JP2006348333A - Mo系耐熱アモルファス合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 下式<1>で表される組成を有し、結晶化開始温度Txが600℃以上であることを特徴とするMo系アモルファス合金。
Mo(100−x−y)−Jx−Ky <1>
ただし、x、yは原子%を示し、0<x<50、0<y<50、30≦x+y≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Kは、Si,Bから選ばれた1種または2種の元素である。
【選択図】 図2
Description
アモルファス合金は、このように工業的に極めて有用な合金であるが、耐熱性という観点からは通常の多結晶合金に劣っている。
すなわち、アモルファス合金は、温度が上昇し、結晶化開始温度(Tx)を超えると結晶化を生じ、その優れた特性を喪失するからである。
アモルファス合金は、上述のように温度が上昇し、結晶化開始温度を超えると結晶化するが、その前に過冷却液体状態となる温度域を有する。
また、特許文献2には、上記温度間隔が20K以上のFe系金属ガラス合金として、Fe100-x-yMxByで表され、元素Mとして、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Crである合金が開示されている。
また、特許文献3には、過冷却液体の温度間隔ΔTxが40k以上で、換算ガラス化温度がTg/Tmが0.59以上である2.0A/m以下の低保磁力を有する軟磁性Co基金属ガラス合金が開示されている。この金属ガラス合金は、
[Co1−n−(a+b)FenBaSib]100−zMzで表され、元素MとしてZr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Cr、Pd、Wの1種以上とする合金が開示されている。
また、非特許文献1には、Re基金属ガラスが開示されている。
したがって、上述の機械的特性や耐食性を高温領域で利用するには制約がある。
例えば、特許文献1,2の金属ガラス合金の結晶化開始温度は500〜600℃であり、比較的高温域の結晶化開始温度を有する特許文献3に記載のCo基金属ガラス合金でも、640℃以下であり、非特許文献1に記載のRe-B系のものでも900℃程度である。
このように、アモルファス合金としての特性を高温領域で安定して活用しうるアモルファス合金は少なく、きわめて限られており、広範囲に使用できる汎用のものは得られていないのが現状である。
本発明は、上記の現状に鑑み、耐熱性、耐食性に優れ、広範囲に使用されている金属合金であるMo系合金に着目し、より高い結晶化開始温度(Tx)を有し、高温領域でアモルファス合金としての特性を享受できるMo系耐熱アモルファス合金を提供することを課題とするものである。
すなわち、本発明は、(1)下記の組成式<1>であらわされ、結晶化開始温度Txが600℃以上であるMo系耐熱アモルファス合金である。
Mo(100−x−y)−Jx−Ky <1>
ただし、x、yは原子%を示し、0<x<50、0<y<50、30≦x+y≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素である。
Mo(100−x−z)−Jx−Lz <2>
ただし、x、yは原子%を示し、30<x<50、0<z≦20、30≦x+z≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
Mo(100−y−z)−Ky−Lz <3>
ただし、y、zは原子%を示し、30<y<50、0<z≦20、30≦y+z≦50%、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
Mo(100−x−y―z)−Jx−Ky−Lz <4>
ただし、x、y、zは、原子%を示し、0<x<50、0<y<50、0<z≦20%、30≦x+y≦50、30≦x+y+z≦50%であり、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
たとえば、複合材料のフィラーや各種金型のコーテイング材として使用すれば、高温でもアモルファス合金としての強化作用を発揮できるので、より高温用の複合材料の強化材として有利であり、また、金型コーテイングでは、金型表面にアモルファス合金をコーテイングすることによって、微細加工表面を有する金型を効率的に製作することが可能となる。
本発明の第1の実施形態のアモルファス合金は、Moを主成分とし、これに、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素を含む3元系の耐熱アモルファス合金であり、その組成は、式<1>で表わされる。
Mo(100−x−y)−Jx−Ky <1>
なお、x、yは原子%を示し、0<x<50、0<y<50、30≦x+y≦50とするのが好ましく、また、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素である。
Mo(100−x−z)−Jx−Lz <2>
なお、x、zは原子%を示し、30<x<50、0<z≦20、30≦x+z≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
Mo(100−y−z)−Ky−Lz <3>
ただし、y、zは原子%を示し、30<y<50、0<z≦20、30≦y+z≦50、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
Mo(100−x−y―z)−Jx−Ky−Lz <4>
ただし、x、y、zは、原子%を示し、0<x<50、0<y<50、0<z≦20%、30≦x+y≦50、30≦x+y+z≦50%、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
図1は、Mo系アモルファス合金の結晶化開始温度Tx(℃)に対するMo比率の影響を示すものであり、Mo90−x−Zrx−Al10合金を一例として、結晶化開始温度Tx(℃)に対するMo比率の影響を示したものである。図1に示されるように、Moの比率が低くなると、結晶化開始温度も低下することがわかる。50%以下であると、結晶化開始温度600℃以上を確保することが困難となる。したがって、Moは、50%超とする。
したがって、実施形態2の合金の場合は、元素Jの含有量は、30%超、50%未満とする。
したがって、実施形態3の合金の場合は、元素Kの含有量は、30%超、50%未満とする。
すなわち、元素Lは、アモルファス相を安定化させる作用を有する元素であり、この元素を含有させることによって、アモルファス相を安定化させ、結晶化開始温度を上昇させることができる。
すなわち、上述のように、MoにJ元素を含有させることによってアモルファス相を形成し、或いは、K元素を含有させることによってアモルファス相を形成し、且つ結晶化開始温度を高温側にシフトさせたうえで、さらに、元素Lを含有させることによって、アモルファス相の安定化を図ることができ、結晶化開始温度を安定して高温側にシフトさせることができる。
その効果を発揮させるには、元素Lは、少なくとも0%を超えて含有させることが必要であり、一方、20%を超えて含有させてもその効果は飽和する。従って、0%超、20%以下とする。
これは、本発明のMoを主成分とするアモルファス合金において、元素J、元素K、元素Lの含有量の合計が50%を超えても、結晶化開始温度の向上効果は小さくなり、また、Mo系耐熱アモルファス合金としての特性を十分に発揮できなくなるからであり、また、30%未満では、結晶化開始温度を高温側にシフトさせる効果が十分に得られないからである。
また、合金として溶解が困難な場合は、単体の元素をそれぞれターゲットとして、スパッタ法、アークプラズマ法、或いは蒸着法などによって、上記の各種形態のアモルファス合金を製造することができる。
(実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例3)
スパッタ法を用いて各種のMo系アモルファス合金薄膜を作成した。
Moおよび元素J〜Lの各種単体のターゲットを作成し、カルーセル型多元素同時スパッタ装置により、Arをスパッタガスとし、各ターゲットを同時放電し、スパッタ出力を調整することにより組成を制御し、石英基板上に厚さ5μmのアモルファス合金薄膜を作成した。
次に、スパッタままの合金薄膜の回折強度をX線回折装置により測定し、作成した合金薄膜がアモルファス相であることを確認した。次いで1.0×10−4Pa以下の真空とした赤外線加熱炉に装入し、各種の一定温度(Ta)(℃)で60秒間加熱保持する熱処理を施した後、冷却し、再度X線回折装置により回折強度を測定した。
この強度ピークの形状の変化からアモルファス合金の結晶化開始温度Tx(℃)を調査した。
表1に、実施例1〜8の合金、比較例1〜3の合金の組成、および結晶化開始温度Tx(℃)を示す。
実施例1〜4は、Mo−J−K系のアモルファス合金の例であり、実施例2〜4は、Mo含有比率は50%と一定とし、J元素としてのSiの含有量を変化させたときの結晶化開始温度Tx(℃)に対する効果を確認したものである。
図2は、Mo−J−K系アモルファス合金に一例として、実施例1のアモルファス合金薄膜(Mo50Zr40Si10)のX線回折強度を示すものである。
図2から判るように、Ta=800℃熱処理材ではスパッタまま材と同様のブロードなアモルファスのピークが確認できる。一方、Ta=900℃の熱処理材では、ピークが2つに分かれかかっており、結晶化の開始間際であることが判る。そして、Ta=1000℃の熱処理材では、シャープな回折ピークが認められ、結晶化していることが判る。以上の結果から、この組成のアモルファス合金の結晶化開始温度(Tx(℃))は800℃以上、900℃以下であることが確認できる。なお、図中の○で示したピークは、試料ホルダーのピークである。
また、図4は、Mo−J−L系アモルファス合金の一例として、Mo60Zr30Al10の薄膜のX線回折強度を示すものである。図3から判るように、Ta=800℃熱処理材ではスパッタまま材と同様のブロードなアモルファスのピークが見られる。
一方、Ta=900℃の熱処理材では、ピークが2つに分かれかかっており、結晶化の開始間際であることが判る。そして、Ta=1000℃の熱処理材では、シャープな回折ピークが認められ、結晶化していることが判る。以上の結果から、この組成のアモルファス合金の結晶化開始温度(Tx(℃))は800℃以上、900℃以下であることが判る。なお、図中の○で示したピークは、試料ホルダーのピークである。
図5から判るように、Ta=700℃熱処理材ではスパッタまま材と同様のブロードなアモルファスのピークが確認できる。一方、Ta=750℃の熱処理材では、ピークが2つに分かれかかっており、結晶化の開始間際であることが判る。そして、Ta=800℃の熱処理材では、シャープな回折ピークが認められ、結晶化していることが判る。以上の結果から、この組成のアモルファス合金の結晶化開始温度(Tx(℃))は700℃以上、750℃以下であることが確認できる。なお、図中の○で示したピークは、試料ホルダーのピークである。
比較例1〜3は、Mo−J−Lの合金であるが、いずれも元素Jの量xが本発明の範囲未満であり、アモルファス相の形成が不十分で、いずれも結晶質となった。
Claims (4)
- 下式<1>で表される組成を有し、結晶化開始温度Txが600℃以上であることを特徴とするMo系アモルファス合金。
Mo(100−x−y)−Jx−Ky <1>
ただし、x,yは原子%を示し、0<x<50、0<y<50、30≦x+y≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Kは、Si,Bから選ばれた1種または2種の元素である。 - 下式<2>で表される組成を有し、結晶化開始温度Txが600℃以上であることを特徴とするMo系アモルファス合金。
Mo(100−x−z)−Jx−Lz <2>
ただし、x、zは原子%を示し、30<x<50、0<z≦20%、30≦x+z≦50、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。 - 下式<3>で表わされ、結晶化開始温度Txが600℃以上であることを特徴とするMo系アモルファス合金。
Mo(100−y−z)−Ky−Lz <3>
ただし、y、zは原子%を示し、30<y<50、0<z≦20%、30≦y+z≦50、Kは、Si、Bから選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。 - 下式<4>で表わされ、結晶化開始温度Txが600℃以上であることを特徴とするMo系アモルファス合金。
Mo(100−x−y―z)−Jx−Ky−Lz <4>
ただし、x、y、zは、原子%を示し、0<x<50、0<y<50、0<z≦20%、30≦x+y≦50、30≦x+y+z≦50であり、Jは、Zr、Hfから選ばれた1種または2種の元素、Kは、Si、B から選ばれた1種または2種の元素であり、Lは、Al、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素である。
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