JP2006338937A - 電解質膜−電極接合体の製造方法 - Google Patents

電解質膜−電極接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 起動停止におけるカソード触媒の腐食及びOCV保持時の電解質膜の分解を有効に抑制できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第一の基材5c上に、カソード触媒層4c及び前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層2cを有する第一の積層体6cを得る工程;第二の基材5a上にアノード触媒層4aを形成して、第二の積層体6aを得る工程;および高分子電解質膜1を第一及び第二の積層体間に挟持するように、前記第一の積層体と、高分子電解質膜と、第二の積層体とを順次積層して、当前記積層体を積層方向にホットプレスする工程を有し、かつ第一のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成される電解質膜−電極接合体の製造方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、電解質膜−電極接合体(MEA)、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体の製造方法に関するものである。特に、本発明は、起動停止/連続運転におけるカソード触媒の腐食、及びアイドル停止運転を想定したOCV(Open Circuit Voltage)保持時の電解質膜の分解が抑制される電解質膜−電極接合体(MEA)の製造方法に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体を、ガス拡散層さらにはセパレータで挟持した構造となっている。電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜が一対の触媒層により挟持されてなるものである。
上記したようなMEAを有する固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応が進行する。まず、アノード側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒成分により酸化され、プロトンおよび電子となる(2H→4H+4e)。次に、生成したプロトンは、触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに触媒層と接触している高分子電解質膜を通り、カソード側触媒層に達する。また、アノード側触媒層で生成した電子は、触媒層を構成している導電性担体、さらに触媒層の高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側触媒層に達する。そして、カソード側触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する(O+4H+4e→2HO)。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
このような固体高分子型燃料電池では、従来様々な問題があった。第一の問題としては、カソード触媒層でのカーボン担体の腐食の問題がある。この腐食メカニズムを図1及び図2を参照しながら説明する。例えば、燃料電池の運転を停止して数時間以上放置した場合、スタック周囲のシール部からの微量リークや、スタックに繋がるポンプやコンプレッサー等からのリークにより、アノード触媒層系やカソード触媒層系には外気(空気)が混入して、アノード触媒層側に残存する水素は外気中の酸素により消費されるため、最終的にはアノード触媒層−カソード触媒層系は空気−空気のガス雰囲気となっている(図1の前段部分)。このような状態で起動してアノード側に水素が導入されると、図1の後段に示されるように、アノードの上流(水素供給側)から下流(空気雰囲気)にかけて局部電池が形成する。ここで、アノード下流の空気存在部に対向する領域のカソードは、電解質電位に対して高電位(1.5V程度)になるため、このカソード電位と電解質電位との大きな差が駆動力となって、この領域ではカソード触媒層における導電性担体であるカーボンブラックに対して、C+2HO→CO+4H+4eの反応が起こり(図2参照)、カーボンが腐食し、触媒活性が低下してしまう。このような現象は、上記したように、水素が存在するアノード上流側に対向するカソード触媒層領域や、通常発電時のカソード触媒層においても、非常に遅い速度ではあるものの起こっている。しかしながら、上記したような比較的長期間放置した後に起動した場合には、アノード下流の空気存在部に対向する領域のカソード触媒層領域では腐食の駆動力であるカソード電位と電解質電位の差が特に大きいためカーボンの腐食反応速度が大きくなり、この領域での触媒活性の低下が顕著である。特にアノード触媒層とカソード触媒層の形成位置(電解質膜−電極接合体の厚み方向に対する)が完全に一致せずに位置ずれが生じている場合には、アノードが対向しないカソード領域で特にカソード電位と電解質電位との差が大きくなってしまうので、アノードが存在する領域(中央部)に比べて、カーボンの腐食(活性の低下)が顕著に現れる。
また、第二の問題としては、アイドル停止(OCV:Open Circuit Voltage)状態における電解質膜の劣化の問題がある。この劣化メカニズムを図3を参照しながら説明する。すなわち、電解質膜は完全にガスを遮断(不透過状態)するものではないため、酸素や水素ガスの濃度勾配(分圧)によっては、アノード側からカソード側に向かって水素が、カソード側からアノード側に向かって酸素や窒素が、僅かながら透過(溶解拡散)している(このような現象を「クロスリーク」とも称する)。特にOCV時は、カソードと電解質膜の界面における酸素濃度は、発電時に比べて高いため、電解質膜を介してカソード側からアノード側へ溶解拡散する酸素量も、発電時に比べて多くなる。このため、クロスリークにより酸素がカソード側からアノード側へ移行して、酸素がアノード側で水素と直接反応して、H+O→Hの反応が起こって、過酸化水素(H)が生成し、また、水素がアノード側からカソード側へ移行して、水素がカソード側で酸素と直接反応して、同様にして過酸化水素が生成する。この過酸化水素は、電解質膜またはアノード若しくはカソードに含まれる電解質成分(アイオノマー)を分解して、電解質膜を化学的に劣化させることが知られている。ここで、アノード触媒層とカソード触媒層の電位と過酸化水素の分解反応との関係を考慮すると、電解質電位に対して電位が比較的高い(0.6〜1V程度)カソード側では、カソード近傍の酸素と、アノード触媒層よりクロスリークしてきた水素が直接反応するため、生成する過酸化水素は、H→O+2H+2eの反応によって、比較的速やかに酸素とプロトンとに分解する。これに対して、アノード側では、電位が低いために上記したような過酸化水素の分解反応は生じにくい。このため、アノード側で多く発生する過酸化水素が、濃度拡散により電解質膜中に移動して、電解質膜を酸化劣化させたり、あるいは電解質膜中のカチオン(例えば、Fe2+、Cu2+)の存在により加速的に電解質膜成分を劣化させる。特にアノード触媒層とカソード触媒層の形成位置が完全に一致せずに位置ずれが生じている場合には、カソード触媒層が存在せずアノード触媒層のみ存在する領域では、カソード触媒層側に供給される酸素が直接アノード触媒層側に移動するため、酸素のクロスリーク量が多く、このような領域での過酸化水素が相対的に多くなるため、当該周囲部では、アノード触媒層が存在する領域(中央部)に比べて、電解質膜の劣化がさらに進んでしまう。
このような問題のうち、特に第一の問題を解消するために、特許文献1では、酸を電解質とする燃料電池において、カソード触媒層のエッジ領域に耐水性材料からなる層を配置したり、アノード触媒層の塗布面積をカソード触媒層の塗布面積より大きくすることによって、カソード触媒層のカーボンの腐食を抑制することが記載されている。具体的には、特許文献1には、電解質マトリクス上に、フルオロエチレンプロピレン(FEP)等の弗素系樹脂の粉末を単位体積当たり0.2g/cc担持させて、カソード触媒層側のエッジ領域に接するように層を形成することが記載されている(段落「0024」及び図1参照)。
上記公報に加えて、MEAのエッジ領域をシールすることが、特許文献2、3にも記載されている。特許文献2には、固体高分子電解質膜外縁部の機械的強度を高めて固体高分子電解質膜の破損を防止する目的で、固体高分子電解質膜の電極周縁部と電極の配置されない固体高分子電解質膜の外縁部とを補強膜で被覆し、さらにガスシール部を固体高分子電解質膜の外縁部に配置することが記載されている。また、特許文献3には、固体高分子電解質膜に加わる反応ガスの差圧や機械的ストレスによる固体高分子電解質膜の破損を防止する目的で、額縁状の保護膜を、ガスシール材及び電極周縁部双方を被覆するように固体高分子電解質膜の周縁部分に形成することが記載されている。
特開平6−29022号公報 特開平5−242897号公報 特開平5−21077号公報
しかしながら、特許文献1では、燃料電池の中でも、特にリン酸のような酸を電解質として使用する燃料電池を対象としているため、電解質の劣化についてはなんら考慮されていない。このため、弗素系樹脂粉末をそのまま担持させて層を形成しているが、この層はガス透過性であり、ガスケットとして機能していないため、これを固体高分子型燃料電池の電解質膜−電極接合体に適用しても、OCV時に、カソード近傍からクロスリークした酸素が、アノード側に拡散して、アノード近傍の水素と直接反応して過酸化水素が多量に生成して、電解質膜の酸化劣化を誘発してしまう。つまり、当該担持層の存在によってカソード側からの酸素のクロスリークを十分抑制することができないため、過酸化水素の形成による電解質膜の酸化劣化も十分抑制・防止することはできない。
また、特許文献2、3では、固体高分子電解質膜外縁部の機械的強度の向上を目的としており、特許文献2、3に記載されるような構造では、上記したような触媒の腐食や電解質膜の分解の抑制については考慮に入れていないため、触媒層がMEAの厚み方向に対して位置ずれがある場合には触媒の腐食が起こり、耐久性が低下するという問題は解消できない。特に、特許文献2に開示されるMEAでは、補強膜と触媒層が一部重複して形成されているが、このような重複部分は劣化の要因となるおそれがある。
さらに、上記の問題は、比較的最近提起されたものであり、現在、解決手段が強く望まれているものの、有効な解決手段が見出されていない。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、触媒層及びガスケット層の端部が重複することなくかつそれぞれの端部同士が密接に接触した状態で接合できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、起動停止におけるカソード触媒の腐食及びOCV保持時の電解質膜の分解を有効に抑制できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供するである。
一般的に、転写法で電解質膜と触媒層との接合を行う場合には、より薄い触媒層を形成でき、また、触媒インク調製用の溶媒を揮発させた後に電解質膜へ転写するため、溶媒による膜の被毒も抑制できることから、転写法により得られるMEAは発電性能に優れるという利点がある。そこで、本発明者らは、転写法により電解質膜と触媒層を接合させる方法に注目して、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、予め転写用シートに触媒層と前記触媒層の端部の少なくとも一部と隣接するガスケット層とを形成した後、電解質膜に転写することによって、触媒層とガスケット層の位置合わせが容易であり、触媒層の端部とガスケット層の端部とを容易に密着した状態にすることができることを見出した。また、本発明者らは、さらに鋭意検討を行った結果、ガスケット層及び剥離層を転写用シート上に積層させるあるいは予めガスケット層及び剥離層を積層したものを転写用シート上に形成した後、当該ガスケット層及び剥離層の積層体の端部と触媒層の端部とが重なるように、触媒層を転写用シート上に形成し、さらに触媒層の形成後に剥離層を取り除くことによって、積層体の端部と触媒層の端部は重複部分なく密接に接触した状態で接合できることを見出した。本発明者らは、このような構造を有するMEAは、組立時の不具合や劣化の要因となりうる重複部分が存在せず、また、電解質膜の暴露部分も存在しないので、触媒層端部での起動停止や連続運転におけるカソード触媒の腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有意に抑制でき、耐久性に優れたものとなりうることを知得した。
さらに、本発明者らは、カソード触媒層の端部、好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層の端部にガスケット層を形成することによって、アノード触媒層及びカソード触媒層の大きさを容易に制御できると共に各触媒層の位置合わせが容易であることを見出した。また、このように触媒層の端部を、アノード触媒層のサイズがカソード触媒層より大きくなるように、ガス不透過性のガスケット層でシールすることによって、起動時におけるアノード触媒層下流の空気存在部に対向するカソード触媒層領域、並びに連続運転時においてアノード触媒層がなく水素が酸化されない領域に対向するカソード触媒層領域を低減でき、カソード電位と電解質電位との差が大きくなる部分を少なくすることができるため、カソード触媒層のカーボンの腐食がさらに効果的に防止/抑制できることを見出した。さらに、本発明者らは、上記構成をとることによって、カソード触媒層が存在せずアノード触媒層のみが存在する周囲部をガス不透過性のガスケット層でシールして、特にカソード触媒層端部で顕著に起こっていたカソードからアノードへの酸素のクロスリークを抑制して、当該領域でのアノード側での過酸化水素の生成を有意に抑えることができ、これにより電解質膜の劣化を効果的に防止/抑制することができることをも見出した。これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部と隣接して形成された第一のガスケット層と、前記高分子電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層と、を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法であって、第一の基材上に、カソード触媒層及び前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層を有する第一の積層体を得る工程;第二の基材上にアノード触媒層を形成して、第二の積層体を得る工程;および高分子電解質膜を第一及び第二の積層体間に挟持するように、前記第一の積層体と、高分子電解質膜と、第二の積層体とを順次積層して、当前記積層体を積層方向にホットプレスする工程を有し、かつ第一のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、電解質膜−電極接合体の製造方法によって達成される。
本発明の方法は、簡便であり、また、本方法によって製造された電解質膜−電極接合体は、起動停止/連続運転中のカソード触媒のカーボン腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有効に防止/抑制できる。
本発明の第一は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部と隣接して形成された第一のガスケット層と、前記高分子電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層と、を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法であって、第一の基材上に、カソード触媒層及び前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層を有する第一の積層体を得る工程;第二の基材上にアノード触媒層を形成して、第二の積層体を得る工程;および高分子電解質膜を第一及び第二の積層体間に挟持するように、前記第一の積層体と、高分子電解質膜と、第二の積層体とを順次積層して、当前記積層体を積層方向にホットプレスする工程を有し、かつ第一のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、電解質膜−電極接合体の製造方法に関する。なお、本明細書では、カソード触媒層の端部に形成・配置されるガスケット層を、単に「第一のガスケット層」と称する。
本明細書において、「有効アノード触媒層」とは、アノード触媒層のうち、運転(発電)時に2H→4H+4eの反応が起こる領域を意味し、具体的には、以下に詳述するように、剥離層を用いる場合には、剥離層により除去された後のアノード触媒層領域であり、単に「アノード触媒層」と称する場合には、高分子電解質膜上に形成されたすべてのアノード触媒層を意味し、即ち、上記有効アノード触媒層に加えて、以下で詳述するが第二のガスケット層との重複部分(剥離層の剥離により除去される部分)をも含む。また、アノード触媒層については、第二のガスケット層とアノード触媒層が重ならない場合も存在し、その場合は、「有効アノード触媒層」と「アノード触媒層」は等しくなる。
また、本明細書において、「有効カソード触媒層」とは、カソード触媒層のうち、運転(発電)時にO+4H+4e→2HOの反応が起こる領域を意味し、具体的には、以下に詳述するように、剥離層を用いる場合には、剥離層により除去された後のカソード触媒層領域であり、単に「カソード触媒層」と称する場合には、高分子電解質膜上に形成されたすべてのカソード触媒層を意味し、即ち、上記有効カソード触媒層に加えて、第一のガスケット層との重複部分(剥離層の剥離により除去される部分)をも含む。
本発明の方法は、カソード側、及び好ましくはカソード及びアノード側双方で、それぞれ、予め転写用シート(第一/第二の基材)に触媒層と前記触媒層の端部の少なくとも一部と隣接するガスケット層とを形成して積層体を形成した後、カソード側の積層体とアノード側の積層体との間に電解質膜を挟持してホットプレスにより転写することを特徴とするものである。このような方法によると、触媒層とガスケット層の位置合わせが容易であり、触媒層をガスケット層と容易に密着した状態にすることができる。また、上記方法において、ガスケット層及び剥離層を転写用シート上に積層させるあるいは予めガスケット層及び剥離層を積層したものを転写用シート上に形成した後、当該ガスケット層及び剥離層の積層体の端部と触媒層の端部とが重なるように、触媒層を転写用シート上に形成し、さらに触媒層の形成後に剥離層を取り除くこともできる。このような方法によると、上記方法に比して、積層体の端部と触媒層の端部を重複部分なくかつより密接した状態で接合できる。このため、本方法によって製造されるMEAは、組立時の不具合や劣化要因となりうる重複部分や電解質膜の暴露部分が存在せず、かつ有効アノード触媒層のサイズが有効カソード触媒層より大きいため、起動停止や連続運転におけるカソード触媒の腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有意に抑制でき、耐久性に優れたものとなりうる。
また、本発明の方法によって製造される電解質膜−電極接合体(以下、単に「MEA」とも記載する。)は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように、少なくともカソード触媒層の端部、好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層双方の端部がガス不透過性のガスケット層でシールされることを特徴とするものである。なお、本明細書では、面積とは幾何学的な面積を意味し、触媒等の表面積を意味するわけではない。このような構成により、アノード下流の空気存在部に対向するカソード触媒層領域の面積を低減できる、即ち、カソード電位と電解質電位との差が大きい部分を有意に低減できるため、カソード触媒層のカーボンの腐食が効果的に防止/抑制できる。また、少なくともカソード触媒層の端部(好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層双方の端部)をガス不透過性のガスケット層でシールしているため、酸素のクロスリークが特に顕著に起こるカソード触媒層が存在しないあるいはこのようなカソード触媒層領域を有意に低減できる。したがって、本発明のMEAは、カソード触媒層のみが存在する周囲部がほとんどまたは全く存在せず、カソード触媒層端部でのカソードからアノードへの酸素のクロスリークがほとんどまたは全く起こらない構造をとることができる。したがって、従来重大な問題となっていた電解質膜の劣化をも効果的に防止/抑制することができる。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池は、起動停止/連続運転時及びOCV時の性能を長期間維持でき、また、燃費も向上できる。
本発明において、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積よりも大きくなることが必須の要件であるが、この際、有効アノード触媒層と有効カソード触媒層の位置関係は、特に制限されないが、図7(a)のように、MEAの厚み方向に対して、有効アノード触媒層内に有効カソード触媒層が完全に含まれる場合;または図7(b)のように、MEAの厚み方向に対して、有効カソード触媒層が部分的に有効アノード触媒層内に含まれる場合のいずれであってもよいが、前者の場合がより好ましい。同様にして、各触媒層の位置関係に関しても、特に制限されないが、図7(a)のように、MEAの厚み方向に対して、アノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合;図7(b)のように、MEAの厚み方向に対して、カソード触媒層が部分的にアノード触媒層内に含まれる場合;または図7(c)のように、MEAの厚み方向に対して、カソード触媒層がアノード触媒層と同位置に配置される場合のいずれであってもよいが、カソード触媒層がアノード触媒層と同位置に配置される場合及びアノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合がより好ましく、アノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合が特に好ましい。
本発明では、少なくともカソード側で、第一の基材上に、カソード触媒層及び前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層を有する第一の積層体を形成することを必須の構成要件である。当該第一の積層体を得る工程は、第一の基材上に、カソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層とを有する第一の積層体が、第一の基材上に形成できるものであれば、特に制限されない。具体的には、(ア)第一の基材上に、カソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層とを、形成する方法;(イ)第一の基材上に第一のガスケット層を形成し、さらに前記第一のガスケット層上に第一の剥離層を形成した後、前記第一のガスケット層及び第一の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに形成した後、前記第一の剥離層を除去する方法;および(ウ)第一のガスケット層上に第一の剥離層を形成し、これを第一の基材上に配置した後、前記第一のガスケット層及び第一の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに第一の基材上に形成した後、前記第一の剥離層を除去する方法が好ましく使用される。
以下、上記本発明の方法の好ましい実施態様である(ア)〜(ウ)の方法を、図4〜6を参照しながら、以下に詳細に説明する。
本発明の方法の好ましい一実施態様である上記(ア)の方法を、図4を参照しながら、以下に詳細に説明する。
本発明の(ア)方法では、第一の基材5c上に、第一のガスケット層2cを所定の位置(好ましくは、電解質膜の周辺部に相当する位置)に形成した後、第一のガスケット層2cの端部の少なくとも一部と隣接するようにカソード触媒層4cを形成することによって、第一の積層体6cが製造される(図4(a)上段)。なお、上記では、第一のガスケット層2cの形成後にカソード触媒層4cを形成する例を記載したが、カソード触媒層4cを形成した後に、第一のガスケット層2cを形成する方法を使用してもよい。しかしながら、触媒層の位置合わせ(さらには、有効触媒層の規定)が容易にかつ正確で行うという点を考慮すると、ガスケット層をまず形成した後、ガスケット層上に触媒層を形成する方法が好ましく使用できる。この際、ガスケット層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、第一の基材上に第一のガスケット層を仮に固定するために、接着剤を第一の基材5c上にスポット的に配置するなどした後、ガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように配置し、更にその上に、接着剤を5〜30μmの厚みになるように配置する。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過層(膜)に接着剤を塗布して、ガスケット層を形成した後、前記不透過層の前記接着剤が塗布されていない面と第一の基材5cを、接着剤にてスポット的に貼り合わせてもよい。または、耐熱性樹脂粉末に熱可塑性樹脂粉末を混合した材料を、第一の基材5c上に配置し、これを25〜150℃で、10秒〜10分間加熱する方法が使用できる。耐熱性樹脂粉末としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、更には、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂などの材料が挙げられる。また、熱可塑性樹脂粉末としては、ポリオレフィン、ポリエステル等のオレフィン系材料などが使用できる。この際、不透過層(膜)の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましく、また、接着層もまた、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。なお、本発明の方法では、上記第一のガスケット層の形成は必須であるが、第一のガスケット層をカソード触媒層の端部と隣接するように設けることによって、カソード触媒層のカーボンの腐食や電解質膜の劣化が起こりやすい部分のガス透過性を有意に低く抑えることができる。また、図4では、第二の基材上5aに、第二のガスケット層2a及びアノード触媒層4aを形成して、第二の積層体6aを得る(図4(a)下段)が、本発明は、カソード側に第一のガスケット層を設けることが必須であるのみであり、第二のガスケット層は任意であるため、図4では、第二の基材5a上にアノード触媒層4aのみが形成されたものを第二の積層体6aとして使用してもよい。また、該アノード触媒層4a及び必要であれば第二のガスケット層2aの形成方法は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、第一及び第二のガスケット層を形成する場合には、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように、図4(a)に示されるように、第一のガスケット層の端部が第二のガスケット層の端部を基材の中心側にくるように(塗布面積がより大きくなるように)、第一及び第二のガスケット層が形成される。
上記方法(ア)において、カソード触媒層は、第一のガスケット層の周辺部のうち、少なくとも一部と隣接するように、第一のガスケット層の周辺部の内側に形成される。しかしながら、カソード触媒層のカーボンの腐食や高分子電解質膜の劣化の防止/抑制効果などを考慮すると、カソード触媒層の端部が第一のガスケット層の周辺部全域にわたって密着して隣接する状態で形成されることが好ましい。なお、本発明においては、第一のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるように、第一の基材上に形成されるが、アノード触媒層の端部での水素のクロスリーク抑制に伴う燃費向上の観点から、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、従って、第一のガスケット層は、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されるように、第一の基材の相当する部分に形成されることが好ましい。有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層の周囲部をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点があるからである。
また、上記方法(ア)において、第二の積層体が第二のガスケット層を有する場合、アノード触媒層は、第二のガスケット層の周辺部のうち、少なくとも一部と隣接するように、第二のガスケット層の周辺部の内側に形成される。しかしながら、アノード触媒層のカーボンの腐食や高分子電解質膜の劣化の防止/抑制効果などを考慮すると、アノード触媒層の端部が第二のガスケット層の周辺部全域にわたって密着して隣接する状態で形成されることが好ましい。なお、本発明においては、第二のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるように、第二の基材上に形成されるが、アノード触媒層の端部での水素のクロスリーク抑制に伴う燃費向上の観点から、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、従って、第二のガスケット層は、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されるように、第二の基材の相当する部分に形成されることが好ましい。有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層の周囲部をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点があるからである。
次に、上記したようにして形成された第一積層体6c及び第二の積層体6aで高分子電解質膜1を挟持して、当前記積層体を積層方向にホットプレスすることにより、電解質膜−電極接合体が得られる(図4(b))。第一および第二の積層体を挟持する際には、アノード触媒層とカソード触媒層の位置合わせを精度良く行う必要がある。即ち、触媒層とガスケット層を高分子電解質膜に転写する際、有効アノード触媒層が有効カソード触媒層よりも大きくなるように、MEAの厚み方向に対して、有効アノード触媒層内に有効カソード触媒層が完全に含まれるように上記第一および第二の積層体の位置合わせを行うことが好ましい。
上記(ア)の方法では、有効カソード触媒層の端部と有効アノード触媒層の端部は、第一/第二のガスケット層の形成位置によって容易に規定できるため、各触媒層を、第一/第二のガスケット層を所定の位置で形成することによって、触媒層の位置合わせ(さらには、有効触媒層の規定)が容易にかつ正確で行うことが可能である。したがって、本発明の方法によると、従来非常に注意が払われていた触媒層の形成位置について考慮する必要がなく、製造工程を有意に簡略化することができる。
次に、本発明の(イ)及び(ウ)の方法を図5及び図6をそれぞれ参照しながら説明する。本発明の(イ)の方法では、第一の基材5c上に、第一のガスケット層2cを所定の位置(好ましくは、電解質膜の周辺部に相当する位置)に形成した(図5(a))後、さらに、第一のガスケット層2c上に第一の剥離層3cを形成する(図5(b))。この際、第一のガスケット層の形成については、上記図4で述べたのと同様であるため、ここでは説明を省略する。また、剥離層を構成する剥離層形成材料は、さらに形成された触媒層の端部を、重複した部分のみを選択的に除去できるようにかつスムーズに剥離できるものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂あるいは熱硬化性アクリル樹脂、等が挙げられる。これらの剥離層形成材料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもいずれでもよい。または、適当な樹脂シートを上記したような剥離層形成材料で被覆したものを、例えば、接着層を介してあるいは熱で溶融させることにより、第一のガスケット層上に貼り付けてもよい。なお、上記では、第一の基材に関してのみ説明したが、上記に加えて、第二の基材上にも、第二のガスケット層2cを所定の位置(好ましくは、電解質膜の周辺部に相当する位置)に形成した後、さらに、第二のガスケット層2c上に第二の剥離層3cを形成してもよく、この際、これらの形成方法は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、本発明は、カソード側に第一のガスケット層を設けることが必須であるのみであり、第二のガスケット層は任意であるため、上記したように、第二の基材上にガスケット及び第二の剥離層を設けてもよいが、アノード側は、第二の基材上にアノード触媒層のみを形成したものを第二の積層体として使用してもよい。
前記第一の剥離層及び第二の剥離層の厚みとしては、触媒層形成時や剥離時の生産性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。
なお、上記方法では、第一の基材5c上に、第一のガスケット層及び第一の剥離層を順次形成する方法を開示したが、本発明による(ウ)の方法によるように、図6に示されるように、予め第一のガスケット層2c及び第一の剥離層3cからなる積層シートを形成した(図6(a))後、この積層シートを、第一の剥離層が形成されていない側の第一のガスケット層面が第一の基材5cと合わさるように、第一の基材5cに配置してもよい(図6(b))。この際、積層シートの形成方法は、特に制限されず、離型紙に、上記したガス不透過材料を所定の厚みになるように配置させて第一のガスケット層を形成した後、これに上記したような接着剤をさらに所定の厚みになるように塗布、配置させることによって得られる。または、上記各材料をシート状に成形したものを、それぞれ、貼り合せることによって、積層シートを得てもよい。または、上記層の形成とシートを組み合わせてもよく、例えば、剥離層形成材料をシート状に成形したものの上に、上記ガス不透過材料及び接着剤を、順次、所定の厚みになるように塗布する方法も使用できる。なお、当該方法もまた、第二の基材に同様にして適用できるが、アノード側は、第二の基材上にアノード触媒層のみを形成したものを第二の積層体として使用してもよい。
次に、上記(イ)及び(ウ)の方法では、このようにして形成された積層シートに対して、当該積層シートの端部とカソード触媒層の端部とが少なくとも一部が重複するように(カソード触媒が積層シートの端部の端部を被覆するように)、カソード触媒層4cをさらに形成する(図5(c)及び図6(c))。
上記(イ)及び(ウ)の方法において、カソード触媒層は、第一のガスケット層の周辺部のうち、少なくとも一部と重複するように、第一のガスケット層の周辺部の内側に形成される。しかしながら、カソード触媒層のカーボンの腐食や高分子電解質膜の劣化の防止/抑制効果などを考慮すると、カソード触媒層の端部が第一のガスケット層の周辺部全域にわたって重複する(被覆する)状態で形成されることが好ましい。なお、本発明においては、第一のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるように、第一の基材上に形成されるが、カソード触媒層のカーボンの腐食や電解質膜の劣化の抑制を考慮すると、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、従って、第一のガスケット層は、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されるように、第一の基材の相当する部分に形成されることが好ましい。有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層の周囲部をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点があるからである。
また、上記(イ)及び(ウ)の方法において、第二の積層体が第二のガスケット層を有する場合、アノード触媒層は、第二のガスケット層の周辺部のうち、少なくとも一部と重複するように、第二のガスケット層の周辺部の内側に形成される。しかしながら、アノード触媒層のカーボンの腐食や高分子電解質膜の劣化の防止/抑制効果などを考慮すると、アノード触媒層の端部が第二のガスケット層の周辺部全域にわたって重複する(被覆する)状態で形成されることが好ましい。なお、本発明においては、第二のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるように、第二の基材上に形成されるが、アノード触媒層の端部での水素のクロスリーク抑制に伴う燃費向上の観点から、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、従って、第二のガスケット層は、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されるように、第二の基材の相当する部分に形成されることが好ましい。有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層の周囲部をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点があるからである。
さらに、上記(イ)及び(ウ)の方法では、上記図5(c)及び図6(c)で示されるような、触媒層の端部と積層体の端部とが少なくとも一部が重複するように、触媒層が形成された後、剥離層3cを除去する。これによって、剥離層と重複している触媒層部分が簡単に除去でき、これにより触媒層の端部とガスケット層の端部とが密接に連結した電解質膜−電極接合体が得られる(図5(d)及び図6(d))。
上記剥離層の除去工程において、剥離層の除去方法及び条件は、剥離層と重複している触媒層部分が速やかにかつ重複部分が残らないような条件であれば特に制限されないが、例えば、剥離層を電解質膜の外側方向に0.1〜20m/分の速度で引張る方法などが好ましく使用できる。
アノード側についても、上記と同様にして第二の積層体を製造する。なお、図5及び6では、第二の基材上5aに、第二のガスケット層2a及びアノード触媒層4aを形成して、第二の積層体6aを得ている(図5(e)及び6(e)参照)が、本発明は、カソード側に第一のガスケット層を設けることが必須であるのみであり、第二のガスケット層は任意であるため、図5及び6では、第二の基材上にアノード触媒層のみが形成されたものを第二の積層体として使用してもよい。また、該アノード触媒層4a及び必要であれば第二のガスケット層2aの形成方法は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。本発明の方法では、上記第一のガスケット層の形成は必須であり、これにより、第一のガスケット層をカソード触媒層の端部と隣接するように設けることによって、カソード触媒層のカーボンの腐食や電解質膜の劣化が起こりやすい部分のガス透過性を有意に低く抑えることができる。
次に、上記したようにして形成された第一積層体6c及び第二の積層体6aで高分子電解質膜1を挟持して、当前記積層体を積層方向にホットプレスすることにより、電解質膜−電極接合体が得られる(図5(e)及び6(e))。ホットプレスする際には、アノード触媒層とカソード触媒層の位置合わせを精度良く行う必要がある。即ち、触媒層とガスケット層を高分子電解質膜に転写する際、アノード触媒層とカソード触媒層の端部が高分子電解質膜を介して重ならず、かつ有効アノード触媒層が有効カソード触媒層よりも大きくなるように形成される。
上記(イ)及び(ウ)の方法では、有効カソード触媒層の端部と有効アノード触媒層の端部は、第一/第二のガスケット層及び剥離層の形成位置によって容易に規定できるため、各触媒層の位置合わせが正確である必要は必ずしもない。具体的には、カソード触媒層及びアノード触媒層は、その端部が、第一/第二のガスケット層と剥離層とからなる積層の端部と重複する限り、いずれの位置で終了していてもよく、すなわち、これらの触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結していてもよいが、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置がずれていてもよい。したがって、本発明の方法によると、従来非常に注意が払われていた触媒層の形成位置について考慮する必要がなく、製造工程を有意に簡略化することができる。なお、アノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、カソード触媒層の端部を超えて終結することが好ましい。これは、本発明では、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きいことが必須であるため、このようにカソード触媒層を予めアノード触媒層の大きさより小さくしておくことにより、使用する触媒や電解質の量を少なく抑えられ、また、ガスケット層部分との重複も少なくできるため、経済的に好ましいからである。
なお、図5〜6においては、カソード側に加えて、アノード側にも第二のガスケット層、第二の剥離層を設けた特に好ましい例を記載したが、本発明は、本明細書の記載を通じて明らかなように、カソード側に第一のガスケット層を設けることを必須とするのみであり、必ずしもアノード側にも第二のガスケット層を設ける必要はない。すなわち、本発明では、第一のガスケット層をカソード触媒層の端部に形成することを必須の構成要件とするが、アノード触媒層側の端部にも第二のガスケット層をさらに形成することが好ましい。換言すると、本発明のMEAの好ましい形態としては、カソード触媒層、高分子電解質膜及びアノード触媒層を有する電解質膜−電極接合体において、第一のガスケット層の端部の少なくとも一部と隣接するようにカソード触媒層が形成されかつ第二のガスケット層の端部の少なくとも一部と隣接するようにアノード触媒層が形成され、該第一及び第二のガスケット層は、第二のガスケット層が形成されないアノード触媒層領域の面積は第一のガスケット層が形成されないカソード触媒層領域の面積より大きくなるように、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部に形成される。このように、アノード触媒層側の端部にもガスケット層を形成することで、有効カソード触媒層と有効アノード触媒層との位置合わせが正確にかつ容易に行なえ、起動停止/連続運転中のカソード触媒のカーボン腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有効に防止/抑制できるからである。
本発明で使用される第一/第二の基材は、特に制限されず、公知の転写法で使用される転写用台紙や転写用シートと同様のものが使用できる。具体的には、転写用台紙(転写用シート)としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート、PEN(ポリエチレンナフタレート)シート、カプトンフィルム、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できるが、ホットプレス時にアノード触媒層とカソード触媒層の位置合わせを行いやすくするために、外形寸法を共通にしたり、位置合わせ用のガイド穴を設けたり、透明状のフィルムにするなどの工夫を凝らした方が好ましい。なお、転写用台紙は、使用する触媒インク(特にインク中のカーボン等の導電性担体)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、触媒層の厚みは、1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。また、転写用台紙上への触媒インクの塗布方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された触媒層の乾燥条件もまた、触媒層から極性溶媒を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒インクの塗布層(触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。次に、このようにして作製された触媒層で高分子電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、触媒層及び高分子電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより高分子電解質膜と触媒層との接合性を高めることができる。ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、触媒層と高分子電解質膜とからなるMEAを得ることができる。
本発明において、第一及び第二のガスケット層は、気体、特に酸素(カソード側)ガスや水素(アノード側)ガスに対して不透過であればよいため、上記したように、一般的には、高分子電解質膜との接着を目的とする接着層及びガス不透過材料からなる不透過層から構成される。この際、不透過層を構成する材料は、膜にした際に酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。また、接着層に使用できる材料もまた、高分子電解質膜やカソード/アノード触媒層と、ガスケット層を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
また、本発明の方法で用いられる高分子電解質膜としては、特に限定されず、以下に詳述する触媒層に用いたものと同様の高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている固体高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各触媒層と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜100μmである。製膜時の強度やMEA作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、MEA作動時の出力特性の観点から300μm以下であることが好ましい。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
本発明において、カソード触媒層に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒成分及びアノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒インクに用いられる触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明において、上述した触媒粒子は導電性担体に担持された電極触媒として触媒インクに含まれる。
前記導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性担体への触媒成分および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m/gを超えると触媒成分および高分子電解質の有効利用率が却って低下する恐れがある。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性担体上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。前記高分子電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる高分子電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明の方法では、上記したような電極触媒、高分子電解質及び溶剤からなる触媒インクを、本発明に係る積層体の端部をも被覆するように、高分子電解質膜表面に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できるが、触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは5〜20質量%である。
本発明の触媒インクは、電極触媒、電解質及び溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、高分子電解質膜上に、あるいは積層体の一部を被覆しながら高分子電解質膜上に、塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
本発明の方法によって製造されるMEAは、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有してもよく、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、触媒層と高分子電解質膜との接合後にさらに各触媒層に接合することが好ましい。
この際、MEAに用いられるガス拡散層としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
前記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記カーボン粒子層における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
前記カーボン粒子層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ガス拡散層に撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
ガス拡散層において基材上にカーボン粒子層を形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、前記スラリーを基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
本発明の方法によって製造される電解質膜−電極接合体は、上述した通り、触媒担体として用いられるカーボン担体の腐食、および、電解質膜−電極接合体に含まれる電解質成分の劣化を抑制することが可能となる。また、ガスケット層を設けることにより、触媒層の面積および配置を容易に決定することが可能となり、各触媒層を予め正確に位置合わせしなければいけない必要がないため、工業的な大量生産を考慮すると非常に望ましい。従って、かような電解質膜−電極接合体を用いることにより、製造工程が容易であり、耐久性にも優れる信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、耐久性に優れかつ燃費効率のよい燃料電池に適用できる。
長期放置後のアノード/カソードのガス雰囲気、ならびに長期放置後の起動時のアノード/カソードのガス雰囲気と局部電池状態、を示す説明図である。 局部電池において生じる電気化学反応を示す説明図である。 OCV保持時の酸素のクロスリークを示す説明図である。 本発明の方法の好ましい第一の実施態様の説明図である。 本発明の方法の好ましい第二の実施態様の説明図である。 本発明の方法の好ましい第三の実施態様の説明図である。 本発明のMEAにおける有効カソード触媒層、有効アノード触媒層、カソード触媒層及びアノード触媒層の配置を示す図である。
符号の説明
1…電解質膜、
2a…第二のガスケット層、
2c…第一のガスケット層、
3a…第二の剥離層、
3c…第一の剥離層、
4a…アノード触媒層、
4c…カソード触媒層、
5a…第二の基材、
5c…第一の基材、
6a…第二の積層体、
6c…第一の積層体。

Claims (9)

  1. 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部と隣接して形成された第一のガスケット層と、前記高分子電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層と、を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法であって、
    第一の基材上に、カソード触媒層及び前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部に形成された第一のガスケット層を有する第一の積層体を得る工程;
    第二の基材上にアノード触媒層を形成して、第二の積層体を得る工程;および
    高分子電解質膜を第一及び第二の積層体間に挟持するように、前記第一の積層体と、高分子電解質膜と、第二の積層体とを順次積層して、当前記積層体を積層方向にホットプレスする工程
    を有し、かつ第一のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、電解質膜−電極接合体の製造方法。
  2. 前記第一の積層体を得る工程は、第一の基材上に、カソード触媒層と、前記カソード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第一のガスケット層とを、形成することを有する、請求項1に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  3. 前記第一の積層体を得る工程は、第一の基材上に第一のガスケット層を形成し、さらに前記第一のガスケット層上に第一の剥離層を形成した後、前記第一のガスケット層及び第一の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに形成した後、前記第一の剥離層を除去することを有する、請求項1に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  4. 前記第一の積層体を得る工程は、第一のガスケット層上に第一の剥離層を形成し、これを第一の基材上に配置した後、前記第一のガスケット層及び第一の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに第一の基材上に形成した後、前記第一の剥離層を除去することを有する、請求項1に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  5. 前記第二の積層体を得る工程は、第二の基材上に、アノード触媒層及び前記アノード触媒層の端部の少なくとも一部に形成された第二のガスケット層を有する第二の積層体を得る工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記第二の積層体を得る工程は、第二の基材上に、アノード触媒層と、前記アノード触媒層の端部の少なくとも一部と隣接する第二のガスケット層とを、形成することを有する、請求項5に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  7. 前記第二の積層体を得る工程は、第二の基材上に第二のガスケット層を形成し、さらに前記第二のガスケット層上に第二の剥離層を形成した後、前記第二のガスケット層及び第二の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とアノード触媒層の端部とが重なるように、アノード触媒層をさらに形成した後、前記第二の剥離層を除去することを有する、請求項5に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  8. 前記第二の積層体を得る工程は、第二のガスケット層上に第二の剥離層を形成し、これを第二の基材上に配置した後、前記第二のガスケット層及び第一の剥離層からなる層の端部の少なくとも一部とアノード触媒層の端部とが重なるように、アノード触媒層をさらに第二の基材上に形成した後、前記第二の剥離層を除去することを有する、請求項5に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって製造される電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007280719A (ja) * 2006-04-05 2007-10-25 Tokai Rubber Ind Ltd 接着性シール部材およびこれを用いた燃料電池
JP2016201219A (ja) * 2015-04-08 2016-12-01 凸版印刷株式会社 触媒層転写基材、膜電極接合体の製造方法、および、膜電極接合体

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