JP2006503912A - チトクロムp4503a4の結晶構造およびその使用 - Google Patents

チトクロムp4503a4の結晶構造およびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、チトクロムP450 3A4タンパク質分子の結晶構造を提供する。その構造を表5に示す。この構造は、医薬品などの化合物とこのタンパク質の相互作用をモデル化し、関係するチトクロムP450分子の構造を決定するのに使用することができる。

Description

本発明は、ヒトチトクロムP450タンパク質3A4、その結晶化方法、3A4の結晶およびそれらの3次元構造、ならびにその使用に関する。
チトクロムP450の序論
チトクロムP450(CYP450)は、微生物、植物および動物の多数の種において、生理学的に重要な化合物を代謝するヘムタンパク質の極めて巨大で複雑な遺伝子スーパーファミリーを形成している。チトクロムP450は、ステロイド、胆汁、脂肪酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン、レチノイド、脂質などの多種多様な内因性化合物の酸化、過酸化および還元代謝に重要である。これらの酵素の多くは、薬物、環境化合物(environmental compound)および汚染物質を含めた広範な生体異物も代謝する。それらの薬物代謝への関与は広範にわたり、既知の全薬物の50%が、CYP450酵素の作用による何らかの影響を受けていると推定される。それらの薬物とCYP450酵素との有害な相互作用を避けるために、医薬業界は、薬物候補を最適化するためにかなりの資源を費やしている。これらの酵素が個体間および人種間で異なる組織分布および多型を示すということからも、別なレベルで複雑な状況が生じている。
ほとんどの哺乳動物のP450は肝臓内にあるが、腸壁、肺、腎臓、副腎皮質および鼻上皮を含めて他の器官および組織も高濃度のある種のチトクロムP450を有する。哺乳動物は、約50種の独特なCYP450遺伝子を有する。各ファミリーのメンバーは、大きさが45〜55KDaであり、酸素の2電子活性化(two-electron activation)を触媒するヘム成分を含有している。電子の供給源を使用して、CYP450を分類することができる。電子が、レダクターゼを含有するフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)から、鉄-硫黄タンパク質に、次いでP450に流れる、3個のタンパク質からなる鎖(three protein chain)において電子を受け取るCYP450は、クラスI P450のグループに属し、大部分の細菌酵素がこれに含まれる。クラスII P450は、FADおよびフラビンモノヌクレオチド(FMN)の両方を含有するレダクターゼから電子を受け取るものであり、薬物代謝の主原因であるミクロソームP450がこれに含まれる。哺乳動物のミクロソームのチトクロムP450は、N末端膜貫通αヘリックスによって固定された内在性膜タンパク質である。これらは、切断できない膜挿入用シグナル配列として働く、短く疎水性が極めて高いN末端セグメントによって小胞体膜に挿入される。哺乳動物のチトクロムP450タンパク質の残りの部分は、細胞質空間に突出した球状構造である。したがって、酵素の大部分は脂質二重層の細胞質表面に面している。P450が活性化するためには、フラビンタンパク質NADPH-チトクロムP450オキシドレダクターゼ、およびいくつかの例ではチトクロムb5を含めた他の膜状酵素成分が必要である。単一のチトクロムP450オキシドレダクターゼは、P450と直接相互作用し、必要な2つの電子をNADPHから移動させることによって、すべての哺乳動物のミクロソーム酵素の活性を支えている。チトクロムP450は、O2分子の2個の酸素原子のうちの1個を、2個の電子によるもう一方の酸素原子のH2Oへの還元と同時に、多種多様な基質に組み込むことができる。チトクロムP450は、ヒドロキシル化、エポキシ化、N-、S-並びにO-脱アルキル、N-酸化、スルホキシド化、脱ハロゲン化および他の反応を触媒することが知られている。
P450スーパーファミリーの遺伝子は、ファミリーメンバーの系統的な命名法を提案したNelson等(Pharmacogenetics、6;1〜42、1996)によって分類されている。この命名法は当分野で広範に用いられており、本明細書でもこれを採用する。Nelson等は、P450配列の配列データベースエントリに相互参照を設けている。
ホモサピエンスは、17種のチトクロムP450遺伝子ファミリーおよび42種のサブファミリーを有し、配列の決定されたアイソフォームは合計50種を超える。ファミリー1、2および3からのチトクロムP450は、薬物代謝の主要経路を構成する。多数の薬物が、循環器系からの排除および薬理学的不活性化を、チトクロムP450による肝臓代謝に頼っている。逆に、P450によってそれらの薬理学的に活性な代謝産物に体内で転化されなければならない薬物もある。多数の有望なリード化合物が、1種または複数のP450との相互作用のために開発段階で終了している。創薬における最も大きな問題の1つは、薬物リードの代謝または改変に対するチトクロムP450の役割を予測することである。化学リードシリーズ(chemical lead series)に関連する代謝の問題を早期に発見することは、医薬産業にとって最も重要である。ヒトの主要な薬物代謝チトクロムP450の結晶構造を求めることは、P450酵素が薬物分子および薬物結合様式をどのように認識するかについての詳細な情報がもたらされるので、ドラッグデザインに極めて貴重である。これによって、製薬会社が代謝クリアランスを修正し、開発における化合物の損耗率(attrition rate)を減少させる戦略を展開することが可能になる。
薬物代謝に関与する主要なヒトCYP450アイソフォームは、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6およびCYP3A4である。これらのファミリーメンバー間の配列の同一性レベルは約20〜80%であり、その変動の多くは基質認識に関与する残基にある。CYP450酵素は細菌でも存在し、基質認識に関する理解の多くは、細菌CYP450酵素について得られる結晶構造から誘導される。
CYP3Aは、チトクロムP450酵素の最も豊富で最も臨床的に重要なサブファミリーである。CYP3Aサブファミリーは4種のヒトアイソフォーム、3A4、3A5、3A7および3A43を有し、CYP3A4が薬物相互作用と最もよく関連する。CYP3Aアイソフォームは肝臓の全チトクロムP450の約50%を占め、消化管、腎臓および肺全体にわたって広く発現されており、したがって、究極的に初回通過代謝の大部分を担う。初回通過代謝の増減によって通常よりも極めて少量または多量の薬物を投与する効果を有することができるので、これは重要である。オピエート鎮痛薬、ステロイド、抗不整脈薬、三環系抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬およびマクロライド抗生物質の多数を含めて150種を超える薬物が、CYP3A4の公知の基質である。いくつかの基質は年齢によって排出されにくくなるが、酵素自体は変化しないと考えられる。CYP3A4は、シクロスポリン、コデイン、タモキシフェン、ロバスタチンなどを含めた多数の薬物、およびテストステロン、エストラジオール、コルチゾルなどの内因性化合物の代謝に重要である。ケトコナゾール、イトラコナゾール、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ジルチアゼム、フルボキサミン、ネファゾドン、ならびにグレープフルーツジュース、緑茶などの食物に含まれるジヒドロキシベルガモチンなどの様々な物質は、CYP3A4の強力な阻害剤であり、多数の薬物相互作用の原因になっていることが知られている。これらの相互作用は、重大な臨床結果をもたらす恐れがある。
結晶化の背景
タンパク質を結晶化させることが、なんら成功する明確な見込みのない不確かで困難なプロセスであることは、タンパク質化学の分野では周知である。現在、タンパク質の結晶化がタンパク質の構造決定における主要な障害であることは明らかである。このため、タンパク質の結晶化は、それ自体が研究主題となっており、タンパク質結晶学者の研究室の単なる延長ではない。タンパク質結晶成長に関連する難点を記載した多数の参考文献がある。例えば、Kierzek,A.M.およびZielenkiewicz,P.、(2001)、Biophysical Chemistry、91、1〜20、Models of protein crystal growth、およびWiencek,J.M.(1999)Annu.Rev.Biomed.Eng.、1、505〜534、New Strategies for crystal growthである。
溶液からのタンパク質分子の結晶化が、タンパク質構造を決定するプロセスにおける主要な障害であると一般に考えられている。その理由は、多くのタンパク質が複雑な分子であり、溶液中の他のタンパク質分子および小分子との特異的および非特異的相互作用を含めた微妙なバランスを予測することが困難なためである。
各タンパク質は、予め予想することが不可能である独特な諸条件下で結晶化する。タンパク質を単に過飽和させて溶液から析出させるだけではうまくいかず、その結果、ほとんどの場合で非晶質の沈殿物が得られる。多種の沈殿剤が用いられており、一般的な沈殿剤は種々の塩およびポリエチレングリコールであるが、他の沈殿剤も知られている。また、金属、洗剤などの添加剤を添加して溶液中のタンパク質の挙動を調整することもできる。多数のキットが(例えば、Hampton Researchから)利用可能であり、それらは結晶化空間におけるできるだけ多くのパラメータを網羅しようとしているが、多くの場合、それらは回折分析に不適切である結晶沈殿物および結晶を最適化するための出発点にすぎない。溶解性、正確な折りたたみまたは活性のための金属イオン依存性、他の分子との相互作用に関するタンパク質挙動の知識、および入手可能な他の情報の助けによって結晶化が成功する。それでも、タンパク質の結晶化は、厄介なプロセスと考えられることが多く、したがってその後の実験は過去の試行の知見に基づいている。
タンパク質結晶が得られても、これらは必ずしも常に回折分析に適切であるとは限らず、分解能が制限されることがあり、その後、分析に要する分解能で回折するまでに改善することは困難である。結晶の分解能が制限されるのは、いくつかの原因による。それは結晶内でのタンパク質の固有の易動度による場合もあり、これは、他の結晶形でも解決することが困難なことがある。結晶内の溶媒含量が高く、したがって散乱が弱いためである場合もある。あるいは、結晶格子内の欠陥によって、回折X線が格子内の単位ごとに完全には位相があっていないためである場合もある。これらのいずれか1つまたは組合せによって、結晶が構造決定に不適切になり得る。
一部のタンパク質は決して結晶化せず、妥当な試行の後、タンパク質自体を調べ、個々のドメイン、異なるNまたはC末端切断、または点突然変異を生成させることが可能かどうかを考える必要がある。結晶性が改善されるようにタンパク質をどのように再構築するかを予測することは困難なことが多い。結晶化機構についての我々の理解はまだ不完全であり、結晶性に関与するタンパク質構造要因は十分理解されていない。
タンパク質の構造決定
フーリエ変換と呼ばれる数学的操作によって、結晶から観察される回折パターンと、その結晶を含むタンパク質の分子構造とが結びつけられる。フーリエ変換は、各々が確定した振幅および位相を有する正弦波と余弦波の合計と考えることができる。したがって、理論的には、回折データに対して逆フーリエ変換を実施することによって、タンパク質構造に関連する電子密度を計算することが可能である。しかし、これには、回折データから抽出される振幅および位相情報が必要である。振幅情報は、回折パターン内のスポットの強度を分析することによって得ることができる。しかし、回折データを記録する従来の方法によれば、あらゆる位相情報は失われるものである。この「位相情報」は何らかの方法で回復されなければならず、この情報の喪失は「結晶学的位相問題」である。逆フーリエ変換を実施するために必要な位相情報は、様々な方法によって得ることができる。タンパク質構造が存在する場合には、1セットの理論振幅と位相をタンパク質モデルを用いて計算することができ、次いで、この理論位相を実験的に導出される振幅と組み合わせることができる。次いで、電子密度図を計算し、タンパク質構造を観測することができる。
既知のタンパク質構造が未知の場合には、位相を得る別の方法を探索しなければならない。1つの方法は、多重同形置換法(MIR)である。これは、「重原子」(すなわち、白金、ウラン、水銀など)化合物を結晶に浸透させ、結晶へのそれらの組み込みによって回折パターン中に観察されるスポット強度がどのように変わるかを観察することに依拠している。この方法は、有限の確定部位においてタンパク質に組み込まれた重原子に依拠している。同形置換実験では、重原子が浸透した結晶が依然として同形であることが前提である。すなわち、タンパク質結晶の物性が容易に感知できる(すなわち、結晶学的格子寸法の乱れ、または分解能の重大な低下)ほど変化すべきではない。結晶物性の乱れは、非同形(non-isomorphism)と呼ばれ、このタイプの実験の成功の妨げとなる。タンパク質結晶への重原子の同形組み込みが成功すると、同一の非浸透(本来の)結晶から収集されるデータよりも、改変結晶から得られる回折パターン中のスポットの強度が強くなる。成功した同形置換実験から得られる回折データを「誘導(derivative)」データセットと称する。「本来の」および「誘導」データセットを数学的に解析することによって、これらのデータセットから予備的な位相情報を抽出することができる。この位相情報を本来のデータセットから実験的に得られた振幅と組み合わせると、未知のタンパク質分子の電子密度図をフーリエ変換法を用いて計算することができる。
構造が未知なタンパク質に対する位相情報を得る別の方法は、多波長異常分散(MAD)実験を実施することである。これは、ある種の特性X線波長における電子によるX線吸収に拠るものである。異種元素は、異なる特性吸収端を有する。タンパク質内の原子による異常散乱によって、タンパク質結晶から得られる回折パターンが変わる。したがって、異常散乱を起こし得る原子をタンパク質が含む場合には、この異常散乱が最大になるX線波長において、回折データセット(異常データセット)を収集することができる。X線波長を異常散乱のない値に変えることによって、本来のデータセットを収集することができる。MIRの場合と同様に、異常および本来のデータセットを数学的に処理することによって、電子密度図の計算に必要な位相情報を求めることができる。異常散乱をタンパク質に導入する最も一般的な方法は、硫黄含有メチオニンアミノ酸残基をセレン含有セレノメチオニン残基で置換することである。これは、セレノメチオニンを含む増殖培地上で成長した細胞から単離される組換えタンパク質を産生することによって行われる。セレンは、X線を異常散乱させることができ、したがって、MAD実験に使用することができる。単一同形置換(SIR)、単一同形置換異常散乱(SIRAS)、直接方法などの別の位相決定方法もあるが、それらの原理は、MIRおよびMADと同様である。
未知のタンパク質構造を決定するのに必要な位相の計算に一般に利用可能な最後の方法は分子置換である。この方法は、類似のアミノ酸配列(1次配列)を有するタンパク質は、類似の折りたたみおよび3次元構造(立体構造)を有するという仮定に依拠している。アミノ酸配列が近いタンパク質は、相同タンパク質と称される。タンパク質構造が未知であるが、相同タンパク質に対して構造が決定している結晶からX線回折データセットを収集した場合には、分子置換を試みることができる。分子置換は、新しいタンパク質結晶から得られるデータセットを、構造が既知のタンパク質に対して計算された理論的回折パターンと相関させようとする数学的プロセスである。相関が十分に高い場合には、既知のタンパク質構造から何らかの位相情報を抽出することができ、新しいタンパク質データセットから得られる振幅と組み合わせることができる。これによって、構造が未知のタンパク質について予備的な電子密度図を計算することが可能になる。
構造が未知のタンパク質に対して電子密度図が計算された場合には、そのタンパク質を構成するアミノ酸をタンパク質の電子密度に一致させなければならない。これは、高分解能データによってモデルの自動作成が可能になるものの、通常は手作業で行われる。モデルを作成し、アミノ酸を電子密度に一致させるプロセスは、ともに時間がかかり骨の折れるプロセスとなり得る。アミノ酸を電子密度に一致させた後に、構造を精緻化する必要がある。精緻化は、実験的に計算された電子密度と作成されたタンパク質モデルから計算される電子密度との相関を最大にしようとするものである。精緻化は、ユーザーによって構築されたタンパク質構造モデル内の原子およびアミノ酸の幾何および配置を最適化しようともする。局所的エネルギー最小値から構造を開放するために、手作業による構造の再構築が必要になることがある。現在、タンパク質構造の精緻化を実験者が実施することができるソフトウエアパッケージがいくつか利用可能である。精緻化の進行をモニターするために使用されるある種の幾何および相関診断学がある。これらの診断パラメータがモニターされ、構造が十分精緻化されたと実験者が納得するまで再構築/精緻化が続けられる。
異常散乱理論の説明
入射X線のエネルギーが、原子の最内殻から結合電子を放出させるのに必要な最低エネルギーに近い場合には、X線の散乱は「異常」と称される。「正常」散乱プロセスにおいては、電子は、入射X線光子の振動数と同じ振動数で振動させられ、そのプロセスにおいて弾性散乱光子(すなわち、振動数が変化しない)を放出する。しかし、この振動数は、電子の固有振動の振動数からは程遠いので、この固有振動からの散乱光子には影響がない。「異常」散乱プロセスにおいては、入射光子の振動数は電子の固有振動数に近く、光子の分散(速度低下、ただし、依然として振動数に変化はない)として現れる共鳴効果、ならびに入射光子の一部の吸収(強度低下)として現れる振動減衰効果をもたらす。
したがって、異常散乱光子は、正常散乱光子と比較して、それに付随して遅延した位相角を有し、その他の条件はすべて同等である。構造が正常散乱体と異常散乱体の混合物からなる場合には、同じ結晶面の両側から回折される指数(h,k,l)と(-h,-k,-l)の反射対がもはや同じ振幅を持たなくなるために、この位相の遅れはフリーデルの法則の破綻を来たす。
2個の反射強度を慎重に測定することによって、かつそれらの相対振幅を考慮することによって、観測されるすべての反射の位相を初期に推定することが可能である。
理論的には、すべての原子は、適切な波長のX線放射を受けた場合には異常散乱効果を生じる可能性がある。しかし、散乱は、散乱体重量に直接比例するので、より重い元素、例えば硫黄以上の元素が通常選択される。元素の選択は、X線エネルギーを必要な遷移エネルギーに調節できるかどうかによっても左右される。調節可能なシンクロトロンX線放射を利用することが日常的になったので、MAD技術が発達した。異常散乱体は、多くのの経路、例えば、重原子を含む溶液に結晶を浸漬し、次いでその重原子がタンパク質に結合することによって、または元素が適切なより重い元素によって置換され(例えば、セレノメチオニンによるメチオニンの置換)、ある種のアミノ酸自体にその元素が組み込まれる培地中での組換えタンパク質の発現によって、または重元素を含む天然の補因子を利用して組み込むことができる。
異常散乱体の寄与は小さい場合もあるので、十分記録された冗長データを得て、小さなシグナルでも容易に検出できるようにすることが重要な場合が多く、異常データセットを比較することができる基準データセットを有することが有用である。常法による低温でのX線データ収集によって、結晶寿命が延び、単結晶から(異なる波長における)複数のデータセットを収集することが多数の結晶系で現在可能となった。単結晶から複数のデータセットを収集し分析することは、非同形に関係するすべての効果(浸透および/または凍結条件の無秩序な変動による異なる結晶間の構造変動)を排除するのに有利である。
チトクロムP450の場合には、酵素活性部位を形成するヘム基が単一の鉄原子を自然状態として含む。鉄は、調節可能なシンクロトロンビームラインにおいて得ることができる高エネルギー(長波長)において遷移エネルギーを有する。
P450結晶構造
2002年現在、8つのチトクロムP450構造がX線結晶学によって解明され、公開ドメインで利用可能であった。構造が解明されたチトクロムP450はすべて大腸菌中で発現された。6つの構造は細菌チトクロムP450に対応する。すなわち、P450cam(CYP101 Poulos等、1985、J.Biol.Chem.、260、16122)、P450BM3(CYP102、Ravichandran等、1993、Science、261、731)のヘムタンパク質ドメイン、P450terp(CYP108、Hasemann等、1994、J.Mol.Biol.236、1169)、P450eryF(CYP107A1、Cupp-VickeryおよびPoulos、1995、Nature Struct.Biol.2、144)、P450 14α-ステロールデメチラーゼ(CYP51、Podust等、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98、3068)、およびArchaeon sulfolobus solfataricus由来の好熱性チトクロムP450(CYP119)の結晶構造(Yano等、2000、J.Biol.Chem.275、31086)が解明された。チトクロムP450norの構造が、脱窒素菌Fusarium oxysporum(Shimizu等、2000、J.Inorg.Biochem.81、191)から得られた。第8の構造は、ウサギ2C5アイソフォームの構造であり、哺乳動物チトクロムP450(Williams等、2000、Mol.Cell.5、121)の最初の構造である。
国際公開第03/035693号はヒト2C9 P450タンパク質分子の結晶化について述べており、タンパク質結晶構造分析を提供している。
細菌と比べ哺乳動物のチトクロムP450が特に結晶化が困難である理由は、これらのタンパク質の性質にある。細菌チトクロムP450は可溶性であるのに対し、哺乳動物のP450は膜関連タンパク質である。したがって、哺乳動物のチトクロムP450に関する構造研究では、単一のチトクロムP450を高濃度で発現させる異種発現システムと、これら溶液状態のタンパク質の溶解性および挙動を改善する配列改変とを組み合わせて用いることができる。
細菌タンパク質とウサギタンパク質の両方の配列の差がかなりあるため、薬物代謝におけるヒトCYP450酵素の役割を十分に理解するには、他のヒトアイソフォームの結晶構造が依然として必要である。
関連特許出願
PCT/GB02/01575およびPCT/GB02/02668は、空間群I222および単位格子サイズa=77Å、b=99Å、c=129Å、β=90o;または空間群C2および単位格子サイズa=152Å、b=101Å、c=78Å、α=90°、β=120°、γ=90°を有する3A4の結晶について述べている。
これらの文書は、結晶の格子寸法が、結晶化を繰り返すことによって5%(好ましくは1〜2Åであるが)変動することがあり、このような変動が当該明細書に開示する当該発明の精神および範囲内にあることを当業者は理解すべきであると説明している。
これらの開示が本願に対する従来技術を構成する限り(これがすべてのPCT加盟国に適用されるわけではない)、本発明は、そのような対象自体を除外する。
本発明は、ヒト3A4の結晶構造に関し、それによってこの酵素における基質の結合位置を調べ測定することが可能になる。
より具体的には、本発明者らは、このタンパク質の原子座標モデルを提供するのに有用であり、下記セクションHに考察する他の応用分野にも有用である3A4の電子密度図を得た。また、本明細書の表3のデータは、構造因子位相データを提供し、当業者が、電子密度図を得るために3A4のX線回折データおよび相同タンパク質結晶をより容易に解析できるようになる。
別の態様においては、本発明は、表5に示す3A4の3次元構造、およびその使用を提供する。
一般的態様においては、本発明は、3A4構造の提供、ならびにこの3A4構造を有する分子構造体、例えば医薬品化合物候補および既存の医薬品化合物、プロドラッグ、P450阻害剤または基質、あるいはこのような化合物、プロドラッグ、阻害剤または基質の各断片の相互作用のモデル化におけるその使用に関する。
本発明のこれらの態様および他の態様および実施形態を以下に考察する。
本発明の上記態様は、単独でも組み合わせても、すべて本発明の有利な特徴に寄与する。
表の簡単な説明
表1は、データ統計である。
表2は、フェイジング統計である。
表3(図1)は、3A4結晶構造の電子密度図の作成に使用できる構造因子および位相である。
表4は、精緻化統計である。
表5(図2)は、3A4構造の座標データである。
表6(図3)は、3A4ループ領域の1つの座標データセット候補である。
表7は、3A4の結合部位残基の詳細である。
表8は、新規に特定された3A4結合部位残基である。
A.タンパク質結晶
本発明は、斜方晶空間群I222、および単位格子寸法78Å、100Å、132Å、90°、90°、90°の3A4結晶を提供する。すべての寸法で単位格子の5%のばらつきが観測されることがある。
このような結晶は、添付の実施例に記載した方法を用いて得ることができる。
結晶は、そのN末端領域において疎水性膜貫通ドメインを欠失するように望ましくは切り詰められ、その領域が短い(例えば、8〜20)アミノ酸配列で置換されている3A4タンパク質とすることができる。ヒト3A4 P450を発現させるために、本発明者らは、非改変N末端残基の代わりに、大腸菌におけるタンパク質の発現を増加させ、溶解性を増大させるN末端配列MAYGTHSHGLFKKLGIを使用した。
3A4 P450は、このタンパク質の回収および精製を可能にするC末端ポリヒスチジンタグなどのタグを場合によっては含んでいてもよい。
本発明者らの実験は、上述した特定のN末端切断を使用することに基づいており、このタンパク質はC末端にポリヒスチジンタグも含む。N末端切断およびタグはどちらも、当業者が日常的な技術を用いて変化させることができる特徴である。例えば、別のN末端配列を、例えば大腸菌以外の宿主細胞における産生のために利用することができる。同様に、別のタグを下記タンパク質の精製に使用することができる。これらのN末端修飾およびC末端修飾を、本明細書に示す配列番号2の残基17以降から、ポリヒスチジンタグ直前の残基までの野生型タンパク質におけるコア配列を保持する3A4タンパク質に施すことができる。
N末端配列は、存在する場合には、好ましくは完全長野生型配列ではなく、好ましくはサイズが30よりも小さく、例えば、20残基である。N末端配列は、野生型配列よりも短いことが好ましい。N末端領域は、添付の実施例に説明する切断型であることが好ましい。このタイプのN末端配列によって、3A4が膜および凝集体に固着する傾向が野生型配列よりも減少する。本明細書で利用される切断は、野生型残基3〜24が欠失している。
C末端配列は、存在する場合、好ましくは30以下、好ましくは10以下のアミノ酸サイズである。
3A4配列は、本明細書に示すコア配列、またはその対立遺伝子、または本明細書に示す条件下で結晶形成能力を保持する変異体の配列とすることができる。そのような変異体としては、いくつかのアミノ酸置換体、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸が同数以下のアミノ酸によって置換された変異体を含む。突然変異体を含めて、変異体のさらなる例を本明細書の以下でさらに考察する。
本明細書に示すP450結晶を用意するのに使用する方法を用いて、一般に、少なくとも3.0Å、好ましくは少なくとも2.8Åの分解能で解像できるヒト3A4結晶を提供することができる。
したがって、本発明は、さらに、少なくとも3.0Å、好ましくは少なくとも2.8Åの分解能を有する3A4結晶も提供する。
これらのタンパク質は、例えばN末端切断、および/または結晶形成を妨げるループ領域を除去することによって、結晶形成を促進するように改変された野生型タンパク質もしくはその変異体とすることができる。
別の態様においては、本発明は、P450タンパク質結晶、特に、(上で定義した)3A4のコア配列を含む3A4タンパク質のP450タンパク質結晶、またはその変異体を製造する方法を提供する。この方法は、0.05〜0.2M HEPES pH7.0〜7.8、2.5〜10%IPA、0〜20%PEG 4000、0〜0.3M塩化ナトリウム、0〜10%PEG 400、0〜10%グリセリン、好ましくは0.1M HEPES pH7.2、5%IPA、10%PEG 4000を含有する貯蔵緩衝剤(reservoir buffer)を用いて蒸気拡散によって結晶を成長させるステップを含む。結晶は、蒸気拡散によって成長し、貯蔵緩衝液を含有するウェル上のカバーガラスに懸滴として一定分量の溶液を置くことによって実施される。使用したタンパク質溶液濃度は0.3〜0.7mMであった。
本発明の結晶は、3A4突然変異体、キメラ、3Aファミリーのホモログ(例えば、3A1、3A5、3A7、3A12および3A43)および対立遺伝子の結晶も含む。
(i)突然変異体
突然変異体は、野生型3A4由来の少なくとも1個のアミノ酸の置換または欠失を特徴とする3A4タンパク質である。このような突然変異体は、例えば部位特異的突然変異誘発または天然もしくは非天然アミノ酸の導入によって調製することができる。
本発明は、「突然変異体」を企図する。「突然変異体」とは、本来の3A4または合成3A4において少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基と置換することによって得られるポリペプチド、ならびに/または本来のポリペプチド内もしくは3A4に対応するポリペプチドのN末端および/またはC末端においてアミノ酸残基を付加および/または欠失させることによって得られるポリペプチド、ならびにそれが由来する3A4と実質的に同じ3次元構造を有するポリペプチドを指す。実質的に同じ3次元構造を有するということは、突然変異体が由来する3A4の原子構造座標に重ね合わせたときに、3A4のCα原子の少なくとも約50%〜100%が重ね合わせに含まれるときに、標準偏差(r.m.s.d.)が約2.0Å以下(好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満)の1セットの原子構造座標を有することを意味する。突然変異体は、酵素活性または触媒活性があってもなくてもよい。
ホモログまたは突然変異体を産生するために、前記タンパク質中に存在するアミノ酸を、類似の諸特性、例えば疎水性、疎水性モーメント、抗原性、α-ヘリックスまたはβ-シート構造を形成または破壊する性質などを有する他のアミノ酸で置換することができる。タンパク質の置換変異体は、タンパク質配列中の少なくとも1個のアミノ酸が取り除かれ、異なる残基がその場所に挿入されるものである。アミノ酸置換体は、一般に、単一の残基であるが、例えば結晶接触(crystal contact)における機能上の制約に応じてクラスターを形成することができる。アミノ酸置換体は、保存的なアミノ酸置換体を含むことが好ましい。挿入アミノ酸変異体は、1個または複数のアミノ酸が導入されたものである。これは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端融合、ならびに配列内とすることができる。アミノ末端および/またはカルボキシ末端融合の例は、親和性タグ、MBPタグおよびエピトープタグである。
3A4の3次元構造にさほど干渉しないアミノ酸置換、欠失および付加は、置換、付加または欠失が起こる3A4の領域に部分的に依存する。分子の高度可変領域、非保存的置換および保存的置換は、分子の3次元構造をさほど乱さず、許容される。高度保存領域、またはかなりの2次構造を含む領域においては、保存的アミノ酸置換が好ましい。
保存的アミノ酸置換は当分野で周知であり、これには、含まれるアミノ酸残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてなされる置換が含まれる。例えば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあり、正に帯電したアミノ酸としては、リジン、アルギニンなどがあり、親水性の類似した値を有する非帯電極性頭部基を含むアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;フェニルアラニン、チロシンなどがある。他の保存的アミノ酸置換も当分野で周知である。
ポリペプチドをコードするcDNA中に好都合なクローニング部位を設けて、ポリペプチドなどの精製を促進するために、アミノ酸残基を置換、欠失および/または付加することが特に有利または好都合な場合がある。3A4の3次元構造を実質的に変えないこのような置換、欠失および/または付加は、当業者には明白である。
本明細書で企図する突然変異体は、酵素活性を示す必要がないことに留意されたい。実際、3A4の触媒活性を妨害するが、触媒領域の3次元構造をさほど変えないアミノ酸置換、付加または欠失は、本発明で特に企図される。このような結晶ポリペプチド、またはそこから得られる原子構造座標を用いて、タンパク質に結合する化合物を同定することができる。
突然変異のための残基は当業者が容易に特定することができ、これらの突然変異は、部位特異的突然変異誘発、例えば、Stratagene QuikChange(商標)部位特異的突然変異誘発キットまたはカセット突然変異誘発方法(例えば、Ausubel等編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.、New York、およびSambrook等、Molecular Cloning: a Laboratory Manual、2nd ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、(1989)を参照されたい)を用いて導入することができる。
(ii)対立遺伝子
本発明は、「対立遺伝子」を企図する。対立遺伝子は、メンデル性遺伝において互換性がある諸特性に対してBatesonおよびSaunders(1902)によって造られた用語である(ギリシア語Allelon、互いに;morphe、形)。現在、対立遺伝子という用語は、異なる遺伝子産物、したがって異なる表現型をもたらす遺伝子の2種類以上の別の形に対して使用される。対立遺伝子は、転写、スプライシング、翻訳、転写後修飾または翻訳後修飾に影響を及ぼし、あるいは少なくとも1つのアミノ酸変化をもたらすことが判明したヌクレオチド変化を含む。これらの異なる対立遺伝子は、一部が、特定薬剤の異なる代謝的クリアランス速度を表現型に付与するので、P450において特に重要である。P450の対立遺伝子は、1個または2個のアミノ酸が異なるだけのことが多い。2002年現在、3A4の25種類の対立遺伝子が特定され、野生型はCYP3A4*1Aである(NCBI ACCESSION M18907、Gonzalez FJ、Schmid BJ、Umeno M、Mcbride OW、Hardwick JP、Meyer UA、Gelboin HV、Idle JR、DNA 1988 Mar;7(2):79〜86)。
本発明が、3A4-リガンド複合体、および3A4の突然変異体、ホモログ、アナログ、対立遺伝子型、変種タンパク質に関する程度に、このようなタンパク質の結晶を形成することができる。当業者は、本明細書に定める3A4の結晶化条件をこのような結晶の形成に使用できることを理解されたい。あるいは、当業者は、これらの条件をそれらの結晶を形成する改変条件を求める基礎として使用できるはずである。
したがって、3A4の結晶に関する本発明の態様は、ホモログ、対立遺伝子型および種変異体をもたらす3A4の突然変異体の結晶に拡張することができる。
B.電子密度図
一態様においては、本発明は、表3の構造因子および位相を有する3A4の結晶を提供する。
別の態様においては、本発明は、表3のデータから作成される電子密度図を有するP450の結晶も提供する。
電子密度図の有利な特徴は、約2.8Åの分解能を有することである。
表3は8個の列を有する。最初の3列は、各個々の反射の指数h、kおよびlである。列4および5は、それぞれ、実験的に測定された構造因子および関連するピーク波長の標準偏差である。列6は、溶媒平滑化(solvent flattened)構造因子振幅である。列7は、溶媒平滑化構造因子位相である。列8は、反射に関連する溶媒平滑化性能指数である。列6〜8のデータは、次いで密度修正に使用されるSHARPにおいて位相調整手順を用いて実験的に測定される構造因子から作成された(de la Fortelle & Bricogne、1997中の式(2)参照)。
次いで、構造解釈に最適な電子密度図が、以下の式を用いてフーリエ変換によって計算される。
Figure 2006503912
したがって、電子密度図は、列6および7を用いて、例えば、CCP4プログラムスィートの一部であるFFTプログラムを用いて表3から作成することができる(Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763.)。次いで、得られた電子密度図を考察し、解釈し、あるいは「O」(Jones等、Acta Crystallographica、A47、(1991)、110〜119)または「QUANTA」(1994、San Diego、CA:Molecular Simulations、Jones等、Acta Crystallography A47 (1991)、110〜119)などの結晶グラフ表示プログラムを用いてその電子密度図にモデルを組み込むことができる。
電子密度図の誤差は、その計算に使用される主に構造因子の位相角(φ)の誤差に由来し、対応する振幅(|F|)の誤差は、通常、それよりも重要でない。構造因子の位相の期待誤差は、通常、「最適」位相の誤差のコサインの期待値として定義することができる「性能指数」(m)として表される(電子密度の二乗平均平方根誤差σ(ρ)を最小限にする位相の値)。
Figure 2006503912
実際の(しかし未知の)位相誤差は、1つの構造因子と次の構造因子では大きく変わる。これは、一つには実験誤差の無秩序な性質によるものであり、一つには振幅の小さい構造因子は平均して振幅の大きい構造因子よりも誤差が大きい傾向にあるためである(小さい振幅が大きい振幅ほどには電子密度の合計に寄与しないことは明らかである。振幅がゼロの構造因子はまったく寄与せず、したがって完全に不定な位相角にも寄与しない)。また、位相誤差は、高分解能でより大きい傾向にある。というのは、例えば、位相計算に使用される原子を位置付ける際の小さな誤差が、高分解能ではより大きな効果を有するからである。これらの理由のために、性能指数および位相誤差は、通常、一緒にまとめられ、振幅または分解能に従って平均される(本発明者らは分解能によって平均性能指数を表すことにした)。
Blow&Crick(Blow,D.M.およびCrick,F.H.C.Acta Cryst.(1959)12、794〜802)は、電子密度におけるRMS誤差の推定値を導出した:
Figure 2006503912
ここで、合計は、非対称単位だけでなく逆格子空間の球全体にわたって実施しなければならない。
この式、性能指数の上記定義、および位相誤差の振幅依存性に関する上記論理を考慮すると、任意の位相セットを表3のものと将来比較するために、以下の位相差のコサインの加重平均は、次のように計算すべきであると示唆される。
Figure 2006503912
ここで、合計は、分解能シェル(resolution shell)において、ならびに球全体にわたって実施される。これから、シェルに対して平均位相差Δφmeanを得ることができ、これは、2組の位相の平均類似度の尺度であり、次いで、表2の列10における位相誤差の期待値と直接比較することができる。したがって、分解能シェルの大部分に対して、平均位相差の値が期待位相誤差未満であるということは、2個の位相セットが類似の情報を提供することを意味する。
表2から、表3の位相に対する平均位相誤差が45°であることが判明し、したがって、第2の位相セットと表3の位相セットとの差が(同じ分解能にわたって)45°未満である場合には、本発明では、2組の位相と得られた図は等価であるとみなされる。当業者は、座標の異なる起点に対して位相の値が変化することを理解し、適切に調節することになる。
この電子密度図は、3A4の全原子の大部分を位置付けることができ、3A4の原子の空間的配置を初めて明らかにするものである。これらの原子の空間的配置の知識は、様々な分野において明確な意味を有する。例えば、分子の酵素活性部位を形成する原子の知識によって、酵素のリガンドである化合物の物理化学特性が決定される。これらの諸特性を改変し、したがって、特定の化合物を代謝する酵素の能力を究極的に改変することができるかどうかは、薬物産業にとって明確な価値を有する。図を作成するために使用される位相の品質の指標は以下のとおりである。すなわち、現在の重原子モデルを使用したSHARP(La Fortelle,E.deおよびBricogne,G.(1997)Methods in Enzymology 276、472〜494)中の異常対数尤度勾配図を調べることによって、システイン残基およびメチオニン残基由来の硫黄原子の位置と相関があるいくつかのピークが明らかになる(データ収集に使用された長波長においては、タンパク質内のシステイン残基およびメチオニン残基の硫黄原子が異常散乱に寄与すると予想される)。硫黄含有残基の位置を特定することによって、電子密度図に組み込まれるモデルにタンパク質配列を割り当てることが容易になる。
実際に、表3のデータは電子技術の当業者によって使用されて、本明細書に考察するコンピュータプログラムなどのコンピュータプログラムによってデータを処理することが可能になる。したがって、実際に、これらのプログラムは、この表のすべてのデータポイントを使用する。しかし、この表の列8の値によって示されるように、いくつかのデータポイントに対する性能指数値は比較的低い。これは電子密度図を作成するためのデータ処理において考慮され得るものの、低い性能指数値を伴うデータポイントの1個または複数を無視することもできる。したがって、表3のデータに言及するときは、データポイント行のわずかな部分(5%未満、好ましくは0.5%未満などの1%未満)が利用されない状況も含まれることを当業者は理解されたい。
現在の図の解釈が完了して電子密度図が得られると、モデルから得られる位相と実験の位相を組み合わせ、したがって結晶構造のほとんどを規定することができる新しい電子密度図を作成することが可能である。
本明細書が提供する電子密度図から、3A4結晶構造の座標データを得ることができる。電子密度図は、モデルが図に合うようにモデル中の原子構造を配置することによって解釈される。モデルが図とどう一致するかの評価は、図と変換されたモデルの相関係数を計算すること、2Fo-Fc図の計算、または精緻化手順によるR因子およびフリーR因子の作成によって得ることができる。高分解能(例えば、2.5〜1.0Å)における電子密度図の一部の解釈を高品位図の場合には自動化することができる。分解能がより低い図(例えば、2.5Å未満)、または理想的な位相化統計(phasing statistics)に満たない位相から作成される図の場合には、解釈はより主観的であり、手入力が必要なことがある。次いで、これから得られる座標によって、原子位置の尺度がオングストローム単位で与えられる。座標は、3次元で形状を画成する相対的な1組の位置であるが、当業者は、異なる原点および/または軸を有するまったく異なる座標セットによって類似または同一の形状が画成されることを理解されたい。また、当業者は、残基骨格原子(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素-炭素-炭素骨格原子)の標準偏差が、残基骨格原子に対する表3のデータから得られる座標上で重ね合わせたときに、2.0Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満になるように構造原子の相対的原子位置を変化させると、一般に、P450-相互作用分子構造(interactivity molecular structure)の構造ベースの分析に対するその構造的諸特性および有用性の両方の点で表3から得られる構造と実質的に同じ構造になることを理解されたい。
同様に、当業者は、表3からの電子密度図から利用可能な水分子および/または基質分子の数および/または位置を変更することが、一般に、P450-相互作用構造の構造ベースの分析に対するこの構造の有用性に影響を及ぼさないことを理解されたい。したがって、本発明の態様としての本明細書の記載では、表3から利用可能な座標を異なる起点および/または軸に置き換える;座標上で残基骨格原子に対して重ね合わせたときに、残基骨格原子の標準偏差が2.0Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満であるように構造の原子の相対原子位置を変更する;ならびに/あるいは水分子および/または基質分子の数および/または位置を変更する場合も本発明の範囲内にある。
したがって、表3などから得られる座標データに本明細書で言及する場合には、表の1個または複数の個々の値がこのように変更された座標データを含む。「標準偏差」とは、平均からの偏差の二乗の相加平均の平方根を意味する。
当業者は、本発明の多数の用途において、表3のデータを使用して得られる構造の座標の必ずしもすべてを利用する必要はなく、単にそれらの一部を利用するだけでよいことを理解されたい。このような座標の一部を本明細書では「選択座標」とも称する。例えば、以下に示すように、3A4を用いて候補化合物をモデル化する方法においては、3A4の選択座標、例えば、3A4構造の少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも50個、さらにより好ましくは少なくとも500個、少なくとも1,000個などの少なくとも100個の原子を使用することができる。同様に、相同性モデリングおよび構造解析(structure solution)、ならびにデータ記憶および座標のコンピュータ支援操作を含めて、本明細書に記載する本発明の別の応用例は、表3における電子密度図から得られる座標のすべてまたは一部も利用することができる。
また、例えば、突然変異、アミノ酸残基の付加、置換および/または(1個または複数の3A4プロトマーの欠失を含めた)欠失によって3A4結晶構造が改変されると、3A4原子座標が変化する原因となり得る。しかし、3A4の1個または複数の結合部位に結合するリガンドが、改変された3A4の対応する結合部位に結合すると予想されるように改変された3A4の原子座標データも、本発明の態様としての本明細書の記載では本発明の範囲内にある。したがって、表3からの電子密度図から得られる座標に本明細書で言及する場合には、このようにして改変された座標も含む。改変データは、少なくとも1個の3A4結合用キャビティ(binding cavity)を規定することが好ましい。
本発明は、構造因子位相データを提供することによって、他の3A4結晶または相同タンパク質の結晶の電子密度モデルが、多異常回折(multiple anomalous diffraction)(MAD)構造決定またはMIRを実施する必要なしに得られる。したがって、本発明は、3A4である標的タンパク質、または3A4に相同である標的タンパク質の電子密度図を求める方法を提供する。この方法は、標的タンパク質の結晶を用意するステップと、前記タンパク質のX線回折を得るステップと、表3の構造因子位相データを参照することによって前記標的タンパク質の電子密度図を作成するステップとを含む。
結晶形が同じときには位相差分析が適用可能である。構造を比較するより一般的な方法は、電子密度図の分析に基づいている。したがって、本発明では、2つの図は、それらの図について計算される線形相関係数が0よりも大きい、より好ましくは0.25または0.5よりも大きい場合には同等とみなされることが好ましい。2つの図における電子密度が変量ρ1およびρ2によってそれぞれ規定される場合には、線形相関係数CCは以下で定義される。
Figure 2006503912
式中、
Figure 2006503912
および
Figure 2006503912
は、それぞれ2つの図の平均密度である。2つの図が同一である場合には、CCが1になることは明らかである。電子密度図の類似度の数量詞(quantifier)としてのCCの使用に関するさらなる詳細は以下のセクションKにある。
2つの図のCCを計算するために、以下の手順を使用することができる。まず、各図に対して、分子(すなわち、P450 3A4)マスクを決定する。これは、例えば、CCP4 DMプログラムを用いてP450 3A4分子を溶媒領域から識別することによって実施することができる。分子境界内の各グリッドポイントを「1」とし、境界外の各グリッドポイントを「0」とする。次いで、一方の図を変換して他方の図と最大一致させる。これは、例えば、CCP4 FFFEARプログラムを用いて2つの図の最良適合探索によって実施される。変換中には剛体の並進および回転が可能である。次いで、一方の図および対応するマスクを、他の図およびマスクのグリッドポイント上に内挿する。内挿は、付録1に提供したAstex-ROTMAPプログラムを用いて実施することができる。最後に、CCは、例えば、付録2に提供するAstex-DENCOR プログラムを用いて、マスクされた図に対して計算される。
また、本発明では、表3のデータから作成される電子密度図および1セットの原子座標は、表3のデータから作成される当該図と原子座標データから作成される別の電子密度図とで計算されるCCが0よりも大きい、より好ましくは0.25または0.5よりも大きい場合に、同等とみなされる。
この場合のCCの計算は、原子座標データから別の電子密度図を作成する追加の先行ステップとともに上で考察した手順に従うことができる。これは、好都合には、標準CCP4プログラムREFMACおよびFFTを用いて作成され、それぞれ構造因子、次いで電子密度を計算することができる。
C.結晶座標
別の態様においては、本発明は、表5の3次元原子座標を有するP450の結晶も提供する。表5の原子座標は、ループ領域(261〜270)から、タンパク質の他の領域ほどには明瞭でなく明白に解釈されない残基を除外する。このループが、異なる条件下、例えば、異なる結晶から得られるデータや化合物の添加などで異なるコンホメーションとることができることは考えられないわけではない。したがって、本発明の結晶は表5の座標を含み、ループ領域の座標は場合によってはさらに本明細書に記載されるとおりであってもよいが、このループ領域について他の原子座標も除外されない。
表5の原子座標によって規定される構造の有利な特徴は、約2.8Åの分解能を有することである。より具体的には、結合ポケット中の残基は十分分離されている。
本明細書に記載する3A4構造のさらなる利点は、それがリガンドが結合しておらず、アポ構造(apo structure)であることである。これによって、リガンドに浸透させるのに適切で、したがってココンプレックス(co-complex)構造を決定するのに特に適切になり、リガンドによるコンホメーション上の偏りがないので、相同モデリングの目的のためにも理想的である。
表5および6にP450 3A4の原子座標データを示す。表5および6において、第3列は原子を示し、第4列は残基タイプを示し、第5列は鎖の識別(この場合はA鎖)であり、第6列は残基番号(原子は、完全長野生型タンパク質に対して番号付けされている)であり、第7列、第8列および第9列は、目的原子のそれぞれX、Y、Z座標であり、第10列は原子の占有率であり、第11列は原子の温度因子であり、第12列は原子タイプである。
表5および6は内部一貫した形式で並べられている。例えば(Tyr25の場合を除いて)、各アミノ酸残基の原子座標は、骨格窒素原子が最初、続いてCAと記されたC-アルファ骨格炭素原子、続いて(標準的な慣例に従って記された)側鎖残基、最後にタンパク質骨格の炭素および酸素となるように列記されている。これらの原子の異なる順序、または側鎖残基もしくはヘム分子原子の異なる名称を含み得る別のファイル形式(例えば、EBI Macromolecular Structure Database(Hinxton、UK)のそれと一致している形式など)を使用することができ、または当業者には好ましい。しかし、異なるファイル形式を使用して表の座標を表し、または操作することが本発明の範囲内にあることは明らかである。
表5および6の座標によって、原子位置の尺度がオングストロームで小数点以下3桁まで与えられる。座標は、形状を3次元で画成する相対的な1組の位置であるが、当業者は、異なる原点および/または軸を有するまったく異なる座標セットによって類似または同一の形状が画成されることを理解されたい。また、当業者は、残基骨格原子(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素-炭素-炭素骨格原子)の標準偏差が、残基骨格原子に対する表5または6の座標上で重ね合わせたときに、2.0Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満になるように構造原子の相対的原子位置を変化させると、一般に、P450-相互作用分子構造の構造ベースの分析に対するその構造的諸特性および有用性の両方の点で表5または6の構造と実質的に同じ構造になることを理解されたい。
同様に当業者は、表5の水分子の数および/または位置の変更が、一般に、P450-相互作用構造の構造に基づく分析に対する構造の有用性に影響を及ぼさないことを理解されたい。したがって、本発明の態様としての本明細書の記載では、表5または6の座標を異なる起点および/または軸に置き換える;表5または6の座標上で残基骨格原子に対して重ね合わせたときに、残基骨格原子の標準偏差が2.0Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満であるように構造の原子の相対原子位置を変える;ならびに/あるいは水分子の数および/または位置を変更する場合も本発明の範囲内にある。
したがって、表5または6などの座標データに本明細書で言及する場合には、表の1個または複数の個々の値がこのように変更される座標データを含む。「標準偏差」とは、平均からの偏差の二乗の相加平均の平方根を意味する。
上記ループ領域に関して、これまで明らかとなった種々のP450構造の比較から、タンパク質内の様々なループが、しばしば化合物結合に応答して極めて異なるコンホメーションをとることができることが示唆される。本明細書において結晶化された3A4のアポ型において、ループ領域261〜270の可能な形を表6に示す。したがって、一態様においては、本発明は、表5の原子座標を有するアミノ酸を含むP450結晶を提供する。ここで、この結晶は、さらに、表6の原子座標を有するアミノ酸を含む。
明示的に反対のことを述べない限り、または状況から明らかでない限り、本願を通して表5の全座標もしくは選択座標または表5から得られる全座標もしくは選択座標の使用は、追加の座標、特に表6の座標の一部もしくは全部の使用を除外しない。
タンパク質構造の類似度は、常法に従って、2組の原子間の空間における位置決めの差を測定する標準偏差(r.m.s.d.)によって表され、測定される。r.m.s.d.は、等価な原子間の距離を、それらの最適な重ね合わせ後に比較する。r.m.s.d.は、すべての原子にわたって、残基骨格原子(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素-炭素-炭素骨格原子)、主鎖原子のみ(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素-炭素-酸素-炭素骨格原子)、側鎖原子のみにわたって、またはより一般的には、C-アルファ原子のみにわたって計算することができる。本発明では、r.m.s.d.は、これらのいずれかにわたって、以下に概説する方法を用いて計算することができる。
タンパク質構造を比較する方法は、Methods of Enzymology、115巻、397〜420ページに考察されている。r.m.s.d.を計算するのに必要な最小二乗代数は、RossmanおよびArgos(J.Biol.Chem.、250巻、7525ページ(1975))にあるが、より速い方法がKabsch(Acta Crystallogr.、セクションA、A92、922(1976));Acta Cryst.A34、827-828(1978))、Hendrickson(Acta Crystallogr.、セクションA、A35、158(1979));McLachan(J.Mol.Biol.、128巻、49ページ(1979))およびKearsley(Acta Crystallogr.、セクションA、A45、208(1989))によって説明されている。一部のアルゴリズムは、FerroおよびHermans(FerroおよびHermans、Acta Crystallographic、A33、345〜347(1977))によって述べられているように、1個の分子をもう1個の分子に対して移動させる繰り返し手順を使用する。他の方法、例えば、Kabschのアルゴリズムは、最良適合を直接捜し出す。
r.m.s.dを求めるプログラムとしては、MNYFIT(COMPOSERと呼ばれるプログラム集団の一部、Sutcliffe,M.J.、Haneef,I.、Carney,D.およびBlundell,T.L.(1987)Protein Engineering、1、377〜384)、MAPS(Lu,G.An Approach for Multiple Alignment of Protein Structures(1998、原稿およびhttp://bioinfo1.mbfys.lu.se/TOP/maps.html))などがある。
C-アルファ原子を考慮することが普通であり、次いで、rmsdは、LSQKAB(Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763)、QUANTA(Jones等、Acta Crystallography A47(1991)、110〜119およびAccelerys、San Diego、CAから市販されている)、Insight(Accelerys、San Diego、CAから市販されている)、Sybyl(登録商標)(Tripos,Inc.、St Louisから市販されている)、O(Jones等、Acta Crystallographica、A47、(1991)、110〜119)、他の座標フィッティングプログラムなどのプログラムを用いて計算することができる。
例えば、プログラムLSQKABおよびOにおいては、ユーザーは、計算のために組み合わせられる2種類のタンパク質中の残基を定義することができる。あるいは、残基の組合せは、2種類のタンパク質の配列アラインメントを作成することによって決定することができ、配列アラインメント用プログラムはセクションGにより詳細に考察されている。次いで、このアラインメントに従って原子座標を重ねることができ、r.m.s.d.値が計算される。プログラムSequoia(C.M.Bruns、I.Hubatsch、M.Ridderstrom、B.Mannervik、およびJ.A.Tainer(1999)Human Glutathione Transferase A4-4 Crystal Structures and Mutagenesis Reveal the Basis of High Catalytic Efficiency with Toxic Lipid Peroxidation Products,Journal of Molecular Biology 288(3):427〜439)は、相同タンパク質配列のアラインメント、および相同タンパク質原子座標の重ね合わせを実行する。あるいは、プログラムAstex-KFIT(付録4参照)を使用することができる。整列後、上述したプログラムを用いてr.m.s.d.を計算することができる。同一配列、または同一性が高い配列の場合には、タンパク質の構造アラインメントを上で概説したように手作業によって、または自動的に実施することができる。別の手法は、配列を考慮せずにタンパク質原子座標の重ね合わせを作成することである。
大きく異なる座標セットを比較するときには、C-アルファ原子のみにわたるr.m.s.d.値を計算することがより一般的である。側鎖の移動を解析するときには全原子にわたってr.m.s.d.を計算することが特に有用であり、これはLSQKABおよび他のプログラムを使用して実施することができる。
したがって、例えば、構造原子の原子位置を最高で約0.5Å、好ましくは最高で約0.3Åどの方向に変えても、例えば分子構造ベースの分析に対して、その構造的諸特性および有用性の両方について表5の構造と実質的に同じ構造になる。
当業者は、本発明の多数の用途において、表5のすべての座標を利用する必要がなく、単にそれらの一部を利用するだけでよいことを理解されたい。例えば、以下に記述するように、P450を基に候補化合物を設計する方法においては、3A4の選択座標を使用することができる。
「選択座標」とは、3A4構造の例えば少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも50個、さらにより好ましくは少なくとも100個、例えば少なくとも500個または少なくとも1000個の原子を意味する。同様に、相同モデリングおよび構造解析、ならびに座標のデータ記憶およびコンピュータ支援操作を含めて、本明細書に記載する本発明の他の用途では、表5の座標のすべてまたは一部(すなわち、選択座標)を利用することもできる。選択座標は、本明細書の以下に記載するように、3A4 P450結合ポケットに見られる原子、具体的には表7の原子、より具体的には表8の原子を含むまたは原子からなる。
D.構造の記述
本明細書で述べる3A4の構造においては、最初に分離可能な残基はTyr25であり、最後の残基はGly498である(精製されたタンパク質は、配列番号2に示すように、野生型配列の(M18907由来の野生型ナンバリングを用いて)残基1、2および25〜503ならびに4個のヒスチジンタグを含む)。タンパク質の全体の折りたたみは、これまで解析されたすべてのP450構造に典型的であり、2次構造要素は、P450s Ravichandran,K.G.、Boddupalli,S.S.、Hasermann,C.A.、Peterson,J.A.およびDeisenhofer,J.(1993)Science 261、731〜736に採用された規則に従って命名される。ヘムは、単一の配位システイン442およびヘムプロピオナート間の水素結合、ならびにArg105、Trp126、Arg375およびArg440を含む分子内の中央にある。
これまで解析されたP450構造と3A4の構造ではいくつかの特徴的な差がある。これまで哺乳動物のP450構造では認められなかった、N末端に向かう短いヘリックス(ここではヘリックスA''と称する)がヘリックスA'の前にある。B-Cループは、以前に解析された(国際公開第03/035693号A2に含まれる)ヒトP450 2C9構造におけるよりも3A4においてらせん性が少ない。F-Gループ領域に沿ったこの領域は、アクセスチャネルの形成に結びつけられてきた(Podust,L.M.、Stojan,J.、Poulos,T.L.、およびWaterman,M.R.(2001)J Inorg Biochem 87、227〜235)。
(2C9構造におけるよりも短い)Fヘリックス、F'ヘリックスおよび(より短い)G'ヘリックスにもやや差がある。FGループは、2C9のFGループにおける23残基と比較して、34残基(210〜243)を含み、ヘリックスF'およびヘリックスG'を含む。他のP450と比較すると、3A4のFGループが長いのは、FGループ自体の長さよりもヘリックスFが不足しているためである。B-CループとF-Gループは近接しており、活性部位の2面を形成する。3A4がいくつかの化合物に同時に結合することができ、1000Daを超える大きな化合物(例えば、エリスロマイシン)に結合できることは認知されている。これらの領域の移動は、化合物の出入りに必要となることがあり、別のコンホメーションにおいてはより構造化されることがある。へリックスGとH、およびへリックスHとIの間のループは、電子密度図において明瞭に分離されておらず(残基261〜270、277〜290)、モデルから除外された。
基質のない3A4の活性部位の際立った特徴は、ヘムの上のフェニルアラニン残基のクラスター(Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241、Phe304)である。これらのうち一部は、部位特異的突然変異誘発によって関係付けられ、協同性および立体選択性にある役割を果たす。これらの残基の大部分は、タンパク質のCYP 2Cファミリーについて最初に特定された基質領域部位(substrate region site)(SRS)(Gotoh,O.(1992)J Biol Chem 267、83〜90)内にある。4個のフェニルアラニン残基の別のクラスターは、直下のヘム自体の側にあり、化合物結合にとってあまり重要ではない位置にある。
3A4が示す動力学は複雑であり、多数の文献例が、3A4の活性部位内に同時に収容された1個または複数の化合物を引き合いに出している(Domanski等、Biochemistry 2001、40、10150〜10160)。部位特異的突然変異誘発により、様々な基質が異なる活性部位領域において結合できることが示唆されている。ホモトロピック協同性(基質と、同じ化学構造の1個または複数のエフェクター分子との相互作用)およびヘテロトロピック協同性(この場合、基質とエフェクター分子は異なる化学構造を有する)の証拠もある。
P450結合ポケット残基の特定および使用
3A4の結晶構造によって、酵素の結合部位に沿って並ぶすべての残基を正確に特定することが初めて可能になった(表7)。様々な出所によって触媒作用部位中にあることが提案されたいくつかの残基は、結合ポケット残基ではなく、触媒作用性残基(catalytic residue)を所定の位置に保持する残基であることを今回示すことができた。
Figure 2006503912
これらの残基の一部は、モデリング(例えば、相同性モデリング、SRS案、3D/4D-QSAR、配列アラインメントまたは突然変異誘発研究)から3A4の結合部位中に存在すると以前に推測されたが、結晶構造の助けを借りて、今回、3A4結合ポケットに沿って並ぶことが判明した。結合ポケットにあるいくつかの残基は、結合部位残基としてこれまで特定されていなかった。これらを表8に示す。これらを特定することによって、化合物結合のモデル化が大いに促進される。
Figure 2006503912
したがって、本発明の好ましい態様においては、本発明が本発明の方法における選択座標の使用を企図する場合には、このような選択座標は、表7または8から選択されるアミノ酸残基の少なくとも1個の座標、好ましくは少なくとも1個の側鎖座標を含む。
選択座標は、表7または8からの少なくとも1個のアミノ酸に関係する表5または表6のすべての原子の座標を含むことが好ましい。
特定のアミノ酸のすべての原子と単にいくつかの原子のどちらを選択しても、選択座標の少なくとも2個、より好ましくは少なくとも5個、最も好ましくは少なくとも10個が、対応する数の異なるアミノ酸残基からの側鎖残基であることも好ましい。これらは、表7または8から、またはそれらの組合せからもっぱら選択することができる。表8の少なくとも1個の側鎖残基座標が含まれることが好ましい。
E.キメラ
所望の諸特性を得るためにキメラタンパク質を使用することは、現在、科学文献ではよくあることである。例えば、Sieber等(Nature Biotechnology(2001)19、456〜460)は、これは、ヒトチトクロムP450アイソフォーム1A2と細菌P450 BM3のハイブリッドを作製した1A2の特異性を有し、BM3の望ましい発現および溶解特性を有するタンパク質を調製するためである。活性部位キメラも記載されている。例えば、Swairjo等(Biochemistry(1998)37、10928〜10936)は、HIV-1およびHIV-2プロテアーゼのループキメラを作製して阻害剤結合特異性の決定因子を理解しようとした。
特に関連するのは、活性部位が、構造情報を得るための代理システムを提供するように改変されている場合である。すなわち、Ikuta等(J Biol Chem(2001)276、27548〜27554)は、構造データを得ることができるcdk2の活性部位を改変して、X線構造を現在入手できないcdk4の活性部位に近似させた。このようにして、彼らは、cdk4阻害剤設計に有用であるキメラタンパク質からタンパク質/リガンド構造を得ることができた。同様に、極めて関係深いアイソフォーム(3A1、3A5、3A7、3A12、3A43など)の1次配列の比較に基づいて、3A4タンパク質の活性部位をこれらのアイソフォームに類似するように改変することができる。キメラタンパク質のタンパク質構造またはタンパク質/リガンド構造を、その関係するP450アイソフォームの基質である化合物について代謝の構造ベースの変更に使用することができる。
哺乳動物のP450間のアミノ酸配列同一性の割合が20〜80%であっても、哺乳動物のP450全体の折りたたみは、極めて類似し、構造要素の空間分布は同じであると予想される。また、このクラスの酵素は、ポリペプチド鎖の非隣接部に位置する限定された数の残基にのみ依拠する明確な基質特異性を示す。P450の基質結合ポケットは、一般に、Gotoh(Gotoh,O、J.Biol.Chem、267;83〜90(1992))によって定義されたSRS領域(基質認識部位)およびその分子のループ内に存在する残基で構成される。
(i)3A4様キメラへの他のP450タンパク質の変換
したがって、本発明の態様は、関係するアイソフォームの活性部位を、活性部位が模倣するようなP450タンパク質の改変に関する。例えば、本明細書に含まれるヒト3A4構造の活性部位の構造および残基の知識から、当業者は、活性部位がヒト3A4のそれを模倣するようにP450タンパク質を改変できる。次いで、このタンパク質を用いて、キメラP450タンパク質を用いたタンパク質/リガンド複合体構造の決定を通して化合物結合に関する情報を得ることができる。
例えば、一態様においては、本発明は、P450 3A4タンパク質の基質特異性と実質的に同じ基質特異性を与える結合空隙を有するキメラタンパク質を提供する。ここで、キメラタンパク質結合空隙は、P450 3A4結合空隙に沿って並ぶ選択されたP450 3A4原子に対応する複数の原子がそれに沿って並び、その複数の原子の相対位置は、選択されたP450 3A4原子の表5によって定義される相対位置に対応している。
70%を超えるアミノ酸同一性を示すP450アイソフォームの基質特異性を相互変換するために、ほんの数個の変化しか必要としないと仮定することができる。3A4は3A7と89%同一であり、3A43はCYP3A4、3A5および3A7とアミノ酸レベルでそれぞれ76、76および71%の配列同一性がある(Westlind等、Biochemical and Biophysical Research Communications(2001)、281(5)、1349〜1355;Gellner等、Pharmacogenetics(2001)、11(2)、111〜121)。例えば、3A4と3A5は84%同一であるが、これらは基質特異性が明らかに異なる(Aoyama T;Yamano S;Waxman D J;Lapenson D P;Meyer U A;Fischer V;Tyndale R;Inaba T;Kalow W;Gelboin H V;Journal Of Biological Chemistry(1989 Jun 25)、264(18)、10388〜95)。CYP3A4はミフェプリストーンによって阻害されるが、CYP3A5は阻害されない。Khan等(Khan,Kishore K.;He,You Qun;Correia,Maria Almira;Halpert,James R;Drug Metabolism and Disposition (2002)、30(9)、985〜990)は、3A4/3A5キメラタンパク質のパネルを使用して、CYP3A5が阻害されないことを説明する配列差を特定した。これらの研究は、SRS領域内の残基を突然変異させることによって、3A4と3A5の間で基質特異性が移行する可能性を示した。CYP3A4およびCYP3A5は、アフラトキシンB1(AFB1)生体内変化に対する異なる立体選択性も示し、これらの差の原因となる構造上の特徴を理解するための部位特異的突然変異誘発プログラムによって、SRS領域2内の残基のみがこれらの差の原因であることが結論付けられた(Huifen Wang、Ryan Dick、Hequn Yin、Estefania Licad-Coles、Deanna L.Kroetz、Grazyna Szklarz、Greg Harlow、James R.HalpertおよびMaria Almira Correia、Biochemistry、37(36)、12536〜12545、1998)。
酵素の基質特異性は、一般に、ポリペプチド鎖の非隣接部に位置する限られた数の残基にのみ依拠する。これらのアイソフォームの基質特異性は、部位特異的突然変異誘発によりこれらの残基を置換することによって解析することができる。別のP450タンパク質を3A4様キメラに変換するのに必要な最小変化は、結合ポケット、特に表7または8、より好ましくは表8のアミノ酸結合ポケット残基から選択される少なくとも2個のアミノ酸とすることができる。これらの突然変異を、例えばStratagene QuikChange(商標)部位特異的突然変異誘発キットまたはカセット突然変異誘発法(Ausubel,F.M.、Brent,R.、Kingston,R.E.等編.Current Protocols in Molecular Biology.John Wiley&Sons,Inc.、New York、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.(1989).Molecular Cloning:a Laboratory Manual.2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY.)を用いた部位特異的突然変異誘発によって導入することができる。したがって、本発明は、表5の残基によって規定される1個または複数の結合ポケットを有し、好ましくは表7または8の結合ポケット残基の一部またはすべてを含むキメラタンパク質を提供する。
(ii)3A4から別の3Aアイソフォームへの変換
この戦略は、明らかに、基質特異性が重なっていてもいなくても高い配列相同性を示す異なる種からのタンパク質に適用することができる。3A4に対して解析された結晶構造を使用することによって、これらのタンパク質の基質ポケットにおける様々な分子の結合形式のキャラクタリゼーションが可能である。これによって、ヒトアイソフォームにおいて改変すべき残基を特定することが可能となり、異なる基質または位置選択的優先度でそれらを代謝酵素に変換することができる。
一実施形態においては、3Aサブファミリーの別の酵素のアイソフォームであるキメラ3A4酵素が産生される。例えば、3A4は、少数のアミノ酸変化を含む3A1様、3A5様、3A7様、3A12様または3A43様アイソフォームに変換することができる。ヒト3A4、3A5、3A7および3A43アイソフォームに対して実施された構造/活性研究に関する文献から利用可能な情報、ならびにヒト3A4の構造分析に基づいて、本発明者らは、3A4タンパク質を、上記参考文献に基づいて3A5、3A7または3A43、特に3A5に起因する基質特異性を有する3A5様、3A7様または3A43様アイソフォームに変換することができると推論している。これらの突然変異は、本明細書に記載する部位特異的突然変異誘発法またはカセット突然変異誘発法によって導入することができる。
このようなキメラの結晶化およびそれらの3次元構造の決定は、本発明者らの3A4タンパク質が、高分解能で回折する結晶を生成するかに依拠している。その目的は、タンパク質の結晶化を可能にするタンパク質の外殻を改変せずに、3A4の内部を改変して3A5、3A7または3A43の新しい基質結合部位を生成させることである。
F.相同モデリング
本発明は、他のタンパク質(以下、標的P450タンパク質と称する)の相同モデリング手段も提供する。「相同モデリング」とは、X線結晶データ、または表3から計算される電子密度図から導出可能な座標データの操作に基づくコンピュータ支援の新規構造予測のどちらかに基づいて、関係するP450構造を予測することを意味する。
「相同モデリング」は、添付の実施例においてその構造が決定された3A4タンパク質のアナログまたはホモログである標的P450タンパク質に拡張される。「相同モデリング」は、3A4タンパク質自体のP450タンパク質突然変異体にも拡張される。
「相同領域」という用語は、同一である、または類似の(例えば、脂肪族、芳香族、極性、負に帯電した、または正に帯電した)側鎖化学基を有する、2つの配列におけるアミノ酸残基である。相同領域が同一および類似の残基は、当業者によってそれぞれ「不変異体」および「保存的」と記述されることがある。
一般に、この方法は、アミノ酸配列を整列させることによって、配列番号2の3A4タンパク質のアミノ酸配列を標的P450タンパク質と比較する必要がある。次いで、これらの配列中のアミノ酸を比較し、相同であるアミノ酸のグループ(都合上「対応領域」と称する)をグループ化する。この方法によって、ポリペプチドの保存領域が検出され、アミノ酸の挿入または欠失が明らかになる。
アミノ酸配列間の相同性は、市販のアルゴリズムを用いて決定することができる。(National Center for Biotechnology Informationによって提供される)BLAST、ギャップドBLAST、BLASTN、PSI-BLASTおよびBLAST 2プログラムは、この目的のために当分野で広範に使用され、2つのアミノ酸配列の相同領域を整列させることができる。これらを、デフォルトのパラメータで使用して、配列番号2のタンパク質と、設計しようとする他の標的P450タンパク質とのアミノ酸配列間の相同の程度を決定することができる。
アナログは、類似した3次元構造および/または機能を有し、配列レベルにおいて共通の祖先である証拠がほとんどないタンパク質と定義される。
ホモログは、共通の祖先の証拠を有する、すなわち進化の分岐の結果である可能性が高いタンパク質として定義され、(通常、百分率で表される)配列同一性の程度に基づいて遠隔、中距離および近接の細区画に分けられる。
ホモログは、本明細書では、少なくとも15%の配列同一性を有するタンパク質、または3A4に特徴的な少なくとも1個の機能性ドメインを有するタンパク質と定義される。これには、3A4の多型も含まれる。
ホモログには、オルソログとパラログの2つのタイプがある。オルソログは、異なる生物における相同遺伝子と定義され、すなわち、それらの遺伝子は、それらを生成した種分化が同時に起きた共通の祖先を有している。パラログは、遺伝子/染色体/ゲノム複製に由来する同じ生物、すなわち、最後の種分化後に発生したそれらの遺伝子の共通の祖先における相同遺伝子と定義される。
ホモログは、セクション(A)に記載する対立遺伝子または突然変異体などの3A4の多型の場合もある。
既知および未知の構造を有するポリペプチドのアミノ酸配列を整列させた後、既知構造を有するポリペプチドのコンピュータ表示における保存アミノ酸の構造を、構造が未知であるポリペプチドの対応するアミノ酸に移す。例えば、既知構造のアミノ酸配列におけるチロシンを、構造が未知なアミノ酸配列中の対応する相同アミノ酸であるフェニルアラニンで置換することができる。
非保存領域に位置するアミノ酸の構造は、標準ペプチドの幾何学的配置を用いて、または分子動力学などの分子シミュレーション技術を用いて手作業で割り当てることができる。プロセスの最終段階は、分子動力学および/またはエネルギー最小化を使用して全体構造を精緻化することによって実施される。
相同モデリング自体は、当業者に周知の技術である(例えば、Greer、Science、Vol.228、(1985)、1055、およびBlundell等、Eur.J.Biochem、Vol.172、(1988)、513参照)。これらの文献に記載されているこの技術、および当分野で一般に利用可能である他の相同モデリング技術を、本発明を実施するのに使用することができる。
相同性モデリングは、本発明を用いて得られる3A4の3次元原子座標モデルについて実施することができる。好ましいモデルは表5のモデルである。すなわち、当業者は、表3の少なくとも列1、2、3、6および7のデータを用意するステップと、前記データの電子密度図を構築するステップとを含む方法によって、チトクロムP450 3A4の結晶の3次元構造表示を得ることができる。この方法は、前記表の列8のデータを参照することによって実施してもよい。当業者は、電子密度図を得ると、前記図に合致する3A4の初期モデルを作成することができ、次いで、その初期モデルを前記表の列4および5のデータを参照することによって精緻化することができる。精緻化は、他の3A4結晶構造から作成された他のモデルでも行うことができる。
次いで、精緻化データは、前記結晶における3A4の1個または複数の原子の3次元座標を計算して3A4の第1の3次元構造を得るステップを含む方法に使用することができる。前記第1の構造における1個または複数の原子の位置を変更して、前記第1の構造からのr.m.s.dが2.0Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満である3次元座標を有する第2の構造を提供することができる。これは、様々な理由によって、例えば、別のP450モデルに照らして、またはさらに最適化が必要となり得る3A4構造領域に手作業で合致させるために、実施することができる。
したがって、本発明は、
(a)3次元構造が未知である標的P450タンパク質のアミノ酸配列表示を、配列番号2のP450のアミノ酸配列と整列させて、アミノ酸配列の相同領域を一致させるステップと、
(b)構造が未知である前記標的P450の一致した相同領域の構造を、上述したように得られるP450構造の対応領域、および/または表5のそれ若しくはその選択座標を基に設計するステップと、
(c)前記一致した相同領域の構造を実質的に保存する、構造が未知な前記標的P450のコンホメーションを(例えば、構造が未知な標的P450内に良好な相互作用が形成されるように、および/または低エネルギーコンホメーションが形成されるように)決定するステップとを含む、相同モデリングの方法を提供する。
ステップ(a)〜(c)の1つまたはすべてをコンピュータモデリングによって実施することが好ましい。
表3から得られる座標データ、例えば、表5の座標データまたはその選択座標は、別のヒトP450タンパク質、特に2C9、2C19、2D6、3A5、3A7、1A1、1A2、2E1、好ましくは3A5、3A7、3A43などのヒトP450の相同性モデリングに特に有利である。これらのタンパク質は、上述した本発明の方法における標的P450タンパク質とすることができる。
P450構造をインシリコで利用する本明細書に記載する本発明の態様は、本発明の上記態様によって得られるP450の相同モデルにも同じく適用することができ、この適用例は本発明の別の態様を形成する。したがって、上述の方法によってP450のコンホメーションが決定されれば、このようなコンホメーションを、本明細書に記載する合理的なドラッグデザインのコンピュータベースの方法に使用することができる。
G.構造解析
ヒト3A4 P450の電子密度図または3A4の原子座標データは、3A4の別の結晶形、突然変異体、3A4のココンプレックスを含めた別の標的P450タンパク質の結晶構造を解析するために使用することもできる。この場合、これらの標的P450タンパク質のX線回折データまたはNMR分光学的データが作成され、構造を得るために解釈が必要になる。
3A4の場合、このタンパク質は、複数の結晶形で結晶化する。本発明によって提供される表3または5のデータ、あるいはその一部は、3A4のこれら別の結晶形の構造を解析するのに特に有用である。それは、3A4突然変異体、3A4ココンプレックス、または3A4の任意の機能性ドメインと有意なアミノ酸配列相同性を有する任意の他のタンパク質の結晶形の構造を解析するためにも使用することができる。
他の標的P450タンパク質、特に上のセクションFで言及したヒトP450タンパク質の場合、本発明によって、X線回折の生データが生成する場合、このような標的の構造がより容易に得られるようになる。
したがって、3次元構造が未知な標的P450に対してX線結晶学またはNMR分光データが提供される場合には、表3から得られるP450の電子密度図、または表5から得られる原子座標データを用いてそのデータを解釈して、当分野で周知の技術、例えばX線結晶学の場合の位相調整およびNMRスペクトルにおける支援ピーク帰属(assisting peak assignment)によって、他のP450の可能な構造を得ることができる。
これらの目的で使用することができる1つの方法は、分子置換である。この方法では、未知の結晶構造は、それが3A4、3A4突然変異体、3A4キメラまたは3A4ココンプレックスの別の結晶形、あるいは3A4の任意の機能性ドメインに対してアミノ酸配列相同性を有する標的P450タンパク質の結晶であっても、表3から導出可能な3A4構造座標、または本発明の表5の座標を用いて決定することができる。また、表3に規定する電子密度図をこの目的に直接使用することができる。この方法によって、未知結晶の正確な構造形態が、最初からこのような情報を決定しようとするよりも迅速かつ効率的に提供される。
分子置換を実施するための当分野で既知のコンピュータプログラムの例は、CNX(Brunger A.T.;Adams P.D.;Rice L.M.、Current Opinion in Structure Biology、8巻、5号、1998年10月、606〜611ページ(Accelrys San Diego、CAからも市販されている)、MOLREP(A.Vagin、A.Teplyakov、MOLREP: an automated program for molecular replacement、J.Appl.Cryst.(1997) 30、1022〜1025、CCP4スウィートの一部)、またはAMoRe(Navaza,J.(1994).AMoRe:an automated package for molecular replacement.Acta Cryst.A50、157〜163)である。
したがって、さらに別の態様においては、本発明は、タンパク質の構造を決定する方法を提供する。この方法は、
表3の電子密度図から得られる座標を用意するステップと、
前記タンパク質の構造を提供するように、前記タンパク質の結晶単位格子における座標の位置を決定するステップとを含む。
これらの座標は、表5の座標またはその選択座標であることが好ましく、表7、より好ましくは表8に示すアミノ酸残基の原子座標を含むことができる。
さらに別の態様においては、本発明は、タンパク質の構造を決定する方法を提供する。この方法は、
表3の構造因子および位相を用意するステップと、
前記タンパク質の構造を提供するように、前記タンパク質の結晶単位格子における検索モデルの位置を決定するステップとを含む。
本発明は、表3または5のデータを操作することによって、このようなタンパク質のNMRスペクトルのピークを帰属させるために使用することもできる。
本発明の好ましい態様においては、これらの座標を使用して、標的3A4、特に3A4のホモログ、例えば、3A5、3A7、3A43などのP450の構造を解析することもできる。
H.構造因子および位相データのさらなる用途
表3に含まれるデータによって、溶媒平滑化位相(列7)および加重構造因子(列6)を用いて電子密度図の計算が可能になる。また、このデータによって、溶媒平滑化位相(列7)、性能指数(列8)、および観測された構造因子振幅(列4)を用いて電子密度図の計算が可能になる。
表3に提供される位相を使用して、同じまたは関係する3A4の結晶形、あるいは同じまたは関係する相同タンパク質の結晶形からの性能指数および異なる構造因子振幅とともに図を計算することもできる。
これらの図のすべてを、セクションGで述べたように、別の相同タンパク質、特に3A4ホモログの位相調整された分子置換に使用することができる。
したがって、本発明の態様は、
a)溶媒平滑化構造因子振幅(表3)とともに図を計算するステップ、あるいは
b)性能指数および測定された構造因子振幅(表3)とともに図を計算するステップ、あるいは
c)同じもしくは関係する3A4の結晶形または同じもしくは関係する3A4ホモログの結晶形から得られる性能指数(表3)および構造因子振幅とともに図を計算するステップ、ならびに
d)ステップa)、b)またはc)から得られたこれらの電子密度(実空間)のいずれかを分子置換に使用するステップのために表3(逆格子空間)の位相を使用する方法である。
また、これらの構造因子および位相から計算される図は、CYP 3A4の異なる結晶形間で平均される交差結晶形(cross crystal form)に使用することができる。異なる3A4の結晶形または3A4ホモログの結晶形が得られた場合には、表3のデータを逆格子空間における交差結晶平均に使用して、いずれかの結晶形の位相を改善することができる。
複合体を結晶化し、分析することができ、差分フーリエ電子密度図(difference Fourier electron density map)を、浸透または共結晶化された3A4のX線回折パターン、ならびに表3の構造因子および位相に基づいて計算することができる。次いで、差分フーリエ電子密度図を分析して、特定の化合物が3A4に結合しおよび/または3A4のコンホメーションを変化させるかどうか、およびそれらの場所を明らかにすることができる。
したがって、表3の構造因子と、浸透または共結晶化によってリガンドが導入された結晶から誘導される構造因子との差を使用することによって、リガンド結合をスクリーニングすることが可能である。次いで、表3の位相を使用して差分図を作成することができる。
したがって、本発明の別の態様は、差分フーリエ図を計算してリガンドが結合するかどうか、およびその結合形式を特定するために表3の位相を使用することである。
a)(表3に示す)測定振幅とリガンドココンプレックスから得られる構造因子振幅との(性能指数とともに)差分フーリエ図を計算するステップ、あるいは
b)リガンドおよび/または重原子を検出するために任意の2組の構造因子振幅間の(性能指数とともに)差分フーリエ図を計算するステップ、あるいは
c)異常散乱に寄与するリガンドおよび/または重原子を検出するために任意の構造因子振幅に対して(性能指数とともに)異常フーリエ図を計算するステップ。
I.コンピュータシステム
別の態様においては、本発明は、システム、特にコンピュータシステムを提供する。このシステムは、(a)表3から得られる電子密度図、あるいはそれから得られる、P450の3次元構造または少なくともその選択座標を規定する座標データ、(b)表3のデータであり、3A4の構造因子データ(構造因子は、回折波の振幅および位相を含む)、(c)表3から誘導される座標データに基づいた標的の相同モデリングによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データ、(d)表3による電子密度図またはそれから得られる座標データを参照することによってX線結晶学データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データ、あるいは(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データのいずれかを含む。
好ましい態様においては、原子座標データは、表5のデータまたはその選択座標である。
例えば、コンピュータシステムは、(i)コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体と、(ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理するための命令を記憶するワーキングメモリと、(iii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理し、それによって構造を作成しかつ/または合理的なドラッグデザインを実施する、前記ワーキングメモリおよび前記コンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体に接続された中央処理装置とを備えることができる。このコンピュータシステムは、前記中央処理装置に接続された、前記構造を表示するディスプレイをさらに備えることができる。
本発明は、標的P450タンパク質の原子座標データを含むそのようなシステムも提供する。そのようなデータは、本明細書に記載する本発明の方法に従って、表3によって提供される出発データに基づいて作成される。一態様においては、このようなデータは、表5のデータまたはその選択座標である。
このようなデータは、P450タンパク質の作用機序を分析し、および/またはP450によって代謝される化合物などP450と相互作用する化合物の合理的なドラッグデザインを実施するための構造の作成を含めて、多くの目的に有用である。
別の態様においては、本発明は、(a)記録された、表3から導出可能な電子密度図、またはそれから得られる、P450の3次元構造を規定する座標データ、または少なくともその選択座標、(b)記録されたP450の構造因子データ、表3の構造因子データ、(c)表3から導出可能な座標データに基づく標的の相同モデリングによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データ、(d)表3のデータを参照してX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データ、あるいは(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能な構造因子データの少なくとも1個を含むコンピュータ読取り可能な媒体を提供する。原子座標データは、表5のデータまたはその選択座標とすることができる。
別の態様においては、本発明は、コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体を提供する。ここで、このデータは、表5のP450、または前記P450のホモログの構造座標のすべてまたは一部(例えば、本明細書に定義する選択座標)によって規定され、前記ホモログは、Cαまたは表5の骨格原子(窒素-炭素α-炭素)からの標準偏差が2Å未満、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満である骨格原子を含む。
本明細書で使用する「コンピュータ読取り可能な媒体」とは、コンピュータによって直接読取りおよびアクセス可能な任意の媒体を指す。このような媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク記憶媒体、磁気テープなどの磁気記憶媒体;光ディスク、CD-ROMなどの光記憶媒体;RAM、ROMなどの電気的記憶媒体;磁気/光記憶媒体などこれらのカテゴリのハイブリッドなどがあるが、これらだけに限定されない。
このようなコンピュータ読取り可能な媒体を提供することによって、表3から得られる原子座標データをモデルP450またはその選択座標に常に利用することができる。例えば、RASMOL(Sayle等、TIBS、Vol.20、(1995)、374)は、構造決定および/または合理的なドラッグデザインのための原子座標データのアクセスおよび分析を可能にする公開されたコンピュータソフトウエアパッケージである。
本明細書において使用する「コンピュータシステム」とは、表3から得られる原子座標データ(例えば、表5のデータまたはその選択座標)、ならびに本発明の表3の電子密度図を解析するために使用されるハードウェア手段、ソフトウエア手段およびデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータ利用システムの最低ハードウェア手段は、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段およびデータ記憶手段を含む。構造データを可視化するためにモニターを備えることが望ましい。データ記憶手段は、RAMまたは本発明のコンピュータ読取り可能な媒体にアクセスする手段とすることができる。このようなシステムの例は、Silicon Graphics IncorporatedおよびSun Microsystemsから入手可能であるUnix(登録商標)ベース、Windows(登録商標) NTまたはIBM OS/2オペレーティングシステムで動くマイクロコンピュータワークステーションである。
別の態様においては、本発明は、コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体を提供する。ここで、このデータは、(表5のデータ、その選択座標などの)表3のデータから得ることができる3A4の構造座標のすべてまたは一部(例えば、本明細書で定義する選択座標)、あるいは表3または3A4のホモログの電子密度図によって規定され、前記ホモログは、表3から作成される座標データの骨格原子(窒素-炭素α-炭素)からの標準偏差が2.0Å以下、好ましくは1.55または1.5Å未満、より好ましくは1.0Å未満、最も好ましくは0.5Å未満である骨格原子を含む。
本発明は、表3、表5またはその選択座標を含むコンピュータ読取り可能な第1のデータセットをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体も提供する。これは、構造が未知な分子または分子複合体のX線回折パターンを含む第2の機械読取り可能なデータセットと組み合わせたときに、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用するための命令をプログラムされたコンピュータを使用して、第2の機械読取り可能なデータセットに対応する電子密度の少なくとも一部を決定することができる。
本発明の別の態様は、構造を作成するためのデータを提供する方法、および/あるいは3A4、3A4ホモログもしくはアナログ、3A4と化合物の複合体、または3A4ホモログもしくはアナログと化合物の複合体を用いた合理的な薬物再設計を実施する方法を提供する。この方法は、
(i)(a)表3から導出可能な電子密度図、あるいはそれから得られる、3A4の3次元構造、3A4の3次元構造の少なくとも1つのサブドメイン、または3A4の複数の原子の座標を規定する座標データと、(b)3A4の構造因子データ、表3の前記構造因子データと、(c)表3から導出可能な座標データに基づく標的の相同モデリングによって作成される標的3A4ホモログまたはアナログの原子座標データと、(d)表3のデータを参照することによってX線結晶学データまたはNMRデータを解釈することによって作成されるタンパク質の原子座標データと、(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データのうちの少なくとも1つを含むコンピュータ読取り可能なデータを含む遠隔装置との通信を確立するステップと、
(ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを前記遠隔装置から受信するステップとを含む。原子座標データは、表5のデータまたはその選択座標とすることができる。
したがって、遠隔装置は、例えば、本発明の先の態様の1つのコンピュータシステムまたはコンピュータ読取り可能な媒体を含むことができる。この装置を、コンピュータ読取り可能なデータが受信される場所とは異なる国または法域に置くことができる。
通信は、インターネット、イントラネット、電子メールなどを介して、電線、または地上ラジオ、衛星などの無線手段によって伝達することができる。一般に、通信は、本質的に電子的なものであるが、通信経路の一部またはすべてを光学的なもの、例えば、光ファイバーとすることができる。
J.本発明の構造の使用
本発明によって得られる結晶構造(表3から導出可能な構造(例えば、表5のデータまたはその選択座標)、ならびに本明細書に記載する方法によって得られる標的P450タンパク質の構造を含む)は、ドラッグデザインのためのいくつかの方法において使用することができる。例えば、多数の薬物または薬物候補が、体内からの薬物の迅速な排除をもたらす、P450タンパク質との有害な相互作用のために臨床への使用に失敗している。本発明によって、当業者が、以下に詳述する構造ベースの化学戦略に従うことによって、開発からこのような化合物を救済しようとすることが可能になる。
薬物分子がP450によって代謝される場合、共結晶、浸透、または結合ポケットにおける薬物の結合配向のコンピュータによるドッキングのいずれかによって結合配向についての情報を決定することができる。これによって、薬物とタンパク質の相互作用を仲介または制御するように設計された化学構造に特定の改変が誘導される。このような改変は、P450による薬物代謝を減少させ、その治療上の作用を向上させる目的で設計することができる。
結晶構造は、薬物-薬物相互作用を理解するためにも有用であり得る。患者が他の医薬品をすでに服用している間に投与された場合の薬物に対する有害反応が記録された多数の例が存在する。この有害でしばしば危険である薬物-薬物相互作用シナリオの背後にある機序は、おそらく、1種の薬物がP450の阻害剤として振る舞うときに、ほとんどまたはまったく代謝が起こらないために、他の薬物の蓄積が毒性レベルになるものである。(インビトロまたはインシリコで)そのような阻害剤と組み合わせられた本発明の結晶構造は、阻害剤がもはや阻害しないように、またはより僅かしか阻害しないように改変し、あるいはより良好にP450に結合することができ(したがって、代謝されるようになる)、阻害剤を置換することができるように第2の薬物を改変する合理的な改変も可能になる。
P450類は、患者の年齢、性別または民族的起源に応じてかなりの多型変化を示す。これは、一部の薬物に対する患者集団のいくつかのセグメントからの有害反応となって表れる。薬物の結合モードに関して関連する突然変異をマッピングするために本発明の結晶構造を用いることによって、薬物を化学的に改変してタンパク質の可変領域との相互作用を避けることもできる。これによって、そのような集団のセグメントに対する薬物のより一貫した治療価値を確保し、危険な副作用を避けることができる。
一部の医薬化合物は、P450によって活性な代謝産物に転化される。このような化合物の場合には、このような化合物がP450によってどのように転化されるかをより良く理解することによって、化合物の改変が可能になり、化合物を異なる速度で転化させることが可能になる。例えば、転化速度を上げることによって、より迅速に所望の治療効果をもたらすことが可能になるのに対し、転化速度を低下させることによって投与用量を増し、または例えば異なる速度で代謝されて同じ活性代謝産物を形成する化合物の混合物を含む徐放性医薬調製物を開発することが可能になる。
したがって、P450の3次元構造を決定することによって、新規な方法でP450と相互作用する新しい化合物の設計の基礎が与えられる。例えば、P450の3次元構造が分かれば、コンピュータモデリングプログラムを用いて、P450の結合部位または他の構造的もしくは機能的特徴などの可能なまたは確認された活性部位と相互作用することが予想される異なる分子を設計することができる。
(i)結晶複合体を得ることおよび分析すること
一手法においては、P450に結合する化合物の構造を、実験によって決定することができる。これによって、P450に結合する化合物を分析する出発点が提供され、それによって特定の化合物がP450と相互作用する仕方およびそれが代謝される機序に関する詳細な見通しが当業者に提供される。
上述した構造ベースのドラッグデザインに対する多数の技術および手法は、リガンド-タンパク質複合体におけるリガンドの結合位置を同定するためになんらかの段階でX線分析に頼っている。これを実施する一般的な方法は、当該複合体のX線結晶学を実施し、差分フーリエ電子密度図を作成し、特定の電子密度パターンをリガンドと関連付けることである。しかし、当該図を作成するためには(例えば、上述のBlundell等、Protein Crystallography、Academic Press、New York、London and San Francisco、(1976)によって説明されるように)、タンパク質3D構造(または、少なくともタンパク質構造因子)を前もって知る必要がある。したがって、P450構造を決定することによって、P450-化合物複合体の差分フーリエ電子密度図の作成、および薬物の結合位置の決定も可能になり、したがって、合理的なドラッグデザインプロセスの大きな助けとなり得る。
したがって、本発明は、P450に結合する化合物の構造を決定する方法を提供する。前記方法は、
本発明によるP450の結晶を用意するステップと、
この結晶に前記化合物を浸透させるステップと、
表3から導出可能な座標データ(例えば、表5のデータまたはその選択座標)を使用することによって、または表3の位相を使用することによって、または表3から導出可能な電子密度を使用することによって、前記P450化合物複合体の構造を決定するステップとを含む。
あるいは、P450および化合物は共結晶化することができる。したがって、本発明は、P450に結合する化合物の構造を決定する方法を提供する。前記方法は、当該タンパク質を化合物と混合するステップと、タンパク質-化合物複合体を結晶化させるステップと、表3から導出可能な座標データ(例えば、表5のデータまたはその選択座標)を参照することによって、または表3の位相を参照することによって、または表3から導出可能な電子密度を参照することによって前記P450-化合物複合体の構造を決定するステップとを含む。
このような構造の分析は、(i)複合体からのX線結晶学回折データ、および(ii)P450の3次元構造またはその少なくとも選択座標を使用して、複合体の差分フーリエ電子密度図を作成することができる。3次元構造は、表3から導出可能な原子座標データ(例えば、表5のデータまたはその選択座標)、または表3の位相を使用することによって、または表3から導出可能な電子密度を使用することによって規定される。次いで、差分フーリエ電子密度図を解析することができる。
したがって、このような複合体を、結晶化し、例えばGreer等、J.of Medicinal Chemistry、Vol.37、(1994)、1035〜1054に記載された手法に従いX線回折方法によって解析することができる。差分フーリエ電子密度図は、浸透または共結晶化されたP450、および複合体を形成していないP450の解明された構造のX線回折パターンに基づいて計算することができる。次いで、これらのマップを解析して、例えば特定の化合物がP450に結合するかどうか、どこで結合するかを決定し、かつ/またはP450のコンホメーションを変更することができる。
電子密度図を、CCP4コンピューティングパッケージ(Collaborative Computational Project 4.The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763)からのプログラムなどのプログラムを用いて計算することができる。マップの可視化およびモデル設定のために、「O」(Jones等、Acta Crystallographica、A47、(1991)、110〜119)などのプログラムを使用することができる。
また、本発明によれば、3A4突然変異体は、既知の3A4基質または阻害剤または新規化合物とのココンプレックスで結晶化することができる。次いで、一連のこのような複合体の結晶構造を分子置換によって解析し、表3または表5からの3A4構造の結晶構造またはその選択座標と比較することができる。したがって、酵素の様々な結合部位内の改変可能部位を同定することができる。この情報によって、例えば、3A4と化学物質(chemical entity)または化合物との疎水性相互作用の増大など、最も効率的な結合相互作用を決定するさらなるツールが提供される。
例えば、自然の3A4とはわずか1〜2アミノ酸置換しか異ならない3A4の対立遺伝子があり、それでもこれらの対立遺伝子変異体を発現する個体は、極めて異なる薬物代謝プロファイルを示すことがある。ヒトCYP3A4遺伝子における多型は、癌を含めた一連の疾患の治療結果に影響を及ぼす可能性がある。癌治療に使用される化学療法剤の代謝は、本明細書に提供する構造を用いて調査することができ、次いで、この化学療法剤を本明細書に記載する方法を用いて変えることができる。
そのような対立遺伝子タンパク質を生成し、化合物とのココンプレックスを決定することによって、化合物との対立遺伝子相互作用をより良く理解することができる。
上記複合体のすべては、周知のX線回折技術を用いて研究することができ、CNX(Brunger等、Current Opinion in Structural Biology、8巻、5号、1998年10月、606〜611、Accelrys、San Diego、CAから市販されている)、Blundell等、(1976)Methods in Enzymology、114&115巻、H.W.Wyckoff等編、Academic Press(1985)に記載のものなどのコンピュータソフトウエアを用いて、1.5〜3.5Å分解能X線データに対して約0.30以下のR値まで精緻化することができる。
したがって、この情報を用いて、既知クラスの3A4基質または阻害剤を最適化することができ、より重要なことには、新規クラスの3A4阻害剤を設計して合成し、P450代謝が改変された薬物を設計することができる。
(ii)インシリコ分析および設計
本発明は、P450およびP450と相互作用する化合物を含む実際の結晶構造の決定を促進するものであるが、現在のコンピュータ技術によって、このような結晶を生成し、回折日を作成し分析する必要性に対して強力な別法が提供されている。したがって、本発明の特に好ましい態様は、本発明のP450構造と相互作用する化合物の分析および開発のためのインシリコ方法に関する。
3A4の3次元構造を決定すると、特に類似の酵素と比較したときに、3A4の結合部位についての重要な情報が得られる。次いで、例えば、結合部位に対する結合リガンド候補を特定するコンピュータ技術によって、ドラッグデザインへの連結断片手法(linked-fragment approach)を可能にすることによって、ならびにX線結晶解析を用いて結合リガンドの特定および位置決めを可能にすることによって、この情報を3A4基質および阻害剤の合理的設計および改変に使用することができる。これらの技術を以下にさらに詳細に考察する。
したがって、P450の3次元構造が決定された結果、合理的なドラッグデザインのためのより純粋に計算的な技術を用いて、そのP450との相互作用がより良く理解される構造を設計することもできる(これらの技術の概要については、例えば、Walters等(Drug Discovery Today、3巻、4号、(1998)、160〜178;Abagyan,R.;Totrov,M.Curr.Opin.Chem.Biol.2001,5,375〜382を参照されたい)。例えば、標的受容体の原子座標についての正確な情報を必要とする(例えば、Jones等、Current Opinion in Biotechnology、6巻、(1995)、652〜656およびHalperin,I.;Ma,B.;Wolfson,H.;Nussinov,R.Proteins 2002、47、409〜443に考察されている)自動化されたリガンド-受容体ドッキングプログラムを使用することができる。
P450構造をインシリコで利用する本明細書に記載する本発明の態様は、表3のデータからの3A4構造(例えば、表5のデータまたはその選択座標)および別の本発明の態様によって得られる標的P450タンパク質のモデルの両方に等しく適用することができる。したがって、上述の方法によってP450のコンホメーションが決定されれば、このようなコンホメーションを、本明細書に記載する合理的なドラッグデザインのコンピュータベースの方法に使用することができる。また、P450 3A4の構造の有効性によって、仮想的なライブラリスクリーニングまたは化合物設計のための確率の高い予測的ファルマコフォアモデルを作成することができる。
したがって、本発明は、ある分子構造と本発明のP450構造との相互作用を分析するためのコンピュータベースの方法を提供する。この方法は、
本発明のP450の構造を用意するステップと、
前記P450構造に当てはまる分子構造を用意するステップと、
その分子構造をP450構造に当てはめるステップとを含む。
本発明のP450構造は、表5のデータ、またはその選択座標とすることができる。
別の態様においては、本発明による方法は、構造が結合するポケットをモデル化するために、想定分子構造の近傍、例えば、触媒作用領域の10〜25Å以内または化合物結合の5〜10Å以内にあるP450結合領域の目的原子の座標を利用することができる。これらの座標を用いて空間を規定し、それを「インシリコで」分析する。したがって、本発明は、分子構造を分析するためのコンピュータベースの方法を提供する。この方法は、
本発明のP450構造の少なくとも2個の原子の座標(「選択座標」)を用意するステップと、
前記座標に当てはめるべき分子構造体の構造を用意するステップと、
その構造をP450の選択座標に当てはめるステップとを含む。
実際には、結合ポケット(例えば、表7および8、好ましくは表8において特定される残基原子)を示す、表3から導出可能な座標(例えば、表5の座標またはその選択座標)によって定義されたP450における十分な数の原子をモデル化することが望ましい。結合ポケット、およびP450と補助因子の相互作用の他の特徴は、添付した実施例に記載されている。したがって、本発明のこの実施形態においては、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも50個、さらにより好ましくは少なくとも100個、例えば、少なくとも1000個などの少なくとも500個のP450構造の選択原子の座標が提供されることが好ましい。
P450によって代謝される様々な化合物のすべてが、タンパク質の結合ポケットの異なる部分と相互作用することができるが、このP450の構造によって、P450と薬物候補の相互作用の多くに関与する可能性が高いいくつかの特定部位を同定することができる。これらの残基を表7および8に示す。したがって、本発明のこの態様においては、選択座標は、これらの残基の一部またはすべての座標を含むことができる。
本発明のP450構造に当てはめる化合物の3次元構造を提供するために、その化合物構造を、この目的のための市販ソフトウエアを用いて3次元で設計することができ、あるいは、その結晶構造が利用可能であれば、その構造の座標を用いて本発明のP450構造に当てはめるための化合物を表示させることができる。
チトクロムP450分子の結合ポケットは、1個を超えるリガンドを収容できる大きさである。実際、一部の薬物-薬物相互作用は、同じP450の結合ポケット内の化合物の相互作用の結果起こることがある。いずれにしても、本発明の知見を使用して、本発明のP450 3A4結合ポケット内の2個以上の別個の分子構造の相互作用を検討し、または予測することができる。
したがって、本発明は、P450結合ポケット構造内における2個の分子構造の相互作用を分析するコンピュータベースの方法を提供する。この方法は、
表5のP450構造またはその選択座標を用意するステップと、
第1の分子構造を用意するステップと、
前記第1の分子構造を前記P450構造に当てはめるステップと、
第2の分子構造を用意するステップと、
前記第2の分子構造を前記P450構造の異なる部分に当てはめるステップとを含む。
この分析方法は、さらに、第3の分子構造を用意するステップと、その構造をP450構造に当てはめるステップも場合によっては含むことができる。実際、さらなる分子構造を用意することができ、同様に当てはめることができる。
一態様においては、これらの分子構造の1個または複数を上記3A4結合ポケットのフェニルアラニン残基の1個または複数に当てはめることができ、ならびに別の分子構造の1個または複数を、リガンド結合領域の別の部分などのP450結合ポケットの別の部分に由来するアミノ酸座標、ヘム結合領域、または表7もしくは8のアミノ酸残基の原子に当てはめることができる。一実施形態においては、1個または複数の別の分子構造を、それに加えてまたはその代わりに、P450結合ポケット内のヘム構造に当てはめることができる。
分子構造の当てはめの後、当業者は、分子モデリングを使用して、(例えば、水素結合、別の非共有結合性相互作用、または構造の部分同士の共有結合をもたらす反応によって)それらの構造が互いに相互作用する程度、または1つの構造と3A4の相互作用が別の構造の存在によって変わる程度を求めることができる。
当業者は、3A4と異なる方式で相互作用する新しい構造を設計してそれらの代謝を加速または減速するために、インシリコモデリング方法を使用して、これらの構造の1個または複数を場合によっては変更することができる。
新規に設計された構造は合成することができ、それらの3A4との相互作用を、新規に設計された構造が前記P450構造によってどのように代謝されるかという観点から求め、または予測することができる。このプロセスは、それと3A4の相互作用をさらに変更するために繰り返すことができる。
「当てはめる(fitting)」とは、自動または半自動手段によって、ある分子構造の少なくとも1個の原子と本発明のP450構造の少なくとも1個の原子との相互作用とを決定し、このような相互作用の安定度を計算することを意味する。相互作用としては、電荷、立体的要件などによってもたらされる引力、反発などがある。当てはめための様々なコンピュータベースの方法を本明細書にさらに記載する。
より具体的には、化合物とP450の相互作用を、GOLD(Jones等、J.Mol.Biol.、245、43〜53(1995)、Jones等、J.Mol.Biol.、267、727〜748(1997))、GRAMM(Vakser,I.A.、Proteins 、Suppl.、1:226〜230(1997))、DOCK(Kuntz等、J.Mol.Biol.1982、161、269〜288、Makino等、J.Comput.Chem.1997、18、1812〜1825)、AUTODOCK(Goodsell等、Proteins 1990、8、195〜202、Morris等、J.Comput.Chem.1998、19、1639〜1662.)、FlexX、(Rarey等、J.Mol.Biol.1996、261、470〜489)またはICM(Abagyan等、J.Comput.Chem.1994、15、488〜506)などのドッキングプログラムを用いたコンピュータモデリングを使用して検討することができる。この手順には、その化合物の形状および化学構造がP450にいかに良く結合するかを確認するためのP450への化合物のコンピュータフィッティングが含まれ得る。
また、P450の活性部位構造のコンピュータ支援による手作業の試験を実施することができる。分子と様々な官能基および酵素表面との有望な相互作用部位を決定するプログラムであるGRID(Goodford、J.Med.Chem.、28、(1985)、849〜857)などのプログラムを使用して、活性部位を分析して、例えば、化合物の代謝速度を変える改変タイプを予測することもできる。
コンピュータプログラムを使用して、2つの結合相手(すなわち、P450と化合物)の引力、反発および立体障害を推定することができる。
1個を超えるP450活性部位が特徴付けられ、それぞれのより小さな複数の化合物が設計されまたは選択される場合、それぞれの小化合物を、これらの活性部位においてそれぞれの化合物の相対的位置および配向を維持するそれよりも大きな化合物に連結させることによって化合物を形成させることができる。より大きな化合物は、実際の分子でも、コンピュータモデリングによって形成させてもよい。
次いで、化合物とP450の結合についての詳細な構造情報を得ることができ、この情報を考慮して、例えばそのP450との相互作用を変えるために、化合物の構造または官能基を調整することができる。上記ステップは、繰り返すことができ、必要に応じてさらに繰り返すことができる。
上述したように、本発明のP450構造に当てはめることができる分子構造としては、医薬品候補として開発中の化合物などがある。これらの医薬品を当てはめて、P450の作用によって医薬品がどのように改変されるかを明らかにし、P450によって異なる速度で代謝される候補薬剤を設計するための基礎を提供することができる。
本発明において使用可能である分子構造は、通常、医薬用途に開発中の化合物である。一般にこのような化合物は、分子量が一般に約100〜2000Da、より好ましくは約100〜1000Daの有機分子である。このような化合物としては、ペプチドおよびその誘導体、ステロイド、抗炎症薬、抗癌薬、抗細菌薬または抗ウイルス薬、神経薬などがある。原則的には、その開発を促進しまたはその諸特性を改善するためのさらに合理的なドラッグデザインを可能にするために、薬学分野で開発中のあらゆる化合物を本発明において使用することができる。
(iii)化合物および代謝産物の分析および改変
医薬化合物候補または実際の医薬化合物の1次代謝産物が既知であり、この代謝産物がP450の作用によって産生される場合、この薬剤と相互作用するP450の残基をより良く決定するために、この薬剤の構造およびその代謝産物の両方をモデル化して互いに比較することができる。いずれにしても、本発明は、同じ所望の活性を有する出発化合物とは異なる速度でP450によって代謝される所望の活性を有する医薬化合物候補を予測する方法を提供する。この方法は、
出発化合物を本発明のP450構造またはその選択座標に当てはめるステップと、
前記化合物が前記P450構造によってどのように代謝されるかを明らかにする、または予測するステップと、
化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとを含む。
構造の改変が、通常、インシリコでなされ、改変された構造がP450とどのように相互作用するかについての予想が可能になることは、当業者であれば理解されるはずである。
改変は、熟練した医薬品化学者には当分野で既知の従来のものであり、例えば、本発明のP450構造のアミノ酸側鎖基と相互作用する残基を含む基の置換または除去が含まれる。例えば、置換には、試験化合物における基の電荷を減少または増加させるための基の付加または除去、反対電荷の基による帯電基の置換、親水基による疎水基の置換またはその逆などがある。これらは新しい医薬化合物の開発において医薬品化学者が考える置換のタイプの単なる例に過ぎず、出発化合物およびその活性の性質に応じて他の改変がなされ得ることを理解されたい。
通常、P450による代謝を防止するように化合物を変えること、または少なくともP450が化合物を代謝する速度を低下させることが望ましいが、本発明は、出発化合物よりも迅速に代謝される化合物を、例えばそのような化合物が他の薬物の代謝を妨害している場合に開発することも含む。
出発化合物を本発明のP450構造に当てはめることによって潜在的改変化合物を開発し、変更された代謝速度を有する改変化合物をそれから予測する場合、本発明は、その活性および/またはその代謝速度を決定するために、さらに、改変化合物を合成し、インビボまたはインビトロの生物学的系においてそれを試験するステップを含む。
本発明の上述のプロセスは、改変化合物自体がさらなる化合物設計の基礎になり得る点で反復することができる。上述のプロセスを使用して、3A4結合ポケット内の第2の化合物と相互作用する化合物を改変することもできる。
(iv)結合ポケット領域内の化合物の分析
3A4のヘムの近傍にあるフェニルアラニン残基クラスターの本発明者らの発見によって、前のサブセクションに記載した分析および設計方法を、これらの残基の1個または複数と相互作用する化合物に絞ることができる。
例えば、フェニルアラニン側鎖とのπ:πスタッキング相互作用を含むように3A4基質結合ポケット中でドッキングする各化合物を、それらの代謝を変えるために改変することができる。例えば、このような相互作用は、これらの化合物が3A4結合ポケットのヘム結合領域中にあるヘム部分に向かって移動し、ヘム部分と反応することによって代謝される速度を求める際に影響を及ぼすことがある。これらのフェニルアラニン残基に対する化合物の親和性を変える(すなわち、増加または減少させる)ことによって、またはヘム結合領域と比較したリガンド結合領域の別の特徴を変えることによって、ヘム結合領域に向かって移動する能力、またはヘム結合領域によって保持される能力を変える(すなわち、増強または低下させる)ことができる。
例えば、ヘム結合領域よりもリガンド結合領域に対するそれらの親和性を高めることによって、ヘム結合領域に向かって移動する能力を低下させることができる。あるいは、リガンド結合領域に対するそれらの親和性を低下させることは、ヘム結合領域よりもこの領域に対する親和性を低下させ、したがって、ヘム結合領域に向かって移動するそれらの能力を増強するためには望ましいこともある。リガンド結合ポケットへの化合物結合は、ヘム結合領域における化合物結合の必要条件であり、その後の3A4による代謝または3A4の阻害する場合、リガンド結合領域に対する結合を除去することによって、3A4によるすべての化合物代謝または3A4の阻害を排除することができる。別法または追加の手法は、このような基質を改変して、ヘム結合領域の残基に対するそれらの親和性を増大または低下させることである。このタイプの変更を、基質の代謝回転を増加または減少させるために導入することができる。
一部の分子は、3A4代謝のエフェクターまたは活性化物質であることが知られている。3A4とこのような化合物の結合を改変することによって、基質の代謝が媒介される。
したがって、一実施形態においては、本発明は、P450によるその代謝を変えるために化合物の構造を改変する方法を提供する。この方法は、
出発化合物を、P450のリガンド結合領域の少なくとも1個のアミノ酸残基の1個または複数の座標に当てはめるステップと、
出発化合物構造を改変して、リガンド結合領域とのその相互作用を増大または低下させるステップとを含み、
前記リガンド結合領域は、Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304の番号をつけられたP450残基の少なくとも1個を含むものとする。
別の実施形態においては、本発明は、P450によるその代謝を変えるために化合物の構造を改変する方法を提供する。この方法は、
出発化合物を、P450のリガンド結合領域の少なくとも1個のアミノ酸残基の1個または複数の座標に当てはめるステップと、
出発化合物構造を改変して、リガンド結合領域とのその相互作用を増大または低下させるステップとを含み、
前記リガンド結合領域は、表7のP450残基、好ましくは表8のP450残基の少なくとも1個を含むものとする。
別の実施形態においては、本発明は、P450 3A4によるその代謝を変えるために化合物の構造を改変する方法を提供する。この方法は、
出発化合物を、P450のヘム結合領域の少なくとも1個のアミノ酸残基の1個または複数の座標に当てはめるステップと、
出発化合物構造を改変して、ヘム結合領域とのその相互作用を増大または低下させるステップとを含む。
ヘム結合領域は、ヘム分子に結合した鉄イオンも場合によっては含むことができ、所望であれば、ヘム分子自体の他の原子の1個または複数を含むことができる。本発明の好ましい態様においては、鉄イオンは、ヘム結合領域にも含まれる。
本発明の上記態様においては、P450の(所望であれば鉄イオンを含めた)少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個のアミノ酸残基から得られる座標を使用することが望ましい。
不確かさを避けるために、「改変する」という用語は、前のサブセクションにおいて定義したとおりに使用され、このような化合物が開発された後には、それを合成することができ、上述したように試験することもできる。
(v)断片の連結および成長
本発明の結晶構造が提供されることによって、断片連結または断片成長手法に基づいて(例えば、P450の阻害剤として作用するために)P450の結合ポケット領域と相互作用する化合物の開発も可能になる。
例えば、1個または複数の分子断片の結合を、タンパク質結合ポケットにおいてX線結晶学によって決定することができる。分子断片は、一般に、分子量が100〜200Daの化合物である(Carr等、2002)。次いで、これによって、構造に基づく手法を用いて相互作用を最適化する医薬品化学の出発点を提供することができる。断片をテンプレート上に結合させ、または阻害剤を「成長させ」てタンパク質の他のポケットにするための出発点として使用することができる(Blundell等、2002)。断片は、P450の結合ポケット中に配置することができ、次いで、「成長して」利用可能な空間を埋め、分子認識に関与する静電気相互作用、ファンデルワールス相互作用または水素結合相互作用が調べられる。したがって、本来の弱く結合している断片の効力を、構造ベースの化学合成を反復させて迅速に向上させることができる。
断片成長手法における1つまたは複数のステージでは、化合物を合成し、生物学的系中でその活性を試験することができる。これを用いて、さらなる断片の成長を誘導することができる。
2つの断片結合領域が同定された場合、所望の諸特性を有し得るより大きな連結構造を得るために、連結断片手法は、2つの断片を直接連結させる試み、あるいは1つまたは両方の断片を上述の方式で成長させることに基づくことができる。
2個以上のリガンドの結合部位が決定される場合には、それらを連結して、例えば、Greer等の繰り返し技術を用いてさらに精緻化することができるリード化合物候補を形成することができる。仮想連結断片手法については、Verlinde等、J.of Computer-Aided Molecular Design、6、(1992)、131〜147を参照されたい。NMRおよびX線手法については、Shuker等、Science、274、(1996)、1531〜1534およびStout等、Structure、6、(1998)、839〜848を参照されたい。P450阻害剤を設計するこれらの手法を使用することは、P450構造を決定することによって可能になる。
(vi)本発明の化合物
出発化合物を本発明のP450構造に当てはめ、(より遅い、より速いまたは速度ゼロを含めて)変更された代謝速度を有する改変化合物をそれから予測することによって潜在的改変化合物を開発する場合、本発明は、その活性および/または代謝速度を決定するために、さらに、改変化合物を合成し、インビボまたはインビトロの生物学的系においてそれを試験するステップを含む。
この方法は、(a)モジュレーターの非存在下で3A4が既知の基質を代謝することができる条件下で3A4を用意するステップ、(b)化合物を用意するステップ、および(c)化合物が3A4の存在下で代謝される程度を求めるステップ、または(d)化合物が3A4の既知の基質の代謝を阻害する程度を求めるステップを含む。
より好ましくは、後者のステップにおいては、化合物は、その機能を決定する条件下でP450と接触している。
例えば、上記接触ステップにおいて、化合物は、前記化合物がP450を阻害する能力またはP450によって代謝される能力を明らかにするために、化合物、ならびに一般に緩衝剤および基質の存在下でP450と接触している。基質は、例えば、ジベンジルフルオレセインとすることができる。それで、例えば、化合物、基質および緩衝剤を含むP450のアッセイ混合物を生成することができる。
別の態様においては、本発明は、上述した本発明の方法によって同定された化合物を含む。
このような化合物の同定に続いて、それを製造し、かつ/または調製、すなわち、医薬品、薬学的組成物、薬物などの組成物の製造もしくは処方に使用することができる。これらは個体に投与することができる。
したがって、本発明は、様々な態様において、本発明によって提供される化合物だけでなく、このような化合物を含む医薬組成物、医薬品、薬物または他の組成物にも及ぶ。これらの組成物は、癌などの疾患の治療(予防的な処置を含むことができる)に使用することができる。このような治療は、例えば疾患治療のためのこのような組成物の患者への投与;例えば疾患治療のための投与用組成物の製造におけるこのような阻害剤の使用;ならびにこのような阻害剤を、薬剤として許容される賦形剤、ビヒクルまたは担体、および場合によっては別の成分と混合するステップを含む医薬組成物の製造方法を含むことができる。
したがって、本発明の別の態様は、医薬品、医薬組成物または薬物を調製する方法を提供する。この方法は、
(a)本明細書に開示する本発明の別の態様のいずれか1つの方法によって化合物を特定または改変するステップと、(b)分子構造を最適化するステップと、(c)最適化合物を含有する医薬品、医薬組成物または薬物を調製するステップとを含む。
本発明の上述のプロセスは、改変化合物自体がさらなる化合物設計の基礎になり得る点で反復することができる。
「構造を最適化する」とは、モジュレーター分子の化学構造が、その本来の調節官能基が維持または増強されながら変更されるように、例えば、分子骨格を加えること、官能基を加えることまたは変更すること、あるいは(例えば、断片連結手法を用いて)分子を別の分子と連結することを意味する。このような最適化は、例えば、効力を高めるため、薬理学的認容性を高めるため、リード化合物の化学安定性などを高めるために、薬剤開発プログラム中に定期的に行われる。
改変は、熟練した医薬品化学者には当分野で既知の従来のものであり、例えば、本発明のP450構造のアミノ酸側鎖基と相互作用する残基を含む基の置換または除去が含まれる。例えば、置換には、試験化合物における基の電荷を減少または増加させるための基の付加または除去、反対電荷の基による帯電基の置換、親水基による疎水基の置換またはその逆などがある。これらは新しい医薬化合物の開発において医薬品化学者が考える置換のタイプの単なる例に過ぎず、出発化合物およびその活性の性質に応じて他の改変がなされ得ることを理解されたい。
組成物は、任意の適切な投与経路および投与手段に対して処方することができる。薬剤として許容される担体または希釈剤としては、経口、直腸、経鼻、(頬および舌下を含めた)局所、膣または(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、鞘内および硬膜外を含めた)非経口投与に適切な製剤に使用されるものが含まれる。これらの製剤は、好都合には単位剤形とすることができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
固体組成物の場合には、従来の無毒の固体担体として、例えば、マンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどの医薬品グレードを使用することができる。薬剤として投与可能な液体組成物は、例えば、上で定義した活性化合物、および任意選択の医薬品アジュバントを、例えば、水、食塩水デキストロース水溶液、グリセリン、エタノールなどの担体に溶解、分散などさせ、それによって溶液または懸濁液を形成させることによって調製することができる。所望であれば、投与すべき医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンナトリウムアセテート、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレートなどの少量の無毒の補助物質を含むこともできる。このような剤形を調製する実際の方法が知られており、または当業者には明らかであり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、15th Edition、1975を参照されたい。
K.電子密度図の類似度の数量詞
上のセクションBで考察したように、線形相関係数CCを使用して、2つの電子密度図間の類似度を定量することができる。
したがって、大まかに言えば、本発明者らは、2つの分子構造を比較する方法であって、
各分子構造についてそれぞれ第1および第2の電子密度図を用意するステップと、
これら2つの電子密度図が互いに最も一致するように、電子密度図の一方または両方を変換するステップと、
一致した各電子密度図間の相関の程度を定量するステップとを含む方法を提供する。
相関の程度は、一致した図のCCを計算することによって定量されることが好ましい。定量化ステップの前に、例えば、溶媒分子が相関の程度に寄与するのを防止するために、図にマスクを適用することができる。電子密度図の一方または両方を、例えばX線結晶解析によって実験的に求めることができる。あるいは、またはそれに加えて、一方または両方を、例えば原子座標データから計算することができる。
CCの使用は、3種類の構造上のファミリー(すなわち3種類の異なる分子タイプ)に対して試験された。各ファミリー内で、いくつかの異なる原子座標セットが提供された。各セットは、別のセットとは最高約1.8Åのr.m.s.d.だけ異なった。電子密度図は、各原子座標セットについて計算された。目的は、電子密度図の各対に対して求められたCCが、原子座標セットの対応する対(ファミリー内およびファミリー間の両方)に対するr.m.s.d.値と相関があることを確認することであった。いくつかのCCP4(Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763.)、Unix(登録商標)および特別に開発されたプログラムを使用して試験が実施された。特別に開発されたプログラムを付録1〜4に示す。付録5および6は付録1〜4のプログラムによって使用されるそれぞれのサブルーチンである。
試験を実施するために、第一段階は、原子座標の各セットに対して、比較的細かいグリッド(例えば、最低d間隔の1/6)上の電子密度図の非対称ユニットを計算することであった。これは、CCP4 FFTプログラムによる加重2Fo-Fc係数を用いて実行された。
次に、非対称ユニット中の各分子に対して、Unix(登録商標) GREPを用いて完全な座標セットから分子の原子座標を抽出した。次いで、Astex-EXTENDC(付録3参照)を用いて、このようにして抽出された分子を最小3Åの境界を含めて網羅するように電子密度図を拡張し、分子の任意の原子に対する電子密度の部分が無意識に除外されないように徹底した。
抽出された原子座標は、CCP4 NCSマスクプログラムを用いて分子マスクを作成するのにも使用された。このようなマスクは、グリッドポイントの3Dアレイであり、分子によって覆われた各グリッドポイントが「1」で標識され、分子外側の各グリッドポイントが「0」で標識される。分子をカバーする範囲は、各原子位置上に中心を有する半径2Åの球によって求められた。
Astex-KFITプログラム(付録4参照)を用いて、各原子座標セットを共通基準上に重ね、各分子対間のr.m.s.d.を最小化するように剛体変換を決定した。次いで、Astex-ROTMAP(付録1)を使用して、電子密度図の対応する対および付随するマスクに各変換が適用され、電子密度図およびマスクを共通単位格子およびグリッド上に(例えば、最低d間隔の1/4で)内挿した。マスクは線形に内挿され、一方、電子密度は二次関数を用いて内挿された。
最後に、変換され内挿された電子密度図の対のCCをAstex-DENCOR(付録2)を用いて計算した。変換され内挿されたマスクを使用して、分子によって網羅された電子密度のみが確実にCCに寄与するようにした。
計算されたr.m.s.d.に対して計算されたCCのグラフをプロットし、グラフの各点を直線y=1-x/2に当てはめた。この線は、点(x,y)=(0,1)を通過するようにした。というのは、r.m.s.d.がゼロの場合に完全な相関が予想されるからである。このグラフから、CCがr.m.s.d.と強く逆相関し(anticorrelate)、線形関係y=1-x/2(式中、x=r.m.s.d.およびy=CC)が認められることが示された。すなわち、1.5Åのr.m.s.d.はおよそ0.25のCCに相当する。この式は、r.m.s.d.が2Å以上の場合には、電子密度の相関が期待できないことを意味している。予想通り、r.m.s.d.距離は、同じ構造ファミリー内の分子対では、異なるファミリーの場合よりもかなり小さく、その結果、構造ファミリー内の分子対のCCは、異なるファミリーのそれよりも一貫して高かった。
本発明を以下の実施例によって説明する。
3A4のクローニング
M18907(GI_181373)に対応する3A4をヒト肝臓ライブラリ(Origene Technologies,Inc.)からクローン化した。
PCRを製造者の推奨に従って実施した。
肝臓ライブラリ 2.0μl
10X PCR緩衝剤(-Mg2+) 2.5μl
10mM dNTPs 0.5μl
10mM MgSO4 2.5μl
水 11.0μl
プライマー1(@10pmol/μl) 3.0μl
プライマー2(@10pmol/μl) 3.0μl
プライマー1は完全長3A4 cDNAの5'末端に相補的である。プライマー2はcDNAの3'末端に相補的であり、4個のヒスチジンタグを3A4タンパク質のC末端上に付加する。
94℃に加熱し、Ventポリメラーゼ0.5μl(1単位)を添加する。
以下の35サイクル:
94℃ 30秒
65℃ 60秒
72℃ 60秒
72℃5分間の1サイクル。
Taqポリメラーゼ1μl(2.5単位)を添加し、72℃で10分間インキュベーションした後に、生成物1μlをTOPOクローニング反応(ベクターpCR4TOPO、Invitrogen)に使用した。クローニング反応を使用して大腸菌XL1-blueを形質転換し、陽性クローンを精製プラスミドのNdeI/SalI制限消化によって特定した。陽性クローンの配列を両方の鎖で完全に決定し、NdeI/SalI挿入断片をpET20bにサブクローニングしてテンプレートクローンを得た。このクローンを後続のPCR反応にテンプレートとして使用した。
3A4のN末端切断
F.W.Dahlquist教授、University of Oregon、Eugene、Oregon、USAから提供された発現ベクターpCWOri+を使用して、短縮されたヒトチトクロムP450を大腸菌系統XL1 Blue(Stratagene)中で発現させた。上で単離されたチトクロムP450 3A4をコードする完全長cDNAをPCR増幅用テンプレートとして使用し、5'末端を操作し4個のヒスチジンタグをC末端に挿入した。
3A4のN末端切断をPCRによって以下に概説するように実施して、Gillam(Gillam等、Arch.Biochem.Biophys.305巻、123〜131、1993)によって記述された公開(published)NF10N末端切断を生成した。
テンプレート 〜5ng
10X PCR緩衝剤(+Mg2+) 5.0μl
10mM dNTPs 1.0μl
水 42.0μl
プライマー2(@100pmol/μl) 0.5μl
プライマー3(@100pmol/μl) 0.5μl
Ventポリメラーゼ(2U/μl) 0.5μl
94℃ 30秒
65℃ 60秒
72℃ 60秒
を25サイクル
72℃5分間を1サイクル
Taqポリメラーゼ1μl(2.5単位)を添加し、72℃で10分間インキュベーションした後に、生成物1μlをTOPOクローニング反応(ベクターpCR4TOPO、Invitrogen)に使用した。クローニング反応を使用して大腸菌XL1-blueを形質転換し、陽性クローンを精製プラスミドのNdeI/SalI制限消化によって特定した。陽性クローンの配列を完全に決定し、NdeI/SalI挿入断片をpCWori+にサブクローニングしてクローンp3A4を得た。このクローンをタンパク質発現に使用した。
プライマー1
5'-GGAATTCATATGGCTCTCATCCCAGACTTGGCC-3'
プライマー2
5'-TGCGGTCGACTCAATGGTGATGGTGGGCTCCACTTACGGTGCCATCC-3'
プライマー3
5'-TTAACATATGGCATATGGTACTCATTCACATGGTCTGTTTAAAAAACTGGGAATTCCAGGGCCCACACC-3'
細菌による発現
XL1 blue細胞の単一アンピシリン耐性コロニーをTerrific Broth(TB)中で振とうしながら終夜37℃で飽和近くまで増殖させ、それを使用して新しいTB媒体を接種した。細菌をOD600nm=0.5まで2リットルフラスコ中で100μg/mlのアンピシリンを含有するTBブロス1リットル中、37℃、185rpmで増殖させた。ヘム前駆体デルタアミノレブリン酸(80mg/l)を30分間添加し、その後1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて惹起し、温度を25℃に低下させた。細菌培養を撹拌下25℃で48時間続けた。
タンパク質精製(1)
細胞を、10000gで10分間ペレット化し、500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン(v/v)、10mMメルカプトエタノール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル3(Calbiochem)、10mMイミダゾール、40U/ml Dnase 1および5mM MgSO4を含有する緩衝剤に再懸濁した。
Constant Systems Cell Homogeniserを10000psi(70MPa)で2回通過させて細胞を溶解させた。次いで、細胞片を、22000xg、4℃30分間の遠心分離によって除去した。
洗浄剤IGEPAL CA630(Sigma)を10%原液から最終濃度0.3%(v/v)で溶解物に滴下し、溶解物を、あらかじめ洗浄したNiNTA樹脂(Qiagen)とともに終夜4℃で撹拌しながらインキュベートした。タンパク質が結合したNiNTA樹脂を2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。この樹脂を、20樹脂体積(resin volume)の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、10mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で洗浄し、2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。次いで、この樹脂を、10樹脂体積の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、20mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤、0.3%IGEPAL CA630で洗浄し、上述したように遠心分離して樹脂を回収した。
この樹脂を室温でカラムに充填し、チトクロムP450を、冷500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、300mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で溶出させた。
NiNTAカラムから得られたチトクロムP450を、Akta FPLCシステム(Pharmacia)にHiPrep 26/10脱塩カラム(Pharmacia)を用いて、流量5ml/minで、20mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTA中に素早く脱塩した。次いで、750mAuを超えるウォッチUVコマンド(watch UV command)(280nm)を使用して、HiPrep 26/10脱塩カラムから得られた脱塩P450を、20mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTAであらかじめ平衡にしたCM Sepharoseカラム(Pharmacia)上に迂回させて、最終精製を行った。mAuが750mAu未満に低下したときにピークの迂回を停止した。次いで、以下のステップ溶出をCM Sepharoseカラムに適用した:10カラム体積の20mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTAで洗浄し、続いて痕跡量の洗浄剤を除去するために75mM KClを添加した上記緩衝剤を含む6カラム体積で洗浄し、次いで、KCl濃度を500mMに増加させた上記緩衝剤で溶出させた。
タンパク質を、結晶化試験のためにマイクロ濃縮器を用いて40mg/mlまで濃縮した。
結晶化(1)
3A4の結晶をハンギングドロップ蒸気拡散法によって成長させた。20mM Kpi pH7.2、0.5M KCl、2mM DTT、1mM EDTA、20%グリセリン中の37.4mg/mlのタンパク質を、0.5ul液滴を用いて、貯蔵溶液と1:1で混合した。3A4の結晶は、0.15M HEPES pH7.5、2.5%IPA、10%PEG 4000を含有する貯蔵溶液上で成長した。
結晶は25oCで1〜7日以内に形成され、棒状の形であった。
その結晶を、凍結保護物質として15%グリセリンを補充した結晶化溶液を用いて、液体窒素で急速冷凍した。
データセット収集(1)
タンパク質精製(1)および結晶化(1)の上記手順によって生成した結晶から、非改変データセットをESRFビームライン14.2で分解能2.7Åまで収集した。
結晶の格子寸法は、a=77.85Å、b=99.71Å、c=132.74Å、α=β=γ=90°であった。空間群はI222であった。
1度の振動イメージ(one degree oscillation image)を合計100個収集し、MOSFLM(Leslie,A.G.W.(1992).In Joint CCP4 and EESF-EACMB Newsletter on Protein Crystallography、26巻、Warrington、Daresbury Laboratory)を用いて処理し、SCALA(CCP4-Collaborative Computational Project 4.(1994)The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography.Acta Crystallographica D50、760〜763)を用いて倍率変更し、CCP4プログラムスィートを用いて換算した。
タンパク質精製(2)
細胞を、10000gで10分間ペレット化し、500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル3(Calbiochem)、10mMイミダゾール、40U/ml Dnase 1および5mM MgSO4を含有する緩衝剤に再懸濁した。
Constant Systems Cell Homogeniserを10000psi(70MPa)で2回通過させて細胞を溶解させた。次いで、細胞片を、22,000g、4℃30分間の遠心分離によって除去した。
洗浄剤IGEPAL CA630(Sigma)を10%原液から最終濃度0.3%(v/v)で溶解物に滴下し、溶解物を、あらかじめ洗浄したNiNTA樹脂(Qiagen)とともに終夜4℃で撹拌しながらインキュベートした。タンパク質が結合したNiNTA樹脂を2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。この樹脂を、20樹脂体積の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、10mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で洗浄し、2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。次いで、この樹脂を、10樹脂体積の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、20mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤、0.3%IGEPAL CA630で洗浄し、上述したように遠心分離して樹脂を回収した。
この樹脂を室温でカラムに充填し、チトクロムP450を、冷500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、300mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で溶出させた。
NiNTAカラムから得られたチトクロムP450を、HiPrep 26/10脱塩カラム(Pharmacia)を用いて、流量5ml/minで、10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTA、10mM K2SO4中に素早く脱塩した。
脱塩されたチトクロムP450を、10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTA、10mM K2SO4であらかじめ平衡にしたCM Sepharoseカラム(Pharmacia)に直接かけた。以下のステップ溶出を適用した:20カラム体積の10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTA、10mM K2SO4で洗浄し、続いて痕跡量の洗浄剤を除去するために75mM KClを含む上記緩衝剤20カラム体積で洗浄し、次いで、KCl濃度を500mMに増加させた上記緩衝剤で溶出させた。
タンパク質を、結晶化アッセイのためにマイクロ濃縮器を用いて20mg/mlまで濃縮した。
結晶化(2)
3A4の結晶をハンギングドロップ蒸気拡散法によって成長させた。10mM Kpi pH7.2、0.5M KCl、2mM DTT、1mM EDTA、20%グリセリン、10mM K2SO4中の18.5mg/mlのタンパク質を、0.5ul液滴を用いて貯蔵溶液と1:1で混合した。3A4の結晶は、0.1M HEPES pH7.2、5%IPA、10%PEG 4000を含有する貯蔵溶液上で成長した。その結晶を、グリセリンを33%まで補充した結晶化溶液を用いて凍結させた。
結晶は25℃で1〜7日以内に形成され、棒状の形であった。
データセット収集(2)
タンパク質精製(2)および結晶化(2)の上記手順によって生成した結晶から、非改変データセットをESRFビームライン14.2で分解能2.8Åまで収集した。
結晶の格子寸法は、およそa=77.32Å、b=100.37Å、c=132.72Å、α=β=γ=90°であった。空間群はI222であった。
1度の振動イメージを合計80個収集し、MOSFLM(Leslie,A.G.W.(1992).In Joint CCP4 and EESF-EACMB Newsletter on Protein Crystallography、26巻、Warrington、Daresbury Laboratory)を用いて処理し、SCALA(CCP4-Collaborative Computational Project 4.(1994)The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography、Acta, Crystallographica D50、760〜763)を用いて倍率変更し、CCP4プログラムスィートを用いて換算した。
タンパク質精製(3)
細胞を、10000gで10分間ペレット化し、500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル3(Calbiochem)、10mMイミダゾール、40U/ml Dnase 1および5mM MgSO4を含有する緩衝剤に再懸濁させた。
Constant Systems Cell Homogeniserを10000psi(70MPa)で2回通過させて細胞を溶解させた。次いで、細胞片を、22000xg、4℃30分間の遠心分離によって除去した。
洗浄剤IGEPAL CA630(Sigma)を10%原液から最終濃度0.3%(v/v)で溶解物に滴下し、溶解物を、あらかじめ洗浄したNiNTA樹脂(Qiagen)とともに終夜4℃で撹拌しながらインキュベートした。タンパク質が結合したNiNTA樹脂を2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。この樹脂を、20樹脂体積の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、10mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で洗浄し、2000g、4℃5分間の遠心分離によってペレット化した。次いで、この樹脂を、10樹脂体積の500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、20mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤、0.3%IGEPAL CA630で洗浄し、上述したように遠心分離して樹脂を回収した。
この樹脂を室温でカラムに充填し、チトクロムP450を、冷500mM KPi、pH7.4、20%グリセリン、10mMメルカプトエタノール、300mMイミダゾール、0.1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤カクテル、0.3%(v/v)IGEPAL CA630で溶出させた。
NiNTAカラムから得られたチトクロムP450を、HiPrep 26/10脱塩カラム(Pharmacia)を用いて、流量5ml/minで、10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTA中に素早く脱塩した。
脱塩されたチトクロムP450を、10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTAであらかじめ平衡にしたCM Sepharoseカラム(Pharmacia)に直接かけた。以下のステップ溶出を適用した:20カラム体積の10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、2.0mM DTT、1mM EDTAで洗浄し、続いて痕跡量の洗浄剤を除去するために75mM KClを含む上記緩衝剤20カラム体積で洗浄し、次いで、KCl濃度を500mMに増加させた上記緩衝剤で溶出させた。
次いで、濃縮試料(200μL、7.9mgタンパク質)をSuperdex 200 HR10/30カラム(Pharmacia)を用いて10mM KPi、pH7.2、20%グリセリン、1mM EDTA、2mM DTT、500mM KCl中、流量0.4ml/minでゲルろ過した。0.5mlの各画分を収集した。3個のピークのタンパク質を収集した。このうち第1のピーク(溶出体積、Ve=8.64ml)は、カラムの空隙容量Vo(Vo=8.66ml)によって排除された凝集タンパク質であり、第2のピーク(Ve=12.4ml)は最も大きくP450であり、第3の最小のピーク(Ve=15.49ml)は低分子量タンパク質汚染物質であった。
次いで、結晶化試験のために、P450ピークをプールし、マイクロ濃縮器を用いて40mg/mlまで濃縮した。あるいは、3A4を、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて、10mM KPi pH7.2、20%グリセリン、0.5M KCl、2mM DTTを1.5mg/mlで流通させて平衡にした26/60 Superdex 200カラムに流して結晶化の均一性を改善することによって精製することができる。
結晶化(3)
3A4の結晶をハンギングドロップ蒸気拡散法によって成長させた。10mM Kpi pH7.2、0.5M KCl、2mM DTT、1mM EDTA、20%グリセリン中36mg/mlのタンパク質を、0.5μl液滴を用いて貯蔵溶液と1:1で混合した。3A4の結晶は、0.1M HEPES pH7.5、0.025M塩化ナトリウム、7.5%IPA、10%PEG 4000を含有する貯蔵溶液上で成長した。
結晶は25℃で数日で形成され、棒状の形であった。
結晶を、0.1M HEPES pH7.5、0.25M KCl、15%PEG 4000および20%グリセリンからなる低温溶液に移し、次いで、液体窒素で凍結させてからデータ収集した。
データセット収集(3)
タンパク質精製(3)および結晶化(3)の上記手順を用いて生成した単結晶から、European Synchrotron Radiation FacilityのビームラインID29で分解能2.8Åまでデータを収集した。ヘム鉄が検出可能なシグナルを発生する正確なエネルギーを決定するために、データ収集前に、結晶からエネルギースキャンを採った。エネルギースキャンによって、ピークエネルギーが7.126KeV(波長1.7398Åに相当する)であり、および屈曲波長(inflection wavelength)の適切なポイントが7.123KeV(波長1.7406Åに相当する)であることが示された。
結晶の格子寸法はおよそa=77.94Å、b=100.91Å、c=131.00Å、α=β=γ=90°であった。空間群はI222であった。
単結晶から、1組は波長1.7398Å(ピークデータセット)で分解能2.8Åまで、もう1組は波長1.7406Å(屈曲データセット)で分解能3.1Åまでの2組のデータセットを収集した。合計180°のデータを各波長で収集して、データが確実に重複するようにした。データを、MOSFLM(Leslie,A.G.W.(1992).In Joint CCP4 and EESF-EACMB Newsletter on Protein Crystallography、26巻、Warrington、Daresbury Laboratory)を用いて処理し、SCALA(CCP4 computing package (Collaborative Computational Project 4.The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763)を用いて倍率変更し、CCP4プログラムスィートを用いてさらに換算した。
Figure 2006503912
ここで、
Dmax=最大分解能
Dmin=最低分解能
sum〜i〜 ( sum〜j〜 | I〜j〜 - <I> | )
Rmerge = --------------------------------
sum〜i〜 ( sum〜j〜 <I> )
I〜j〜 = 反射iのj番目の観測強度
<I> = 反射Iの全観測強度の平均値
sum〜i〜は、すべての反射にわたって計算される。
sum〜j〜は、各反射のすべての観測値にわたって計算される。
Rfull = 完全に記録された反射のみのRmerge
Rcum = すべての反射の累積的なRmerge
Ranom = Sum |Mn(I+) - Mn(I-)| / Sum (Mn(I+) + Mn(I-))、式中、MN(I)はその殻の平均Iである。
I/sigma = I/Sigma
Mn(I)/Sd = Mn(I)/I/Sigma(I)の標準偏差
MAD構造決定
単位格子内の鉄原子の位置は、ピーク異常データを用いてプログラムFFT(CCP4スィートの一部)によって計算された異常差分パターソン図の3つのハーカーセクションの目視検査によって決定された。
生成した位相に使用される鉄原子の精緻化パラメータは、以下のとおりである:x=23.255、y=23.237、z=10.742、占有率=0.92、温度因子=69.45。これらの精緻化パラメータは、プログラムSHARPを用いて、結晶から得られる実験データ(表3の列4および5)に対して精緻化することによって得られた。次いで、これらの原子パラメータをSHARP内で使用して3A4の位相を作成した。これらの位相は、密度修正手順によって改変することができる。SHARPから得られる位相は、SHARPプログラムを通して利用可能なSOLOMON/DMを用いて溶媒平滑化された。得られた溶媒平滑化構造因子振幅および位相を表3の列6および7に示す。
本発明者らは、SHARP内の鉄原子パラメータを精緻化し、SHARP内で位相を作成し、次いで、SHARPを通して実行されるSOLOMONおよびDMを使用して密度修正を実施することにした。しかし、上記重原子パラメータを用いて位相を作成し、得られた位相を別のプログラムを用いて(例えば、位相を作成するCCP4プログラムMLPHARE((Z.Otwinowski:Daresbury Study Weekend proceedings、1991)およびCCP4プログラムDM(K.Cowtan(1994)、Joint CCP4 and ESF-EACBM Newsletter on Protein Crystallography、31、34〜38ページを用いて)溶媒平滑化することができる。
このような位相の作成(非平滑化または溶媒平滑化)は、上述したように、重原子または異常原子(この場合、ヘムの鉄)を記述する正確なパラメータを決定することに依拠している。
したがって、別の態様においては、本発明は、鉄パラメータx=23.255、y=23.237、z=10.742、占有率=0.92、温度因子=69.45、および結晶から得られる実験構造因子データ(表3の列4および5)、または同じ結晶形の別の3A4の結晶から得られる構造因子データを用いて、3A4結晶の位相を作成する方法を提供する。
鉄位置の割当は、所与の空間群I222と一致したが、別の選択I212121とは一致しなかった。両方のデータセットと空間群I222が、重原子下部構造解析の位置および対称性を自動的に決定するプログラムautoSHARP(Vonrhein,C.&Bricogne,G.、(2002)、Global Phasing)に与えられ、密度修正後に1セットの位相が得られた。得られた密度修正位相は、SHARP(La Fortelle,E.deおよびBricogne,G.(1997)Maximum-likelihood heavy-atom parameter refinement for multiple isomorphous replacement and multiwavelength anomalous diffraction methods. Methods in Enzymology 276,472〜494)における重原子モデルのさらなる精緻化の間、位相制約として使用され、1セットの位相(位相セットI)が得られた。類似の重原子精緻化および位相調整実験においては、ピーク波長のみを使用して、1セットの位相(位相セットII)が得られた。
得られた位相(位相セットI)は、MOLREP(A.Vagin、A.Teplyakov、J.Appl.Cryst.(1997)30、1022〜1025、CCP4スィートの一部)で実行され、ヘムが排除された2C5(pdbent 1DT6)が検索モデルとして配列番号2の配列とともに使用された位相調整分子置換において使用された。これによって、ヘム部分が、ハーカーセクションの検査によって得られる鉄位置と一致した明白な解析結果が得られた。
(1DT6および配列番号2の配列に基づいて)配向され位置付けられたモデルであるモデルAは、SHARPプログラムパッケージを通してSOLOMON(Abrahams J.P.およびLeslie A.G.W.、Acta Crystallographica D52、(1996)、30〜42)において実施される密度修正において位相セットII位相とともに使用された。
表2は、分解能ビン(resolution bin)における位相化統計である。各列は、
最低分解能
最高分解能
位相調整力(phasing power)計算に使用されるピークおよび屈曲データセットに対する非中心性反射(acentric reflection)の数
ピークおよび屈曲データセット(位相セットI)に対する異常位相調整力
SHARP性能指数計算に使用される非中心性反射の数
非中心性反射(位相セットI)に対するSHARP性能指数
SHARP性能指数計算に使用される中心性反射(centric reflection)の数
中心性反射(位相セットI)に対するSHARP性能指数
溶媒フリッピング(solvent flipping)の第1サイクル-最終サイクルにおけるモデル-Aを含めたSOLOMONを用いた位相セットIIの密度修正後の性能指数
10.FOM=cos(平均位相誤差)の関係を用いて列9のFOMから導出される平均位相誤差
電子密度図を計算することができる構造因子および位相を表3に示す。得られた電子密度図は、明白な構造上の特徴を示した。電子密度を分子置換解析と比較すると、構造要素は、2C5検索モデルにおけるそれらの位置からわずかにずれているのは明らかであったが、P450の2次構造は明瞭であった。分子置換モデルから失われたヘム基は、明確に規定された平面状電子密度を有する。
タンパク質のキャラクタリゼーション
タンパク質調製物の各々の最終品質を以下の通り評価した。
(a)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
これは、市販のゲル(Nugen)、続いてクーマシーブリリアントブルー(CBB)染色を製造者の指示に従って使用して実施された。ゲルのデジタルイメージをスキャンして推定された純度は少なくとも95%と推定された。
(b)質量分析
Bruker BioTOF IIエレクトロスプレー飛行時間型機器を用いて質量分析法を実施した。試料を、貯蔵緩衝剤から直接メタノール/水/ギ酸(50:48:2v/v/v)中に1000倍に希釈し、あるいはメタノール/水/ギ酸に希釈する前に、C4 Millipore「zip-tip」またはC4 HPLCカラムを用いて逆相分離にかけた。
較正は、ボンベシンおよびアンジオテンシンIを含有するペプチド混合物の2+および1+電荷状態の測定によって、またはウマミオグロビンの複数の電荷状態を使用することによって実施された。データは、m/z範囲200〜2000において取得され、引き続いてBruker's X-massプログラムによって処理された。質量確度は、1/10000(100ppm)よりも良好であると考えられた。
3A4の質量スペクトル: 55279.43 Da (実測値)
55277.81 Da (タンパク質-N末端メチオニンに対する予測値)
(c)官能基アッセイ
3A4に対する活性アッセイを、フルオレセインエステルに脱アルキルされるジベンジルフルオレセイン(Gentest)を蛍光性基質として用いて実施した。
面積の半分が黒色の96ウェルCostarプレート中で最終アッセイ体積50μlでアッセイを実施した。Fluoroscan Ascent FL Instruments(Labsystem)プレートリーダーを用いて、それぞれ485nmおよび538nmの励起波長および発光波長で反応速度を室温で1時間モニターした。反応速度をPrizm(GraphPad)ソフトウエアを用いて測定した。
反応混合物は、2単位/ml精製ヒトオキシドレダクターゼとともにインキュベートされた3A4酵素300nM、2.8μMジベンジルフルオレセイン、ならびに140μM NADP+、400μMグルコース-6-ホスフェート、および100mMリン酸カリウムpH7.8中の2.8単位/mlグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、1mM MgCl2で構成された再生システムで構成された。
Figure 2006503912
3A4構造決定
表3に示した電子密度図によって、グラフィックプログラムO(Jones,T.A.、Zou,J.Y.、Cowan,S.W.、およびKjeldgaard(1991)Acta Cryst.A47、110〜119)を用いて3A4のモデルを構築することができる。次いで、このモデルを、プログラムCNX(Brunger,A.T.、Adams,P.D.、Clore,G.M.、DeLano,W.L.、Gros,P.、Grosse-Kunstleve,R.W.、Jiang,J.S.、Kuszewski,J.、Nilges,M.、Pannu,N.S.、Read,R.J.、Rice,L.M.、Simonson,T.およびWarren,G.L.(1998)Acta Cryst.D54、905〜921)およびRefmac(Murshudov,G.N.、Vagin,A.A.およびDodson,E.J.(1997)Acta Cryst.D50、760〜763)を用いて、鉄MAD実験(表1に示すデータの統計)から得られるピーク波長データセットに対して分解能2.8Åまで精緻化した。表4の精緻化統計(refinement statistics)は、表5に示すモデルのものである。モデルは、29個の秩序付けられた水分子を含む。
Figure 2006503912
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付録3
Astex-EXTENDC
(例えば、完全なタンパク質分子を網羅するために)FFTプログラムによって計算される非対称ユニットから得られる電子密度図を拡張するために使用されるCCP4プログラムEXTEND(Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography、Acta Crystallographica、D50、(1994)、760〜763)のソースコードに以下の改変がなされた。電子密度の平均およびRMS偏差は、拡張された電子密度図に対しては再計算されない。その代わりに改変ソースコードにおいては、これらの値は、FFTプログラムによって計算される元の電子密度図から単にコピーされる。
これの理論的原理は統計の厳密さである。すなわち、電子密度図の非対称ユニットは、統計上、電子密度値の真の母集団であり、したがって、非対称ユニットに対する平均およびRMS偏差の値は、それぞれ真の母集団の平均および母集団標準偏差の値とみなすことができる。整数の非対称ユニットではない電子密度図の別の任意のサブセットまたはスーパーセットは、対応する標本および標本標準偏差を有する統計上の標本である。これは、偏った標本である場合もある。というのは、電子密度図が拡張されたときに、図対称性によって関係付けられる密度値が1回を超えて作成される可能性が極めて高いからである。標本統計量は、偏っていてもいなくても、常に母集団統計量の近似に過ぎない。
Figure 2006503912
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本発明のさらなる説明
本発明を、以下の番号を付した条項によってさらに説明する。
1.チトクロムP450 3A4の結晶の3次元構造表示を得る方法であって、表3の少なくとも列1、2、3、6および7のデータを用意するステップと、前記データの電子密度図を構築するステップとを含む方法。
2.前記電子密度図が、前記表の列8のデータを参照することによって構築される、条項1に記載の方法。
3.3A4の初期モデルを前記電子密度図に当てはめる、条項1または2に記載の方法。
4.前記初期モデルが、前記表の列4および5のデータを参照することによって精緻化される、条項3に記載の方法。
5.前記結晶における3A4の1個または複数の原子の3次元座標を計算して3A4の第1の3次元構造を得るステップをさらに含む、前記条項のいずれか一条項に記載の方法。
6.前記構造が表5の構造である、条項5に記載の方法。
7.前記第1の構造における1個または複数の原子の位置が変更されて、r.m.s.dが前記第1の構造から2.0Å未満の3次元座標を有する第2の構造が提供される、条項5に記載の方法。
8.チトクロムP450 3A4の結晶の3次元構造表示を得る方法であって、表5のデータまたはその選択座標を用意するステップと、前記座標を表す3次元構造を構築するステップとを含む方法。
9.コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが条項5から8のいずれか一条項に記載の3次元座標の少なくとも選択部分を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
10.コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが表5のP450タンパク質またはP450のホモログの構造座標のすべてまたは一部によって規定され、前記ホモログが表5の骨格原子からの標準偏差が2.0Å以下である骨格原子を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
11.ある分子構造とP450構造の相互作用を分析するためのコンピュータベースの方法であって、
条項5から8のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができるP450構造またはその選択座標、表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造またはその選択座標を用意するステップと、
前記P450構造またはその選択座標に当てはめる分子構造を用意するステップと、
前記分子構造を前記P450構造に当てはめるステップとを含む、コンピュータベースの方法。
12.前記選択座標が、残基Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304の1個または複数からの原子を含む、条項11に記載の方法。
13.前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
前記化合物をP450タンパク質と接触させて、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップと
をさらに含む、条項11または12に記載の方法。
14.前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
3A4 P450タンパク質と前記化合物の複合体を形成するステップと、
X線結晶学によって前記複合体を解析して、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、条項11、12または13に記載の方法。
15.前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
前記化合物が前記P450構造体によってどのように代謝されるかを決定する、または予測するステップと、
前記化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとをさらに含む、条項14に記載の方法。
16.条項15に記載の方法を用いて特定された改変構造を有する化合物。
17.構造が未知な標的P450タンパク質の電子密度図を得る方法であって、
前記標的P450の結晶を用意するステップと、
前記結晶のX線回折パターンを得るステップと、
表3の構造因子位相データを参照することによって前記結晶の電子密度図を計算するステップとを含む方法。
18.条項5から8のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができる3A4 P450構造、あるいは表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造、またはその選択座標を基に、構造が未知の前記標的P450の構造をモデル化するステップと、
構造が未知の前記標的P450のコンホメーションを決定するステップとをさらに含む、条項17に記載の方法。
19.前記標的P450タンパク質が、3A5、3A7および3A43からなる群から選択される、条項18に記載の方法。
20.化合物がP450 3A4タンパク質に結合するかどうかを明らかにする方法であって、
前記P450タンパク質の結晶を用意するステップと、
前記結晶に前記化合物を浸透させて複合体を形成するステップと、
表3のデータまたはその一部を使用することによって、前記複合体の電子密度図を決定するステップとを含む方法。
21.前記化合物の構造を決定するステップをさらに含む、条項20に記載の方法。
22.前記化合物を入手または合成するステップと、
前記化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとをさらに含む、条項20に記載の方法。
23.P450、P450ホモログもしくはアナログ、P450と化合物の複合体、またはP450ホモログもしくはアナログと化合物の複合体と相互作用する化合物の構造を作成しかつ/または最適化を実施するためのコンピュータシステムであって、
(a)表3に示すP450の構造因子データと、
(b)条項5から8のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができる原子座標データ、あるいは表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造によって定義される原子座標データ、あるいはその選択座標(前記データは3A4 P450の3次元構造または少なくともその選択座標を規定する)と、
(c)(b)の相同モデリングによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
(d)表3のデータを参照してX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データと、
(f)表5の原子座標データまたはその選択部分との1つまたは複数を含むコンピュータ読取り可能なデータを含むコンピュータシステム。
24.前記原子座標データが、残基Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304によって与えられる原子の少なくとも1個についてのものである、条項23に記載のコンピュータシステム。
25.(i)前記コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体と、
(ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理するための命令を記憶するワーキングメモリと、
(iii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理し、それによって構造を作成しかつ/または合理的なドラッグデザインを実施するための、前記ワーキングメモリおよび前記コンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体に接続された中央処理装置とを備えた、条項23または24に記載のコンピュータシステム。
26.前記中央処理装置に接続されて前記構造を表示するディスプレイをさらに備える、条項25に記載のコンピュータシステム。
27.P450、P450ホモログもしくはアナログ、P450と化合物の複合体、またはP450ホモログもしくはアナログと化合物の複合体と相互作用する化合物の構造を作成しおよび/または最適化を実施するためのデータを提供する方法であって、
(i)(a)表3に示すP450の構造因子データと、(b)条項5から7のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができる原子座標データ、あるいは表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造によって定義される原子座標データ、あるいはその選択座標(前記データはP450の3次元構造またはP450の原子の選択座標を規定する)と、(c)前記データ(b)に基づいた標的の相同モデリングによって作成される標的P450ホモログまたはアナログの原子座標データと、(d)表3のデータを参照してX線結晶学データまたはNMRデータを解釈することによって作成されるタンパク質の原子座標データと、(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データとの少なくとも1つを含むコンピュータ読取り可能なデータを含む遠隔装置との通信を確立するステップと、
(ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを前記遠隔装置から受信するステップとを含む方法。
28.前記原子座標データが表5のデータまたはその選択部分である、条項27に記載の方法。
29.コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが、
(a)表3に示すP450の構造因子データと、
(b)条項5から7のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができる原子座標データ、あるいは表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造によって定義される原子座標データ、あるいはその選択座標(前記データは3A4 P450の3次元構造または少なくともその選択座標を規定する)と、
(c)(b)のデータに基づいた標的の相同モデリングによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
(d)表3のデータを参照することによってX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
(e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データと、
(f)表5の原子座標データまたはその選択部分とによって定義される、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
30.条項5から7のいずれか一条項に記載の方法によって得ることができるP450タンパク質の構造座標、あるいは表5または条項9もしくは10に記載のいずれか1つの構造によって定義されるP450タンパク質の構造座標あるいはその選択座標の少なくとも一部のフーリエ変換を含むコンピュータ読取り可能な第1のデータセットをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが、構造が未知な分子または分子複合体のX線回折パターンを含む機械読取り可能な第2のデータセットと組み合わされたときに、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用するための命令がプログラムされた機械を用いて、機械読取り可能な第2のデータセットに対応する構造座標の少なくとも一部を決定することができる、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
31.コンピュータ読取り可能な前記第1のデータセットが、表5のP450タンパク質の構造座標またはその選択座標の少なくとも一部のフーリエ変換を含む、条項30に記載のコンピュータ読取り可能な記憶媒体。
32.3A4である標的タンパク質、または3A4に相同である標的タンパク質の電子密度図を求める方法であって、前記標的タンパク質の結晶を用意するステップと、前記タンパク質のX線回折を得るステップと、表3の構造因子位相データを参照することによって前記標的タンパク質の電子密度図を作成するステップとを含む方法。
33.3.1Åよりも優れた分解能を有するP450 3A4タンパク質の結晶。
34.表5の座標によって規定される構造を有するP450タンパク質の結晶。
36.構造が未知なP450ホモログまたはアナログの3次元構造を予測する方法であって、
3次元構造が未知である標的P450タンパク質のアミノ酸配列表示を、表5のP450のアミノ酸配列と整列させて、前記アミノ酸配列の相同領域を一致させるステップと、
構造が未知の前記標的P450の一致した相同領域の構造を、表5によって規定されるP450構造の対応する領域を基にモデル化するステップと、
前記一致した相同領域の構造を実質的に保存する、構造が未知な前記標的P450のコンホメーションを決定するステップとを含む方法。
37.前記標的P450タンパク質が、3A5、3A7または3A43からなる群から選択される、条項36に記載の方法。
38.P450 3A4タンパク質の基質特異性と実質的に同じ基質特異性をもたらす結合空隙を有するキメラタンパク質であって、
前記キメラタンパク質結合空隙に、P450 3A4結合空隙に沿って並ぶ選択されたP450 3A4原子に対応する複数の原子が並び、前記複数の原子の相対位置が、表5によって規定される前記選択されたP450 3A4原子の相対位置に対応する、キメラタンパク質。
39.タンパク質の構造を決定する方法であって、
表5の座標またはその選択座標を用意するステップと、
(a)前記タンパク質の構造をもたらすように、前記タンパク質の結晶単位格子中に前記座標を配置するステップ、または(b)前記座標を操作することによって前記タンパク質のNMRスペクトルピークを帰属させるステップのどちらかとを含む方法。
40.P450タンパク質に結合する化合物の構造を決定する方法であって、
P450タンパク質の結晶を用意するステップと、
前記結晶に前記化合物を浸透させて複合体を形成するステップと、
表5のデータまたはその一部を使用して、前記複合体の構造を決定するステップとを含む方法。
41.P450タンパク質に結合する化合物の構造を決定する方法であって、
P450タンパク質を前記化合物と混合するステップと、
P450タンパク質-化合物複合体を結晶化させるステップと、
表5のデータまたはその一部を使用して、前記複合体の構造を決定するステップとを含む方法。
42.化合物のP450 3A4タンパク質との相互作用能を評価する方法であって、
前記化合物を入手または合成するステップと、
P450 3A4タンパク質と前記化合物の結晶化複合体を形成し、前記複合体がX線を回折して2.8Åよりも優れた分解能まで前記複合体の原子座標が決定されるステップと、
X線結晶学によって前記複合体を解析して、前記化合物がP450 3A4タンパク質と相互作用するかどうかを求めるステップとを含む方法。
43.リガンドに結合したチトクロムP450分子のコンピュータによる構造を提供するための、表5の原子座標データまたはその選択座標の使用。
44.合理的なドラッグデザインのコンピュータベースの方法であって、
(a)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満で規定されるP450 3A4構造の少なくとも2個の原子の座標(「選択座標」)を用意するステップと、
(b)複数の分子断片の構造を用意するステップと、
(c)前記分子断片の各々の構造を前記選択座標に当てはめるステップと、
(d)前記分子断片を単一の分子に組み立てて、モジュレーター分子候補を形成するステップとを含む、コンピュータベースの方法。
45.(a)前記分子構造またはモジュレーターを入手または合成するステップと、
(b)前記分子構造またはモジュレーターをP450 3A4と接触させて、前記分子構造またはモジュレーターがP450 3A4と相互作用するかどうかを明らかにするステップとをさらに含む、条項44に記載の方法。
46.P450 3A4のモジュレーター候補を特定する方法であって、
(a)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満の原子座標データによって規定されるP450 3A4の3次元構造、その少なくとも1個のサブドメイン、またはその複数の原子を使用して、少なくとも1個のP450 3A4結合用キャビティの特徴を明らかにするステップと、
(b)結合用キャビティとの相互作用に対して化合物を設計または選択することによってモジュレーター候補を特定するステップとを含む方法。
47.(a)前記分子構造またはモジュレーターを入手または合成するステップと、
(b)前記分子構造またはモジュレーターをP450 3A4と接触させて、前記分子構造またはモジュレーターがP450 3A4と相互作用するかどうかを決定するステップとをさらに含む、条項46に記載の方法。
上記明細書に述べたすべての出版物および特許を参照により本明細書に援用する。本発明の様々な改変形態および変更形態が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明をそのような具体的実施形態に過度に限定すべきでないことを理解すべきである。
表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表3である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表5である。 表6である。 表6である。

Claims (76)

  1. チトクロムP450 3A4の結晶の3次元構造表示を得る方法であって、表3の少なくとも列1、2、3、6および7のデータを用意するステップと、前記データの電子密度図を構築するステップとを含む方法。
  2. 前記電子密度図が、前記表の列8のデータを参照することによって構築される、請求項1に記載の方法。
  3. 3A4の初期モデルが前記電子密度図に当てはめられる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記初期モデルが、表3の列4および5のデータを参照することによって精緻化される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記結晶における3A4の1個または複数の原子の3次元座標を計算して3A4の第1の3次元構造を得るステップをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
  6. 前記構造が、表5の構造±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記第1の構造における1個または複数の原子の位置が変更されて、前記第1の構造から1.5Å未満のr.m.s.dを有する3次元座標で第2の構造が提供される、請求項5または6に記載の方法。
  8. ある分子構造とP450構造の相互作用を分析するためのコンピュータベースの方法であって、
    請求項5から7のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるP450構造またはその選択座標を用意するステップと、
    前記P450構造またはその選択座標に当てはめる分子構造を用意するステップと、
    前記分子構造を前記P450構造に当てはめるステップとを含む、コンピュータベースの方法。
  9. 前記選択座標が、残基Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304の1個または複数からの原子を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記選択座標が、表7において特定される残基の1個または複数からの原子を含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
  11. 前記選択座標が、表8において特定される残基の1個または複数からの原子を含む、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    前記化合物をP450タンパク質と接触させて、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    3A4 P450タンパク質と前記化合物の複合体を形成するステップと、
    X線結晶学によって前記複合体を解析して、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    前記化合物が前記P450構造によってどのように代謝されるかを決定する、または予測するステップと、
    前記化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとをさらに含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
  15. 請求項14の方法を用いて特定された改変構造を有する化合物。
  16. 構造が未知な標的P450タンパク質の電子密度図を得る方法であって、
    前記標的P450の結晶を用意するステップと、
    前記結晶のX線回折パターンを得るステップと、
    表3の構造因子位相データを参照することによって前記結晶の電子密度図を計算するステップとを含む方法。
  17. 請求項5もしくは請求項7に記載の方法によって得ることができる3A4 P450構造、または表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の構造またはその選択座標を基に、構造が未知の前記標的P450の構造をモデル化するステップと、
    構造が未知の前記標的P450のコンホメーションを決定するステップとをさらに含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記標的P450タンパク質が、3A5、3A7および3A43からなる群から選択される、請求項16または請求項17に記載の方法。
  19. 化合物がP450 3A4タンパク質に結合するかどうかを決定する方法であって、
    前記P450タンパク質の結晶を用意するステップと、
    前記結晶に前記化合物を浸透させて複合体を形成するステップと、
    表3のデータまたはその一部を使用することによって、前記複合体の電子密度図を求めるステップとを含む方法。
  20. 前記化合物の構造を決定するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記化合物を入手または合成するステップと、
    前記化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとをさらに含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
  22. 3A4である標的タンパク質、または3A4に相同である標的タンパク質の電子密度図を求める方法であって、前記標的タンパク質の結晶を用意するステップと、前記タンパク質のX線回折を得るステップと、表3の構造因子位相データを参照することによって前記標的タンパク質の電子密度図を作成するステップとを含む方法。
  23. ある分子構造とP450構造の相互作用を分析するためのコンピュータベースの方法であって、
    P450 3A4またはP450 3A4の一部の3次元表示を含む構造を用意するステップであって、前記表示が、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の座標のすべてまたは一部で構成されるステップと、
    前記P450 3A4構造またはその選択座標に当てはめる分子構造を用意するステップと、
    前記分子構造を前記P450 3A4構造に当てはめるステップとを含む、コンピュータベースの方法。
  24. 前記表示が、表6の座標のすべてまたは一部をさらに含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記選択座標が、残基Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304の1個または複数からの原子を含む、請求項23または請求項24に記載の方法。
  26. 前記選択座標が、表7の残基の1個または複数からの原子を含む、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記選択座標が表8の1個または複数の残基からの原子を含む、請求項23から26に記載の方法。
  28. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    前記化合物をP450タンパク質と接触させて、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    3A4 P450タンパク質と前記化合物の複合体を形成するステップと、
    X線結晶学によって前記複合体を解析して、前記化合物のP450との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記分子構造を有する化合物を入手または合成するステップと、
    前記化合物が前記P450構造によってどのように代謝されるかを明らかにする、または予測するステップと、
    前記化合物構造を改変して、それとP450の相互作用を変えるステップとをさらに含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
  31. 請求項30の方法を用いて特定された改変構造を有する化合物。
  32. 当てはめられる前記分子構造がファルマコフォアのモデルの形である、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記3次元表示が、表1±Cα原子からの標準偏差0.5Å未満の座標のすべてまたは一部から構築されるモデルである、請求項23から30および32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記モデルが、(a)ワイヤーフレームモデル、(b)チキンワイヤーモデル、(c)棒球モデル、(d)空間充填モデル、(e)棒モデル、(f)リボンモデル、(g)ヘビモデル、(h)矢とシリンダー(arrow and cylinder)モデル、(i)電子密度図、(j)分子表面モデルである、請求項33に記載の方法。
  35. 分子構造を分析するためのコンピュータベースの方法であって、
    (a)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満で規定されるP450 3A4構造の少なくとも2個の原子の座標(「選択座標」)を用意するステップと、
    (b)前記選択座標に当てはめるべき分子構造体の構造を用意するステップと、
    (c)前記構造をP450 3A4構造の選択座標に当てはめるステップとを含む、コンピュータベースの方法。
  36. 前記選択座標が少なくとも5、10、50、100、500または1000原子からなる、請求項35に記載の方法。
  37. 表5の座標が、結合ポケットの少なくとも一部である、請求項35または請求項36に記載の方法。
  38. 表5の座標が、表7のアミノ酸残基の少なくとも2原子を含む、請求項37に記載の方法。
  39. 表5の座標が、表8のアミノ酸残基の少なくとも2原子を含む、請求項37または請求項38に記載の方法。
  40. 合理的なドラッグデザインのコンピュータベースの方法であって、
    (a)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満で規定されるP450 3A4構造の少なくとも2個の原子の座標(「選択座標」)を用意するステップと、
    (b)複数の分子断片の構造を用意するステップと、
    (c)前記分子断片の各々の構造を前記選択座標に当てはめるステップと、
    (d)前記分子断片を単一の分子に組み立てて、モジュレーター分子候補を形成するステップとを含む、コンピュータベースの方法。
  41. (a)前記分子断片またはモジュレーター分子を入手または合成するステップと、
    (b)前記分子断片またはモジュレーター分子をP450 3A4と接触させて、前記分子断片またはモジュレーター分子のP450 3A4との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項40に記載の方法。
  42. P450 3A4のモジュレーター候補を特定する方法であって、
    (a)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満の原子座標データによって規定されるP450 3A4の3次元構造、その少なくとも1個のサブドメイン、またはその複数の原子を使用して、少なくとも1個のP450 3A4結合用キャビティの特徴を明らかにするステップと、
    (b)結合用キャビティとの相互作用に対して化合物を設計または選択することによって前記モジュレーター候補を特定するステップとを含む方法。
  43. (a)モジュレーター候補を入手または合成するステップと、
    (b)前記モジュレーター候補をP450 3A4と接触させて、前記モジュレーター候補のP450 3A4との相互作用能を決定するステップとをさらに含む、請求項42に記載の方法。
  44. タンパク質の構造を決定する方法であって、
    表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の座標またはその選択座標を用意するステップと、
    (a)前記タンパク質の構造をもたらすように、前記タンパク質の結晶単位格子中に前記座標を配置するステップ、または(b)前記座標を操作することによって前記タンパク質のNMRスペクトルピークを帰属させるステップのどちらかのステップとを含む方法。
  45. P450タンパク質に結合する化合物の構造を決定する方法であって、
    P450タンパク質の結晶を用意するステップと、
    前記結晶に前記化合物を浸透させて複合体を形成するステップと、
    表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下のデータまたはその一部を使用して、前記複合体の構造を決定するステップとを含む方法。
  46. P450タンパク質に結合する化合物の構造を決定する方法であって、
    P450タンパク質を前記化合物と混合するステップと、
    P450タンパク質-化合物複合体を結晶化させるステップと、
    表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下のデータまたはその一部を使用して、前記複合体の構造を決定するステップとを含む方法。
  47. チトクロムP450 3A4の結晶の3次元構造表示を得る方法であって、表5のデータまたはその選択座標を用意するステップと、前記座標を表す3次元構造を構築するステップとを含む方法。
  48. P450、P450ホモログもしくはアナログ、P450と化合物の複合体、またはP450ホモログもしくはアナログと化合物の複合体と相互作用する化合物の構造を作成し、および/または最適化を実施するためのコンピュータシステムであって、
    (a)表3に示すP450の構造因子データと、
    (b)請求項5または請求項7に記載の方法によって得ることができ、3A4 P450の3次元構造または少なくともその選択座標を規定する原子座標データと、
    (c)(b)の相同モデリングによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
    (d)表3のデータを参照することによってX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
    (e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データと、
    (f)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の原子座標データまたはその選択座標との1個または複数を含むコンピュータ読取り可能なデータを含むコンピュータシステム。
  49. 前記原子座標データが、残基Phe57、Phe108、Phe213、Phe215、Phe219、Phe220、Phe241およびPhe304によって与えられる原子の少なくとも1個に対するものである、請求項48に記載のコンピュータシステム。
  50. 前記原子座標データが、表7の残基によって与えられる原子の少なくとも1個に対するものである、請求項48または請求項49に記載のコンピュータシステム。
  51. 前記原子座標データが、表8の残基によって与えられる原子の少なくとも1個に対するものである、請求項48から50のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
  52. (i)前記コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体と、
    (ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理するための命令を記憶するワーキングメモリと、
    (iii)前記コンピュータ読取り可能なデータを処理し、それによって構造を作成し、かつ/または合理的なドラッグデザインを実施するための、前記ワーキングメモリおよび前記コンピュータ読取り可能なデータ記憶媒体に接続された中央処理装置とを備える、請求項48から51のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
  53. 前記中央処理装置に接続されて前記構造を表示するディスプレイをさらに備える、請求項52に記載のコンピュータシステム。
  54. P450、P450ホモログもしくはアナログ、P450と化合物の複合体、またはP450ホモログもしくはアナログと化合物の複合体と相互作用する化合物の構造を作成し、および/または最適化を実施するためのデータを提供する方法であって、
    (i)(a)表3に示すP450の構造因子データと、
    (b)P450の3次元構造またはP450の原子の選択座標を規定する、請求項5または請求項7の方法によって得ることができる原子座標データと、
    (c)表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の原子座標データまたはその選択座標と、
    (d)(b)のデータに基づいた標的の相同モデリングによって作成された標的P450ホモログまたはアナログの原子座標データと、
    (e)表3のデータを参照することによってX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成されるタンパク質の原子座標データと、
    (f)(d)または(e)の原子座標データから導出可能である構造因子データとの少なくとも1個を含むコンピュータ読取り可能なデータを含む遠隔装置との通信を確立するステップと、
    (ii)前記コンピュータ読取り可能なデータを前記遠隔装置から受信するステップとを含む方法。
  55. 前記原子座標データが、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下のデータまたはその選択部分である、請求項54に記載の方法。
  56. コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが請求項5から7のいずれか一項の3次元座標の少なくとも選択部分を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
  57. コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが表5のP450タンパク質またはP450のホモログの構造座標のすべてまたは一部によって規定され、前記ホモログが表5の骨格原子からの標準偏差が1.5Å以下である骨格原子を含む、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
  58. コンピュータ読取り可能なデータをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが、
    (a)表3に示すP450の構造因子データと、
    (b)請求項5または請求項7に記載の方法によって得ることができ、3A4 P450の3次元構造または少なくともその選択座標を規定する原子座標データと、
    (c)(b)のデータに基づいた標的の相同モデリングによって作成された標的P450タンパク質の原子座標データと、
    (d)表3のデータを参照してX線結晶学的データまたはNMRデータを解釈することによって作成される標的P450タンパク質の原子座標データと、
    (e)(c)または(d)の原子座標データから導出可能である構造因子データと、
    (f)表5±Cα原子からの標準偏差が1.5Å以下の原子座標データまたはその選択部分とによって規定される、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
  59. 請求項5もしくは請求項7に記載の方法によって得ることができる、または表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の構造によって規定されるP450タンパク質の構造座標、あるいはその選択座標の少なくとも一部のフーリエ変換を含むコンピュータ読取り可能な第1のデータセットをコードするデータ記憶材料を含むコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記データが、構造が未知な分子または分子複合体のX線回折パターンを含む機械読取り可能な第2のデータセットと組み合わされたときに、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用するための命令がプログラムされた機械を用いて、機械読取り可能な第2のデータセットに対応する構造座標の少なくとも一部を決定することができる、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。
  60. 前記コンピュータ読取り可能な第1のデータセットが、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下のP450タンパク質の構造座標、またはその選択座標の少なくとも一部のフーリエ変換を含む、請求項59に記載のコンピュータ読取り可能な記憶媒体。
  61. P450 3A4の結晶。
  62. アポ型の請求項61の結晶。
  63. 斜方晶空間群がI222であり、単位格子寸法が78Å、100Å、132Å、90°、90°、90°であって、単位格子のばらつきがすべての寸法において5%であるP450 3A4の結晶。
  64. 前記3A4が配列番号2の配列を含む、請求項61から63のいずれか一項に記載の結晶。
  65. 3.1Åよりも優れた分解能を有するP450 3A4タンパク質の結晶。
  66. 表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下の座標によって規定される構造を有するP450タンパク質の結晶。
  67. 構造が未知なP450ホモログまたはアナログの3次元構造を予測する方法であって、
    3次元構造が未知な標的P450タンパク質のアミノ酸配列表示を、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下のP450のアミノ酸配列と整列させて前記各アミノ酸配列の相同領域を一致させるステップと、
    構造が未知の前記標的P450の一致した相同領域の構造を、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下によって規定されるP450構造の対応する領域を基にモデル化するステップと、
    前記一致した相同領域の構造を実質的に保存する、構造が未知な前記標的P450のコンホメーションを決定するステップとを含む方法。
  68. 前記標的P450タンパク質が、3A5、3A7または3A43からなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
  69. P450 3A4タンパク質の基質特異性と実質的に同じ基質特異性をもたらす結合空隙を有するキメラタンパク質であって、
    前記キメラタンパク質結合空隙に、P450 3A4結合空隙に沿って並ぶ選択されたP450 3A4原子に対応する複数の原子が並び、前記複数の原子の相対位置が、表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å以下によって規定される前記選択されたP450 3A4原子の相対位置に対応するキメラタンパク質。
  70. 化合物のP450 3A4タンパク質との相互作用能を評価する方法であって、
    前記化合物を入手または合成するステップと、
    P450 3A4タンパク質と前記化合物の結晶化複合体を形成し、前記複合体がX線を回折して2.8Åよりも優れた分解能まで前記複合体の原子座標が決定されるステップと、
    X線結晶学によって前記複合体を解析して、前記化合物のP450 3A4タンパク質との相互作用能を決定するステップとを含む方法。
  71. 組成物を調製する方法であって、請求項28から30、32から42、44および45のいずれか一項に記載の方法によって分子構造またはモジュレーターを特定するステップと、前記分子を担体と混合するステップとを含む方法。
  72. 医薬品、医薬組成物または薬物を製造するプロセスであって、(a)請求項28から30、32から42、44および45のいずれか一項に記載の方法によって分子構造またはモジュレーターを特定するステップと、(b)最適モジュレーター分子を含む医薬品、医薬組成物または薬物を調製するステップとを含むプロセス。
  73. (a)請求項28から30、32から42、44および45のいずれか一項に記載の方法によって分子構造またはモジュレーターを特定するステップと、(b)モジュレーター分子の構造を最適化するステップと、(c)最適モジュレーター分子を含む医薬品、医薬組成物または薬物を調製するステップとを含む、請求項71に記載のプロセス。
  74. 請求項40から42に記載のプロセスまたは方法によって特定、製造または入手可能である化合物。
  75. 医薬品に使用される請求項73の化合物またはその組成物。
  76. P450 3A4のモジュレーター候補を特定するコンピュータベースの方法であって、
    表5±Cα原子からの標準偏差1.5Å未満の原子座標データによって規定されるP450 3A4の3次元構造、またはその選択座標を使用するステップと、
    結合用キャビティとの相互作用に対して化合物を設計または選択することによって前記モジュレーター候補を特定するステップとを含む、コンピュータベースの方法。
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