された。
SNP TSC0607185に関する第1のプライマーは、関心対象座から90塩基をアニールするように設計された。SNP TSC1130902に関する第1のプライマーは、関心対象座から60塩基をアニールするように設計された。
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,196号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。本実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、40ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。PCR反応液の1/2を、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの1つのウェルに移した。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で詳細に検討したように、あるSNPの双方の対立遺伝子を、1種の標識ヌクレオチドにより、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddGTP、グアニン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。各バンドを枠で囲み、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー・ソフトウェアを用いて、バンドの強度を算出した。
下記は、SNP TSC0607185に関する5’オーバーハングの図式の複写である(ここでRは可変部位を示す)。配列全体ではなく、オーバーハングの部分のみを示している。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは上の鎖として表す)上のTSC0607185に関して見られるヌクレオチドは、シトシンとチミジン(ここではRとして表す)である。この場合、第2のプライマーは、関心対象座からアニールするので、はめ込み反応は、アンチセンス鎖(ここでは下の鎖として表す)上に生じる。アンチセンス鎖はグアニンまたはアデニンによってはめ込まれることになる。
オーバーハングの2位は、アデニンに相補的なチミジンであり、オーバーハングの3位は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。双方の対立遺伝子の配列を決定するために、未標識dCTP、dTTPおよびdATPの存在下、蛍光標識dGTPを用いた。はめ込み反応後、以下のDNA分子が生成した。
Figure 2006521086
TSC0607185における認識部位から11/15で切断するBsmFIにより生成したオーバーハングを下記に表す。
Figure 2006521086
標識dGTPをはめ込み反応に使用するため、認識部位から11/15で切断された分子から新たなシグナルは生じない。オーバーハングに相補的な0位は未標識dATPによってはめ込まれた。標識ddGTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的な分子、または標識ddGTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的な分子から生じたシグナルだけが見られた。
24人中、5人がSNP TSC0607185に関してヘテロ接合であった。図15に示されるように、2本のバンドが検出された。より低分子量のバンドは、標識ddGTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した。より高分子量のバンドは、標識ddGTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した。
5つのヘテロ接合試料の各々に関して、2つの対立遺伝子の比を算出した(表XVIを参照)。対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均比は、1.000であり、標準偏差は、0.044であった。このように、TSC0607185における対立遺伝子の比は一貫性が高い。ある特定のSNPに関する実験上で算出された対立遺伝子比を以後、SNPの「P」値と称す。分析されるゲノムの数が、統計上のサンプリングからの誤差が生じない十分な数であるという条件でTSC0607185を分析することによって、1:1の対立遺伝子比が一貫して与えられることになる。
試料が少数のゲノムを含有したとすれば、プライマーは、統計的にある染色体を他の染色体よりもアニールする可能性がある。例えば、試料が対立遺伝子1の合計40個の染色体および対立遺伝子2の40個の染色体に相当する40個のゲノムを含有すれば、プライマーは、対立遺伝子1の40個の染色体にアニールするが、対立遺伝子2にアニールするのは35個の染色体だけということもあり得る。これによって対立遺伝子1が対立遺伝子2よりも優先的に増幅され、対立遺伝子1対対立遺伝子2の比を変化させることが考えられる。この問題は、試料中に十分な数のゲノムを有することによって排除される。
SNP TSC0607185は、可変部位におけるヌクレオチドの違いがPCR反応または制限酵素による消化、またははめ込み反応に影響を与えないSNPであることが示される。1種の蛍光色素によって標識された1種のヌクレオチドを使用することによって、ある対立遺伝子に関するバンドを、第2の対立遺伝子に関するバンドと正確に比較し得ることが保証される。2つの異なるレーン間の比較、または色素の量子係数の補正を必要とする複雑さが加わらない。さらに、IIS型制限酵素の別途切断特性による作用が排除されている。
(表XVI)SNP TSC0607185およびTSC1130902における対立遺伝子1および対立遺伝子2の比
Figure 2006521086
下記に、SNP TSC1130902に関する5’オーバーハングの図式を示す。配列全体ではなく、オーバーハングを示す部分だけの複写である(ここではRは可変部位を示す)。
Figure 2006521086
5’センス鎖(ここでは上の鎖として表される)上のTSC1130902に関して見られるヌクレオチドはアデニンとグアニンである。オーバーハングの2位はチミジンに相当し、オーバーハングの3位は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。未標識dCTP、dTTP、およびdATPの存在下、蛍光標識ddGTPを用いて、双方の対立遺伝子の配列を決定した。はめ込み反応後、以下のDNA分子が生成した。
Figure 2006521086
図15に示されるように、2本のバンドが検出された。より低分子量のバンドは、標識ddGTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子(G対立遺伝子)に対応し、より高分子量のバンドは、標識ddGTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子(A対立遺伝子)に対応した。
24人中5人がSNP TSC1130902に関してヘテロ接合であった。図15に見られるように、対立遺伝子1に対応するバンドは、対立遺伝子2に対応するバンドよりも強度が高い。これは5人の各々に見られた。対立遺伝子1に対応するバンドの実際の強度は、個人によって変化したが、対立遺伝子2に対応するバンドよりも常に高い強度であった。5人に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均比は、0.74116であり、標準偏差は、0.017018であった。
異なる5人から鋳型DNAを調製した。別々のPCR反応、別々の制限酵素消化および別々のはめ込み反応を実施した。しかし、各鋳型DNAに関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1の比は約0.75であった。このSNPの「p」値は一貫性が高い。
例えば、SNP TSC1130902に関して、「p」値は0.75であった。統計上のサンプリング誤差を除去するため、試料が十分なゲノム数を含有しているという条件で、この値からの偏差は、染色体13の異常コピー数の存在を示すことになる。対立遺伝子2の追加コピーが存在すれば、「p」値は予想される0.75よりも高くなる。しかし、対立遺伝子1の追加コピーが存在すれば、「p」値は予想される0.75よりも低くなる。特定のSNPに関して「p」値を定量化することが、染色体異常の有無を決定するために、SNPを使用することができる。染色体異常の存在を検出するためには、単一のSNPに関して測定された正確な「p」値で十分である。
幾つかのSNPにおいて、一対立遺伝子の他の一対立遺伝子に対する比が、理論上予想される1:1の比からなぜ変化するかについては、幾つかの可能な解釈がある。第1に、DNAポリメラーゼは、あるヌクレオチドを他のヌクレオチドよりも速く取り込む可能性がある。対立遺伝子はPCRによって増幅されているため、あるヌクレオチドが他のヌクレオチドよりもほんのわずか優勢であっても、予想された1:1の比からの変化を生じ得る。はめ込み反応の間は、あるヌクレオチドが他のヌクレオチドよりも優先となる可能性は見られない。なぜならば、1種の色素によって標識した単一ヌクレオチドが使用されるからである。
SNP部位における可変ヌクレオチドが、2つの対立遺伝子の変性速度に影響を与える可能性もある。対立遺伝子1がグアニンを含有し、対立遺伝子2がアデニンを含有すれば、これらのヌクレオチドに関する結合の強さの違いが、DNA鎖の分離する速度に影響を与え得る。やはり対立遺伝子はPCRによって増幅されているため、ほんの僅かな違いが、最終結果に大きな影響を与え得ることを特記することは重要である。また、SNP部位における可変ヌクレオチドが、2本の鎖の分離後アニールする速度に影響を与えている可能性もある。
あるいは、IIS型制限酵素がある対立遺伝子を他の対立遺伝子よりも優先的に切断する可能性もある。上記で詳細に検討したように、IIS型制限酵素は、認識部位から離れて切断する。SNP部位における可変ヌクレオチドが制限酵素消化の効率に影響を与えている可能性がある。幾つかのSNPにおいて、制限酵素はある対立遺伝子を100%の効率で切断し、一方、他の対立遺伝子を90%の効率で切断する可能性がある。
しかしながら、対立遺伝子1対対立遺伝子2の比が理論上予想された1:1の比から逸脱する事実が、SNPの有用性に影響を与えるか、または減少させるわけではない。上記に示されたように、各SNPに関する「p]値は異なる個人の間で一貫性がある。
任意のSNPに関する「p」値は、限定はしないが、1〜10、11〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100、101〜110、111〜120、121〜130、131〜140、141〜150、151〜160、161〜170、171〜180、181〜190、191〜200、201〜210、211〜220、221〜230、231〜240、241〜250、251〜260、261〜270、271〜280、281〜290、291〜300人、および300人を上回る任意の数のヘテロ接合の個人の鋳型DNAを分析することによって算出できる。
本明細書に記載された方法により、任意のSNPに関する「p]値の決定が可能である。幾つかのSNPよりもより一貫した挙動をとる可能性がある。ヒトゲノムには、300万以上のSNPが存在するため、各々のSNPがどのような挙動をとるかを推測することは不可能である。各SNPに関する「p」値は、実験的に決定する必要があろう。本明細書に記載された方法は、高い一貫性および再現性のある「p」値を有するSNPの同定を可能にする。
実施例10
実施例9で検討したように、特定のSNPにおけるある対立遺伝子対他の対立遺伝子の比は、理論上予想された50:50の比から変化し得る。ある対立遺伝子対他の対立遺伝子の比が、染色体疾患を有する個人において線形を維持するという条件で、追加染色体の存在を検出するためにこれらのSNPを用いることができる。例えば、SNPXにおいて、対立遺伝子1対対立遺伝子2のパーセンテージが75:25であるとすれば、ダウン症候群を有する個人に関して、対立遺伝子1対対立遺伝子2の予想パーセンテージは、このSNPにおける予想パーセンテージからの変化を反映するように適切に調整されなければ
ならない。
染色体21上のSNP TSC0108992に関する対立遺伝子1対対立遺伝子2のパーセンテージは、正常な4人の鋳型DNAおよびダウン症候群を有する1人の鋳型DNAを用いて算出された。下記に示すように、ダウン症候群を有する1人において、ある対立遺伝子対他の対立遺伝子は一貫性があり、線形を維持した。
鋳型DNAの調製
正常な遺伝子核型を有する4人および染色体21の1つ余分なコピーを有すること(ダウン症候群)が確認されている1人からDNAを採取した。ダウン症候群を有する個人の親からもインフォームドコンセントを得た。
各個人から9mlの血液試料を滅菌管(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9ml EDTA減圧管、カタログ番号NC9897284)に採取した。キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAはキットに含まれている使用説明書に従って単離した。
プライマー設計
以下のプライマーセットを用いてTSC0108992を増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプラーマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC0108992は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。
PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、50ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。38サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを37回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。各PCR産物を2つの試料に分け、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの2つの別々の反応ウェルに移した。各PCR反応に関し各々、マイクロ滴定プレートの別々のウェルに2つの複製物が存在した。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するため1×PBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で詳細に検討したように、SNPの双方の対立遺伝子の配列は、1種の標識ヌクレオチドを用いて、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddTTP、チミジン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(Fermentas Inc.)(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。各バンドを枠で囲み、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー・ソフトウェアを用いて、バンドの強度を算出した。
下記にSNP TSC0108992に関する5’オーバーハングの図式を示す。DNA配列の全体ではなく、オーバーハングの部分のみを複写している(ここでRは可変部位を示す)。
Figure 2006521086
SNP TSC0108992に関して認められたヌクレオチドは、センス鎖上(ここでは上の鎖として表す)のアデニンとチミジンである。オーバーハングの3位は、チミジンに相補的なアデニンに相当する。未標識dATP、dCTP、およびdGTPの存在下で標識ddTTPを用いた。標識ddTTPによるはめ込み反応後、以下のDNA分子が生成した。
Figure 2006521086
対立遺伝子1から得た値と対立遺伝子2から得た値を比較することに困難はなかった。なぜならば、はめ込み反応には1種の標識ヌクレオチドが使用され、双方の対立遺伝子に関するはめ込み反応が、1本の管内で生じたからである。BsmFIの別途切断特性は、この分析に影響を与えないであろう。なぜならば、11/15オーバーハングは、10/14オーバーハングと全く同様にはめ込みを受けるからである。はめ込みを受けた11/15オーバーハングの図式を下記に表す。
Figure 2006521086
図16に見られるように、鋳型DNAの各試料に関して2本のバンドが検出された。より低分子量のバンドは、ddTTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応し、より高分子量のバンドは、標識ddGTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した。
対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、一貫性が高かった(表XVIIを参照)。また、いずれの所与の個人に関しても、PCR反応の複製物は、同様の結果を示した(表XVIIを参照)。対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、対立遺伝子2の値を、対立遺伝子1および対立遺伝子2の値の合計で割る(対立遺伝子2/(対立遺伝子1+対立遺伝子2))ことによって算出した。4人の対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均パーセンテージは0.4773であり、標準偏差は0.0097であった。ダウン症候群を有する1人から単離した鋳型DNA上の対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは0.3086であった。
正常な個人の鋳型DNAを用いて、対立遺伝子2対対立遺伝子1の理論上予想されたパーセンテージは0.50である。しかし、実験的に決定されたパーセンテージは0.4773であった。染色体21の余分なコピーを1つ有する1人に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1の理論上予想されたパーセンテージは0.33である。SNP TSC0108992に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1の実験的に決定されたパーセンテージは0.3086であった。
理論上予想されたパーセンテージからの偏差は一貫性が高く、線形を維持している。染色体21の余分なコピーを1つ有する1人から採取された鋳型遺伝子上でもSNP TSC0108992における対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは線形を維持することが、以下の式によって証明される。
Figure 2006521086
正常な個人から得た鋳型DNAを用いて、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージが0.47と決定されるならば、ダウン症候群を有する個人の鋳型DNAを用いた対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは0.3102になるはずである。実験的に決定された比は0.3086で、標準偏差は0.00186であった。ダウン症候群を有する個人の鋳型DNA上の対立遺伝子2対対立遺伝子1の予測されたパーセンテージと実験的に決定されたパーセンテージとの間に違いはない。
特定のSNPにおけるある対立遺伝子対他の対立遺伝子のパーセンテージは一貫性が高く、再現性があり線形である。ある対立遺伝子対他の対立遺伝子の算出されたパーセンテージに係らず、任意のSNPが、染色体疾患の有無を決定するために使用できることが、このことから証明される。
(表XVII)TSC0108992での対立遺伝子1に対する対立遺伝子2の割合
Figure 2006521086
実施例11
ある特定のSNPに関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、一貫性が高い。実験的に決定された比からの統計上有意な偏差は染色体異常の存在を示す。正常な個人の鋳型DNAおよびダウン症候群を有する個人の鋳型DNAを用いて、染色体21上のSNP TSC0108992における対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージを下記に計算した。
鋳型DNAの調製
正常な遺伝子核型を有する個人および染色体21の1つ余分なコピーを有することが確認されている個人(ダウン症候群)からDNAを採取した。ダウン症候群を有する個人の親からもインフォームドコンセントを得た。
各個人から9mlの血液試料を滅菌管(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9ml EDTA減圧管、カタログ番号NC9897284)に採取した。キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAはキットに含まれている使用説明書に従って単離した。
鋳型DNAの混合
正常な遺伝子核型を有する個人の鋳型DNAおよび染色体21の1つ余分なコピーを有する個人の鋳型DNAを10ng/μlの濃度に希釈した。正常な鋳型DNAおよびダウン症候群の鋳型DNAの4種の混合物を以下の様式で作成した:
混合物1: 32μlの正常DNA+8μlのダウン症候群DNA
混合物2: 28μlの正常DNA+12μlのダウン症候群DNA
混合物3: 20μlの正常DNA+20μlのダウン症候群DNA
混合物4: 10μlの正常DNA+30μlのダウン症候群DNA
正常な鋳型DNAおよびダウン症候群を有する個人の鋳型DNAに関して、3つの別々のPCR反応を設定した。同様に、各混合物に関して3つの別々のPCR反応を設定した。
プライマー設計
SNP TSC0108992は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプラーマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有した。第2のプライマーは制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC0108992は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。
特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、50ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。38サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを37回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。各PCR産物を2つの試料に分け、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの2つの別々のウェルに移した。各PCR反応に関し各々、マイクロ滴定プレートの別々のウェルに2つの複製物が存在した。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するため1×PBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で詳細に検討したように、SNPの双方の対立遺伝子の配列は、1種の標識ヌクレオチドを用いて、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddTTP、チミジン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(Fermentas Inc.)(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。各バンドを枠で囲み、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー・ソフトウェアを用いて、バンドの強度を算出した。
図17A〜Fに示されるように、2本のバンドが検出された。より低分子量のバンドは、ddTTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応し、より高分子量のバンドは、ddTTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した。
実験は盲検様式で実施した。どの管がどの鋳型DNAに相当するかが知られないように管を暗号化した。ゲルの分析後、各管を次のカテゴリーに分類した:正常鋳型DNA、ダウン症候群鋳型DNA、ダウン症候群鋳型DNA対正常DNAの3:1混合物、正常鋳型DNA対ダウン症候群鋳型DNAの1:1混合物、ダウン症候群鋳型DNA対正常鋳型DNAの1:2.3混合物、およびダウン症候群鋳型DNA対正常鋳型DNAの1:4混合物。各PCR反応の各複製物は、首尾よく適切なカテゴリーに分類された。このことは、異常DNAがDNA全体の少ないパーセンテージでしか存在しなくても、その検出に本法が使用できることを証明している。
正常鋳型DNAの3つのPCR反応の各複製物に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージを表XVIIIに示す(図17Aも参照)。対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均パーセンテージは、対立遺伝子2の値を、対立遺伝子1および対立遺伝子2の値の合計で割る(対立遺伝子2/(対立遺伝子1+対立遺伝子2))ことによって算出した結果、平均0.50025であり、標準偏差は0.002897であった。このように、対立遺伝子1と対立遺伝子2とは、50:50の比率で存在する。あるPCR反応と他のPCR反応とで、バンドの強度は変化するが(反応1と反応3とを比較されたい)、1つのPCR反応内での強度に違いないはない。さらに、PCR反応の2種の複製物に関して得られた値は極めて類似していた。変化の多くは、PCR反応間にあるもので、ピペット操作誤差に帰せられる可能性が大きい。
ダウン症候群鋳型DNAの3つのPCR反応の各複製物に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージを表XVIIIに示す(図17Bを参照)。対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、対立遺伝子2の値を、対立遺伝子1および対立遺伝子2の値の合計で割る(対立遺伝子2/(対立遺伝子1+対立遺伝子2))ことによって算出した結果、平均0.301314であり、標準偏差は0.012917であった。肉眼によるゲルの分析であっても対立遺伝子1は対立遺伝子2よりも多数のコピーで存在することは明らかである(図17Bを参照)。変化の多くはやはり、PCR反応の複製物の間にではなく、PCR反応間で生じている。統計上の変化の大部分はピペット操作誤差による可能性が大きい。
染色体異常の存在を検出するためには、単一ヌクレオチドの分析で十分であった。そのSNPの「p」値が知られており、また、統計上のサンプリング誤差が分析に導入されないように十分な数のゲノムが存在するという条件で、1個のヌクレオチドで十分である。この実験においては、各反応に凡そ5,000のゲノムが存在した。
ダウン症候群鋳型DNA対正常鋳型DNAの3:1の比である混合物からなる反応は、正常鋳型DNAおよび他のDNA混合物と明らかに識別可能であった(図17Cを参照)。対立遺伝子2対対立遺伝子1の算出パーセンテージは0.319089であり、標準偏差は0.004346であった(図XVIIIを参照)。同様に、ダウン症候群鋳型DNA対正常鋳型DNAが1:1の比である混合物、ならびに1:2.3の比である混合物からなる反応も識別可能であり(図17Dおよび17Eを参照)、それらの値は全ての反応から統計上有意であった(図XVIIIを参照)。
正常な鋳型遺伝子量が増加するにつれて、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージが上昇した。ダウン症候群鋳型DNA対正常鋳型DNAの1:4の比である混合物では、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、0.397642であり、標準偏差は0.001903であった(図17Fを参照)。この値と正常鋳型DNAから得られた値との間の違いは、統計上有意である。このように、試料が異常DNAの均一試料でなくても、本明細書に記載された方法により、染色体異常の検出が可能である。
上記のように、正常DNAが大量に存在する中でも染色体の異常コピー数を有する小フラクションのDNAの存在を検出することができる。正常DNA量が増加し、ダウン症候群DNA量が減少するにつれて対立遺伝子2対対立遺伝子1に対応するバンドの強度が等しくなることは、肉眼によっても明らかであった。
上記実施例では、染色体21上に位置するSNPを分析した。しかし、限定はしないが、ヒト染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびY、ならびに胎児染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびYなどの任意の染色体上の任意のSNPが分析できる。さらに、上記の方法を用いて、非ヒト生物の染色体を分析できる。染色体の任意の組合せを分析できる。上記実施例では、一染色体の1つ余分なコピーが検出された。しかし、モノソミーを検出するために同じ方法を用いることができる。
(表XVIII)TSC0108992での対立遺伝子1に対する対立遺伝子2の割合
Figure 2006521086
Figure 2006521086
Figure 2006521086
実施例12
上記実施例9で検討したように、ヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子1対対立遺伝子2の比は一定である。しかし、ヘテロ接合SNPにおける対立遺伝子1対対立遺伝子2の比に影響を与え得る1つの要因は、ゲノム数の少なさである。例えば、40個のゲノムがあるとすると、これは、対立遺伝子1の合計40個の染色体と対立遺伝子2の40個の染色体があることを意味するが、プライマーが対立遺伝子1を有する40個の染色体にアニールするが、対立遺伝子2を有する染色体には30個しかアニールしないということが統計上あり得る。これは、対立遺伝子1対対立遺伝子2の比に影響を与えることになり、ある一定のSNPに関する「p」値に大きな影響を与え得る。
少量のゲノムDNA試料を増加させるために、典型的には縮退オリゴヌクレオチドPCRを採用する全ゲノム増幅が用いられる。8、10、12または14塩基のオリゴヌクレオチド類がゲノムの増幅に用いられる。プライマーは、ゲノム全体に亘ってランダムにアニールし、少量のゲノムDNA試料を、ゲノム分析用に数百倍多いDNAへと増幅する。
本明細書に記載の方法は、一般にゲノム全体が関心対象座であるわけではないという事実を利用する。1つの染色体、または複数の染色体またはゲノム全体を意味する染色体上に位置する特に関心対象となる坐が分析用に選択される。たとえ、関心対象座がゲノム全体に関する染色体上に位置しているとしても、それらの染色体のうち、関心対象座を含有する領域を増幅することが好ましい。
妊娠女性の血漿から得られた胎児DNAによく見られる小数ゲノムの限界を克服するために、複合的方法を用いてゲノム数を増加させることができる。下記の方法により、関心対象座を含有する単数または複数の染色体が優先的に増幅される。
鋳型DNAの調製
ヒト志願者からインフォームドコンセントを得た後、9mlの血液試料を滅菌管に採取した(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、9ml EDTA減圧管、カタログ番号NC9897284)。管を1000rpmで10分間回転させた。各試料の上澄み液(血漿)を取り、一般に「バフィーコート(buffy−coat)」と称されている残りの血液試料の1ミリリットルを新たな管に移した。各試料に1ミリリットルの1×PBSを加えた。キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。
複合プライマー設計
プライマーは、染色体21上に位置する関心対象座のコピー数を増やすために、染色体21上の様々な領域にアニールするように設計した。プライマーの長さは12塩基であった。しかし、限定はしないが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36〜45、46〜55、56〜65、66〜75、76〜85、86〜95、96〜105、106〜115、116〜125塩基、および125塩基を超える任意の長さのプライマーが使用できる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の双方にアニールするように設計した。
染色体21上に位置する9つのSNPを分析した。すなわち、TSC0397235、TSC0470003、TSC1649726、TSC1261039、TSC0310507、TSC1650432、TSC1335008、TSC0128307、およびTSC0259757である。1〜10、11〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100、101〜110、111〜120、121〜130、131〜140、141〜150、151〜160、161〜170、171〜180、181〜190、191〜200、201〜300、301〜400、401〜500、501〜600、601〜700、701〜800、801〜900、901〜1000、1001〜2000、2001〜3000、3001〜4000、4001〜5000、5001〜6000、6001〜7000、7001〜8000、8001〜9000、9001〜10,000および10,000を超える任意の数のSNPを分析することができる。
9つのSNPの各々に関して、ある12塩基プライマーは、関心対象座の凡そ130塩基上流にアニールするように設計し、ある12塩基プライマーは、関心対象座の凡そ130塩基下流にアニールするように設計した(本明細書では複合プライマーと称される)。限定はしないが、
Figure 2006521086
任意の距離でアニールするように設計できる。また、1つのSNPに関して、限定はしないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、21〜30、31〜40、41〜50、および50を上回る1セット以上の複合プライマーが使用できる。
また、染色体21の他の領域を増幅するために、合計100セットのプライマー(反応に200種のプラーマー)に関して、91セットのフォワードおよびリバースプライマーを用いた。1つの反応において、多数のプライマーを多数の非特異的結合を生じることなく使用できることを証明するために、これらの91個のプライマーを使用した。限定はしないが、1〜10、11〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100、101〜200、201〜300、301〜400、401〜500、501〜600、601〜700、701〜800、801〜900、901〜1000、1001〜2000、2001〜3000、3001〜4000、4001〜5000、5001〜6000、6001〜7000、7001〜8000、8001〜9000、9001〜10,000、10,001〜20,000、20,000〜30,000、および30,000を超える任意の数のプライマーを反応に用いることができる。
前記複合プライマーは、プライマーの3’端に同じヌクレオチドを有するように設計された。この場合、複合プライマーは「AA](ここでAはアデニンを示す)で終わる。プライマー−二量体形成を最少化するために、プライマーを、この様式で設計した。しかし、プライマーは、限定はしないが、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、アデニンとグアニンの任意の組合わせ、アデニンとシトシンの任意の組合わせ、アデニンとチミジンの任意の組合わせ、グアニンとシトシンの任意の組合わせ、グアニンとチミジンの任意の組合わせ、またはシトシンとチミジンの任意の組合わせなどの任意のヌクレオチドで終わることができる。また、複合プライマーは、3’端に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10個を超える同じヌクレオチドを有することができる。
SNP TSC0397235に対する複合プライマーは以下であった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0470003に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1649726に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1261039に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0310507に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1650432に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1335008に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0128307に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0259757に対する複合プライマーは以下のものであった:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
染色体21の種々の領域にアニールする91セットの追加プライマーを反応に含めた:
Figure 2006521086
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Figure 2006521086
複合PCR
SNP TSC0397235、SNP TSC0470003、SNP TSC1649726、SNP TSC1261039、SNP TSC0310507、SNP TSC1650432、SNP TSC1335008、SNP TSC0128307、およびSNP TSC0259757を包囲する染色体21上の領域を、ポリメラーゼ連鎖(PCR、本明細書に参照として組み込んでいる米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。このPCR反応には、関心対象座の上流および下流の凡そ130塩基にアニールするプライマーを使用した。PCR反応を用いたのは、関心対象座のコピー数を増加させて、ゲノム数の少なさから生じ得る誤差を排除するためである。
特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、15ngの鋳型ヒトゲノムDNAおよび5μMの各プライマーを用いた。
5mMの濃度のフォワードおよびリバースプライマー各々2マイクロリットルを1本のマイクロ遠心管にプールし混合した。40μlのPCR反応液総量(1.5μlの鋳型DNA、10.5μlの滅菌水、8μlのプライマー混合物、および20μlのホットスターTaq(HotStar Taq))中、8マイクロリットルのプライマー混合物を用いた。25サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分;
(2)95℃で30秒;
(3)4℃で30秒;
(4)37℃で30秒;
(5)ステップ2〜4を24回反復;
(6)72℃で10分。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
別の態様では、6塩基のオリゴヌクレオチド、7塩基のオリゴヌクレオチド、8塩基のオリゴヌクレオチド、9塩基のオリゴヌクレオチド、10塩基のオリゴヌクレオチド、11塩基のオリゴヌクレオチド、12塩基のオリゴヌクレオチド、13塩基のオリゴヌクレオチド、14塩基のオリゴヌクレオチド、または14塩基を超えるオリゴヌクレオチドを用いて対象遺伝子座を増幅する。好ましい態様では、6塩基のオリゴヌクレオチド、7塩基のオリゴヌクレオチド、8塩基のオリゴヌクレオチド、9塩基のオリゴヌクレオチド、10塩基のオリゴヌクレオチド、11塩基のオリゴヌクレオチド、または12塩基のオリゴヌクレオチドを用いて対象遺伝子座を増幅する。別の態様では、1〜5塩基、5〜10塩基、10〜15塩基、15〜20塩基、20〜25塩基、25〜30塩基、30〜35塩基、35〜40塩基、40〜45塩基、45〜50塩基、50〜100塩基、100〜500塩基、500〜1000塩基、1000〜2000塩基、2000〜4000塩基、4000〜8000塩基、8000〜10,000塩基、または10,000塩基を超える塩基を含むがこれらに限定されない、任意の数のオリゴヌクレオチドを使用することができる。ランダムオリゴの数が少ない場合、オリゴの濃度は、効率的な増幅を可能とするには十分多いが、オリゴの数は、オリゴ間の干渉を引き起こさない程度に十分少ない。このため、ゲノムの効率的な増幅が可能となる。
別の態様では、対象遺伝子座の上流および下流の配列を分析して、個々の対象遺伝子座の上流または下流の配列中に存在する6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、または12塩基の配列を同定する(これを後に対象遺伝子座の増幅に使用する)。別の態様では、1〜10個、10〜50個、50〜100個、100〜200個、200〜500個、または500個超を含むがこれらに限定されない、任意の数の6塩基のオリゴヌクレオチドを使用して、対象遺伝子座を増幅することができる。
別の態様では、少数のゲノムに由来する対象遺伝子座の数を、一定数の対象遺伝子座を増幅後に、プライマーを除去し、また残りの対象遺伝子座を増幅することで増やすことができる。全ての対象遺伝子座が、1回の反応で多重化される必要はない。1〜5個、5〜10個、10〜25個、25〜50個、50〜100個、100〜200個、200〜400個、または400個超を含むがこれらに限定されない、任意の数の、実験的に決定された対象遺伝子座を1回の反応で多重化することができる。このような対象遺伝子座のコピー数を増やした後に、増幅産物の結合を可能とするカラムに試料を通し、プライマーおよび使用されなかったdNTPを除去することができる。結合した産物をカラムから溶出後に、異なる対象遺伝子座を1回の反応で増幅することができる。このため、プライマー間の相互作用の量は減じることになる。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムド(degenerate oligonucleotide primed)PCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(multiple displacement amplification)(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
関心対象断片の精製
キアゲン・ミンエリュート(Quiagen MinElute)PCR精製キット(キアゲン、カタログ番号28004)を用いて、反応液から余分のプライマーおよびヌクレオチドを除去した。反応は、カラムと共に供された製造元の使用説明書に従って実施した。DNAを100μlの滅菌水中へ溶出した。
PCR反応2
SNP TSC0397235を以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から103塩基にアニールするように設計された第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC0470003は、以下のプライマーセットを用いて増幅させた:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から80塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC1649726を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から113塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC1261039を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から54塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC03110507を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から93塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC1650432を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から80塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC1335008を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から94塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC0128307を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から54塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
SNP TSC0259757を、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーは、5’端におけるビオチンタグおよび制限酵素EcoRIに対する認識部位を含有し、関心対象座から100塩基にアニールするように設計された。第2のプライマーは、制限酵素BsmFIに対する認識部位を含有した。
全ての関心対象座は、ポリメラーゼ連鎖(PCR、本明細書に参照として組み込んでいる米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。本実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それを単独のPCR反応において、一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、キアゲンから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。
複合反応の溶出液(ミンエリュートカラムから溶出したPCR産物)の1マイクロリットルを、各PCR反応の鋳型DNAとして用いた。複合試料を鋳型として用いた場合、各SNPは三重増幅した。対照として、各SNPを15ngの元の鋳型DNA(複合反応を受けなかったDNA)から増幅した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は、各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、5μMの各プライマーを用いた。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
アガロースゲル分析
各SNPに関し、元の鋳型DNAからのPCR反応液20マイクロリットルのうち4マイクロリットルを、アガロースゲル電気泳動によって分析した(図18Aを参照)。各SNPに関し、複合鋳型から増幅したPCR反応液20マイクロリットルのうち4マイクロリットルを、アガロースゲル電気泳動によって分析した(図18Bを参照)。
元の鋳型DNAから増幅したSNPの8/9に強度の高い単一バンドが見られた(レーン1〜3および5〜9)。8つのSNPの各々に関して、バンドは正しい位置に移動した。元の鋳型からTSC1261039を増幅すると、正しい位置に移動した。強度の高い単一バンド、およびより低分子量の微弱なバンドが1本生じた(レーン4)。見られたバンドは2本だけで、それらは分子量に基づいて明瞭に識別できた。本明細書に記載されたPCR法により、関心対象座の濃縮または濃厚化を伴うことなく、ゲノムDNAから関心対象座を明瞭に増幅することができる。
図18Bに見られるように、複合鋳型DNAからSNP TSC0397235、SNP TSC0470003、SNP TSC0310507、およびSNP TSC0128307を増幅するために用いられたプライマーにより、正しい位置に移動した強度の高い単一バンドが生じた(レーン1、2、5および8)。この複合反応は200種のプラーマーを含有したにも係らず、追加のバンドは生じなかった。複合プライマーは、12塩基長であり、染色体21上に位置する配列以外の配列にもアニールする可能性があるが、その産物は見られなかった。なぜならば、そのバンドは第2のPCR反応において増幅されなかったからである。第2のPCR反応には、関心対象座に特異的なプライマーを用い、非対照のオリゴヌクレオチドおよび上昇アニーリング温度を使用したので、ゲノムの特異的増幅が可能となる(実施例1を参照)。
複合鋳型DNAからTSC1649726を増幅すると、強度の高い1本のバンドと2本の弱いバンドが生じ、これらは分子量に基づいて、明瞭に識別できた(図18G、レーン3を参照)。複合鋳型DNAからTSC1261039を増幅すると、正しい分子量の高強度のバンド1本と、より低分子量の微弱なバンドが1本生じた(図18B、レーン4を参照)。この低分子量バンドは、元の鋳型DNAからTSC1261039を増幅した際に見られたバンドと同じ大きさであった(図18A、レーン4と図18B、レーン4を比較されたい)。このように複合鋳型DNA上でTSC1261039を増幅した場合、追加の非特異的バンドは生じなかった。
複合鋳型DNAからSNP TSC1650432、SNP TSC01335008、およびSNP TSC0259757を増幅すると、正しい位置に移動した高強度のバンド1本とより弱いバンドを1本生じた(レーン6、7および9)。SNP TSC1650432およびSNP TSC0259757では、より弱いバンドはより低分子量のもので、関心対象のバンドから明瞭に識別された(図18B、レーン6および9を参照)。SNP TSC1335008では、より弱いバンドは僅かに分子量の高いものであった。しかし、元の鋳型DNAからのTSC1335008増幅産物と比較することによって、正しいバンドを同定することができる(図18A,レーン7と図18B、レーン7を比較されたい)。TSC1335008に関して、PCR条件を最適化することもできる。全て9つのSNPは全く同一条件下で増殖し、増幅したSNPでは、明瞭に識別できるバンドが生じた。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。PCR反応液の1/2を、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの1つのウェルに移した。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で詳細に検討したように、あるSNPの双方の対立遺伝子を、1種の標識ヌクレオチドにより、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddGTP、グアニン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。各バンドを枠で囲み、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー・ソフトウェアを用いて、バンドの強度を算出した。
BsmFIによる消化後のTSC0470003に関する5’オーバーハングの略図を下記に表す。
Figure 2006521086
TSC0470003に関して、センス鎖(ここでは上の鎖として表す)上に見られたヌクレオチドは、アデニンとグアニンである。オーバーハングの3位は、グアニンに相補的なシトシンに相当する。未標識dATP、dCTPおよびdTTPの存在下、標識ddGTPを使用した。はめ込み反応後のDNA分子の略図を下記に表す。
Figure 2006521086
2本のバンドが検出された。より低分子量のバンドは、標識ddGTPによって1位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した。より高分子量のバンドは、標識ddGTPによって3位にはめ込まれたオーバーハングに相補的なDNA分子に対応した(図19を参照)。
元の鋳型DNAおよび複合鋳型DNAからの増幅後、TSC0470003における対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージを算出した。1つの反応において双方の対立遺伝子の検出に1種の蛍光標識ヌクレオチドを使用することにより、ピペット操作反応によって生じるエラーおよび異なった色素の量子係数によって生じるエラーの量が減少する。
TSC0470003に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、対立遺伝子2の値を、対立遺伝子1および対立遺伝子2の値の合計で割る(対立遺伝子2/(対立遺伝子1+対立遺伝子2))ことによって算出した。元の鋳型DNA上のTSC0470003に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、0.539と算出された(表XIXを参照)。複合鋳型DNA上の各SNPに関しては3つのPCR反応を実施した。複合鋳型DNA上のTSC0470003に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均パーセンテージは、0.49であり、標準偏差は0.0319であった(表XIXを参照)。元の鋳型DNAから得られたパーセンテージと複合鋳型DNAから得られたパーセンテージの間に統計上の有意差はなかった。
SNP TSC1261039に関しては、元の鋳型DNA上のTSC1261039に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは、0.44と算出された(表XIXを参照)。複合鋳型DNA上の各SNPに関しては3つのPCR反応を実施した(図19Bを参照)。複合鋳型DNA上のTSC1261039に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1の平均パーセンテージは0.468であり、標準偏差は0.05683であった(表XIXを参照)。元の鋳型DNAから得られた対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージと複合鋳型DNAから得られたパーセンテージの間に統計上の有意差はなかった。
複合鋳型DNA上のTSC1261039に関して、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージに見られる変化は、ピペット操作反応による可能性が大きい。複製物の数を増やすことによって、この変化を減少させることができる。多数の複製品を用いることによって、最少の統計的変化でパーセンテージを得ることができる。
同様に、SNP TSC0310507およびSNP TSC1335008に関しても、元の鋳型DNAから得られた対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージと複合鋳型DNAから得られたパーセンテージの間に統計上の差はなかった(表XIXおよび図19Cおよび19Dを参照)。このように、可変部位におけるある対立遺伝子対他の対立遺伝子のパーセンテージに影響を与えることなく、関心対象座を含有する染色体領域の数を増やすために、複合反応を用いることができる。
(表XIX)複合化ありまたはなしで、種々のSNPにおける対立遺伝子1に対する対立遺伝子2のパーセンテージ
Figure 2006521086
Figure 2006521086
関心対象座を増幅させるために、本明細書に記載された方法では2つの異なる増幅反応を用いた。別のPCR反応において、オリゴヌクレオチドが関心対象座の上流および下流にアニールするように設計された。従来のゲノム増幅とは異なり、これらのプライマーは縮重せず、関心対象座から特定の距離でアニールした。しかし、プライマーの長さに依って、ゲノムの他の領域にプライマーがアニールした可能性がある。
第2のPCR反応は、実施例1〜6に記載の方法を用いる。関心対象座を増幅するようにプライマーが設計され、関心対象座における配列が決定される。第2のPCR反応の条件により、複合鋳型DNAから特異的に関心対象座を増幅できた。たとえ、複合反応からの非特異的産物が存在したとしても、それらは関心対象座の増幅を妨害しなかった。増幅が元の鋳型DNA上で行われたか、複合鋳型DNA上で行われたかに係らず、4種のSNPにおいて、対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージに統計上の差はなかった。
本実施例で分析されたSNPは、ヒト染色体21上に位置した。しかし、本法は非ヒトDNAおよび、限定はしないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびYなどのヒトDNAに適用することができる。この複合法は、限定はしないが、ヌクレオチド置換、挿入、欠失および再配列などの遺伝子突然変異の分析にも適用できる。
上記方法は、出発鋳型DNA量が限られている場合はいつでも、遺伝子分析に利用できるDNA量を増加させるために使用できる。例えば、悪性細胞を有する前悪性および前侵襲性病巣は通常、標本中細胞の小部分を構成しているため、実施し得る遺伝子分析の数が減少する。本明細書に記載された方法は、遺伝子分析に利用できる悪性DNA量を増加させるために使用できる。また、母体血液中に存在する胎児ゲノムの数は少ないことが多いが、本明細書に記載された方法は、胎児DNA量を増やすために使用できる。
実施例13
妊娠女性の血液から分離した血漿は、母体鋳型DNAと胎児鋳型DNAの双方を含んでいる。先に検討したように、母体血漿中、胎児DNAのパーセンテージは、個々の妊娠女性によって変化する。しかし、母体鋳型DNAがホモ接合であり、血漿から得られた鋳型DNAがヘテロ接合パターンを示す場合のSNPを分析することによって胎児DNAのパーセンテージを決定できる。
例えば、SNP Xが、アデニンかグアニンのいずれかであり、SNP Xに関する母体DNAが、グアニンに関してホモ接合であると仮定しよう。血漿試料中の鋳型DNAの配列を決定するために、実施例6に記載した標識化法を用いることができる。血漿試料がSNP Xにおいてヘテロ接合である胎児DNAを含有するならば、IIS型制限酵素BsmFIによる消化、および標識ddGTP、未標識dATP、dTTPおよびdCTPによるはめ込み反応後、以下のDNA分子が予想される。
Figure 2006521086
2つのシグナルが見られる。すなわち、1つのシグナルは、ddGTPによって1位にはめ込まれた、オーバーハングに相補的なDNA分子に対応し、第2のシグナルは、ddGTPによって3位にはめ込まれた、オーバーハングに相補的なDNA分子に対応する。しかし、母体DNAは、1位にはめ込まれた、オーバーハングに相補的なDNA分子に相当するグアニンに関してホモ接合である。ddGTPによって3位にはめ込まれた、オーバーハングに相補的なDNA分子からのシグナルは、胎児DNAを表すアデニン対立遺伝子に対応する。このシグナルは胎児DNAの指標となり、血漿試料中に存在する胎児DNA量を測定するために使用できる。
ある染色体と他の染色体の胎児DNA量に違いはない。例えば、いずれかの所与の個人における染色体1の胎児DNAパーセンテージは、染色体2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびYの胎児DNAパーセンテージと同じである。したがって、ある染色体上のSNPに関して算出された対立遺伝子の比を、他の染色体上のSNPに関する対立遺伝子の比と比較することができる。
例えば、染色体1上のSNPに関する対立遺伝子の比は、染色体2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびY上のSNPに関する対立遺伝子の比と等しいはずである。しかし、胎児が、限定はしないが、トリソミーまたはモノソミーなどの染色体異常を有していれば、異常コピー数で存在する染色体に関する比は、他の染色体に関する比とは異なるであろう。
妊娠女性の血液は、インフォームドコンセントを得た後に採取された。母体DNAがホモ接合であり、同じSNPが妊娠女性の血漿から得たDNAのヘテロ接合パターンを示す場合のSNPを分析することにより、母体血漿中の胎児DNAを検出できることを証明するために前記血液試料が用いられた。
全血からの血漿調製
各々9mlの血液を含有する4本の管から血漿を分離した(フィッシャー・サイエンティフィック)。血液は、インフォームドコンセントを得た妊娠女性から静脈穿刺により採取した。採血後、ホルムアルデヒド(25μl/ml血液)を各管に加えた。前記管は発送まで4℃で保存した。前記管は、フェデラルエクスプレス(Federal Express)により、アイスパックを含有したフォームコンテナー中で発送した。
前記血液を1000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離機上のブレーキは用いなかった。この遠心分離を反復した。上済み液を新たな管に移し、3000rpmで10分間回転させた。遠心分離機上のブレーキは用いなかった。4本の管各々の上澄み液をプールし、2本の管へ分割した。前記血漿をDNAが精製されるまで、−80℃で保存した。
キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。鋳型DNAは、キットに含まれている使用説明書に従って単離した。血漿の鋳型DNAは、20マイクロリットルの最終容量へ溶出させた。
母体DNAの単離
上記試料から血漿を取り出した後、一般に「バフィコート」と称される残りの血液試料の1ミリリットルを新たな管に移した。1×PBSの1ミリリットルを前記試料に加えた。キアゲンより提供されたキアンプDNAブラッド・ミディキット(カタログ番号51183)を用いて鋳型DNAを単離した。
ホモ接合母体SNPの同定
実施例8は、集団内で可能性の高いSNPの同定、または所与の個人のヘテロ接合SNPを同定するための方法を説明している。実施例8に記述された方法を、母体DNAがホモ接合である染色体13上のSNPを同定するために母体鋳型DNAに適用した。任意の数のSNPをスクリーンできる。スクリーンされるSNPの数は、分析が必要とされている胎児DNA中のヘテロ接合SNPの数に比例する。
実施例6で詳述したように、ある特定のSNPにおける双方の対立遺伝子の配列を決定するために、1種の標識ヌクレオチドが使用できる。未標識dATP、dTTPおよびdCTPの存在下、標識ddGTPによって決定できる配列のSNPが本実験例において選択された。しかし、標識ddATP、ddCTPまたはddTTPによって決定できる配列のSNPもまた使用できる。また、分析されるSNPは、全てが同じヌクレオチドで標識されるか、または4種のヌクレオチドの任意の組合せによって標識されるように選択され得る。例えば、400のSNPをスクリーンしようとする場合、100は、標識ddATPによって、100は標識ddTTPによって、100は標識ddGTPによって、100は標識ddCTPによって、または4種の標識ヌクレオチドの任意の組合せによって配列が決定されるように選択され得る。
母体DNAが、ホモ接合である29種のSNPが以下のように同定された:
Figure 2006521086
ヘテロ結合SNPは個体によって変化する。
複合プライマー設計
母体血漿中、典型的には少数の胎児ゲノムが存在する。染色体13上に位置する関心対象座のコピー数を増加させるために、各関心対象座の凡そ130塩基上流および130塩基下流にアニールするように、プライマーを設計した。これは、少数のゲノムの操作時に生じ得て、ある対立遺伝子対他の対立遺伝子の比に影響を与え得る統計上のサンプリングエラーを減少させるために行われた(実施例11を参照)。プライマーは12塩基長であった。しかしながら、限定はしないが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36〜45、46〜55、56〜65、66〜75、76〜85、86〜95、96〜105、106〜115、116〜125塩基、および125塩基を上回る任意の長さのプライマーが使用できる。プライマーはセンス鎖とアンチセンス鎖双方にアニールするように設計された。
プライマーは、プライマー二量体の形成を減少させるため、ジヌクレオチド「AA」の3’端で終止するように設計した。しかし、プライマーは、4種のヌクレオチドの何れにおいても、また、4種のヌクレオチドの任意の組合わせにおいても終止するように設計できる。
SNP TSC0052277に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1225391に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0289078に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1349804に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0870209に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0194938に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0820373に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0902859に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0501510に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1228234に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0082910に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0838335に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0818982に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0460204に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1084457に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0466177に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1270598に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1002017に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1104200に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0501389に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0039960に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0418134に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0603688に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0129188に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1103570に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0813449に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0701940に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0087962に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0660274に関する複合プライマーは以下のものであった:
フォワードプライマー:
Figure 2006521086
リバースプライマー:
Figure 2006521086
複合PCR
上記の29のSNPを包囲する染色体13上の領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、本明細書に参照として組み込んでいる米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。このPCR反応には、関心対象座の上流および下流の凡そ150塩基にアニールするプライマーを使用した。58種のプライマーを一緒に混合し、鋳型DNAを増幅する単独の反応に用いた。この反応は、関心対象座のコピー数を増加させて、ゲノム数の少なさから生じ得る誤差を排除するために実施された。
特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できるが、本実施例では、20μlの血漿鋳型DNAおよび5μMの各プライマーを用いた。
5mMの濃度のフォワードおよびリバースプライマー各々2マイクロリットルを1本のマイクロ遠心管にプールし混合した。40μlのPCR反応液総量(20μlの鋳型血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマー混合物、および25μlのホットスターTaq(HotStar Taq))中、4マイクロリットルのプライマー混合物を用いた。25サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分;
(2)95℃で30秒;
(3)4℃で30秒;
(4)37℃で30秒;
(5)ステップ2〜4を24回反復;
(6)72℃で10分。
種々の設定の試み、および最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。
関心対象座のコピー数を増加させるために、限定はしないが、プライマー伸長前増幅(PEP)(ツアングら(Zhang et al.)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(PNAS)、89:p.5847−51、1992年)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(テレニウスら(Telenius,el al.)、ゲノミックス(Genomics)13:p.718−25、1992年)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼを用いた、ローリングサークル複製を受ける鎖置換増幅(ディーンら(Dean et al.)、ゲノミック・リサーチ(Genomic Research)11:p.1095−99,2001年)、複素置換増幅(米国特許第6,124,120号明細書)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キットおよびタグ化PCRなどの他のゲノム増幅法もまた使用できる。
関心対象断片の精製
キアゲン・ミンエリュートPCR精製キット(キアゲン、カタログ番号28004)を用いて、反応液から未使用のプライマーおよびヌクレオチドを除去した。反応は、カラムと共に供された製造元の使用説明書に従って実施した。DNAを100μlの滅菌水中へ溶出した。
PCR反応2
プライマー設計
SNP TSC0052277は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1225391は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0289078は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1349804は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0870209は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0194938は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0820373は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0902859は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0501510は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1228234は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0082910は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0838335は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0818982は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0469204は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1084457は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0466177は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1270598は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1002017は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1104200は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0501389は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0039960は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0418134は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0603688は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0129188は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC1103570は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0813449は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0701940は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0087962は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
SNP TSC0660274は、以下のプライマーセットを用いて増幅した:
第1のプライマー:
Figure 2006521086
第2のプライマー:
Figure 2006521086
第1のプライマーの各々は、5’端におけるビオチンタグおよびEcoRIに対する制限酵素認識部位を含有し、関心対象座から特定の距離でアニールするように設計した。これにより、各関心対象座が異なる位置に移動するため(第1のアニーリング位置に基づいて)、関心対象座に関する単独反応が可能になる。第2のプライマーはBsmFIに対する制限酵素認識部位を含有した。
関心対象座は全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR、参照のため本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書)を用いて、鋳型ゲノムDNAから増幅した。本実施例では、関心対象座を別々の反応管で増幅したが、それらを1つのPCR反応において一緒に増幅することもできる。特異性を増大させるため、「ホットスタート」PCRを用いた。PCR反応は、QIAGENから供されたホットスターTaqマスター・ミックスキット(カタログ番号203443)を用いて実施した。
一反応当たりの鋳型DNAおよびプライマー量は各関心対象座に関して最適化できる。各関心対象座に関するPCR反応において、ミンエリュートカラムから溶出した複合鋳型DNAの1マイクロリットルを用い、各プライマーは5μMを用いた。上記の29種のSNPもまた、母体DNAから増幅した(15ngのDNAをPCR反応に用いた。プライマー濃度は上記のとおり)。40サイクルのPCRを実施した。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分15秒;
(2)37℃で30秒;
(3)95℃で30秒;
(4)57℃で30秒;
(5)95℃で30秒;
(6)64℃で30秒;
(7)95℃で30秒;
(8)ステップ6と7とを39回反復;
(9)72℃で5分。
PCRの最初のサイクルにおけるアニーリング温度は、第2のプライマーの3’アニーリング領域の略融解温度である37℃であった。PCRの第2サイクルにおけるアニーリング温度は、第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度である57℃であった。PCRの第3サイクルにおけるアニーリング温度は、第2の配列全体の略融解温度である64℃であった。残りのサイクルのアニーリング温度は64℃であった。PCRの最初の3つのサイクルにおいてTM1からTM2,そしてTM3へとアニーリング温度を上昇させることにより、特異性は大きく向上する。これらのアニーリング温度は、典型的なものであり、当業技術者は、各サイクルのアニーリング温度が、使用される特定のプライマーに依存することを解されるであろう。
種々の設定の試みおよび最良の結果をもたらすパラメータの使用によって、変性、アニーリングおよび伸長のための温度および時間を最適化できる。本実施例では、第1のプライマーを、関心対象座から様々な距離にアニールするように設計した。第1のプライマーのアニーリング位置は、関心対象座から5〜10、11〜15、16〜20、21〜25、26〜30、31〜35、36〜40、41〜45、46〜50、51〜55、56〜60、61〜65、66〜70、71〜75、76〜80、81〜85、86〜90、91〜95、96〜100、101〜105、106〜110、111〜115、116〜120、121〜125、126〜130、131〜140、140〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜260、260〜280、280〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500塩基、または500塩基を上回ってよいことは、当業技術者に解される。
関心対象断片の精製
PCR産物をゲノム鋳型DNAから分離した。各PCR産物を、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)GmbH(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)の2001年バイオケミカルズ・カタログに掲載のカタログ番号1 645 692)からのストレプタウェル(Streptawell)の透明ハイ・バインド(High−Bind)プレートの1つのウェルに入れた。あるいは、第1のプライマーは、関心対象座を分子量に基づいて分離可能なように設計したので、PCR産物を1つのウェルにプールすることができる。第1のプライマーは5’ビオチンタグを含有したので、PCR産物は、ストレプトアビジン被覆ウェルに結合し、一方、ゲノム鋳型DNAは結合しなかった。ストレプトアビジン結合反応は、サーモミキサー(Thermomixer)(エッペンドルフ)を37℃、1000rpmにて20分間用いて実施した。各ウェルを吸引して未結合物質を除去し、静かに混合しながら1×PBSで3回洗浄した(カンドパルら(Kandpal et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.1789〜1795(1990);カネオカら(Kaneoka et al.)、バイオテクニクス(Biotechniques)、10:p.30〜34(1001);グリーンら(Green et al.)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18:p.6163〜6164(1990))。
単離断片の制限酵素消化
第2のプライマーからPCR産物に取り込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIにより、精製PCR産物を消化した。消化は前記制限酵素と共に供された使用説明書に従ってストレプタウェルにおいて実施した。消化後、開裂した断片を除去するためPBSでウェルを3回洗浄した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFIによる制限酵素消化により、SNP部位または関心対象座および3’窪み端を含有した5’オーバーハングを有するDNA断片が得られた。5’オーバーハングは鋳型として働き、DNAポリメラーゼの存在下、単数または複数のヌクレオチドの取り込みを可能にした。
実施例6で示したように、あるSNPの双方の対立遺伝子を、1種の標識ヌクレオチドにより、他の未標識ヌクレオチドの存在下で決定できる。各はめ込み反応に以下の成分を加えた:1μlの蛍光標識ddGTP、グアニン以外の全てのヌクレオチドを含有した0.5μlの未標識ddNTP類(40μM)、2μlの10×配列緩衝剤、0.25μlのシーケナーゼ、および20μlの反応液に必要な水。はめ込み反応は全て40℃で10分間実施した。非蛍光標識ddNTPは、ファーメンタス社(メリーランド州ハノーバー所在)から購入した。他の標識化剤は全てアマーシャム(サーモシーケナーゼ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・コア・キット、US79565)から入手した。
標識後、各ストレプタウェルを1×PBS(100μl)で3回濯いだ。次に酵素と共に供された製造元の使用説明書にしたがって、制限酵素EcoRIによる消化によって「はめ込み」DNA断片をストレプタウェルから遊離させた。消化は120rpmで振とうしながら37℃で1時間実施した。
関心対象座の検出
ストレプトアビジンマトリックスから遊離させた後、試料を、36cm 5%アクリルアミド(尿素)ゲル(バイオ・ホイッテーカー・モレキュラー・アプリケーションンズ(Bio Whittaker Molecular Applications)、ロングレンジャー・ラン・ゲル・パックス(Long Ranger Run Gel Packs)、カタログ番号50691)の1レーンに載せた。前記試料を3000ボルトで3分ゲル内に電気泳動させた。前記ゲルを塩基配列決定装置(ホーファーSQ3シーケンサー)上で3時間操作した。装置から前記ゲルを取り出し、タイフーン9400バリアブルモード・イメージャー(Typhoon9400Variable Mode Imager)上でスキャンした。取り込まれた標識ヌクレオチドを蛍光により検出した。
下記にSNP TSC0838335に関する5’オーバーハングの略図を表す。配列全体ではなく、オーバーハングの部分のみを模写している(ここでRは可変部位を示す)。
Figure 2006521086
TSC0838355に関して観察されたヌクレオチドは、5’センス鎖(ここで上の鎖として表している)上のアデニンとグアニンである。オーバーハングの3位にあるヌクレオチドは、グアニンに相補的なシトシンに対応した。標識ddGTPは、未標識dATP、dCTPおよびdTTPの存在下、両方の対立遺伝子配列を決定するために使用できる。
制限酵素BsmFIは、認識部位から10/14を典型的に切断して、5’オーバーハングを創製するために用いられた。時には、BsmFIは、認識部位から11/15を切断して以下のオーバーハングを生成する。
Figure 2006521086
オーバーハングの0位は、アデニンに相補的なチミジンである。オーバーハングに相補的な0位は、未標識dATPによってはめ込まれ、したがって、はめ込み反応後、酵素が認識部位から10/14で切断しても11/15で切断しても全く同一の分子が生成した。はめ込み反応後に生成したDNAは下記に表される。
Figure 2006521086
TSC0838355に関して増幅された母体鋳型DNAは、予想された高分子量バンドの位置に単一バンドを示し、これは「A」対立遺伝子に対応した(図20、レーン1を参照)。前記母体鋳型DNAは、TSC0838355におけるアデニンに関してホモ接合であった。
しかしながら、レーン2において、同じ個体の血漿から単離されたTSC0838355に関する複合鋳型DNAの増幅により2本のバンド、すなわち、「G」対立遺伝子に対応した低分子量バンド、および「A」対立遺伝子に対応した高分子量バンドを示した。妊娠女性の血漿から単離された鋳型DNAは、母体鋳型DNAと胎児鋳型DNAの双方を含有する。
図20、レーン1に見られるように、母体鋳型DNAは、このSNPにおけるアデニンに関してホモ接合であった(レーン1と2を比較)。「G」対立遺伝子は、胎児DNAを表した。母体鋳型DNAおよび胎児鋳型DNAのシグナルは、明瞭に区別された。「G」対立遺伝子は、胎児DNAの指標となり、試料に存在する胎児DNA量を測定するために使用できる。また、一旦、所与の試料に関して母体血漿中の胎児DNAのパーセンテージが決定されると、このパーセンテージの何らかの偏差が染色体異常を示す。本法により、胎児染色体異常検出のための第1の非侵襲的方法を提供する。
図20、レーン3に見られるように、SNP TSC0418134に関する母体DNAの分析により、アデニン対立遺伝子に対応した高分子量バンドの予想された位置に移動した単一バンドが生成した。同様に、母体血漿から単離された複合鋳型DNAの分析により、アデニン対立遺伝子の予想された位置に移動した単一バンドが得られた(図20、レーン4を参照)。母体DNAと胎児DNAの双方は、TSC0418134のアデニンに関してホモ接合である。
下記にTSC0129188に関する5’オーバーハングの略図を示しており、ここでRは可変部位を示す。
Figure 2006521086
可変部位(R)の上流のヌクレオチドは、センス鎖上のグアニンに対応しない。したがって、BsmFIの11/15切断特性により生成した5’オーバーハングは、10/14切断により生成した5’オーバーハングに理想的にはめ込まれる。未標識dATP、dTTPおよびdCTPの存在下で標識ddGTPが、はめ込み反応に用いられた。はめ込み反応後に生成したDNA分子は以下に示される。
Figure 2006521086
SNP TS0129188に関する母体DNAの分析により、「G」対立遺伝子を表したオーバーハングに相補的な1位でddGTPによりはめ込まれたDNA分子に対応した単一バンドが得られた(図20、レーン5を参照)。アデニン対立遺伝子に関するバンドは検出されず、母体DNAがグアニンに関してホモ接合であることを示した。
対照的に、母体DNAと胎児DNAの双方を含有する母体血漿の複合鋳型DNAの分析により、2本の明瞭なバンドが得られた(図20、レーン6を参照)。低分子量バンドは、「G」対立遺伝子に対応したが、一方、高分子量バンドは、「A」対立遺伝子に対応した。前記「A」対立遺伝子は、胎児DNAを表す。このように、胎児細胞を単離しなければならないという複雑さを加えることなく、母体DNAシグナルと胎児DNAシグナルの分離を可能にする方法が開発された。さらに、母体DNAと胎児DNAとの間の相違を検出するために父親DNAの試料は必要とされない。
SNP TSC0501389に関する母体DNAの分析により、「A」対立遺伝子に対応した高分子量位置に移動した単一バンドを得た。「G」対立遺伝子に対応したバンドは検出されなかった。同様に、SNP TSC0501389に関する母体血漿の複合鋳型DNAの分析により、「A」対立遺伝子に対応した高分子量位置に移動した単一バンドが得られた。母体鋳型DNAと胎児鋳型DNAの双方とも、SNP TSC0501389におけるアデニンに関してホモ接合であった。
血漿からの母体鋳型DNAと鋳型DNAは、同じ試料から由来した。非侵襲的方法により得られた1つの試料が、母親および胎児双方の遺伝的指紋を提供した。
母体鋳型DNAがホモ接合であった29のSNPのうち、胎児鋳型DNAは、29のSNPのうち2つでヘテロ接合であった。胎児DNAは、残りの27SNPにおいて母体鋳型DNAと同じ対立遺伝子に関してホモ接合であった(データは示していない)。所与のSNPにおいて、母体鋳型DNAのホモ接合対立遺伝子と血漿鋳型DNAとの比較により、さらに品質管理水準を高くできる。母体鋳型DNAと血漿鋳型DNAとが、同一SNPにおける異なる対立遺伝子に関してホモ接合であることはあり得ない。これが見られると、処理中のエラーが発生したことを示していると考えられる。
本明細書に記載された方法は、母体遺伝子シグナルを分離でき、また母体血漿試料中の胎児遺伝子シグナルと識別できることを証明している。上記の実施例は、染色体13に位置するSNPを分析したが、ヒト染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびY、胎児染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、XおよびYを含めていずれの染色体も分析できる。
さらに、本明細書に記載された方法は、限定はしないが、細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、膣分泌物、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胚組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹膜液、腹水、糞便物質、または身体滲出液などの任意の生体試料における胎児DNAを検出するために使用できる。
本明細書に記載された方法は、母体DNAがホモ接合であり、妊娠女性の血漿から単離されたDNAがヘテロ接合であるSNPを分析することにより、母体試料中の胎児DNAのパーセンテージを決定できることを証明している。胎児DNAのパーセンテージは、胎児遺伝子型が染色体疾患を有するかどうかを決定するために使用できる。
例えば、試料中に存在する胎児DNAのパーセンテージが、染色体1の分析により30%と算出される場合(染色体1に関与する染色体異常は妊娠初期に終了する)、30%胎児DNAからの偏差が、染色体異常を示している。例えば、染色体18上の1つのSNPまたは複数のSNPの分析の際、胎児DNAのパーセンテージが30%以上であれば、このことは、染色体18上に追加のコピーが存在することを示すと考えられる。任意の染色体からの胎児DNAの算出パーセンテージを、任意の他の染色体と比較できる。特に、染色体13上の胎児DNAのパーセンテージを、染色体18と21上の胎児DNAのパーセンテージと比較できる。
この分析は、各SNPにおける、ある対立遺伝子対他の対立遺伝子の予想比の知識により補助される。実施例9で考察されたように、ヘテロ接合のSNPの全てが、50:50の比率を示しているとは限らない。ある対立遺伝子対他の対立遺伝子の予想比の知識により、分析しなければならない可変部位の総数が減少する。しかしながら、種々のSNPに係る予想比の知識がなくても、胎児DNAのパーセンテージは、多数のSNPを分析することにより算出できる。SNPのサンプリングサイズが十分に大きい場合、予想比の値から生じる統計学的変化は除去される。
さらに、ヘテロ接合の母体SNPはまた、貴重な情報を提供する。この分析は、ホモ接合の母体SNPに限定されない。例えば、母体DNA上のヘテロ接合SNPにおいて、対立遺伝子1対対立遺伝子2の比が1:1である場合、胎児DNAが染色体異常を担持していない限り、血漿鋳型DNAにおける比率は、1:1のままであるはずである。
上記の方法は、限定はしないが、点突然変異、トランジション、トランスバージョン、転座、挿入、欠失、および複製など、胎児DNAにおける突然変異を検出するために使用することもできる。図20に見られるように、胎児DNAは、母体DNAと容易に識別できる。上記の方法は、任意の遺伝子に関する任意の関心対象座の配列を決定するために使用できる。
実施例14
妊娠女性の血液から単離された血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。上述したように、胎児の染色体異常を、母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合パターンを示すSNPを解析することで判定することができる。
例えば、SNP Xがアデニンまたはグアニンのいずれかであり、またSNP Xにおける母親由来のDNAがグアニンのホモ接合であると想定されたい。実施例6に記載された標識法で、血漿試料中のDNAの配列を決定することができる。仮に、血漿試料が、SNP Xがヘテロ接合である胎児DNAを含む場合、以下のDNA分子が、IIS型制限酵素BsmFIによる切断と、標識ddGTP、非標識のdATP、dTTP、およびdCTPによるはめ込み反応後に生じることが予想される。
Figure 2006521086
2つのシグナルが現れる。第1のシグナルは、オーバーハングに相補的な位置においてddGTPで埋められたDNA分子に対応し、また第2のシグナルは、オーバーハングに相補的な3番目の位置においてddGTPで埋められたDNA分子に対応する。しかし、母親由来のDNAは、グアニンについてホモ接合であり、これは、オーバーハングに相補的な1番目の位置において埋められたDNA分子に対応する。オーバーハングに相補的な3番目の位置においてddGTPで埋められたDNA分子に由来するシグナルは、胎児DNAであることを意味するアデニン対立遺伝子に対応する。このシグナルは、胎児DNAの指標となり、血漿試料中に存在する胎児DNAの量を測定するために使用することができる。
1本の染色体と別の染色体に由来する胎児DNAの量に差はない。例えば、第1染色体に由来する任意の個人の胎児DNAのパーセンテージは、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、およびY染色体に由来する胎児DNAのパーセンテージと同じである。したがって、1本の染色体上のSNPに関して計算された対立遺伝子の比を、別の染色体上におけるSNPに関する対立遺伝子の比と比較することができる。
例えば、第1染色体上のSNPに関する対立遺伝子の比は、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、およびY染色体上のSNPに関する対立遺伝子の比と等しいはずである。しかし、仮に、胎児にトリソミーまたはモノソミーを含むがこれらに限定されない染色体異常がある場合、異常なコピー数で存在する染色体の比は、他の染色体に関する比と異なることになる。
妊娠女性の血液のインビボにおける状況を再現するために、母親由来のDNAを、トリソミー21であると既に診断されている、その子どもから単離されたDNAと、さまざまな比で混合し、胎児DNAのさまざまなパーセンテージを表した。例えば、母親由来の血液中における胎児DNAが50%というインビボにおける状況を再現するために、等量の母親由来のDNAを、ダウン症候群の小児から単離されたDNAと混合した。母親由来のDNAを解析して、SNPがホモ接合であることを同定し、また次に、これらのSNPを対象に、50%の母親由来のDNAと50%のダウン症候群DNAの混合物を用いて解析を行った。第13染色体上のヘテロ接合のSNPにおける、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の比を、第21染色体上のヘテロ接合のSNPにおける、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の比と比較した。
以下の4種類の異なる試料を解析した:ダウン症候群の小児のDNAが100%で含まれる試料;ダウン症候群の小児のDNAが75%と、同小児の母親のDNAが25%で含まれる試料;ダウン症候群の小児のDNAが50%と、同小児の母親のDNAが50%で含まれる試料;ダウン症候群の小児のDNAが40%と、同小児の母親のDNAが60%で含まれる試料。母親由来のDNAを解析した結果、SNPがホモ接合であることが判明した。ダウン症候群の小児から単離されたDNAの遺伝子型を決定したところ、SNPがヘテロ接合であることがわかった。次に、SNPにおいて、同試料の遺伝子型を決定したところ、母親のDNAはホモ接合であり、また子どものDNAはヘテロ接合であった。各試料に関して、これらのSNPを10回解析した。
血液試料の採取
施設内倫理審査委員会(IRB)によって承認された試験は、ダウン症候群の小児、およびその両親から血液試料を採取することを可能とするように計画した。この試験では、母親、父親、およびダウン症候群の小児から血液を採取した。ダウン症候群の小児からの血液採取に関するインフォームド・コンセントを、本人のほかに両親から得た。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取した。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存した。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存した。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心した。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心した。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心した(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存した。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存した。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離した。DNAを100μlの蒸留水中に溶出した。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用した。同じチューブ内の血液から、母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを単離した。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
母親由来のDNAの遺伝子型を決定した結果、SNPがホモ接合であることが判明した。第13染色体上の768のSNP、および第21染色体上の768のSNPの遺伝子型を、実施例6に記載された方法で決定した。任意の数のSNPを解析することが可能であり、またSNPを、ヒトの第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、およびY染色体上に位置づけることができる。好ましくは、遺伝子型決定対象のSNPの対立遺伝子頻度は、50:50、60:40、70:30、80:20、または90:10である。実施例8に記載さた手順で、任意のSNPの対立遺伝子頻度を決定することができる。
第13染色体および第21染色体上に位置するSNPの詳細は、インターネット(http://www.snp.cshl.org)経由で閲覧可能なSNPコンソーシアムのデータベースに記録されている。プライマーは、上述の実施例(例えば、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5、および実施例6)に記載された手順で設計した。
第1のプライマーは、IIS型酵素で切断後に、実施例6に記載されたように産物が異なる分子量を有するように設計した。こうすることで、増幅産物をプールして、ゲルの1つのレーンに流すことが可能となった。
例えば、第1のプライマーを、切断後に30塩基対の産物が生じるように設計することができる。同様に、異なる対象遺伝子座に対する第1のプライマーを、切断後に40塩基対の産物が生じるように設計することができる。第1のプライマーは、1回の反応で、数多くの遺伝子座がゲルの1つのレーンで解析可能なように設計することができる(30塩基対、40塩基対、50塩基対、60塩基対、70塩基対、80塩基対、90塩基対、100塩基対、110塩基対、および120塩基対の産物を1つのレーンに流すことが可能)。第1のプライマーは、対象遺伝子座から、5〜10塩基、10〜25塩基、25〜50塩基、50〜75塩基、75〜100塩基、100〜150塩基、150〜200塩基、200〜250塩基、250〜300塩基、300〜350塩基、350〜400塩基、400〜450塩基、450〜500塩基、500〜550塩基、550〜600塩基、600〜650塩基、650〜700塩基、700〜750塩基、750〜800塩基、800〜850塩基、850〜900塩基、900〜950塩基、950〜1000塩基、および1000塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の距離をおいてアニールするように設計することができる。
対象遺伝子座の増幅
遺伝子型が決定された個々のSNPを対象に、PCR反応で対象遺伝子座を増幅した。PCR反応は、96ウェルプレートで行った。個々のSNPに対して、第1および第2のプライマー(1.25μMのストック濃度を3μl)をマイクロタイタープレートのウェルに添加した。第21染色体用に8枚の96ウェルPCRプレートを準備し、また第13染色体用に8枚の96ウェルプレートを準備した。マイクロタイタープレートのウェルにプライマーを添加した後に、ゲノムDNAとHotStar PCR試薬を含む混合物を各ウェルに添加した。各PCR反応物は、3μlの各プライマー、7.5μlのHotStar Taq Masterミックス、0.5μlの水、および1μlのゲノムDNA(10ng/μl)を含むようにした。
PCRのサイクル条件を以下に示す:
(1)95℃で15分および15秒間;
(2)37℃で30秒間;
(3)95℃で30秒間;
(4)52℃で30秒間;
(5)95℃で30秒間;
(6)58℃で30秒間;
(7)95℃で30秒間;
(8)工程6および7を37回繰返す;
(9)72℃で5分間。
対象断片の精製
PCR反応後に、30塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、40塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、50塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、60塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、70塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、80塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、90塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物、100塩基対の産物を生じるように設計された第1のプライマーによって生じた3μlのPCR産物を、Streptawell(Roche Diagnostics GmbH社製の、透明なHigh−Bindプレート)(Roche Molecular Biochemicals、2001 Biochemicals Catalogに記載されたカタログ番号1 645 692)のウェルにひとまとめに混合した。第1のプライマーは、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルにPCR産物は結合するがゲノム鋳型DNAは結合しないようにするために5’ビオチンタグを含むようにした。ストレプトアビジン結合反応は、Thermomixer(Eppendorf)を用いて実施した(1000rpm、20分間、37℃)。各ウェルの内容物を吸引して非結合材料を除去し、1×PBSで3回、軽く混合しながら洗浄した(Kandpal et al.,Nucl.Acids Res.18:1789−1795 (1990); Kaneoka et al.,Biotechniques 10:30−34 (1991); Green et al.,Nucl.Acids Res.18:6163−6164 (1990))。
単離された断片の制限酵素による切断
精製後のPCR産物を、第2のプライマーからPCR産物中に組み込まれた認識部位に結合する制限酵素BsmFIで切断した。切断はStreptawell中で、制限酵素に添付された指示書に従って行った。切断後にウェルをPBSで3回洗浄し、切断済みの断片を除去した。
標識ヌクレオチドの取り込み
BsmFI制限酵素による切断で、SNP部位すなわち対象遺伝子座、および3’埋め込み末端を含む、5’オーバーハングを有するDNA断片が生じた。5’オーバーハングは、DNAポリメラーゼの存在下で、1つのヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドの取り込みを可能とする鋳型として機能した。実施例6に詳述されているように、1つの化学成分で標識された1つのヌクレオチドを使用して、SNPにおける配列を決定することができる。
増幅された対象遺伝子座を、ストレプトアビジン−ウェルに、大きさごとに、またはめ込み反応に使用されるヌクレオチドごとにプールした。グアニンヌクレオチドを用いて決定されたSNPの配列をひとまとめにプールした。同様に、アデニンヌクレオチドを用いて決定されたSNPの配列をひとまとめにプールし、またチミジンヌクレオチドを用いて決定されたSNPの配列をひとまとめにプールし、ならびにシトシンヌクレオチドを用いて決定されたSNPの配列をひとまとめにプールした。
したがって、典型的なはめ込み反応物は、産物の大きさが30〜120塩基対の8つの増幅された遺伝子座を含んでおり、8つ全ての配列を、1つの化学成分で標識された1つのヌクレオチドを用いて決定した。任意の数の増幅遺伝子座をひとまとめにプールすることができる。
以下の成分を、個々のはめ込み反応物に添加した:1μlの蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(Gはめ込み反応用にddGTP、Aはめ込み反応用にddATP、チミジンはめ込み反応用にddTTP;およびシトシンはめ込み反応用にddCTP)、0.5μlの非標識dNTP(40μM;標識ヌクレオチドを除く全ヌクレオチドを含む)、2μlの10×sequenase緩衝液、0.25μlのSequenase、および水(20μlの反応物調製時に要時)。
はめ込み反応は40℃で10分間行った。非蛍光標識dNTPは、Fermentas社(Hanover,MD)から購入した。他のラベリング試薬はいずれもAmersham社から入手した(Thermo Sequenase Dye Terminator Cycle Sequencing Core Kit,US 79565)。
ラベリング後に、個々のStreptawellを1×PBS(100μl)で3回洗浄した。次に、「はめ込まれた」DNA断片を、制限酵素EcoRIを用いて、製造業者の指示書(酵素に添付)に従って切断することでStreptawellから遊離させた。切断は、120rpmで振盪しながら37℃で1時間かけて行った。
対象遺伝子座の検出
ストレプトアビジンマトリックスから遊離させた後に、試料を36cmの5%アクリルアミド(尿素)ゲル(BioWhittaker Molecular Applications,Long Ranger RunGel Packs、カタログ番号50691)のレーンにロードした。試料をゲル中で電気泳動した(3000ボルトで3分間)。ゲルの泳動は配列決定装置(Hoefer SQ3 Sequencer)上で3時間かけて行った。このゲルを装置から外し、Typhoon 9400 Variable Mode Imagerでスキャンを行った。取り込まれた標識ヌクレオチドが、蛍光を指標として検出された。SNPがホモ接合であることが判明した。
トリソミー21鋳型を用いた、SNPがヘテロ接合であることの同定
ダウン症候群(上記の、遺伝子型が決定された母親の子ども)の個人から単離されたDNAを解析したところ、SNPがヘテロ接合であることがわかった。母親のDNAを対象に解析した、第13染色体上の同じ768のSNPと、第21染色体上の同じ768のSNPの遺伝子型を、実施例6に記載された方法で決定した。任意の数のSNPを解析し、SNPを、ヒトの第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、またはY染色体上に位置づけることができる。好ましくは、遺伝子型の決定対象となるSNPの対立遺伝子頻度は、50:50、60:40、70:30、80:20、または90:10である。実施例8に記載されているように、任意のSNPの対立遺伝子頻度を決定することができる。
ダウン症候群の個人から単離されたDNAを用いてSNPの遺伝子型を決定するプロセスは、母親由来のDNAに関して説明されたプロセスと同じである。SNPがヘテロ接合であることがわかった。
母親由来のDNAがホモ接合のSNP、およびダウン症候群の個人から単離されたDNAがヘテロ接合のSNPを対象に、母親由来のDNAとダウン症候群のDNAの混合物を含む試料を用いて、さらに解析を行った。
母親由来のDNAおよびダウン症候群のDNAを含む試料の調製
母親由来のDNA、および自分のダウン症候群の子どもから得られたDNAを分光光度計で定量した。母親のDNAと子どものDNAを、さまざまなパーセンテージで混合し、母親の血液中を循環する胎児DNAの状況を再現した。以下のパーセンテージについて解析を行った:100%がダウン症候群のDNAの場合、75%がダウン症候群のDNAの場合、50%がダウン症候群のDNAの場合、および40%がダウン症候群のDNAの場合。
ヘテロ接合の各SNPの比を、対立遺伝子1に関して得られた値を、対立遺伝子2に関して得られた値で割ることで算出した。例えば、仮に、SNP Xがアデニン(A)またはグアニン(G)のいずれかの場合、SNP Xにおける比を、アデニンに関して得られた値を、グアニンに関して得られた値で割ることで算出した。
ダウン症候群のDNAを100%含む試料を対象に、母親由来のDNAに関してホモ接合で、またダウン症候群の個人から単離されたDNAに関してヘテロ接合である第13染色体上の62のSNPを解析した。第21染色体に関しては、母親由来のDNAに関してホモ接合で、またダウン症候群の個人から単離されたDNAに関してヘテロ接合である64のSNPを解析した。
第13染色体上の62のSNP、および第21染色体上の49のSNPを個別に10回解析した。表XXに示すように、10回の試行のそれぞれに関して、第13染色体上の対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の比は、予想通り約1.0であった。第13染色体については、1コピーの対立遺伝子1、および1コピーの対立遺伝子2が存在している。10回の試行の平均は1.051であった(標準偏差=0.085)。
トリソミー21の場合、1本の対立遺伝子が2コピー(通常は母親から受け継いだもの)と、別の対立遺伝子が1コピー存在する。予測比率は約0.5となる(1コピーの対立遺伝子1/2コピーの対立遺伝子2)。表XXに示したように、第21染色体に関する比は、低値は0.462から、高値は0.634までの範囲を変動する。あらゆる試行において、第21染色体に関して得られた比は、第13染色体に関して得られた比と有意に異なっていた。10回の試行の比の平均は0.531であった(標準偏差=0.049)。
真の統計的尺度が得られるようにするために、この実験を10回繰返した。仮に、10種類の異なる遺伝子試料を使用した場合、基準(母親がホモ接合で、ダウン症候群の子どもがヘテロ接合)に適合するSNPは異なることになり、試料間の比較は困難になる。
統計解析の結果、第13染色体および第21染色体に関して得られた比の信頼値99.9%は、値のランダムな数値的揺らぎではなく、真の差を意味することが判明した。Ravgen法では、染色体異常の存在が同定されている。
75%のダウン症候群のDNAと25%の母親のDNAを含む試料の場合、第13染色体上の62のSNP、および第21染色体上の50のSNPを、特に明記しない限り解析した。さまざまな試行に関して、すべてのSNPが定量可能であったわけではない。なぜなら、一部のSNPに対応するバンドは薄かったからである。この結果は、PCRによる増幅の不良、ストレプトアビジンプレートに対する弱い結合、または弱いはめ込み反応に起因する可能性がある。
試行3では、第13染色体上の61のSNPを解析した。試行4では、第21染色体上の49のSNPを解析した。試行5では、第21染色体上の47のSNPと、第13染色体上の61のSNPを解析した。試行7では、第21染色体上の49のSNPと、第13染色体上の61のSNPを解析した。試行8では、第21染色体上の49の染色体と、第13染色体上の59のSNPを解析した。試行9および10では、第13染色体上の59のSNPを解析した。
ヘテロ接合のSNPに関する、第13染色体に関する予測比率は0.6である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する1本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.75/(0.75(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.25+0.25(母親由来のA対立遺伝子))(=0.6)となる。10回の試行において、第13染色体に関して得られた比は0.567〜0.645の範囲を変動した。10回の試行の平均は0.609であった(標準偏差=0.032)(表XX参照)。
トリソミー状態の第21染色体に関する予測比率は0.375である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する2本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.75/(0.75+0.75(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.25+0.25(母親由来のA対立遺伝子))(=0.375)となる。
10回の試行において、第21染色体に関して得られた比は0.350〜0.4125の範囲を変動した(平均=0.384、標準偏差=0.017)(表XX参照)。統計解析の結果、第13染色体および第21染色体に関して得られた比である信頼値99.9%は真の差であり、ランダムな数値的揺らぎではないことが判明した。Ravgen法では、25%の母親由来のDNAの存在下で、染色体異常の存在が同定されている。
ダウン症候群のDNAを50%含む試料に関しては、第13染色体上の46のSNPと第21染色体上の35のSNPを、特に明記されない限り解析した。試行1では、第13染色体上の45のSNPを解析した。試行2では、第13染色体上の44のSNPを解析した。試行3では、第13染色体上の42のSNPを解析した。試行4では、第13染色体上の44のSNPと、第21染色体上の34のSNPを解析した。試行5では、第21染色体上の34のSNPを解析した。試行7および8では、第13染色体上のそれぞれ44および41のSNPを解析した。試行9では、第13染色体上の44のSNP、および第21染色体上の34のSNPを解析した。試行10では、第13染色体上の44のSNPを解析した。
50%の試料に関する、第13染色体上のヘテロ接合のSNPにおける予測比率は0.33である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する1本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.50/(0.50(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.50+0.50(母親由来のA対立遺伝子))(=0.33)となる。10回の試行において、第13染色体に関して得られた比は0.302〜0.347の範囲を変動した。10回の試行の平均は0.324であった(標準偏差=0.013)(表XX参照)。
トリソミー状態の第21染色体に関する予測比率は0.25である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する2本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.50/(0.50+0.50(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.50+0.50(母親由来のA対立遺伝子))(=0.25)となる。
10回の試行において、第21染色体に関して得られた比は0.230〜0.275の範囲を変動した(平均=0.244、標準偏差=0.015)(表XX参照)。統計解析の結果、第13染色体および第21染色体に関して得られた比である信頼値99.1%は真の差であり、ランダムな数値的揺らぎではないことが判明した。Ravgen法では、50%の母親由来のDNA存在下で、染色体異常の存在が同定されている。
ダウン症候群のDNAを40%含む試料に関しては、第13染色体上の60のSNPと第21染色体上の48のSNPを、特に明記されない限り解析した。試行1では、第21染色体上の47のSNPを解析した。試行2〜4では、第13染色体上の59のSNP、および第21染色体上の47のSNPを解析した。試行5および6では、第21染色体上の46のSNPを解析した。試行7では、第13染色体上の58のSNPを解析した。試行8では、第21染色体上の46のSNPを解析し、また試行9および10では、第21染色体上の47のSNPを解析した。
ダウン症候群のDNAを40%含む試料に関しては、第13染色体上のヘテロ接合のSNPにおける予測比率は0.25である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する1本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.40/(0.40(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.60+0.60(母親由来のA対立遺伝子))(=0.25)となる。10回の試行において、第13染色体に関して得られた比は0.254〜0.285の範囲を変動した。10回の試行の平均は0.269であった(標準偏差=0.009)(表XX参照)。
トリソミー状態の第21染色体に関する予測比率は0.20である。仮に、母親の両方の染色体がアデニンヌクレオチドを含み、またダウン症候群のゲノムが、アデニンヌクレオチドを有する2本の染色体と、グアニンヌクレオチドを有する1本の染色体を含む場合、G:Aの比は、0.40/(0.40+0.40(ダウン症候群のA対立遺伝子)+0.60+0.60(母親由来のA対立遺伝子))(=0.20)となる。
10回の試行において、第21染色体に関して得られた比は0.216〜0.249の範囲を変動した(平均=0.23、標準偏差=0.011)(表XX参照)。統計解析の結果、第13染色体および第21染色体に関して得られた比である信頼値94.3%は真の差であり、ランダムな数値的揺らぎではないことが判明した。Ravgen法では、60%の母親由来のDNAの存在下で、染色体異常の存在が同定されている。
トリソミー21状態の存在は、異常なDNAをさまざまなパーセンテージで含む数多くの試料を対象に、Ravgen法で明らかにされている。異常なDNAの個々のパーセンテージを個別に10回解析し、各回において、異常な状態の存在が判明した。第13染色体上の複数のヘテロ接合のSNPにおける対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の比を算出し、比の平均を得た。同じ処理を、第21染色体上に位置するSNPについて行った。第13染色体上のヘテロ接合のSNPに関して得られた比は、第21染色体に関して得られた比と統計的に異なっていた。第13染色体と第21染色体に関して得られた比はいずれも、数学的に推定された値に近い値であった。
この実施例では、ダウン症候群のDNAを100%を含む試料と、ダウン症候群のDNAを75%含む試料に関する信頼区間は99.9%であり、またダウン症候群のDNAを50%含む試料に関する信頼区間は99.1%であった(この値は、羊水穿刺で報告されている値にほぼ等しい)。ダウン症候群のDNAを40%含む試料に関する信頼区間は94.3%であり、これは、出生前診断目的で現在市販されている非侵襲的検査より精度が高い。
上述したように、第13染色体上の約60のSNP、および第21染色体上の50のSNPを解析した。40%またはこれ未満の胎児DNAを含む試料に関する信頼区間を大きくするためには、より多数のSNPを解析するとよい。Ravgen法は、高精度で費用効果に優れたDNA配列決定法であるので、多数のSNPの配列決定は困難ではない。検定の真度は、配列が決定されたSNPの数によって決定される。低いパーセンテージのDNAを含む試料について精度を高くするためには、より多くのSNPを解析するとよい。あるいは、本明細書に記載された方法で、試料が、より高いパーセンテージの胎児DNAを確実に含むようにすることが可能である。
この実施例では、母親の血液中に胎児のDNAが存在することを示す、ダウン症候群のDNAを40%含む試料を解析した。0.0001〜1%、1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、および90〜100%を含むがこれらに限定されない、任意のパーセンテージの胎児DNAを含む母親由来の血液試料を解析することができる。
(表XX)Ravgen法でダウン症候群のDNAを40%含む試料を対象に染色体異常を同定する
Figure 2006521086
実施例15
実施例4に記載されているように、母親由来の血液中の胎児DNAのパーセンテージを高めるために、細胞溶解阻害剤、細胞膜安定化剤、または架橋試薬を使用することができる。この実施例では、母親由来の細胞の溶解量を最小とする、遊離の胎児DNAを単離する方法について説明する。16州の27の臨床施設で採取された母親由来の69の血液試料に対するホルマリンの作用を解析した。妊娠女性から採取した全試料にホルマリンを添加し、胎児DNAのパーセンテージを、段階希釈解析と、これに続くPCRによって算出した。Y染色体上の遺伝マーカーを用いて、胎児DNAのパーセントを算出した。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取した。血液試料は、全米の16州で医療行為を行っている27の異なる臨床施設で回収した。血液試料は、男子および女子の胎児を妊娠している女性から採取したが、ここでは発明者らは、男子の胎児を妊娠している女性から得られた結果について報告する。というのは、Y染色体が、胎児DNAのパーセンテージを定量する際に受け入れられているマーカーだからである。
血液は、適切な処理後に、結果として得られる血清または血漿中における胎児由来DNA/母親由来DNAの比の実質的な上昇をもたらす、任意の方法またはプロセスで回収する。本明細書で用いる、「胎児由来DNA/母親由来DNA比の実質的な上昇」は、本明細書に記載された方法で検出することができる。このような方法またはプロセスは、典型的には、標準的な手順で採取される血液試料中に存在する胎児由来DNA/母親由来DNAの比の、約5%、10%、15%、20%、30%、50%、70%、80%、100%、またはこれを上回る比の実質的な上昇をもたらす。
他の態様では、血液を、結果として得られる血清または血漿中に、処理後に回収または検出される全DNA量と比較して、遊離の胎児DNA量の実質的な上昇をもたらす任意の方法またはプロセスで回収する。このような方法またはプロセスは、典型的には実質的な上昇もたらし、回収または検出される胎児DNAは、処理後の血漿試料または血清試料中に回収または検出される全DNAの約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、またはこれを上回る。
全ての臨床施設には、21ゲージのニードル、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を含むシリンジ、アイスパック、および輸送用容器を含む、静脈穿刺法に使用されるキットが配布された。臨床施設は、血液採取直後にホルムアルデヒドを添加して、チューブを穏やかに逆さにするように指示された。
血液試料を採取する方法またはプロセスには、細胞溶解の緩和または減少をもたらす他の段階を含めることができる。例えば、血液採取装置を、使用する採取用のニードル、シリンジ、またはチューブ内における剪断力に起因する細胞溶解を抑えるように改変することができる。例えば、大きなゲージのニードルを使用することで細胞の剪断を減らすことができるほか、vacutainerチューブを改変することで血流速度を低下させることができる。
血漿の単離
任意の方法で、血液の採取後に血漿を細胞成分から単離することができるが、細胞の溶解が実質的に防止、減少、または阻害される方法が好ましい。血液は、処理を行うまで4℃で保存した。母親由来の細胞の溶解量を少なくするように血漿の単離法を実施した。制動力および加速力をゼロに設定した遠心器で、チューブを1000rpmで10分間遠心することで、細胞の溶解、および/または血液細胞成分の血漿中への混合を実質的に防止、減少、阻害した。チューブの遠心を、制動力をゼロに設定し(遠心を自然減速で停止させる)、また加速力をゼロに設定して1000rpmで10分間、再び行った。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに慎重に移し、3000rpmで10分間遠心した(ブレーキおよび加速力はゼロに設定)。各試料の上清(血漿)を、細胞成分の血漿中への混合を実質的に防ぐ手順で回収されたしフィーコートが乱れないように十分注意した。チューブ内に残存しうる上清のパーセンテージは、0.001〜1%、1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%または80%超を含むがこれらに限定されない。この実施例では、バフィーコートが乱れないようにするために、約0.5mlの上清をチューブ内に残した。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存した。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って血漿試料からDNAを単離した。DNAを100μlの蒸留水中に溶出した。しかし、塩化セシウム勾配、ショ糖勾配、グルコース勾配、遠心プロトコル、煮沸、Qiagen社の精製システム、QIA DNA血液精製キット、HiSpeed Plasmid Maxiキット、QIAfilterプラスミドキット、Promega DNA精製システム、MangeSil常磁性粒子をベースとしたシステム、Wizard SVテクノロジー、WizardゲノムDNA精製キット、Amersham社の精製システム、GFX Genomic Blood DNA精製キット、Invitrogen Life Technologies社の精製システム、CONCERT社の精製システム、Mo Bio Laboratories社の精製システム、UltraClean BloodSpinキット、およびUlraClean Blood DNAキットを含む、任意のDNA単離法を使用することができる。当業者であれば、DNAの収量を増加させるために、製造業者のプロトコルを変更可能なことを理解できる。例えば、DNA精製用のQiagen Midiキットでは、1×AL緩衝液の使用が推奨されている。しかし、DNAの収量を増加させる場合には、0.1〜0.5X AL緩衝液、0.5〜1× AL緩衝液、1×〜2× AL緩衝液、2〜3× AL緩衝液、3〜4× AL緩衝液、4〜5× AL緩衝液、および5×を上回るAL緩衝液を含むがこれらに限定されない、任意の濃度のAL緩衝液を使用することができる。当業者であれば、試薬の変更および操作がAL緩衝液に限定されないことを理解することができる。
胎児DNAのパーセンテージの定量
母親の血漿試料中に存在する胎児DNAのパーセンテージを、段階希釈解析と、これに続くPCRによって算出した。以下の異なる2種類のプライマー対を使用した:1つのプライマーセットはY染色体に特異的なものであり、したがって胎児DNAに特異的なものであり、またもう1つのプライマーセットは、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方に存在するのう胞性線維症遺伝子を増幅するように設計されたものである。
プライマー設計
Y染色体上のSRY遺伝子を増幅するために以下のプライマーを設計した:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
のう胞性線維症遺伝子を増幅するために以下のプライマーを設計した:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
PCR反応
SRY遺伝子およびのう胞性線維症遺伝子を、鋳型のゲノムDNAからPCRで増幅した(U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。特異度を高めるために、「ホットスタート」PCRを行った。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行った。SRY遺伝子の増幅に関しては、Qiagen精製カラムから溶出したDNAを段階的に1:2に希釈した。のう胞性線維症遺伝子の増幅に関しては、Qiagen精製カラムから溶出したDNAを1:4に希釈した後に、段階的に1:2に希釈した。各PCR反応には、以下の成分を使用した:8μlの鋳型DNA(希釈済み、または未希釈のもの)、1μlの各プライマー(5μM)、10μlのHotStar Taqミックス。以下のPCR条件を用いた:
(1)95℃で15分間;
(2)94℃で1分間;
(3)54℃で15秒間;
(4)72℃で30秒間;
(5)工程2〜4を45サイクル繰返す;
(6)72℃で10分間。
SRY遺伝子の増幅は、以下の希釈率の鋳型を用いて行った:非希釈、希釈率1:2、希釈率1:4、希釈率1:8、希釈率1:16、希釈率1:32、希釈率1:64、希釈率1:128、希釈率1:256、および希釈率1:512。のう胞性線維症遺伝子の増幅は、以下の希釈率の鋳型を用いて行った:希釈率1:4、希釈率1:8、希釈率1:16、希釈率1:32、希釈率1:64、希釈率1:128、希釈率1:256、希釈率1:512、希釈率1:1024、希釈率1:2048、および希釈率1:4096。
母親の血漿中に存在する胎児DNAのパーセントを、以下の公式で算出した:
%胎児DNA=(SRY遺伝子の量/のう胞性線維症遺伝子の量)100。
SRY遺伝子の量は、同遺伝子が増幅された最高希釈値によって代表させた。同様に、のう胞性線維症遺伝子の量は、同遺伝子が増幅された最高希釈値で代表させた。この公式は、SRY遺伝子は(Y染色体上に)1コピーしか存在しないが、のう胞性線維症遺伝子は2コピーが存在するという事実を標準化するために使用される増倍係数2を含む。
ワシントン州からマサチューセッツ州に至る16州の27の臨床施設で回収された69の母親血液試料に対するホルマリンの作用を表XXIに示す。本研究では、妊娠女性から採取された全試料にホルマリンが添加され、胎児DNAのパーセンテージが、段階希釈解析と、これに続くPCRによって算出された。段階希釈およびPCRによる増幅は、4人の異なる研究者によって5か月間をかけて実施された。妊娠期間が11週〜28週の女性から試料が回収された(大半の女性が妊娠16〜19週)。要約を表XXIIIに示す。
母親由来の血液中で解析された69の試料における遊離の胎児DNAの平均パーセンテージは33.6%であった。Loらは、本研究における大半の女性の妊娠期間である、妊娠初期の後期〜妊娠中期の中間の女性では、胎児DNAの濃度が3.4%であると報告している。したがって、ホルマリンの添加は、胎児DNAの平均パーセンテージの約10倍の上昇をもたらしたことになる。
母親由来の血液中の胎児DNAの、算出されたパーセンテージは印象的な値であったが、本研究で観察された胎児DNAのパーセンテージの範囲を調べることも重要である。約6パーセントの女性(4/69)では、母親由来の血液中に3.125%の遊離の胎児DNAが含まれており、これは本研究で認められた胎児DNAの最低のパーセンテージであった。別の10.2%の女性では、6.25%の胎児DNAが含まれていた。これは、文献に報告された平均値の2倍の増加に相当する。母親由来の血液中に含まれる胎児DNAが10%未満の女性の総数は、わずか16.0%であった。
本研究では、58パーセントの女性が含む胎児DNAのパーセンテージは25%またはこれを上回った。母親由来の血液中に50パーセントまたはこれを上回る胎児DNAを含んでいた女性が26.0%いたことは重要である。この規模の胎児DNAのパーセンテージは、これまで報告されていないので、出生前遺伝学領域における新しいツールとなる。
妊娠期間が11週の女性から採取された試料は4つあった。母親由来の血液試料中の胎児DNAのパーセンテージは、2つの試料が12.5%であり、1つの試料が25%であり、また1つの試料が50%以上であった。したがって、胎児DNAのパーセンテージに対するホルマリンの作用は、妊娠初期ならびに妊娠後期の女性から採取された試料について認められたことになる。
細胞膜の安定化、および遊離DNAの放出の減少による作用はホルマリンに限定されなかった。発明者らは、細胞溶解を抑えたり、および/または細胞膜を安定化する、多種多様な薬剤(グルタルアルデヒドなど)、および薬剤群の組合わせを過去に検討しており、このような薬剤も、血液試料中の遊離DNAの量を減少させることがわかっている(データは提示していない)。
上記の方法は、実質的に細胞溶解を阻害したり抑えたり、または細胞膜を安定化するために、採取時または採取時の近くに、血液試料に薬剤を添加する段階を含む場合もある。ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞溶解を抑えたり、細胞膜を安定化したり、または細胞膜を架橋したりする任意の数の薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。使用可能な他の架橋剤は、ウェブサイト(www.piercenet.com/products/)に挙げられている。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
細胞膜を安定化したり、細胞溶解を抑えたり、または細胞膜を架橋したりする、任意の濃度の薬剤を添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化したり、細胞溶解を抑えたり、または細胞膜を架橋したりする薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の血液試料中の遊離の胎児DNAに関して、注目すべきパーセンテージが報告されたが、ホルマリンの重要性を丁寧に医師に説明することによって、さらに高いパーセンテージが達成可能であると考えられる。ホルマリンの存在に関して、試料を無作為に調べたところ、約10パーセントの試料についてホルマリンが添加されていないことがわかった。また別の10パーセントの試料では凝集物が認められ、ホルマリンが、採取された血液と十分混合されていなかった可能性が示唆された。したがって、ホルマリンの添加は顕著な作用をもたらしたものの、対照を設定した条件では、遊離の胎児DNAのパーセンテージが高くなる可能性がある。
また発明者らは、静脈穿刺手順時に、また断熱性輸送用容器(検体は、スタイロフォーム(Styrofoam)容器中でアイスパックとともに輸送されるが、試料はさまざまな地域から送られてくるので温度には幅がある)中において溶血を最小化する手順は、遊離の胎児DNAのパーセンテージの一層の上昇を引き起こす可能性があると考えている。溶血を抑えるように設計されたニードルを、静脈穿刺手順時に使用することができる。
また発明者らは、血漿を慎重に単離する手順は、母親試料中のDNAを最小限に抑えることを促すと想定している。発明者らは、細胞の溶解を抑えるために、緩やかな遠心パラメータの設定などの上記手順を実施し、外力を加えることなく(ブレーキをかけずに)ローターを停止させた。また発明者らは、血漿DNAを含む上清を、母親のDNAを含むバフィーコートから丁寧に除去した。細胞の溶解を抑えるために、これらの手順をホルマリンの添加と組合わせることによって、胎児DNAのパーセンテージが大きく上昇することになった。
(表XXI)ホルマリンは、数多くの臨床施設において、さまざまな妊娠期間の女性から採取された血液試料中に遊離の胎児DNAが占めるパーセンテージを高める
Figure 2006521086
(表XXII)ホルマリンは、数多くの臨床施設において、さまざまな妊娠期間の女性から採取された血液試料中の遊離の胎児DNAのパーセンテージを高める
Figure 2006521086
(表XXIII)母親由来の細胞の溶解防止に使用可能な架橋剤の代表的なリスト
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実施例16
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。市販および非市販のアレイを含むがこれらに限定されない、任意のDNAマイクロアレイを使用することができる。
第13染色体、第18染色体、および第21染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第13染色体および第18染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第18染色体および第21染色体に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第13染色体、第18染色体、第21染色体、第15染色体、第22染色体、X染色体、Y染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、個々の常染色体上およびいずれかの性染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第13染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第18染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第21染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第15染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第17染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、第22染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、1本の染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイ、および複数の染色体上に位置するSNPを含むDNAマイクロアレイを含むがこれらに限定されない、対象となる染色体または染色体群上に位置するSNPを含むようにDNAマイクロアレイを設計することができる。
この実施例では、Affymetrix社のGeneChip HuSNPアレイによってSNPを解析するが、GeneChipアレイ、GenFlex Tagアレイ、Mapping 10Kアレイ、他のAffymetrix社製アレイ、および他のDNAアレイを含むがこれらに限定されない、任意の数のDNAアレイを使用することができる。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞溶解を抑えたり、細胞膜を安定化したり、または細胞膜を架橋したりする、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化したり、細胞溶解を抑えたり、細胞膜を架橋したりする薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化したり、細胞溶解を抑えたり、または細胞膜を架橋したりする薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
HuSNPアッセイ法
HuSNPアッセイ法を、K.Lindblad−Tohらの手順で行う(Nature Biotechnology,Vol.18,1001−1005)。GeneChip(登録商標)HuSNP(商標)アレイは、ゲノム全体に広がる、ほぼ1,500のSNPを同時に追跡することによって、ゲノム全体の調査が可能であると考えられている。この実施例では、HuSNPアレイを代表的なAffymetrixアレイとして使用するが、特定のユーザー要件に適合させるために設計されたGeneChip CYP450、およびAffymetrixカスタムアレイを含むがこれらに限定されない他のアレイの使用を制限する意図はない。
PCRによる増幅
母親由来のDNAを、Affymetrix社から提供されたHuSNPプロトコルに従ってアッセイする。各試料を対象に、24プールのプライマー対(50〜100の遺伝子座/プール、各50 nM)を、5ngの母親由来のDNA、5mM MgCl、0.5mM dNTP、1.25 UのAmplitaq Gold(PE Biosystems,Foster City,CA)、および提供された緩衝液と混合する(1プールあたり12.5μl)。試料を、95℃で5分間かけて変性した後に、95℃で30秒間、52℃+0.2℃/サイクルで55秒間、および72℃で30秒間を30サイクル行い、続いて95℃で30秒間、58℃で55秒間、および72℃で30秒間を5サイクル行い、72℃で7分間の最終伸長を行う。1μlの増幅産物を999μlのddHOに添加することで、1:1000倍希釈の各プールを調製する。次に、2.5μlの1:1000希釈物を新しいプレートに移し、0.8μMのビオチン化T7プライマーおよび0.8μMのビオチン化T3プライマー、4mM MgCl、0.4mM dNTP、2.5 UのTaq、および提供された緩衝液で、25μl中で、95℃で8分間に続いて、95℃で30秒間、55℃で90秒間、および72℃で30秒間を40サイクル行い、また72℃で7分間の最終伸長を行うことで増幅する。次に、各プールの1.5μlを対象に、増幅されたことを3%アガロースゲル上で検証する。各試料に関して、各24プールの残分を混合し、Microcon−10スピンカラム(Amicon Bioseparations,Bedford,MA)にロードする。カラムを室温で13,000 gで20分間遠心して試料を濃縮し、カラムを逆さにして3,000 gで3分間遠心する。容量を60μlに調整する。
対象となるSNPのみを用いて、カスタムアレイを設計することができる。例えば、第1染色体、第13染色体、第21染色体、第18染色体、第15染色体、X染色体、およびY染色体上に位置するSNPを含むカスタムアレイを設計することができる。
また、第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、またはY染色体を含む、任意のヒト染色体に位置するSNPを含む、任意の数のSNPを増幅することができる。第13染色体上の2つの代表的なSNP、および第21染色体上の2つの代表的なSNPを選択する。SNPのゲノム上の位置および配列は、SNPコンソーシアム(http://snp.cshl.org)に記載されている場合がある。仮に、これらのSNPがアレイ上に存在しない場合は、別のSNPを選択することができる。
第13染色体上に位置するSNP TSC0466917(C/G)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第13染色体上に位置するSNP TSC1172576(T/A)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第21染色体上に位置するSNP TSC0271628(A/G)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第21染色体上に位置するSNP TSC0069805(C/T)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
GeneChipプローブアレイに対するハイブリダイゼーション、洗浄、および染色
5〜30μlの試料(チップのロットの強度によって異なる)を、3 Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)、2mMの対照オリゴヌクレオチドB1(Affymetrix社から提供)、5×デンハート液、100μg/mlのニシン精子DNA、5mMのEDTA pH 8.0、10mMのTris pH7.8、および0.01%のTween 20(総容量135μl)で希釈し、95℃で10分間かけて変性させる。氷上で2分間、静置した後に、試料をHuSNPチップにロードし、ハイブリダイズさせる(44℃、16時間、40 r.p.m)。
各チップを洗浄し、Affymetrixフルオディクス上で染色する。チップを、6×SSPET(Bio Whitaker,Walkersville,MD)(6×SSPE(塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、EDTAナトリウム)+0.01% Triton−X−100)との25℃における2回の混合を2サイクルと、4×SSPET(4×SSPE+0.01% Triton X−100)との35℃における5回の混合を6サイクル行って洗浄する。チップを、50μg/mlのストレプトアビジン−フィコエリトリン、および0.25mg/mlのビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(溶媒6×SSPE)、1×デンハート液、および0.01% Tween 20(総容量500μl)を用いて、25℃で30分間かけて染色する。チップを6×SSPETに浸した後に、25℃で6×SSPETで4回混合して6回洗浄する。
ハイブリダイゼーション、洗浄、および染色手順の後に、HP GeneArrayスキャナー(HuSNP Mapping Assay Mannual Affymetrix P/N 700308)でHuSNPプローブアレイをスキャンする。
スキャニング
HuSNPプローブアレイをHP GeneArrayスキャナーで、HuSNP Mapping Assay Mannual(Affymetrix P/N 700308)に従ってスキャンする。AlphaArray(商標)Readerを含むがこれらに限定されない他のスキャナーを使用することができる。遺伝子型の判定は、得られたハイブリダイゼーションシグナルの強度を元に、Affymetrix Microarray Suiteバージョン5.0ソフトウェアによって自動的になされる。各対立遺伝子のSNPは、20−ヌクレオチドのプローブ内におけるSNP塩基位置の位置が異なる4つまたは5つの相補的なプローブによって表される。各プローブは順に、同じ配列のプローブと対を形成する(ただし、プローブとの非特異的な結合に関する蛍光値の修正することを意図した、SNPの位置、またはこの近傍における中央部のミスマッチは除く)。
個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児ゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAにおけるSNPがホモ接合である対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域が、HuSNPアッセイ法で使用されるプライマーに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。HuSNPアレイの購入時に、各SNPを増幅するための個々のSNPおよびプライマーを同定することができる。こうして得られた知見を元に、多重プライマーを、HuSNPアレイに使用するプライマーに対するアニーリング領域を含むように設計する。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR 精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
HuSNPアッセイ法、洗浄、染色、およびスキャニング
プールされたDNAを、HuSNPアレイを用いて、上述の手順でアッセイする。洗浄、染色、およびスキャニングの手順については既に述べた。
個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
SNPがヘテロ接合である、個々の対立遺伝子のシグナルの強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、Affymetrix HuSNPアレイの使用について説明したが、アレイの使用を制限する意図はない。表XXIVに記載されたDNAアレイ、または表XXIVまたは表XXVに記載された任意の企業から入手可能なDNAアレイを含むがこれらに限定されない、任意のDNAアレイを使用することができる。母親由来の血液中に胎児の染色体異常を検出するために、表XXIV、表XXV、表XXVI、および表XXVIIに記載された製品またはサービスを含むがこれらに限定されない、任意の数の製品またはサービスを用いることで、カスタムDNAアレイを作製することができる。
(表XXIV)一部のハイブリダイゼーション用マイクロアレイフォーマットの特徴
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(表XXV)アレイ、またはアレイ製造関連の装置および機器を製造する企業
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(表XXVI)アレイデータベースおよびオンラインツール
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(表XXVII)ワールドワイドウェブ上のマイクロアレイデータベース
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実施例17
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離された血漿は、母親の鋳型DNAおよび胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、Motorola社とAmersham Biosciences社が共同開発したCodeLink SNP Bioarray SystemでSNPを解析するが、他のマイクロアレイを使用することもできる。Amersham社は、第6染色体上に位置するP450のさまざまな領域の遺伝子型決定用に設計されたCodeLink P450 Bioarrayを販売している。
しかし、Amersham社は、第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、またはY染色体を含む、任意の染色体の領域の解析を可能とする、カスタムCodeLinkアレイを作製する可能性がある。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えたり、細胞膜を安定化したり、または細胞膜を架橋したりする、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化する薬剤、細胞の溶解を抑える薬剤、または細胞膜を架橋する薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化する薬剤、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
CodeLink SNP Bioarray
CodeLink SNPは、広範囲に及ぶ(broad−based)SNPの遺伝子型決定のためのバイオアレイシステムソリューションである。CodeLink SNPには、PCRによる増幅およびアンプリコンの断片化と、これに続く、表面ベースの酵素による対立遺伝子の識別、ならびにアレイベースのラベリングおよび検出を含む多重アッセイ法が含まれる。CodeLinkアレイ用の試薬は、24回分の反応に十分な試薬を提供するP450 Reagentキットに含まれている。
CodeLink(商標)プラットフォームは、シラン処理済みで長鎖アルキル基で覆われたガラススライドを含む(Ramakrishnan et al.,Nucleic Acids Research,Vol.30,No.7,e30,April 1,2002)。アクリルアミドの活性化エステルを含むプレポリマーはスライドに光結合される。活性化エステルは、C6−アミノ−オリゴヌクレオチドの結合部位となる。5’アミン終結末端(5’ Amine−terminated)のオリゴヌクレオチドを、分注ロボット技術でポリマー上に蓄積させる。オリゴヌクレオチドは、フルオレセイン誘導体色素とともに分注する(これにより、分注後に全スライドのスキャニングが可能となる)。オリゴヌクレオチドの結合を可能とするために、スライドを湿潤チャンバー内に配置する。他の部位をブロックし、スライドを洗浄し、すすいで乾燥させてから、統合型ポリプロピレン製ハイブリダイゼーション用チャンバーに取り付ける。
カスタムCodeLinkアレイは、対象染色体上に位置するSNPを含むように合成することができる(どの染色体上に位置するSNPも解析可能)。この実施例では、第21染色体上に位置する2つのSNP(TSC0271628、TSC0069805)、および第13染色体上に位置する2つのSNP(TSC0466917、TSC1172576)を有する代表的なCodeLinkアレイを使用する。しかし、SNPに対する、1〜10、11〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100、101〜110、111〜120、121〜130、131〜140、141〜150、151〜160、161〜170、171〜180、181〜190、191〜200、201〜300、301〜400、401〜500、501〜600、601〜700、701〜800、801〜900、901〜1000、1001〜2000、2001〜3000、3001〜4000、4001〜5000、5001〜6000、6001〜7000、7001〜8000、8001〜9000、9001〜10,000、および10,000を超えるプローブを含むがこれらに限定されない、任意の数のプローブを有するCodeLinkアレイを使用することができる。使用されるSNPは、1本の染色体上に、複数の染色体上に、または任意の組合わせの染色体上に位置する場合がある。
CodeLinkアレイは、表面に結合した1本鎖プローブを含む(詳細なダイアグラムは、http://www5.amershambiosciences.com/APTRIX/upp01077.nsf/Content/codelink_snpで閲覧可能)。表面から最も遠いヌクレオチドが対象遺伝子座に対応する。
例えば、第13染色体上に位置するSNP TSC09466917は、シトシンヌクレオチドまたはグアニンヌクレオチドのいずれかの場合がある。2種類のプローブが作製されている(TAAAAGおよびTAAAC)。これらのプローブは、表面から最も遠いグアニンまたはシトシンと結合する。プローブの配列は、長い場合もあれば短い場合もある。
第13染色体上に位置するSNP TS1172576におけるヌクレオチドは、チミジンまたはアデニンのいずれかの場合がある。2種類のプローブが作製されている:
Figure 2006521086
CodeLinkアレイ上のSNPに対するプローブの長さは、同じか、または異なる場合がある。
第21染色体上に位置するSNP TSC0271628におけるヌクレオチドは、アデニンまたはグアニンのいずれかの場合がある。2種類のプローブが作製されている:
Figure 2006521086
SNPに対するプローブは、DNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに対する場合がある。
第21染色体上に位置するSNP TSC0069085におけるヌクレオチドは、シトシンまたはチミジンのいずれかの場合がある。2種類のプローブが作製されている:
Figure 2006521086
これら4つのSNPに対する代表的なプローブについては上述した。しかし、これらのプローブは、配列の長さが長い場合もあれば短い場合もあり、またDNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖に対するように作製することができる。また、個々のSNPに対する複数のプローブを使用することができる。配列が異なるか、または配列が同じ複数のプローブを同じSNPに対して使用することができる。例えば、SNP TSC0069085に対する1つのプローブは長さが10ヌクレオチドの場合があり、またSNP TSC0069085に対する別のプローブは長さが20ヌクレオチドの場合がある。あるいは、SNP TSC0069085に対する1つのプローブはセンス鎖に対する場合があり、またSNP TSC0069085に対する第2のプローブはアンチセンス鎖に対する場合がある。
PCRによる増幅
CodeLinkアレイが設計されたら、次の段階は増幅である。任意の増幅法が用いられる(好ましくはPCR)。第13染色体上に位置する2つのSNP、および第21染色体上に位置する2つのSNPを増幅するためのプライマーを、SNPコンソーシアム(http://snp.cshl.org)で提供される情報を元に設計する。当業者であれば、他の任意の対象SNPに対するプライマーを設計する方法を理解するであろう。
第13染色体上に位置するSNP TSC0466917(C/G)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第13染色体上に位置するSNP TSC1172576(T/A)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第21染色体上に位置するSNP TSC0271628(A/G)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
第21染色体上に位置するSNP TSC0069085(C/T)を、以下のプライマーを用いて増幅する:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
オリゴヌクレオチドプローブの長さは、5〜10塩基、11〜15塩基、16〜20塩基、21〜25塩基、26〜29塩基、30塩基、31〜35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、および75塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さをとりうる。
PCR条件は、製造業者の示唆に従って設計すべきである。代表的なPCR条件を以下に示す。対象遺伝子座は、別個の反応チューブ内で増幅されるが、1回のPCR反応でまとめて増幅することもできる。特異度を高めるために、「ホットスタート」PCRを行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化することができるが、この実施例では、40ngの鋳型のヒトゲノムDNAと5μMの各プライマーを使用する。40サイクルのPCRを行う。PCR条件を以下に示す:
(1)95℃で15分および15秒間;
(2)95℃で30秒間;
(4)57℃で30秒間;
(5)72℃で30秒間;
(6)工程2〜5を32回繰返す;
(7)72℃で5分間。
PCRによる精製および断片化
PCR産物を、CodeLinkのメーカーが推奨する手順で精製する。PCRによる精製の1つの形態を紹介する。Qiagen社のMinElute PCR精製キット(カタログ番号28006)を用いて、製造業者の指示書に従ってPCR産物を、PCR反応の諸成分と分離する。
精製後のPCR産物を、CodeLinkのメーカーが推奨する手順で断片化する。PCR産物は、DNaseを含むがこれらに限定されない酵素を用いて、または超音波処理またはニードルによる剪断を含むがこれらに限定されない機械的な力で断片化することができる。
ハイブリダイゼーション
精製後の断片状PCR産物を、CodeLinkのメーカーが推奨する手順でCodeLinkアレイにハイブリダイズさせる。典型的なハイブリダイゼーション手順では、穏和な界面活性剤(SDSまたはTriton−100など)、塩類(MgClなど)、および緩衝液(TrisまたはPBSなど)を含む溶液中で、標的プローブと試料DNAをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション反応は通常、軽く振盪しながら25〜44℃で8〜16時間行う。ハイブリダイゼーション反応は、Amersham Biosciences社から入手可能なShakerキットを使用して実施することができる。
あるいは、ハイブリダイゼーション用チャンバーを含む、Motorola社製の12−スライドシェイカートレイを使用してハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション用チャンバーのポートは、1cmのシーリングストリップ(Motorola Life Sciences)で密閉し、またスライドを含むシェイカートレイを、New Brunswick Innova(商標)4080振盪インキュベーター内に装填する(ハイブリダイゼーション用チャンバーが上面を向くようにする)。スライドを、3000 r.p.m.で振盪しながら37℃で18時間インキュベートする。
CodeLinkアレイを用いたハイブリダイゼーションには、特定の手順および解決法が存在する場合がある。CodeLinkの代理人は、アレイの事前購入なしにはプロトコルを提供しないと思われる。
対立遺伝子特異的な伸長
ハイブリダイゼーション後に、CodeLinkのメーカーが推奨する手順に従って伸長反応を行う。典型的な伸長反応には、ヌクレオチド(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、ポリメラーゼ、および塩類を含む緩衝液が必要である。使用するヌクレオチドおよびポリメラーゼの濃度は、CodeLinkのメーカーが推奨する濃度とすべきである。大腸菌のDNAポリメラーゼ、大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウクラスのポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ、バクテリオファージ29、REDTaq(商標)Genomic DNAポリメラーゼ、またはsequenaseを含むがこれらに限定されない、任意のDNAポリメラーゼを使用することができる。好ましくは、使用するポリメラーゼは、CodeLinkのメーカーが推奨するポリメラーゼである。
洗浄、標識、および検出
伸長反応後に、好ましくはCodeLinkのメーカーが推奨する溶液でアレイを洗浄する。典型的な洗浄液は、緩衝液中に界面活性剤(群)および塩類を含む。例えばアレイをTNT緩衝液(0.1 M Tris−HCl、pH 7.6、0.15 M NaCl、0.05% Tween−20)で洗浄することができる。アレイを、CodeLinkのメーカーが推奨する、室温、10〜16℃、17〜24℃、25℃、26〜36℃、37℃、38〜41℃、42℃、43〜54℃、55℃、または55℃超を含むがこれらに限定されない温度で洗浄する。
CodeLinkのメーカーが推奨するプロトコルに従って、シグナルを発生させる。代表的なプロトコルを紹介する。ストレプトアビジン−Alexa 647(Molecular Probe)の1:500倍の希釈物を用いて、室温で30分間かけてシグナルを発生させる。過剰な色素は、TNT緩衝液で4回(室温で各5分間)洗浄して除去する。シグナルの強度は、増幅用希釈緩衝液(PE/NEN)に溶解したチラミド−cy3の1:200倍の希釈物を用いることで強めることができる。
スライドを脱イオン水で洗浄し、窒素銃(nitrogen gun)で乾燥させる。処理後のスライドを、Axon GenePixスキャナー(レーザーは635 nm、光電子増倍管の電圧は600、スキャン解像度は10μにそれぞれ設定)でスキャンする。スライドをスキャンし、Amersham Biosciences社から入手可能なCodeLink(商標)SNPソフトウェアキットで解析する。
個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、ホモ接合のSNPであることが判明した後に、これらのSNPを、血漿から単離されたDNAを対象に解析する。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPである、対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域(胎児由来の対象遺伝子座のコピー数を増やすために実施される)が、CodeLinkアッセイ法で使用されるプライマーに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。CodeLinkアレイの購入時に、各SNPを増幅するための個々のSNPおよびプライマーを同定することができる。こうして得られた知見を元に、多重プライマーを、HuSNPアレイに使用するプライマーに対するアニーリング領域を含むように設計する。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
CodeLinkアッセイ法、洗浄、染色、およびスキャニング
プールされたDNAを、CodeLinkアレイを用いて、上述の手順でアッセイする。洗浄、染色、およびスキャニングの手順については既に述べた。
個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
SNPがヘテロ接合である、個々の対立遺伝子のシグナルの強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、CodeLinkアレイの使用について説明したが、アレイの使用を制限する意図はない。表XXIIIに記載されたDNAアレイ、または表XXIVに記載された任意の企業から入手可能なDNAアレイを含むがこれらに限定されない、任意のDNAアレイを使用することができる。
実施例18
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、SNPを、Illumina社(San Diego,CA)から入手可能なIllumina社のBeadArray(商標)プラットフォームを用いて解析する。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
Illumina社のBeadArray(商標)技術は、小型化された、極めて高処理能の遺伝的解析を可能とすると謳われている光ファイバーベースのアレイシステムを含む。Illumina社の96−バンドルのSentrixアレイ(商標)は、ほぼ150,000個のSNPの並行処理を可能とすると謳われている。
ファイバー・バンドルは、ほぼ50,000本の個別の光伝達ファイバー鎖を含むように作られている。個々のファイバー・バンドルは、最初にバンドル内の各ファイバー鎖の末端においてマイクロウェルが化学的にエッチング処理され、これが1つのバンドルあたり最大50,000個の個別のマイクロウェルを作ることでアレイに変換される。
別のプロセスでは、特定の種類の分子をビーズに固定することでセンサーを作製する(個々のビーズの直径は約3ミクロン)。SNP解析では、1バッチにおいて個々のビーズに特定のDNA配列を結合させる。Illumina社は、同じ種類の数十万個の分子が個々のビーズをコーティングすると述べている。コーティングされたビーズのバッチを混合して、望ましい型のアレイに特異的なプールを形成させる。SNP解析では、アレイのプールは、自身と、または既知のゲノムDNAとクロスハイブリダイズしないDNA配列を使用することになっている。
次に、自己集合性アレイを作製する。混合済みのビーズプールにバンドルを浸すことで、コーティングされたビーズは、バンドル中の各ファイバーの末端において、1ウェルあたり1個のビーズについて個別に自己集合することでアレイが作られる。Illumina社のSNP遺伝子型決定アレイでは、ビーズプールは最大1500の配列を含み、これが50,000本のファイバーを含む各バンドル中で自己集合して、約30倍の冗長度を有するアレイが作られる。
BeadArray社製のバンドルは、集合してマトリックス状のデバイスとなる。これは、より大きなアレイの個々のファイバー・バンドルが、標準化されたマイクロタイタープレートの1つのウェルに対応し、Array of Arrays(商標)プラットフォームと呼ばれる。
アレイの集合後に、個々のファイバーコア中に存在するビーズの種類を決定するために、デコーディングプロセスが用いられる。DNA分子は、Oligator(商標)カスタムDNA合成技術で合成される。
BeadArray技術、およびBeadArray技術から生まれた他の技術を用いるIllumina社のSNP遺伝子型決定サービスは、Illumina社の施設、またはBeadArray技術がライセンス供与された施設において提供される。
母親由来のDNA試料を、SNPに対応するオリゴヌクレオチドプローブを含むBeadArrayで解析する。このオリゴヌクレオチドプローブは、ヒトの第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体、およびY染色体を含む、任意の染色体上に位置するSNPに対応する場合がある。BeadArrayを解析して、母親の鋳型DNAがホモ接合であるSNPを同定する。次に、同定されたホモ接合のSNPを、母親由来の血漿から単離されたDNAを用いて解析する。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAにおけるSNPがホモ接合である対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性のある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域が、BeadArrayにおけるオリゴヌクレオチドプローブに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。BeadArrayサービス購入時に、各SNPおよび各々のSNP解析に用いられるプライマーを確認する。こうして得られた知見を元に、多重プライマーを、BeadArrayにおけるプライマーに対するアニーリング領域を含むように設計する。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
BeadArray技術
プールされたDNAを、BeadArrayを用いて、上述の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
SNPがヘテロ接合である、個々の対立遺伝子のシグナルの強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、Illumina社のBeadArray技術の使用について説明したが、アレイの使用を制限する意図はない。表XXIIIに記載されたDNAアレイ、または表XXIVに記載されたいずれかの企業から入手可能なDNAアレイを含むがこれらに限定されない、任意のDNAアレイを使用することができる。
実施例19
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、Sequenom社のhomogeneous MassCleave(商標)(hMC)法を用いるSequenom社のMassArray(商標)システムを用いてSNPを解析する。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
標的SNP同定:hMC法
Sequenom社のhMC法では、遺伝子型の決定にヌクレオチド塩基に特異的な切断を用いる。切断された断片をMALDI−TOFで測定し、任意の特定の配列を対象に、各断片の質量を元に、特徴的なピークシグナルを得る。
プライマー設計
2つのPCR反応(フォワード反応とリバース反応)には4種類のプライマーが必要である。PCRのアンプリコンについて推奨される大きさの範囲は300〜700塩基対である。プライマーは、インビトロ転写に適切な産物を得るために、T−7プロモーターのタグが付いたフォワードまたはリバースのプライマーを含む。不完全な終結を防ぐために8塩基の挿入を含める。T−7プロモーターを欠くプライマーは、プライマーのバランスをとるために10−merのタグを含む。
1つのSNPに対するプライマーを以下に示す。第13染色体上に位置するSNP TSC1172576(T/A)を、フォワード反応について、以下のプライマーを用いて増幅する:
フォワード反応:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
リバース反応:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
T−7プロモーターの配列はイタリックで示し、8塩基の挿入には下線を付し、10塩基のバランス用配列には二重線を付してあり、また遺伝子特異的な配列には何も印をつけていない。
PCRによる増幅
5μlの容量で、384−マイクロリットルフォーマットを用いて5ナノグラムのDNAを増幅する。以下のPCR条件を用いる:
(1)94℃で15分間;
(2)94℃で20秒間;
(3)62℃で30秒間;
(4)72℃で1分間;
(5)工程2〜4を44回繰返す;ならびに
(6)72℃で3分間。
脱リン酸化
シュリンプアルカリホスファターゼ(SAP)(2μl)を各5μlのPCR反応物に添加し、PCR反応に由来する、取り込まれなかったdNTPを脱リン酸化する。プレートは37℃で20分間インキュベートする。次にプレートを85℃で5分間インキュベートする。
インビトロ転写
個々の転写反応には、2μlの転写カクテル、および2μlのPCR/SAP試料が必要である。2μlの転写カクテル、および2μlのPCR/SAP試料を、新しいマイクロタイタープレートに添加する。このプレートを37℃で2時間インキュベートする。このプロトコルに関する詳細な情報については、全体が参照として本明細書に組み入れられる、「MassARRAY Liquid Handler SNP Discovery User’s Guide」の「Processing homogeneous MassCLEAVE Reactions」の章を参照されたい。
RNase Aによる切断
RNase Aカクテル(2.5μl)を、各反応物(T切断およびC切断)に添加する。プレートを37℃で1時間インキュベートする。
SNP部位におけるヌクレオチドに応じて、さまざまな重量の多様な断片が生じる。例えば、第13染色体上に位置するSNP TSC1172576の周囲のDNA配列は以下の通りである:
Figure 2006521086
Figure 2006521086
PCR、インビトロ転写、および塩基特異的な切断後に、各対立遺伝子について、以下の断片が生じる:
Figure 2006521086
ATC断片およびAAC断片に関しては、TとA間の重量の差を用いて、SNP TSC1172576における遺伝子型を決定する。同様に、断片AGTTAおよび断片AGATAにおけるTとA間の重量の差を用いて、SNP TSC1172576における遺伝子型を決定する。
試料の条件設定
2回蒸留した水(20μl)を、384−ウェルプレートの各試料に添加する。各ウェルにClean Resin(6mg)を添加する。プレートを10分間回転後に3200×gで遠心する。水は常にClean Resinの前に添加することが推奨される。
試料の輸送
hMC反応産物(10〜15μl)を、384エレメントのSpectroCHIP(登録商標)に分注する。詳細な情報については、「MassARRAY Nanodispenser SNP Discovery User’s Guide」の「Dispensing MassCLEAVE Reaction Products onto SpectroCHIPs」の章を参照されたい。
試料の解析
4通りの切断反応で生じるスペクトルを、MassARRAY(商標)システムを用いて得る。詳細な指示については、SpectroCHIPS(登録商標)からのスペクトルの測定に関する指示について記載されている「MassARRAY Discovery RT Software User’s Guide」の「Acquiring Spectra」の章を参照されたい。
SNPの解析
得られた結果をSNP Discovery Analysisソフトウェアで解析する。詳細な指示については、SNP Discovery Analysisソフトウェアの使用に関する指示について記載されている「MassARRAY Discovery RT Software User’s Guide」の「Analyzing SNPs」の章を参照されたい。MassARRAY手順に有用な成分には、MassARRAY(商標)Analyzer(品番004500)、MassARRAY(商標)Discovery RT Software(バージョン1.2、品番11434)、MassARRAY(商標)SNP Discovery Starterキット(品番10027)、およびLiquid Handler SNP Discovery Method and Macros(品番 11433)が含まれる。
SpectroCHIPアレイを使用して、SpectroCHIPアレイの購入後に入手可能な、以下の製造業者の推奨するプロトコルおよび手順に従い、母親由来のDNAの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPを用いて、母親の血漿から単離されたDNAを解析する。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAにおけるSNPがホモ接合である対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域が、標的SNP同定法であるhMC法において、PCR用プライマーに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
標的SNP同定:hMC法
プールされたDNAを、hMC法で上記の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。しかし、望ましいならば、他の染色体上に位置するSNPを定量することもできる。
定量
各ピークの強度を定量する(各ピークは、特定の分子量を有するDNA断片に対応する)。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。
胎児ゲノム上のSNP XにおけるGヌクレオチドの存在のために、分子量が異なるいくつかの断片が存在する。Aヌクレオチドを有するピークの強度を定量し、またGヌクレオチドを有する断片に対応するピークの強度を定量する。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、Sequenom社のhMC法の使用について説明したが、他の質量分析法の使用を制限する意図はない。
実施例20
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、SNPを、Sequenom社のMassArray(商標)Homogenous MassEXTEND(商標)(hME)アッセイ法で解析する。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
MassARRAY Homogenous MassEXTEND(商標)(hME)アッセイ法
Homogenous MassEXTEND(商標)(hME)アッセイ法では、ビーズ不使用で標識不要のプライマー伸長法で遺伝子型を決定する。個々のプライマー産物は、関連づけられた遺伝子型の、質量分析による正確な同定を可能とする固有の分子量を有する。
鋳型の増幅
単離された母親由来のDNA(2.5ng)を、384−マイクロタイタープレートフォーマットを用いて、5μl容量中で増幅する。任意の数のSNPを、1回の反応か、または複数回の反応のいずれかで増幅することができる。第21染色体上に位置するSNP TSC0271628(A/G)の増幅時に使用される、代表的なプライマーを以下に示す:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
これらのプライマーは、ヌクレオチド配列が長い場合も短い場合もある。MassARRAY Homogenous MassEXTENDアッセイ法のメーカーが推奨するPCR条件を以下に示す。代表的なPCR条件を以下に示す:
(1)95℃で15分および15秒間;
(2)95℃で30秒間;
(4)57℃で30秒間;
(5)72℃で30秒間;
(6)工程2〜5を32回繰返す;
(7)72℃で5分間。
脱リン酸化
北極シュリンプアルカリホスファターゼを試料に添加し、37℃で20分間インキュベートする。この段階は、任意の残存ヌクレオチドを脱リン酸化して、同ヌクレオチドの後の取り込み、およびMassARRAY Homogenous MassEXTENDアッセイ法との干渉を防ぐために行う。次に試料を85℃でインキュベートし、熱に不安定なSAPを不活性化する。
hME反応
MassEXTENDプライマーを、多型部位の近傍にアニールするように設計し、また多型部位の両方の対立遺伝子が同定されるように設計する。SNP TSC0271628の場合、代表的なMassEXTENDプライマーは
Figure 2006521086
である。
MassEXTENDプライマーの長さは、MassARRAY Homogenous MassEXTENDアッセイ法のメーカーが提供する指示書に従って決定する。
MassEXTENDプライマー、DNAポリメラーゼ、およびデオキシヌクレオチド(dNTP)とジデオキシヌクレオチド(ddNTP)のカクテル混合物を、初期プライマー伸長反応物に添加する。当初のMassEXTENDプライマーと比較して、一般に1〜4塩基長い対立遺伝子特異的なプライマー産物が生じる。
MassEXTENDプライマーは、MassARRAY Homogenous MassEXTENDアッセイ法のメーカーが推奨する条件に従って、多型部位の極めて近傍にハイブリダイズする。ヌクレオチド混合物は、可能な全てのMassEXTEND産物に関する重量の差が最大とするように選択する。適切なdNTPは、1つのddNTPが取り込まれて反応が終結するまで取り込まれる。hMEアッセイ法の全段階について、製造業者のプロトコルに従う。
SNP TSC0271628に関する、代表的な反応産物を以下に示す:
プライマー伸長前のA対立遺伝子
Figure 2006521086
SNP部位を太字で示す。DNAポリメラーゼ、ddATP、dCTP、dGTP、およびdTTPとのインキュベーション後に、以下の産物が生じる:
プライマー伸長後のA対立遺伝子
Figure 2006521086
ddATPがプライマーに取り込まれる。標識ddNTPまたは非標識ddNTPのいずれかを使用することができる。黒印は、非標識ddATPを意味する。取り込み反応の後に、24−merのプライマーが生じる。
プライマー伸長前のG対立遺伝子
Figure 2006521086
SNP部位を太字で示す。DNAポリメラーゼ、ddATP、dCTP、dGTP、およびdTTPとのインキュベーション後に、以下の産物が生じる:
Gプライマー伸長後の対立遺伝子
Figure 2006521086
取り込み反応の後に、25−merのプライマーが生じる。A対立遺伝子を有する反応産物(24−mer)と、G対立遺伝子を有する反応産物(25−mer)間の分子量の差を、対象遺伝子座の遺伝子型の決定に用いる。
試料の条件設定
SpectroCLEAN(商標)樹脂を反応物に添加して、MALDI−TOF解析に干渉する外来性の塩を除去する。
試料の輸送
15nlの試料を384−マイクロタイタープレートから移し、384 SpectroCHIP(商標)マイクロアレイのパッドにスポットする。
試料の解析
SpectroCHIP(商標)をMALDI−TOF内に据え、伸長産物の重量を測定する。決定後に、遺伝子型がSpectroTYPER(商標)RTソフトウェアでリアルタイムで判定される。母親由来のDNAにおけるSNPがホモ接合であることを同定し、血漿から単離されたDNAを対象に解析を行う。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPである対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
MassARRAY Homogenous MassEXTENDアッセイ法
プールされたDNAを、hMEアッセイ法で、上述の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
各ピークの強度を定量する(各ピークは、特定の分子量を有するDNA断片に対応する)。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。
胎児のゲノム上のSNP XにおけるGヌクレオチドの存在のために、分子量が異なるいくつかの断片が存在する。Aヌクレオチドを有するピークの強度を定量し、またGヌクレオチドを有する断片に対応するピークの強度を定量する。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、Sequenom社のMassARRAY Homogenous MassEXTEND(hME)アッセイ法の使用について説明したが、分子量に基づいて分子を区別する手法の使用を制限する意図はない。
実施例21
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例ではSNPを、Orchid社のSNP−IT(商標)アッセイ法で解析する。しかし、プライマー伸長に基づく他のSNP検出法を使用することもできる。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
SNP−IT(商標)アッセイ法
SNP−ITアッセイ法は、1塩基プライマー伸長に基づく。SNP−ITアッセイ法に先立ち、対象SNPを含むPCR産物を、1つの非修飾プライマーと1つのホスホロチオレート修飾プライマーを用いて調製する。次にPCR産物をエキソヌクレアーゼで処理して1本鎖とし、この1本鎖DNAを、96ウェルマイクロタイタープレートの表面上に固定されたSNP−ITオリゴヌクレオチドにアニールさせる。ハイブリダイゼーション後に、DNAポリメラーゼと標識ターミネーターの添加によって1塩基伸長が生じる。取り込まれた塩基を、標識に特異的な抗体を用いて検出した後に比色検出を行う。データ解析は、視覚的に、または吸光プレートリーダーを使用して行うことができる。
プライマー設計
個々の対象遺伝子座に関して、SNP−IT(商標)アッセイ法では3種類のプライマーが必要である。プライマーは、100〜50塩基対のアンプリコンを生じるように設計する。SNP部位のすぐ上流にアニールするように設計されるSNP−ITプライマーの配列が、上の鎖と下の鎖の間から選べる最良の配列である。SNP−ITプライマーの配列は、自己ハイブリダイゼーション、およびアンプリコン中の他の部位とのハイブリダイゼーションを最小限に抑えるように設計する。また、SNP−ITプライマーには、自己プライミングを防ぐために修飾塩基を含ませる場合がある。プライマーの長さは、SNP−ITアッセイ法のメーカーに従って決定する。
第21染色体上に位置するSNP TSC0069085の増幅および遺伝子型決定に用いられる代表的なプライマーを以下に示す:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
SNP−ITプライマー:
Figure 2006521086
上流プライマーは修飾されておらず、また下流プライマーは、ホスホロチオレートで修飾されている。
SNP−ITプレートのコーティング
SNP−ITプライマーを、空の96ウェルプレートのウェルをコーティングするために添加する。この反応物は通常、一晩、製造業者のプロトコルおよび手順に従ってインキュベートする。
PCR
鋳型DNA(15ng)を、エッペンドルフチューブを含むがこれらに限定されない反応容器中、またはマイクロタイタープレートのウェルのいずれかで増幅する。PCR反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
エキソヌクレアーゼ
PCR産物をエキソヌクレアーゼで処理して、非修飾鎖を分解する。
保護されたホスホロチオレート標識鎖をSNP−ITアッセイ法に使用する。エキソヌクレアーゼ反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
アニーリング
1本鎖PCR産物をSNP−IT プレートに移し、SNP−ITプライマーとのハイブリッドを形成させる。アニーリング反応は、典型的には1時間かかる。アニーリング反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
SNP−IT反応
DNAポリメラーゼ、フルオレセインまたはビオチンのいずれかで標識された2種類の終結用ヌクレオチド、および2種類の非標識ターミネーターを含む伸長用試薬を、アニールした鋳型とプライマーの複合体を含むSNP−ITのウェルに添加する。SNP TSC0069085の場合、ddCTPをフルオレセインで標識し、またddTTPをビオチンで標識し、また非標識ターミネーターはddATPおよびddGTPである。伸長反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
SNP−ITプライマーの1塩基伸長によって、SNP特異的な塩基が取り込まれる。取り込まれなかった材料を除去するために、マニュアルで、またはプレート洗浄機でプライマーを洗浄する。洗浄反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
検出
アルカリホスファターゼ(AP)で標識された抗フルオレセインをプレートに添加し、取り込まれた任意のフルオレセイン標識ターミネーターに結合させる。ラベリング反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
プレートを洗浄後に、pNPPを検出用基質として用いて発色させる。黄色を呈したpNPP基質を検出するために、405nmにおける吸光度を読み取り後に、洗浄段階を行ってpNPPの検出用試薬を除去する。発色および洗浄段階は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたストレプトアビジンをプレートに添加し、任意の取り込まれたビオチン標識ターミネーターに結合させる。ラベリング反応は、製造業者のプロトコルおよび手順に従って行う。
洗浄後に、TMBを検出用基質として用いて発色させる。青色を呈したTMB基質を検出するために、620nmにおける吸光度を読み取る。
解析
吸光度をプロットして、遺伝子型の判定元となるスキャッチャードプロットを得る。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPを同定し、母親の血漿から単離されたDNAを対象に解析を行う。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPである対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。増幅された個々の遺伝子座(各5μl)をひとまとめに混合する。
SNP−ITアッセイ法
プールされたDNAを、SNP−ITアッセイ法で上述の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
各対立遺伝子の蛍光強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。
Aヌクレオチドを有する対立遺伝子の強度を定量し、またGヌクレオチドを有する対立遺伝子の強度を定量する。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られる比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例では、ターミネーターヌクレオチドを、さまざまな化学成分で標識する。しかし、本明細書に記載された方法(実施例6参照)で、1種類の標識ターミネーターを用いて両方の対立遺伝子の検出を可能とするようにSNP−ITアッセイ法を修飾することができる。
この実施例では、Orchid社のSNP−ITアッセイ法の使用について説明したが、プライマー伸長に依存する他の手法の使用を制限する意図はない。Orchid社のSNPstream 25K、ならびにGetGenos(商標)、QCreview(商標)、およびValidGenos(商標)を含むがこれらに限定されない、付属ソフトウェアも、母親由来の血液中に含まれる染色体異常の存在の検出に使用することができる。これらの製品の追加情報は、http://www.orchidbio.com/products/lsg/products/snpstream.aspで得られる。
実施例22
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、SNPを、TaqMan(商標)アッセイ法で解析する。しかし、蛍光を発生する5’ヌクレアーゼアッセイ法に依存する他の方法を使用することもできる。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母由来親のSNPがホモ接合であることの同定
TaqManアッセイ法
PE Biosystems社は、その配列検出システム製品ラインに、ABI Prism(登録商標)7700配列検出システム、およびGeneAmp(登録商標)5700配列検出システムの2つの装置を揃えている。このようなリアルタイムシステムは、PCR産物を検出可能であるとされている。というのは、PCR中にPCR産物が蓄積するために、試料中のDNAの定量が可能となるからである。
ABI PRISM(登録商標)7700およびGeneAmp(登録商標)5700の検出システムに使用可能な1つの化学的手法は、蛍光を発生することで特定のPCR産物の検出を可能とするプローブを用いる、蛍光発生5’ヌクレアーゼアッセイ法、またはTaqMan(登録商標)アッセイ法である。レポーターを5’末端に、またクエンチャーを3’末端に組み入れた、PE Biosystem社が特許を有する蛍光発生性プローブの設計は、TaqManプローブの設計の一助となった。
ABI 7700装置を使用したPCRによる定量の基礎は、2種類の異なる蛍光色素で標識された短い(20〜25塩基)のオリゴデオキシヌクレオチドを含むTaqMan(登録商標)プローブと呼ばれる二重標識蛍光発生性オリゴヌクレオチドプローブを用いてPCR産物の蓄積を連続的に測定することにある。5’末端にはレポーター色素が位置し、また3’末端にはクエンチング色素が位置する。このオリゴヌクレオチドプローブの配列は、PCRアンプリコン中に存在する内部配列に相同である。プローブが完全な場合、2つのフルオロフォア間にエネルギー移動が生じ、またレポーターからの発光がクエンチャーによって消失する(Livak et al.,PCR Methods and Applications,4:357−362,1995a; U.S.Patent No.5,538,848; U.S.Patent No.5,723,591)。
PCRの伸長期に、プローブがTaqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断されると、オリゴヌクレオチド−クエンチャーからレポーターが放出され、レポーターの発光強度が上昇する。ABI Prism 7700は、96ウェルのPCRトレイフォーマットで各ウェルにつながる光ファイバーシステムを用いる。レーザー光源が各ウェルを励起し、CCDカメラが、各ウェルの蛍光のスペクトルおよび強度を測定することで、PCRによる増幅中にリアルタイムデータが得られる。ABI 7700 Prismソフトウェアによって、レポーター色素およびクエンチャー色素の蛍光強度が判明し、増幅期間中における、標準化されたレポーター発光強度の上昇が算出される。次に、得られた結果を、サイクル数で代表される時間に対してプロットし、PCRによる増幅の連続的な尺度を得る。各PCR反応において初期標的の正確な定量を行うためには、産物蓄積の初期対数期中のある時点で増幅プロットを調べる。これは、バックグラウンドを上回る蛍光閾値を割り当て、各試料の増幅プロットが閾値に達する時点(閾値サイクル数すなわちCTとして定義)を決定することで達成される。閾値サイクル数の差を用いて、既に述べたように、各チューブに含まれるPCR標的の相対量を定量する。
SNP解析では、SNPの各対立遺伝子に対するTaqManプローブを設計することができる。SNPにおける各対立遺伝子の有無の判定には、レポーターの発光を用いる。例えば、アデニンまたはグアニンのいずれかの可能性があるSNPの場合、アデニンに対する相補的ヌクレオチドでTaqManプローブを設計し、またグアニンに対する相補的ヌクレオチドで別のTaqManプローブを設計する。これら2つのTaqManプローブを別個の反応容器で用いることで、アデニン対立遺伝子の量、およびグアニン対立遺伝子の量を計算することができる。
プライマーおよびプローブ設計
Primer Express(登録商標)ソフトウェアを用いて、プライマーおよびプローブを設計することができる。最初にプローブを設計し、次に、重複することなくプローブに可能な限り近いプライマーを設計する。50〜150塩基対のアンプリコンが強く推奨される。
プライマーおよびプローブは、製造業者の推奨に従って設計すべきである。プライマーとプローブの双方について、G/Cは20〜80%の範囲とする。プライマーおよびプローブは、同一のヌクレオチドの連続を避けるように設計する。これはグアニンについて特にあてはまり、4つまたはこれを上回ってGが連続することは避けるべきである。
プローブの場合、Tを約68〜70℃とし、また5’末端にグアニンが来ないように設計する。またプローブは、G塩基よりC残基の数が多くなるように設計する。
プライマーの場合、Tを約58〜60℃とし、また3’末端における5個のヌクレオチドの中にG塩基および/またはC塩基が2個を越えないようにプライマーを設計する。
例えば、第21染色体上に存在するSNP TSC0271628(A/G)に対する代表的なプライマーおよびプローブを以下に示す:
フォワードプライマー(T=60℃):
Figure 2006521086
リバースプライマー(T=58℃):
Figure 2006521086
TaqManプローブA対立遺伝子(T=68℃;太字はSNPにおける可変ヌクレオチドを示す):
Figure 2006521086
TaqManプローブG対立遺伝子(T=70℃;太字はSNPにおける可変ヌクレオチドを示す):
Figure 2006521086
SNPの周辺配列に関する情報は、http://www.snp.cshl.orgで得られる。フォワードおよびリバースのプライマーの濃度を独立に変えることによって、アッセイ法の最適条件をもたらす濃度を決めることができる。50 nM〜900 nMの範囲のプライマー濃度を検討する。
仮に、母親由来のDNAが1本の対立遺伝子についてホモ接合(例えばアデニン)であるならば、グアニンヌクレオチドに特異的なTaqManプローブを含む試料では、レポーターはクエンチャーと分離しない。なぜなら、TaqManプローブは鋳型DNAとアニールしないからである。しかし、仮に、母親由来のDNAがホモ接合であるならば、レポーターはクエンチャーから、グアニン対立遺伝子に特異的なTaqManプローブを含む試料と、アデニン対立遺伝子に特異的なTaqManプローブを含む試料の両方において分離する。
試薬溶液
TaqManアッセイ法に推奨されるポリメラーゼは、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼである。AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼの使用は、非特異的な産物の形成の量を減らすと言われている。AmpErase(登録商標)Uracil n−グリコシラーゼ(UNG)およびdUTPが加えられると、PCRの持ち越し汚染に対して保護される。PCR反応に関しては、TaqManアッセイ法の最適なパフォーマンスを可能とするように調製された試薬であるTaqMan Universal PCR Masterミックスが製造業者によって推奨されている。
TaqMan反応緩衝液は、5.5mMのMgCl、各200 nMのdATP、dCTP、dGTP、400 nMのdUTP、0.5 UのウラシルDNAグリコシラーゼ、および1.25 UのAmpliTaq Goldを含む。
熱サイクリングのパラメータ
PCRによる増幅、およびプライマー−プローブの全ての組合わせの検出をABI 7700配列検出システムで行う。TaqManアッセイ法に関して推奨されているサイクリングパラメータを以下に示す:
(1)50℃で2分間;
(2)95℃で10分間;
(3)95℃で15秒間;
(4)60℃で1分間;
(5)工程3〜4を40サイクル繰返す。
TaqManによる定量
SNP TSC0271628にアデニンヌクレオチドを、またSNP TSC0271628にグアニンヌクレオチドを6桁の範囲(5×100〜5×10コピー)で含む既知量のDNAから外部標準が生成する。検出の閾値は、PCRサイクル3〜15に関して算出された平均ベースライン発光の標準偏差の10倍に設定する(Stults et al.,Applied and Environmental Microbiology,Vol.67,No.6,2781−2789,2001)。閾値サイクルをDNA濃度に関連づけた標準曲線を、ABI Prism 7700ソフトウェア(Perkin Elmerから入手可)によって作成する。
母親由来のDNAのSNPがホモ接合であることを同定し、血漿から単離されたDNA試料を対象に解析を行う。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPである、対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域が、BeadArrayで使用されるオリゴヌクレオチドプローブに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。BeadArrayサービスの購入時に、各SNPを解析するための個々のSNPおよびプライマーを同定する。こうして得られた知見を元に、多重プライマーを、BeadArrayに使用されるプライマーに対するアニーリング領域を含むように設計する。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。
TaqManアッセイ法
増幅されたDNAをTaqManアッセイ法で、上述の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
TaqMan対立遺伝子に特異的なプローブの蛍光強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。
Aヌクレオチドを有する対立遺伝子の蛍光強度を定量し、またGヌクレオチドを有する対立遺伝子の強度を定量する。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られた比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
この実施例は、TaqManアッセイ法の使用について説明したが、5’ヌクレアーゼ活性を利用する他の手法の使用を制限する意図はない。例えば、SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素を、母親および胎児由来のDNAの配列を決定するために、ABI PRISM 7700配列検出システム、およびGeneAmp(登録商標)5700配列検出システムで使用することもできる。SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素アッセイ法で、母親由来の血液中における胎児の染色体異常の存在を検出することができる。
SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素は、PCR中における産物の蓄積の検出を可能とする特異性の高い2本鎖DNA結合色素である。しかし、SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素アッセイ法は、非特異的な反応産物を含む全ての2本鎖DNAを検出してしまう。SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素アッセイ法の利点は、プローブを必要としない点である。
TaqManアッセイ法と、SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素アッセイ法の両方について、同じプライマー設計パラメータが推奨されている(実施例21の「プライマー設計」のセクション参照)。TaqManアッセイ法で推奨されるプライマー最適化パラメータも、SYBR(登録商標)Green I 2本鎖色素アッセイ法に従うべきである。また、鋳型対照を、さまざまな濃度のプライマーとともに流すべきでもない。
またApplied Biosystems社は、Assays−on−Demand(商標)SNP遺伝子型決定用製品、およびAssasys−by−Design(商標)Service SNP遺伝子型決定用製品を含むがこれらに限定されない、母親および胎児のDNAの配列決定のために使用可能な他の製品を販売している。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明が、本発明の意図もしくは範囲、または本発明の任意の態様に影響を及ぼすことなく、広範囲かつ同等の範囲の条件やパラメータなどを用いて実施可能であることを、当業者であれば理解するであろう。
本明細書で引用された全ての文書、例えば科学文献、特許、および特許出願は、個々の文書が具体的および個別的に、全体が参照として本明細書に組み入れられるのと同じように、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。引用された文書は、該当文書の最初のページのみが示されているが、文書全体は、該当文書の残りのページを含むことが意図される。
実施例23
母親の鋳型DNAがホモ接合であり、また血漿から単離された鋳型DNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を判定する。妊娠女性の血液から単離される血漿は、母親の鋳型DNAと胎児の鋳型DNAの両方を含む。母親由来のDNAおよび血漿由来のDNAを解析するためには、任意の数のSNP検出法を使用することができる。この実施例では、ThirdWave Technologies社の核酸検出用のInvader(商標)アッセイ法でSNPを解析する。しかし、正しい配列の存在下で形成される生物学的構造を利用および定量する、他の手法を使用することもできる。
血液試料の採取
IRBによって承認された試験に準じて、インフォームド・コンセントを得た後に、妊娠女性から血液試料を採取する。血液を、9mlのEDTA Vacuetteチューブ(カタログ番号NC9897284)に採取し、ホルムアルデヒド(4% w/v)を含む0.225mlの10%中性緩衝液を各チューブに添加し、各チューブを穏やかに逆さにする。チューブは、処理の準備が整うまで4℃で保存する。
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒドおよびグルタルアルデヒド誘導体、架橋剤、一級アミノ基反応性架橋剤、スルフヒドリル反応性架橋剤、スルフヒドリル付加もしくはジスルフィド還元、炭水化物反応性架橋剤、カルボキシル反応性架橋剤、光反応性架橋剤、切断可能な架橋剤、AEDP、APG、BASED、BM(PEO)、BM(PEO)、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS、または表XXIIIに記載された化合物を含むがこれらに限定されない、細胞の溶解を抑えるか、または細胞膜を安定化する、任意の数の薬剤をチューブに添加することができる。細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を任意の濃度で添加することができる。好ましい態様では、細胞膜を安定化するか、または細胞の溶解を抑える薬剤を、後の反応を妨げたり阻害したりしない濃度で添加する。
母親由来の細胞の溶解を抑えるために、アルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、DMAE(ジメチルアミノメタノール)、コレステロール、コレステロール誘導体、高濃度マグネシウム、ビタミンEおよびビタミンE誘導体、カルシウム、グルコン酸カルシウム、タウリン、ナイアシン、ヒドロキシルアミン誘導体、bimoclomol、ショ糖、アスタキサンチン、グルコース、アミトリプチリン、異性体Aホパンテトラフェニル酢酸、異性体Bホパンテトラフェニル酢酸、シチコリン、イノシトール、ビタミンB、ビタミンB複合体、ヘミコハク酸コレステロール、ソルビトール、カルシウム、補酵素Q、ユビキノン、ビタミンK、ビタミンK複合体、メナキノン、ゾネグラン、亜鉛、イチョウ抽出物、ジフェニルヒダントイン、perftoran、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルセリン、テグレトール、PABA、クロモグリク酸二ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、フェニトイン、クエン酸亜鉛、メキシチール、ジランチン、ヒアルロン酸ナトリウム、またはポロキサマー188を含むがこれらに限定されない、細胞膜を安定化する薬剤を、母親由来の血液試料に添加することができる。
血漿由来および母親由来の細胞の単離
血液は、処理を行うまで4℃で保存する。チューブを、制動力をゼロに設定した遠心器で、1000rpmで10分間遠心する。チューブを1000rpmで10分間、再び遠心する。各試料の上清(血漿)を新しいチューブに移し、3000rpmで10分間遠心する(ブレーキはゼロに設定)。上清を新しいチューブに移し、−80℃で保存する。母親由来の細胞を含む、約2ミリリットルの「バフィーコート」を別のチューブに移し、−80℃で保存する。
DNAの単離
血液細胞からDNAを精製するためのQiagen Midiキット(QIAmp DNA Blood Midi Kit、カタログ番号51183)を用いて、製造業者の指示書に従って、血漿試料からDNAを単離する。DNAを100μlの蒸留水中に溶出する。Qiagen Midiキットは、「バフィーコート」に含まれる母親由来の細胞からDNAを単離する際にも使用される。
母親由来のSNPがホモ接合であることの同定
ThirdWave Technologies Invader(商標)アッセイ法
Third Wave Technologies(Madison,WI)社が開発したInvader(商標)アッセイ法は、DNAを検出および定量解析するための等温性の「PCR不要」の方法である。Invaderアッセイ法は、正しい標的分子の存在下でのみ無関係のシグナルを生じて増幅する。Invader(商標)アッセイ法は、配列ではなく構造に基づいて特定の部位において核酸分子を切断する、構造特異的な古細菌のflapエンドヌクレアーゼ(FEN)ファミリーの熱安定性の酵素の作用に拠っている。既知配列に対する構造形成用プローブとともに使用される場合、同酵素は、構造および標的配列特異的に切断する。Third Wave Technologies社のアッセイ法に使用されるヌクレアーゼは、「Cleavase(登録商標)」酵素と呼ばれている。
Invader(商標)アッセイ法では、Cleavase酵素によって認識される基質複合体を作るために、2種類の標的特異的なオリゴヌクレオチドを使用する(L.DeFrancesco,The Scientist,12(21):16,1998)。この基質複合体は、上流のInvaderオリゴと下流のシグナルプローブが、タンデムに核酸とハイブリダイズすることで形成される。Invaderオリゴの3’末端は、シグナルプローブのハイブリダイゼーション部位と、少なくとも1塩基は重複していなければならない(Harrington et al.,Genes and Development,8:1344−55,1994)。シグナルプローブの5’末端は、5’フラップを形成するための付加的な非対合塩基を有する。Cleavase酵素は、Invaderオリゴと重複する部位でシグナルプローブを切断して5’アームを放出する。反応混合物は、過剰なシグナルプローブを含み、また反応は、プローブの溶解温度付近で進む。標的の各コピーに対して、多くのシグナルプローブが温度サイクリングを行うことなしに切断される場合がある。
Invaderオリゴとシグナルプローブ間の重複が重要である。重複部位に位置するミスマッチは、重複を妨げることで切断をブロックし、この結果、SNPと変異の区別が可能となる。
Invaderアッセイ法では、2つの連続した切断段階が利用される。第1の反応で放出されるシグナルプローブの5’アームは直接検出されない。むしろ、第2の切断産物が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出されるシグナルの実質上の供給源である。第1の反応で放出される5’アームである1次切断産物は、供給されたFRETプローブと二次反応でハイブリダイズするInvaderオリゴとして使用される。FRETプローブは、ドナーフルオロフォアとクエンチングアクセプターフルオロフォアの2種類の色素で標識されている。ヌクレアーゼが第2のプローブを切断すると2種類のフルオロフォアが分離し、クエンチングが除去され、ドナー色素に由来する強化された蛍光シグナルが検出される。
プローブ設計
第13染色体上に位置するSNP TSC1172576(T/A)における配列を区別するために、以下のプローブを設計する:
T対立遺伝子に対するInvaderオリゴ:
Figure 2006521086
A対立遺伝子に対するInvaderオリゴ:
Figure 2006521086
Invaderオリゴヌクレオチドは、シグナルプローブのすぐ上流の18〜22塩基の領域に相補的になるように、またシグナルプローブに対して1塩基ハイブリダイズする領域に「侵入する」3’末端に追加的な1塩基が含まれるように設計する。
T対立遺伝子用のシグナルプローブ:
Figure 2006521086
A対立遺伝子用のシグナルプローブ:
Figure 2006521086
これらのシグナルプローブは、標的分子に相補的な3’領域と、検出目的で用いられる非相補的な5’アーム(上記の下線を付した配列)を含むように設計する。シグナルプローブは、その5’末端において、6−カルボキシフルオレセイン(TET)、ヘキサクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(HEX)、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識する。しかし、5’末端は、放射性同位体、蛍光レポーター分子、化学発光レポーター分子、抗体、抗体断片、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、フォトビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニン、アビジン、酵素、アクリジニウム、糖、酵素、アポ酵素、ホモポリマーオリゴヌクレオチド、ホルモン、強磁性成分、常磁性成分、反磁性成分、リン光成分、発光成分、電気化学発光成分、色成分、検出可能な電子スピン共鳴、静電容量、比誘電率、または電気伝導度を有する成分、ならびに、これらの組合わせを含むがこれらに限定されない、任意の化合物で標識することができる。
Invaerプローブとシグナルプローブはいずれも、最小数の予測可能な二次構造の形成に応じて、センスまたはアンチセンスの標的DNA鎖のいずれかに相補的である。
PCRによる増幅
SNP TSC1172576の周囲のDNAの断片をPCRで増幅する。上流および下流のプライマーの配列を以下に示す:
上流プライマー:
Figure 2006521086
下流プライマー:
Figure 2006521086
増幅反応は、2μlのゲノムDNA、35pmolの各プライマー、50μmの各デオキシヌクレオチド(Perkin−Elmer Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)、1×PCR緩衝液(20mM Tris−HCl、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.05%Tween−20、0.05% NP40)、1 Mベタイン、5%ジメチルスルホキシド(DMSO)、および2.5 UのTaqポリメラーゼ(Roche Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を含む、最終容量100μlで行う。PCRのサイクル条件は、95℃で5分間の初期変性段階と、95℃で1分間の変性、68℃で1分間のアニーリング、および72℃で1分間の伸長を30サイクル、ならびに72℃で1分間の最終伸長を含む。
Invader反応
各1マイクロリットルのPCR産物を、0.5pmolの適切なInvaderオリゴヌクレオチド、キャリアとしての10ngのヒトゲノムDNA(Promega Corp.,Madison,WI)、およびモルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH 8.0)に添加する(最終濃度10mM、容量7μl)。この混合物を95℃で5分間処理して変性させた後に、反応温度を60℃に冷却する。Invader反応は、30ngのCleavase VIII(Third Wave Technologies,Inc.,Madison,WI)、25mM MgCl、および10pmolの適切なシグナルプローブオリゴヌクレオチドを含む混合物(容量3μl)を添加することで開始させる。反応混合物を60分間インキュベートする。反応は、10μlの95%ホルムアミド−10mM EDTA(pH 8.0)−0.05%クリスタル・バイオレットを添加して終結させる。終結後に、反応物を試薬グレードの水で1:10に希釈する。自動蛍光配列決定装置(モデル377、PE−ABI)上に据えた24%変性ポリアクリルアミドゲル(18cm×25.5cm×mm)に2μlの試料をロードして電気泳動を行う。フィルターセットCを用いてデータを収集し、GeneScanソフトウェアで処理する。
また、5μlの各試料を、20%(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=19:1)の変性ポリアクリルアミドゲルを用いて20 Wで電気泳動を行う。ゲルカセット(20cm×20cm×0.5mm)を、585nmのフィルター(TETおよびHEXで標識されたプローブ用)、ならびに505nmのフィルター(FAMで標識されたプローブ用)を用いて蛍光スキャナー(FMBIO−100; Hitachi Corp,San Bruno,CA)でスキャンする。
Invaderアッセイ法では、放出されたシグナルプローブの5’アームが別のプローブとハイブリダイズし、また蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって特定の核酸の存在が検出されるように、第2の切断反応を行うことも可能である。FRETプローブを使用する際には、製造業者のプロトコルに従う。
個々のSNPにおける遺伝子型は、個々の対立遺伝子特異的なシグナルプローブの蛍光強度を解析することで決定する。例えば、SNP TSC1172576の場合、T対立遺伝子の存在は、T対立遺伝子のシグナルプローブ(上述)に由来するシグナルプローブを用いて、放出される5’シグナルプローブの量を解析することで判定する。同様に、A対立遺伝子の存在は、A対立遺伝子シグナルプローブから放出される5’シグナルプローブの量を解析することで判定する。この反応は、個別の条件で解析可能な2種類の異なる化合物を用いることで、1つの反応容器内で行うことができるほか、A対立遺伝子およびT対立遺伝子の反応を、2つの異なる反応容器内で行うことができる。
母親由来の血漿から単離されたDNAの解析
母親由来のDNAを解析し、SNPがホモ接合であることが判明した後に、これらのSNPの解析を、血漿から単離されたDNAを対象に行う。母親の血漿中には、胎児のゲノムは通常、低コピー数でしか存在しない。母親由来のDNAがホモ接合であるSNPである、対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマーを、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および約130塩基下流にアニールするように設計する。こうすることで、数の少ないゲノムを扱う際に生じる恐れのある統計的なサンプリングエラー(ある対立遺伝子と別の対立遺伝子の比に影響する可能性がある)は小さくなる(実施例11参照)。
多重プライマー設計
プライマーの長さは12塩基とする。しかし、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基、35塩基、36〜45塩基、46〜55塩基、56〜65塩基、66〜75塩基、76〜85塩基、86〜95塩基、96〜105塩基、106〜115塩基、116〜125塩基、および125塩基を上回る塩基を含むがこれらに限定されない、任意の長さのプライマーを使用することができる。プライマーは、センス鎖とアンチセンス鎖の両方にアニールするように設計する。
母親由来のホモ接合のSNPは、個々の試料によって異なるので、ここでは特定の配列を示すことはしない。プライマーは、母親由来のホモ接合のSNPの約130塩基上流および下流にアニールするように設計する。プライマーは、プライマー二量体の形成を抑えるために、ジヌクレオチド「AA」の3’末端で終結するように設計する。しかし、プライマーは、4種類のヌクレオチドのいずれかにおいて、また4種類のヌクレオチドの任意の組合わせにおいて終結するように設計することができる。
多重PCR
母親由来のホモ接合のSNPの上流および下流の領域を、鋳型ゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅する(参照として本明細書に組み入れられる、U.S.Patent Nos.4,683,195および4,683,202)。このPCR反応では、個々の対象遺伝子座の約130塩基上流および下流にアニールするプライマーを使用する。鋳型DNAを増幅するために、プライマーをひとまとめに混合し、1回の反応で使用する。この反応は、対象遺伝子座のコピー数を増やし、ゲノム数の少なさに起因するエラーを除くために行う。
特異度を高めるために、「ホットスタート」PCR反応を行う。PCR反応は、QIAGEN社製のHotStarTaq Master Mixキット(カタログ番号203443)を用いて行う。1回の反応あたりの鋳型DNAおよびプライマーの量を、個々の対象遺伝子座について最適化する。この実施例では、20μlの血漿鋳型DNAを用いる。
フォワードおよびリバースのプライマー(各2マイクロリットル、濃度5mM)を、1本の微小遠心チューブにプールして混合する。4マイクロリットルのプライマーミックスを、総PCR反応容量50μl(20μlの鋳型の血漿DNA、1μlの滅菌水、4μlのプライマーミックス、および25μlのHotStar Taq)に使用する。25サイクルのPCRを行う。以下のPCR条件を用いる:
(1)95℃で15分間;
(2)95℃で30秒間;
(3)4℃で30秒間;
(4)37℃で30秒間;
(5)工程2〜4を24回繰返す;
(6)72℃で10分間。
変性、アニーリング、および伸長時の温度および時間を、さまざまな設定を検討し、最良の結果が得られたパラメータを用いることで最適化する。
対象遺伝子座のコピー数を増やすために、プライマー伸長プレ増幅(PEP)(Zhang et al.,PNAS,89:5847−51,1992)、縮重オリゴヌクレオチドプライムドPCR(DOP−PCR)(Telenius,et al.,Genomics 13:718−25,1992)、バクテリオファージ29のDNAポリメラーゼ(ローリングサークル型複製を行う)を使用する鎖置換増幅(Dean et al.,Genomic Research 11:1095−99,2001)、多置換増幅(U.S.Patent 6,124,120)、REPLI−g(商標)全ゲノム増幅キット、およびTagged PCRを含むがこれらに限定されない、他のゲノム増幅法を使用することもできる。
増幅対象領域が、BeadArrayで使用されるオリゴヌクレオチドプローブに対するアニーリング配列を確実に含むことが重要である。BeadArrayサービスの購入時に、各SNPを解析するための個々のSNPおよびプライマーを同定する。こうして得られた知見を元に、多重プライマーを、BeadArrayに使用されるプライマーに対するアニーリング領域を含むように設計する。
対象断片の精製
使用されなかったプライマーおよびヌクレオチドを、Qiagen MinElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて反応物から除去する。この反応は、カラムに添付された製造業者の指示書に従って行う。DNAを100μlの滅菌水中に溶出する。
Invaderアッセイ法
増幅されたDNAをInvaderアッセイ法で、上述の手順でアッセイする。個々のSNPの遺伝子型を決定する。母親由来のDNAがホモ接合であり、また血漿から単離されたDNAがヘテロ接合である、第13染色体および第21染色体上に位置するSNPを定量する。
定量
対立遺伝子に特異的なシグナルプローブの蛍光強度を定量する。上述したように、対立遺伝子2に対する対立遺伝子1の予測比を元に、染色体異常の有無を判定することができる。仮に、母親由来のゲノムがSNP Xにおいてホモ接合(A/A)であり、また血漿由来のDNAがSNP Xにおいてヘテロ接合(A/G)であれば、Gは明瞭な胎児のシグナルとなる。
Aヌクレオチドを有する対立遺伝子の蛍光強度を定量し、またGヌクレオチドを有する対立遺伝子の強度を定量する。G:Aの比は、母親由来の血液中に存在する胎児DNAのパーセンテージによって変わる。
例えば、仮に、試料が胎児DNAを50%含む場合、予測比率は0.33となる(胎児由来の1つのG対立遺伝子/(母親由来の2つのA対立遺伝子+胎児由来の1つのA対立遺伝子))。この比は、2コピーで存在する全染色体について一定となるはずである。第13染色体上のSNPについて得られる比は、第21染色体について得られた比と同じはずである。
しかし、仮に、胎児のゲノムが第21染色体の別のコピーを含む場合は、同染色体の比は、予測比から逸脱するであろう。母親由来の血液中に胎児DNAが50%含まれるトリソミー状態の場合の予測比率は0.25である。したがって、母親由来のゲノムがホモ接合であり、また血漿から単離されるDNAがヘテロ接合であるSNPを解析することで、胎児の染色体異常を検出することができる。
二本鎖DNA分子を表している略図。1対のプライマーを曲がった矢印として表し、関心対象の座の側面を塩基N14における三角形の記号として表している。関心対象の座は、単一ヌクレオチド多形、点突然変異、挿入、欠失、転座などであり得る。各プライマーは、第1のプライマー領域「a」として、第2のプライマーでは領域「d」として表されている5’末端から約10byに制限酵素認識部位を含有する。制限認識部位[a]は、任意のタイプの制限酵素に対するものであり得るが、認識部位「d」は、制限酵素認識部位から「n」ヌクレオシドを切断し、5’オーバーハングおよび3’窪み端を残す制限酵素に対するものである。このような酵素の例としては、限定はしないが、BceAlおよびBsmFIが挙げられる。5’オーバーハングは3’窪み端にヌクレオチドを取り込むための鋳型として働く。第1のプライマーは、精製の助けになるように、5’端をビオチンで修飾して示されている。前記プライマーの3’端配列は、このプライマーが、関心対象の座の上流および下流の所望の間隔でアニールするような配列になっている。第2のプライマーは、関心対象の座に近接してアニールする。すなわち、第2のプライマーの3’端が関心対象の座から1塩基離れてアニールするように、領域「c」として表されているアニーリング部位が設計されている。第2のプライマー上の領域「d」を認識する制限酵素による消化が関心対象の座を含有する5’オーバーリングを生成するという条件で、第2のプライマーは関心対象の座から任意の間隔でアニールできる。第1のプライマーの領域「b」として表されているアニーリング部位は約20塩基である。 PCRによる増幅の第1サイクルのアニーリングステップおよび伸長ステップを表している略図。領域「c」として表され、この例では13塩基対である第2のプライマーの、鋳型DNAにアニールする3’領域の略融解温度で、増幅の第1サイクルが実施される。この温度で第1のプライマー、第2のプライマーの双方が各々の相補鎖にアニールし、点線で示される伸長を始める。この第1のサイクルにおいて、第2のプライマーは伸長して、第1のプライマーが次のサイクルでアニールできる領域bをコピーする。 PCR増幅の第2サイクルにおける変性後のアニーリングと伸長ステップを表している略図。第1のプライマーの、鋳型DNAにアニールする領域「b」として表されている3’領域の20byの略融解温度であるより高いアニーリング温度(TM2)において、増幅の第2サイクルが実施される。したがって、TM2において、領域bに相補的な領域b’を含有する第1のプライマーは、前記反応の第1サイクルでコピーされたDNAに結合することができる。しかし、TM2では、アニーリング温度が高いため、第2のプライマーは元の鋳型DNAまたは前記反応の第1のサイクルでコピーされたDNAにアニールすることができない。第2のプライマーは元の鋳型DNAにおける13塩基にアニールできるが、TM2は20塩基の略融解温度に決められている。 増幅第3サイクル時変性後のアニーリングおよび伸長反応を表している略図。このサイクルでは、アニーリング温度TM3は、領域「c」および「d」を含む第2のプライマー全体の略融解温度である。領域「c」+「d」の長さは略27〜33by長であり、したがってTM3は、TM1およびTM2よりもかなり高い。このより高いTMで、領域「c」および「d」を含む第2のプライマーは、サイクル2で生成したコピーDNAにアニールする。 増幅の残りのサイクルに関するアニーリングおよび伸長反応を表している略図。残りのサイクルに関するアニーリング温度は、第2のプライマー全体の略融解温度であるTM3である。TM3で、第2のプライマーは、領域c’およびd’を含む鋳型に結合し、第1のプライマーは、領域a’およびbを含む鋳型に結合する。初めの3つのサイクルの各サイクルにおいて、アニーリング温度をTM1、TM2、TM3と連続的に上昇させることにより、非特異的増幅はかなり減少する。 固体マトリックスに結合した関心対象の増幅座を表す略図。 制限酵素「d」による消化後の結合増幅DNAを表す略図。「下流」端は上澄み液に遊離し、任意の緩衝液による洗浄によって除去できる。関心対象の座を含有する上流端は固体マトリックスに結合したままである。 領域ddNTPで「はめ込み」後の結合増幅DNAを表している略図。関心対象の座(N14)に相補的な塩基(N’14)を「はめ込む」ためにはDNAポリメラーゼが用いられる。この例では、関心対象の座または関心対象のSNPだけをはめ込むように、ddNTP類だけがこの反応に存在している。 制限酵素「a」による消化後の標識結合DNAを表している略図。標識DNAは上澄み液に遊離するが、取り込まれた塩基を同定するためにそれを回収する。 1つのプライマーが、関心対象座の各座の側面に位置するように特異的にアニールした数nの関心対象座および数nのプライマー対、x、yからx、yを有する二本鎖DNAの鋳型を表している略図。第1のプライマーは、5’端をビオチン化されていて・によって表され、任意のタイプの制限酵素であり得る制限酵素認識部位「a」を含有する。第2のプライマーは制限酵素認識部位から「n」ヌクレオチドを切断し、関心対象の座を含有する5’オーバーハングおよび3’窪み端を生成する制限酵素に対する認識部位である制限酵素認識部位「d」を含有する。第2のプライマーは関心対象の各々の座に隣接してアニールする。関心対象座のPCR産物を制限酵素「d」によって消化することにより関心対象の座を含有する5’オーバーハングおよび3’窪み端が生成されるように、第2のプライマーにおける制限酵素部位「d」の正確な位置が設計される。第1のプライマーのアニーリング部位は、約20塩基長であり、連続的な第1のプライマーの各々が、第2のプライマーの各々からさらに離れるように選択される。例えば、座1で、第1のプライマーおよび第2のプライマーの3’端がZ塩基対離れているならば、座2では第1のプライマーおよび第2のプライマーの3’端は、Z+K塩基対離れており、ここでK=1、2、3、または3より多い塩基である。座Nに対するプライマーは、ZN−1+K塩基対離れている。連続的な第1のプライマーの各々を第2のプライマーの各々からさらに離す目的は、「はめ込まれた」制限断片(図1B〜1Iに記したように増幅、精製、消化および標識化の後に生成された)の大きさが異なり、例えば、電気泳動により分離でき、関心対象の各個別の座を検出できるようにすることである。 複数のアニーリング温度を用いるSNP類のPCR増幅。36人のヒト志願者のゲノムDNA鋳型を含有する試料を次の4種のSNPに関して分析した:染色体21上に位置し、ヒト染色体21cSNPデータベース帰属の同定番号SNP HC21S00340(レーン1);染色体1上に位置しているSNP TSC0095512(レーン2);染色体1上に位置しているSNP TSC0214366(レーン3);および染色体1上に位置しているSNP TSC0087315(レーン4)。各SNPは、本明細書において、低緊縮アニーリング温度;中等度緊縮アニーリング温度;および高緊縮アニーリング温度と称される3つの異なったアニーリング温度プロトコルを用いてPCRにより増幅した。アニーリング温度プロトコルに係りなく、各SNPは、PCRの40サイクルで増幅した。各PCR反応の変性ステップは、95℃で30秒間実施された。図3A:低緊縮アニーリング温度プロトコルを用いた4種の異なったSNPのPCR増幅を証明しているゲルの写真。図3B:中等度緊縮アニーリング温度プロトコルを用いた4種の異なったSNPのPCR増幅を証明しているゲルの写真。図3C:高緊縮アニーリング温度プロトコルを用いた4種の異なったSNPのPCR増幅を証明しているゲルの写真。 染色体21上に位置し、ヒト染色体21cSNPデータベース帰属の同定番号SNP HC21S00027のDNA配列の図。第1のプライマーおよび第2のプライマーは、HC21S00027の配列の、各々上と下に示されている。第1のプライマーはビオチン化しており、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有する。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有し、DNA配列にアニールする13塩基を含有する。SNPはR(A/G)およびr(T/C)(Rに対して相補的)によって示されている。 染色体21上に位置し、ヒト染色体21cSNPデータベース帰属の同定番号SNP HC21S00027のDNA配列の図。第1のプライマーおよび第2のプライマーは、HC21S00027の配列の、各々上と下に示されている。第1のプライマーはビオチン化しており、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有する。第2のプライマーは、BceAIに対する制限酵素認識部位を含有し、DNA配列にアニールする13塩基を含有する。SNPはR(A/G)およびr(T/C)(Rに対して相補的)によって示されている。 染色体1のSNP TSC0095512のDNA配列の図。第1のプライマーおよび第2のプライマーは、TSC0095512配列の、各々上と下に示されている。第1のプライマーはビオチン化しており、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有する。第2のプライマーは、BsmFIに対する制限酵素認識部位を含有し、DNA配列にアニールする13塩基を有する。SNPはS(G/C)およびS(C/G)(Sに対して相補的)によって示される。 染色体1のSNP TSC0095512のDNA配列の図。第1のプライマーおよび第2のプライマーは、TSC0095512配列の、各々上と下に示されている。第1のプライマーはビオチン化しており、EcoRIに対する制限酵素認識部位を含有する。第2のプライマーは、BceAIに対する制限酵素認識部位を含有し、DNA配列にアニールする13塩基を有する。SNPはS(G/C)およびS(C/G)(Sに対して相補的)によって示される。 図5A〜5Dは、図4A〜4Dに記したプライマーによる増幅後のSNP HC21S00027(図5Aと5B)およびSNP TSC0095512(図5Cと5D)のヌクレオチド配列を表している略図である。プライマー配列における制限部位を太字で示している。 図6A〜6Dは、適切なIIS型制限酵素による消化後の各増幅SNPのヌクレオチド配列を表している略図である。図6Aと6Bは、それぞれIIS型制限酵素BsmFIおよびBceAIによって消化したSNP HC21S00027の断片を表している。図6Cと6Dは、それぞれIIS型制限酵素BsmFIおよびBceAIによって消化したSNP TSC0095512の断片を表している。 図7A〜7Dは、消化したSNP部位の5’オーバーハングを3’窪み端を「はめ込む」ための鋳型として用いる、蛍光標識ヌクレオチドの取り込みを表す略図である。図7Aと7Bは、取り込まれた標識ddNTPを有する消化SNP HC21S00027座を表す(−dd=蛍光ジデオキシヌクレオチド)。図7Cと7Dは、取り込まれた標識ddNTPを有する消化SNP TSC0095512座を表す(−dd=蛍光ジデオキシヌクレオチド)。ddNYP類を使用することにより、関心対象ヌクレオチドまたは5’オーバーハングに存在するSNP部位に相補的なヌクレオチド1個分だけ、3’窪み端が伸長することが保証される。図7Eは、SNP部位を含有する5’オーバーハングへのdNTPおよびddNTPの取り込みを表している略図である。SNP HC21S00007はBsmFIによって消化され、4塩基の5’オーバーハングを生成する。dNTPとddNTPとの混合物の使用により、3’窪み端をヌクレオチド1個分(先ずddNTPが取り込まれる);ヌクレオチド2個分(ddNTPの後に1個のdNTPが取り込まれる);ヌクレオチド3個分(ddNTPの後に2個のdNTPが取り込まれる);またはヌクレオチド4個分(ddNTPの後に3個のdNTPが取り込まれる)伸長させることができる。4種の産物を全て大きさによって分離することができ、また、取り込まれたヌクレオチドを検出することができる(−dd=蛍光ジデオキシヌクレオチド)。SNPまたは座の部位に対応する第1のヌクレオチドおよび次の3つのヌクレオチドの検出により、さらなる品質保証のレベルが提供される。SNPは、R(A/G)およびr(T/C)(Rに相補的)によって示されている。 図8A〜8Dは、固体支持マトリックス、すなわちストレプトアビジン被覆ウェルからの「はめ込まれた」SNPの遊離である。SNP HC21S00027は、図8Aと8Bに示されており、一方、SNP TSC0095512は図8Cと8Dに示されている。「はめ込まれた」SNPは、溶液中で遊離しており、検出することができる。 BceAIによって消化されたSNP HC21S00027の配列分析。4つの「はめ込み」反応が示されており、各反応が1つの蛍光標識ヌクレオチド、ddGTP、ddATP、ddTTPまたはddCTPおよび未標識ddNTP類を含有した。BceAIによる消化で生成した5’オーバーハングおよびこのSNP部位において予想されるヌクレオチドが示されている。 SNP TSC0095512SNPの配列分析。TSC0095512は、BceAIに対する認識部位を含有した第2のプライマーによって、また別の反応では、BsmFIに対する認識部位を含有した第2のプライマーによって増幅された。各PCR産物に関して、4つの「はめ込み」反応が示されており、各反応が1つの蛍光標識ヌクレオチド、ddGTP、ddATP、ddTTPまたはddCTPおよび未標識ddNTP類を含有した。BceAIによる消化で生成した5’オーバーハング、およびBsmFIによる消化で生成した5’オーバーハングおよび予想されるヌクレオチドが示されている。 BsmFIに対する認識部位を含有した第2のプライマーによる増幅後のSNP TSC264580の配列分析。4つの「はめ込み」反応が示されており、各反応が1つの蛍光標識ヌクレオチド、ddGTP、ddATP、ddTTPまたはddCTPおよび未標識ddNTP類を含有した。2つの異なる5’オーバーハングが表されており、1つは、センス鎖上の11個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子およびアンチセンス鎖上の15個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子を表し、他方は、センス鎖上の10個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子およびアンチセンス鎖上の14個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子を表している。また、予想されるヌクレオチドが示されている。 BsmFIに対する認識部位を含有した第2のプライマーによる増幅後のSNP HC21S00027の配列分析。BsmFIによる消化で生成した5’オーバーハングのはめ込みには、標識ddNTP類および未標識dNTP類が用いられた。2つの異なる5’オーバーハングが表されており、1つは、センス鎖上の11個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子およびアンチセンス鎖上の15個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子を表し、他方は、センス鎖上の10個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子およびアンチセンス鎖上の14個のヌクレオチドが切り取られたDNA分子を表している。SNPより上流のヌクレオチド、SNP部位におけるヌクレオチド(この試料は、36人の鋳型DNAを含有したので、双方のDNAがこの試料中に存在すると考えられる)およびSNPの下流の3個のヌクレオチドが示されている。 複数のSNPの配列分析。染色体21上に位置しているSNP類HC21S00131およびHC21S00027ならびに染色体1上に位置しているSNP TSC0087315、SNP TSC0214366、SNP TSC0413944およびSNP TSC0095512を別々のPCR反応において、BsmF1に対する認識部位を含有した第2のプライマーによって増幅した。各々増幅された関心対象の座が異なる大きさであるように、プライマーを設計した。増幅後、反応物を1つの試料にプールし、本法の引き続く全てのステップはその試料で行った(図1F〜1Iに対し、説明されたように)。各SNPおよび各SNPで見られるヌクレオチドを示している。 母体血液中の胎児DNAパーセンテージの定量。血液はヒト妊娠女性からインフォームドコンセントを得て採取した。DNAを単離し、連続希釈を行って、試料中に存在する胎児DNAのパーセンテージを測定した。染色体Y上に位置するSRY遺伝子を胎児DNAの検出に用いた。染色体7上に位置するのう胞性線維症遺伝子を、母体DNAおよび胎児DNA双方の検出に用いた。図11A:EDTAで処理した血液試料から単離した鋳型DNAを用いたSRY遺伝子およびのう胞性線維症遺伝子の増幅。図11B:ホルマリンおよびEDTAで処理した血液試料から単離した鋳型DNAを用いたSRY遺伝子およびのう胞性線維症遺伝子の増幅。 前もってトリソミー21を有する遺伝子型(ダウン症候群)と決定されている個体の遺伝子分析。前もってトリソミー21を有する遺伝子型と決定されている個体の遺伝子分析から、インフォームドコンセントを得て血液を採取した。DNAを単離し、染色体21上の2種のSNPおよび染色体13上の2種のSNPの遺伝子型を決定した。ゲルの写真に示されるように、染色体21上のSNPは、2つのヌクレオチドの比率が不釣合いである。ゲルの肉視検査により、染色体21に関して分析されたSNP部位における2つのヌクレオチドのうちの1つがより大きな強度を有していることが証明され、それが50:50比で存在していないことが示唆される。しかし、染色体13上の分析されたヘテロ接合SNP部位におけるヌクレオチドは、予想された50:50比で存在していることが、肉視検査により示唆される。 1種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたSNP、TSC0837969、TSC0034767、TSC1130902、TSC0597888、TSC0195492、TSC0607185の両対立遺伝子の配列測定。BsmFIによる消化で生成したオーバーハングをはめ込むために未標識dATP、dCTP、dTTPの存在下で標識ddGTPを使用した。はめ込まれた鎖上の可変部位の先にあるヌクレオチドはグアニンではなく、また、はめ込まれた鎖上の可変部位の後にあるヌクレオチドもグアニンではなかった。はめ込まれた鎖上の可変部位の2塩基後のヌクレオチドはグアニンであった。可変部位にグアニンを含有する対立遺伝子は、標識ddGTPを用いてはめ込みを行った。グアニンを含有しない対立遺伝子は未標識dATP、dCTP、dTTPによってはめ込まれ、オーバーハングに相補的な3位に標識ddGTPがはめ込まれるまで、ポリメラーゼはヌクレオチドの取り込みを続ける。 集団内における可変的な対立遺伝子を有するSNPの同定。染色体13上に位置する7種のSNPの両対立遺伝子の配列は、245個体から得られたDNAからなる鋳型DNAを用いて決定した。BsmFIによる消化によって生成したオーバーハングにはめ込みを行うために未標識dATP、dCTP、dTTPの存在下、標識ssGTPを用いた。はめ込まれた鎖上の可変部位の先にあるヌクレオチドはグアニンではなく、また、はめ込まれた鎖上の可変部位の後にあるヌクレオチドもグアニンではなかった。はめ込まれた鎖上の可変部位の2塩基後のヌクレオチドはグアニンであった。可変部位にグアニンを含有する対立遺伝子は、標識ddGTPを用いてはめ込みを行った。グアニンを含有しない対立遺伝子は未標識dATP、dCTP、dTTPによってはめ込まれ、オーバーハングに相補的な3位に標識ddGTPがはめ込まれるまで、ポリメラーゼはヌクレオチドの取り込みを続ける。 ヘテロ接合SNPにおける1つの対立遺伝子の他の対立遺伝子に対する比率の決定。SNPTSC0607185に関して見られたヌクレオチドは、センス鎖上のシトシン(対立遺伝子1と称す)およびチミジン(対立遺伝子2と称す)である。対立遺伝子2対対立遺伝子1の比率は、5個体から単離された鋳型DNAを用いて計算した。対立遺伝子2対対立遺伝子1の比率は、一定で、1:1であった。SNP TSC1130902に関して見られたヌクレオチドは、センス鎖上のグアニン(対立遺伝子1と称す)およびアデニン(対立遺伝子2と称す)である。対立遺伝子2対対立遺伝子1の比率は、5個体から単離された鋳型DNAを用いて計算した。対立遺伝子2対対立遺伝子1の比率は、一定で、75:25であった。 染色体21の1つ余分なコピーを含有する鋳型DNAについて計算すると、SNP TSC0108992における対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージは線形を維持する。SNP TSC0108992は、4人からの鋳型DNAをを用いて増幅され、各PCR反応に関して、2つの別々のはめ込み反応(AおよびBとして標識)を実施した(標識1〜4)。正常な個体からの鋳型DNA上の対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージ計算値は0.47であった。理論上の予想パーセンテージ0.50からの偏差は、ダウン症候群を有する個体から単離された鋳型DNAについては線形を維持する。 正常な遺伝子核型を有する個体から単離された鋳型DNAからの、染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて増幅し、IIS型制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んだ。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.50の中間値であった。 トリソミー21遺伝子核型を有する個体から単離された鋳型DNAからの、染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて増幅し、IIS型の制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んだ。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.30の中間値であった。 トリソミー21を有する個体からの鋳型DNAおよび正常な遺伝子核型を有する個体からの鋳型DNAの3:1の比率(トリソミー21:正常)からなる混合物からの染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて鋳型混合物から増幅し、IIS型制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んた。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.319の中間値であった。 トリソミー21を有する個体からの鋳型DNAおよび正常な遺伝子核型を有する個体からの鋳型DNAの1:1の比率(トリソミー21:正常)からなる混合物からの染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて鋳型混合物から増幅し、IIS型制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んだ。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.352の中間値であった。 トリソミー21を有する個体からの鋳型DNAおよび正常な遺伝子核型を有する個体からの鋳型DNAの1:2.3の比率(トリソミー21:正常)からなる混合物からの染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて鋳型混合物から増幅し、IIS型制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んだ。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.382の中間値であった。 トリソミー21を有する個体からの鋳型DNAおよび正常な遺伝子核型を有する個体からの鋳型DNAの1:4の比率(トリソミー21:正常)からなる混合物からの染色体21上に位置するSNPの分析。SNP TSC0108992は、本明細書に記載された方法を用いて鋳型混合物から増幅し、IIS型制限酵素BsmFIによる消化の後、標識ddTTPならびに未標識dATP、dCTP、dGTPを用いて5’オーバーハングにはめ込んだ。3つの別々のPCR反応を実施し、各PCR反応物を2つの試料に分けた。SNP部位における対立遺伝子2のパーセンテージ(対立遺伝子2/(対立遺伝子2+対立遺伝子1))を計算した結果、0.397の中間値であった。 鋳型DNAから増幅された9種のSNPのアガロースゲル分析。9種のSNPの各々は、本明細書に記載された方法を用いて、ゲノムDNAから増幅した。レーン1はSNP TSC0397235に対応し、レーン2はSNP TSC0470003に対応し、レーン3はSNP TSC1649726に対応し、レーン4はSNP TSC1261039に対応し、レーン5はSNP TSC0310507に対応し、レーン6はSNP TSC1650432に対応し、レーン7はSNP TSC1335008に対応し、レーン8はSNP TSC0128307に対応し、およびレーン9はSNP TSC0259757に対応する。 染色体13上の種々の領域にアニールした12個の塩基プライマーを用いて、元の鋳型DNAを増幅した。染色体13の全体に亘った領域を増加するために、100種の異なるプライマーセットを用いた。9種のSNPの各々に対し、関心対象の座の略130個の塩基、および関心対象の座の下流の130個の塩基をアニールするプライマーを用いた。関心対象座を含有する領域を増幅するために、合計100種類のプライマーセットを含有する増幅反応を用いた。生じたPCR産物は、引き続くPCR反応に用いたが、ここで、9種のSNPの各々は、第1のプライマーおよびIIs型制限酵素BsmFIに対する結合部位を含有した第2のプライマーを用いて、個々に増幅した。SNPは図18Aと同じ順序で入れた。 元の鋳型DNA(IA)および融合鋳型DNA(M1〜M3)上のSNP TSC047003に関する対対立遺伝子2対立遺伝子1のパーセンテージの定量であり、ここでは関心対象座の上流および下流の150個の塩基をアニールする12個の塩基プライマーを用いてDNAを先ず増幅し、次に第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いて、複合鋳型DNA上で3つの別々のPCR反応を行った。 元の鋳型DNA(IA)および融合鋳型DNA(M1〜M3)上のSNP TSC1261039に関する対対立遺伝子2対立遺伝子1のパーセンテージの定量であり、ここでは関心対象座の上流および下流の150個の塩基をアニールする12個の塩基プライマーを用いてDNAを先ず増幅し、次に第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いて、複合鋳型DNA上で3つの別々のPCR反応を行った。 元の鋳型DNA(IA)および融合鋳型DNA(M1〜M3)上のSNP TSC310507に関する対対立遺伝子2対立遺伝子1のパーセンテージの定量であり、ここでは関心対象座の上流および下流の150個の塩基をアニールする12個の塩基プライマーを用いてDNAを先ず増幅し、次に第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いて、複合鋳型DNA上で3つの別々のPCR反応を行った。 元の鋳型DNA(IA)および融合鋳型DNA(M1〜M3)上のSNP TSC1335008に関する対立遺伝子2対対立遺伝子1のパーセンテージの定量であり、ここでは関心対象座の上流および下流の150個の塩基をアニールする12個の塩基プライマーを用いてDNAを先ず増幅し、次に第1のプライマーおよび第2のプライマーを用いて、複合鋳型DNA上で3つの別々のPCR反応を行った。 妊娠女性から単離した血漿DNAからの胎児DNAの検出。血漿DNA上の母体DNAが、ホモ接合である4種のSNPを分析した。TSC0838355(レーン1)におけるアデニンに関し、母体DNAはホモ接合であったが、血漿DNAはヘテロ接合パターン(レーン2)を示した。グアニン対立遺伝子は母体の信号から明らかに区別される胎児DNAを表した。TSC0418134(レーン3および4)におけるアデニンに関し、母体DNAおよび血漿DNAの双方ともホモ接合であった。TSC0129188(レーン5)におけるグアニンに関し、母体DNAはホモ接合であったが、血漿DNAはヘテロ接合パターン(レーン6)を示した。アデニン対立遺伝子は胎児DNAを表した。TSC0501389(レーン7および8)におけるアデニンに関し、母体DNAおよび血漿DNAの双方ともホモ接合であった。

Claims (56)

  1. 0.0001〜0.03%、0.03〜0.05%、0.05〜0.08%、0.08〜0.1%、0.1〜0.3%、0.3〜0.5%、0.5〜0.7%、0.7〜0.9%、0.9〜1.2%、1.2〜1.5%、1.5〜2%、および2〜3%からなる群より選択される濃度のホルマリンが添加された核酸含有試料から、遊離の核酸を単離する段階を含む、分析目的で試料を調製するための方法。
  2. 試料を、ヒト、非ヒト、哺乳類、爬虫類、畜牛、ネコ、イヌ、ヤギ、イノシシ、ブタ、サル、類人猿、ゴリラ、雄牛、雌牛、クマ、ウマ、ヒツジ、家禽、マウス、ラット、魚類、イルカ、クジラ、およびサメからなる群より選択される供給源から得る、請求項1記載の方法。
  3. 試料をヒト供給源から得る、請求項2記載の方法。
  4. 試料を、細胞、胎児細胞、組織、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、膣分泌物、臍帯血、絨毛膜、羊水、胚組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹腔液、腹水、糞便、または身体浸出物からなる群より選択される供給源から得る、請求項1記載の方法。
  5. 試料が血液である、請求項4記載の方法。
  6. 血液が妊娠女性に由来する、請求項5記載の方法。
  7. 血液を、胎児が0〜4週、4〜8週、8〜12週、12〜16週、16〜20週、20〜24週、24〜28週、28〜32週、32〜36週、36〜40週、40〜44週、44〜48週、48〜52週、および52週超からなる群より選択される胎齢にあるヒト妊娠女性から得る、請求項6記載の方法。
  8. 試料を、血液由来の血漿から得る、請求項7記載の方法。
  9. 試料中のホルマリン濃度が0.1%である、請求項1記載の方法。
  10. 核酸の単離が、遠心分離の段階を含む、請求項1記載の方法。
  11. 遠心分離の段階を、制動力をゼロに設定した遠心分離器で行う、請求項10記載の方法。
  12. 遠心分離の段階を、0〜50rpm、50〜100rpm、100〜200rpm、200〜300rpm、300〜400rpm、400〜500rpm、500〜600rpm、600〜700rpm、700〜800rpm、800〜900rpm、900〜1000rpm、1000〜2000rpm、2000〜3000rpm、3000〜4000rpm、4000〜5000rpm、5000〜6000rpm、6000〜7000rpm、7000〜8000rpm、および8000rpm超からなる群より選択される速度で行う、請求項11記載の方法。
  13. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから、試料における対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)対象遺伝子座の増幅;
    (2)増幅された遺伝子座とGeneCHIPアレイのハイブリダイゼーション;
    (3)GeneCHIPアレイの洗浄;
    (4)検出用試薬によるGeneCHIPアレイの染色;および
    (5)GeneCHIPアレイのスキャニング。
  14. (a)(1)の増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応、自律的配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージによる増幅、鎖置換増幅、ならびにスプライス・オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
  15. 増幅法がPCRによるものである、請求項14記載の方法。
  16. 染色法が、ストレプトアビジン・フィコエリトリンおよびビオチン化抗ストレプトアビジンを含む、請求項13記載の方法。
  17. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)対象遺伝子座の増幅;
    (2)アンプリコンの断片化;
    (3)断片化されたアンプリコンとCodeLinkアレイのハイブリダイゼーション;
    (4)ヌクレオチドを取り込ませるための伸長反応;ならびに
    (5)取り込まれたヌクレオチドの検出。
  18. 増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応、自律的配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージによる増幅、鎖置換増幅、ならびにスプライス・オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
  19. 増幅法がPCRによるものである、請求項18記載の方法。
  20. アンプリコンの断片化が、エキソヌクレアーゼ消化によるものである、請求項17記載の方法。
  21. 取り込まれたヌクレオチドが、ジデオキシヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドである、請求項17記載の方法。
  22. 取り込まれたヌクレオチドを、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、および検出可能な電子スピン共鳴、静電容量、比誘電率、または電気伝導度を有する部分からなる群より選択される分子によって標識する、請求項21記載の方法。
  23. 標識ヌクレオチドを蛍光分子で標識する、請求項22記載の方法。
  24. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、ビーズアレイ技術の使用を含む段階。
  25. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)対象遺伝子座の増幅;
    (2)(a)において使用されなかった試薬の脱リン酸化;
    (3)(b)の産物のインビトロ転写反応;
    (4)(c)の産物のRNase A消化;
    (5)(d)の産物とCleanResinの混合;
    (6)(e)の産物の、SpectroCHIPへのトランスファー;ならびに
    (7)SpectroCHIPの分析。
  26. 増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応、自律的配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージによる増幅、鎖置換増幅、ならびにスプライス・オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
  27. 増幅法がPCRによるものである、請求項26記載の方法。
  28. 脱リン酸化反応に、シュリンプアルカリホスファターゼを使用する、請求項25記載の方法。
  29. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)対象遺伝子座の増幅;
    (2)(a)において使用されなかった試薬の脱リン酸化;
    (3)プライマーと対象遺伝子座のハイブリダイゼーション;
    (4)ヌクレオチドの取り込み;
    (5)(d)の産物とCleanResinの混合;
    (6)(e)の産物のSpectroCHIPへのトランスファー;ならびに
    (7)SpectroCHIPの分析。
  30. 増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応、自律的配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージによる増幅、鎖置換増幅、ならびにスプライス・オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応からなる群より選択される、請求項29記載の方法。
  31. 増幅法がPCRによるものである、請求項30記載の方法。
  32. 脱リン酸化反応にシュリンプアルカリホスファターゼを使用する、請求項29記載の方法。
  33. プライマーのハイブリダイゼーションが、対象遺伝子座に隣接したものである、請求項29記載の方法。
  34. 取り込まれたヌクレオチドが、ジデオキシヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドである、請求項29記載の方法。
  35. 取り込まれたヌクレオチドが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、ならびに検出可能な電子スピン共鳴、静電容量、比誘電率、または電気伝導度を有する部分からなる群より選択される分子によって標識される、請求項34記載の方法。
  36. 標識ヌクレオチドが蛍光分子で標識される、請求項35記載の方法。
  37. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)対象遺伝子座の増幅;
    (2)(1)の産物のエキソヌクレアーゼ処理;
    (3)(2)の1本鎖DNAの、オリゴヌクレオチドへのアニール;
    (4)(3)でアニールした鋳型およびプライマーを用いての、ヌクレオチドの取り込み;
    (5)取り込まれたヌクレオチドの検出。
  38. 増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応、自律的配列反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージによる増幅、鎖置換増幅、ならびにスプライス・オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
  39. 増幅法がPCRによるものである、請求項38記載の方法。
  40. プライマーが、対象遺伝子座に隣接したハイブリッドを形成する、請求項37記載の方法。
  41. 取り込まれたヌクレオチドが、ジデオキシヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドである、請求項37記載の方法。
  42. 取り込み反応が、2種類の終結ヌクレオチド、および2種類の非終結ヌクレオチドを含む、請求項37記載の方法。
  43. 取り込まれたヌクレオチドが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、ならびに検出可能な電子スピン共鳴、静電容量、比誘電率、または電気伝導度を有する部分からなる群より選択される分子によって標識される、請求項41記載の方法。
  44. 終結ヌクレオチドが、放射性分子、蛍光分子、抗体、抗体断片、ハプテン、炭水化物、ビオチン、ビオチン誘導体、リン光部分、発光部分、電気化学発光部分、色部分、ならびに検出可能な電子スピン共鳴、静電容量、比誘電率、または電気伝導度を有する部分からなる群より選択される分子によって標識される、請求項42記載の方法。
  45. 標識ヌクレオチドが蛍光分子で標識される、請求項43記載の方法。
  46. 終結ヌクレオチドが蛍光分子で標識される、請求項44記載の方法。
  47. 以下の段階を含む、試料における染色体異常を検出するための方法:
    (a)鋳型DNAから対象遺伝子座の対立遺伝子の配列を決定する、以下を含む段階:
    (1)増幅反応が、フォワードプライマー、リバースプライマー、およびアンプリコンの領域内にある対象遺伝子座とアニールするプローブを含む増幅反応であり、さらに、プローブが、プローブの一方の末端にレポーター色素を、プローブのもう一方の末端にクエンチング色素を含むプローブである、対象遺伝子座の増幅;ならびに
    (2)そのPCR産物の量を元に特定の遺伝子配列の有無を判定する、PCR産物の検出。
  48. 増幅がPCRによるものである、請求項47記載の方法。
  49. プローブが、レポーター色素を5’末端に、クエンチング色素を3’末端に含む、請求項47記載の方法。
  50. PCR産物を、ABI 7700配列検出システムを用いて検出する、請求項47記載の方法。
  51. 細胞溶解阻害剤が試料に添加されている、請求項13、17、24、25、29、37、および47のいずれか一項記載の方法。
  52. 細胞溶解阻害剤が、0.0001〜0.03%、0.03〜0.05%、0.05〜0.08%、0.08〜0.1%、0.1〜0.3%、0.3〜0.5%、0.5〜0.7%、0.7〜0.9%、0.9〜1.2%、1.2〜1.5%、1.5〜2%、および2〜3%からなる群より選択されるパーセンテージのホルマリンである、請求項51記載の方法。
  53. 試料中のホルマリン濃度が0.1%である、請求項52記載の方法。
  54. 組成物中の全遊離DNAにおける遊離の胎児DNAのパーセンテージが、約15〜16%の胎児DNA、約16〜17%の胎児DNA、約17〜18%の胎児DNA、約18〜19%の胎児DNA、約19〜20%の胎児DNA、約20〜21%の胎児DNA、約21〜22%の胎児DNA、約22〜23%の胎児DNA、約23〜24%の胎児DNA、約24〜25%の胎児DNA、約25〜35%の胎児DNA、約35〜45%の胎児DNA、約45〜55%の胎児DNA、約55〜65%の胎児DNA、約65〜75%の胎児DNA、約75〜85%の胎児DNA、約85〜90%の胎児DNA、約90〜91%の胎児DNA、約91〜92%の胎児DNA、約92〜93%の胎児DNA、約93〜94%の胎児DNA、約94〜95%の胎児DNA、約95〜96%の胎児DNA、約96〜97%の胎児DNA、約97〜98%の胎児DNA、約98〜99%の胎児DNA、および約99〜99.7%の胎児DNAからなる群より選択される、胎児DNAおよび母体DNAを含む組成物。
  55. 組成物中の全遊離DNAにおける遊離の胎児DNAのパーセンテージが、約15〜16%の胎児DNA、約16〜17%の胎児DNA、約17〜18%の胎児DNA、約18〜19%の胎児DNA、約19〜20%の胎児DNA、約20〜21%の胎児DNA、約21〜22%の胎児DNA、約22〜23%の胎児DNA、約23〜24%の胎児DNA、約24〜25%の胎児DNA、約25〜35%の胎児DNA、約35〜45%の胎児DNA、約45〜55%の胎児DNA、約55〜65%の胎児DNA、約65〜75%の胎児DNA、約75〜85%の胎児DNA、約85〜90%の胎児DNA、約90〜91%の胎児DNA、約91〜92%の胎児DNA、約92〜93%の胎児DNA、約93〜94%の胎児DNA、および約94〜95%の胎児DNAからなる群より選択される、胎児DNAおよび母体DNAを含む組成物。
  56. 組成物中の全遊離DNAにおける遊離の胎児DNAのパーセンテージが、約15〜16%の胎児DNA、約16〜17%の胎児DNA、約17〜18%の胎児DNA、約18〜19%の胎児DNA、約19〜20%の胎児DNA、約20〜21%の胎児DNA、約21〜22%の胎児DNA、約22〜23%の胎児DNA、約23〜24%の胎児DNA、約24〜25%の胎児DNA、約25〜35%の胎児DNA、約35〜45%の胎児DNA、約45〜55%の胎児DNA、約55〜65%の胎児DNA、約65〜75%の胎児DNA、約75〜85%の胎児DNA、約85〜90%の胎児DNA、約90〜91%の胎児DNA、約91〜92%の胎児DNA、約92〜93%の胎児DNA、約93〜94%の胎児DNA、および約94〜95%の胎児DNAからなる群より選択される、胎児DNAおよび母体DNAを含む組成物を分析する段階を含む、出生前診断法。
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