高度なデジタルピクチャ処理システムは、通常、例えば、フレームレート変換、インタレース−プログレッシブ変換、雑音の低減、ピクチャエンハンスメント等の幾つかの個別の独立したモジュールから構成される。これらの各ブロックは、通常、最高の品質を達成するために、何らかの解析情報を必要とする。これらの解析ブロックは、多くの場合、それぞれの画像処理コンポーネントに統合されている。
したがって、ビデオ処理システムは、通常、1つのモジュールから出力される情報が次のモジュールに入力される等しく重要なモジュールのシーケンス又は結合体とみなすことができる。
また、純粋なアナログのビデオ受信機内でのアップコンバージョン及び雑音低減処理のために利用する動き推定器をハードウェアによって実現する手法も提案されている。これらの実現例の主な利点は、これらの2つの処理段において、一組の動きベクトルを導出し、利用するという点である。但し、この方式を使用できる状況は、圧縮されていないビデオ信号に制限される。
更に、MPEG−2符号化のために、動き推定の領域で真の動きベクトル(true-motion vector)を用いる手法も研究されている。しかしながら、これらの方式は、従来の設計では、通常、実現できない。フレーム間ビデオ圧縮を利用したシステムでは、多くの場合、グループオブピクチャ(group of picture:GOP)又はビデオオブジェクトプレーン(video object plane:VOB)内で、フィールド又はフレームの対の間でブロックマッチングを行う。
したがって、従来のビデオ信号処理システムでは、雑音低減、符号化及びフォーマット変換のための縦列接続された処理段において、最大3つの異なる動き推定器を採用している。上述のように、これらの動き推定器は、個別に動作し、如何なるリソースや情報も互いに共有しない。更に、動き推定器は、通常、異なる動き推定アルゴリズムに基づいており、このため、動き推定器によって生成された異なる動きベクトル情報によって、画質が劣化する。
このような劣化は、特に、ビデオ符号化の場合に顕著である。従来のフレーム間ビデオエンコーダは、グループオブピクチャ又はビデオオブジェクトプレーン内で動きを推定する。しかしながら、この手法では、フィールド又はフレームの間のオブジェクトの「真の」動きが推定されるわけではない。
更に、ノイズリデューサ、ビデオエンコーダ及びフォーマット変換器からなる従来のシステムでは、2つの異なるモジュールにおいて、少なくとも2回、すなわち送信機で一回、受信機で一回、動きを推定を行わなくてはならない。
そこで、本発明の目的は、システムリソースをより効率的に利用できるビデオ処理システム、ビデオ信号送信機及びビデオ信号受信機を提供することである。
この目的は、請求項1に定義される本発明に基づくビデオ信号処理システム、請求項10に定義される本発明に基づくビデオ信号送信機及び請求項17に定義される本発明に基づくビデオ信号受信機によって解決される。これらの好適な実施形態は、それぞれの従属請求項において定義されている。
本発明に係るビデオ信号処理システムは、特に全ての、受信ビデオデータに関するビデオ信号又はピクチャ解析処理を集積化及び/又は集中化された形式で実現するビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)を備える。更に、ビデオ信号処理システムは、特に全ての、受信ビデオデータに関するビデオ信号又はピクチャ処理を集積化及び/又は集中化された形式で実現するビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)とを備える。
本発明では、基本的に、単一のビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)内に各ビデオ信号又はピクチャ解析機能を集積化及び/又は集中化し、及び単一のビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)内に各ビデオ信号又はピクチャ処理能力を集積化及び/又は集中化する。
本発明の好適な実施形態においては、ビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)は、集積化及び/又は集中化された形式で動き推定及び/又はセグメント化を含む処理を行うビデオ信号又はピクチャ解析コンポーネントを備える。
これに加えて又はこれに代えて、ビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)は、集積化及び/又は集中化された形式で特定のフレームレート変換及び/又はピクチャ解析コンポーネントを含む処理を行うビデオ信号又は画像処理コンポーネントを備える。
好適な実施形態においては、ビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)と、ビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)とを接続し、ビデオメタデータの交換を可能にするビデオメタデータ伝送チャンネルを設ける。
換言すれば、本発明に基づくビデオ信号処理システムの実施形態は、本発明に基づくビデオ信号送信機及びビデオ信号受信機の間を接続するビデオ信号伝送チャンネルによって接続されるビデオ信号送信機及びビデオ信号受信機を備える。
本発明に基づくビデオ信号送信機は、入力ビデオ信号を解析し、これに対応するビデオ情報を、ビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)内の少なくとも1つのビデオ前処理段、及び/又はビデオ情報チャンネル又はビデオメタデータチャンネルを介して、ビデオ信号受信機内の少なくとも1つのビデオ信号処理段又はビデオ信号ピクチャ処理モジュール(VSPM)に供給する包括的解析モジュールとしてのビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)を備える。
本発明に基づくビデオ信号受信機は、ビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)から受け取ったビデオ情報に基づいて、ビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)から受け取ったビデオ信号を処理する処理モジュールとしての少なくとも1つのビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)を備える。
したがって、本発明では、例えば、雑音の低減、符号化及びフォーマット変換のためにビデオ信号を解析した結果であるビデオ情報を、各モジュール内だけではなく、モジュール境界を超えて利用でき、並びにビデオ情報は、ビデオ信号送信機からビデオ信号受信機に渡すこともできる。
本発明は、現在周知のシステムにおいて各コンポーネントに分散されているピクチャ解析処理ステップを集積化した、すなわち、包括的な解析に置換した構造を提供する。したがって、例えば、実際の補間の前にエッジの向きを決定するインタレース−プログレッシブ変換フィルタにおいて、空間的なマッチング処理が行われ、生成された結果は、次に、例えば、雑音低減コンポーネント又はフレームレート変換コンポーネントにおいて利用できる。
したがって、本発明により、高度なデジタルピクチャ処理システムの幾つかのモジュールが必要とする解析情報を、処理チェーンにおける他のモジュールでも用いることができ、すなわち、同様の解析処理ステップ(例えば、動き推定及び動き検出)を複数回実行する必要がなくなる。したがって、リソースを有効に活用することができる。
例えば、周知のシステムでは、動き推定処理の演算オーバヘッドが大きい。システム内の他のビデオ処理モジュールに比べて、動き推定器の相対的な複雑性考慮すると、この問題はより顕著になる。動き推定器は、多くの場合、最も複雑なモジュールであり、また、全体的な画質に強く関係する。
他の具体例は、システムによって用いられる雑音低減モジュールの品質に比例する、従来のシステムにおける雑音低減の演算オーバヘッドである。本発明では、システムに亘って、高品質の雑音低減を採用しながら、この雑音低減のためのピクチャ解析を集積的に実現することができる。
本発明に係るビデオ信号処理システムでは、ビデオ情報伝送チャンネルは、好ましくは、ビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)からビデオ信号受信機又はビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)にビデオメタデータを送信する順方向チャンネルを含む。
本発明に係るビデオ信号処理システムでは、ビデオメタデータは、更に好ましくは、ビデオ信号受信機側又はビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)の側でビデオ信号を処理するためのピクチャ解析情報を含む。
これに代えて又はこれに加えて、本発明に係るビデオ信号処理システムでは、ビデオ情報伝送チャンネルは、好ましくは、ビデオ信号受信機又はビデオ信号又はピクチャ処理モジュール(VSPM)からビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)にビデオ品質データを送信する逆方向チャンネルを含む。
更に好ましくは、本発明に係るビデオ信号処理システムでは、ビデオ品質データは、ビデオ信号送信機又はビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)からビデオ信号受信機又はピクチャ処理モジュール(VSPM)が受け取ったビデオメタデータへの各フィードバックを提供する。
これに代えて又はこれに加えて、本発明に係るビデオ信号処理システムでは、更に好ましくは、品質データは、ビデオ信号送信機側で又は上記ビデオ信号又はピクチャ解析モジュール(VSAM)の側でビデオ信号を前処理するための画質情報を含む。
本発明に係るビデオ信号送信機において、包括的解析モジュールは、好ましくは、動き評価器及び/又はエッジ検出器及び/又は雑音測定ユニット及び/又はフィルムモード検出器及び/又はヒストグラム計算ユニット及び/又はブロック検出器及び/又はセグメント化器を備える。
これに代えて又はこれに加えて、本発明に基づくビデオ信号送信機では、包括的解析モジュールは、好ましくは、ビデオ情報をビデオメタデータに符号化するビデオメタデータエンコーダを備える。
更にこれに代えて又はこれに加えて、本発明に基づくビデオ信号送信機では、包括的解析モジュールは、受信した画質情報に基づいて、解析性能を向上させるようにパラメータ設定を適応化する。
本発明に基づくビデオ信号送信機において、少なくとも1つのビデオ前処理段は、好ましくは、ビデオ情報を受け取り、ビデオ信号をビデオ信号受信機に送信する前に、受信したビデオ情報に基づいて、入力ビデオ信号を前処理する。
この場合、本発明に基づくビデオ信号送信機において、少なくとも1つのビデオ前処理段は、好ましくは、ノイズリデューサ及び/又はビデオエンコーダを備える。
更にこの場合、本発明に基づくビデオ信号送信機では、これに代えて又はこれに加えて、少なくとも1つのビデオ前処理段は、好ましくは、ビデオメタデータデコーダを備える。
本発明に基づくビデオ信号受信機では、少なくとも1つの処理モジュールは、好ましくは、受信したビデオメタデータからビデオ情報を復号するビデオメタデータデコーダを備える。
これに代えて又はこれに加えて、本発明に基づくビデオ信号受信機では、少なくとも1つの処理モジュールは、好ましくは、ビデオ情報へのフィードバックとして、ビデオ信号送信機に画質情報を提供する。
これに代えて又はこれに加えて、本発明に基づくビデオ信号受信機では、少なくとも1つの処理モジュールは、好ましくは、ビデオフォーマット変換器及び/又はフレームレート変換器及び/又はインタレース−プログレッシブ変換器及び/又はノイズリデューサ及び/又はピクチャ改善ユニット及び/又はデブロッキングユニットを備える。
本発明に基づくビデオ信号処理システム、ビデオ信号送信機及びビデオ信号受信機の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照した以下の例示的な実施形態の説明によって明らかになる。
まず図1のブロック図を参照して、本発明の基本的な原理を説明する。本発明に基づくビデオ処理システムは、集積的及び/又は集中的な形式で、受信ビデオデータVinに関する全てのビデオ信号又はピクチャ解析処理を実現するビデオ信号又はピクチャ解析モジュールVSAMを備える。更に、ビデオ処理システムは、集積的及び/又は集中的な形式で、受信ビデオデータVinに関する全てのビデオ信号又はピクチャ処理を実現するビデオ信号又はピクチャ処理モジュールVSPMを備える。
本発明に基づくデジタルピクチャ処理システムは、好ましくは1つの解析部分及びピクチャ処理部分に区分され、各部分は、集積化されている。図2は、本発明に基づくシステムの第1の好適な実施形態の概要を示している。
入力ビデオデータは、中央ピクチャ解析ブロック1に供給され、更に任意の順方向チャンネル3を介して、ピクチャ処理ブロック2に供給される。中央ピクチャ解析ブロック1及びピクチャ処理ブロック2の間でピクチャ解析の結果を伝送するための通信は、ビデオメタデータプロトコル(Video Meta Data Protocol:VMDP)によって組織化された全ての利用可能なピクチャ解析情報を含むビデオメタデータストリームを介して行われる。ビデオメタデータは、ビデオデータに同期し、ビデオメタデータストリームも順方向チャンネル3を通過する。
図2は、解析ブロック1及びピクチャ処理ブロック2が必ずしも受信機内にある必要はなく、すなわち、必ずしも伝送チャンネル、ここでは、順方向チャンネル3の同じ側に存在する必要はないことを示している。また、図2に示すように、作成/送信側においてピクチャ解析を実行し、全ての解析情報をビデオメタデータとして、伝送チャンネルを介して送信してもよい。
更に、図2に示すシステムは、処理コンポーネントであるピクチャ処理ブロック2から解析コンポーネントである解析ブロック1へのバックパス、すなわち、逆方向チャンネル4を備えていてもよい。この逆方向チャンネル4は、改良されたピクチャの品質に関する情報又は解析情報の品質に関する情報を搬送してもよい。解析コンポーネントは、この情報に応じて、処理を向上させるようにパラメータ設定を適応化することができる。
図3は、解析ブロック1の構成を示している。解析ブロック1は、VMDPエンコーダ12と、例えば、動き推定器5、エッジ検出器6、雑音測定ユニット7、フィルムモード検出器8、ヒストグラム構築ユニット9、ブロック検出器10、セグメント化器11等の、全てがビデオ信号及び品質情報を受け取る複数の解析コンポーネントとを備える。また、この他の解析コンポーネントを設けてもよい。また、1つの解析コンポーネントは、他の解析コンポーネントの解析の結果を利用してもよい。高い品質が望まれない場合には、幾つかのコンポーネントを省略してもよい。また、品質及びコストに関する要求に応じて、より簡単な又はより高度なアルゴリズムを適用してもよい。VMDPエンコーダ12は、完全な解析情報(また、ビデオ情報とも呼ばれる。)を収集し、ビデオメタデータプロトコルに基づいて、この情報をビデオメタデータに含ませる。ある部品を省略する場合、それぞれの情報を搬送するプロトコル部分は、デフォルト値に設定してもよく、例えば、動き推定器を省略する場合、ベクトルの値をゼロに設定してもよい。
図4は、ピクチャ処理ブロック2のブロック図を示している。ピクチャ処理ブロック2は、VMDPデコーダ13と、例えば、フレームレート変換器14、インタレース−プログレッシブ変換器15、ノイズリデューサ16、ピクチャ改善ユニット17、デブロッキングユニット18等の処理コンポーネントとを備える。ピクチャ処理ブロック2のスケーラビリティは、解析ブロック1と同様である。VMDPデコーダ13は、プロトコルに基づいてメタデータを復号し、ピクチャ処理モジュールにメタデータを転送する。
ビデオシステムの異なる複数のビデオ処理段において共通の1つの動き推定器を用いることにより、各処理段における時間的予測の調和を実現する、図5〜図7に示す本発明に基づく第2の実施形態を用いて、本発明の基本的な発想を更に詳細に説明する。
本発明に基づく第2の実施形態を適用できる、対応する一般的なビデオシステムを図5に示す。入力ビデオ信号は、ノイズリデューサ19に供給され、ノイズリデューサ19は、雑音を低減したビデオ信号をビデオエンコーダ20に供給する。ビデオエンコーダ20は、符号化したビデオ信号をマルチプレクサ22に供給する。マルチプレクサ22には、オーディオエンコーダ21を介して、オーディオ信号も入力されている。マルチプレクサ22は、両方の入力信号、すなわち、雑音が低減され、符号化されたビデオ信号及び符号化されたオーディオ信号を多重化し、多重化された信号を任意のチャンネル23を介して、デマルチプレクサ24に供給する。また、マルチプレクサ22及びデマルチプレクサ24は、設けなくてもよい。デマルチプレクサ24は、符号化されたビデオ信号及び符号化されたオーディオ信号を逆多重化し、逆多重化された信号をそれぞれのデコーダに供給し、すなわち、符号化されたビデオ信号をビデオデコーダ25に供給し、符号化されたオーディオ信号をオーディオデコーダ26に供給する。オーディオデコーダ26は、復号されたオーディオ信号を出力し、ビデオデコーダ25は、フォーマット変換器27を介して、復号されたビデオ信号を出力する。
本発明に基づく包括的解析モジュール、この具体例では、好ましくは真の動きベクトルを生成する動き推定器は、解析結果、すなわち、ビデオ情報、ここでは(真の)動きベクトルをビデオ処理システム内の異なる処理段に渡す。この処理段には、図5に示すノイズリデューサ19、ビデオエンコーダ20、フォーマット変換器27等が含まれる。これらの処理段は、以下の機能を有する。
ノイズリデューサ19:時間フィルタ及びオプションの空間フィルタを適用することによって、アナログ入力信号の雑音を低減させる。
ビデオエンコーダ20:空間的及び時間的な方向にビデオ信号を圧縮する。
フォーマット変換器27:所望の出力フォーマットに一致するようにビデオ信号のフォーマットを変換する。これは、プログレッシブ方式のディスプレイ装置への信号の出力を含む。
図5に示す構成は、単一の装置として設計してもよい。
本格的な(full-blown)ビデオ処理システムは、これらの処理段の全てを同時に用いる。図5は、このようなシステムの具体例、すなわち、ノイズリデューサ19、ビデオエンコーダ20及びフォーマット変換器27を備えるパーソナルビデオレコーダ(personal video recorder:PVR)型の適用例を示している。このシステムには、アナログ信号が入力される。第1のステップでは、信号の雑音がフィルタリングされる。第2のステップでは、例えば、フレーム間符号化を適用することによって、信号を符号化する。ビデオエンコーダの出力は、任意のオーディオエンコーダの出力に多重化され、これにより、トランスポート/プログラムストリームが生成される。多重化されたストリームは、記録媒体に保存した後にデマルチプレクサ24に供給してもよく、デマルチプレクサ24は、ビデオデータ及びオーディオデータを2つの個別のストリーム及びプライベートストリームに分割する。ビデオデータストリームは、ビデオデコーダ25に入力される。ビデオデコーダ25は、ベースバンドビデオ信号を復元する。ビデオデコーダ25の出力は、最終的に、フォーマット変換器27において、システムの所望の出力フォーマットに変換される。同様に、オーディオストリームは、オーディオデコーダ26に入力され、オーディオデコーダ26は、ストリームを復号し、圧縮されていないオーディオデータを出力する。
本発明では、様々なビデオ処理段階で共通の動きベクトルの組を用いる。高品質なビデオノイズリデューサ及びビデオフォーマット変換器は、ビデオシーケンス内の動くオブジェクトを追跡するための技術として、通常、動き補償を用いる。ビデオ符号化アルゴリズムも、フレーム間予測を利用する場合、動き補償に基づいている。本発明が提案するシステムは、共通の動き推定器を使用し、導出された動きベクトルを、処理ルーチンの一部として動き推定を適用する様々なモジュールに供給する。
図6は、動き推定を行い、動きベクトルを配布するPVR型の適用例として提案する構成のブロック図を示している。システムの中心には、共通の動き推定器28がある。この動き推定器28は、ノイズリデューサ19、ビデオエンコーダ20及びビデオフォーマット変換器27に動きベクトルを供給する。この具体例では、空間的ノイズリデューサ19aと、動きベクトルを受け取る時間的ノイズリデューサ19bとから構成されるノイズリデューサ19と、ビデオフォーマット変換器27とには、これらのベクトルが直接入力される。
動きベクトルがビデオエンコーダ20に供給される場合、任意の動きベクトル高精度化ユニット(motion vector refinement unit)29によって、動きベクトルのベクトル品質を向上させてもよい。この処理は、符号化段、すなわち、ビデオエンコーダ20に適切な動きベクトルを生成するために、動きベクトルを高精度化する処理を含む。したがって、ビデオエンコーダ20は、連続するフィールド間で動きベクトルを使用し、GOP/VOP内のフィールド又はフレームの対の間では、動きベクトルに依存しない。動きベクトルの高精度化は、動き推定器に統合してもよく、又は図6に示す動きベクトル高精度化ユニット29のように、独立したモジュールとして加えてもよい。高精度化された動きベクトルは、ビデオシンタクス(video syntax)の一部になり、ビデオエレメンタリストリームに挿入される。
動き補償されたノイズリデューサ19は、アナログ信号をフィルタリングする。時間的ノイズフィルタ19bは、動き推定器28によって生成された動きベクトルを直接利用する。ノイズリデューサ19は、空間フィルタ19aも適用できる。ここに提案するシステムの1つの利点は、アナログビデオ信号に対して単一のノイズリデューサ19を用いることである。
ビデオフォーマット変換器27は、ビデオデコーダ25の後段に設けられているので、ビデオベースバンド信号を復元した後、フォーマット変換のための動きベクトルをローカルに保存してもよく、又は伝送チャンネル23を用いる場合は、動きベクトルを受信機に送信してもよい。ストレージ又は伝送の際には、これらの動きベクトルのデータサイズを最小化することが望ましい。したがって、動きベクトルエンコーダ30によって、例えば、可変長符号化(variable length encoding:VLE)又はこれとランレングス符号化(run-length coding:RLC)とを組み合わせた可逆データ圧縮技術を用いて、動きベクトルを圧縮してもよい。可逆データ圧縮技術では、通常、データサイズを約1/6に削減することができる。ここに提案するシステムの利点の1つは、多くのビデオコーデック(エンコーダ/デコーダシステム)が可変長符号化/復号(VLX)のためのコプロセッサを含む点である。このコプロセッサを用いることにより、ビデオ符号化及び動き推定ベクトル符号化を効率的に実現することができる。コプロセッサは、メインプロセッサの処理と並列して実行することができる。すなわち、VLX演算は、アイドリング中のコプロセッサにおいて行われるため、メインプロセッサの演算負荷は大きくならない。
一旦、動きベクトルが圧縮されると、これらの動きベクトルは、ビデオエレメンタリストリーム及び任意のオーディオエレメンタリストリームとともに、プライベートストリームデータとして、伝送/保存ビットストリームに多重化される。1ビデオフレームあたりの動きベクトルの最大数は既知であるので、1ビデオフレームに割り当てられるビット数の上限を算出することができる。例えば、PAL信号に16×16ブロックサイズの動き推定処理を適用した場合、実効データレートは、約100kbpsになる。この上限は、このプライベートストリームのための固定ビットレートを導出するために用いることができる。多重化されたストリームのビットレートは、トランスポート層における追加的なプライベートストリームのために、僅かに高くなる。多重化されたストリームは、ローカルに保存してもよく、又は受信機に送信してもよい。ここに提案するシステムは、同時に複数のビデオストリームを扱うように拡張することができる。このシステムは、複数のトランスポート/プログラムストリームを出力してもよく、又は全てのストリームを単一の多重化されたストリームに結合してもよい。
もちろん、本発明の第1の実施形態との組合せも可能であり、この場合、VMDPエンコーダを用いて、圧縮された又は圧縮されていない動きベクトルを符号化する。
図7に示すように、デコーダ側では、デマルチプレクサ24によって、トランスポート/プログラムストリームを逆多重化する。デマルチプレクサ24の各出力、すなわち、動きベクトルを搬送するプライベートストリーム、符号化されたビデオ信号及び符号化されたオーディオ信号は、各デコーダすなわち、動きベクトルデコーダ31、ビデオデコーダ25、及びオーディオデコーダ26に供給される。フォーマット変換器27のための圧縮された動きベクトルを含むプライベートストリームは、この場合伸張器の機能も有するビデオデコーダ25に入力される。理想的には、可変長復号(VLD)は、ビデオデコーダ25と同じリソースを利用する。フォーマット変換器27は、ビデオデコーダ25によって復号されたベースバンドビデオ信号に伸張された動きベクトルを適用する。エンコーダ側と同様に、VLDは、メインプロセッサにおけるフォーマット変換処理と並列に実行することができる。
ここに提案するシステムは、PVR型の適用例に最適なシステムである。このような適用例の構成は、図5に示すブロック図に正確に一致する。ビデオ信号は、ライブモードにおいても、常に符号化され、続いて復号される。なお、図5を用いて説明した実施形態の様々な部分の組み合わせも本発明の範囲内にある。例えば、エンコーダ/デコーダブロック20、25を備えないビデオシステムも本発明の範囲内にある。更に、符号化処理は、放送業者側で適用してもよく、これにより、ビデオエレメンタリストリームを含む圧縮されたデジタルストリームと、真の動きベクトル情報を含む関連する補足的なプライベートストリームとが受信機側に提供される。
本発明に基づく手法の利点は、同じ処理ステップを複数回実行しなくてもよいという点である。これにより、システムの演算負荷が減少し、又は演算リソースを集中できる。また、これにより、システムリソースは、より効率的に利用され、例えば、真の動きベクトルを生成する共通の動き推定器を利用することにより、画質を改良できる。また、冗長な処理ステップをスキップし、例えば、符号化のための単一の共通の動き推定器及び共通のフォーマット変換器を用いる等、リソースを共有し、すなわち、部品が少なくなり、システム全体がより単純化されるため、システムコストを削減できる。
更に、本発明では、全ての画像処理コンポーネントにおいて、完全な解析情報を利用でき、また、例えば、異なるビデオ処理段において使用される動きベクトル情報の調和によって、全体の画質が改善される。多くの場合、画像処理コンポーネントは、その性質に応じて、全ての情報を利用してもよく、一部の情報のみを利用してもよい。これにより、これまでアクセスできなかった解析情報を利用できるようになるため、実現可能な画質を向上させることができる。
更に、このシステムでは、ピクチャ処理モジュールを変更することなく、幾つかの解析コンポーネントからの分岐が可能であるため、このシステムは、スケーラビリティが高い。このため、中間的な又は低い画質のみが期待されるような機器のための処理チェーンも容易に設計及び実現することができる。これにより、発売までの期間を短縮することができる。
更に、本発明では、例えば、ノイズ削減及びフォーマット変換処理に必要な動き推定等の演算負荷をクライアント側からサーバ側に移行できる。
具体例として、ハイエンドの100Hzのテレビジョン受像機は、動き補償されたフレームレート変換を必要とし、中間的な又はローエンドのテレビジョン受像機は、適応型又は固定のアップコンバージョンで動作できる。ここで、(高価な)動き推定器を省略する場合、VMDPエンコーダは、プロトコルの動きベクトル部分をゼロベクトルに設定してもよい。この場合、フレームレート変換器は、固定のアップコンバージョンを実行する。この場合、DSP上で動作するソフトウェアとして実現される画質向上システムにアドオンされるハードウェアコンポーネントである動き推定器は、ソフトウェアによるインプリメンテーションに変更を加えることなく、省略することができる。
本発明の適用範囲は、アナログビデオ処理システム、混合的な(アナログ/デジタル)ビデオ処理システム、デジタルビデオ処理システムを包含する。本発明は、ローカルエンコーダ及びリモートエンコーダ(例えば、放送業者)を備えるシステム、並びに統合された又は分離されたエンコーダ/デコーダ(コーデック)システムをサポートする。
本発明は、新たな画像処理システムを提案する。このシステムでは、動き推定やセグメント化等の全てのピクチャ解析コンポーネントは、単一のピクチャ解析モジュールに集積化される。また、フレームレート変換や画質向上等の全ての画像処理コンポーネントは、好ましくは、中央の画像処理モジュールに集積化される。解析情報は、ビデオメタデータストリームとともに伝送される。この集積化により、演算負荷が軽減され、冗長な処理ステップが省略され、全ての画像処理コンポーネントが解析情報を利用できるようになる。このシステムでは、他の各モジュールを変更することなく、解析/画像処理コンポーネントの部分を省略し又は変更することができるため、このシステムはスケーラビリティが高い。これにより、画質を自在に向上させ又は低下させることができる。