JP2006510808A - 厚板の加工による構造要素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、加工金属部材の製造方法に関するものであり、該製造方法は、金属板の製造、前加工された素材を得るための前記板金の片面または両面の前加工、前加工された前記素材の溶体化処理、必要に応じてそれに制御引張が続く焼き入れ処理を備えている。かかる部材は、航空機建造の構造要素として用いることができる。
Description
本発明は、厚板の加工による熱処理合金製、とりわけアルミニウム合金製の構造要素の製造に関するものである。これらの構造は、航空機建造に用いることができる。
優れた機械強度を特徴とする構造要素の製造方法を得るために、二つの異なるアプローチが現在おもに用いられている:
第一のアプローチによれば、構造要素の最終使用に対応する冶金学的組織にある、典型的に厚みが10mmと40mmの間に含まれる金属板(ここでは「中厚板」と呼ぶ)を用いて、例えば「T字形」断面の形材などの引抜き形材によって構成された補剛材を、例えばリベット止めで固定して、それらを補剛させる。
第二のアプローチによれば、同じく構造要素の最終使用に対応する冶金学的組織にある、もっと厚い、典型的には厚みが30mmと200mmの間に典型的に含まれる金属板において、直接補剛材を加工する。
標準的な金属板と形材の組立による構造要素の実現は、きわめて多数のリベット止め作業を必要とし、この作業は、航空機の構造要素に必要な信頼条件で実現され、コストが高くなる。厚板の加工によって組み込まれた構造要素の実現はたしかにはるかに多くの金属を消費するものであり、なぜなら厚板の大部分が切削屑になってしまうからである、しかし反対に高価なリベット止め作業を最小限にすることができる。
毎分5000〜15000回転程度の高速加工技術(high speed machining)が利用できると、構想モード選択の経済的データが大幅に変わる、なぜなら加工作業時間が大幅に短縮されると同時に、経済的に利用可能な条件でますます複雑な形状の加工を計画することができるためである。これは、およそ1メートルのサイズの部材だけでなく、長さが20mを超え、幅が3mを超えるようなきわめて大きなサイズの部材にも当てはまる。
しかしながら、第二のアプローチには他の不都合がある。加工前の厚板は、加工前にその最終使用に対応する冶金学的組織にあるものであり、なぜなら現状技術によれば、加工後に熱処理は実施されないためである。
より詳細には、この最終冶金学的組織は溶体化と焼き入れによって得られた。しかるに、二つの物理的メカニズムが厚板における焼き入れ速度を制限する:すなわち、前記厚板を構成する材料の熱伝導率、および金属板の表面と焼き入れ媒質との間の熱交換、である。その結果、焼き入れされた厚板の機械的特性は、厚みに応じて変化する。
このため、いくつかの機械的特性値は金属板の表面から遠ざかるにつれて低下する。現状技術によれば、したがって、加工は焼き入れされた金属板がもっとも優れた機械的特性値を示す区域を除去し、使用条件において構造要素に応力を加えると金属板の初期表面に近い区域に対する深さに応じて機械特性がかなり変動することがある金属部分を働かせることになる。構造物の計算は、念のために、部材の現実の性能のかなり保守的なモデルに基づいて実施され、前記モデルは典型的には表面から離れ、したがって、一番低い機械的特性値を示す金属板の区域の機械的特性値に基づいている。このことは、部材の寸法決定の際に、材料の真の特性のもっともよい部分を引き出すことを妨げる。
現状技術のこの製造方法のもう一つの不都合は、焼き入れされた強い金属板が、制御引張の後でさえも、残留応力を閉じ込め、それが加工の際に部材の変形を引き起こしうることである。
第三のアプローチによれば、引抜きによって直接組み込まれた補剛材で構造要素を製造する。このアプローチにはいくつかの不都合があり、ほとんど用いられない。十分大きな幅の形材を得るためには、開発コストがきわめて高い非常に強力な引抜きプレスを用いなければならない。
このようにして達することができる最大幅は、通常の圧延板の幅よりはるかに低いままである。他方で、いくつかの合金は引抜きに適合しない。そして最後に、引抜き部材の、とくに引抜き形材の微小構造は形材の断面でも、形材の長さ方向でも均質ではない。
製品のひずみまたはその機械的特性を制御するためにさまざまな手段が提案された。
複数の特許が、製品の焼き入れの際に冶金製品の変形を最小にするために焼き入れ方法を最適化することを目指している。これらの方法は、一般的に焼き入れの際の非均質冷却材によって変形を補正することを目指している。
独国特許発明第955042号明細書(Friedrichshutte Aktiengesellschaft)は、金属板の縁が中心より強く冷却され、そして下面が上面より強く冷却される、水平焼き入れ方法を記載している。
欧州特許第578607号明細書は、水噴射ノズルの個別制御または集団制御によって、引抜き形材焼き入れ方法を最適化しようとしている;コンピュータ制御のかかる装置は、ノズルの位置をそれぞれの形材に適合させることを原則として可能にするが、その開発は、経験的なものにとどまっている。欧州特許第695590号明細書は、金属板の焼き入れについて同様な考えを展開している。
国際公開第98/42885号パンフレット(Aluminum Company of America)は、焼き入れの際の薄板の変形を減らし、またその静的な機械的特性値を向上させるために、水焼き入れと空気焼き入れの組み合わせ方法を記載している。
仏国特許発明第1503835号明細書(原子力委員会)は、焼き入れ媒質の気化を押さえる、熱伝導率の低い薄膜を適用することにより、低温液体内に部材を浸漬するときの焼き入れ速度を上げることを提案している。
仏国特許発明第2524001号明細書(Pechiney Rhenalu)は、製品のいくつかの面にその下の材料よりも熱伝導率が低い被覆を付けることを提案している。冷却速度の制御をこのように向上させることで、製品の使用特性の劣化を避けることができるだろう。この出費のかさむ方法には、いくつもの不都合がある。これは、厚みがほぼ一定の金属板または形材に限定される;アルミニウム合金の場合、この厚みは約15mmを超えてはならない。この特許で提案された被覆は、焼き入れ液槽を汚染するおそれがある。
その他のアプローチは、焼き入れに対するアルミニウム合金の感度を低下させることを目指している。
これらの方法のどれも、焼き入れの際に存在する熱勾配に結びつけられる厚みに応じた機械特性の変動の問題を解決していない。
独国特許発明第955042号明細書
欧州特許第578607号明細書
欧州特許第695590号明細書
国際公開第98/42885号パンフレット
仏国特許発明第1503835号明細書
仏国特許発明第2524001号明細書
本発明は、静的な機械的特性値(弾性限界、引張強度、破断伸び)と部材の体積内の損傷許容差(とくに靱性)との間の妥協を向上させ、焼き入れの際に発生するひずみを最小にすることが可能で、とくに有利な開発コストで実施することのできる、構造要素として用いるのに適した加工金属部材、または、かかる部材のための素材の新規な製造方法を提示することを目的とする。
製造方法の切り離された過程を向上させようとする代わりに、本出願人は、寸法許容差に優れ、機械的特性値が向上した、大寸法加工構造要素を厚板から製造することを可能にする新規な統合的方法を発明した。
本発明は、現状技術の方法によって製造された類似の形状の部材と比較して、静的な機械的特性値(通常弾性限界、破断伸び、引張強度)の最小値と損傷許容差の間の妥協が向上した加工部材を得ることを可能にする新たな製造方法を提案する。本発明の変形例において、部材内での機械的特性値の変動は、現状技術の方法によって作製された類似の形状の加工部材に対してより小さいものである。
本発明の第一の目的は、下記から成る加工金属部材の製造方法であり、
a)下記から成る方法による金属板の製造
a1)圧延プレートの鋳造と、必要に応じてそれに均質化が続き、
a2)金属板を得るために、必要に応じて一回または複数回の再加熱作業によって分離された、一回または複数回の熱間または冷間圧延作業、
a3)必要に応じて、一回または複数回の金属板の裁断または仕上げ作業、
b)前加工された素材を得るための、前記金属板の片面または両面の前加工、
c)前記前加工された素材の溶体化処理
d)焼き入れ処理
とから成ることを特徴とする製造方法である。
a)下記から成る方法による金属板の製造
a1)圧延プレートの鋳造と、必要に応じてそれに均質化が続き、
a2)金属板を得るために、必要に応じて一回または複数回の再加熱作業によって分離された、一回または複数回の熱間または冷間圧延作業、
a3)必要に応じて、一回または複数回の金属板の裁断または仕上げ作業、
b)前加工された素材を得るための、前記金属板の片面または両面の前加工、
c)前記前加工された素材の溶体化処理
d)焼き入れ処理
とから成ることを特徴とする製造方法である。
必要ならば、この製造方法に下記の一つまたは複数の過程が続く
e)制御引張
f)焼き戻し
g)裁断。
e)制御引張
f)焼き戻し
g)裁断。
第二の目的は、航空機建造において構造要素として、前記製造方法によって得られた機械部材の使用である。
第三の目的は、前記製造方法によって得られた、航空機建造のためのアルミニウム合金製構造要素である。
図1は、実施例1に説明するごとく、本発明によって前加工した厚板の寸法とサンプリング図を示す。
図2は、製品の機械的特性の特性測定に用いられた試験片を示す。
図3と4は、本発明によって前加工された素材を概略的に示す。
図5は、実施例2に説明するごとく、前加工された厚板の形状と、前加工された(図5a)あるいはされていない(図5b)厚板のサンプリング図を概略的に示す。
図6は、実施例3に説明するごとく、前加工された厚板の形状と、前加工された(図6a)あるいはされていない(図6b)厚板のサンプリング図を概略的に示す。
図2は、製品の機械的特性の特性測定に用いられた試験片を示す。
図3と4は、本発明によって前加工された素材を概略的に示す。
図5は、実施例2に説明するごとく、前加工された厚板の形状と、前加工された(図5a)あるいはされていない(図5b)厚板のサンプリング図を概略的に示す。
図6は、実施例3に説明するごとく、前加工された厚板の形状と、前加工された(図6a)あるいはされていない(図6b)厚板のサンプリング図を概略的に示す。
a)用語
特記事項なき限り、合金の化学組成に関する全ての記載は質量パーセントで表される。結果として、数式において「0.4Zn」は、質量パーセントで表した亜鉛含有率0.4パーセントを意味し、これは、変えるべきところを変えて、他の化学元素にも適用される。合金の命名は、当業者には周知のアルミニウム協会の規則に従う。冶金学的組織は、欧州規格EN515に定義される。規格化されたアルミニウム合金の化学組成は例えば、EN規格573−3によって定義される。特記事項なき限り、静的な機械的特性値、すなわち破断強度Rm、弾性限界Rp0.2および破断伸びAはEN規格10002−1による引張試験によって決定され、試験片の採取場所と方向はEN規格485−1に定義されている。靱性KICは規格ASTM E399によって測定された。曲線Rは、ASTM 561−98によって決定される。曲線Rから、臨界応力強度係数、すなわちひび割れの不安定性を引き起こす強度係数KCが計算される。単調負荷の始めに、ひび割れ初期長さを臨界負荷に充てて、応力強度係数KCOも計算する。これらの二つの値は、任意の形状の試験片について計算される。Kappは、曲線R試験をするのに用いられた試験片に対応するKCOを示す。耐剥離腐食性は、規格ASTM G34−72に記載されたEXCO試験によって決定した。
特記事項なき限り、合金の化学組成に関する全ての記載は質量パーセントで表される。結果として、数式において「0.4Zn」は、質量パーセントで表した亜鉛含有率0.4パーセントを意味し、これは、変えるべきところを変えて、他の化学元素にも適用される。合金の命名は、当業者には周知のアルミニウム協会の規則に従う。冶金学的組織は、欧州規格EN515に定義される。規格化されたアルミニウム合金の化学組成は例えば、EN規格573−3によって定義される。特記事項なき限り、静的な機械的特性値、すなわち破断強度Rm、弾性限界Rp0.2および破断伸びAはEN規格10002−1による引張試験によって決定され、試験片の採取場所と方向はEN規格485−1に定義されている。靱性KICは規格ASTM E399によって測定された。曲線Rは、ASTM 561−98によって決定される。曲線Rから、臨界応力強度係数、すなわちひび割れの不安定性を引き起こす強度係数KCが計算される。単調負荷の始めに、ひび割れ初期長さを臨界負荷に充てて、応力強度係数KCOも計算する。これらの二つの値は、任意の形状の試験片について計算される。Kappは、曲線R試験をするのに用いられた試験片に対応するKCOを示す。耐剥離腐食性は、規格ASTM G34−72に記載されたEXCO試験によって決定した。
特記事項なき限り、欧州規格EN12258−1の定義が適用される。このEN規格12258−1の用語とは反対に、ここで「薄板」と呼ぶのは厚みが6mmを超えない金属板、「中厚板」は厚みが6mmと約20〜30mmの間に含まれる金属板、「厚板」は厚みが典型的には30mmを超える金属板である。
「加工」という用語は、旋盤加工、フライス加工、穿孔、中ぐり加工、タッピング加工、放電加工、研削、研磨などのあらゆる材料切除方法を含む。
「構造要素」という用語は、静的および/または動的機械的特性値が構造の性能と健全性にとって特に重要であり、構造計算が規定または実施される機械的構造に用いられる要素を意味する。これは、典型的には欠陥があれば、前記構造の、その使用者、その利用者その他の安全を危険にするおそれのある機械部材である。
航空機の場合、これらの要素にとくに含まれるのは胴体を構成する要素(胴体の外被(英語でfuselage skin)、胴体の補剛材または縦通材(stringers)、気密隔壁 (bulkheads)、胴体枠(circumferential frames)、翼(翼面の外被など(wing skin)、補剛材(stringersまたはstiffeners)、肋材(ribs)または翼桁(spars))およびとりわけ水平および垂直安定翼(horizontal or vertical stabilisers)で構成された尾部、ならびに床の形材(floor beams)、座席レール(seat tracks)と扉である。
b)本発明およびいくつかの特定の実施態様の説明
本発明によれば、続いてその中に所期の機械部材が加工される厚板ではなく、すでに前加工された素材を焼き入れすることによって問題は解決される。前加工によって所期の最終形状に多少とも近い形状に到ることができる。
本発明によれば、続いてその中に所期の機械部材が加工される厚板ではなく、すでに前加工された素材を焼き入れすることによって問題は解決される。前加工によって所期の最終形状に多少とも近い形状に到ることができる。
本発明の推奨実施態様において、この前加工素材は一つまたは複数の溝で構成される断面形状を呈する。これらの溝は圧延方向に平行とすることができるが、また他の方向でも可能であり、例えば、対角線上に方向付けることができる。焼き入れ後に引張を実施しようとするのであれば、この形状は有利には圧延方向に平行であり、その長さにわたってほぼ一定であるが、他のタイプの断面形状も可能である。
焼き入れの際に、素材は水平位置、垂直位置、または他のいっさいの位置を取ることができる。焼き入れは焼き入れ媒質内への浸漬、灌水、あるいは他のいっさいの適切な手段で実現することができる。前記焼き入れ媒質は、水またはグリコールなどの他の媒質とすることができる:その温度は、室温(約20℃)が適切であるとして、その固化点とその沸騰点の間で選択することができる。
本発明による製造方法は、
a)下記から成る方法による金属板の製造
a1)圧延プレートの鋳造と、必要に応じてそれに均質化が続き、
a2)金属板を得るために、必要に応じて一回または複数回の再加熱作業によって分離された、一回または複数回の熱間または冷間圧延作業、
a3)必要に応じて、一回または複数回の金属板の裁断または仕上げ作業、
b)前加工された素材を得るための、前記金属板の片面または両面の前加工、
c)前記前加工された素材の溶体化処理
d)焼き入れ処理
とから成る。
a)下記から成る方法による金属板の製造
a1)圧延プレートの鋳造と、必要に応じてそれに均質化が続き、
a2)金属板を得るために、必要に応じて一回または複数回の再加熱作業によって分離された、一回または複数回の熱間または冷間圧延作業、
a3)必要に応じて、一回または複数回の金属板の裁断または仕上げ作業、
b)前加工された素材を得るための、前記金属板の片面または両面の前加工、
c)前記前加工された素材の溶体化処理
d)焼き入れ処理
とから成る。
このようにして得られた素材は下記の一つまたは複数の過程にかけることができる:
e)制御引張
f)焼き戻し
g)裁断。
e)制御引張
f)焼き戻し
g)裁断。
過程a)からd)によって示したこの方法が終わったとき、すなわち焼き入れの後、また有利には制御引張の後(引張したとき)および焼き戻しの後(焼き戻ししたとき)、前加工された素材は加工金属部材を得るために他の加工作業にかけることができるが、素材の形状は所期の加工部材のそれに適合するものとする。他方で、素材の前記溝の形状は素材の焼き入れ変形を最小にし、最終加工部材の機械的特性値を最適化するように選択しなければならない。素材の二つの面のうちの一つは平坦であることが望ましい。この場合、水平焼き入れの際に、金属板の加工された溝が下に向けられることが望ましい。
たいていの場合、前加工された素材を制御引張にかけることが必要になるものである。このため、有利には、引張チャックが正確にかめるように、素材の前加工の際に、金属板の始めと終わりで50mmと1000mmの間に含まれる、好適には50mmと500mmの間に含まれる長さに加工された溝がなく、ほぼ一定の厚みを有するようにする(加工された溝がないこの部分は「かかと部」と呼ばれる)。前記引張は有利には、0.5%と5%の間に含まれる永久伸びに到るように実施される。この永久伸びには1.0%を超えるか、さらには1.5%を超える最小値が望ましい。引張時間の少なくとも一部の間、例えば、必要に応じて金属板の面の上を長手方向に移動することができる一つまたは複数のローラを金属板に押し付けることによって、金属板の面の少なくとも一つに対して横断方向の押圧を維持することができる。このことは、加工されていない金属板について、本出願人の米国特許第6 216 521号明細書に記載されている。
素材の制御引張を含む推奨実施態様において、前記素材は有利にはかかと部と加工された溝を有する中央区域の間に、その厚みが、かかと部から加工された溝を有する中央区域に向かって減る、移行的区域を含んでいる。有利には、このかかと部と移行的区域は、例えば、鋸引きまたは剪断によって機械的に切り落とされること、あるいは、レーザービームまたは液体噴射などの他の既知の手段によって、制御引張の後に端が切り落とされる。しかし例えば、構造要素の組立を容易にするために、このかかと部を少なくとも部分的に保存することもできる。
本発明による製造方法は、有利には構造硬化金属合金製の金属板に、とりわけ構造硬化アルミニウム合金、より詳細には2xxx、6xxxおよび7xxx系列の合金に応用することができる。特定の実施態様において、金属板は下記の合金要素(質量%)を含んでいる:Zn5.5−11、Mg1.5−3、Cu1.0−3.0。
この特定の実施態様の変型において、亜鉛含有率は、8%と11%の間に含まれる。別の変型において、この合金はさらに、分散質を形成することのできる元素、すなわちZr、Sc、Hf、La、Ti、Ce、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Ybから成る群から選択された一つまたは複数の元素をさらに含んでおり、前記元素のそれぞれの含有率は、選択された場合、0.02%と0.7%の間に含まれ、これらの元素の総含有率は、好適には、2%を超えない。7xxx系列の合金の中で、合金7449、7349、7049、7050、7055、7040と7150がとくに好ましい。
金属板は有利には大寸法であり、長さは2000mmを超え、好適には5000mmを超え、幅は600mm、好適には1200mmを超える。それらは有利には、加工前の厚みが15mmを超え、好適には30mmを、さらに好適には50mmを超える。
有利な実施態様において、収容能力が大きな民間航空機の翼部のための補剛材が組み込まれた構造要素の製造に、最大厚みがおよそ90〜100mmの前加工された素材にいたる、厚みがおよそ100〜110mmの7449アルミニウム合金製の厚板を使用する。
有利な別の実施態様において、補剛材が組み込まれた翼部の外被のための構造要素の製造に、最大厚みがおよそ25〜55mmの前加工された素材にいたる、厚みがおよそ30〜60mmの厚板を使用する。
小さな厚みのための、熱処理アルミニウム合金において、約十五〜二十ミリメートル未満の厚みでは機械的特性の勾配に関連する問題はほとんど発生しない。したがって、本発明によって得られる利益は、約30〜40mmを超える厚みにおいて、すなわち翼部構造要素の製造でとくに重要である。
厚板から素材を形成する加工や、素材から最終部材を作る加工作業は高速回転で、すなわち少なくとも毎分5000回転の、また好適には毎分10000回転を超える速度で実施することができる。本発明による製造方法は加工の際の切削屑と切捨て部の価値をできるだけ上げることを可能にする。この目的のために、同じタイプの別の合金を含む、他の金属または非金属材料とそれらの混合を避けるのが望ましい。例として、アルミニウム合金の場合、2xxx群の合金を7xxx(EN573−1による命名)群のそれと混合するのは好ましくなく、また例えば、7xxx群の中では、7449と7010などの合金を分離するのが好ましい。これに必要な切削屑の厳密な管理は厚板製造者の方が多種の材料を加工する作業場よりもよく保証することができる。
本発明による製造方法は、できる限り低いコストで利用できるためには、加工が金属板製造者の工場で、あるいはその工業的管理の下で実施されることが推奨され、また完全に識別され既知の方法から得られた、とりわけ2xxxおよび7xxx合金の切削屑と切捨て部の利用可能性は、航空機に応用するのに2xxxおよび7xxx合金の厚い金属板製造において切削屑のより多くの部分を再利用できるようにする可能性に結びつく。特定の合金と製品について、本出願人は、当業者には周知の回収された切削屑と液体金属の処理方法を用いて、本発明による製造方法において、加工切削屑の40%までこのように組み込むことができた。選択的に回収された切削屑の少なくとも5%を組み込むことはほぼ全ての場合において可能であることが判明し、また少なくとも15%の率が好ましい。
本発明による製造方法は、できる限り低いコストで利用できるためには、加工が金属板製造者の工場で、あるいはその工業的管理の下で実施されることが推奨され、また完全に識別され既知の方法から得られた、とりわけ2xxxおよび7xxx合金の切削屑と切捨て部の利用可能性は、航空機に応用するのに2xxxおよび7xxx合金の厚い金属板製造において切削屑のより多くの部分を再利用できるようにする可能性に結びつく。特定の合金と製品について、本出願人は、当業者には周知の回収された切削屑と液体金属の処理方法を用いて、本発明による製造方法において、加工切削屑の40%までこのように組み込むことができた。選択的に回収された切削屑の少なくとも5%を組み込むことはほぼ全ての場合において可能であることが判明し、また少なくとも15%の率が好ましい。
本発明による製造方法で得られた金属部材は航空機建造において、構造要素として用いることができる。例として、本発明は翼板、胴体要素、翼桁、翼のリブまたは中心ケーソンの実現を可能にする。
本発明による製造方法は既知の方法に対して数多くの利点がある。とりわけ、損傷許容差と静的な機械的特性値の間の妥協が向上した部材の製造を可能にする。当業者は前加工された素材の冶金学的組織を仕上げた製品の所期の特性に合わせて、静的な機械的特性値または損傷許容差の利得を優先したり、あるいは二つのタイプの特性値を同時に向上させることができる。
例として、本出願人は静的な機械的特性値をいっさい低下させることなしに、靱性K1Cが20〜25%向上した仕上げ製品を7449合金から得ることができた。同様に、厚みの1/8において、中実の金属板で測定したKapp(L-T)に対して厚みの約1/8において、溝の底の間で測定した本発明による素材において、約20〜25%の向上が認められる。合金7449製の金属板において、引張測定値Rm(L)が550MPaを超えるときに、少なくとも90MPa√m、さらには少なくとも95MPa√mのKapp(L-T)の値(ASTM E561−98によるW=75mmのCT型の試験片)にこのようにして達することができた。
本発明は、各実施例によってよりよく理解できるものであり、ただし、それら各実施例は限定的性格を有するものではない。これら三つの実施例において、サンプルの各標定は互いに独立しており、すなわち実施例1のサンプルA、実施例2のサンプルAと実施例3のサンプルAとの間に関係はない。
熱間圧延間で得られたままものであるが、リベット止めをし、そして端を切り落とした、101.6mmの厚みの合金7449製の金属板(組成:Zn 8.52%、Cu 1.97%、Mg 2.17%、 Zr 0.11%、Si 0.05%、Fe 0.09%、Mn 0.03%、Ti 0.03%)において、全厚みを、寸法が600mm(L方向)×700mm(TL方向)の三つのブロックに裁断した。厚みが80.5mmのブロックを得るために10.5mmの対称表面仕上げを実施した。
側面の型取りの後、下記の寸法で(表1参照)、図1に従ってリブをブロック1とブロック2において前加工した:
ブロック3は前加工されない。
三つのブロックは4時間の温度上昇で472℃で4時間の間、溶体化し、リブを水面に垂直に向けて攪拌した冷水内に垂直浸漬で焼き入れした。
次に、図2に示した裁断の図に従ってブロックを裁断した。このようにして得られたサンプルのいくつかはT6組織にするために120℃で48時間焼き戻し処理した。他のサンプルは永久伸び率2%で制御引張にかけ、それをT651組織にするために、他のサンプルと同じ焼き戻し処理にかけた。
次に、機械的特性値を求めた。結果は表2にまとめた。
本発明による前加工された素材の靱性は、先行技術による部材に対して約10MPa√m増加し、それは約20〜25%の利得にあたるものであり、静的な機械的特性値の劣化は全くない。
熱間圧延間から得られたままのものであるが、リベット止めをし、そして端を切り落とした、厚みが95mmの合金7050製の金属板(組成:Zn 6.2%、Cu 2.1%、Mg 2.2%、 Zr 0.09%、Si 0.04%、Fe 0.09%、Mn 0.01%、Ti 0.03%)において、全厚みを、寸法が8945mm(L方向)×1870mm(TL方向)の金属板に裁断した。厚みが90mmの金属板を得るために、2.5mmの対称表面仕上げを実施した。つぎに、金属板のそれぞれの端に中実の区域(標識番号16と17)を残し、7705mmの長さにわたって中心配置されたL方向にリブ(標識番号15)を加工した(図3参照)。前加工断面の幾何学的形状は図4に示し、その寸法は表3に示した。
金属板は溶体化し、リブを水面に平行に向けて、攪拌した冷水内に垂直浸漬で焼き入れした。前加工区域内で観察した永久伸び率を2%、中実区域内の伸びをゼロとして制御引張にかけた。つぎに、特性測定のために前加工区域内で一つのブロックを、ならびに非加工区域内で別のブロックを採取した。素材が非加工区域内で採取され、永久伸び率2〜2.5%で制御引張にかけられた。ビッカース硬度測定による焼き戻し反応速度は、前加工部分と中実部分に実施したピーク焼き戻し(それぞれ130℃36時間と130℃24時間)を求めることを可能にする。採取は、図5の裁断の図に従って実施した。
前加工の板(べール部)内および中実金属板内で得られた各機械的特性値は、表4にまとめた。Kappは、Wが75mmに等しいCT型の試験片で測定した(ASTM E561−98による)。
本発明による前加工された素材内の平面応力靱性Kapp(L-T)は、先行技術による部材に対して約14MPa√m増加し、それは約20〜25%の利得にあたるものであり、静的な機械的特性値の劣化は全くない。
熱間圧延間から得られたままのものであるが、リベット止めをし、そして端を切り落とした、厚みが90mmの合金7449製の金属板(組成:Zn 8.8%、Cu 1.8%、Mg 1.8%、Zr 0.12%、Si 0.04%、Fe 0.06%、Mn 0.01%、Ti 0.03%)において、全厚みを、寸法が9950mm(L方向)×2000mm(TL方向)の金属板に裁断した。この金属板を、寸法が9950mm(L方向)×775mm(TL方向)の第一の金属板と、寸法が9950mm(L方向)×1225mm(TL方向)の第二の金属板とを得られるような長さ(L方向)で裁断した。この第二の金属板について、それぞれの端に中実の区域を残し、金属板の中心に配置された8400mmの長さにわたってL方向にリブを加工した(図3参照)。前加工断面の幾何学的形状は図4に示し、その寸法は表3に示した。
全厚み金属板と、前加工された金属板を溶融化し、リブを水面に平行に向けて、攪拌した冷水内に垂直浸漬で焼き入れした。つぎに二つの金属板を(前加工金属板については前加工区域内で観察された)永久伸び率2〜2.5%で制御引張にかけた。つぎに、特性測定のために前加工金属板内で一つのブロックを、ならびに全厚み金属板内で別のブロックを採取した。採取は、図6の裁断の図に従って実施した。前加工による利得を評価するために複数の焼戻しを実施した。前加工の板(べール部)で中実金属板の表面下の厚み1/8で実施された特性測定は、表6にまとめた。
靱性の測定には実施例2に記載のものと同じ試験片を用いた。
本発明による前加工された素材内のL−T方向の平面応力靱性(Kapp(L-T))は、先行技術による部材に対して実施した焼戻しによって8MPa√mから18MPa√mの間で増加し、それは約10〜25%の利得にあたるものであり、静的な機械的特性値と剥離腐食の劣化は全くない。
Claims (27)
- 下記から成る、加工金属部材の製造方法
a)下記から成る方法による熱処理された合金製の金属板の製造
a1)圧延プレートの鋳造と、必要に応じてそれに均質化が続き、
a2)金属板を得るために、必要に応じて一回または複数回の再加熱作業によって分離された、一回または複数回の熱間または冷間圧延作業、
a3)必要に応じて、一回または複数回の金属板の裁断または仕上げ作業、
b)前加工された素材を得るための、前記金属板の片面または両面の前加工、
c)前記、前加工された素材の溶体化処理
d)焼き入れ処理。 - 焼入れの後に、下記の一つまたは複数の過程をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法:
e)制御引張
f)焼き戻し
g)裁断。 - 金属板がアルミニウム合金製であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- アルミニウム合金が2xxx、6xxxおよび7xxx系列の合金であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
- 合金が、5.5%と11%(質量%)の間(好適には少なくとも8%)の亜鉛、1.5%と3%の間のマグネシウム、そして1.0%と3.0%の間の銅を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の製造方法。
- 断面形状が、圧延の方向に平行な一つまたは複数の溝で構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の製造方法。
- 断面形状が、その長さ方向にほぼ一定であることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
- 加工作業が、少なくとも毎分5000回転、また好適には10000回転を超える速度で実施されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の製造方法。
- 得られた部材が、焼入れの後、または制御引張の後に、一つまたは複数の新たな加工または穿孔作業にかけられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の製造方法。
- 制御引張が、永久伸び率が0.5%と5%の間に含まれるように実施されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の製造方法。
- 裁断が、剪断または鋸引き、レーザービームまたは液体噴射によって機械的に実施されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の製造方法。
- 装入地金層が少なくとも5%の、また好適には少なくとも15%の加工切削屑で構成されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の製造方法。
- 金属板の始めと終わりの50mmと1000mmの間に含まれる、また好適には、50mmと500mmの間に含まれる長さに外形加工が無く、厚みがほぼ一定であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の製造方法。
- 金属板が、加工された溝のないかかと部と加工された溝を有する中央部分との間に、その厚みが加工された溝のないかかと部から加工された溝を有する中央部分に向かって減少する移行的区域を備えていることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
- 金属板の幅が、60cmを超え、好適には120cmを超えることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の製造方法。
- 金属板の長さが200cmを超え、好適には500cmを超えることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の製造方法。
- 加工前の金属板の厚みが15mmを超え、好適には30mmを超えることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の製造方法。
- 非加工かかと部部と移行的区域が、制御引張後に切り落とされることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一つに記載の製造方法。
- 0.5%を超える、また好適には1%を超える、制御された永久伸び率に至るまで二つのチャックの間で制御引張を実施し、引張時間の少なくとも一部の間、金属板の面の少なくとも片方に対して横断方向の押圧を維持することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一つに記載の製造方法。
- 永久伸び率が1.5%を超えることを特徴とする、請求項19に記載の製造方法。
- 金属板の片面または両面に対する押圧が、金属板に作用する外力がかけられた一つまたは複数のローラによって実現されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の製造方法。
- ローラが、金属板の面を長手方向に自在に移動することができることを特徴とする、請求項21に記載の製造方法。
- 請求項1〜22のいずれか一つに記載の製造方法によって得ることができる加工金属部材。
- 前記金属板が7449合金製であり、加工された溝の底部で:
・90MPa√mの、また好適には実に90MPa√mのKapp(L-T)値(ASTM E561−98によるW=75mmのCT型の試験片)、および
・550MPaを超える引張測定値Rm(L)
を示すことを特徴とする、請求項23に記載の加工金属部材。 - 航空機建造における構造要素としての、請求項1〜22のいずれか一つに記載の製造方法によって得ることができる、金属部材の使用。
- 翼板、胴体要素、翼桁、リブおよび翼の中心ケーソンとしての請求項1〜22のいずれか一つに記載の製造方法によって得ることができる、アルミニウム合金金属部材の使用。
- 請求項1〜22のいずれか一つに記載の製造方法によって得ることができる、航空機建造のためのアルミニウム合金製構造要素。
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