JP2006340426A - 架空送電線の着雪対策方法 - Google Patents

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正則 磯崎
Motohisa Adachi
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Abstract

【課題】 架空送電線の電力潮流が小さい場合でも有効に機能する着雪対策方法を提供する。
【解決手段】 架空送電線2の外周に磁性線材3を螺旋状に巻き付けるとともに、この螺旋巻き磁性線材3の上に、磁性体からなるリング4を間隔をあけて取り付ける。磁性線材3の径は巻き付け可能な範囲の細径にとどめて、リング4が発熱量不足を補うことができるので、発熱量確保のために太い線径にして剛性のために電線への巻き付けが非常に困難となる問題は生じない。また、低潮流の場合でも、発熱した螺旋巻き磁性線材3上のリングによる局所的な融雪作用で電線上の着雪が大きな塊になることを阻止するので、落雪も小さな雪塊となり、送電線下の設備等に対する損傷の恐れがなくなる。このように螺旋巻き磁性線材とリングとが相乗的に作用して融雪効果を奏し、低潮流に対しても有効な着雪対策が実現される。
【選択図】 図1

Description

この発明は、電線に取り付けて電力潮流で発熱させる磁性材を、潮流の小さい時でも着雪対策として有効に機能させることができる架空送電線の着雪対策方法に関する。
降雪時に架空送電線に雪が付着すると、落雪により送電線下の設備を損傷する恐れがある等のため、特に多雪地域の架空送電線には着雪ないし落雪対策が必要である。
従来より、架空送電線(以下、場合により単に電線という)への着雪を防止する方法として、電線に磁性線材を螺旋状に巻き付ける方法が知られている。磁性線材として通常、一般の鋼材よりキュリー点の低い低キュリー材が用いられるが、このような磁性線材を電線に巻き付けると、低温時には、電力潮流で電線から発生する交番磁界により磁性線材に渦電流損及びヒステリシス損が生じて磁性線材が発熱し、融雪作用を奏する。
また、磁性体からなるリングを電線に間隔をあけて取り付けるという対策も提案されているが、渦電流損及びヒステリシス損による発熱で融雪作用を奏するという融雪作用は磁性線材と同じである。
ところで、電線に巻き付けられた磁性線材の発熱量は、潮流を一定とすると、電線単位長さ当たりの電線への巻付重量(単に巻付重量と呼ぶ)に比例することが知られている。例えば、鋼心アルミ撚線ACSR810mmを例に取ると電流が100A流れている電線に磁性線材を巻き付けた場合、巻付重量0.5kg/mで約5.0W/m、1.0kg/mで約10W/mの発熱量となる。よって、実際の取付けに当っては、電線に流れる電流に応じて磁性線材の巻付重量を調整すればよい。
従来は、発熱量増大のために磁性線材の巻付重量を増大させる手段として、螺旋状に巻き付ける磁性線材の線材間隔を狭くするか、あるいは磁性線材の線径を太くする方法を採用している。
螺旋状に巻き付ける磁性線材の線材間隔を狭くする場合の限界は密巻きの場合であるが、磁性線材の線径にも限界がある。すなわち、磁性線材の線径を太くし過ぎると、電線に巻き付けようとしても、剛性が大き過ぎて巻き付けることが極めて困難になるので、通常は2.8mm程度の線径が限界である。
潮流が大であれば、従来のような線材間隔及び線径の調整で十分対応可能であるが、潮流が小さい場合には、磁性線材の線材間隔及び線径の調整で巻付重量を上限に設定しても、十分な融雪作用を得るには発熱量が不足する場合がある。
例えば、潮流が60Aの電線で融雪に10W/mの発熱量が必要な場合、巻付重量2.0kg/m程度の磁性線材を巻き付ける必要があるが、この場合の磁性線材の線径は3.0mmとなり、剛性が大きすぎて実際上、電線に巻き付けることができない。このように、潮流が小さい場合には、従来の磁性線材では必要な発熱量に対応する巻付重量を確保できず、十分な融雪作用が得られないという問題がある。
ところで、一般に電力需要は変動するものであり、季節の変動があり、日中と深夜との差等もあるが、さらに、経済情勢や地域情勢その他の情勢の変化に伴う長期スパンでの電力需要の変動もある。上記の通り、磁性体を利用する融雪電線の融雪性能は電力潮流に影響されるので、融雪電線の設計において必要な発熱量を設定する際に、電力需要の変動も考慮した着雪ないし落雪対策とする必要があることになるが、実際には将来の情勢を見定めることは極めて困難なことである。また、融雪電線の融雪性能の設定には、当然降雪量の大小も考慮する必要があるが、極めて例外的な豪雪の状況を想定して融雪性能を設定することは、コスト高の過剰な設備となる。
上記のことから、剛性からの線径の制限で融雪性能を上げることが困難な状況への対応、及び、長期スパンでの電力需要の変動等に伴う低潮流への対応、さらに、例外的な大降雪量に対する対応がいずれも問題になる時に、それらに対して過剰にならずに適切に対応可能な着雪対策が求められている。
本発明は上記背景のもとになされたもので、過剰な設備とせずにそれらの問題に対して一定の対応が可能な架空送電線の着雪対策方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の架空送電線の着雪対策方法は、架空送電線の外周に磁性線材を螺旋状に巻き付けるとともに、この螺旋巻き磁性線材層の上に、磁性体からなるリングを間隔をあけて取り付けることを特徴とする。
単に磁性線材を巻き付けることで、低潮流においても有効な融雪作用を奏する発熱量を確保しようとすると、線材径を太くしなければならず、剛性のために電線への巻き付けが非常に困難になる問題が生じるが、本発明では、磁性線材の径は巻き付け可能な範囲内にとどめて、磁性体からなるリングで発熱量不足を補うことができるので、低潮流に対応可能な着雪対策を容易に実現することができる。
螺旋巻きの磁性線材は、低潮流のため当該磁性線材のみでは発熱量が不足して電線上の着雪を消滅させられない場合でも、当然一定の融雪作用をする。一方、磁性体からなるリングの直接的な融雪作用は局所的であるが、その局所部分に限っては、螺旋巻き磁性線材よりも取付重量を確保(すなわち局所的な発熱量を確保)し易い。しかも、リングは発熱した螺旋巻き磁性線材の上に取り付けられているので、低潮流の場合でもリングのある箇所で局所的に融雪する作用を有効に果たすことができる。このため、リング箇所の融雪が効果的に行われて、電線上の着雪が大きな塊になることを阻止し、落雪する場合でも小さな雪塊となって落下するので、送電線下の設備等に対する損傷の恐れをなくすことができる。このように、螺旋巻き磁性線材とリングとがそれぞれの融雪作用の差異を補って効果的に融雪するので、低潮流に対して、通常潮流の場合と同程度という訳にはいかないにしても、落雪による送電線下の設備等の損傷を防ぐために有効な融雪作用を実現できる。
また、このような螺旋巻き磁性線材とリングとの相乗効果は、例外的な大降雪量の場合も同様に働いて、落雪による送電線下の設備等の損傷を防ぐために有効な融雪作用を実現できる。
上記した低潮流の場合として、長期スパンの情勢変動に伴う電力需要減少で潮流が小となる場合が当然含まれる。また、もともと低潮流用であった送電線の潮流が情勢変動等でさらに小さくなり、その上大雪が降るという状況等も考えられる。そのような状況においても、完全な対応でないとしても、一定の対応をして落雪による被害を最小限にとどめる効果には、不確定要素の大きな将来の諸情勢あるいは気象条件に対応するものとして、大きな実用的価値がある。
以下、本発明を実施した架空送電線の着雪対策方法について、図面を参照して説明する。
図1(イ)は本発明の一実施例の架空送電線の着雪対策方法を採用した融雪電線1の正面図、(ロ)はリングのみを示した側面図、図2は図1の融雪電線1の部分拡大図、図3は図1の融雪電線1を得る工程において、架空送電線に磁性線材を螺旋状に巻き付けた段階の状態を示す。この融雪電線1は、架空送電線(以下電線という)2の外周に磁性線材3を螺旋状に巻き付けるとともに、この螺旋巻き磁性線材3の上に、磁性体からなるリング4を間隔をあけて取り付けた構造である。
磁性線材3の線径は、剛性の面で電線に巻き付け可能な2.8mm以下とすべきであるが、実施例では例えば2.0mmである。また、図示例では磁性線材3を密巻きしているが、隙間のある粗巻きでもよい。また、磁性線材3は1本を巻き付ける場合、あるいは複数本を並べて巻き付ける場合のいずれでもよい。
また、リング4の内径Dは、螺旋巻き磁性線材3の巻付け外径と同じか僅かに大きい寸法とするとよい。リング4の厚みT((外径D−内径D)/2)は、小さ過ぎると融雪作用が得られず、一方、大きくするほど発熱量が増大し融雪効果が増大するが、大きすぎると過大な発熱により電線を軟化させる恐れが生じるので、3mm〜20mmの範囲が好適である。
また、リング4の幅Wと取付間隔Lについても限定されないが。施工性や重量増を考慮すると、いずれも30mm〜500mmの範囲が望ましい。
実施例で対象としている電線2は鋼心アルミ撚線ACSR810mm(外径38.4mmφ)であり、リング4のサイズは、例えば内径D=39.0mm、外径D=49.0mm、幅W=100mmとし、リング4の取付間隔L=300mmである。
磁性線材3及びリング4の材質はいずれも低キュリー材であり、例えばFe-Ni合金、Fe-Si合金、Fe-Al合金などを用いることができる。
上記のように、線径2.0mmの磁性線材3を外径38.4mmφの電線2に螺旋状に巻き付けた場合、磁性線材3の電線2への巻付重量は約1.0kg/mとなる。
磁性線材の巻付重量が1.0kg/mの場合、例えば潮流が50Aとすると5W/mの発熱量が得られるが、この発熱量は、例えば潮流50Aという低潮流における外径38.4mmφの電線(ACSR810mm)に対する発熱量として必ずしも十分ではない。なお、発熱量を計算する具体的計算式は省略するが、電気学会技術報告第660号「架空送電線の電流要領」の記載を参考にした。
しかし、磁性体のリング4を取り付けているので、このリング4の発熱が磁性線材3の発熱量不足を補って、低潮流でも有効な融雪性能を発揮する。リング4の発熱量は、潮流が一定の場合、リング4の径、厚み、幅、取付間隔によるが、詳細計算は省く。
単に磁性線材を巻き付けることで低潮流においても有効な融雪作用を奏する発熱量を確保しようとすると、線材径を太くしなければならず、剛性のために電線への巻き付けが非常に困難となる問題が生じるが、本発明では、上述の通り、磁性線材の径を例えば2.8mm以下(実施例は2.0mm)という巻き付け可能な範囲内にとどめて、磁性体からなるリング4が発熱量不足を補うことができるので、巻付け困難という問題はなく、低潮流に対応可能な着雪対策を容易に実現することができる。
上記融雪電線1におけるリング4の直接的な融雪作用は局所的であるが、その局所部分に限っては、螺旋巻き磁性線材3よりも取付重量を確保(すなわち局所的な発熱量を確保)し易い。しかも、リング4は発熱した螺旋巻き磁性線材3の上に取り付けられているので、低潮流の場合でもリング4のある箇所で局所的に融雪する作用を有効に果たすことができる。このため、リング4の箇所の融雪が効果的に行われて、電線上の着雪が大きな塊になることを阻止し、落雪する場合でも小さな雪塊となって落下するので、送電線下の設備等に対する損傷の恐れをなくすことができる。このように、螺旋巻き磁性線材3とリング4との相乗的効果が得られるので、低潮流に対しても有効な融雪作用を実現できる。また、 例外的な大降雪量の場合も同様に有効な融雪作用を実現できる。
上記実施例では対象の架空送電線が鋼心アルミ撚線ACSR810mmであるが、サイズは任意である。また、鋼心アルミ撚線に限らず、種々の架空送電線を対象とすることができる。
(イ)は本発明の一実施例の架空送電線の着雪対策方法を採用した融雪電線の正面図、(ロ)は(イ)におけるリングのみを示した側面図である。 図1の融雪電線の部分拡大図である。 図1の融雪電線を得る工程において、電線に磁性線材を螺旋状に巻き付けた段階の状態を示す図である。
符号の説明
1 融雪電線
2 電線(架空送電線)
3 (螺旋巻きの)磁性線材
4 磁性体からなるリング

Claims (1)

  1. 架空送電線の外周に磁性線材を螺旋状に巻き付けるとともに、この螺旋巻き磁性線材の上に、磁性体からなるリングを間隔をあけて取り付けることを特徴とする架空送電線の着雪対策方法。
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